JP5851763B2 - 複合体の製造方法、ゴム組成物及び空気入りタイヤ - Google Patents
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Description
上記式(2)中のMr+で表される金属イオンが、リチウムイオン、ナトリウムイオン、カリウムイオン、セシウムイオン、コバルトイオン、銅イオン、又は亜鉛イオンであることが好ましく、リチウムイオン、ナトリウムイオン、又はカリウムイオンであることがより好ましい。
本発明は、上記製造方法により得られる複合体を含むゴム組成物に関する。
本発明はまた、上記ゴム組成物を用いて作製した空気入りタイヤに関する。
本発明の複合体の製造方法は、一方の末端に充填剤と相互作用を有する官能基を、もう一方の末端には界面活性作用を有すると共に分解後ラジカルにより結合を生じることが可能な官能基を有する化合物(X)を含有する充填剤分散液と、ゴムラテックスとを混合して配合ラテックスを調製する工程(I)、工程(I)で得られた配合ラテックスを凝固させる工程(II)を含む製法である。すなわち、まず、化合物(X)を使用して充填剤を水中に分散させた分散液と、ゴムラテックスとをそれぞれ調製した上で、該ゴムラテックスと該分散液を液体状態で混合して配合ラテックス(混合液)を作製し、凝固させることにより複合体が製造されている。このため、ゴム中に充填剤が均一に分散した複合体を製造できる。そのため、該複合体をゴム組成物に使用すると、耐摩耗性、低燃費性、ゴム強度を向上できる。
そして、本発明では、界面活性作用を有する化合物(X)を使用しているが、化合物(X)をゴム組成物に配合した場合、耐摩耗性、低燃費性、ゴム強度を向上できる。そのため、化合物(X)がゴム組成物に混入することにより、上記性能が低下することはなく、むしろ上記性能をより向上させることができる。
このように、本発明では、化合物(X)を使用することにより、充填剤の分散性が向上したことにより得られる向上効果に加えて、ゴム組成物に化合物(X)自体を配合したことにより得られる向上効果も得られるため、相乗的に耐摩耗性、低燃費性、ゴム強度を向上できる。特に、側鎖に二重結合を有さない天然ゴム等のジエン系ゴムにおいては、通常のシランカップリング剤では効果が少ないため、物性改善効果が大きい。
ゴムラテックスとしては、天然ゴムラテックス、合成ジエン系ゴムラテックス(ブタジエンゴム、スチレンブタジエンゴム、アクリロニトリルブタジエンゴム、エチレン酢酸ビニルゴム、クロロプレンゴム、ビニルピリジンゴム、ブチルゴムなどのラテックス)などが挙げられる。なかでも、得られるゴム組成物の耐摩耗性、低燃費性、ゴム強度に優れるという理由から、天然ゴムラテックス、スチレンブタジエンゴムラテックス(SBRラテックス)が好ましい。
なお、シリカの窒素吸着比表面積は、ASTM D3037−81に準じてBET法で測定される値である。
工程(II)では、上記工程(I)で得られた配合ラテックスを凝固(凝集)させる。配合ラテックスの凝固は、酸凝固、塩凝固、メタノール凝固などがあるが、ゴムラテックスと充填剤を均一分散させて凝固するためには、酸凝固、塩凝固又はこれらの併用が好ましい。凝固させるための酸としては、硫酸、塩酸、蟻酸、酢酸などが挙げられる。また、塩としては、例えば、1〜3価の金属塩(塩化ナトリウム、塩化マグネシウム、硝酸カルシウム、塩化カルシウムなどのカルシウム塩など)が挙げられる。
工程(II)の後、通常工程(III)として、工程(II)で得られた凝固物(凝集ゴム、充填剤、及び化合物(X)を含む凝集物)を洗浄する。ここで、ゴムラテックスとしてケン化天然ゴムラテックスを使用した場合には、洗浄により、ゴム(天然ゴム)中のリン含有量を200ppm以下に調整(低減)し、ケン化処理後に洗浄処理を施すことにより、凝固物における天然ゴム中のリン量を200ppm以下に低減できる。また、ゴムラテックスとして脱蛋白天然ゴムラテックスを使用した場合には、洗浄により、ゴム(天然ゴム)中の窒素含有量を低減できる。
本発明のゴム組成物は、上記製法により得られる複合体を含有する。ゴム中に充填剤を均一分散させた複合体を使用しているため、同様に充填剤が均一に分散したゴム組成物が得られる。このため、耐摩耗性、低燃費性、ゴム強度をバランスよく改善できる。
