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JP5519260B2 - フレキシブルプリント回路基板補強用フィルム、それからなるフレキシブルプリント回路補強板およびそれらからなるフレキシブルプリント回路基板積層体 - Google Patents

フレキシブルプリント回路基板補強用フィルム、それからなるフレキシブルプリント回路補強板およびそれらからなるフレキシブルプリント回路基板積層体 Download PDF

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Description

本発明は、フレキシブルプリント回路基板の補強用フィルムとして接着シートとの接着性に優れ、はんだリフロー後も接着性を保つことができ、かつ放熱性に優れたフレキシブルプリント回路基板補強用フィルム、それからなるフレキシブルプリント回路補強板およびそれらからなるフレキシブルプリント回路基板積層体に関する。
携帯電話などの電子機器の技術進歩に伴って、フレキシブルプリント回路(以下、FPCと略記することがある)基板の需要が急激に伸びている。FPCを製造する際の加工性において、フィルムの薄膜化に伴い、基板フィルム自体の剛性が低下し、FPCを製造する際の加工性が困難になってきている。このような加工性低下を改良する方法として、基板フィルムとは別にFPC補強用フィルムを補強板として用い、加工性が求められる部位に接着シートを介して補強板をFPC基板と貼りあわせることにより保持し、全体として剛性を持たせる方法が用いられている。
従来、かかるFPC補強用フィルムにはポリイミドフィルムを2層以上貼り合わせた積層フィルムが使用されてきた。しかしながら、ポリイミドは素材の性質上、フィルム化や75μm以上の膜厚フィルムの作成が困難であり、また非常に高価なものである。その他、ポリイミドは比較的吸水しやすくFPC などの電子材料として取り扱いにくい特性も有している。一方、耐熱性に優れてはいるが、本用途においては過剰品質である点も否めない。
一方、FPC基板フィルムとしてはポリイミド以外の他素材も検討されており、例えば特許文献1では、ポリエチレンナフタレートフィルムを用いたFPC基板用フィルムが提案されており、加工時の補強用フィルムとして用いてもよいことが開示されている。しかしながら特許文献1に開示されているポリエチレンナフタレートフィルムを用いてはんだリフロー処理を行うと、接着シートとの密着性が十分でないことがあり、補強用フィルムの剥がれや、接着界面に膨れが発生したり、FPC基板と補強用フィルムの間のピール強度が低下することがあった。
また、特許文献2においてポリエチレンナフタレートよりなるFPC基板の補強板としてポリエチレンナフタレートを用い、その片面に特定の接着剤層を形成することが開示されているが、接着性を高めるために特定の接着剤を使用する必要があった。
このように、ポリエチレンナフタレートをフレキシブル回路基板の補強用フィルムとして用いたときに、市販の接着シートを介した方法では、ポリエチレンナフタレート補強フィルムとの密着性は未だ十分ではなく、はんだリフロー工程において部分的に剥がれや膨れが生じるという課題があり、その改良が求められている。さらに、近年、電子部品の高密度化や小型化が進み、各部材からの熱の問題が生じており、回路基板が使用される用途によって回路基板には放熱対策が必要となってきている。
特開2005−129699号公報 特開2007−109952号公報
本発明の目的は、FPC基板の補強用フィルムとして市販の接着シートとの密着性に優れ、はんだリフロー工程において、市販の接着シートを用いてFPC基板と補強板とを貼り合せた場合であっても、接着界面に部分的な剥がれや膨れが生じず、かつ放熱性に優れたフレキシブルプリント回路基板補強用フィルム、それからなるフレキシブルプリント回路補強板およびそれらからなるフレキシブルプリント回路基板積層体を提供することにある。
本発明者等は、前記課題を解決するために鋭意検討した結果、二軸配向ポリエステルフィルム基材層を有する補強用フィルムにおいて、高温での寸法安定性を有するとともに、基材層の少なくとも片面にオキサゾリン基を有するアクリル樹脂を含む高分子バインダーを含む塗布層を有することにより、市販の接着シートとの密着性が従来よりも向上し、260℃程度のリフロー工程における部分的な剥がれや膨れが生じなくなること、さらに二軸配向ポリエステルフィルム基材層中に放熱効果の高い無機粒子を含有させるなどの方法で補強用フィルムの熱伝導率を高めることにより、補強板と貼り合せたフレキシブルプリント回路基板の放熱効果を高めることができることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち本発明の目的は、二軸配向ポリエステルフィルム基材層を有するフレキシブルプリント回路基板補強用フィルムであって、基材層を構成するポリエステルがポリエチレンナフタレンジカルボキシレートであり、該基材層の少なくとも片面にオキサゾリン基を有するアクリル樹脂を含む高分子バインダーを含む塗布層を有しており、かつ230℃で10分間加熱処理したときの該補強用フィルムの熱収縮率がフィルム長手方向および幅方向の両方向において−3%以上3%未満であって、熱伝導率が0.2W/m・K以上10W/m・K以下であるフレキシブルプリント回路基板補強用フィルムによって達成される。
また本発明のフレキシブルプリント回路基板補強用フィルムは、好ましい態様として、二軸配向ポリエステルフィルム基材層に該層の重量を基準として10重量%以上50重量%以下の範囲で無機粒子を含有してなること、無機粒子が酸化チタン、硫酸バリウム、炭酸カルシウム、酸化アルミニウム、窒化ホウ素および二酸化ケイ素からなる群から選ばれる少なくとも1種であること、無機粒子とポリエステル相との界面におけるボイド面積が、フィルム断面において粒子面積の5%以下であること、塗布層における高分子バインダーの含有量が塗布層の重量を基準として10重量%以上80重量%以下であること、オキサゾリン基を有するアクリル樹脂の含有量が高分子バインダー重量を基準として3重量%以上90重量%以下であること、の少なくとも1つを具備するものも包含する。
本発明はまた、本発明のフレキシブルプリント回路基板補強用フィルムを用いたフレキシブルプリント回路補強板に関するものである。
