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JP5725362B2 - リチウム二次電池とその製造方法 - Google Patents

リチウム二次電池とその製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、リチウム二次電池(典型的にはリチウムイオン電池)およびその製造方法に関する。詳しくは、車両駆動用の高出力電源として用いられるサイクル特性に優れたリチウム二次電池およびその製造方法に関する。
リチウムイオン電池その他のリチウム二次電池は、既存の電池に比べ小型、軽量かつエネルギー密度が高いという特徴から、民生用(パソコンや携帯端末の電源等)として広く利用されている。また出力密度が高いことから、ハイブリッド自動車(HV)等の車両駆動用の高出力電源としても好ましく用いられている。
この種のリチウム二次電池(典型的にはリチウムイオン電池)は、正極および負極からなる電極体と、電解質(典型的には電解液)とを電池ケースに収容した構成を備える。該電極(正極および負極)は、対応する正負の集電体上に、電荷担体(典型的にはリチウムイオン)を可逆的に吸蔵および放出し得る活物質を主成分とする電極合材層(具体的には、正極合材層および負極合材層)が、それぞれ形成されている。例えばリチウム二次電池の正極の場合、リチウム遷移金属複合酸化物等の正極活物質と、高導電性材料の粉末(導電材)と、バインダ(結着剤)等が適当な溶媒の中で混合され、調製されてなるスラリー状(ペースト状、インク状を含む)の組成物を正極集電体に塗布することにより、多孔性の正極合材層が形成される。
上記電池では、電荷担体(典型的にはリチウムイオン)が正負極間を移動することにより充放電が行われる。しかし、かかる充放電(即ち、電極合材層におけるリチウムイオンの吸蔵および放出)に伴って電極活物質が膨張および収縮を繰り返すため、充放電サイクルを重ねる毎に電極合材層が劣化(崩壊)し、充放電容量が低下することが知られている。この種の問題に関する従来技術としては、特許文献1が挙げられる。特許文献1には、正極合材層のバインダとして融点が165℃以下のポリフッ化ビニリデン(PVdF)を用いる技術が開示されている。
特開2003−157830号公報
ところで、近年、開発および実用化が進められている自動車に、モーター駆動用の電源としてリチウム二次電池を搭載したプラグインハイブリッド自動車(PHV)がある。すでに一般販売されているハイブリット自動車(HV)は動力源としてエンジン(内燃機関)とモーター駆動用の電池とを併用し、モーター駆動用電池の充電容量が少なくなるとエンジンを駆動させて該電池を自動的に充電する。一方、プラグインハイブリッド自動車(PHV)は上記HVモード(ハイブリッド自動車モード)に加え、あらかじめ家庭用電源など外部電源に接続し充電した該電池のみを用いるEVモード(電気自動車モード)を備えており、いずれかのモードで走行可能なように設計されている。
上述のとおりPHV用の電池は従来のHV用の電池と使用方法が異なるため、要求される性能も従来の電池とは大きく異なる。例えば、PHV用の電池ではEVモードでの使用(即ち、あらかじめ充電した電気のみで走行すること)を考慮なければならない。よって、該電池には高い出力密度(出力特性)や耐久性(良好なサイクル特性)に加え、高いエネルギー密度(定格容量)をも要求される。またPHV用の電池は、充電容量が少なくなっても自動的に充電が行われることはない。このためSOC(充電深度;State of Charge)が低い領域(例えば、SOCが30%以下)においても、急速放電(即ち、自動車の加速)が頻繁に行われる。一般的に、かかる領域における充放電は電池の内部抵抗が高く、SOCが高い領域における充放電以上に出力特性やサイクル特性が低下することが知られている。このためPHV用の電池では幅広いSOC範囲(特にSOCが30%以下の領域)における急速放電にも対応し得る必要がある。上記のように、PHV用の電池では従来にない厳しい条件下で高い出力密度や耐久性の向上が要求されており、かかる課題に対し特許文献1に記載される技術では対応が困難である。
本発明はかかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、高エネルギー密度のリチウム二次電池であって、従来より電池性能(例えば、サイクル特性や出力密度)を向上させたリチウム二次電池、特に上述した車両駆動用電源を提供することである。また、本発明の他の目的は、かかるリチウム二次電池を製造する好適な方法を提供することである。
上記目的を実現すべく、本発明によって、正極と負極を有する電極体と、電解質とを備えたリチウム二次電池であって、上記正極は正極集電体と上記正極集電体上に形成された正極合材層とを備えており、該正極合材層は正極活物質とバインダとしてのポリフッ化ビニリデン(PVdF)とを含むリチウム二次電池が提供される。ここで、上記ポリフッ化ビニリデンの核磁気共鳴スペクトル(NMR;Nuclear Magnetic Resonance)に基づくα晶とβ晶との質量比(α/β)が0.42以上0.56以下であることを特徴とする。
かかる構成のリチウム二次電池では、α/βが上記値を満たすPVdFを有していることを特徴とする。即ち、上記α/βを満たすPVdFは電解質への膨潤ないし溶解が抑えられ、且つ長期にわたって正極合材層の形状を保持することができる。したがって、かかる正極合材層を備えたリチウム二次電池では、電池性能(例えば、サイクル特性や出力密度)を向上させることができる。
ここで開示されるリチウム二次電池の好適な一態様として、上記ポリフッ化ビニリデン(PVdF)の示差走査熱量測定(DSC;Differential scanning calorimetry)に基づく融解開始温度は、144℃以上153℃以下であることが挙げられる。
このような融解開始温度を満たすPVdFは、電解質への膨潤ないし溶解がより効果的に抑えられ、したがって長期にわたって正極合材層の形状を保持することができる。このため、かかる正極合材層を備えたリチウム二次電池では、さらに良好な電池性能(例えば、サイクル特性や出力密度)を実現することができる。
ここで開示されるリチウム二次電池の好適な一態様として、上記正極を上記電解質に30日間浸漬した後のバネ定数を浸漬前のバネ定数で除した値(バネ定数比)が、0.8以上1.0未満であることが挙げられる。
上記バネ定数比を満たす(即ち、バネ定数が良好に維持されている)正極は、伸縮性に優れ、充放電に伴う正極合材層の膨張および収縮に好適に追従することができる。また長期にわたって該正極合材層の形状を保持することができるため、かかる正極を備えたリチウム二次電池では電池性能(例えば、サイクル特性や出力密度)を向上させることができる。
ここで開示されるリチウム二次電池の好適な一態様として、上記正極合材層の空隙率が25%以上40%以下であることが挙げられる。
上記空隙率を満たすリチウム二次電池は高い出力密度と高いエネルギー密度を両立することができる。また、伸縮性に優れ、充放電に伴う合材層の膨張および収縮に追従することができるため、かかる正極を備えたリチウム二次電池では、高エネルギー密度であって、且つ電池性能(例えば、サイクル特性や出力密度)を向上させることができる。
ここで開示されるリチウム二次電池の好適な一態様として、上記正極集電体は長尺状に形成され、該長尺状の正極集電体上に上記正極合材層が形成され、上記負極は上記長尺状の正極集電体に対応する長尺状の負極集電体上に、負極合材層が形成されて構成されており、該長尺状の正極と該長尺状の負極とが積層され捲回されて、捲回電極体を構成していることが挙げられる。
