<第1の実施形態>
<通信システム1>
図1に、第1の実施形態に係る通信システム1の概略構成を例示する。図1の例では通信システム1は3つの通信装置10を含んでいる。但し、通信装置10の個数はこの例に限定されるものではない。なお、以下の説明では、3つの通信装置10を、通信装置11,12,13と称することにより、区別する場合もある。
各通信装置10は無線通信機能と有線通信機能の両方を有している。ここでは、有線通信として、電力線5を伝送路に利用する電力線通信(PLC)を例示するが、この例に限定されるものではない。なお、以下では、無線通信および無線をRFと表記する場合もある。
<通信装置10>
図2に、通信装置10のブロック図を例示する。図2の例によれば、通信装置10は、送受信部30と、通信処理部50と、上位処理部70とを含んでいる。なお、図面および以下の説明では各種名称を略記する場合がある。
送受信部30は、RF方式とPLC方式とに準拠して構成されており、RF送受信回路31と、PLC送受信回路32とを含んでいる。
RF送受信回路31は、無線信号の送受信を担う。例えば、RF送受信回路31は、通信処理部50から入力されたベースバンド信号(換言すれば、当該信号に含まれるデータ)を、無線信号に変換してアンテナから送信する。また、RF送受信回路31は、アンテナを介して受信した無線信号を、通信処理部50へ入力可能な(換言すれば、通信処理部50の入力信号形式に従った)ベースバンド信号に変換する。得られたベースバンド信号は通信処理部50へ入力される。
PLC送受信回路32は、PLC信号の送受信を担う。例えば、PLC送受信回路32は、通信処理部50から入力されたベースバンド信号を、PLC信号として、電力線5の電圧に重畳する。また、PLC送受信回路32は、電力線5の電圧に重畳されているPLC信号を抽出し、通信処理部50へ入力可能なベースバンド信号に変換する。得られたベースバンド信号は通信処理部50へ入力される。
通信処理部50は、上位処理部70と送受信部30と間で通信データを仲介する処理を行うとともに、通信に関連した各種処理も行う。
ここでは、通信処理部50はOSI(Open System Interconnection)参照モデルにおける物理(PHY)層の機能とメディアアクセス制御(MAC)層(あるいはデータリンク層)の機能を提供し、それよりも上位層の機能を上位処理部70が提供する場合を例示する。なお、OSI参照モデルの各層は、他の通信プロトコルスタックの各層と対応付け可能である。
図2の例では、通信処理部50は、RF送受信回路31用のベースバンド処理手段(以下、RFベースバンド処理手段とも称する)51と、PLC送受信回路32用のベースバンド処理手段(以下、PLCベースバンド処理手段とも称する)52と、メディアアクセス制御処理手段(以下、MAC処理手段とも称する)53と、選択手段54と、クロック55とを含んでいる。
MAC処理手段53は、MAC層の機能を提供し、いわゆるMAC処理を行う。MAC処理には送信処理と受信処理が含まれる。送信処理では例えば、上位処理部70から入力されたPDU(Protocol Data Unit。以下、パケットとも称する)にMACヘッダ、あるいはさらに他の情報を付加してMAC層のPDU(以下、フレームまたはMACフレームとも称する)を生成する。生成されたMACフレームは、ベースバンド処理手段51,52のいずれかに引き渡される。
受信処理は、ベースバンド処理手段51,52によって復元されたMACフレームを解釈する処理と、その解釈に応じた処理とを含む。例えば、受信したMACフレームが自装置宛であるか否かを判別する。そして、自装置宛のMACフレームについては、MACヘッダの除去等によって、上位処理部70へ引き渡すためのパケットを生成する。また、例えば、受信したMACフレームが応答(ACK)の要求を含む場合、ACKフレームを生成して送信する。また、他装置宛のMACフレームは破棄してもよいが、それを送信すれば信号の中継することが可能である。
MAC処理は、上記の送信処理および受信処理のようにMACフレーム自体の処理(以下、MACフレーム処理とも称する)の他に、その他の処理(以下、MAC関連処理とも称する)も含んでもよい。MAC関連処理として、例えば、受信したMACフレームに含まれた制御情報に応じた制御処理(例えば、MAC処理手段53または通信処理部50内の設定に関する制御)が挙げられる。
選択手段54は、RFベースバンド処理手段51とPLCベースバンド処理手段52のうちのいずれか一方を選択的に(換言すれば、排他的に)、MAC処理手段53と機能的に結び付ける。すなわち、ベースバンド処理手段51,52のうちのいずれか一方が、MAC処理手段53に対して有効化される。これにより、MAC処理手段53は、選択された(換言すれば、有効化された)ベースバンド処理手段51または52と、MACフレームの受け渡しを行う。
ベースバンド処理手段51,52の選択は、予め与えられた選択規則に従って行われる。
選択手段54のかかる選択制御により、通信処理部50は、RF方式とPLC方式を時分割で選択し、選択した通信方式で以て送受信部30を介して通信を行う。
ここで、図2の例では、送信フレームは、MAC処理手段53から、選択手段54を経由して、有効なベースバンド処理手段51または52へ引き渡される。すなわち、選択手段54が、有効なベースバンド処理手段51または52へ送信フレームを引き渡す。
これに対し、選択手段54がMAC処理手段53に、送信フレームの引き渡し先となるベースバンド処理手段51または52を指示する構成を採用することも可能である。かかる例によれば、送信フレームは、選択手段54を経由せずに、MAC処理手段53から、ベースバンド処理手段51または52へ引き渡される。
また、図2の例では、受信フレームは、ベースバンド処理手段51または52から、選択手段54を経由して、MAC処理手段53へ引き渡される。
これに対し、選択手段54を経由せずにベースバンド処理手段51または52からMAC処理手段53へ、受信フレームを引き渡す構成を採用することも可能である。
RFベースバンド処理手段51はRF送受信回路31に対して設けられ、PLCベースバンド処理手段52はPLC送受信回路32に対して設けられている。ベースバンド処理手段51,52のいずれも、物理層の機能を提供し、いわゆるベースバンド処理を行う。ベースバンド処理は、ベースバンド信号自体に関する処理(以下、ベースバンド信号処理とも称する)と、ベースバンド信号を利用した処理(以下、ベースバンド関連処理とも称する)とを含む。
ベースバンド信号処理には、送信処理および受信処理が含まれる。RFベースバンド処理手段51を例に挙げると、送信処理は例えば、PHYヘッダの付加、無線通信用のデータ変調、同期制御情報(ここでは、プリアンブルおよびSFDを例示する)の付加等を行うことによって、MAC処理手段53から引き渡されたMACフレームから、PHYフレームを生成する処理を含む。PHYフレームは、RF送受信回路31へ入力可能な(換言すれば、RF送受信回路31の入力信号形式に従った)ベースバンド信号として、RF送受信回路31へ入力される。
受信処理は例えば、同期制御情報の検出、無線通信用のデータ復調、PHYヘッダの削除等を行うことによって、RF送受信回路31から入力されたベースバンド信号から、MACフレームを生成する処理を含む。
また、ベースバンド関連処理として例えば、送受信回路31,32を利用した各種処理(いわゆるキャリアセンス等)が挙げられる。
PLCベースバンド処理手段52によるベースバンド処理は、RFベースバンド処理手段51によるそれと基本的には同様であるが、PLC方式とRF方式の違いに応じて適宜変形される。
上記処理手段51〜54は例えば、ソフトウェアによって実現可能である。具体的には、上記処理手段51〜54の各種機能を実現するための処理手順が記述されたプログラム(不図示の記憶手段に格納されている)をプロセッサ(図示略)が実行することによって、当該プロセッサが上記処理手段51〜54として機能する。なお、上記プロセッサは、汎用のCPU(Central Processing Unit)であってもよいし、特化されたDSP(Digital Signal Processor)であってもよい。また、上記処理手段51〜54を複数のプロセッサで実現してもよい。なお、上記処理手段51〜54の各種機能の一部または全部をハードウェアによって実現することも可能である。
