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JP5574676B2 - 表示素子用基板および表示素子用基板を用いた表示素子 - Google Patents

表示素子用基板および表示素子用基板を用いた表示素子 Download PDF

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JP5574676B2 JP2009259703A JP2009259703A JP5574676B2 JP 5574676 B2 JP5574676 B2 JP 5574676B2 JP 2009259703 A JP2009259703 A JP 2009259703A JP 2009259703 A JP2009259703 A JP 2009259703A JP 5574676 B2 JP5574676 B2 JP 5574676B2
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Description

本発明は、表示素子用基板および、該表示素子用基板を用いた表示素子に関する。より詳細には、本発明は、位相差(特に、厚み方向の位相差)を制御することができ、屈曲性に優れ、かつ、無機ガラスのクラックの進展を著しく防止し、液晶表示装置の薄型化を可能とする表示素子用基板に関する。
液晶表示素子において、液晶セルへの光の透過により発生する偏光状態の変化による視認性を改善するために、屈折率楕円体がnx=ny>nzの関係を有する複屈折層を液晶セルの少なくとも片側に配置することが開示されている(例えば、特許文献1)。
また、液晶表示素子、有機EL表示素子などのフラットパネルディスプレイの軽量化・薄型化が進んでいる。従来、表示素子の基板には、多くの場合ガラス基板が用いられている。ガラス基板は、透明性や耐溶剤性、ガスバリア性、耐熱性に優れる。しかし、ガラス基板を構成するガラス材の薄型化を図ると、軽量化されると同時に可撓性に優れるものの、耐衝撃性が不十分となり、ハンドリングが困難となる問題が生じる。そのため、薄型ガラス基板のハンドリング性を向上させるために、ガラス表面に樹脂層が形成された可撓性基板が開示されている(例えば、特許文献2および3)。
通常、液晶セル上に偏光板や位相差板などを積層する場合は、それぞれが接着剤層または粘着剤層を介して積層されることが多い。したがって、液晶セル上に複数の層を積層する際には、接着剤層または粘着剤層も複数層形成されることになり、視認性に悪影響を及ぼす場合がある。さらに、厚みも増すため、液晶表示装置の薄型化が困難である。
特開2008−003559号公報 特開平11−329715号公報 特開2008−107510号公報
本発明は、上記従来の課題を解決するためになされたものであり、その目的とするところは、位相差(特に、厚み方向の位相差)を制御することができ、屈曲性に優れ、かつ、無機ガラスのクラックの進展を著しく防止し、液晶表示装置の薄型化を可能とする表示素子用基板、およびその簡便な製造方法を提供することである。
本発明の表示素子用基板は、無機ガラスと、該無機ガラスの片側に形成された屈折率楕円体がnz>nx=nyの関係を有する第1の熱可塑性樹脂層と、該無機ガラスの他方の側に形成された屈折率楕円体がnx=ny>nzの関係を有する第2の熱可塑性樹脂層とを有する。
好ましい実施形態においては、上記無機ガラスと上記第1の熱可塑性樹脂層および/または第2の熱可塑性樹脂層との間にカップリング剤層および/または接着剤層をさらに備える。
好ましい実施形態においては、上記表示素子用基板の総厚は150μm以下である。
好ましい実施形態においては、上記無機ガラスの厚みは1μm〜100μmである。
好ましい実施形態においては、上記第1の熱可塑性樹脂層はフマル酸エステル系樹脂を主成分とする。
好ましい実施形態においては、上記表示素子用基板にクラックを入れ屈曲させた際の破断直径は50mm以下である。
好ましい実施形態においては、上記第1の熱可塑性樹脂層および第2の熱可塑性樹脂層の25℃における破壊靱性値は1MPa・m1/2〜10MPa・m1/2である。
好ましい実施形態においては、上記第1の熱可塑性樹脂層および第2の熱可塑性樹脂層の25℃における弾性率は1GPa以上である。
本発明の別の局面によれば、表示素子が提供される。この表示素子は、上記の表示素子用基板を用いる。
