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JP5866299B2 - 黒色アゾ色素、製造方法、着色組成物、着色方法及び着色物品類 - Google Patents

黒色アゾ色素、製造方法、着色組成物、着色方法及び着色物品類 Download PDF

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Description

本発明は、黒色アゾ色素、その製造方法、着色組成物、着色方法及び着色物品類に関する。更に詳しくは、可視光領域を網羅して吸収することを利用した用途、および、更に赤外領域では透過性を有し、赤外線を利用した用途に有用な光学特性を示す、特定の構造を有する黒色ポリアゾ色素に関し、更に、その製造方法、着色組成物、それを使用する着色方法及び着色物品類に関する。
塗料、印刷インキやプラスチック用などの着色剤に使用される黒色顔料としては、カーボンブラック系顔料や酸化鉄系黒色顔料などが一般的である。これらの黒色顔料は、光の全ての波長領域の光線を吸収することで黒色を示している。太陽光は電磁波であり、凡そ380nm〜780nmの領域の光が可視光とされており、該可視光より長波長の0.7μm〜2.5μmの領域の光は近赤外線である。黒色は、この可視光の波長範囲の光を吸収することで示すことができるが、カーボンブラック顔料は、結果的に可視光のみならず近赤外領域の光をも吸収している。
光線の中で近赤外線は、紫外線などの短波長の光と異なり、人体にほとんど悪影響がなく、安全な光であることから、近年、赤外線の照射、受信を利用する電子機器が多く開発されている。たとえば、赤外線リモコン送信機及びその本体受信機は、電気器具、照明器具、温水便座、カメラ、更に自動車のドアロック、エンジンスターター、ガレージの開閉、街頭や建造物の周囲の赤外線防犯カメラや赤外線監視カメラなど、日常生活に普及している。
また、特許文献1では、自動車前照灯の可視光と、自動車の前方障害物の確認のための近赤外光を同時に発光する投光器、および可視光を遮断し赤外線を透過するフィルターを装備する車両用暗視装置を提案している。
これらの赤外線送信機、受信機の赤外線フィルター、及び赤外線カメラの赤外線フィルターなどに使用される色素として、赤外線領域の光を透過し、可視光領域の光を完全に遮蔽する光学的特性を示し、耐熱性、耐光性、耐溶剤性などの耐久性に優れた機能を有する色素が要望されている。
また、近年、太陽光発電システムはクリーンエネルギーとして脚光を浴び、普及しつつある。太陽光発電システムを構成する太陽光発電モジュールは、太陽光に直接照射される場所、特に野外の空地や屋外建造物の屋上や屋根などに取り付けられている。しかしながら、太陽光に照射され、光を吸収することは、太陽光発電モジュールの昇温をもたらし、発電セルの出力の低下をもたらしている。更に、発電モジュールの外観や汚れが目立たないように、美観面から、黒色、暗有彩色、濃有彩色に着色することもなされており、場合によっては、このことが著しい温度上昇の原因となっている。従って、太陽光発電システムで、黒色に着色しても、温度上昇をできるだけ抑制する着色システムが期待されている。ペリレン系顔料を含んでなる太陽電池用バックシートが提案されている(特許文献2)。
また、近年の生活環境の改善、快適化及び省エネルギーの観点より太陽光の反射による遮熱塗装が要望され、そのための熱線反射材料の開発が各種用途において要望されている。例えば、住宅、事務所、倉庫、ビルディングなどの家屋や建造物の屋根や壁の塗装用、道路舗装、自動車の外装や内装用、船舶の塗装用などが挙げられ、更に、農業用でも遮熱材などが要望されており、また、電子部品などの放熱材料も要望されている。
また、情報技術分野において、昨今の情報化機器の非常な発展に伴い、液晶ディスプレー(以下、「LCD」と略称する場合がある)は、情報表示部材として、テレビジョン、プロジェクター、パーソナルコンピューター、モバイル情報機器、モニター、カーナビゲーション、携帯電話、電子計算機や電子辞書の表示画面、情報掲示板、案内掲示板、機能表示板、標識板などのディスプレー、デジタルカメラやビデオカメラの撮影画面などあらゆる情報表示関連機器に多岐に亙って使用されている。それに伴いディスプレーの表示品位の向上及び低コスト化が要望され、カラーフィルター(以下、「CF」と略称する場合がある)の品質の改良、コスト削減がなされている。LCDに搭載されるCFに対しても、精細性、色濃度、光透過性、コントラスト性などの画像性能の色彩特性、光学特性の面でより優れた品質が要求されており、これらに対応できる特性を有する材料の開発が要望されている。
LCDのCFでは、R(赤色)、G(緑色)、B(青色)画素を、ストライプ状、モザイク状、トライアングル状などに配列し、裏面からバックライトで照射し、R、G、B画素の透過光の加色混合で発色させ、映像としている。そして、各画素の周りを格子状にブラックマトリックス(以下、「BM」と略称する場合がある)を形成させて不要な光を遮蔽し、また混色を防止している。有彩色画素については、赤色顔料、緑色顔料、青色顔料、黄色顔料や紫色顔料などが使用されているが、それぞれ改良がなされている。また、BMには、バックライトの可視光領域の光を完全に遮蔽するための遮光性材料として、基板サイズの大型化やクロム化合物の環境負荷などの問題から、金属クロム膜から黒色顔料を使用する樹脂BMに移行してきている。
バックライトも冷陰極蛍光管から発光ダイオード(LED)に代わることによって色純度の向上と色再現域の拡大に繋がってきている。赤色域の発光は、冷陰極蛍光管のバックライトでは凡そ600〜620nmのシャープな光であったが、LEDのバックライトでは赤色発光部からの光として、最大発光波長が640nm付近で、発光波長範囲として凡そ540nm〜800nmの範囲のブロードな光を利用することが提案されている(特許文献3)。従って、BMとしては、可視光の長波長側の光も十分遮光できることが必要条件とされている。
また、CFの画素の表示方式においても種々の改良が提案され、それに付随してBMの改良、更にBMに使用される遮光性黒色顔料の改良もなされている。例えば、従来のLCDの弱点である広視野角をもたらすために、基板に対して平行に電界を印加して液晶層を変換させ画素を表示するイン−プレーン・スイッチング方式(IPS方式)が提案されている。また、薄膜トランジスター(TFT)の上にBMを形成させるブラックマトリックス・オン・アレイ方式(BOA方式)、カラーフィルター・オン・アレイ方式(COA方式)は、開口率が高くなることから、画素面積を大きくでき、また作業工程上も貼り合わせ工程作業が向上し、合理化することができる。
また、それらの改良方法を、特にIPS方式において、より完全に達成するためには、液晶層を挟む基板の間隔(セルギャップ)を一定に精度高く保つことが必要とされる。しかし、従来のビーズ状スペーサーを散布する方式では、セルギャップを均一に調整することが困難である。そこで固定されたスペーサーによる均一なセルギャップを実現する方法として、BM自身の厚みを高くしたり、BMの上に着色層やフォトレジスト層などの間隔支持部材樹脂を重ねて高くするなどの基板のセルギャップの支持方法が提案されている。更に、ビーズ状スペーサーを使用しないことで光の散乱や透過による表示品質の低下も改良される(特許文献4、5)。
上記で説明したこれらのIPS方式やBOA方式、COA方式などの方法は、TFTなどのアクティブ素子上にBMを形成する方法であり、当然ながらBMが電気絶縁性でないと、TFTが誤作動を起こす恐れがある。遮光性黒色顔料として一般に使用されているカーボンブラック顔料は本来電気抵抗値の低い顔料であり、これらの方式に使用する遮光性黒色顔料としては適切でなく、電気絶縁性の高い遮光性材料であることが望ましい。
これに対し、酸素量で規定したカーボンブラック顔料を、絶縁性の高い樹脂皮膜で被覆して電気絶縁性を向上させたカーボンブラック顔料についての提案(特許文献6)や、或いは体積抵抗値を測定して選別した絶縁性カーボンブラック顔料あるいは樹脂で被覆して電気絶縁性を向上させたカーボンブラック顔料を使用して絶縁性BMを形成させ、COA方式への適用についての開示がある(特許文献7)。
しかしながら、カーボンブラック顔料は本来導電性を有する材料であり、上記した従来技術のように樹脂被覆をしても絶縁性を完全なものにすることは困難である。
更に、最近開発が進められている有機EL素子を用いたディスプレーにおいても、発光素子からの隣接する光の混色を防止し、発光画面の鮮明性の向上のためにBMの使用が提案されている(特許文献8)。
特許第4120513号公報 特開2007−128943号公報 特開2006−148051号公報 特開2000−66018号公報 特開2002−341332号公報 特許第3543501号公報 特許第4338479号公報 特開2004−221081号公報
上記したような事情から、顔料としての優れた物性、堅牢性を示すことは勿論、種々の用途に有用な、可視光遮光性および赤外線透過性の両方の光学特性を示す黒色顔料の開発が要望されている。具体的には、例えば、不要な可視光線を遮蔽し、赤外線による信号を透過させて利用する電子機器用の赤外線フィルターの用途や、太陽光発電システムを構成する黒色あるいは暗彩色のバックシートにおいて、太陽光による温度上昇を抑制できる、太陽光反射性下地の上に赤外線透過性黒色層を設けた複層着色システム、また、CFのBMとして、発光波長領域が広いLEDバックライトのような場合でも可視光領域の光を完全に遮蔽でき、且つTFTなどのアクティブ素子上にBMを形成させても高電気絶縁性を維持してTFTが誤作動を起こすことのない種々の用途に有用であり、更には有機ELディスプレーのBMにおいても可視光遮光性が高い用途などに適切であり、しかも、顔料としても優れた物性、堅牢性を有する黒色顔料が望まれている。
したがって、本発明の目的は、顔料としての優れた物性、堅牢性を示すことは勿論のこと、上記したような種々の用途に適用可能な、可視光遮光性および赤外線透過性の両方の光学特性を示す黒色顔料、該顔料の製造方法、該顔料を含有してなる着色組成物、これを用いた着色方法及び着色物品類を提供することにある。
本発明者らは、上記本発明の目的を達成すべく鋭意研究を重ね、黒色有機顔料の化学構造を検討した結果、特定の構造を有する黒色のポリアゾ顔料は、吸収する光の波長範囲が可視光領域のほぼ全域の凡そ400〜750nmの波長の光を高いレベルで吸収し、更に、凡そ900〜1500nmの赤外線領域の長波長側では、高い透過性を示し、更に、その平均粒子径が10nm〜200nmとなるように微細化して顔料化した黒色顔料は、先に挙げた種々の用途に好適であることを見出し、上記の課題を解決し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、可視光遮光性および赤外線透過性の両方の光学特性を示す黒色アゾ顔料であって、分子中に2個以上のアゾ結合と、カップリング成分から導入された少なくとも一つの2−ヒドロキシ−11H−ベンゾ[a]−カルバゾール−3−カルボン酸アミド残基とを有する構造をもつ黒色のポリアゾ顔料であり、且つ、その平均粒子径が10nm〜200nmであることを特徴とする黒色アゾ顔料を提供する。
本発明の好ましい形態としては、下記の黒色アゾ顔料が挙げられる。
前記可視光遮光性は、透明性基板上の黒色アゾ顔料を含む黒色着色膜が、可視光範囲の凡そ400〜750nmの波長範囲で凡そ5%以下の分光透過率を示すことであり、前記赤外透過性は、上記黒色着色膜が、赤外領域の900〜1500nmの波長範囲で凡そ30%以上の透過率を示すことである黒色アゾ顔料。
前記ポリアゾ顔料の構造が、少なくとも下記(1)ないし(4)の構造のいずれかを有する黒色アゾ顔料。
(1)ジアゾ成分としてアミノ基を2個以上有する化合物(代表式:H2N−Ar−NH2)をジアゾ化してなるジアゾニウム塩が使用され、該塩に、カップリング成分として2−ヒドロキシ−11H−ベンゾ[a]−カルバゾール−3−カルボン酸アリールアミド(HBCと略記)がアゾ・カップリングしてなる[HBC−N=N−Ar−N=N−HBC]で示される構造。
(2)ジアゾ成分としてアミノ基を2個以上有する化合物(代表式:H2N−Ar−NH2)をジアゾ化してなるジアゾニウム塩が使用され、該塩に、カップリング成分として、2−ヒドロキシ−11H−ベンゾ[a]−カルバゾール−3−カルボン酸アリールアミド(HBCと略記)及び該化合物以外の他のカップリング成分(Cpと表示)がアゾ・カップリングしてなる[HBC−N=N−Ar−N=N−Cp]で示される構造。
(3)その分子中に、2−ヒドロキシ−11H−ベンゾ[a]−カルバゾール−3−カルボアミド残基(HBC−と略記)を2個以上有するカップリング成分(HBC−HBCと表示)に、ジアゾ成分としてアミノ基を1個有する化合物(Ar−NH2と表示)を使用し、ジアゾ化してアゾ・カップリングさせてなる[Ar−N=N−HBC−HBC−N=N−Ar]で示される構造。
