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JP5654409B2 - タイヤ用ゴム組成物及び空気入りタイヤ - Google Patents

タイヤ用ゴム組成物及び空気入りタイヤ Download PDF

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JP5654409B2 JP2011096558A JP2011096558A JP5654409B2 JP 5654409 B2 JP5654409 B2 JP 5654409B2 JP 2011096558 A JP2011096558 A JP 2011096558A JP 2011096558 A JP2011096558 A JP 2011096558A JP 5654409 B2 JP5654409 B2 JP 5654409B2
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本発明は、タイヤ用ゴム組成物及び空気入りタイヤに関する。
近年、地球温暖化などの環境問題から、低燃費化に対する社会的要求が高まり、自動車の低燃費化に対応して、転がり抵抗を低減させた低燃費タイヤの開発が要求されている。それに伴い、タイヤを構成する各部材に使用されるゴム組成物に対しても低発熱化が求められており、インナーライナーゴムに対しても優れた低発熱性が求められている。
タイヤのインナーライナーは、タイヤの空気圧の低下を抑制するため、耐空気透過性に優れたブチル系ゴムが多量に使用されている。しかし、ブチル系ゴムはエネルギーロスが大きく、発熱性が高いため、インナーライナーの低発熱化は充分に進んでいなかった。
インナーライナーに使用されるブチル系ゴムを減量すると、低発熱性は向上できるものの耐空気透過性等が低下するという問題があった。このように、インナーライナーにおいては、低発熱性、耐空気透過性等がバランスよく得られるゴム組成物が求められている。
特許文献1には、エポキシ化率が約5%のエポキシ化天然ゴムと、エポキシ化率が約5%のエポキシ化ブタジエンゴムとを併用することにより、スタッドレスタイヤの氷上性能、耐摩耗性を向上できることが記載されている。しかし、低発熱性、耐空気透過性等をバランスよく得る点や、エポキシ化率については詳細に検討されていない。
特開2011−12161号公報
本発明は、前記課題を解決し、混練り加工性、低発熱性、耐屈曲疲労性、耐空気透過性、操縦安定性がバランスよく得られるタイヤ用ゴム組成物、及びこれを用いた空気入りタイヤを提供することを目的とする。
本発明は、エポキシ化率が15〜65モル%のエポキシ化天然ゴムと、エポキシ化率が15〜65モル%のエポキシ化ブタジエンゴムとを含み、上記エポキシ化天然ゴム及び上記エポキシ化ブタジエンゴムの合計含有量がゴム成分100質量%中65質量%以上であり、ゴム成分100質量部に対して、シリカを20〜100質量部含むタイヤ用ゴム組成物に関する。
上記タイヤ用ゴム組成物は、下記式(1);
Figure 0005654409
(式中、R、R及びRは、同一若しくは異なって、アルキル基、アルコキシ基、シリルオキシ基、アセタール基、カルボキシル基、メルカプト基又はこれらの誘導体を表す。R及びRは、同一若しくは異なって、水素原子又はアルキル基を表す。nは整数を表す。)で表される化合物により変性されたジエン系ゴムを含むことが好ましい。
上記タイヤ用ゴム組成物は、平均幅3〜35nm、平均長さ50nm〜5μmの棒状シリカを含むことが好ましい。
上記棒状シリカが、セピオライト鉱物を解繊して得られたものであることが好ましい。
上記タイヤ用ゴム組成物は、ゴム成分100質量%中の上記エポキシ化天然ゴムの含有量が10〜90質量%、上記エポキシ化ブタジエンゴムの含有量が10〜90質量%であることが好ましい。
上記エポキシ化ブタジエンゴムが、シス含量80質量%以上のブタジエンゴムをエポキシ化して得られたものであることが好ましい。
上記ゴム組成物は、インナーライナー用ゴム組成物として用いられることが好ましい。
本発明はまた、上記ゴム組成物を用いた空気入りタイヤに関する。
本発明によれば、特定のエポキシ化率のエポキシ化天然ゴムと、特定のエポキシ化率のエポキシ化ブタジエンゴムとを含み、これらの合計含有量が特定量以上であり、更に特定量のシリカを含むタイヤ用ゴム組成物であるので、混練り加工性、低発熱性、耐屈曲疲労性、耐空気透過性、操縦安定性がバランスよく得られる。従って、該ゴム組成物をインナーライナーなどタイヤの各部材に使用することで前述の性能に優れた空気入りタイヤを生産性良く提供できる。また、特定のエポキシ化率のエポキシ化天然ゴムと、特定のエポキシ化率のエポキシ化ブタジエンゴムとを併用することにより、耐空気透過性を相乗的に向上できる。
棒状シリカ(セピオライト)の概略構造を示す模式図である。
本発明のタイヤ用ゴム組成物は、特定のエポキシ化率のエポキシ化天然ゴム(ENR)と、特定のエポキシ化率のエポキシ化ブタジエンゴム(EBR)とを含み、これらの合計含有量が特定量以上であり、更に特定量のシリカを含む。
