まず、図8を参照して、レチクルの一般的な構造と、露光装置における露光領域の設定方法について説明する。図8は、露光装置に載置されたレチクルretと、露光装置のマスキングユニットmuとの関係を示す概略平面図である。
レチクルretは、透光性基板101と、透光性基板101上に所望の遮光パターンを形成して配置された遮光部材とを含んで形成される。透光性基板材料として例えば石英が用いられ、遮光材料として例えばクロムが用いられる。
透光性基板101の中心(レチクルプレート中心)を含む、有効パターニング領域102が、露光装置のレンズにより精度良くパターン転写が行える領域である。有効パターニング領域102の内側に、半導体ウエハ上に転写したいマスクパターンの形成されたパターニング領域103が配置される。
図8に示す例では、半導体チップ1つ分のマスクパターンが形成されたチップ領域103aと、チップ領域103aの周りに配置されたスクライブ領域103bとが、1回の露光で半導体ウエハ上に転写されるパターニング領域103である。パターニング領域103の外側を、遮光帯104が取り囲んでおり、遮光帯104の開口の縁が、パターニング領域103の縁を画定する。
マスキングユニットmuは、4枚のマスキングブレード201と、各マスクキングブレード201を所望の位置に移動させる制御ユニット202とを含む。4枚のマスキングブレード201の内側の縁が画定する開口105内が、レチクルretに光が照射される露光領域となる。マスキングブレード201の縁は、遮光帯104の幅内で、パターニング領域103の縁から少し外側に配置されている。これにより、パターニング領域103内の全域がパターン転写され、また、遮光帯104の外側領域は遮光される。レチクルretのデザインに応じて、所望の露光領域が設定されるように、各マスキングブレード201を移動させることができる。
次に、本発明の実施例によるレチクルの説明に先立ち、第1〜第3比較例のレチクルについて説明する。
まず、図9及び図10を参照して、第1比較例について説明する。図9は、第1比較例のレチクルのデザインと、第1比較例のレチクルで露光する場合の焼付けレイアウトを示す概略平面図である。
第1比較例のレチクルretのデザインについて説明する。図8を参照して説明したように、有効パターニング領域2内に、パターニング領域3が配置されている。第1比較例のレチクルのパターニング領域3は、2つ分のチップ領域M1と、両チップ領域M1の周りに配置されたスクライブ領域3aとを含む。スクライブ領域3aの幅方向の中心に、スクライブセンター3aCが画定されている。X方向(紙面横方向)に1つ分のチップ領域M1が配置され、Y方向(紙面縦方向)に2つ分のチップ領域M1が並んで、1×2型のブロックレチクルが形成されている。
パターニング領域3の外側を遮光帯4が取り囲む。図8を参照して説明したように、露光時には、遮光帯4の幅内で、パターニング領域3の縁から少し外側に、マスキングブレードの縁が配置されて、レチクルretに光が照射される露光領域5が画定される。
Y方向に並んだチップ領域M1の間のスクライブ領域3a内に、TEGを形成するためのマスクパターンが形成されたTEG領域M2が配置されている。一般に、TEGは、半導体装置の開発段階における新設計、新材料、新プロセスの評価を行ったり、量産段階における品質評価を行ったりするために形成される。評価したい項目に応じて、様々な種類のTEGが形成される。TEGの種類を、アルファベットを付して表すこととする。第1比較例のレチクルでは、ある1種類のTEG−Aを形成するためのマスクパターンが、TEG領域M2に作られている。
第1比較例の焼付けレイアウトについて説明する。半導体ウエハ10上に、縮小投影されるレチクルretのパターニング領域3が隙間無く並べられたレイアウトとなっている。ただし、半導体ウエハ10上で隣接するパターニング領域3は、スクライブセンター3aCを一致させてスクライブ領域3a同士が重なるように配置されている。なお、レチクルret上の領域と、この領域が投影された半導体ウエハ10上の領域とを、同一の名称や参照符号で指し示すこともある。
第1比較例は、チップ領域M1の2つ分を1単位とした領域が並べられたレイアウトとなっている。単位領域の縁を太線で示す。単位領域ごとに、2つのチップ領域M1間のスクライブ領域3a内に、TEG領域M2が(つまりTEG−Aが)配置されることとなる。
半導体ウエハ10の縁より数mm(例えば、5mm)内側にあるチップ有効領域境界11の内側に入るチップ領域M1が、製品となる有効チップであり、チップ有効領域境界11から外側の半導体ウエハ10の縁部に重なるチップ領域M1は、製品にできない無効チップとなる。無効チップは斜線を付して示す。なお、チップ有効領域境界は、製品保証領域を指し、半導体装置製造メーカー毎に異なる。
次に、第1比較例のレチクルretを用いた露光工程について説明する。まず、半導体ウエハ10上に感光性レジストを塗布する。レジスト塗布には、スピンコートを用いることができる。
次に、半導体ウエハ10を、ウエハステージで最初の露光位置に配置する。なお、ウエハステージは、半導体ウエハ10を面内で回転させる機能を持つが、第1比較例では、半導体ウエハ10を回転させない。つまり、回転角度の設定は0°である。後述の第3実施例では、回転角度を0°以外に設定する。
次に、パターニング領域3を含む露光領域5を画定する位置に、マスキングブレードを配置する。
そして、半導体ウエハ10上の最初の露光位置を露光する。さらに、ウエハステージで半導体ウエハ10を移動させながら、半導体ウエハ10上でパターニング領域3の投影像を走査して露光を繰り返し、半導体ウエハ10の全面に露光を行う。
図10は、全面への露光が終了した状態の半導体ウエハ10を示す概略平面図である。半導体ウエハ10上で、複数のチップ領域M1が、スクライブ領域3aを隔てて行列状に並んでいる。1回の露光で同時にパターン転写された2つ分のチップ領域M1の間のスクライブ領域3a上に、TEG−Aの形成に係るTEG領域M2が転写されている。半導体ウエハ10の全面への露光が終了したら、現像処理を行う。
