以下、本発明に係るズームレンズ、カメラおよび携帯型情報端末の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
まず、本発明に係るズームレンズの実施形態について説明する。本発明に係るズームレンズは、物体側より順に、正の屈折力を有する第1レンズ群、負の屈折力を有する第2レンズ群、正の屈折力を有する第3レンズ群、正の屈折力を有する第4レンズ群からなる。当該ズームレンズは、短焦点端から長焦点端への変倍に際して、第1レンズ群と第2レンズ群の間隔が増大し、第2レンズ群と第3レンズ群の間隔が減少して、第3レンズ群と第4レンズ群の間隔が変化するズームレンズである。このズームレンズは、以下の実施形態に示す特徴を有する。
本発明の実施形態に係るズームレンズは、以下の構成を有することを特徴とする。すなわち、第3レンズ群が物体側から順に、正レンズ(正の屈折力を有するレンズをいう。以下同じ。)L31、正レンズL32、負レンズ(負の屈折力を有するレンズをいう。以下同じ。)L33、負レンズL34、正レンズL35、正レンズL36を有してなる。また、第4レンズ群は1枚または2枚で構成され、フォーカシングは第4レンズ群で行う。そして、長焦点端における第3レンズ群と第4レンズ群の軸上の間隔である「D34_T」と、第4レンズ群の焦点距離である「f4」とが、以下の条件式1を満足する。
(条件式1)
0.2<D34_T/f4<0.5
上述のズームレンズのように、物体側から「正負正正」の屈折力を有する4つのレンズ群から構成されるズームレンズは、第3レンズ群が主要な変倍作用を負担するいわゆるバリエータとして構成される。
短焦点端から長焦点端への変倍に際して、第1レンズ群は像側に凸になるように移動し、第2レンズ群は像側に移動し、第3レンズ群は物体側に移動し、第4レンズ群が移動する。これにより、第1レンズ群と第2レンズ群の間隔は大きくなり、第2レンズ群と第3レンズ群との間隔は小さくなり、第2レンズ群・第3レンズ群の倍率(絶対値)はどちらも増加するが、主に第3レンズ群により変倍するようにしている。
さらに第3レンズ群を通る光束が太くなることもあるので、Fナンバを小さくして、高性能にするためには、第3レンズ群の構成が重要になる。そのため、第3レンズ群の構成を正レンズL31、正レンズL32、負レンズL33、負レンズL34、正レンズL35、正レンズL36としている。
この第3レンズ群を、「正レンズL31、正レンズL32、負レンズL33」と「負レンズL34、正レンズL35、正レンズL36」のように対称的にパワー配置することにより、各種収差を十分に補正できる。また、正レンズL32と負レンズL33を接合し、負レンズL34と正レンズL35を接合すると良い。さらに、高性能でありながら長焦点端において近距離までフォーカシングするためには上記した条件式1を満足すればよい。
上述のズームレンズによれば、短焦点端の半画角が42度以上でありながら短焦点端のFナンバが2.0以下、長焦点端のFナンバが3.0程度であり、構成レンズ枚数が11枚程度である。これによって、小型かつ1000万〜2000万画素の撮像素子に対応した解像力を有するズームレンズを提供することができる。
なお、条件式1に示した上限値を超えると、長焦点端において第3レンズ群と第4レンズ群の間隔が広がりすぎ、レンズ全長が大きくなり過ぎるか、第4レンズ群のパワーが強すぎて、第4レンズ群で発生する収差が大きくなり過ぎる。その結果、ズーム域全体の収差補正が困難になる。
また、条件式1に示した下限値を超えると、長焦点端において近距離までフォーカシングすることができなくなる。
上述したズームレンズは、さらに、短焦点端における第3レンズ群と第4レンズ群の軸上の間隔である「D34_W」と第4レンズ群の焦点距離である「f4」とが以下の条件式2を満足することが望ましい。
(条件式2)
0.05<D34_W/f4<0.15
上記の条件式2を満足することで、さらに、高性能でありながら短焦点端において近距離までフォーカシングすることができる。これによって、各収差を良好に補正しつつ、短焦点端において近距離までピントを合わせることができるズームレンズを提供できる。
