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JP5845796B2 - 乾式クリーニング装置 - Google Patents

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Description

本発明は、飛翔する洗浄媒体を洗浄対象物に接触(衝突の概念を含む)させて洗浄する乾式クリーニング装置に関し、詳しくは、洗浄対象物の任意の部位に当てて洗浄することが可能で特にハンディタイプとして好適な乾式クリーニング装置に関する。
近年、プリント基板製造におけるフローはんだ槽によるはんだ付け工程において、はんだ付け処理する領域以外をマスクする治具が多く用いられている。このようなマスク治具(ディップパレット、キャリアパレットと呼ばれる)は、繰り返し使用されるうちに、表面にフラックスが堆積して固着しマスクの精度を下げるために、定期的に洗浄する必要があった。
一般的には、このような洗浄は溶剤に浸漬して行うため、大量の溶剤を消費しており、コストアップを避けられず、作業者への負荷も極めて大きい。
浸漬せずに装置内で溶剤を洗浄対象物に噴射する方式も知られているが、溶剤を大量に使用するという点に変わりはない。
この問題を解消する技術として、飛翔する洗浄媒体を洗浄対象物に接触させて洗浄する乾式の洗浄装置が知られている。
特許文献1、2には、円筒形の容器の側面に開口部を設け、容器内で圧縮気流の旋回空気流により円周方向に洗浄媒体を飛翔させ、開口部に接した洗浄対象物に洗浄媒体を衝突させる洗浄方法が開示されている。
しかしながらこの方式では、圧縮気流で旋回空気流を形成しているため、開口部から洗浄対象物が離された際に、洗浄媒体が容器外部に漏出するという問題を避けられない。
この問題を解消すべく、特許文献1では開口部に網部材を設けて漏出を防いでいるが、洗浄媒体が洗浄対象物に衝突する際のエネルギーが低下したり、網部材に洗浄媒体が挟まって洗浄能力が低下するなどの新たな問題を抱えている。
特許文献2では、開口部を塞ぐ開閉蓋を設けて漏出を防ぐようにしているが、開口部から洗浄対象物が離された際に開閉蓋を素早く移動させて塞ぐ必要があり、作業者に余計な注意力や労力を強いるとともに、機構的に複雑で操作が難しく、故障しやすいという問題があった。
このような状況に鑑み、本出願人は、筐体に吸気手段を接続し、開口部が洗浄対象物で塞がれた状態で通気路を介して筐体外部から内部へ流入する気流により発生する旋回空気流によって薄片状の洗浄媒体を飛翔させるとともに、筐体内に気体や粉塵の通過を許容し且つ洗浄媒体の通過を不可とする、例えば網目状の多孔手段を設けて旋回空気流形成領域で洗浄媒体が留まるようにし、旋回空気流によって洗浄媒体の循環飛翔が継続する乾式クリーニング装置を提案した(特願2010−175687号)。
この乾式クリーニング装置によれば、開口部から洗浄対象物が離されても、通気路が大気圧と同レベルとなって旋回空気流が消失するとともに、吸気による負圧で開口部から外気が筐体内に多く流入するため、筐体内の洗浄媒体は多孔手段に吸着された状態となって筐体内に留まり、開口部からは漏れない。
本出願人による上記先願技術は、図8に示すように、吸気手段6によって筐体4の内部を吸引し、筐体4の開口部18を洗浄対象物20に当てて塞ぎ、筐体4の内部を負圧化させてインレット24から外部空気を筐体内に高速で流入させて旋回空気流30を生じせしめ、これによって洗浄媒体5を飛翔させ、開口部18における洗浄対象物20の被洗浄面に衝突させてクリーニングするものである。旋回空気流30はその流路断面積を流路制限部材16により制限されている。
開口部18が塞がれる前は、洗浄媒体5は吸引作用により多孔手段としての分離板14に吸着されて筐体内部に保持された状態となっている。
この構成によれば、作業者が手に持って筐体を移動させることができ、洗浄対象物20の所望の部位をスポット的にクリーニングすることができ、クリーニングの自由度が極めて高い。
しかしながら、この種の乾式クリーニング装置における乾式クリーニング筐体は、機動性を有するハンディタイプであるが故に、限定された狭い空間内で旋回空気流により洗浄媒体を高速で飛翔させる構成とならざるを得ない。
このため、洗浄対象物に対する洗浄媒体の衝突、洗浄媒体同士の接触、筐体内壁に対する洗浄媒体の接触など、種々の摩擦・衝突が複合的に起こり、洗浄媒体が非常に帯電しやすい洗浄メカニズムとなっている。特に冬場等、湿度の低い環境での使用時に、以下に述べるような問題が生じる場合があった。