さらに本発明は、フレキシブルプリント回路基板に接着シートを介して本発明のフレキシブルプリント回路補強板が貼りあわされたフレキシブルプリント回路基板積層体に関するものであり、その好ましい態様として接着シートがエポキシ系接着シートまたはアクリル系接着シートであること、フレキシブルプリント回路基板のベースフィルムがポリイミドまたはポリエステルであること、のいずれか1つを包含するものである。
本発明のフレキシブルプリント回路基板補強用フィルムは、はんだリフロー後のフレキシブルプリント回路基板との密着性が良好で、部分的な剥がれや膨れがなく生産性に優れており、かつフレキシブルプリント回路基板の補強板としてフレキシブルプリント回路基板と貼り合せて使用することにより、電子部品実装時および回路の使用時にフレキシブルプリント回路基板に発生する熱の放熱性に優れることから、その工業的価値は極めて高い。
<二軸配向ポリエステルフィルム基材層>
本発明のフレキシブルプリント回路基板補強用フィルムは、二軸配向ポリエステルフィルム基材層を有する。該基材層を構成するポリエステルは、ポリエチレンナフタレンジカルボキシレートである。また、該基材層には、該基材層の重量を基準として10重量%以上50重量%以下の範囲で無機粒子を含有してなることが好ましい。
(ポリエチレンナフタレンジカルボキシレート)
本発明の二軸配向ポリエステルフィルム基材層を構成するポリエステルは、ナフタレンジカルボン酸またはその誘導体とエチレングリコールとの重縮合によって得られるポリエチレンナフタレンジカルボキシレートであり、中でもポリエチレン−2,6−ナフタレンジカルボキシレートが好ましい。ポリエステルとしてポリエチレンナフタレンジカルボキシレートが用いられることにより、フィルムの耐熱寸法安定性が高まる。
本発明のポリエステルは、ホモポリマーであってもよく、また共重合体、2種以上のポリエステルとの混合体のいずれであってもかまわない。共重合体または混合体における他の成分は、全酸成分を基準として10モル%以下、さらに5モル%以下であることが好ましい。共重合成分としては、ジエチレングリコール、ネオペンチルグリコール、ポリアルキレングリコールなどのジオール成分、アジピン酸、セバシン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、5−ナトリウムスルホイソフタル酸などのジカルボン酸成分が挙げられる。
ポリエステルは公知の方法を適用して製造することができる。例えば、ジオールとジカルボン酸および必要に応じて共重合成分をエステル化反応させ、次いで得られる反応生成物を重縮合反応させてポリエステルとする方法で製造することができる。また、これらの原料モノマーの誘導体をエステル交換反応させ、次いで得られる反応生成物を重縮合反応させてポリエステルとする方法で製造してもよい。
ポリエステルの固有粘度は、o−クロロフェノール中、35℃において0.40dl/g以上であることが好ましく、0.40dl/g以上0.80dl/g以下であることがさらに好ましい。固有粘度が0.40dl/g未満ではフィルム製膜時に切断が多発したり、成形加工後の製品の強度が不足することがある。一方固有粘度が0.80dl/gを超える場合は重合時の生産性が低下することがある。
該基材層において、ポリエチレンナフタレンジカルボキシレートは該層の重量を基準として50重量%以上95重量%以下であることが好ましく、さらに好ましくは60重量%以上90重量%以下、特に好ましくは70重量%以上85重量%以下である。ポリエチレンナフタレンジカルボキシレートの含有量が下限値に満たない場合、補強板が脆くなり、補強効果が十分でないことがある。一方、ポリエチレンナフタレンジカルボキシレートの含有量が上限値を超える場合、放熱効果が十分に発現しないことがある。
(無機粒子)
本発明の二軸配向ポリエステル基材層は、該基材層の重量を基準として10重量%以上50重量%以下の範囲で無機粒子を含有することが好ましい。また無機粒子の含有量は、さらに好ましくは10重量%以上40重量%以下、特に好ましくは15重量%以上30重量%以下である。
無機粒子の含有量が下限値に満たない場合、十分な放熱効果が得られないことがある。一方、無機粒子の含有量が上限値を超えると補強板が脆くなり、折り曲げた際などに補強効果が十分でないことがある他、製膜時に切断が発生しやすくなる。また、かかる範囲内で粒子含有量が多いほど反りが低減する効果も奏する。
無機粒子としては、酸化チタン、硫酸バリウム、炭酸カルシウム、酸化アルミニウム、窒化ホウ素および二酸化ケイ素からなる群から選ばれる少なくとも1種の無機粒子であることが好ましい。また、これらの無機粒子の中でも表面処理が施された酸化チタンは、樹脂相との界面におけるボイドが発生しにくくなり、放熱機能が発現しやすくなる。表面処理は、ポリエステルとの密着性が高まる処理方法であれば特に限定されないが、例えばエポキシシランやビニルシラン処理などが挙げられる。
無機粒子の平均粒径は、好ましくは0.1〜3.0μm、さらに好ましくは0.2〜2.5μm、特に好ましくは0.3〜2.0μmである。平均粒径が下限値に満たない場合、分散性が悪くなり粒子の凝集が生じやすいため、フィルムに粗大突起を形成し、生産工程上のトラブルになる可能性がある。一方、平均粒径が上限値を超える場合、フィルムの表面が粗くなり、粒子が脱落しやすい。
かかる平均粒径は、電解溶液中に1個の小孔のある電極を設け、電解質溶液中に粉体粒子を分散させて粒子が小孔中を通過するときの電気抵抗値の変化量で粒子体積を、抵抗変化の発生数で粒子数を検出して粒径分布を求めるコールターカウンター法で測定した重量平均粒径である。
ルチル型酸化チタンを用いる場合には、分散性を向上させるために、ステアリン酸などの脂肪酸およびその誘導体により処理してもよい。
ルチル型酸化チタンを用いる場合には、ポリエステルに添加する前に、精製プロセスを用いて、粒径調整、粗大粒子除去を行うことが好ましい。精製プロセスの工業的手段としては、粉砕手段で例えばジェットミル、ボールミルを適用することができ、分級手段としては、例えば乾式もしくは湿式遠心分離機を適用することができる。なお、これらの手段は2種以上を組み合わせ、段階的に精製してもよい。
これらの無機粒子を基材層を構成するポリエステル組成物に含有させる方法としては各種の方法を用いることができ、代表的な方法として、下記のような方法を挙げることができる。
(ア)ポリエステル合成時のエステル交換反応もしくはエステル化反応終了前に添加、もしくは重縮合反応開始前に添加する方法。
(イ)フィルム製膜時に、ポリエステルチップなどとともに押出機に投入し、溶融混練する方法。