なお、条件式2に示した上限値を超えると、長焦点端において第3レンズ群と第4レンズ群の間隔が広がりすぎてレンズ全長が大きくなり過ぎるか、第4レンズ群のパワーが強すぎて第4レンズ群で発生する収差が大きくなり過ぎる。その結果、ズーム域全体の収差補正が困難になる。
また、条件式2に示した下限値を超えると、短焦点端において近距離までフォーカシングすることができなくなる。
上述したズームレンズは、さらに、第4レンズ群の焦点距離である「f4」と、短焦点端の焦点距離である「fw」とが、以下の条件式3を満足することが望ましい。
(条件式3)
5<f4/fw<8
上記の条件式3を満足することで、さらに、高性能なズームレンズを得ることができる。これによって、各収差をさらに良好に補正した高性能なズームレンズを提供することができる。
なお、条件式3に示した上限値を超えると、射出瞳が像面に近くなり過ぎ、テレセントリック性が劣化する。
また、条件式3に示した下限値を超えると、第4レンズ群で発生する収差を簡易な構成で補正することが困難になる。よって、第4レンズ群は1枚で構成することが望ましい。
上述したズームレンズは、さらに、第3レンズ群の光軸上での厚さである「D3」と、短焦点端の焦点距離である「fw」とが、以下の条件式4を満足することが望ましい。
(条件式4)
2<D3/fw<3
上記の条件式4を満足することで、小型でありながら、高性能なズームレンズを得ることができる。
なお、条件式4に示した上限値を超えると、第3レンズ群が厚くなった分だけ第2レンズ群と第3レンズ群の間隔や第2レンズ群の光軸上の厚さを薄くすることになり、ズーム域全体の収差補正が困難になる。
また、条件式4に示した下限値を超えると、第3レンズ群の厚さが薄くなり過ぎ、第3レンズ群内の各種収差の補正が困難になる。
上述したズームレンズは、さらに、第3レンズ群の焦点距離である「f3」と、短焦点端の焦点距離である「fw」とが、以下の条件式5を満足することが望ましい。
(条件式5)
2.5<f3/fw<3.5
上記の条件式5を満足することで、各収差をさらに良好に補正した、さらに高性能のズームレンズを得ることができる。
なお、条件式5に示した上限値を超えると、第3レンズ群で変倍することが困難になり、ズーム域全体の収差補正が困難になる。
また、条件式5に示した下限値を超えると、第3レンズ群の焦点距離が短くなり過ぎ、第3レンズ群内の各種収差の補正が困難になる。
上述したズームレンズは、さらに、以下の条件式6を満足することが望ましい。ここで、「Da」は、正レンズL31の物体側面から負レンズL33の像側面までの光軸上での間隔である。また、「D3」は、第3レンズ群の光軸上での厚さである。
(条件式6)
0.4<Da/D3<0.6
上記の条件式6を満足することで、正レンズL31の物体側面と負レンズL33の像側面において単色収差および色収差のやりとりをし、全体として収差補正できるようにしている。これによって、各収差をさらに良好に補正した高性能のズームレンズを得ることができる。
上述したズームレンズは、さらに、短焦点端から長焦点端への変倍に際して、絞りが独立で移動することが望ましい。このズームレンズによれば、短焦点端において絞りが物体側にあることにより、絞りより物体側にある群を小さくすることができ、かつ絞りより物体側にある群を簡単な構成で収差補正することができる。これによって、小型で高性能なズームレンズを提供することができる。
上述したズームレンズは、さらに、以下の条件式7を満足することが望ましい。ここで「TL3s_w」は、短焦点端における絞りと第3レンズ群の間隔である。「TL2s_w」は、短焦点端における第2レンズ群と絞りとの間隔である。
(条件式7)
0.15<TLs3_w/TL2s_w<0.40
上記の条件式7を満足することでさらに小型でかつ高性能のズームレンズを得ることができる。
なお、条件式7の下限値を超えると、第2レンズ群と絞りの間隔が大きくなり、短焦点端における第2レンズ群を通る軸外光線が高くなり過ぎ、第2レンズ群内における軸外収差の補正が困難になり、かつ第2レンズ群が大型化する。
