JP5879111B2 - 表面保護フィルム - Google Patents
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Description
ここで、特に被着体の表面が凹凸形状となっている場合には、時間および温度などの外因によって被着体と粘着剤層と間の接触面積が増加することによる粘着力の上昇、いわゆる粘着昂進の問題がある。
なかでも、拡散フィルムのように凹凸が比較的小さい被着体の場合、この接触面積の増加が顕著なので、粘着昂進が特に問題になり易い。
また、高級アルキル基の導入されたポリエチレンイミンとリン酸エステル系界面活性剤を含有する粘着剤層を有する表面保護フィルムが提案されている(特許文献2)。
更に、脂肪酸アミドとポリエチレンイミンアルキルカバミドの少なくとも1種類を含有する粘着層を有する表面保護フィルムが提案されている(特許文献3)
特許文献1、2の表面保護フィルムの場合、アクリル系の樹脂およびポリカーボネート系の樹脂等の極性ポリマーから形成される光学シートにおいては、貼付後の加熱によって粘着層の粘着昂進が起こることがある。
特許文献3の表面保護フィルムの場合、使用する脂肪酸アミドの種類によっては、初期粘着力が低下することや、貼付後の加熱によって粘着層の粘着昂進が起こることがある。
重合体(ii):下記重合体ブロックAおよび下記重合体ブロックBを含み、一般式A−B−A(式中の記号は上記と同意義を表す。)もしくは一般式[A−B]x−Y(式中、xは1以上の整数を表し、Yはカップリング剤残基を、その他の記号は上記と同意義を表す。)で表される構造を有する共重合体(II)またはその水素添加物と;
示差走査熱量測定により40〜80℃の範囲に、脂肪酸アミド化合物又はそれを主成分として含む脂肪酸アミド組成物起因の吸熱ピークを有する、脂肪酸アミド化合物又はそれを主成分として含む脂肪酸アミド組成物と
を含有し、
上記重合体(i)および上記重合体(ii)の全体の芳香族アルケニル化合物単位含有率(St(A+B))は、30〜50重量%であり、
上記重合体(i)および上記重合体(ii)にそれぞれ含まれる重合体ブロックAの総量と重合体ブロックBの総量との重量比(A:B)が5:95〜25:75の範囲内であり、
上記脂肪酸アミド化合物の含有量が、上記重合体(i)および上記重合体(ii)の合計重量100重量部に対して、0.3〜2重量部であることを特徴とする。
重合体ブロックA:
芳香族アルケニル化合物単位が連続し、芳香族アルケニル化合物単位を主体とする重合体ブロック
重合体ブロックB:
共役ジエン単位と芳香族アルケニル化合物単位がランダムに含まれる芳香族アルケニル−共役ジエン共重合体ブロックであって、芳香族アルケニル化合物単位含有率(St(b))が10〜35重量%である重合体ブロック
また、上記脂肪酸アミド化合物は、エチレンビスステアリン酸アミド、エチレンビスミリスチン酸アミド、エチレンビスラウリン酸アミド、エチレンビスカプリン酸アミド及びエチレンビスパルミチン酸からなる群から選択される少なくとも1種の化合物であることが好ましい。
さらに、上記脂肪酸アミド化合物起因の吸熱ピークは、60〜80℃の範囲にあることが好ましい。
また、上記吸熱ピークの吸熱量は、上記脂肪酸アミド化合物又はそれを主成分として含む脂肪酸アミド組成物1mgに対して0.5mJ以上であることが好ましい。
また、上記脂肪酸アミド化合物又はそれを主成分として含む脂肪酸アミド組成物の酸価は、14mgKOH/g以下であることが好ましい。好ましくは8.5mgKOH/g以下、さらに好ましくは5mgKOH/g以下とすることができる。なお、工業的な製法によれば通常酸価が生じる。
本明細書において数値範囲を表すために用いられる記号「〜」は、特に記載の無い限り、当該数値範囲がその両端の数値を含むことを意図して用いられる。
