JP6079318B2 - インクセット、記録方法および記録装置 - Google Patents
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Description
このインクジェット記録方式において、より高精細な記録を行なうために、吐出されるインク滴の量は数ピコリットルと極微量になり、インクを吐出するノズルの径やノズルの間隔はより小さくなっている。例えば、特許文献1には、高画質化に対応した記録ヘッド(個別流路が相対的に短い第1ノズルと相対的に長い第2ノズルとが30μm未満の配置間隔で交互に配置されてなる記録ヘッド(吐出ヘッド))に適用できるとする、1,2−ヘキサンジオールのような特定のアルカンジオールを含むインクジェット用インクが開示されている。
<インクジェット記録方式>
インクジェット記録方式とは、例えば、ノズルとノズルの前方に置いた加速電極の間に強電界を印加し、ノズルからインク(インク組成物)をインク滴状態で連続的に噴射(吐出)させ、インク滴が偏向電極間を飛翔する間に記録情報信号を偏向電極に与えて記録する方式、またはインク滴を偏向することなく記録情報信号に対応して噴射させる方式(静電吸引方式)、小型ポンプでインク液に圧力を加え、ノズルを水晶振動子などで機械的に振動させることにより、強制的にインク滴を噴射させる方式、インク液に圧電素子で圧力と記録情報信号を同時に加え、インク滴を噴射・記録させる方式(ピエゾ方式)、インク液を記録情報信号にしたがって微小電極で加熱発泡させ、インク滴を噴射・記録させる方式(サーマルジェット方式)などの記録方法を指す。この方法による記録は、例えば、インクジェット式の吐出ヘッド、トレイ、吐出ヘッド駆動機構、キャリッジなどを備えたインクジェット記録装置によって行なう。
このようなインクジェット記録方式により、複数のインク組成物を用いて画像を形成(記録)する。インク組成物は、顔料、特定のアルカンジオールなどから構成される。また、溶媒としての水もしくは少なくとも一種の有機溶剤、樹脂、界面活性剤などを含んでも良い。
インク組成物は、例えば、濃インク組成物からなるインクセットとして、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)の3色のインクセットにブラック(K)を加えた4色のインクセットなどがある。また、例えば、それぞれの色材の濃度を淡くした淡インク組成物からなるライトイエロー(Ly)、ライトマゼンタ(Lm)、ライトシアン(Lc)、ライトブラック(Lk)などのインクセットを加えた8色のインクセットなどがある。
顔料としては、特に制限されないが、無機顔料や有機顔料がある。
無機顔料としては、ファーネスブラック、ランプブラック、アセチレンブラック、チャネルブラックなどのカーボンブラック(C.I.ピグメントブラック7)類、酸化鉄、酸化チタンなどを使用することができる。
インク組成物に水を含ませる場合、水は主に顔料を分散させる分散媒として機能する。インク組成物は、水を25質量%以上含む水系インクであっても、水の含有量が25質量%未満である非水系インクであってもよいが、記録媒体上で溶媒が速やかに減少することで顔料の定着性、記録媒体上での配向性が向上する水系インクがより好ましい。
インク組成物には、有機溶剤として、多価アルコール、グリコールエーテルなどが含有されていても良い。
<多価アルコール>
多価アルコールとしては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、1,2,6−ヘキサントリオール、チオグリコール、ヘキシレングリコール、グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、1,2−ブタンジオール、1,2−ペンタンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、1,2−ヘキサンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,2−ヘプタンジオール、1,2−オクタンジオールなどが挙げられる。
本発明では、多価アルコールとして、炭素数が6以下で分岐構造を有するアルキルジオールを用いている。詳細については、後述する実施形態および実施例にて説明する。