(ウ)上記(ア)、(イ)の方法において、無機粒子を多量添加したマスターペレットを製造し、これらと添加剤を含有しないポリエステルとを混練して所定量の添加物を含有させる方法。
(エ)上記(ウ)のマスターペレットをそのまま使用する方法。
なお、(ア)のポリエステル合成時に添加する方法を用いる場合には、粒子をグリコールに分散したスラリーとして、反応系に添加することが好ましい。
一般的にこれら無機粒子は、凝集して粗大凝集粒子となることが多く、粗大凝集粒子の個数を減らすために、製膜時のフィルターとして線径15μm以下のステンレス鋼細線よりなる平均目開き10〜100μm、好ましくは平均目開き20〜50μmの不織布型フィルターを用い、溶融ポリマーを濾過することが好ましい。
(その他添加剤)
基材層を構成するポリエステル組成物には、その他の添加剤として、酸化防止剤、紫外線吸収剤、蛍光増白剤を本発明の目的を逸脱しない範囲内で、必要に応じて混合して含有させてもよい。
これらの添加剤を含む場合、その含有量は基材層の重量を基準として5重量%以下であることが好ましく、さらに3重量%以下、特に1重量%以下であることが好ましい。
また、本発明のポリエステルフィルム基材層は、フィルムを構成するポリエステルと実質的に非相溶な樹脂成分を実質的に含まないことが好ましい。実質的に含まないとは、該基材層の重量を基準として、その含有量が通常0〜3重量%、好ましくは0〜1%、さらに好ましくは0〜0.5%であることをいう。非相溶な樹脂を実質的に含有すると、延伸によりポリエチレンナフタレンジカルボキシレートとの界面にボイドが生じやすく、その断熱効果により十分な放熱機能が生じなくなることがある。
<塗布層>
本発明のフレキシブルプリント回路基板補強用フィルムは、上述の二軸配向ポリエステルフィルム基材層の少なくとも片面に塗布層を有しており、該塗布層はオキサゾリン基を有するアクリル樹脂を含む高分子バインダーを含有してなるものである。
(高分子バインダー)
塗布層を構成する高分子バインダーとして、オキサゾリン基を有するアクリル樹脂を含むことが必要である。かかる高分子バインダーを用いることにより、市販の接着シートを介してフレキシブルプリント回路基板とフレキシブルプリント回路基板補強用フィルムとの接着性を高めることができる。
オキサゾリン基を有するアクリル樹脂として、以下のオキサゾリン基を有するモノマーからなるアクリル樹脂が例示される。
オキサゾリン基を有するモノマーとしては、2−ビニル−2−オキサゾリン、2−ビニル−4−メチル−2−オキサゾリン、2−ビニル−5−メチル−2−オキサゾリン、2−イソプロペニル−2−オキサゾリン、2−イソプロペニル−4−メチル−2−オキサゾリン、2−イソプロペニル−5−メチル−2−オキサゾリンが挙げられ、これらの1種または2種以上の混合物を使用することができる。これらの中でも、2−イソプロペニル−2−オキサゾリンが工業的に入手しやすく好適である。
オキサゾリン基を有するアクリル樹脂を用いることにより、塗布層の凝集力が向上し、塗布層での凝集破壊の発生を防ぐことができる。そのため、接着シートと接着させる際に塗布層面に接着させることにより、接着シートとの密着性が強固なものとなり、同時に補強用フィルムの熱収縮率が一定の範囲にあることにより、はんだリフロー工程を経ても接着シートとの接着界面が剥がれにくく、また膨れの発生を抑制することができ、フレキシブルプリント回路基板補強板として十分に回路基板を補強することができる。
オキサゾリン基を有するモノマー成分は、アクリル樹脂の繰り返し単位を基準として、5モル%以上80モル%以下であることが好ましく、10モル%以上50モル%以下であることがさらに好ましい。
また、かかるアクリル樹脂の共重合成分として、さらにポリアルキレンオキシド鎖を有するモノマーを含有してもよい。かかるポリアルキレンオキシド鎖を有するモノマーとしては、アクリル酸、メタクリル酸のエステル部にポリアルキレンオキシドを付加させたものを挙げることができる。ポリアルキレンオキシド鎖はポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキシド、ポリブチレンオキシドなどを挙げることができる。ポリアルキレンオキシド鎖の繰り返し単位は3〜100であることが好ましい。
高分子バインダーとして、さらにポリエステル樹脂を含む場合、ポリアルキレンオキシド鎖を有するアクリル樹脂を用いることで、ポリエステル樹脂とアクリル樹脂の相溶性がポリアルキレンオキシド鎖を含有しないアクリル樹脂に比べて向上する。
アクリル樹脂がポリアルキレンオキシド鎖を有するモノマーを含有する場合、ポリアルキレンオキシド鎖の繰り返し単位が3より少ないとポリエステル樹脂とアクリル樹脂との相溶性が十分に向上しないことがある。一方、ポリアルキレンオキシド鎖の繰り返し単位が100より大きいと塗布層の耐湿熱性が下がり、高湿度、高温下で接着シートとの密着性が低下することがある。
さらに、アクリル樹脂を構成するその他の共重合成分として、アルキル(メタ)アクリレート;2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレートなどのヒドロキシル基含有モノマー;グリシジル(メタ)アクリレート、アリルグリシジルエーテルなどのエポキシ基含有モノマー;アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、フマール酸、クロトン酸、スチレンスルホン酸及びその塩(ナトリウム塩、カリウム塩、アンモニウム塩、第三級アミン塩など)などのカルボキシル基またはその塩を有するモノマー;(メタ)アクリルアミド、N−アルキル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジアルキル(メタ)アクリルアミド、N−アルコキシ(メタ)アクリルアミド、N,N−ジアルコキシ(メタ)アクリルアミド、アクリロイルモルホリン、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、N−フェニル(メタ)アクリルアミドなどのアミド基を有するモノマー;無水マレイン酸、無水イタコン酸などの酸無水物のモノマー;ビニルイソシアネート、アリルイソシアネート、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルメチルエーテル、ビニルエチルエーテル、ビニルトリアルコキシシラン、アルキルマレイン酸モノエステル、アルキルフマール酸モノエステル、アルキルイタコン酸モノエステル、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、塩化ビニリデン、エチレン、プロピレン、塩化ビニル、酢酸ビニル、ブタジエンが挙げられる。