本発明の粘着剤組成物は、下記重合体(i)、下記重合体(ii)、および所定の少なくとも1種の脂肪酸アミド化合物又はそれを主成分として含む脂肪酸アミド組成物を含有する。
本明細書中、「重合体(i)」は、下記重合体ブロックAおよび下記重合体ブロックBを含み、一般式[A−B]n(式中、Aは重合体ブロックAを、Bは重合体ブロックBを、nは1〜3の整数を表す。)で表される構造を有する共重合体(I)またはその水素添加物である。
本明細書中、「重合体(ii)」は、下記重合体ブロックAおよび下記重合体ブロックBを含み、一般式A−B−A(式中の記号は上記と同意義を表す。)もしくは一般式[A−B]x−Y(式中、xは2以上の整数を表し、Yはカップリング剤残基を、その他の記号は上記と同意義を表す。)
で表される構造を有する共重合体(II)またはその水素添加物である。
なお、本明細書中、上記重合体(i)と上記重合体(ii)とからなる組成物を、単に「共重合体組成物」と称する場合がある。
本発明の粘着剤組成物において、上記重合体(i)および上記重合体(ii)の全体の芳香族アルケニル化合物単位含有率は、30〜50重量%であり、
上記重合体(i)と上記重合体(ii)に含まれる重合体ブロックAの総量と重合体ブロックBの総量との重量比が5:95〜25:75の範囲内である。
本明細書中、「重合体ブロックA」は、芳香族アルケニル化合物単位が連続し、芳香族アルケニル化合物単位を主体とする重合体ブロックである。
本明細書中、「重合体ブロックB」は、共役ジエン単位と芳香族アルケニル化合物単位がランダムに含まれる芳香族アルケニル−共役ジエン共重合体ブロックであって、芳香族アルケニル化合物単位含有率(St(b))が10〜35重量%である重合体ブロックである。
上述のように、「重合体ブロックA」は、芳香族アルケニル化合物単位が連続し、芳香族アルケニル化合物単位を主体とする重合体ブロックである。
「重合体ブロックB」は、共役ジエン単位と芳香族アルケニル化合物単位がランダムに含まれる芳香族アルケニル−共役ジエン共重合体ブロックであって、芳香族アルケニル化合物単位含有率(St(b))が10〜35重量%である重合体ブロックである。
なお、「重合体ブロックB」は、本発明の効果を妨げない範囲において、共役ジエン化合物単位、および芳香族アルケニル化合物単位以外の繰り返し単位も含んでいてもよい。
「共重合体(I)」は、下記重合体ブロックAおよび下記重合体ブロックBを含み、一般式[A−B]n(式中、Aは重合体ブロックAを、Bは重合体ブロックBを、nは1〜3の整数を表す。)で表される構造を有する共重合体である。
なお、本明細書中、水素添加の比率(水素添加率)は、四塩化炭素を溶媒として用い、270MHz、lH−NMRスペクトルから算出した水素添加率を意味する。
重合体(i)は、単独(1種)であってもよく、2種以上の組み合わせであってもよい。
「共重合体(II)」は、下記重合体ブロックAおよび下記重合体ブロックBを含み、一般式A−B−A(式中の記号は上記と同意義を表す。)もしくは一般式[A−B]x−Y(式中、xは2以上の整数を表し、Yはカップリング剤残基を、その他の記号は上記と同意義を表す。)で表される構造を有する共重合体である。
末端の重合体ブロックAは共重合体(II)全体の2重量%以上を占めていることが好ましい。重合体ブロックAの効果を確実に発揮させるためである。なお、一部の共重合体(II)の末端が−Bの構造を有していても、末端の重合体ブロックBの含有率が共重合体(II)全体の2重量%未満である場合には、末端が重合体ブロックAであるのと同様の効果を発揮させることができる。すなわち、上記構造は実質的に末端が重合体ブロックAであるとみなすことができる。