以上説明した第1比較例のレチクルを用いた露光では、1種類のTEG(TEG−A)しか形成することができない。
次に、図11を参照して、第2比較例について説明する。図11は、第2比較例のレチクルのデザインと、第2比較例のレチクルで露光する場合の焼付けレイアウトを示す概略平面図である。
第2比較例のレチクルretのデザインについて説明する。第2比較例のレチクルのパターニング領域3は、1つ分のチップ領域M1と、チップ領域M1の周りに配置されたスクライブ領域3aとを含む。スクライブ領域3a内に、スクライブセンター3aCが画定されている。X方向(紙面横方向)に1つ分のチップ領域M1が配置され、Y方向(紙面縦方向)にも1つ分のチップ領域M1が配置された、1×1型のシングルレチクルが形成されている。
第1比較例は、1×2型のブロックレチクルであったため、パターニング領域内で並ぶ2つのチップ領域の間のスクライブ領域内に、TEG領域を配置することができた。第2比較例は、シングルレチクルであるので、パターニング領域3内で、隣接チップ領域間のスクライブ領域内にTEG領域を配置することができず、パターニング領域3の周部のスクライブ領域内に、TEG領域を配置することとなる。
ただし、パターニング領域3の周部のスクライブ領域3aには、アライメントマーク形成用等のマスクパターンが配置されている。従って、第2比較例では、チップ領域M1の右側の、Y方向に長いスクライブ領域部分の幅を拡げて、スクライブセンター3aCの内側(チップ領域M1側)に、TEG−Aの形成に係るTEG領域M2を配置している。
第2比較例の焼付けレイアウトについて説明する。第2比較例はシングルレチクルであるため、チップ領域M1の1つ分を1単位とした領域が並べられたレイアウトとなっている。単位領域ごとに、チップ領域M1の右側のスクライブ領域3a内に、TEG領域M2が(つまりTEG−Aが)配置されることとなる。
第1比較例と同様に、半導体ウエハ10の縁より数mm(例えば、5mm)内側にあるチップ有効領域境界11の内側に入るチップ領域M1が、製品となる有効チップであり、チップ有効領域境界11から外側の半導体ウエハ10の縁部に重なるチップ領域M1は、製品にできない無効チップとなる。第2比較例のレチクルデザインでは、TEG領域を配置するためにスクライブ領域3aの幅を拡げた。スクライブ領域幅の拡張に伴い、パターニング領域3の面積が大きくなるので、1枚の半導体ウエハ10当たりの有効チップ数は減少する場合がある。
第2比較例のレチクルを用いる場合でも、第1比較例と同様に、パターニング領域3の投影像を半導体ウエハ10上で走査して、半導体ウエハ10の全面で露光が行われる。第2比較例のレチクルも、第1比較例と同様に、1種類のTEG(TEG−A)しか形成することができない。
次に、図12を参照して、第3比較例について説明する。図12は、第3比較例のレチクルのデザインと、第3比較例のレチクルで露光する場合の焼付けレイアウトを示す概略平面図である。
第3比較例も、第2比較例と同様に、1×1型のシングルレチクルが形成されている。第2比較例との違いは、2種類目のTEG(TEG−B)を形成するためのマスクパターンが形成されたTEG領域M3が追加されている点である。
第2のTEG領域M3は、第1のTEG領域M2に隣接して配置されている。第3比較例では、第2のTEG領域M3を追加したために、チップ領域M1の右側のスクライブ領域3aの幅が、第2比較例よりもさらに拡げられている。
第3比較例では、2種類のTEG、すなわちTEG−AとTEG−Bの両方を形成することが可能になる。TEGの種類が増えることにより、TEGから評価できる項目が増えるので、例えば、半導体装置の開発期間の短縮等が図られる。
しかし、TEGの種類を増やそうとすれば、レチクル上に形成するTEG領域の個数を増やすこととなり、スクライブ領域の面積を拡げなくてはならない。スクライブ領域の面積が拡がれば、チップ領域を含むパターニング領域の面積が大きくなって、1枚の半導体ウエハ10当たりの有効チップ数の減少を招く。
なお、例えば、第1比較例で説明した1×2ブロックレチクルについても、2種類目以上のTEG形成に係るTEG領域を追加しようとすれば、パターニング領域の周部のスクライブ領域幅を拡げたり、隣接チップ領域間のスクライブ領域幅を拡げたりすることとなり、パターニング領域の面積が増大する。
従って、チップ領域を含むパターニング領域の面積増大を抑制しつつ(つまり、有効チップ数の減少を抑制しつつ)、複数種類のTEGを形成することができるデザインのレチクルが望まれる。
次に、図1〜図4を参照して、本発明の第1実施例によるレチクルについて説明する。図1は、第1実施例のレチクルのデザインと、第1実施例のレチクルで露光する場合の焼付けレイアウトを示す概略平面図である。
第1実施例のレチクルretのデザインについて説明する。第1実施例のレチクルでは、有効パターニング領域2内に、3つのパターニング領域31〜33が配置されている。
チップパターニング領域31は、2つ分のチップ領域M1と、両チップ領域M1の周りに配置されたスクライブ領域31aとを含む。第1比較例(図9参照)と同様に、X方向(紙面横方向)に1つ分のチップ領域M1が配置され、Y方向(紙面縦方向)に2つ分のチップ領域M1が並んで、1×2型のブロックレチクルが形成されている。
各チップ領域M1に、所望の半導体チップを形成するためのマスクパターンが形成されている。スクライブ領域31aの幅方向の中心に、スクライブセンター31aCが画定されている。チップパターニング領域31の周部のスクライブ領域31aには、必要に応じて、アライメントマーク形成用のマスクパターン等が形成されている。
第1比較例では、パターニング領域3のY方向に並んだチップ領域M1の間のスクライブ領域3a内に、TEG領域M2を配置した。第1実施例では、チップパターニング領域31の、Y方向に並んだチップ領域M1の間のスクライブ領域31a内に、TEG領域は配置されず、X方向に長いTEG配置用の遮光帯31bが形成されている。なお、チップパターニング領域31の中心が(TEG配置用遮光帯31bの中心が)、透光性基板1の中心(レチクルプレート中心)と一致している。
