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JP6028016B2 - リナグリプチンベンゾエートの多形体 - Google Patents

リナグリプチンベンゾエートの多形体 Download PDF

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Description

本発明は、リナグリプチンベンゾエートの新規な多形体、およびこの調製方法に関する。更に、本発明は薬剤調製用の新規な多形体の使用に関する。加えて、本発明は、有効量のリナグリプチンベンゾエートの新規な多形体を含む医薬組成物に関する。更に、本発明は、有効量のリナグリプチンベンゾエートおよびメトホルミンの新規な多形体を含む医薬品の組み合わせに関する。
リナグリプチンは、8−[(3R)−3−アミノ−1−ピペリジニル]−7−(2−ブチニ−1−イル)−3,7−ジヒドロ−3−メチル−1−[(4−メチル−2−キナゾリニル)メチル]−1H−プリン−2,6−ジオンとも呼ばれ、ジペプチジルペプチダーゼIV阻害剤として作用し、2型糖尿病治療のため1日1回の経口投与に用いられることを意図している。2010年度第3四半期に米国、EUおよび日本において糖尿病治療用リナグリプチンの認可申請を行い、2011年度第3四半期にリナグリプチンはFDAの承認を得た。
リナグリプチンの化学構造は、次式Iで表される。
Figure 0006028016
EP1532149B1は、化合物リナグリプチン自体、およびその無機酸もしくは有機酸を有する生理的に許容可能な塩を開示している。
WO2007/128721A1は、リナグリプチン遊離塩基の結晶形A、B、C、DおよびEについて記述している。
WO2010/072776A1は、リナグリプチンの結晶性酸付加塩について記述している。前記特許出願においてリナグリプチンベンゾエートは、X線粉末ディフラクトグラム、および融解点が約155℃(定義済み条件にてDSCに準じて測定された値)であることで特徴づけられる。
多型は、1つの分子に対してそれぞれ異なる結晶形が生ずることに関する現象である。同じ分子に対して結晶構造が異なり、および融解点、XRPDスペクトルおよびIRスペクトルなどの物性が変動する、幾つかの異なる結晶形も存在する場合もある。これらの多形体は、結晶を構成する化合物の分子式を共有する互いに異なる固体型であるが、互いに異なる有利な物性を有する場合もあり、原薬(流動性など)および製剤(流動性など)を処理しおよび/または製造する能力のほか、製剤安定性、溶解および生物学的利用能に対して直接効果を有し得る。
これらの互いに異なる物性が同一化合物のそれぞれ異なった多形体に備わっているため、いろいろな多形体を、医薬製剤などの特定の目的にいくぶん有効なものにできる。
本発明者らは、WO2010/072776A1のリナグリプチンベンゾエートの結晶形態が非常に吸湿性であることを見出した。しかしながら、湿式造粒法などの一般的な医薬品加工条件下では吸湿性化合物を扱いづらいため、例えば、加工中に化学分解または多型形質転換を回避するためには特殊な技術および機器が要る。更にまた、吸湿性化合物およびこれらを含有している医薬組成物は、特殊なコンテインメントにパッケージングされていない限り、保管中に適切な製品品質を確保できない場合が多い。
リナグリプチンベンゾエートの結晶形は、湿式造粒法などの有利な処方条件において加工性に優れることから、リナグリプチン含有の医薬組成物の製造が容易である。従って、公知のリナグリプチンベンゾエート形態Iの問題の1つ以上を回避する目的で、固体型リナグリプチンが必要とされている。
欧州特許出願公開第1532149号明細書 国際公開第2007/128721号 国際公開第2010/072776号 欧州特許出願公開第2023902号明細書