一般式[A−B]x−Y(式中、xは2以上の整数を表し、Yはカップリング剤残基を、その他の記号は上記と同意義を表す。)で表される構造を有する共重合体は、言い換えれば、共重合体(I)がYによってカップリングした構造を有する。従って、[A−B]x−Yの場合、同じ反応釜で、(I)、(II)の混合物を合成することが出来るため、工業的な観点から、[A−B]x−Yの方が好ましい。xが3以上である場合、当該共重合体は、いわゆる星形重合体である。xは、当該共重合体製造時における副反応を抑制し、当該共重合体の物性を制御する観点からは、好ましくは2〜4である。
重合体(ii)は、単独(1種)であってもよく、2種以上の組み合わせであってもよい。
粘着剤層の浮きや糊残りをより確実に防止するという観点から、重合体(i)と重合体(ii)との重量比は50:50〜15:85の範囲内であることがより好ましい。
本発明の粘着剤組成物は、示差走査熱量測定により、40〜80℃の範囲に、脂肪酸アミド化合物又はそれを主成分として含む脂肪酸アミド組成物起因の吸熱ピークが測定される、脂肪酸アミド化合物又はそれを主成分として含む脂肪酸アミド組成物を含有する。なお、本明細書において、「脂肪酸アミド化合物又はそれを主成分として含む脂肪酸アミド組成物」を単に「脂肪酸アミド」と称する場合がある。
本発明の粘着剤組成物に含有される少なくとも1種の脂肪酸アミド化合物又はそれを主成分として含む脂肪酸アミド組成物は、示差走査熱量測定により40〜80℃の範囲に、「脂肪酸アミド化合物又はそれを主成分として含む脂肪酸アミド組成物」起因の吸熱ピークを有する。ここで「脂肪酸アミド化合物又はそれを主成分として含む脂肪酸アミド組成物起因の吸熱ピーク」とは、脂肪酸アミド化合物又はそれを主成分として含む脂肪酸アミド組成物に対する、後述の示差走査熱量測定により得られた吸熱ピークを指す。
重合体(i)および重合体(ii)の合計重量(共重合体組成物の重量)100重量部に対する脂肪酸アミド化合物の総含有量は0.3〜2重量部である。脂肪酸アミド化合物の総含有量とは、例えば、炭素数18のエチレンビスステアリン酸アミドと、炭素数14又は16の脂肪酸アミド化合物を含む場合には、それらの合計含有量を指す。上記脂肪酸アミド化合物の総含有量が0.3重量部未満の場合には、粘着昂進現象の抑制が十分でない。また、2重量部超の場合には、初期接着力が十分でなくなる。
上記吸熱ピークの吸熱量は、上記脂肪酸アミド化合物又はそれを主成分として含む脂肪酸アミド組成物1mgに対して0.5mJ以上であることが好ましく、0.8〜4.0mJであることがより好ましい。脂肪酸アミド組成物の単位重量あたりの吸熱量は、原料に含まれる有効成分としての脂肪酸アミド化合物の量に対応する。このため、吸熱量が高いほど原料(脂肪酸アミド組成物)に含まれる有効成分(脂肪酸アミド化合物)の濃度が濃く、粘着剤組成物中に添加する原料を少量にすることができ、原料コストを抑えられる。
上記脂肪酸アミド化合物又はそれを主成分として含む脂肪酸アミド組成物の酸価は、14mgKOH/g以下が好ましく、より好ましくは8.5mgKOH/g以下、さらに好ましくは5mgKOH/g以下である。酸価がこのような範囲にあることにより、表面保護フィルムの粘着力の経時での粘着力安定性が向上する。脂肪酸アミドを合成した後に不純物として残った脂肪酸の含有量を測定する指標が酸価であり、数値が高い事は反応残渣として脂肪酸がより多く含まれている事を示している。脂肪酸はアルキル鎖の長さによるが加熱により容易に気化し、経時で粘着剤表面に析出し、表面保護フィルムの粘着力の不安定化の原因となる。上記の範囲に酸価を抑えることにより、表面保護フィルムの経時による粘着力安定性がより向上する。
本発明の粘着剤組成物は、必要に応じて、粘着付与剤、スチレン系ブロック相補強剤、軟化剤、酸化防止剤、光安定剤、紫外線吸収剤、充填剤、顔料、粘着昂進防止剤、オレフィン系樹脂、シリコーン系ポリマー、液状アクリル系共重合体、リン酸エステル系化合物等の公知の添加剤を適宜含有してもよい。
本発明での粘着付与剤とは、芳香族アルケニルブロック共重合体中の共役ジエン系またはその水素添加されたソフトセグメントであるゴム層に対して相溶し、粘着力をコントロールできるものを意味する。