また、条件式7の上限値を超えると、第3レンズ群と絞りの間隔が大きくなり、短焦点端における第3レンズ群を通る軸外光線が高くなり過ぎ、第3レンズ群内における収差補正が困難になり、かつ第3レンズ群が大型化する。
また、上述したズームレンズは、さらに、短焦点端から長焦点端への変倍に際して、各レンズ群は個別に移動することが望ましい。すなわち、第1レンズ群は像側に凸になるように移動し、第2レンズ群は像側に移動し、第3レンズ群は物体側に移動し、第4レンズ群が物体側に移動し、第5レンズ群と第4レンズ群の間隔が増大するように変倍することが望ましい。
像面に到達する光量を減少させる必要があるときには、絞りを小径化しても良いが、絞り径を大きく変えることなく、NDフィルタ等の挿入により光量を減少させた方が、回折現象による解像力の低下を防止できて好ましい。
次に、本発明に係るカメラの実施形態について説明する。本実施形態に係るカメラは、撮影用光学系に上述したズームレンズを備えている。これによって、広角端の半画角が42度以上と十分に広画角でありながら短焦点端のFナンバが2.0以下、長焦点端のFナンバが3.0程度であり、小型でかつ高い解像力を有するズームレンズを備えたカメラを実現することができる。
次に、本発明に係る携帯情報端末装置の実施形態について説明する。本実施形態に係る携帯情報端末装置は、カメラ機能部の撮影用光学系に上述したズームレンズを備えている。これによって、広角端の半画角が42度以上と十分に広画角でありながら短焦点端のFナンバが2.0以下、長焦点端のFナンバが3.0程度であり、小型でかつ高い解像力を有するズームレンズをカメラ機能部に備えた携帯情報端末装置を実現することができる。
次に、本発明に係るズームレンズの具体的な実施例について数値を示しながら説明する。以下において説明をする実施例1乃至4に係るズームレンズは、正負正正の4群構成である。各実施例において、第4レンズ群の像面側に配設される平行平板は、光学ローパスフィルタ・赤外カットフィルタ等の各種フィルタや、CMOSセンサ等の受光素子のカバーガラス(シールガラス)を想定したものである。
各実施例に係るズームレンズは、収差が十分に補正されていることを示していて、本発明に係るズームレンズが1000万〜2000万画素の受光素子に対応可能であることを示している。また、各実施例に係るズームレンズは、十分な小型化を達成しながら非常に良好な像性能を確保し得ることを示している。
各実施例における記号は以下の通りである。
f:全系の焦点距離
F:Fナンバ
ω:半画角
R:曲率半径
D:面間隔
Nd:屈折率
νd:アッベ数
φ:光線有効経
K:非球面の円錐定数
A4:4次の非球面係数
A6:6次の非球面係数
A8:8次の非球面係数
A10:10次の非球面係数
ただし、非球面に関しては、近軸曲率半径の逆数(近軸曲率)をC、光軸からの高さをHとするとき、下記の式で定義される。
X=CH2/[1+{1−(1+k)C2H2}1/2]+A4H4+A6H6+A8H8+A10H10
なお、各実施例における数値例を示す表中の「ガラス」欄には、製造会社と光学ガラス種名を記載している。同欄中の記載における(OHARA)は「株式会社オハラ」の略記であり、(HIKARI)は「光ガラス株式会社」の略記である。
図1は、実施例1に係るズームレンズの光学配置図を示しており、(a)は広角端(短焦点端)におけるレンズ群配置を、(b)は中間焦点距離におけるレンズ群配置を、(c)は望遠端(長焦点端)におけるレンズ群配置をそれぞれ示している。図1に示すように、広角端から望遠端への変倍に際して、ズームレンズの各レンズ群は、矢印で示すように移動する。
図1に示すズームレンズは、光軸に沿って、物体側から像面側に向かって、順次、正の屈折力を有する第1レンズ群G1と、負の屈折力を有する第2レンズ群G2と、正の屈折力を有する第3レンズ群G3と、正の屈折力を有する第4レンズ群G4とを有している。
開口絞りSは、第2レンズ群G2と第3レンズ群G3の間に配設されている。また、符号Fは、「透明平行平板」を示す。透明平行平板Fは、光学ローパスフィルタ・赤外カットフィルタ等の各種フィルタ(物体側の透明平行平板)やCCDセンサ等の撮像素子のカバーガラス(シールガラス