かかる共重合成分中、アルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基、2−エチルヘキシル基、シクロヘキシル基が例示され、またアルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、ブトキシ基、イソブトキシ基が例示される。
また、高分子バインダーとして、該アクリル樹脂に加えて、さらに他の成分を併用することができ、例えばポリエステル樹脂を用いることが好ましい。ポリエステル樹脂を併用することにより、ポリエステル基材層と塗布層との接着性を高めることができる。
ポリエステル樹脂として、多価塩基酸成分とジオール成分から得られるポリエステルを用いることが好ましい。多価塩基成分として、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、無水フタル酸、2、6−ナフタレンジカルボン酸、1、4−シクロヘキサンジカルボン酸、アジピン酸、セバシン酸、トリメリット酸、ピロメリット酸、ダイマー酸、5−ナトリウムスルホイソフタル酸を例示することができる。高分子バインダーを構成するポリエステル樹脂としては、2種以上のジカルボン酸成分を用いた共重合ポリエステルを用いることが好ましい。ポリエステル樹脂には、若干量であればマレイン酸、イタコン酸などの不飽和多塩基酸成分、あるいはp−ヒドロキシ安息香酸などのごときヒドロキシカルボン酸成分が含まれていてもよい。
ポリエステル樹脂のジオール成分としては、エチレングリコール、トリメチレングリコール、1、4−ブタンジオール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、1、6−ヘキサンジオール、1、4−シクロヘキサンジメタノール、キシレングリコール、ジメチロールプロパンなどや、ポリ(エチレンオキシド)グリコール、ポリ(テトラメチレンオキシド)グリコールを例示することができる。
高分子バインダーのポリエステル樹脂のガラス転移点は、好ましくは40〜100℃、更に好ましくは60〜80℃である。この範囲であれば、ポリエステル基材層との優れた接着性に加え、さらに優れた耐傷性を得ることができる。他方、ガラス転移温度が40℃未満であるとフィルム同士でブロッキングが発生しやすくなり、100℃を超えると塗膜が硬く、また脆くなることがある。
塗布層の形成成分として高分子バインダーに加えて他の成分も用いる場合、高分子バインダーの含有量は、塗布層の重量を基準として10重量%以上80重量%以下であることが好ましい。また、高分子バインダーの含有量の下限値は20重量%であることがさらに好ましく、高分子バインダーの含有量の上限値は50重量%であることがさらに好ましい。塗布層に占める高分子バインダーの含有量がかかる範囲内にあれば、接着シートとの接着性を強固なものにすることができ、かつ補強用フィルムの熱収縮率が一定の範囲にある場合にはんだリフロー後の界面の剥がれや膨れの発生を抑制することができる。
また、高分子バインダーとしてオキサゾリン基を有するアクリル樹脂に加え、さらに他の成分を併用する場合、オキサゾリン基を有するアクリル樹脂の含有量は高分子バインダーの重量を基準として3重量%以上90重量%以下であることが好ましい。また該アクリル樹脂の含有量の下限値は15重量%であることがより好ましく、25重量%であることがさらに好ましい。また、該アクリル樹脂の含有量の好ましい上限値は80重量%である。
高分子バインダーに占めるオキサゾリン基を有するアクリル樹脂の割合がかかる範囲にあれば、塗布層の凝集力が向上して凝集破壊が生じにくくなり、はんだリフロー後の接着界面における剥がれや膨れを抑制することができ、好ましい範囲になるほどその効果が高くなる。一方、該アクリル樹脂が下限に満たない場合、塗布層の凝集力が低下し、接着シートとの接着性が不十分となることがある。また、該アクリル樹脂が上限を超える場合、ポリエステルフィルムと塗布層との密着性が低下することがある。
高分子バインダーがさらにポリエステル樹脂を含む場合、ポリエステル樹脂の含有量は、高分子バインダーの重量を基準として5重量%以上95重量%以下であることが好ましい。またポリエステル樹脂の含有量の下限値は10重量%であることがより好ましく、20重量%であることがさらに好ましい。またポリエステル樹脂の含有量の上限値は90重量%であることがより好ましく、さらには85重量%であり、75重量%であることが特に好ましい。
(粒子)
本発明の塗布層は、フィルムの滑り性を高める目的で粒子を含有することができる。粒子の種類は特に制限されないが、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、酸化カルシウム、酸化亜鉛、酸化マグネシウム、酸化ケイ素、ケイ酸ソーダ、水酸化アルミニウム、酸化鉄、酸化ジルコニウム、硫酸バリウム、酸化チタン、酸化錫、三酸化アンチモン、カーボンブラック、二硫化モリブデンなどの無機粒子、アクリル系架橋重合体、スチレン系架橋重合体、シリコーン樹脂、フッ素樹脂、ベンゾグアナミン樹脂、フェノール樹脂、ナイロン樹脂などの有機粒子を挙げることができる。これらのうち、水不溶性の固体物質は、水分散液中で沈降するのを避けるため、比重が3を超えない粒子を選ぶことが好ましい。
粒子の平均粒子径は40〜120nmの範囲が好ましい。平均粒子径が120nmより大きいと粒子の落脱が発生しやすくなり、40nmよりも小さいと十分な滑性、耐傷性が得られない場合がある。
粒子の含有量は、塗布層の重量を基準として10重量%未満の範囲が好ましい。10重量%を超えると塗膜の凝集力が低くなり接着性が悪化することがある。また粒子の含有量の下限は、塗布層の重量を基準として0.1重量%であることが好ましい。
(脂肪族ワックス)
塗布層には、ブロッキングを防止する目的で脂肪族ワックスを添加してもよい。かかる目的で脂肪族ワックスを添加する場合、その含有量は塗布層の重量を基準として、好ましくは0.5〜30重量%、さらに好ましくは1重量%〜10重量%である。含有量が下限に満たない場合、フィルム表面の滑性が得られず、フィルム同士がブロッキングすることがある。一方、含有量が上限を超えるとポリエステルフィルム基材層および接着シートに対する接着性が不足する場合がある。
