JP5910754B2 - 運転支援装置、及び、運転支援方法 - Google Patents
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Description
本発明は、運転支援装置、及び運転支援方法に関する。
特許文献1には、自車両と前方物体との相対距離が所定の安全距離以下となった場合に衝突防止処理を実行する車両衝突防止装置が記載されている。この車両衝突防止装置は、自車両のタイヤ異常や自車両の走行路の勾配を検出すると共に、その検出結果に基づいて所定の安全距離を決定する。
ところで、上述したような技術において、運転者の通常の運転操作によって自車両と立体物との衝突回避が可能であるにも関わらず衝突回避のための運転支援を実施すると、運転者が煩わしさを感じることがある。本発明者は、そのような状況に鑑みて鋭意研究を行うことにより、次のような知見を得た。
すなわち、自車両の進路を含む所定の範囲を設定し、その所定の設定範囲内において自車両と対象物体との衝突回避が可能でないことを衝突回避支援の実施条件とすれば、すなわち、自車両の進路を含む所定の範囲内に回避不可能な立体物が存在することを条件として、自車両と立体物との衝突を回避するための運転支援を実施すれば、その運転支援の実施により運転者が煩わしさを感じることを抑制することができる。この知見によれば、運転者が煩わしさを感じることを抑制することにより、運転者の感覚に適した衝突回避のための運転支援が可能となる。このように、衝突回避に係る運転支援のための技術においては、運転者の感覚により適した運転支援を実現することが望まれている。
そこで、本発明は、運転者の感覚により適した衝突回避のための運転支援を可能とする運転支援装置、及び、運転支援方法を提供することを課題とする。
上記課題を解決するために、本発明者は、さらなる研究を行った結果、次のような新たな知見を得るに至った。その新たな知見とは、立体物の状態(例えば移動状態や種類等)に応じて、運転者が感じる立体物との衝突の危険感が異なるため、その衝突を回避しようとするタイミングが異なるというものである。このような新たな知見によれば、立体物の状態に応じて衝突回避のための運転支援のタイミングを可変とすれば、運転者の感覚により適した衝突回避のための運転支援が可能となると考えられる。本発明は、そのような新たな知見に基づいてなされたものである。
すなわち、本発明に係る運転支援装置は、自車両の進路上に立体物が存在する場合、進路を含む所定の範囲に回避不可能な立体物が存在することを条件として、自車両と立体物との衝突を回避するための運転支援を実施する運転支援装置であって、自車両の周囲に所定の範囲を設定する設定手段を備え、設定手段は、立体物の移動状態及び種類の少なくとも一方に基づいて予め定めされた所定の規則に応じて所定の範囲の広狭度合を設定する、ことを特徴とする。
また、本発明に係る運転支援方法は、自車両の進路上に立体物が存在する場合に、進路を含む所定の範囲に回避不可能な立体物が存在することを条件として、自車両と立体物との衝突を回避するための運転支援を実施する運転支援方法であって、自車両の周囲に所定の範囲を設定する設定ステップを備え、設定ステップにおいては、立体物の移動状態及び種類の少なくとも一方に基づいて予め定められた規則に応じて所定の範囲の広狭度合を設定する、ことを特徴とする。
これらの運転支援装置及び運転支援方法においては、自車両の進路を含む所定の範囲に回避不可能な立体物が存在することを条件として、自車両と立体物との衝突を回避するための運転支援を実施する(すなわち、自車両の周囲に設定された所定の範囲内において、自車両と立体物との衝突回避が可能でないことを衝突回避のための運転支援の実施条件とする)。このため、運転者が煩わしさを感じることが抑制され、運転者の感覚に適した衝突回避のための運転支援が可能になる。特に、これらの運転支援装置及び運転支援方法においては、その所定の範囲の広狭度合が、立体物の移動状態や種類に基づいた規則に応じて設定される。このため、立体物の移動状態や種類に応じて、所定の範囲内において自車両と立体物との衝突回避が可能でないとされるタイミング(すなわち、衝突回避のための運転支援の実施条件が成立するタイミング)が可変となる。よって、この運転支援装置及び運転支援方法によれば、運転者の感覚により適した衝突回避のための運転支援が可能となる。
ここで、運転者は、自車両と立体物との接近速度が大きいほど大きな危険を感じると考えられる。そこで、本発明に係る運転装置においては、設定手段は、自車両と立体物の接近速度が大きいほど広狭度合を狭く設定することができる。このように、自車両と立体物との接近速度が大きいほど所定の範囲の広狭度合を狭くすれば、衝突回避のための運転支援の実施条件が成立するタイミングが早まるので、運転者の感覚により一層適した衝突回避のための運転支援が可能となる。