本発明の発明者らは、リナグリプチンベンゾエートの新規な多型形態を発見した。この多型形態は、以降リナグリプチンベンゾエート形態IIと呼ばれるもので、WO2010/072776A1に記載の結晶性リナグリプチンベンゾエートに比べて吸湿性が有意に低い。このため、湿式造粒法などの典型的な医薬品加工条件下で、WO2010/072776A1に記載のリナグリプチンベンゾエート(以降リナグリプチンベンゾエート形態Iと呼ばれる。)よりも扱い易い。特に、リナグリプチンベンゾエート形態IIによって、約0から90%RHの相対湿度を有する雰囲気中での作動などの標準医薬品処理条件を使用できる。更に、リナグリプチンベンゾエート形態IIは、保管を行っている間に適切な製品品質が確保されるように特殊なコンテインメントにパッケージングされないようにする必要がある。
従って本発明は、リナグリプチンベンゾエートの新規な多形体に関する。この新規な多形体は、以降リナグリプチンベンゾエート形態IIとする。リナグリプチンベンゾエート形態IIは、8.0±0.2°、8.7±0.2°、10.4±0.2°、12.9±0.2°、13.8±0.2°および17.4±0.2°の2θ角度における特性ピークを含むXRPDパターンを示すことにより更に特徴づけることができる。
更なる実施態様において、本発明はまた、
a)加熱によりリナグリプチンベンゾエートをアセトニトリル中に溶解する段階と、
b)場合によって前記溶液を濾過する段階と、
c)35℃超で結晶化の開始を誘導するため、前記溶液をゆっくり冷却する段階と、
d)得られた結晶を単離する段階と、
e)場合によって前記結晶を乾燥させる段階
とを含む、リナグリプチンベンゾエート形態IIを調製する方法にも関する。
別の実施形態において、本発明は薬剤調製用リナグリプチンベンゾエート形態IIの使用に関する。
加えて、本発明は有効量のリナグリプチンベンゾエート形態IIを含有する医薬組成物に関する。
本発明に関して下記の略語は、別段明言しない限り、示された意味を有する。
XRPD:粉末X線回折
FTIR:フーリエ変換赤外線スペクトル
r.hまたはRH:相対湿度
r.t.:室温
DSC:示差走査熱量測定
ΔmTR:サンプルの重量変更(カールフィッシャー滴定によって定量される。)
リナグリプチンベンゾエート形態IIのX線粉末回折(XRPD)パターンを示す。 リナグリプチンベンゾエート形態IIのフーリエ変換赤外線スペクトル(FTIR)を示す。 リナグリプチンベンゾエート形態IIの示差走査熱量測定(DSC)曲線を示す。 リナグリプチンベンゾエート形態IIの湿気等温収着曲線を示す。 WO2010/072776A1のリナグリプチンベンゾエート形態Iの湿気等温収着曲線を示す。
第1の態様において本発明は、リナグリプチンベンゾエートの新規および有利な結晶形態(以降、リナグリプチンベンゾエート形態IIとも呼ばれる。)に関する。
リナグリプチンベンゾエート形態IIは、8.0±0.2°、8.7±0.2°、10.4±0.2°、12.9±0.2°、13.8±0.2°および17.4±0.2°の2θ角度における特性ピークを含むXRPDパターンを示すことにより更に特徴づけることができる。
好ましくは、リナグリプチンベンゾエート形態IIは、下表に示すような特性ピークおよび強度を含むXRPDパターンにより特徴づけることができる。
Figure 0006028016
より好ましくは、5.2±0.2°、6.7±0.2°、12.4±0.2°、15.7±0.2°、18.8±0.2°、20.3±0.2°、22.2±0.2°、23.3±0.2°および24.5±0.2°の2θ角度にて更なるピークを見つけることができる。
更により好ましくは、リナグリプチンベンゾエート形態IIは、下表に示すような特性ピークおよび強度を含むXRPDパターンにより特徴づけることができる。
Figure 0006028016
リナグリプチンベンゾエート形態IIの例証的なXRPDパターンを図1に示す。
リナグリプチンベンゾエート形態IIは、1701±2cm−1、1663±2cm−1、1134±2cm−1、760±2cm−1および724±2cm−1における特性ピークを含むFTIRスペクトルで更に特徴づけることができる。好ましくは、波数2925±2cm−1、2841±2cm−1、1600±2cm−1、1566±2cm−1、1499±2cm−1、1434±2cm−1、1376±2cm−1、1346±2cm−1、1285±2cm−1、1203±2cm−1、1159±2cm−1、1066±2cm−1、1026±2cm−1、982±2cm−1、942±2cm−1、902±2cm−1、859±2cm−1、835±2cm−1、672±2cm−1および609±2cm−1の波長において更なるピークを見つけることができる。例証的なFTIRスペクトルを図2に示す。
