JP6184342B2 - 濾材 - Google Patents
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Description
特に、自動車などの車輌内では、狭い空間中にバインダや塗料を用いた部品が多数存在するためVOCが高濃度で存在し易く、VOCの効率的な除去が求められている。
なお、引用文献1では、平均粒子径が0.01〜50μmの吸着剤を使用できることが開示されている。また、実施例には、吸着剤の質量に対して2倍質量のバインダを混合した混合液を不織布へ付与してなるエアーフィルターが開示されている。
しかし、上述の構成を備えた濾材のVOC吸着性能は予想していたよりも低いものであり、濾材のVOC吸着性能が何らかの原因により阻害されていると考えられた。
「吸着剤をバインダにより担持した不織布を備える濾材であって、
前記吸着剤は1μm以下の平均粒子径を有する粒子であり、
前記吸着剤と前記バインダとの質量比率が93質量%:7質量%〜99.5質量%:0.5質量%である、濾材。」
である。
この理由は完全に解明されていないが、本発明の濾材は、以下の原因が発生するのを防止した濾材であるためだと考えられる。
1.バインダの質量比率が本発明の範囲よりも多い場合には、濾材が備えるバインダが不織布へ吸着剤を担持させるために必要となるバインダよりも多いため、余分なバインダが吸着剤の表面を被覆して吸着剤のVOC吸着性能が阻害されると考えられる。
2.バインダの質量比率が本発明の範囲よりも少ない場合には、濾材が備えるバインダが不織布へ吸着剤を担持させるために必要となるバインダよりも少ないため、濾材から吸着剤が剥落し易くなり濾材のVOC吸着性能が低下すると考えられる。
そのため、本発明の濾材は、VOC吸着性能に優れる濾材である。
ここでいうアミノ基を有する化合物として、例えばアニリン等のアミノ基を有する芳香族系化合物や、下記化学構造式で表されるアミノ基を有する脂肪族系化合物などを挙げることができる。
(nは0以上3以下の整数)
なお、本発明において吸着剤の平均粒子径は、粒子を大塚電子(株)製FPRA1000(測定範囲3nm〜5000nm)に供して、動的光散乱法(CONTIN法測定)を用いて測定した値を指す。
なお、吸着剤は1種単独で用いてもよく、または2種以上混合し使用してもよい。
なお、構成繊維の平均繊度の計算方法としては、不織布に含まれる各繊維の繊度をaデシテックス、bデシテックス、cデシテックス・・・として、各繊維の含有割合をそれぞれa’質量%、b’質量%、c’質量%とすると、「(a’/a)+(b’/b)+(c’/c)・・・=(100/x)」の関係式が成り立ち、この関係式から平均繊度xを求めることができる。
なお、繊維ウエブを加熱処理する方法として、例えば、カレンダーロールにより加熱加圧する方法、熱風乾燥機により加熱する方法、赤外線を照射する方法などを用いることができる。
不織布をエレクトレット化する方法は適宜選択するものであり限定されるものではないが、例えば、プラズマ帯電処理やコロナ帯電などイオンを注入して帯電させる手段、極性液体を介して力を作用させて帯電させる手段、複数種類の繊維成分を摩擦して帯電させる手段など、公知の手段を適宜選択して、又は組み合わせて利用できる。
なお、本発明でいう「厚さ」とは主面1cm2当たり2gの荷重をかけた時に示す厚さをいい、主面とは面積が広い面をいう。
なお、本発明でいう「目付」とは主面における面積1m2あたりの質量をいう。
吸着剤とバインダとの質量比率は上述の範囲内であれば適宜調整するものであるが、95質量%:5質量%〜99.5質量%:0.5質量%であるのがより好ましい。
吸着剤をバインダにより担持した不織布を調製する方法は適宜選択できるが、例えば、
1.吸着剤とバインダを分散媒やバインダの溶媒へ混合し、調製した混合液を不織布へ付与した後、分散媒やバインダの溶媒を除去する方法、
2.融解したバインダを不織布へ付与し、次いで前記融解したバインダ上に吸着剤を付着させた後、バインダを冷却する方法、
3.バインダ溶液を不織布へ付与し、次いで前記バインダ溶液上に吸着剤を付着させた後、溶媒を除去する方法、
4.吸着剤とバインダを不織布へ付与し、次いでバインダを融解させた後、バインダを冷却する方法、
などを挙げることができる。
特に、端板が塵埃捕集性能およびVOC吸着性能を有する通気性素材であると、端板も濾材としての機能を発揮できることから、更に、初期圧力損失が低く、塵埃保持量に優れ、VOC吸着性能がより効率良く向上した濾材となり好ましい。このような特性を有する端板の調製方法は適宜選択するが、濾材を構成する不織布と同様にして調製した不織布を採用できる。
内容積が1m3のチャンバーを用意した。そして、一辺30mmの正方形状になるよう裁断した濾材を上流部分に備えるファンを準備し、前記ファンをチャンバー内に設置した。次いで、チャンバー内にアセトアルデヒドガスを導入して、チャンバー内のアセトアルデヒド濃度を40ppbに調整した。
15分間ファンを稼動することで、チャンバー内の気体を前記濾材に通過させた。
その後、チャンバー内の気体50LをDNPHカートリッジ(Waters社製)へ供することで、チャンバー内に残留するアセトアルデヒドをDNPHカートリッジに吸着させた。
そして、高速イオンクロマトグラフィーを用いて、DNPHカートリッジが吸着したアセトアルデヒドの質量を求めることで、15分間ファンを稼動した後のチャンバー内のアセトアルデヒド濃度(A、単位:ppb)を算出した。
