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JP6187439B2 - ガス検出装置 - Google Patents

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Description

本発明は、内燃機関の排気(被検ガス)中に含まれる硫黄酸化物の濃度を検出するか又は同硫黄酸化物の有無を判定することが可能なガス検出装置に関する。
従来から、内燃機関を制御するために、排気中に含まれる酸素(O)の濃度に基づいて燃焼室内の混合気の空燃比(A/F)を取得する空燃比センサ(A/Fセンサ)が広く使用されている。このような空燃比センサの1つのタイプとして、限界電流式ガスセンサを挙げることができる。
上記のような空燃比センサとして使用される限界電流式ガスセンサは、酸化物イオン伝導性を有する固体電解質体と、固体電解質体の表面に固着された一対の電極と、を含む電気化学セルであるポンピングセルを備える。一対の電極の一方は、拡散抵抗部を介して導入される被検ガスとしての内燃機関の排気に曝され、他方は大気に曝されている。更に、空燃比を検出する際、上記固体電解質体は酸化物イオン伝導性を発現する温度(以降、「活性化温度」と称される場合がある。)以上の所定の温度にまで昇温される。
上記状態において、上記一方の電極を陰極とし、上記他方の電極を陽極として、これらの一対の電極の間に酸素の分解が始まる電圧(分解開始電圧)以上の電圧を印加すると、被検ガス中に含まれる酸素が陰極において還元分解されて酸化物イオン(O2−)となる。この酸化物イオンは上記固体電解質体を介して陽極へと伝導されて酸素となり、大気中へと排出される。このような陰極側から陽極側への固体電解質体を介する酸化物イオンの伝導による酸素の移動は「酸素ポンピング作用」と称される。
上記酸素ポンピング作用に伴う酸化物イオンの伝導により、上記一対の電極の間に電流が流れる。このように一対の電極間に流れる電流は「電極電流」と称される。この電極電流は一対の電極間に印加される電圧(以降、単に「印加電圧」と称される場合がある。)が上昇するほど大きくなる傾向を有する。しかしながら、上記一方の電極(陰極)に到達する被検ガスの流量が拡散抵抗部によって制限されるので、やがて酸素ポンピング作用に伴う酸素の消費速度が陰極への酸素の供給速度を超えるようになる。即ち、陰極における酸素の還元分解反応が拡散律速状態となる。
上記拡散律速状態においては、印加電圧を上昇させても電極電流が増大せず、略一定となる。このような特性は「限界電流特性」と称され、限界電流特性が発現する(観測される)印加電圧の範囲は「限界電流域」と称される。更に、限界電流域における電極電流は「限界電流」と称され、限界電流の大きさ(限界電流値)は陰極への酸素の供給速度に対応する。上記のように陰極に到達する被検ガスの流量が拡散抵抗部によって一定に維持されているので、陰極への酸素の供給速度は被検ガス中に含まれる酸素の濃度に対応する。
従って、空燃比センサとして使用される限界電流式ガスセンサにおいて「限界電流域内の所定の電圧」に印加電圧を設定したときの電極電流(限界電流)は被検ガス中に含まれる酸素の濃度に対応する。このように酸素の限界電流特性を利用して、空燃比センサは被検ガスとしての排気中に含まれる酸素の濃度を検出し、それに基づいて燃焼室内の混合気の空燃比を取得することができる。
上記のような限界電流特性は酸素ガスのみに限定される特性ではない。具体的には、分子中に酸素原子を含むガス(以降、「含酸素ガス」と称される場合がある。)の中には、印加電圧及び陰極の構成を適切に選択することにより限界電流特性を発現させることができるものがある。このような含酸素ガスの例としては、例えば、硫黄酸化物(SOx)、水(HO)及び二酸化炭素(CO)等を挙げることができる。
ところで、内燃機関の燃料(例えば、軽油及びガソリン等)には微量の硫黄(S)成分が含まれる。特に、粗悪燃料とも称される燃料は、比較的高い含有率にて硫黄成分を含有している場合がある。燃料中の硫黄成分の含有率(以降、単に「硫黄含有率」と称される場合がある。)が高いと、内燃機関の構成部材の劣化及び/又は故障、排気浄化触媒の被毒、排気における白煙の発生等の問題が発生する虞が高まる。そのため、燃料中の硫黄成分の含有率を取得し、取得された硫黄含有率を利用して、例えば、内燃機関の制御を変更したり、内燃機関の故障に関する警告を発したり、排気浄化触媒の自己故障診断(OBD)の改善に役立てたりすることが望まれる。
内燃機関の燃料が硫黄成分を含有していると、燃焼室から排出される排気中に硫黄酸化物が含まれる。更に、燃料中の硫黄成分の含有率(硫黄含有率)が高くなるほど、排気中に含まれる硫黄酸化物の濃度(以降、単に「SOx濃度」と称される場合がある。)も高くなる。従って、排気中のSOx濃度を正確に取得することができれば、取得されたSOx濃度に基づいて硫黄含有率を正確に取得することができると考えられる。
そこで、当該技術分野においては、上述した酸素ポンピング作用を利用する限界電流式ガスセンサによって内燃機関の排気中に含まれる硫黄酸化物の濃度を取得する試みがなされている。具体的には、被検ガスとしての内燃機関の排気が拡散抵抗部を介して導かれる内部空間に陰極が面するように直列に配置された2つのポンピングセルを備える限界電流式ガスセンサ(2セル式の限界電流式ガスセンサ)が使用される。
このセンサにおいては、上流側のポンピングセルの電極間に相対的に低い電圧を印加することにより、上流側のポンピングセルの酸素ポンピング作用によって被検ガス中に含まれる酸素を除去する。更に、下流側のポンピングセルの電極間に相対的に高い電圧を印加することにより、下流側のポンピングセルによって被検ガス中に含まれる硫黄酸化物を陰極において還元分解させ、その結果として生ずる酸化物イオンを陽極へと伝導する。この酸素ポンピング作用に起因する電極電流(分解電流)値の変化に基づいて、被検ガス中に含まれる硫黄酸化物の濃度が取得される(例えば、特許文献1を参照。)。
特開平11−190721号公報
しかしながら、本発明者は、硫黄酸化物の分解電流に基づいて被検ガス(排気)中に含まれる硫黄酸化物の検出を行った後に同検出を再度行うときに硫黄酸化物を正しく検出することができない場合があることに気付いた。具体的には、被検ガス中に含まれる硫黄酸化物の濃度が実際には低いにもかかわらず高く検出されたり、被検ガス中に硫黄酸化物が含まれていないにもかかわらず硫黄酸化物が含まれていると判定されたりする場合がある。尚、本明細書においては、「被検ガス中に含まれる硫黄酸化物の濃度の検出(測定)及び同硫黄酸化物の有無の判定」を「被検ガス中に含まれる硫黄酸化物の検出」と総称する。更に、「燃料中に含まれる硫黄成分の含有率の検出(測定)及び同硫黄成分の有無の判定」を「燃料中に含まれる硫黄成分の検出」と総称する。
上述の誤検出が生ずる原因は、前回以前の「被検ガス中に含まれる硫黄酸化物の検出」において電気化学セルの陰極に吸着した硫黄酸化物の分解生成物(例えば、硫黄(S)及び硫黄化合物等)の少なくとも一部が、今回の検出時にも陰極に吸着したまま残存していることであると考えられる。従って、上述した誤検出を防止するためには、被検ガス中に含まれる硫黄酸化物を検出するガス検出動作を開始する際に、電気化学セルの陰極に吸着した硫黄酸化物の分解生成物が陰極から除去されていることが必要である。
本発明は、上記のような課題に対処すべく為されたものである。即ち、本発明は、電気化学セルの温度及び印加電圧を適切な組み合わせとすることにより陰極に吸着した硫黄酸化物の分解生成物を陰極から除去し、以て、被検ガス中に含まれる硫黄酸化物を正確に検出することができるガス検出装置を提供することを1つの目的とする。