本発明の表示素子用基板は、無機ガラスの片側に第1の熱可塑性樹脂層、他方の側に第2の熱可塑性樹脂層を有する。これにより、ハンドリング性および屈曲性にも優れた表示素子用基板が得られる。しかも、第1の熱可塑性樹脂層および第2の熱可塑性樹脂層は、屈折率楕円体が特定の関係を有するので、表示素子全体の厚み方向の位相差を制御することができる。その結果、表示素子用基板を液晶表示装置に用いた場合、積層する位相差板の数を低減することができるため、液晶表示装置の薄型化が可能となる。
(a)は、本発明の好ましい実施形態における表示素子用基板の概略断面図であり、(b)は、本発明の別の好ましい実施形態における表示素子用基板の概略断面図である。
(用語および記号の定義)
本明細書における用語および記号の定義は下記の通りである。
(1)屈折率(nx、ny、nz)
「nx」は面内の屈折率が最大になる方向(すなわち、遅相軸方向)の屈折率であり、「ny」は面内で遅相軸と直交する方向の屈折率であり、「nz」は厚み方向の屈折率である。
(2)面内位相差(Re)
面内位相差(Re)は、23℃、特に明記しなければ波長590nmにおける層(フィルム)の面内位相差値をいう。Reは、層(フィルム)の厚みをd(nm)としたとき、Re=(nx−ny)×dによって求められる。
(3)厚み方向の位相差(Rth)
厚み方向の位相差(Rth)は、23℃、特に明記しなければ波長590nmにおける層(フィルム)の厚み方向の位相差値をいう。Rthは、層(フィルム)の厚みをd(nm)としたとき、Rth=(nx−nz)×dによって求められる。
<A.表示素子用基板の概要>
図1(a)は、本発明の好ましい実施形態による表示素子用基板の概略断面図である。この表示素子用基板100は、無機ガラス10と無機ガラス10の片側に形成された第1の熱可塑性樹脂層20と、無機ガラス10の他方の側に形成された第2の熱可塑性樹脂層30とを有する。第1の熱可塑性樹脂層20は、屈折率楕円体がnz>nx=nyの関係を有する。第2の熱可塑性樹脂層30は、屈折率楕円体がnx=ny>nzの関係を有する。上記のような構成にすることにより、表示素子全体の厚み方向の位相差を制御することが可能となり、例えば、液晶表示装置に用いる場合には、液晶セル中の液晶分子の種類や液晶セルの駆動モードに合わせて、所望の厚み方向の位相差の調整が可能となる。さらに、十分な機械的強度を有し、かつ、非常に薄い基板が得られるので、表示素子の薄型化に大きく貢献し得る表示素子用基板を得ることができる。
図1(b)は、本発明の別の好ましい実施形態による表示素子用基板の概略断面図である。この表示素子用基板100’は、無機ガラス10と第1の熱可塑性樹脂層20および第2の熱可塑性樹脂層30との間に、それぞれカップリング剤層および/または接着剤層40,40’を有する。図示例では、カップリング剤層および/または接着剤層40,40’は単一の層で構成されているが、カップリング剤層と接着剤層の両方で構成されていてもよい。第1の熱可塑性樹脂層20および第2の熱可塑性樹脂層30は、カップリング剤層および/または接着剤層40,40’に直接(すなわち、他の層が介在することなく)積層されている。図示例では、無機ガラスの両側にカップリング剤層および/または接着剤層が形成されているが、片側のみにカップリング剤層および/または接着剤層が形成されていてもよい。カップリング剤層および/または接着剤層が、カップリング剤および接着剤層の積層体である場合、カップリング剤層が第1の熱可塑性樹脂層および第2の熱可塑性樹脂層と接するように配置することが好ましい。
カップリング剤層および/または接着剤層40,40’は、好ましくはカップリング剤層である。上記カップリング剤層中のカップリング剤が、無機ガラスと化学結合(代表的には、共有結合)するため、接着剤または粘着剤を介して無機ガラスに積層されるよりも、より強固に無機ガラスと第1の熱可塑性樹脂層および/または第2の熱可塑性樹脂層とが密着し得るので、切断時にクラックが進展し難い表示素子用基板を得ることができる。さらに、カップリング剤層は、接着剤層に比べて格段に薄いので、視認性に対する影響が少ない。