(4)その分子中に、2−ヒドロキシ−11H−ベンゾ[a]−カルバゾール−3−カルボアミド残基(HBC−と略記)と、該化合物以外の他のカップリング成分残基(Cp−と表示)とを有するカップリング成分(HBC−Cpと表示)に、ジアゾ成分としてアミノ基を1個有する化合物(Ar−NH2と表示)をジアゾ化して、アゾ・カップリングさせてなる[Ar−N=N−HBC−Cp−N=N−Ar]で示される構造。
尚、上記において、「Ar」は、代表的には、芳香族化合物及び複素環式化合物の残基を示し、式中2個以上ある場合は同一でも、また、異なってもよい。また、式中の「Ar−N=N−」や「−N=N−Ar−N=N−」はジアゾ成分のジアゾニウム塩がカップリングした「アリールアゾ残基」を意味する。以下も同様である。
本発明は、別の実施形態として、上記した本発明の黒色アゾ顔料を得るための製造方法であって、黒色のポリアゾ顔料の合成工程と、必要に応じて該顔料を微細化する工程を有する製造方法であって、(I)黒色のポリアゾ顔料の合成方法が、後述する4種類に分類されるいずれかであり、これらの方法で合成されたポリアゾ顔料が粗大である場合には、後述する公知のいずれかの方法で顔料の平均粒子径を10nm〜200nmに微細化する工程を有することを特徴とする黒色アゾ顔料の製造方法を提供する。
本発明は、別の実施形態として、先の記載した本発明の黒色アゾ顔料あるいは上記の製造方法によって得られた黒色アゾ顔料を含む顔料成分を、液体分散媒体中あるいは固体分散媒体中に含んでなることを特徴とする着色組成物を提供する。
本発明は、別の実施形態として、物品の表面の着色、あるいは物品自体の着色により、物品を黒色ないし暗色に着色する際に、上記の着色組成物を用いることを特徴とする物品の着色方法を提供する。
本発明は、別の実施形態として、上記の物品の着色方法が施されていることを特徴とする着色物品を提供する。
本発明は、別の実施形態として、光反射性シートの上に、黒色または暗彩色の赤外線透過性層が複層されている太陽光発電モジュールのバックシートであって、赤外線透過性層に、分子中に2個以上のアゾ結合と、カップリング成分から導入された少なくとも一つの2−ヒドロキシ−11H−ベンゾ[a]−カルバゾール−3−カルボン酸アミド残基(HBC−と略記)とを有する構造をもち、その平均粒子径が10nm〜200nmである黒色のポリアゾ顔料が含有されていることを特徴とする太陽光発電モジュールのバックシートを提供する。
本発明は、別の実施形態として、基材自体に光反射性を有するものを光反射性シートとして用いるか、あるいは予め形成させた光反射性下地が設けられている基材を光反射性シートとして用い、これらの基材の表面あるいは光反射性下地の上に、分子中に2個以上のアゾ結合と、カップリング成分から導入された少なくとも一つの2−ヒドロキシ−11H−ベンゾ[a]−カルバゾール−3−カルボン酸アミド残基(HBC−と略記)とを有する構造をもち、その平均粒子径が10nm〜200nmである黒色のポリアゾ顔料が含有されている着色組成物を、塗装、塗布、貼付、溶着、重積、印刷、インクジェット印刷、電子写真印刷あるいは静電印刷することにより、赤外領域では反射性を示す着色を施して、光反射性シートの上に黒色または暗彩色の赤外線透過性層を複層したことを特徴とする太陽光発電モジュールのバックシートの製造方法を提供する。
本発明は、別の実施形態として、カラーフィルター(CF)基板あるいは有機EL発光基板に形成されるブラックマトリックス(BM)が、分子中に2個以上のアゾ結合と、カップリング成分から導入された少なくとも一つが2−ヒドロキシ−11H−ベンゾ[a]−カルバゾール−3−カルボン酸アミド残基(HBC−と略記)とを有する構造をもち、その平均粒子径が10nm〜200nmである黒色のポリアゾ顔料を含有していることを特徴とするカラーディスプレーパネルを提供する。
以上の本発明によれば、黒色アゾ顔料を含む黒色着色膜は、透明性基板上では、可視光範囲を網羅する凡そ400〜750nmの波長範囲で、ほぼ完全な吸収を示す。そして、それより長波長の赤外領域では、透明性基板上では高い透過率を示し、可視光遮光性と赤外線透過性とを併せ持つ有用な光学特性を示すものとなる。このような特性を有することから、本発明の黒色アゾ顔料は、赤外線リモートコントローラー及び本体受信機の赤外線フィルターとして有効に利用される。更に、本発明の黒色アゾ顔料は、実用化されつつある自動車など路上障害物を検知、識別する赤外線センシング機器の赤外線フィルターとしても使用可能である。
更に、本発明の黒色アゾ顔料は、可視光領域を網羅し、長波長側をもほぼ完全に吸収する光学特性を示すことから、CFのBMの遮光性黒色材料として、例えば、赤色画素に対応するLEDバックライトの赤色発光部からの光の波長領域を充分吸収し、遮光できるものであり、LCDの呈色が黒色は勿論、他の有彩色も鮮明に発色される。更に高い電気絶縁性を有することから、TFTなどのアクティブ素子上にBMを形成する各種のCFの改良方法、例えばスペーサーに代わり液晶層の厚みを保持するBMや、IPS方式、COA方式などのCFのBMを形成する遮光性黒色顔料としても好適である。特に、LEDバックライトを採用したIPS方式液晶パネルなどには、及び有機ELディスプレーにおいても、最も好ましい遮光性黒色顔料である。
また、赤外線を充分透過することから、下地や塗装材料などに添加された白色顔料や体質顔料などによって反射される機能から、近年の生活環境の改善、快適化及び省エネルギーの観点から注目されている家屋や建造物などへの塗装、道路の舗装、更には船舶の甲板、外装などの塗装など直射日光による昇温防止材料として使用される。更に、太陽光発電システムにおいても、太陽光による温度上昇を抑制できる、反射性下地層の上に黒色または暗彩色の赤外線透過性層を複層で形成させたバックシートに使用される。また、軍装備の偽装用着色材あるいは偽造防止などにも利用される。
次に、発明を実施するため最良の形態を挙げて本発明を更に詳細に説明する。
本発明を特徴づける黒色アゾ顔料は、光学的特性として、可視光領域を網羅して吸収し、特に長波長側の波長範囲までもほぼ完全な吸収を示し、また近赤外領域では高い透過率を示す。具体的には、透明性基板上の黒色着色薄膜の分光透過率は、凡そ可視光範囲の400〜750nmの波長範囲では凡そ5%以下を示し、凡そ900nm〜1500nmの赤外領域の波長範囲では凡そ30%以上を示す。また、電気特性としては非常に高い電気絶縁性を示す。
本発明者らは、上記の特徴的な光学的特性を示す黒色アゾ顔料として、分子中に複数個の発色団を有させ、更にそれらを互いに共鳴させた顔料を検討した結果、特に合成の容易さと安定した製造が可能であることから、分子中に2個以上のアゾ結合を有し、特定の化学構造を有する黒色ポリアゾ顔料を開発した。更に、特に赤外領域の高い透過性が要求されることから、黒色ポリアゾ顔料は、微細な粒子径の顔料であることが好ましく、顔料の平均粒子径は、凡そ10nm〜200nmであることを要する。更に高透過率を要望する場合には、平均粒子径が凡そ10nm〜50nmの超微細な黒色ポリアゾ顔料、あるいは着色加工工程において媒体に分子分散をもたらすような分散染料的な性質を有する黒色アゾ顔料が好ましい。
本発明において、ポリアゾ顔料とは、上記したように分子中に2個以上のアゾ結合を有するジスアゾ顔料やトリスアゾ顔料などを意味する。
ポリアゾ顔料が黒色を示す化学構造として、本発明者らは、分子中に2個以上のアゾ結合を有し、そのカップリング成分から導入された少なくとも一つの、2−ヒドロキシ−11H−ベンゾ[a]−カルバゾール−3−カルボアミド残基(下記式参照)を有する化学構造を見出した。
Figure 0005866299
上記ポリアゾ顔料の製造方法としては、分子中に2個以上のアゾ結合をもたらす必要があるため、例えば、ジアゾ成分としてジアゾニウム基に変わるアミノ基を2個以上有するジアゾ成分を使用してアゾ・カップリングする方法や、カップリング成分がカップリングポジションを2個以上有するカップリング成分を使用してアゾ・カップリングする方法などが挙げられる。この点については詳述する。
本発明の黒色ポリアゾ顔料は、下記の(1)ないし(4)の構造のいずれかを有することが好ましい。
(1)ジアゾ成分としてアミノ基を2個以上有する化合物(代表式:H2N−Ar−NH2)をジアゾ化してなるジアゾニウム塩を使用し、該塩に、カップリング成分として2−ヒドロキシ−11H−ベンゾ[a]−カルバゾール−3−カルボン酸アリールアミド(HBCと略記)がアゾ・カップリングしてなる[HBC−N=N−Ar−N=N−HBC]で示される構造の黒色ポリアゾ顔料。
上記[HBC−N=N−Ar−N=N−HBC]で示される構造(1)を有する黒色ポリアゾ顔料の例として、下記に、ジアゾ成分にアミノ基を2個以上有するベンジジンあるいはフェニレンジアミンを用いた場合の構造の例を挙げる。
Figure 0005866299

Figure 0005866299
(2)ジアゾ成分であるアミノ基を2個以上有する化合物(代表式:H2N−Ar−NH2)をジアゾ化してなるジアゾニウム塩が使用され、該塩に、カップリング成分として、2−ヒドロキシ−11H−ベンゾ[a]−カルバゾール−3−カルボン酸アリールアミド(HBCと略記)及び該化合物以外の他のカップリング成分(Cpと表示)がアゾ・カップリングしてなる[HBC−N=N−Ar−N=N−Cp]で示される構造の黒色ポリアゾ顔料。
上記[HBC−N=N−Ar−N=N−Cp]で示される構造(2)を有する黒色ポリアゾ顔料の例として、下記に、ジアゾ成分にアミノ基を2個以上有するベンジジンあるいはフェニレンジアミンを用い、他のカップリング成分として2−ヒドロキシ−3−ナフトエ酸アリールアミドを用いた場合の構造の例を挙げる。
Figure 0005866299

Figure 0005866299
(3)その分子中に、2−ヒドロキシ−11H−ベンゾ[a]−カルバゾール−3−カルボアミド残基(HBC−と略記)を2個以上有するカップリング成分(HBC−HBCと表示)に、ジアゾ成分としてアミノ基を1個有する化合物(Ar−NH2と表示)を使用し、ジアゾ化してアゾ・カップリングさせてなる[Ar−N=N−HBC−HBC−N=N−Ar]で示される構造の黒色ポリアゾ顔料。
上記[Ar−N=N−HBC−HBC−N=N−Ar]で示される構造(3)を有する黒色ポリアゾ顔料の例として、下記に、フェニレンあるいはビフェニレンを介して2−ヒドロキシ−11H−ベンゾ[a]−カルバゾール−3−カルボアミド残基が2個結合しているカップリング成分のHBC−HBCに、ジアゾ成分としてアミノ基を1個有するアニリンを使用し、ジアゾ化してなる場合の構造の例を挙げる。
Figure 0005866299

Figure 0005866299
(4)その分子中に、2−ヒドロキシ−11H−ベンゾ[a]−カルバゾール−3−カルボアミド残基(HBC−と略記)と、該化合物以外の他のカップリング成分残基(Cp−と表示)とを有するカップリング成分(HBC−Cpと表示)に、ジアゾ成分としてアミノ基を1個有する化合物(Ar−NH2と表示)をジアゾ化して、アゾ・カップリングさせてなる[Ar−N=N−HBC−Cp−N=N−Ar]で示される構造の黒色ポリアゾ顔料。
[Ar−N=N−HBC−Cp−N=N−Ar]で示される構造(4)を有する黒色ポリアゾ顔料の例として、下記に、フェニレンあるいはビフェニレンを介して2−ヒドロキシ−11H−ベンゾ[a]−カルバゾール−3−カルボアミド残基と、該化合物以外の他のカップリング成分である2−ヒドロキシ−3−ナフトエ酸アリールアミドの残基が結合しているカップリング成分のHBC−Cpに、ジアゾ成分としてアミノ基を1個有するアニリンを使用し、ジアゾ化してなる場合の構造の例を挙げる。
Figure 0005866299

Figure 0005866299
本発明の上記黒色アゾ顔料は、上記に挙げたような構造を有するポリアゾ顔料の合成工程と、必要に応じて該顔料を微細化する顔料粒子の粒径の調整工程とを有する本発明の黒色アゾ顔料の製造方法によって容易に得ることができる。以下、本発明の黒色アゾ顔料の製造方法について説明する。
本発明の黒色アゾ顔料の製造方法を構成する黒色ポリアゾ顔料の合成方法は、下記の(1)〜(4)の方法から選ばれる。
(1)の方法は、アミノ基を2個以上有する化合物(代表式:H2N−Ar−NH2)をジアゾ化してなるジアゾニウム塩に、2−ヒドロキシ−11H−ベンゾ[a]−カルバゾール−3−カルボン酸アリールアミド(HBCと略記)をアゾ・カップリングさせる合成方法である。該(1)の合成方法によって得られた黒色ポリアゾ顔料は、先に説明した[HBC−N=N−Ar−N=N−HBC]で示される構造を有するものとなる。