本発明者は、更なる検討の結果、電気化学セルの温度を所定の温度以上に上昇させることにより、上記のように陰極に吸着した硫黄酸化物の分解生成物を陰極から脱離させることができることを見出した。具体的に述べると、ガス検出動作を実行していないときに、被検ガス中に含まれる硫黄酸化物の分解生成物が陰極に吸着する速度よりも同分解生成物が陰極から脱離する速度の方が大きくなるように電気化学セルの印加電圧及び温度を制御する。この状態を所定期間以上に亘って維持することにより、陰極に吸着した硫黄酸化物の分解生成物を陰極から除去することができることを見出したのである。
本発明に係るガス検出装置(以降、「本発明装置」と称される場合がある。)について以下に説明する。本発明装置は、酸素ポンピング作用を有する電気化学セルを備える限界電流式ガスセンサと同様の構成を有するガス検出装置である。即ち、本発明装置は、酸素ポンピング作用を有する電気化学セル(ポンピングセル)において所定の印加電圧にて水及び硫黄酸化物を分解させるときの電極電流に対応する検出値に基づいて被検ガス中に含まれる硫黄酸化物を検出するガス検出装置である。
具体的には、本発明装置は、素子部と、ヒータと、電圧印加部と、温度調整部と、測定制御部と、を備える。
素子部は、酸化物イオン伝導性を有する固体電解質体と同固体電解質体の表面にそれぞれ形成された第1電極及び第2電極とを含む第1電気化学セルと、緻密体と、拡散抵抗部と、を備える。更に、素子部は、前記固体電解質体と前記緻密体と前記拡散抵抗部とにより画定される内部空間に前記拡散抵抗部を介して被検ガスとしての内燃機関の排気が導入され、前記第1電極が前記内部空間に露呈し且つ前記第2電極が前記内部空間とは異なる空間である第1別空間に露呈するように構成される。
ヒータは、通電されたときに発熱して前記素子部を加熱する。
電子印加部は、前記第1電極と前記第2電極との間に電圧を印加する。
温度調整部は、前記ヒータへの通電量を制御することにより前記素子部の温度を制御する。
測定制御部は、前記電圧印加部及び前記温度調整部を制御すると共に前記第1電極と前記第2電極との間に流れる電流に対応する第1検出値を取得する。
更に、前記第1電極は、前記素子部の温度が前記固体電解質体の酸化物イオン伝導性が発現する温度である活性化温度以上の第1所定温度であり且つ前記第1電極と前記第2電極との間に第1所定電圧が印加されている状態である第1状態において、前記被検ガス中に含まれる水(HO)及び硫黄酸化物(SOx)を分解させることが可能となるように構成される。
前記測定制御部は、前記温度調整部を用いて前記素子部の温度を前記第1所定温度に一致させ且つ前記電圧印加部を用いて前記第1電極と前記第2電極との間に印加される電圧である第1印加電圧を前記第1所定電圧に一致させることにより前記第1状態を実現し、前記第1状態において取得される前記第1検出値に基づいて前記被検ガス中に含まれる硫黄酸化物の濃度を検出するか又は同硫黄酸化物の有無を判定するガス検出動作を実行するように構成される。
加えて、前記測定制御部は、前記ガス検出動作を実行していないときに、前記温度調整部を用いて前記素子部の温度を制御すると共に前記電圧印加部を用いて前記第1印加電圧を制御する。これにより、前記測定制御部は、前記被検ガス中に含まれる硫黄酸化物の分解生成物が前記第1電極に吸着する速度である吸着速度よりも同分解生成物が前記第1電極から脱離する速度である脱離速度の方が大きくなるようにする。前記測定制御部は、このような状態を実現する前記第1印加電圧と前記素子部の温度との組み合わせが維持された状態を所定の第1期間以上に亘って継続する被毒回復動作を実行するように構成される。
本発明装置によれば、被検ガス中に含まれる硫黄酸化物の分解生成物が第1電極に吸着する速度(即ち、吸着速度)よりも、その分解生成物が第1電極から脱離する速度(即ち、脱離速度)の方が大きくなるように、第1印加電圧と素子部の温度との組み合わせが維持される。従って、本発明装置は、「ガス検出動作の実行中に第1電極(陰極)に吸着した硫黄酸化物の分解生成物」を陰極から除去することができる。その結果、次にガス検出動作を実行するときには硫黄酸化物の分解生成物が陰極に吸着していない。従って、本発明装置によれば、被検ガス中に含まれる硫黄酸化物の濃度を正確に検出したり、同硫黄酸化物の有無を正確に判定したりすることができる。
被毒回復動作の実行に適した(吸着速度よりも脱離速度の方が大きくなる)第1印加電圧と素子部の温度との組み合わせは、例えば、以下のような事前実験によって特定することができる。先ず、所定期間に亘ってガス検出動作を実行して、硫黄酸化物の分解生成物を第1電極に吸着させておく。その後、所定の期間に亘って、第1印加電圧と素子部の温度との様々な組み合わせにおいて硫黄酸化物を含む被検ガスを内部空間に供給して、硫黄酸化物の分解生成物の第1電極への吸着量の増減を測定する。そして、同分解生成物の第1電極への吸着量が減少した第1印加電圧と素子部の温度との組み合わせを、被毒回復動作の実行に適した(吸着速度よりも脱離速度の方が大きくなる)第1印加電圧と素子部の温度との組み合わせとして特定する。同分解生成物の第1電極への吸着量の増減は、例えば第1電極の質量の測定及び第1電極の表面分析等によって測定することができる。
更に、被毒回復動作の継続期間である第1期間の長さについても、例えば、上記のような事前実験によって特定された第1印加電圧と素子部の温度との組み合わせにおける硫黄酸化物の分解生成物の第1電極への吸着量の減少速度と、ガス検出動作において想定される同分解生成物の第1電極への吸着量と、から適宜定めることができる。
ところで、本発明装置は、ガス検出動作を実行していないときに、被毒回復動作の実行に適した(吸着速度よりも脱離速度の方が大きくなる)第1印加電圧及び素子部の温度を維持することにより、第1電極に吸着した硫黄酸化物の分解生成物を脱離させる。詳しくは後述するように、原則的に、第1印加電圧が高いほど吸着速度が大きく、素子部の温度が高いほど脱離速度が大きい。従って、第1電極に吸着した硫黄酸化物の分解生成物を効果的に脱離させるためには、第1印加電圧が十分に低く、素子部の温度が十分に高いことが望ましい。一方、ガス検出動作の実行時は素子部の温度が第1所定温度に上昇されている。
そこで、本発明の別の態様に係るガス検出装置において、前記測定制御部は、前記ガス検出動作を実行した後に、前記素子部の温度を前記活性化温度以上に維持した状態にて、前記素子部の温度が前記活性化温度以上の温度であっても前記被検ガス中に含まれる硫黄酸化物が分解されない電圧である分解不能電圧まで前記第1印加電圧を低下させることにより、前記被毒回復動作を実行するように構成される。この態様に係るガス検出装置において、前記測定制御部は、前記ガス検出動作を実行した後に、前記第1電極と前記第2電極との間への電圧の印加を停止することにより前記分解不能電圧まで前記第1印加電圧を低下させるように構成され得る。
上記態様に係るガス検出装置は、例えば常温等の低い温度から素子部の温度を上昇させるのではなく、ガス検出動作の実行時に上昇された素子部の温度を大きく低下させること無く(即ち、ガス検出動作中の第1所定温度に近い活性化温度又はそれ以上の温度に維持したまま)、分解不能電圧まで第1印加電圧を低下させることにより被毒回復動作を実行する。従って、被毒回復動作のために素子部の温度を上昇させるエネルギー量を小さくすることができるので、エネルギー効率の向上等の観点から望ましい。尚、分解不能電圧は、素子部の温度が活性化温度以上の温度であっても被検ガス中に含まれる硫黄酸化物が分解されない電圧である。換言すれば、分解不能電圧は、素子部の温度が活性化温度以上に維持された状態において硫黄酸化物が分解される最低電圧未満の電圧であると言うことができる。