上記表示素子用基板の総厚は、その構成に応じて任意の適切な値に設定され得る。好ましくは150μm以下であり、より好ましくは30〜140μm、さらに好ましくは50〜135μmである。本発明によれば、上記のように第1の熱可塑性樹脂層および第2の熱可塑性樹脂層を形成することにより、無機ガラスの厚みを、従来のガラス基板よりも格段に薄くすることができる。すなわち、第1の熱可塑性樹脂層および第2の熱可塑性樹脂層は、薄くても無機ガラスの補強に寄与し得るので、軽量・薄型で、かつ、優れたハンドリング性および屈曲性を有する表示素子用基板が得られる。さらに、該表示素子用基板を用いた、表示素子の薄型化にも大きく貢献し得る。無機ガラス、第1の熱可塑性樹脂層、および第2の熱可塑性樹脂層それぞれの厚みは後述する。
上記表示素子用基板にクラックを入れ屈曲させた際の破断直径は、好ましくは50mm以下であり、より好ましくは45mm以下である。破断直径が上記の範囲内であれば、表示素子用基板の耐久性として実用上問題なく用いることができる。
表示素子用基板の厚み方向の位相差(Rth)は、目的に応じて適切に設定することができる。表示素子用基板のRthは、第1の熱可塑性樹脂層および/または第2の熱可塑性樹脂層の厚みを調整することにより、制御することができる。表示素子用基板のRthは、好ましくは−100nm〜300nmであり、より好ましくは−90nm〜290nmであり、さらに好ましくは−80nm〜280nmである。このような範囲にすることにより、本発明の表示素子用基板を用いた表示素子を、例えば、液晶表示装置に用いた場合に、積層する位相差板の枚数を少なくすることが可能となる。
上記表示素子用基板の波長550nmにおける透過率は、好ましくは80%以上であり、より好ましくは85%以上である。上記表示素子用基板は、好ましくは、180℃で2時間の加熱処理を施した後の光透過率の減少率が5%以内である。このような減少率であれば、表示素子用基板を表示素子に用いる場合に、製造プロセスにおいて必要な加熱処理を施しても、実用上許容可能な光透過率を確保できるからである。
上記表示素子用基板の表面粗度Ra(実質的には、第1の熱可塑性樹脂層または第2の熱可塑性樹脂層の表面粗度Ra)は、好ましくは50nm以下であり、より好ましくは30nm以下、さらに好ましくは10nm以下である。上記表示素子用基板のうねりは、好ましくは0.5μm以下であり、より好ましくは0.1μm以下である。このような特性の表示素子用基板であれば、品質に優れる。なお、このような特性は、例えば、後述する製法により実現され得る。
上記表示素子用基板は、寸法安定性を有することが好ましい。例えば、表示素子用基板は、170℃における平均線膨張係数が、好ましくは20ppm℃−1以下であり、さらに好ましくは10ppm℃−1以下である。上記の範囲であれば、例えば、複数の熱処理工程に供されても、画素のずれや配線の破断・亀裂が生じにくい。
<B.無機ガラス>
本発明の表示素子用基板に用いられる無機ガラス10は、板状のものであれば、任意の適切なものが採用され得る。上記無機ガラスは、組成による分類によれば、例えば、ソーダ石灰ガラス、ホウ酸ガラス、アルミノ珪酸ガラス、石英ガラス等が挙げられる。また、アルカリ成分による分類によれば、無アルカリガラス、低アルカリガラスが挙げられる。上記無機ガラスのアルカリ金属成分(例えば、NaO、KO、LiO)の含有量は、好ましくは15重量%以下であり、さらに好ましくは10重量%以下である。
上記無機ガラスの厚みは、好ましくは1〜100μmであり、より好ましくは1〜80μmであり、さらに好ましくは20〜80μmであり、特に好ましくは30〜70μmである。本発明においては、無機ガラスの両側に第1の熱可塑性樹脂層および第2の熱可塑性樹脂層を形成することによって、無機ガラスの厚みを薄くすることができる。
上記無機ガラスの波長550nmにおける透過率は、好ましくは85%以上である。上記無機ガラスの波長550nmにおける屈折率nは、好ましくは1.4〜1.65である。
上記無機ガラスの密度は、好ましくは2.3g/cm〜3.0g/cmであり、さらに好ましくは2.3g/cm〜2.7g/cmである。上記範囲の無機ガラスであれば、軽量の表示素子用基板が得られる。
上記無機ガラスの成形方法は、任意の適切な方法が採用され得る。代表的には、上記無機ガラスは、シリカやアルミナ等の主原料と、芒硝や酸化アンチモン等の消泡剤と、カーボン等の還元剤とを含む混合物を、1400℃〜1600℃の温度で溶融し、薄板状に成形した後、冷却して作製される。上記無機ガラスの薄板成形方法としては、例えば、スロットダウンドロー法、フュージョン法、フロート法等が挙げられる。これらの方法によって板状に成形された無機ガラスは、薄板化したり、平滑性を高めたりするために、必要に応じて、フッ酸等の溶剤により化学研磨されてもよい。