脂肪族ワックスの具体例としては、カルナバワックスなどの植物系ワックス、ミツロウ、ラノリンなどの動物系ワックス、モンタンワックス、オゾケライト、セレシンワックスなどの鉱物系ワックス、パラフィンワックスなどの石油系ワックス、ポリエチレンワックス、酸化ポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックス、酸化ポリプロピレンワックスなどの合成炭化水素系ワックスを挙げることができる。これらの中でも、接着シートとの接着性と滑り性が良好なことから、カルナバワックス、パラフィンワックス、ポリエチレンワックスが特に好ましい。これらは環境負荷の低減が可能であることおよび取扱のし易さから水分散体として用いることが好ましい。
(その他の成分)
塗布層を形成する成分として、上記成分以外に、塗布する場合の濡れ性を改良するために界面活性剤などの濡れ剤を用いてもよい。また、所望に応じてその他の成分を配合することができる。その他の配合剤としては、メラミン樹脂などの他の樹脂、帯電防止剤、着色剤、軟質重合体、フィラー、熱安定剤、耐候安定剤、老化防止剤、レベリング剤、スリップ剤、アンチブロッキング剤、防曇剤、天然油、合成油、乳剤、充填剤、硬化剤、難燃剤などが挙げられ、その配合割合は、あくまで本発明の目的を損なわない範囲で選択される。
(塗布層の形成方法)
塗布層の形成については、例えば延伸可能なポリエステルフィルムの少なくとも片面に塗膜を形成する成分を含む水溶液を塗布した後、乾燥、延伸し必要に応じて熱処理することにより積層することができる。塗布層の形成時期について、さらに具体的には、未延伸フィルム、縦方向または横方向の何れか一方に配向せしめた一軸配向フィルム、あるいは縦方向および横方向の二方向に低倍率延伸配向せしめたフィルム(最終的に縦方向また横方向に再延伸せしめて配向結晶化を完了せしめる前の二軸延伸フィルム)のいずれかの時期に塗布液を塗布することが好ましく、その後さらに縦延伸および/または横延伸させる方法が挙げられる。
塗布液の固形分濃度は塗布液の重量を基準として1〜20重量%であることが好ましい。かかる範囲にある場合、塗布斑の発生を抑制しやすい。
塗布方法としては、公知の任意の塗布方が適用できる。例えばロールコート法、グラビアコート法、ロールブラッシュ法、スプレーコート法、エアーナイフコート法、含浸法およびカーテンコート法などを単独または組み合わせて用いることができる。
<フィルム特性>
(熱収縮率)
本発明のフレキシブルプリント回路基板補強用フィルムは、230℃で10分間加熱処理したときの熱収縮率がフィルム長手方向および幅方向の両方向において−3%以上3%未満である。かかる熱収縮率の下限値は、好ましくは−2%、さらに好ましくは−1%、特に好ましくは0%である。また、かかる熱収縮率の上限値は、好ましくは2.5%、より好ましくは2%、さらに好ましくは1%、特に好ましくは0.5%である。
補強用フィルムの熱収縮率が下限値に満たない場合あるいは上限値を超える場合は、上述の塗布層を有していても、FPC基板との貼り合せに用いる市販の接着シートとの密着性が低下し、はんだリフロー後にその密着性を保つことができず、接着シートと補強板との接着界面に剥がれや膨れが生じる。かかる範囲内でも、補強用フィルムの熱収縮率が好ましい範囲になるほど、さらにFPC基板とのひずみが小さくなり、接着シートとの界面部分の剥がれ面積が小さくなることに加え、FPC積層体としての反りが低減される。
本発明のフレキシブルプリント回路基板補強用フィルムは、フィルム長手方向および幅方向の両方向においてかかる熱収縮率特性を有することを要する。一方でも熱収縮率がはずれる場合、はんだリフロー後にその密着性を保つことができず、接着シートと補強板との接着界面に剥がれや膨れ、およびピール強度の低下を引き起こす。
かかる熱収縮率は、ポリエステルの種類がポリエチレンナフタンジカルボキシレートであること、後述する延伸条件で二軸延伸を行った後に熱固定処理を施し、かかる熱固定処理温度が(Tm−100℃)以上の温度、好ましくは220℃〜250℃の温度条件で施すこと、その後150℃〜250℃の温度条件で1〜3%の熱弛緩処理を行い、さらにオフライン工程にて150〜250℃で5分以上熱処理(アニール処理)し、50〜80℃で除冷することによって達成される。また、かかる熱処理条件の範囲内で温度を高くするか、または処理時間を長くすることにより、熱収縮率を好ましい範囲にすることができる。
(熱伝導率)
本発明のフレキシブルプリント回路基板補強用フィルムは、熱伝導率が0.2W/m・K以上10W/m・K以下である。かかる熱伝導率は、好ましくは0.2W/m・K以上5W/m・K以下、さらに好ましくは0.2W/m・K以上2W/m・K以下、特に好ましくは0.2W/m・K以上0.5W/m・K以下である。
該補強用フィルムがかかる熱伝導率を有することにより、補強板としてフレキシブルプリント回路基板と貼り合せて使用した際、電子部品実装時および回路の使用時にフレキシブルプリント回路基板に発生する熱を放熱しやすくなる結果、フレキシブルプリント回路基板上の部品の発熱を拡散することができる。ここで、本発明における熱伝導率とは、レーザーフラッシュ法により求めた熱拡散率α、JIS K7123に準じて測定した比熱容量Cp、および密度ρより、下記式から熱伝導度λ(W/cmK)を求め、単位換算を実施した値で表わされる。
熱伝導度λ=α・Cp・ρ
かかる熱伝導率特性は、基材層中に一定量の無機粒子を含有し、かつ無機粒子とポリエステル相との界面のボイド面積を調整することにより達成されるが、無機粒子含有量が多い範囲では無機粒子による効果の方が大きく、ボイド面積の影響は小さくなる。
(ボイド面積)
本発明の補強用フィルムは、基材層における無機粒子とポリエステル相との界面のボイド面積が、フィルム断面において粒子面積の5%以下であることが好ましい。ここでフィルム断面とは、フィルム連続製膜方向に沿った断面、フィルム幅方向に沿った断面のいずれでもよい。かかるボイド面積は、フィルム断面について走査型電子顕微鏡(日立製作所製S−4700)を用い、10000倍の倍率で粒子50点について測定した値の平均値で求めることができる。ボイド面積は3%以下であることがより好ましく、2%以下であることがさらに好ましく、1%以下であることが特に好ましい。このような無機粒子を多量に含む延伸フィルムの場合、延伸工程により界面にボイドが生じやすく、その断熱効果によって無機粒子による放熱作用が十分に発現しないことがある。本発明においては、基材層中に一定量の無機粒子を含有し、かつボイド面積がかかる範囲内であることにより放熱機能が発現し、フレキシブルプリント回路基板の補強板としてフレキシブルプリント回路基板と貼り合せて使用することにより、電子部品実装時および回路の使用時にフレキシブルプリント回路基板に発生する熱を放熱しやすくなる。