更に、上記のように分解不能電圧まで第1印加電圧を低下させることにより被毒回復動作を実行した場合、及び、第1電極と第2電極との間への電圧の印加を停止することにより分解不能電圧まで前記第1印加電圧を低下させて被毒回復動作を実行した場合、第1印加電圧は硫黄酸化物が分解不可能な電圧まで低下している。即ち、硫黄酸化物の分解生成物が第1電極に更に吸着する可能性は無いので、被毒回復動作を実行した後は、素子部の温度を第1所定温度以上に維持する必要は無く、エネルギー効率の向上等の観点からは、被毒回復動作を実行した後は、直ちに素子部の加熱を停止することが望ましい。従って、これらの場合、前記測定制御部は、前記被毒回復動作を実行した後に、前記温度調整部による前記ヒータへの通電を停止することにより前記ヒータによる前記素子部の加熱を停止するように構成され得る。
ところで、ガス検出動作を実行するためには、上述したように、素子部の温度を第1所定温度まで上昇させる必要がある。従って、ガス検出動作を実行するために素子部の温度を第1所定温度まで上昇させるときに、十分に低い第1印加電圧を維持することにより被毒回復動作を実行してもよい。
そこで、本発明の更に別の態様に係るガス検出装置において、前記測定制御部は、前記ガス検出動作を実行する前に、前記第1印加電圧を、前記素子部の温度が前記活性化温度以上の温度であっても前記被検ガス中に含まれる硫黄酸化物が分解されない電圧である分解不能電圧に維持しながら、前記素子部の温度を前記活性化温度以上の温度に上昇させることにより、前記被毒回復動作を実行するように構成される。この態様に係るガス検出装置において、前記測定制御部は、前記ガス検出動作を実行する前に、前記電圧印加部に前記第1電極と前記第2電極との間に電圧を印加させないことにより前記第1印加電圧を前記分解不能電圧に維持しながら、前記素子部の温度を前記活性化温度以上の温度に上昇させるように構成され得る。
上記態様に係るガス検出装置は、被毒回復動作を実行するために例えば常温等の低い温度から素子部の温度を上昇させるのではなく、ガス検出動作を実行するために上昇される素子部の温度を利用して被毒回復動作を実行するので、エネルギー効率の向上等の観点から望ましい。
ところで、上記態様に係るガス検出装置は、ガス検出動作を実行する前に素子部の温度を活性化温度以上の温度に上昇させる。その後、同ガス検出装置はガス検出動作を実行するので、被毒回復動作の実行を完了した後に素子部の温度を活性化温度未満に低下させることは、エネルギー効率の向上等の観点から望ましくない。
従って、このような観点から、上記態様に係るガス検出装置において、前記測定制御部は、前記被毒回復動作を実行した後に、前記素子部の温度を前記活性化温度未満の温度に低下させること無く第1所定温度に一致させ、且つ、前記第1印加電圧を前記第1所定電圧に上昇させることにより、前記ガス検出動作を実行するように構成され得る。これにより、被毒回復動作の実行により活性化温度以上の温度に上昇された素子部の温度を大きく低下させること無く(即ち、活性化温度又はそれ以上の温度に維持したまま)、ガス検出動作を実行する。従って、ガス検出動作のために素子部の温度を上昇させるエネルギー量を小さくすることができるので、エネルギー効率の向上等の観点から望ましい。
本発明の他の目的、他の特徴及び付随する利点は、以下の図面を参照しつつ記述される本発明の各実施形態についての説明から容易に理解されるであろう。
本発明の第1実施形態に係るガス検出装置(第1装置)が備える素子部の構成の一例を示す模式的な断面図である。 第1装置が備える第1電気化学セルを構成する第1電極と第2電極との間に印加される電圧(印加電圧)Vm1と、これらの電極間に流れる電極電流Im1との関係を示す模式的なグラフである。 第1装置において印加電圧Vm1が1.0Vであるときの電極電流Im1の大きさと被検ガス中に含まれる二酸化硫黄(SO)の濃度との関係を示す模式的なグラフである。 第1装置が実行するガス検出動作及び被毒回復動作を示すフローチャートである。 本発明の第2実施形態に係るガス検出装置(第2装置)が備える素子部の構成の一例を示す模式的な断面図である。
<第1実施形態>
以下、本発明の第1実施形態に係るガス検出装置(以下、「第1装置」と称される場合がある。)について説明する。第1装置は、2つの電気化学セルを備える2セル式のガスセンサ(ガス検出装置)である。第1装置において、上流側の第2電気化学セル(ポンピングセル)は被検ガスとしての排気中の酸素及び窒素酸化物を分解及び排出し、下流側の第1電気化学セル(センサセル)は被検ガス中の水及び硫黄酸化物を分解及び検出する。
(構成)
第1装置が備える素子部10は、図1に示すように、第1固体電解質体11s、第2固体電解質体12s、第1アルミナ層21a、第2アルミナ層21b、第3アルミナ層21c、第4アルミナ層21d、第5アルミナ層21e、第6アルミナ層21f、拡散抵抗部(拡散律速層)32及びヒータ(電気ヒータ)41を備える。
固体電解質体11sは、ジルコニア等を含み、酸化物イオン伝導性を有する薄板体である。固体電解質体11sを形成するジルコニアは、例えば、スカンジウム(Sc)及びイットリウム(Y)等の元素を含んでいてもよい。第2固体電解質体12sも固体電解質体11sと同様である。
第1乃至第6アルミナ層21a乃至21fは、アルミナを含む緻密(ガス不透過性)の層(緻密体)である。
拡散抵抗部32は、多孔質の拡散律速層であり、ガス透過性の層(薄板体)である。
ヒータ41は、例えば、白金(Pt)とセラミックス(例えば、アルミナ等)とを含むサーメットの薄板体であり、通電によって発熱する発熱体である。
素子部10の各層は、下方から、第5アルミナ層21e、第4アルミナ層21d、第3アルミナ層21c、第1固体電解質体11s、拡散抵抗部32及び第2アルミナ層21b、第2固体電解質体12s、第6アルミナ層21f、第1アルミナ層21aの順に積層されている。
内部空間31は、第1固体電解質体11s、第2固体電解質体12s、拡散抵抗部32及び第2アルミナ層21bによって画定される空間であり、その中に拡散抵抗部32を介して被検ガスとしての内燃機関の排気が導入されるようになっている。即ち、素子部10においては、内部空間31は拡散抵抗部32を介して、内燃機関の排気管(何れも図示せず)の内部と連通している。従って、排気管内の排気が内部空間31内に被検ガスとして導かれる。
第1大気導入路51は、第1固体電解質体11s、第3アルミナ層21c及び第4アルミナ層21dによって画定され、排気管の外部の大気に開放されている。第1大気導入路51は、第1別空間に該当する。第2大気導入路52は、第2固体電解質体12s、第1アルミナ層21a及び第6アルミナ層21fによって画定され、排気管の外部の大気に開放されている。第2大気導入路52は、第2別空間に該当する。
第1電極11aは陰極であり、第2電極11bは陽極である。第1電極11aは、第1固体電解質体11sの一方の側の表面(具体的には、内部空間31を画定する第1固体電解質体11sの表面)に固着されている。一方、第2電極11bは、第1固体電解質体11sの他方の側の表面(具体的には、第1大気導入路51を画定する第1固体電解質体11sの表面)に固着されている。第1電極11aと第2電極11bとは、固体電解質体11sを挟んで互いに対向するように配置されている。第1電極11a、第2電極11b及び第1固体電解質体11sは、酸素ポンピング作用による酸素排出能力を有する第1電気化学セル11cを構成している。