上記無機ガラスは、市販のものをそのまま用いてもよく、あるいは、市販の無機ガラスを所望の厚みになるように研磨して用いてもよい。市販の無機ガラスとしては、例えば、コーニング社製「7059」、「1737」または「EAGLE2000」、旭硝子社製「AN100」、NHテクノグラス社製「NA−35」、日本電気硝子社製「OA−10」、ショット社製「D263」または「AF45」等が挙げられる。
<C.第1の熱可塑性樹脂層>
第1の熱可塑性樹脂層20は、無機ガラス10の片側に形成される。好ましくは、図1(b)に示すように、第1の熱可塑性樹脂層20は、カップリング剤層および/または接着剤層40(特に好ましくは、カップリング剤層)を介して無機ガラス10に積層されている。第1の熱可塑性樹脂層の屈折率楕円体は、nz>nx=nyの関係を有する。ここで、「nx=ny」は、nxとnyが厳密に等しい場合のみならず、nxとnyが実質的に等しい場合も包含する。
第1の熱可塑性樹脂層としては、屈折率楕円体がnz>nx=nyの関係を有するものであれば、任意の適切なものを用いることができる。具体的には、屈折率楕円体がnz>nx=nyの熱可塑性樹脂を含む溶液を塗工して形成された層または当該樹脂から形成されたフィルム、あるいは屈折率楕円体がnx=nz>nyの関係を有する熱可塑性樹脂フィルムを縦方向または横方向に延伸することにより得られた層などが挙げられる。
屈折率楕円体がnz>nx=nyの関係を有する層を形成する熱可塑性樹脂としては、例えば、フマル酸エステル系樹脂などのフマル酸系樹脂や、炭酸ストロンチウム、炭酸カルシウムおよび炭酸マグネシウムなどの無機粒子を分散させた任意の熱可塑性樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリメタクリレートなどのポリ(メタ)アクリル酸エステル系樹脂、ポリビニルカルバゾール系樹脂などが挙げられる。好ましくは、第1の熱可塑性樹脂層は、フマル酸エステル系樹脂を主成分とする。本発明の第1の熱可塑性樹脂層として好適に用いることができるフマル酸エステル系樹脂としては、例えば、特開平2-269130号公報に開示されたものが挙げられる。
第1の熱可塑性樹脂層が、フマル酸エステル系樹脂を主成分とする場合、任意の適切な他の樹脂を併用することができる。他の樹脂を併用することにより、第1の熱可塑性樹脂層の面内位相差および/または厚み方向の位相差を調整することができる。他の樹脂としては、フマル酸エステル系樹脂と相溶性を有する樹脂であればよく、特に限定はない。フマル酸エステル系樹脂と他の樹脂とを併用する場合、フマル酸エステル系樹脂の含有率は、好ましくは50〜100重量%であり、さらに好ましくは75〜100重量%である。特に好ましくは、第1の熱可塑性樹脂層のフマル酸エステル系樹脂の含有率は100重量%(フマル酸エステル系樹脂のみ)である。
屈折率楕円体がnx=nz>nyの関係を有する熱可塑性樹脂フィルムを形成する熱可塑性樹脂としては、任意の適切なものを用いることができ、例えば、芳香環やカルボニル基などの分極異方性の大きい化学結合および/または置換基がポリマーの側鎖に導入されているものが挙げられる。上記ポリマーとしては、任意の適切なものを用いることができ、好ましくはメタクリレート系ポリマー、スチレン系ポリマー、マレイミド系ポリマーなどが挙げられる。これらのポリマーは単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
上記ポリマーは、脆性や成型加工性を向上させるために、他のモノマーが共重合されているものでもよい。他のモノマーとしては、向上させようとする特性に合わせて、任意の適切なものを用いることができ、例えば、エチレン、プロピレン、1−ブテン、イソブテン、1,3−ブタジエン、2−メチル−1−ブテン、2−メチル−1−ペンテン、1−ヘキセン、アクリロニトリル、アクリル酸メチル、メタクリル酸メチル、無水マレイン酸、酢酸ビニルなどが挙げられる。