洗浄媒体の帯電レベル(帯電電位)が高くなると、洗浄媒体を吸引作用に抗して筐体内部に保持するための多孔手段(分離板)に洗浄媒体が静電気力で密着して吸引を妨げ、これにより筐体内の負圧が低下して旋回空気流の速度が落ちる。この状態になると、洗浄媒体の飛翔速度が遅くなり、洗浄能力が急激に低下する。
帯電した洗浄媒体は分離板だけでなく、筐体内壁にも密着する。静電気力で密着した洗浄媒体は、負圧状態が正常に保たれて強い旋回空気流が形成されていても飛翔せずに留まるため、筐体内に投入した洗浄媒体の「洗浄対象物の汚れの除去に適正な飛翔数量」が不足し、この場合にも洗浄能力は低下する。
本発明は、上記のような現状に鑑みてなされたもので、上記した狭い飛翔空間を有する乾式クリーニング装置特有の摩擦帯電による問題を解消できる乾式クリーニング装置の提供を、その主な目的とする。
上記目的を達成するために、本発明は、洗浄媒体を気流により飛翔させ、上記洗浄媒体を洗浄対象物に当てて洗浄対象物の洗浄を行う乾式クリーニング装置において、上記洗浄媒体を飛翔させる内部空間と、上記洗浄対象物に当接して上記洗浄媒体を上記洗浄対象物に衝突させる開口部と、外部からの空気を上記内部空間へ通す通気路と、上記通気路を介して上記内部空間に導気された空気を吸引することにより上記内部空間に旋回気流を生じさせる吸気口と、上記吸気口に接続される吸引手段と、上記洗浄対象物から除去された除去物を上記吸気口側へ通過させる多孔手段と、上記洗浄媒体が飛翔する領域の湿度を増加させる加湿手段と、上記内部空間の気圧を検知する気圧検知手段と、上記気圧検知手段により検知される上記内部空間の気圧変化に応じて上記加湿手段を制御する制御手段と、を有していることを特徴とする。
また、本発明は、乾式クリーニング装置において、本発明に係る乾式クリーニング筐体と、上記吸気口に接続される吸引手段と、上記洗浄媒体とから構成されることを特徴とする。
本明細書における用語の定義は以下の通りである。
本発明における「筐体」とは、内側に旋回空気流を発生させやすい形状の空間を備えた容器状の構造物を示す。旋回空気流を発生させやすい形状とは、気流が筐体の内壁を沿って流れて循環する、連続した内壁を持つ形状であり、より望ましくは回転体形状の内壁または内部空間を備える形状である。
「通気路」とは、気流を一定の方向に流れやすくする手段のことであり、滑らかな内面を備える管形状であることが一般的である。しかしながら、たとえば滑らかな面を持つ、板状の流路制御板などを用いても、気体を面に沿った方向に流れやすくする、整流効果が発現するため、このような形態も含めて通気路とする。
また、気流が直線的に流れる形状が一般的であるが、流路抵抗をあまり生じない緩やかなカーブを備えていても整流効果を得ることができる。ただし、特に記載されない場合、通気路の方向とは空気流入口において噴出する気流の方向のことを意味する。
直線の管形状を備え、一方の端部が筐体内壁の空気流入口に接続し、もう一方の端部が筐体外の大気に開放されている空気取り入れ口である通気路を、本発明では「インレット」と呼称する。インレットは一般的に流体抵抗が低く、滑らかな内面を持ち、管の断面は円形、長方形、スリット形状などが用いられる。
本発明において、「旋回気流」とは、空気流入口からの流入気流により加速された気流が、筐体の内壁に沿って方向を変えつつ流れ、空気流入口の位置に、循環して戻り、流入気流と合流する気流である。気流を形成する流体が空気の場合には「旋回空気流」と同義である。一般的には、内壁が連続している閉空間内で、内壁の接線方向に向けて気流を流入させることにより発生する。
本発明において、「水分」とは、水と、水に水以外の洗浄液を混合したものなどを含む概念をいう。
本発明によれば、吸引によって筐体内を負圧化し、旋回気流を形成して洗浄媒体を飛翔させる方式の乾式クリーニング装置において、洗浄媒体が摩擦帯電して洗浄能力が低下するのを抑制でき、低湿環境においても一定の洗浄能力を維持することができる。
本発明の第1の実施形態に係る乾式クリーニング筐体の使用状態を示す概要側面図である。 同乾式クリーニング筐体を有する装置の要部水平断面図及び縦断面図である。 洗浄媒体排出口の配置位置の変形例を示す要部水平断面図及び縦断面図である。 同乾式クリーニング装置の使用時の開口部の気密状態を示す要部拡大断面図である。 第2の実施形態に係る乾式クリーニング筐体の使用状態を示す概要側面図である。 第3の実施形態に係る乾式クリーニング筐体の使用状態を示す概要側面図である。 第4の実施形態に係る乾式クリーニング筐体の使用状態を示す概要側面図である。 本発明の乾式クリーニング装置の基本構成を示す概要断面図である。 同装置の洗浄動作を示す図である。 同乾式クリーニング装置の使用状態を示す斜視図である。
