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JP5716483B2 - 1,3−ジフルオロアセトンの製造方法 - Google Patents

1,3−ジフルオロアセトンの製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、多環式化合物を触媒とする1,3−ジフルオロイソプロパノール(明細書において、「1,3−DFIP」ということがある。)の酸化による1,3−ジフルオロアセトン(明細書において、「1,3−DFA」ということがある。)の製造方法に関する。
1,3−ジフルオロアセトンは医農薬原料として有用な化合物である。1,3−ジフルオロアセトンは、1,3−ジフルオロイソプロパノールを酸化して製造することができ、KMnO/CuSO(非特許文献1)や、NaCr・2HO/HO,HSO(非特許文献2)による方法が知られている。
アルコールのケトン、アルデヒドなどへの酸化にこれらの重金属を使用する方法は環境への影響が懸念され、最近、触媒として2,2,6,6−テトラメチルピペリジン N−オキシル (明細書において、「TEMPO」ということがある。)(非特許文献3)や、2−アザアダマンタン N−オキシル (明細書において、「AZADO」ということがある。)または1−メチル−AZADO(明細書において、「1−methyl−AZADO」ということがある。)などのヘテロ環式化合物を用いる酸化が提案されている。
特許文献1、2には、AZADOまたは1−Me−AZADOなどのヘテロ環多環式化合物を触媒として、アルコール類を酸化する方法が記載されているが、1,3−DFIPなどの含フッ素イソプロパノールの酸化に関する記述はない。
国際公開第2006/001387号パンフレット 国際公開第2009/145323号パンフレット
Synthesis(1994)(7),701−2 Journal of the Chemical Society, Perkin Transactions 1: Organic and Bio−Organic Chemistry(1995),(7),889−93 J. Org. Chem. Vol.52, No.12, 1987, p.2559−2562
前記のTEMPOを触媒として用いる方法(特開平9−169685)は、反応が十分には速くなく、触媒量を多く必要とする上に、満足しうる収量を得るには実質的に等モル以上のトリクロロイソシアヌル酸を必要とする。
そこで、選択率のよい、効率的のよい1,3−DFAの製造方法を提供する。
本発明者らは上記課題を解決すべく鋭意検討したところ、分子構造理論からはイソプロパノールのメチル基の水素原子をフッ素原子で置き換えると、HOMO−LUMOのエネルギーレベルが低下するので酸化しにくくなると予想されたが、1,3−DFIPをAZADO触媒上で酸化すると、簡便かつ効率的に、1,3−DFAを合成できることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は次の通りである。
[発明1]下記式(1)
Figure 0005716483
(式中、Rは互いに同一でも異なっていてもよい電子供与基を表し、N−OはN−O・を表すか、N−OHを表すか、またはN(=O)Xを表し、XはF、Cl、Br、I、ClO 、ClO 、IO 、NO 、NO 、SO 2−、BF 、PF 、SbCl 、SbF 、XeF 、(CFSO、CHCO 、CFCO 、4−CHSOまたはCFSOを表す。)で表される多環式化合物の存在下、1,3−ジフルオロイソプロパノールを酸化剤で酸化する工程を含む1,3−ジフルオロアセトンの製造方法。
[発明2]多環式化合物が、2−アザアダマンタン N−オキシルまたは1−メチル−2−アザアダマンタン N−オキシルである発明1の1,3−ジフルオロアセトンの製造方法。
[発明3]前記酸化剤が、トリクロロイソシアヌル酸、N−クロロスクシンイミド、トリクロロメラミン、ヘキサクロロメラミン、次亜塩素酸またはその塩、および過硫酸カリウムまたはその複塩から選ばれた1種以上の化合物である発明1または2の1,3−ジフルオロアセトンの製造方法。
[発明4]前記酸化剤が、トリクロロイソシアヌル酸である発明1〜3の何れかの1,3−ジフルオロアセトンの製造方法。