上記ポリマーが、スチレン系モノマーと他のモノマーとの共重合体である場合、スチレン系モノマーの含有率は、好ましくは50モル%〜80モル%である。上記ポリマーが、マレイミド系モノマーと他のモノマーとの共重合体である場合、マレイミド系モノマーの含有率は、好ましくは2モル%〜50モル%である。屈折率楕円体がnx=nz>nyの関係を有する層を形成する熱可塑性樹脂の含有率がこの範囲であれば、屈折率楕円体がnx=nz>nyの関係を有し、かつ、脆性や加工成形性に優れた層が得られる。
好ましくは、上記熱可塑性樹脂フィルムは、スチレン−無水マレイン酸共重合体、スチレン−(メタ)アクリロニトリル共重合体、スチレン−(メタ)アクリレート共重合体、スチレン−マレイミド共重合体、ビニルエステル−マレイミド共重合体、オレフィン−マレイミド共重合体を用いて形成される。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を組み合せて用いてもよい。なお、これらの熱可塑性樹脂は、市販のものを用いてもよく、例えば、NOVA Chemical Japan Ltd.や荒川化学工業(株)から入手することができる。
屈折率楕円体がnx=nz>nyの関係を有する熱可塑性樹脂フィルムの延伸方法としては、任意の適切な方法を用いることができ、例えば、縦一軸延伸法や横一軸延伸法などが挙げられる。延伸条件としては、例えば、用いる熱可塑性樹脂フィルムのガラス転移温度よりも高い温度で、1倍を超え3倍以下で延伸することが好ましい。
第1の熱可塑性樹脂層の25℃における弾性率は、好ましくは1GPa以上であり、より好ましくは1.5GPa〜10GPaであり、さらに好ましくは1.8GPa〜9GPaであり、特に好ましくは2GPa〜8GPaである。このような範囲であれば、無機ガラスを薄くした場合でも、当該第1の熱可塑性樹脂層が変形時の欠陥への引き裂き方向の局所的な応力を緩和するので、無機ガラスへのクラックや破断が生じ難くなる。
第1の熱可塑性樹脂層の25℃における破壊靱性値は、好ましくは1MPa・m1/2〜10MPa・m1/2であり、より好ましくは1.5MPa・m1/2〜10MPa・m1/2であり、さらに好ましくは2MPa・m1/2〜8MPa・m1/2であり、特に好ましくは2MPa・m1/2〜6MPa・m1/2である。このような範囲であれば、第1の熱可塑性樹脂層に含まれる熱可塑性樹脂が十分な粘度を有するため、無機ガラスのクラックの進展や破断を防ぎ、良好な屈曲性を有する表示素子用基板を得ることができる。第1の熱可塑性樹脂層の25℃における破壊靱性値が1MPa・m1/2以上であれば、高い屈曲性を実現することができる。通常、破壊靱性値の上限値は10MPa・m1/2程度である。
上記第1の熱可塑性樹脂層は、目的に応じて任意の適切な添加剤をさらに含有し得る。上記添加剤としては、例えば、希釈剤、老化防止剤、変成剤、界面活性剤、染料、顔料、変色防止剤、紫外線吸収剤、柔軟剤、安定剤、可塑剤、消泡剤、補強剤等が挙げられる。樹脂組成物に含有される添加剤の種類、数および量は、目的に応じて適切に設定され得る。
第1の熱可塑性樹脂層20の厚みは、好ましくは1〜60μmであり、より好ましくは1〜50μmである。このような範囲であれば、無機ガラスを補強することができ、かつ、表示素子用基板の薄型化を達成することができる。
第1の熱可塑性樹脂層の厚み方向の位相差値(Rth)は、好ましくは−600nm〜−10nmであり、より好ましくは−500nm〜−10nmであり、さらに好ましくは−300nm〜−10nmである。このような範囲であれば、表示素子全体の位相差を適切に制御することができる。第1の熱可塑性樹脂層の面内位相差(Re)は、10nm以下である。
<D.第2の熱可塑性樹脂層>
第2の熱可塑性樹脂層30は、無機ガラス10の第1の熱可塑性樹脂層20が形成された側の反対側に形成される。好ましくは、図1(b)に示すように、第2の熱可塑性樹脂層30は、カップリング剤層および/または接着剤層40’(特に好ましくは、カップリング剤層)を介して、無機ガラス10に積層されている。第2の熱可塑性樹脂層の屈折率楕円体は、nx=ny>nzの関係を有する。ここで、「nx=ny」は、nxとnyが厳密に等しい場合のみならず、nxとnyが実質的に等しい場合も包含する。
第2の熱可塑性樹脂層としては、屈折率楕円体がnx=ny>nzの関係を有するものであれば、任意の適切なものを用いることができる。具体的には、屈折率楕円体がnx=ny>nzの熱可塑性樹脂を含む溶液を塗工して形成された層または当該樹脂から形成されたフィルム、あるいは熱可塑性樹脂フィルムを延伸することにより得られた層などが挙げられる。