例えば、該捲回電極体を備えたリチウム二次電池を複数配列し、該配列方向に拘束してなる組電池は面圧(拘束圧)の変動による性能劣化が生じやすいことから、ここで開示されるリチウム二次電池(単電池)を特に好適に利用できる。したがって、かかる発明はまた、ここで開示されたいずれかのリチウム二次電池を複数接続し配列された構成の組電池を提供することができる。
ここで開示されるリチウム二次電池は、高エネルギー密度であって、従来より電池性能(例えば、サイクル特性や出力密度)を向上させことができる。かかる高性能を発揮し得ることから、特に、車両(典型的には、プラグインハイブリッド自動車(PHV)、ハイブリッド自動車(HV)、電気自動車(EV)、燃料電池自動車(FCV)のような電動機)に搭載されるモーター用の動力源(駆動電源)として好適に使用され得る。
ここで、正極と負極を有する電極体と、電解質とを備えたリチウム二次電池を製造する方法が提供される。かかる製造方法は、正極合材層と該正極合材層を保持する正極集電体とを有する正極を作製する工程、および上記正極を用いてリチウム二次電池を構築する工程を包含している。ここで上記正極を作製する工程は、正極活物質と、バインダとしてのポリフッ化ビニリデンとを含むスラリー状の組成物を上記正極集電体上に付与し、上記正極合材層を形成すること、上記正極合材層が所定の膜厚になるようプレスすること、および上記プレスされた正極合材層を145℃以上158℃以下の温度で熱処理すること、を包含する。
ここで開示される製造方法の他の好適な一態様として、上記正極を作製する工程は、上記熱処理により上記正極合材層中に含まれるポリフッ化ビニリデンの核磁気共鳴スペクトルに基づくα晶とβ晶との質量比(α/β)が0.42以上0.56以下となるように行うことが挙げられる。
ここで開示される製造方法の他の好適な一態様として、上記正極を作製する工程は、上記熱処理により上記正極合材層中に含まれるポリフッ化ビニリデンの示差走査熱量測定に基づく融解開始温度が144℃以上153℃以下となるように行うことが挙げられる。
ここで開示される製造方法の他の好適な一態様として、上記正極を作製する工程におけるプレスは、前記正極合材層の空隙率が25%以上40%以下となるように行うことが挙げられる。
ここで開示される製造方法の他の好適な一態様として、上記電極体を作製する工程において、上記正極集電体として長尺状に形成された正極集電体を使用して正極を形成し、該形成した正極と対応する長尺状の負極とを積層し、捲回電極体を作製することが挙げられる。
本発明の一実施形態に係る組電池の外形を模式的に示す斜視図である。 本発明の一実施形態に係るリチウム二次電池の構成を示す模式図である。 本発明の一実施形態に係るリチウム二次電池の捲回電極体の構成を示す模式図である。 本発明の一実施形態に係るリチウム二次電池を備えた車両(自動車)を模式的に示す側面図である。 実施例1、2および比較例1、2について、サイクル特性の推移を示すグラフである。 実施例1、2および比較例1、2について、サイクル特性の容量維持率を示すグラフである。 実施例1、2および比較例1〜3について、出力特性の容量維持率を示すグラフである。 実施例1、2および比較例1〜3について、電解液浸漬後のバネ定数比の推移を表すグラフである。 実施例1、2および比較例1〜3について、サイクル特性とバネ定数比の関係を示すグラフである。 実施例1、2および比較例1〜3について、出力特性とバネ定数比の関係を示すグラフである。 NMRにおけるPVdFのα/β比と、バネ定数比との関係を示すグラフである。 DSCにおけるPVdFの融解開始温度と、バネ定数比との関係を示すグラフである。 バネ定数の測定方法を説明するための図である。
本明細書において「二次電池」とは、繰り返し充放電可能な蓄電デバイス一般をいい、リチウム二次電池等のいわゆる蓄電池ならびに電気二重層キャパシタ等の蓄電素子を包含する用語である。また、「リチウム二次電池」とは、電解質イオンとしてリチウムイオンを利用し、正負極間におけるリチウムイオンに伴う電荷の移動により充放電が実現される二次電池をいう。一般にリチウムイオン電池(若しくはリチウムイオン二次電池)、リチウムポリマー電池等と称される二次電池は、本明細書におけるリチウム二次電池に包含される典型例である。また、「活物質」とは、正極側又は負極側において蓄電に関与する物質(化合物)をいう。即ち、電池の充放電時において電子の吸蔵および放出に関与する物質をいう。
以下、ここで開示されるリチウム二次電池の好適な実施形態を説明する。なお、本明細書において特に言及している事項以外の事柄であって、実施に必要な事柄は、当該分野における従来技術に基づく当業者の設計事項として把握され得る。かかる構造のリチウム二次電池は、本明細書に開示されている内容と当該分野における技術常識とに基づいて実施することができる。
ここで開示されるリチウム二次電池の正極としては、粒状正極活物質を導電材やバインダとしてのPVdF等とともに正極合材として正極集電体上に付着させて正極合材層(正極活物質層ともいう。)を形成した形態のものを用いる。
ここで正極集電体の素材としては、アルミニウム、ニッケル、チタン、ステンレス鋼等のように導電性の良い金属を主体に構成された部材を使用することができる。集電体の形状は、得られた電極を用いて構築される電池の形状等に応じて異なり得るため特に限定されず、棒状体、板状体、箔状体、網状体等を用いることができる。後述する捲回電極体を備えた電池では、主にアルミニウムを主成分とする合金(アルミニウム合金)製の箔状体が用いられる。箔状集電体の厚みは特に限定されないが、電池の容量密度と集電体の強度との兼ね合いから、5μm〜200μm(より好ましくは10μm〜30μm)程度を好ましく用いることができる。
ここで用いられる正極活物質には、従来からリチウム二次電池に用いられる物質の一種または二種以上を特に限定することなく使用することができる。例えば、リチウムニッケル酸化物(例えばLiNiO)、リチウムコバルト酸化物(例えばLiCoO)、リチウムマンガン酸化物(例えばLiMn)等のリチウムと遷移金属元素とを構成金属元素として含む酸化物(リチウム遷移金属酸化物)や、リン酸マンガンリチウム(LiMnPO)、リン酸鉄リチウム(LiFePO)等のリチウムと遷移金属元素とを構成金属元素として含むリン酸塩等が挙げられる。中でも、リチウムニッケルコバルトマンガン複合酸化物(NCMとも言う。例えばLiNi1/3Co1/3Mn1/3)を主成分とする正極活物質(典型的には、実質的にリチウムニッケルコバルトマンガン複合酸化物からなる正極活物質)は、熱安定性に優れ、かつエネルギー密度も高いため好ましく用いることができる。
ここで、リチウムニッケルコバルトマンガン複合酸化物とは、Li、Ni、Co、Mnを構成金属元素とする酸化物のほか、Li、Ni、Co、Mn以外に他の少なくとも一種の金属元素(Li、Ni、Co、Mn以外の遷移金属元素および/または典型金属元素)を含む酸化物をも包含する意味である。かかる金属元素は、例えば、Al、Cr、Fe、V、Mg、Ti、Zr、Nb、Mo、W、Cu、Zn、Ga、In、Sn、La、Ceのうちの一種または二種以上の元素であり得る。リチウムニッケル酸化物、リチウムコバルト酸化物、及びリチウムマンガン酸化物についても同様である。このようなリチウム遷移金属酸化物(典型的には粒子状)としては、例えば従来公知の方法で調製されるリチウム遷移金属酸化物粉末をそのまま使用することができる。例えば、平均粒径が凡そ1μm〜25μmの範囲にある二次粒子によって実質的に構成されたリチウム遷移金属酸化物粉末を正極活物質として好ましく用いることができる。