ENRとしては特に限定されず、市販のエポキシ化天然ゴムでも、天然ゴム(NR)をエポキシ化したものでもよい。天然ゴムをエポキシ化する方法は、特に限定されず、クロルヒドリン法、直接酸化法、過酸化水素法、アルキルヒドロペルオキシド法、過酸法などがあげられる(特公平4−26617号公報、特開平2−110182号公報、英国特許第2113692号明細書等)。過酸法としては例えば、天然ゴムに過酢酸や過ギ酸などの有機過酸を反応させる方法などがあげられる。なお、有機過酸の量や反応時間を調整することにより、様々なエポキシ化率のエポキシ化天然ゴムを調製することができる。
なお、本発明において、エポキシ化率とは、エポキシ化される前のゴム中の二重結合の総数に対するエポキシ化された二重結合の数の割合(モル%)のことである。また、本発明において、エポキシ化率は、後述する実施例に記載の測定方法により得られる値である。
エポキシ化される天然ゴムとしては、特に限定されず、例えば、SIR20、RSS♯3、TSR20、脱タンパク質天然ゴム(DPNR)、高純度天然ゴム(HPNR)等、タイヤ工業において一般的なものを使用できる。
ENRのエポキシ化率は15モル%以上であり、好ましくは20モル%以上である。エポキシ化率が15モル%未満では、耐空気透過性が充分に得られない傾向がある。また、エポキシ化率は65モル%以下であり、好ましくは50モル%以下、より好ましくは35モル%以下である。エポキシ化率が65モル%をこえると、混練り加工性、低発熱性、耐屈曲疲労性が大きく悪化する傾向がある。エポキシ化率が上記範囲内であると、混練り加工性、低発熱性、耐屈曲疲労性、耐空気透過性、操縦安定性がバランスよく得られる。
ゴム成分100質量%中のENRの含有量は、好ましくは10質量%以上、より好ましくは20質量%以上、更に好ましくは40質量%以上である。10質量%未満であると、耐屈曲疲労性、耐空気透過性が充分に得られない傾向にある。ENRの含有量は、好ましくは90質量%以下、より好ましくは70質量%以下である。90質量%を超えると、耐屈曲疲労性、低発熱性が低下する傾向にある。
EBRとしては特に限定されず、市販のエポキシ化ブタジエンゴムでも、ブタジエンゴム(BR)をエポキシ化したものでもよい。ブタジエンゴムをエポキシ化する方法としては、上述した天然ゴムをエポキシ化する方法と同様の方法があげられる。また、ENRの場合と同様に、有機過酸の量や反応時間を調整することにより、様々なエポキシ化率のエポキシ化ブタジエンゴムを調製することができる。
エポキシ化されるBRとしては、特に限定されず、例えば、日本ゼオン(株)製のBR1220、宇部興産(株)製のBR130B、BR150B等の高シス含有量のBR、宇部興産(株)製のVCR412、VCR617等のシンジオタクチックポリブタジエン結晶を含有するBR等を使用できる。
エポキシ化されるBRのシス含量は、混練り加工性、低発熱性、耐屈曲疲労性、耐空気透過性、操縦安定性がバランスよく得られるという理由から、80質量%以上が好ましく、90質量%以上がより好ましく、95質量%以上が更に好ましい。
なお、シス含量(シス−1,4−結合ブタジエン単位量)は、赤外吸収スペクトル分析法によって測定できる。
EBRのエポキシ化率は15モル%以上であり、好ましくは20モル%以上である。エポキシ化率が15モル%未満では、耐空気透過性が充分に得られない傾向がある。また、エポキシ化率は65モル%以下であり、好ましくは50モル%以下、より好ましくは35モル%以下である。エポキシ化率が65モル%をこえると、混練り加工性、低発熱性、耐屈曲疲労性が大きく悪化する傾向がある。エポキシ化率が上記範囲内であると、混練り加工性、低発熱性、耐屈曲疲労性、耐空気透過性、操縦安定性がバランスよく得られる。
EBRの数平均分子量(Mn)は、100000以上が好ましく、120000以上がより好ましく、150000以上が更に好ましい。EBRのMnは、800000以下が好ましく、600000以下がより好ましく、300000以下が更に好ましい。EBRのMnが上記範囲内であると、混練り加工性、低発熱性、耐屈曲疲労性、耐空気透過性、操縦安定性がバランスよく得られる。
なお、本発明において、数平均分子量(Mn)は、実施例に記載の方法により測定される値である。
ゴム成分100質量%中のEBRの含有量は、好ましくは10質量%以上、より好ましくは20質量%以上、更に好ましくは30質量%以上である。10質量%未満であると、耐屈曲疲労性、耐空気透過性が充分に得られない傾向にある。EBRの含有量は、好ましくは90質量%以下、より好ましくは60質量%以下、更に好ましくは50質量%以下である。90質量%を超えると、混練り加工時のゴムの纏まりが悪化し、混練り加工性が低下する傾向にある。
ゴム成分100質量%中のENR及びEBRの合計含有量は、65質量%以上、好ましくは70質量%以上であり、100質量%であってもよい。
65質量%未満であると、耐屈曲疲労性、耐空気透過性、操縦安定性が充分に得られない。