また、運転者は、立体物の絶対移動速度が大きいほど大きな危険を感じると考えられる。そこで、本発明に係る運転支援装置においては、設定手段は、立体物の絶対移動速度が大きいほど前記広狭度合を狭く設定することができる。このように、立体物の絶対移動速度が大きいほど設定範囲の広狭度合を狭くすれば、衝突回避のための運転支援の実施条件が成立するタイミングが早まるので、運転者の感覚により一層適した衝突回避のための運転支援が可能となる。
また、運転者は、立体物が静止物体である場合よりも移動物体である場合の方が、より大きな危険を感じると考えられる。そこで、本発明に係る運転支援装置においては、設定手段は、立体物が静止物体である場合よりも立体物が移動物体である場合に、広狭度合を相対的に狭く設定するものとすることができる。このように、立体物が静止物体である場合よりも移動物体である場合に、所定の範囲の広狭度合を相対的に狭く設定すれば、衝突回避のための運転支援の実施条件が成立するタイミングが早まるので、運転者の感覚により一層適した衝突回避のための運転支援が可能となる。
また、運転者は、立体物が人や二輪車である場合よりも車両である場合の方が、より大きな危険を感じると考えられる。そこで、本発明に係る運転支援装置においては、設定手段は、立体物が人又は二輪車である場合よりも立体物が車両である場合に、広狭度合を相対的に狭く設定することができる。このように、立体物が人や二輪車である場合よりも車両である場合に、所定の範囲の広狭度合を相対的に狭く設定すれば、衝突回避のための運転支援の実施条件が成立するタイミングが早まるので、運転者の感覚により一層適した衝突回避のための運転支援が可能となる。
さらに、運転者は、立体物が対向車両である場合により大きな危険を感じると考えられる。そこで、本発明に係る運転支援装置においては、設定手段は、立体物が対向車両でない場合よりも立体物が対向車両である場合に、広狭度合を相対的に狭く設定することができる。このように、立体物が対向車両である場合に所定の範囲の広狭度合を相対的に狭く設定すれば、衝突回避のための運転支援の実施条件が成立するタイミングが早まるので、運転者の感覚により一層適した衝突回避のための運転支援が可能となる。
本発明に係る運転支援装置においては、設定手段は、自車両の現在の運動量に対して運動量変化分を増減させた場合に自車両が走行し得る複数の走行経路によって規定される自車両の走行範囲を所定の範囲として設定すると共に、運動量変化分を変更することにより広狭度合を変更することができる。この場合、所定の規則に応じた走行範囲の広狭度合の変更が容易となる。なお、ここでの「運動量」としては、例えば、自車両に作用するヨーレート、自車両の前後方向に作用する加速度(前後加速度)、自車両の左右方向(車幅方向)に作用する加速度(横加速度)、自車両の前後方向に作用するG(前後G)、自車両の左右方向に作用するG(左右G)、及び、コーナリングフォース等を用いることができる。
このとき、本発明に係る運転支援装置においては、立体物との衝突を回避可能な自車両の走行経路である回避ラインが走行範囲内に存在しない場合に、走行範囲に回避不可能な立体物が存在すると判断する判断手段をさらに備えることができる。この場合、回避不可能な立体物が存在すること(すなわち、自車両と立体物との衝突回避が可能でないことを)確実に判断することができる。
ここで、一部の運転者は、比較的遅いタイミングで衝突回避を行う傾向にある。そのような運転者に対しては、回避ラインが走行範囲内に存在せず、走行範囲に回避不可能な立体物が存在すると判断されたときに、直ちに衝突回避のための運転支援が開始されると、煩わしさを感じさせてしまうおそれがある。
そこで、本発明に係る運転支援装置においては、判断手段が走行範囲に回避不可能な立体物が存在すると判断した場合において、走行範囲に含まれる自車両の走行経路のうちの最長の走行経路の長さが所定の閾値以下となったときに運転支援を実施する支援手段をさらに備えることができる。このように、走行範囲に回避不可能な立体物が存在すると判断された場合でも、走行経路のうちの最長の走行経路の長さが所定の閾値以下となったときに衝突回避のための運転支援を実施すれば、上述したような運転者に対しても煩わしさを感じさせることなく、衝突回避のための運転支援を実施することが可能となる。
本発明によれば、運転者の感覚により適した衝突回避のための運転支援を可能とする運転支援装置、及び、運転支援方法を提供することができる。