クロック55は、所定周期(すなわち所定周波数)で値をカウントし、そのカウント値を装置内で利用する時刻(以下、装置内時刻と称する)Tdevとして提供する。上記所定周期、すなわち装置内時刻Tdevの最小時間単位として、例えば水晶発振子の発振周期を採用可能であるが、その他の時間長さを採用してもよい。装置内時刻Tdevは、図2の例では、各処理手段51〜54へ供給される。
なお、装置内時刻Tdevは、上記カウント値そのもので表現されてもよいし、あるいは上記カウント値を例えば一般的な時、分、秒による情報に変換することによって表現されてもよい。
クロック55は例えば、いわゆるクロック回路、リアルタイムクロック(RTC)等で構成可能である。また、例えば、上記処理手段51〜54として機能させる上記プロセッサの動作クロック信号をカウントするカウンタによって、クロック55を実現してもよい。なお、クロック55は、上記処理手段51〜54用の上記プロセッサのパッケージに外付けされてもよいし、あるいは、当該パッケージに内蔵されていてもよい。
上位処理部70は、上記のように、OSI参照モデルにおいてMAC層(あるいはデータリンク層)よりも上位層の機能を提供する。上位処理部70は例えば、送信パケットの生成、受信パケットの解釈、その解釈に応じた処理、等を行う。ここでは、上位処理部70は、通信装置10内の全体の処理を司るプロセッサ(汎用のCPUが例示される。図示略)によって、ソフトウェア的に実現されるものとする。
ここで、送受信回路31,32は、互いに独立した構成(すなわち個別タイプ)であってもよいし、あるいは、回路の一部を共用した構成(すなわち共用タイプ)であってもよい。また、RF送受信回路31において、送信回路および受信回路を、個別タイプと共用タイプのいずれで構成してもよい。PLC送受信回路32についても同様である。ここでは、いずれの共用タイプについても、共用回路の有効化処理(共用回路の利用者となる回路の選択、回路接続の切り替え制御、等)を、通信処理部50が行う場合を例示する。より具体的には、選択手段54が直接的に、あるいは、間接的に(すなわちベースバンド処理手段51,52を介して)、送受信部30を制御するものとする。
また、ベースバンド処理手段51,52は、互いに独立した構成であってもよいし、あるいは、処理手段(換言すれば、機能)の一部を共用した構成であってもよい。また、RFベースバンド処理手段51において、送信処理手段および受信処理手段を、個別タイプと共用タイプのいずれで構成してもよい。PLCベースバンド処理手段52についても同様である。ここでは、いずれの共用タイプについても、共用手段の有効化処理(共用手段の利用者となる処理手段の選択、処理フローの切り替え制御、等)は、選択手段54が行う場合を例示する。
<通信動作>
図3〜図5に、通信装置10による通信動作を例示する。なお、図3〜図5では、説明を簡単にするため、MAC処理手段53と選択手段54とをまとめて図示し、ベースバンド処理手段51,52と送受信回路31,32とをまとめて図示している。
いずれの動作例においても、通信装置10は、タイムスロットSを利用した同期通信を行う。
図3の例を参照すると、選択手段54は、装置内時刻Tdev(図2参照)を所定時間Tslotごとに区切ることによってタイムスロットSを規定するとともに、各タイムスロットSにRF方式とPLC方式とのいずれか一方を割り当てる。すなわち、RF方式が割り当てられたタイムスロットS(以下、RFタイムスロットSと称する場合もある)の期間中は、RFベースバンド処理手段51およびRF送受信回路31が有効化され、PLCベースバンド処理手段52およびPLC送受信回路32は利用されない。PLC方式が割り当てられたタイムスロットS(以下、PLCタイムスロットSと称する場合もある)の期間中は、上記とは逆の状態になる。
また、図3の例では、RF方式とPLC方式とが交互に割り当てられる。すなわち、選択手段54は、RF方式とPLC方式とを交互に(したがって所定順序で)選択する旨の選択規則に従って、通信方式を選択する。
図3に示す第1例によれば、送信側の通信装置10では、MAC処理手段53が、上位処理部70(図2参照)から、送信データDATAを含んだパケットを受け取り、当該パケットをMACフレームに加工し、当該MACフレームを選択手段54に引き渡す。図3の例によれば、選択手段54は、MACフレームを受け取った時点で有効なRFベースバンド処理手段51へ、MACフレームを入力する。
なお、選択手段54が、MACフレームを受け取った時点のRFタイムスロットS中に当該MACフレームの送信を完了できないと判断した場合、次のPLCタイムスロットSの開始までMACフレームの出力を保留するように構成してもよい。
MACフレームを受け取ったRFベースバンド処理手段51は、MACフレームをベースバンド信号に加工し、RF送受信回路31へ出力する。これにより、RF送受信回路31から、対応するRF信号が出力される。
図3の例によれば、受信側の通信装置10では、RFタイムスロットSにおいて、RF送受信回路31が上記RF信号を受信する。受信信号は、RF送受信回路31およびRFベースバンド処理手段51によってMACフレームに復元される。復元されたMACフレームは、選択手段54を介してMAC処理手段53へ引き渡される。MAC処理手段53は、MACフレームをパケットに加工して上位処理部70へ引き渡す。
また、図3の例では、MAC処理手段53は、受信したMACフレームがACK要求を含むことを解釈し、それによりACKフレームを生成する。ACKフレームは、選択手段54へ引き渡され、上記の送信側と同様の処理によって送信される。ACKを要求した側のMAC処理手段53がACKフレームを受け取ることにより、一連の処理が完了する。
なお、ACKを要求しない通信形態も採用可能である。例えばブロードキャストおよびマルチキャストでは、ACKどうしが衝突する可能性があるので、ACKを要求しない方が好ましい場合もある。もちろんユニキャストにおいても、ACKを省略可能である。
図3の例ではRF通信を例示したが、PLCタイムスロットSでは、PLCベースバンド処理手段52およびPLC送受信回路32によって、PLC通信が行われる。
次に、図4に示す第2例では、送信側の通信装置10は、ACKの不受信により、送信処理を繰り返す。ACKの不受信は、例えば、ACKが受信側へ到達していないこと、送信信号自体が受信側へ到達していないこと、等によって生じうる。なお、これらの信号不到達は、例えば、通信状況の低下、通信方式の不一致、等が原因と考えられる。
例えば、MAC処理手段53が、装置内時刻Tdevに基づいてACK待ち時間(タイムスロットSの時間Tslotよりも短い)が過ぎてもACKを受信していないと判断した場合、MAC処理手段53が対象のMACフレームを再出力する。あるいは、MAC処理手段53の指示によって、選択手段54が対象のMACフレームを再出力するように構成してもよい。あるいは、選択手段54が、受信信号がACKフレームであるか否かを判別することによって(受信フレーム中のフレーム種別を示す情報から判別可能である)、選択手段54自身がMAC処理手段53の指示無しに再送処理を行ってもよい。
再送の上限回数、間隔等は予め設定され、例えばMAC処理手段53または選択手段54がアクセス可能に設けられた記憶手段に格納されている。例えば、再送上限回数等の設定に関してマスタとして機能する通信装置10が、スレーブとなる他の通信装置10へ、再送に関する設定値を送信することによって、各通信装置10は当該設定値を取得可能である。
再送処理は、図4に例示するように、複数のタイムスロットSに渡ってもよく、この場合、RFとPLCの両方で再送が行われる。逆に、タイムスロットSが切り替わることによって再送処理を中止するようにしてもよい。
次に、図5に示す第3例によれば、同じ送信データDATAが、同じシーケンス番号(フレームを区別するために利用される)を付与されて、RFとPLCの両方で送信される。図5の例のようにRFとPLCの両方で受信に成功した場合、受信済みのシーケンス番号を有するフレーム(すなわち後に受信したフレーム)は破棄される。
この例によれば、RFとPLCの一方のみでフレームを送信する場合に比べて、通信の信頼性向上が期待できる。このため、図5の例のようにACKを省略可能である。かかる点に鑑みると、図5の例を、ブロードキャストおよびマルチキャストに採用することが考えられる。
