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JP5697229B2 - 血管新生阻害剤 - Google Patents

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Description

本発明は、新規な血管新生阻害剤に関する。より詳しくは、血管内皮細胞や血管内皮増殖因子(VEGF)の作用とは独立した機序で作用する新規な血管新生阻害剤、及びそのスクリーニング方法に関する。
HSP90(Heat Shock Protein 90)は分子量90kDaの分子シャペロンであり、細胞ストレス状況下で発現量が増大するが、通常でも細胞質に最も多く存在するタンパク質の一種である。HSP90は様々な細胞内タンパク質と相互作用して、該タンパク質の正確なホールディングとその機能を保障する役割を有する。HSP90と相互作用するクライアントタンパク質にはプロテインキナーゼやステロイドホルモン受容体等の細胞増殖や分化に重要な役割を果たすシグナル伝達分子が多く含まれる。
HSP90のクライアントタンパク質には細胞周期・細胞死や細胞の生存・癌化に関わる機能タンパク質が多く含まれる。HSP90阻害剤として公知の抗生物質ゲルダナマイシンでHSP90を阻害すると、培養癌細胞の増殖が抑制されることが報告されている。他のHSP90阻害剤では、ゲルダナマイシンと同様のHSP90阻害効果を持ちながら、腎・肝毒性を軽減したゲルダナマイシン誘導体である17-AAG (17-allylaminogeldanamycin)が開発されており、癌治療薬として臨床試験が進められている(非特許文献1)。17-AAGの作用機序として、血管内皮細胞(endothelial cells:EC)の遊走(migration)等を抑制し、血管新生抑制作用を有することが報告されており(非特許文献2)、これにより抗癌効果を発揮しうると考えられる。
多くの腫瘍は、腫瘍血管による栄養に依存して成長するので、腫瘍血管新生抑制剤は、悪性腫瘍治療の手段として定着してきている。また、糖尿病での異常血管新生は、しばしば失明の原因となるため、血管新生抑制療法が行われる場合がある。
血管新生阻害剤を作用機序で大別すると、(1) 血管新生因子に直接作用して、そのレセプターへの結合を阻害する物質、例えば血管内皮増殖因子(vascular endothelial growth factor:VEGF)阻害抗体など、(2) タンパク質分解酵素による基底膜分解活性を阻害する物質(マトリックスメタロプロテアーゼ(MMP)阻害剤など)、(3) 血管内皮細胞と基底膜との接着に関わる細胞接着因子を阻害する物質、(4) 血管内皮細胞における血管新生因子のシグナル伝達を阻害する物質、(5) 血管内皮細胞の増殖を特異的に阻害する物質、などが挙げられる。しかしながら、血管内皮細胞やVEGFの作用とは独立した機序で作用する血管新生阻害剤については、殆ど報告がない。
腫瘍マーカーのひとつとして、結腸直腸癌内皮において上昇する腫瘍内皮マーカー(Tumor Endothelial marker 7:TEM7)について報告がある(非特許文献3)。ヒトTEM7ポリペプチドと60%の類似性を有するヒトTEM7αについて報告があり、遺伝子では63.5%の類似性を有すると報告されている(特許文献1)。また、TEM7Rについても報告があり(非特許文献4)、開示される配列情報を確認した結果、TEM7α及びTEM7Rは、同等と考えられた。しかし、特許文献1や非特許文献4では、TEM7とは約60%類似性があることを開示しているものの、TEM7α(TEM7R)の機能について確認された報告はなく、血管新生に係る機能は一切開示されていない。
特開2008-1708号公報
日薬理誌(Folia Pharmacol. Jpn.) 121, 33-42 (2003) Mol Cancer Ther. 5(3), 522-532 (2005) Science 289, 1197-202 (2000) Cancer Research 61, 6649-6655 (2001)