本発明によれば、有毒な重金属酸化物を必要とせずに、穏和な条件において効率よく酸化し、1,3−ジフルオロアセトンをほぼ選択的に高収率で製造することができる。
本発明では、多環式化合物を触媒として、1,3−DFIPを酸化剤で酸化して1,3−DFAとすることができる。
式(1)で表される化合物は、詳細には次の通りである。
Figure 0005716483
(式中、Rは互いに同一でも異なっていてもよい電子供与基を表し、N−OはN−O・を表すか、N−OHを表すか、またはN(=O)Xを表し、Xは一価のアニオンを表す。電子供与基としては、水素原子、フッ素原子、ヒドロキシ基、アルキル基(「R」と表すことがある。)、アルコキシ基などが挙げられる。XはF、Cl、Br、I、ClO 、ClO 、IO 、NO 、NO 、SO 2−、BF 、PF 、SbCl 、SbF 、XeF 、(CFSO、CHCO 、CFCO 、4−CHSOまたはCFSOを表す。)で表される多環式化合物。
アルキル基は、直鎖状、分岐状または環状のアルキル基をいい、例えばメチル基、エチル基、n-プロピル基、i-プロピル基、n-ブチル基、i-ブチル基、s-ブチル基、t-ブチル基、n-ペンチル基、1-メチルブチル基、2-メチルブチル基、3-メチルブチル基、1-エチルプロピル基、1,1−ジメチルプロピル基、1,2−ジメチルプロピル基、2,2−ジメチルプロピル基、n−ヘキシル基、1−メチルペンチル基、2−メチルペンチル基、1,1−ジメチルブチル基、1,3−ジメチルブチル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基等が具体例として挙げられ、これらのうち炭素数1〜3であるのが好ましく、メチル基であるのがより好ましい。また、環状のアルキル基としては、3員環から6員環までの単環または複合環構造を形成することができる。また、環はアルキル基によって任意に置換されていてもよい。例えば置換基としてシクロプロピル基、1−メチルシクロプロピル基、2−メチルシクロプロピル基、2,2−ジメチルシクロプロピル基、2,2,3,3−テトラメチルシクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、2−メチルシクロペンチル基、3−メチルシクロペンチル基、シクロヘキシル基、2−メチルシクロヘキシル基、3−メチルシクロヘキシル基、4−メチルシクロヘキシル基、ビシクロ[2.2.1]ヘプタン−2−イル基等が具体例として挙げられ、これらのうち、シクロペンチル環、シクロへキシル環またはノルボルネン環を有するものが好ましい。
アルコキシ基は、前記アルキル基(R)を用いてROで表される。好ましいアルコキシ基としては、メトキシ基が挙げられる。
特に好ましい多環式化合物としては、2−アザアダマンタン N−オキシル(AZADO)または1−メチル−2−アザアダマンタン N−オキシル(1−メチル−2−AZADO)が挙げられる。
これらの多環式化合物の製造方法は、国際公開第2009/145323号パンフレット等に記載され、例えば、1−Me−AZADOは、国際公開第2006/001387号パンフレット記載の方法で製造することができる。また、AZADO、1−Me−AZADO、1,3−ジメチル−AZADOなどは市販品を入手することもできる。
酸化剤としては、トリクロロイソシアヌル酸、N−クロロスクシンイミド、トリクロロメラミン、ヘキサクロロメラミン、次亜塩素酸またはその塩、過硫酸カリウムまたはその複塩(オキソン(Oxone)デュポン社)、ジクロロジエメチルヒダントイン、または塩素などが挙げられる。これらのうち、トリクロロイソシアヌル酸、ジクロロジエメチルヒダントインが好ましい。
1,3−ジフルオロイソプロパノールは、公知の方法で製造したものが使用でき、例えば、クラウンエーテル溶媒中で、エピクロロヒドリンとKF・HFとを反応させて容易に合成可能である。
本発明の方法は、溶媒の存在下または不存在下で行うが、溶媒の存在下で行うことが好ましい。出発原料である1,3−DFIPまたは目的化合物である1,3−DFAを溶媒として使用することもできる。溶媒は有機溶媒単独、水単独、水と有機の混合系でもよいが、1,3−DFAと溶媒との分離が容易であるので有機溶媒が好ましい。