なお、同じシーケンス番号を有する受信済みフレームの破棄は、図5の例に限定されるものではない。例えば、通信装置10が中継機能を有する場合も、同じシーケンス番号のフレームを2回以上受信する可能性がある。そのような場合に、受信済みフレームを破棄するようにしてもよい。
<装置内時刻Tdevの同期>
通信装置10は、上記のように、タイムスロットSを利用した同期通信を行う。同期通信において、送信側と受信側でRFタイムスロットSの期間がずれていると、通信可能時間が短くなり、その結果、通信効率が低くなってしまう。このため、送信側と受信側でRFタイムスロットSの期間が一致している(換言すれば、同期している)ことが好ましい。PLCタイムスロットSについても同様である。
かかる点に鑑み、通信システム1は、タイムスロットSの生成に利用する装置内時刻Tdevを通信装置10間で一致させる(換言すれば、同期させる)ための装置内時刻同期処理を行う。
図6に、装置内時刻同期処理を例示する。図6に示すように装置内時刻同期処理100は時刻同期マスタ処理101と時刻同期スレーブ処理102とに分けられ、これらの処理101,102は別々の通信装置10で行われる。ここでは、通信装置11(図1参照)が時刻同期マスタ処理101を行い、通信装置12,13(図1参照)が時刻同期スレーブ処理102を行う場合を例示する。かかる例において、通信装置11を時刻同期に関する第1の通信装置11または時刻同期マスタ装置11と称し、通信装置12,13を時刻同期に関する第2の通信装置12,13または時刻同期スレーブ装置12,13と称する場合もある。
なお、以下では説明を簡単にするため装置内時刻同期処理100がRF方式で行われる場合を例示するが、PLC方式についても同様に理解される。
<時刻同期マスタ処理101>
図6に示すように、装置内時刻Tdevの同期要求が生成されることによって、通信処理部50は時刻同期マスタ処理101を開始する。ここでは、当該時刻同期要求が選択手段54によって生成される場合を例示する。但し、例えば、MAC処理手段53または上位処理部70が時刻同期要求を生成してもよい。すなわち、通信処理部50は、内部生成または外部入力によって、時刻同期要求を取得する。なお、時刻同期要求は周期的に生成されてもよいし、ランダムな時間間隔で生成されてもよい。
選択手段54が時刻同期要求をMAC処理手段53へ入力することにより、MAC処理手段53は時刻同期要求用のMACフレームを生成する。このMACフレームには、時刻同期要求フレームであることの情報(すなわちフレーム種別の情報)、ブロードキャストであることの情報(すなわち宛先が全ての時刻同期スレーブ装置12,13であることの情報)、等が含まれる。例えばタイムスロットSの単位時間Tslotの設定値、等を含ませてもよい。
その後、時刻同期要求用のMACフレームは、その時点で有効なRFベースバンド処理手段51によって、PHYフレームに変形される。そして、当該PHYフレームはベースバンド信号としてRFベースバンド処理手段51から出力され、そのベースバンド信号が無線信号に変換されてRF送受信回路31から出力される。なお、時刻同期要求用のベースバンド信号を、時刻同期要求信号とも称することにする。
図6に示すように、時刻同期要求信号120(より具体的には、そのビット列)は、一般的なPHYベースバンド信号と同様に、同期制御部分121と、同期制御部分121に引き続く信号本体部分122とに大別される。
同期制御部分121は、受信側が時刻同期要求信号120の検出、当該信号120に対する同期、等に利用するための情報である。図6の例では、同期制御部分121は、プリアンブル123と、プリアンブル123に引き続くSFD(Start Frame Delimiter)124とで構成される。一般的に、プリアンブル123には所定パターンのビット列が予め割り当てられており、SFD124についても同様である。
信号本体部分122は、基本的に、PHYヘッダ125と、PHYヘッダ125に引き続くPHYペイロード126とで構成される。図6に例示のPHYペイロード126では、PHYヘッダ125の側から、MACフレーム(ここでは時刻同期要求用のMACフレーム)127と、タイムスタンプ128と、誤り検出符号(ここではCRC(Cyclic Redundancy Check)が例示される)129とが並んでいる。
時刻同期要求信号120においてMACフレーム127以外の要素123,124,125,128,129が、RFベースバンド処理手段51で付加される。
特に、タイムスタンプ128として、信号本体部分122の送信開始タイミング(換言すれば、同期制御部分121の送信終了タイミング)における装置内時刻Tdevが設定される。
具体的には、RFベースバンド処理手段51は、時刻同期要求信号120の出力中に、SFD124のビット列からPHYヘッダ125のビット列へ切り替わるタイミングを検出し、その検出タイミングにおける自装置の装置内時刻Tdevをクロック55から取得する。そして、RFベースバンド処理手段51は、取得した装置内時刻Tdevをタイムスタンプ128として、MACフレーム127の後ろに付加する。さらにその後、RFベースバンド処理手段51は、プリアンブル123の先頭からタイムスタンプ128の最後尾までのビット列についてCRCを算出し、得られたCRCをタイムスタンプ128の後ろに付加する。
これにより、時刻同期マスタ処理101において、時刻同期マスタ装置11の装置内時刻Tdevをタイムスタンプ128として含む時刻同期要求信号120が生成され、当該時刻同期要求信号120が時刻同期スレーブ装置12,13へ送信される。
ここで、RFベースバンド処理手段51は、一般的な受信処理において、同期制御部分121のビットパターンを利用することによって、受信ビット列中からPHYヘッダ125等の位置を特定する。このため、かかる機能を利用することによって、時刻同期マスタ処理101においても、SFD124からPHYヘッダ125へ切り替わるタイミングを検出することが可能である。
<時刻同期スレーブ処理102>
時刻同期スレーブ装置12,13は、時刻同期要求信号120を受信すると、時刻同期スレーブ処理102を行う。なお、時刻同期要求信号120は、時刻同期マスタ装置11から直接受信してもよいし、他の時刻同期スレーブ装置による中継を経て受信してもよい。
具体的には、RFベースバンド処理手段51は、時刻同期要求信号120の受信中に、信号本体部分122の受信開始タイミング(換言すれば、同期制御部分121の受信終了タイミング)を検出し、その検出タイミングにおける自装置の装置内時刻Tdevをクロック55から取得する。また、RFベースバンド処理手段51は、時刻同期要求信号120中から、MACフレーム127とタイムスタンプ128とを抽出する。そして、RFベースバンド処理手段51は、クロック55から取得した上記装置内時刻Tdevと、MACフレーム127と、タイムスタンプ128とをMAC処理手段53へ引き渡す。
MAC処理手段53は、受信したMACフレームが時刻同期要求用であることを解釈すると、信号本体部分122の受信開始タイミングで取得された上記装置内時刻Tdevと、受信したタイムスタンプ128に記録されている時刻との差分に応じて、自装置の装置内時刻Tdevを較正する。
ここでは、MAC処理手段53が、上記差分に応じて、クロック55の現在時刻自体を較正する場合を例示する。但し、例えば、選択手段54が、上記差分を保有し、クロック55から提供される装置内時刻Tdevを上記差分で較正した時刻を、タイムスロットSの生成等で利用する装置内時刻Tdevとして扱ってもよい。
ところで、時刻同期スレーブ装置12,13は、信号本体部分122の受信開始タイミングを検出した時点では、その受信信号が時刻同期要求信号120であるか否かを判別できない。しかし、全ての受信信号に対して、信号本体部分122の受信開始タイミングで装置内時刻Tdevを取得しておけばよい。
また、MACフレーム127中のフレーム種別を示すビット列を取得した時点で、その受信信号が時刻同期要求信号120であるか否かを判別可能である。すなわち、時刻同期要求信号120であることが判別されれば、その受信信号はタイムスタンプ128を含んでいることが判別される。よって、時刻同期要求信号120であることが判別された場合だけ、タイムスタンプ128の抽出処理が行われる。