本発明は、血管内皮細胞や血管内皮増殖因子(VEGF)の作用とは独立した機序で作用する新規な血管新生阻害剤を提供することを課題とする。さらには、従来にない新規な機序で作用する新規血管阻害剤のスクリーニング方法を提供することを課題とする。
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、TEM7Rを阻害することにより、血管新生が抑制されうることを見出し、本発明を完成した。また、tem7r遺伝子の発現阻害又はTEM7Rの機能阻害などによるTEM7R阻害作用を指標とした新規血管新生阻害剤のスクリーニング方法についても完成した。
すなわち、本発明は以下よりなる。
1.TEM7R阻害作用を有する物質を有効成分として含む血管新生阻害剤。
2.TEM7R阻害作用を有する物質が、抗TEM7R抗体である前項1に記載の血管新生阻害剤。
3.TEM7R阻害作用を有する物質が、TEM7R特異的にRNA干渉機能を有するRNA干渉分子である前項1に記載の血管新生阻害剤。
4.TEM7R特異的にRNA干渉機能を有するRNA干渉(RNAi)分子が、以下の1)〜6)のいずれかに示す塩基配列からなるオリゴヌクレオチドである前項3に記載の血管新生阻害剤。
1)5'- AUU AAA GGU GCU AUG UAC UGU GUG G -3'(配列番号1)
2)5'- CCA CAC AGU ACA UAG CAC CUU UAA U -3'(配列番号2)
3)5'- AUA CAA UAA AGC CUU CUU UCU CUC C -3'(配列番号3)
4)5'- GGA GAG AAA GAA GGC UUU AUU GUA U -3'(配列番号4)
5)5'- UAA AGG UGC UAU GUA CUG UGU GGC C -3'(配列番号5)
6)5'- GGC CAC ACA GUA CAU AGC ACC UUU A -3'(配列番号6)
5.RNA干渉分子が、以下の1)〜6)のいずれかに示す塩基配列のうち、1のヌクレオチドの塩基が置換、欠失、付加若しくは導入されている塩基配列からなるオリゴヌクレオチドであり、TEM7R特異的にRNA干渉機能を有するRNAi分子である前項3に記載の血管新生阻害剤。
1)5'- AUU AAA GGU GCU AUG UAC UGU GUG G -3'(配列番号1)
2)5'- CCA CAC AGU ACA UAG CAC CUU UAA U -3'(配列番号2)
3)5'- AUA CAA UAA AGC CUU CUU UCU CUC C -3'(配列番号3)
4)5'- GGA GAG AAA GAA GGC UUU AUU GUA U -3'(配列番号4)
5)5'- UAA AGG UGC UAU GUA CUG UGU GGC C -3'(配列番号5)
6)5'- GGC CAC ACA GUA CAU AGC ACC UUU A -3'(配列番号6)
6.TEM7R阻害作用を指標とする新規血管新生阻害剤のスクリーニング方法。
7.以下の工程を含む前項6に記載の新規血管新生阻害剤のスクリーニング方法:
1)作製したTEM7R発現細胞を含む培養液に、候補化合物を加える工程;
2)上記工程の後、HSP90を加え、TEM7R及びHSP90との相互作用を確認する工程。
8.以下の工程を含む前項6に記載の新規血管新生阻害剤のスクリーニング方法:
1)構築したTEM7R-トランスジェニック(Tg)マウスに候補化合物を作用させる工程;
2)TEM7R-Tgマウスへ皮下注入したマトリゲルへの血管新生能を確認する工程。
本発明のTEM7R阻害作用を有する物質を有効成分として含む血管新生阻害剤は、従来の血管内皮細胞増殖阻害やVEGF阻害等による血管新生阻害剤とは全く異なる作用機序に基づくものである。また、本発明のスクリーニング方法により、従来の血管新生阻害剤とは異なる作用機序を有する血管新生阻害剤を提供することができる。
