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JP5780854B2 - 空気入りタイヤ - Google Patents

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Description

本発明は、空気入りタイヤにかかり、特には、トレッドにタイヤ周方向に沿って延びる陸部を備えた空気入りタイヤに関する。
周方向溝で区画されたタイヤ周方向に沿って延びる陸部をトレッドに備えた空気入りタイヤが種々提案されている(例えば、特許文献1参照)。
一般的な車両に装着される空気入りタイヤには、ネガティブキャンバーが付与されており、トレッドは、車両装着時のタイヤ幅方向内側の接地圧が、車両装着時のタイヤ幅方向外側の接地圧よりも高くなっており、さらに、接地形状は、車両装着時のタイヤ幅方向内側の方が、車両装着時のタイヤ幅方向外側よりも長くなっている。
このため、車両装着時の車両幅方向最内側に配置されるタイヤ周方向に延びるリブ状の陸部では、トラクションにより周方向溝近傍の摩耗が他の部分よりも促進され易く、所謂偏摩耗を生じ易い傾向にある。
また、空気入りタイヤでは、ウエット性能や氷上性能を改良するために、陸部にサイプを形成することが一般的に行われている。
空気入りタイヤでは、ブレーキやトラクションも必要であるが、コーナリング時の滑り抑制も必要であるため、ブレーキやトラクションに効くタイヤ幅方向のエッジ成分と、横力に効くタイヤ周方向のエッジ成分を有するタイヤ幅方向に対して傾斜した傾斜サイプを陸部に形成する。
特開2003−154815号公報
空気入りタイヤは摩擦係数の低い路面(摩擦係数の特に低い路面を低ミュー路と呼ぶ)で特に滑りやすいため、市場では、摩擦係数が特に低く滑りやすいウエット路面における走行性能の更なる向上が求められている。また、ネガティブキャンバーの車両に装着される空気入りタイヤでは、特に、車両装着時の車両幅方向内側の陸部の摩耗が、車両幅方向外側の陸部等の他の陸部に比較して促進され易い傾向にある。
本発明は上記事実を考慮し、摩擦係数が特に低い滑りやすいウエット路面における走行性能の更なる向上と、車両装着時の車両幅方向内側のタイヤ周方向に延びる陸部の摩耗が促進され易い傾向を改善可能な空気入りタイヤを提供することが目的である。
発明者による種々の実験検討の結果、車両装着時の車両幅方向最内側に配置されるタイヤ周方向に延びる陸部で生じる偏摩耗は、トレッドのタイヤ幅方向の接地圧のアンバランス及び接地形状の他に、陸部内での接地圧の違いも関係していることが見出された。
さらに、摩擦係数の特に小さいウエット路面(凹凸の少ない平坦な路面等)でのウエット性能を向上させるには、エッジ効果が有効であり、陸部に形成するサイプの位置、及びサイプの延びる方向を最適化することで、偏摩耗を抑制しつつ、摩擦係数の特に小さいウエット路面でのウエット性能と比較的摩擦係数の大きいウエット路面でのウエット性能を確保可能なことが見出された。
本発明は上記事実に鑑みてなされたものであって、請求項1に記載の空気入りタイヤは、周方向溝で区画されたタイヤ周方向に沿って延びる陸部を、トレッドの車両装着時の車両幅方向最内側に備え、前記陸部には、車両幅方向最内側の周方向溝側に、タイヤ幅方向に対して傾斜して延びるハイアングルサイプと、前記ハイアングルサイプよりもタイヤ幅方向に対する角度が小さく設定されたローアングルサイプとがタイヤ周方向に交互に形成されており、車両幅方向最内側に配置される前記周方向溝には、前記周方向溝と前記ハイアングルサイプとで形成される前記陸部の鋭角部分の側部に連結されて、前記鋭角部分の補強を行う底上げ突起が設けられている
請求項1の空気入りタイヤをネガティブキャンバーの車両に取り付けることで、以下の作用が得られる。
請求項1の空気入りタイヤをネガティブキャンバーの車両に取り付けると、空気入りタイヤは、車両前方から見て、タイヤ上部が下部よりも車両内側となるように傾く。これにより、トレッドの接地圧はタイヤ赤道面よりも車両幅方向内側の領域の方が車両幅方向外側の領域よりも高くなり、また、接地長は、タイヤ赤道面よりも車両幅方向内側の方が車両幅方向外側よりも長くなる。
したがって、トレッドでは、車両装着時の車両幅方向外側の陸部対比で、車両幅方向内側の陸部は、接地圧が高く、かつ接地長が長くなり、特に車両幅方向内側のショルダー部に最も近い陸部においては、隣接する周方向溝(車両幅方向最内側の周方向溝)側の接地圧が高くなる傾向となるが、該陸部には隣接する周方向溝側にハイアングルサイプとローアングルサイプとをタイヤ周方向に交互に形成することで周方向主溝側の陸部剛性を低下させることができ、該陸部の周方向主溝側の接地圧の上昇が抑えられ、該陸部の周方向溝側の摩耗の促進を抑えることができる。
また、タイヤ幅方向のエッジ成分を有するローアングルサイプとハイアングルサイプが交互に形成された陸部が、接地長の長くなる車両幅方向最内側に設けられているので、接地面内においてタイヤ幅方向のエッジ成分を効率的に増やすことができ、摩擦係数が特に低い滑りやすいウエット路面において、高いウエット性能を得ることができる。
なお、ハイアングルサイプは、タイヤ周方向のエッジ成分を多く有しているので(タイヤ幅方向のエッジ成分対比)、空気入りタイヤは、摩擦係数が特に低い滑りやすいウエット路面において、コーナリングに際して高いグリップ力が得られ、横滑りを効果的に抑制することができる。
