JP6164389B1 - 刃先交換式切削工具 - Google Patents
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Abstract
この刃先交換式切削工具では、インサート取付座に切削インサートが着座させられてクランプネジによって挟持されることにより着脱可能に取り付けられ、クランプネジの一端部には雄ネジ部が形成され、他端部には円錐面状の外周面を有する頭部が形成され、雄ネジ部と頭部との間には、雄ネジ部側に第1の円筒部が形成されるとともに、上記頭部側に第2の円筒部が形成され、第1、第2の円筒部の間には第1の可撓部が形成されている。
Description
本発明は、工具本体の先端部に形成されたスリット状のインサート取付座に、切刃が形成されたインサート本体を有する切削インサートが着座させられて、クランプネジによって挟持されることにより着脱可能に取り付けられる刃先交換式切削工具に関する。
本願は、2015年9月24日に、日本に出願された特願2015−186854号に基づき優先権を主張し、その内容をここに援用する。
本願は、2015年9月24日に、日本に出願された特願2015−186854号に基づき優先権を主張し、その内容をここに援用する。
このような刃先交換式切削工具として、例えば特許文献1には、工具本体の先端部にスリット状に設けた中空部のインサート取付座に切削インサートを挟持し、締め付け部材で固定する刃先交換式切削工具において、工具本体のインサート取付座側面部には締め付け部材の頭部円錐面に対応する部分に、締め付け部材の中心線に対し、工具本体後端方向に偏心した円錐受け面を設け、他のインサート取付座側面部には、締め付け部材の円筒部受け穴およびその側壁とこの側壁に連なり締め付け部材の雄ねじ部に対応する雌ねじ部を設け、切削インサートの固定をインサート取付座側面部による押圧と、締め付け部材の円筒部による切削インサートのピン穴側面から工具本体の後端側への押圧とによって行い、かつ、円筒部受け穴の側壁と締め付け部材の円筒部とを当接させて取付基準面としたものが提案されている。
ここで、この特許文献1に記載された刃先交換式切削工具では、上述のように工具本体のインサート取付座側面部の締め付け部材頭部円錐面に対応する部分に、締め付け部材の中心線に対して工具本体後端方向に偏心した円錐受け面を設けることにより、締め付け部材をねじ込むことによって締め付け部材の頭部側が工具本体後端側に傾くように締め付け部材を撓ませて、締め付け部材の円筒部により切削インサートのピン穴側面を工具本体後端側に押圧している。
そして、円筒部受け穴の側壁と締め付け部材の円筒部とを当接させて取付基準面としているので、こうして締め付け部材を撓ませたときの円筒部下端と円筒部受け穴先端側側壁の間の押圧によって円筒部による切削インサートの押圧力を安定させることができ、工具使用中の様々な方向、大きさの荷重に対しても切削インサートの取付精度を高精度に保つことができる。
ところが、この特許文献1に記載された刃先交換式切削工具の締め付け部材では、この円筒部が雄ねじ部と頭部との間の全長に亙って形成されているために締め付け部材の剛性が高く、締め付け部材が撓み難いという問題があった。また、円筒部が雄ねじ部と頭部との間の全長に亙って形成されていることにより、円筒部と切削インサートのピン穴側面との接触面積も大きくなり、円筒部がピン穴側面を工具本体後端側に押圧する際の摩擦抵抗も大きくなって、締め付け部材の締め際で切削インサートがずれ動いてしまうおそれもある。
本発明は、このような背景の下になされたもので、上述のように切削インサートの押圧力の安定化を図りつつも、締め付け部材(クランプネジ)を撓ませ易くするとともに、締め際で切削インサートがずれ動くような事態を防ぐことが可能な刃先交換式切削工具を提供することを目的としている。