以下、本発明の運転支援装置、及び運転支援方法の一実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。なお、図面の説明において、同一の要素同士、或いは、相当する要素同士には、互いに同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
図1は、本発明の一実施形態に係る運転支援装置の構成を示すブロック図である。図1に示されるように、本実施形態に係る運転支援装置100は、メインECU(Electrical Control Unit)10と、メインECU10に接続された各種センサ21〜25と、メインECU10に接続された各種ECU31〜34とを備えている。
以下では、このような運転支援装置100が搭載された車両を「自車両」と称する。また、その自車両との衝突回避の支援対象となる立体物を「障害物」と称する。運転支援装置100は、自車両の周囲に設定された所定の範囲内において、自車両と障害物(立体物)との衝突回避が可能でないことを衝突回避のための運転支援の実施条件とする。すなわち、運転支援装置100は、自車両の進路上に立体物が存在する場合、進路を含む所定の範囲に回避不可能な障害物が存在することを条件として、自車両と障害物との衝突を回避するための運転支援を実施する。
なお、ここでの「衝突回避が可能でない(或いは、回避不可能な障害物が存在する)」とは、自車両の運転者が通常に行い得る運転操作の範囲内において自車両と障害物との衝突回避が可能でないこと(或いは、そのような障害物が存在すること)を意味しており、運転支援装置100による衝突回避のための運転支援を行ってもなお衝突回避が可能でないことを示すものではない。
外界認識センサ21は、自車両の周囲に存在する障害物に関する情報、及び、その障害物と自車両との相対関係を示す情報等を取得する。外界認識センサ21が取得する情報は、例えば、障害物の画像情報、自車両と障害物との接近速度(相対移動速度)を示す情報、自車両と障害物との相対的な位置(例えば相対距離や相対角度等)を示す情報、及び、障害物の絶対移動速度を示す情報等である。
そのような外界認識センサ21は、例えば、LIDAR(Laser Imaging Detection And Ranging)、レーザレンジファインダ、ミリ波レーダ、及びステレオカメラ等の測定装置のうちの少なくとも1つから構成することができる。
ヨーレートセンサ22は、自車両に作用しているヨーレートを示す情報を取得する。車速センサ23は、自車両の速度を示す情報を取得する。加速度センサ24は、自車両の前後方向に作用している加速度(前後加速度)や、自車両の左右方向(車幅方向)に作用している加速度(横加速度)を示す情報を取得する。舵角センサ25は、自車両の操舵角を示す情報を取得する。
外界認識センサ21、ヨーレートセンサ22、車速センサ23、加速度センサ24、及び、舵角センサ25は、それぞれ、取得した情報をメインECU10に出力する。なお、運転支援装置100は、以上の各種センサ21〜25に加えて、必要に応じて図示しない任意の他のセンサを備えることができる。
運転支援装置100が備え得る他のセンサとしては、自車両のブレーキペダルの操作トルク(踏力)を示す情報を取得するブレーキセンサ、自車両のアクセルペダルの操作トルク(踏力)を示す情報を取得するアクセルセンサ、及び、自車両の操舵トルクを示す情報を取得する操舵トルクセンサ等が例示される。
ステアリングECU31は、メインECU10からの指示に応じて、例えば、自車両の操舵トルクの助勢を行うために電動パワーステアリングの制御を行う。ブレーキECU32は、メインECU10からの指示に応じて、例えば、自車両の制動を行うために、各車輪に設けられた電子制御式ブレーキの作動油圧(ブレーキ油圧)を電気的に調整する。
ブザーECU33は、メインECU10からの指示に応じて、例えば、自車両のブザーを鳴動させるべくブザーの制御を行う。メータECU34は、メインECU10からの指示に応じて、例えば、自車両のメータ用のディスプレイに対して所定の表示を行わせるように、当該ディスプレイの表示の制御を行う。
ここで、メインECU10は、障害物検出部11、障害物識別部12、通常走行領域設定部(設定手段)13、マップ保持部14、衝突可能性判断部(判断手段)15、及び、衝突回避支援実施部(支援手段)16を有している。なお、メインECU10は、CPU、ROM、及びRAM等を含むコンピュータを主体として構成される。メインECU10の各部の動作は、そのようなコンピュータ上において所定のプログラムを実行することにより実現される。