ヒト臍帯静脈血管内皮細胞(HUVEC)にTEM7R RNAi分子を投与したときの細胞に及ぼす影響を確認した写真図である(in vitro)。(実施例1) ヒト臍帯静脈血管内皮細胞(HUVEC)にTEM7R RNAi分子を投与したときのTEM7RのmRNA発現量(A)、タンパク質発現量(B)及び遊走能(C)を確認したときの結果を示す図である。(実施例1) TEM7Rトランスジェニックマウス(TEM7R-Tgマウス)及び野生型マウスの背中の皮下にマトリゲルを注入し、TEM7Rが血管新生に及ぼす影響を確認した写真図である(in vivo)。ここでみられたTEM7R過剰発現による血管新生の亢進は、HSP90阻害薬である17-AAGにより抑制されることを示している。(実施例2) TEM7R-Tgマウスにおける血管新生亢進が、ウシTEM7R RNAi分子の投与により抑制されたことを示す図である。(実施例3) ウシtem7r遺伝子の塩基配列を示す図である。(実施例3)
本発明の血管新生阻害剤は、tem7r遺伝子の発現阻害又はTEM7Rの機能を阻害することによる血管新生阻害剤であり、TEM7R阻害作用を有する物質を有効成分として含有する。TEM7Rは、背景技術の欄で示した非特許文献4に報告されているタンパク質であり、そのアミノ酸配列及び遺伝子の塩基配列は公知である(GenBank Accession No.NM_032812)。
ここで、「発現」とはタンパク質が産生されることを意味しており、「発現を阻害する物質」は、遺伝子の転写、転写後調節、タンパク質への翻訳等の何れの段階で作用するものであってもよい。また、「機能を阻害する物質」は、タンパク質における機能ドメイン等や活性部位等の機能部位に作用してシグナル伝達を低減又は抑制する物質であってもよい。
TEM7R阻害作用を有する物質としては、tem7r遺伝子の発現阻害又はTEM7R機能を阻害しうる物質であれば良く、特に限定されないが、例えば転写抑制因子、RNAポリメラーゼ阻害剤、スプライシングやmRNAの細胞質移行を阻害しうる因子、mRNA分解酵素、mRNAに結合して不活化する因子やTEM7R合成阻害剤、TEM7R分解酵素、TEM7R変性剤等が挙げられる。他の遺伝子やタンパク質への副作用を最小限にするため、標的分子に特異的に作用しうる物質が好ましい。このようなtem7r遺伝子を特定的に阻害する物質としては、例えばRNA干渉(RNAi)分子(siRNA、shRNA又はmiRNA)、リボザイム、アンチセンス核酸、アプタマー、デコイ核酸等の機能性核酸が挙げられる。
TEM7Rの機能を抑制しうる物質としては抗TEM7R抗体が挙げられる。抗TEM7R抗体はTEM7R阻害作用を有するが、特にTEM7Rの受容体としての機能を抑制しうる抗体が挙げられる。すなわち、TEM7Rの細胞外領域を認識して結合することによりリガンド結合ドメインを覆い、TEM7Rに対するリガンド結合を阻害する性質をもつ抗体である。このような抗体は、TEM7R細胞外領域組換タンパク質をマウスに免疫し、抗体産生細胞のクローニング、リガンド結合阻害活性を指標としたスクリーニングを経て取得することができる。またこのような過程で得られたモノクローナル抗体は、抗体産生細胞のイムノグロブリン遺伝子を単離し、定常領域をヒト型に組み替えることで、ヒト型抗体に変換させることも可能である。抗TEM7Rヒト型抗体は、免疫反応を惹起することなくTEM7R機能阻害による血管新生阻害作用を発揮することが期待される。