なお、「相溶」とは、共重合体組成物に粘着付与剤を配合することにより得られる配合物のtanδピーク温度が、共重合体組成物のtanδピーク温度とは異なる値になる状態のことをいう。なお、本明細書中、「tanδピーク温度」とは、tanδの最大となる温度を意味する。
光安定化剤としては、ヒンダードアミン系化合物が挙げられる。
紫外線吸収剤としては、特に限定されず、例えば、サリチル酸系紫外線吸収剤、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、シアノアクリレート系紫外線吸収剤等が挙げられる。
粘着昂進防止剤としては、脂肪酸アミド、ポリエチレンイミンの長鎖アルキルグラフト物、大豆油変性アルキド樹脂(例えば、荒川化学工業社製、商品名「アラキード251」等)、トール油変性アルキド樹脂(例えば、荒川化学工業社製、商品名「アラキード6300」等)などが挙げられる。
これらの添加剤は、単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
本発明の表面保護フィルムは、基材層と、上記で説明した粘着剤組成物からなる粘着剤層とを有する。
好ましくは、当該粘着剤層は、当該基材層の一方の表面上に配置されている。
当該基材層と当該粘着剤層の間には、中間層が存在していてもよい。
基材層として好ましくは、ポリオレフィン基材層である。当該「ポリオレフィン」としては、例えば、低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、直鎖低密度ポリエチレン、エチレン−α−オレフィン共重合体、エチレン−エチルアクリレート共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−メチルアクリレート共重合体、エチレン−n−ブチルアクリレート共重合体、およびポリプロピレン(ホモポリマー、ランダムコポリマー、ブロックコポリマー)等が挙げられる。これらは単独または2種以上を組み合わせて用いることができる。また、「ポリオレフィン」は、置換基を有するポリオレフィンであってもよく、ポリオレフィン以外の樹脂が添加されていてもよい。さらに、表面保護フィルムの製造過程で生じた、ポリオレフィン基材層の端材や表面保護フィルムの端材が添加されていてもよい。
基材層は、単層でもよいし、組成の異なる2種以上の多層構造を有している層であってもよい。
基材層は、表面保護フィルムの用途等によって、その厚さを適宜調整することができる。通常、10〜100μm程度の厚さに設定することが適している。
上述のように、粘着剤層は、上記で説明した粘着剤組成物からなる。
粘着剤層の厚さは特に制限されないが、例えば、通常0.5〜50μm程度、好ましくは1〜40μm、さらに好ましくは2〜30μmである。
本発明の粘着剤組成物は、例えば、共重合体(I)および共重合体(II)をそれぞれブロック重合により合成し、これらを所定の質量比でブレンドした後に、所望により水素添加を行って、共重合体(I)またはその水素添加物、および共重合体(I)またはその水素添加物の混合物を得、および所望により配合される添加剤を慣用の方法で混合することによって製造される。
なお、メタロセン系化合物の具体例としては、シクロペンタジェニル環(Cp環)またはCp環上の水素をアルキル基で置換した配位子を二つ有するKaminsky(カミンスキー)触媒、ansa(アンサ)型メタロセン触媒、非架橋ハーフメタロセン触媒、架橋ハーフメタロセン触媒等を挙げることができる。
本発明の表面保護フィルムは、表面が平滑なシート状の被着体や、光学板、プリズムシート、および拡散フィルム等の凹凸のある被着体に好適に用いることができる。なかでも、拡散フィルムの表面保護用に好適に用いることができる。
本発明の表面保護フィルムは、凹凸のある被着体のなかでも、凹凸が小さい被着体に特に好適に使用できる。このような被着体では、粘着昂進が特に問題になり易いが、本発明の表面保護フィルムを用いれば、高温条件下でも粘着昂進が生じにくい。