ボイド面積をかかる範囲にするための手段として、延伸条件をフィルム長手方向、幅方向ともに3.5倍以下、より好ましくはフィルム長手方向、幅方向ともに3.3倍以下、さらに好ましくはフィルム長手方向、幅方向ともに3.2倍以下、特に好ましくはフィルム長手方向、幅方向ともに3.1倍以下とする方法が挙げられる。また表面処理された酸化チタンを用いることにより、さらにその効果が高まる。
<フィルム厚み>
本発明のフレキシブルプリント回路基板補強用フィルムのフィルム厚みは50μm以上250μm以下であることが好ましい。
<製膜>
本発明のフィルムを得る方法を以下に具体的に述べるが、以下の例に特に限定されるものではない。
ポリエステルは所望に応じて乾燥後、押出機に供給してTダイよりシート状に成形される。
Tダイより押し出されたシート状成形物を表面温度10〜60℃の冷却ドラムで冷却固化し、この未延伸フィルムを例えばロール加熱または赤外線加熱によって加熱した後、縦方向に延伸して縦延伸フィルムを得る。かかる縦延伸は2個以上のロールの周速差を利用して行うのが好ましい。縦延伸温度はポリエステルのガラス転移点(Tg)より高い温度、更にはTgより20〜40℃高い温度とするのが好ましい。縦延伸倍率は2.85倍以上3.50倍以下の範囲で行うことが好ましく、さらに好ましくは3.00倍以上3.30倍以下の範囲、特に好ましくは3.00倍以上3.20倍以下の範囲である。縦延伸倍率が下限に満たない場合、補強板としての強度が十分でないことがある他、フィルムの厚み斑が悪くなり良好なフィルムが得られないことがある。また縦延伸倍率が上限を超える場合、本発明の熱収縮率特性が得られず、また無機粒子とポリエステル相の界面のボイドが大きくなり、無機粒子添加による放熱性効果が低減する。
得られた縦延伸フィルムは、続いて横延伸(連続製膜方向に垂直な方向への延伸)を行い、その後熱固定、熱弛緩の処理を順次施して二軸配向フィルムとするが、かかる処理はフィルムを走行させながら行う。
横延伸処理はポリエステルのガラス転移点(Tg)より20℃高い温度から始める。そしてポリエステルの融点(Tm)より(120〜30)℃低い温度まで昇温しながら行う。この横延伸開始温度は、(Tg+40)℃以下であることが好ましい。また横延伸最高温度は、Tmより(100〜40)℃低い温度であることが好ましい。
横延伸過程の昇温は連続的でも段階的(逐次的)でもよいが、通常は段階的に昇温する。例えば、ステンターの横延伸ゾーンをフィルム走行方向に沿って複数に分け、各ゾーンごとに所定温度の加熱媒体を流すことで昇温する。
横延伸倍率は2.85倍以上3.50倍以下の範囲で行うことが好ましく、さらに好ましくは3.00倍以上3.30倍以下の範囲、特に好ましくは3.00倍以上3.20倍以下の範囲である。横延伸倍率が下限値に満たない場合、補強板としての強度が十分でないことがある他、フィルムの厚み斑が悪くなり良好なフィルムが得られないことがある。また横延伸倍率が上限値を超える場合、本発明の熱収縮率特性が得られず、また無機粒子とポリエステル相の界面のボイドが大きくなり、無機粒子添加による放熱性効果が低減する。
二軸延伸されたフィルムは、その後熱固定処理が施される。熱固定処理温度は(Tm−100℃)以上、さらに好ましくは(Tm−70)℃〜(Tm−40)℃の範囲で行うことができ、特に220℃〜250℃の範囲で行うことが好ましい。熱固定処理後、150℃〜250℃の温度条件で1〜3%の熱弛緩処理を行い、さらにオフライン工程にて150〜250℃で30秒以上熱処理(アニール処理)し、50〜80℃で除冷する。これらの工程を経ることにより、本発明の熱収縮率特性を有するフィルムを得ることができる。また、オフライン工程で行うアニール処理は、かかる熱処理条件の範囲内で温度を高くするか、または処理時間を長くすることにより、熱収縮率を好ましい範囲にすることができる。アニール処理時間の上限は特に制限されないが、長時間すぎるとフィルム物性が低下する可能性があるため、高々1時間であることが好ましい。
<接着シート>
本発明のフレキシブルプリント回路基板補強用フィルムとフレキシブルプリント回路基板とを貼りあわせるに際し、接着シートを介して貼りあわせることが好ましい。かかる接着シートとして市販の接着シートを用いることができ、例えばエポキシ系接着シートまたはアクリル系接着シートを用いることができる。これら市販の接着シートの具体例として、TFA−880CC35(京セラケミカル株式会社製)、SAFV(ニッカン工業株式会社製)、D3410(ソニーケミカル&インフォメーションデバイス株式会社製)が挙げられる。
<フレキシブルプリント回路基板積層体>
本発明のフレキシブルプリント回路基板補強用フィルムを用いてフレキシブルプリント回路基板補強板に加工し、得られた補強板をフレキシブルプリント回路基板の補強が必要な部位に貼り合せて用いることができる。
本発明のフレキシブルプリント回路基板補強用フィルムと貼りあわせて用いられるフレキシブルプリント回路基板のベースフィルムとして、ポリイミドまたはポリエステルが例示される。ポリエステルとしてポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートなどが挙げられる。フレキシブルプリント回路基板の厚みは、通常7.5〜250μm程度である。
また、本発明のフレキシブルプリント回路基板積層体は、フレキシブルプリント回路基板に接着シートを介して本発明のフレキシブルプリント回路基板補強板を貼り合せた構成を有する。フレキシブルプリント回路基板積層体は、はんだリフロー工程後に接着シートを介した接着界面における剥がれや膨れの発生がなく、ピール強度が高く、補強効果が高いことから、部品搭載部など回路基板だけでは撓みが生じやすい部位や、コネクター接続部などコネクターに取り付ける際に折れ曲がったりしやすい部位といった、より補強性が必要とされる部位に好適に用いることができる。さらに、本発明のフレキシブルプリント回路基板補強用フィルムは熱伝導率が高いため、フレキシブルプリント回路基板の補強板としてフレキシブルプリント回路基板と貼り合せて使用することにより、電子部品実装時および回路の使用時にフレキシブルプリント回路基板に発生する熱の放熱性に優れる。