チップパターニング領域31の外側である空き領域に、第1TEGパターニング領域32及び第2TEGパターニング領域33が形成されている。第1及び第2TEGパターニング領域32、33内に、それぞれTEG領域M2、M3が配置される。
第1TEGパターニング領域32は、TEG−Aを形成するマスクパターンが形成された第1TEG領域M2と、第1TEG領域M2の周りに配置された余白領域32aとを含む。
第2TEGパターニング領域33は、TEG−Bを形成するマスクパターンが形成された第2TEG領域M3と、第2TEG領域M3の周りに配置された余白領域33aとを含む。
第1TEGパターニング領域32は、第1TEG領域M2の長さ方向を、TEG配置用遮光帯31bの長さ方向と揃えてX方向とし、チップパターニング領域31のY方向上側に配置されている。
第2TEGパターニング領域33は、第2TEG領域M3の長さ方向を、TEG配置用遮光帯31bの長さ方向と揃えてX方向とし、第1TEGパターニング領域32のY方向上側に配置されている。
なお、図4を参照して後述するように、チップパターニング領域31のTEG配置用遮光帯31bと、第1TEGパターニング領域32の余白領域32aと、第2TEGパターニング領域33の余白領域33aとには、重ね合わせ検査パターンが形成されている。
TEG配置用遮光帯31bは、重ね合わせ検査パターンの形成部分以外は、全領域が遮光領域となっている。余白領域32a及び余白領域33aは、重ね合わせ検査パターンの形成部分以外は、全領域が透光領域となっている。
チップパターニング領域31と、第1及び第2TEGパターニング領域32、33の外側に、遮光帯4が形成されている。遮光帯4を、TEG配置用遮光帯31bと区別するために、外側遮光帯4と呼ぶこととする。外側遮光帯4が、第1比較例等で説明した遮光帯4に対応し、各パターニング領域31等の縁を画定する。なお、第1比較例等の遮光帯4は、その外側に透光性基板1を露出させるような細い幅で形成されていたが、第1実施例(及び第2、第3実施例)の外側遮光帯4は、各パターニング領域31等を露出させる開口部以外は、透光性基板1の縁まで、全面に形成されている。
チップパターニング領域31の露光時には、チップパターニング領域31の縁から少し外側の外側遮光帯4上に、マスキングブレードの縁が配置されて、露光領域51が画定される。露光領域51は、チップパターニング領域31を含むが、第1及び第2TEGパターニング領域32、33は含まず、チップパターニング領域31のみが転写される。
第1TEGパターニング領域32の露光時には、第1TEGパターニング領域32の縁から少し外側の外側遮光帯4上に、マスキングブレードの縁が配置されて、露光領域52が画定される。露光領域52は、第1TEGパターニング領域32を含むが、チップパターニング領域31及び第2TEGパターニング領域33は含まず、第1TEGパターニング領域32のみが転写される。
第2TEGパターニング領域33の露光時には、第2TEGパターニング領域33の縁から少し外側の外側遮光帯4上に、マスキングブレードの縁が配置されて、露光領域53が画定される。露光領域53は、第2TEGパターニング領域33を含むが、チップパターニング領域31及び第1TEGパターニング領域32は含まず、第2TEGパターニング領域33のみが転写される。
第1実施例の焼付けレイアウトについて説明する。縮小投影されるレチクルretのチップパターニング領域31が、半導体ウエハ10上に隙間無く並べられたレイアウトとなっている。ただし、半導体ウエハ10上で隣接するパターニング領域31は、スクライブセンター3aCを一致させてスクライブ領域3a同士が重なるように配置されている。第1比較例と同様に、チップ領域M1の2つ分を1単位とした領域が並べられたレイアウトとなっている。
TEGの配置について説明する。TEGは、単位領域ごとに、2つのチップ領域M1間のスクライブ領域31a内に配置される。単位領域がX方向(紙面横方向)に並んだ行ごとに、TEGの種類が選択されている。具体的には、TEG−Aの配置行(M2(TEG−A)露光行)と、TEG−Bの配置行(M3(TEG−B)露光行)とが、交互に並んでいる。
図2を参照して後述するように、1次露光で、チップパターニング領域31が転写される。このとき、TEG配置用遮光帯31bの転写部分は未露光で残る。2次露光以降の露光で、TEG配置用遮光帯31bによる未露光部分内に、第1TEG領域M2または第2TEG領域M3を転写する。このようにして、TEG−AまたはTEG−Bを形成することができる。
なお、TEG−Aの配置行とTEG−Bの配置行とを交互に並べることにより、例えば、半導体ウエハ10上の半分の領域にまとめてTEG−Aを配置し、残り半分の領域にまとめてTEG−Bを配置するようなレイアウトに比べて、TEG−AもTEG−Bも、半導体ウエハ10上の広範囲に分布させることができる。これにより、TEG−AからもTEG−Bからも、半導体ウエハ10上の広範囲に亘るデータを得ることができる。
レチクルret上及び半導体ウエハ10上の各領域のサイズ例について説明する。例えば、1/4倍の縮小投影を想定する。半導体ウエハ10は、例えば、直径300mm(12インチ)である。なお、以下、レチクル上のサイズ例の後ろの()内に、ウエハ上のサイズ例を示す。
透光性基板1は、例えば、X方向152mm、Y方向152mmである。有効パターニング領域2は、例えば、X方向104mm(26mm)、Y方向132mm(33mm)である。
チップパターニング領域31は、例えば、X方向56.88mm(14.22mm)、Y方向113.32mm(28.33mm)である。1つ分のチップ領域M1は、例えば、X方向56mm(14mm)、Y方向56mm(14mm)である。スクライブ領域31aの幅は、例えば440μm(110μm)である。TEG配置用遮光帯31bは、例えば、X方向55.992mm(13.998mm)、Y方向432μm(108μm)である。