陸部において、鋭角部分は、他の部分(鋭角部分よりも角度が大の部分。例えば、直角部分や鈍角部分等。)よりも剛性が低くて変形し易いため、周方向溝に底上げ突起を設けて鋭角部分の補強を行うことで、鋭角部分の剛性が向上し、鋭角部分の変形を抑えることができる。鋭角部分の剛性を向上し変形を抑えることは、陸部の接地面積の確保、陸部の偏摩耗防止等に繋がり、好ましい形態である。
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の空気入りタイヤにおいて、前記ローアングルサイプのタイヤ幅方向に対する角度は、15°以下に設定され、前記ローアングルサイプの溝深さは、前記周方向溝の溝深さの20〜80%の範囲内に設定され、前記ハイアングルサイプのタイヤ幅方向に対する角度は、45〜75°の範囲内に設定され、前記ハイアングルサイプの溝深さは、前記周方向溝の溝深さの20〜50%の範囲内に設定されている。
次に、請求項2に記載の空気入りタイヤの作用を説明する。
後に実施例、比較例を用いて説明するように、ローアングルサイプのタイヤ幅方向に対する角度が15°を超えると、偏摩耗を防止することが難しくなる。
また、ローアングルサイプの溝深さが周方向溝の溝深さの20%未難では、偏摩耗の防止の効果が小さくなり、ローアングルサイプの溝深さが周方向溝の溝深さの50%を超えると、ショルダーのブロック剛性が大幅に低下してしまい、コーナリング性能などが悪化する。
ハイアングルサイプのタイヤ幅方向に対する角度が45°未満では、サイプが短くなることでエッジ効果が小さくなり、ブレーキ性能が弱くなり、ハイアングルサイプのタイヤ幅方向に対する角度が74°を超えると、サイプの路面をとらえる効果が小さくなり、ブレーキ性能が弱くなる。
また、ハイアングルサイプの溝深さが周方向溝の溝深さの20%未難では、エッジ効果が小さくなり、ブレーキ性能が弱くなる。
ハイアングルサイプの溝深さが周方向溝の溝深さの80%を超えると、ショルダーのブロック剛性が大幅に低下してしまい、コーナリング性能などが悪化する。
請求項3に記載の発明は、請求項1または請求項2に記載の空気入りタイヤにおいて、前記底上げ突起のタイヤ幅方向の寸法は、前記周方向溝の溝幅よりも小さく、前記底上げ突起のトレッド平面視形状は、上底が溝側、下底が鋭角部分側に配置される等脚台形である。
次に、請求項3に記載の空気入りタイヤの作用を説明する。
雪上を走行した際には、周方向溝内に雪が詰まって周方向溝内に雪柱が形成される。ブレーキ時やトラクション時においては、この雪柱が周方向溝内で周方向にずれようとするが、雪柱が周方向溝内の底上げ突起に突き当たってずれが抑えられるので、雪上ブレーキ性能、及び雪上トラクション性能が向上する。なお、底上げ突起のトレッド平面視形状は等脚台形とされているので、雪柱の移動方向によって雪柱のずれ防止効果が異なる事は無い。
したがって、雪上ブレーキ性能と雪上トラクション性能とを共に同等に向上させることができ、また、車両左側の空気入りタイヤと車両右側の空気入りタイヤを交換しても、雪上性能は変わらない。
さらに、底上げ突起をこのような等脚台形とすることで、周方向溝内を流れる水の向きによって、抵抗が異なる事は無く、車両左側の空気入りタイヤと車両右側の空気入りタイヤを交換しても、排水性は変わらない。
よって、空気入りタイヤに回転方向の指定は必要としない。
請求項4に記載の発明は、請求項1〜請求項3の何れか1項に記載の空気入りタイヤにおいて、前記鋭角部分には、鋭角先端部に向けて傾斜する面取りが形成されている。
次に、請求項4に記載の空気入りタイヤの作用を説明する。
鋭角部分は特に先端側の剛性が低い部分であるため、鋭角先端部に向けて傾斜する面取りを形成することで、特に剛性の低い部分が除去されることとなり、陸部の剛性を確保することが出来る。
請求項5に記載の発明は、請求項1〜請求項4の何れか1項に記載の空気入りタイヤにおいて、前記ハイアングルサイプ、及び前記ローアングルサイプは、各々周方向溝に開口している。
次に、請求項5に記載の空気入りタイヤの作用を説明する。
ハイアングルサイプ、及びローアングルサイプを周方向溝に開口させることで、ウエット路面走行時にサイプ内の水を周方向溝へ排水でき、ウエット性能を向上させることができる。
以上説明したように請求項1に記載の空気入りタイヤは上記構成としたので、摩擦係数が特に低い滑りやすいウエット路面での高いウエット性能と、車両装着時の車両幅方向内側の陸部の摩耗が促進され易い傾向を改善することが両立できる、という優れた効果を有する。また、底上げ突起によりハイアングルサイプと周方向溝とで形成される鋭角部分を補強でき、陸部の剛性を確保することができる。
請求項2に記載の空気入りタイヤは上記構成としたので、車両装着時の車両幅方向外側のショルダー側の陸部の摩耗抑制と、摩擦係数が特に低い滑りやすいウエット路面でのウエット性能向上とを高次元で両立できる。
請求項3に記載の空気入りタイヤは上記構成としたので、回転方向の指定は必要としない。
請求項4に記載の空気入りタイヤは上記構成としたので、鋭角部分を有していても陸部の剛性を確保することができる。
請求項5に記載の空気入りタイヤは、さらにウエット性能を向上させることができる、という優れた効果を有する。
本発明の一実施形態に係る空気入りタイヤのトレッドの平面図である。 傾斜陸部付近のトレッドの拡大平面図である。 傾斜陸部の一部分を示す斜視図である。 第1周方向溝の断面図である。 第2陸部、及びイン側ショルダー陸部の拡大平面図である。
以下、図面にしたがって、本発明の一実施形態に係る空気入りタイヤ10について説明する。