像側の透明平行平板)を例示したものである。
第1レンズ群G1は、1枚の第1レンズL11から構成される。
第2レンズ群G2は、第1レンズL21、第2レンズL22、第3レンズL23、から構成される。なお、第2レンズ群G2の第1レンズL21は、物体側の面に設けられた樹脂膜によって非球面レンズとなるハイブリット非球面レンズである。
第3レンズ群G3は、第1レンズL31、第2レンズL32、第3レンズL33、第4レンズL34、第5レンズL35、第6レンズL36、から構成される。
第4レンズ群G4は、1枚の第1レンズL41から構成される。
第1レンズ群G1から第4レンズ群G4は、それぞれ各レンズ群に適宜なる共通の支持枠等によって支持され、ズーミング等に際してはレンズ群毎に相対的に動作する。開口絞りSは、短焦点端から長焦点端への変倍に際して、各レンズ群とは独立して移動する。
実施例1に係るズームレンズは、広角端(短焦点端)から望遠端(長焦点端)への変倍に際し、第1レンズ群G1から第4レンズ群G4の全群が移動する。第1レンズ群G1は像面側に凸になるように移動し、第2レンズ群G2は像面側に移動し、第3レンズ群G3は物体側に移動し、第4レンズ群G4は移動する。これら各レンズ群の移動により、第1レンズ群G1と第2レンズ群G2の間隔は大きくなり、第2レンズ群G2と第3レンズ群G3との間隔は小さくなる。
図2から図4は、実施例1に係るズームレンズの収差図を示している。図2は短焦点端における収差曲線図、図3は中間焦点距離における収差曲線図、図4は長焦点端における収差曲線図であって、各図の(a)は球面収差を示し、(b)は非点収差を示し、(c)は歪曲収差を示し、(d)はコマ収差をそれぞれ示している。なお、球面収差の図中の破線は正弦条件を、非収差の図中の実線はサジタル、破線はメリディオナルを表している。また、「g」、「d」はそれぞれg線およびd線を表している。
実施例1の光学特性を示す数値を表1に示す。実施例1は、全光学系の焦点距離f、Fナンバ、半画角ωがそれぞれ、ズーミングによって、f=4.63〜14.95、Fナンバ=1.85〜2.87、ω=47.73〜18.84の範囲で変化する。
表1中の可変Aは第1レンズ群G1と第2レンズ群G2の間の可変間隔を示している。また、可変Bは第2レンズ群G2と開口絞りSの間の可変間隔を示している。また、可変Cは開口絞りSと第3レンズ群G3の間の可変間隔を示している。また、可変Dは第3レンズ群G3と第4レンズ群G4の間の可変間隔を示している。また、可変Eは第4レンズ群G4と透明平行平板Fの間の可変間隔を示している。各間隔は表2に表すように、ズーミングに伴って変化する。
また、表1中のアスタリスク(*)は非球面であることを表し、その非球面係数の数値は表3に示す通りである。
また、上記に示した各条件式に関する数値は表4に示す通りである。
図5は、実施例2に係る投射用ズームレンズの光学配置図を示しており、(a)は広角端(短焦点端)におけるレンズ群配置を、(b)は中間焦点距離におけるレンズ群配置を、(c)は望遠端(長焦点端)におけるレンズ群配置をそれぞれ示している。図5に示すように、広角端から望遠端への変倍に際して、ズームレンズの各レンズ群は、矢印で示すように移動する。
図5に示すズームレンズは、光軸に沿って、物体側から像面側に向かって、順次、正の屈折力を有する第1レンズ群G1と、負の屈折力を有する第2レンズ群G2と、正の屈折力を有する第3レンズ群G3と、正の屈折力を有する第4レンズ群G4とを有している。
開口絞りSは、第2レンズ群G2と第3レンズ群G3の間に配設されている。また、符号Fは、「透明平行平板」を示す。透明平行平板Fは、光学ローパスフィルタ・赤外カットフィルタ等の各種フィルタ(物体側の透明平行平板)やCCDセンサ等の撮像素子のカバーガラス(シールガラス
像側の透明平行平板)を例示したものである。
第1レンズ群G1は、1枚の第1レンズL11から構成される。
第2レンズ群G2は、第1レンズL21、第2レンズL22、第3レンズL23、から構成される。なお、第2レンズ群G2の第1レンズL21は、物体側の面に設けられた樹脂膜によって非球面レンズとなるハイブリット非球面レンズである。