TEM7R阻害による血管新生阻害作用は、血管内皮細胞におけるtem7r遺伝子発現を抑制することによって達成することもできる。血管内皮細胞におけるtem7r遺伝子発現を抑制する物質として、例えばTEM7R RNA干渉(TEM7R RNAi)分子が挙げられる。TEM7R RNAi分子はtem7r遺伝子発現を抑制しうる分子であれば良く、特に限定されないが、具体的には例えば以下の配列番号1〜6のいずれかに示すような塩基配列のRNAi分子、あるいは配列番号1〜6のいずれかに示す塩基配列のうち、1のヌクレオチドの塩基が置換、欠失、付加若しくは導入されている塩基配列からなるRNAi分子が挙げられる。本発明の血管新生阻害剤には、以下より選択される2種以上のRNAi分子を含んでいても良い。本発明の血管新生阻害剤に含まれる2種以上のRNAi分子は、適宜選択することができる。
1)5'- AUU AAA GGU GCU AUG UAC UGU GUG G -3'(配列番号1)
2)5'- CCA CAC AGU ACA UAG CAC CUU UAA U -3'(配列番号2)
3)5'- AUA CAA UAA AGC CUU CUU UCU CUC C -3'(配列番号3)
4)5'- GGA GAG AAA GAA GGC UUU AUU GUA U -3'(配列番号4)
5)5'- UAA AGG UGC UAU GUA CUG UGU GGC C -3'(配列番号5)
6)5'- GGC CAC ACA GUA CAU AGC ACC UUU A -3'(配列番号6)
血管新生は、マトリックスメタロプロテアーゼ(MMP)のようなタンパク質分解酵素による基底膜の破壊、VEGFの発現、白血球や血管内皮細胞の遊走、血管内皮細胞の増殖、管腔形成という段階を経て進行するといわれている。
血管新生及びMMPに依存する疾患、いいかえれば、血管新生により好ましくない影響を及ぼす疾患として、現在約50種類もの疾病が確認されている。そのような疾患として、例えば癌(固形癌)、関節炎等、乾癬、加齢性黄班変性症等が挙げられる。また、血管新生は血管腫、肥大性の瘢痕、歯周病、強皮症、角膜移植片の血管新生、新生血管性の緑内障などにおいて確認されている。例えば、糖尿病性の緑内障や糖尿病性細小血管障害の一つである増殖網膜症には血管新生の機構が関与しているといわれている。
本発明の血管新生阻害剤は、例えば上記の各種疾患の治療又は軽減のために投与することができる。投与方法は、特に限定されないが、例えば薬理学的及び製剤学的に許容しうる担体とともに、経口又は非経口投与することができる。非経口投与には、例えば静脈、動脈、筋肉、腹腔、気道等を経路とする全身投与、又は局所投与を行うことができる。好ましくは非経口投与され、より好ましくは局所投与される。さらに、本発明の血管新生阻害剤は、好ましくない副作用を回避するために、有効成分としてのTEM7R阻害作用を有する物質を局所に安定に到達させ、細胞膜を透過し、リソソーム/エンドソームからの薬剤の遊離を促進しうるドラッグデリバリーシステムの設計がされていることが好ましい。
本発明の血管新生阻害剤の投与量は、有効成分としてのTEM7R阻害作用を有する物質の種類、投与方法、症状、投与対象の種類、大きさ、薬物特性等に応じて異なるが、通常、成人1日当たり有効成分量として例えば0.0001〜10mg/kg程度、好ましくは0.0005〜5mg/kg程度であり、1回又は複数回に分けて投与することができる。
本発明の血管新生阻害剤の剤形としては、液剤、固形剤の何れであってもよい。経口投与に適する剤形としては、例えば、錠剤、カプセル剤、散剤、細粒剤、顆粒剤、液剤、及びシロップ剤等を挙げることができ、非経口投与に適する剤形としては、例えば、注射剤、点滴剤、坐剤、吸入剤、点眼剤、点鼻剤、軟膏剤、クリーム剤、及び貼付剤等を挙げることができる。
上記の血管新生阻害剤の製造に用いられる薬理学的及び製剤学的に許容しうる担体としては、例えば賦形剤、崩壊剤、崩壊補助剤、結合剤、滑沢剤、コーティング剤、色素、希釈剤、基剤、溶解剤ないし溶解補助剤、等張化剤、pH調節剤、安定化剤、噴射剤、及び粘着剤等を挙げることができる。
