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JP5644147B2 - 有機化合物、有機電界発光素子材料、有機電界発光素子用組成物、有機電界発光素子、有機el表示装置及び有機el照明 - Google Patents

有機化合物、有機電界発光素子材料、有機電界発光素子用組成物、有機電界発光素子、有機el表示装置及び有機el照明 Download PDF

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Description

本発明は、発光効率が高く、耐熱性を含めた駆動寿命に優れる有機電界発光素子に好適に用いられる発光材料として有用な化合物、さらに有機溶剤に対する溶解性が高く、湿式成膜法に好適に用いられうる有機化合物に関する。
近年、薄膜型の電界発光素子としては、無機材料を使用したものに代わり、有機薄膜を用いた有機電界発光素子の開発が行われるようになっている。有機電界発光素子は、通常、陽極と陰極との間に、正孔注入層、正孔輸送層、有機発光層、電子輸送層などを設けて形成され、各層に適した材料が開発されつつある。また、有機電界発光素子の発光色も赤、緑、青と、それぞれに開発が進んでいる。
しかしながら、青色有機電界発光素子については、効率、寿命、耐熱性の観点で満足できるものが実現されておらず、フルカラーディスプレイ用途への適用には制約があるという課題があった。
有機電界発光素子の各構成層の形成方法としては、真空蒸着法と湿式成膜法がある。このうち、真空蒸着法では、テレビやモニタ用の中・大型フルカラーパネルなどを製作する場合、歩留まりの観点で課題を有する。そのため、中でもこれら大面積の用途には湿式成膜法が好適である。
しかしながら、湿式成膜法で有機電界発光素子の有機層を形成するためには、有機層を形成する材料が溶剤に溶解し、かつ湿式成膜後にも素子の構成層として要求される高い性能を有することが望まれる。しかし、従来開発されている湿式成膜法用材料であっても、このような湿式成膜法に要求される条件を満たさないものが多かった。
例えば、特許文献1では、下記式で示される化合物を用いて、真空蒸着法によって作製した素子が開示されている。しかしながら、該化合物は、溶剤に対する溶解性が低く、湿式成膜法では用いられ難かった。
Figure 0005644147
また、特許文献2では、下記式で示される化合物を用いて、湿式成膜法によって作製した素子が開示されている。しかしながら、該化合物も、有機溶剤に対する溶解性が低く、湿式成膜法では用いられ難かった。
Figure 0005644147
特許文献3には下記材料が記載されているが、素子とした場合、十分な駆動寿命が得られなかった。
Figure 0005644147
また、特許文献4〜8には下記構造の化合物が開示されているが、真空蒸着法に供するものであったり、溶解性が不十分であったりして湿式成膜法に適するものとはいえなかった。
Figure 0005644147
国際公開第2000/39247号パンフレット 国際公開第2006/070712号パンフレット 特許4308294号公報 国際公開第2008−150872号パンフレット 国際公開第2008−147728号パンフレット 欧州特許出願公開第2100940号明細書 国際公開第2007−108666号パンフレット 特開2009−161466号公報
本発明は、種々の溶剤に可溶であり、有機電界発光素子の有機層を湿式成膜法で形成して、駆動電圧が低く、十分な寿命を有する有機電界発光素子を作製し得る有機化合物及び有機電界発光素子用組成物と、この有機電界発光素子用組成物を用いて湿式成膜法により形成された有機層を有する有機電界発光素子と、この有機電界発光素子を含む有機EL表示装置及び有機EL照明を提供することを課題とする。
本発明者らは、素子の駆動寿命が十分でない原因について鋭意検討した結果、発光材料の構造的な脆弱性と、有機溶剤に対する溶解性の不足による分散性不良に起因するものと推測した。
そこで更なる検討を行った結果、クリセンジアミン骨格を有し、その置換に特定の構造を有する化合物が、化学構造が堅牢であり、有機溶剤に対する溶解性が良好であることから分散性が向上し、上記課題が解決できることを見出して、本発明に到達した。
すなわち、本発明は、下記式(1)で表される有機化合物、並びにこれを用いた有機電界発光素子用組成物、有機電界発光素子、有機EL表示装置及び有機EL照明を提供するものである。
Figure 0005644147
(式中、R1〜R8は、任意の置換基を示し、n1〜n8は、0〜5の整数を示す。
但し、R1〜R8の少なくとも2つ以上は、直鎖又は分岐の、炭素数6以上のアルキル基、あるいは炭素数7以上のアラルキル基である。
尚、一分子中に複数のR1〜R8を含む場合は、複数含まれるR1〜R8は、同じでもよく、また異なっていてもよい。)
本発明の有機化合物(1)は、クリセン骨格上の2つのアミノ基に結合する芳香環の少なくとも1つをビフェニル骨格とし、さらに分子内に炭素数6以上のアルキル基、あるいは炭素数7以上のアラルキル基を導入することにより、アミノ基のN原子周辺の立体障害を生じさせ、同時に共役結合の拡がりによる電子的安定化及び、長鎖アルキルによる有機溶剤に対する溶解性が向上するものと推測される。
これにより、本発明の有機化合物(1)は、分散性の向上の効果による高い耐久性と有機溶剤に対する高い溶解度を両立できたものである。
その為、本発明の有機化合物(1)を含む層を有する有機電界発光素子は、湿式成膜法に最適であり、また駆動寿命が長い。
本発明の有機電界発光素子の構造の一例を模式的に示す断面図である。
以下に、本発明の実施の形態を詳細に説明するが、本発明は以下の実施の形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で種々に変形して実施することができる。
[語句の説明]
本発明において、単に「芳香環」と称した場合には、芳香族炭化水素環及び芳香族複素環のいずれも含むものとする。
本発明において、「(ヘテロ)アリール」と称した場合には、芳香族炭化水素環及び芳香族複素環のいずれも含むものとする。
本発明において、「置換基を有していてもよい」とは、置換基を1又は2以上有していてもよいことを意味するものとする。
<有機化合物>
本発明の有機化合物は、下記式(1)で表される有機化合物である。
Figure 0005644147
(式中、R1〜R8は、任意の置換基を示し、n1〜n8は、0〜5の整数を示す。
但し、R1〜R8の少なくとも2つ以上は、直鎖又は分岐の、炭素数6以上のアルキル基、あるいは炭素数7以上のアラルキル基である。
尚、一分子中に複数のR1〜R8を含む場合は、複数含まれるR1〜R8は、同じでもよく、また異なっていてもよい。)
[構造上の特徴]
本発明の有機化合物が、構造を堅牢なものとし、溶解性を向上させ分散性を向上させた理由を以下の通り推測する。
本発明の有機化合物は、クリセン骨格の2つのアミノ基に結合する芳香環の少なくとも1つをビフェニル骨格とし、さらに分子内に炭素数6以上のアルキル基、又は炭素数7以上のアラルキル基を導入した化合物である。
ビフェニル骨格の導入は、アミノ基と共役する部分が拡張されることとなり、アミノ基を中心とする部分に荷電した際に、電荷が非局在化して、有機化合物が安定化すると推測される。
また、炭素数6以上のアルキル基又は炭素数7以上のアラルキル基を導入することにより、立体障害を生じさせやすくなったり、アミノ基のN原子周辺を保護することで、N原子上に荷電した状態からの劣化を防ぐ効果がもたらされると推測される。
また、炭素数6以上のアルキル基又は炭素数7以上のアラルキル基を導入することで、溶剤に対する溶解性や分散性の向上が得られる。
以上の様に、本発明の有機化合物を湿式成膜法で形成する有機電界発光素子の有機層に用いることにより、有機電界発光素子の耐久性向上及び駆動寿命の向上につながる。
なお、本発明における湿式成膜法とは、スピンコート法、ディップコート法、ダイコート法、バーコート法、ブレードコート法、ロールコート法、スプレーコート法、キャピラリーコート法、インクジェット法、スクリーン印刷法、グラビア印刷法、フレキソ印刷法、オフセット印刷法及びノズルプリンティング法等の溶剤を含有するインクを用いて成膜する方法をいう。パターニングのし易さという点で、これらのうちダイコート法、ロールコート法、スプレーコート法、インクジェット法、フレキソ印刷法、及びノズルプリンティング法が好ましい。
以下に上記式(1)における各構成要素について詳細に説明する。
(R1〜R8について)
式中、R1〜R8は、水素原子又は任意の置換基を表す。
但し、R1〜R8の少なくとも2つ以上は、直鎖又は分岐の、炭素数6以上のアルキル基、あるいは炭素数7以上のアラルキル基である。
1〜R8の、任意の置換基としては、ハロゲン、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数6〜25の芳香族炭化水素基、炭素数3〜20の芳香族複素環基、炭素数1〜20のアルコキシ基、炭素数3〜20の(ヘテロ)アリールオキシ基、炭素数1〜20のアルキルチオ基、炭素数3〜20の(ヘテロ)アリールチオ基、シアノ基が挙げられる。これらの具体例は、下記置換基群Zのものと同一である。
これらのうち、化合物の安定性の面から水素原子、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数6〜25の芳香族炭化水素基が好ましく、水素原子、炭素数6〜25の芳香族炭化水素基が特に好ましい。
尚、一分子中に複数のR1〜R8を含む場合は、複数含まれるR1〜R8は、同じでもよく、また異なっていてもよい。
複数あるR1〜R8は、互いに結合して環を形成していてもよく、環を形成している場合、色調の制御や耐久性向上の点で、R2〜R4及びR6〜R8が環を形成しているのが好ましい。
式中のR1〜R3及びR5〜R7は、式(1)の窒素原子に対してオルト位に有さないことが、耐久性に優れる点から好ましい。従って、これらの置換基は、式(1)の窒素原子に対してメタ位又はパラ位に置換しているのが好ましい。
1〜R8の少なくとも2つ以上は、直鎖又は分岐の、炭素数6以上のアルキル基、あるいは炭素数7以上のアラルキル基である。ここで、炭素数6以上の直鎖又は分岐のアルキル基としては、炭素数6〜20の直鎖又は分岐のアルキル基が好ましく、さらに炭素数6〜12の直鎖又は分岐のアルキル基が好ましく、特にn−ヘキシル基、n−オクチル基、2−メチルペンチル基、2−エチルヘキシル基、デシル基、オクタデシル基が好ましい。炭素数7以上のアラルキル基としては、炭素数7〜20のアラルキル基が好ましく、さらに炭素数7〜20のフェニルアルキル基が好ましく、さらに炭素数7〜12のフェニルアルキル基が好ましく、さらにアルキル部分が分岐アルキル基である炭素数8〜12のフェニルアルキル基が好ましく、特にベンジル基、フェニルエチル基、フェニルジメチルメチル基、フェニルイソプロピルメチル基が好ましい。