第1TEGパターニング領域32(第1TEGパターニング領域の余白領域32a)は、例えば、X方向55.996mm(13.999mm)、Y方向436μm(109μm)である。第1TEG領域M2は、例えば、X方向53.2mm(13.3mm)、Y方向400μm(100μm)である。
第2TEGパターニング領域33(第2TEGパターニング領域の余白領域33a)のサイズは、例えば、第1TEGパターニング領域32(第1TEGパターニング領域の余白領域32a)のサイズと等しく、第2TEG領域M3のサイズは、例えば、第1TEG領域M2のサイズと等しい。なお、TEGの種類が異なれば、TEG領域のサイズは異なりうる。
なお、チップパターニング領域31及び第1TEGパターニング領域32の間の幅(つまり、この部分の外側遮光帯4の幅)、及び、第1及び第2TEGパターニング領域32、33の間の幅(つまり、この部分の外側遮光帯4の幅)は、レチクル上でそれぞれ、例えば1500μmである。隣接するパターニング領域間に配置される外側遮光帯4の幅は、幅内にマスキングブレードの縁を正確に位置決めできる程度の太さが必要である。
次に、第1実施例のレチクルを用いた露光工程について説明する。まず、半導体ウエハ10上に感光性レジストを塗布する。レジスト塗布には、スピンコートを用いることができる。
次に、半導体ウエハ10を、ウエハステージで最初の露光位置に配置する。なお、ウエハステージの回転角度の設定は0°である。
次に、マスキングブレードを、チップパターニング領域31を含む露光領域51を画定する位置に配置する。
そして、半導体ウエハ10上の最初の露光位置を露光する。さらに、ウエハステージで半導体ウエハ10を移動させながら、半導体ウエハ10上でチップパターニング領域31の投影像を走査して露光を繰り返し、半導体ウエハ10の全面に露光を行う。チップパターニング領域31の、ウエハ全面上への露光工程を、1次露光と呼ぶこととする。
図2Aは、1次露光が終了した状態の半導体ウエハ10を示す概略平面図である。半導体ウエハ10上で、複数のチップ領域M1が、スクライブ領域31aを隔てて行列状に並んでいる。1回の露光で同時にパターン転写された2つ分のチップ領域M1の間のスクライブ領域31a上に、TEG配置用遮光帯31bの転写された未露光部分31bが残されている。
次に、未露光部分31bがX方向に並ぶ行の1行置きに画定された、TEG−A配置行RAに、第1TEG領域M2を転写する。詳細には、まず、最初に露光される未露光部分31bに、第1TEG領域M2を位置合わせする。
次に、マスキングブレードを、第1TEGパターニング領域32を含む露光領域52を画定する位置に配置する。
そして、最初の未露光部分31bに第1TEG領域M2を露光する。さらに、ウエハステージで半導体ウエハ10を移動させながら、TEG−A配置行RA上で第1TEG領域M2の投影像を走査し、各未露光部分31bに第1TEG領域M2を露光して、ウエハ全面上のTEG−A配置行RAに、第1TEG領域M2を転写する。第1TEGパターニング領域32の、ウエハ全面上のTEG−A配置行への露光工程を、2次露光と呼ぶこととする。
図2Bは、2次露光が終了した状態の半導体ウエハ10を示す概略平面図である。TEG−A配置行RA上のスクライブ領域31aに、第1TEG領域M2が転写されている。未露光部分31bがX方向に並ぶ行の、TEG−A配置行RA以外の行が、TEG−B配置行RBである。TEG−B配置行RBには、未露光部分31bが残されている。
次に、TEG−B配置行RBに、第2TEG領域M3を転写する。詳細には、まず、最初に露光される未露光部分31bに、第2TEG領域M3を位置合わせする。
次に、マスキングブレードを、第2TEGパターニング領域33を含む露光領域53を画定する位置に配置する。
そして、最初の未露光部分31bに第2TEG領域M3を露光する。さらに、ウエハステージで半導体ウエハ10を移動させながら、TEG−B配置行RB上で第2TEG領域M3の投影像を走査し、各未露光部分31bに第2TEG領域M3を露光して、ウエハ全面上のTEG−B配置行RBに、第2TEG領域M3を転写する。第2TEGパターニング領域33の、ウエハ全面上のTEG−B配置行への露光工程を、3次露光と呼ぶこととする。
図2Cは、3次露光が終了した状態の半導体ウエハ10を示す概略平面図である。TEG−B配置行RB上のスクライブ領域31aに、第2TEG領域M3が転写されており、未露光部分31bが残っていない。
このようにして、第1実施例のレチクルを用いた露光が行われる。なお、上述したTEGの配置は一例である。必要に応じて、未露光部分31bごとに、どの種類のTEGを配置するかを選択することが可能である。
1次〜3次露光が終了したら、現像処理を行ってレジストパターンを形成する。現像処理により、ポジタイプのレジストであれば感光部分が除去され、ネガタイプのレジストであれば感光部分以外が除去される。なお、レジストパターン形成後のエッチング処理等、半導体装置製造に係るその他の処理には、公知の技術を適宜用いることができる。
以上説明したように、第1実施例のレチクルにより、チップパターニング領域は拡げることなく(つまり、有効チップ数の減少を抑制して)、複数種類のTEGを形成することができる。
なお、第1及び第2TEGパターニング領域32、33を、チップパターニング領域31の上側にまとめて配置する例を説明したが、チップパターニング領域31の下側にまとめて配置することも可能であり、また、チップパターニング領域31の上下に分けて配置することも可能である。
次に、図3を参照して、TEG配置用遮光帯31bのサイズと第1TEGパターニング領域32等のサイズとの関係について説明する。図3は、レチクルretのチップパターニング領域31のTEG配置用遮光帯31b近傍と、第1TEGパターニング領域32近傍とを示す概略平面図である。なお、第2TEGパターニング領域33に関するサイズの条件も、第1TEGパターニング領域32に関するサイズの条件と同様であるので、第1TEGパターニング領域32を代表させて説明する。なお、ここで挙げるサイズの数値例は、ウエハ上に投影されたサイズを示す。