第3レンズ群G3は、第1レンズL31、第2レンズL32、第3レンズL33、第4レンズL34、第5レンズL35、第6レンズL36、から構成される。
第4レンズ群G4は、1枚の第1レンズL41から構成される。
第1レンズ群G1から第4レンズ群G4は、それぞれ各レンズ群に適宜なる共通の支持枠等によって支持され、ズーミング等に際してはレンズ群毎に相対的に動作する。開口絞りSは、短焦点端から長焦点端への変倍に際して、各レンズ群とは独立して移動する。
実施例2に係るズームレンズは、広角端(短焦点端)から望遠端(長焦点端)への変倍に際し、第1レンズ群G1から第4レンズ群G4の全群が移動する。第1レンズ群G1は像面側に凸になるように移動し、第2レンズ群G2は像面側に移動し、第3レンズ群G3は物体側に移動し、第4レンズ群G4は移動する。これら各レンズ群の移動により、第1レンズ群G1と第2レンズ群G2の間隔は大きくなり、第2レンズ群G2と第3レンズ群G3との間隔は小さくなる。
図6から図8は、実施例2に係るズームレンズの収差図を示している。図6は短焦点端における収差曲線図、図7は中間焦点距離における収差曲線図、図8は長焦点端における収差曲線図であって、各図の(a)は球面収差を示し、(b)は非点収差を示し、(c)は歪曲収差を示し、(d)はコマ収差をそれぞれ示している。なお、球面収差の図中の破線は正弦条件を、非収差の図中の実線はサジタル、破線はメリディオナルを表している。また、「g」、「d」はそれぞれg線およびd線を表している。
次に、実施例2の光学特性を示す数値を表5に示す。実施例2は、全光学系の焦点距離f、Fナンバ、半画角ωが、ズーミングによってそれぞれ、f=4.63〜14.95、Fナンバ=1.85〜2.77、ω=47.61〜18.86の範囲で変化する。
表5中の可変Aは第1レンズ群G1と第2レンズ群G2の間の可変間隔を示している。また、可変Bは第2レンズ群G2と開口絞りSの間の可変間隔を示している。また、可変Cは開口絞りSと第3レンズ群G3の間の可変間隔を示している。また、可変Dは第3レンズ群G3と第4レンズ群G4の間の可変間隔を示している。また、可変Eは第4レンズ群G4と透明平行平板Fの間の可変間隔を示している。各間隔は表6に表すように、ズーミングに伴って変化する。
また、表1中のアスタリスク(*)は非球面であることを表し、その非球面係数の数値は表7に示す通りである。
また、上記に示した各条件式に関する数値は表8に示す通りである。
ここで、実施例2に係るズームレンズにおいて生じる歪曲収差の補正について説明する。図17は、実施例2に係るズームレンズにおける歪曲収差の電子的な補正を説明する図である。実施例2に係るズームレンズは、中間焦点距離状態付近や長焦点端では歪曲収差の発生は抑えられているが、短焦点端では樽型の歪曲収差が発生する。
そこで、図17に示すように、実施例2のズームレンズの短焦点端において、撮像するときは、歪曲収差を電気的に補正するために、矩形の受光素子13の有効撮像範囲100に対し、有効撮像範囲を樽型の撮像範囲101のように設定する。中間焦点距離状態付近や長焦点端においては、有効撮像範囲100はそのままにする。そして、短焦点端における撮像範囲101にて撮像した画像に対し、画像処理により画像変換して、歪みを低減させた矩形の画像情報に変換する。このように、歪曲収差の補正を電気的に行うために、短焦点端での像高は4.55mm、中間焦点距離と長焦点端での像高を4.9mmとする。
図9は、実施例3に係るズームレンズの光学配置図を示しており、(a)は広角端(短焦点端)におけるレンズ群配置を、(b)は中間焦点距離におけるレンズ群配置を、(c)は望遠端(長焦点端)におけるレンズ群配置をそれぞれ示している。図9に示すように、広角端から望遠端への変倍に際して、ズームレンズの各レンズ群は、矢印で示すように移動する。
図9に示すズームレンズは、光軸に沿って、物体側から像面側に向かって、順次、正の屈折力を有する第1レンズ群G1と、負の屈折力を有する第2レンズ群G2と、正の屈折力を有する第3レンズ群G3と、正の屈折力を有する第4レンズ群G4とを有している。