上記課題を解決して、このような目的を達成するために、本発明は、工具本体の先端部に形成されたスリット状のインサート取付座に、切刃が形成されたインサート本体を有する切削インサートが着座させられて、クランプネジによって挟持されることにより着脱可能に取り付けられる刃先交換式切削工具であって、上記インサート本体には、上記インサート取付座の取付座底面に当接可能な着座面と、該インサート本体を貫通して上記クランプネジが挿通される貫通孔とが形成され、上記インサート取付座の互いに対向する2つの取付座壁面のうち、一方の取付座壁面には取付基準孔とネジ孔とが形成されるとともに、他方の取付座壁面には上記ネジ孔の中心線に対して工具本体後端側に偏心した中心線を有する円錐状受け面が工具本体先端側に形成され、上記クランプネジの一端部には上記ネジ孔にねじ込まれる雄ネジ部が形成され、他端部には上記円錐状受け面に摺接可能な円錐面状の外周面を有する頭部が形成され、これら雄ネジ部と頭部との間には、上記雄ネジ部側に、外周面が上記取付基準孔の工具本体先端側の内周面に当接させられる第1の円筒部が形成されるとともに、上記頭部側には、外周面が上記インサート本体の貫通孔における工具本体後端側の内周面に当接させられる第2の円筒部が形成され、さらにこれら第1、第2の円筒部の間には、該第1、第2の円筒部よりも外径が小さい第1の可撓部が形成されていることを特徴とする。
このように構成された刃先交換式切削工具では、クランプネジをねじ込んで切削インサートを取り付ける際に、クランプネジの雄ネジ部側における第1の円筒部の外周面が上記取付基準孔の工具本体先端側の内周面に摺接させられるので、これらの内外周面が特許文献1に記載された刃先交換式切削工具における取付基準面として作用する。このため、特許文献1に記載された刃先交換式切削工具と同様に、切削インサートの押圧力を安定させて、切削加工時の様々な方向、大きさの荷重に対しても切削インサートの取付精度を高精度に維持して、高い加工精度を得ることができる。また、クランプネジの頭部側の第2の円筒部の外周面は、クランプネジの撓みによって切削インサートの貫通孔を工具本体後端側に押圧し、インサート本体の着座面をインサート取付座の取付座底面に押し付ける。
そして、さらに上記構成の刃先交換式切削工具では、このような第1、第2の円筒部の間に、これら第1、第2の円筒部よりも外径が小さい第1の可撓部が形成されており、このような第1の可撓部を形成することによってクランプネジの剛性を必要な範囲で小さくすることができるので、切削インサートを挟持して固定する際に、クランプネジを撓ませ易くすることができる。従って、少ないねじ込み力でも切削インサートを確実かつ安定的にインサート取付座に取り付けることが可能となる。
また、この第1の可撓部は第1、第2の円頭部よりも外径が小さいので、インサート本体の貫通孔と接触することはなく、すなわちクランプネジと貫通孔との接触面積を低減することができる。そして、これに伴いクランプネジが貫通孔を工具本体後端側に押圧する際の摩擦抵抗も低減するので、クランプネジの締め際にインサート本体がずれ動くような事態を防止することができる。このため、切削インサートの取付精度を一層高精度化することができ、加工精度のさらなる向上を図ることが可能となる。
さらに、上記第2の円筒部と上記頭部との間にも、上記第2の円筒部よりも外径が小さい第2の可撓部を形成することが好ましい。これにより、クランプネジをより撓み易くすることができるとともに、貫通孔との接触面積も一層低減することができる。
さらにまた、上記第1の円筒部と上記第1の可撓部との境界を、上記クランプネジをねじ込んで上記切削インサートを挟持した状態で、上記インサート取付座の上記一方の取付座壁面の延長面上、またはこの延長面から上記取付基準孔内に位置させることが好ましい。これにより、この第1の円筒部がインサート本体の貫通孔に接触することが無くなるので、例えば第1の円筒部とインサート本体の貫通孔とのクリアランスが小さい場合にクランプネジを締め込んだ際、第1の円筒部とインサート本体の貫通孔との接触によりインサート本体の取付振れ精度にばらつきが生じるのを防ぐことができる。
以上説明したように、本発明によれば、クランプネジによる切削インサートの押圧力を安定化させながらも、確実かつ高精度に切削インサートをインサート取付座に取り付けることができ、一層高精度の切削加工を図ることができる。