グリコールエーテルとしては、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテルなどの多価アルコールの低級アルキルエーテルを挙げることができる。
インク組成物に含む樹脂は、顔料を分散させる分散剤として機能する。樹脂としては、ポリアクリル酸、ポリメタアクリル酸、ポリメタアクリル酸エステル、ポリエチルアクリル酸、スチレン−ブタジエン共重合体、ポリブタジエン、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体、クロロプレン共重合体、フッ素樹脂、フッ化ビニリデン、ポリオレフィン樹脂、セルロース、スチレン−アクリル酸共重合体、スチレン−メタクリル酸共重合体、ポリスチレン、スチレン−アクリルアミド共重合体、ポリイソブチルアクリレート、ポリアクリロニトリル、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルアセタール、ポリビニルピロリドン、ポリアミド、ロジン系樹脂、フルオレン系樹脂、ポリエチレン、ポリカーボネート、塩化ビニリデン樹脂、セルロースアセテートブチレートなどのセルロース系樹脂、酢酸ビニル樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体、酢酸ビニル−アクリル共重合体、塩化ビニル樹脂、ポリウレタン、ロジンエステルなどが挙げられるがこれらに限定されるものではない。
界面活性剤の種類としては、特に限定されないが、アセチレングリコール系界面活性剤またはポリシロキサン系界面活性剤であることが好ましい。アセチレングリコール系界面活性剤またはポリシロキサン系界面活性剤は、記録媒体などの被記録面への濡れ性を高めてインクの浸透性を高めることができる。
インク組成物は、上記以外の成分(その他の成分)を含むものであってもよい。このような成分としては、例えば、pH調整剤、浸透剤、有機バインダー、尿素系化合物、糖類、アルカノールアミン(トリエタノールアミンなど)などの乾燥抑制剤などが挙げられる。
記録媒体としては、特に制限はなく、例えば、普通紙、インクジェット専用紙(マット紙、光沢紙)、塩ビなどのプラスチックフィルム、基材にプラスチックや受容層をコーティングしたフィルムなどの種々の記録媒体を用いることができる。
(実施形態1)
まず、実施形態1に係るインクセットについて説明する。
本実施形態に係るインクセットは、第1インク組成物および第2インク組成物を有している。
第1の顔料としては、例えば、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、オレンジ(Or)、グリーン(Gr)などのカラーインク組成物に、それぞれの色に対応した有彩色の有機顔料を用いている。また、第1の顔料として、例えば、ブラック(K)のインク組成物に、黒色顔料(無機顔料)を用いている。
第2の顔料としては、例えば、ライトイエロー(Ly)、ライトマゼンタ(Lm)、ライトシアン(Lc)のカラーインク組成物に、それぞれの色に対応した有機顔料を用いている。また、グレー(Lk)、ライトグレー(LLk)のインク組成物には黒色顔料(無機顔料)を用いている。
また、VOC量の観点から第1インク組成物、第2インク組成物には、標準沸点が240℃未満の有機溶剤を実質的に含んでいないことが好ましい。
インク組成物をインク滴(インク滴)の状態で記録媒体に付与した場合、アルキルジオールの含有量を多くすることで、記録媒体への濡れ性を高め、顔料の分散領域(濡れ広がる領域)を広くすることができる。淡インク組成物に含まれる第2の顔料は、濃インク組成物に含まれる第1の顔料の含有量より少ないが、淡インク組成物におけるアルキルジオールの含有量が多いため、淡インク組成物の濡れ広がりが大きくなり、ドットむらやドットによる粒状感などの少ない良好な画像を得ることができるようになる。また、濡れ広がりが大きくなることで、乾きやすくなるため、インク滴の打ち込み量(付与量)を増やすことができる。
逆に、比較的顔料の含有量が多い場合であっても、アルキルジオールの含有量を少なくすることで、顔料の広がり領域を狭くすることができる。濃インク組成物におけるアルキルジオールの含有量は、淡インク組成物に比較して少ないため、顔料の広がり領域が比較的狭くなるが、顔料濃度が高い濃インク組成物の場合、顔料の広がり領域が狭くなったとしても粒状感などの課題は生じにくい傾向にある。