溶媒としては、原料、触媒の適度な溶解度、生成物との分離性、酸化反応に対する安定性等があれば使用できる。水、セロソルブ類(例えばメトキシエタノール、エトキシエタノール等)、非プロトン性極性有機溶媒類(例えばジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、ジメチルアセトアミド、テトラメチルウレア、スルホラン、N−メチルピロリドン、N,N-ジメチルイミダゾリジノン等)、エーテル類(例えばジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、t−ブチルメチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン等)、脂肪族炭化水素類(例えばペンタン、ヘキサン、c−ヘキサン、オクタン、デカン、デカリン、石油エーテル等)、芳香族炭化水素類(ベンゼン、クロロベンゼン、o−ジクロロベンゼン、ニトロベンゼン、トルエン、キシレン、メシチレン、テトラリン等)、ハロゲン化炭化水素類(例えばクロロホルム、ジクロロメタン、ジクロロエタン、四塩化炭素等)、フッ素系溶媒(例えばトリフルオロメチルベンゼンまたは(o−、m−またはp−)ビストリフルオロベンゼン等)、低級脂肪族酸エステル(例えば酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、プロピオン酸メチル等)、アルコキシアルカン類(例えばジメトキシエタン、ジエトキシエタン等)及びニトリル類(例えばアセトニトリル、プロピオニトリル、ブチロニトリル等)、カルボン酸(例えば酢酸等)等の溶媒が挙げられる。これらの内で、脂肪族炭化水素類(例えばペンタン、ヘキサン、c−ヘキサン等)、芳香族炭化水素類(トルエン、キシレン、メシチレン、等)、ハロゲン化炭化水素類(例えばクロロホルム、ジクロロメタン、ジクロロエタン等)、フッ素系溶媒(例えばトリフルオロメチルベンゼンまたは(o−、m−またはp−)ビストリフルオロベンゼン等)が好ましい。また、その中でも、ジクロロメタンが好ましい。さらに、原料である1,3−DFIP、生成物である1,3−DFAを使用することもできる。
出発原料である1,3−DFIPの溶媒中の濃度は、1,3−DFIPを溶媒として用いる場合以外は、好ましくは1〜99質量%であり、5〜50質量%がより好ましい。
本発明の製造方法において、pH調整剤を添加することもできる。pH調整剤としては、特に限定されないが、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、リン酸水素ナトリウム、リン酸二水素ナトリウム、リン酸水素カリウム、リン酸二水素カリウム、炭酸カリウム、炭酸ナトリウムなどがあげられる。反応液は酸性から弱アルカリ性にpH制御することが好ましい。強アルカリ条件とするのは、二量体が生成し、または、分子内脱HF反応が生じてモノフルオロ化合物が副生する虞があるので好ましくない。
反応温度は、−50℃〜+100℃であり、−50℃〜+50℃が好ましく、0℃から20℃がより好ましい。−50℃未満では反応が遅くなることがあり、+100℃以上では、反応制御が困難となり、または副反応がおこることがあり好ましくない。反応は、常圧(大気圧)で行えるが、必要に応じて、0.001〜10MPaでも実施できる。通常は、室温で、常圧が行なうのが好ましい。
反応時間は反応条件により必ずしも一定しないが、通常1分〜100時間であり、好ましくは5分〜24時間である。
本発明の製造方法では、反応試剤、副資材の添加の方法は特に限られず、非常に小さなスケールの場合、1,3−DFIP、酸化剤、触媒、溶媒等を同時に仕込んで反応することも可能であるが、反応の進行に応じて、逐次的または連続的に酸化剤を添加することは反応のコントロールができ、安全であるので好ましい。
反応の進行はガスクロマトグラフ、H−NMRまたは19F−NMRで出発原料の消費または生成物の増加を監視して知ることができる。反応の完了後、反応器内の反応混合物から1,3−DFAを取り出すには、一般的な有機化学の手法を用いればよく、溶媒の留去、抽出、蒸留、濾過、デカント、カラムクロマトグラフィー等の通常の精製操作により、単離することができる。