図1には、空気入りタイヤ10のトレッド12が示されている。なお、トレッド12の接地端12Eは、空気入りタイヤ10をJATMA YEAR BOOK(日本自動車タイヤ協会規格、2009年度版)に規定されている標準リムに装着し、JATMA YEAR BOOKでの適用サイズ・プライレーティングにおける最大負荷能力(内圧−負荷能力対応表の太字荷重)に対応する空気圧(最大空気圧)の100%の内圧を充填し、最大負荷能力を負荷したときのものである。使用地又は製造地において、TRA規格、ETRTO規格が適用される場合は各々の規格に従う。
また、本実施形態の空気入りタイヤ10は、タイヤ赤道面CLを挟んで左右非対称のパターン形状とされており、図面右側が車両装着時の内側(矢印INで表示)、図面左側が車両装着時の外側(矢印OUTで表示)となるように車両に装着される。なお、この空気入りタイヤ10は、回転方向の指定は無いが、左右の装着の向きは指定される。そのため、空気入りタイヤ10のサイド部には、例えば、INSIDE(内側)、OUTSIDE(外側)等のマークが付与されている。
本実施形態の空気入りタイヤ10のトレッド12には、タイヤ周方向に沿って延びる複数(本実施形態では3本)の周方向溝である、第1周方向溝14、第2周方向溝16、及び、第3周方向溝18が、形成されている。
第1周方向溝14は、タイヤ赤道面CLの一方側(車両装着時の外側:OUT側)に配置され、第2周方向溝16及び第3周方向溝18は、タイヤ赤道面CLの他方側(車両装着時の内側:IN側)に配置されている。また、第2周方向溝16は第3周方向溝18よりもタイヤ赤道面CL側に配置されている。第1周方向溝14は、OUT側の最外側の周方向溝であり、第3周方向溝18は、IN側の最外側の周方向溝である。なお、第2周方向溝16は、第1周方向溝14よりもタイヤ赤道面CLに近い位置に形成されている。
第1周方向溝14と第2周方向溝16との間には、陸部20が形成されている。陸部20には、第1周方向溝14と第2周方向溝16とを横断するように、傾斜溝30が周方向に複数形成されている。傾斜溝30は、第1周方向溝14から第2周方向溝16へ向けて右上がりに傾斜して延出されており、第1周方向溝14と第2周方向溝16とを連通している。
なお、第2周方向溝16が第1周方向溝14よりもタイヤ赤道面CLに近い位置に形成されているため、陸部20のタイヤ幅方向中心は、タイヤ赤道面CLよりも車両装着時の外側(矢印OUT方向側)に位置することになる。
図2、及び図3に示すように、傾斜溝30は、タイヤ赤道面CLに近い第2周方向溝16側が、溝長手方向中央部分よりも溝底の浅い浅溝30Aとされており、第1周方向溝14側が、溝長手方向中央部分よりも溝底の浅い浅溝30Bとされている。
本実施形態の浅溝30Aは、タイヤ赤道面CLよりも第1周方向溝14側へ延びていると共に、後述する第2の副溝36の浅溝36Aと繋がっている。
図2に示すように、傾斜溝30は、第2周方向溝16側からタイヤ赤道面CLよりも車両装着時の外側(矢印OUT方向側)に位置する第1周方向溝14側に向けて溝幅が徐々に広くなるように形成されており、第1周方向溝14側へ排水し易い構成としている。また、傾斜溝30は、図の右下側へわずかに膨出する湾曲形状とされている。
なお、傾斜溝30のタイヤ赤道面CLに対する角度は、20°〜60°の範囲内とすることが好ましい。角度が20°未満になると、後述する傾斜陸部22がタイヤ周方向に長くなり過ぎるため、運動性能の悪化が懸念される。一方、傾斜溝30のタイヤ周方向に対する角度が60°を超えると、排水性能に対するメリットが無くなる。そこで、傾斜溝30のタイヤ赤道面CLに対する角度は、20°〜60°の範囲内とすることが好ましい。
隣り合う傾斜溝30の間には、傾斜陸部22が形成されている。傾斜陸部22の角部24は、角部26よりも鋭角となっている。角部24には、鋭角先端部に向けて傾斜する面取り24Aが形成されて剛性の低い部分が除去されている。
傾斜陸部22の矢印A方向側には、浅溝30Aと浅溝30Bとの間に、傾斜溝30に面して段部40が形成されている。段部40は、傾斜陸部22の浅溝30Aから浅溝30Bにかけて隅部を埋める様に形成されている。
図3に示すように、段部40は、傾斜溝30の溝底から立ち上がり、傾斜陸部22の踏面よりも低い段差面42を有している。本実施形態では、段部40の段差面42、浅溝30Aの溝底、及び浅溝30Bの溝底は、面一(同一高さ)とされている。
傾斜陸部22には、隣り合う傾斜溝30を連結するように、第2周方向溝16側から第1周方向溝14側に向けてサイプ38A−1、サイプ38A−2、第2の副溝36、サイプ38B、第1の副溝34、及びサイプ38Cが順に形成されている。なお、サイプ38A−1、サイプ38A−2、サイプ38B、及びサイプ38Cは、傾斜陸部22が路面に接地した際に閉じる程度の溝幅を有しており、第1の副溝34及び第2の副溝36は、接地時に閉じることの無い溝幅に設定されている。
なお、第2の副溝36は、タイヤ赤道面CL側の一部分が、タイヤ赤道面CLとは反対側よりも溝底の浅い浅溝36Aとなっており、浅溝36Aは、傾斜溝30の浅溝30Aと同じ溝深さとなっている。
傾斜陸部22の高さ寸法(第1周方向溝14、第2周方向溝16の溝底から計測。本実施形態では9.8mm)に対して、傾斜陸部22に形成する各サイプの深さ寸法は、40〜80%の範囲内が好ましく、本実施形態では7.1mmとしている。
また、傾斜陸部22に形成する各サイプは、傾斜陸部22が路面に接地した際に閉じる狭い溝幅であり、一例として0.3〜1.0mmの範囲内が好ましく、本実施形態では0.7mmに設定されている。