ここで用いられる導電材には、従来からリチウム二次電池に用いられる物質の一種または二種以上を特に限定することなく使用することができる。例えば、カーボン粉末やカーボンファイバー等のカーボン材料が好ましく用いられる。あるいはニッケル粉末等の導電性金属粉末等を用いてもよい。カーボン粉末としては、種々のカーボンブラック(例えば、アセチレンブラック(AB)、ファーネスブラック、ケッチェンブラック(KB))、グラファイト粉末等を用いることができる。なかでも好ましいカーボン粉末としては、アセチレンブラック(AB)が挙げられる。導電材の一次粒子の粒径は、比較的小さいものほど接触面積が広いため正極合材層内の導電パス(即ち、正極活物質と導電材との接触面積)を保つのに有利である。例えば、カーボン粉末を使用する場合、該粉末を構成する一次粒子の平均粒径が、凡そ10nm〜200nm(典型的には凡そ15nm〜100nm)の範囲にあることが好ましい。また、特に限定するものではないが、正極活物質100質量%に対する導電材の使用量は、例えば1質量%〜20質量%(好ましくは5質量%〜15質量%)とすることができる。また、各種添加剤(例えば、過充電時においてガスを発生させる無機化合物(例えば、リン酸塩や炭酸塩))等を含有させておいてもよい。
ここで開示されるリチウム二次電池の正極合材層には、上記正極活物質の他にバインダとして少なくともポリフッ化ビニリデン(PVdF)を含む。ここでいうPVdFの概念には、フッ化ビニリデンの単独重合体、フッ化ビニリデンと他のモノマーとの共重合体、それらの変性物、修飾物等が包含され得る。上記共重合体においてフッ化ビニリデンと共重合され得るモノマーは、例えば、フッ化ビニル、三フッ化エチレン、三フッ化塩化エチレン、四フッ化エチレン、六フッ化プロピレン等のフッ素系モノマー;エチレン、メタクリル酸メチル、アクリル酸等の非フッ素系モノマー;等から選択される一種または二種以上であり得る。上記共重合体におけるフッ化ビニリデンの共重合割合は50質量%以上(典型的には70質量%以上、例えば85質量%以上)であることが好ましい。上記変性物の例としては、フッ化ビニリデンの単独重合体または共重合体のカルボン酸変性物等が挙げられる。
ここで開示されるリチウム二次電池の正極合材層には、本発明の効果を著しく損なわない限度で、上記導電材および上記PVdF以外の固形成分(任意成分)を必要に応じて含む組成であり得る。例えば、PVdF以外のポリマー(典型的には、負極合材層のバインダとして後述するポリマーのうちPVdF以外のポリマー)を任意成分として含有し得る。ただし、この任意成分たるポリマーの含有量は、PVdFの質量の1/2以下とすることが好ましく、1/5以下とすることがより好ましい。かかる任意ポリマーの含有量が多すぎると充放電の繰り返しにより後述する正極のバネ定数が低下し(即ち、電極合材層が劣化(崩壊)し)、サイクル特性等が低下する虞がある。好ましい一態様では、上記正極合材層がPVdF以外のポリマー(バインダ)を実質的に含有しないか、該ポリマー(バインダ)の含有量が正極合材層全体の5質量%以下(さらには3質量%以下)である。
そして、上記正極活物質および導電材等を含む粉末状材料を、PVdFを含むバインダとともに適当な分散媒体に分散させて混練することによって、スラリー状(ペースト状、インク状のものを包含する。)の組成物(以下、「正極合材スラリー」という。)を調製する。この正極合材スラリーを正極集電体の片面または両面に適量塗布し正極合材層を形成した後、乾燥させる方法を好ましく採用することができる。この乾燥は、必要に応じて加熱下で行うことができる。好ましい一態様では、乾燥温度を凡そ120℃以下(典型的には80℃以上120℃未満)とし、乾燥時間を30秒〜2分程度とする。
正極合材スラリーの乾燥後、プレス処理および熱処理を施す。このことによって、正極合材層の厚みや密度を調整することができる。
ここで用いられる分散媒体には、従来からリチウム二次電池の作製時に用いられる有機溶剤のうち、一種または二種以上を特に限定することなく使用することができる。例えば、アミド、アルコール、ケトン、エステル、アミン、エーテル、ニトリル、環状エーテル、芳香族炭化水素等が挙げられる。より具体的には、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、N,N−ジメチルアセトアミド、2−プロパノール、エタノール、メタノール、アセトン、メチルエチルケトン、プロペン酸メチル、シクロヘキサノン、酢酸メチル、酢酸エチル、アクリル酸メチル、ジエチルトリアミン、N,N−ジメチルアミノプロピルアミン、アセトニトリル、エチレンオキシド、テトラヒドロフラン(THF)、ジオキサン、ベンゼン、トルエン、エチルベンゼン、キシレンジメチルスルホキシド(DMSO)、ジクロロメタン、トリクロロメタン、ジクロロエタン等が挙げられる。なかでも特に、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)が好適に用いられる。例えば、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)に沸点の異なる他の分散媒体(例えば、キシレン)を混入することで、正極合材ペーストの分散状態や、該正極合材ペーストの乾燥速度を変化させることができる。
上記プレス処理は、従来からリチウム二次電池の作製時に用いられる手法のうち、一種または二種以上を特に限定することなく使用することができる。例えば、ロールプレス法、平板プレス法等を好適に用いることができる。なお、正極合材層があまりに嵩高い場合は、プレス後の湾曲が大きく後述する捲回電極として用いることは困難である。
上記熱処理温度(H)は、例えばH≧120℃とすることができ、通常はH≧130℃が適当であり、例えばH≧140℃、好ましくはH≧145℃である。熱処理温度Hが低すぎると、所望のα/βが実現されるまでの処理時間が長くなって電池の生産性が低下したり、処理の程度(α/βの値)にムラが生じたりすることがあり得る。また上記熱処理温度Hは、例えばH<160℃とすることができ、好ましくはH≦158℃とすることができる。熱処理温度が高すぎると、正極合材層の形成後にPVdFが完全に融解してしまい、該PVdFの結晶形態が変わってしまう虞がある。かかる場合には、該正極合材層の空隙率が変化したり、該正極合材層内の導電パスが保てなくなる等、リチウム二次電池の性能(例えば、サイクル特性や出力密度)を低下させることがあり得る。なお、上記では正極合材スラリーの乾燥と、形成した正極合材層の熱処理とを別工程として行う例につき説明したが、これら(乾燥と熱処理)を一連の操作として行ってもよい。
正極集電体の面積当たりの正極合材層の質量(目付量)は、例えば15.0mg/cm〜50.0mg/cm(固形分量)とすることができる。通常は、25.0mg/cm〜40.0mg/cm(固形分量)とすることにより好適な結果が実現され得る。この量が少なすぎると単位電池あたりのエネルギー密度が小さく、多すぎると電池の内部抵抗が上昇する傾向にある。同様の理由により、正極合材層の密度は、例えば2.2g/cm〜3.0g/cmとすることができ、通常は2.5g/cm〜2.93g/cmとすることが適当である。
上記熱処理工程後の、正極集電体上に形成された正極合材層の空隙率は、例えば20%〜50%とすることができる。通常は、23〜40%とすることにより好適な結果が実現され得る。該正極合材層の密度が低いと、電池のエネルギー密度が低下する。また、該正極合材層の密度が高すぎると、後述する比較例3に示される通り、とりわけSOCが低い領域における出力密度が低下する。