なお、上記では装置内時刻Tdevの較正をMAC処理手段53が行う場合を例示したが、選択手段54に装置内時刻Tdevを較正させることも可能である。
<時刻同期処理100による効果>
時刻同期処理100によれば、各通信装置10におけるタイムスロットSの切り替えを、複数の通信装置10間で同期させることが可能である。このため、複数の通信装置10間でタイムスロットSがずれることによって生じる通信効率の低下を改善できる。
ここで、装置内時刻Tdevの取得タイミングを、時刻同期マスタ処理101と時刻同期スレーブ処理102とで違えることも可能である。例えば、時刻同期マスタ処理101における装置内時刻Tdevの取得タイミングを、プリアンブル123の送信開始タイミングに設定することも可能である。また、例えば、時刻同期スレーブ処理102における装置内時刻Tdevの取得タイミングを、時刻同期要求信号120の終了タイミングに設定することも可能である。
しかし、上記例のように時刻同期マスタ処理101および時刻同期スレーブ処理102において時刻同期要求信号120中の同じ位置で装置内時刻Tdevを取得することにより、同期精度を高めることができる。
また、時刻同期マスタ処理101において、信号本体部分122の送信開始タイミング(換言すれば、同期制御部分121から信号本体部分122への移行タイミング)は、時刻同期要求信号120の送信初期に存在する。このため、当該タイミングから時刻同期要求信号120の送信終了までには時間的余裕がある。したがって、時刻同期要求信号120にタイムスタンプ128を含める処理を、時間的余裕を持って行うことができる。
また、時刻同期スレーブ装置12,13では、プリアンブル123およびSFD124の開始タイミングを正確に検出することは難しい場合がある。
これらに鑑みると、上記例のように時刻同期マスタ処理101と時刻同期スレーブ処理102のいずれにおいても信号本体部分122の開始タイミングで装置内時刻Tdevの取得することは、実用的である。
<通信方式の選択規則>
図7に、各タイムスロットSに割り当てる通信方式を選択するための選択規則140を例示する。かかる選択規則140は、RF方式とPLC方式を予め設定された順序で各タイムスロットSに割り当てる所定順選択規則である。図7の例は所定順選択規則の中でも特に、図3〜図5に例示した、RF方式とPLC方式とを交互に割り当てる交互選択規則である。
図7の例では、装置内時刻Tdevから選択準備値Jを生成し、得られた選択準備値Jを選択比率(RF:PLC=Krf:Kplc)の指標値K(=Krf+Kplc)で除算した際の余り値Lを求め、余り値Lに応じてRF方式とPLC方式のいずれかが選択される。なお、説明を簡単にするため、ここではKrfおよびKplcは正の整数とする。
より具体的には、選択準備値Jは、例えば、入力された装置内時刻Tdevは何番目のタイムスロットSに属するのかを示す。この例において、選択準備値Jが示すタイムスロットSの順番値は、起動時から数えた絶対的な値でなくてもよい。例えば、選択準備値Jの取得に関して予め定義された一方向ハッシュ関数を利用することにより、入力キーとしての装置内時刻Tdevを、ハッシュ値としての選択準備値Jに変換可能である。
選択比率に関し、例えば交互選択の場合、Krf:Kplc=1:1であり、K=2に設定される。K=2によれば、選択準備値Jを選択比率指標値Kで除算した際の余りLは0または1になる。例えば、L=0の場合はRF方式を選択し、L=1の場合はPLC方式を選択するように予め定義しておく。
例えば、各タイムスロットSにおいて装置内時刻Tdevを選択規則140に入力し、得られた通信方式を次のタイムスロットSに割り当てることにより、RF方式とPLC方式の交互選択を実現することが可能である。
なお、所定順選択規則は交互選択規則に限定されるものではない。例えば、選択比率Krf:Kplc=1:2に設定し(このときK=3)、余り値L=0の場合はRF方式を選択し、L=1,2の場合はPLC方式を選択するように定義してもよい。この例によれば、RF→PLC→PLCの順序で構成された1サイクルを繰り返すことが可能である。
かかる選択規則140には、通信方式を選択する際の装置内時刻Tdevが関与している(換言すれば、依存している)。このため、装置内時刻Tdevが同期している通信装置10どうしでは、通信方式の選択を同期させることが可能である。このため、複数の通信装置10間で通信方式が異なることによって生じる通信効率の低下を改善できる。
<システム構成の他の例>
上記では、装置内時刻同期処理100が、1つの時刻同期マスタ装置11と2つの時刻同期スレーブ装置12,13で行われる場合を例示した。しかし、時刻同期マスタ装置と時刻同期スレーブ装置の個数はこれに限定されるものではない。
例えば、2つの通信装置11,12を時刻同期マスタ装置として動作させ、1つの通信装置13を時刻同期スレーブ装置として動作させてもよい。このように複数の時刻同期マスタ装置11,12が存在することにより、例えば時刻同期マスタ装置11が通信システム1から離脱した場合であっても、もう一つの時刻同期マスタ装置12によって装置内時刻同期処理100を維持できる。換言すれば、時刻同期の管理が容易なシステムを提供できる。
この例では、時刻同期スレーブ装置13は2つの時刻同期マスタ装置11,12から時刻同期要求信号120を受信することになる。
この場合、時刻同期スレーブ装置13は、時刻同期マスタ装置11,12を区別することなく、時刻同期要求信号120を受信する度に、時刻同期スレーブ処理102を実行する例が考えられる。
あるいは、例えば、時刻同期マスタ装置11,12が時刻同期要求信号120に権限レベルを設定し、時刻同期スレーブ装置13は権限レベルに基づいて時刻同期スレーブ処理102を実行するか否かを決定してもよい。そのような例を、図8のフローチャートを参照して説明する。
時刻同期マスタ装置11,12に予め異なる権限レベルを付与しておく。なお、かかる権限レベルは、例えば、通信処理部50の記憶手段(図示略)に格納される。そして、時刻同期マスタ装置11,12のそれぞれが、時刻同期要求信号120のMACフレーム127、PHYヘッダ125等に自身の権限レベルを含める(図8の時刻同期マスタ処理101参照)。
他方、時刻同期スレーブ装置13は、受信した時刻同期要求信号120の権限レベルを、それまでに受信した時刻同期要求信号120の権限レベルの最高値と比較する(図8の権限レベル判定処理103参照)。なお、かかる最高値は、例えば、通信処理部50の記憶手段(図示略)に保有され、適宜更新される。
そして、時刻同期スレーブ装置13は、図8に示すように、今回の権限レベルが上記最高値以上であることを条件にして、今回受信した時刻同期要求信号120に従って時刻同期スレーブ処理102を実行する。これに対し、今回の権限レベルが上記最高値よりも低ければ、今回受信した時刻同期要求信号120に対しては、時刻同期スレーブ処理102を実行しない。
このように権限レベルを利用することによって、複数の時刻同期マスタ装置11,12が存在する構成であっても、時刻同期スレーブ装置13において時刻同期スレーブ処理102が頻繁に実行されるのを抑制することができる。時刻同期スレーブ処理102の頻繁な実行は装置内時刻Tdevが安定的に定まらない状態(換言すれば、不確定状態)に繋がることに鑑みれば、そのような不確定状態を回避することができる。
ここで、時刻同期スレーブ装置13は、自身が保有している上記権限レベル最高値をクリアする(換言すればリセットする)処理を行ってもよい。例えば、時刻同期スレーブ装置13が所定のタイミングで自発的に、かかる保有最高値クリア処理を実行する。あるいは、自発的な実行に代えてまたは加えて、他の通信装置(例えば時刻同期マスタ装置11,12のいずれか)が所定のタイミングで送信する指示によって、保有最高値クリア処理が実行されるようにしてもよい。いずれの例においても上記所定のタイミングは、周期的であってもよいし、ランダムであってもよい。
保有最高値クリア処理によれば、上記権限レベルが最高の時刻同期マスタ装置11が通信システム1から離脱した場合であっても、残余の時刻同期マスタ装置によって装置内時刻同期処理100を維持できる。換言すれば、時刻同期の管理が容易なシステムを提供できる。