具体的には、本発明の表面保護フィルムは、表面粗さRaが2μm以下の被着体に好適に使用でき、より好ましくは、表面粗さRaが0.5μm以下の被着体に好適に使用できる。ただし、本発明の表面保護フィルムをこれ以外の被着体にも使用できることは、言うまでもない。
なお、本明細書中、「表面粗さRa」は、JIS B0601:2001に規定されている、「算術平均高さ」である。
(重合体ブロックA)
窒素置換された反応容器に、脱気・脱水されたシクロヘキサン500質量部、スチレン20質量部及びテトラヒドロフラン5質量部を仕込み、重合開始温度の40℃にてn−ブチルリチウム0.13質量部を添加して、昇温重合を行った。
(重合体ブロックB)
重合体Aの重合転化率が略100%に達した後、反応液を15℃に冷却し、次いで、1,3−ブタジエン70質量部およびスチレン10質量部を加え、更に昇温重合を行った。
なお、表1中、「St(A+B)」、「St(B)」、「St(A)」、および「St(b)」は、それぞれ次のように定義される数値を表す。当該定義において、「全重合体」とは、重合体(i)および重合体(ii)の全体を意味する。
式(1):
St(A+B)=(全重合体中の芳香族アルケニル化合物単位重量)/
(全重合体中の全単量体単位重量)×100(重量%)
「St(B)」は、次式(2)で表される数値を意味する。
式(2):
St(B)=(全重合体ブロックB中の芳香族アルケニル化合物単位重量)/
(全重合体中の全単量体単位重量)×100(重量%)
「St(A)」は、次式(3)で表される数値を意味する。
式(3):
St(A)=(全重合体ブロックA中の芳香族アルケニル化合物単位重量)/
(全重合体中の全単量体単位重量)×100(重量%)
「St(b)」は、重合体ブロックBの芳香族アルケニル化合物単位含有率であり、次式(4)で表される数値を意味する。
式(4):
St(b)=(全重合体ブロックB中の芳香族アルケニル化合物単位重量)/
(全重合体ブロックB中の全単量体単位重量)×100(重量%)
また、表1中、「A:B」は、重合体ブロックAの総量と重合体ブロックBの総量との重量比を表す。
また、表1中、「(i):(ii)」は、重合体(i)と重合体(ii)の重量比を表す。
また、表1中、「共役ジエン含有率」は、重合体ブロックBの共役ジエン単位含有率を表す。
また、表1中、「ビニル結合含有率」は、重合体ブロックBのビニル結合の含有率を表す。
上記の合成例1により得られた共重合体組成物100重量部に、粘着付与剤(アルコンP100(荒川化学工業社製))、酸化防止剤(イルガノックス1010(チバスペシャルティケミカルズ社製))、および脂肪酸アミドを、表2の通り配合し、各粘着剤組成物を得た。なお、以下の表2〜4中の脂肪酸アミドの表記は、それを主成分として含む脂肪酸組成物の意味であり、原材料であるジアミン、および脂肪酸等の不純物、ならびに炭素数が異なる脂肪酸ジアミドを含有する。
(脂肪酸アミド)
エチレンビスステアリン酸アミドとして、実施例1ではアルフローH50Lを、実施例2ではアルフローH50Sを、実施例3ではアルフローH50Fを、実施例4,7,8及び9ではアルフローH50TFを用いた。アルフローH50L、アルフローH50S、アルフローH50F及びアルフローH50TFは、日油株式会社製であった。なお、これらは、エチレンビスステアリン酸アミドを主成分として含有し、原材料であるジアミン、および脂肪酸等の不純物、ならびに炭素数が14〜16の脂肪酸アミド組成物などを含有する組成物である。
実施例5のエチレンビスミリスチン酸アミドは、脂肪酸としてステアリン酸に代えてミリスチン酸を用いて製造した脂肪酸ジアミドである。実施例6のエチレンビスラウリン酸アミドは、脂肪酸としてラウリン酸を用いて製造した脂肪酸ジアミドである。