以下、実施例および比較例によって本発明に係るインクセットを具体的に説明する。
なお、これらは本発明の範囲を限定するものではない。
濃インク組成物としての第1インク組成物は、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)のインク組成物を準備した。
淡インク組成物としての第2インク組成物は、ライトマゼンタ(Lm)、ライトシアン(Lc)、グレー(Lk)、ライトグレー(LLk)のインク組成物を準備した。
顔料として、イエロー(Y)には、ピグメントイエロー74を、シアン(C)、ライトシアン(Lc)には、ピグメントブルー15:3を、マゼンタ(M)、ライトマゼンタ(Lm)には、ピグメントバイオレット19を、ブラック(K)、グレー(Lk)、ライトグレー(LLk)にはカーボンブラックを、それぞれ表1に示す含有量で用いた。
アルキルジオールとしては、3−メチル−1,5−ペンタンジオール(MPD)と1,6−ヘキサンジオール(1,6−HD)とを用いた。なお、比較例1には、VOCの評価として、標準沸点が223〜224℃の1,2−ヘキサンジオール(1,2−HD)を用いた。
VOCの判定:良好「A」・・・VOC5mg/時間以下
不良「C」・・・VOC5mg/時間超
インクジェット記録装置には、PX−H8000(セイコーエプソン株式会社製)を用い、720×720dpiにて印刷した。記録媒体には、写真用光沢紙(写真用紙<光沢>セイコーエプソン株式会社製)を用いた。スキャナーには、GT−X770(セイコーエプソン株式会社製)を用い、解像度1200dpi、解析対象領域256×256pixelにて画像データを取り込み、解析データとした。
粒状感の評価は、算出された粒状性指標値に対して以下の判定基準に従って行なった。
粒状感の判定:良好 「A」・・・粒状性指標が0.28以下
略良好「B」・・・粒状性指標が0.28〜0.30未満
不良 「C」・・・粒状性指標が0.30以上
次に、実施形態2に係るインクセットついて説明する。
実施形態2は、ブラック(K)のインク組成物を第3インク組成物として、第1インク組成物とは異なる組成にしていることを特徴としている。
第3インク組成物は、ブラック(K)のインク組成物であり、第1インク組成物の第1顔料より多い含有量の第3の顔料と、第1インク組成物が含有するアルキルジオールの含有量より多い含有量のアルキルジオールとを含有している。
第3の顔料としては、黒色顔料(無機顔料)を用いている。黒色顔料としては、ファーネスブラック、ランプブラック、アセチレンブラック、チャネルブラックなどのカーボンブラック(C.I.ピグメントブラック7)類を使用することができる。
次に、実施形態3に係る記録方法について説明する。
実施形態3は、上述したインクセットを用いた記録方法である。
記録方法としては、吐出ヘッドを用い、実施形態1および実施形態2に示した第1インク組成物、第2インク組成物および第3インク組成物の少なくともひとつのインク組成物のインク滴を吐出して記録媒体に画像を記録する。また、インク滴は、10ピコリットル以上(例えば15ピコリットル)であり、画像の解像度(縦および横)は共に1000dpi以下(例えば720dpi)である。
また、本実施形態のように、吐出ヘッドを用いてインク滴を吐出して記録媒体に画像を記録する場合において、インク滴が10ピコリットル以上であることにより、一つのインク滴あたりのドット径をより大きくすることができ、その結果、同様に、吐出ヘッドの駆動速度を上げることなく記録時間を短縮したり、より大判の記録媒体に対する記録時間を増加させずに記録したりすることができる。インク滴が10ピコリットル以上であっても、上述したインクセットを用いることにより、ドットむらやドットによる粒状感などの少ない良好な画像を得ることができる。
次に、実施形態4に係る記録装置について説明する。
実施形態4は、上述したインクセットを用いた記録装置である。
図1は、記録装置の一例としてのインクジェット記録装置1(プリンター)を示す斜視図である。
図1において、インクジェット記録装置1は、略水平なX−Y平面に設置されている。