(2)の方法は、アミノ基を2個以上有する化合物(代表式:H2N−Ar−NH2)をジアゾ化してなるジアゾニウム塩に、2−ヒドロキシ−11H−ベンゾ[a]−カルバゾール−3−カルボン酸アリールアミド(HBCと略記)及び該化合物以外の他のカップリング成分(Cpと表示)をアゾ・カップリングした構造を有するポリアゾ顔料の合成方法であり、アミノ基を2個以上有する化合物(代表式:H2N−Ar−NH2)をジアゾ化してなるジアゾニウム塩に、等モルあるいはそれ以下のカップリング成分(Cp)をアゾ・カップリングさせ、必要に応じて、2個以上のカップリング成分(Cp)がカップリングしたポリアゾ顔料を分離、除去し、次いでカップリングされていないジアゾニウム基に上記カップリング成分(HBC)をアゾ・カップリングさせる合成方法である。該(2)の合成方法によって得られた黒色ポリアゾ顔料は、先に説明した[HBC−N=N−Ar−N=N−Cp]で示される構造を有するものとなる。
(3)の方法は、下記の(3−1)または(3−2)の方法である。これらの(3−1)および(3−2)の合成方法によって得られた黒色ポリアゾ顔料は、先に説明した[Ar−N=N−HBC−HBC−N=N−Ar]で示される構造を有するものとなる。
(3−1)分子中に2−ヒドロキシ−11H−ベンゾ[a]−カルバゾール−3−カルボアミド残基(HBC−と略記)を2個以上有するカップリング成分(HBC−HBCと表示)に、アミノ基を1個有する化合物(Ar−NH2)をジアゾ化してなるジアゾ成分をアゾ・カップリングさせる合成方法である。
(3−2)2−ヒドロキシ−11H−ベンゾ[a]−カルバゾール−3−カルボン酸に、アミノ基を1個有する化合物(Ar−NH2と表示)をジアゾ化してなるジアゾニウム塩をアゾ・カップリングさせ、次いで、アゾ色素のカルボン酸をアリールポリアミンと縮合させてポリカルボアミドにする合成方法である。
(4)の方法は、下記の(4−1)または(4−2)の方法である。これらの(4−1)および(4−2)の合成方法によって得られた黒色ポリアゾ顔料は、先に説明した[Ar−N=N−HBC−Cp−N=N−Ar]で示される構造を有するものとなる。
(4−1)一分子中に2−ヒドロキシ−11H−ベンゾ[a]−カルバゾール−3−カルボアミド残基(HBC−と略記)と、該化合物以外の他のカップリング成分残基(Cp−と表示)とを有するカップリング成分(HBC−Cpと表示)に、アミノ基を1個有する化合物(Ar−NH2と表示)をジアゾ化してなるジアゾニウム塩をアゾ・カップリングさせる合成方法である。
(4−2)2−ヒドロキシ−11H−ベンゾ[a]−カルバゾール−3−カルボン酸及び他のカップリング成分のカルボン酸に、それぞれアミノ基を1個有する化合物(Ar−NH2と表示)をジアゾ化してなるジアゾニウム塩をアゾ・カップリングさせ、次いで得られた両アゾ色素のカルボン酸をアリールポリアミンと縮合させてポリカルボアミドにする合成方法である。
上記に挙げた各合成方法で使用することができるジアゾ成分及びカップリング成分について説明する。
(A)カップリング成分について具体的に例示する。
(a)カップリング成分(HBC)としては、例えば、2−ヒドロキシ−11H−ベンゾ[a]−カルバゾール−3−アニライド、2−ヒドロキシ−11H−ベンゾ[a]−カルバゾール−3−ナフチルアミドなど及びそれらの誘導体である。誘導体の置換基としては、例えば、アルキル(炭素数;1〜10)基、アルコキシ(炭素数;1〜10)基、トリフルオロメチル基、ハロゲン基、アルキルオキシカルボニル基、環状イミノジオキシ基、アルキルスルホニル基、アミノカルボニル基、ベンズアミド基、アルキルアミノカルボニル基、アニリノカルボニル基、環状ウレイレン基、カルボキシル基、アルキルイミノ基などが1個またはそれ以上導入されたカップリング成分である。
具体的には、例えば、2−ヒドロキシ−11H−ベンゾ[a]−カルバゾール−3−アニライド、2−ヒドロキシ−11H−ベンゾ[a]−カルバゾール−3−カルボキシ−p−アニシダイド、2−ヒドロキシ−11H−ベンゾ[a]−カルバゾール−3−カルボキシ−(2−メチル)−p−アニシダイド、2−ヒドロキシ−11H−ベンゾ[a]−カルバゾール−3−カルボキシ−N−ベンズイミダゾロン−5−アミド、2−ヒドロキシ−11H−ベンゾ[a]−カルバゾール−3−カルボキシ−ナフチルアミドなどが挙げられる。
(b)カップリング成分(HBC−HBC)としては、例えば、フェニレン−ビス(2−ヒドロキシ−11H−ベンゾ[a]−カルバゾール−3−カルボアミド)、ビフェニレン−ビス(2−ヒドロキシ−11H−ベンゾ[a]−カルバゾール−3−カルボアミド)、ナフタレン−ビス(2−ヒドロキシ−11H−ベンゾ[a]−カルバゾール−3−カルボアミド)など及びそれらの誘導体である。誘導体の置換基としては、そのアリール基に公知の置換基、例えば、アルキル(炭素数;1〜10)基、アルコキシ(炭素数;1〜10)基、トリフルオロメチル基、ハロゲン基などが1個またはそれ以上導入されたカップリング成分である。
具体的には、例えば、フェニレン−(1,4−)ビス(2−ヒドロキシ−11H−ベンゾ[a]−カルバゾール−3−カルボアミド)、2−クロロ−フェニレン−(1,4−)ビス(2−ヒドロキシ−11H−ベンゾ[a]−カルバゾール−3−カルボアミド)、2,5−ジクロロ−フェニレン−(1,4−)ビス(2−ヒドロキシ−11H−ベンゾ[a]−カルバゾール−3−カルボアミド)2−メチル−フェニレン−(1,4−)ビス(2−ヒドロキシ−11H−ベンゾ[a]−カルバゾール−3−カルボアミド)、ビフェニレン−(4,4’−)ビス(2−ヒドロキシ−11H−ベンゾ[a]−カルバゾール−3−カルボアミド)、3,3’−ジクロロ−ビフェニレン−(4,4’−)ビス(2−ヒドロキシ−11H−ベンゾ[a]−カルバゾール−3−カルボアミド)、ナフタレン−(1,5−)ビス(2−ヒドロキシ−11H−ベンゾ[a]−カルバゾール−3−カルボアミド)などである。
(c)カップリング成分(Cp)としては、例えば、2−ヒドロキシ−3−ナフトエ酸アリールアミド、2−ヒドロキシ−6−ナフトエ酸アリールアミド、2−ヒドロキシ−3−アンスラセンカルボン酸アリールアミド、2−ヒドロキシ−3−ジベンゾフランカルボン酸アリールアミド、2−ヒドロキシ−1−カルバゾールカルボン酸アリールアミドなど及びそれらの誘導体が挙げられる。例えば、C.I.アゾイックカップリングコンポーネント2、4、6、7、8、10、11、12、14、17、18、19、20、21、22、23、24、27、28、29、31、32、37、41、45、46、111、112、113、15、16、36、2−ヒドロキシ−3−ナフトエ酸−N−ベンズイミダゾロン−5−アミド、2−ヒドロキシ−3−ナフトエ酸−N−フタルイミド−4−アミドなどである。
(d)カップリング成分(HBC−Cp)としては、HBC残基のアミノ基とアミド結合するCp残基のカルボン酸として、2−ヒドロキシ−3−ナフトエ酸、2−ヒドロキシ−6−ナフトエ酸、2−ヒドロキシ−3−アンスラセンカルボン酸、2−ヒドロキシ−3−ジベンゾフランカルボン酸、2−ヒドロキシ−1−カルバゾールカルボン酸などが挙げられる。例えば、フェニレン(−1)−(2−ヒドロキシ−11H−ベンゾ[a]−カルバゾール−3−カルボアミド)(−4)−(2−ヒドロキシ−3−ナフトエ酸アミド)、フェニレン(−1)−(2−ヒドロキシ−11H−ベンゾ[a]−カルバゾール−3−カルボアミド)(−4)−(2−ヒドロキシ−3−ナフトエ酸アミド)、(2−メチル−)フェニレン(−1)−(2−ヒドロキシ−11H−ベンゾ[a]−カルバゾール−3−カルボアミド)(−4)−(2−ヒドロキシ−3−ナフトエ酸アミド)、ビフェニレン(−4)−(2−ヒドロキシ−11H−ベンゾ[a]−カルバゾール−3−カルボアミド)(−4’)−(2−ヒドロキシ−3−ナフトエ酸アミド)などである。
(B)ジアゾ成分について具体的に例示する。
(a)ジアゾ成分のアミノ基を2個以上有する化合物(代表式:H2N−Ar−NH2)としては、例えば、フェニレンジアミン、ジアミノビフェニル、ジアミノナフタレン、ジアミノアンスラキノン、ジアミノ−ベンゾフェノン、ジアミノピリジンなど及びそれらの誘導体である。誘導体の置換基としては、そのアリール基に公知の置換基、例えば、アルキル(炭素数;1〜10)基、アルコキシ(炭素数;1〜10)基、トリフルオロメチル基、ハロゲン基などが1個またはそれ以上導入されたジアゾ成分である。
具体的には、例えば1,4−フェニレンジアミン、2−クロロ−1,4−フェニレンジアミン、2,5−ジクロロ−1,4−フェニレンジアミン、2−クロロ−5−メチル−1,4−フェニレンジアミン、2,5−ジメチル−1,4−フェニレンジアミン、2−ニトロ−1,4−フェニレンジアミン;1,3−フェニレンジアミン、4−クロロ−1,3−フェニレンジアミン、4−メトキシ−1,3−フェニレンジアミン、4−ニトロ−1,3−フェニレンジアミン;4−クロロ−1,2−フェニレンジアミン、4,5−ジメチル−1,2−フェニレンジアミン、4−ニトロ−1,2−フェニレンジアミン;3,3’−ジクロロ−4,4’−ベンジジン、2,2’,5,5’−テトラクロロ−4,4’−ベンジジン、3,3’−ジメチル−4,4’−ベンジジン、3,3’−ジメトキシ−4,4’−ベンジジン;1,5−ジアミノナフタレン1,2−ジアミノナフタレン;1,2−ジアミノアンスラキノン、1,5−ジアミノアンスラキノン;3,4−ジアミノ−ベンゾフェノン;2,6−ジアミノピリジンなどが挙げられる。
(b)ジアゾ成分のアミノ基を1個有する化合物(Ar−NH2と表示)としては、例えば、アニリン、ナフチルアミン、アミノアンスラキノン、フェノキシアニリン、フェニルイミノアニリンなど及びそれらの誘導体である。誘導体の置換基としては、そのアリール基に公知の置換基、例えば、アルキル(炭素数;1〜10)基、アルコキシ(炭素数;1〜10)基、ハロゲン基、ニトロ基、フェニルエーテル基、フェニルイミノ基、ベンゾイルアミド基、アニリノカルボニル基、環状ウレイレン基、などが1個またはそれ以上導入されたジアゾ成分である。具体的には、例えばC.I.アゾイックジアゾコンポーネント5、8、9、10、32、33、34、35、36、37、41、42、43、47などが挙げられる。
本発明の黒色アゾ顔料の製造方法を構成する、必要に応じて該顔料を微細化する顔料粒子の粒径の調整工程について説明する。本発明の黒色アゾ顔料は、上記に挙げたような合成方法で得られたポリアゾ顔料を、その粒径が粗大である場合には、下記の(1)又は(2)のいずれかの方法で顔料の平均粒子径を凡そ10nm〜200nmに微細化することで得られる。すなわち、上記に挙げたような合成方法で得られたポリアゾ顔料を使用した塗膜等の赤外線の透過率を向上させるためには、分散した顔料の粒子径が光の波長に比べて小さいこと、具体的には、平均粒子径が凡そ10nm〜200nmであることが必要になる。したがって、本発明の黒色アゾ顔料は、上記した方法で合成した顔料が粗大である場合には、顔料の平均粒子径を要求された粒径に調整するために、下記に挙げるような公知の顔料微細化工程を行い、微細化顔料を製造することを要する。
具体的には、
(1)ボールミル、サンドミル、アトライター、横型連続媒体分散機、ニーダー、連続式一軸混練機、連続式二軸混練機、三本ロール、オープンロール連続混練機などからなる群から選ばれた顔料磨砕機あるいは顔料分散機を使用する微細化方法や、
(2)混練機中で水溶性塩類、必要に応じて水溶性有機溶剤と共に混練、摩砕するソルベントソルトミリング法など公知の方法
から選ばれた顔料微細化工程を行い、平均粒子径が凡そ10nm〜200nmとなるように調製する。更に、より赤外線の高透過率を要望する場合には、平均粒子径が凡そ10nm〜50nmの超微細顔料を調製することが好ましい。
顔料の粒子径は、使用される用途に合わせて調整される。粒子径の調整は、主に顔料の対する塩類の量比や混練時間によって制御される。高い透過率を要求するような赤外線カラーフィルターのような用途では顔料粒子はより小さいことが望ましく、例えば、10nm〜50nmの微細顔料粒子が、更には10nm〜30nmの超微細顔料粒子の分散状態が好ましく、究極的には分散の担体、例えば、プラスチック媒体に分子分散するような溶解状態が望ましい。
一方、可視光の遮光性を要求するCFのBMのような用途では、透過用途よりやや大きい50nm〜100nm位の方が好ましい。また、赤外線反射性を求める用途では、下地が反射性であることが好ましいが、更に顔料粒子は比較的に大きくてもよく、100nm〜200nmでも使用される。
上記に挙げたソルベントソルトミリング法では、顔料に、磨砕助剤として水溶性無機塩類を、要望とする顔料の粒子径により磨砕する顔料の数倍、具体的には3〜20倍量を添加し、更に、エチレングリコール、ジエチレングリコール、ポリエチレングリコール等の粘性のある水溶性有機溶剤を添加し、混練磨砕する。磨砕助材に用いる水溶性無機塩としては、塩化ナトリウムや硫酸ナトリウム等が使用される。磨砕後、希硫酸、水などに添加して、磨砕助剤を溶解させ、ろ過、水洗して顔料のろ過ペースト(プレスケーキ)を得る。プレスケーキは、そのまま湿式分散機で分散加工されたり、フラッシング方式で油性着色剤に加工されたり、熱風乾燥して後、乾式粉砕機で粉砕して粉体顔料にしたり、更に、前記した各種の湿式分散機や混練機などにより分散するなど、用途によって各種の着色剤へ加工処理がなされる。また、水中で樹脂処理して易分散性処理顔料あるいは加工顔料にすることも好ましい。