第2の熱可塑性樹脂層を形成する熱可塑性樹脂としては、得られた層の屈折率楕円体がnx=ny>nzの関係を有するものであればよく、任意の適切なものを用いることができる。無機ガラスの補強効果をより向上させることができ、弾性率およびガラス転移温度が高いという点から、ポリイミド系樹脂、ポリアミドイミド系樹脂、ポリエーテルサルホン系樹脂、ポリエーテルイミド系樹脂、ポリサルホン系樹脂、ポリアリレート系樹脂が好ましい。これらの熱可塑性樹脂層は単独で用いても、2種以上を組み合わせてもよい。これらの熱可塑性樹脂は、必要に応じて、末端や側鎖を所定の官能基に変性処理を行ってもよい。該官能基としては、具体的には、エポキシ基、水酸基、アクリル基、エチニル基などが挙げられる。
上記熱可塑性樹脂のガラス転移温度は、好ましくは110℃以上、より好ましくは150℃以上、さらに好ましくは150〜350℃である。このような範囲であれば、耐熱性に優れる表示素子用基板を得ることができる。
上記第2の熱可塑性樹脂層の25℃における弾性率は、好ましくは1GPa以上であり、より好ましくは1.5GPa以上であり、さらに好ましくは1.8GPa〜9GPaであり、特に好ましくは1.8GPa〜8GPaである。このような範囲であれば、無機ガラスを薄くした場合でも、当該第2の熱可塑性樹脂層が変形時の欠陥への引き裂き方向の局所的な応力を緩和するので、無機ガラスへのクラックや破断が生じ難くなる。
第2の熱可塑性樹脂層の25℃における破壊靱性値は、好ましくは1MPa・m1/2〜10MPa・m1/2であり、より好ましくは1.5MPa・m1/2〜10MPa・m1/2であり、さらに好ましくは、2MPa・m1/2〜8Mpa・m1/2であり、特に好ましくは2.5MPa・m1/2〜6MPa・m1/2である。このような範囲であれば、第2の熱可塑性樹脂層が十分な粘度を有するため、無機ガラスのクラックの進展や破断を防ぎ、良好な屈曲性を有する表示素子用基板を得ることができる。第2の熱可塑性樹脂層の25℃における破壊靱性値が1MPa・m1/2以上であれば、高い屈曲性を実現することができる。通常、破壊靱性値の上限値は10MPa・m1/2程度である。
上記第2の熱可塑性樹脂層の波長550nmにおける透過率は、好ましくは85%以上である。上記第2の熱可塑性樹脂層の波長550nmにおける屈折率(n)は、好ましくは1.3〜1.7である。
上記第2の熱可塑性樹脂層は、目的に応じて任意の適切な添加剤をさらに含有し得る。該添加剤としては、上記第1の熱可塑性樹脂層に用いられ得る添加剤と同じものが挙げられる。熱可塑性樹脂組成物に含有される添加剤の種類、数および量は、目的に応じて適切に設定され得る。
上記第2の熱可塑性樹脂層の厚みは、好ましくは5〜60μm、より好ましくは20〜50μmである。このような範囲にすることで、表示素子用基板の薄型化と無機ガラスの補強とを両立させることができる。
上記第2の熱可塑性樹脂層の厚み方向の位相差値(Rth)は、好ましくは10〜600nmであり、より好ましくは10〜500nmであり、さらに好ましくは10〜300nmである。上記第2の熱可塑性樹脂層の面内位相差値(Re)は、10nm以下である。
<E.カップリング剤層、接着剤層>
上記のように、本発明の表示素子用基板は、好ましくは上記無機ガラス10と上記第1の熱可塑性樹脂層20および/または第2の熱可塑性樹脂層30との間に、カップリング剤層および/または接着剤層(さらに好ましくは、カップリング剤層)40,40’をさらに備える(図1(b)参照)。カップリング剤層および/または接着剤層は、カップリング剤層または接着剤層を単独で用いてもよく、カップリング剤層と接着剤層との積層体を用いてもよい。
上記カップリング剤層が設けられる場合、上記カップリング剤層に含まれるカップリング剤と各熱可塑性樹脂層に含まれる熱可塑性樹脂とが化学結合(代表的には、共有結合)により結合、または相互作用し得ると推測される。その結果、第1の熱可塑性樹脂層および/または第2の熱可塑性樹脂層と無機ガラスとの密着性が非常に高くなり、切断時にクラックが進展し難い表示素子用基板が得られる。
<E−1.カップリング剤層>