また、これらの2つ以上の特定の炭素数を有するアルキル基又はアラルキル基は、R2、R4、R6及びR8のうちの2つ以上であるのが好ましく、特にR2、R4、R6及びR8のうちの2〜4つであるのが好ましい。さらに、これらのアルキル基又はアラルキル基は、式(1)中の窒素原子に対して、メタ位又はパラ位に置換しているのが好ましく、特にパラ位に置換しているのが好ましい。ここでR4及びR8はビフェニル部分のパラ位に置換しているのが好ましい。
1〜R8は、本発明の効果を損わない限り、さらに置換基を有していてもよい。
本発明の効果を損わない置換基としては、イオン性の基以外であればよいが、R1〜R8が有していてもよい置換基のより好適な具体例としては、以下のものが挙げられる。
[置換基群Z]
炭素数1〜20のアルキル基の例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、iso−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ヘキシル基、オクチル基、シクロヘキシル基、デシル基、オクタデシル基等が挙げられる。これらのうち、好ましくは、メチル基、エチル基、イソプロピル基であり、メチル基、エチル基が、原料が入手しやすく、また安価であるなどの点から好ましく、iso−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基は非極性溶剤に高い溶解性を持つために好ましい。
炭素数6〜25の芳香族炭化水素基の例としては、フェニル基、1−ナフチル基、2−ナフチル基などのナフチル基、9−フェナンチル基、3−フェナンチル基などのフェナンチル基、1−アントリル基、2−アントリル基、9−アントリル基などのアントリル基、1−ナフタセニル基、2−ナフタセニル基などのナフタセニル基、1−クリセニル基、2−クリセニル基、3−クリセニル基、4−クリセニル基、5−クリセニル基、6−クリセニル基などのクリセニル基、1−ピレニル基などのピレニル基、1−トリフェニレニル基などのトリフェニレニル基、1−コロネニル基などのコロネニル基、4−ビフェニル基、3−ビフェニル基などのビフェニル基等が挙げられ、化合物の安定性の面からフェニル基、2−ナフチル基、1−アントラニル基、9−フェナントリル基、9−アントラニル基、4−ビフェニル基、3−ビフェニル基が好ましく、フェニル基、2−ナフチル基、3−ビフェニル基が化合物の精製のし易さから特に好ましい。
炭素数3〜20の芳香族複素環基の例としては、2−チエニル基などのチエニル基、2−フリル基などのフリル基、2−イミダゾリル基などのイミダゾリル基、9−カルバゾリル基などのカルバゾリル基、2−ピリジル基などのピリジル基、1,3,5−トリアジン−2−イル基などのトリアジン−イル基等が挙げられる。中でも9−カルバゾリル基が化合物の安定性の面から好ましい。
炭素数1〜20のアルコキシ基の例としては、メトキシ基、エトキシ基、イソプロピルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基、オクタデシルオキシ基等が挙げられる。
炭素数3〜20の(ヘテロ)アリールオキシ基の例としては、フェノキシ基、1−ナフチルオキシ基、9−アントラニルオキシ基、2−チエニルオキシ基等が挙げられる。
炭素数1〜20のアルキルチオ基の例としては、メチルチオ基、エチルチオ基、イソプロピルチオ基、シクロヘキシルチオ基等が挙げられる。
炭素数3〜20の(ヘテロ)アリールチオ基の例としては、フェニルチオ基、1−ナフチルチオ基、9−アントラニルチオ基、2−チエニルチオ基等が挙げられる。
ハロゲンとしては、フッ素などが挙げられる。
(n1〜n8について)
1〜n8は、0〜5の整数を示す。
1〜n8のうち少なくとも2つは、有機溶剤に対する溶解性が向上する点で、1以上であることが好ましく、また耐久性の観点から3以下であることが好ましい。
[分子量について]
式(1)で表される有機化合物の分子量は、通常7000以下であり、化合物の精製の容易さを考えた場合、好ましくは分子量5000以下であり、溶剤に対する溶解性を考慮した場合、特に好ましくは3000以下、昇華精製による高純度化を考えた場合、最も好ましくは1500以下である。また、通常、式(1)で表される有機化合物の分子量は、500以上であり、化合物の熱的安定性を考えた場合、好ましくは分子量600以上である。
<具体例>
以下に、本発明の有機化合物の好ましい具体例を示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。
Figure 0005644147
[溶剤に対する溶解性について]
式(1)で表される有機化合物は、通常トルエンに対して、室温(25℃)で、0.5重量%以上溶解するものが好ましく、塗布時に均一な膜を形成させ易いことから、1.0重量%以上溶解するものが好ましく、さらに塗布膜の膜厚制御がしやすいことから、1.5重量%以上溶解するものがより好ましく、さらに長時間の保存安定性の点から、2.0重量%以上溶解するものが特に好ましく、2.5重量%以上溶解するものが最も好ましい。
<有機化合物の合成方法>
本発明の有機化合物は、目的とする化合物の構造に応じて原料を選択し、公知の手法を用いて合成することができる。
例えば、下図にしめすようにクリセンを原料とし、クリセン環のハロゲン化、別途既知の方法により合成された、あるいは市販の2級アリールアミンとのカップリング反応を組み合わせて実施することにより、合成できるが、これに限定されるものではない。
Figure 0005644147
(上記式中、A1〜A4は、アリール基を示す。)
<本発明の有機化合物の用途>
本発明の有機化合物は、発光材料、又は電荷輸送材料(電荷輸送性化合物)として用いることができ、また有機電界発素子における発光層の発光材料、電荷輸送材料として用いることが好ましく、特に発光材料として用いることが好ましい。
また、製造方法を簡便にできることから、本発明の有機化合物は、湿式成膜法で形成される有機層に用いることが好ましい。
尚、本発明の有機化合物は、有機電界発光素子の他に、電子写真感光体、光電変換素子、有機太陽電池、有機整流素子などにも好適に用いることができる。
<有機電界発光素子用組成物>
本発明の有機電界発光素子用組成物は、少なくとも本発明の有機化合物及び溶剤を含有する。
上記有機電界発光素子用組成物における本発明の有機化合物の含有量は、通常0.1重量%以上、好ましくは0.5重量%以上、通常50重量%以下、好ましくは10重量%以下である。この範囲とすることにより、発光効率の向上及び素子の低電圧化の効果が得られる。尚、前記有機化合物は組成物中に、1種のみ含まれていてもよく、2種以上が組み合わせて含まれていてもよい。
組成物に用いられる溶剤は、湿式成膜により本発明の有機化合物を含む層を形成するために用いる、揮発性を有する液体成分である。
溶剤は、本発明の有機化合物が良好に溶解する溶剤であれば特に限定されないが、以下の例が好ましい。
例えば、n−デカン、シクロヘキサン、エチルシクロヘキサン、デカリン、ビシクロヘキサン等のアルカン類;トルエン、キシレン、メチシレン、シクロヘキシルベンゼン、テトラリン等の芳香族炭化水素類;クロロベンゼン、ジクロロベンゼン、トリクロロベンゼン等のハロゲン化芳香族炭化水素類;1,2−ジメトキシベンゼン、1,3−ジメトキシベンゼン、アニソール、フェネトール、2−メトキシトルエン、3−メトキシトルエン、4−メトキシトルエン、2,3−ジメチルアニソール、2,4−ジメチルアニソール、ジフェニルエーテル等の芳香族エーテル類;酢酸フェニル、プロピオン酸フェニル、安息香酸メチル、安息香酸エチル、安息香酸エチル、安息香酸プロピル、安息香酸n−ブチル等の芳香族エステル類、シクロヘキサノン、シクロオクタノン、フェンコン等の脂環族ケトン類;シクロヘキサノール、シクロオクタノール等の脂環族アルコール類;メチルエチルケトン、ジブチルケトン等の脂肪族ケトン類;ブタノール、ヘキサノール等の脂肪族アルコール類;エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、プロピレングリコール−1−モノメチルエーテルアセタート(PGMEA)等の脂肪族エーテル類;等が挙げられる。
中でも好ましくは、アルカン類や芳香族炭化水素類である。これらの溶剤は1種類を単独で用いてもよく、また2種類以上を任意の組み合わせ、及び比率で用いてもよい。
また、より均一な膜を得るためには、成膜直後の液膜から溶剤が適当な速度で蒸発することが好ましい。このため、溶剤の沸点は通常80℃以上、好ましくは100℃以上、より好ましくは120℃以上、また、通常270℃以下、好ましくは250℃以下、より好ましくは沸点230℃以下である。
溶剤の使用量は、有機電界発光素子用組成物100重量%に対して、好ましくは10重量%以上、より好ましくは50重量%以上、特に好ましくは80重量%以上、また、好ましくは99.95重量%以下、より好ましくは99.9重量%以下、特に好ましくは99.8重量%以下である。含有量が下限を下回ると、粘性が高くなりすぎ、成膜作業性が低下する可能性がある。一方、上限を上回ると、成膜後、溶剤を除去して得られる膜の厚みが稼げなくなるため、成膜が困難となる傾向がある。
本発明の有機電界発光素子用組成物には、本発明の有機化合物や溶剤の他、有機電界発光素子、特に発光層に用いられる電荷輸送性化合物を含有することができる。
本発明の有機電界発光素子用組成物を用いて、発光層を形成する場合には、本発明の有機化合物をドーパント材料とし、他の電荷輸送性化合物をホスト材料として含んでいてもよいし、本発明の有機化合物をホスト材料とし、他の電荷輸送性化合物をドーパント材料として含んでいてもよい。また、ドーパント材料、ホスト材料ともに、本発明の有機化合物であってもよい。
他の電荷輸送性化合物としては、従来有機電界発光素子用材料として用いられているものを使用することができる。例えば、ナフタレン、ペリレン、アントラセン、ピレン、トリフェニレン、クリセン、ナフタセン、フェナントレン、コロネン、フルオランテン、ベンゾフェナントレン、フルオレン、アセトナフトフルオランテン、クマリン、p−ビス(2−フェニルエテニル)ベンゼン及びそれらの誘導体、キナクリドン誘導体、DCM(4−(dicyanomethylene)−2−methyl−6−(p−dimethylaminostyryl)−4H−pyran)系化合物、ベンゾピラン誘導体、ローダミン誘導体、ベンゾチオキサンテン誘導体、アザベンゾチオキサンテン、アリールアミノ基が置換された縮合芳香族環化合物、アリールアミノ基が置換されたスチリル誘導体等があげられる。