図1および図2は、本発明の一実施形態を示すものである。本実施形態の刃先交換式切削工具は、刃先交換式のエンドミル、特にボールエンドミルであり、すなわち軸線Oを中心とする外形略円柱状の工具本体1の先端部(図1および図2における左側部分)に形成されたスリット状のインサート取付座2に、円弧状の切刃3aが形成されたインサート本体3bを有する切削インサート3が着座させられて、クランプネジ4によって挟持される(クランプネジ4を締結することによって切削インサート3がインサート取付座2に挟持される)ことにより、切削インサート3がインサート取付座2に着脱可能に取り付けられている。このような刃先交換式切削工具は、工具本体1後端側の図示されないシャンク部が工作機械の主軸に把持されて、軸線O回りに回転させられつつ通常は軸線Oに交差する方向に送り出され、上記切刃3aにより金型等の被削物を切削加工する。なお、本実施形態においては、軸線Oの延びる方向のうち、工具本体1のシャンク部からインサート取付座2へ向かう方向を先端側(図1、2の左側)といい、インサート取付座2からシャンク部へ向かう方向を後端側(図1、2の右側)という。また、軸線Oに直交する方向を径方向という。径方向のうち軸線Oに接近する方向を径方向内方といい、軸線Oから離間する方向を径方向外方という。
また、本実施形態では、ねじサイズがM2からM8の範囲のクランプネジ4を備える刃先交換式切削工具を主に対象とするが、以降はねじサイズがM8のクランプネジ4を備える刃先交換式切削工具について述べる。なお、本発明の刃先交換式切削工具のクランプネジ4のねじサイズは上記範囲に限定されない。
また、本実施形態では、ねじサイズがM2からM8の範囲のクランプネジ4を備える刃先交換式切削工具を主に対象とするが、以降はねじサイズがM8のクランプネジ4を備える刃先交換式切削工具について述べる。なお、本発明の刃先交換式切削工具のクランプネジ4のねじサイズは上記範囲に限定されない。
切削インサート3のインサート本体3bは、超硬合金等の硬質材料によって板状に形成されて、2つの互いに平行な側面3cと、これらの側面3cに垂直な着座面3dとを備えており、上記円弧状(略半円状)の切刃3aが工具本体1の先端部外周(先端側及び径方向外方)に突出して、その軸線O回りになす回転軌跡が該軸線O上に中心を有する半球状となるようにインサート取付座2に取り付けられる。言い換えると、切刃3aがなす円弧の中心が軸線Oを通るようにインサート本体3bがインサート取付座2に取り付けられる。また、インサート本体3bには、上記切刃3aがなす円弧の略中心を通る中心線を有してインサート本体3bを貫通する断面円形の貫通孔3eが形成されていて、上記2つの側面3cに開口している。
一方、工具本体1とクランプネジ4は、インサート本体3bよりは低硬度で弾性変形可能な鋼材等の金属材料により形成されている。このうち、工具本体1の先端部は、切削インサート3が取り付けられた状態で、軸線Oとインサート本体3bの貫通孔3eの上記中心線との交点を中心とする半球状に形成されている。ただしこの工具本体1の先端部がなす半球の半径は、切刃3aの上記回転軌跡がなす半球の半径よりも僅かに小さくされている。
このような工具本体1の先端部に形成される上記インサート取付座2は、図2に示すように軸線Oとインサート本体3bの貫通孔3eの上記中心線とに直交する方向から見て、工具本体1の先端側にU字形に開口するスリット状に形成されており、すなわち互いに平行かつ軸線Oにも平行な対向する2つの取付座壁面2a、2bと、これらの取付座壁面2a、2bに垂直で軸線Oに直交する、工具本体1の先端側を向く取付座底面2cとを備えている。
2つの取付座壁面2a、2bは軸線Oから互いに等しい距離にあり、これらの取付座壁面2a、2b間の間隔は、両取付座壁面2a、2bにインサート本体3bの上記2つの側面3cをそれぞれ摺接させてインサート本体3bを嵌め入れ可能な大きさとされている。こうしてインサート本体3bを嵌め入れて上記着座面3dを取付座底面2cに当接させることにより、切削インサート3は、貫通孔3eの中心線が軸線Oと直交するようにしてインサート取付座2に着座させられる。
また、2つの取付座壁面2a、2bのうち一方の取付座壁面である第1の取付座壁面(図2における下側の取付座壁面)2aには、上述のように切削インサート3をインサート取付座2に着座させた状態で、第1の取付座壁面2aに摺接したインサート本体3bの側面3cにおける上記貫通孔3eの開口部に臨むように、取付基準孔5とネジ孔6とが形成されている。本実施形態では、取付基準孔5が取付座壁面2aに開口するように形成されるとともに、この取付基準孔5の孔底(径方向外方)にネジ孔6が形成されている。