障害物検出部11は、外界認識センサ21から入力される情報等に基づいて、自車両の衝突回避支援の対象となる障害物を検出する。なお、障害物検出部11により検出される障害物(すなわち、運転支援装置100における衝突回避の対象となる立体物)は、例えば、電柱、木、及びガードレール等の静止物体、並びに、歩行者、自転車等の二輪車、及び、先行車両や対向車両といった車両等の移動物体等である。
障害物識別部12は、障害物検出部11により検出された障害物の識別を行う。これにより、障害物検出部11により検出された障害物が、例えば上述したもののいずれであるかが識別される。なお、障害物の識別は、例えば、画像認識によるパターンマッチングや、白線の情報を組み合わせた方法等、任意の方法によって行うことができる。
通常走行領域設定部13は、自車両の周囲に運転者の通常走行領域(所定の範囲)を設定する。この通常走行領域設定部13の通常走行領域の設定について、図2を参照して詳細に説明する。通常走行領域設定部13は、まず、加速度センサ24から入力される情報に基づいて、自車両Cの現在の横加速度(運動量)Gyを取得する。続いて、通常走行領域設定部13は、自車両Cが現在の横加速度Gyを維持したまま走行した場合に通ると予測される経路(進路)Aを特定する。
続いて、通常走行領域設定部13は、自車両Cの現在の横加速度Gyに対して通常変化分(運動量変化分)△Gyを加算した場合に、自車両Cが通ると予測される経路(進路)B1を特定する。それと共に、通常走行領域設定部13は、自車両Cの現在の横加速度Gyに対して通常変化分△Gyを減算した場合に、自車両Cが通ると予測される経路(進路)B2を特定する。なお、通常変化分△Gyは、例えば、運転者が通常に行い得る運転操作の範囲内における横加速度の最大変化量に相当する量であり、予め実験的に求められている量である。
経路B1,B2は、例えば、現在の横加速度Gyに対して通常変化分△Gyを減算又は加算した値から算出される自車両Cの旋回半径Rから特定することができる。なお、旋回半径Rは、車速Vをヨーレートγで除算することにより求めることができる(R=V/γ)。また、ヨーレートγは、横加速度Gyを車速Vで除算することにより求めることができる(γ=Gy/V)。
なお、図3に示されるように、自車両Cが現時点ですでに旋回状態にある場合(│Gy│>0)には、現在の横加速度Gyに通常変化分△Gyを増減させた値の絶対値(│Gy±△Gy│)が運転者の通常の運転操作によって発生し得る最大横加速度(例えば0.2G〜0.3G)より大きくなる可能性がある。よって、通常変化分△Gyの大きさは、現在の横加速度Gyに通常変化分△Gyを増減させた値の絶対値が、その最大横加速度以下となるように制限されてもよい。
続いて、通常走行領域設定部13は、図2に示されるように、経路B1から経路B2までの領域において、自車両Cの操舵角又は横加速度を一定量ずつ変化させた場合に自車両Cが通ると予測される複数の経路(進路)B0を特定する。
通常走行領域設定部13は、これらの複数の経路(特に経路B1,B2)で規定される略扇形の領域を通常走行領域ARとして設定する。つまり、通常走行領域設定部13は、自車両Cの現在の横加速度Gyに対して通常変化分△Gyを増減させた場合に自車両Cが走行し得る複数の走行経路によって規定される自車両Cの走行範囲を通常走行領域ARとして設定する。
なお、通常走行領域設定部13は、障害物識別部12の識別結果を示す情報や各種センサから入力される自車両Cの情報等に基づいて通常変化分△Gyを変更することにより経路B1,B2を変更し、それにより通常走行領域ARの広狭度合を設定(変更)するが、その方法については後述する。
衝突可能性判定部15は、通常走行領域設定部13によって設定された通常走行領域AR内において障害物と自車両Cとが衝突する可能性があるか否かを判断する。すなわち、衝突可能性判断部15は、通常走行領域設定部13によって設定された通常走行領域AR内に自車両Cと衝突する可能性がある障害物が存在するか否かを判断する。より具体的には、衝突可能性判定部15は、図4に示されるように、自車両Cと障害物Dとの衝突を回避可能な自車両Cの走行経路である回避ラインEが、通常走行領域設定部13によって設定された通常走行領域AR内に存在する場合には、自車両Cと障害物Dとの衝突回避が可能であると判断する(すなわち、通常走行領域AR内に回避不可能な障害物Dが存在しないと判断する)。
これに対して、衝突可能性判定部15は、図5に示されるように、例えば自車両Cと障害物Dとの相対的な位置関係が変化することにより、回避ラインが通常走行領域AR内に存在しなくなった場合に(すなわち、通常走行領域設定部13によって特定された全ての経路が障害物Dに干渉する場合に)、通常走行領域AR内において自車両Cと障害物Dとの衝突回避が可能でないと判断する(すなわち、回避不可能な障害物Dが存在すると判断する)。