なお、本明細書において空隙率とは、正極合材層における空隙の割合である。例えば、正極合材層の空隙率は、正極合材層の見かけの体積Va(cm)と、正極合材層の内部に形成された空隙の容積Vb(cm)から、下記の式(1)により算出する。
(Vb/Va)×100 (1)
正極合材層の見かけの体積Vaは、正極シートのサンプルの平面視での面積Sと、正極合材層の厚さTによって下記の式(2)によって算出する。正極シートの平面視での面積Saは、例えば、正極シートのサンプルを打ち抜き機やカッターなどで正方形や長方形に切り出すことにより求める。また正極合材層の厚さTは、例えばノギスや厚さ測定機等により求める。
Va=S×T (2)
正極合材層の内部に形成された空隙の容積Vbは、例えば、水銀圧入法より多孔体の細孔分布を測定する水銀ポロシメータ(mercury porosimeter)を用いて測定する。なお、かかる測定において、「空隙」は外部に開かれた空隙(開孔)を意味し、正極合材層内の閉じられた空間(閉孔)は「空隙」に含まれない。水銀圧入法では、まず正極シートを真空引きした状態で水銀に浸漬する。この状態で水銀にかけられる圧力が高くなると、水銀はより小さい空間へと徐々に浸入していく。このため、正極合材層に浸入した水銀の量と水銀にかけられる圧力との関係に基づいて、正極合材層中の空隙の大きさとその容積分布を求めることができる。例えば、株式会社島津製作所製のオートポアIII9410を用いた場合、4psi〜60000psiにて測定することによって、50μm〜0.003μmの細孔範囲に相当する空隙の容積分布を把握することができる。
また正極合材層の空隙率は、例えば、正極合材層の質量W(g)と、正極活合材層34の見かけの体積V(cm)と、正極合材層の真密度ρ(空隙を含まない実体積によって質量Wを割った値)とから、下記の式(3)により算出することもできる。正極合材層の真密度は、例えば、定容積膨張法(気体置換型ピクノメータ法)等の密度測定装置によって測定する。
(1−W/ρV)×100 (3)
さらに、正極合材層の空隙率は、例えば、正極合材層の断面サンプルにおいて正極合材層の単位断面積当たりに含まれる空隙が占める面積Sbと、正極合材層の見かけの断面積Saとから、下記の式(4)により算出することもできる。
(Sb/Sa)×100 (4)
SaおよびSbは、例えば走査型電子顕微鏡(SEM)による正極合材層の断面観察をにより計測することができる。該断面画像によれば、色調や濃淡の違いに基づいて、正極合材層の構成物質の断面に形成された空隙を判別し得る。観察用のサンプルは正極シートの任意の断面をCP処理(Cross Section Polisher処理)にて得ることができ、該サンプルの数が多いほど空隙率を正確に近似し得る。
ここに開示される技術の好ましい一態様において、上記正極合材層を構成するポリフッ化ビニリデン(PVdF)は、該PVdFの結晶が、核磁気共鳴スペクトル(NMR)に基づくα晶とβ晶との質量比(α/β)が0.42以上0.56以下であることによって特徴づけられる。この質量比α/βは、19Fを観測核とする固体NMR(19F−NMR)測定により把握することができる。より具体的には、該NMR測定における−78ppm付近がα/2、−95ppm付近がα/2+βの波形分離によりα/βを算出することができる。なお、本明細書においてα/βの好ましい範囲を示す数値として、小数点以下3桁目を四捨五入することがあり得る。この場合において、例えば、α/β=0.562は「α/βが0.42以上0.56以下」の条件を満たすが、α/β=0.568は満たさない。
上記α/βの値が小さすぎると正極合材層の伸縮性が乏しく、該正極合材層の形状を長期間維持することが困難となり得る。また上記α/βの値が大きすぎると、PVdFが電解質中において膨潤ないし溶解し、正極合材層内の導電パス(即ち正極活物質と導電材との接触面積)が減少する。そのため、電池性能(例えばサイクル特性や出力特性等)が悪化する虞がある。α/βが上述した好ましい範囲にある場合、例えば、後述する実施例に記載の方法により行われるサイクル特性試験において、2000サイクル後の容量保持率を2倍以上向上させ得る。したがって、かかる態様によるとリチウム二次電池の性能(例えば、サイクル特性)を向上させることができる。
通常、正極活物質と、バインダとしての市販のPVdFと、導電材とを適当な分散媒体(例えば、N−メチル−2−ピロリドン等の有機溶剤)に分散させた正極合材スラリーを集電体に塗布し、一般的な条件(例えば80℃〜120℃)で乾燥させ形成された正極合材層では、PVdFのα/βは0.59程度となり、ここに開示される好ましい範囲とはならない(後述する比較例1)。PVdFのα/βがここに開示される好ましい数値範囲にある正極合材層を得る方法として、ここで開示された正極の作製方法(即ち、上述した熱処理工程)を採用することが挙げられる。
ここで開示される技術の好ましい一態様において、上記正極合材層を構成するポリフッ化ビニリデン(PVdF)は、該PVdFの結晶が、示差走査熱量測定(DSC)に基づく融解開始温度が140℃以上(好ましくは144℃以上)、155℃以下(好ましくは153℃以下)であることによって特徴づけられる。融解開始温度がかかる領域より低い(即ち、PVdFの結晶サイズが小さい)と、電池使用環境の僅かな温度変化等により、PVdFが電解質への膨潤ないし溶解を生じる虞がある。また融解開始温度の値が高すぎると、充放電に伴う電極合材層の膨張および収縮に追従することができない虞がある。融解開始温度が上述した好ましい範囲にある場合、例えば、後述する実施例に記載の方法により行われるサイクル特性試験において、2000サイクル後の容量保持率を2倍以上向上させ得る。したがって、かかる態様によるとリチウム二次電池の性能(例えば、サイクル特性)を向上させることができる。
なお、上記融解開始温度は少なくとも50℃から200℃(例えば25℃から250℃)まで10℃/分の速度で昇温するDSC測定により把握することができる。より具体的には、例えば、後述する実施例に記載の方法により行われるDSC測定によって求めることができる。上記融解開始温度は、ここで開示された正極の作製方法(即ち、上述した熱処理工程)により調節することができる。ここに開示される技術の典型的な態様では、正極合材層の熱処理温度と、該正極合材層におけるPVdFの融解開始温度とは概ね同程度である。
ここで開示されるリチウム二次電池において、正極を後述する電解質に30日間浸漬した後のバネ定数を、浸漬前のバネ定数で除した値(バネ定数比)が、0.8以上1.0未満であることが好ましい。上記バネ定数比を満たす(即ち、バネ定数が良好に維持されている)正極は、伸縮性に優れ充放電に伴う正極合材層の膨張および収縮に好適に追従することができる。また長期にわたって該正極合材層の形状を保持することができるため、かかる正極を備えたリチウム二次電池では性能(例えば、サイクル特性や出力密度)を向上させることができる。
ここで、バネ定数とは電極に荷重を加えたときの荷重Pを、変位Xで除した比例定数である。より具体的には、の扁平面に荷重P(kgf:1kgf=約9.8N)を加えて圧縮させたときの変位Xを読み取り、下記の式(5)より算出する。
バネ定数k(kgf/mm)=P(kgf)/X(mm) (5)
バネ定数の測定は、例えば図13に示す圧縮試験機を用いて行うことができる。まず、正極合材層を備えた電極(正極シート)10を任意の枚数、用意する。該電極の扁平な面10A(即ち、正極シートに形成された正極合材層と水平になるように)の両側に一対の平板90を当接する。そして、一対の平板90で電極(正極シート)10を両面方向から挟み込み、電極(正極シート)10の扁平な面10Aに荷重を加え、圧縮(典型的には弾性変形)する。