他の電荷輸送性化合物は、該組成物を100重量%とすると、通常1重量%以上、また、通常50重量%以下、好ましくは30重量%以下である。
有機電界発光素子用組成物中に含まれていてもよい電荷輸送性化合物の好ましい具体例を以下に示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。
Figure 0005644147
Figure 0005644147
Figure 0005644147
Figure 0005644147
有機電界発光素子用組成物には、必要に応じて、上記の化合物等の他に、さらに他の化合物を含有していてもよい。例えば、上記の溶剤の他に、別の溶剤を含有していてもよい。そのような溶剤としては、例えば、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド等のアミド類、ジメチルスルホキシド等が挙げられる。これらは1種類を単独で用いてもよく、また2種類以上を任意の組み合わせ、及び比率で用いてもよい。
また、その他の発光材料として、任意の公知材料を適用可能であり、蛍光発光材料あるいは燐光発光材料を単独若しくは複数を混合して使用できる。
尚、溶剤への溶解性を向上させる目的で、発光材料分子の対称性や剛性を低下させたり、あるいはアルキル基などの親油性置換基を導入したりすることも、重要である。
青色発光を与える蛍光色素としては、ペリレン、ピレン、アントラセン、クリセン、クマリン、p−ビス(2−フェニルエテニル)ベンゼン及びそれらの誘導体等が挙げられる。
中でも、クリセンの誘導体が好ましく、例えば、以下の具体例が挙げられる。
Figure 0005644147
緑色蛍光色素としては、キナクリドン誘導体、クマリン誘導体等が挙げられる。
黄色蛍光色素としては、ルブレン、ペリミドン誘導体等が挙げられる。
赤色蛍光色素としては、DCM系化合物、ベンゾピラン誘導体、ローダミン誘導体、ベンゾチオキサンテン誘導体、アザベンゾチオキサンテン等が挙げられる。
燐光発光材料としては、例えば周期表7ないし11族から選ばれる金属を含む有機金属錯体が挙げられる。
周期表7ないし11族から選ばれる金属を含む燐光性有機金属錯体における金属として好ましくは、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、銀、レニウム、オスミウム、イリジウム、白金、金等が挙げられる。
また、成膜性の向上を目的として、レベリング剤や消泡剤等の各種添加剤を含有してもよい。
<有機電界発光素子>
本発明の有機電界発光素子は、基板上に少なくとも陽極、陰極及びこれらの両極間に設けられた発光層を有するものであって、本発明の有機電界発光素子用組成物を用いて湿式成膜法により形成された層を有することを特徴とする。該湿式成膜法により形成された層は、該発光層であることが好ましい。
図1は本発明の有機電界発光素子に好適な構造例を示す断面の模式図であり、図1において、1は基板、2は陽極、3は正孔注入層、4は発光層、5は電子注入層、6は陰極を各々表す。
[1]基板
基板1は有機電界発光素子の支持体となるものであり、石英やガラスの板、金属板や金属箔、プラスチックフィルムやシートなどが用いられる。特にガラス板や、ポリエステル、ポリメタクリレート、ポリカーボネート、ポリスルホンなどの透明な合成樹脂の板が好ましい。合成樹脂基板を使用する場合にはガスバリア性に留意する必要がある。基板のガスバリア性が小さすぎると、基板を通過した外気により有機電界発光素子が劣化することがあるので好ましくない。このため、合成樹脂基板の少なくとも片面に緻密なシリコン酸化膜等を設けてガスバリア性を確保する方法も好ましい方法の一つである。
[2]陽極
基板1上には陽極2が設けられる。陽極2は発光層側の層(正孔注入層3又は発光層4など)への正孔注入の役割を果たすものである。
この陽極2は、通常、アルミニウム、金、銀、ニッケル、パラジウム、白金等の金属、インジウム及び/又はスズの酸化物などの金属酸化物、ヨウ化銅などのハロゲン化金属、カーボンブラック、或いは、ポリ(3−メチルチオフェン)、ポリピロール、ポリアニリン等の導電性高分子などにより構成される。
陽極2の形成は通常、スパッタリング法、真空蒸着法などにより行われることが多い。また、銀などの金属微粒子、ヨウ化銅などの微粒子、カーボンブラック、導電性の金属酸化物微粒子、導電性高分子微粉末などを用いて陽極を形成する場合には、適当なバインダー樹脂溶液に分散させて、基板1上に塗布することにより陽極2を形成することもできる。さらに、導電性高分子の場合は、電解重合により直接基板1上に薄膜を形成したり、基板1上に導電性高分子を塗布して陽極2を形成することもできる(Appl.Phys.Lett.,60巻,2711頁,1992年)。
陽極2は通常は単層構造であるが、所望により複数の材料からなる積層構造とすることも可能である。
陽極2の厚みは、必要とする透明性により異なる。透明性が必要とされる場合は、可視光の透過率を、通常60%以上、好ましくは80%以上とすることが望ましい。この場合、陽極の厚みは通常5nm以上、好ましくは10nm以上であり、また通常1000nm以下、好ましくは500nm以下程度である。不透明でよい場合は陽極2の厚みは任意であり、陽極2は基板1と同一でもよい。また、さらには上記の陽極2の上に異なる導電材料を積層することも可能である。
陽極に付着した不純物を除去し、イオン化ポテンシャルを調整して正孔注入性を向上させることを目的に、陽極表面を紫外線(UV)/オゾン処理したり、酸素プラズマ、アルゴンプラズマ処理したりすることは好ましい。
(正孔注入層)
正孔注入層3は、陽極2から発光層5へ正孔を輸送する層であり、通常、陽極2上に形成される。
本発明に係る正孔注入層3の形成方法は真空蒸着法でも、湿式成膜法でもよく、特に制限はないが、ダークスポット低減の観点から正孔注入層3を湿式成膜法により形成することが好ましい。
正孔注入層3の膜厚は、通常5nm以上、好ましくは10nm以上、また、通常1000nm以下、好ましくは500nm以下の範囲である。
<湿式成膜法による正孔注入層の形成>
湿式成膜により正孔注入層3を形成する場合、通常は、正孔注入層3を構成する材料を適切な溶剤(正孔注入層用溶剤)と混合して成膜用の組成物(正孔注入層形成用組成物)を調製し、この正孔注入層形成用組成物を適切な手法により、正孔注入層3の下層に該当する層(通常は、陽極)上に塗布して成膜し、乾燥することにより正孔注入層3を形成する。
(正孔輸送性化合物)
正孔注入層形成用組成物は通常、正孔注入層の構成材料として正孔輸送性化合物及び溶剤を含有する。
正孔輸送性化合物は、通常、有機電界発光素子の正孔注入層に使用される、正孔輸送性を有する化合物であれば、重合体などの高分子化合物であっても、単量体などの低分子化合物であってもよいが、高分子化合物であることが好ましい。
正孔輸送性化合物としては、陽極2から正孔注入層3への電荷注入障壁の観点から4.5eV〜6.0eVのイオン化ポテンシャルを有する化合物が好ましい。正孔輸送性化合物の例としては、芳香族アミン誘導体、フタロシアニン誘導体、ポルフィリン誘導体、オリゴチオフェン誘導体、ポリチオフェン誘導体、ベンジルフェニル誘導体、フルオレン基で3級アミンを連結した化合物、ヒドラゾン誘導体、シラザン誘導体、シラナミン誘導体、ホスファミン誘導体、キナクリドン誘導体、ポリアニリン誘導体、ポリピロール誘導体、ポリフェニレンビニレン誘導体、ポリチエニレンビニレン誘導体、ポリキノリン誘導体、ポリキノキサリン誘導体、カーボン等が挙げられる。
尚、本発明において誘導体とは、例えば、芳香族アミン誘導体を例にするならば、芳香族アミンそのもの及び芳香族アミンを主骨格とする化合物を含むものであり、重合体であっても、単量体であってもよい。
正孔注入層3の材料として用いられる正孔輸送性化合物は、このような化合物のうち何れか1種を単独で含有していてもよく、2種以上を含有していてもよい。2種以上の正孔輸送性化合物を含有する場合、その組み合わせは任意であるが、芳香族三級アミン高分子化合物1種又は2種以上と、その他の正孔輸送性化合物1種又は2種以上とを併用することが好ましい。
上記例示した中でも非晶質性、可視光の透過率の点から、芳香族アミン化合物が好ましく、特に芳香族三級アミン化合物が好ましい。ここで、芳香族三級アミン化合物とは、芳香族三級アミン構造を有する化合物であって、芳香族三級アミン由来の基を有する化合物も含む。
芳香族三級アミン化合物の種類は特に制限されないが、表面平滑化効果による均一な発光の点から、重量平均分子量が1000以上、1000000以下の高分子化合物(繰り返し単位が連なる重合型化合物)がさらに好ましい。芳香族三級アミン高分子化合物の好ましい例として、下記式(I)で表される繰り返し単位を有する高分子化合物が挙げられる。
Figure 0005644147
(式(I)中、Ar1及びAr2は、各々独立して、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基又は置換基を有していてもよい芳香族複素環基を示す。Ar3〜Ar5は、各々独立して、置換基を有していてもよい2価の芳香族炭化水素基又は置換基を有していてもよい2価の芳香族複素環基を示す。Yは、下記の連結基群の中から選ばれる連結基を示す。また、Ar1〜Ar5のうち、同一のN原子に結合する二つの基は互いに結合して環を形成してもよい。
Figure 0005644147
(上記各式中、Ar6〜Ar16は、各々独立して、置換基を有していてもよい1価もしくは2価の芳香族炭化水素基又は置換基を有していてもよい1価もしくは2価の芳香族複素環基を示す。R1及びR2は、各々独立して、水素原子又は任意の置換基を示す。))
Ar1〜Ar16の1価又は2価の芳香族炭化水素基及び芳香族複素環基としては、高分子化合物の溶解性、耐熱性、正孔注入・輸送性の点から、ベンゼン環、ナフタレン環、フェナントレン環、チオフェン環、ピリジン環由来の基が好ましく、ベンゼン環、ナフタレン環由来の基がさらに好ましい。
Ar1〜Ar16の1価又は2価の芳香族炭化水素基及び芳香族複素環基は、さらに置換基を有していてもよい。置換基の分子量としては、通常400以下、中でも250以下程度が好ましい。置換基としては、アルキル基、アルケニル基、アルコキシ基、芳香族炭化水素基、芳香族複素環基などが好ましい。