リナグリプチンベンゾエート形態IIは、示差走査熱量計分析によって更に詳述できる。DSC曲線は、開始温度が約193℃の単一の溶融吸熱を示す。例証的なDSC曲線を図3に示す。
リナグリプチンベンゾエート形態IIは、図4と図5の比較からすぐに理解できる通り、WO2010/072776A1の結晶性リナグリプチンベンゾエートよりも吸湿性が有意に低く、そのため、医薬製剤、例えば、リナグリプチンを含む湿式造粒法用途、に極めて適している。そのうえ、リナグリプチンベンゾエート形態IIは、相対湿度の高い条件で保管した時に、形態Iより安定性が高い。
本発明はまた、リナグリプチンベンゾエート形態IIを調製するための方法にも関する。リナグリプチンベンゾエート形態IIは
a)加熱により例えば50℃から82℃でリナグリプチンベンゾエートをアセトニトリル中に溶解する段階と、
b)場合によって前記溶液を濾過する段階と、
c)35℃超で結晶化を誘導するため、前記溶液をゆっくり冷却する段階と、
d)得られた結晶を単離する段階と、
e)場合によって前記結晶を乾燥させる段階
とを含む方法により調製できる。
段階a)においては、いかなる形態のリナグリプチンベンゾエートも、開始材料、例えば、アモルファスリナグリプチンベンゾエート、結晶性リナグリプチンベンゾエート、またはアモルファスと結晶性リナグリプチンベンゾエートとの混合物として使用できる。開始材料として適したリナグリプチンベンゾエートの結晶形態は、例えば、WO2010/072776A1に記載されている。開始材料であるリナグリプチンベンゾエートは、アセトニトリルに可溶化できる。概して、段階a)後に約10g/lから20g/lの範囲に及ぶリナグリプチンベンゾエート濃度を達成することを目標とする。溶解温度は、アセトニトリルに添加されたリナグリプチンベンゾエートの初期量、ひいては溶解後に達成された濃度に影響されて変化し、約63℃(例えば、アセトニトリル1リットルあたり10gの固体リナグリプチンベンゾエートを添加した場合、溶解後に達成される濃度は約10g/L)から約82℃(例えば、アセトニトリル1リットルあたり20gの固体リナグリプチンベンゾエートを添加した場合、溶解後に達成される濃度は約20g/L)の範囲となることもあり得る。得られた溶液を、場合によって、段階b)として濾過することにより、未溶解の粒子を除去し得る。
段階c)において、得られた溶液を約−70から50℃まで、好ましくは約−40から約40℃まで、より好ましくは約−20から約25℃まで、最も好ましくは25℃までゆっくり冷却することによって、リナグリプチンベンゾエート形態IIの晶出が開始され得る。ここにおいて、ゆっくり冷却するとは、冷却速度が≦−1℃/min、好ましくは−1℃/minから−0.1℃/min、より好ましくは−0.8℃/minから−0.4℃/minであることを意味する。
冷却段階の後、得られた懸濁液を約6から72時間、より好ましくは約6から48時間、最も好ましくは約6から24時間、更に撹拌してもよい。
この後、溶媒の濾過、遠心分離または蒸発などの任意の従来の方法で結晶を単離してもよい。
最後に、得られたリナグリプチンベンゾエート形態IIは、減圧下にて好ましくは約25から100℃、より好ましくは約40から90℃の温度範囲で乾燥してもよく、最も好ましくは約60から80℃の温度範囲で、乾燥させるのに充分な時間、例えば好ましくは約1から72時間、より好ましくは約6から48時間、最も好ましくは約12から24時間の範囲で材料を乾燥させることが好ましい。
本方法によれば、リナグリプチンベンゾエート形態IIは、球顆状の粒子として得られる。このような粒子は、光学顕微鏡で約100xの拡大倍率にて中央から放射するニードルで球状塊の外観を示す。球顆状粒子の外径は典型的に、約10から100μm、より好ましくは約30から80μm、最も好ましくは約40から60μmの範囲である。