上記の手法により、正極シートを電解液に浸漬する前のバネ定数kbと、浸漬した後のバネ定数kaを算出する。かかるバネ定数を用いて下記の式(6)より、バネ定数の比を求める。
kb/ka (6)
より具体的には、例えば、後述する実施例に記載の方法により求めることができる。
ここで開示されるリチウム二次電池の負極には、正極と同様、粒状負極活物質をバインダ等とともに負極合材として負極集電体上に付着させて負極合材層(負極活物質層ともいう。)を形成した形態のものを用いる。
ここで負極集電体の素材としては、銅、ニッケル、チタン、ステンレス鋼等が挙げられる。なお、形態は特に限定されず、棒状体、板状体、箔状体、網状体等を用いることができる。後述する捲回電極体を備えた電池では、銅または銅を主成分とする合金(銅合金)製の箔状体が用いられる。箔状集電体の厚みは特に限定されないが、電池の容量密度と集電体の強度との兼ね合いから、5μm〜200μm(より好ましくは10μm〜50μm)程度を好ましく用いることができる。
ここで用いられる負極活物質には、従来からリチウム二次電池に用いられる物質の一種または二種以上を特に限定することなく使用することができる。例えば、非晶質炭素(カーボン粉末)、チタン酸リチウム(LTO)等の酸化物、スズ(Sn)やケイ素(Si)とリチウムの合金等が挙げられる。非晶質炭素としては、少なくとも一部にグラファイト構造(層状構造)を含む、黒鉛質(グラファイト)、難黒鉛化炭素質(ハードカーボン)、易黒鉛化炭素質(ソフトカーボン)、またはこれらを組み合わせたもの等を用いることができる。
ここで用いられるバインダとしては、リチウム二次電池を製造する際に通常用いられる各種のポリマー材料の一種または二種以上を特に限定することなく使用することができる。例えば、水系の液状スラリーを用いて負極合材層を形成する場合には、水に溶解または分散するポリマー材料を好ましく採用し得る。かかるポリマー材料としては、セルロース系ポリマー、フッ素系樹脂、酢酸ビニル共重合体、ゴム類等が例示される。より具体的には、カルボキシメチルセルロース(CMC)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)、スチレンブタジエンゴム(SBR)、アクリル酸変性SBR樹脂(SBR系ラテックス)等が挙げられる。あるいは、溶剤系の液状スラリー(分散媒体の主成分が有機溶媒である溶剤系組成物)を用いて負極合剤層を形成する場合には、PVdF、ポリ塩化ビニリデン(PVdC)、ポリエチレンオキサイド(PEO)等の有機溶剤に分散または溶解するポリマー材料を好ましく用いることができる。その他、増粘剤として機能し得る各種のポリマー材料(例えばカルボキシメチルセルロース(CMC))や導電材などを加えてもよい。また、特に限定するものではないが、負極活物質100質量%に対するバインダの使用量は、例えば1〜10質量%(好ましくは2〜5質量%)とすることができる。
そして、上記粒状負極活物質および必要に応じて導電材等を含む粉末状材料を適当なバインダとともに適当な分散媒体(例えばN−メチルピロリドン(NMP)のような有機溶媒或いは水のような水性溶媒)に分散させて混練することによって、スラリー状(ペースト状、インク状のものを包含する。)の組成物(以下、「負極合材スラリー」という。)を調製する。この負極合材スラリーを負極集電体上の片面または両面に適当量塗布し、乾燥させる方法を好ましく採用することができる。この乾燥は、必要に応じて加熱下で行うことができる。
負極合材スラリーの乾燥後、適宜プレス処理(例えば、ロールプレス法、平板プレス法等の従来公知の各種プレス方法を採用することができる。)を施すことによって、負極合材層の厚みや密度を調整することができる。
上記正極および負極を積層した電極体を作製し、電解液とともに適当な電池ケースに収容してリチウム二次電池が構築される。なお、ここに開示されるリチウム二次電池の代表的な構成では、正極と負極との間にセパレータが介在される。
電池ケースとしては、従来のリチウム二次電池に用いられる材料や形状を用いることができる。材質としては、例えばアルミニウム、スチール等の比較的軽量な金属材料や、PPS、ポリイミド樹脂等の樹脂材料が挙げられる。形状(容器の外形)としては特に限定されず、例えば、円筒型、角型、直方体型、コイン型、袋体型等の形状であり得る。また該ケースに電流遮断機構(電池の過充電時に、内圧の上昇に応じて電流を遮断し得る機構)などの安全機構を設けてもよい。
ここで用いられる電解液には、従来のリチウム二次電池に用いられる非水電解液と同様の一種または二種以上のものを特に限定なく使用することができる。かかる非水電解液は、典型的には、適当な非水溶媒に電解質(リチウム塩)を含有させた組成を有する。
該非水溶媒としては、カーボネート類、エステル類、エーテル類、ニトリル類、スルホン類、ラクトン類等の非プロトン性溶媒を用いることができる。例えば、エチレンカーボネート(EC)、プロピレンカーボネート(PC)、ジエチルカーボネート(DEC)、ジメチルカーボネート(DMC)、エチルメチルカーボネート(EMC)、1,2−ジメトキシエタン、1,2−ジエトキシエタン、テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン、ジオキサン、1,3−ジオキソラン、ジエチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、アセトニトリル、プロピオニトリル、ニトロメタン、N,N−ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、スルホラン、γ−ブチロラクトン等が挙げられる。なかでもカーボネート類を主体とする非水溶媒が好ましく用いられる。例えば、非水溶媒として一種または二種以上のカーボネート類を含み、それらカーボネート類の合計体積が非水溶媒全体の体積の60体積%以上(より好ましくは75体積%以上、さらに好ましくは90体積%以上であり、実質的に100体積%であってもよい。)を占める非水電解液を好ましく用いられる。また、かかる液状電解液にポリマーが添加された固体状(ゲル状)の電解液であってもよい。また、各種添加剤(例えば、過充電防止剤(過充電状態において分解され大量のガスを発生させるような化合物))を適宜添加してもよい。
該電解質としては、例えばLiPF、LiBF、LiClO、LiN(SOCF、LiN(SO、LiCFSO、LiCSO、LiC(SOCF、LiClO等が例示される。なかでもLiPFが好ましく用いられる。電解質の濃度は特に制限されないが、電解質の濃度が低すぎると電解液に含まれるリチウムイオンの量が不足し、イオン伝導性が低下する傾向がある。また支持電解質の濃度が高すぎると非水電解液の粘度が高くなりすぎて、イオン伝導性が低下する傾向がある。このため、電解質を凡そ0.1mol/L〜5mol/L(好ましくは、凡そ0.8mol/L〜1.5mol/L)程度の濃度で含有する非水電解液が好ましく用いられる。