本発明の黒色アゾ顔料を着色剤として使用するに際して、特に液状顔料分散液においては、黒色アゾ系顔料にアニオン性やカチオン性の顔料誘導体を添加することも好ましい。これらの顔料誘導体の添加方法としては、上記の顔料の合成時に、イオン性基を有するジアゾ成分やカップリング成分を用いて、アクセサリーカップリング法で導入する方法、あるいは別に合成されたイオン性基を有する顔料誘導体を、微粒子化製造工程時や顔料分散液を調製する際に添加する方法など公知の方法で行われる。この際の顔料誘導体としては、黒色の他、黄色、青色、赤色など有彩色の顔料誘導体が色調の調整なども含め適切に使用される。
ここで、塗膜の分光透過率は、塗膜中に含有されている黒色顔料分や塗膜厚によって数値上の若干の違いが見られるものの、波長との関係においては、吸収する波長ではいずれも吸収の傾向を示し、透過する波長では透過の傾向を示すことは確認されている。表1及び表2に、後述する本発明の製造例1で得られた黒色ジスアゾ顔料(「黒色顔料−1」)を用い、後述する実施例1で調製した黒色顔料−1を含む塗膜の可視領域と赤外領域の分光透過率(%)を示した。
この結果、表1に示した通り、黒色顔料−1を含む塗膜では、可視光の400〜750nmの全波長領域に亘り透過率は0%であり、可視領域では透過性を示さないことを確認した。一方、表2に示した通り、赤外領域の900nmでは34%の透過があり、それより長波長側では透過率はなだらかに上昇することを示しており、更に高波長においても高透過率を示すことが想定される。
Figure 0005866299
Figure 0005866299
また、本発明の黒色アゾ顔料を含む塗膜の電気絶縁性については、同様に後述した実施例1に示されているように、黒色顔料−1を含む塗膜の体積固有抵抗値は1014Ω・cmであり、良好な電気絶縁性を示すことを確認した。
本発明の黒色アゾ顔料である黒色顔料−1が、上記したように赤外線領域の光を透過し、可視光領域の光を完全に遮蔽する光学的機能を有する色素であることから、前記した赤外線を利用する電子機器用の赤外線フィルターの用途や、CFのBM用として有用であることを見出した。例えば、本発明の黒色アゾ顔料をCFのBM用に適用した場合は、バックライトの可視光領域の光を完全に遮蔽でき、且つ優れた電気絶縁性を示すものになる。
本発明の黒色アゾ顔料は、使用に際して、暗色の有彩色の着色、無彩色の暗色あるいは黒色の着色をする着色組成物であり、着色目的、用途、使用方法などにより、黒色アゾ顔料を含む顔料成分を液体分散媒体中に含む液状の着色組成物あるいは固体分散媒体中に含む固体の着色組成物として多様な形態での使用が可能である。
本発明の黒色アゾ顔料は、顔料成分として、黒色アゾ顔料単独で、あるいは、複数の顔料成分の一つとして、有彩色顔料、白色顔料、他の黒色顔料及び体質顔料などを、目的の色彩に合わせて1種または2種以上を選択し、これらと併用することもできる。黒色アゾ顔料の色彩を補正するために本発明の黒色アゾ顔料と併用する、有彩色顔料、白色顔料、他の黒色顔料あるいは体質顔料の配合比率は、特に限定されないが、コンピューター・カラーマッチングシステムを用いて最適化される方法で決めることも好ましい形態である。
本発明の黒色アゾ顔料と併用する顔料としては、公知の顔料が使用でき、特に限定されない。例えば、アンスラキノン系顔料、キナクリドン系顔料、ジケトピロロピロール系顔料、インジゴ・チオインジゴ系顔料、ペリノン系顔料、ペリレン系顔料、フタロシアニン系顔料、インドリン系顔料、イソインドリン系顔料、イソインドリノン系顔料、ジオキサジン系顔料、キノフタロン顔料、ニッケルアゾ顔料、金属錯体顔料、不溶性アゾ系顔料、溶性アゾ系顔料、高分子量アゾ系顔料、アゾメチンアゾ系ブラック顔料、アニリンブラック系顔料などの有機顔料及び、カーボンブラック顔料及び複合酸化物系顔料、酸化鉄顔料、酸化チタン系顔料などの無機顔料から選ばれる少なくとも1種の顔料、あるいは2種以上の顔料の混合物、混晶顔料を使用することができる。
有機顔料としては、例えば、黄色顔料では、C.I.ピグメントイエロー(PYと略記する)−74、83、93、94、95、97、109、110、120、128、138、139、147、150、151、154、155、166、175、180、181、185、191等が、橙色顔料では、C.I.ピグメントオレンジ(POと略記する)−61、64、71、73等が、赤色顔料では、C.I.ピグメントレッド(PRと略記する)−4、5、23、48:2、48:4、57:1、112、122、144、146、147、150、166、170、177、184、185、202、207、214、220、221、242、254、255、264、272等が挙げられる。
また、青色顔料では、C.I.ピグメントブルー(PBと略記する)−15:1、15:2、15:3、15:4、15:5、15:6、16、17:1、60、80、アルミニウムフタロシアニンブルー等が、緑色顔料では、C.I.ピグメントグリーン(PGと略記する)−7、36、58、ポリ(13−16)ブロムフタロシアニン等が、紫色顔料では、C.I.ピグメントバイオレット(PVと略記する)−19、PV−23、PV−37等が、黒色顔料としては、アニリンブラック顔料、カーボンブラック顔料、酸化チタンブラック顔料等であり、特に、CFのBM用に、本発明の黒色アゾ顔料に配合して使用するものとしては、表面処理をして絶縁性を改良したカーボンブラック顔料や酸化チタンブラック顔料等が好ましい。
本発明の黒色アゾ顔料を、白色顔料などの赤外線反射性顔料と併用する際には、特許4097926号公報や特開2005−330466号公報で提案されている方法を用いることもできる。すなわち、白色顔料などの赤外線反射性顔料の周りを、本発明の赤外線透過性の黒色アゾ顔料で実質的に被覆して赤外線の反射効率を向上させる方法を適用することも好ましい形態である。
本発明の黒色アゾ顔料を含有してなる液状の着色組成物は主に、物品の表面を塗布、含浸、描画、印字などをさせる着色剤として使用され、塗料、コーティング剤、プラスチック着色、繊維着色、印刷インキ、文房具、画像記録用、画像表示用など、種々の用途で使用される。本発明の黒色アゾ顔料が分散した分散媒体には、皮膜形成材料(あるいは塗膜形成材料)として、反応性基を有する反応性重合体あるいは非反応性重合体、反応性基を有するオリゴマーあるいは非反応性オリゴマー及び反応性基を有する単量体あるいは反応性基を有しない非反応性単量体などから選ばれる少なくとも1種を含むことができ、且つ、それ自体液体であっても、あるいは更に溶剤及び/または水を含有したものであってもよい。
更に、上記の液状の着色組成物を準備するに際して、予め、使用する顔料を高濃度に分散媒体中に微分散した高濃度顔料加工品として事前に準備しておけば、それを使用して着色剤の製造を容易にすることができる。液状の高濃度顔料分散液は「ベースカラー」あるいは「ベースインク」と称され、使用されている。
また、上記の本発明の黒色アゾ顔料を含有してなる固体の着色組成物は、主としてプラスチックや合成繊維の内部着色に使用される着色剤とされており、例えば、高濃度顔料分散物であるマスターパウダー、マスターバッチなど、及び、全体に着色されたカラードペレットなど公知の製品形状で使用される。固体分散媒体としては、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、ワックス、脂肪酸アミド及び脂肪酸金属石鹸などから選ばれる少なくとも1種を用いることができる。
上記の着色剤を使用して物品を着色するに際して、可視光領域及び赤外領域の光学的な目的によって適切な着色がなされる。
可視光領域を吸収させ、赤外領域を透過させる着色を行う場合には、物品の基材を透明なものにし、着色組成物を用いて該透明性基材を、塗装、塗付、染色、印刷、筆記、描画、インクジェット印刷、電子写真印刷、静電印刷あるいはフォトリソグラフィックプリントなどで表面着色するか、あるいは透明性基材に、着色組成物を混練または含浸させて内部着色する。この場合に本発明の黒色アゾ顔料を使用することで、得られる物品は、下記の優れた光学特性を示すものになる。すなわち、本発明の黒色アゾ顔料を使用すれば、特に可視光領域の凡そ400〜750nmの波長範囲では高吸収性を示して可視光遮光性を示し、凡そ900nm〜1500nm、更にそれ以上の高波長の赤外領域で高透過性を示す着色をすることができる。
また、可視光領域は吸収させ、赤外領域を反射させる着色を行う場合には、物品自体を構成する材料が光反射性を有するかあるいは予め形成させた光反射性下地を使用し、その上に、本発明の着色組成物を用いて塗布することで達成できる。この点についての詳細は後述する。この場合の着色方法は公知の方法、例えば、塗装、塗付、原液着色、捺染、浸染、印刷、筆記、描画、インクジェット印刷、電子写真印刷あるいは静電印刷などを利用することにより、可視光領域では高吸収性を示し、近赤外領域では高反射性を示す着色をすることができる。
前記した黒色顔料−1の分光反射率を測定し、結果を表3に示した。測定した試料は、白色展色紙上にアプリケーターを用いて塗布した塗布紙(以下、黒色展色紙と呼ぶ)である。
Figure 0005866299
表3に示したように、上記の黒色顔料−1を含む塗膜は、可視領域から750nm位までは吸収して5%前後の反射率しか示さないが、800nm位より900nmにかけて反射率は急激に上昇し、更にそれより長波長側の近赤外領域ではほぼ80%の反射率を維持しており、更にそれ以上の高波長の赤外領域においても高い反射率を示すことが想定される。これは黒色塗膜を透過した光が下地の白紙で反射していることを示しており、反射性の高い下地や白色顔料や体質顔料などの反射材料の併用をすることで、黒色顔料の表面からのみでなく、透過した光を再反射し、効率の良い高い反射率を示すものである。
本発明で使用する塗膜形成材料(皮膜形成材料)として機能する樹脂バインダー(用途により「ベヒクル」あるいは「ワニス」と称する)としては、反応基を有しない非反応性での常温乾燥型あるいは反応性基を有する焼付け型の樹脂バインダー及び感光性樹脂バインダーを好適に使用できる。常温乾燥型あるいは焼付け型の樹脂バインダーとしては、例えば、捺染剤、塗料、コーティング剤、あるいは印刷インク、文房具、インクジェット印刷、電子写真印刷、静電印刷などの画像記録材料用に使用する樹脂バインダーなどが挙げられる。また、感光性樹脂バインダーとしては、例えば、紫外線硬化性あるいは電子線硬化の各種塗料、コーティング剤、印刷インク、インクジェットインク、フォトリソグラフィなどに用いられる感光性樹脂バインダーが挙げられる。
本発明で使用し得る常温乾燥型あるいは焼付け型の樹脂バインダーの具体例としては、例えば、合成ゴム樹脂、アクリル樹脂、スチレン系(共)重合体、ポリビニルブチラール系樹脂などのビニル樹脂、ポリエステル系樹脂、アミノ樹脂変性ポリエステル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、アクリルポリオールウレタン系樹脂、可溶性ポリアミド系樹脂、可溶性ポリイミド系樹脂、可溶性ポリアミドイミド系樹脂、可溶性ポリエステルイミド系樹脂、アルキッド樹脂、アミノアルキッド系樹脂、エポキシ系樹脂、塩化ゴム樹脂、シリコーン樹脂、フッ素樹脂、セルロースアセテート系樹脂、ニトロセルロース系樹脂、ヒドロキシエチルセルロース、スチレン−マレイン酸エステル系共重合体の水溶性塩、(メタ)アクリル酸エステル系(共)重合体の水溶性塩、水溶性アミノアルキッド系樹脂、水溶性アミノポリエステル系樹脂及び水溶性ポリアミド系樹脂などが挙げられ、これらは単独あるいは2種以上を組み合わせて使用される。
反応性の皮膜形成材料の有する反応性基としては、例えば、メチロール基、アルキルメチロール基、イソシアネート基、マスクッドイソシアネート基、エポキシ基などが挙げられる。また、用途によってオリゴマーや単量体が使用され、更に架橋剤、例えばメチロールメラミン系やイソシアネート系、エポキシ系架橋剤も併用される。
本発明で使用し得る紫外線硬化性樹脂系、電子線硬化性樹脂系などのエネルギー線硬化性塗膜形成材料の具体例としては、例えば、感光性環化ゴム系樹脂、感光性フェノール系樹脂、感光性ポリアクリレート系樹脂、感光性ポリアミド系樹脂、感光性ポリイミド系樹脂など、及び不飽和ポリエステル系樹脂、ポリエステルアクリレート系樹脂、ポリエポキシアクリレート系樹脂、ポリウレタンアクリレート系樹脂、ポリエーテルアクリレート系樹脂、ポリオールアクリレート系樹脂などのバインダー、あるいはこれらに更に反応性希釈剤としてモノマーが加えられたバインダーが挙げられる。