以下、本発明の実施形態を図を参照して説明する。
まず、図8乃至図10に基づいて、本発明の乾式クリーニング装置の基本構成及び機能について説明する。
図8に基づいて、本発明に係るハンディタイプの乾式クリーニング装置2の構成の概要を説明する。図8(a)はA−A線での横断面図、(b)はB−B線での縦断面図である。
乾式クリーニング装置2は、内部に洗浄媒体5の飛翔空間を有する乾式クリーニング筐体(以下、単に「筐体」という)4と、筐体4内を負圧化する吸気手段6とを備えている。
筐体4は、筐体本体部としての円筒形状の上部筐体4Aと、逆円錐形状の下部筐体4Bとから一体として構成されている。ここでの上部、下部は図面上の便宜的呼称であって、実機上の上下とは必ずしも関係はない。
下部筐体4Bは、その円錐頂部に吸気口8を一体に備えており、吸引ダクトとして機能する。
吸気手段6は、吸気口8に一端を接続されたフレキシブルな吸引ホース10と、該吸引ホース10の他端に接続された吸引装置12とを有している。吸引装置12としては、家庭用掃除機、真空モータや真空ポンプ、あるいは流体の圧送により間接的に低圧化ないし負圧化を生じさせる装置などを適宜用いることができる。なお、部材の上面、底面等の上下の位置関係は図面上の基準にすぎない。
上部筐体4Aの底面部は、下部筐体4Bの上端部を結合する嵌合凹部4A−1となっており、上部筐体4Aと下部筐体4Bは分離可能となっている。上部筐体4Aの上面4A−2は密閉されている。
上部筐体4Aの底面部における下部筐体4Bとの境界部分には、多孔手段としての多孔性の分離板14が設けられている。分離板14は、パンチングメタルのような穴が空いた板状の部材である。分離板14は、吸引されたときの洗浄媒体5の下部筐体4B側への移動を阻止するものである。図8(a)では分離板14の表示を一部省略している。なお、洗浄媒体5は分かり易くするためにその大きさを誇張表示している。
多孔手段としては、洗浄媒体5を通さずに空気及び粉塵(洗浄対象物から除去された除去物)を通過させる大きさの細孔を多く備える多孔形状であればよく、スリット板や網などを用いてもよく、材質も滑らかな面を備えていれば、樹脂や金属などを自由に選択して良い。
多孔手段は旋回空気流の中心軸と直交する面として配置されている。旋回空気流の中心軸と直交することによって、多孔手段に沿う方向に気流が流れることにより、洗浄媒体5の滞留を防ぐ効果がある。
旋回空気流の減衰を抑えるために、筐体内面は段差、凹凸がなく平滑であることが望ましい。
多孔手段は、旋回空気流に沿った面に配置されることにより、表面に吸着した洗浄媒体を再飛翔させることができる。
筐体4の材質は特に限定されないが、異物の付着や洗浄媒体との摩擦による消耗を防ぐために、例えばアルミ二ウムやステンレスなどの金属製が好適であるが、樹脂製のものを用いることもできる。
上部筐体4Aの内部中心には、上部筐体4Aの円筒軸を共通の軸とするように、円筒状の流路制限部材16が筐体の一部として設けられ、流路制限部材16の下端は分離板14に固定されている。
流路制限部材16は旋回空気流の流路断面積を絞って流速を向上させる目的で設けられている。流路制限部材16により上部筐体4A内には滑らかな壁面を有するリング状の旋回空気流移動空間(洗浄媒体の飛翔空間)が形成されている。
上部筐体4Aの形状によっては、流路制限部材16の中心軸と上部筐体4Aの中心軸を必ずしも共通にする必要はなく、リング状の空間が確保できていれば偏芯していても良い。
上部筐体4Aの側面の一部には、旋回空気流で飛翔する洗浄媒体5を洗浄対象物に接触ないし衝突させるための開口部18が形成されている。
上部筐体4Aは直径に対して高さが極めて小さい円筒形状であり、その高さを形成する側面の一部に開口部18を設けることにより、筐体4全体としては、図8(b)に示すように、開口部18以外の外周部分が洗浄対象物20から大きく逃げる(離れる)レイアウトとなり、洗浄対象物20に対する局所的当接、換言すればピンポイントクリーニングの自由度が高められている。
開口部18は、上部筐体4Aの側面を円筒軸に平行な平断面により切断した形状であり、円筒軸と直交する方向から見て矩形形状をなしている。