驚くべきことに、本発明のリナグリプチンベンゾエート形態IIは、一貫して35℃を超える結晶化温度においてのみ得られる。つまり、この温度がゆっくり低下するにつれて溶液中の固体粒子の第1の可視的な外観に基づいて検出できるように、35℃を超える温度で結晶化が始まる。典型的に、いつ結晶化が始まるかは当業者に極めて明らかであり、従って、結晶化温度は容易に定量できる。結晶化の開始温度が低い場合は、一貫してリナグリプチンベンゾエート形態IIにはならない。
結晶化が約35℃超で最適に行われるようにするには、リナグリプチンベンゾエート濃度が10g/lの溶液を適用し、冷却速度を≦−1℃/minとする必要がある。いったん結晶化が約35℃超で開始された後は、リナグリプチンベンゾエート形態IIが得られ、更なる冷却時にも安定した状態に維持される。
驚くべきことに、本発明のリナグリプチンベンゾエート形態IIはWO2010/072776A1のリナグリプチンベンゾエートよりも吸湿性が低い。形態IIは、約25℃および約3から90%の相対湿度にて水分含有率が約2.0重量%だけであるのに対して、WO2010/072776A1のリナグリプチンベンゾエートは約25℃および約3から90%の相対湿度にて水分含有率が約9.5重量%である。ここにおける重量%は、総重量に対する水の重量%を意味する。
そのうえ、WO2010/072776A1のリナグリプチンベンゾエート形態IIは、湿式造粒法などの医薬品加工条件下で形態Iよりも扱い易い。例えば、粒状化液体が、例えば水中のコプロビドン(copovidone)などの結合剤溶液、およびリナグリプチンベンゾエートと希釈剤の予備混合物(マンニトールなど)である場合、アルファ化スターチなどの崩壊剤を湿らせ、続いて粒状化液体によって粒状化されると、本発明のリナグリプチンベンゾエート形態IIは形態Iよりも有利になる。更にまた、リナグリプチンベンゾエート形態IIは、加工時に乾式造粒法などの特殊な技術および/または特殊な機器適用する必要がないだけでなく、保管時に形態IIまたは形態IIを含む医薬組成物の特殊なパッケージングの必要性も呈さない。
上述した本発明のリナグリプチンベンゾエート形態IIは、本発明に従い、2型糖尿病および関連する疾病治療用の様々な医薬品処方に有利に使用できる。従って、本発明はまた、上述したリナグリプチンベンゾエート形態IIを含む医薬組成物、および医薬上許容される担体に関する。
本発明は好ましくは、リナグリプチンベンゾエートの95%超がリナグリプチンベンゾエート形態IIとして安定して存在し、より好ましくはリナグリプチンベンゾエート形態IIがリナグリプチンベンゾエートの結晶形態のみ検知できる医薬組成物に関する。形態Iなどのリナグリプチンベンゾエートの他の多型形態の欠如は、任意の結晶性リナグリプチンベンゾエートの取得済みXRPDを、例えば、実施例1から得られる形態IIおよび図1に示す形態IIのXRPD(この比較で100%形態のXRPDとみなされるもの)と比較することによって試験できる。
本明細書で定義されている「安定して存在する」とは、医薬組成物を180日間保管した後でも、また好ましくは3年間保管した後でも、リナグリプチンベンゾエート形態IIとして指定されたリナグリプチンベンゾエートの結晶形態が、当初に医薬組成物に含まれており、指示された期間にわたって保管した後も依然としてリナグリプチンベンゾエート形態IIとして存在することを意味する。
リナグリプチンベンゾエート形態IIを含む本発明の医薬組成物は、1つ以上の医薬上許容される賦形剤を更に含み得る。このような賦形剤は、好ましくは充填剤、甘味料、緩衝剤、滑走剤、流れ剤、香料、潤滑性、保存料、界面活性剤、湿潤剤、結合剤、崩壊剤および濃化剤からなる群から選択される。医薬組成物の分野において公知の他の賦形剤も使用できる。更にまた、医薬組成物は、上述の群のメンバーのいずれか1つにも入る賦形剤2種以上の組み合わせから構成され得る。
リナグリプチンベンゾエート形態IIを含む本発明の医薬組成物に係る好適な賦形剤の例は、例えば、本明細書において参照により組み込まれるEP2023902B1の段落[0005]から[0011]に記載されている。