開口絞りSは、第2レンズ群G2と第3レンズ群G3の間に配設されている。また、符号Fは、「透明平行平板」を示す。透明平行平板Fは、光学ローパスフィルタ・赤外カットフィルタ等の各種フィルタ(物体側の透明平行平板)やCCDセンサ等の撮像素子のカバーガラス(シールガラス
像側の透明平行平板)を例示したものである。
第1レンズ群G1は、1枚の第1レンズL11から構成されている。
第2レンズ群G2は、第1レンズL21、第2レンズL22、第3レンズL23、から構成されている。なお、第2レンズ群G2の第1レンズL21は、物体側の面に設けられた樹脂膜によって非球面レンズとなるハイブリット非球面レンズである。
第3レンズ群G3は、第1レンズL31、第2レンズL32、第3レンズL33、第4レンズL34、第5レンズL35、第6レンズL36、から構成されている。
第4レンズ群G4は、1枚の第1レンズL41から構成されている。
第1レンズ群G1から第4レンズ群G4は、それぞれ各レンズ群に適宜なる共通の支持枠等によって支持され、ズーミング等に際してはレンズ群毎に相対的に動作する。開口絞りSは、短焦点端から長焦点端への変倍に際して、各レンズ群とは独立して移動する。
実施例3に係るズームレンズは、広角端(短焦点端)から望遠端(長焦点端)への変倍に際し、第1レンズ群G1から第4レンズ群G4の全群が移動する。第1レンズ群G1は像面側に凸になるように移動し、第2レンズ群G2は像面側に移動し、第3レンズ群G3は物体側に移動し、第4レンズ群G4は移動する。これら各レンズ群の移動により、第1レンズ群G1と第2レンズ群G2の間隔は大きくなり、第2レンズ群G2と第3レンズ群G3との間隔は小さくなる。
図10から図12は、実施例3に係るズームレンズの収差図を示している。図10は短焦点端における収差曲線図、図11は中間焦点距離における収差曲線図、図12は長焦点端における収差曲線図であって、各図の(a)は球面収差を示し、(b)は非点収差を示し、(c)は歪曲収差を示し、(d)はコマ収差をそれぞれ示している。なお、球面収差の図中の破線は正弦条件を、非収差の図中の実線はサジタル、破線はメリディオナルを表している。また、「g」、「d」はそれぞれg線およびd線を表している。
次に、実施例3の光学特性を示す数値を表9に示す。実施例3は、全光学系の焦点距離f、Fナンバ、半画角ωが、ズーミングによってそれぞれ、f=4.63〜14.93、Fナンバ=1.85〜2.88、ω=47.69〜18.78の範囲で変化する。
表9中の可変Aは第1レンズ群G1と第2レンズ群G2の間の可変間隔を示している。また、可変Bは第2レンズ群G2と開口絞りSの間の可変間隔を示している。また、可変Cは開口絞りSと第3レンズ群G3の間の可変間隔を示している。また、可変Dは第3レンズ群G3と第4レンズ群G4の間の可変間隔を示している。また、可変Eは第4レンズ群G4と透明平行平板Fの間の可変間隔を示している。各間隔は表10に表すように、ズーミングに伴って変化する。
また、表9中のアスタリスク(*)は非球面であることを表し、その非球面係数の数値は表11に示す通りである。
また、上記に示した各条件式に関する数値は表12に示す通りである。
図13は、実施例4に係るズームレンズの光学配置図を示しており、(a)は広角端(短焦点端)におけるレンズ群配置を、(b)は中間焦点距離におけるレンズ群配置を、(c)は望遠端(長焦点端)におけるレンズ群配置をそれぞれ示している。図13に示すように、広角端から望遠端への変倍に際して、ズームレンズの各レンズ群は、矢印で示すように移動する。
図13に示すズームレンズは、光軸に沿って、物体側から像面側に向かって、順次、正の屈折力を有する第1レンズ群G1と、負の屈折力を有する第2レンズ群G2と、正の屈折力を有する第3レンズ群G3と、正の屈折力を有する第4レンズ群G4とを有している。
開口絞りSは、第2レンズ群G2と第3レンズ群G3の間に配設されている。また、符号Fは、「透明平行平板」を示す。透明平行平板Fは、光学ローパスフィルタ・赤外カットフィルタ等の各種フィルタ(物体側の透明平行平板)やCCDセンサ等の撮像素子のカバーガラス(シールガラス
像側の透明平行平板)を例示したものである。