本発明の着色組成物であるプラスチック用の着色剤によって着色される対象となるプラスチックとしては、従来公知の熱可塑性プラスチックとして、ポリエチレン、エチレンコポリマー、ポリプロピレンなどのポリオレフィン類、ポリスチレン、ABS、AS、スチレンコポリマー、塩化ビニル樹脂、メタクリル樹脂、ポリカーボネート、ポリアミド、ポリアセタール、熱可塑性ポリエステル、セルロース系プラスチック、フェニレンオキサイド樹脂、フッ素樹脂、熱可塑性エラストマー類などの、また、熱硬化性プラスチックとして、不飽和ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、ポリウレタン樹脂、メラミン樹脂、フェノール樹脂などが挙げられる。
本発明の着色組成物である黒色着色剤に含有される本発明の黒色アゾ顔料の含有量は、用途や使用する目的によって変わり、一概に決められるものではない。例えば、塗料、コーティング剤、捺染剤、印刷インキ、プリンター用トナー、インクジェットインクなど表面に着色するような用途においては、膜厚が薄いため、その着色剤に含有される黒色顔料の含有量としては凡そ3%〜80%、好ましくは凡そ5%〜60%である。特に、CFのBMの遮光性黒色材料として使用する場合には、特に膜厚が薄く、完全な遮光性を要求されることから、顔料が安定に分散され、塗布に適する粘度が保たれ、均一な着色皮膜を形成する限界の顔料濃度が試みら、好ましくは凡そ30%〜60%である。
また、プラスチックの着色や紡糸の原液着色のように着色される材料全体に内部着色するような場合には着色製品の厚さにもよるが、凡そ0.05%〜20%、好ましくは凡そ0.1%〜10%程度である。
本発明の黒色アゾ顔料を含む画像記録用着色組成物を、CFのBM形成用着色組成物として使用する場合においては、該着色組成物を使用してCF基板上に、直接に、あるいは転写または貼り付け用のプラスチックフィルムを介在させて、フォトリソグラフィ法、レーザー・アブレーション法、インクジェトプリント法、印刷法、転写法、貼付け法などから選ばれた一種または二種以上の形成方法で形成される。
BMの膜厚としては、0.5μm〜3μmであり、通常は1μm〜2μmである。光学濃度(OD)値としては、2.0以上、好ましくは3.0以上である。スペーサーの機能を持たせる場合には、BMそのものを厚くする場合、BMの上に画素を重積する場合あるいは無色の樹脂膜を重積する場合などがあり、5μm〜10μmが好ましい。
また、前記BMの形成されたCF基板上に、更に公知の有彩色画素形成用着色剤を使用して公知の画素形成方法により有彩色画素を形成することができる。
本発明において好適な、CF基板あるいは有機EL発光基板に関する特長ある物品として、下記のものを挙げることができる。すなわち、可視領域の波長範囲を吸収するBMの形成されたCF基板あるいは有機EL発光基板、特に、BMが更に実質的に電気絶縁性であり、該BMと電極が重なって形成されたCF基板あるいは有機EL発光基板、及びそれらを含むカラーディスプレーパネルが挙げられる。同様に、上記BMの形成されたCF基板上に有彩色画素が形成されたCF基板、また、BM及び有彩色画素の形成されたCF基板の装着された液晶カラーディスプレー機器、あるいは上記の有機EL発光基板の装備された有機ELカラーディスプレー機器が挙げられる。
また、太陽光発電システムに関連する物品としては、太陽光による温度上昇を抑制できる、反射性下地層等の光反射性シートの上に、本発明の黒色アゾ顔料を含む着色組成物で、黒色または暗彩色の赤外線透過性層を複層して形成させたバックシート及びそれを用いた太陽光発電モジュールが挙げられる。
次に、実施例及び比較例を挙げて本発明を更に具体的に説明する。なお、文中、「g」または「%」とあるのは、特に断りのない限り質量基準である。
[製造例1](「黒色顔料−1」の製造)
(1)黒色ジスアゾ顔料の合成
常法により、3,3’−ジメトキシ−4,4’−ベンジジン2.44g(0.01モル)に濃塩酸を加えて塩酸塩とした後、過剰の亜硝酸ナトリウム水溶液を加えてジアゾ化した。次いで、これにホウフッ化水素酸を加えて、3,3’−ジメトキシ−ジフェニレン(4,4’−)テトラゾニウム・フッ化ホウ素複塩(ジアゾニウム塩)を調製した。これとは別に、カップリング成分として、2−ヒドロキシ−11H−ベンゾ[a]カルバゾール−3−カルボキシ−p−アニシダイド7.65g(0.02モル)を、水酸化ナトリウム0.8gが溶けたメタノール250g中に溶解して調製した。先に調製したテトラゾニウム・フッ化ホウ素複塩溶液を15℃以下に保ち、そこへ上記で調製したカップリング成分の溶液を徐々に添加した。そして、酢酸ナトリウムでpHを6.5〜7.0に調整して1時間撹拌した後、25℃で2時間撹拌し、更に40℃に昇温して3時間撹拌してカップリング反応を完結させた。生成した顔料をろ過した後、ろ過物をメタノールで洗浄し、次いで水洗した後、乾燥することで黒色アゾ顔料の粗顔料を得た。得られた黒色アゾ顔料の収量は、9.78gであった。
(2)微細化処理による黒色微粒子顔料の調製
上記の(1)の合成反応によって得られた黒色アゾ顔料の粗粒子顔料100部を、塩化ナトリウム粉末500部及びジエチレングリコール50部と共に、加圧蓋を装着したニーダーに仕込み、ニーダー内の粗粒子顔料および塩化ナトリウム粉末が均一に湿潤された塊になるまで予備混合した。次いで、加圧釜を閉じ、圧力6kg/cm2で内容物を押さえ込みながら混練及び摩砕を行った。具体的には、内容物が92〜98℃になるように温度を管理しながら、2時間混練・摩砕処理を行った。得られた摩砕物を、80℃に加温した3,000部の温水中で1時間の攪拌処理を行った後、ろ過し、得られたろ過物を水洗することにより塩化ナトリウム及びジエチレングリコールを除去し、微細化した黒色アゾ顔料のプレスケーキを得た。
上記で得た顔料の粒子径を、下記の方法で測定した。得られた黒色顔料の透過型電子顕微鏡写真(6万倍)を撮り、「画像解析式粒度分布ソフトウエア Mac−View」(マウンテック社製)を用いて粒度分布を測定した。この結果、平均粒子径は50nmであった。なお、他の製造例においても、上記と同様の方法で顔料の平均粒子径を測定した。
更に、上記で得たプレスケーキを乾燥した後、粉砕して、3,3’−ジメトキシ−ビフェニレン(4,4’−)ビス(アゾ(−1)−2−ヒドロキシ−11H−ベンゾ[a]−カルバゾール−3−カルボキシ−p−アニシダイド)の構造を有する黒色顔料の微細化粉末顔料を得た。以下、「黒色顔料−1」と称する。
[製造例2](「黒色顔料−2」の製造)
製造例1(1)と同様にして、3,3’−ジメトキシ−4,4’−ベンジジン2.44g(0.01モル)をジアゾ化した。そして、これを、2−ヒドロキシ−11H−ベンゾ[a]カルバゾール−3−カルボキシ−N−ベンズイミダゾロン−5−アミド8.17g(0.02モル)とカップリングさせることにより、黒色アゾ顔料の粗顔料を得た。得られた黒色アゾ顔料の収量は、10.07gであった。
続いて、得られた粗顔料の微細化処理を行った。その方法は、製造例1に記載した(2)で用いた塩化ナトリウムの使用量を、顔料に対して8倍量使用した以外は、製造例1(2)に準じて微細化処理を行った。そして、酸性水で塩などの溶解した後、ろ過し、得られたろ過物を水洗して黒色アゾ顔料のプレスケーキを得た。得られた顔料の平均粒子径は25nmであった。また、上記で得たプレスケーキを乾燥した後、粉砕して、黒色顔料の微細化粉末顔料を得た。以下、これを「黒色顔料−2」と称する。
[製造例3](「黒色顔料−3」の製造)
製造例1(1)と同様にして、3,3’−ジクロロ−4,4’−ベンジジン2.53g(0.01モル)をジアゾ化した。そして、これを、2−ヒドロキシ−11H−ベンゾ[a]カルバゾール−3−カルボキシ−(2’−メチル)−p−アニシダイド7.93g(0.02モル)とカップリングさせることにより、黒色アゾ顔料の粗顔料を得た。得られた黒色アゾ顔料の収量は、10.26gであった。
続いて、得られた粗顔料の微細化処理を行った。製造例1に記載した(2)で用いた塩化ナトリウムの使用量を顔料に対して10倍量使用した以外は、製造例1に記載した(2)に準じて微細化処理を行った。そして、酸性水で塩などの溶解した後、ろ過し、得られたろ過物を水洗して黒色アゾ顔料のプレスケーキを得た。得られた顔料の平均粒子径は20nmであった。上記で得たプレスケーキを乾燥した後、粉砕して、黒色顔料の微細化粉末顔料を得た。以下、これを「黒色顔料−3」と称する。
[製造例4](「黒色顔料−4」の製造)
製造例1(1)と同様にして、3,3’−ジメトキシ−4,4’−ベンジジン2.44g(0.01モル)をジアゾ化した。そして、これを、2−ヒドロキシ−11H−ベンゾ[a]カルバゾール−3−カルボキシ−(2’−メチル)−p−アニシダイド7.93g(0.02モル)とカップリングさせることにより、黒色アゾ顔料の粗顔料を得た。得られた黒色アゾ顔料の収量は、9.94gであった。
続いて、得られた粗顔料の微細化処理を行った。製造例1に記載した(2)に準じて微細化処理を行い、酸性水で塩などを溶解してろ過した後、得られたろ過物を水洗して黒色アゾ顔料のプレスケーキを得た。得られた顔料の平均粒子径は50nmであった。上記で得たプレスケーキを乾燥した後、粉砕して、黒色顔料の微細化粉末顔料を得た。以下、これを「黒色顔料−4」と称する。
[製造例5](「黒色顔料−5」の製造)
製造例1(1)と同様にして、3,3’−ジクロロ−4,4’−ベンジジン2.53g(0.01モル)をジアゾ化した。そして、これを、2−ヒドロキシ−11H−ベンゾ[a]カルバゾール−3−カルボキシ−p−アニシダイド7.65g(0.02モル)とカップリングさせることにより、黒色アゾ顔料の粗顔料を得た。得られた黒色アゾ顔料の収量は、9.86gであった。
続いて、得られた粗顔料の微細化処理を行った。製造例1に記載した(2)で用いた塩化ナトリウムの使用量を顔料に対して4倍量使用したこと以外は製造例1(2)と同様にして、微細化処理を行った。そして、酸性水で塩などの溶解した後、ろ過し、得られたろ過物を水洗して黒色アゾ顔料のプレスケーキを得た。得られた顔料の平均粒子径は85nmであった。上記で得たプレスケーキを乾燥した後、粉砕して、黒色顔料の微細化粉末顔料を得た。以下、これを「黒色顔料−5」と称する。
[製造例6](「黒色顔料−6」の製造)
製造例1(1)と同様にして、3,3’−ジメトキシ−4,4’−ベンジジン2.44g(0.01モル)をジアゾ化した。そして、これを、2−ヒドロキシ−11H−ベンゾ[a]カルバゾール−3−カルボキシ−(2’−メチル)−p−アニシダイド3.96g(0.01モル)及び5’−クロロ−3−ヒドロキシ−2’,3’−ジメトキシ−ナフタニライドアニライド3.58g(0.01モル)とカップリングさせることで、黒色アゾ顔料の粗顔料を得た。得られた黒色アゾ顔料の収量は、9.59gであった。続いて、上記で得た黒色アゾ顔料の粗顔料を、乾式粉砕機で粉砕することにより顔料化して、黒色顔料の微細化粉末顔料を得た。得られた顔料の平均粒子径は110nmであった。以下、これを「黒色顔料−6」と称する。
[製造例7](「黒色顔料−7」の製造)
(1)黒色顔料誘導体−1の製造
スルファニル酸1.73g(0.01モル)をジアゾ化した。そして、これを、2−ヒドロキシ−11H−ベンゾ[a]カルバゾール−3−カルボキシ−p−アニシダイド3.82g(0.01モル)とカップリングさせた。そして、得られた生成物をろ過した後、水洗し、スルホン基を有する黒色顔料誘導体のプレスケーキを得た。以下、これを「黒色顔料誘導体−1のプレスケーキ」と称する。得られたプレスケーキの収量は、固形分換算で5.49gであった。また、上記プレスケーキを乾燥、粉砕して、スルホン基を有する顔料誘導体の微細粉末顔料を得た。以下、これを「黒色顔料誘導体−1」と称する。
(2)(「黒色顔料−7」の製造)
製造例1に記載した(1)で得られた黒色顔料−1のプレスケーキと、上記(1)で得られた黒色顔料誘導体−1のプレスケーキを、顔料固形分比で10:1になるように配合し、均一になるように十分に混合した。そして、上記混合物を乾燥することによって、顔料誘導体を含む黒色顔料の粗顔料を得た。次いで、製造例1に記載した(2)に準じて顔料の微細化処理を行った後、酸性水で塩などの溶解し、これをろ過し、得られたろ過物を水洗することにより黒色アゾ顔料のプレスケーキを得た。得られた顔料の平均粒子径は50nmであった。上記プレスケーキを乾燥、粉砕して、アニオン性の顔料誘導体を含む黒色顔料の微細化粉末顔料を得た。以下、これを「黒色顔料−7」と称する。
[製造例8](「黒色顔料−8」の製造)
特許3268748号に記載の方法を利用して、カチオン性顔料誘導体を合成した。具体的には、まず、1−アミノアンスラキノン、ビス(N,N−ジメチルアミノプロピル)アミン及び塩化シアヌルを、モル比で2:1:1となる割合で反応させ、カチオン性顔料誘導体として2,4−ビス(アンスラキノニルアミノ)−6−ビス(N,N−ジメチルアミノプロピル)アミノ−s−トリアジンを合成した。得られたカチオン性顔料誘導体のプレスケーキと、製造例1(1)で得られた黒色顔料−1のプレスケーキとを、固形分比で85:15になるように配合した。そして、これらを均一になるように十分に混合した後、乾燥して、カチオン性顔料誘導体を含む黒色顔料の粗顔料を得た。次いで、得られた粗顔料を、製造例1に記載した(2)の方法に準じて微細化処理を行った後、水で塩などを溶解させてろ過し、ろ過物を水洗することによって黒色アゾ顔料のプレスケーキを得た。得られた顔料の平均粒子径は50nmであった。得られたプレスケーキを乾燥した後、粉砕して、カチオン性黄色顔料誘導体を含む黒色顔料の微細化粉末顔料を得た。以下、これを「黒色顔料−8」と称する。