EP2023902B1の段落[0005]および[0006]には、リナグリプチンベンゾエート形態IIを含む本発明の医薬組成物に好適な希釈液の例が開示されている。本発明の医薬組成物にも使用できる好ましい希釈液は、例えば、セルロース粉末、第二リン酸カルシウム無水物、第二リン酸カルシウム二水和物、エリスリトール、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、マンニトール、アルファ化スターチ、低置換度ヒドロキシプロピルセルロースまたはキシリトールであるが、好ましくはマンニトールおよびアルファ化スターチである。
EP2023902B1の段落[0007]には、リナグリプチンベンゾエート形態IIを含む本発明の医薬組成物に係る潤滑剤の例が開示されている。本発明の医薬組成物にも使用できる好ましい潤滑剤は、例えば、タルク、ポリエチレングリコール、ベヘン酸カルシウム、ステアリン酸カルシウム、硬化ヒマシ油またはステアリン酸マグネシウムであるが、好ましくはステアリン酸マグネシウムである。
EP2023902B1の段落[0008]には、リナグリプチンベンゾエート形態IIを含む本発明の医薬組成物に係る結合剤の例が開示されている。本発明の医薬組成物のためにも使用できる好ましい結合剤は、例えば、コプロビドン(copovidone)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ポリビニルピロリドン、グレゼラチナイズド(gregelatinized)スターチ、低置換度ヒドロキシプロピルセルロースであるが、好ましくはコプロビドン(copovidone)およびアルファ化スターチである。
EP2023902B1の段落[0010]には、リナグリプチンベンゾエート形態IIを含む本発明の医薬組成物に係る崩壊剤の例が開示されている。本発明の医薬組成物にも使用できる好ましい崩壊剤は、例えば、トウモロコシスターチ、クロスポビドン、低置換度ヒドロキシプロピルセルロースまたはアルファ化スターチであるが、好ましくはトウモロコシスターチである。
EP2023902B1の段落[0011]には、リナグリプチンベンゾエート形態IIを含む本発明の医薬組成物に係る任意選択の滑走剤の例が開示されている。本発明の医薬組成物にも使用できる任意選択の滑走剤は、シリコンジオキシドである。
本発明の医薬組成物に係る好適な方法の例は、例えば、本明細書において参照により組み込まれるEP2023902B1の段落[0019]から[0026]に記載されている。この明細書において、EP2023902B1において活性成分またはDPP−IV阻害剤という用語が用いられる場合は常に、本発明に係る等量(リナグリプチン遊離塩基に関連する量)のリナグリプチンベンゾエート形態IIが使用されることを理解されたい。
本発明の処方物の製造の具体例は、例えば、EP2023902B1の段落[0027]から[0040]に記載されている。これらの例は、本発明のリナグリプチンベンゾエート形態IIを使用して再現できる。
本発明の処方物は典型的には0.1から100mgのリナグリプチンベンゾエート形態IIを含むのに対して、好ましい用量は0.5mg、1mg、2.5mg、5mgおよび10mgである(遊離塩基として計算される。)。
上述したように、本発明の形態IIの利益の1つは、形態Iよりも吸湿性が低いことである。このため、当業者は本発明のリナグリプチンベンゾエート形態IIを用いて、本発明のリナグリプチンベンゾエート形態IIを含む医薬組成物を廉価なコンテナまたはブリスタにパッケージングまたは充填できる。
従って、本発明はまた、本発明のリナグリプチンベンゾエート形態II含有の医薬組成物を含むコンテナにも関する。特に、DIN53 122に準じて測定された水蒸気の浸透性がフォイル厚50μmにて1.0g*m−2*d−1から5000g*m−2*d−1、より好ましくは5g*m−2*d−1から2000g*m−2*d−1の材料から調製されるコンテナに関する。水蒸気に対する浸透性が比較的高いこの種の廉価なパッケージング材料の好ましい例は、ポリ塩化ビニル、ポリスチロール、ポリアミド、ポリエチレンビニルアセテート、セロハンおよびセルロースアセテートである。これらの材料を、リナグリプチンベンゾエート形態IIを含む医薬組成物のブリスタリングを目的に使用することが可能である理由は、本発明の形態IIの吸湿性が低いためである。これにより、本発明のリナグリプチンベンゾエート形態IIが経済上の利点となることは明白である。