上部筐体4Aの側面には空気流入口22が形成されており、空気流入口22には、旋回空気流発生手段で且つ通気路としてのインレット24が上部筐体4Aの外方から接続されて上部筐体4Aに一体に固定されている。
インレット24は分離板14に略平行に設定されており、その通気方向は、上部筐体4Aの半径方向に対して傾き、その通気路中心の延長線が開口部18に達するように位置している。
インレット24は、上部筐体4Aの高さ方向に延びる幅を有している。インレット24は上部筐体4Aの高さよりも径又は幅が小さいものを1つ配置してもよく、単体のインレットを高さ方向に複数配置する構成としてもよい。
図8に示すように、開口部18が洗浄対象物20に当接して塞がれると、筐体4内が閉空間としてなり、インレット24から外気が高速で流入し、この高速気流は洗浄媒体5を開口部18へ向けて加速させるとともに旋回気流としての旋回空気流30を生成する。
閉空間が形成された時に生じる旋回空気流は、分離板14上に吸着した洗浄媒体を吹き払い、再飛翔させる効果を有する。
開口部18は、開放されたときに、空気流入口22における内圧を、大気圧もしくはその近傍にするために十分な大きさの面積を備える。また、空気流入口22も、開口部18の開放時に大気圧もしくはその近傍になりやすい位置に配置される。
このような構成を備えることにより、乾式クリーニング装置2を洗浄対象物に当てていない間は、空気流入口22が大気圧に近づくことによって、外部との差圧が低下し、その結果流入する気流が劇的に低減する。一方、開口部18から流入する気流は多くなるため、洗浄媒体5が筐体4内から漏れ出ることを防ぐことができる。
また、開口部18が開放されている状態では、閉塞されている場合に比べて流入する気流の総量が2〜3倍になるため、とくに薄片状の洗浄媒体では多孔手段上に吸着されるため、再飛翔せず筐体の外に漏れることがない。これを開口部開放時における洗浄媒体吸着効果という。
洗浄媒体5は、薄片状の洗浄片の集合であるが、ここでは薄片状の洗浄片単体としての意味でも用いている。
薄片状の洗浄媒体とは面積が1mm以上200mm以下の薄片である。また、洗浄媒体の材質はポリカーボネイト、ポリエチレンテレフタラート、アクリル、セルロース樹脂などの耐久性のある素材からなるフィルムであり、厚みは0.02mm以上1.0mm以下である。
但し、洗浄対象物(以下「クリーニング対象物」ともいう)によっては洗浄媒体の厚みやサイズや材質を変えることが効果的な場合もあり、これらの洗浄媒体を使用する場合も本発明の範囲に含まれるため、前記洗浄媒体条件にはとらわれないものとする。
洗浄媒体の材質に関しては、樹脂だけにとどまらず、紙、布などの薄片や、あるいは、雲母などの鉱物、セラミックやガラス、金属箔であっても、薄く軽量で飛翔しやすい形状にすることで使用することができる。
上部筐体4Aのリング状の内部空間26は、旋回空気流によって洗浄媒体5を飛翔させて開口部18に対向する洗浄対象物20に接触させる機能を担う空間である。
流路制限部材16の内部空間34は、旋回空気流が作用しない空間である。
以上のように構成される乾式クリーニング装置2による洗浄動作(以下、クリーニング動作という)を、図9を参照して説明する。なお、図9では、部材の厚み等を省略し、分かり易くするために静空間としての内部空間34をハッチングで表示している。
図9(b)は、開口部18を洗浄対象物20から離して開口部18を開放し吸気を行っている状態を、図9(a)は、開口部18を洗浄対象物20に当てて閉塞した状態を示している。
クリーニング動作に先立って、洗浄媒体5を筐体4内に供給する。筐体4内に供給された洗浄媒体5は、図9(b)下図に示すように、分離板14に吸い付けられて筐体4内に保持される。
筐体4内は吸気により負圧状態となっているので、筐体外部の空気がインレット24を通して筐体4内に流入するが、このときのインレット24内の流れは流速・流量ともに小さいので、筐体4内に発生する旋回空気流30は洗浄媒体5を飛翔させる強さには至らない。
筐体4内に洗浄媒体5が供給・保持されたら、図9(a)に示すように、開口部18を洗浄対象物20の表面のクリーニングすべき部位に当てて閉塞状態にする。
開口部18が塞がれると、開口部18からの吸気が止まるので、筐体4内の負圧は一気に増大し、インレット24を通じて吸い込まれる空気量・流速ともに増大し、インレット24内で整流され、インレット出口(空気流入口22)から筐体4内に高速空気流となって吹き出す。