ゴム組成物に使用されるENR、EBR以外のゴム成分として、ジエン系ゴムが挙げられ、例えば、NR、BR、スチレンブタジエンゴム(SBR)、エポキシ化スチレンブタジエンゴム(ESBR)、イソプレンゴム(IR)、ブチルゴム(IIR)、ハロゲン化ブチルゴム(X−IIR)、クロロプレンゴム(CR)、アクリロニトリルブタジエンゴム(NBR)、スチレン−イソプレン−ブタジエン共重合ゴム(SIBR)等を使用できる。なかでも、加硫時の加硫戻りを軽減することができるという理由から、ESBRが好ましい。
また、ENR、EBR以外のゴム成分としては、良好な混練り加工性、低発熱性、耐屈曲疲労性が得られるという理由から、NRが好ましい。NRとしては、上述のエポキシ化される天然ゴムと同様のものを使用できる。
本発明のゴム組成物がNRを含む場合、ゴム成分100質量%中のNRの含有量は、好ましくは10質量%以上、より好ましくは20質量%以上である。NRの含有量は、好ましくは35質量%以下である。NRの含有量が上記範囲内であると、良好な混練り加工性、低発熱性、耐屈曲疲労性が得られる。
また、ENR、EBR以外のゴム成分としては、良好な混練り加工性、低発熱性、耐屈曲疲労性、操縦安定性が得られるという理由から、下記式(1);
Figure 0005654409
(式中、R、R及びRは、同一若しくは異なって、アルキル基、アルコキシ基(好ましくは炭素数1〜8、より好ましくは炭素数1〜6、更に好ましくは炭素数1〜4のアルコキシ基)、シリルオキシ基、アセタール基、カルボキシル基(−COOH)、メルカプト基(−SH)又はこれらの誘導体を表す。R及びRは、同一若しくは異なって、水素原子又はアルキル基(好ましくは炭素数1〜4のアルキル基)を表す。nは整数(好ましくは1〜5、より好ましくは2〜4、更に好ましくは3)を表す。)で表される化合物により上記ジエン系ゴムが変性された変性ジエン系ゴムが好ましく、上記式(1)で表される化合物によりBR、SBRが変性された変性BR、変性SBR(特開2010−111753号公報に記載の変性BR、変性SBR)がより好ましい。
、R及びRとしては、アルコキシ基が望ましく、R及びRとしては、アルキル基が望ましい。これにより、良好な混練り加工性、低発熱性、耐屈曲疲労性、操縦安定性が得られる。
上記式(1)で表される化合物の具体例としては、3−アミノプロピルジメチルメトキシシラン、3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、2−ジメチルアミノエチルトリメトキシシラン、3−ジエチルアミノプロピルトリメトキシシラン、3−ジメチルアミノプロピルトリメトキシシラン等が挙げられる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
上記式(1)で表される化合物(変性剤)によるジエン系ゴムの変性方法としては、特公平6−53768号公報、特公平6−57767号公報、特表2003−514078号公報などに記載されている方法など、従来公知の手法を用いることができる。例えば、ジエン系ゴムと変性剤とを接触させればよく、アニオン重合によりジエン系ゴムを合成した後、該ジエン系ゴム溶液中に変性剤を所定量添加し、ジエン系ゴムの重合末端(活性末端)と変性剤とを反応させる方法、ジエン系ゴム溶液中に変性剤を添加して反応させる方法などが挙げられる。
変性ジエン系ゴムの重量平均分子量(Mw)は、好ましくは100000以上、より好ましくは200000以上である。100000未満であると、破壊強度、耐摩耗性、耐屈曲疲労性が低下する傾向がある。Mwは、好ましくは2000000以下、より好ましくは1000000以下、更に好ましくは600000以下である。2000000を超えると、混練り加工性が低下し、それに伴い分散性が悪化し、破壊強度、耐屈曲疲労性が低下するおそれがある。
なお、本発明において、重量平均分子量(Mw)は、実施例に記載の方法により測定される値である。
上記変性BRのビニル含量は、好ましくは40質量%以下、より好ましくは35質量%以下である。ビニル含量が40質量%を超えると、低発熱性、耐屈曲疲労性が低下するおそれがある。上記ビニル含量の下限は特に限定されないが、1質量%以上、5質量%以上、10質量%以上であってもよい。1質量%未満であると、耐熱性、耐劣化性が低下するおそれがある。
なお、ビニル含量(1,2−結合ブタジエン単位量)は、赤外吸収スペクトル分析法によって測定できる。
本発明のゴム組成物が変性ジエン系ゴムを含む場合、ゴム成分100質量%中の変性ジエン系ゴムの含有量は、好ましくは5質量%以上、より好ましくは10質量%以上、更に好ましくは15質量%以上である。変性ジエン系ゴムの含有量は、好ましくは35質量%以下である。変性ジエン系ゴムの含有量が上記範囲内であると、良好な混練り加工性、低発熱性、耐屈曲疲労性、操縦安定性が得られる。
本発明のゴム組成物はシリカ(球状のシリカ)を含有する。これにより、混練り加工性、低発熱性、耐屈曲疲労性、耐空気透過性、操縦安定性がバランスよく得られる。シリカとしては特に限定されず、例えば、乾式法シリカ(無水ケイ酸)、湿式法シリカ(含水ケイ酸)等が挙げられるが、シラノール基が多いという理由から、湿式法シリカが好ましい。シリカは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。なお、本明細書では、単にシリカと記載する場合には、特に言及しない限り、球状のシリカをいうこととする。