トレッド平面視で、これらサイプ38A−1、サイプ38A−2、第2の副溝36、サイプ38B、第1の副溝34、及びサイプ38Cは、タイヤ周方向の一方側、本実施形態では図面矢印A方向側に凸となる円弧形状とされている。
ここで、本実施形態の空気入りタイヤ10では、第1の副溝34の溝断面積(単位長さ当たりの溝体積)と第2の副溝36の溝断面積(単位長さ当たりの溝体積)とを同じにする方向とするため、タイヤ赤道面CLに近い位置に形成される第2の副溝36は、タイヤ赤道面CLから遠い位置に形成される第1の副溝34よりも相対的に溝幅が狭く、かつ溝深さが深く形成されている。
但し、第1の副溝34、及び第2の副溝36の何れも雪上走行時に溝内に雪を入り込ませる必要がある。
また、本実施形態の第1の副溝34、及び第2の副溝36は、タイヤ赤道面CL側の溝幅が最も広く、タイヤ赤道面CLとは反対側へむけて溝幅が漸減している。
第1の副溝34は、溝深さ寸法を傾斜陸部22の高さ寸法の10〜40%の範囲内、溝幅を1.0〜5.0mmに範囲内とすることが好ましい。一方、第2の副溝36は、溝深さ寸法を傾斜陸部22の高さ寸法の40〜80%の範囲内、溝幅を1.0〜5.0mmに範囲内とすることが好ましい。
本実施形態の第1の副溝34は、最小溝幅が2mm、最大溝幅が5mmである。また、本実施形態の第2の副溝36は、最小溝幅が2mm、最大溝幅が6mmである。
図2に示すように、本実施形態では、第1の副溝34の長手方向両端部に、溝底より突出し、かつ溝両側の陸部分を連結する底上げ部34Aが形成されている。
ここで、本実施形態の傾斜陸部22に形成されるサイプ38A−1、サイプ38A−2、サイプ38B、サイプ38Cは、トレッド平面視で円弧形状であるが、図2に示すように、その曲率半径Rは、50mm以下とすることが好ましい。また、これらサイプ38A−1、サイプ38A−2、サイプ38B、サイプ38Cは、全体的に略タイヤ幅方向に形成することが好ましく、サイプ長手方向一端と他端とを直線状に結ぶ仮想線FLとタイヤ幅方向との成す角度θを30°以下とすることが好ましく、サイプ全体を通して45°以下とすることが好ましい。
なお、第1の副溝34、及び第2の副溝36の向き、形状及び曲率半径についても、サイプ38A−1、サイプ38A−2、サイプ38B、及びサイプ38Cと同様の規定とすることが好ましい。
図2に示すように、傾斜陸部22の角部24側には、第1周方向溝14に突出する第1突部46が形成されている。
第1突部46のトレッド平面視形状は、上底が溝側、下底が鋭角部側に配置される等脚台形であるが、他の形状であっても良い。第1突部46のタイヤ幅方向の寸法は、ウエット路面走行時の水の流れを考慮すると、第1周方向溝14の溝幅よりも小さいことが好ましい。
図4に示すように、第1突部46は、タイヤ周方向からみて三角形状とされているが、矩形等、他の形状であっても良い。雪上を走行する際、第1周方向溝14に入り込んだ雪が、溝内に突出した第1突部46に引っ掛かることによって溝長手方向にずれることが抑えられ、雪上でのブレーキング性能、及びトラクション性能を向上させることが出来る。また、第1突部46は、傾斜陸部22の鋭角の角部24を補強して剛性を向上することができる。第1突部46は、鋭角の角部24のタイヤ車両装着時の車両幅方向外側に配置されているので、鋭角の角部24の第1周方向溝14側への変形を抑えるのに特に効果的である。
なお、傾斜陸部22の鋭角の角部24を更に補強するために、傾斜溝30は、第1周方向溝14側の一部分が、溝長手方向中間部分よりも溝底が浅い浅溝30Bとなっている。
図5に示すように、第2周方向溝16と第3周方向溝18との間には、第2陸部50が形成されている。第2陸部50のタイヤ幅方向の中央には、タイヤ周方向に沿って延びる溝状の吸音空洞部52が形成されている。吸音空洞部52は、タイヤ周方向に対して傾斜する吸音浅溝54を介して第2周方向溝16と連通されている。吸音空洞部52の容積と、吸音浅溝54の断面積及び長さは、ヘルムホルツ共鳴理論式に基づいて、走行時に発生する第2周方向溝16の騒音を軽減するように、共鳴周波数が設定されている。
第2陸部50には、吸音空洞部52と吸音浅溝54とで鋭角部55が形成されており、鋭角部55の先端には、鋭角先端部に向けて傾斜する第1の面取り55Aが形成されて剛性の低い部分が除去されている。
鋭角部55には、吸音空洞部52に沿って第2の面取り55Bが形成されており、剛性の低い部分が除去されている。
また、第2陸部50には、吸音空洞部52の第3周方向溝18側に、一端部が第3周方向溝18と連通され、吸音空洞部52とは非連通とされているサイプ56が形成されている。第2陸部50には、サイプ56と第3周方向溝18とで鋭角部57が形成されており、鋭角部57の先端には、鋭角先端部に向けて傾斜する第3の面取り57Aが形成されて剛性の低い部分が除去されている。
さらに、第2陸部50の吸音浅溝54と第2周方向溝16とが交差する部分には、鋭角な角部51が形成されている。鋭角な角部51の先端には、鋭角先端部に向けて傾斜する第4の面取り51Aが形成されて剛性の低い部分が除去されている。
第2周方向溝16には、鋭角な角部51の側方に、第2周方向溝16に突出する第2突部58が形成されている。第2突部58は、第1突部46と略同様の形状であり、雪上でのブレーキング性能、及びトラクション性能を向上させることが出来、鋭角な角部51を補強して剛性を向上することができる。