衝突回避支援実施部16は、衝突可能性判定部15によって自車両Cと障害物Dとの衝突回避が可能でないと判断された場合に(すなわち、回避不可能な障害物Dが存在すると判断された場合に)、自車両Cの衝突回避のための運転支援を実施する。衝突回避支援実施部16においては、例えば、以下のように衝突回避のための運転支援の実施のタイミングを決めることができる。すなわち、衝突回避支援実施部16は、通常走行領域ARに含まれる経路(例えば経路B1やB0等)のうち、自車両Cと障害物Dとの距離が最も長い経路の長さが所定の閾値以下となったときに、衝突回避のための運転支援を実施することができる。
或いは、衝突回避支援実施部16は、通常走行領域ARに含まれる経路のうち、自車両Cと障害物Dとの距離が最も長い経路について、自車両Cが障害物Dに到達するまでの時間を演算し、その到達時間が所定の閾値以下となったときに、衝突回避のための運転支援を実施してもよい。経路の長さや到達時間に関する所定の閾値は、自車両Cの状態に応じて変更することができる。より具体的には、例えば、自車両Cの車速が大きいときは小さいときに比べて所定の閾値を大きく設定することができる。また、例えば、自車両Cのヨーレートが大きいときは小さいときに比べて、所定の閾値を大きく設定してもよい。
衝突回避支援実施部16により実施される衝突回避のための運転支援は、例えば、ステアリングECU31を介して電動パワーステアリングを制御したり、ブレーキECU32を介して電子制御式ブレーキを制御したりする等、自車両Cの挙動を制御するものとすることができる。この場合には、衝突回避支援実施部16は、例えば、自車両Cと障害物Dとの衝突を回避するために必要な目標ヨーレートを演算すると共に、自車両Cの実際のヨーレートが目標ヨーレートと一致するように、ステアリングECU31を介しての電動パワーステアリングの制御量(操舵トルク)と、ブレーキECU32を介しての電子制御式ブレーキの制御量(ブレーキ油圧)とを決定することができる。
目標ヨーレートと操舵トルクとの関係、及び、目標ヨーレートとブレーキ油圧との関係は、予めマップ化されて保持されていてもよい。また、自車両Cを減速させる方法は、電子制御式ブレーキの制御により摩擦ブレーキを作動させる方法に限られず、自車両Cの運動エネルギを電気エネルギに変換(回生)させる方法や、変速機の変速比を変更させてエンジンブレーキを増大させる方法を用いてもよい。また、自車両Cのヨーレートを変更する方法は、電動パワーステアリングにより舵角を変化させる方法に限られず、自車両Cの左右輪に対して互いに異なるブレーキ油圧を印加する方法を用いてもよい。
さらに、衝突回避支援実施部16により実施される衝突回避のための運転支援は、例えば、ブザーECU33を介してブザーを鳴動させたり、メータECU34を介してディスプレイにメッセージを表示させたりする等の自車両Cの運転者に警告を与えるものであってもよい。
このように、この運転支援装置100は、自車両Cの周囲に自車両Cの進路を含む通常走行領域ARを設定し、その通常走行領域AR内において自車両Cと障害物Dとの衝突回避が可能でないことを衝突回避支援の実施条件とする。すなわち、この運転支援装置100は、通常走行領域ARに回避不可能な障害物Dが存在することを条件として、自車両Cと障害物Dとの衝突を回避するための運転支援を実施する。このため、この運転支援装置100によれば、自車両Cの運転者が煩わしさを感じることが抑制され、運転者の感覚に適した衝突回避のための運転支援が可能になる。
ここで、本発明者の知見によれば、障害物Dの状態(例えば移動状態や種類)に応じて、自車両Cの運転者が感じる障害物Dとの衝突の危険感が異なる場合がある。そのため、本実施形態に係る運転支援装置100は、衝突回避のための運転支援の実施条件が成立するタイミング(換言すれば、衝突回避のための運転支援を行うタイミング)を、障害物Dの状態に応じて可変としている。
すなわち、通常走行領域設定部13は、障害物Dの移動状態及び種類の少なくとも一方に基づいて予め定められた所定の規則に応じて、図6に示されるように、自車両Cの車幅方向における通常走行領域ARの広狭度合Wを設定(変更)する。通常走行領域設定部13は、障害物Dが、運転者の感じる危険感が相対的に大きいものである場合には、図6の(a)に示されるように、通常走行領域ARの広狭度合Wを相対的に狭くして、衝突回避のための運転支援の実施条件が成立するタイミングを早める。
その一方で、通常走行領域設定部13は、障害物Dが、運転者の感じる危険感が相対的に小さいものである場合には、図6の(b)に示されるように、通常走行領域ARの広狭度合Wを相対的に広くして、衝突回避のための運転支援の実施条件が成立するタイミングを遅くする。