上記シリカの窒素吸着比表面積(NSA)は、好ましくは50m/g以上、より好ましくは80m/g以上、更に好ましくは120m/g以上である。50m/g未満であると、シリカの配合による補強効果が充分ではなく、耐屈曲疲労性、耐摩耗性が低下する傾向がある。また、シリカのNSAは、好ましくは300m/g以下、より好ましくは250m/g以下、更に好ましくは200m/g以下である。300m/gを超えると、シリカの分散性および低発熱性が悪化する傾向がある。
なお、シリカの窒素吸着比表面積は、ASTM D3037−81に準じてBET法で測定される値である。
シリカの含有量は、ゴム成分100質量部に対して、20質量部以上、好ましくは40質量部以上である。20質量部未満では、シリカ配合による効果が充分に得られない。該シリカの含有量は、100質量部以下、好ましくは80質量部以下である。100質量部を超えると、粘度が高くなるため混練り加工性が低下する。
本発明では、特定の棒状シリカが使用されることが好ましい。これにより、良好な耐空気透過性、操縦安定性が得られる。特に、特定の棒状シリカと共に上記変性ジエン系ゴム(特に、上記変性BR、上記変性SBR)を配合した場合、操縦安定性を相乗的に向上でき、更に、混練り加工性、低発熱性、耐屈曲疲労性をも向上できる。
棒状シリカは、球状の形状を有する通常のシリカとは異なり、棒状又は針状の形状を有し、その表面にシラノール基を有する無機材料(シリカ)である。棒状シリカとしては、例えば、セピオライト、パリゴルスカイト、アタパルジャイト、シロタイル、ラフリナイト、ファルコンドアイト、イモゴライト等が挙げられる。なかでも、不純物が少なく、シラノール基が多いという理由から、セピオライト、アタパルジャイトが好ましい。
棒状シリカの表面には、シラノール基が存在している。そのため、シランカップリング剤を配合することにより、シランカップリング剤を介してゴム分子と棒状シリカを結合でき、棒状シリカを配合した効果を充分に得ることができる。また、上記変性ジエン系ゴムと併用することにより、変性ジエン系ゴムと、棒状シリカとの間に直接強い相互作用を形成させることができる。そのため、棒状シリカを配合した効果をより充分に得ることができる。
棒状シリカは、繊維状材料であるセピオライト鉱物[MgSi1230(OH)(HO)・8(HO)]を解繊して得られたものを好適に使用できる。セピオライト鉱物の構造は、Si−O四面体が3本連結して繊維方向に平行なSi−O四面体リボンを形成し、このリボンは八面体配位のマグネシウムイオンによって結び付けられ、タルク構造に似た2:1型を形成する。これらが互いに粘着して繊維束を形成しており、凝集物を形成し得る。
上記凝集物は工業的工程、例えば微粉化(粉砕)または化学的修飾(例えば、欧州特許第170299号公報を参照)などで分裂(解繊)可能であり、それによって直径がナノメートルの繊維、即ち剥離(解繊)した棒状シリカ(セピオライト)が生じ得る。本発明では、セピオライト鉱物の解繊方法は特に限定されないが、棒状シリカ(セピオライト)の繊維としての形状を実質的に壊すことなく解繊することが好ましい。このような解繊方法としては、例えば、湿式粉砕法(例えば、欧州特許第170299号公報、特開平5−97488号公報、欧州特許第85200094−4号公報等に記載の方法)等が挙げられる。
湿式粉砕法の一例を具体的に説明すると、まず、水分を含んだ状態の棒状シリカ(セピオライト)を2mm以下の粒度になるまで粉砕する。粉砕後、懸濁液の固形分濃度が5〜25%となるように水を加えた後、分散剤(例えば、ヘキサメタリン酸アルカリ塩)を添加する。次に、高せん断力を有する撹拌機を使用して懸濁液を5〜15分間撹拌する。撹拌の際には、まず、低回転で2〜7分間撹拌し、次に、高速回転で2〜8分間撹拌する。次に、上澄みをデカンテーション又は遠心分離により分離することにより、繊維としての形状を実質的に壊すことなく解繊された棒状シリカ(セピオライト)を得ることができる。
なお、本発明におけるセピオライトは、アタパルジャイト(パリゴルスカイトとしても知られる)をも含む概念である。アタパルジャイトは、アタパルジャイトが有する単位格子の方が若干小さい(繊維長が小さい)以外はセピオライトと構造的及び化学的にほとんど同一である。
棒状シリカの平均幅は、好ましくは3nm以上、より好ましくは5nm以上である。3nm未満であると、表面積が大きくなり、ゴムへの分散が悪くなる傾向がある。棒状シリカの平均幅は、好ましくは35nm以下、より好ましくは30nm以下である。35nmを超えると、アスペクト比が小さくなり、充分な低発熱性が得られない傾向がある。
棒状シリカの平均長さは、好ましくは50nm以上、より好ましくは100nm以上、更に好ましくは300nm以上である。50nm未満であると、アスペクト比が小さくなり、充分な低発熱性が得られない傾向がある。棒状シリカの平均長さは、好ましくは5μm以下、より好ましくは3μm以下、更に好ましくは2μm以下である。5μmを超えると、破壊の起点になるため、耐屈曲疲労性が悪化する傾向がある。