ここで用いられるセパレータとしては、従来からリチウム二次電池に用いられるものと同様の各種多孔質シートを用いることができる。例えば、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリエステル、セルロース、ポリアミド等の樹脂から成る多孔質樹脂シート(フィルム、不織布等)が挙げられる。かかる多孔質樹脂シートは、単層構造であってもよく、二層以上の複数構造(例えば、PE層の両面にPP層が積層された三層構造)であってもよい。特に限定されるものではないが、セパレータ基材として用いられる好ましい多孔質シート(典型的には多孔質樹脂シート)の性状として、平均孔径が0.001μm〜30μm程度であり、厚みが5μm〜100μm(より好ましくは10μm〜30μm)程度である多孔質樹脂シートが例示される。該多孔質シートの気孔率(空隙率)は、例えば凡そ20体積%〜90体積%(好ましくは30体積%〜80体積%)程度であり得る。なお、固体状の電解液を用いたリチウム二次電池(リチウムポリマー電池)では、上記電解質がセパレータを兼ねる構成としてもよい。
特に限定することを意図したものではないが、本発明の一実施形態に係るリチウム二次電池の概略構成として、扁平に捲回された電極体(捲回電極体)と、非水電解液とを扁平な箱型(直方体形状)の容器に収容した形態のリチウム二次電池(単電池)を例とし、図2、3にその概略構成を示す。また本発明の一実施形態に係る単電池を接続して配列した構成の組電池を例とし、図1にその概略構成図を示す。以下の図面において、同じ作用を奏する部材・部位には同じ符号を付し、重複する説明は省略または簡略化することがある。各図における寸法関係(長さ、幅、厚さ等)は、実際の寸法関係を反映するものではない。
図1は、組電池200を示している。この組電池200を構成するリチウム二次電池(単電池)100を図2に示している。このリチウム二次電池100は、捲回電極体80と電池ケース50とを備えている。また、図3は捲回電極体80を示す図である。
本発明の一実施形態に係るリチウム二次電池100を単電池とし、該単電池を複数備えてなる組電池(典型的には、複数の単電池が直列に接続されてなる組電池)の一例を図1に示す。この組電池200は、複数個(典型的には10個以上、好ましくは10〜30個程度、例えば20個)のリチウム二次電池(単電池)100を、それぞれの正極端子70および負極端子72が交互に配置されるように一つずつ反転させつつ、電池ケース50の幅広な面が対向する方向(積層方向)に配列されている。当該配列された単電池100の間には、所定形状の冷却板110が挟み込まれている。この冷却板110は、使用時に各単電池100内で発生する熱を効率よく放散させるための放熱部材として機能するものであって、好ましくは単電池100の間に冷却用流体(典型的には空気)を導入可能な形状(例えば、長方形状の冷却板の一辺から垂直に延びて対向する辺に至る複数の平行な溝が表面に設けられた形状)を有する。熱伝導性の良い金属製もしくは軽量で硬質なポリプロピレンその他の合成樹脂製の冷却板が好適である。
上記配列させた単電池100および冷却板110の両端には、一対のエンドプレート(拘束板)120が配置されている。また、上記冷却板110とエンドプレート120との間には、長さ調整手段としてのシート状スペーサ部材150を一枚又は複数枚挟み込んでいてもよい。上記配列された単電池100、冷却板110およびスペーサ部材150は、両エンドプレートの間を架橋するように取り付けられた締め付け用の拘束バンド130によって、該積層方向に所定の拘束圧が加わるように拘束されている。より詳しくは、拘束バンド130の端部をビス155によりエンドプレート120に締付且つ固定することによって、上記単電池等は、その配列方向に所定の拘束圧が加わるように拘束されている。これにより、各単電池100の電池ケース50の内部に収容されている捲回電極体80にも拘束圧がかかる。
そして、隣接する単電池100間において、一方の正極端子70と他方の負極端子72とが、接続部材(バスバー)140によって電気的に接続されている。このように各単電池100を直列に接続することにより、所望する電圧の組電池200が構築されている。
図2に示すように、本発明の一実施形態に係るリチウム二次電池100は、長尺状の正極シート10と長尺状の負極シート20が長尺状のセパレータ40Aおよび40Bを介して扁平に捲回された形態の電極体(捲回電極体)80が、図示しない非水電解液とともに、扁平な箱型(直方体形状)の電池ケース50に収容された構成を有する。
電池ケース50は、上端が開放された扁平な直方体状のケース本体52と、その開口部を塞ぐ蓋体54とを備える。電池ケース50の上面(即ち、蓋体54)には、捲回電極体80の正極10と電気的に接続する正極端子70および該電極体80の負極20と電気的に接続する負極端子72が設けられている。
図3は、捲回電極体80を組み立てる前段階における長尺状のシート構造(電極シート)を示す図である。長尺状の正極集電体12の片面または両面(典型的には両面)に長手方向に沿って正極合材層14が形成された正極シート10と、長尺状の負極集電体22の片面または両面(典型的には両面)に長手方向に沿って負極合材層24が形成された負極シート20とを、二枚の長尺状セパレータ40Aおよび40Bとともに重ね合わせて長尺方向に捲回し、捲回電極体を作製する。かかる捲回電極体を側面方向から押しつぶして拉げさせることによって扁平形状の捲回電極体80が得られる。
正極シート10は、その長手方向に沿う一方の端部において、正極合材層14が設けられておらず(あるいは除去されて)、正極集電体12が露出するよう形成されている。同様に、捲回される負極シート20は、その長手方向に沿う一方の端部において、負極活物質層24が設けられておらず(あるいは除去されて)、負極集電体22が露出するように形成されている。そして、正極集電体12の該露出端部に正極集電板74(図2)が、負極集電体22の該露出端部には負極集電板76(図2)がそれぞれ付設されており、上記正極端子70および負極端子72とそれぞれ電気的に接続される。
ここで開示されるリチウム二次電池は、各種用途に利用可能であるが、高出力密度かつ高エネルギー密度であって、良好なサイクル特性を備えることを特徴とする。このため、例えば図4に示すように、自動車等の車両1に搭載されるモーター用の動力源(駆動電源)としてここで開示されるリチウム二次電池100が好適に使用され得る。車両1の種類は特に限定されないが、典型的には、プラグインハイブリッド自動車(PHV)、ハイブリッド自動車(HV)、電気自動車(EV)、燃料電池自動車(FCV)が挙げられる。また、かかるリチウム二次電池100は、単独で使用(即ち、単電池)されてもよく、直列および/または並列に複数接続されてなる組電池の形態で使用されてもよい。
以下、本発明に関するいくつかの実施例を説明するが、本発明をかかる具体例に示すものに限定することを意図したものではない。
[リチウム二次電池の構築]
<実施例1>
正極活物質粉末としてのLiNi1/3Co1/3Mn1/3(NCM)粉末と、導電材としてのアセチレンブラック(AB)と、バインダとしてのポリフッ化ビニリデン(PVdF)とを、これら材料の質量比率が93:4:3となるよう混合し、且つNVが凡そ60質量%となるようN−メチルピロリドン(NMP)で希釈し、正極合材層形成用のスラリー状の組成物(正極合材スラリー)を調製した。なお、PVdFとしては、株式会社クレハ製の商品名「KFポリマー#7305」を使用した。この正極合材スラリーを、厚み凡そ15μmの長尺状アルミニウム箔(正極集電体)の両面に片面当たりの目付量(固形分換算の塗布量、すなわち正極合材層の乾燥質量)が3.0g/cmとなるように塗布し、得られた正極を80℃の熱風で約5分間乾燥して正極合材層を形成した。次いで、正極合材層の密度が2.55g/cmとなるよう、この正極シートをプレスし、張力0.4N/mmでロール状に巻き取った。そして145℃のオーブンに入れ窒素雰囲気下で3時間熱処理を行うことで、正極シート(実施例1)を作製した。