このうち、ネジ孔6は、その中心線L1が軸線Oと直交するように延びている。また、取付基準孔5は、軸線O方向に延びる長孔状(トラック形状)をなしており、すなわち取付座壁面2aに平行な断面において、1つの円をその直径で軸線O方向に分割した2つの半円の間を、この直径と等しい幅の方形(正方形)で繋いだ形状に形成されている。これらの半円のうち工具本体1の先端側に位置する半円の中心はネジ孔6の中心線L1上に位置しており、この先端側の半円に沿う取付基準孔5の半円筒面状の内周面は工具本体1側の取付基準面5aとされる。なお、これらの半円の内径(上記1つの円の直径)は、ネジ孔6の内径(ネジ孔6のネジの谷の直径)よりも僅かに大きい。
これに対して、2つの取付座壁面2a、2bのうち他方の取付座壁面である第2の取付座壁面(図2における上側の取付座壁面)2bには、この第2の取付座壁面2bから離れて工具本体1の先端部外周側(図2における上側、径方向外方)に向かうに従い内径が漸次大きくなる凹円錐状孔7が形成されて、工具本体1の外周面に開口している。取付座壁面2bに平行な工具本体1の断面においては、この凹円錐状孔7は円形状に形成されていて、この円の内径が工具本体1の外周側(径方向外方)に向かうに従い漸次大きくなる。
さらに、この凹円錐状孔7の工具本体1の先端側の半円に沿う半円錐面は本実施形態における円錐状受け面7aとされており、この円錐状受け面7aの中心線L2は、軸線Oに直交するとともに、ネジ孔6の中心線L1よりも僅かに工具本体1の後端側に偏心している。また、中心線L2は中心線L1に平行である。なお、この凹円錐状孔7の孔底(凹円錐状孔7の径方向内方端)と第2の取付座壁面2bとの間には、取付基準孔5よりも大きい内径の長孔部7bが、凹円錐状孔7と連続して形成されている。長孔部7bは、1つの円(取付基準孔5の半円の直径より大きい直径の円)をその直径で軸線O方向に分割した2つの半円の間を、この直径と等しい幅の方形で繋いだ形状に形成されている。そして、長孔部7bの上記2つの半円の中心の中点がネジ孔6の中心線L1上に位置している。長孔部7bは、第2の取付座壁面2bに摺接したインサート本体3bの側面3cにおける貫通孔3eの開口部に臨むように、第2の取付座壁面2bに開口している。
クランプネジ4には、その一端部(図2における下側部分)に上記ネジ孔6にねじ込まれる雄ネジ部4aが形成されるとともに、他端部(図2における上側部分)には、雄ネジ部4aをネジ孔6にねじ込んでいったときに上記円錐状受け面7aと摺接可能な、他端部側に向かうに従い漸次拡径する円錐面状の外周面を有する頭部4bが形成されている。また、頭部4bの端面には、クランプネジ4をねじ込み、または緩める際にレンチ等の作業用工具と係合する係合孔4cが形成されている。
さらに、これら雄ネジ部4aと頭部4bとの間には、雄ネジ部4aが設けられた一端部側に第1の円筒部4dが形成されている。この第1の円筒部4dは、その外周面がクランプネジ4の中心線を中心とする円筒面状をなしており、その外径は、雄ネジ部4aの外径よりも僅かに大きく、取付基準孔5の上記取付基準面5aとされた先端側の内周面の内径よりは極僅かに小さく設定されている。上述のように雄ネジ部4aをネジ孔6にねじ込んでいったときに第1の円筒部4dの外周面が取付基準面5aに摺接可能とされている。本実施形態では、第1の円筒部4dと雄ネジ部4aとの間には、不完全ネジ部を含む接続部が設けられている。接続部は、雄ネジ部4aの谷径より小さいことが好ましく、後述する第1、第2の可撓部4f、4gの外径よりも小さい外径を有する。
一方、雄ネジ部4aと頭部4bとの間(第1の円筒部4dと頭部4bとの間)において頭部4bが設けられた他端部側には、クランプネジ4の中心線方向に第1の円筒部4dと間隔をあけて第2の円筒部4eが形成されている。この第2の円筒部4eの外周面もクランプネジ4の中心線を中心とする円筒面状をなしていて、その外径は第1の円筒部4dと等しく設定されている。また、クランプネジ4の中心線方向における第2の円筒部4eの長さは、本実施形態では第1の円筒部4dよりも長く設定されている。なお、クランプネジ4の中心線方向における第1の円筒部4dの長さの好ましい範囲は、クランプネジ4のねじサイズによって変わる。例えば本実施形態のようにクランプネジ4のねじサイズがM8の場合、第1の円筒部4dの上記長さが第2の円筒部4eの長さの10〜50%であることが好ましく、20〜40%であることが好ましいが、これに限定されない。