棒状シリカのアスペクト比(平均長さ/平均幅)は、好ましくは2以上、より好ましくは5以上である。2未満であると、充分な低発熱性が得られない傾向がある。棒状シリカのアスペクト比の上限は特に限定されず、上記形状の範囲内で、大きければ大きいほど好ましい。
図1は、棒状シリカ(セピオライト)の概略構造を示す模式図である。図1に示すように、棒状シリカ(セピオライト)は、針状又は長い繊維状(棒状)の形状を有している。セピオライトの幅、厚み、長さは、それぞれ図1のX、Y、Zに相当する。言い換えると、セピオライトの幅(X)とは、主面(平面視したときに面積が最大となる面)の短辺の長さであり、セピオライトの厚み(Y)とは、主面に対する法線方向の長さであり、セピオライトの長さ(Z)とは、主面の長辺の長さである。
なお、本明細書において、棒状シリカの平均幅は、透過型電子顕微鏡により測定した棒状シリカのXの平均値(例えば、100個の棒状シリカのXを測定し、算出した平均値)である。また、本明細書において、棒状シリカの平均長さは、透過型電子顕微鏡により測定した棒状シリカのZの平均値(例えば、100個の棒状シリカのZを測定し、算出した平均値)である。
棒状シリカの含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは1質量部以上、より好ましくは2質量部以上である。1質量部未満では、棒状シリカを配合した効果が充分に得られないおそれがある。また、該棒状シリカの含有量は、好ましくは50質量部以下、より好ましくは30質量部以下、更に好ましくは10質量部以下、特に好ましくは5質量部以下である。50質量部を超えると、混練り加工性、低発熱性、耐屈曲疲労性が悪化する傾向がある。
本発明のゴム組成物は、棒状シリカ、シリカとともに、シランカップリング剤を含有することが好ましい。
シランカップリング剤としては、ゴム工業において、従来からシリカと併用される任意のシランカップリング剤を使用することができ、例えば、スルフィド系、メルカプト系、ビニル系、アミノ系、グリシドキシ系、ニトロ系、クロロ系シランカップリング剤などが挙げられる。なかでも、本発明の効果が良好に得られるという理由から、スルフィド系が好ましい。
スルフィド系シランカップリング剤としては、本発明の効果が良好に得られるという理由から、ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、ビス(2−トリエトキシシリルエチル)テトラスルフィド、ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)ジスルフィド、ビス(2−トリエトキシシリルエチル)ジスルフィド、3−トリメトキシシリルプロピルベンゾチアゾリルテトラスルフィドが好ましく、ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)ジスルフィドがより好ましい。
また、低発熱性の改善には、メルカプト系のシランカップリング剤を併用することが効果的で、具体的には、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリエトキシシラン、2−メルカプトエチルトリメトキシシラン、2−メルカプトエチルトリエトキシシランなどが挙げられ、商品名としては、例えばデグッサ社製のSi363、Momentive社製のNXT−Z45などが挙げられる。
シランカップリング剤の含有量は、棒状シリカ及びシリカの合計含有量100質量部に対して、好ましくは3質量部以上、より好ましくは5質量部以上である。3質量部未満では、棒状シリカ、シリカを充分に分散させることができず、低発熱性や耐屈曲疲労性が悪化してしまうおそれがある。また、該シランカップリング剤の含有量は、好ましくは15質量部以下、より好ましくは10質量部以下である。15質量部を超えると、余分なシランカップリング剤が残存し、得られるゴム組成物の混練り加工性及び耐屈曲疲労性の悪化を招くおそれがある。
本発明のゴム組成物は、カーボンブラックを含有することが好ましい。これにより、耐屈曲疲労性を向上でき、混練り加工性、低発熱性、耐屈曲疲労性、耐空気透過性、操縦安定性がよりバランスよく得られる。使用できるカーボンブラックとしては、GPF、FEF、HAF、ISAF、SAFなどが挙げられるが、特に限定されない。カーボンブラックは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
カーボンブラックのチッ素吸着比表面積(NSA)は15m/g以上が好ましく、30m/g以上がより好ましい。NSAが15m/g未満では、充分な補強性が得られず、充分な耐屈曲疲労性が得られない傾向がある。また、カーボンブラックのNSAは120m/g以下が好ましく、100m/g以下がより好ましい。NSAが120m/gを超えると、未加硫時の粘度が非常に高くなり、混練り加工性が悪化する傾向がある。また、低発熱性が悪化する傾向がある。
なお、カーボンブラックのチッ素吸着比表面積は、JIS K6217−2:2001に準拠して測定される。