また、図9に例示するように、例えば、通信装置11に時刻同期マスタ処理101を実行させ、通信装置12に時刻同期スレーブ処理102を実行させ、通信装置13には両方の処理101,102を実行させることも可能である。なお、以下では、両方の処理101,102を実行可能な通信装置を時刻同期マスタ/スレーブ装置と称する場合もある。
また、図10に例示するように、例えば、通信装置11〜13の全てを時刻同期マスタ/スレーブ装置として構成することも可能である。
複数の時刻同期マスタ/スレーブ装置10が存在することにより、通信システム1の広範囲に渡って装置内時刻Tdevを同期させることが可能になる。かかる点は、通信装置10の設置範囲の拡大、すなわち通信システム1のエリア拡大に資する。
<第1の実施形態に係る他の例>
上記ではRF方式とPLC方式という2種類の通信方式を例示した。これに対し、3種類以上の通信方式を採用することも可能である。例えば、PLC以外の有線通信方式をさらに採用してもよい。また、光通信も利用可能である。また、通信媒体が同じであっても、規格ごとに別々の通信方式として利用可能である。例えば、IEEE802.11の規格に基づく無線通信(2.4GHzを中心周波数とする周波数帯域が利用される)と、IEEE802.15.4gの規格に基づく無線通信(920MHzを中心周波数とする周波数帯域が利用される)とは、別々の通信方式として利用可能である。
<第2の実施形態>
図11に、各タイムスロットSに割り当てる通信方式の選択に関し、第2の実施形態に係るランダム選択規則150を例示する。かかる選択規則150は、上記の所定順選択規則140(図7参照)に代えてまたは加えて、第1の実施形態で例示した通信装置10に適用される。なお、複数の選択規則140,150が付与されている場合、例えば、初期設定、所定条件、他の通信装置10からの指示、等に基づいて、使用する選択規則が決定される。
図11の例は、選択準備値Jが次のように生成される点を除いて、図7の例(所定順選択規則140)と同様である。すなわち、図11の例では、装置内時刻Tdevを入力キーとして、選択準備値Jの取得に関して予め定義された一方向ハッシュ関数へ入力する。そして、得られたハッシュ値をシードとして擬似乱数を発生させ、得られた擬似乱数値を選択準備値Jに採用する。これにより、各タイムスロットSに割り当てる通信方式が、複数の通信方式(ここではRF方式とPLC方式)の中からランダムに選択される。
ここで、図7に例示した交互選択規則140は、装置内時刻Tdevが同期していない場合、図12に示すように通信装置10間で通信方式が一致しない状態を生じうる。このような状態では通信ができない。
これに対し、ランダム選択規則150によれば、図13に例示するように通信方式が一致する状態を出現させることができる。したがって、通信方式の不一致による通信不能状態が継続する状況を回避することができる。
図13には通信相手が交互選択規則140を採用している場合を例示したが、これの例に限定されるものではない。例えば、通信相手がランダム選択規則150を採用していてもよい。
特に、通信相手も同じランダム選択規則150を採用しており、かつ、装置内時刻Tdevが互いに同期している場合、各通信装置10では同じ擬似乱数値が得られる。擬似乱数の発生に装置内時刻Tdevが関与しているからである。その結果、図14に例示するように、各タイムスロットSの通信方式が継続的に一致する。このため、通信装置10間で通信方式が異なることによって生じる通信効率の低下を改善できる。
なお、第2の実施形態において、第1の実施形態に係る装置内時刻同期処理100(図6参照)を行うか否かは任意である。但し、当該時刻同期処理100とランダム選択規則150との組み合わせによる効果は上記の通りである。
上記ではRF方式とPLC方式という2種類の通信方式を例示した。これに対し、第1の実施形態でも言及したように、3種類以上の通信方式を採用することも可能である。
<第3の実施形態>
図15に、各タイムスロットSに割り当てる通信方式の選択に関し、第3の実施形態に係る適応型選択規則160を例示する。かかる選択規則160は、上記の選択規則140,150(図7および図11参照)に代えて、または、上記の選択規則140,150の少なくとも一方に加えて、第1の実施形態で例示した通信装置10に適用される。なお、選択規則140,150,160のうちの2つまたは3つが付与されている場合、例えば、初期設定、所定条件、他の通信装置10からの指示、等に基づいて、使用する選択規則が決定される。
適応型選択規則160は、複数の通信方式(ここではRF方式とPLC方式)のうちで通信状況がより良好な通信方式を、より高い選択比率で以て選択する旨の規則である。
図15に例示の適応型選択規則160は、図11に例示したランダム選択規則150に、通信状況の情報を応用している。このため、かかる例によれば、適応型選択規則160は、装置内時刻Tdevに基づいて擬似乱数値を発生させ当該擬似乱数値に対応付けられた通信方式を選択する旨の第1の規則(ランダム選択規則150に対応する)と、上記擬似乱数値と通信方式との対応付けを通信状況に応じて変化させる旨の第2の規則とに大別される。
上記第2の規則をより具体的に説明すると、RF方式とPLC方式のうちで通信状況のより良好な通信方式がより高い選択比率で以て選択されるように、選択比率指標値Krf:KplcをRFとPLCの通信状況に応じて変化させるとともに、余り値Lと通信方式の対応付けも上記通信状況に応じて変化させる。
図16には、RF方式の方がPLC方式よりも通信状況が良好である旨の調査結果に基づき、選択比率Krf:Kplc=2:1(このときK=3)で以て、通信方式を割り当てる場合を例示している。
通信状況の調査結果は、例えば、RFの方が良好である旨、RFとPLCは同程度である旨、PLCの方が良好である旨の3段階評価のいずれかで表わされる。あるいは、RFの方が良好である旨の評価およびPLCの方が良好である旨の評価を、その度合いに応じて細分してもよい。なお、通信状況の度合いは、例えば{RFの通信状況を表す値}/{PLCの通信状況を表す値}という計算式から取得可能である。
また、例えば、通信状況の評価レベルごとに、選択比率Krf:Kplcが予め準備されるとともに、余り値Lと通信方式の対応付けも予め準備される。これによれば、評価レベルに応じて選択比率Krf:Kplcおよび上記対応付けが選択され、選択されたそれらに従って各タイムスロットSに通信方式が割り当てられる。
ここで、通信状況の調査は、通信状況を把握するのに有用なパラメータを評価することによって、行うことが可能である。上記パラメータとして、例えば、キャリアセンスの結果、ACKの返答率、再送回数、等が挙げられる。通信方式ごとに上記の1つまたは複数のパラメータを予め定めた手法で評価することにより、RFとPLCのそれぞれの通信状況が取得される。そして、RFの通信状況とPLCの通信状況を比較することによって、良好な通信方式の判別、評価レベルの決定等を行うことが可能である。なお、通信状況の調査は、周期的に行われてもよいし、ランダムな時間間隔で行われてもよい。
ここでは、上記パラメータの収集、評価等は、適応型選択規則160を利用する選択手段54自身が行うものとするが、例えば、MAC処理手段53がそれらの処理を行い、処理結果を選択手段54に提供してもよい。いずれの例においても、通信状況の調査は通信処理部50によって行われる。
適応型選択規則160によれば、通信状況に応じて適宜、好適な通信方式が選択されるので、通信の効率、信頼性等を向上させることができる。
また、図15に例示の適応型選択規則160はランダム選択規則150を利用しているので、ランダム選択規則150が奏する上記効果も得ることができる。
なお、ランダム選択規則150以外の選択規則を利用することも可能である。例えば、複数パターンの所定順選択規則を予め準備しておき、そのうちの1つを通信状況に応じて利用してもよい。
ここで、通信状況の調査は、通信システム1内の各通信装置10が行ってもよい。
あるいは、例えば、通信装置11が通信状況を調査し、その調査結果を他の通信装置12,13へブロードキャストによって配信してもよい。この場合、通信装置11は自身が通信状況を調査することによって通信状況を取得するのに対し、通信装置12,13は通信装置11から調査結果を受信することによって通信状況を取得する。かかる例において、通信装置11を適応型選択規則に関する第1の通信装置11または適応型マスタ装置11と称し、通信装置12,13を適応型選択規則に関する第2の通信装置12,13または適応型スレーブ装置12,13と称する場合もある(図17参照)。
