JP5780854B2 - 空気入りタイヤ - Google Patents
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このため、車両装着時の車両幅方向最内側に配置されるタイヤ周方向に延びるリブ状の陸部では、トラクションにより周方向溝近傍の摩耗が他の部分よりも促進され易く、所謂偏摩耗を生じ易い傾向にある。
また、空気入りタイヤでは、ウエット性能や氷上性能を改良するために、陸部にサイプを形成することが一般的に行われている。
空気入りタイヤでは、ブレーキやトラクションも必要であるが、コーナリング時の滑り抑制も必要であるため、ブレーキやトラクションに効くタイヤ幅方向のエッジ成分と、横力に効くタイヤ周方向のエッジ成分を有するタイヤ幅方向に対して傾斜した傾斜サイプを陸部に形成する。
さらに、摩擦係数の特に小さいウエット路面(凹凸の少ない平坦な路面等)でのウエット性能を向上させるには、エッジ効果が有効であり、陸部に形成するサイプの位置、及びサイプの延びる方向を最適化することで、偏摩耗を抑制しつつ、摩擦係数の特に小さいウエット路面でのウエット性能と比較的摩擦係数の大きいウエット路面でのウエット性能を確保可能なことが見出された。
請求項1の空気入りタイヤをネガティブキャンバーの車両に取り付けると、空気入りタイヤは、車両前方から見て、タイヤ上部が下部よりも車両内側となるように傾く。これにより、トレッドの接地圧はタイヤ赤道面よりも車両幅方向内側の領域の方が車両幅方向外側の領域よりも高くなり、また、接地長は、タイヤ赤道面よりも車両幅方向内側の方が車両幅方向外側よりも長くなる。
陸部において、鋭角部分は、他の部分(鋭角部分よりも角度が大の部分。例えば、直角部分や鈍角部分等。)よりも剛性が低くて変形し易いため、周方向溝に底上げ突起を設けて鋭角部分の補強を行うことで、鋭角部分の剛性が向上し、鋭角部分の変形を抑えることができる。鋭角部分の剛性を向上し変形を抑えることは、陸部の接地面積の確保、陸部の偏摩耗防止等に繋がり、好ましい形態である。
後に実施例、比較例を用いて説明するように、ローアングルサイプのタイヤ幅方向に対する角度が15°を超えると、偏摩耗を防止することが難しくなる。
また、ローアングルサイプの溝深さが周方向溝の溝深さの20%未難では、偏摩耗の防止の効果が小さくなり、ローアングルサイプの溝深さが周方向溝の溝深さの50%を超えると、ショルダーのブロック剛性が大幅に低下してしまい、コーナリング性能などが悪化する。
また、ハイアングルサイプの溝深さが周方向溝の溝深さの20%未難では、エッジ効果が小さくなり、ブレーキ性能が弱くなる。
ハイアングルサイプの溝深さが周方向溝の溝深さの80%を超えると、ショルダーのブロック剛性が大幅に低下してしまい、コーナリング性能などが悪化する。
雪上を走行した際には、周方向溝内に雪が詰まって周方向溝内に雪柱が形成される。ブレーキ時やトラクション時においては、この雪柱が周方向溝内で周方向にずれようとするが、雪柱が周方向溝内の底上げ突起に突き当たってずれが抑えられるので、雪上ブレーキ性能、及び雪上トラクション性能が向上する。なお、底上げ突起のトレッド平面視形状は等脚台形とされているので、雪柱の移動方向によって雪柱のずれ防止効果が異なる事は無い。
さらに、底上げ突起をこのような等脚台形とすることで、周方向溝内を流れる水の向きによって、抵抗が異なる事は無く、車両左側の空気入りタイヤと車両右側の空気入りタイヤを交換しても、排水性は変わらない。
よって、空気入りタイヤに回転方向の指定は必要としない。
次に、請求項4に記載の空気入りタイヤの作用を説明する。
鋭角部分は特に先端側の剛性が低い部分であるため、鋭角先端部に向けて傾斜する面取りを形成することで、特に剛性の低い部分が除去されることとなり、陸部の剛性を確保することが出来る。
ハイアングルサイプ、及びローアングルサイプを周方向溝に開口させることで、ウエット路面走行時にサイプ内の水を周方向溝へ排水でき、ウエット性能を向上させることができる。
図1には、空気入りタイヤ10のトレッド12が示されている。なお、トレッド12の接地端12Eは、空気入りタイヤ10をJATMA YEAR BOOK(日本自動車タイヤ協会規格、2009年度版)に規定されている標準リムに装着し、JATMA YEAR BOOKでの適用サイズ・プライレーティングにおける最大負荷能力(内圧−負荷能力対応表の太字荷重)に対応する空気圧(最大空気圧)の100%の内圧を充填し、最大負荷能力を負荷したときのものである。使用地又は製造地において、TRA規格、ETRTO規格が適用される場合は各々の規格に従う。
本実施形態の浅溝30Aは、タイヤ赤道面CLよりも第1周方向溝14側へ延びていると共に、後述する第2の副溝36の浅溝36Aと繋がっている。