チップパターニング領域31の、Y方向に並ぶ2つのチップ領域M1の間のスクライブ領域部分(チップ間スクライブ領域部分)31aPは、X方向のサイズが、チップ領域M1のX方向のサイズと等しくMAxであり、Y方向のサイズが、スクライブ領域31aの幅と等しくSCyである。チップ間スクライブ領域部分31aP内に、TEG配置用遮光帯31bが配置されている。TEG配置用遮光帯31bのサイズは、X方向がSxであり、Y方向がSyである。
第1TEGパターニング領域32のサイズ、つまり、余白領域32a(外側の縁)のサイズは、X方向がTAxであり、Y方向がTAyである。余白領域32aの内側に、第1TEG領域M2が配置されている。第1TEG領域M2のサイズは、X方向がTxであり、Y方向がTyである。
X方向、Y方向それぞれのサイズの条件について説明する。X方向の各サイズは、
MAx=TAx+位置ずれ余裕分 ・・・(1)
TAx=Sx+位置ずれ余裕分 ・・・(2)
Sx>Tx ・・・(3)
という条件を満たすように設定される。
Y方向の各サイズは、
SCy=TAy+位置ずれ余裕分 ・・・(1)´
TAy=Sy+位置ずれ余裕分 ・・・(2)´
Sy>Ty ・・・(3)´
という条件を満たすように設定される。
(3)式及び(3)´式は、第1TEG領域M2が、TEG配置用遮光帯31bに内包される大きさであるという条件を表す。もし、第1TEG領域M2が、TEG配置用遮光帯31bよりも広ければ、TEG形成に必要な未露光部分を確保できなくなるので、(3)式及び(3)´式の条件が要請される。
(2)式及び(2)´式は、TEG配置用遮光帯31bが、第1TEGパターニング領域32に内包される大きさであるという条件を表す。つまり、第1TEG領域M2の周りの余白領域32aの外側の縁が、TEG配置用遮光帯31bを内包できるという条件を表す。もし、TEG配置用遮光帯31bが、第1TEGパターニング領域32よりも広ければ、第1TEGパターニング領域32を転写する2次露光時に、余白領域32aの外側にはみ出したTEG配置用遮光帯31bの縁部が、未露光のまま残ることとなる。このような、不要な未露光部分が残らないように、(2)式及び(2)´式の条件が要請される。
(1)式及び(1)´式は、第1TEGパターニング領域32が、チップ間スクライブ領域部分31aPに内包される大きさであるという条件を表す。もし、第1TEGパターニング領域32が、チップ間スクライブ領域部分31aPよりも広ければ、第1TEGパターニング領域32を転写する2次露光時に、第1TEGパターニング領域32が、チップ領域M1に掛かってしまう。第1TEGパターニング領域32がチップ領域M1に掛かってしまうことを避けるために、(1)式及び(1)´式の条件が要請される。
各サイズの例を挙げる。(1)式、(1)´式、(2)式及び(2)´式の位置ずれ余裕分は、例えば、それぞれ1μmである。チップ領域M1のX方向のサイズMAxは、例えば14000μm(14mm)である。第1TEGパターニング領域32(余白領域32a)のX方向のサイズTAxは、例えば13999μmに設定される。TEG配置用遮光帯31bのX方向のサイズSxは、例えば13998μmに設定される。第1TEG領域M2のX方向のサイズTxは、例えば13300μmである。
スクライブ領域31aの幅、つまり、チップ間スクライブ領域部分31aPのY方向のサイズSCyは、例えば110μmである。第1TEGパターニング領域32(余白領域32a)のY方向のサイズTAyは、例えば109μmに設定される。TEG配置用遮光帯31bのY方向のサイズSyは、例えば108μmに設定される。第1TEG領域M2のY方向のサイズTyは、例えば100μmである。
次に、図4を参照して、TEG配置用遮光帯31b等に形成された重ね合わせ検査パターン(位置ずれ検査マーク)について説明する。図4は、TEG配置用遮光帯31b近傍と、第1TEGパターニング領域32近傍とを示す概略平面図である。
図2を参照して説明したように、第1実施例のレチクルを用いた露光工程では、1次露光で、TEG配置用遮光帯31bが転写される。そして、TEG配置用遮光帯31bによる未露光部分に、2次または3次露光で、第1TEG領域M2または第2TEG領域M3が転写される。このように、TEG配置用遮光帯31bと、第1TEG領域M2または第2TEG領域M3とが、別々に露光されるので、両者が正確に位置合わせされていることが重要である。
そこで、正確な位置合わせが行われたか検査するために、TEG配置用遮光帯31bと、第1TEGパターニング領域32と、第2TEGパターニング領域33とに、重ね合わせ検査パターンが形成されている。なお、第1TEGパターニング領域32と第2TEGパターニング領域33に形成される重ね合わせ検査パターンは、同様なものであるので、第1TEGパターニング領域32を代表させて説明する。
重ね合わせ検査パターンとして、例えばbar in barタイプのものが用いられる。その他、box in boxタイプや、バーニアタイプ等、必要に応じて適当なタイプの重ね合わせ検査パターンを用いることができる。図4には、bar in barタイプを例示する。
TEG配置用遮光帯31bのX方向(長さ方向)両端部に、それぞれ、重ね合わせ検査パターンp11及びp12が形成されている。なお、TEG配置用遮光帯31bでは、光を透過する開口パターンを配置することにより、重ね合わせ検査パターンp11及びp12が形成される。
第1TEGパターニング領域32の余白領域32aのX方向(長さ方向)両端部に、つまり、第1TEG領域M2の長さ方向両側の外側に、それぞれ、重ね合わせ検査パターンp21及びp22が形成されている。
TEG配置用遮光帯31bの左側の重ね合わせ検査パターンp11と、余白領域32aの左側の重ね合わせ検査パターンp21とが、重ね合わされる一対のパターンをなす。TEG配置用遮光帯31bの右側の重ね合わせ検査パターンp12と、余白領域32aの右側の重ね合わせ検査パターンp22とが、重ね合わされる一対のパターンをなす。