[製造例9](「黒色顔料−9」の製造)
製造例1(1)と同様にして、3,3’−ジメトキシ−4,4’−ベンジジン1.95g(0.008モル)をジアゾ化した後、ホウフッ化水素酸を加え、テトラゾニウム・フッ化ホウ素複塩(ジアゾニウム塩)を調製した。これとは別に、スルファミン酸0.69g(0.004モル)をジアゾ化した。これら2種類のジアゾ液を、2−ヒドロキシ−11H−ベンゾ[a]カルバゾール−3−カルボキシ−p−アニシダイド7.65g(0.02モル)と同時カップリング方式で、上記2種類のジアゾ液の滴下が、ほぼ同時に終了するように調節しながらカップリングさせた。その後、ろ過し、水洗を行って、黒色アゾ顔料のプレスケーキを得た。得られたプレスケーキを乾燥し、スルホン基を有する黒色顔料誘導体を含む黒色顔料(粗顔料)を得た。得られた黒色顔料の収量は9.97gであった。続いて、得られた粗顔料の微細化処理を行った。具体的には、製造例1に記載した(2)の方法に準じて微細化処理を行った後、酸性水で塩などを溶解させてろ過し、得られたろ過物を水洗して黒色アゾ顔料のプレスケーキを得た。得られた顔料の平均粒子径は50nmであった。このプレスケーキを乾燥した後、粉砕して黒色顔料の微細化粉末顔料を得た。以下、これを「黒色顔料−9」と称する。
[製造例10](「黒色顔料−10」の製造)
製造例1(1)と同様にして、2−メトキシ−5−N−フェニルカルバモイルアニリン4.85g(0.02モル)をジアゾ化し、1,4−フェニレン−ビス(2−ヒドロキシ−11H−ベンゾ[a]カルバゾール−3−カルボアミド)6.27g(0.01モル)とカップリングさせ、黒色アゾ顔料の粗顔料を得た。収量は10.35gである。続いて乾式粉砕機で粉砕して黒色顔料の微細化粉末顔料を得た。以下、「黒色顔料−10」と称する。得られた顔料の平均粒子径は80nmであった。
[実施例1](製造例1の黒色顔料−1を含む塗膜の光学特性の評価)
(1)黒色顔料−1を用いた黒色塗布PETフィルムの調製
製造例1で得られた黒色顔料−1の光学的特性を見るために、黒色塗布液を調製した。使用するワニスとして、カルボキシル基を有するアクリル樹脂の50%キシレン−ブタノール混合溶媒溶液(酸価は10mgKOH/g)とブチル化メチロールメラミン樹脂の50%キシレン−ブタノール混合溶媒溶液を、80:20の比率で配合し、ワニスを調製した。(以下、これを「ワニス」と称す。)希釈溶剤には、キシレン−ブタノールの混合溶媒(4:1)を使用した。(以下、これを「希釈溶剤」と称する。)
黒色顔料−1を3部、ワニス24部、希釈溶剤6部及び分散メディアとしてガラスビーズ48部を分散用容器に仕込み、ペイントシェイカーで3時間分散した。その後、更にワニスを36部追加して10分間分散を続けた後、取り出して塗布液とした。塗布液中の顔料分と樹脂固形分の比率は1:10である。上記のようにして得た黒色塗布液を、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム上に、バーコーターを用いて塗布し、乾燥後、130℃で硬化させ、黒色塗布PETフィルムを得た。形成した黒色塗膜の平均乾燥膜厚は34nmであった。
(2)可視領域及び近赤外領域の透過率の測定
上記(1)で得られた黒色塗布PETフィルムを、日立分光光度計(U−4100型、日立製作所製)にて可視部及び近赤外部の透過率を測定した。表4及び表5に、それぞれの領域における測定結果を示した。
Figure 0005866299
Figure 0005866299
表4及び表5の分光透過率の測定結果に示された通り、黒色顔料−1を含む塗膜は、可視光領域の400〜750nmの全波長領域に亘って分光透過率は0%であり、殆ど透過していないことを確認した(表4参照)。一方、赤外領域では、900nmにおける透過率は、ほぼ34%であり、更に、それよりも長波長側では、なだらかに上昇していることを確認した(表5参照)。
(3)更に、上記(1)で得られたPETフィルム上の黒色塗膜を、高抵抗率計ハイレスタ−UP(Hiresta−UP)[(株)三菱化学アナリテック製]を用いて、体積固有抵抗を測定した。測定結果は1014Ω・cm以上を示し、絶縁性が非常に高いことが確認された。
[実施例2](製造例1の黒色顔料−1を含む塗膜の光反射特性の評価)
(1)黒色顔料−1を用いた黒色展色紙の調製
黒色顔料−1の反射特性を見るために、実施例1に記載した(1)で調製した黒色塗布液を6ミルのアプリケーターを用いて白色展色紙上に塗布した後、乾燥し、硬化させて塗膜を形成してなる黒色塗布展色紙(以下、黒色展色紙と呼ぶ)を得た。該黒色展色紙に形成されている黒色塗膜の乾燥膜厚の測定値は、展色紙上でおよそ35〜40nmであった。
(2)上記(1)で得た黒色展色紙における可視部及び近赤外部の反射率を測定し、表6に測定結果を示した。
Figure 0005866299
表6に示した結果から、黒色顔料−1を用いて作製した黒色展色紙では、750nm位までは5〜6%の反射率しか示していないが、800nm〜900nmにかけて反射率は急激に上昇し、更に、それより長波長側の近赤外領域ではほぼ70%〜80%、あるいはそれ以上の反射率を維持していることを確認した。これらのことから、黒色展色紙の光の反射率は、顔料表面からの反射と共に透過光が下地の白紙で反射し、それに起因する光が合算されて反射光となっているため高くなっているものと考えられる。従って、黒色顔料の光透過性を高くし、反射性の高い下地を利用することで効率よく近赤外線を反射できることを示している。なお、上記の表6において、750nm位までは反射率が0%でなく、5%の値になっているのは測定装置との関係である。
[実施例3]
(1)実施例1と同様にして、製造例2〜6で得られた黒色顔料−2〜6をそれぞれに用いて、黒色塗膜を作成し、実施例1と同様にして可視領域及び赤外領域の分光透過率を測定した。表7と表8に結果を示した。
Figure 0005866299
Figure 0005866299
(2)実施例2と同様にして、製造例2〜6で得られた黒色顔料−2〜6をそれぞれに用いて黒色塗膜を形成し、それぞれ黒色展色紙を作製した。黒色塗膜の乾燥膜厚は、黒色展色紙上で凡そ35〜40nmであった。実施例2と同様にして分光反射率を測定した。その結果、分光反射率は、表9に示したように、黒色顔料−1を用いて得た黒色塗布展色紙と同様な傾向を示した。
Figure 0005866299
[実施例4](ポリカーボネート樹脂成型板)
製造例2で調製した黒色顔料−2を20部と、ポリカーボネート樹脂粉末80部とを、ヘンシェルミキサー(粉体高速混合機)で充分混合した後、更に、二軸押出機で混合、混練し、黒色顔料−2を20%含有するポリカーボネート樹脂黒色マスターバッチを調製した。得られた黒色マスターバッチ2部を、上記と同様の樹脂粉末からなるポリカーボネート樹脂ペレット100部に配合し、ヘンシェルミキサーで混合した後、更に二軸押出機で混合、混練し、黒色樹脂ペレットとした。得られた黒色樹脂ペレットを、インラインスクリュー射出成型機にて成型し、顔料分散性に優れた黒色のポリカーボネート樹脂プレートを得た。この黒色の樹脂プレートは、可視光領域の光を吸収する一方、近赤外線を十分透過することができるため、赤外線透過フィルターなどの用途に使用することが可能である。
[実施例5](アクリル樹脂成型板)
実施例4と同様にして、製造例3で調製した黒色顔料−3を20部と、アクリル樹脂(ポリメチルメタクリレート)粉末80部とを、ヘンシェルミキサーで充分混合した後、更に、二軸押出混練機で混合、混練し、黒色顔料−3を20%含有するアクリル樹脂黒色マスターバッチを調製した。
得られた黒色マスターバッチ2部を、上記と同様の樹脂からなるアクリル樹脂ペレット100部に配合した後、更にヘンシェルミキサーで混合した後、更に二軸押出混練機で混合、混練し、黒色樹脂ペレットとした。得られた黒色樹脂ペレットを、インラインスクリュー射出成型機にて成型し、顔料分散性に優れた黒色のアクリル樹脂プレートを得た。この黒色の樹脂プレートは、可視光領域の光を吸収する一方で、近赤外線を十分透過することができるため、赤外線透過フィルターとして使用することが可能である。
[実施例6](ポリウレタンコーティング剤)
製造例4で調製した黒色顔料−4を15部とポリカーボネート系無黄変型ポリウレタン樹脂10部、ジメチルフォルムアミド(以下、「DMF」と称する)75部になるように、黒色顔料とポリカーボネート系無黄変型ポリウレタン樹脂溶液、DMFを調合する。この調合液を横型連続媒体分散機で充分に分散し、黒色顔料高濃度分散液を得た。次に、表皮層の形成用として、ポリカーボネート系無黄変型ポリウレタン樹脂溶液(固形分30%、DMF溶媒)100部に稀釈溶剤として酢酸プロピル10部、イソプロパノール10部と、先に調製した黒色顔料高濃度分散液20部とを加えて混合し、黒色のポリウレタンコーティング液を調製した。
次いで上記で調製した黒色のコーティング液を、離型紙DNTP−155T−FLAT(商品名、大日本印刷(株)製)に膜厚50μmとなるようシート状に塗布した後、100℃/10分の条件で乾燥させ、表皮層を形成させた。次いで、接着剤として、ポリカーボネート系黄変型ポリウレタン樹脂溶液(固形分70%、トルエン:メチルエチルケトン(以下、「MEK」と称する)=1:1溶媒)100部に、稀釈溶剤としてトルエン10部、MEK20部、DMF20部と変性ポリイソシアネート系架橋剤(固形分75%、酢酸エチル溶媒)10部と、アミン系架橋触媒(固形分0.5%MEK溶媒)0.15部とを混合したものを用意した。そして、該接着剤を、表皮層表面(離型紙に接している面の反対側の面)に膜厚75μmとなるようシート状に塗布した後、80℃/5分の条件で乾燥させた。得られた接着層と表皮層とを有するシートを、接着層側を基材(織物)に積層して全厚みが1,100μmの積層物とし、得られた積層物を、100℃に加熱されたラミネートロールで500μmの隙間をあけて加圧密着させた。次いで、60℃/48時間熟成後に離型紙から剥離して合成擬革を得た。得られた合成擬革は、蓄熱が減免(軽減)される他、耐熱劣化性、耐加水分解劣化性、耐光劣化性、耐オレイン酸性等の耐久性能に優れるものであり、車輌用途等に適するものであった。
また、上記で使用した接着剤を、白色顔料を含有させて白色に着色することにより、接着剤層に光反射性を与え、可視光遮光性および赤外線透過性の両方の光学特性を示す黒色アゾ顔料が含有された表皮層とからなる二重構造を形成させたところ、熱線を反射することができるポリウレタン合成皮革が得られた。この合成皮革は、特に自動車の内装などの用途に好適なものである。
[実施例7](原液着色紡糸)
製造例5で調製した黒色顔料−5を50部と、顔料分散剤としてエチレンビスステアリン酸アミド粉末50部とを、ヘンシェルミキサーで混合し、顔料分が50%の粉末着色剤(ドライカラー)を得た。次いで、得られたドライカラー1.0部を、ポリプロピレン樹脂ペレット99.0部に配合した後、ヘンシェルミキサーで混合し、更に、ベント式40m/m押出機で混練することにより、顔料分が0.5%の黒色樹脂ペレットを調製した。得られた黒色樹脂ペレットを、熔融紡糸機にて紡糸し、繊度10デニールの顔料分散性に優れた鮮明な黒色のポリプロピレン原液着色糸を得た。この着色糸を使用して作成した織布は、直射日光の熱線を反射することができるため、昇温を避ける効果が期待される。そのため、特に、日傘やカーテンなどの用途に好適である。
[実施例8](樹脂成型)
製造例6で調製した黒色顔料−6を5部と、酸化チタン白色顔料を20部と、顔料分散剤としてポリエチレン樹脂粉末75部を、ヘンシェルミキサーで混合し、粉末着色剤(ドライカラー)を得た。次いで、得られた粉末着色剤1.0部を、ポリブチレンテレフタレート(PBT)樹脂ペレット100部に配合し、ヘンシェルミキサーで混合した後、押出機で混練することにより、黒色樹脂ペレットとした。得られた黒色ペレットをインラインスクリュー射出成型機にて成型し、顔料分散性に優れた黒色のPBT樹脂成型板を得た。得られた樹脂成型板は、直射日光の熱線を反射することができた。そのため、この樹脂は、昇温を避けたい樹脂成型品としての使用が好適である。
[実施例9](太陽光発電モジュール用遮熱性バックシート)
(1)製造例5で調製した黒色顔料−4を15部、アクリルポリオール(水酸基価:100)酢酸ブチル溶液(固形分50%)25部、酢酸ブチル50部を十分に予備混合した後、分散媒体としてガラスビーズを使用した横型連続媒体分散機を用いて顔料を分散することにより、黒色顔料高濃度分散液を調製した。