なお、第2の副溝36は、タイヤ赤道面CL側の一部分が、タイヤ赤道面CLとは反対側よりも溝底の浅い浅溝36Aとなっており、浅溝36Aは、傾斜溝30の浅溝30Aと同じ溝深さとなっている。
また、傾斜陸部22に形成する各サイプは、傾斜陸部22が路面に接地した際に閉じる狭い溝幅であり、一例として0.3〜1.0mmの範囲内が好ましく、本実施形態では0.7mmに設定されている。
但し、第1の副溝34、及び第2の副溝36の何れも雪上走行時に溝内に雪を入り込ませる必要がある。
第1の副溝34は、溝深さ寸法を傾斜陸部22の高さ寸法の10〜40%の範囲内、溝幅を1.0〜5.0mmに範囲内とすることが好ましい。一方、第2の副溝36は、溝深さ寸法を傾斜陸部22の高さ寸法の40〜80%の範囲内、溝幅を1.0〜5.0mmに範囲内とすることが好ましい。
本実施形態の第1の副溝34は、最小溝幅が2mm、最大溝幅が5mmである。また、本実施形態の第2の副溝36は、最小溝幅が2mm、最大溝幅が6mmである。
第1突部46のトレッド平面視形状は、上底が溝側、下底が鋭角部側に配置される等脚台形であるが、他の形状であっても良い。第1突部46のタイヤ幅方向の寸法は、ウエット路面走行時の水の流れを考慮すると、第1周方向溝14の溝幅よりも小さいことが好ましい。
なお、傾斜陸部22の鋭角の角部24を更に補強するために、傾斜溝30は、第1周方向溝14側の一部分が、溝長手方向中間部分よりも溝底が浅い浅溝30Bとなっている。
鋭角部55には、吸音空洞部52に沿って第2の面取り55Bが形成されており、剛性の低い部分が除去されている。
なお、第2突部58は、鋭角な角部51のタイヤ車両装着時の車両幅方向外側に配置されているので、鋭角の角部51の第2周方向溝16側への変形を抑えるのに特に効果的である(因みに、鋭角な角部51のタイヤ車両装着時の車両幅方向内側は第2陸部50の中央側であるので、鋭角な角部51の車両幅方向内側への変形は第2陸部50の中央側の存在によって抑えられる。
また、ハイアングルサイプ64はエッジ効果を発生させることを主な目的としているため、必ずしもイン側ショルダー陸部60を完全に横断している必要は無く、断続的に設けても良い。その場合、5〜10mm程度の長さがあればよい。
一方、ローアングルサイプ59は、タイヤ幅方向に対する傾斜角度を15°以下とすることが好ましく、溝深さ2〜5mm、かつ第3周方向溝18の溝深さの20〜50%の範囲内とすることが好ましい。
ローアングルサイプ59は偏摩耗防止を主な目的としており、コーナリング力とのバランスを考えるとハイアングルサイプ64より浅く設定されていることが好ましい。
なお、角部61の先端には、鋭角先端部に向けて傾斜する面取り61Aが形成されて、剛性の低い部分が除去されている。
さらに、イン側ショルダー陸部60には、サイプ62よりもショルダー側に、サイプ65、67と交差すると共に、端部浅溝63と端部浅溝63とを連結するタイヤ周方向に延びるサイプ69が形成されている。
アウト側ショルダー陸部70には、隣り合う端部浅溝73の間に、端部浅溝73と平行に2本のサイプ75が形成されている。
アウト側ショルダー陸部70のタイヤ幅方向中間部には、サイプ75と交差すると共に、端部浅溝73と端部浅溝73とを連結するタイヤ周方向に延びるサイプ72,74が形成されている。
次に、本実施形態の空気入りタイヤ10の作用を説明する。
本実施形態の空気入りタイヤ10は、車両へ装着する際の向きが指定されており、図1に示すように、アウト側ショルダー陸部70が車両外側へ向くように装着する(OUTSIDE(外側)等のマーク(周知技術であるため図示せず)が付与されているタイヤサイド部を、車両外側に向くように装着する。)。
なお、上記エッジ成分は、氷上走行においても効果を発揮できることは勿論である。
この傾斜溝30は、第1周方向溝14に向けて溝幅が広くなるように形成されているので、第1周方向溝14へ向かっての排水性を高めることができる。
さらに、傾斜陸部22に形成した第1の副溝34、及び第2の副溝36は、全体的にタイヤ幅方向に延びてはいるが、タイヤ周方向に凸なるように湾曲して、タイヤ周方向に延びる溝成分を有しているため、タイヤ幅方向に直線状に延びるラグ溝対比で、タイヤ幅方向の雪柱剪断力を発生させることができ、これによっても雪上でのコーナリング性能を向上させることができる。
なお、本実施形態の段部40は断面形状が矩形であるが、段部40の断面形状は、三角形等、他の形状であっても良い。
なお、第1の副溝34、及び第2の副溝36の曲率半径及びタイヤ幅方向と成す仮想線の角度についても上記サイプと同様であり、規定を外れると雪上性能の向上が望めなくなる。