第1TEG領域M2が転写された2次露光によって、重ね合わせ検査パターンがウエハ上で正確に重ね合わせられていれば、正確な位置合わせが行われたと判断される。TEG領域M2の長さ方向両側に(つまり、TEG領域M2を挟んで1組となる)重ね合わせ検査パターンを配置することにより、位置ずれの検査が良好に行われる。
なお、図4に示す例では、重ね合わせ検査パターンp11〜p22が、TEG配置用遮光帯31bや余白領域32aの最も端の部分に形成されているが、重ね合わせ検査パターンの形成位置はこれに限らない。
第1TEGパターニング領域32では、第1TEG領域M1の長さ方向両側の余白領域部分32aP内の所望の位置に、重ね合わせ検査パターンp21、p22を配置することができる。そして、これらの余白領域部分32aPが露光時に重ねられる、TEG配置用遮光帯31bの両端部分31bPに、対応する重ね合わせ検査パターンp11、p12を配置することができる。
このように、TEG配置用遮光帯31bは、所望の種類のTEGの配置領域として用いられるとともに、重ね合わせ検査パターンを形成する領域としても利用される。そして、TEG領域の周りの余白領域32a等は、TEG配置用遮光帯31bによる未露光部分を消去するために用いられるとともに、重ね合わせ検査パターンを形成する領域としても利用される。
次に、図5を参照して、第2実施例によるレチクルについて説明する。図5は、第2実施例のレチクルのデザインを示す概略平面図である。以下、第1実施例との違いについて説明する。
第1実施例のレチクルでは、チップパターニング領域31の他に、2種類のTEGを形成するための第1及び第2TEGパターニング領域32、33を配置した。第2実施例のレチクルでは、TEGの種類をさらに2種類増やして、第3及び第4TEGパターニング領域34、35を追加する。
第2実施例のレチクルretでは、チップパターニング領域31の中心を、レチクルプレート中心retCからY方向下側にオフセットさせている。これにより、第1〜第4TEGパターニング領域32〜35を、チップパターニング領域31のY方向上側にまとめて配置できるスペースが、確保されている。
第3TEGパターニング領域34は、TEG−Cを形成するマスクパターンが形成された第3TEG領域M4と、第3TEG領域M4の周りに配置された余白領域34aとを含む。第4TEGパターニング領域35は、TEG−Dを形成するマスクパターンが形成された第4TEG領域M5と、第4TEG領域M5の周りに配置された余白領域35aとを含む。第3及び第4TEGパターニング領域34、35のサイズの条件や、重ね合わせ検査パターンを形成することについては、第1及び第2TEGパターニング領域32、33と同様である。
第2TEGパターニング領域33のY方向上側に、第3TEGパターニング領域34が配置され、第3TEGパターニング領域34のY方向上側に、第4TEGパターニング領域35が配置されている。第3TEGパターニング領域34の露光時に、マスキングブレードで画定される露光領域54は、第3TEGパターニング領域34を含むが、他のパターニング領域31等は含まない。また、第4TEGパターニング領域35の露光時に、マスキングブレードで画定される露光領域55は、第4TEGパターニング領域35を含むが、他のパターニング領域31等は含まない。
このように、チップパターニング領域31の中心を、レチクルプレート中心から適当にオフセットさせることにより、複数のTEGパターニング領域32等をまとめて配置するスペースを確保することができる。
第2実施例のレチクルを用いた露光工程は、第1実施例の露光工程と基本的には同様である。ただし、オフセットを加味した位置決めを行う。具体的には、露光装置へ入力するアライメントマーク座標の設定を以下のように行うことができる。第1の方法としては、チップパターニング領域31の中心のマーク座標に対してレチクルプレート中心との差分を加えたマーク座標を入力する。第2の方法としては、チップパターニング領域31の中心のマーク座標を入力し、レチクルプレート中心との差分を加味した処理を、露光装置のオフセット機能で行う。
なお、ウエハ上のTEGの配置としては、例えば、TEG−A配置行(M2(TEG−A)露光行)、TEG−B配置行(M3(TEG−B)露光行)、TEG−C配置行(M4(TEG−C)露光行)、及びTEG−D配置行(M5(TEG−D)露光行)が並んだ構造が、列方向に繰り返すようなものとすることができる。なお、このようなTEGの配置は一例である。必要に応じて適宜、未露光部分31bごとに、どの種類のTEGを配置するかを選択することが可能である。
以上説明したように、第2実施例のレチクルにより、チップパターニング領域を拡げることなく、第1実施例よりもさらに多くの種類のTEGを形成することができる。
次に、図6及び図7を参照して、第3実施例によるレチクルについて説明する。図6Aは、第3実施例のレチクルのデザインを示す概略平面図である。以下、第1実施例との違いについて説明する。
第1実施例のレチクルは、チップパターニング領域31のY方向外側に、第1及び第2TEGパターニング領域32、33を配置した。第3実施例のレチクルretでは、チップパターニング領域31のX方向外側(例えば右側)に、第1及び第2TEGパターニング領域32、33を配置する。
チップパターニング領域31のX方向外側に配置することに伴い、第1及び第2TEGパターニング領域32、33のそれぞれを、第1実施例に対して90°回転させたデザインとしている。これにより、第1及び第2TEGパターニング領域32、33の長さ方向がY方向となる。なお、同時に、第1及び第2TEGパターニング領域32、33を露光するための露光領域52、53も、それぞれ90°回転させたデザインとなる。
チップパターニング領域31の外側の空き領域は、空き領域が無駄に広くならないようにするならば、チップ領域M1の辺に沿って細長い形状となる。従って、チップパターニング領域31のX方向外側の空き領域は、Y方向に細長い形状となる。第3実施例では、第1及び第2TEGパターニング領域32、33の長さ方向をY方向とすることにより、チップパターニング領域31のX方向外側の空き領域に、第1及び第2TEGパターニング領域32、33を配置しやすくしている。なお、第1及び第2TEGパターニング領域32、33のサイズの条件や、重ね合わせ検査パターンを形成することについては、第1実施例と同様である。