第3電極12aは陰極であり、第4電極12bは陽極である。第3電極12aは、第2固体電解質体12sの一方の側の表面(具体的には、内部空間31を画定する第2固体電解質体12sの表面)に固着されている。一方、第4電極12bは、第2固体電解質体12sの他方の側の表面(具体的には、第2大気導入路52を画定する第2固体電解質体12sの表面)に固着されている。第3電極12aと第4電極12bとは、固体電解質体12sを挟んで互いに対向するように配置されている。第3電極12a、第4電極12b及び第2固体電解質体12sは、酸素ポンピング作用による酸素排出能力を有する第2電気化学セル12cを構成している。これらの第1電気化学セル11c及び第2電気化学セル12cは、ヒータ41により加熱されて所望の温度に維持される。
第1固体電解質体11s、第2固体電解質体12s及び第1乃至第6アルミナ層21a乃至21fの各層は、例えばドクターブレード法、押し出し成形法等により、シート状に成形されている。第1電極11a及び第2電極11b、第3電極12a、第4電極12b、及びこれらの電極に通電するための配線等は、例えばスクリーン印刷法等によって形成されている。これらのシートを上述したように積層して焼成することにより、上記のような構造を有する素子部10が一体的に製造されている。
第1電極11aは、白金(Pt)とロジウム(Rh)との合金を主成分として含む多孔質サーメット電極であり、第2電極11bは、白金(Pt)を主成分として含む多孔質サーメット電極である。但し、第1電極11aを構成する材料は、第1電極11aと第2電極11bとの間に所定の電圧を印加したときに、拡散抵抗部32を介して内部空間31に導かれた被検ガス中に含まれる水及び硫黄酸化物を還元分解させることができる限り、特に限定されない。好ましくは、第1電極11aを構成する材料は、白金(Pt)、ロジウム(Rh)、パラジウム(Pd)等の白金族元素又はそれらの合金等を主成分として含む。より好ましくは、第1電極11aは、白金(Pt)、ロジウム(Rh)及びパラジウム(Pd)からなる群より選ばれる少なくとも1種を主成分として含む多孔質サーメット電極である。更に、第2電極11bを構成する材料もまた上記に限定されず、酸素ポンピング作用を利用する電気化学セルの陽極材料として広く使用されている種々の材料から適宜選択することができる。
一方、第3電極12a及び第4電極12bは、白金(Pt)を主成分として含む多孔質サーメット電極である。但し、第1電極12aを構成する材料は、第3電極12aと第4電極12bとの間に被検ガス中に含まれる酸素を分解可能な電圧(具体的には、約0.1V以上。典型的には、約0.4V)を印加したときに、拡散抵抗部32を介して内部空間31に導かれた被検ガス中に含まれる酸素を還元分解させることができる限り、特に限定されない。更に、第4電極12bを構成する材料もまた上記に限定されず、酸素ポンピング作用を利用する電気化学セルの陽極材料として広く使用されている種々の材料から適宜選択することができる。
図1に示した例においては、第2電気化学セル12cは、第1電気化学セル11cを構成する第1固体電解質体11sとは別個の第2固体電解質体12sを含む。しかしながら、第2電気化学セル12cは、第1固体電解質体11sを第1電気化学セル11cと共有していてもよい。この場合、第1大気導入路51は、第1別空間及び第2別空間として機能する。
第1装置は、更に、電源61、電流計71及び図示しないECU(電気制御ユニット)を備える。電源61及び電流計71はECUに接続されている。
電源61は、第1電極11aと第2電極11bとの間に第2電極11bの電位が第1電極11aの電位よりも高くなるように所定の電圧を印加できるようになっている。電源61の作動はECUにより制御される。
電流計71は、第1電極11aと第2電極11bとの間に流れる電流(従って、第1固体電解質体11sを流れる電流)である電極電流の大きさを計測して、その計測値をECUに出力するようになっている。
加えて、第1装置は、電源62及び電流計72を更に備える。電源62及び電流計72はECUに接続されている。
電源62は、第3電極12aと第4電極12bとの間に第4電極12bの電位が第3電極12aの電位よりも高くなるように所定の電圧を印加できるようになっている。電源62の作動はECUにより制御される。
電流計72は、第3電極12aと第4電極12bとの間に流れる電流(従って、第2固体電解質体12sを流れる電流)である電極電流の大きさを計測して、その計測値をECUに出力するようになっている。
上述したように、第1電気化学セル11c及び第2電気化学セル12cはヒータ41によって加熱される。その結果としての素子部10の温度は、第3電極12aと第4電極12bとの間に高周波電圧を印加したときのインピーダンスに基づいて検出する。ECUは検出された温度に基づいてヒータ41への供給電力を制御して、素子部10の温度を制御するようになっている。但し、素子部10の温度は、第1電極11aと第2電極11bとの間に高周波電圧を印加したときのインピーダンスに基づいて検出してもよく、或いは、別個の温度センサを設けて検出してもよい。
ECUは、CPU、CPUが実行するプログラム及びマップ等を記憶するROM並びにデータを一時的に記憶するRAM等を含むマイクロコンピュータである(何れも図示せず)。ECUは、図示しない内燃機関のアクチュエータ(燃料噴射弁、スロットル弁及びEGR弁等)に接続されている。ECUは、これらのアクチュエータに駆動(指示)信号を送出し、内燃機関を制御するようになっている。
ECUは、第1電極11aと第2電極11bとの間に印加される電圧である第1印加電圧を制御することができる。即ち、電源61及びECUは第1の電圧印加部を構成している。更に、ECUは、電流計71から出力される第1電気化学セル11cに流れる電極電流に対応する信号を受け取ることができる。即ち、電流計71及びECUは第1の測定制御部を構成している。加えて、ECUは、第3電極12aと第4電極12bとの間に印加される電圧を制御することができる。即ち、電源62及びECUは第2の電圧印加部を構成している。更に、ECUは、電流計72から出力される第2電気化学セル12cに流れる電極電流に対応する信号を受け取ることができる。即ち、電流計72及びECUは第2の測定制御部を構成している。加えて、ECUは、ヒータ41への通電量を制御することにより素子部10の温度を制御することができる。即ち、ヒータ41及びECUは温度調整部を構成している。
図1に示した例においては、第1及び第2電圧印加部を、別個の電圧印加部として含む。しかしながら、これらの電圧印加部は、所期の印加電圧を所期の電極間にそれぞれ印加することが可能である限り、1つの電圧印加部として構成されていてもよい。同様に、図1に示した例においては、第1及び第2の測定制御部を、別個の測定制御部として含む。しかしながら、これらの測定制御部は、所期の検出値を所期の電極間からそれぞれ取得することが可能である限り、1つの測定制御部として構成されていてもよい。
(ガス検出動作)