次に、負極活物質としての天然黒鉛(粉末)とスチレンブタジエンゴム(SBR)と、カルボキシメチルセルロース(CMC)とを、これら材料の質量比が98:1:1であり、且つNVが45質量%となるようにイオン交換水と混合して、水系の負極合材層形成用スラリー状スラリー(負極合材層用スラリー)を調製した。この負極合材層用スラリーを、厚み凡そ10μmの長尺状銅箔(負極集電体)の両面に片面当たりの目付量(固形分換算の塗布量、すなわち正極合材層の乾燥質量)が1.7g/cmとなるように塗布して負極合材層を形成した。得られた負極を80℃の熱風で約5分間乾燥し、合材層の密度が1.4g/cmとなるよう負極シートをプレスし、負極シートを作製した。
そして、上記で作製した正極シートと負極シートとを、2枚のセパレータ(ここでは多孔質ポリエチレンシート(PE)を用いた。)を介して重ね合わせて捲回し、電極体を作製した。かかる電極体を非水電解液(ここでは、エチレンカーボネート(EC)とジエチルカーボネート(DEC)とを3:7の体積比で含む混合溶媒に、電解質としてのLiPFを凡そ1mol/Lの濃度で溶解した電解液を用いた。)とともに円筒型の電池ケースに収容した。該電池ケースの開口部に蓋体を装着し、溶接して接合することにより18650型(径18mm、高さ65mm)のリチウム二次電池を構築した。
<実施例2>
正極合材スラリー混練時に、分散媒体としてNMPとキシレンを95質量%:5質量%の割合で混合したものを用いた点と、乾燥温度を115℃とした点以外は実施例1と同様にして正極シート(実施例2)を作製した。かかる正極シートを用い、実施例1と同様に18650型リチウム二次電池を構築した。
<比較例1>
正極合材層乾燥後に、巻取りおよび熱処理を行わなかった点以外は、実施例1と同様にして正極シート(比較例1)を作製した。かかる正極シートを用い、実施例1と同様に18650型リチウム二次電池を構築した。
<比較例2>
乾燥温度を115℃とした点と、熱処理を160℃のオーブンに入れ窒素雰囲気下で10時間行った点以外は実施例1と同様にして正極シート(比較例2)を作製した。かかる正極シートを用い、実施例1と同様に18650型リチウム二次電池を構築した。
<比較例3>
プレス後の正極合材層の密度が2.70g/cmとなるよう、正極シートをプレスした点以外は、比較例1と同様にして正極シート(比較例3)を作製した。かかる正極シートを用い、実施例1と同様に18650型リチウム二次電池を構築した。
下表1に、各正極シートの作製工程について、その概要を示す。
Figure 0005725362
[サイクル特性評価]
上記構築した各電池に対し、60℃の温度下において、2000サイクルのサイクル特性試験(耐久性試験)を行った。本例では、4Cの充電レートで4.1Vまで定電流定電圧で充電する(CC−CV充電)操作と、4Cの放電レートで3.0Vまで定電流定電圧で放電する(CC−CV放電)操作を2000回繰り返す充放電処理により評価を行った。サイクル特性の容量維持率(%)は、1サイクル目の放電容量に対する、2000サイクル目の放電容量の割合((2000サイクル後の容量/初期容量)×100(%))として算出した。
[出力特性評価]
上記構築した各電池に対し、25℃の温度下において、出力特性評価を行った。まず、満充電状態(SOC100%)の各電池について、1Cの放電レートで3.0Vまで放電を行った。その後、1Cの定電流にて電池のSOCが30%になるまで充電し、2時間定電圧充電を行い、SOCを調整した。そして、上記SOCを30%に調整した電池について、20Cの放電レートで放電した10秒後の電圧降下からIV抵抗を求め、出力に換算した。
各電池のサイクル特性の評価結果を図5および図6に、出力特性の評価結果を図7に示す。なお、図7では実施例1の出力特性を基準(100)としたときの各電池の出力特性の相対値(%)を示す。
図6より、熱処理を施さなかった比較例1および、熱処理温度が高かった(および/または熱処理時間が長すぎた)比較例2では2000サイクルの充放電で容量の著しい低下がみられた。本例でみられた容量維持率の低下は、正極活物質が充放電に伴って膨張収縮を繰り返したために、正極合材層内の導電パス(即ち、正極活物質と導電材との接触面積)が減少したためと考えられる。かかる導電パスの減少に対して、従来は正極合材層を高密度化することにより対処可能であった。
しかし、図7に示す通り正極合材層を高密度化した比較例3ではSOC30%における出力特性が大きく低下していた。これは正極合材層内の空隙率が少ないために、該正極合材層内でリチウムイオンの律速拡散が生じたためと考えられる。よって、低いSOC領域における出力特性を要求されるリチウム二次電池については、従来の手段(即ち、正極合材層を高密度化)によってサイクル特性を向上させることは困難である。そこで、本発明者らは正極合材層の空隙率を変化させずに後述するバネ定数比を高めることで、サイクル特性の向上及び低いSOC領域における出力特性の向上を試みた。
[バネ定数の測定]
実際の電池の使用状態をより再現するため、上記作製した正極シートを、セパレータを介して積層し電解液とともにラミネートセルに収容して、正極シートのみを備えたバネ定数測定用セルを各6個ずつ別途、構築した。そして上記構築したセルを60℃の環境下で保存した後、解体し正極シート取り出した。保存した期間は0日間〜60日の間で、保存日数を変えて6点サンプリングを行った。かかる正極シートを60℃で乾燥し、バネ定数測定用のサンプルとした。バネ定数の測定は、上述した図13に示した方法を用い、以下の条件で測定した。
サンプル:上記得られた各正極シートを10枚重ね合わせた
測定装置:「AG−10kN」(株式会社島津製作所製)
最大荷重:最大2000kgf
負荷速度:0.1mm/sec
用いた荷重(kgf)と、それに伴うサンプルの変位(mm)をプロットし、荷重が1000kgf〜2000kgfの時の直線の傾きから、バネ定数を求めた。また図8〜10におけるバネ定数比は、電解液に浸漬する前のバネ定数に対する、電解液に浸漬した後のバネ定数の比(電解液に浸漬した後のバネ定数/電解液に浸漬する前のバネ定数)として算出した。
電解液への浸漬に伴う、正極シートのバネ定数比の変化を図8に示す。かかる浸漬日数が増すにつれ、バネ定数は徐々に低下した。これは正極合材層中のPVdFが一部、電解液で膨潤および/または溶解するためと考えらえる。とりわけ熱処理温度が高かった(および/または熱処理時間が長すぎた)比較例2ではかかる傾向が激しかった。
また、電解液に30日浸漬した後のバネ定数比と上記サイクル特性評価および出力特性評価の関係を図9および図10に示す。図9より、30日浸漬後のバネ定数比を0.8以上1.0未満に保つことで、かかるリチウム二次電池の2000サイクル後の容量保持率を70%以上とし得ることがわかった。また図10より、バネ定数比を0.8以上0.9以下とすることで、上記良好なサイクル特性に加え、SOCが低い領域(本例ではSOCが30%)における良好な出力特性をも有するリチウム二次電池を得ることができた。
該バネ定数比は導電材および/またはPVdFの、量および/または質により変化するが、導電材の量や質を変えると性能への背反が大きいため、PVdFの質(具体的には、結晶のサイズおよび結晶形態)を変化させることで、かかるPVdFの膨潤および溶解を抑え、バネ定数比が高い値となるよう検討した。なお下記に示す通り、結晶形態についてはNMR測定おけるα晶とβ晶との質量比(α/β)で評価し、結晶のサイズについてはDSC測定における融解開始温度にて評価した。
[NMR測定]