図6B及び図6Cは、第3実施例のレチクルで露光する場合の焼付けレイアウトを示す概略平面図である。第3実施例の焼付けレイアウトは、第1実施例のそれと同様である(図1参照)。図6Bは、1次露光(チップパターニング領域31の露光)の期間の、半導体ウエハ10の姿勢(面内の回転角度0°)を示し、図6Cは、2次及び3次露光(第1及び第2TEGパターニング領域32、33の露光)の期間の、半導体ウエハ10の姿勢(面内の回転角度90°)を示す。
ただし、第1及び第2TEGパターニング領域32、33それぞれのレチクル上での回転方向と、2次及び3次露光の期間の半導体ウエハ10の回転方向とは揃える。以下の露光工程で説明するように、両者の回転方向を揃えることにより、焼付けレイアウト内でのTEGの向きが、第1実施例のそれと同じ向きになる。以下、回転角度を+90°(反時計回りに90°)と想定して、説明を続ける。なお、必要に応じて回転角度を−90°(時計回りに90°)に設定することもできる。
次に、第3実施例のレチクルを用いた露光工程について説明する。まず、半導体ウエハ10上に感光性レジストを塗布する。そして、第1実施例と同様にして、チップパターニング領域31の、ウエハ全面上への転写を行う。つまり、1次露光を行う。1次露光では、図6Bに示したように、ウエハステージの回転角度の設定は0°である。
図7Aは、1次露光が終了した状態の半導体ウエハ10を示す概略平面図である。この状態は、第1実施例で1次露光が終了した状態と同様である(図2A参照)。つまり、1回の露光で同時にパターン転写された2つ分のチップ領域M1の間に、未露光部分31bが残されている。
次に、未露光部分31bがX方向に並ぶ行の1行置きに画定された、TEG−A配置行RAに、第1TEG領域M2を転写する。つまり、2次露光を行う。詳細には、まず、図6Cに示したように、露光装置のウエハステージの回転角度を+90°に設定して、半導体ウエハ10を回転させる。
このため、2次露光では、ウエハ回転を加味した位置決めを行うこととなる。具体的には、露光装置に入力するアライメントマーク座標を、ウエハ回転角度に応じて、XY座標を変換した値とする。例えば、あるマーク座標が、ウエハ回転角度0°でX=1000μm、Y=1000μmだったする。2次露光でのウエハ回転角度を+90°とすると、ウエハ回転後のこのマーク座標は、X=−1000μm、Y=1000μmとなる。
ウエハ回転後の工程は、ウエハ回転に対応して走査方向が90°回転しているという点以外は基本的に、第1実施例の2次露光と同様である。
つまり、ウエハ回転後、最初に露光される未露光部分31bに、第1TEG領域M2を位置合わせし、マスキングブレードを、露光領域52を画定する位置に配置する。そして、最初の未露光部分31bに第1TEG領域M2を露光する。さらに、ウエハステージで半導体ウエハ10を移動させながら、TEG−A配置行RA上で第1TEG領域M2の投影像を走査し、各未露光部分31bに第1TEG領域M2を露光して、ウエハ全面上のTEG−A配置行RAに、第1TEG領域M2を転写する。
図7Bは、2次露光が終了した状態の半導体ウエハ10を示す概略平面図である。TEG−A配置行RA上に、第1TEG領域M2が配置され、TEG−B配置行RB上には、未露光部分31bが残されている。
次に、TEG−B配置行RBに、第2TEG領域M3を転写する。つまり、3次露光を行う。3次露光も2次露光に引き続き、半導体ウエハ10を+90°回転させた状態で露光を行う。ウエハ回転に対応して走査方向が90°回転しているという点以外は基本的に、第1実施例の3次露光と同様である。
図7Cは、3次露光が終了した状態の半導体ウエハ10を示す概略平面図である。TEG−B配置行RB上に、第2TEG領域M3が転写されており、未露光部分31bが残っていない。このようにして、第3実施例のレチクルを用いた露光が行われる。
第1及び第2TEGパターニング領域32、33それぞれのレチクル上での回転方向と、2次及び3次露光の期間の半導体ウエハ10の回転方向が揃っていることにより、焼付けレイアウト内でのTEGの向きが、第1実施例のそれと同じ向きになる。
以上説明したように、第3実施例のレチクルを用いても、第1実施例と同様に、チップパターニング領域を拡げることなく、複数種類のTEGを形成することができる。
なお、第3実施例では、第1及び第2TEGパターニング領域32、33を、チップパターニング領域31の右側にまとめて配置する例を説明したが、チップパターニング領域31の左側にまとめて配置することも可能であり、また、チップパターニング領域31の左右に分けて配置することも可能である。
なお、第1、第2実施例と第3実施例の技術を組み合わせることも可能である。つまり、チップパターニング領域31の上下左右のいずれかの空き領域を必要に応じて選択して、TEGパターニング領域を配置することができる。また、必要に応じ、チップパターニング領域31を所望の方向にオフセットさせて、空き領域の広さを変えることができる。
なお、第3実施例では、露光装置に命令を与える露光ファイルとして、1次露光と、2次及び3次露光とで、別々のファイルが用意される。1つの露光ファイルに係る処理中に、ウエハを回転させることができないためである。
なお、第1実施例(及び第2実施例)では、1次〜3次露光を、1つの露光ファイルで処理することができる。マスキングブレード開口領域の変更処理(つまり、パターニング領域の変更処理)は、1つの露光ファイル内で行うことができる。なお、1ショットごとにマスキングブレード開口領域を変更することも可能である。
以上、第1〜第3実施例では、例示的に1×2型のブロックレチクルについて説明したが、その他の型のブロックレチクルや、シングルレチクルについても、第1〜第3実施例の技術を応用することができる。
つまり、レチクルのデザインとしては、チップ領域とスクライブ領域を含むチップパターニング領域の、スクライブ領域内に従来配置されていたTEG領域に替えてTEG配置用の遮光帯を配置するとともに、チップパターニング領域と別に、TEG領域を含むTEGパターニング領域を配置する。複数種類のTEGが形成できるように、複数のTEGパターニング領域を配置することができる。