上述したECUが備えるCPU(以降、単に「CPU」と称呼される場合がある。)は、ヒータ41によって素子部10を活性化温度以上の第1所定温度に加熱する。活性化温度とは、固体電解質(第1固体電解質体11s及び第2固体電解質体12s)の酸化物イオン伝導性が発現する「素子部10の温度」である。この状態において、CPUは、第3電極12a及び第4電極12bがそれぞれ陰極及び陽極となるように、これらの電極間に酸素の限界電流域に相当する電圧(例えば、0.4V)を印加する。これにより、酸素及び窒素酸化物が第3電極12aにおいて分解され、生成された酸化物イオン(O2−)は酸素ポンピング作用によって内部空間31から第2大気導入路52へと排出される。このようにして、CPUは、第2電気化学セル12cを使用して、内部空間31内の被検ガス中に含まれる酸素及び窒素酸化物を実質的に排除する。
一方、CPUは、ヒータ41によって素子部10が第1所定温度に加熱された状態において、第1電極11a及び第2電極11bがそれぞれ陰極及び陽極となるように、これらの電極間に第1所定電圧(例えば、1.1V)を印加する。これにより、被検ガス中に含まれる水のみならず、被検ガス中に含まれる硫黄酸化物もまた第1電極11aにおいて分解される。その結果、第1電極11aと第2電極11bとの間に第1所定電圧を印加したときの電極電流に対応する第1検出値が、被検ガス中に含まれる硫黄酸化物の濃度に応じて変化する。このようにして、CPUは、被検ガス中に含まれる硫黄酸化物の濃度を検出する。
(検出原理)
ここで、第1装置において実行されるガス検出動作の原理について具体的に説明する。図2は、第1電気化学セル11cにおいて、印加電圧Vm1を徐々に上昇させた(昇圧スイープした)ときの印加電圧Vm1と電極電流Im1との関係を示す模式的なグラフである。この測定は、ヒータ41によって素子部10が「第1固体電解質体11sの酸化物イオン伝導性が発現する温度である活性化温度以上の第1所定温度」に加熱された状態において行った。更に、この例においては、被検ガス中に含まれる硫黄酸化物としての二酸化硫黄(SO)の濃度がそれぞれ0、100、300及び500ppmである異なる4種の被検ガスを使用した。加えて、第1電気化学セル11cの第1電極11a(陰極)に到達する被検ガス中に含まれる酸素及び窒素酸化物の濃度は、第1電気化学セル11cの上流側に配設された第2電気化学セル12cにより、何れの被検ガスにおいても一定(実質的に0(ゼロ)ppm)に維持されている。
先ず、実線の曲線L1は、被検ガス中に含まれる二酸化硫黄の濃度が0(ゼロ)ppmである場合における印加電圧Vm1と電極電流Im1との関係を示している。上記のように第2電気化学セル12cにより内部空間31内の被検ガス中に含まれる酸素及び窒素酸化物が実質的に除去されるので、印加電圧Vm1が約0.6V未満である領域において、電極電流Im1は流れない(Im1=0μA)。印加電圧Vm1が約0.6V以上となると電極電流Im1が増大し始める。この電極電流Im1の増大は第1電極11aにおける水の分解が始まったことに起因する。
次に、点線の曲線L2は、被検ガス中に含まれる二酸化硫黄の濃度が100ppmである場合における印加電圧Vm1と電極電流Im1との関係を示している。この場合も、印加電圧Vm1が第1電極11aにおける水の分解が始まる電圧(分解開始電圧)(約0.6V)未満であるときには、印加電圧Vm1と電極電流Im1との関係は曲線L1(被検ガス中に含まれる二酸化硫黄の濃度が0(ゼロ)ppmである場合)と同様である。即ち、印加電圧Vm1が約0.6V未満である領域においては、電極電流Im1は流れない。一方、印加電圧Vm1が第1電極11aにおける水の分解開始電圧(約0.6V)以上であるときには、水の分解に起因して電極電流Im1が流れる。しかしながら、曲線L1と比較して電極電流Im1が小さく、印加電圧Vm1に対する電極電流Im1の増加率もまた曲線L1と比較して小さい(傾きが小さい)。
更に、一点鎖線及び破線によって表される曲線L3及び4は、被検ガス中に含まれる二酸化硫黄の濃度がそれぞれ300ppm及び500ppmである場合における印加電圧Vm1と電極電流Im1との関係を示している。これらの場合もまた、印加電圧Vm1が第1電極11aにおける水の分解開始電圧(約0.6V)未満であるときには、電極電流Im1は流れない。一方、印加電圧Vm1が第1電極11aにおける水の分解開始電圧(約0.6V)以上であるときには、水の分解に起因して電極電流Im1が流れる。しかしながら、被検ガス中に含まれる二酸化硫黄の濃度が高いほど電極電流Im1が小さく、印加電圧Vm1に対する電極電流Im1の増加率もまた被検ガス中に含まれる二酸化硫黄の濃度が高いほど小さい(傾きが小さい)。
以上のように、印加電圧Vm1が第1電極11aにおける水の分解開始電圧(約0.6V)以上であるときの電極電流Im1の大きさは、被検ガス中に含まれる硫黄酸化物としての二酸化硫黄の濃度に応じて変化する。例えば、図2に示したグラフにおける印加電圧Vm1が1.0Vであるときの曲線L1乃至L4における電極電流Im1の大きさを被検ガス中に含まれる二酸化硫黄の濃度に対してプロットすると、図3に示したグラフが得られる。図3において点線の曲線によって表されているように、特定の印加電圧Vm1(この場合は1.0V)における電極電流Im1の大きさが被検ガス中に含まれる二酸化硫黄の濃度に応じて変化する。従って、特定の印加電圧Vm1(水の分解開始電圧以上の所定電圧であり、「第1所定電圧」とも称呼される。)における電極電流Im1(に対応する第1検出値)を取得すれば、その(第1検出値に対応する)電極電流Im1に対応する硫黄酸化物の濃度を取得することができる。
図2に示されているグラフの横軸に示されている印加電圧Vm1、縦軸に示されている電極電流Im1、及び上記説明において述べられている印加電圧Vm1の個々の具体的な値は、図2に示されているグラフを得るために行った実験の条件(例えば、被検ガス中に含まれる各種成分の濃度等)によって変動することがあり、印加電圧Vm1及び電極電流Im1の値が常に上述した値となるとは限らない。
ところで、上記のように素子部10が第1所定温度に加熱されており且つ第1電極11aと第2電極11bとの間に第1所定電圧が印加されている状態である第1状態において取得される第1検出値が被検ガス中の硫黄酸化物の濃度に応じて変化するメカニズムの詳細は不明である。しかしながら、上記第1状態においては、被検ガス中に含まれる水のみならず、被検ガスに含まれる硫黄酸化物もまた陰極である第1電極11aにおいて分解される。その結果、硫黄酸化物の分解生成物(例えば、硫黄(S)及び硫黄化合物等)が第1電極11aに吸着して、水の分解に寄与することができる第1電極11aの面積が減少すると考えられる。このため、上記第1状態における(電極電流に対応する)第1検出値が被検ガス中に含まれる硫黄酸化物の濃度に応じて変化すると考えられる。
(被毒回復動作)
前述したように、ガス検出動作の結果として、硫黄酸化物の分解生成物(例えば、硫黄(S)及び硫黄化合物等)の少なくとも一部が第1電極11a(陰極)に吸着する。従って、このままの状態で再びガス検出動作を実行すると、本来の値よりも小さい第1検出値が取得され、被検ガス中に含まれる硫黄酸化物の濃度が本来よりも大きく検出される。
そこで、第1装置は、ガス検出動作を実行していないときに、第1電極11aと第2電極11bとの間に印加される電圧である第1印加電圧と素子部10の温度とを制御して被毒回復動作を実行し、第1電極11a(陰極)に吸着した硫黄酸化物の分解生成物を第1電極11aから脱離させる。
具体的には、第1装置は、ガス検出動作を実行していないときに、硫黄酸化物の分解生成物が第1電極11aに吸着する速度である吸着速度よりも同分解生成物が前記第1電極11aから脱離する速度である脱離速度の方が大きくなるように第1印加電圧と素子部10の温度とを制御する。このような第1印加電圧と素子部10の温度との組み合わせが維持された状態を所定の第1期間以上に亘って継続することにより、第1装置は第1電極11a(陰極)に吸着した硫黄酸化物の分解生成物を除去する(被毒回復動作を実行する)。