また、ローアングルサイプ59の溝深さが第3周方向溝18の溝深さの20%未難では、偏摩耗の防止の効果が小さくなり、ローアングルサイプ59の溝深さが第3周方向溝18の溝深さの50%を超えると、ショルダーのブロック剛性が大幅に低下してしまい、コーナリング性能などが悪化する。
また、ハイアングルサイプ64の溝深さが第3周方向溝18の溝深さの20%未難では、エッジ効果が小さくなり、ブレーキ性能が弱くなり、ハイアングルサイプ64の溝深さが第3周方向溝18の溝深さの80%を超えると、ショルダーのブロック剛性が大幅に低下してしまい、コーナリング性能などが悪化する。
上記実施形態では、ハイアングルサイプ64が右上がりに傾斜していたが、左上がりに傾斜していても良い。
上記実施形態のアウト側ショルダー陸部70には、第1周方向溝14側にタイヤ幅方向に延びるサイプとして、サイプ75、及びサイプ76が形成されており、イン側ショルダー陸部60に形成されている様なハイアングルサイプ64が形成されていないが、第1周方向溝14側の陸部剛性を低下させるために、アウト側ショルダー陸部70にハイアングルサイプを形成しても良い。
上記実施形態では、傾斜陸部22に形成したサイプ、及び副溝の凸の向きが矢印A方向であったが、場合によっては凸の向きは矢印A方向と反対方向としても良い。
本発明の適用された実施例の空気入りタイヤ1種と、比較例の空気入りタイヤ2種について、ウエットブレーキ性能についての評価を行った。
評価は、何れも比較例1を100として指数により評価を行った。数値が高いほど性能が良いことを示している。
ウエットブレーキ性能は、非常に滑りやすい水深2mmのウエット路面において、時速80km/hで走行した状態からフル制動したときの制動距離を計測した。
ウエットコーナリング性能は、水をまいた湿潤路面のプロのテストドライバーによる運転でテストコースを走行し、コーナリングのしやすさの官能評価による比較を行った。
耐偏摩耗性能は、実車走行による耐久試験を行い、ショルダーブロックについての偏摩耗による落ち量を測定し、比較例1の落ち量と比較して指数化した。
比較例1のタイヤ:実施形態の空気入りタイヤにおいて、イン側ショルダー陸部60のタイヤ周方向に延びるサイプ62の第3周方向溝18側に形成されているサイプをすべてローアングルサイプ59とした空気入りタイヤ(サイプの数は実施例と同一。タイヤ幅方向に対して傾斜したハイアングルサイプ64は無し。)。
比較例2のタイヤ:実施形態の空気入りタイヤにおいて、イン側ショルダー陸部60のタイヤ周方向に延びるサイプ62の第3周方向溝18側に形成されているサイプをすべてハイアングルサイプ64とした空気入りタイヤ(サイプの数は実施例と同一。タイヤ幅方向に延びるローアングルサイプ59は無し。)。
12 トレッド
14 第1周方向溝(周方向溝)
16 第2周方向溝(周方向溝)
18 第3周方向溝(周方向溝)
59 ローアングルサイプ
64 ハイアングルサイプ
66 第3突部(底上げ突起)
Claims (5)
- 周方向溝で区画されたタイヤ周方向に沿って延びる陸部を、トレッドの車両装着時の車両幅方向最内側に備え、
前記陸部には、車両幅方向最内側の周方向溝側に、タイヤ幅方向に対して傾斜して延びるハイアングルサイプと、前記ハイアングルサイプよりもタイヤ幅方向に対する角度が小さく設定されたローアングルサイプとがタイヤ周方向に交互に形成されており、
車両幅方向最内側に配置される前記周方向溝には、前記周方向溝と前記ハイアングルサイプとで形成される前記陸部の鋭角部分の側部に連結されて、前記鋭角部分の補強を行う底上げ突起が設けられている空気入りタイヤ。 - 前記ローアングルサイプのタイヤ幅方向に対する角度は、15°以下に設定され、
前記ローアングルサイプの溝深さは、前記周方向溝の溝深さの20〜80%の範囲内に設定され、
前記ハイアングルサイプのタイヤ幅方向に対する角度は、45〜75°の範囲内に設定され、
前記ハイアングルサイプの溝深さは、前記周方向溝の溝深さの20〜50%の範囲内に設定されている、請求項1に記載の空気入りタイヤ。 - 前記底上げ突起のタイヤ幅方向の寸法は、前記周方向溝の溝幅よりも小さく、
前記底上げ突起のトレッド平面視形状は、上底が溝側、下底が鋭角部分側に配置される等脚台形である、請求項1または請求項2に記載の空気入りタイヤ。 - 前記鋭角部分には、鋭角先端部に向けて傾斜する面取りが形成されている、請求項1〜請求項3の何れか1項に記載の空気入りタイヤ。
- 前記ハイアングルサイプ、及び前記ローアングルサイプは、各々周方向溝に開口している、請求項1〜請求項4の何れか1項に記載の空気入りタイヤ。
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