なお、本発明のフレキシブルプリント回路のベースフィルム又は基板に形成される回路パターンについては特に制限はなく、従来から用いられている一般的なものが使用される。本発明のフレキシブルプリント回路基板積層体は、補強板の接着性及び接着部の耐熱性に優れ、かつフレキシブルプリント回路基板に発生する熱の放熱性にも優れることから、車載用の電子機器などの高温環境下で使用される電子機器の電気回路に有用である。
以下、実施例および比較例をあげて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
1.熱収縮率
フィルムサンプルに10cm間隔で標点をつけ、荷重をかけずに230℃のオーブンで10分間熱処理を実施し、熱処理後の標点間隔を測定して、フィルム連続製膜方向(MD方向)と、製膜方向に垂直な方向(TD方向)において、下記式にて熱収縮率を算出した。
熱収縮率(%)
={(熱処理前標点間距離−熱処理後標点間距離)/熱処理前標点間距離}×100
2.熱伝導率
レーザーフラッシュ法により熱拡散率α(cm/sec)を測定し、別に測定した比熱容量Cp(J/gK)と密度ρ(g/cc)から、熱伝導度λ(W/cmK)をλ=α・Cp・ρで求め、単位換算を実施した値を用いて評価を行った。
なお、熱拡散率αの測定方法であるレーザーフラッシュ法とは、試料の両面にAu蒸着し、両面を黒化処理して25℃でルビーレーザーパルス光を均一に照射する方法である。
また、密度ρは、硝酸カルシウム水溶液を用いて密度勾配管法にて測定して得ることができる。
また、比熱容量Cpは、JIS K7123に準じて測定された値である。
3.ボイド面積
フィルム長手方向に沿った断面について、走査型電子顕微鏡(日立製作所製S-4700)を用い、10000倍の倍率で粒子50点について測定し、それぞれの粒子面積に対するボイド面積の割合を求め、それらの平均値より算出した。
4.はんだリフローテスト
はんだリフローは、ピーク温度260℃で10秒間のリフロー処理を行い、処理後の外観評価を行った。なお評価にあたり、以下の方法で作成された二軸配向ポリエステルフィルム/市販の補強用フィルム接着用接着シート/ポリイミドフィルムを基材とした片面銅張積層板からなるフレキシブルプリント回路基板積層体を用いた。
<フレキシブルプリント回路基板積層体の作成方法>
作成した二軸配向ポリエステルフィルムの上に、市販の補強用フィルム接着用接着シート(SAFV(商品名):ニッカン工業株式会社製)、さらに接着シートの上にポリイミドフィルムを基材とした片面銅張積層板(F―30VC1(商品名):ニッカン工業株式会社製)をポリイミドフィルム側を接着シートに面するようにしてのせた。この積層体に温度100℃、圧力3MPaで5分間プレスした後、さらに温度を上げ160℃、圧力3MPaで5分間プレスし、そのまま60分間の熱処理を施した。その後室温まで冷却し取り出した。
[外観評価]
(気泡、膨れ)
リフロー処理後のフレキシブルプリント回路基板積層体について、接着シートと補強板との界面に気泡や膨れの発生があるか補強板側から観察し、測定範囲5cm×5cm四方における気泡、膨れの発生面積を求めて下記の基準で評価した。
A: 気泡、膨れの発生した面積が10%未満
B: 気泡、膨れの発生した面積が10%以上15%未満
C: 気泡、膨れの発生した面積が15%以上30%未満
D: 気泡、膨れの発生した面積が30%以上
(基材の反り)
試料寸法を25cm×25cmとし、リフロー処理後のフレキシブルプリント回路基板積層体サンプルを相対湿度55%、23℃の雰囲気下で24時間定盤上に置いた状態で4隅のカール状態を観測し、4隅の反り量(mm)の平均を測定した。
<塗布層中の樹脂組成と各成分の配合比>
実施例と比較例で用いた塗布層の組成と配合は、表1の通りである。ここで塗布層を構成する各成分は以下のものを用いた。
(アクリル): メチルメタクリレート30モル%/2−イソプロペニル−2−オキサゾリン30モル%/ポリエチレンオキシド(n=10)メタクリレート10モル%/アクリルアミド30モル%で構成されているアクリル樹脂(Tg=50℃)を用いた。なお、アクリル樹脂は次の方法で製造されたものであり、特開昭63−37167号公報の製造例1〜3に記載の方法に準じている。すなわち、四つ口フラスコに、イオン交換水302部を仕込んで窒素気流中で60℃まで昇温させ、次いで重合開始剤として過硫酸アンモニウム0.5部、亜硝酸水素ナトリウム0.2部を添加し、更にモノマー類である、メタクリル酸メチル23.3部、2−イソプロペニル−2−オキサゾリン22.6部、ポリエチレンオキシド(n=10)メタクリル酸40.7部、アクリルアミド13.3部の混合物を3時間にわたり、液温が60〜70℃になるよう調整しながら滴下した。滴下終了後も同温度範囲に2時間保持しつつ、撹拌下に反応を継続させ、次いで冷却して固形分が25%のアクリルの水分散体を得た。
(ポリエステル): 酸成分が2,6−ナフタレンジカルボン酸63モル%/イソフタル酸32モル%/5−ナトリウムスルホイソフタル酸5モル% 、グリコール成分がエチレングリコール90モル%/ジエチレングリコール10モル%で構成されているポリエステル(Tg=76℃、平均分子量12000)を用いた。なお、ポリエステルは次の方法で製造したものであり、特開平06−116487 号公報の実施例1に記載の方法に準じている。すなわち、2,6−ナフタレンジカルボン酸ジメチル42部、イソフタル酸ジメチル17部、5−ナトリウムスルホイソフタル酸ジメチル4部、エチレングリコール33部、ジエチレングリコール2部を反応器に仕込み、これにテトラブトキシチタン0.05部を添加して窒素雰囲気下で温度を230℃ にコントロールして加熱し、生成するメタノールを留去させてエステル交換反応を行った。次いで反応系の温度を徐々に255℃まで上昇させ系内を1mmHgの減圧にして重縮合反応を行い、ポリエステルを得た。
(粒子): シリカの無機粒子(平均粒径:100nm)を用いた。
(濡れ剤): ポリオキシエチレン(n=7)ラウリルエーテル(三洋化成株式会社製、商品名「ナロアクティーN−70」)を用いた。
(添加剤): カルナバワックス(中京油脂株式会社製、商品名「セロゾール524」)を用いた。
Figure 0005519260
<実施例1>