本発明のゴム組成物は、空気入りタイヤに好適に適用される。この場合、ゴム中に充填剤を均一分散させた複合体を使用しているため、耐摩耗性、低燃費性、ゴム強度をバランスよく改善できる。
反応容器内の気体を窒素ガスに置換した。該反応容器に、3−ブロモプロピルアミン臭素酸塩25g(0.11モル)、チオ硫酸ナトリウム・五水和物28.42g(0.11モル)、メタノール125mlおよび水125mlを仕込み、得られた混合物を70℃で4.5時間還流した。反応混合物を放冷し、減圧下でメタノールを除去した。得られた残渣に、水酸化ナトリウム4.56gを加え、得られた混合物を室温で30分間撹拌した。減圧下で溶媒を完全に除去した後、残渣にエタノール200mlを加えて1時間還流した。熱ろ過により副生成物である臭化ナトリウムを除去した。ろ液を減圧下で、結晶が析出するまで濃縮し、その後静置した。結晶をろ過により取り出し、エタノール、次いでヘキサンで洗浄した。得られた結晶を真空乾燥して、S−(3−アミノプロピル)チオ硫酸のナトリウム塩(下記式で表される化合物)を得た。
1H−NMR(270.05MHz,MeOD)δppm:3.1(2H,t,J=6.3Hz),2.8(2H,t,J=6.2Hz),1.9−2.0(2H,m)
得られたS−(3−アミノプロピル)チオ硫酸のナトリウム塩のメディアン径(50%D)を、(株)島津製作所製SALD−2000J型を用い、レーザー回折法(測定操作は下記のとおり)により測定したところ、メディアン径(50%D)は66.7μmであった。得られたS−(3−アミノプロピル)チオ硫酸のナトリウム塩を粉砕し、そのメディアン径(50%D)が14.6μmであるS−(3−アミノプロピル)チオ硫酸のナトリウム塩を調製した。メディアン径(50%D)が14.6μmであるS−(3−アミノプロピル)チオ硫酸のナトリウム塩を以下の実施例で使用した。
<測定操作>
得られたS−(3−アミノプロピル)チオ硫酸のナトリウム塩を下記の分散溶媒(トルエン)と分散剤(10質量%スルホこはく酸ジー2−エチルヘキシルナトリウム/トルエン溶液)との混合溶液に室温で分散させ、得られた分散液に超音波を照射しながら、該分散液を5分間撹拌して試験液を得た。該試験液を回分セルに移し、1分後に測定した。(屈折率:1.70−0.20i)
また、S−(3−アミノプロピル)チオ硫酸のナトリウム塩10.0gを水30mlに溶解させて得られる水溶液のpHは11〜12であった。
N,N−ジメチル(3−ブロモプロピルアミン)を出発物質として、(化合物X−1)と同様の手法で調製を行い、調製した化合物(S−(N,N−ジメチル(3−アミノプロピル))チオ硫酸のナトリウム塩(下記式で表される化合物))の確認を行った。
3−ブロモプロパノールを出発物質として、(化合物X−1)と同様の手法で調製を行い、調製した化合物(S−(3−ヒドロキシルプロピル)チオ硫酸のナトリウム塩(下記式で表される化合物))の確認を行った。
4−ブロモ酪酸を出発物質として、(化合物X−1)と同様の手法で調製を行い、調製した化合物(S−(3−カルボキシルプロピル)チオ硫酸のナトリウム塩(下記式で表される化合物))の確認を行った。
天然ゴムラテックス:タイテックス社から入手したフィールドラテックスを使用
SBRラテックス:日本ゼオン(株)製のLX112(E−SBR、スチレン含量:37.5質量%、ビニル含量:18質量%、ゴムラテックス中のゴム成分の濃度:40.5質量%)
蛋白質分解酵素:花王(株)製のアルカリプロテアーゼ
Emal−E:花王(株)製の界面活性剤エマールE−70C(ポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸ナトリウム)
DEMOL:花王(株)製の界面活性剤デモールN(β−ナフタリンスルホン酸ホルマリン縮合物のナトリウム塩)
NaOH:和光純薬工業(株)製のNaOH
カーボンブラック:キャボットジャパン(株)製のN220(N2SA:120m2/g、DBP:114ml/100g)
シリカ:デグッサ社製のウルトラジルVN3(N2SA:175m2/g)
セルロースナノファイバー: ダイセル化学工業(株)製のセリッシュKY−100G(ミクロフィブリル化植物繊維(セルロースミクロフィブリル)、平均繊維長:0.5mm、平均繊維径:0.02μm、固形分:10質量%)