本発明の血管新生阻害剤は、VEGFやMMPを直接阻害する作用機序とは異なる機序により血管新生阻害作用を発揮する。本発明は、さらにTEM7R阻害作用を指標とする新規血管新生阻害剤のスクリーニング方法にも及ぶ。具体的には、候補化合物をTEM7Rと相互作用させることにより、tem7r遺伝子の発現阻害又はTEM7Rの機能を阻害することなどのTEM7R阻害作用を指標とした新規血管新生阻害剤のスクリーニング方法が挙げられる。
本発明のスクリーニング方法の一例としては、TEM7RによるHSP90結合能に対する影響を指標としたアッセイ法が挙げられる。TEM7Rは一回膜貫通型の細胞膜受容体であり、TEM7R-トランスジェニックマウス(Tg)動物、例えばTgマウスにおける血管新生亢進に対する17-AAGの抑制効果から、TEM7RとHSP90の相互作用により血管新生が促進されることが示唆される。従って、TEM7R発現細胞を作製し、この細胞に候補化合物を作用させた場合のHSP90結合能に対する抑制効果を評価することで、血管新生作用への阻害効果も期待できる。
TEM7RとHSP90の結合能を確認するアッセイ法としては、ELISAによりタンパク質間の相互作用を見る方法と、TEM7R発現細胞を使ってより生理的な条件下で評価する方法がある。ELISAによる方法は、例えばTEM7R組換えタンパク質を固相化したプレートに阻害剤を添加したHSP90溶液を作用させ、プレートに結合したHSP90を抗体により検出して定量的に評価することができる。また、TEM7R発現細胞を使った方法は、例えば血管内皮細胞あるいはTEM7R過剰発現細胞の培養液中に、蛍光化合物を化学修飾したHSP90と阻害剤の混合液を加えて反応させて、細胞に結合したHSP90を蛍光シグナルとして定量的に検出する方法がある。
スクリーニング法の他の一例では、培養細胞を用いた方法の他に、TEM7Rを人為的に発現しうるTEM7R-Tg動物を構築して生体内での血管新生阻害効果を検証する方法が挙げられる。例えば、このようなTg動物(例えばTgマウス)に候補化合物を作用させることで、候補化合物からtem7r遺伝子の発現又は機能を阻害しうる物質をスクリーニングして得ることができる。tem7r遺伝子の発現は、免疫組織学的手法や、摘出した組織片中に含まれるmRNA又はタンパク質レベルを定量することにより確認できる。また機能の阻害は、TEM7R-Tg動物へ皮下注入したマトリゲルへの血管新生能の評価(マトリゲルプラグアッセイ法)により確認することができる。
以下、本発明の理解を深めるために実施例により本発明を具体的に説明するが、これらは本発明の範囲を限定するものではないことはいうまでもない。
(実施例1)TEM7R RNAi分子を投与した血管内皮細胞の血管新生能への影響
正常ヒト臍帯静脈内皮細胞(Human umbilical vein endothelial cells: HUVEC)をプラスチックシャーレ上で培養し、定法に従って配列番号1及び2に示すヒトTEM7R RNAi分子、又は配列番号3及び4に示すヒトTEM7R RNAi分子並びにコントロールRNAi分子を導入した(図1)。コントロールRNAi分子としては、どの脊遺伝子配列とも相同性を持たないようにデザインされているもの、あるいはランダムな配列で合成されたRNA分子の混合物を用いた。導入後24時間培養した細胞から全RNAを回収し、定量RT-PCR法により、TEM7R mRNA発現量を評価した。TEM7R RNAi分子導入細胞では、コントロールRNAi分子を導入した細胞に比べ、TEM7R mRNA発現量が約10%に低下することが示された(図2A)。また、細胞膜上に発現しているTEM7R分子を、抗TEM7R抗体を使った免疫染色により検出したところ、TEM7R RNAi分子導入細胞ではコントロールの約40%に抑制されていることが示された(図2B)。
ヒトTEM7R RNAi分子#2
5'- AUU AAA GGU GCU AUG UAC UGU GUG G -3'(配列番号1)
5'- CCA CAC AGU ACA UAG CAC CUU UAA U -3'(配列番号2)
ヒトTEM7R RNAi分子#3