吹き出した空気流は、分離板14上に保持されている洗浄媒体5を開口部18に対向する洗浄対象物20の表面に向けて飛翔させる。
上記空気流は、旋回空気流30となって、筐体4の内壁に沿って円環状に流れつつ、一部は分離板14の穴を通って吸気手段6により吸気される。
このように筐体4内を円環状に流れた旋回空気流30がインレット24の出口部に戻ると、インレット24から入り込む空気流が旋回空気流30に合流しつつ加速する。このようにして筐体4内に安定した旋回空気流30が形成される。
洗浄媒体5は、この旋回空気流により筐体4内で旋回し、洗浄対象物20の表面に繰り返し衝突する。この衝突による衝撃で、洗浄対象物20の表面から汚れが微小粒状あるいは粉状となって分離する。
分離した汚れは、分離板14の穴を通って吸気手段6により筐体4の外部へ排出される。
筐体4内に形成される旋回空気流30は、その旋回軸が、分離板14の表面に直交しており、旋回空気流30は分離板14の表面に平行方向の気流となる。
このため、旋回空気流30は分離板表面に吸い着けられた洗浄媒体5に、横方向から吹き付けて洗浄媒体5と分離板14の間に入り込み、分離板14に吸い付けられている洗浄媒体5を分離板14から引き剥がして再度飛翔させる効果が生じる。
また、開口部18が塞がれて上部筐体4A内の負圧が増大して、下部筐体4B内の負圧に近くなるため、洗浄媒体5を分離板14の表面に吸い付ける力も低下して、洗浄媒体5の飛翔がより容易になる効果が生じる。
旋回空気流30は、一定の方向に気流が加速されるため高速の気流が生成しやすく、洗浄媒体5の高速飛翔運動も容易となる。高速で旋回移動する洗浄媒体5は、分離板14に吸い付けられにくく、洗浄媒体5に付着した汚れが、遠心力により洗浄媒体5から分離され易い。
図10に上述した乾式クリーニング装置2によるクリーニングの実際的な例を示す。
洗浄対象物は前述したフローはんだ槽工程で用いられるディップパレットであり、符号100で示す。
ディップパレット100には、マスク開口部101、102、103が開口しており、これらマスク開口部の穴周辺にフラックスFLが堆積・固化している。この堆積・固化したフラックスFLが除去すべき汚れである。
図10に示すように、下部筐体4Bの根元部(吸気口8部位)を手HDで握り、吸気状態で、筐体4の開口部18を被クリーニング部位に押し当てる。
開口部18が被クリーニング部位に押し当てられる以前は、筐体4内は吸気され、洗浄媒体5は分離板14に吸い付けられているので、開口部18は下方を向いているものの、筐体4内から洗浄媒体5が外部へ漏れることは無い。
勿論、開口部18が被クリーニング部位に押し当てられた以後は、筐体内が気密状態となり、洗浄媒体の漏れ出しはない。
開口部18を被クリーニング部位に押し当てると、インレット24による流入気流が急増し、筐体4内に強い旋回空気流30を発生させ、分離板14に吸い付けられた洗浄媒体5を飛翔させ、ディップパレット100の被クリーニング部位に付着固化したフラックスFLに衝突させてフラックスFLを除去する。
クリーニング作業者は、上述の如く下部筐体4Bの根元を手HDに持ち、ディップパレット100に対して移動させて、被クリーニング部位を順次移動させ、付着・固化したフラックスFLを全て除去することができる。
図10の状態では、ディップパレット100のマスク開口部101の周辺部がクリーニングされ、マスク開口部102、103の周辺部がクリーニング途上である。
被クリーニング部位に対して開口部を移動させる時に被クリーニング部位から開口部18が離されても、前述の洗浄媒体吸着効果により、洗浄媒体5が筐体内から漏れ出さないため、洗浄媒体数が維持され、洗浄媒体量の減少によるクリーニング性能の低下は生じない。
洗浄媒体5は、繰り返し使用される間にクリーニング部位に対する衝突による衝撃により次第に破壊され、クリーニング部位のディップパレット100から除去したフラックス(汚れ)と共に、吸引装置12に吸引回収されるため、乾式クリーニング装置を長時間使用していると、筐体内に保持された洗浄媒体の量が減少する。
このような場合は、新しい洗浄媒体群を筐体4内に補給する。
図1乃至図4に基づいて、本発明の特徴部分(図8乃至図10では不図示)についての第1の実施形態を説明する。なお、上記基本構成と同一部分は同一符号で示し、要部のみ説明する(以下の他の実施形態において同じ)。
図1に示すように、本実施形態に係る乾式クリーニング筐体としての筐体4は、通気路としてのインレット24内に摩擦帯電を抑制する水又は洗浄液をミスト状に噴霧する加湿手段としての噴霧手段50を備えている。