比較例2のエチレンビスベヘン酸アミドは、脂肪酸としてベヘン酸を用いて製造した脂肪酸ジアミドである。比較例3のエチレンビスカプリル酸アミドは、脂肪酸としてカプリル酸を用いて製造した脂肪酸ジアミドである。
比較例4では、エチレンビスオレイン酸アミドとして、日油株式会社製のアルフローAD−281Fを用いた。
比較例5,6及び7では、エチレンビスステアリン酸アミドとして、日油株式会社製のアルフローH50TFを用いた。
また、使用した脂肪酸アミド組成物の示差走査熱量測定による、融点とは別の吸熱ピークを下記の通り測定・評価した。
示差走査熱量計(SII社製 DSC6220)により、第一〜第三ステージを順に実行した。脂肪酸アミド化合物起因の吸熱ピークは、第三ステージにおけるDSC曲線から読み取ることができる。図1には、第三ステージにおけるDSC曲線を示す。
第一ステージ:20℃/分の昇温速度で20℃から200℃まで昇温する。
第二ステージ:20℃/分の降温速度で200℃から20℃まで降温する。
第三ステージ:20℃/分の昇温速度で20℃から200℃まで昇温する。
上記のようにして得られた各表面保護フィルムについて、以下の項目を評価した。それらの結果を表2に示す。
各表面保護フィルムを、Raが0.44nmの拡散フィルムのレンズ面を覆うように貼り付けた。拡散フィルムとしては、アクリル樹脂からなるものを用意した。貼り付け条件は、室温23℃および相対湿度50%の環境下、それぞれ2kgの圧着ゴムローラーを用いて、300mm/分の速度で貼り付け、その状態で30分間放置した後、JIS Z0237に準拠し、25mm幅における180度剥離強度を300mm/分の速度で測定した。このようにして測定された剥離強度を初期粘着力とした。
各表面保護フィルムを、室温23℃および相対湿度50%の環境下、(1)の初期粘着力評価に用いた拡散フィルムの表面に、それぞれ2kgの圧着ゴムローラーを用いて、300mm/分の速度で貼り付けた。表面保護フィルムを貼り付けた拡散フィルムを60℃、30分放置した。これを室温に取り出し、60分間放置した後、JIS Z0237に準拠し、25mm幅における180度剥離強度を300mm/分の速度で測定した。
このようにして測定された剥離強度を経時粘着力とし、初期粘着力から経時粘着力の変化率(粘着力昂進率)を次式で算出した。
粘着力昂進率=(経時粘着力/初期粘着力)×100
粘着力(初期)
◎(優 ):0.10N/25mm以上
×(不良):0.10N/25mm未満
なお、表中の、「浮き」は、表面保護フィルムと被着体との間に浮きが生じたことを表す。
粘着力昂進率
◎(優 ):400%未満
○(良 ):400%以上600%以下
×(不良):600%超
◎(優 ):粘着力(初期)および粘着力昂進率の両方が優である。
○(良 ):粘着力(初期)および粘着力昂進率のどちらも不良ではなく、上記「◎(優)」には該当しない
△(やや良):60℃での3日間経過後の粘着力昂進率は不良であるが、40℃での短時間経時ならびに3日間経過後の粘着力昂進率、及び60℃の短時間(30分)経時の粘着力昂進率が優である。
×(不良):粘着力(初期)および粘着力昂進率のいずれかが不良である。
粘着剤組成物の各成分の配合量を表3に記載のようにした以外は、実施例1と同様にして、実施例10〜16、比較例8〜12の表面保護フィルムを成形した。なお、実施例14〜16及び比較例10〜12では、高純度(99%以上)の脂肪酸を用いて合成されたエチレンビスステアリン酸アミドの高純度品を使用した。この組成物では、結晶転移ピークは78℃であった。
粘着剤組成物の各成分の配合量を表4に記載のようにした以外は、実施例1と同様にして、実施例17〜20の表面保護フィルムを成形した。なお、実施例20で使用した脂肪酸アミドは、下記の合成例2により調製した。
市販のエチレンビスステアリン酸アミドに、酸価が15.0mgKOH/gになるようにステアリン酸を添加して、酸価が15.0mgKOH/gのエチレンビスステアリン酸アミドを調製した。