そして、これら第1、第2の円筒部4d、4eの間には、第1、第2の円筒部4d、4eよりも外径が小さい第1の可撓部4fが形成されている。さらに、本実施形態では、第2の円筒部4eとクランプネジ4の頭部4bとの間にも、第2の円筒部4eよりも外径が小さい第2の可撓部4gが形成されている。これら第1、第2の可撓部4f、4gも、その外周面がクランプネジ4の中心線を中心とした円筒面状をなしており、本実施形態ではその外径(直径)は互いに等しく、第1、第2の円筒部4d、4eとの外径(直径)の差は例えば0.08〜0.5mm程度とされている。なお、本実施形態では、クランプネジ4の中心線方向における第2の可撓部4gの長さは第1の可撓部4fよりも長く設定されている。
また、第1の円筒部4dと第1の可撓部4fとの境界は、クランプネジ4をねじ込んで(クランプネジ4の雄ネジ部4aをネジ孔6に螺合させて)切削インサート3をインサート取付座2に挟持した状態で、図2に示すようにこのインサート取付座2の第1の取付座壁面2aの延長面上、またはこの延長面から上記取付基準孔5内に位置している。さらに、本実施形態では、同じくクランプネジ4をねじ込んで切削インサート3をインサート取付座2に挟持した状態で、クランプネジ4の中心線方向における第2の円筒部4eの中心は、インサート本体3bの厚さの方向の中心、すなわち工具本体1の上記軸線O上に略位置するように設定されている。以上のように、本実施形態のクランプネジ4の雄ネジ部4aと頭部4bとの間には、クランプネジ4の中心軸方向において、接続部、第1の円筒部4d、第1の可撓部4f、第2の円筒部4e、および第2の可撓部4fが雄ネジ部4a側から順に連続して設けられている。
なお、インサート本体3bの貫通孔3eは、上述のように着座面3dを取付座底面2cに当接させてインサート本体3bをインサート取付座2に着座させた状態で、雄ネジ部4aをネジ孔6にねじ込み始めたときには、第1、第2の円筒部4d、4eの外周面と貫通孔3eの工具本体1後端側部分の内周面との間に極僅かな間隔があけられるように、貫通孔3eの中心線の位置と内径とが設定されている。本実施形態においては、貫通孔3eの内径は取付基準孔5の内径と略同一である。
このような刃先交換式切削工具は、上述のように切削インサート3を、そのインサート本体3bの貫通孔3eの中心線が軸線Oと直交するようにインサート取付座2に嵌め入れて着座面3dを取付座底面2cに当接させることにより着座させ、次いで凹円錐状孔7からクランプネジ4を貫通孔3eに挿通して雄ネジ部4aをネジ孔6にねじ込むことにより組み立てられる。
雄ネジ部4aをネジ孔6にねじ込み始めたときには、クランプネジ4の中心線はネジ孔6の中心線L1と同軸であるが、クランプネジ4の頭部4bの外周面が凹円錐状孔7の円錐状受け面7aに摺接すると、この円錐状受け面7aの中心線L2はネジ孔6の中心線L1よりも僅かに工具本体1の後端側に偏心しているので、クランプネジ4は頭部4bが工具本体1の後端側に倒れ込むように撓み始める。
そして、このようにクランプネジ4が撓むと、その第2の円筒部4eのうち他端部側(頭部4b側)の外周面が切削インサート3の貫通孔3eの工具本体1後端側の内周面に当接してインサート本体3bをインサート取付座2の取付座底面2cに押圧する。また、これと同時に、クランプネジ4の頭部4bが円錐状受け面7aに押し付けられることによりインサート取付座2の2つの取付座壁面2a、2b間の間隔が狭められてインサート本体3bの2つの側面3cが押圧され、これらの押圧によって切削インサート3がインサート取付座2に挟持されて固定される。
ここで、クランプネジ4が撓み始めるときには、第1の円筒部4dの外周面が取付基準孔5の工具本体1先端側の取付基準面5aに摺接しているので、クランプネジ4は、この第1の円筒部4dの外周面における取付基準面5aと摺接した部分を支点として頭部4b側が工具本体1後端側に傾くように撓んでゆく。すなわち、この第1の円筒部4dの取付基準面5aと摺接した部分がクランプネジ4側の取付基準面として作用し、工具本体1側の取付基準面5aによってクランプネジ4が工具本体1の先端側と外周側(径方向外方)とにおいて拘束されるので、切削加工時に切刃3aから切削インサート3に如何なる方向から荷重が作用しても切削インサート3を強固にインサート取付座2に保持することができる。