なお、第2突部58は、鋭角な角部51のタイヤ車両装着時の車両幅方向外側に配置されているので、鋭角の角部51の第2周方向溝16側への変形を抑えるのに特に効果的である(因みに、鋭角な角部51のタイヤ車両装着時の車両幅方向内側は第2陸部50の中央側であるので、鋭角な角部51の車両幅方向内側への変形は第2陸部50の中央側の存在によって抑えられる。
なお、第2陸部50には、各吸音空洞部52と吸音空洞部52との間に、第2陸部50を横断する様に、タイヤ幅方向に対して若干傾斜してタイヤ幅方向に延びるサイプ53が形成されている。
第3周方向溝18のショルダー側には、タイヤ周方向に延びるリブ状のイン側ショルダー陸部60が形成されている。イン側ショルダー陸部60のタイヤ幅方向中間部には、タイヤ周方向に延びるサイプ62が形成されている。サイプ62と第3周方向溝18との間には、タイヤ幅方向に対して傾斜したハイアングルサイプ64と、ハイアングルサイプ64よりもタイヤ幅方向に対する傾斜角度が小さいローアングルサイプ59とがタイヤ周方向に交互に形成されている。ハイアングルサイプ64、及びローアングルサイプ59は、サイプ62及び第3周方向溝18に連通され開口している。
ハイアングルサイプ64は、タイヤ幅方向に対する傾斜角度を45〜75°の範囲内とすること好ましく、溝深さを2〜8mm、かつ第3周方向溝18の溝深さの20〜80%の範囲内とすることが好ましい。
また、ハイアングルサイプ64はエッジ効果を発生させることを主な目的としているため、必ずしもイン側ショルダー陸部60を完全に横断している必要は無く、断続的に設けても良い。その場合、5〜10mm程度の長さがあればよい。
一方、ローアングルサイプ59は、タイヤ幅方向に対する傾斜角度を15°以下とすることが好ましく、溝深さ2〜5mm、かつ第3周方向溝18の溝深さの20〜50%の範囲内とすることが好ましい。
ローアングルサイプ59は偏摩耗防止を主な目的としており、コーナリング力とのバランスを考えるとハイアングルサイプ64より浅く設定されていることが好ましい。
第3周方向溝18には、イン側ショルダー陸部60のハイアングルサイプ64と第3周方向溝18とで形成される鋭角な角部61の側方に、第3周方向溝18に突出する第3突部66が形成されている。第3突部66は、第2突部58、及び第1突部46と略同様の形状であり、雪上でのブレーキング性能、及びトラクション性能を向上させることが出来、鋭角な角部61を補強して剛性を向上することができる。
なお、角部61の先端には、鋭角先端部に向けて傾斜する面取り61Aが形成されて、剛性の低い部分が除去されている。
この第3突部66は、鋭角な角部61のタイヤ車両装着時の車両幅方向外側に配置されているので、鋭角な角部61の第3周方向溝18側への変形を抑えるのに特に効果的である(因みに、鋭角な角部61のタイヤ車両装着時の車両幅方向内側はイン側ショルダー陸部60の中央側であるので、鋭角な角部61の車両幅方向内側への変形はイン側ショルダー陸部60の中央側の存在によって抑えられる。
また、イン側ショルダー陸部60には、サイプ62よりもショルダー側に、接地端12E側へ延びる端部浅溝63がタイヤ周方向に複数形成されている。端部浅溝63は、タイヤ幅方向に沿って延びるように配置されている。イン側ショルダー陸部60には、隣り合う端部浅溝63の間に、端部浅溝63と平行に2本のサイプ65、67が形成されている。
さらに、イン側ショルダー陸部60には、サイプ62よりもショルダー側に、サイプ65、67と交差すると共に、端部浅溝63と端部浅溝63とを連結するタイヤ周方向に延びるサイプ69が形成されている。
図1に示すように、第1周方向溝14のショルダー側には、タイヤ周方向に延びるリブ状のアウト側ショルダー陸部70が形成されている。アウト側ショルダー陸部70には、第1周方向溝14の近傍からタイヤ幅方向に沿って延びる端部浅溝73がタイヤ周方向に複数形成されている。
アウト側ショルダー陸部70には、隣り合う端部浅溝73の間に、端部浅溝73と平行に2本のサイプ75が形成されている。
アウト側ショルダー陸部70のタイヤ幅方向中間部には、サイプ75と交差すると共に、端部浅溝73と端部浅溝73とを連結するタイヤ周方向に延びるサイプ72,74が形成されている。
アウト側ショルダー陸部70には、第1周方向溝14側に、傾斜溝30の端部近傍に切欠部79が形成されている。アウト側ショルダー陸部70には、端部浅溝73と切欠部79とを連結するタイヤ幅方向に延びるサイプ76が形成されている。
(作用)
次に、本実施形態の空気入りタイヤ10の作用を説明する。
本実施形態の空気入りタイヤ10は、車両へ装着する際の向きが指定されており、図1に示すように、アウト側ショルダー陸部70が車両外側へ向くように装着する(OUTSIDE(外側)等のマーク(周知技術であるため図示せず)が付与されているタイヤサイド部を、車両外側に向くように装着する。)。
この空気入りタイヤ10がネガティブキャンバーの車両に取り付けられると、空気入りタイヤ10が傾くので(例えば、車両前方から見て、タイヤ上部が下部よりも車両内側となるように傾く)、トレッド12は、タイヤ赤道面CLよりも車両幅方向内側の領域の方が車両幅方向外側の領域よりも接地圧が高くなり、また、タイヤ赤道面CLよりも車両幅方向内側の接地長が車両幅方向外側の接地長よりも長くなる。
したがって、トレッド12では、アウト側ショルダー陸部70対比で、イン側ショルダー陸部60の接地圧は高く、かつ接地長が長くなり、特にイン側ショルダー陸部60において第3周方向溝18側の接地圧が高くなる傾向となるが、イン側ショルダー陸部60には第3周方向溝18側にハイアングルサイプ64とローアングルサイプ59とがタイヤ周方向に交互に形成されて第3周方向溝18側の陸部剛性が低下しているので、イン側ショルダー陸部60の第3周方向溝18側の接地圧の上昇が抑えられ、イン側ショルダー陸部60の第3周方向溝18側の摩耗(高い接地圧に起因する)の促進が抑えられる。