第1レンズ群G1は、1枚の第1レンズL11から構成されている。
第2レンズ群G2は、第1レンズL21、第2レンズL22、第3レンズL23、から構成されている。なお、第2レンズ群G2の第1レンズL21は、物体側の面に設けられた樹脂膜によって非球面レンズとなるハイブリット非球面レンズである。
第3レンズ群G3は、第1レンズL31、第2レンズL32、第3レンズL33、第4レンズL34、第5レンズL35、第6レンズL36、から構成されている。
第4レンズ群G4は、1枚の第1レンズL41から構成されている。
第1レンズ群G1から第4レンズ群G4は、それぞれ各レンズ群に適宜なる共通の支持枠等によって支持され、ズーミング等に際してはレンズ群毎に相対的に動作する。開口絞りSは、短焦点端から長焦点端への変倍に際して、各レンズ群から独立して移動する。
実施例4に係るズームレンズは、広角端(短焦点端)から望遠端(長焦点端)への変倍に際し、第1レンズ群G1から第4レンズ群G4の全群が移動する。第1レンズ群G1は像面側に凸になるように移動し、第2レンズ群G2は像面側に移動し、第3レンズ群G3は物体側に移動し、第4レンズ群G4は移動する。これら各レンズ群の移動により、第1レンズ群G1と第2レンズ群G2の間隔は大きくなり、第2レンズ群G2と第3レンズ群G3との間隔は小さくなる。
図14から図16は、実施例4に係るズームレンズの収差図を示している。図14は短焦点端における収差曲線図、図15は中間焦点距離における収差曲線図、図16は長焦点端における収差曲線図であって、各図の(a)は球面収差を示し、(b)は非点収差を示し、(c)は歪曲収差を示し、(d)はコマ収差をそれぞれ示している。なお、球面収差の図中の破線は正弦条件を、非収差の図中の実線はサジタル、破線はメリディオナルを表している。また、「g」、「d」はそれぞれg線およびd線を表している。
次に、実施例4の光学特性を示す数値を表13に示す。実施例4においては、全光学系の焦点距離f、Fナンバ、半画角ωが、ズーミングによってそれぞれ、f=4.63〜14.94、Fナンバ=1.86〜2.89、ω=47.85〜18.37の範囲で変化する。
表13中の可変Aは第1レンズ群G1と第2レンズ群G2の間の可変間隔を示している。また、可変Bは第2レンズ群G2と開口絞りSの間の可変間隔を示している。また、可変Cは開口絞りSと第3レンズ群G3の間の可変間隔を示している。また、可変Dは第3レンズ群G3と第4レンズ群G4の間の可変間隔を示している。また、可変Eは第4レンズ群G4と透明平行平板Fの間の可変間隔を示している。各間隔は表14に表すように、ズーミングに伴って変化する。
また、表13中のアスタリスク(*)は非球面であることを表し、その非球面係数の数値は表15に示す通りである。
また、上記に示した各条件式に関する数値は表16に示す通りである。
以上の通りに、本発明に係るズームレンズは、実施例1乃至4に示した具体的な構成において、収差は高いレベルで補正されており、球面収差、非点収差、像面湾曲、倍率色収差、歪曲収差も十分に補正されている。すなわち、良好な光学性能を確保し得ることは、各実施例より明らかである。
次に、上記実施例1乃至4に係るズームレンズを撮像用光学系に用いる本発明に係るカメラおよびカメラとしての携帯情報端末の実施形態について説明をする。
図18(a)は、物体側、すなわち被写体側である前面側から見たデジタルカメラの外観を模式的に示す斜視図である。図18(b)は、撮影者側である背面側から見たデジタルカメラの外観を模式的に示す斜視図である。図19は、デジタルカメラの機能構成を模式的に示すブロック図である。なお、ここでは、デジタルカメラを例にとってカメラについて説明しているが、従来の画像記録媒体として銀塩フィルムを用いる銀塩フィルムカメラに本発明に係るズームレンズを採用してもよい。また、いわゆるPDA(personal data assistant)や携帯電話機等の携帯情報端末装置にカメラ機能を組み込んだものが広く用いられている。このような携帯情報端末装置も外観は若干異にするものの、デジタルカメラと実質的に全く同様の機能・構成を含んでいる。よって、このような携帯情報端末情報装置の撮像用光学系として、本発明に係るズームレンズを採用してもよい。