1及びR2が任意の置換基である場合、該置換基としては、アルキル基、アルケニル基、アルコキシ基、シリル基、シロキシ基、芳香族炭化水素基、芳香族複素環基などが挙げられる。
式(I)で表される繰り返し単位を有する芳香族三級アミン高分子化合物の具体例としては、国際公開第2005/089024号パンフレットに記載のものが挙げられる。
また、正孔輸送性化合物としては、ポリチオフェンの誘導体である3,4-ethylenedioxythiophene(3,4-エチレンジオキシチオフェン)を高分子量ポリスチレンスルホン酸中で重合してなる導電性ポリマー(PEDOT/PSS)もまた好ましい。また、このポリマーの末端をメタクリレート等でキャップしたものであってもよい。
さらに、正孔輸送性化合物としては、後述の[正孔輸送層]の項に記載の架橋性化合物を用いてもよい。架橋性化合物を用いる場合、成膜方法なども同様である。
正孔注入層形成用組成物中の、正孔輸送性化合物の濃度は本発明の効果を著しく損なわない限り任意であるが、膜厚の均一性の点で通常0.01重量%以上、好ましくは0.1重量%以上、さらに好ましくは0.5重量%以上、また、通常70重量%以下、好ましくは60重量%以下、さらに好ましくは50重量%以下である。この濃度が大きすぎると膜厚ムラが生じる可能性があり、また、小さすぎると成膜された正孔注入層に欠陥が生じる可能性がある。
(電子受容性化合物)
正孔注入層形成用組成物は正孔注入層の構成材料として、電子受容性化合物を含有していることが好ましい。
電子受容性化合物とは、酸化力を有し、上述の正孔輸送性化合物から一電子受容する能力を有する化合物が好ましく、具体的には、電子親和力が4eV以上である化合物が好ましく、5eV以上の化合物である化合物がさらに好ましい。
このような電子受容性化合物としては、例えば、トリアリールホウ素化合物、ハロゲン化金属、ルイス酸、有機酸、オニウム塩、アリールアミンとハロゲン化金属との塩、アリールアミンとルイス酸との塩よりなる群から選ばれる1種又は2種以上の化合物等が挙げられる。さらに具体的には、4−イソプロピル−4'−メチルジフェニルヨードニウムテトラキス(ペンダフルオロフェニル)ボラート、トリフェニルスルホニウムテトラフルオロボラート等の有機基の置換したオニウム塩(国際公開2005/089024号パンフレット);塩化鉄(III)(特開平11−251067号公報)、ペルオキソ二硫酸アンモニウム等の高原子価の無機化合物;テトラシアノエチレン等のシアノ化合物、トリス(ペンダフルオロフェニル)ボラン(特開2003−31365号公報)等の芳香族ホウ素化合物;フラーレン誘導体;ヨウ素;ポリスチレンスルホン酸イオン、アルキルベンゼンスルホン酸イオン、ショウノウスルホン酸イオン等のスルホン酸イオン等が挙げられる。
これらの電子受容性化合物は、正孔輸送性化合物を酸化することにより正孔注入層の導電率を向上させることができる。
正孔注入層或いは正孔注入層形成用組成物中の電子受容性化合物の正孔輸送性化合物に対する含有量は、通常0.1モル%以上、好ましくは1モル%以上である。但し、通常100モル%以下、好ましくは40モル%以下である。
(その他の構成材料)
正孔注入層の材料としては、本発明の効果を著しく損なわない限り、上述の正孔輸送性化合物や電子受容性化合物に加えて、さらに、その他の成分を含有させてもよい。その他の成分の例としては、各種の発光材料、電子輸送性化合物、バインダー樹脂、塗布性改良剤などが挙げられる。なお、その他の成分は、1種のみを用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
(溶剤)
湿式成膜法に用いる正孔注入層形成用組成物の溶剤のうち少なくとも1種は、上述の正孔注入層の構成材料を溶解しうる化合物であることが好ましい。また、この溶剤の沸点は通常110℃以上、好ましくは140℃以上、中でも200℃以上、通常400℃以下、中でも300℃以下であることが好ましい。溶剤の沸点が低すぎると、乾燥速度が速すぎ、膜質が悪化する可能性がある。また、溶剤の沸点が高すぎると乾燥工程の温度を高くする必要があし、他の層や基板に悪影響を与える可能性がある。
溶剤として例えば、エーテル系溶剤、エステル系溶剤、芳香族炭化水素系溶剤、アミド系溶剤などが挙げられる。
エーテル系溶剤としては、例えば、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、プロピレングリコール−1−モノメチルエーテルアセタート(PGMEA)等の脂肪族エーテル;1,2−ジメトキシベンゼン、1,3−ジメトキシベンゼン、アニソール、フェネトール、2−メトキシトルエン、3−メトキシトルエン、4−メトキシトルエン、2,3−ジメチルアニソール、2,4−ジメチルアニソール等の芳香族エーテル、等が挙げられる。
エステル系溶剤としては、例えば、酢酸フェニル、プロピオン酸フェニル、安息香酸メチル、安息香酸エチル、安息香酸プロピル、安息香酸n−ブチル等の芳香族エステル、等が挙げられる。
芳香族炭化水素系溶剤としては、例えば、トルエン、キシレン、シクロヘキシルベンゼン、3−イロプロピルビフェニル、1,2,3,4−テトラメチルベンゼン、1,4−ジイソプロピルベンゼン、シクロヘキシルベンゼン、メチルナフタレン等が挙げられる。
アミド系溶剤としては、例えば、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、等が挙げられる。
その他、ジメチルスルホキシド、等も用いることができる。
これらの溶剤は1種のみを用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で用いてもよい。
(成膜方法)
正孔注入層形成用組成物を調製後、この組成物を湿式成膜により、正孔注入層3の下層に該当する層(通常は、陽極2)上に塗布成膜し、乾燥することにより正孔注入層3を形成する。
塗布工程における温度は、組成物中に結晶が生じることによる膜の欠損を防ぐため、10℃以上が好ましく、50℃以下が好ましくい。
塗布工程における相対湿度は、本発明の効果を著しく損なわない限り限定されないが、通常0.01ppm以上、通常80%以下である。
塗布後、通常加熱等により正孔注入層形成用組成物の膜を乾燥させる。加熱工程において使用する加熱手段の例を挙げると、クリーンオーブン、ホットプレート、赤外線、ハロゲンヒーター、マイクロ波照射などが挙げられる。中でも、膜全体に均等に熱を与えるためには、クリーンオーブン及びホットプレートが好ましい。
加熱工程における加熱温度は、本発明の効果を著しく損なわない限り、正孔注入層形成用組成物に用いた溶剤の沸点以上の温度で加熱することが好ましい。また、正孔注入層に用いた溶剤が2種類以上含まれている混合溶剤の場合、少なくとも1種類がその溶剤の沸点以上の温度で加熱されるのが好ましい。溶剤の沸点上昇を考慮すると、加熱工程においては、好ましくは120℃以上、好ましくは410℃以下で加熱することが好ましい。
加熱工程において、加熱温度が正孔注入層形成用組成物の溶剤の沸点以上であり、かつ塗布膜の十分な不溶化が起こらなければ、加熱時間は限定されないが、好ましくは10秒以上、通常180分以下である。加熱時間が長すぎると他の層の成分が拡散する傾向があり、短すぎると正孔注入層が不均質になる傾向がある。加熱は2回に分けて行ってもよい。
<真空蒸着法による正孔注入層の形成>
真空蒸着により正孔注入層3を形成する場合には、正孔注入層3の構成材料(前述の正孔輸送性化合物、電子受容性化合物等)の1種又は2種以上を真空容器内に設置されたるつぼに入れ(2種以上の材料を用いる場合は各々のるつぼに入れ)、真空容器内を適当な真空ポンプで10-4Pa程度まで排気した後、るつぼを加熱して(2種以上の材料を用いる場合は各々のるつぼを加熱して)、蒸発量を制御して蒸発させ(2種以上の材料を用いる場合は各々独立に蒸発量を制御して蒸発させ)、るつぼと向き合って置かれた基板の陽極2上に正孔注入層3を形成させる。なお、2種以上の材料を用いる場合は、それらの混合物をるつぼに入れ、加熱、蒸発させて正孔注入層3を形成することもできる。
蒸着時の真空度は、本発明の効果を著しく損なわない限り限定されないが、通常0.1×10-6Torr(0.13×10-4Pa)以上、通常9.0×10-6Torr(12.0×10-4Pa)以下である。 蒸着速度は、本発明の効果を著しく損なわない限り限定されないが、通常0.1Å/秒以上、通常5.0Å/秒以下である。蒸着時の成膜温度は、本発明の効果を著しく損なわない限り限定されないが、好ましくは10℃以上で、好ましくは50℃以下で行われる。
[正孔輸送層]
本発明に係る正孔輸送層4の形成方法は真空蒸着法でも、湿式成膜法でもよく、特に制限はないが、ダークスポット低減の観点から正孔輸送層4を湿式成膜法により形成することが好ましい。
正孔輸送層4は、正孔注入層がある場合には正孔注入層3の上に、正孔注入層3が無い場合には陽極2の上に形成することができる。 また、本発明の有機電界発光素子は、正孔輸送層を省いた構成であってもよい。
正孔輸送層4を形成する材料としては、正孔輸送性が高く、かつ、注入された正孔を効率よく輸送することができる材料であることが好ましい。そのために、イオン化ポテンシャルが小さく、可視光の光に対して透明性が高く、正孔移動度が大きく、安定性に優れ、トラップとなる不純物が製造時や使用時に発生しにくいことが好ましい。また、多くの場合、発光層5に接するため、発光層5からの発光を消光したり、発光層5との間でエキサイプレックスを形成して効率を低下させたりしないことが好ましい。
このような正孔輸送層4の材料としては、従来、正孔輸送層の構成材料として用いられている材料であればよく、例えば、前述の正孔注入層3に使用される正孔輸送性化合物として例示したものが挙げられる。また、アリールアミン誘導体、フルオレン誘導体、スピロ誘導体、カルバゾール誘導体、ピリジン誘導体、ピラジン誘導体、ピリミジン誘導体、トリアジン誘導体、キノリン誘導体、フェナントロリン誘導体、フタロシアニン誘導体、ポルフィリン誘導体、シロール誘導体、オリゴチオフェン誘導体、縮合多環芳香族誘導体、金属錯体などが挙げられる。
また、例えば、ポリビニルカルバゾール誘導体、ポリアリールアミン誘導体、ポリビニルトリフェニルアミン誘導体、ポリフルオレン誘導体、ポリアリーレン誘導体、テトラフェニルベンジジンを含有するポリアリーレンエーテルサルホン誘導体、ポリアリーレンビニレン誘導体、ポリシロキサン誘導体、ポリチオフェン誘導体、ポリ(p−フェニレンビニレン)誘導体等が挙げられる。これらは、交互共重合体、ランダム重合体、ブロック重合体又はグラフト共重合体のいずれであってもよい。また、主鎖に枝分かれがあり末端部が3つ以上ある高分子や、所謂デンドリマーであってもよい。