また、タイヤ幅方向のエッジ成分を有するローアングルサイプ59とハイアングルサイプ64が交互に形成されているイン側ショルダー陸部60が、接地長の長くなる車両幅方向最内側に設けられていると共に、イン側ショルダー陸部60に隣接する第2陸部50にサイプ53が形成されているので、接地面内においてタイヤ幅方向のエッジ成分を効率的に確保することができ、摩擦係数が特に低い滑りやすいウエット路面において、高いウエット性能を得ることができる。
さらに、ハイアングルサイプ64は、横力に対して効くタイヤ周方向のエッジ成分を多く有しているので(タイヤ幅方向のエッジ成分対比)、空気入りタイヤ10は、摩擦係数が特に低い滑りやすいウエット路面において、コーナリングに際して高いグリップ力が得られ、横滑りを効果的に抑制することができる。
なお、上記エッジ成分は、氷上走行においても効果を発揮できることは勿論である。
ところで、イン側ショルダー陸部60の中で鋭角な角部61は、鈍角な角部よりも剛性が低いため変形し易い傾向にあるが、イン側ショルダー陸部60の角部61が第3突部66で補強され、かつ面取り61Aが形成されているため、横力の入力時に角部61の変形が抑えられ、イン側ショルダー陸部60の接地面積が確保される、即ち、踏面の路面に対する密着性が確保される。したがって、コーナリング時に、イン側ショルダー陸部60のハイアングルサイプ64のタイヤ周方向のエッジ効果を最大限に発揮させることができる。さらに、深さの浅いローアングルサイプ59をハイアングルサイプ64の間に設定することで、エッジを増やしても、ブロック剛性を落とし過ぎず、摩擦係数の高い路面にも対応でいるようにすることができる。
また、本実施形態の空気入りタイヤ10では、トレッド12に、タイヤ周方向に沿って延びる第1周方向溝14、第2周方向溝16、及び第3周方向溝18の3本の周方向溝を配置していると共に、第1周方向溝14と第2周方向溝16とを連結するように、タイヤ幅方向に対して傾斜した傾斜溝30が形成されているため、基本的な排水性が確保されている。
この傾斜溝30は、第1周方向溝14に向けて溝幅が広くなるように形成されているので、第1周方向溝14へ向かっての排水性を高めることができる。
本実施形態の傾斜溝30は、第1周方向溝14側に向かってタイヤ赤道面に対する傾斜角度が漸増する方向に湾曲されているので、傾斜溝30を直線状とした場合と比較して、傾斜溝30から第1周方向溝14へ向かっての距離を短縮でき、排水性を高めることができる。
本実施形態の空気入りタイヤ10で雪上を走行した際には、主には、タイヤ幅方向に延びる溝成分、即ち、タイヤ幅方向に対して傾斜して延びる傾斜溝30、端部浅溝63、端部浅溝73、さらには、傾斜陸部22に形成した第1の副溝34、及び第2の副溝36に雪が入り込んでタイヤ周方向の雪柱剪断力を発生するため、直進時のトラクション性能、及びブレーキ性能を得ることができる。
本実施形態の空気入りタイヤ10では、トレッド12の中でも接地圧の高いトレッド中央付近、即ちタイヤ赤道面CLを横断するように傾斜陸部22を形成しているため、傾斜陸部22を区画している傾斜溝30、及びタイヤ赤道面CLに近い位置に形成された第2の副溝36、及び第1の副溝34に雪が入り込み易く、雪上性能を向上させることができる。
なお、雪上でのコーナリング時では、主には、タイヤ周方向に延びる溝成分、即ち、第1周方向溝14、第2周方向溝16、第3周方向溝18、傾斜溝30に雪が入り込んでタイヤ幅方向の雪柱剪断力を発生するため、雪上でのコーナリング性能を得ることができる。
さらに、傾斜陸部22に形成した第1の副溝34、及び第2の副溝36は、全体的にタイヤ幅方向に延びてはいるが、タイヤ周方向に凸なるように湾曲して、タイヤ周方向に延びる溝成分を有しているため、タイヤ幅方向に直線状に延びるラグ溝対比で、タイヤ幅方向の雪柱剪断力を発生させることができ、これによっても雪上でのコーナリング性能を向上させることができる。
また、傾斜陸部22の中央側では、接地時に閉じるサイプと接地時に閉じない溝とを交互に配置しているので(サイプ38A−2、第2の副溝36、サイプ38B、第1の副溝34)、サイプと副溝との間の小陸部分がサイプ側に倒れる結果として、副溝に隣接するサイプが閉じる際にサイプが閉じる分だけ副溝が開くこととなり、開いた副溝が雪上で雪を掴み易くなっており、これによって、雪上性能を更に向上することが出来る。
細長い陸部を考えた時に、陸部の長手方向中央部と長手方向端部とを比較すると、長手方向端部側の方が長手方向中央部よりも陸部の剛性は低い。本実施形態の空気入りタイヤ10では、図2に示すように、傾斜陸部22の長手方向中央に近い第2の副溝36よりも、傾斜陸部22の長手方向端部近い第1の副溝34の溝幅及び溝深さを広くかつ浅く形成しているので、傾斜陸部22全体の剛性を長手方向に渡って均一化する方向となり好ましい形態となっている。また、雪上性能を確保するには、溝内に雪上の雪を入り込まさなければ成らないが、本実施形態では、第2の副溝36よりも第1の副溝34の溝幅及び溝深さを広くかつ浅く形成しているので、雪上の雪を入り込ませるために必要となる第2の副溝36の溝体積と第1の副溝34の溝体積を同等に近づけることができ、雪上性能を確保する上で好ましい形態となっている。