(回復原理)
ここで、第1装置によって実行される被毒回復動作の原理について説明する。原則的に、第1印加電圧が高いほど、単位時間当たりにより多くの硫黄酸化物が分解されるので、硫黄酸化物の分解生成物の第1電極11aへの吸着速度が大きい。但し、第1印加電圧が過大であって、例えば固体電解質体の分解等、素子部の劣化等が起こる場合及び第1印加電圧が硫黄酸化物の限界電流域に到達している場合を除く。逆に、第1印加電圧が低いほど、同分解生成物の第1電極11aへの吸着速度が小さい。特に、第1印加電圧が硫黄酸化物の分解開始電圧(硫黄酸化物が分解され得る電圧の最低値(最低電圧))未満であるとき(即ち、第1印加電圧が「分解不能電圧」であるとき)、硫黄酸化物の分解生成物の第1電極11aへの吸着速度は実質的に0(ゼロ)となる。
一方、原則的に、素子部10の温度が高いほど、硫黄酸化物の分解生成物の第1電極11aからの脱離速度が大きい。逆に、素子部10の温度が低いほど、同分解生成物の第1電極11aからの脱離速度が小さい。この現象は、素子部10の温度が高くなるほど、第1電極11aに吸着している同分解生成物の分子運動エネルギーが増大し、第1電極11aへの結合(吸着)エネルギーよりも高くなるために起こると考えられる。
従って、硫黄酸化物の分解生成物が第1電極11aに吸着している場合、第1印加電圧を低下させたり、素子部10の温度を上昇させたりすることにより、同分解生成物の第1電極11aへの吸着速度を小さくしたり、同分解生成物の第1電極11aからの脱離速度を大きくしたりすることができる。これにより、吸着速度よりも脱離速度の方が大きい状態を実現し、この状態を所定の第1期間に亘って維持することにより、同分解生成物を第1電極11aから除去することができる。
(具体的作動)
ここで、第1装置によって実行されるガス検出動作及び被毒回復動作につき、より具体的に説明する。図4は、素子部10を使用してECUのCPUが実行するガス検出動作及び被毒回復動作の一例を示すフローチャートである。この例において、第1装置は、ガス検出動作の前に被毒回復動作1を、ガス検出動作の後に被毒回復動作2を、それぞれ実行する。ここで、「ガス検出動作の前に被毒回復動作1を実行する」とは「被毒回復動作1に引き続いてガス検出動作を実行する」ことを意味する。一方、「ガス検出動作の後に被毒回復動作2を実行する」とは「ガス検出動作に引き続いて被毒回復動作2を実行する」ことを意味する。但し、ガス検出動作とは連続しない無関係な時期に被毒回復動作1及び2の少なくとも何れか一方を行ってもよい。以下の説明において、第1装置によって実行されるガス検出動作及び被毒回復動作を「SOxセンサ制御ルーチン」と総称する。
先ず、CPUは、内燃機関が始動された後の所定のタイミングにてステップS01から「SOxセンサ制御ルーチン」を開始し、ステップS02に進む。尚、内燃機関が始動されたとき、第1電極11aと第2電極11bとの間には電圧は印加されておらず、ヒータ41は非通電となっている。
ステップS02において、CPUは、被検ガス中に含まれる硫黄酸化物を検出する要求(SOx検出要求)が有るか否かを判定する。SOx検出要求は、例えば、第1装置が適用される内燃機関が搭載される車輌において燃料タンクへの燃料の充填が行われたときに発生する。更に、燃料タンクへの燃料の充填が行われた後に「SOxセンサ制御ルーチン」が実行されて被検ガス中に含まれる硫黄酸化物の検出処理(即ち、「ガス検出動作」)が取得された履歴が有る場合にはSOx濃度取得要求を解除するようにしてもよい。
上記ステップS02においてSOx検出要求が有ると判定した場合(ステップS02:Yes)、CPUは次のステップS03に進み、第1装置が適用される内燃機関が定常状態にあるか否かを判定する。CPUは、例えば、所定期間内における負荷の最大値と最小値との差が閾値未満であるとき、又は所定期間内におけるアクセル操作量の最大値と最小値との差が閾値未満であるとき、内燃機関が定常状態にあると判定する。
上記ステップS03において内燃機関が定常状態にあると判定した場合(ステップS03:Yes)、CPUは次のステップS04に進み、被毒回復動作1を実行する。具体的には、第1電極11aと第2電極11bとの間に印加される電圧である第1印加電圧が硫黄酸化物の分解開始電圧未満の電圧である状態のまま、ヒータ41に通電して素子部10を加熱し、素子部10の温度を第1固体電解質体11sの活性化温度(例えば、500℃)以上の温度(例えば、700℃)とし、この状態を所定の第1期間に亘って継続する。
尚、例えば内燃機関が始動された直後等、被毒回復動作1を実行する際に第1電極11aと第2電極11bとの間に電圧が印加されていない場合は、第1印加電圧が0(ゼロ)Vである状態においてヒータ41に通電して素子部10を加熱してもよい。一方、被毒回復動作1を実行する際に第1電極11aと第2電極11bとの間に電圧が印加されている場合は、硫黄酸化物の分解開始電圧未満の所定の電圧(例えば、0.4V)を第1印加電圧とした状態においてヒータ41に通電して素子部10を加熱してもよい。
上記状態においては、第1印加電圧は硫黄酸化物の分解開始電圧未満の電圧であるので、被検ガス中に含まれる硫黄酸化物は第1電極11aにおいて分解されない。即ち、硫黄酸化物の分解生成物は第1電極11aに更に吸着しない。一方、素子部10の温度は第1固体電解質体11sの活性化温度以上であり十分に高いので、硫黄酸化物の分解生成物が第1電極11aに吸着していても、同分解生成物は第1電極11aから脱離する。従って、上記状態においては、被検ガス中に含まれる硫黄酸化物の分解生成物が第1電極11aに吸着する速度である吸着速度よりも同分解生成物が第1電極11aから脱離する速度である脱離速度の方が大きい。即ち、上記状態は、被毒回復動作に適した第1印加電圧と素子部10の温度との組み合わせが維持された状態に該当する。
次に、CPUはステップS05に進み、ガス検出動作を実行する。具体的には、CPUは、ヒータ41により素子部10の温度を第1所定温度(例えば、600℃)とし、電圧印加部により第1印加電圧を第1所定電圧(例えば、1.1V)とする。そして、CPUは、この状態において第1電極11aと第2電極11bとの間に流れる電極電流を第1検出値として取得し、例えば図3に示したようなデータマップを参照して、第1検出値に対応する硫黄酸化物の濃度を取得する。
少なくともガス検出動作の実行中は、CPUは、第2電気化学セル12cを使用して、内部空間31内の被検ガス中に含まれる酸素及び窒素酸化物を実質的に排除する。これにより、被検ガス中に含まれる酸素及び窒素酸化物の濃度の変化に起因する第1検出値の変化を低減することができる。その結果、被検ガス中に含まれる硫黄酸化物を正確に検出することができる。一方、被毒回復動作1及び2の実行中は、第1電極11aに吸着した硫黄酸化物の分解生成物を再酸化によって第1電極11aから脱離させ得るという観点からは、必ずしも内部空間31内の被検ガス中に含まれる酸素及び窒素酸化物を排除する必要は無い。
次に、CPUはステップS06に進み、上記ステップS05において取得された硫黄酸化物の濃度が所定値以上であるか否かを判定する。この所定値は、ガス検出動作の実行により有意な量の分解生成物が第1電極11aに吸着したか否かを判定するための閾値である。このような所定値は、例えば、事前実験によって求められる第1検出値の変動幅及び/又は検出精度等に基づいて適宜定めることができる。