このような通常走行領域設定部13による通常走行領域ARの広狭度合Wの設定について、より具体的に説明する。通常走行領域設定部13は、まず、通常走行領域ARを設定するに際して、障害物識別部12からの障害物Dの識別結果と、マップ保持部14が保持するマップとを参照し、障害物Dの状態に応じた通常変化分△Gyを設定する。
図7の(a)に示されるように、マップ保持部14が保持するマップMには、例えば、障害物Dの(移動状態を含む)種類ごとに通常変化分△Gyが対応付けられている。したがって、通常走行領域設定部13は、障害物識別部12による障害物Dの識別結果をもとにマップ保持部14の保持するマップMを参照すれば、通常変化分△Gyを決定することができる。
例えば、障害物識別部12による障害物Dの識別結果が、障害物Dの種類がガードレールであることを示す結果である場合には、通常走行領域設定部13は、通常変化分△Gyを0.6Gとする。通常走行領域ARは、このようにして決定した通常変化分△Gyによって生成される経路B1,B2等によって規定されるので、結果として、障害物Dの状態に応じた広狭度合Wの通常走行領域ARが設定されることとなる。
図7に示されるように、本実施形態においては、通常走行領域設定部13は、障害物Dがガードレールや電柱や木といった静止物体である場合よりも、障害物Dが歩行者や自転車や対向車といった移動物体である場合に、通常変化分△Gyを相対的に小さく設定し、自車両Cの車幅方向における通常走行領域ARの広狭度合を相対的に狭く設定する。これは、障害物Dが静止物体である場合よりも移動物体である場合の方が、運転者の感じる危険感が大きく、相対的に早いタイミングでの衝突回避のための運転支援の実施が好ましいと考えられるためである。
また、本実施形態においては、通常走行領域設定部13は、障害物Dの絶対移動速度が大きいほど、通常変化分△Gyを小さく設定し、自車両Cの車幅方向における通常走行領域ARの広狭度合を小さく設定する。具体的には、通常走行領域設定部13は、障害物Dが、静止ししているガードレールや電柱である場合よりも、比較的小さな絶対移動速度で移動する歩行者や自転車である場合に、通常変化分△Gyを小さくして通常走行領域ARの広狭度合を小さく設定する。
また、通常走行領域設定部13は、障害物Dが、比較的小さな絶対移動速度で移動する歩行者や自転車である場合よりも、比較的大きな絶対移動速度で移動する対向車両である場合に、通常変化分△Gyを小さくして通常走行領域ARの広狭度合を狭く設定する。これは、障害物Dの絶対移動速度が大きいほど、運転者の感じる危険感が大きく、相対的に早いタイミングでの衝突回避のための運転支援の実施が好ましいと考えられるためである。
また、本実施形態においては、通常走行領域設定部13は、障害物Dが人(ここでは歩行者)又は二輪車(ここでは自転車)である場合よりも、障害物Dが車両(ここでは対向車両)である場合に、通常変化分△Gyを小さくして通常走行領域ARの広狭度合を狭く設定する。これは、障害物Dが人又は二輪車である場合よりも車両である場合の方が、運転者の感じる危険感が大きく、相対的に早いタイミングでの衝突回避のための運転支援の実施が好ましいと考えられるためである。
さらに、本実施形態においては、通常走行領域設定部13は、自車両Cと障害物Dとの接近速度が大きいほど、通常変化分△Gyを小さくして通常走行領域ARの広狭度合Wを狭く設定することができる。これは、自車両Cと障害物Dとの接近速度が大きいほど、運転者の感じる危険感が大きく、より早いタイミングでの衝突回避のための運転支援の実施が好ましいと考えられるためである。
なお、本実施形態においては、通常走行領域設定部13は、ある一つの障害物Dの種類(対向車を除く)に着目した場合に、自車両Cの車速(自車速)Vが大きいほど、通常変化分△Gyを小さくする。そのために、マップ保持部14が保持するマップMには、障害物Dの種類ごとに、自車速Vに対する通常変化分△Gyの変化を示すグラフ(図7の(b)参照)の傾きの値が設定されている。
例えば、障害物Dがガードレール等である場合には、通常変化分△Gyは、自車速Vが30km/h未満で0.6Gであるが、自車速Vが30km/h〜80km/hの間に傾き−0.008で減少し、自車速Vが80km/hよりも大きい場合には、0.2Gとなる。障害物Dが歩行者や自転車の場合にも自車速Vが大きいほど通常変化分△Gyが小さくなる。
これは、運転者は、自車速が大きくなるほど、より大きな危険感を感じるため、より早いタイミングでの衝突回避のための運転支援の実施が好ましいと考えられるためである。ただし、障害物Dが歩行者や自転車である場合には、障害物Dがガードレール等である場合に比べて、通常変化分△Gyの自車速Vの依存性が相対的に小さく、障害物Dが対向車である場合には通常変化分△Gyは自車速Vに依存せず一定である。