さらに上記構成の刃先交換式切削工具では、このクランプネジ4の第1、第2の円筒部4d、4eの間に、これら第1、第2の円筒部4d、4eよりも外径が小さい第1の可撓部4fが形成されている。このため、この第1の可撓部4fにおいては第1、第2の円筒部4d、4eよりも必要な範囲で剛性を小さくすることができるので、クランプネジ4を撓み易くすることができる。このような効果を十分に得ることのできるクランプネジ4の中心線方向における第1の可撓部4fの長さは、クランプネジ4のねじサイズによって変わる。例えば本実施形態のようにクランプネジ4のねじサイズがM8の場合、第1の可撓部4fの上記長さが第1の円筒部4dの長さの100〜500%であることが好ましく、200〜400%であることが好ましいが、これに限定されない。
しかも、この第1の可撓部4fは、上述のようにクランプネジ4の撓みの支点となる第1の円筒部4dに隣接しているので、クランプネジ4を一層撓み易くすることができる。従って、係合孔4cにレンチ等の作業用工具を係合させてクランプネジ4を回転することにより雄ネジ部4aをネジ孔6にねじ込む際のねじ込み力を小さく抑えることができるとともに、クランプネジ4を確実に撓ませて切削インサート3を安定的にインサート取付座2に固定することが可能となる。
また、この第1の可撓部4fは、インサート本体3bの貫通孔3eに当接する第2の円筒部4eよりも外径が小さいので貫通孔3eと接触することはなく、従ってクランプネジ4と貫通孔3eとの接触面積は小さくなる。このため、クランプネジ4が貫通孔3eに当接してインサート本体3bを工具本体1の後端側に押圧する際のクランプネジ4と貫通孔3eとの間の摩擦抵抗も小さく抑えることができるので、切削インサート3が完全に固定される直前のクランプネジ4の締め際においてインサート本体3bがずれ動いてしまうのを防ぐことができ、切削インサート3を一層高精度にインサート取付座2に取り付けて加工精度の向上を図ることができる。
さらに、本実施形態では、クランプネジ4の第2の円筒部4eと頭部4bとの間にも、第2の円筒部4eよりも外径の小さな第2の可撓部4gが形成されている。従って、この第2の可撓部4gによってクランプネジ4をさらに撓み易くすることができるとともに、インサート本体3bの貫通孔3eとの接触面積を一層小さくして摩擦抵抗も一層低減することができる。
しかも、このようにクランプネジ4の他端側(頭部4b側)の第2の円筒部4eと頭部4bとの間に貫通孔3eと接触しない第2の可撓部4gが形成されることにより、雄ネジ部4aと頭部4bとの間の全体が貫通孔3eと接触する円筒部とされている場合に比べ、クランプネジ4の撓みによって第2の円筒部4eの外周面が貫通孔3eと接触する位置を、クランプネジ4の取付基準面となる第1の円筒部4dの一端部側(雄ネジ部4a側)外周面に近づけることができる。従って、クランプネジ4の撓み量が同じでも、この一端部側外周面を支点として第2の円筒部4eが貫通孔3eに接触する位置に作用する押圧力を強くすることができ、さらに強固に切削インサート3をインサート取付座2に固定することが可能となる。
また、本実施形態では、クランプネジ4をねじ込んで切削インサート3をインサート取付座2に挟持した状態で、クランプネジ4の中心線方向における第2の円筒部4eの中心が、インサート本体3bの厚さの方向の中心に略位置するように設定されている。このため、上記インサート本体3bの厚さ方向(図2の左右方向)においてバランスよく切削インサート3を押圧して、さらに安定的にインサート取付座2に固定することができる。なお、クランプネジ4の中心線方向における第2の円筒部4eの長さの好ましい範囲は、クランプネジ4のねじサイズによって変わる。例えば本実施形態のようにクランプネジ4のねじサイズがM8の場合、第2の円筒部4eの上記長さがインサート本体3bの厚さ(2つの側面3c間の距離)の30〜70%であることが好ましく、40〜60%であることがより好ましいが、これに限定されない。
ただし、例えばクランプネジ4の外径が元々小さくて、第1の可撓部4fだけで十分にクランプネジ4を撓ませたり、貫通孔3eとの接触面積を低減したりすることができるような場合には、この第2の可撓部4gは形成されずに、第2の円筒部4eがそのまま他端側に延びて頭部4bに連なっていてもよい。また、これとは逆に、クランプネジ4の雄ネジ部4aと頭部4bとの間に3つ以上の可撓部が形成されていてもよい。
一方、本実施形態では、第1の円筒部4dと第1の可撓部4fとの境界が、クランプネジ4をねじ込んで切削インサート3をインサート取付座2に挟持した状態で、インサート取付座2の第1の取付座壁面2aの延長面上、またはこの延長面から取付基準孔5内に位置する。このため、第1の円筒部4dは貫通孔3eと接触することがなくなる。