本発明はまた、ケッペン−ガイガー気候分類によるAfまたはAm気候の地域を有する熱帯国において販売されるように意図された医薬組成物を調製するためのリナグリプチンベンゾエート形態IIの使用に関する。更なる実施態様において本発明は、DIN53 122に準じて測定された水蒸気の浸透性がフォイル厚50μmにて1.0g*m−2*d−1から5000g*m−2*d−1、より好ましくは5g*m−2*d−1から2000g*m−2*d−1の材料から調製されるコンテナに関する。医薬組成物は、ケッペン−ガイガー気候分類によるAfまたはAm気候の地域を有する熱帯国に販売するように意図されている。この種のコンテナの水蒸気に対する浸透性が比較的高い廉価なパッケージング材料の好ましい例は、ポリ塩化ビニル、ポリスチロール、ポリアミド、ポリエチレンビニルアセテート、セロハンおよびセルロースアセテートである。
これらの材料を、リナグリプチンベンゾエート形態IIを含む医薬組成物のブリスタリングを目的に使用することが可能である理由は、多湿および湿性の気候条件の国での使用を目的とする場合でも、本発明の形態IIの吸湿性が低いためである。これにより、本発明のリナグリプチンベンゾエート形態IIが経済上の利点となることは明白である。
更なる実施態様において、本発明は有効量の本発明のリナグリプチンベンゾエート形態IIと、メトホルミンまたはその医薬上許容される塩と、更に、本発明は有効量の本発明のリナグリプチンベンゾエート形態IIと、ピオグリタゾンまたはその医薬上許容される塩と、を含む、医薬品の組み合わせにも関する。加えて、有効量の本発明のリナグリプチンベンゾエート形態IIと、スルホニル尿素またはその医薬上許容される塩と、を含む、医薬品の組み合わせに関する。
更に、本発明は有効量の
−本発明のリナグリプチンベンゾエート形態IIと、
−スルホニル尿素またはその医薬上許容される塩と、
−メトホルミンまたはその医薬上許容される塩
とを含む、医薬品の組み合わせに関する。
本発明はまた、リナグリプチンベンゾエート形態IIおよびメトホルミンまたはその医薬上許容される塩と;リナグリプチンベンゾエート形態IIおよびピオグリタゾンまたはその医薬上許容される塩と;リナグリプチンベンゾエート形態IIおよびスルホニル尿素またはその医薬上許容される塩と;リナグリプチンベンゾエート形態IIおよびメトホルミンまたはその医薬上許容される塩と;スルホニル尿素またはその医薬上許容される塩と、の組み合わせを含む医薬組成物を含有する上記のコンテナにも関する。それぞれは特に、上述した水蒸気に対する浸透性が高い材料から調製され、および/または医薬組成物は、上述したケッペン−ガイガー気候分類によるAfまたはAm気候の地域を有する熱帯国で販売することを意図したコンテナに関する。
本発明に係る他の目的、特徴、利益および態様は、下記説明から当業者に明らかになろう。しかしながら、説明および下記具体例は、本発明の好ましい実施形態を示すと同時に、例としてのみの記載であることを理解すべきである。開示された本発明の趣旨および範囲内での様々な変更および修正は、本開示の説明および他の部分を読むことによって当業者に容易に明らかになろう。
集束鏡および固体状態PIXcel検出器を使用し、トランスミッションジオメトリ、Cu−Kα1,2放射線(波長0.15419nm)のθ/θ結合型角度計搭載のPANalytical X’Pert PRO回折計を用い、X線粉末回折(XRPD)パターンを得た。周囲条件にて2°から40°2−θの角範囲で1ステップ(255チャネル)につき80s、ステップサイズ0.013°2θを適用して、管電圧45kVおよび管電流40mAでパターンを記録した。典型的な精度2−θ値は、約±0.2°2θの範囲である。よって、5.0°2−θにて出現する回折ピークは、標準の条件下でほとんどのX線回折計にて4.8°から5.2°2θの間で出現し得る。