噴霧手段50は、インレット24の側面に固定された噴霧ノズル52と、図示しない洗浄液タンク及びポンプと、該ポンプと噴霧ノズル52とを接続する液供給チューブ54と、液供給チューブ54の途中に配置されたバルブ56とを有している。
開口部18が洗浄対象物20で塞がれると上記のメカニズムで旋回空気流30が発生し、洗浄媒体5が飛翔して洗浄対象物20に衝突する。
筐体内の負圧化に伴って、オペレータがバルブ56を開くと噴霧ノズル52の洗浄液がインレット24内にミスト状に噴霧される。噴霧されたミストは、インレット24から流入する気流により旋回空気流30に気液混合流として合流し、筐体内に拡散する。
拡散したミストは、洗浄媒体5に付着し、あるいは洗浄媒体5を湿らせ、洗浄媒体5の摩擦による帯電を抑制する。
洗浄媒体5の帯電が抑制されるため、洗浄媒体5は分離板14や筐体内壁に密着しにくく、洗浄媒体の滞りない循環を実現することができる。これにより、洗浄媒体5が分離板14に密着して負圧が低下することが防止される。
また、筐体内に投入された洗浄媒体5の「旋回空気流30により飛翔する数量」が減らないため、「洗浄対象物の汚れの除去に適正な飛翔数量」が一定に保たれ、良好な洗浄能力が維持される。
ここでは、図示しないポンプの圧力で噴霧する構成としたが、インレット24内を流れる高速気流の負圧作用で霧化するようにしてもよい。
噴霧ノズル52からの噴霧は、スイッチ等でコントロールできるようにしてもよい。
上記のように本発明では、洗浄媒体5の摩擦帯電を抑制するために加湿手段を備えているが、洗浄媒体の材質としては、除去したい汚れやクリーニング対象物に応じて、樹脂、紙、布、フェルト、ゴム、スポンジ、木や竹の切削屑などの使用も可能である。
紙や布等は吸湿性を有する材料で形成されているが、湿度の低い環境下では上記した摩擦帯電の問題が生じ得るからである。
微細粒子や油性汚れの除去の場合は特に紙や布など、多数の繊維から構成され、汚れを取り込む空間を多数有しているものが適している。また、汚れ除去の観点からは、洗浄液に濡れやすい親水性ないし吸湿性の素材を含み、速やかに洗浄液を吸収することが好ましい。親水性ないし吸湿性の素材として、例えば紙を構成するセルロース繊維や、綿や羊毛等の天然繊維、レーヨン、アクリル、ビニロン等の化学繊維が挙げられる。
また、布の中でも不織布は、洗浄媒体として衝突を繰り返しても繊維が脱落しにくいため好適である。紙は安価な素材であり、使用済みの紙を有効利用することで環境負荷を小さくすることが可能である。
上記のように、筐体開口部をクリーニング対象物に当て、吸引装置を作動させた状態で、噴霧ノズルから微細化した洗浄液粒子を噴出させると、筐体外の空気は通気路を通り、気液混合流となって筐体内に流入する。微細化した洗浄液粒子は、洗浄媒体に付着・浸透して洗浄媒体を湿らせる。
吸引装置を作動させた状態で筐体開口部をクリーニング対象物に当てると、洗浄媒体が筐体内部で旋回気流に乗ってクリーニング対象物に繰り返し衝突するのは、前述のとおりである。適度に湿った洗浄媒体は、乾燥した洗浄媒体に比べて汚れを吸着する能力が高く、微細粒子や油性汚れを効率的に除去することができる。
洗浄液の供給量を適切にコントロールすることで、クリーニング対象物を濡らすことなく汚れを除去することができる。
繰り返し使用により洗浄媒体が汚れた場合は、図2に示すように、分離板14の一部に設けた開閉可能な洗浄媒体排出口58を図示しないハンドル機構で開き、筐体内に残存している使用済みの洗浄媒体を吸引装置へ回収する。
洗浄媒体排出口58は、通常の洗浄動作時は閉じている。洗浄媒体排出口58は、図3に示すように、円筒部材である流路制限部材16の側面の一部に設けることもできる。本例における流路制限部材16は中空円筒状をなす。また、本例のように上部筐体4Aは下部筐体4Bに対して逆円錐形状をなすように構成することもできる。
洗浄媒体排出口58は、周方向にスライドするように設けてもよく、二点鎖線で示すように図示しないヒンジ構成で径方向外側に開閉可能に設けてもよい。
新しい洗浄媒体の供給は、吸引装置を動作させた状態で開口部18を新しい洗浄媒体群に近づけて、吸引により筐体内に補給する。本装置では洗浄媒体分離手段14が吸着できるだけの量の洗浄媒体しか吸い込むことができないため、適切な量の洗浄媒体供給が容易に行える。
目詰まりしやすい洗浄媒体を使用する場合は、洗浄媒体分離手段14に微細な凸部を成型し、洗浄媒体が飛翔しやすくする工夫をしてもよい。