中でも、ポリアリールアミン誘導体やポリアリーレン誘導体が好ましい。
ポリアリールアミン誘導体としては、下記式(II)で表される繰り返し単位を含む重合体であることが好ましい。特に、下記式(II)で表される繰り返し単位からなる重合体であることが好ましく、この場合、繰り返し単位それぞれにおいて、Ara又はArbが異なっているものであってもよい。
Figure 0005644147
(式(II)中、Ara及びArbは、各々独立して、置換基を有していてもよい、1価もしくは2価の芳香族炭化水素基又は1価もしくは2価の芳香族複素環基を表す。)
置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基としては、例えば、ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環、フェナントレン環、ペリレン環、テトラセン環、ピレン環、ベンズピレン環、クリセン環、トリフェニレン環、アセナフテン環、フルオランテン環、フルオレン環などの、6員環の単環又は2〜5縮合環由来の基及びこれらの環が2環以上直接結合で連結してなる基が挙げられる。
置換基を有していてもよい芳香族複素環基としては、例えばフラン環、ベンゾフラン環、チオフェン環、ベンゾチオフェン環、ピロール環、ピラゾール環、イミダゾール環、オキサジアゾール環、インドール環、カルバゾール環、ピロロイミダゾール環、ピロロピラゾール環、ピロロピロール環、チエノピロール環、チエノチオフェン環、フロピロール環、フロフラン環、チエノフラン環、ベンゾイソオキサゾール環、ベンゾイソチアゾール環、ベンゾイミダゾール環、ピリジン環、ピラジン環、ピリダジン環、ピリミジン環、トリアジン環、キノリン環、イソキノリン環、シノリン環、キノキサリン環、フェナントリジン環、ベンゾイミダゾール環、ペリミジン環、キナゾリン環、キナゾリノン環、アズレン環などの、5又は6員環の単環又は2〜4縮合環由来の基及びこれらの環が2環以上直接結合で連結してなる基が挙げられる。
有機溶剤に対して溶解性、耐熱性の点から、Ara及びArbは、各々独立に、ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環、フェナントレン環、トリフェニレン環、ピレン環、チオフェン環、ピリジン環、フルオレン環からなる群より選ばれる環由来の基やベンゼン環が2環以上連結してなる基(例えば、ビフェニル基(ビフェニレン基)やターフェニル基(ターフェニレン基))が好ましい。
中でも、ベンゼン環由来の基(フェニル基)、ベンゼン環が2環連結してなる基(ビフェニル基)及びフルオレン環由来の基(フルオレニル基)が好ましい。
Ara及びArbにおける芳香族炭化水素基及び芳香族複素環基が有していてもよい置換基としては、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルコキシカルボニル基、ジアルキルアミノ基、ジアリールアミノ基、アシル基、ハロゲン原子、ハロアルキル基、アルキルチオ基、アリールチオ基、シリル基、シロキシ基、シアノ基、芳香族炭化水素環基、芳香族複素環基などが挙げられる。
ポリアリーレン誘導体としては、前記式(II)におけるAraやArbとして例示した置換基を有していてもよい、芳香族炭化水素基又は芳香族複素環基などのアリーレン基をその繰り返し単位に有する重合体が挙げられる。
ポリアリーレン誘導体としては、下記式(III−1)及び/又は下記式(III−2)からなる繰り返し単位を有する重合体が好ましい。
Figure 0005644147
(式(III−1)中、Ra、Rb、Rc及びRdは、各々独立に、アルキル基、アルコキシ基、フェニルアルキル基、フェニルアルコキシ基、フェニル基、フェノキシ基、アルキルフェニル基、アルコキシフェニル基、アルキルカルボニル基、アルコキシカルボニル基、又はカルボキシ基を表す。t及びsは、各々独立に、0〜3の整数を表す。t又はsが2以上の場合、一分子中に含まれる複数のRa又はRbは同一であっても異なっていてもよく、隣接するRa又はRb同士で環を形成していてもよい。)
Figure 0005644147
(式(III−2)中、Re及びRfは、各々独立に、上記式(III−1)におけるRa、Rb、Rc又はRdと同義である。r及びuは、各々独立に、0〜3の整数を表す。r又はuが2以上の場合、一分子中に含まれる複数のRe及びRfは同一であっても異なっていてもよく、隣接するRe又はRf同士で環を形成していてもよい。Xは、5員環又は6員環を構成する原子又は原子群を表す。)
Xの具体例としては、―O―、―BR―、―NR―、―SiR2―、―PR―、―SR―、―CR2―又はこれらが結合してなる基である。尚、Rは、水素原子又は任意の有機基を表す。本発明における有機基とは、少なくとも一つの炭素原子を含む基である。
また、ポリアリーレン誘導体としては、前記式(III−1)及び/又は前記式(III−2)からなる繰り返し単位に加えて、さらに下記式(III−3)で表される繰り返し単位を有することが好ましい。
Figure 0005644147
(式(III−3)中、Arc〜Arjは、各々独立に、置換基を有していてもよい、1価もしくは2価の芳香族炭化水素基又は1価もしくは2価の芳香族複素環基を表す。v及びwは、各々独立に0又は1を表す。)
Arc〜Arjの具体例としては、前記式(II)における、Ara及びArbと同様である。
上記式(III−1)〜(III−3)の具体例及びポリアリーレン誘導体の具体例等は、特開2008-98619号公報に記載のものなどが挙げられる。
湿式成膜法で正孔輸送層4を形成する場合は、上記正孔注入層3の形成と同様にして、正孔輸送層形成用組成物を調製した後、湿式成膜後、加熱乾燥させる。
正孔輸送層形成用組成物には、上述の正孔輸送性化合物の他、溶剤を含有する。用いる溶剤は上記正孔注入層形成用組成物に用いたものと同様である。また、成膜条件、加熱乾燥条件等も正孔注入層3の形成の場合と同様である。
真空蒸着法により正孔輸送層を形成する場合もまた、その成膜条件等は上記正孔注入層3の形成の場合と同様である。
正孔輸送層4は、上記正孔輸送性化合物の他、各種の発光材料、電子輸送性化合物、バインダー樹脂、塗布性改良剤などを含有していてもよい。
正孔輸送層4はまた、架橋性化合物を架橋して形成される層であってもよい。架橋性化合物は、架橋性基を有する化合物であって、架橋することにより網目状高分子化合物を形成する。
この架橋性基の例を挙げると、オキセタン、エポキシなどの環状エーテル由来の基;ビニル基、トリフルオロビニル基、スチリル基、アクリル基、メタクリロイル、シンナモイル等の不飽和二重結合由来の基;ベンゾシクロブテン由来の基などが挙げられる。
架橋性化合物は、モノマー、オリゴマー、ポリマーのいずれであってもよい。 架橋性化合物は1種のみを有していてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で有していてもよい。
架橋性化合物としては、架橋性基を有する正孔輸送性化合物を用いることが好ましい。正孔輸送性化合物としては、上記の例示したものが挙げられ、これら正孔輸送性化合物に対して、架橋性基が主鎖又は側鎖に結合しているものが挙げられる。特に架橋性基は、アルキレン基等の連結基を介して、主鎖に結合していることが好ましい。また、特に正孔輸送性化合物としては、架橋性基を有する繰り返し単位を含む重合体であることが好ましく、上記式(II)や式(III−1)〜(III−3)に架橋性基が直接又は連結基を介して結合した繰り返し単位を有する重合体であることが好ましい。
架橋性化合物としては、架橋性基を有する正孔輸送性化合物を用いることが好ましい。正孔輸送性化合物の例を挙げると、ピリジン誘導体、ピラジン誘導体、ピリミジン誘導体、トリアジン誘導体、キノリン誘導体、フェナントロリン誘導体、カルバゾール誘導体、フタロシアニン誘導体、ポルフィリン誘導体等の含窒素芳香族化合物誘導体;トリフェニルアミン誘導体;シロール誘導体;オリゴチオフェン誘導体、縮合多環芳香族誘導体、金属錯体などが挙げられる。その中でも、ピリジン誘導体、ピラジン誘導体、ピリミジン誘導体、トリアジン誘導体、キノリン誘導体、フェナントロリン誘導体、カルバゾール誘導体等の含窒素芳香族誘導体;トリフェニルアミン誘導体、シロール誘導体、縮合多環芳香族誘導体、金属錯体などが好ましく、特に、トリフェニルアミン誘導体がより好ましい。
架橋性化合物を架橋して正孔輸送層4を形成するには、通常、架橋性化合物を溶剤に溶解又は分散した正孔輸送層形成用組成物を調製して、湿式成膜により成膜して架橋させる。
正孔輸送層形成用組成物には、架橋性化合物の他、架橋反応を促進する添加物を含んでいてもよい。架橋反応を促進する添加物の例を挙げると、アルキルフェノン化合物、アシルホスフィンオキサイド化合物、メタロセン化合物、オキシムエステル化合物、アゾ化合物、オニウム塩等の重合開始剤及び重合促進剤;縮合多環炭化水素、ポルフィリン化合物、ジアリールケトン化合物等の光増感剤;などが挙げられる。
また、さらに、レベリング剤、消泡剤等の塗布性改良剤;電子受容性化合物;バインダー樹脂;などを含有していてもよい。
正孔輸送層形成用組成物は、架橋性化合物を通常0.01重量%以上、好ましくは0.05重量%以上、さらに好ましくは0.1重量%以上、通常50重量%以下、好ましくは20重量%以下、さらに好ましくは10重量%以下含有する。
このような濃度で架橋性化合物を含む正孔輸送層形成用組成物を下層(通常は正孔注入層3)上に成膜後、加熱及び/又は光などの活性エネルギー照射により、架橋性化合物を架橋させて網目状高分子化合物を形成する。
成膜時の温度、湿度などの条件は、前記正孔注入層3の湿式成膜時と同様である。
成膜後の加熱の手法は特に限定されない。加熱温度条件としては、通常120℃以上、好ましくは400℃以下である。
加熱時間としては、通常1分以上、好ましくは24時間以下である。加熱手段としては特に限定されないが、塗布膜された層を有する積層体をホットプレート上に載せたり、オーブン内で加熱するなどの手段が用いられる。例えば、ホットプレート上で120℃以上、1分間以上加熱する等の条件を用いることができる。