例えば、次の様な蒸留により行うことができる。反応混合物をそのまま、または反応混合物に水を添加したのち減圧条件下で蒸留する。添加する水の量に制限はない。減圧蒸留を行う際の圧力は、蒸留装置に依存するが3000〜70000Paで行える。蒸留時の1,3−DFA留分の留出温度(蒸留塔の塔頂温度)は前記圧力条件下では、90℃以下である。蒸留時の圧力を調節して留出温度を30〜75℃とすると、1,3−ジフルオロアセトンの分解が十分抑制され、かつ工業的な操作も容易となる。
留出物には1,3−ジフルオロアセトンの他に水を含むことがある。この水を除くためには、一般的な有機合成の精製の手法を用いればよく、特に限定されない。例えば固体の乾燥剤を添加して水分を乾燥剤に吸着させる。乾燥剤としては、無水塩化カルシウム、ゼオライト、無水硫化マグネシウムなど、汎用の乾燥剤を用いれば良い。また低沸点溶媒としては、ジエチルエーテル、ターシャリーブチルメチルエーテルなどのエーテル類を使用すると、溶媒留去を行い易く好ましい。
本発明の方法で用いる触媒(多環式化合物)の量は、1,3−DFIPに対して好ましくは0.01モル%〜50モル%、より好ましくは0.1モル%〜10モル%である。
本発明の方法で用いる酸化剤の量としては、1,3−DFIPに対して1モル%〜100モル%、好ましくは、1モル%〜50モル%である。
反応時間は反応条件により必ずしも一定しないが、通常1分〜100時間であり、好ましくは5分〜24時間である。
以下に、実施例を以て本発明を説明するが、本発明はこれらの実施態様に限られない。
[実施例1]
ドライアイスで冷却したコンデンサーと温度計を備えた300mL四つ口フラスコに、1,3−ジフルオロイソプロピルアルコール(1,3−DFIP)9.61g(0.1mol)、ジクロロメタン200mL、内部標準物質としてp−トリフルオロメチルベンゾトリフルオライド(PTF−TFM)7.16g(0.03mol)を加え、氷水浴に浸して攪拌、冷却した。AZADO 0.024g(0.16mol%)を加え均一溶解した時、19F−NMR測定したところ、1,3−DFIP/PTF−TFM比(モル比)が0.8481であった。その後2.5時間に亘り、トリクロロイソシアヌル酸(TCCA)17.61g(0.076mol)を1.80〜2.08gずつ9回に分けて添加した。TCCA添加終了後、室温で30分熟成したのち、ガスクロマトグラフ分析したところ、1,3−DFIPの変換率は99.3%であった。反応液を19F−NMR測定したところ、1,3−DFIPの変換率は99.1%であった。1,3−ジフルオロアセトン(1,3−DFA)/PTF−TFM比が0.8289で1,3−DFA収率が96.8%であった。モノフルオロアセトンは認められなかった。
19F−NMR(CDCl、標準物質CClF)]
1,3−DFIP −234.2ppm(2F、dt、JF−H=48.8Hz、JF−H=18.3Hz)、1,3−DFA −239.6ppm(2F、t、JF−H=45.8Hz)、PTF−TFM −63.6ppm (6F、s)
[比較例1]
コンデンサーを備えた、50mL二口フラスコに、1,3−DFIP0.48g(0.005mol)、ジクロロメタン20mL、2,2,6,6−テトラメチルピペリジン N−オキシル(TEMPO)0.008g(1mol%)、TCCA1.22g(0.0053mol)を添加し、室温下、6時間攪拌したのち、ガスクロマトグラフ分析したところ、1,3−DFAの収率は69%であった。
本発明の製造方法は、1,3−DFAの工業的製法に適用できる。

Claims (3)

  1. 2−アザアダマンタン N−オキシルの存在下、1,3−ジフルオロイソプロパノールをトリクロロイソシアヌル酸で酸化する工程を含む1,3−ジフルオロアセトンの製造方法。
  2. 2−アザアダマンタン N−オキシルの量が、1,3−ジフルオロイソプロパノールに対して0.01モル%〜50モル%である、請求項1に記載の製造方法。
  3. トリクロロイソシアヌル酸の量が、1,3−ジフルオロイソプロパノールに対して1モル%〜100モル%である、請求項1または2に記載の製造方法。
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