上記で得られた黒色顔料高濃度分散液90部に、上記と同様のアクリルポリオール酢酸ブチル溶液22部、ベンゾトリアゾール系モノマー及びHALS系モノマーを共重合させたアクリルポリオール(水酸基価:100)酢酸ブチル溶液50部を加えて、黒インキ化した。そして、この黒インキ化したものに、硬化剤としてイソシアヌレート型ヘキサメチレンジイソシアネート3量体(固形分:100%、イソシアネート%:21.7%)24部を加え、充分混合した後、酢酸ブチルを凡そ20部を加えて粘度を調整して、黒色コーティング液を調製した。
(2)酸化チタン白色顔料80部に、上記(1)で使用した、アクリルポリオール酢酸ブチル溶液40部と、酢酸ブチル20部を予備混合し、次いで、上記(1)で用いたと同様の横型連続媒体分散機にて顔料を分散することにより、白色顔料高濃度分散液を調製した。
上記で得られた白色顔料高濃度分散液140部に、アクリルポリオール酢酸ブチル溶液44部を加えて白インキ化した。そして、この白インキ化したものに、硬化剤として、先に使用したと同様のヘキサメチレンジイソシアネート3量体を18部加え、充分混合した後、酢酸ブチルを凡そ40部を加えて粘度を調整して、白色コーティング液を調製した。
(3)ポリエチレンテレフタレート(PET)基材シート(フィルム厚:100μm)の表面に、上記(1)で調製した黒色コーティング液を塗付し、乾燥して、黒色塗膜(乾燥膜厚:5μm)を形成した。更に、基材の裏面に、上記(2)で得られた白色コーティング液を塗付し、乾燥して、白色塗膜(乾燥膜厚:5μm)を形成して、表に黒色塗膜、裏面に白色塗膜が塗布されてなる、黒色−白色複層PETシートを得た。
(4)上記(3)で得た黒色−白色複層PETシートに、更に水蒸気バリア性及びガスバリア性を付与するために、裏面の白色塗膜面に重ねて、シリカ・アルミナ蒸着ポリエステルフィルム(フィルム厚:12μm)をラミネートし、更にその上に、PET基材シート(フィルム厚:100μm)をラミネートして、太陽光発電モジュール用のPET製バックシートを作製した。上記のラミネートの際には下記の接着剤を用いた。接着剤には、上記(1)で使用したと同様のアクリルポリオール溶液70部と、ヘキサメチレンジイソシアネート3量体15部と酢酸ブチル15部とからなる接着剤を用いた。
上記のようにして得た黒色塗膜と白色塗膜とが複層コーティングされた、PET製バックシートは、外観は黒色であるため美観に優れ、且つ、用いた黒色顔料−4の光学的特性から、下記の光学的な性質を有するものになる。すなわち、太陽光のうちの赤外領域の光は表面の黒色塗膜層を透過し、透過した赤外領域の光は、下地の白色層で反射されて、再度黒色層を透過して外部に放射される。そのため、該バックシートは、太陽光を吸収することが少なく、優れた遮熱性を示すものとなるので、特に、昇温を避けたい太陽光発電モジュール用のバックシートとして好適である。
上記で得たバックシートを太陽光発電用モジュールとして用いる場合には、常法に従い下記のようにして使用すればよい。すなわち、太陽光発電セルをエチレン酢酸ビニル系樹脂からなる封止材で挟んで封じ、受光面側の表面には表面封止シートを貼り、裏面の非受光面側の保護シートとして、上記の遮光性のバックシートの黒色面を受光側に向けて貼り合わせた後、受光面に透明ガラス基板を装備することで、太陽光発電モジュールを作製することができる。
[実施例10](太陽光発電モジュール用遮熱性バックシート)
(1)製造例6で得た黒色顔料−6を40部と、ポリエステル樹脂粉末60部とを、ヘンシェルミキサーで混合し、粉末状着色剤を得た。次いで、得られた粉末状着色剤12.5部を、PET樹脂ペレット87.5部に配合し、ヘンシェルミキサーで混合した後、更に二軸押出機で混練し、ペレタイザーで黒色樹脂ペレットとした。次いで、T−ダイ押出機により成型して膜厚50μmの黒色PETフィルムを作成した。
(2)別に、酸化チタン顔料で混練着色した白色PETシート(膜厚:180μm)を準備した。そして、その表面に実施例9の(4)に記載したと同様のアクリルポリオール・ヘキサメチレンジイソシアネート系接着剤を用いて、上記(1)で得られた黒色PETフィルムを貼り付けることにより、黒色PETフィルムを積層した白色PETシートを作成した。
(3)上記で得た、黒色PETフィルムを積層した白色PETシートに、防湿性及びガスバリア性を付与するために、まず、該シートの裏面に、上記(2)で使用したアクリルポリオール・ヘキサメチレンジイソシアネート系接着剤を用いて、シリカ・アルミナ蒸着ポリエステルフィルムをラミネートした。そして、その上にPET基材シート(フィルム厚:100μm)を、上記したと同様の接着剤を用いてラミネートすることにより、太陽光発電モジュール用バックシートを作成した。
上記で得た黒色フィルムと白色PETシートとを積層したシートを用いてなる太陽光発電モジュール用バックシートは、外観は黒色で美観に優れ、且つ、使用した黒色顔料−6の光学的特性から、下記の光学的な性質を有するものになる。すなわち、太陽光のうちの赤外領域の光は、表面の黒色フィルム層を透過した後、下の白色PETシートで反射されて、再度黒色フィルムを透過して外部に放出される。そのため、黒色−白色複層PETシートは、太陽光発電モジュール用バックシートとして、太陽光を吸収することが少なく、優れた遮熱性を示すため、昇温を避けたい太陽光発電モジュール用バックシートとして特に好適である。
上記で得たバックシートを太陽光発電用モジュールとして用いる場合には、常法に従い下記のようにして使用すればよい。すなわち、太陽光発電セルをエチレン酢酸ビニル系樹脂からなる封止材で挟んで封じ、受光面側の表面には表面封止シートを貼り、裏面の非受光面側の保護シートとして、上記の遮光性のバックシートの黒色面を受光側に向けて貼り合わせた後、受光面に透明ガラス基板を装備することで、太陽光発電モジュールを作製することができる。
[実施例11](織布用捺染糊)
製造例1で得た黒色顔料−1を固形分で25部を含むプレスケーキ71部、ノニオン系顔料分散剤10部、消泡剤1部、水18部を十分予備混合した後、分散媒体としてガラスビーズを使用した横型連続媒体分散機にて顔料を分散し、黒色顔料高濃度分散液(黒色カラーベース)を調製した。得られた黒色カラーベース20部、反応性アクリル酸アルキルエステルラテックス(固形分40%)25部、消泡剤0.5部、分散剤1部、水中油滴型乳化用分散安定剤3部、ミネラルターペン38部、水12.5部を、ホモジナイザー(強力乳化分散機)にて乳化分散させ、水中油滴型黒色エマルジョンペーストを調製した。そして、調製した黒色エマルジョンペーストに、カルボジイミド系の架橋剤(固形分40%)を2部添加し、十分混合して黒色捺染糊を調製した。得られた黒色捺染糊を、ポリエステル−綿混紡布上に全面プリントし、120℃で15分間のキュアーを行うことにより、熱線が遮蔽される黒色の無地捺染布を得た。
[実施例12](グラビア印刷インキ)
製造例10で得た黒色顔料−10を11部、イソシアネート末端ポリエステルをジアミンで鎖長延長したポリウレタン樹脂の40%メチルエチルケトン−トルエン(1:3)混合溶媒溶液30部に加えた。次いで、カチオン性ポリマー分散剤2部と、トリレンジイソシアネートからのポリカルボジイミド化合物の40%トルエン溶液を2.5部と、メチルエチルケトン−トルエン−イソプロピルアルコール(50:30:20)混合溶媒54.5部とを加えて、高速撹拌機で充分混合した。そして、上記混合物を、分散媒体としてガラスビーズを使用した横型連続媒体分散機にて顔料を微分散し、黒色グラビア印刷インキを調製した。得られた黒色グラビア印刷インキを、グラビア印刷機を用いて、ポリアミドフィルム、ポリエステルフィルム、ポリプロピレンフィルムに、それぞれ印刷を行って、可視光を遮蔽し、赤外線を透過する光学特性を示す黒色のポリプロピレンフィルムを得た。
[実施例13](CFのBMの形成)
(1)(BM用顔料分散液の調製)
(黒色顔料分散液の調製)
製造例9で得た黒色顔料−9を25部と、ベンジルメタクリレート−メタクリル酸−2−ヒドロキシエチルメタクリレート共重合体(モル比:60:20:20、重量平均分子量30,000)40%溶液を20部と、カチオン性重合体系分散剤を2部及びプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMA)53部を十分予備混合した。次いで、連続式横型媒体分散機を用いて顔料を微分散して、黒色顔料分散液を得た(以下、これを「黒色顔料分散液−1」と称する)。
(2)(感光性黒色レジストインクの調製)
上記(1)で得られた黒色顔料分散液−1を40部、アクリル化アクリルポリオール感光性樹脂の50%PGMA溶液を6部、トリメチロールプロパントリアクリレートを1部、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレートを1部、光重合開始剤としてエタノン,1−[9−エチル−6−(2−メチルベンゾイル)−9H−カルバゾール−3−イル]−,1−(O−アセチルオキシム)(「イルガキュアOXE02」、BASF社製)を1部、及び、PGMA51部を配合した。その後、高速撹拌機で均一なるように十分撹拌した後、孔径が3μmのフィルターでろ過をし、黒色顔料−9を含む黒色レジストインクを調製した(以下、「感光性黒色レジストインク−1」と称する)。
(3)(黒色レジスト膜の評価)
上記で得た感光性黒色レジストインク−1を用いて、スピンコーターにてガラス基板上に塗布した。そして、60℃にて予備乾燥した後、プリベークを行い、超高圧水銀灯を用いて400mJ/cm2の光量で露光を行なった後、230℃、30分でポストベークを行い、厚さ3μmの黒色塗膜(黒色レジストインク膜)を得た。
この塗膜の光学的特性は、表10に示したように、可視光領域の凡そ400〜750nmの波長範囲では高吸収性を示し、900〜1500nmの赤外領域では高透過性を示した。また、該塗膜の体積固有抵抗は、1014Ω・cm以上を示したことから、高絶縁性であることが確認された。
Figure 0005866299
(4)(BMパターンの調製)
上記で得た感光性黒色レジストインク−1を用い、常法に従ってスピンコーターにてガラス基板上に塗布した後、80℃で10分間プリベークを行い、厚さ3μmの黒色塗膜を得た。この塗膜にBMパターンのネガのフォトマスクパターンを介して、超高圧水銀灯を用い、100mJ/cm2の光量で露光を行なった後、アルカリ現像液で現像し、水洗、乾燥してBMパターンを形成した。
上記で得たBMパターンを形成しているBM膜は、上記した(3)で述べたように高い電気絶縁性示すことから、TFTなどのアクティブ素子上にBMを形成する各種のCFの改良方法、例えば、スペーサーに代わり液晶層の厚みを保持するBM、IPS方式、COA方式などの構築に利用できる。また、該BM膜は、可視領域を長波長領域まで十分吸収することができることから、LEDバックライトを採用したLCDパネルのBMとしても使用できる。
(5)(赤色、緑色、青色、黄色、紫色の各顔料分散液の調製)
先に述べた(1)と同様にして、PR254(ジケトピロロピロールレッド顔料)、PR177(アンスラキノン系レッド顔料)、PG36(銅フタロシアニングリーン顔料)、PB15:6(ε型銅フタロシアニンブルー顔料)、PY138(黄色顔料)及びPV23(ジオキサジンバイオレット顔料)の各顔料を用い、該顔料19部に、それぞれの顔料に対応する公知のスルホン基を有する顔料誘導体1部を添加して、各色の顔料組成物を得た。得られた顔料組成物を使用して、夫々顔料分が20%、樹脂分散剤6%の、赤色、緑色、青色、黄色、紫色の各色の顔料分散液を調製した。
次いで、上記で調製したPR254とPR177をそれぞれ含有してなる顔料分散液を、8:2の割合で配合したものを33部採り、先に述べた(2)と同様にして、感光性樹脂50%溶液9.2部、光重合性モノマー3部、光重合開始剤0.3部、溶剤54.5部を加えて赤色レジストインキを調製した。上記と同様に、PG36とPY138をそれぞれ含有してなる顔料分散液を5:5の割合で配合して緑色レジストインキを、また、PB15:6とPV23をそれぞれ含有してなる顔料分散液を8:2の割合で配合して青色レジストインキを、それぞれ調製した。
(6)(CFのRGB画素の形成)
上記(4)で作成したBMの形成されたガラス基板をスピンコーターにセットし、上記で用意した感光性赤色レジストインクをスピンコートした後、80℃で10分間プリベークを行った。そして、モザイク状のパターンを有するフォトマスクを、該ガラス基板の塗布面に、プロキシミティー露光機を使用して、超高圧水銀灯で100mJ/cm2の光量で露光を行なった。次いで、専用現像液及び専用リンスで現像した後、洗浄及び乾燥を行い、ガラス基板上に赤色のモザイク状のパターンを形成した。更に、上記したと同様にして、感光性緑色レジストインクを用いて緑色モザイク状のパターンを形成し、感光性青色レジストインクを用いて青色モザイク状のパターンを形成することで、BM及びRGB画素の形成されたCFを得た。
また、上記で使用した黒色顔料−9に代えて、製造例7で得た黒色顔料−7を用いた以外は上記と同様にして、感光性黒色レジストインクの調製し、更に、上記したBMパターン及びRGB画素パターンを形成して、BM及びRGB画素の形成されたCFを得た。