本発明のゴム組成物にカーボンブラックが配合される場合、カーボンブラックの含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは3質量部以上である。3質量部未満の場合、カーボンブラックを配合した効果が充分に得られないおそれがある。また、カーボンブラックの含有量は、好ましくは60質量部以下、より好ましくは20質量部以下、更に好ましくは10質量部以下である。60質量部を超えると、低発熱性、混練り加工性が悪化する傾向がある。
本発明のゴム組成物には、前記成分以外にも、ゴム組成物の製造に一般に使用される配合剤、例えば、クレー等の補強用充填剤、酸化亜鉛、ステアリン酸、各種老化防止剤、オイル、ワックス、硫黄などの加硫剤、加硫促進剤などを適宜配合することができる。
加硫促進剤としては、N−tert−ブチル−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド(TBBS)、N−シクロヘキシル−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド(CBS)、N,N’−ジシクロヘキシル−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド(DZ)、メルカプトベンゾチアゾール(MBT)、ジベンゾチアゾリルジスルフィド(MBTS)、N,N’−ジフェニルグアニジン(DPG)などが挙げられる。なかでも、本発明の効果が良好に得られるという理由からTBBS、CBS、DZなどのスルフェンアミド系加硫促進剤が好ましく、TBBSがより好ましい。
本発明のゴム組成物の製造方法としては、公知の方法を用いることができ、例えば、前記各成分をオープンロール、バンバリーミキサーなどのゴム混練装置を用いて混練し、その後加硫する方法等により製造できる。
本発明のゴム組成物は、タイヤの各部材に使用できるが、なかでも、インナーライナー、ベルト、カーカス被覆用ゴム(特に、インナーライナー)に好適に適用できる。
本発明の空気入りタイヤは、上記ゴム組成物を用いて通常の方法によって製造される。すなわち、必要に応じて各種添加剤を配合したゴム組成物を、未加硫の段階でインナーライナー形状に合わせて押し出し加工し、タイヤ成型機上にて通常の方法にて成形し、他のタイヤ部材とともに貼り合わせ、未加硫タイヤを形成した後、加硫機中で加熱加圧してタイヤを製造することができる。
本発明の空気入りタイヤは、乗用車用タイヤ、トラック・バス用タイヤ、二輪車用タイヤ、競技用タイヤ等として好適に用いられ、特に乗用車用タイヤとしてより好適に用いられる。
実施例に基づいて、本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらのみに限定されるものではない。
以下、製造例で使用した各種薬品について、まとめて説明する。なお、薬品は必要に応じて定法に従い精製を行った。
高アンモニアタイプの天然ゴムラテックス:野村貿易(株)製のHytex
ノニオン系乳化剤:花王(株)製のエマルゲン106
シクロヘキサン:関東化学(株)製
1,3−ブタジエン:東京化成工業(株)製
テトラメチルエチレンジアミン:関東化学(株)製
n−ブチルリチウム:関東化学(株)製の1.6M n−ブチルリチウムヘキサン溶液
変性剤:アヅマックス社製の3−ジメチルアミノプロピルトリメトキシシラン(式(1)において、R、R及びR=メトキシ基、R及びR=メチル基、n=3)
2,6−ジ−tert−ブチル−p−クレゾール:大内新興化学工業(株)製のノクラック200
下記製造例により得られたENR、EBR、変性BRについて下記の評価を行った。
(エポキシ化率)
得られたENR又はEBRを重水素化クロロホルムに溶解し、核磁気共鳴(NMR(日本電子(株)製のJNM−ECAシリーズ))分光分析により、エポキシ化されていないジエンユニット数とエポキシ化されたジエンユニット数の比を求め、以下の算出式を用いて算出した。
(エポキシ化率E%)=(ゴムの主鎖に含まれるエポキシの数)/(ゴムの主鎖に含まれるジエンユニットの数(エポキシ化されたユニットも含む))×100
(数平均分子量(Mn)、重量平均分子量(Mw))
数平均分子量(Mn)、重量平均分子量(Mw)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフ(GPC)(東ソー(株)製HLC−8220GPC、検出器:示差屈折計、カラム:東ソー(株)製のTSKGEL SUPERMALTPORE HZ−M)を用い、標準ポリスチレンより換算した。
(ビニル含量)
ビニル含量(1,2−結合ブタジエン単位量)は、赤外吸収スペクトル分析法により測定した。
(製造例1)
高アンモニアタイプの天然ゴムラテックス(固形分60%)1500gを、攪拌棒、滴下ロート、コンデンサーを備えた5Lの容器に入れ、固形分が30%になるように蒸留水1.5Lを加えて希釈し、20℃に調整した。これにノニオン系乳化剤9gを攪拌しながら加えた。次に、ラテックスのpHが5〜6の範囲で推移するように2.8%アンモニア水で調整しながら、濃度2.5mol/Lの過酢酸800gをゆっくりと添加した。添加後、室温で5時間反応させた後、ギ酸またはメタノールを少しずつ加え、ゴム成分のみを凝固させたのち、蒸留水で数回洗浄し、乾燥させてENR(重合体1)を調製した。得られたENRのエポキシ化率は4.9モル%であった。