露光は、まず、チップパターニング領域を転写する1次露光を行う。1次露光では、TEG配置用遮光帯の転写された部分が未露光となる。そして、2次以降の露光で、未露光部分に、選択された所望のTEG領域を転写することができる。
このようにして、1枚のレチクルを用いて容易に、複数種類のTEGの形成が行える。チップパターニング領域を拡げる必要がないので、複数種類のTEGを形成しても、有効チップ数を減少させずにすむ。
なお、上記実施例の技術を用いてTEGを形成するとき、TEG領域近傍に重ね合わせ検査パターンが転写される。転写された重ね合わせ検査パターンに従って、半導体ウエハに重ね合わせ検査パターン構造が形成される(ウエハ上に形成された重ね合わせ検査パターン構造も、単に重ね合わせ検査パターンと呼ぶこととする)。従って、実施例の技術を用いてTEGを形成するとき、半導体ウエハ上のTEGの近傍に、重ね合わせ検査パターンが残ることとなる。
なお、例えば上記実施例では、同一の半導体ウエハ上に、半導体チップと、複数種類のTEGとを形成する例を説明した。実施例のレチクルの利用態様は、このようなものに限らない。例えば、ある半導体ウエハには、半導体チップとある種類のTEG−Aのみを形成し、他の半導体ウエハには、半導体チップと他の種類のTEG−Bのみを形成するというような、同一レチクルを用いて形成するTEGの種類を半導体ウエハごとに変える利用態様も考えられる。
なお、半導体装置形成の初期段階(通常、素子分離工程が該当)の前に、半導体基板(例えばSi基板)に位置合わせマークを形成しておくことにより、半導体装置形成の初期段階から、実施例によるTEG形成工程を開始することができる。
実施例によるTEG形成工程は、未露光部分を画定する1次露光と、未露光部分にTEG領域を転写する2次以降の露光を含み、未露光部分とTEG領域との位置合わせを必要とする。位置合わせマークが既に形成されていれば、半導体装置形成の初期段階から、実施例のTEG形成工程に係る位置合わせを良好に行うことができる。なお、このような位置合わせマークの形成には、例えば電子線リソグラフィを用いることができる。
以上実施例に沿って本発明を説明したが、本発明はこれらに制限されるものではない。例えば、種々の変更、改良、組み合わせ等が可能なことは当業者に自明であろう。
以上説明した第1〜第3実施例を含む実施形態に関し、さらに以下の付記を開示する。
(付記1)
半導体チップを形成するためのマスクパターンが形成されたチップ領域と前記チップ領域の周りに配置されたスクライブ領域とを含み、前記スクライブ領域内にTEG配置用遮光帯が配置された、チップパターニング領域と、
第1のTEGを形成するためのマスクパターンが形成された第1TEG領域を含み、前記第1TEG領域は、前記TEG配置用遮光帯に内包される大きさである、第1TEGパターニング領域と、
第2のTEGを形成するためのマスクパターンが形成された第2TEG領域を含み、前記第2TEG領域は、前記TEG配置用遮光帯に内包される大きさである、第2TEGパターニング領域と
を有するレチクル。
(付記2)
前記第1TEGパターニング領域は、前記第1TEG領域の周りに配置された余白領域を含み、前記余白領域の外側の縁は、前記TEG配置用遮光帯を内包する大きさである付記1に記載のレチクル。
(付記3)
前記余白領域は、前記TEG配置用遮光帯が配置された前記スクライブ領域に内包される大きさである付記2に記載のレチクル。
(付記4)
前記TEG配置用遮光帯に、第1の重ね合わせ検査パターンが形成され、前記余白領域に、前記第1の重ね合わせ検査パターンと対をなす第2の重ね合わせ検査パターンが形成された付記2または3に記載のレチクル。
(付記5)
前記TEG配置用遮光帯の長さ方向と、前記第1TEG領域の長さ方向とが平行である付記1〜4のいずれか1つに記載のレチクル。
(付記6)
前記TEG配置用遮光帯の長さ方向と、前記第1TEG領域の長さ方向とが交差している付記1〜4のいずれか1つに記載のレチクル。
(付記7)
半導体チップを形成するためのマスクパターンが形成されたチップ領域と前記チップ領域の周りに配置されたスクライブ領域とを含み、前記スクライブ領域内にTEG配置用遮光帯が配置された、チップパターニング領域と、
第1のTEGを形成するためのマスクパターンが形成された第1TEG領域を含み、前記第1TEG領域は、前記TEG配置用遮光帯に内包される大きさである、第1TEGパターニング領域と、
第2のTEGを形成するためのマスクパターンが形成された第2TEG領域を含み、前記第2TEG領域は、前記TEG配置用遮光帯に内包される大きさである、第2TEGパターニング領域と
を有するレチクルを用いる半導体装置の製造方法であって、
レジストの形成された半導体ウエハに、前記レチクルの前記チップパターニング領域を転写するチップ領域露光工程と、
前記チップ領域露光工程で、前記TEG配置用遮光帯が転写された未露光部分内に、前記レチクルの前記第1TEG領域または前記第2TEG領域を転写するTEG領域露光工程と
を有する半導体装置の製造方法。
(付記8)
前記第1TEGパターニング領域は、前記第1TEG領域の周りに配置された余白領域を含み、前記余白領域の外側の縁は、前記TEG配置用遮光帯を内包する大きさであって、
前記TEG領域露光工程は、前記余白領域が、前記TEG配置用遮光帯の転写された前記未露光部分を内包するようにして、前記第1TEG領域を転写する付記7に記載の半導体装置の製造方法。
(付記9)
並んで配置された複数の半導体チップ領域と、
隣接する前記半導体チップ領域の間に配置されたスクライブ領域と、
前記スクライブ領域に配置された第1のTEGと
前記スクライブ領域の、前記第1のTEGの近傍に形成された重ね合わせ検査パターンと
を有する半導体ウエハ。
(付記10)
さらに、前記スクライブ領域に配置され、前記第1のTEGと種類の異なる第2のTEGを有する付記9に記載の半導体ウエハ。