[実施例14](CFのBMの形成)
(1)(BM用顔料分散液の調製)
(黒色顔料分散液の調製)
実施例13(1)で行ったと同様に、黒色顔料−9に代えて黒色顔料−8を25部、先に使用したと同様のベンジルメタクリレート−メタクリル酸−2−ヒドロキシエチルメタクリレート共重合体40%溶液を25部、及びプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMA)53部を十分予備混合した後、連続式横型媒体分散機で顔料を分散することによって、黒色顔料分散液を得た。以下、これを「黒色顔料分散液−2」と称する。
(2)(感光性黒色レジストインクの調製)
実施例13で説明した(2)の黒色顔料分散液−1に代えて、上記(1)で得られた黒色顔料分散液−2を用いた以外は、実施例13(2)と同様にして、黒色レジストインクを調製した。以下、これを「感光性黒色レジストインク−2」と称する。
(3)(BMパターンの調製)
実施例13で説明した(4)と同様にして、感光性黒色レジストインク−2を、スピンコーターにてガラス基板上に塗布し、プリベークを行うことにより、厚さ3μmの黒色塗膜を得た。この塗膜に、BMパターンのネガのフォトマスクパターンを介して、超高圧水銀灯を用いて露光を行ない、アルカリ現像液で現像した後、水洗及び乾燥して、BMパターンを形成した。
このBMパターンを形成するBM膜は、高い電気絶縁性を有しているため、実施例13と同様、アクティブ素子上にBMを形成する各種のCFの改良方法、例えば、固定スペーサーとしてのBMの構築や、IPS方式、COA方式などの構築に利用できる。また、可視領域を長波長領域まで十分吸収することができることから、LEDバックライトを採用したLCDパネルのBMとして使用することもできる。
(4)(CFのRGB画素の形成)
実施例13で説明した(6)と同様にして、上記(3)で得られた、BMが形成されたガラス基板をスピンコーターにセットし、実施例13で説明した(5)で得られた感光性赤色レジストインク、感光性緑色レジストインク、感光性青色レジストインクを用いて各色のモザイク状の画素パターンを形成し、BM及びRGB画素の形成されたCFを得た。
[評価結果]
実施例13、実施例14で得たCFは、精細性、色濃度、光透過性、コントラスト性などの画像性能の色彩特性、光学特性の面で優れた品質を有するものであった。

Claims (16)

  1. 可視光遮光性および赤外線透過性の両方の光学特性を示す黒色アゾ顔料であって、上記光学特性が、透明性基板上の該黒色アゾ顔料を含む黒色着色膜が、可視光範囲の400〜750nmの波長範囲で5%以下の分光透過率を示し、さらに、上記黒色着色膜が、赤外領域の900〜1500nmの波長範囲で30%以上の透過率を示すものであり、
    分子中に2個以上のアゾ結合と、カップリング成分から導入された少なくとも一つの2−ヒドロキシ−11H−ベンゾ[a]−カルバゾール−3−カルボン酸アミド残基とを有する、少なくとも下記(1)〜(3)のいずれかの構造をもつ黒色のポリアゾ顔料であり、且つ、その平均粒子径が10nm〜200nmであることを特徴とする黒色アゾ顔料。
    (1)ジアゾ成分として、アミノ基を2個以上有する化合物(代表式:H2N−Ar−NH2)である3,3’−ジクロロ−4,4’−ベンジジンまたは3,3’−ジメトキシ−4,4’−ベンジジンをジアゾ化してなるジアゾニウム塩が使用され、該塩に、カップリング成分として2−ヒドロキシ−11H−ベンゾ[a]−カルバゾール−3−カルボキシ−p−アニシダイド、2−ヒドロキシ−11H−ベンゾ[a]−カルバゾール−3−カルボキシ−(2’−メチル)−p−アニシダイドおよび2−ヒドロキシ−11H−ベンゾ[a]−カルバゾール−3−カルボキシ−N−ベンズイミダゾロン−5−アミドの群より選択されるいずれかの2−ヒドロキシ−11H−ベンゾ[a]−カルバゾール−3−カルボン酸アリールアミド(HBCと略記)がアゾ・カップリングしてなる[HBC−N=N−Ar−N=N−HBC]で示される構造
    (2)ジアゾ成分として、アミノ基を2個以上有する化合物(代表式:H2N−Ar−NH2)である3,3’−ジメトキシ−4,4’−ベンジジンをジアゾ化してなるジアゾニウム塩が使用され、該塩に、カップリング成分として、2−ヒドロキシ−11H−ベンゾ[a]−カルバゾール−3−カルボン酸アリールアミド(HBCと略記)である2−ヒドロキシ−11H−ベンゾ[a]−カルバゾール−3−カルボキシ−(2’−メチル)−p−アニシダイド及び該化合物以外の他のカップリング成分(Cpと表示)である5’−クロロ−3−ヒドロキシ−2’,3’−ジメトキシ−ナフタニライドアニライドがアゾ・カップリングしてなる[HBC−N=N−Ar−N=N−Cp]で示される構造
    (3)その分子中に、2−ヒドロキシ−11H−ベンゾ[a]−カルバゾール−3−カルボアミド残基(HBC−と略記)を2個以上有するカップリング成分(HBC−HBCと表示)である1,4−フェニレン−ビス(2−ヒドロキシ−11H−ベンゾ[a]−カルバゾール−3−カルボアミド)に、ジアゾ成分としてアミノ基を1個有する化合物(Ar−NH2と表示)である2−メトキシ−5−N−フェニルカルバモイルアニリンを使用し、ジアゾ化してアゾ・カップリングさせてなる[Ar−N=N−HBC−HBC−N=N−Ar]で示される構造
  2. 請求項1に記載の黒色アゾ顔料を得るための、黒色のポリアゾ顔料の合成工程と、必要に応じて該顔料を微細化する工程を有する製造方法であって、
    (I)前記黒色のポリアゾ顔料の合成方法が、下記の(1)ないし(3)のいずれかであり、
    (1)アミノ基を2個以上有する化合物(代表式:H2N−Ar−NH2)である3,3’−ジクロロ−4,4’−ベンジジンまたは3,3’−ジメトキシ−4,4’−ベンジジンをジアゾ化してなるジアゾニウム塩に、2−ヒドロキシ−11H−ベンゾ[a]−カルバゾール−3−カルボキシ−p−アニシダイド、2−ヒドロキシ−11H−ベンゾ[a]−カルバゾール−3−カルボキシ−(2’−メチル)−p−アニシダイドおよび2−ヒドロキシ−11H−ベンゾ[a]−カルバゾール−3−カルボキシ−N−ベンズイミダゾロン−5−アミドの群より選択されるいずれかの2−ヒドロキシ−11H−ベンゾ[a]−カルバゾール−3−カルボン酸アリールアミド(HBCと略記)をアゾ・カップリングさせる合成方法
    (2)アミノ基を2個以上有する化合物(代表式:H2N−Ar−NH2)である3,3’−ジメトキシ−4,4’−ベンジジンをジアゾ化してなるジアゾニウム塩に、2−ヒドロキシ−11H−ベンゾ[a]−カルバゾール−3−カルボン酸アリールアミド(HBCと略記)である2−ヒドロキシ−11H−ベンゾ[a]−カルバゾール−3−カルボキシ−(2−メチル)−p−アニシダイド及び該化合物以外の他のカップリング成分(Cpと表示)である5’−クロロ−3−ヒドロキシ−2’,3’−ジメトキシ−ナフタニライドアニライドをアゾ・カップリングした構造を有するポリアゾ顔料の合成方法であり、アミノ基を2個以上有する化合物(代表式:H2N−Ar−NH2)をジアゾ化してなるジアゾニウム塩に、等モルあるいはそれ以下のカップリング成分(Cp)をアゾ・カップリングさせ、必要に応じて、2個以上のカップリング成分(Cp)がカップリングしたポリアゾ顔料を分離、除去し、次いでカップリングされていないジアゾニウム基に上記カップリング成分(HBC)をアゾ・カップリングさせる合成方法
    (3)分子中に2−ヒドロキシ−11H−ベンゾ[a]−カルバゾール−3−カルボアミド残基(HBC−と略記)を2個以上有するカップリング成分(HBC−HBCと表示)であるフェニレン−(1,4−)ビス(2−ヒドロキシ−11H−ベンゾ[a]−カルバゾール−3−カルボアミド)に、アミノ基を1個有する化合物(Ar−NH2)である2−メトキシ−5−N−フェニルカルバモイルアニリンをジアゾ化してなるジアゾ成分をアゾ・カップリングさせる合成方法
    且つ、
    (II)上記の方法で合成されたポリアゾ顔料が粗大である場合には、下記の(1)又は(2)のいずれかの方法で顔料の平均粒子径を10nm〜200nmに微細化する工程を有することを特徴とする黒色アゾ顔料の製造方法。
    (1)ボールミル、サンドミル、アトライター、横型連続媒体分散機、ニーダー、連続式一軸混練機、連続式二軸混練機、三本ロールおよびオープンロール連続混練機からなる群から選ばれたいずれかの顔料磨砕機あるいは顔料分散機を使用する微細化方法
    (2)混練機中で水溶性塩、必要に応じて水溶性有機溶剤と共に混練、摩砕するソルトミリング法
  3. 請求項1に記載の黒色アゾ顔料を含む顔料成分を、液体分散媒体中あるいは固体分散媒体中に含んでなることを特徴とする着色組成物。
  4. 前記黒色アゾ顔料を含む顔料成分が、前記黒色アゾ顔料単独、あるいは、該黒色アゾ顔料に、該黒色アゾ顔料を補正するための、有彩色顔料、白色顔料、他の黒色顔料及び体質顔料からなる群から選ばれた1種以上の顔料を併用してなる、暗色の有彩色の着色、ないし無彩色の暗色あるいは黒色の着色をするための請求項3に記載の着色組成物。
  5. 前記黒色アゾ顔料と、該黒色アゾ顔料を補正するための、有彩色顔料、白色顔料、他の黒色顔料あるいは体質顔料との配合比率が、コンピューター・カラーマッチングシステムを用いて最適化される方法で決定された請求項4に記載の着色組成物。
  6. 前記液体分散媒体が、反応性基を有してもよい重合体、反応性基を有してもよいオリゴマー及び反応性基を有してもよい単量体から選ばれる少なくとも1種の皮膜形成材料を含み、且つ、それ自体液体であるかあるいは更に溶剤及び/または水を含有する請求項3に記載の着色組成物。
  7. 前記固体分散媒体が、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、ワックス、脂肪酸アミド及び脂肪酸金属石鹸から選ばれる少なくとも1種の固体分散媒体を含有する請求項3に記載の着色組成物。
  8. 前記着色組成物が、塗料用、コーティング剤用、プラスチック用、繊維用、印刷インキ用、文房具用、画像記録用、及び画像表示用の少なくともいずれかに用いられる請求項3ないし7のいずれか1項に記載の着色組成物。
  9. 物品の表面の着色、あるいは物品自体の着色により、物品を黒色ないし暗色に着色する際に、請求項4に記載の着色組成物を用いることを特徴とする物品の着色方法。
  10. 前記物品が透明性基材からなり、該透明性基材を、塗装、塗付、染色、印刷、筆記、描画、インクジェット印刷、電子写真印刷、静電印刷あるいはフォトリソグラフィックプリントから選ばれたいずれかの方法により表面着色するか、あるいは混練方法または含浸方法により上記基材自体を内部着色する請求項9に記載の物品の着色方法。
  11. 前記表面着色あるいは内部着色が、着色された部分が、可視光領域の凡そ400〜750nmの波長範囲では凡そ5%以下の分光透過率を示し、900〜1500nmの赤外領域では凡そ30%以上の透過率を示すように施されて、透明性基材からなる物品が、可視光遮光性と赤外線透過性の両方の光学特性を併せ持つようにされている請求項10に記載の物品の着色方法。
  12. 物品自体に光反射性を有するものを用いるか、あるいは予め形成させた光反射性下地が設けられている物品を用い、これらの物品の表面あるいは光反射性下地の上に、前記着色組成物を用いて、塗装、塗布、貼付、溶着、重積、原液着色、捺染、浸染、印刷、筆記、描画、インクジェット印刷、電子写真印刷あるいは静電印刷することにより、赤外領域では反射性を示す着色を施す請求項9に記載の物品の着色方法。
  13. 光反射性シートの上に、黒色または暗彩色の赤外線透過性層が複層されている太陽光発電モジュールのバックシートであって、赤外線透過性層に、請求項1の黒色アゾ顔料が含有されていることを特徴とする太陽光発電モジュールのバックシート。
  14. 基材自体に光反射性を有するものを光反射性シートとして用いるか、あるいは予め形成させた光反射性下地が設けられている基材を光反射性シートとして用い、これらの基材の表面あるいは光反射性下地の上に、請求項1の黒色アゾ顔料が含有されている着色組成物を、塗装、塗布、貼付、溶着、重積、印刷、インクジェット印刷、電子写真印刷あるいは静電印刷することにより、赤外領域では反射性を示す着色を施して、光反射性シートの上に黒色または暗彩色の赤外線透過性層を複層したことを特徴とする太陽光発電モジュールのバックシートの製造方法。
  15. カラーフィルター(CF)基板あるいは有機EL発光基板に形成されるブラックマトリックス(BM)が、請求項1の黒色アゾ顔料を含有していることを特徴とするカラーディスプレーパネル。
  16. 実質的に電気絶縁性であるブラックマトリックスと電極が重積あるいは接触する状態で形成されたCF基板あるいは有機EL発光基板を有する請求項15に記載のカラーディスプレーパネル。
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