これは、歩行者や自転車や対向車といった運転者の危険感がより大きくなると予想される障害物Dの場合は、自車速Vに依存せず、より早いタイミングで衝突回避のための運転支援を実施することが好ましいと考えられるためである。
引き続いて、図8を参照し、運転支援装置100における運転支援方法について説明する。図8に示されるように、運転支援装置100においては、まず、外界認識センサ21からの情報に基づいて、障害物検出部11が自車両Cの周囲に存在する障害物Dを検出する(ステップS101)。
続いて、障害物識別部12が、障害物検出部11によって検出された障害物Dの識別を行う(ステップS102)。この障害物識別部12の識別により、障害物Dが、例えば電柱、木、及びガードレール等の静止物体であるのか、或いは、歩行者、自転車等の二輪車、及び、先行車両や対向車等の車両等の移動物体であるのかが識別される。
続いて、通常走行領域設定部13が、上述したように自車両Cの周囲に通常走行領域ARを設定する(ステップS103:設定ステップ)。このとき、通常走行領域設定部13は、障害物Dの移動状態及び種類の少なくとも一方に基づいて予め定められた規則(例えば図7のマップMに示される規則)に応じて、上述したように通常走行領域ARの広狭度合Wを設定する。
続いて、衝突可能性判断部15が、通常走行領域AR内において自車両Cと障害物Dとの衝突可能性があるか否かを判断する(ステップS104)。換言すれば、衝突可能性判断部15は、通常走行領域AR内において自車両Cと障害物Dとの衝突回避が可能であるか否かを判断する(さらに換言すれば、通常走行領域AR内に回避不可能な障害物Dが存在するか否かを判断する)。これは、上述したように、通常走行領域AR内に回避ラインEが存在するか否かによって判断することができる。
その判断の結果、通常走行領域AR内において自車両Cと障害物Dとの衝突可能性がある場合(すなわち、通常走行領域AR内において自車両Cと障害物Dとの衝突回避が可能でない場合(換言すれば、通常走行領域AR内に回避不可能な障害物Dが存在する場合))、衝突回避支援実施部16は、各種ECU31〜34を介して、自車両Cの衝突回避のための運転支援を実施する(ステップS105)。
なお、ステップS104の判断の結果、通常走行領域AR内において自車両Cと障害物Dとの衝突可能性がない場合(すなわち、通常走行領域AR内において自車両Cと障害物Dとの衝突回避が可能である場合(換言すれば、通常走行領域AR内に回避不可能な障害物Dが存在しない場合))、運転支援装置100の処理はステップS101に戻る。運転支援装置100は、以上の運転支援方法を所定の時間間隔で繰り返し実施する。
以上説明したように、本実施形態に係る運転支援装置100、及びその運転支援方法においては、通常走行領域ARの広狭度合Wが、障害物Dの移動状態や種類に基づいた規則に応じて設定される。このため、障害物Dの移動状態や種類に応じて、通常走行領域AR内において自車両Cと障害物Dとの衝突回避が可能でないとされるタイミング(すなわち、衝突回避のための運転支援の実施条件が成立するタイミング)が可変となる。よって、運転支援装置100によれば、運転者の感覚により適した衝突回避のための運転支援が可能となる。
特に、運転支援装置100においては、図9に示されるように、障害物Dの種類が、運転者の感じる危険感が高いものであるほど、通常走行領域ARの広狭度合Wを狭く設定する(すなわち、通常走行領域ARを狭くする)。このため、運転者の感覚により一層適した衝突回避のための運転支援が可能となる。
以上の実施形態は、本発明に係る運転支援装置及び運転支援方法の一実施形態を説明したものである。したがって、本発明に係る運転支援装置及び運転支援方法は、上述したものに限定されない。本発明に係る運転支援装置及び運転支援方法は、各請求項の要旨を変更しない範囲において、上述したものを任意に変更したものとすることができる。
例えば、図10の(a)に示されるように、障害物である対向車Dの将来の進路Pを予測した結果、自車両Cと対向車Dとが衝突する可能性がある場合には、自車両Cの現在の横加速度Gyを維持したまま走行した場合に通ると予測される経路Aに対して、対向車Dの進路P側に回避することは考え難い。したがって、そのような場合には、通常走行領域設定部13は、通常走行領域ARにおける自車両Cの経路Aよりも対向車Dの進路P側の一部分を削除(或いは小さく)して、通常走行領域ARの広狭度合Wを狭めてもよい。