適応型スレーブ装置12,13は、自身が通信状況を調査する必要がないので、処理負荷、装置構成等を軽減できる。
なお、通信状況の調査結果は、適応型マスタ装置11から直接受信してもよいし、他の適応型スレーブ装置による中継を経て受信してもよい。
また、複数の適応型マスタ装置10が存在しても構わない。また、適応型マスタ装置として動作可能であるとともに、適応型スレーブ装置としても動作可能な通信装置10(以下、適応型マスタ/スレーブ装置と称する場合もある)を設けてもよい。図18には、通信装置13が適応型マスタ/スレーブ装置である場合を例示している。
なお、第3の実施形態において、第1の実施形態に係る装置内時刻同期処理100(図6参照)を行うか否かは任意である。但し、適応型選択規則160がランダム選択規則150を利用していることに鑑みれば、装置内時刻同期処理100と適応型選択規則160との組み合わせは有用である。
上記ではRF方式とPLC方式という2種類の通信方式を例示した。これに対し、第1および第2の実施形態でも言及したように、3種類以上の通信方式を採用することも可能である。
<第4の実施形態>
第1ないし第3の実施形態では、いわゆる連続駆動方式(連続動作方式、等とも称される)による同期通信を説明した。第4の実施形態では、いわゆる間欠駆動方式(間欠動作方式、等とも称される)による非同期通信を説明する。
<比較例>
第4の実施形態に係る具体例を説明する前に、比較例としての一般的な間欠駆動通信(間欠通信とも称される)を、図19を参照して説明する。特に図19はRF方式のみに準拠した通信装置に関する。
図19に示すように、データ(DATA)を受信する側の通信装置は、通信機能を所定の間欠周期Titmrfで以て間欠的に起動させ、ビーコンRN0を送信する(換言すれば、発行する)。当該ビーコンRN0は、受信側装置が通信可能状態を開始したことを通知するためのビーコンである。以下では、かかる用途のビーコンを、受信側ビーコン等と称する場合もある。ここでは、受信側ビーコンRN0がブロードキャストされるものとする。
ビーコンRN0の送信後、受信側装置は所定のビーコン応答待ち時間Tircrfの間、ビーコンRN0に対する応答を待つ。なお、符号の煩雑化を避けるため、ビーコン応答待ち期間に対しても上記符号Tircrfを用いることにする。また、他の符号についても同様の用法を採用する場合がある。
受信側装置は、応答待ち期間Tircrf中に、データ(DATA)を送信する側の通信装置から、ビーコンRN0に対する応答(ここでは送信要求SREQが例示される)を受信しなければ、応答待ち期間Tircrfの終了に伴って通信機能を停止する。そして、受信側装置は、通信停止期間Tnslrfの経過後、再びビーコンRN0を送信する。この場合、Titmrf=Tircrf+Tnslrfが成り立つ。
これに対し、ビーコン応答待ち期間Tircrf中に送信要求SREQを受信した場合、データ受信側装置はSREQに対する応答RACKをデータ送信側装置へ送信することにより、通信リンクの確立を図る。通信リンクの確立後、受信側装置は、送信側装置からDATAを受信し、受信終了に伴って応答DACKを送信側装置へ送信する。リンク維持期間Tlnkrfの経過後、データ受信側装置は通信機能を停止する。
他方、データ送信側装置は、送信要求が発生すると、通信機能を起動し、ビーコンRN0の受信待ち状態を形成する。そして、送信側装置は、送信先となる通信装置で発行されたビーコンRN0を受信すると、その受信側装置に送信要求SREQを送信する。送信側装置は、SREQに対する応答RACKを受信することにより、通信リンクの確立を図る。通信リンクの確立後、DATAの送信を開始し、DACKの受信により送信完了となる。送信完了後、送信側装置は通信機能を停止する。なお、所定のビーコン待ち最大時間(換言すれば、リンク確立待ち最大時間)中にビーコンRN0を受信できない場合、送信エラー(換言すれば、タイムアウト)となる。
このように間欠通信では、必要に応じて通信リンクが形成され、送信側と受信側とが同期し続ける必要がない。
<第4の実施形態に係る例>
図20に、第4の実施形態に係る通信システム1Dの概略構成を例示する。図20の例では通信システム1Dは3つの通信装置10Dを含んでいる。但し、通信装置10Dの個数はこの例に限定されるものではない。
図21に通信装置10Dのブロック図を例示し、図22に通信装置10Dの通信動作を例示する。図21の例によれば、通信装置10Dは、図2に例示した通信装置10において通信処理部50を通信処理部50Dに変えた構成を有している。また、通信処理部50Dは、図2に例示した通信処理部50においてMAC処理手段53および選択手段54をMAC処理手段53Dおよび選択手段54Dにそれぞれ変えた構成を有している。通信装置10Dのその他の構成は基本的に通信装置10と同様とする。
なお、図21では、装置内時刻Tdevの同期処理に関する記載(図2参照)を省略している。
通信処理部50Dは、基本的には通信処理部50と同様の処理を行うが、間欠通信に応じた処理を行う。例えば、通信処理部50Dはビーコン送信処理201(図22参照)とビーコン応答処理202(図22参照)とのうちの少なくとも一方を行う。
ここで、ビーコン送信処理201を行う通信装置10Dを、ビーコンの利用に関する第1の通信装置と称し、ビーコン応答処理202を行う通信装置10Dを、ビーコンの利用に関する第2の通信装置と称してもよい。なお、以下では、図19の例に倣い、上記の第1の通信装置10Dがデータ受信側装置であり、上記の第2の通信装置10Dがデータ送信側装置である例を挙げる。
ビーコン送信処理201とビーコン応答処理202の両方を行う構成の場合、両処理201,202は適宜、切り替えられる。例えば、通常はビーコン送信処理201を行い、上位処理部70から送信要求が出された場合(換言すれば、送信するパケットが生成された場合)にビーコン応答処理202に切り替える。この場合、1つの通信装置10Dが、データ受信側として動作可能であるとともに、データ送信側としても動作可能である。
<ビーコン送信処理201>
ビーコン送信処理201は、上記の受信側ビーコンRN0を間欠的に送信する処理である。特に、ビーコン送信処理201では、RF方式とPLC方式のいずれか一方が所定の選択規則に従って選択され、選択された通信方式によって受信側ビーコンRN0が送信される。ここでは、受信側ビーコンRN0はブロードキャストされるものとする。
図22の例では、RF方式とPLC方式を交互に選択する交互選択規則が採用されており、RF方式の停止期間(換言すれば、非選択期間)Tnslrf中に、PLC方式によってビーコンRN0の送信が1回行われる。
説明を分かりやすくするため、図22ではRF方式に関して、ビーコン送信の間欠周期Titmrfと、ビーコン応答待ち時間Tircrfと、非選択時間Tnslrfとを、図19の比較例と同じ時間長さで図示している。また、ここでは、PLC方式によるビーコンRN0が、RF方式の間欠周期Titmrfの半周期のタイミングで送信される場合を例示する。この場合、RF方式によるビーコンRN0とPLC方式によるビーコンRN0とが交互に、かつ、同じ間欠周期Titm(=Titmrf/2)で送信される。また、PLC方式のビーコンRN0に対するビーコン応答待ち時間Tircplcが、RF方式のビーコンRN0に対するビーコン応答待ち時間Tircrfと同じ時間長さを有する場合を例示する。但し、各種時間の設定値は上記例示に限定されるものではない。
なお、PLC方式のリンク維持時間Tlnkplcは、RF方式のリンク維持時間Tlnkrf(図19参照)と同じ時間長さを有してもよいし、あるいは、通信速度の違い等に応じてリンク維持時間Tlnkrfとは異なる時間長さを有してもよい。また、これらのリンク維持時間Tlnkplc,Tlnkrfの時間長さは、所定の固定値であってもよいし、受信するDATAのサイズに応じた可変値であってもよい。