本実施形態の傾斜陸部22には、複数のサイプ(サイプ38A−1、サイプ38A−2、サイプ38B、サイプ38C、サイプ38D)が形成されているが、各サイプはタイヤ周方向に凸となるように湾曲しており、小陸部の湾曲した凸部分が、隣接する小陸部の湾曲した凹部分に嵌合した形態となっているため、横力が入力した際、凸部分と凹部分とが互いに引っ掛かり合い、傾斜陸部22の変形が抑えられ、各サイプを直線状とした場合に比較して陸部剛性が向上する。
傾斜陸部22の長手方向両端側には、サイプ38A−1及びサイプ38Cが形成されており、これらのサイプは、傾斜陸部22が路面に接地した時に閉じてサイプ壁面同士が密着するので、接地時に閉じない副溝を形成するよりも傾斜陸部22の長手方向両端側の変形を抑えることができる。
さらに、傾斜陸部22に形成された各サイプは、タイヤ周方向に凸となるように湾曲しているので、例えば、タイヤ幅方向のエッジ成分が効くウエット路面や雪上でのブレーキ性能だけでなく、タイヤ周方向のエッジ成分も備えているので、コーナリング時にタイヤ周方向のエッジ成分を効かすことができ、ウエット路面や雪上でのコーナリング性能を向上することができる。
本実施形態の空気入りタイヤ10では、傾斜陸部22を区画している傾斜溝30のタイヤ幅方向中心を、タイヤ赤道面CLよりも車両装着時の車両幅方向外側に位置させているので、コーナリング時に接地面がタイヤ赤道面CLの車両幅方向外側へ変位した時に、接地面における傾斜溝30の割合が多くなるため、コーナリング時のウエット性能を向上することができる。
傾斜溝30は、ショルダー部側よりも接地圧の高いタイヤ赤道面CL側を浅くしているので、傾斜陸部22のタイヤ赤道面CL側の接地圧の高い部分における陸部剛性を向上させることができ、傾斜陸部22のタイヤ赤道面CL側の変形を抑えることができる。これにより、操縦安定性を向上させることができる。また、傾斜溝30は、第1周方向溝14側で溝幅を広くすると共に、溝深さを深くしているので、傾斜溝30の水を第1周方向溝14へ効率的に排水することができる。
また、傾斜陸部22には、角部24の形成されている側(矢印A方向側)に傾斜溝30に面して段部40が形成されているので、傾斜溝30での排水性を確保しつつ、傾斜陸部22の剛性を向上させて倒れを抑制することができる。本実施形態では、傾斜陸部22の矢印A方向側のみに段部40を形成したが、矢印A方向とは反対方向側にも段部40と同様の構成の段部を形成してもよい。
なお、本実施形態の段部40は断面形状が矩形であるが、段部40の断面形状は、三角形等、他の形状であっても良い。
また、本実施形態では、タイヤ周方向に沿って延びる第1周方向溝14、第2周方向溝16、及び第3周方向溝18の各々に、第1突部46、第2突部58、及び第3突部66を設けているので、これらの溝に入り込んで形成された雪柱がタイヤ周方向にずれることが抑えられ、これらの突起がない場合と比較して、雪上でのトラクション性能、ブレーキ性能を向上させることができる。
また、本実施形態では、第2陸部50に吸音空洞部52を構成しているので、より高い騒音抑制効果を得ることができる。
なお、傾斜陸部22に形成されるサイプ38A−1、サイプ38A−2、サイプ38B、サイプ38Cの曲率半径Rが50mmを超えると、サイプのエッジが直線状に近づき、タイヤ周方向のエッジ成分が不足し、コーナリング性能の向上が望めなくなる。
また、これらサイプ38A−1、サイプ38A−2、サイプ38B、サイプ38Cの長手方向一端と他端とを直線状に結ぶ仮想線FLとタイヤ幅方向との成す角度θが30°を超えると、トラクション、及びブレーキング(直進時)に効くタイヤ幅方向のエッジ成分が不足する。また、サイプの一部でも45°を超えると、曲率が急となり、サイプの本数を増やしづらくなるか、極端に細いブロックができることになり、耐久性などが劣る。
なお、第1の副溝34、及び第2の副溝36の曲率半径及びタイヤ幅方向と成す仮想線の角度についても上記サイプと同様であり、規定を外れると雪上性能の向上が望めなくなる。
本実施形態では、第1の副溝34、及び第2の副溝36の溝幅について、タイヤ赤道面CL側を広く、タイヤ赤道面CLとは反対側(ショルダー側)を徐々に狭くしている。
ローアングルサイプ59とハイアングルサイプ64のタイヤ周方向ピッチは、偏摩耗を抑えるために必要な陸部剛性(接地圧)の低下程度、必要とされるエッジ効果とのバランスを考慮して決定されるものである。
ここで、本実施形態の空気入りタイヤ10において、ローアングルサイ59プのタイヤ幅方向に対する角度が15°を超えると偏摩耗を防止することが難しくなる。
また、ローアングルサイプ59の溝深さが第3周方向溝18の溝深さの20%未難では、偏摩耗の防止の効果が小さくなり、ローアングルサイプ59の溝深さが第3周方向溝18の溝深さの50%を超えると、ショルダーのブロック剛性が大幅に低下してしまい、コーナリング性能などが悪化する。
ハイアングルサイプ64のタイヤ幅方向に対する角度が45°未満では、ハイアングルサイプ64が短くなることでエッジ効果が小さくなり、ブレーキ性能が弱くなり、 ハイアングルサイプ64のタイヤ幅方向に対する角度が74°を超えると、ハイアングルサイプ64の路面をとらえる効果が小さくなり、ブレーキ性能が弱くなる。
また、ハイアングルサイプ64の溝深さが第3周方向溝18の溝深さの20%未難では、エッジ効果が小さくなり、ブレーキ性能が弱くなり、ハイアングルサイプ64の溝深さが第3周方向溝18の溝深さの80%を超えると、ショルダーのブロック剛性が大幅に低下してしまい、コーナリング性能などが悪化する。
[その他の実施形態]