光などの活性エネルギー照射による場合には、超高圧水銀ランプ、高圧水銀ランプ、ハロゲンランプ、赤外ランプ等の紫外・可視・赤外光源を直接用いて照射する方法、あるいは前述の光源を内蔵するマスクアライナ、コンベア型光照射装置を用いて照射する方法などが挙げられる。光以外の活性エネルギー照射では、例えばマグネトロンにより発生させたマイクロ波を照射する装置、いわゆる電子レンジを用いて照射する方法が挙げられる。照射時間としては、膜の溶解性を低下させるために必要な条件を設定することが好ましいが、通常、0.1秒以上、好ましくは10時間以下照射される。
加熱及び光などの活性エネルギー照射は、それぞれ単独、あるいは組み合わせて行ってもよい。組み合わせる場合、実施する順序は特に限定されない。
このようにして形成される正孔輸送層4の膜厚は、通常5nm以上、好ましくは10nm以上であり、また通常300nm以下、好ましくは100nm以下である。
[4]発光層
正孔注入層3の上には通常発光層4が設けられる。発光層4は例えば前述の発光材料を含む層であり、電界を与えられた電極間において、陽極2から正孔注入層3を通じて注入された正孔と、陰極6から電子輸送層5を通じて注入された電子との再結合により励起されて、主たる発光源となる層である。発光層4は発光材料(ドーパント)と1種又は2種以上のホスト材料を含むことが好ましく、発光層4は本発明の有機化合物をホスト材料として含むことがさらに好ましく、真空蒸着法で形成してもよいが、本発明の有機電界発光素子用組成物を用い、湿式成膜法によって作製された層であることが特に好ましい。
ここで、湿式成膜法とは、前述の如く、溶剤を含む組成物を、スピンコート法、ディップコート法、ダイコート法、バーコート法、ブレードコート法、ロールコート法、スプレーコート法、キャピラリーコート法、インクジェット法、スクリーン印刷法、グラビア印刷法、フレキソ印刷法等湿式で成膜される方法をいう。
なお、発光層4は、本発明の性能を損なわない範囲で、他の材料、成分を含んでいてもよい。
一般に有機電界発光素子において、同じ材料を用いた場合、電極間の膜厚が薄い方が、実効電界が大きくなる為、注入される電流が多くなるので、駆動電圧は低下する。その為、電極間の総膜厚は薄い方が、有機電界発光素子の駆動電圧は低下するが、あまりに薄いと、ITO等の電極に起因する突起により短絡が発生する為、ある程度の膜厚が必要となる。
本発明においては、発光層4以外に、正孔注入層3及び後述の電子輸送層5等の有機層を有する場合、発光層4と正孔注入層3や電子輸送層5等の他の有機層とを合わせた総膜厚は通常30nm以上、好ましくは50nm以上であり、さらに好ましくは100nm以上で、通常1000nm以下、好ましくは500nm以下であり、さらに好ましくは300nm以下である。また、発光層4以外の正孔注入層3や後述の電子注入層5の導電性が高い場合、発光層4に注入される電荷量が増加する為、例えば正孔注入層3の膜厚を厚くして発光層4の膜厚を薄くし、総膜厚をある程度の膜厚を維持したまま駆動電圧を下げることも可能である。
よって、発光層4の膜厚は、通常10nm以上、好ましくは20nm以上で、通常300nm以下、好ましくは200nm以下である。なお、本発明の素子が、陽極及び陰極の両極間に、発光層4のみを有する場合の発光層4の膜厚は、通常30nm以上、好ましくは50nm以上、通常500nm以下、好ましくは300nm以下である。
[5]電子注入層
電子注入層5は陰極6から注入された電子を効率よく発光層4へ注入する役割を果たす。電子注入を効率よく行うには、電子注入層5を形成する材料は、仕事関数の低い金属が好ましく、ナトリウムやセシウム等のアルカリ金属、バリウムやカルシウムなどのアルカリ土類金属が用いられる。
電子注入層5の膜厚は0.1〜5nmが好ましい。
また、陰極6と発光層4又は後述の電子輸送層8との界面にLiF、MgF2、Li2O、Cs2CO3等の極薄絶縁膜(0.1〜5nm)を挿入することも、素子の効率を向上させる有効な方法である(Appl.Phys.Lett.,70巻,152頁,1997年;特開平10−74586号公報;IEEETrans.Electron.Devices,44巻,1245頁,1997年;SID 04 Digest,154頁)。
さらに、後述するバソフェナントロリン等の含窒素複素環化合物や8−ヒドロキシキノリンのアルミニウム錯体などの金属錯体に代表される有機電子輸送材料に、ナトリウム、カリウム、セシウム、リチウム、ルビジウム等のアルカリ金属をドープする(特開平10−270171号公報、特開2002−100478号公報、特開2002−100482号公報などに記載)ことにより、電子注入・輸送性が向上し優れた膜質を両立させることが可能となるため好ましい。この場合の膜厚は通常5nm以上、好ましくは10nm以上で、通常200nm以下、好ましくは100nm以下である。
電子注入層5は、発光層4と同様にして湿式成膜法、或いは真空蒸着法により発光層4上に積層することにより形成される。真空蒸着法の場合には、真空容器内に設置されたるつぼ又は金属ボートに蒸着源を入れ、真空容器内を適当な真空ポンプで10-4Pa程度にまで排気した後、るつぼ又は金属ボートを加熱して蒸発させ、るつぼ又は金属ボートと向き合って置かれた基板上に電子注入層を形成する。
アルカリ金属の蒸着は、クロム酸アルカリ金属と還元剤をニクロムに充填したアルカリ金属ディスペンサーを用いて行う。このディスペンサーを真空容器内で加熱することにより、クロム酸アルカリ金属が還元されてアルカリ金属が蒸発される。有機電子輸送材料とアルカリ金属とを共蒸着する場合は、有機電子輸送材料を真空容器内に設置されたるつぼに入れ、真空容器内を適当な真空ポンプで10-4Pa程度にまで排気した後、各々のるつぼ及びディスペンサーを同時に加熱して蒸発させ、るつぼ及びディスペンサーと向き合って置かれた基板上に電子注入層を形成する。
このとき、電子注入層5の膜厚方向において均一に共蒸着されるが、膜厚方向において濃度分布があっても構わない。
なお、電子注入層5は、これを省略してもよい。
[6]陰極
陰極6は、発光層側の層(電子注入層5又は発光層4など)に電子を注入する役割を果たす。陰極6として用いられる材料は、前記陽極2に使用される材料を用いることが可能であるが、効率よく電子注入を行うには、仕事関数の低い金属が好ましく、スズ、マグネシウム、インジウム、カルシウム、アルミニウム、銀等の適当な金属又はそれらの合金が用いられる。具体例としては、マグネシウム−銀合金、マグネシウム−インジウム合金、アルミニウム−リチウム合金等の低仕事関数合金電極が挙げられる。
陰極6の膜厚は通常、陽極2と同様である。低仕事関数金属から成る陰極を保護する目的で、この上にさらに、仕事関数が高く大気に対して安定な金属層を積層することは素子の安定性を増す。この目的のために、アルミニウム、銀、銅、ニッケル、クロム、金、白金等の金属が使われる。
[7]その他の構成層
以上、図1に示す層構成の素子を中心に説明してきたが、本発明の有機電界発光素子における陽極2及び陰極6と発光層4との間には、その性能を損なわない限り、上記説明にある層の他にも、任意の層を有していてもよく、また発光層4以外の任意の層を省略してもよい。
有してもよい層としては例えば、電子輸送層7が挙げられる。電子輸送層7は素子の発光効率をさらに向上させることを目的として、発光層4と電子注入層5との間に設けられる。
電子輸送層7は、電界を与えられた電極間において陰極6から注入された電子を効率よく発光層4の方向に輸送することができる化合物より形成される。電子輸送層7に用いられる電子輸送性化合物としては、陰極6又は電子注入層5からの電子注入効率が高く、かつ、高い電子移動度を有し注入された電子を効率よく輸送することができる化合物であることが必要である。
このような条件を満たす材料としては、8−ヒドロキシキノリンのアルミニウム錯体などの金属錯体(特開昭59−194393号公報)、10−ヒドロキシベンゾ[h]キノリンの金属錯体、オキサジアゾール誘導体、ジスチリルビフェニル誘導体、シロール誘導体、3−又は5−ヒドロキシフラボン金属錯体、ベンズオキサゾール金属錯体、ベンゾチアゾール金属錯体、トリスベンズイミダゾリルベンゼン(米国特許第5,645,948号)、キノキサリン化合物(特開平6−207169号公報)、フェナントロリン誘導体(特開平5−331459号公報)、2−t−ブチル−9,10−N,N'−ジシアノアントラキノンジイミン、n型水素化非晶質炭化シリコン、n型硫化亜鉛、n型セレン化亜鉛などが挙げられる。
電子輸送層7の膜厚は、通常下限は1nm、好ましくは5nm程度であり、上限は通常300nm、好ましくは100nm程度である。
電子輸送層7は、正孔注入層3と同様にして湿式成膜法、或いは真空蒸着法により発光層4上に積層することにより形成される。通常は、真空蒸着法が用いられる。
また、特に、発光物質として燐光材料を用いたり、青色発光材料を用いたりする場合、正孔阻止層8を設けることも効果的である。正孔阻止層8は正孔と電子を発光層4内に閉じこめて、発光効率を向上させる機能を有する。即ち、正孔阻止層8は、発光層4から移動してくる正孔が電子輸送層7に到達するのを阻止することで、発光層4内で電子との再結合確率を増やし、生成した励起子を発光層4内に閉じこめる役割と、電子輸送層8から注入された電子を効率よく発光層4の方向に輸送する役割がある。
正孔阻止層8は、陽極2から移動してくる正孔を陰極6に到達するのを阻止する役割と、陰極6から注入された電子を率よく発光層4の方向に輸送することができる化合物により、発光層4の上に、発光層4の陰極6側の界面に接するように積層形成される。
正孔阻止層8を構成する材料に求められる物性としては、電子移動度が高く正孔移動度が低いこと、エネルギーギャップ(HOMO、LUMOの差)が大きいこと、励起三重項準位(T1)が高いことが挙げられる。
このような条件を満たす正孔阻止層材料としては、ビス(2−メチル−8−キノリノラト)(フェノラト)アルミニウム、ビス(2−メチル−8−キノリノラト)(トリフェニルシラノラト)アルミニウム等の混合配位子錯体、ビス(2−メチル−8−キノラト)アルミニウム−μ−オキソ−ビス−(2−メチル−8−キノリラト)アルミニウム二核金属錯体等の金属錯体、ジスチリルビフェニル誘導体等のスチリル化合物(特開平11−242996)、3−(4−ビフェニルイル)−4−フェニル−5(4−tert−ブチルフェニル)−1,2,4−トリアゾール等のトリアゾール誘導体(特開平7−41759号公報)、バソクプロイン等のフェナントロリン誘導体(特開平10−79297号公報)が挙げられる。
さらに、国際公開第2005/022962号パンフレットに記載の2,4,6位が置換されたピリジン環を少なくとも1個有する化合物も正孔阻止材料として好ましい。
正孔阻止層8の膜厚は、通常0.3nm以上、好ましくは0.5nm以上で、通常100nm以下、好ましくは50nm以下である。