インクジェット記録装置1は、吐出ヘッドとしてのインクジェット式記録ヘッド20、キャリッジ3、走査機構としてのキャリッジ駆動機構4、コントロールボード5、インクカートリッジ6、搬送機構としての記録媒体供給排出機構(図示省略)、プラテン8などを備えている。
コントロールボード5は、キャリッジ駆動機構4の駆動制御やインク滴の吐出制御、また記録媒体10の供給・搬送・排出などの制御を行なう。
インクカートリッジ6は、複数の収容部に分かれ、実施形態1および実施形態2に示した複数のインク組成物を収容している。
記録媒体供給排出機構は、キャリッジ3の走査方向と交差する方向(図1におけるY方向)に記録媒体10を移動(搬送)させる。
プラテン8は、記録媒体10を載置し、インクジェット式記録ヘッド20と、記録媒体10との間隔を規定している。
インクジェット記録装置1は、キャリッジ駆動機構4によるインクジェット式記録ヘッド20の移動と、記録媒体供給排出機構による記録媒体10の移動とを交互に繰り返す。
なお、ラインヘッドを採用した記録装置において、ラインヘッドと記録媒体の相対的な搬送速度は好ましくは5cm/s以上であり、より好ましくは8cm/s以上であり、さらに好ましくは10cm/s以上50cm/s以下である。
次に、実施形態5に係る記録物について説明する。
実施形態5は、上述した記録媒体に、上述したインクセット(実施形態1および実施形態2に例示した第1インク組成物、第2インク組成物および第3インク組成物の少なくともひとつのインク組成物によるインクセット)を用いて記録された記録物である。
Claims (9)
- 第1インク組成物と、第2インク組成物と、を有し、
前記第1インク組成物は、
第1の顔料と、炭素数が6以下であり標準沸点240℃以上のアルキルジオールと、を含有し、
前記第2インク組成物は、第2の顔料と、前記アルキルジオールとを含有し、
前記第1インク組成物において、前記第1顔料の含有量は2.5質量%以上であり、前記アルキルジオールの含有量は3質量%以上15質量%以下であり、
前記第2インク組成物において、前記第2顔料の含有量は2.5質量%未満であり、前記アルキルジオールの含有量は8質量%以上30質量%以下であり、
前記第2インク組成物の前記アルキルジオールの含有量は、前記第1インク組成物の前記アルキルジオール含有量よりも多い、ことを特徴とするインクセット。 - 前記第1インク組成物および前記第2インク組成物が含有するそれぞれの前記アルキルジオールは、分岐構造を有している、ことを特徴とする請求項1に記載のインクセット。
- 前記第1インク組成物および前記第2インク組成物は、標準沸点が240℃未満の有機溶剤を1.0質量%以上含有しない、ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載のインクセット。
- 前記第2インク組成物が含有する前記第2の顔料の含有量より多い含有量の第3の顔料と、前記第1インク組成物が含有する前記アルキルジオールの含有量より多い含有量の前記アルキルジオールと、を含有する第3インク組成物を有し、
前記第1の顔料が有彩色顔料であり、前記第3の顔料が黒色顔料である、ことを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか一項に記載のインクセット。 - 請求項1ないし請求項4のいずれか一項に記載のインクセットを用いる記録方法であって、
吐出ヘッドを用いて前記第1インク組成物および/または前記第2インク組成物のインク滴を吐出して記録媒体に画像を記録する、ことを特徴とする記録方法。 - 前記インク滴が10ピコリットル以上であることを特徴とする請求項5に記載の記録方法。
- 前記画像の解像度が1000dpi以下であることを特徴とする請求項5または請求項6に記載の記録方法。
- 請求項5ないし請求項7のいずれか一項に記載の記録方法により記録する記録装置であって、
前記吐出ヘッドを移動させる走査機構と、前記記録媒体を移動する搬送機構と、を備え、
前記走査機構による前記吐出ヘッドの移動と前記搬送機構による前記記録媒体の移動とを交互に繰り返す、ことを特徴とする記録装置。 - 請求項5ないし請求項7のいずれか一項に記載の記録方法により記録する記録装置であって、
前記吐出ヘッドがラインヘッドである、ことを特徴とする記録装置。
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