また、通常走行領域(所定の範囲)ARは、例えば、自車両の周囲の外界認識センサ21の検出可能範囲の中から設定することができるが、その全体が外界認識センサ21の検出可能範囲に含まれ、且つ、外界認識センサ21の検出可能範囲よりも狭い場合に限定されるものではない。例えば、通常走行領域ARは外界認識センサ21の検出可能範囲と同一であってもよい。
また、障害物検出部11は、ライン(例えば経路A,B0,B1,B2)での点計測による検出を行う構成に限定されない。例えば、障害物検出部11は、外界認識センサ21の撮像画像中に設定された範囲内に、障害物Dが車幅方向に連続的に連なる範囲に基づいて制御してもよい。
さらに、通常走行領域設定部13は、障害物Dの移動状態のみに基づいて予め定められた所定の規則に応じて通常走行領域ARの広狭度合Wを設定してもよいし、障害物Dの移動状態及び種類の両方に基づいて予め定めされた所定の規則に応じて通常走行領域ARの広狭度合Wを設定してもよい。
本発明によれば、運転者の感覚により適した衝突回避のための運転支援を可能とする運転支援装置、及び、運転支援方法を提供することができる。
13…通常走行領域設定部(設定手段)、15…衝突可能性判断部(判断手段)、16…衝突回避支援実施部(支援手段)、100…運転支援装置、C…自車両、AR…通常走行領域(所定の範囲)、D…障害物(立体物)、W…広狭度合、E…回避ライン。
Claims (9)
- 自車両の進路上に立体物が存在する場合、前記進路を含む所定の範囲に回避不可能な立体物が存在することを条件として、前記自車両と前記立体物との衝突を回避するための運転支援を実施する運転支援装置であって、
前記自車両の周囲に前記所定の範囲を設定する設定手段を備え、
前記設定手段は、前記立体物の移動状態及び種類の少なくとも一方に基づいて予め定めされた所定の規則に応じて前記所定の範囲の広狭度合を設定し、
前記設定手段は、前記立体物の絶対移動速度が大きいほど前記広狭度合を狭く設定する、
ことを特徴とする運転支援装置。 - 前記設定手段は、前記自車両と前記立体物の接近速度が大きいほど前記広狭度合を狭く設定する、ことを特徴とする請求項1に記載の運転支援装置。
- 前記設定手段は、前記立体物が静止物体である場合よりも前記立体物が移動物体である場合に、前記広狭度合を相対的に狭く設定する、ことを特徴とする請求項1又は2に記載の運転支援装置。
- 前記設定手段は、前記立体物が人又は二輪車である場合よりも前記立体物が車両である場合に、前記広狭度合を相対的に狭く設定する、ことを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の運転支援装置。
- 前記設定手段は、前記立体物が対向車両でない場合よりも前記立体物が対向車両である場合に、前記広狭度合を相対的に狭く設定する、ことを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の運転支援装置。
- 前記設定手段は、前記自車両の現在の運動量に対して運動量変化分を増減させた場合に前記自車両が走行し得る複数の走行経路によって規定される前記自車両の走行範囲を前記所定の範囲として設定すると共に、前記運動量変化分を変更することにより前記広狭度合を変更する、ことを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の運転支援装置。
- 前記立体物との衝突を回避可能な前記自車両の走行経路である回避ラインが前記走行範囲内に存在しない場合に、前記走行範囲に回避不可能な前記立体物が存在すると判断する判断手段をさらに備える、ことを特徴とする請求項6に記載の運転支援装置。
- 前記判断手段が前記走行範囲に回避不可能な前記立体物が存在すると判断した場合において、前記走行範囲に含まれる前記自車両の走行経路のうちの最長の走行経路の長さが所定の閾値以下となったときに前記運転支援を実施する支援手段をさらに備える、ことを特徴とする請求項7に記載の運転支援装置。
- 自車両の進路上に立体物が存在する場合に、前記進路を含む所定の範囲に回避不可能な立体物が存在することを条件として、前記自車両と前記立体物との衝突を回避するための運転支援を実施する運転支援方法であって、
前記自車両の周囲に前記所定の範囲を設定する設定ステップを備え、
前記設定ステップにおいては、前記立体物の移動状態及び種類の少なくとも一方に基づいて予め定められた規則に応じて前記所定の範囲の広狭度合を設定し、
前記設定ステップにおいては、前記立体物の絶対移動速度が大きいほど前記広狭度合を狭く設定する、
ことを特徴とする運転支援方法。
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