酸化亜鉛:三井金属鉱業(株)製の亜鉛華1号
ステアリン酸:日油(株)製の椿
老化防止剤:大内新興化学工業(株)製のノクラック6C(N−(1,3−ジメチルブチル)−N’−フェニル−p−フェニレンジアミン)
シランカップリング剤:デグッサ社製のSi266(ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)ジスルフィド)
硫黄:鶴見化学工業(株)製の粉末硫黄
加硫促進剤NS:大内新興化学工業(株)製のノクセラーNS(N−tetr−ブチル−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド)
加硫促進剤DPG:大内新興化学工業(株)製のノクセラーD(N,N’−ジフェニルグアニジン)
天然ゴムラテックスの固形分濃度(DRC)を30%(w/v)に調整した後、天然ゴムラテックス1000gに対し、Emal−E10gと蛋白質分解酵素0.6gを加え、室温(25℃)で24時間酵素処理を行い、脱蛋白天然ゴムラテックスを得た。
天然ゴムラテックスの固形分濃度(DRC)を30%(w/v)に調整した後、天然ゴムラテックス1000gに対し、Emal−E10gとNaOH20gを加え、室温(25℃)で48時間ケン化反応を行い、ケン化天然ゴムラテックスを得た。
天然ゴムラテックスを固形分が30%になるように希釈した後、硫酸によりpH7に調整して凝固させた。得られた固形物をろ過してゴム分を回収し、水1000mlで洗浄を繰り返し、その後110℃で2時間乾燥して、固形ゴム(天然ゴム)を得た。
上記で得られた脱蛋白天然ゴムラテックスに水を添加して固形分濃度(DRC)を15%(w/v)に調整した後、ゆっくり攪拌しながらギ酸を添加しpHを4.0〜4.5に調整し、凝集させた。凝集したゴムを粉砕し、水1000mlで洗浄を繰り返し、その後110℃で2時間乾燥して固形ゴム(脱蛋白天然ゴム(DPNR))を得た。
上記で得られたケン化天然ゴムラテックスに水を添加して固形分濃度(DRC)を15%(w/v)に調整した後、ゆっくり攪拌しながらギ酸を添加しpHを4.0〜4.5に調整し、凝集させた。凝集したゴムを粉砕し、水1000mlで洗浄を繰り返し、その後110℃で2時間乾燥して固形ゴム(ケン化天然ゴム(HPNR))を得た。
SBRラテックスを固形分が30%になるように希釈した後、硫酸によりpH7に調整して凝固させた。得られた固形物をろ過してゴム分を回収し、水1000mlで洗浄を繰り返し、その後110℃で2時間乾燥して、固形ゴム(SBR)を得た。
表1に示す配合量で、複合体(A)の調製を行った。なお、ゴムの量(質量部)は、ゴム固形分の量(質量部)を示し、充填剤、添加剤の量(質量部)は、ゴム固形分100質量部に対する量(質量部)を示す。
(充填剤分散液の調製)
ローター径30mmのコロイドミルに脱イオン水1200gに化合物X−1を6g添加して溶解した後、カーボンブラック(N220)300gを投入し、ローター・ステーター間隔1mm、回転数2000rpmで10分間撹拌した。その後、圧力式ホモジナイザーを用いて3回循環させて、充填剤分散液を調製した。
得られた充填剤分散液にゴム固形分で600g相当の天然ゴムラテックスを混合して、配合ラテックスを調製した。配合ラテックスが均一になるまで十分に撹拌した後、配合ラテックスを硫酸によりpH7に調整して凝固させた。得られた凝固物(固形物)をろ過してゴム分を回収し、水1000mlで洗浄を繰り返し、その後110℃で2時間乾燥して、複合体(A)を得た。
表1に従い、充填剤、添加剤、ゴムの種類、これらの量を変更した以外は、複合体(A)と同様にして複合体(B)〜(X)を調製した。
窒素含有量は、CHN CORDER MT−5(ヤナコ分析工業社製)を用いて測定した。測定には、まずアンチピリンを標準物質として、窒素含有量を求めるための検量線を作製した。次いで、各複合体、ケン化天然ゴム又はTSRのサンプル約10mgを秤量し、3回の測定結果から平均値を求めて、試料の窒素含有量とした。
ICP発光分析装置(ICPS−8100、(株)島津製作所製)を使用してリン含有量を求めた。