(製造例2)
高アンモニアタイプの天然ゴムラテックス(固形分60%)1500gを、攪拌棒、滴下ロート、コンデンサーを備えた5Lの容器に入れ、固形分が30%になるように蒸留水1.5Lを加えて希釈し、20℃に調整した。これにノニオン系乳化剤9gを攪拌しながら加えた。次に、ラテックスのpHが5〜6の範囲で推移するように2.8%アンモニア水で調整しながら、濃度12.5mol/Lの過酢酸800gをゆっくりと添加した。添加後、室温で5時間反応させた後、ギ酸またはメタノールを少しずつ加え、ゴム成分のみを凝固させたのち、蒸留水で数回洗浄し、乾燥させてENR(重合体2)を調製した。得られたENRのエポキシ化率は25.1モル%であった。
(製造例3)
攪拌棒、滴下ロート、コンデンサーを備えた5Lの容器中でBR(宇部興産(株)製のBRI50B(数平均分子量(Mn)=190000、シス含量=98質量%))300gをトルエン3Lに溶解し、ギ酸4gを投入した後、濃度30質量%の過酸化水素水12gを滴下し、温度40℃で4時間攪拌しながら反応させた。反応後に炭酸カルシウム水溶液を添加しポリマー溶液をpH7に調整した後、エタノール中に滴下し、析出させたポリマーを分離、乾燥させて、EBR(重合体3)を調製した。得られたEBRのエポキシ化率は4.1モル%、数平均分子量(Mn)は190000であった。
(製造例4)
攪拌棒、滴下ロート、コンデンサーを備えた5Lの容器中でBR(宇部興産(株)製のBR150B(数平均分子量(Mn)=190000、シス含量=98質量%))300gをトルエン3Lに溶解し、ギ酸4gを投入した後、濃度30質量%の過酸化水素水60gを滴下し、温度40℃で4時間攪拌しながら反応させた。反応後に炭酸カルシウム水溶液を添加しポリマー溶液をpH7に調整した後、エタノール中に滴下し、析出させたポリマーを分離、乾燥させて、EBR(重合体4)を調製した。得られたEBRのエポキシ化率は25.3モル%、数平均分子量(Mn)は190000であった。
(製造例5)
高アンモニアタイプの天然ゴムラテックス(固形分60%)1500gを、攪拌棒、滴下ロート、コンデンサーを備えた5Lの容器に入れ、固形分が30%になるように蒸留水1.5Lを加えて希釈し、20℃に調整した。これにノニオン系乳化剤9gを攪拌しながら加えた。次に、ラテックスのpHが5〜6の範囲で推移するように2.8%アンモニア水で調整しながら、濃度25mol/Lの過酢酸1200gをゆっくりと添加した。添加後、室温で5時間反応させた後、ギ酸またはメタノールを少しずつ加え、ゴム成分のみを凝固させたのち、蒸留水で数回洗浄し、乾燥させてENR(重合体5)を調製した。得られたENRのエポキシ化率は72.4モル%であった。
(製造例6)
十分に窒素置換した耐圧容器にシクロヘキサン15000ml、1,3−ブタジエン900mmol、テトラメチルエチレンジアミン0.2mmol、n−ブチルリチウム0.12mmolを加えて、40℃で48時間攪拌した。その後、変性剤0.12mmolを加えて反応を止め、反応溶液に2,6−ジ−tert−ブチル−p−クレゾール1gを添加後、再沈殿精製により変性ブタジエンゴム(変性BR)(重合体6)を得た。重量平均分子量(Mw)は、460000、ビニル含量は34質量%であった。
以下、実施例及び比較例で使用した各種薬品について、まとめて説明する。
NR:TSR20
BR:宇部興産(株)製のBR150B
IIR:エクソンモービル社製のクロロブチルHT1066
重合体1:上記製造例1で製造したエポキシ化天然ゴム
重合体2:上記製造例2で製造したエポキシ化天然ゴム
重合体3:上記製造例3で製造したエポキシ化ブタジエンゴム
重合体4:上記製造例4で製造したエポキシ化ブタジエンゴム
重合体5:上記製造例5で製造したエポキシ化天然ゴム
重合体6:上記製造例6で製造した変性ブタジエンゴム(末端変性ブタジエンゴム)
棒状シリカ:TOLSA社製のPANGEL AD(長さ:200〜2000nm、幅:5〜30nm、セピオライト鉱物の湿式粉砕品)
カーボンブラック:キャボットジャパン(株)製のショウブラックN550(DBP吸油量:121ml/100g、チッ素吸着比表面積(NSA):43m/g)
シリカ:テグッサ社製のULTRASIL VN3(球状のシリカ、窒素吸着比表面積(NSA):175m/g)
シランカップリング剤:テグッサ社製のSi75(ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)ジスルフィド)
アロマオイル:ジャパンエナジー社製のプロセスX−140
老化防止剤:フレキシス社製サントフレックス13
ステアリン酸:日油(株)製のステアリン酸「椿」
酸化亜鉛:三井金属鉱業(株)製の酸化亜鉛2種
硫黄:鶴見化学工業(株)製の粉末硫黄
加硫促進剤:大内新興化学工業(株)製のノクセラーNS(N−tert−ブチル−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド)
実施例及び比較例