受信側ビーコンRN0は次のようにして生成される。例えば非選択時間Tnslrf等を計るタイマ(図示略)によって、非選択時間Tnslrfの終了が通信処理部50Dへ通知される。そして、MAC処理手段53Dは、タイマからの当該通知によって、ビーコンRN0用のMACフレーム(以下、ビーコンフレームとも称する)を生成する。生成されたビーコンフレームは、選択手段54Dによって選択された通信方式に応じて、RF方式のビーコンRN0またはPLC方式のビーコンRN0として送信される。
選択手段54Dは、図22の例では、RF方式とPLC方式を交互に選択する交互選択規則に従って、ビーコンRN0の送信に利用する通信方式を選択する。
なお、ビーコン応答待ち時間Tircrf,Tircplc、リンク維持時間Tlnkrf,Tlnkplc、等は、クロック55が提供する装置内時刻Tdevによって計られるものとするが、例えば上記タイマを利用してもよい。
<ビーコン応答処理202>
ビーコン応答処理202は、受信側ビーコンRN0の受信を試み、当該ビーコンRN0に応答する処理である。特に、ビーコン応答処理202では、RF方式とPLC方式とを切り替えることによってビーコンRN0の受信を試み、ビーコンRN0を受信できた通信方式によってそのビーコンRN0に対して応答する(ここでは送信要求SREQを送信する)。なお、ビーコン応答処理202は、例えば上位処理部70からの送信要求に応じて、開始される。
ビーコン応答処理202において、RF方式とPLC方式の切り替えは、例えば、選択手段54Dにより、ビーコン送信処理201で利用する交互選択規則に従って行われる。また、図22の例では、RF方式とPLC方式の切り替えは、ビーコンRN0の送信周期Titmよりも短い時間で行われる。但し、ビーコン応答処理202における通信方式の切り替えは、これらの例に限定されるものではない。
なお、通信方式の切り替え周期Titm、ビーコン待ち最大時間、等は、クロック55が提供する装置内時刻Tdevによって計られるものとするが、例えば上記タイマを利用してもよい。
なお、ビーコン応答処理202の後、図19の比較例と同様に、RACKの送受信、DATAの送受信、DACKの送受信が行われるものとする。
<第4の実施形態に係る効果>
間欠通信では、データ送信側はビーコンRN0を受信するまでの間、換言すれば通信リンクが確立するまでの間、データ送信を待たなければならない。かかる待ち状態は通信遅延を生むことになる。ビーコンRN0が送信された直後にビーコン受信待ち状態になる場合を考慮すると、その遅延時間は最大、RF方式の間欠周期Titmrfと同じ長さになりうる。
かかる通信遅延に関し、通信システム1Dによれば、ビーコンRN0が、RF方式の非選択期間中であっても、PLC方式によって送信されるので、ビーコンRN0の送信間隔を短くすることができる。図22の例によれば、図19の例に比べて、ビーコンRN0の送信間隔が半分になる。また、ビーコンRN0を受信する側では、RF方式とPLC方式とを切り替えてビーコンRN0の到来を待つので、いずれの通信方式によってビーコンRN0が送信されても対応可能である。
このため、通信システム1Dによれば、PLC方式を有さない上記比較例に比べて、ビーコンRN0の受信待ち(換言すれば、通信リンクの確立待ち)の時間を削減可能であり、そのような待ち時間によって生じる通信遅延を改善可能である。また、それにより、通信の効率、信頼性等を向上させることができる。
ここで、図23に例示するように、RF方式の非選択期間Tnslrf中に、PLC方式でビーコンRN0を2回、送信してもよい。この例は、RF→PLC→PLCという所定順序を1サイクルとして定義した所定順選択規則に従って、通信方式を選択することにより、実現可能である。また、PLC方式によるビーコン送信を3回以上、行ってもよい。
これらの例によれば、ビーコンRN0の送信間隔Titmをさらに短くすることができるので、リンク確立待ち時間、および、それによる通信遅延をさらに改善可能である。また、通信方式の種類数を増加させることなく、そのような効果が得られる。
ところで、例えば、RF方式の送受信回路31とPLC方式の送受信回路32の両方を、PLCに利用している電力線5(図20参照)の供給電力(以下、外部供給電力とも称する)によって駆動する構成が考えられる。
また、例えば、RF送受信回路31を電池(図示略)によって駆動し、PLC送受信回路32を、PLCに利用している電力線5(図20参照)の供給電力(外部供給電力)によって駆動する構成が考えられる。この例によれば、ビーコンRN0の送信回数が増えても、上記電池を長持ちさせることが可能である。
また、RF送受信回路31が電池で駆動可能な構成によれば(さらに外部供給電力でも駆動可能であってもよい)、例えば、電源線の無い場所や電源線の敷設が困難な場所では、RF送受信回路31だけを電池で駆動させる例が考えられる。
また、RF送受信回路31が電池と外部供給電力との両方で駆動可能な構成によれば、例えば、平生は電力線5の供給電力を利用し、停電等によって電力線5の供給電力が途絶えた場合に電池に切り替える例が考えられる。この例によれば、RF通信については確保できる。
なお、通信処理部50D等に対する給電形態についても、電池と外部供給電力とそれらの組み合わせとのいずれも採用可能である。
ここではRF方式とPLC方式という2種類の通信方式を例示しているため、電力線5からの電力を取得できない(したがってPLC方式を利用できない)環境・状況では、上記比較例と同様にRF方式のみを使用することになる。そのような場合でも、通信処理部50Dは、上記のようにRF方式用の処理とPLC方式用の処理の両方を行うものとする。あるいは、RF方式用の処理とPLC方式用の処理の両方を行う動作モードに加え、RF方式用の処理だけを行う動作モードも通信処理部50Dに搭載しておき、それら2種類の動作モードを切り替えるようにしてもよい。
なお、通信装置の給電形態についての上記の様々な例は、他の実施形態にも適用可能である。
<第4の実施形態に係る他の例>
上記の例では、ビーコンRN0が、RF方式およびPLC方式によって、時間的に等間隔で送信される。これに対し、ビーコンRN0を不等間隔で送信することも可能である。また、上記の例とは違えて、RF方式によるビーコンRN0を不等間隔で送信することも可能である。
また、上記ではRF方式とPLC方式という2種類の通信方式を例示した。これに対し、第1ないし第3の実施形態でも言及したように、3種類以上の通信方式を採用することも可能である。かかる点に鑑みると、上記の各種例は、第1ないし第N(Nは2以上の整数)の通信方式によって通信可能に構成された通信装置について、以下のように一般化可能である。
例えば、ビーコン送信処理201は、第1の通信方式によってビーコンRN0を間欠的に送信するとともに、第1の通信方式の非選択期間中に第2ないし第Nの通信方式によってビーコンRN0を間欠的に送信する処理である。
ここで、ビーコン送信処理201では、第1の通信方式の非選択期間中に、第2ないし第Nの通信方式のうちの少なくとも1種類の通信方式を2回以上使ってビーコンRN0を送信してもよい。
また、ビーコン応答処理202は、第1ないし第Nの通信方式を切り替えることによってビーコンRN0の受信を試み、ビーコンRN0を受信できた通信方式でビーコンRN0に対して応答する処理である。
換言すれば、上記ではN=2であり、かつ、第1の通信方式がRF方式であり、かつ、第2の通信方式がPLC方式である場合を例示したが、この例に限定されるものではない。
間欠通信では全ての通信方式が非選択状態になる期間があり、そのような期間において通信処理部50Dおよび送受信部30をいわゆるスリープ状態にしてもよい。電力供給を続けて稼働状態を維持することも可能であるが、スリープ状態を採用すれば消費電力を削減することができる。
ここで、クロック55をスリープ状態にするか否かは任意である。すなわち、MAC処理手段53D等とともにクロック55もスリープ状態になるように構成してもよいし、あるいは、MAC処理手段53D等がスリープ状態になってもクロック55は動作し続けるように構成してもよい。前者の場合、装置内時刻Tdevは、スリープ状態の発生の度にリセットされ、このため保持されない。これに対し、後者の場合、装置内時刻Tdevを保持することが可能である。なお、例えばクロック55用の電源をMAC処理手段53D等用の電源とは別個に設けることによって、クロック55を動作させ続けることが可能である。
なお、装置内時刻Tdevが保持される場合であっても、第4の実施形態では、第1の実施形態に係る装置内時刻同期処理100(図6参照)を行うか否かは任意である。