上記実施形態では、ハイアングルサイプ64が右上がりに傾斜していたが、左上がりに傾斜していても良い。
上記実施形態のアウト側ショルダー陸部70には、第1周方向溝14側にタイヤ幅方向に延びるサイプとして、サイプ75、及びサイプ76が形成されており、イン側ショルダー陸部60に形成されている様なハイアングルサイプ64が形成されていないが、第1周方向溝14側の陸部剛性を低下させるために、アウト側ショルダー陸部70にハイアングルサイプを形成しても良い。
上記実施形態では、傾斜陸部22に接地時に閉じない溝として、第1の副溝34及び第2の副溝36の2本の溝を形成したが、接地時に閉じない溝は3本以上形成しても良い。傾斜陸部22に形成するサイプ、及び副溝の数は、雪上性能、操縦安定性(陸部剛性)のバランスを考慮して決定すれば良く、各々の本数は上記実施形態のものに限定されない。
傾斜陸部22に形成したサイプ38A−1、サイプ38A−2、サイプ38B、サイプ38C、第1の副溝34、及び第2の副溝36は、トレッド12を平面視したときの形状が曲率半径が単一のRの円弧形状であったが、周方向に凸形状となっていれば良く、複数の曲率半径を有する形状であっても良く、円弧以外の曲線形状であっても良い。
本実施形態の傾斜溝30は、ショルダー部側よりも接地圧の高いタイヤ赤道面CL側を浅くしているが、傾斜溝30はショルダー部側からタイヤ赤道面CL側に向けて溝深さを徐々に浅くしても良い。
上記実施形態では、傾斜陸部22に形成したサイプ、及び副溝の凸の向きが矢印A方向であったが、場合によっては凸の向きは矢印A方向と反対方向としても良い。
(試験例)
本発明の適用された実施例の空気入りタイヤ1種と、比較例の空気入りタイヤ2種について、ウエットブレーキ性能についての評価を行った。
評価は、何れも比較例1を100として指数により評価を行った。数値が高いほど性能が良いことを示している。
ウエットブレーキ性能は、非常に滑りやすい水深2mmのウエット路面において、時速80km/hで走行した状態からフル制動したときの制動距離を計測した。
ウエットコーナリング性能は、水をまいた湿潤路面のプロのテストドライバーによる運転でテストコースを走行し、コーナリングのしやすさの官能評価による比較を行った。
耐偏摩耗性能は、実車走行による耐久試験を行い、ショルダーブロックについての偏摩耗による落ち量を測定し、比較例1の落ち量と比較して指数化した。
実施例のタイヤ:上記実施形態で説明した空気入りタイヤである。ローアングルサイプの溝深さは3mm、ハイアングルサイプの溝深さは7.1mm、ローアングルサイプのタイヤ幅方向に対する角度は7°、ハイアングルサイプのタイヤ幅方向に対する角度は62°である。
比較例1のタイヤ:実施形態の空気入りタイヤにおいて、イン側ショルダー陸部60のタイヤ周方向に延びるサイプ62の第3周方向溝18側に形成されているサイプをすべてローアングルサイプ59とした空気入りタイヤ(サイプの数は実施例と同一。タイヤ幅方向に対して傾斜したハイアングルサイプ64は無し。)。
比較例2のタイヤ:実施形態の空気入りタイヤにおいて、イン側ショルダー陸部60のタイヤ周方向に延びるサイプ62の第3周方向溝18側に形成されているサイプをすべてハイアングルサイプ64とした空気入りタイヤ(サイプの数は実施例と同一。タイヤ幅方向に延びるローアングルサイプ59は無し。)。
試験の結果から、本発明の適用された実施例の空気入りタイヤは、ウエットブレーキ性能、ウエットコーナリング性能、及び耐偏摩耗性能に優れていることが分かる。
10 空気入りタイヤ
12 トレッド
14 第1周方向溝(周方向溝)
16 第2周方向溝(周方向溝)
18 第3周方向溝(周方向溝)
59 ローアングルサイプ
64 ハイアングルサイプ
66 第3突部(底上げ突起)

Claims (5)

  1. 周方向溝で区画されたタイヤ周方向に沿って延びる陸部を、トレッドの車両装着時の車両幅方向最内側に備え、
    前記陸部には、車両幅方向最内側の周方向溝側に、タイヤ幅方向に対して傾斜して延びるハイアングルサイプと、前記ハイアングルサイプよりもタイヤ幅方向に対する角度が小さく設定されたローアングルサイプとがタイヤ周方向に交互に形成されており、
    車両幅方向最内側に配置される前記周方向溝には、前記周方向溝と前記ハイアングルサイプとで形成される前記陸部の鋭角部分の側部に連結されて、前記鋭角部分の補強を行う底上げ突起が設けられている空気入りタイヤ。
  2. 前記ローアングルサイプのタイヤ幅方向に対する角度は、15°以下に設定され、
    前記ローアングルサイプの溝深さは、前記周方向溝の溝深さの20〜80%の範囲内に設定され、
    前記ハイアングルサイプのタイヤ幅方向に対する角度は、45〜75°の範囲内に設定され、
    前記ハイアングルサイプの溝深さは、前記周方向溝の溝深さの20〜50%の範囲内に設定されている、請求項1に記載の空気入りタイヤ。
  3. 前記底上げ突起のタイヤ幅方向の寸法は、前記周方向溝の溝幅よりも小さく、
    前記底上げ突起のトレッド平面視形状は、上底が溝側、下底が鋭角部分側に配置される等脚台形である、請求項1または請求項2に記載の空気入りタイヤ。
  4. 前記鋭角部分には、鋭角先端部に向けて傾斜する面取りが形成されている、請求項1〜請求項3の何れか1項に記載の空気入りタイヤ。
  5. 前記ハイアングルサイプ、及び前記ローアングルサイプは、各々周方向溝に開口している、請求項1〜請求項4の何れか1項に記載の空気入りタイヤ。
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