図18に示すように、デジタルカメラは、撮影レンズ1、光学ファインダ2、ストロボ3、シャッタボタン4、カメラボディ5、電源スイッチ6、液晶モニタ7、操作ボタン8、メモリカードスロット9およびズームスイッチ10等を具備している。
さらに、図19に示すように、デジタルカメラは、中央演算装置11、画像処理装置12、受光素子13、信号処理装置14、半導体メモリ15および通信カード等16を備えている。デジタルカメラは、撮像用光学系としての撮影レンズ1と、CMOS(相補型金属酸化物半導体)撮像素子またはCCD(電荷結合素子)撮像素子等を用いてイメージセンサとして構成された受光素子13と、を有している。
撮影レンズ1によって結像される被写体(物体)光学像を、この受光素子13によって読み取る。撮影レンズ1として、上述した第1乃至第4の実施例において説明した本発明に係るズームレンズを用いる。受光素子13の出力は、中央演算装置11によって制御される信号処理装置14によって処理され、デジタル画像情報に変換される。すなわち、このようなデジタルカメラは、撮像された画像(被写体画像)をデジタル画像情報に変換する手段を含んでおり、この手段は、実質的に、受光素子13、信号処理装置14およびこれらを制御する中央演算装置11等により構成される。
信号処理装置14によってデジタル化された画像情報は、中央演算装置11によって制御される画像処理装置12において所定の画像処理が施される。この画像処理の後、不揮発性メモリ等の半導体メモリ15に記録される。この半導体メモリ15は、メモリカードスロット9に装填されたメモリカードでもよく、カメラ本体に(オンボードで)内蔵された半導体メモリでもよい。
液晶モニタ7には、撮影中の画像を表示することもできる。また、半導体メモリ15に記録されている画像を表示することもできる。また、半導体メモリ15に記録した画像は、通信カードスロット(図示していない)に装填した通信カード等16を介して外部へ送信することも可能である。
撮影レンズ1は、カメラの携帯時には、その対物面がレンズバリア(図示していない)により覆われていて、ユーザーが電源スイッチ6を操作して電源を投入すると、レンズバリアが開き、対物面が露出する。このとき、撮影レンズ1の鏡胴の内部では、ズームレンズを構成する各レンズ群の光学系は、例えば広角端(短焦点端)の配置となっている。その後、ズームスイッチ10の操作により、各レンズ群の光学系の配置が変更され、中間焦点距離を経て望遠端(長焦点端)へと変倍動作を行う。なお、光学ファインダ2の光学系も撮影レンズ1の画角の変化に連動して変倍することが望ましい。
ユーザーが、シャッタボタン4を半押し状態にすることで、フォーカシングがなされる。本発明に係るズームレンズにおけるフォーカシングは、ズームレンズを構成する複数群の光学系の一部の群(例えば、第2レンズ群G2や第3レンズ群G3)の移動、または受光素子13の移動などによって行うことができる。シャッタボタン4をさらに押し込み全押し状態とすると撮影が行なわれ、その後に上述した通りの処理がなされる。半導体メモリ15に記録した画像を液晶モニタ7に表示させ、通信カード等16を介して外部へ送信させるには、操作ボタン8を用いて所定の操作を行えばよい。半導体メモリ15および通信カード等16は、メモリカードスロット9および通信カードスロット等のような、それぞれ専用または汎用のスロットに装填して使用される。
上述のようなデジタルカメラ(撮像装置)または携帯情報端末装置には、既に述べた第1〜第4の実施例に係るズームレンズを用いることができる。これによって、広角端の半画角が45度以上と十分に広画角であり、短焦点端のFナンバが2.0以下、長焦点端のFナンバが3.0程度でありながら、小型化を図ることができるズームレンズを撮影レンズ1として使用することができる。したがって、1000万画素〜2000万画素またはそれ以上の画素数の受光素子を使用した高画質で通常の撮影領域を十分にカバーし得る変倍域を有した小型のデジタルカメラ(撮像装置)または携帯情報端末装置を実現することができる。