周囲条件にて解像度4cm−1のBruker Tensor 27 FTIR分光計を用い、MKII Golden Gate(登録商標)Single Reflection Diamond ATR(減衰全反射)セル上で赤外線スペクトル(IR)を記録した。スペクトルを記録するため、サンプルのスパチュラ先端を粉末形態のダイヤモンドの表面に当てた。この後、サファイアのアンビルでサンプルをダイヤモンドに押圧し、スペクトルを記録した。汚れのないダイヤモンドのスペクトルをバックグラウンドスペクトルとして使用した。波数値の典型的精度は約±2cm−1の範囲である。よって、1716cm−1にて出現する赤外線ピークは1714から1718cm−1の間で出現し得る。
Mettler Polymer DSC R計器で示差走査熱量測定(DSC)を実行した。貫通アルミニウム蓋付きの40μlのアルミニウムパンにサンプルを5.3mg入れ、25から250℃にて10℃/minの速度で加熱した。窒素(パージ速度50ml/min)をパージガスとして使用した。
動的な水蒸気収着/脱着によって、リナグリプチンベンゾエートの結晶形の水分捕集を定量した。これ故、両方の形態を約28%の相対湿度(RH)で調製し、カール−フィッシャー滴定で初期含水率を定量した。続いて、SPSx−1μ湿気収着アナライザ(Projekt Messtechnik,Ulm)を用い、25±0.1℃で約2.5日間以内Rhを約3%RHから約90%RHの範囲で漸増させて、湿気収着実験を行った。
実施例1
リナグリプチンベンゾエートの多形体IIの調製
0.60gのリナグリプチンベンゾエートを40mlのアセトニトリル中に懸濁したものを加熱して還流させ(Tbath=82℃)、これによって透明な溶液を得た。約90分以内に溶液を約25℃まで冷却させ、約60℃で晶出させた。得られた懸濁液を約25℃で約13時間更に撹拌した後、濾過して結晶を単離した。結晶を減圧下にて80℃で約24時間乾燥させ、リナグリプチンベンゾエートの多形体IIが0.48g得られた。XRPD、Ir、DSCおよび水蒸気収着によるリナグリプチンベンゾエートの多形体IIの特性評価にて、図1から4に示す結果が得られる。
実施例2
リナグリプチンベンゾエートの多形体IIの調製
0.60gのリナグリプチンベンゾエートを30mlのアセトニトリル中に懸濁したものを加熱して還流させ(Tbath=82℃)、これによって透明な溶液を得た。約90分以内に溶液を約25℃まで冷却させ、約75℃で晶出させた。得られた懸濁液を約25℃で約5時間更に撹拌した後、濾過して結晶を単離した。結晶を減圧下にて80℃で約15時間乾燥させ、リナグリプチンベンゾエートの多形体IIが0.47g得られた。
比較例1
リナグリプチンベンゾエートの調製
0.60gのリナグリプチンベンゾエートを40mlのアセトニトリル中に懸濁したものを加熱して還流させ(Tbath=82℃)、これによって透明な溶液を得た。反応槽を氷浴に入れて溶液を速やかに冷却し、約0℃の温度で約5分後に晶出させた。得られた懸濁液を氷浴中にて約2時間更に撹拌し、濾過して結晶を単離した。結晶を減圧下にて80℃で約13時間乾燥させ、アモルファスと形態IIでない結晶性リナグリプチンベンゾエートとの混合物としてのリナグリプチンベンゾエート0.44gが得られた。
比較例2
リナグリプチンベンゾエートの調製
0.30gのリナグリプチンベンゾエートを60mlのアセトニトリル中に懸濁したものを加熱して還流させ(Tbath=82℃)、これによって透明な溶液を得た。約90分以内に溶液を約25℃まで冷却させたが、結晶化は起こらなかった。このようにして溶液を氷浴中にて更に撹拌し、約0℃で晶出させた。得られた懸濁液を氷浴中で約3.5時間更に撹拌した後、濾過して結晶を単離した。結晶を減圧下にて80℃で約15時間乾燥させ、アモルファスと形態IIでない結晶性リナグリプチンベンゾエートとの混合物としてのリナグリプチンベンゾエート0.14gが得られた。
参考例1
WO2010/072776A1の結晶性リナグリプチンベンゾエートの調製