表1に示す配合処方に従い、1.7Lバンバリーミキサーを用いて、硫黄及び加硫促進剤以外の材料を150℃の条件下で4分間混練りし、混練り物を得た。次に、得られた混練り物に硫黄及び加硫促進剤を添加し、オープンロールを用いて、90℃の条件下で4分間練り込み、未加硫ゴム組成物を得た。得られた未加硫ゴム組成物を170℃で12分間、2mm厚の金型でプレス加硫し、加硫ゴム組成物を得た。
得られた未加硫ゴム組成物を用いて厚み1.5mmのシートを作製し、タイヤのインナーライナー部分に適用して生タイヤを作製した。次に加硫工程において170℃で20分間プレス成形し、195/65R15サイズの試験用タイヤを作製した。
得られた未加硫ゴム組成物、加硫ゴム組成物、試験用タイヤを用いて以下の試験を行った。
(混練り加工性指数)
JIS K6300に準じて、130℃で所定の未加硫ゴム組成物のムーニー粘度を測定した。測定結果を、比較例1を100とした指数で示した。指数が大きいほどムーニー粘度が低く、加工が容易である(混練り加工性に優れる)ことを示す。
(混練り加工性指数)=(比較例1のムーニー粘度)/(各配合のムーニー粘度)×100
(低発熱性指数)
(株)岩本製作所製の粘弾性スペクトロメータを用いて、周波数10Hz、初期歪み10%および動歪2%の条件下で、70℃における加硫ゴム組成物の損失正接tanδを測定し、比較例1の低発熱性指数を100とし、下記計算式により、各配合のtanδを指数表示した。
なお、低発熱性指数が大きいほど、発熱が小さく、低発熱性(低燃費性)に優れることを示す。
(低発熱性指数)=(比較例1のtanδ)/(各配合のtanδ)×100
(耐屈曲疲労性指数)
(株)上島製作所の定応力/定歪み疲労試験機(FT−3100)を用い、ISO6943の方法に準拠して行った。ダンベル3号の試験片(加硫ゴム組成物)を用いて、1Hz、30%の歪みを繰り返し与え続け、試験片が破断するまでの回数を求め、比較例1を100として指数表示した。指数が大きいほど、耐屈曲疲労性に優れることを示す。
(耐空気透過性指数)
試験用タイヤをJIS規格リム15×6JJに組み付け、初期空気圧300KPaを封入し、90日間室温で放置し、空気圧の低下率を計算した。比較例1の空気圧の低下率を100とし、下記計算式により、各配合の空気圧の低下率を指数表示した。指数が大きいほど、耐空気透過性に優れることを示す。
(耐空気透過性指数)=(比較例1の空気圧の低下率)/(各配合の空気圧の低下率)×100
(操縦安定性)
試験用タイヤを国産FF2000ccの全輪に装着し、テストコースを実車走行し、ドライバーの官能評価により、操縦安定性を評価した。評価は10点満点とし、比較例1を6点として相対評価した。評点が大きいほど操縦安定性に優れている。
Figure 0005654409
表1より、特定のエポキシ化率のエポキシ化天然ゴム(ENR)と、特定のエポキシ化率のエポキシ化ブタジエンゴム(EBR)とを含み、これらの合計含有量が特定量以上であり、更に特定量のシリカを含む実施例は、混練り加工性、低発熱性、耐屈曲疲労性、耐空気透過性、操縦安定性がバランスよく得られた。
比較例4,7,8、実施例2より、特定のエポキシ化率のエポキシ化天然ゴム(ENR)と、特定のエポキシ化率のエポキシ化ブタジエンゴム(EBR)とを併用することにより、耐空気透過性を相乗的に向上できることが分かった。

Claims (8)

  1. エポキシ化率が15〜65モル%のエポキシ化天然ゴムと、エポキシ化率が15〜65モル%のエポキシ化ブタジエンゴムとを含み、
    前記エポキシ化天然ゴム及び前記エポキシ化ブタジエンゴムの合計含有量がゴム成分100質量%中65質量%以上であり、
    ゴム成分100質量部に対して、球状の形状を有する球状シリカを20〜100質量部含むタイヤ用ゴム組成物。
  2. 下記式(1);
    Figure 0005654409
    (式中、R、R及びRは、同一若しくは異なって、アルキル基、アルコキシ基、シリルオキシ基、アセタール基、カルボキシル基、メルカプト基又はこれらの誘導体を表す。R及びRは、同一若しくは異なって、水素原子又はアルキル基を表す。nは整数を表す。)で表される化合物により変性されたジエン系ゴムを含む請求項1記載のタイヤ用ゴム組成物。
  3. 平均幅3〜35nm、平均長さ50nm〜5μmの棒状又は針状の形状を有する棒状シリカを含む請求項1又は2記載のタイヤ用ゴム組成物。
  4. 前記棒状シリカが、セピオライト鉱物を解繊して得られたものである請求項3記載のタイヤ用ゴム組成物。
  5. ゴム成分100質量%中の前記エポキシ化天然ゴムの含有量が10〜90質量%、前記エポキシ化ブタジエンゴムの含有量が10〜90質量%である請求項1〜4のいずれかに記載のタイヤ用ゴム組成物。
  6. 前記エポキシ化ブタジエンゴムが、シス含量80質量%以上のブタジエンゴムをエポキシ化して得られたものである請求項1〜5のいずれかに記載のタイヤ用ゴム組成物。
  7. インナーライナー用ゴム組成物として用いられる請求項1〜6のいずれかに記載のタイヤ用ゴム組成物。
  8. 請求項1〜7のいずれかに記載のゴム組成物を用いた空気入りタイヤ。
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