そして、クランプネジ4をねじ込んでいったときに、貫通孔3eと第1の可撓部4fとの間にはクリアランスが確保されるので、第1の可撓部4fの外周面のうち工具本体1先端側を向く部分が、貫通孔3eに接触するのを回避することができる。従って、この接触回避により、インサート本体3bが貫通孔3eを中心に回転して取付振れ精度にばらつきが生じてしまうのも防ぐことができる。
クランプネジ4を適切に撓ませて上述の効果を十分に得ることのできる凹円錐状孔7と中心線L2と内周面とのなす角は、クランプネジ4のねじサイズによって変わる。例えば本実施形態のようにクランプネジ4のねじサイズがM8の場合、この角を10〜40°とすることが好ましく、15〜35°とすることがより好ましい。さらに、クランプネジ4をねじ込んで切削インサート3をインサート取付座2に挟持した状態において、円錐状受け面7aとクランプネジ4の頭部4bの外周面とが接触する領域の凹円錐状孔7の中心線L2方向における長さの好ましい範囲もクランプネジ4のねじサイズによって変わる。例えば本実施形態のようにクランプネジ4のねじサイズがM8の場合、この長さがクランプネジ4の長さの5〜45%であることが好ましく、15〜35%であることがより好ましい。
なお、本実施形態では、切削インサート3の切刃3aの回転軌跡が半球状をなす刃先交換式のボールエンドミルに本発明を適用した場合について説明したが、同じ刃先交換式エンドミルでも、例えば切刃が、軸線Oに略垂直な方向に延びる底刃と、この底刃の外周端(径方向外方端)に連なって軸線O回りの回転軌跡が軸線Oを中心とする円筒面状をなす外周刃とから構成されたスクエアエンドミルや、これら底刃と外周刃が交差するコーナ部に円弧状のコーナ刃が形成されたラジアスエンドミルに本発明を適用することも可能である。さらに、エンドミル以外の切削工具でも、例えば刃先交換式のドリルに本発明を適用してもよい。
次に、上述した第1の円筒部4dと第1の可撓部4fとの境界が、クランプネジ4をねじ込んで切削インサート3をインサート取付座2に挟持した状態で、インサート取付座2の第一の取付座壁面2aの延長面上、またはこの延長面から取付基準孔5内に位置していることによる効果について、実施例を挙げて説明する。本実施例では、上記実施形態に基づいたクランプネジ4を製作し、このクランプネジ4によって工具本体1のインサート取付座2に切削インサート3を最初に取り付けた際のインサート本体3bの切刃3aの位置精度を測定して基準値とし、次いでクランプネジ4を緩めて切削インサート3を取り外した後に再び切削インサート3を取り付けるといった操作を1サイクルとして、10サイクル目、100サイクル目、200サイクル目の切削インサート3の取付振れ精度を測定して基準値と比較した。
ここで、本実施例におけるクランプネジ4は、雄ネジ部4aがM8×0.75mmの2級ネジ、第1、第2の円筒部4d、4eの直径は8mm、第1、第2の可撓部4f、4gの直径は7.7mm、頭部4bの最大径は12mm、最小径は7.7mmであった。クランプネジ4の中心線方向における第1の円筒部4dの長さは1mm、第1の可撓部4fの長さは3.08mm、第2の円筒部の長さは3.6mm、第2の可撓部4gの長さは1.6mm、頭部4bの長さは7.9mmであった。クランプネジ4の中心線方向に対する頭部4bの円錐状の外周面の傾斜角度は20°であった。また、切削インサート3は、インサート本体3bの2つの側面3cの間の厚さが7.2mm、円弧状の切刃3aの半径が15mm、貫通孔3eの直径は実測値で8.008mmであった。工具本体1の取付基準面5aは上述のトラック形状を有し、このトラック形状を形成する半円の直径も実測値で8.008mmであった。そして、クランプネジ4をねじ込んで切削インサート3をインサート取付座2に挟持した状態で、クランプネジ4の第1の円筒部4dと第1の可撓部4fとの境界は、インサート取付座2の第1の取付座壁面2aの延長面から僅かに取付基準孔5内に位置していた。