粘着力低下率(%)=(1−(原反経時粘着力/初期粘着力))×100
結果を表4に示す。
(酸価評価方法)
1 飽和脂肪酸アミド2gにトルエン10mLを加えた混合液を、熱板上に滴下した。
2 フェノールフタレイン(特級試薬)1gをエタノール100mLを加えた混合液を熱板上の混合液に加えた。
3 熱板を加熱して混合液に含まれる固形分を完全に溶解させた後、加熱を続けながら0.1mol/L 水酸化カリウム・エタノール標準液を混合液に滴下して滴定した。液の微紅色が30秒間続いた時を終点とした。
4 以下の式で酸価を算出した。
酸価=(5.611×0.1×A)/2
(Aは、0.1mol/L水酸化カリウム・エタノール標準液の使用量(mL)である。)
2 芯
Claims (7)
- 基材層と、
粘着剤組成物を含む粘着剤層と、
を有する表面保護フィルムであって、
前記粘着剤組成物が、
重合体(i):下記重合体ブロックAおよび下記重合体ブロックBを含み、一般式[A−B]n(式中、Aは重合体ブロックAを、Bは重合体ブロックBを、nは1〜3の整数を表す。)で表される構造を有する共重合体(I)またはその水素添加物と;
重合体(ii):下記重合体ブロックAおよび下記重合体ブロックBを含み、一般式A−B−A(式中の記号は前記と同意義を表す。)もしくは一般式[A−B]x−Y(式中、xは1以上の整数を表し、Yはカップリング剤残基を、その他の記号は前記と同意義を表す。)で表される構造を有する共重合体(II)またはその水素添加物と;
示差走査熱量測定により40〜80℃の範囲に、脂肪酸アミド化合物又はそれを主成分として含む脂肪酸アミド組成物起因の吸熱ピークを有する、脂肪酸アミド化合物又はそれを主成分として含む脂肪酸アミド組成物と
を含有し、
前記重合体(i)および前記重合体(ii)の全体の芳香族アルケニル化合物単位含有率(St(A+B))は、30〜50重量%であり、
前記重合体(i)および前記重合体(ii)にそれぞれ含まれる重合体ブロックAの総量と重合体ブロックBの総量との重量比(A:B)が5:95〜25:75の範囲内であり、
前記脂肪酸アミド化合物の総含有量が、前記重合体(i)および前記重合体(ii)の合計重量100重量部に対して、0.3〜2重量部である
粘着剤組成物であることを特徴とする表面保護フィルム。
重合体ブロックA:
芳香族アルケニル化合物単位が連続し、芳香族アルケニル化合物単位を主体とする重合体ブロック
重合体ブロックB:
共役ジエン単位と芳香族アルケニル化合物単位がランダムに含まれる芳香族アルケニル−共役ジエン共重合体ブロックであって、芳香族アルケニル化合物単位含有率(St(b))が10〜35重量%である重合体ブロック - 前記脂肪酸アミド化合物が、炭素数10〜18の飽和脂肪酸アミド化合物である、請求項1記載の表面保護フィルム。
- 前記脂肪酸アミド化合物が、エチレンビスステアリン酸アミド、エチレンビスミリスチン酸アミド、エチレンビスラウリン酸アミド、エチレンビスカプリン酸アミド及びエチレンビスパルミチン酸からなる群から選択される少なくとも1種の化合物である、請求項1又は2記載の表面保護フィルム。
- 前記脂肪酸アミド化合物起因の吸熱ピークが、60〜80℃の範囲にある、請求項1〜3の何れか1項に記載の表面保護フィルム。
- 前記吸熱ピークの吸熱量が、前記脂肪酸アミド化合物又はそれを主成分として含む脂肪酸アミド組成物1mgに対して0.5mJ以上である、請求項1〜4の何れか1項に記載の表面保護フィルム。
- 前記脂肪酸アミド化合物又はそれを主成分として含む脂肪酸アミド組成物の酸価が、14mg/gKOH以下である、請求項1〜5の何れか1項に記載の表面保護フィルム。
- 拡散フィルム用表面保護フィルムである請求項1〜6の何れか1項に記載の表面保護フィルム。
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