以上の測定を行った結果から、下記式に基づき濾材のホルムアルデヒド吸着率(Fre、単位:%)を算出し、算出された値を濾材のVOC吸着率(単位:%)とした。
Fre={(40−A)/40}×100
なお、VOC吸着率が60%以上の濾材をVOC吸着性能に優れる濾材であると評価し、吸着率が60%未満の濾材をVOC吸着性能に劣る濾材であると評価した。
上述した(濾材のVOC吸着性能の測定方法)により算出された濾材のVOC吸着率の値を、濾材に含まれる吸着剤の質量の値で割ることで、濾材に含まれる1g/m2あたりの吸着剤が発揮したVOCの吸着性能(以降、VOC比吸着性能と称する)を評価した。なお、表1および表2では少数第二位以下を四捨五入した数値を記載している。
VOC比吸着性能が高い濾材ほど、吸着剤のVOC吸着性能が効率良く発揮された濾材である。
上述した(濾材のVOC吸着性能の測定方法)へ濾材を供したことによって、濾材から粉落ちが発生したか否かを目視で確認した。
ASHRAE 52.1−1992に規定される試験方法において、風速0.5m/secにて、初期圧力損失が200PaになるまでSAE FINE ダストを供給し、濾材の捕集効率(単位:%)及び塵埃保持量(単位:g/m2)を求めた。また、濾材の初期圧力損失(単位:Pa)は風速0.1m/secにて測定した値である。
濾材の難燃性を、米国自動車安全基準 FMVSS No.302に規定された燃焼試験に準拠して測定した。
なお、燃焼速度が100mm/min.以下の濾材を難燃性に優れる濾材であると評価し、燃焼速度が100mm/min.よりも速い濾材を難燃性に劣る濾材であると評価した。
(不織布の調製方法)
芯成分が融点248℃のポリエステル樹脂であり、鞘成分が融点72℃のポリエステル樹脂からなる複合繊維(繊度:20デシテックス、繊維長:64mm)65質量%と、芯成分が融点248℃のポリエステル樹脂であり、鞘成分が融点72℃のポリエステル樹脂からなる複合繊維(繊度:6.6デシテックス、繊維長:51mm)35質量%とを混合して、カード機を使用して繊維ウエブ(平均繊度:11.7デシテックス)を調製した。
次いで、この繊維ウエブをエアスルー型の乾燥機を用いて150℃の熱風により加熱接着処理を行った後、1mmのスリットゲージを備える水冷ロールの間を通過させて不織布(目付:150g/m2、厚さ:3mm)を調製した。
(濾材の調製方法)
二酸化ケイ素にアミノ基を有する化合物が担持されてなる吸着剤(東亞合成製、ケスモン(登録商標)KS−730、粒子形状:球状、平均粒子径:20nm)99.5質量%と、アクリレート系ラテックスバインダ(日本ゼオン株式会社製、ニポール(登録商標)LX874)0.5質量%とを水に混合して、混合液を調製した。
混合液に上述のようにして調製した不織布を浸漬した後、乾燥して水を除去することで濾材(目付:165.6g/m2、厚さ:3mm、濾材が含むバインダと吸着剤の合計質量:15.6g/m2)を調製した。なお、濾材が含む吸着剤とバインダの質量比率は、吸着剤質量:バインダ質量=99.5質量%:0.5質量%であった。
混合液に含まれている吸着剤とバインダとの質量比率を変更したこと以外は、実施例1と同様にして、実施例2−5および比較例1−2の濾材を調製した。
実施例5で使用した混合液に実施例1で調製した不織布を浸漬した後、乾燥して水を除去することで濾材(目付:180.2g/m2、厚さ:3mm、濾材が含むバインダと吸着剤の合計質量:30.2g/m2)を調製した。なお、濾材が含む吸着剤とバインダの質量比率は、吸着剤質量:バインダ質量=93質量%:7質量%であった。
実施例1で使用した吸着剤を造粒して調製した、二酸化ケイ素にアミノ基を有する化合物が担持されてなる吸着剤(平均粒子径:1μm)を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、濾材(目付:164.9g/m2、厚さ:3mm、濾材が含むバインダと吸着剤の合計質量:14.9g/m2)を調製した。なお、濾材が含む吸着剤とバインダの質量比率は、吸着剤質量:バインダ質量=99.5質量%:0.5質量%であった。
混合液に含まれている吸着剤とバインダとの質量比率を変更したこと以外は、実施例7と同様にして、実施例8−9および比較例3−4の濾材を調製した。
実施例9で使用した混合液に実施例1で調製した不織布を浸漬させた後、乾燥して水を除去することで濾材(目付:180.6g/m2、厚さ:3mm、濾材が含むバインダと吸着剤の合計質量:30.6g/m2)を調製した。なお、濾材が含む吸着剤とバインダの質量比率は、吸着剤質量:バインダ質量=93質量%:7質量%であった。
なお、実施例1−5と比較例2、ならびに、実施例7−9と比較例4の濾材にかかるVOC比吸着性能の値を比較した結果から、バインダの質量比率が高くなるにつれVOC比吸着性能の値は小さくなることが判明した。この理由として、余分なバインダが吸着剤の表面を被覆して吸着剤のVOC吸着性能が阻害されたためであると考えられた。そして、余分なバインダにより吸着剤の表面が被覆されたことは、比較例2および比較例4の濾材のVOC吸着率が低下した原因であると考えられた。
Claims (1)
- 吸着剤をバインダにより担持した不織布を備える濾材であって、
前記吸着剤は1μm以下の平均粒子径を有する粒子であり、
前記吸着剤と前記バインダとの質量比率が93質量%:7質量%〜99.5質量%:0.5質量%である、濾材。
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