開口部18の周囲には、図4に示すように、クリーニング対象物との密着性を高めるために、ゴムパッキンなどの柔軟部材60を配置するとより効果的である。
図4において、符号62は洗浄対象物20上の汚れを、64は洗浄対象物20を置いたゴムシートを示している。クリーニング対象物が凹凸や開口部のある形状であっても、柔軟なゴムシート等で開口部を塞ぐことで筐体内の負圧を高め、洗浄媒体が漏れ出すことなく洗浄することができる。
[帯電防止についての実験例]
洗浄液(水分)を供給することによる、クリーニング対象物の帯電防止効果(帯電電位の変化)の実験例を表1に示す。クリーニング対象物の材質はアクリル樹脂である。
吸気手段の吸引流量は1000l/分、洗浄液(水分)の供給量は2ml/分とした。
Figure 0005845796
水分を供給することにより、クリーニング対象物の帯電を効果的に抑えることができた。
水分供給なしの場合、静電気を帯びた薄片状の洗浄媒体が筐体やクリーニング対象物に付着して動かなくなってしまい、吸引部を閉塞したり洗浄能力を阻害する場合があったが、水分供給した場合、そのような問題は発生しなかった。
[洗浄力についての実験例]
クリーニング対象物は、リサイクルのために回収されたプラスチック製品を用いた。
SEM(走査型電子顕微鏡)を用いて付着物を確認した結果、サブミクロンサイズの微粒子が付着していることが観察された。洗浄媒体として、紙製ウェスを1cm角に加工したものを使用した。
乾燥した洗浄媒体では微粒子汚れを除去しきれなかったが、微量の洗浄液(水)を噴霧供給することできれいに除去することができた。
この場合、ミスト状の水分の供給は、洗浄媒体の摩擦帯電を抑制するとともに、静電気力によるによる微粒子間の密着力を弱めるのにも寄与しているものと考えられる。
図5に第2の実施形態を示す。なお、上記実施形態と同一部分は同一符号で示し、特に必要がない限り既にした構成上及び機能上の説明は省略して要部のみ説明する(以下の他の実施形態において同じ)。
第1の記実施形態では、図1に示すように、噴霧ノズル52はインレット24の側面に配置され、ミスト状の水分は通気路内に向けて噴霧される構成とした。
本発明の趣旨は、筐体内で洗浄媒体が高速で飛翔することによる摩擦帯電を抑制することにあり、摩擦帯電の抑制機能が得られればミスト状の水分の供給態様は限定されない。
かかる観点から、図5に示すように、噴霧ノズル52を筐体の外周面に設置し、筐体内部へ噴霧する構成としてもよい。
筐体内部の外周面は、通気路内と同様に通過する気流の流速が大きいため、噴霧した洗浄液を速やかに筐体内部および洗浄媒体へ拡散させることができる。
図6に第3の実施形態を示す。
本実施形態では噴霧手段50が旋回空気流30の内周側より開口部18に向けて洗浄液を噴霧できるように備えられていることを特徴とする。
図6に示すように、噴霧ノズル52はそのノズル面を開口部18に向けた状態で流路制限部材16に設けられている。
本実施形態では、開口部18をクリーニング対象物に当てた状態で、まずクリーニング対象物に向けて直接洗浄液を噴霧し、洗浄液の作用により汚れの付着力を弱める。次に、吸引により洗浄媒体5を飛翔させ、洗浄媒体による接触作用で汚れを除去する。
洗浄媒体の飛翔状態においては、上記各実施形態と同様に、洗浄液の噴霧は摩擦帯電を抑制するように作用する。
本実施形態では、クリーニング対象物が濡れる程度の洗浄液を噴霧することもできる。そのため、洗浄媒体としては、紙、布など吸水性能の高い素材を用いるのがよい。または、樹脂片等、除去力の大きい素材を用いて汚れを除去した後、残留した洗浄液を吸水性能の高い素材で拭き取るように構成してもよい。
図7に第4の実施形態を示す。
上記各実施形態では、オペレータがバルブ56を操作して噴霧ノズル52から洗浄液を噴霧する構成としたが、本実施形態では、加湿手段を筐体内部の気圧変化に応じて制御する構成としている。
図7に示すように、筐体4には、筐体内部(厳密には洗浄媒体が飛翔する領域)の気圧を検知する気圧検知手段としての気圧センサ70が設けられている。気圧センサ70は気圧の変化を電流値に変換して制御手段72に出力する。
制御手段72は、筐体内の気圧をモニタし、筐体内が負圧になったときのみ洗浄液を噴出するようにバルブ56の開閉を制御する。
あるいは、筐体内の負圧が、洗浄媒体が高速で飛翔する「洗浄状態」のレベルになったときのみ洗浄液を噴出するようにバルブ56の開閉を制御する。