なお、切削インサート3の取付振れ精度として、クランプネジ4によって切削インサート3を最初に取り付けた際の図1における円弧状の切刃3aの中心を通り工具本体1の軸線Oに垂直な直線上における該切刃3aの両端の間隔を基準値とし、10サイクル目、100サイクル目、200サイクル目における上記間隔の基準値との差を測定した。また、上記実施例に対する比較例として、特許文献1に記載された刃先交換式切削工具の締め付け部材のように、雄ネジ部と頭部との間の全体が直径8mmの単一の円筒部とされたクランプネジを用いて、上記と同じ切削インサート3を挟持した後に取り外すといったサイクルを繰り返し、10サイクル目、100サイクル目、200サイクル目の上記間隔を測定し、基準値となる1サイクル目の上記間隔との差を、切削インサート3の取付振れ精度とした。
その結果、比較例においては、10サイクル目における基準値との差は1μm、100サイクル目における差は12μm、200サイクル目における差は11μmであって、切削インサート3の取り付け、取り外しの操作を繰り返すことにより取付振れ精度にばらつきが生じていたことが認められた。これに対して、実施例においては、10サイクル目における基準値との差は0μmでばらつきは認められず、100サイクル目および200サイクル目でも基準値との差は1μmであって、取付振れ精度のばらつきが抑えられていることが分かった。
本発明の刃先交換式切削工具によれば、切削インサートの押圧力を安定化しつつクランプネジを撓ませ易くし、締め際で切削インサートがずれ動くのを防ぐことができる。
1 工具本体
2 インサート取付座
2a、2b 取付座壁面
2c 取付座底面
3 切削インサート
3a 切刃
3b インサート本体
3c 側面
3d 着座面
3e 貫通孔
4 クランプネジ
4a 雄ネジ部
4b 頭部
4c 係合孔
4d 第1の円筒部
4e 第2の円筒部
4f 第1の可撓部
4g 第2の可撓部
5 取付基準孔
5a 取付基準面
6 ネジ孔
7 凹円錐状孔
7a 円錐状受け面
7b 長孔部
O 工具本体1の軸線
L1 ネジ孔6の中心線
L2 円錐状受け面7aの中心線
2 インサート取付座
2a、2b 取付座壁面
2c 取付座底面
3 切削インサート
3a 切刃
3b インサート本体
3c 側面
3d 着座面
3e 貫通孔
4 クランプネジ
4a 雄ネジ部
4b 頭部
4c 係合孔
4d 第1の円筒部
4e 第2の円筒部
4f 第1の可撓部
4g 第2の可撓部
5 取付基準孔
5a 取付基準面
6 ネジ孔
7 凹円錐状孔
7a 円錐状受け面
7b 長孔部
O 工具本体1の軸線
L1 ネジ孔6の中心線
L2 円錐状受け面7aの中心線
Claims (3)
- 工具本体の先端部に形成されたスリット状のインサート取付座に、切刃が形成されたインサート本体を有する切削インサートが着座させられて、クランプネジによって挟持されることにより着脱可能に取り付けられる刃先交換式切削工具であって、
上記インサート本体には、上記インサート取付座の取付座底面に当接可能な着座面と、該インサート本体を貫通して上記クランプネジが挿通される貫通孔とが形成され、
上記インサート取付座の互いに対向する2つの取付座壁面のうち、一方の取付座壁面には取付基準孔とネジ孔とが形成されるとともに、他方の取付座壁面には上記ネジ孔の中心線に対して工具本体後端側に偏心した中心線を有する円錐状受け面が工具本体先端側に形成され、
上記クランプネジの一端部には上記ネジ孔にねじ込まれる雄ネジ部が形成され、他端部には上記円錐状受け面に摺接可能な円錐面状の外周面を有する頭部が形成され、
これら雄ネジ部と頭部との間には、上記雄ネジ部側に、外周面が上記取付基準孔の工具本体先端側の内周面に当接させられる第1の円筒部が形成されるとともに、上記頭部側には、外周面が上記インサート本体の貫通孔における工具本体後端側の内周面に当接させられる第2の円筒部が形成され、さらにこれら第1、第2の円筒部の間には、該第1、第2の円筒部よりも外径が小さい第1の可撓部が形成されていることを特徴とする刃先交換式切削工具。 - 上記第2の円筒部と上記頭部との間には、上記第2の円筒部よりも外径が小さい第2の可撓部が形成されていることを特徴とする請求項1に記載の刃先交換式切削工具。
- 上記第1の円筒部と上記第1の可撓部との境界は、上記クランプネジをねじ込んで上記切削インサートを挟持した状態で、上記インサート取付座の上記一方の取付座壁面の延長面上、またはこの延長面から上記取付基準孔内に位置していることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の刃先交換式切削工具。
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