正孔阻止層8も正孔注入層3と同様の方法で形成することができるが、通常は真空蒸着法が用いられる。
電子輸送層7及び正孔阻止層8は必要に応じて、適宜設ければよく、1)電子輸送層のみ、2)正孔阻止層のみ、3)正孔阻止層/電子輸送層の積層、4)用いない、等、用法がある。
正孔阻止層8と同様の目的で、正孔注入層3と発光層4の間に電子阻止層9を設けることも効果的である。電子阻止層9は、発光層4から移動してくる電子が正孔注入層3に到達するのを阻止することで、発光層4内で正孔との再結合確率を増やし、生成した励起子を発光層4内に閉じこめる役割と、正孔注入層3から注入された正孔を効率よく発光層4の方向に輸送する役割がある。
電子阻止層9に求められる特性としては、正孔輸送性が高く、エネルギーギャップ(HOMO、LUMOの差)が大きいこと、励起三重項準位(T1)が高いことが挙げられる。また、発光層4を湿式成膜法で形成する場合、電子阻止層9も湿式成膜法で形成することが、素子製造が容易となるため、好ましい。
このため、電子阻止層9も湿式成膜適合性を有することが好ましく、このような電子阻止層9に用いられる材料としては、本発明の有機化合物の他、F8−TFBに代表されるジオクチルフルオレンとトリフェニルアミンの共重合体(国際公開第2004/084260号パンフレット)等が挙げられる。
なお、図1とは逆の構造、即ち、基板1上に陰極6、電子注入層5、発光層4、正孔注入層3、陽極2の順に積層することも可能であり、既述したように少なくとも一方が透明性の高い2枚の基板の間に本発明の有機電界発光素子を設けることも可能である。同様に、前記各層構成とは逆の構造に積層することも可能である。
さらには、図1に示す層構成を複数段重ねた構造(発光ユニットを複数積層させた構造)とすることも可能である。その際には段間(発光ユニット間)の界面層(陽極がITO、陰極がAlの場合はその2層)の代わりに、例えばV25等を電荷発生層(CGL)として用いると段間の障壁が少なくなり、発光効率・駆動電圧の観点からより好ましい。
本発明は、有機電界発光素子が、単一の素子、アレイ状に配置された構造からなる素子、陽極と陰極がX−Yマトリックス状に配置された構造のいずれにおいても適用することができる。
<有機EL表示装置>
本発明の有機EL表示装置は、上述の本発明の有機電界発光素子を用いたものである。本発明の有機EL表示装置の型式や構造については特に制限はなく、本発明の有機電界発光素子を用いて常法に従って組み立てることができる。
例えば、「有機ELディスプレイ」(オーム社、平成16年8月20日発行、時任静士、安達千波矢、村田英幸著)に記載されているような方法で、本発明の有機EL表示装置を形成することができる。
<有機EL照明>
本発明の有機EL照明は、上述の本発明の有機電界発光素子を用いたものである。本発明の有機EL照明の型式や構造については特に制限はなく、本発明の有機電界発光素子を用いて常法に従って組み立てることができる。
以下、実施例を示して本発明についてさらに具体的に説明する。ただし、本発明は以下の実施例に限定されるものではなく、本発明はその要旨を逸脱しない限り任意に変更して実施できる。
[合成例]
(化合物D−1の合成)
Figure 0005644147
クリセン(15.0g,65.7mmol)のジクロロエタン(400mL)に、臭素(9mL、218mmol)のジクロロエタン(80mL)溶液を室温にて滴下し、2時間加熱還流した。原料がまだ残っていたので、さらに臭素(2mL)のジクロロエタン(6mL)を加え、1時間加熱還流した。反応液を放冷し、析出していた結晶を濾取した。得られた結晶を、メタノールで懸洗し、さらにトルエンにて80℃で処理し、中間体1(23.04g,収率85%)を得た。
Figure 0005644147
窒素雰囲気下、酢酸パラジウム(96mg,0.43mmol)の乾燥トルエン(10mL)懸濁液にトリ(ターシャリーブチル)ホスフィン(260mg,1.29mmol)を加え、60℃で30分攪拌し、触媒を合成した。
別の反応容器に、窒素雰囲気下でへキシルアミン(4.94g,27.89mmol)、4−ブロモビフェニル(5.0g,21.45mmol)、ターシャリーブトキシナトリウム(4.12g,42.9mmol)の脱水トルエン(50mL)懸濁液を激しく攪拌し、先に調整した触媒を添加した。混合物を緩やかに還流させながら3時間攪拌し、水にあけ、トルエンで抽出後、蒸留水で洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥後、減圧下に溶剤を留去した。エタノール−塩化メチレンで再結晶して中間体2(2.6g,収率37%)を得た。
Figure 0005644147
窒素雰囲気下、酢酸パラジウム(94mg,0.47mmol)の乾燥トルエン(10mL)懸濁液にトリ(ターシャリーブチル)ホスフィン(35mg,0.16mmol)を加え、60℃で30分攪拌し、触媒を合成した。
別の反応容器に、窒素雰囲気下で中間体2(3.76g,11.4mmol)、中間体1(2.0g,5.18mmol)、ターシャリーブトキシナトリウム(3.29g,34.2mmol)の脱水トルエン(50mL)懸濁液を激しく攪拌し、先に調整した触媒を添加した。混合物を緩やかに還流させながら6時間攪拌し、水にあけ、トルエンで抽出後、蒸留水で洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥後、減圧下に溶剤を留去した。残渣をヘキサン−塩化メチレン(4:1)でシリカゲルカラムクロマトグラフィーに処し化合物D−1(2.3g,収率50%)を得た。
このものの質量分析値は(m/z=882(M+))であった。
Figure 0005644147
2,2−ジフェニルプロパン(15.0g、76mmol)、スルホラン(50mL)溶液に、ニトロニウムテトラフルオロボレート(10.15g、76mmol)のスルホラン(152mL)溶液をゆっくりと滴下した。室温で約6時間攪拌した。反応液に水を加え、塩化メチレンで抽出し、有機層を水洗、濃縮した。シリカゲルカラムクロマトグラフィーにて精製し、中間体3(6.11g,収率33%)を得た。化合物3にエタノール(96mL)、テトラヒドロフラン(96mL)、20%Pd−C(0.94g)を加え、十分に反応系を窒素置換した後に、反応系を50℃に上げ、ヒドラジン一水和物(15.2g、0.3mol)をゆっくりと滴下した。50〜55℃で約3時間反応後、原料の消失を確認できたので、反応系を窒素置換し、セライト濾過した。反応液から酢酸エチルで抽出し、有機層を濃縮して、シリカゲルカラムクロマトグラフィーにて精製し、中間体4(4.78g,収率89%)を得た。
Figure 0005644147
酢酸パラジウム(0.085g、0.4mmol)のトルエン(10mL)溶液に、t−ブチルホスフィン(0.3mL)を加え60℃で攪拌した(A液)。4−ブロモビフェニル(4.39g、18.9mmol)、中間体4(4.78g、22.6mmol)、ナトリウム−t−ブトキシド(3.62g、37.7mmol)のトルエン(55mL)溶液を、十分に脱気し、60℃に加熱したところへ、前述A液を滴下した。さらに、5時間加熱還流した。反応液に水を加え、塩化メチレンで抽出し、有機層をセライト濾過、濃縮し、シリカゲルカラムクロマトグラフィーにて精製し、中間体5(3.22g,収率47%)を得た。
酢酸パラジウム(0.036g、0.2mmol)のトルエン(5ml)溶液に、t−ブチルホスフィン(0.12mL)を加え60℃で攪拌した(B液)。中間体1(1.54g、4mmol)、中間体5(3.20g、8.8mmol)、ナトリウム−t−ブトキシド(1.54g、16mmol)のトルエン(30mL)溶液を、十分に脱気し、60℃に加熱したところへ、前述B液を滴下した。さらに、3時間加熱還流した。反応液に水を加え、析出していた結晶を濾取し、メタノールにて懸洗し、化合物D−2 3.28gを得た。
このものの質量分析値は(m/z=950(M+))であった。
Figure 0005644147
既知の方法により合成した中間体6(7.6g、22.07mmol)、ビスピナコラートジボラン(6.72g、26.48mmol)及び酢酸カリウム(7.36g、75.04mmol)を脱水DMSO66mlとをフラスコ内で混和し、攪拌し、系をN2で十分に置換したのち、Pd2(dppf)CH2Cl2(0.54g、0.66mmol)を加え8時間80℃で加熱攪拌した。反応液をろ過し、ろ過物をトルエンに溶解後、カラムクロマトグラフィーにより精製した。収量5.6g(収率79%)。
Figure 0005644147
中間体7(5.6g、17.38mmol)、4−ブロモアニリン(2.72g、15.8mmol)をトルエン80mL、エタノール40mLとをフラスコ中で混和し、20wt%炭酸ナトリウム水溶液20mLを加え攪拌し、系をN2で置換した。反応液を窒素気流下7時間還流した。得られた反応液に水加え、トルエン層を分液し、濃縮後、シリカゲルカラムクロマトグラフィーにて精製を行った。収量1.7g(収率37%)
Figure 0005644147
窒素雰囲気下、4−ブロモヨードベンゼン(5.94g,21.0mmol)、ピナコラート 4−n−ヘキシルフェニルボロン酸(5.76g,20.0mmol)のトルエン(100mL)/エタノール(50mL)混合溶液に対して45分間窒素バブリングをおこなったのち、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)(708mg)、リン酸カリウム水溶液(2.0M,25mL)を順に加え、5時間加熱還流をおこなった。室温まで放冷後、反応混合物に水を入れ、トルエンにて抽出をおこない、有機相に硫酸マグネシウムを入れ、かき混ぜたのち濾過をし、濾液を濃縮した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン/トルエン=1:19)にて精製することで中間体9(5.27g,収率83%)を得た。
Figure 0005644147
窒素雰囲気下、中間体9(2.25g,7.10mmol)、中間体4(1.65g,5.74mmol)のトルエン(40mL)溶液に対して30分間窒素バブリングをおこなったのち、室温でトリス(ジベンジリデンアセトン)ビスパラジウム・クロロホルム錯体(0)(80mg)、1,1’−ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン(296mg)、ナトリウム tert−ブトキシド(1.02g,10.6mmol)を加え、100℃にて4時間撹拌した。室温まで放冷後、反応混合物をセライトろ過し、ろ液を減圧下で濃縮した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン/塩化メチレン/トリエチルアミン=750:250:1〜600:300:1)にて分取した後、塩化メチレン/ヘキサン再沈殿をおこなうことで、中間体10を得た(1.46g,収率49%)。