このようにすれば、洗浄媒体や筐体内部に過剰に洗浄液が供給されることを防止でき、摩擦帯電抑制機能のみを効果的に発現させることができる。
洗浄液の適切な供給量は、吸気手段が発生する負圧によりインレットから流入して吸気手段へ吸気される流量1000l/分あたり、0.5〜5ml/分程度、より好ましくは1〜3ml/分とするのが良い。洗浄液の供給量が0.5ml/分より少ない場合、十分な加湿効果が得られない。また、洗浄液が過剰に供給された場合、洗浄媒体が液架橋力により貼り付いて動きを阻害されるため、望ましくない。
このように、洗浄液の供給量は極微量であるため、適正な噴霧状態を維持するためには、本実施形態のごとくバルブ56の開閉制御は自動化した方が望ましい。
本実施形態では、図1の構成に基づく自動制御を例示したが、図5、図6の構成においても同様に実施することができる。
上記のように、本発明が目的とする摩擦帯電を抑制するための洗浄液の供給量は極微量であり、洗浄対象物や洗浄媒体をほとんど濡らすことがない。したがって、洗浄液を使用するものの、クリーニング形態としては「乾式」となる。
洗浄液は水のみでもよいし、水に微量の界面活性剤を添加したものや、水を電気分解処理した電解洗浄水など、汚れやクリーニング対象物の特性に応じたものを使用する。
より高い洗浄品質が求められる対象物の場合は、洗浄用筐体、すすぎ・乾燥用筐体を別々に設け、すすぎ・乾燥用筐体では洗浄液として水を使用することが好ましい。
不織布を洗浄媒体として油の付着した部品の洗浄に適用したところ、乾燥した洗浄媒体では除去しきれなかった油膜状の汚れを、きれいに除去することができた。
なお、洗浄液の供給方法は、噴霧の代わりに滴下あるいは塗布といった方法を用いることも可能である。
5 洗浄媒体
6 吸気手段
8 吸気口
14 多孔手段としての分離板
16 流路制限部材
18 開口部
20 洗浄対象物
24 通気路としてのインレット
50 加湿手段としての噴霧手段
58 洗浄媒体排出口
特開平4−83567号公報 特開昭60−188123号公報 特開2010−279947号公報

Claims (8)

  1. 洗浄媒体を気流により飛翔させ、上記洗浄媒体を洗浄対象物に当てて洗浄対象物の洗浄を行う乾式クリーニング装置において、
    上記洗浄媒体を飛翔させる内部空間と、
    上記洗浄対象物に当接して上記洗浄媒体を上記洗浄対象物に衝突させる開口部と、
    外部からの空気を上記内部空間へ通す通気路と、
    上記通気路を介して上記内部空間に導気された空気を吸引することにより上記内部空間に旋回気流を生じさせる吸気口と、
    上記吸気口に接続される吸引手段と、
    上記洗浄対象物から除去された除去物を上記吸気口側へ通過させる多孔手段と、
    上記洗浄媒体が飛翔する領域の湿度を増加させる加湿手段と、
    上記内部空間の気圧を検知する気圧検知手段と、
    上記気圧検知手段により検知される上記内部空間の気圧変化に応じて上記加湿手段を制御する制御手段と、
    を有していることを特徴とする乾式クリーニング装置
  2. 請求項1に記載の乾式クリーニング装置において、
    上記加湿手段が、上記旋回気流の外周側から水分を噴霧する構成を有していることを特徴とする乾式クリーニング装置
  3. 請求項2に記載の乾式クリーニング装置において、
    上記通気路内に噴霧することを特徴とする乾式クリーニング装置
  4. 請求項1に記載の乾式クリーニング装置において、
    上記加湿手段が、上記旋回気流の内周側から水分を噴霧する構成を有していることを特徴とする乾式クリーニング装置
  5. 請求項4に記載の乾式クリーニング装置において、
    前記開口部に向けて噴霧することを特徴とする乾式クリーニング装置
  6. 請求項1乃至のいずれか1つに記載の乾式クリーニング装置において、
    上記洗浄媒体が飛翔する領域から該洗浄媒体を排出する開閉可能な洗浄媒体排出口を有していることを特徴とする乾式クリーニング装置
  7. 請求項6に記載の乾式クリーニング装置において、
    上記洗浄媒体排出口が、上記多孔手段に設けられていることを特徴とする乾式クリーニング装置
  8. 請求項6に記載の乾式クリーニング装置において、
    上記旋回気流の軸心方向に延びる筒形状の流路制限部材を有し、上記洗浄媒体排出口が、上記流路制限部材に設けられていることを特徴とする乾式クリーニング装置。
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