上記ステップS06において硫黄酸化物の濃度が所定値以上であると判定した場合(ステップS06:Yes)、CPUは次のステップS07に進み、被毒回復動作2を実行する。具体的には、ヒータ41に通電して素子部10を加熱して素子部10の温度を活性化温度以上の温度に維持したまま、硫黄酸化物の分解開始電圧未満の電圧まで第1印加電圧を低下させ、この状態を所定の第1期間に亘って継続する。この状態もまた、被毒回復動作に適した第1印加電圧と素子部10の温度との組み合わせが維持された状態に該当する。
次に、CPUはステップS08に進み、第1印加電圧及びヒータ41への供給電圧を停止し、次のステップS09において当該ルーチンを終了する。このようにして、第1装置は、ガス検出動作の実行により被検ガス中に含まれる硫黄酸化物を精度良く検出すると共に、被毒回復動作の実行により第1電極11aに吸着した硫黄酸化物の分解生成物を除去することができる。その結果、次回以降のガス検出動作の実行においても、被検ガス中に含まれる硫黄酸化物を精度良く検出することができる。
ところで、上記ステップS02においてSOx検出要求が無いと判定した場合(ステップS02:No)及び上記ステップS03において内燃機関が定常状態にないと判定した場合(ステップS03:No)は、CPUはステップS09に進み、当該ルーチンを終了する。上記ステップS06において硫黄酸化物の濃度が所定値未満であると判定した場合(ステップS06:No)は、CPUは次のステップS07をスキップし、被毒回復動作2を実行しない。
以上のようなルーチンをCPUに実行させるためのプログラムは、ECUが備えるデータ記憶装置(例えば、ROM等)に格納することができる。更に、第1印加電圧を第1所定電圧(第1装置においては1.1V)としたときの第1検出値としての電極電流と被検ガス中に含まれる硫黄酸化物の濃度との対応関係は、例えば、硫黄酸化物の濃度が既知の被検ガスを使用する事前実験により予め求めておくことができる。そして、当該対応関係を表すデータテーブル(例えば、データマップ等)をECUが備えるデータ記憶装置(例えば、ROM等)に格納しておき、上記ステップS05においてCPUに参照させることができる。
上記のように、第1装置においては、ガス検出動作の前に被毒回復動作1を実行し、ガス検出動作の実行により有意な量の硫黄酸化物が検出された場合にのみ、ガス検出動作の後に被毒回復動作2を実行するようにした。しかしながら、被毒回復動作は、ガス検出動作の前及び後の両方において必ず実行するようにしてもよい。或いは、被毒回復動作は、ガス検出動作の前及び後の何れか一方において必ず実行するようにしてもよい。更に、ガス検出動作の実行により有意な量の硫黄酸化物が検出されなかった場合には、被毒回復動作が実行されないようにしてもよい。
更に、第1装置においては、第1印加電圧が硫黄酸化物の分解開始電圧未満の電圧(0.4V)である状態において被毒回復動作を実行した。しかしながら、被毒回復動作を実行するときの第1印加電圧は上記に限定されない。即ち、被毒回復動作を実行するときの第1印加電圧及び素子部10の温度は、被検ガス中に含まれる硫黄酸化物の分解生成物が第1電極11aに吸着する速度である吸着速度よりも同分解生成物が第1電極11aから脱離する速度である脱離速度の方が大きい状態を実現可能である限り、如何なる組み合わせであってもよい。例えば、素子部10の温度が第1所定温度以上であり、且つ、第1電極11aと第2電極11bとの間に電圧が印加されていない状態において、被毒回復動作を実行してもよい。
一方、ガス検出動作を実行するとき、上記のように、第1装置において第1所定電圧を1.1Vとした。しかしながら、前述したように、第1所定電圧は、第1電極11aを陰極とし、第2電極11bを陽極とした場合に、これらの電極間に印加することにより、被検ガス中に含まれる水及び硫黄酸化物を分解させることが可能となる所定の電圧であれば、特に限定されない。前述したように、水の分解が開始する電圧は約0.6Vである。従って、第1所定電圧は、0.6V以上の所定の電圧とすることができる。
更に、第1装置においては、上記のように、第1印加電圧が特定の第1所定電圧(1.1V)であるときの電極電流の大きさを第1検出値として取得し、この第1検出値に基づいて被検ガス中に含まれる硫黄酸化物の濃度を検出した。しかしながら、第1検出値は、第1状態において第1電極11aと第2電極11bとの間に流れる電極電流に対応する値(例えば、電圧値、電流値、抵抗値等)である限り特に限定されない。加えて、第1検出値は、上記のように、第1印加電圧が特定の第1所定電圧(1.1V)であるときの電極電流に対応する値に限定されない。
例えば、被検ガス中に含まれる水及び硫黄酸化物を分解可能な特定の電圧帯(但し、硫黄酸化物の分解生成物の吸着速度が同分解生成物の脱離速度よりも大きい電圧帯)において第1印加電圧を所定の掃引速度にて上昇及び下降させ、上昇時と下降時との間の電極電流の違い(差及び/又は比)に対応する値を第1検出値としてもよい。このような電極電流の違いは、第1印加電圧の上昇時よりも下降時の方が、より多くの硫黄酸化物の分解生成物が第1電極11aに吸着していることに起因すると考えられる。更には、被検ガス中に含まれる水及び硫黄酸化物を分解可能な前記特定の電圧帯における電極電流の大きさの積分値を第1取得値としてもよく、或いは、上昇時と下降時との間の電極電流の違いの積分値を第1取得値としてもよい。
第1装置は、以下に列挙するような各種態様をも取り得る。
(a)前記測定制御部は、前記ガス検出動作を実行した後に、前記素子部10の温度を前記活性化温度以上に維持した状態にて、前記素子部の温度が前記活性化温度以上の温度であっても前記被検ガス中に含まれる硫黄酸化物が分解されない電圧である分解不能電圧まで前記第1印加電圧を低下させることにより、前記被毒回復動作を実行するように構成され得る。
(b)前記測定制御部は、前記ガス検出動作を実行した後に、前記第1電極11aと前記第2電極11bとの間への電圧の印加を停止することにより前記分解不能電圧まで前記第1印加電圧を低下させるように構成され得る。
(c)前記測定制御部は、前記被毒回復動作を実行した後に、前記温度調整部による前記ヒータ41への通電を停止することにより前記ヒータ41による前記素子部10の加熱を停止するように構成され得る。
(d)前記測定制御部は、前記ガス検出動作を実行する前に、前記第1印加電圧を、前記素子部10の温度が前記活性化温度以上の温度であっても前記被検ガス中に含まれる硫黄酸化物が分解されない電圧である分解不能電圧に維持しながら、前記素子部10の温度を前記活性化温度以上の温度に上昇させることにより、前記被毒回復動作を実行するように構成され得る。
(e)前記測定制御部は、前記ガス検出動作を実行する前に、前記電圧印加部に前記第1電極11aと前記第2電極11bとの間に電圧を印加させないことにより前記第1印加電圧を前記分解不能電圧に維持しながら、前記素子部10の温度を前記活性化温度以上の温度に上昇させるように構成され得る。
ガス検出装置。
(f)前記測定制御部は、前記被毒回復動作を実行した後に、前記素子部10の温度を前記活性化温度未満の温度に低下させること無く第1所定温度に一致させ、且つ、前記第1印加電圧を前記第1所定電圧に上昇させて、前記ガス検出動作を実行するように構成され得る。
<第2実施形態>
第1装置は、2つの電気化学セルを備える2セル式のガスセンサ(ガス検出装置)であった。これに対し、本発明の第2実施形態に係るガス検出装置(以下、「第2装置」と称される場合がある。)は、第1装置における上流側の第2電気化学セル(ポンピングセル)を備えない1セル式のガスセンサである。