上記作製した正極シート(実施例2、比較例1および2)から正極合材層(測定サンプル)を採取してサンプル管に充填し、以下の条件でNMR測定を行った。また、ここで開示する発明に好適な範囲を見極めるため、NMR測定用の追加サンプルを作製した。該追加サンプルは、上記正極シート(実施例2)の作製工程における熱処理温度のみを0℃〜145℃の範囲で適宜変更したもので、上記サンプルと併せ測定を行った。
測定装置:「Advance 400」(ブルカー(BRUKER)社製)
測定方法:シングルパルス法
観測核:19F−NMR
サンプル管:ジルコニア製固体NMRサンプル管
得られたNMRスペクトルから、上述した方法によりα晶とβ晶との質量比(α/β)を求めた。
[DSC測定]
上記作製した各正極シート(実施例1、比較例1および2)から正極合材層(測定サンプル)を採取して測定容器に密封し、以下の条件でDSC測定を行った。また、ここで開示する発明に好適な範囲を見極めるため、DSC測定用の追加サンプルを作製した。該追加サンプルは、上記正極シート(実施例1)の作製工程における熱処理温度のみを0℃〜160℃の範囲で適宜変更したもので、上記サンプルと併せ測定を行った。
サンプル量:約12mg
測定装置:「DSC8230」(株式会社リガク製)
測定温度域:25℃〜250℃
昇温速度:10℃/分
測定容器:アルミニウム製パン
得られたDSCチャートから、融解開始温度を読み取った。
NMR測定におけるα晶とβ晶との質量比(α/β)とバネ定数比の関係を図11に示す。なお、図11中のバネ定数比は、実施例2の電解液浸漬前のバネ定数を基準(100)としたときの各バネ定数の相対的な比を示す。熱処理を行っていない比較例1は、α/βの値が0.59と大きな値となった。一方、上記良好な電池性能を示した実施例2はα/βの値が0.42を示し、またα/βの値が0.42〜0.56の場合にバネ定数比が0.8以上の高い値を示した。この理由としては、120℃〜155℃で熱処理を行ったことによって、PVdFの結晶形態が変化した(即ち、α晶が減少および/またはβ晶が増加した)ことが考えられる。また熱処理温度が高かった(および/または熱処理時間が長すぎた)比較例2では、α/βの値が0.36と低くなっていた。上述の結果は、α/βの好適範囲を0.42以上0.56以下とすることの技術的意義を裏付けるものである。
DSC測定における融解開始温度とバネ定数比の関係を図12に示す。なお、図12中のバネ定数比は、実施例1の電解液浸漬前のバネ定数を基準(100)としたときの各バネ定数の相対的な比を示す。熱処理を行っていない比較例1は、融解開始温度が137℃と低い値だった。一方、上記良好な電池性能を示した実施例1は融解開始温度が148℃を示し、融解開始温度が144℃〜153℃の場合にバネ定数比が0.8以上の高い値を示した。この理由としては上記と同様と考えられる。また、熱処理温度が高かった(および/または熱処理時間が長すぎた)比較例2では、融解開始温度が158℃と高くなっていた。上述の結果は、融解開始温度の好適範囲を144℃〜153℃とすることの技術的意義を裏付けるものである。
上述の通り、PVdFの結晶形態(即ち、NMR測定におけるα晶/β晶)および結晶のサイズ(即ち、DSC測定における融解開始温度)を最適化することで、バネ定数を高めることができ、低いSOC領域における出力特性を確保しつつ、サイクル特性に優れたリチウム二次電池を提供し得ることが示された。
以上、本発明の具体例を詳細に説明したが、これらは例示にすぎず、請求の範囲を限定するものではない。請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。
1 自動車(車両)
10 正極シート(正極)
12 正極集電体
14 正極合材層
20 負極シート(負極)
22 負極集電体
24 負極合材層
40A、40B セパレータシート
50 電池ケース
52 ケース本体
54 蓋体
70 正極端子
72 負極端子
74 正極集電板
76 負極集電板
80 捲回電極体
90 平板
100 リチウム二次電池
110 冷却板
120 エンドプレート
130 拘束バンド
140 接続部材
150 スペーサ部材
155 ビス
200 組電池

Claims (10)

  1. 正極と負極を有する電極体と、液状の電解質とを備えたリチウム二次電池であって、
    前記正極は、正極集電体と、前記正極集電体上に形成された正極合材層と、を備えており、
    該正極合材層は、正極活物質と、バインダとしてのポリフッ化ビニリデンと、を含み、
    ここで、前記ポリフッ化ビニリデンの核磁気共鳴スペクトルに基づくα晶とβ晶との質量比(α/β)が0.42以上0.56以下であり、
    前記ポリフッ化ビニリデンの示差走査熱量測定に基づく融解開始温度が144℃以上153℃以下である、リチウム二次電池。
  2. 前記正極を前記電解質に30日間浸漬した後のバネ定数を、浸漬前のバネ定数で除した値が、0.8以上1.0未満である、請求項1に記載のリチウム二次電池。
  3. 前記正極合材層の空隙率が25%以上40%以下である、請求項1または2に記載のリチウム二次電池。
  4. 前記正極集電体は長尺状に形成され、該長尺状の正極集電体上に前記正極合材層が形成され、
    前記負極は前記長尺状の正極集電体に対応する長尺状の負極集電体上に、負極合材層が形成されて構成されており、
    該長尺状の正極と該長尺状の負極とが積層され捲回されて、捲回電極体を構成している、請求項1からのいずれか一項に記載のリチウム二次電池。
  5. 車両の駆動電源として用いられる、請求項1からのいずれか一項に記載のリチウム二次電池。
  6. 正極と負極を有する電極体と、液状の電解質とを備えたリチウム二次電池を製造する方法であって:
    正極合材層と、該正極合材層を保持する正極集電体と、を有する正極を作製する工程;および、
    前記正極を用いてリチウム二次電池を構築する工程;
    を包含し、
    ここで、前記正極を作製する工程は、前記正極合材層中に含まれるポリフッ化ビニリデンが次の条件:(1)核磁気共鳴スペクトルに基づくα晶とβ晶との質量比(α/β)が0.42以上0.56以下である;(2)示差走査熱量測定に基づく融解開始温度が144℃以上153℃以下である;を満たすように、以下の工程:
    正極活物質と、バインダとしてのポリフッ化ビニリデンと、を含むスラリー状の組成物を前記正極集電体上に付与し、前記正極合材層を形成すること;
    前記正極合材層を所定の膜厚になるようプレスすること;および
    前記プレスされた正極合材層を145℃以上158℃以下の温度で熱処理すること;
    を包含する、リチウム二次電池の製造方法。
  7. 前記正極を作製する工程は、前記電解質に前記正極を30日間浸漬した前後のバネ定数の比(浸漬後のバネ定数/浸漬前のバネ定数)が0.8以上1.0未満となるように行う、請求項に記載のリチウム二次電池の製造方法。
  8. 前記スラリー状の組成物には、分散媒体として、沸点の異なる2種類以上の有機溶剤を用いる、請求項またはに記載のリチウム二次電池の製造方法。
  9. 前記正極を作製する工程におけるプレスは、前記正極合材層の空隙率が25%以上40%以下となるように行う、請求項からのいずれか一項に記載のリチウム二次電池の製造方法。
  10. 前記電極体を作製する工程において、前記正極集電体として長尺状に形成された正極集電体を使用して正極を形成し、
    該形成した正極と対応する長尺状の負極とを積層し、捲回電極体を作製する、請求項からのいずれか一項に記載のリチウム二次電池の製造方法。
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