Figure 0005644147
窒素雰囲気下、中間体1(599mg,1.55mmol)、中間体10(1.46g,2.79mmol)のトルエン(100mL)溶液に対して45分間窒素バブリングをおこなったのち、室温でトリス(ジベンジリデンアセトン)ビスパラジウム・クロロホルム錯体(0)(80mg,78μmol)、トリ−tert−ブチルホスフィン(15μl,62μmol)、ナトリウムtert−ブトキシド(373mg,3,88mmol)を加え、7時間加熱還流させた。室温まで放冷後、反応混合物に水を加え、トルエンにて抽出、有機層を食塩水で洗浄、硫酸マグネシウムで乾燥、減圧下で濃縮した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン/塩化メチレン/トリエチルアミン=600:300:1)にて分取した後、粗生成物のヘキサン/エタノール溶液を−78℃のドライアイス−アセトンバスを用いて冷却することにより再沈殿をおこない、D−4を得た(624mg,収率31%)。
このものの質量分析値は(m/z=1270(M+))であった。
[有機電界発光素子の作成]
図1に示す構造を有する有機電界発光素子を以下の方法で作製した。
ガラス基板1の上にインジウム・スズ酸化物(ITO)透明導電膜を150nm堆積したもの(スパッター成膜品;シート抵抗15Ω)を通常のフォトリソグラフィ技術と塩酸エッチングを用いて2mm幅のストライプにパターニングして陽極2を形成した。パターン形成したITO基板を、アセトンによる超音波洗浄、純水による水洗、イソプロピルアルコールによる超音波洗浄の順で洗浄後、窒素ブローで乾燥させ、最後に紫外線オゾン洗浄を行った。
次いで、正孔注入層3を以下のように湿式成膜法によって形成した。正孔注入層3の材料として、下記式(PB−1)の芳香族アミノ基を有する高分子化合物(重量平均分子量:52000,数平均分子量:32500))と下記に示す構造式の電子受容性化合物(A−2)とを用い、下記の条件でスピンコートした。
Figure 0005644147
<正孔注入層用組成物>
溶剤 安息香酸エチル
塗布液濃度 PB−1 2.0重量%
A−2 0.4重量%
<成膜条件>
スピナ回転数 2250rpm
スピナ回転時間 30秒
スピンコート雰囲気 大気下 25℃
乾燥条件 230℃×60分
上記のスピンコートにより膜厚30nmの均一な薄膜が形成された。
続いて、正孔輸送層を以下のように湿式製膜法によって形成した。正孔輸送層の材料として、下記に示す構造式の電荷輸送材料(PB−2)(重量平均分子量95000)を、溶剤としてシクロヘキシルベンゼンを用いた有機電界発光素子用組成物を調製し、この有機電界発光素子用組成物を用いて下記の条件でスピンコートした。
Figure 0005644147
<正孔輸送層用組成物>
溶剤 シクロヘキシルベンゼン
塗布液濃度 PB−2 1.4重量%
<成膜条件>
スピナ回転数 1500rpm
スピナ回転時間 120秒
スピンコート雰囲気 乾燥窒素中 25℃
乾燥条件 230℃×60分 (乾燥窒素下)
上記のスピンコートにより膜厚20nmの均一な薄膜が形成された。
次に、発光層を形成するにあたり、発光材料として、合成例1に示す、本発明の有機化合物(D−1)、発光材料として、電荷輸送材料として下記構造の有機化合物(D−1)、を用いて下記に示す有機電界発光素子組成物を調製し、以下に示す条件で正孔輸送層上にスピンコートして膜厚45nmで発光層を得た。
<発光層用組成物>
溶剤 シクロヘキシルベンゼン
組成物中濃度 H−1: 5重量%
D−1: 0.35重量%
<スピンコート条件>
スピナ回転数 2000rpm
スピナ回転時間 120秒
乾燥条件 130℃×60分(減圧下)
上記のスピンコートにより膜厚50nmの均一な薄膜が形成された。
次に、正孔阻止層として下記に示すピリジン誘導体(HB−1)をるつぼ温度251〜252℃として、蒸着速度0.08〜0.12nm/秒で10nmの膜厚で積層した。蒸着時の真空度は2.1〜2.4×10-4Pa(約1.6〜1.8×10-6Torr)であった。
Figure 0005644147
次に、正孔阻止層の上に、電子輸送層として下記に示すアルミニウムの8−ヒドロキシキノリン錯体(ET−1)を同様にして蒸着した。この時のアルミニウムの8−ヒドロキシキノリン錯体のるつぼ温度は222〜239℃の範囲で制御し、蒸着時の真空度は1.7〜2.0×10-4Pa(約1.3〜1.5×10-6Torr)、蒸着速度は0.1nm/秒で膜厚は30nmとした。
Figure 0005644147
上記の正孔阻止層及び電子輸送層を真空蒸着する時の基板温度は室温に保持した。
ここで、電子輸送層までの蒸着を行った素子を一度前記真空蒸着装置内より大気中に取り出して、陰極蒸着用のマスクとして2mm幅のストライプ状シャドーマスクを、陽極2のITOストライプとは直交するように素子に密着させて、別の真空蒸着装置内に設置して有機層と同様にして装置内の真空度が2.3×10-6Torr(約3.0×10-4Pa)以下になるまで排気した。
次に、電子輸送層の上に、電子注入層として、フッ化リチウム(LiF)を、モリブデンボートを用いて、蒸着速度0.015nm/秒、真空度2.5×10-6Torr(約3.3×10-4Pa)で、0.5nmの膜厚で電子輸送層の上に成膜した。
次に、電子注入層の上に、陰極として、アルミニウムをモリブデンボートにより加熱して、蒸着速度0.5〜3.0nm/秒、真空度3.3〜7.5×10-6Torr(約4.4〜10.0×10-4Pa)で成膜して膜厚80nmのアルミニウム層を形成して陰極を完成させた。
以上の電子注入層、陰極の蒸着時の基板温度は室温に保持した。
以上の様にして、2mm×2mmのサイズの発光面積部分を有する有機電界発光素子が得られた。この素子の発光スペクトルの極大波長は461nmであり、色度はCIE(x,y)=(0.14,0.15)であった。
輝度/電流:4.6[cd/A](@100cd/m2
電圧:6.1[V](@電流10mA通電時)
この素子について初期輝度3000cd/cm2にて駆動試験を行った結果について表1に示す。
(比較例1)
実施例1において化合物D−1を下記構造式で表される比較化合物D−3に変更した外は、実施例1と同様にして素子を作成した。
この素子の発光スペクトルの極大波長は465nmであり、色度はCIE(x,y)=(0.14,0.17)であった。
輝度/電流:4.8[cd/A](@100cd/m2
電圧:6.6[V](@電流10mA通電時)
この素子について初期輝度3000cd/cm2にて駆動試験を行った結果について表1に示す。
Figure 0005644147
Figure 0005644147
表1に示すが如く、本発明の有機化合物を用いて作製した素子は、駆動寿命が長いことが分かる。
(実施例2)
実施例1においてPB−2の代わりに下記PB−3(重量平均分子量75000)を用いる以外同様に素子を作成した。
Figure 0005644147
この素子の発光スペクトルの極大波長は465nmであり、色度はCIE(x,y)=(0.14,0.17)であった。
輝度/電流:4.2[cd/A](@100cd/m2
電圧:5.2[V](@電流10mA通電時)
この素子について初期輝度3000cd/cm2にて駆動試験を行った結果について表2に示す。
(実施例3)
実施例2において、化合物D−1をD−4に変更した他は、実施例2と同様にして素子を作製した。
この素子の発光スペクトルの極大波長は467nmであり、色度はCIE(x,y)=(0.14,0.18)であった。
輝度/電流:3.9[cd/A](@100cd/m2
電圧:5.2[V](@電流10mA通電時)
この素子について初期輝度3000cd/cm2にて駆動試験を行った結果について表2に示す。
Figure 0005644147
表2に示すが如く、本発明の有機化合物を用いて作製した有機電界発光素子は、色純度が高く、電圧が低く、駆動寿命が長い。
1 基板
2 陽極
3 正孔注入層
4 正孔輸送層
5 発光層
6 正孔阻止層
7 電子輸送層
8 電子注入層
9 陰極

Claims (11)

  1. 下記式(1)で表される有機化合物。
    Figure 0005644147
    (式中、 2 及びR 6 は、それぞれ炭素数1〜20のアルキル基が置換してもよい炭素数6〜25の芳香族炭化水素基を示し、R 4 及びR 8 は、それぞれ炭素数7以上のアラルキル基を示し、n 2 、n 4 、n 6 及びn 8 は1〜5の整数を示す
    尚、一分子中に複数の 2 、R 4 、R 6 及びR 8 を含む場合は、複数含まれる 2 、R 4 、R 6 及びR 8 は、同じでもよく、また異なっていてもよい。)
  2. 上記式(1)中、 2 及び 6 を、窒素原子に対してオルト位に有さないことを特徴とする、請求項1に記載の有機化合物。
  3. 請求項1又は2に記載の有機化合物からなることを特徴とする、発光材料。
  4. 請求項1又は2に記載の有機化合物からなることを特徴とする、有機電界発光素子用材料。
  5. 請求項1又は2に記載の有機化合物と、有機溶剤とを含有することを特徴とする、有機電界発光素子用組成物。
  6. 陽極及び陰極の間に有機層を有する有機電界発光素子において、
    該有機層が、請求項5に記載の有機電界発光素子用組成物を用いて形成された層を含むことを特徴とする、有機電界発光素子。
  7. 前記有機電界発光素子用組成物を用いて形成された層が、発光層であることを特徴とする、請求項6に記載の有機電界発光素子。
  8. 前記発光層に隣接して、正孔輸送層を有し、該正孔輸送層が湿式成膜法で形成された層であることを特徴とする、請求項に記載の有機電界発光素子。
  9. 前記正孔輸送層が架橋性化合物を架橋させて形成された層であることを特徴とする、請求項8に記載の有機電界発光素子。
  10. 請求項6〜9のいずれか一項に記載の有機電界発光素子を含むことを特徴とする、有機EL表示装置。
  11. 請求項6〜9のいずれか一項に記載の有機電界発光素子を含むことを特徴とする、有機EL照明。
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