(構成)
第2装置に係る1セル式のガスセンサの構成を図5に示す。このガスセンサが備える素子部10は、図1に示した第1装置が備える素子部10から、第2電気化学セル12c(第3電極12a、第4電極12b及び第2固体電解質体12s)、第6アルミナ層21f、第2大気導入路52(第2別空間52)、電源62及び電流計72を除いた構成を有する。従って、このガスセンサが備える素子部10においては、第1アルミナ層21a、固体電解質体11s、拡散抵抗部32及び第2アルミナ層21bによって内部空間31が形成されている。
(具体的作動)
このガスセンサにおいて実行されるSOxセンサ制御ルーチンは上述した第1装置において実行されるSOxセンサ制御ルーチンと同様であるので、ここでの詳細な説明は割愛する。但し、このガスセンサは第2電気化学セル12cを備えないので、第3電極12aと第4電極12bとの間に高周波電圧を印加したときのインピーダンスに基づいて素子部10の温度を検出することはできない。従って、このガスセンサが備える素子部10の温度は、第1電極11aと第2電極11bとの間に高周波電圧を印加したときのインピーダンスに基づいて検出するか、或いは、別個の温度センサを設けて検出する必要がある。
ところで、電気化学セルにおける酸素の分解開始電圧は、一般に、水の分解開始電圧よりも低い。第2装置は1セル式のガスセンサであるので、第1検出値に対応する電極電流は、水に起因する分解電流及び硫黄酸化物に起因する分解電流に加えて、酸素に起因する分解電流をも含む。そのため、被検ガス中に含まれる酸素の濃度が変化すると第1検出値も変化する。従って、第2装置においてガス検出動作を実行するときは、内燃機関の燃焼室に供給される混合気の空燃比(A/F)が特定の値(排気中に含まれる酸素の濃度が特定の値)において一定であることが望ましい。
以上、本発明を説明することを目的として、特定の構成を有する幾つかの実施形態及び変形例につき、時に添付図面を参照しながら説明してきたが、本発明の範囲は、これらの例示的な実施形態及び変形例に限定されると解釈されるべきではなく、特許請求の範囲及び明細書に記載された事項の範囲内で、適宜修正を加えることが可能であることは言うまでも無い。
10…素子部、11a及び12a…電極(陰極)、11b及び12b…電極(陽極)、11s及び12s…第1及び第2固体電解質体、11c及び12c…ポンピングセル(第1電気化学セル及び第2電気化学セル)、21a、21b、21c、21d、21e及び21f…第1乃至第6アルミナ層、31…内部空間、32…拡散抵抗体、41…ヒータ、51及び52…第1及び第2大気導入路、61及び62…電源、71及び72…電流計。

Claims (7)

  1. 酸化物イオン伝導性を有する固体電解質体と同固体電解質体の表面にそれぞれ形成された第1電極及び第2電極とを含む第1電気化学セルと、緻密体と、拡散抵抗部と、を備え、前記固体電解質体と前記緻密体と前記拡散抵抗部とにより画定される内部空間に前記拡散抵抗部を介して被検ガスとしての内燃機関の排気が導入され、前記第1電極が前記内部空間に露呈し且つ前記第2電極が前記内部空間とは異なる空間である第1別空間に露呈するように構成された素子部と、
    通電されたときに発熱して前記素子部を加熱するヒータと、
    前記第1電極と前記第2電極との間に電圧を印加する電圧印加部と、
    前記ヒータへの通電量を制御することにより前記素子部の温度を制御する温度調整部と、
    前記電圧印加部及び前記温度調整部を制御すると共に前記第1電極と前記第2電極との間に流れる電流に対応する第1検出値を取得する測定制御部と、
    を備え、且つ
    前記第1電極は、前記素子部の温度が前記固体電解質体の酸化物イオン伝導性が発現する温度である活性化温度以上の第1所定温度であり且つ前記第1電極と前記第2電極との間に第1所定電圧が印加されている状態である第1状態において、前記被検ガス中に含まれる水(HO)及び硫黄酸化物(SOx)を分解させることが可能となるように構成され、
    前記測定制御部は、前記温度調整部を用いて前記素子部の温度を前記第1所定温度に一致させ且つ前記電圧印加部を用いて前記第1電極と前記第2電極との間に印加される電圧である第1印加電圧を前記第1所定電圧に一致させることにより前記第1状態を実現し、前記第1状態において取得される前記第1検出値に基づいて前記被検ガス中に含まれる硫黄酸化物の濃度を検出するか又は同硫黄酸化物の有無を判定するガス検出動作を実行するように構成された、
    ガス検出装置であって、
    前記測定制御部は、前記ガス検出動作を実行していないときに、前記温度調整部を用いて前記素子部の温度を制御すると共に前記電圧印加部を用いて前記第1印加電圧を制御することにより、前記被検ガス中に含まれる硫黄酸化物の分解生成物が前記第1電極に吸着する速度である吸着速度よりも同分解生成物が前記第1電極から脱離する速度である脱離速度の方が大きくなる前記第1印加電圧と前記素子部の温度との組み合わせが維持された状態を所定の第1期間以上に亘って継続する被毒回復動作を実行するように構成された、
    ガス検出装置。
  2. 請求項1に記載のガス検出装置において、
    前記測定制御部は、前記ガス検出動作を実行した後に、前記素子部の温度を前記活性化温度以上に維持した状態にて、前記素子部の温度が前記活性化温度以上の温度であっても前記被検ガス中に含まれる硫黄酸化物が分解されない電圧である分解不能電圧まで前記第1印加電圧を低下させることにより、前記被毒回復動作を実行するように構成された、
    ガス検出装置。
  3. 請求項2に記載のガス検出装置において、
    前記測定制御部は、前記ガス検出動作を実行した後に、前記第1電極と前記第2電極との間への電圧の印加を停止することにより前記分解不能電圧まで前記第1印加電圧を低下させるように構成された、
    ガス検出装置。
  4. 請求項2又は3に記載のガス検出装置において、
    前記測定制御部は、前記被毒回復動作を実行した後に、前記温度調整部による前記ヒータへの通電を停止することにより前記ヒータによる前記素子部の加熱を停止するように構成された、
    ガス検出装置。
  5. 請求項1に記載のガス検出装置において、
    前記測定制御部は、前記ガス検出動作を実行する前に、前記素子部の温度が前記活性化温度以上の温度であっても前記被検ガス中に含まれる硫黄酸化物が分解されない電圧である分解不能電圧に前記第1印加電圧を維持しながら、前記素子部の温度を前記活性化温度以上の温度に上昇させることにより、前記被毒回復動作を実行するように構成された、
    ガス検出装置。
  6. 請求項5に記載のガス検出装置において、
    前記測定制御部は、前記ガス検出動作を実行する前に、前記電圧印加部に前記第1電極と前記第2電極との間に電圧を印加させないことにより前記第1印加電圧を前記分解不能電圧に維持しながら、前記素子部の温度を前記活性化温度以上の温度に上昇させるように構成された、
    ガス検出装置。
  7. 請求項5又は6に記載のガス検出装置において、
    前記測定制御部は、前記被毒回復動作を実行した後に、前記素子部の温度を前記活性化温度未満の温度に低下させること無く第1所定温度に一致させ、且つ、前記第1印加電圧を前記第1所定電圧に上昇させて、前記ガス検出動作を実行するように構成された、
    ガス検出装置。
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