平均粒径1.5μmの酸化チタンを基材層の重量を基準として30重量%含有するポリエチレンナフタレンジカルボキシレート樹脂(固有粘度0.6dl/g(o−クロロフェノール中、35℃))を290℃に加熱された押出機に供給し、290℃のダイスよりシート状に成形した。さらにこのシートを表面温度60℃の冷却ドラムで冷却固化した未延伸フィルムを140℃に加熱したロール群に導き、長手方向(縦方向)に3.0倍で延伸し、60℃のロール群で冷却した後、その片面に表1に記載の塗布層用組成物からなる固形分濃度3%の水性塗液をロールコーターで均一に塗布した。続いて、縦延伸したフィルムの両端をクリップで保持しながらテンターに導き150℃に加熱された雰囲気中で長手に垂直な方向(横方向)に3.0倍で延伸した。その後テンタ−内で250℃の熱固定を行い、240℃で2%の弛緩後、均一に除冷して、室温まで冷やして175μm厚みの二軸延伸フィルムを得た。さらにそのロールをIRヒーターを用いて220度で1分間熱アニール処理を行った後、50度の温度雰囲気下で除冷した。得られたフィルムの特性を表2に示す。
得られたフィルムを用いて評価方法に準じてフレキシブルプリント回路基板積層体を作成し、はんだリフローテストを行ったところ、補強板と接着シートとの界面に発生した気泡または膨れの面積は10%未満であり、密着性良好であった。また補強板の熱伝導率が高く、フレキシブルプリント回路基板に発生した熱の放熱効果が高かった。
<実施例2>
平均粒径が1.5μmである酸化チタン粒子を25重量%としたこと以外は実施例1と同様の方法によって二軸配向ポリエステルフィルムを得た。
<実施例3>
平均粒径が1.5μmである酸化チタン粒子を15重量%としたこと以外は実施例1と同様の方法によって二軸配向ポリエステルフィルムを得た。
<実施例4〜6>
塗布層用組成物の種類を変更した以外は実施例1と同様の方法によって二軸配向ポリエステルフィルムを得た。
<実施例7>
長手方向(縦方向)に3.0倍で延伸し、長手に垂直な方向(横方向)に3.2倍で延伸したこと以外は実施例1と同様の方法によって二軸配向ポリエステルフィルムを得た。
<実施例8>
長手方向(縦方向)に3.1倍で延伸し、長手に垂直な方向(横方向)に3.2倍で延伸したこと以外は実施例1と同様の方法によって二軸配向ポリエステルフィルムを得た。
<比較例1>
平均粒径が1.5μmである酸化チタン粒子を0重量%としたこと以外は実施例1と同様の方法によって二軸配向ポリエステルフィルムを得た。
<比較例2>
平均粒径が1.5μmである酸化チタン粒子を5重量%としたこと以外は実施例1と同様の方法によって二軸配向ポリエステルフィルムを得た。
<比較例3>
長手方向(縦方向)に3.2倍で延伸し、長手に垂直な方向(横方向)に3.25倍で延伸したこと以外は実施例1と同様の方法によって二軸配向ポリエステルフィルムを得た。
<比較例4>
平均粒径1.5μmの酸化チタンを15重量%含有するポリエチレンテレフタレート樹脂を280℃に加熱された押出機に供給し、280℃のダイスよりシート状に成形した。さらにこのシートを表面温度20℃の冷却ドラムで冷却固化した未延伸フィルムを80℃に加熱したロール群に導き、長手方向(縦方向)に3.0倍で延伸し、20℃のロール群で冷却した。続いて、縦延伸したフィルムの両端をクリップで保持しながらテンターに導き120℃に加熱された雰囲気中で長手に垂直な方向(横方向)に3.1倍で延伸した。その後テンタ−内で220℃の熱固定を行い、200℃で2%の弛緩後、均一に除冷して、室温まで冷やして180μm二軸延伸フィルムを得た。
<比較例5>
縦方向への延伸後に塗布層を設けなかった以外は実施例1と同様の方法にて作成した。
<比較例6>
塗液の種類を変更した以外は実施例1と同様の方法にて作成した。
Figure 0005519260
本発明のフレキシブルプリント回路基板補強用フィルムは、はんだリフロー後のフレキシブルプリント回路基板との密着性が良好で、部分的な剥がれや膨れがなく生産性に優れており、かつフレキシブルプリント回路基板の補強板としてフレキシブルプリント回路基板と貼り合せて使用することにより、電子部品実装時および回路の使用時にフレキシブルプリント回路基板に発生する熱の放熱性に優れることから、その工業的価値は極めて高い。

Claims (10)

  1. 二軸配向ポリエステルフィルム基材層を有するフレキシブルプリント回路基板補強用フィルムであって、基材層を構成するポリエステルがポリエチレンナフタレンジカルボキシレートであり、該基材層の少なくとも片面にオキサゾリン基を有するアクリル樹脂を含む高分子バインダーを含む塗布層を有しており、かつ230℃で10分間加熱処理したときの該補強用フィルムの熱収縮率がフィルム長手方向および幅方向の両方向において−3%以上3%未満であって、熱伝導率が0.2W/m・K以上10W/m・K以下であることを特徴とするフレキシブルプリント回路基板補強用フィルム。
  2. 二軸配向ポリエステルフィルム基材層に該層の重量を基準として10重量%以上50重量%以下の範囲で無機粒子を含有してなる請求項1に記載のフレキシブルプリント回路基板補強用フィルム。
  3. 無機粒子が酸化チタン、硫酸バリウム、炭酸カルシウム、酸化アルミニウム、窒化ホウ素および二酸化ケイ素からなる群から選ばれる少なくとも1種である請求項2に記載のフレキシブルプリント回路基板補強用フィルム。
  4. 無機粒子とポリエステル相との界面におけるボイド面積が、フィルム断面において粒子面積の5%以下である請求項2または3に記載のフレキシブルプリント回路基板補強用フィルム。
  5. 塗布層における高分子バインダーの含有量が塗布層の重量を基準として10重量%以上80重量%以下である請求項1〜4のいずれかに記載のフレキシブルプリント回路基板補強用フィルム。
  6. オキサゾリン基を有するアクリル樹脂の含有量が高分子バインダー重量を基準として3重量%以上90重量%以下である請求項1〜5のいずれかに記載のフレキシブルプリント回路基板補強用フィルム。
  7. 請求項1〜6のいずれかに記載のフレキシブルプリント回路基板補強用フィルムを用いたフレキシブルプリント回路補強板。
  8. フレキシブルプリント回路基板に接着シートを介して請求項7に記載のフレキシブルプリント回路補強板が貼りあわされたフレキシブルプリント回路基板積層体。
  9. 接着シートがエポキシ系接着シートまたはアクリル系接着シートである請求項8に記載のフレキシブルプリント回路基板積層体。
  10. フレキシブルプリント回路基板のベースフィルムがポリイミドまたはポリエステルである請求項8または9に記載のフレキシブルプリント回路基板積層体。
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