5'- AUA CAA UAA AGC CUU CUU UCU CUC C -3'(配列番号3)
5'- GGA GAG AAA GAA GGC UUU AUU GUA U -3'(配列番号4)
TEM7R RNAi分子を導入してTEM7R発現を抑制したHUVECの細胞移動能をしらべたところ、コントロールの30〜50%に低下していることが示された(図2C)。
(実施例2)TEM7R-トランスジェニックマウス(Tg)マウスにおける血管新生作用
(1)TEM7R-Tgマウスの構築
本実施例において、ウシTEM7Rを発現するTgマウスを構築した。ウシtem7r遺伝子はウシ内皮細胞cDNA発現ライブラリーからクローニングした。この発現ライブラリーにおいて、cDNAは哺乳動物発現ベクターpMC18sへ挿入されている。ウシtem7r遺伝子配列は、図5に示した(配列番号7)。
上記調製したcDNAを基にして、PCR法で制限酵素Sse8387I及びMluI認識部位を付加したcDNAを作製し、内皮細胞特異的プロモーターを有するpHHNS発現ベクターのSse8387I-MluI認識部位へ挿入して発現ベクターpHHNS-TEM7Rを作製し、トランスジーンとした。
C57BL/6J雌マウスにPMS及びhCGを腹腔投与して過排卵を誘発し、C57BL/6J雄マウスと同居・交配した。交尾の成立した雌マウスを頚椎脱臼により殺し、腹腔を開き卵管膨大部を切り出して、ヒアルロニダーゼを含むM16培地中に移し、実体顕微鏡下で卵管膨大部を裂いて受精卵を培地中に移し、ガラスピペットを用いて受精卵を回収した。
次に、ガラスディッシュに受精卵を含むM16培地及び注入DNA(濃度は5 ng/μl)のドロップをそれぞれ作製し、パラフィンオイルでカバーした。マイクロマニュピレーター付き倒立顕微鏡下でインジェクション用ピペットに注入DNAをおおよそ0.1μ1吸引して、ホールディング用ピペットで固定した受精卵の前核内にDNAを注入した。
DNA注入した受精卵を移植するための偽妊娠雌マウス(ICRマウス)を、精管を切除した雄マウス(ICRマウス)と交配させることにより作製した。受精卵にDNAを注入した当日に、偽妊娠雌マウスを麻酔し、後背部より卵巣、卵管を引出し、卵管開口部を露出する。実体顕微鏡下で移植用ピペットを用いておよそ10個の受精卵を吸引して、左右の卵管開口部からそれぞれ受精卵を移植した。受精卵の移植後、偽妊娠雌マウスは約20日で子マウス(TEM7R -Tgマウス)初代(Founder)を出産した。
(2)TEM7R-Tgマウスへのマトリゲルの注入と、血管新生作用の評価
TEM7R-Tgマウス及び野生型マウスの背中の皮下に、0.5 mlのマトリゲルを注射した。3週間後にマトリゲルを摘出し、マトリゲル内に生じた新生血管を観察した。マトリゲル内の血管構造の観察のために、マトリゲル摘出の30分前に麻酔下のマウスに尾静脈から蛍光標識レクチンを投与した。摘出したマトリゲルは、蛍光実態顕微鏡下で観察し、写真撮影を行った。撮影した画像から血管の長さを測定し、マトリゲル内の血管長の合計を算出した。
TEM7R-Tgマウス及び野生型マウスにおける、マトリゲル内の新生血管長を比較したところ、TEM7R-Tマウスでは野生型に対して約4倍の血管新生亢進がみられた。さらにマトリゲルにHSP90阻害薬である17-AAGを1μMとなるように加えた場合は、TEM7R-Tgマウスにおける血管新生亢進は抑えられ、野生型とほぼ同程度であった。これはマトリゲル内の血管新生が、HSP90とTEM7Rとの相互作用によるものであることを示唆する結果である。
(実施例3)TEM7R RNAi分子による血管新生抑制作用
TEM7R-Tgマウス皮下に、配列表の配列番号5及び6に示すウシTEM7R RNAi分子、並びにコントロールRNAi分子を5μMとなるように添加したマトリゲルを注入した。コントロールRNAi分子としては、どの脊遺伝子配列とも相同性を持たないようにデザインされているもの、あるいはランダムな配列で合成されたRNA分子の混合物を用いた。3週間後にマトリゲルを取り出し、マトリゲル内の新生血管の長さを比較した。TEM7R RNAi分子を添加したマトリゲルでは、コントロールRNAi分子を添加した場合に比べて、血管新生が抑制されていることが示された。