2.50gのリナグリプチン遊離塩基を20mlのイソプロパノール中に混合したものを加熱して還流させた。安息香酸646mgを5mlのイソプロパノール中に溶解したものを、この高温懸濁液に添加した。混合物を約25℃まで冷却させ、同じ温度で更に約7.5時間撹拌した。固体を濾過して単離させ、40℃で約13時間乾燥させ、WO2010/072776A1の結晶性リナグリプチンベンゾエート2.94gが得られ、XRPDによりリナグリプチンベンゾエート形態Iであることが確認された。

Claims (15)

  1. リナグリプチンベンゾエートの結晶形態であって、8.0±0.2°、8.7±0.2°、10.4±0.2°、12.9±0.2°、13.8±0.2°および17.4±0.2°の2θ角度におけるピークを含むX線粉末回折パターンを有する、結晶形態。
  2. 請求項1に記載のリナグリプチンベンゾエートの結晶形態であって、赤外線スペクトルが1701±2cm−1、1663±2cm−1、1134±2cm−1、760±2cm−1および724±2cm−1の波数におけるピークを含むことを特徴とする、結晶形態。
  3. 請求項1または請求項2に記載のリナグリプチンベンゾエートの結晶形態であって、DSC曲線193℃の開始温度で吸熱ピークを示すことを特徴とする、結晶形態。
  4. 請求項1から請求項3のいずれかに記載のリナグリプチンベンゾエートの結晶形態であって、含水率が相対湿度3%に0重量%、相対湿度90%に2.0重量%であることを特徴とする、結晶形態。
  5. 球顆状粒子の形態の請求項1から請求項4のいずれかに記載のリナグリプチンベンゾエートの結晶形態であって、球顆状粒子の外径が10から100μmである、結晶形態。
  6. 請求項1から5のいずれか一項に記載のリナグリプチンベンゾエートの結晶形態の調製方法であって、
    a)加熱によりリナグリプチンベンゾエート10g/lから20g/lの濃度範囲でアセトニトリル中に溶解する段階と、
    b)場合によって溶液を濾過する段階と、
    c)35℃超の温度で結晶化を誘導するため、溶液を≦−1℃/minの冷却速度で冷却する段階と、
    d)得られた結晶を単離する段階と、
    e)場合によって結晶を乾燥させる段階
    とを含む、調製方法。
  7. 請求項1から5のいずれか一項に記載のリナグリプチンベンゾエートの結晶形態を含む医薬組成物であって、少なくとも1種の医薬上許容される賦形剤を更に含む、医薬組成物。
  8. 請求項7に記載の医薬組成物であって、特にカプセルまたは錠剤の経口投与形態である、医薬組成物。
  9. 請求項7または8に記載の医薬組成物であって、メトホルミン、ピオグリタゾン、スルホニル尿素、またはその医薬上許容される塩を更に含む、医薬組成物。
  10. 請求項7または8に記載の医薬組成物であって、
    −メトホルミンまたはその医薬上許容される塩と、
    −スルホニル尿素またはその医薬上許容される塩
    とを更に含む、医薬組成物。
  11. ケッペン−ガイガー気候分類によるAfまたはAm気候地域を有する国における販売を意図した医薬組成物を調製することを目的とする、請求項1から5のいずれか一項に記載のリナグリプチンベンゾエートの結晶形態の使用。
  12. 請求項1から5のいずれかに記載のリナグリプチンベンゾエートの結晶形態を含む医薬組成物を調製する方法であって、請求項1から5のいずれかに記載のリナグリプチンベンゾエートの結晶形態を少なくとも1種の医薬上許容される賦形剤と混合する段階を含む、方法。
  13. 湿式造粒法により混合が行われる、請求項12に記載の方法。
  14. DIN53122に従って測定した水蒸気の浸透率が1.0g*m−2*d−1から5000g*m−2*d−1である材料から調製される、請求項7から10のいずれか一項に記載の医薬組成物を含む、コンテナ。
  15. 経口投与剤形を含むブリスタパッケージである請求項14に記載のコンテナであって、ブリスタが、ポリ塩化ビニル、ポリスチロール、ポリアミド、ポリエチレンビニルアセテート、セロハン、および/またはセルロースアセテートからできている、コンテナ。
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