上記の例では、所定順選択規則(交互選択規則を含む)に従って、通信方式を選択する。これに対し、通信方式の選択に、ランダム選択規則150(図11参照)、適応型選択規則(図15参照)等を応用することも可能である。なお、ランダム選択規則150および適応型選択規則によれば、第1の通信方式(上記ではRF方式が例示される)によるビーコンRN0が不等間隔で送信される場合もある。
ここで、第1ないし第3の実施形態で例示した選択規則140,150,160は、装置内時刻Tdevに依存する。このため、装置内時刻Tdevが保持される構成では、それらの選択規則140,150,160を応用可能である。これに対し、装置内時刻Tdevが保持されない構成では、装置内時刻Tdevに代えて例えば所定の設定値を用いればよい。
また、上記の例では、ビーコン送信処理201とビーコン応答処理202とが同じ選択規則を利用する。これに対し、処理201,202が異なる選択規則を利用してもよい。
また、上記では通信システム1Dが、複数の通信方式に準拠した通信装置10Dのみを含む場合を例示した。しかし、通信システム1Dは、1つの通信方式で間欠通信を行う通信装置を含むことも可能である。
<第5の実施形態>
図24に、第5の実施形態に係る通信システム1Eの概略構成を例示する。図24の例では通信システム1Eは、第1ないし第3の実施形態のいずれかに係る通信装置10と、第4の実施形態に係る通信装置10Dとを含むとともに、第5の実施形態に係る通信装置10Eを含んでいる。すなわち、通信システム1Eでは同期通信を行う通信装置10と非同期通信を行う通信装置10Dとが混在しており、これに鑑み通信装置10Eは同期通信と非同期通信の両方に対応可能に構成されている。但し、通信装置10,10D,10Eの個数は図24の例に限定されるものではない。
図25に、通信装置10Eのブロック図を例示する。図25の例によれば、通信装置10Eは、図2に例示した通信装置10において通信処理部50を通信処理部50Eに変えた構成を有している。また、通信処理部50Eは、図2に例示した通信処理部50においてMAC処理手段53および選択手段54をMAC処理手段53Eおよび選択手段54Eにそれぞれ変えた構成を有している。通信装置10Eのその他の構成は基本的に通信装置10と同様とする。
MAC処理手段53Eは、概略として、MAC処理手段53(図2参照)の機能と、MAC処理手段53D(図21参照)の機能とを併せ持ち、各種機能を適宜、提供する。
このため、例えば、図26に示すように、MAC処理手段53,53Dの両方を設け両手段53,53Dが協働することによって、MAC処理手段53Eを構成可能である。但し、この例に限定されるものではない。例えば、重複する機能はMAC処理手段53Dから省略してもよい。
選択手段54Eは、概略として、選択手段54(図2参照)の機能と選択手段54D(図21参照)の機能とを併せ持ち、各種機能を適宜、提供する。
ここで、通信装置10Eでは、装置内時刻Tdevが保持されるものとする。このため、装置内時刻Tdevの同期処理100(図6参照)を行うことが可能である。但し、装置内時刻同期処理100を行わない構成も採用可能である。いずれにせよ、図25では、装置内時刻同期処理に関する記載(図2参照)を省略している。
図27に示すように、通信装置10Eでは、同期/非同期並行処理300によって、同期通信処理301と非同期通信処理302とが並行して行われる。具体的には、同期通信処理301によって同期通信用のタイムスロットSが制御され、非同期通信処理302によって非同期通信用のビーコンRN0の送信が制御される。
特に非同期通信処理302では、同期通信処理301で選択されている通信方式で以て、ビーコンRN0を間欠的に送信する。また、図27の例によれば、ビーコンRN0はタイムスロットSの開始タイミングに同期して送信される。なお、図27の例ではビーコンRN0の送信周期がタイムスロットSの時間長さの3倍に設定されているが、この例に限定されるものではない。例えば、毎回のタイムスロットSでビーコンRN0を送信してもよい。
より具体的には、選択手段54Eが選択手段54と同様に機能することによって、いずれかの通信方式が割り当てられたタイムスロットSが順次、生成される。なお、図27では交互選択規則が例示されるが、この例に限定されるものではない。
また、MAC処理手段53EがMAC処理手段53と同様に機能することによって、各タイムスロットSで同期通信を行うことが可能である。また、MAC処理手段53EがMAC処理手段53Dと同様にビーコンフレームを生成することにより、その時点のタイムスロットSに割り当てられている通信方式で以てビーコンRN0が送信される。
具体的には、MAC処理手段53Eが、選択手段54EからタイムスロットSの切り替えタイミングを取得し、その切り替えタイミングに合わせてビーコンフレームを出力することにより、タイムスロットSの開始タイミングに同期してビーコンRN0を送信可能である。あるいは、例えば、選択手段54Eが、ベースバンド処理手段51または52に対するビーコンフレームの入力を、次のタイムスロットSの開始タイミングまで保留することによって、ビーコンRN0の送信タイミングを調整してもよい。
同期/非同期並行処理300では、非同期通信の通信リンク維持時間Tlnkrf,Tlnkplc(図19および図22参照)は、タイムスロットSの時間長さ以下に設定される。これにより、各タイムスロットS内に非同期通信を完了させることができ、非同期通信の信頼性を確保できる。また、上記のようにビーコンRN0をタイムスロットSの開始タイミングで送信することにより、通信リンク維持時間Tlnkrf,Tlnkplcを長くとることができる。
ここで、例えば上位処理部70が非同期通信による送信を指示した場合、タイムスロットSの制御を中断して、上記のビーコン応答処理202(図22参照)を行えばよい。
通信装置10Eによれば、同期通信処理301によって通信装置10と通信可能であるとともに、非同期通信処理302によって通信装置10Dと通信可能である。すなわち、通信装置10Eによれば、複数の通信方式を時分割で利用する通信システムにおいて、タイムスロットSを利用した同期通信と、ビーコンRN0を利用した非同期通信とを混在させることができる。
なお、上記の第4の実施形態において、ビーコン送信処理201を行う通信装置10Dを、ビーコンの利用に関する第1の通信装置と称し、ビーコン応答処理202を行う通信装置10Dを、ビーコンの利用に関する第2の通信装置と称した。これに倣えば、通信装置10Eは、第1の通信装置に含まれる。また、同期通信処理301をさらに行う点に鑑み、通信装置10Eをビーコンの利用に関する第3の通信装置と称してもよい。
<第5の実施形態に係る他の例>
上記ではRF方式とPLC方式という2種類の通信方式を例示した。これに対し、第1ないし第4の実施形態でも言及したように、3種類以上の通信方式を採用することも可能である。
また、上記では通信システム1Eが、複数の通信方式に準拠した通信システム10,10Dのみを含む場合を例示した。しかし、通信システム1Eは、1つの通信方式で間欠通信を行う通信装置を含むことも可能である。
また、第1ないし第4の実施形態における各種の例を、通信装置10Eおよび通信システム1Eに応用可能である。
<応用例>
上記で例示した各種の通信システムおよび通信装置は、通話やデータ通信等の基本的な用途だけでなく、その他の用途にも応用可能である。
例えば、通信装置にセンサを組み合わせてセンサ装置を構成することにより、各センサ装置で検出した情報を収集する情報収集システムを構築可能である。より具体的には、上記センサとしてカメラや人感センサを採用することによって、セキュリティ監視システムを構築可能である。また、上記センサとして電気、ガス、水道等の使用量の測定器を採用することによって、いわゆるテレメータシステムを構築可能である。
また、例えば、被制御対象物(例えば照明装置)の制御機能を通信装置に搭載して通信機能付きコントローラを構成することにより、制御システムを構築可能である。
<付記>
本発明は詳細に説明されたが、上記した説明は、すべての局面において、例示であって、本発明がそれに限定されるものではない。例示されていない無数の変形例が、本発明の範囲から外れることなく想定され得るものと解される。