ウシTEM7R RNAi分子
5'- UAA AGG UGC UAU GUA CUG UGU GGC C -3'(配列番号5)
5'- GGC CAC ACA GUA CAU AGC ACC UUU A -3'(配列番号6)
以上説明したように、本発明のTEM7R阻害作用を有する物質を有効成分として含む血管新生阻害剤は、従来の血管内皮細胞の増殖阻害や血管内皮増殖因子(VEGF)阻害等による血管新生阻害剤とは全く異なる作用機序に基づくものである。また、本発明のスクリーニング方法により、従来の血管新生阻害剤とは異なる作用機序を有する血管新生阻害剤を提供することができる。
本発明の血管新生阻害剤、又は本発明のスクリーニング法により得られた血管新生阻害剤を、従来の血管内皮細胞の増殖阻害やVEGF阻害等による血管新生阻害剤と併用して用いることにより、より効果的な血管新生阻害作用を期待することができ、より優れた抗腫瘍剤や糖尿病治療薬となりえる。

Claims (4)

  1. 以下の1)〜6)のいずれかに示す塩基配列のオリゴヌクレオチドからなるTEM7R特異的RNA干渉分子を有効成分として含む、血管新生阻害剤。
    1)5'- AUU AAA GGU GCU AUG UAC UGU GUG G -3'(配列番号1)
    2)5'- CCA CAC AGU ACA UAG CAC CUU UAA U -3'(配列番号2)
    3)5'- AUA CAA UAA AGC CUU CUU UCU CUC C -3'(配列番号3)
    4)5'- GGA GAG AAA GAA GGC UUU AUU GUA U -3'(配列番号4)
    5)5'- UAA AGG UGC UAU GUA CUG UGU GGC C -3'(配列番号5)
    6)5'- GGC CAC ACA GUA CAU AGC ACC UUU A -3'(配列番号6)
  2. 以下の1)〜6)のいずれかに示す塩基配列のうち、1のヌクレオチドの塩基が置換、欠失、付加若しくは導入されている塩基配列のオリゴヌクレオチドからなるTEM7R特異的RNA干渉分子を有効成分として含む、血管新生阻害剤。
    1)5'- AUU AAA GGU GCU AUG UAC UGU GUG G -3'(配列番号1)
    2)5'- CCA CAC AGU ACA UAG CAC CUU UAA U -3'(配列番号2)
    3)5'- AUA CAA UAA AGC CUU CUU UCU CUC C -3'(配列番号3)
    4)5'- GGA GAG AAA GAA GGC UUU AUU GUA U -3'(配列番号4)
    5)5'- UAA AGG UGC UAU GUA CUG UGU GGC C -3'(配列番号5)
    6)5'- GGC CAC ACA GUA CAU AGC ACC UUU A -3'(配列番号6)
  3. 以下の工程を含む、TEM7R阻害作用を指標とする、新規血管新生阻害剤のスクリーニング方法:
    1)作製したTEM7R発現細胞を含む培養液に、候補化合物を加える工程;
    2)上記工程の後、HSP90を加え、TEM7R及びHSP90との相互作用を確認する工程。
  4. 以下の工程を含む、TEM7R阻害作用を指標とする、新規血管新生阻害剤のスクリーニング方法:
    1)構築したTEM7R-トランスジェニック(Tg)マウスに候補化合物を作用させる工程;
    2)TEM7R-Tgマウスへ皮下注入したマトリゲルへの血管新生能を確認する工程。
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