1mm×1mmに切断した生ゴムのサンプル70.00mgを計り取り、これに35mLのトルエンを加え1週間冷暗所に静置した。次いで、遠心分離に付してトルエンに不溶のゲル分を沈殿させ上澄みの可溶分を除去し、ゲル分のみをメタノールで固めた後、乾燥し質量を測定した。次の式によりゲル含有率(質量%)を求めた。
ゲル含有率(質量%)=[乾燥後の質量mg/最初のサンプル質量mg]×100
表3〜6に示す配合に従って、1.7Lバンバリーを用いて、硫黄及び加硫促進剤以外の薬品を混練りした。次に、ロールを用いて、得られた混練り物に硫黄及び加硫促進剤を添加して練り込み、未加硫ゴム組成物を得た。
得られた未加硫ゴム組成物を150℃で30分間プレス加硫して加硫ゴム組成物を得た。
得られた各加硫ゴム組成物を下記により評価し、結果を表3〜6に示した。なお、表3〜6の基準配合は、それぞれ比較例8,14,18,19とした。
粘弾性スペクトロメーターVES((株)岩本製作所製)を用いて、温度50℃、初期歪み10%、動歪み2%、周波数10Hzの条件下で各配合(加硫ゴム組成物)の損失正接(tanδ)を測定し、基準配合の損失係数tanδを100として、下記計算式により指数表示した(転がり抵抗指数)。指数が大きいほど転がり抵抗特性(低燃費性)に優れる。
(転がり抵抗指数)=(基準配合のtanδ)/(各配合のtanδ)×100
ランボーン摩耗試験機を用いて、温度20℃、スリップ率20%及び試験時間2分間の条件下でランボーン摩耗量を測定した。更に、測定したランボーン摩耗量から容積損失量を計算し、基準配合のランボーン摩耗指数を100とし、下記計算式により、各配合(加硫ゴム組成物)の容積損失量を指数表示した。なお、ランボーン摩耗指数が大きいほど、耐摩耗性に優れることを示す。
(ランボーン摩耗指数)=(基準配合の容積損失量)/(各配合の容積損失量)×100
得られた加硫ゴム組成物を用いて、3号ダンベル型ゴム試験片を作製し、JIS K6251「加硫ゴム及び熱可塑性ゴム−引張特性の求め方」に準じて引張試験を行い、破断強度(TB)及び破断時伸び(EB)を測定し、その積(TB×EB)を算出した。基準配合のTB×EBを100として、下記計算式により、各配合(加硫物)のゴム強度(TB×EB)を指数表示した。なお、ゴム強度指数が大きいほど、ゴム強度に優れることを示す。
(ゴム強度指数)=(各配合のTB×EB)/(基準配合のTB×EB)×100
Claims (8)
- 一方の末端に充填剤と相互作用を有する官能基を、もう一方の末端には界面活性作用を有すると共に分解後ラジカルにより結合を生じることが可能な官能基を有する化合物(X)を含有する充填剤分散液と、ゴムラテックスとを混合して配合ラテックスを調製する工程(I)、工程(I)で得られた配合ラテックスを凝固させる工程(II)を含み、
化合物(X)の充填剤と相互作用を有する官能基が、水酸基、カルボキシル基、及びアミノ基からなる群より選択される少なくとも1種であり、
化合物(X)の界面活性作用を有すると共に分解後ラジカルにより結合を生じることが可能な官能基が−S−SO3H又はその金属塩であり、
充填剤がカーボンブラック、シリカ、及び短繊維からなる群より選択される少なくとも1種である複合体の製造方法。 - 式(2)中のMr+で表される金属イオンが、リチウムイオン、ナトリウムイオン、カリウムイオン、セシウムイオン、コバルトイオン、銅イオン、又は亜鉛イオンである請求項2記載の複合体の製造方法。
- 式(2)中のMr+で表される金属イオンが、リチウムイオン、ナトリウムイオン、又はカリウムイオンである請求項2記載の複合体の製造方法。
- ゴムラテックスが、天然ゴムラテックス、及びスチレンブタジエンゴムラテックスからなる群より選択される少なくとも1種である請求項1〜4のいずれかに記載の複合体の製造方法。
- 天然ゴムラテックスが、脱蛋白処理された脱蛋白天然ゴムラテックス、及びケン化処理されたケン化天然ゴムラテックスからなる群より選択される少なくとも1種である請求項5記載の複合体の製造方法。
- 請求項1〜6のいずれかに記載の製造方法により得られる複合体と、硫黄とを混練する工程を含むゴム組成物の製造方法。
- 請求項7に記載の製造方法により得られるゴム組成物を、未加硫の段階でタイヤ部材の形状に合わせて押し出し加工する工程を含む空気入りタイヤの製造方法。
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