カップリング剤としては、任意の適切なものを用いることができ、例えば、アミノ基含有カップリング剤、エポキシ基含有カップリング剤、イソシアネート基含有カップリング剤などが挙げられる。これらのカップリング剤が有するアミノ基、エポキシ基およびイソシアネート基の置換位置は、分子の末端であってもよいし、末端でなくてもよい。これらのカップリング剤は、単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせてもよい。
カップリング剤は、第1の熱可塑性樹脂層および第2の熱可塑性樹脂層に含まれる熱可塑性樹脂に合わせて、適宜選択することができる。熱可塑性樹脂とカップリング剤の好ましい組み合わせとしては、ポリアリレート系樹脂およびフマル酸エステル系樹脂とアミノ基含有カップリング剤、末端を水酸基で変性した樹脂とエポキシ系カップリング剤の組み合わせなどが挙げられる。これらの熱可塑性樹脂とカップリング剤の組み合わせであれば、切断時にクラックが十分に進展し難い表示素子用基板が得られる。
上記アミノ基含有カップリング剤は、好ましくはアミノ基を有するアルコキシシランまたはアミノ基を有するハロゲン化シランである。特に好ましくはアミノ基を有するアルコキシシランである。
上記アミノ基を有するアルコキシシランの具体例としては、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、3−アミノプロピルジメチルメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−アミノプロピルメチルジエトキシシラン、3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、6−アミノへキシルトリメトキシシラン、6−アミノへキシルトリエトキシシラン、11−アミノウンデシルトリメトキシシラン、11−アミノウンデシルトリエトキシシラン、3−トリエトキシシリル−N−(1、3−ジメチル−ブチリデン)プロピルアミンが挙げられる。
上記アミノ基を有するハロゲン化シランの具体例としては、3−アミノプロピルトリクロロシラン、3−アミノプロピルメチルジクロロシラン、3−アミノプロピルジメチルクロロシラン、6−アミノへキシルトリクロロシラン、11−アミノウンデシルトリクロロシランが挙げられる。
上記エポキシ基含有カップリング剤の具体例としては、2−(3、4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシランが挙げられる。
上記イソシアネート基含有カップリング剤の具体例としては、3−イソシアネートプロピルトリエトキシシランが挙げられる。
上記カップリング剤は、市販品を用いてもよい。市販のアミノ基含有カップリング剤としては、例えば、信越化学工業社製、商品名「KBM−602」(N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン)、商品名「KBM−603」(N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン)、商品名「KBE−603」(N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルトリエトキシシラン)、商品名「KBM−903」(3−アミノプロピルトリメトキシシラン)、商品名「KBE−903」(3−アミノプロピルトリエトキシシラン)、商品名「KBM−573」(N−フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン)および、商品名「KBE−9103」(3−トリエトキシシリル−N−(1、3−ジメチル−ブチリデン)プロピルアミン)が挙げられる。
市販のエポキシ基含有カップリング剤としては、例えば、信越化学工業社製、商品名「KBM−303」(2−(3、4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン)、商品名「KBM−403」(3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン)、商品名「KBE−402」(3−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン)、商品名「KBE−403」(3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン)が挙げられる。
市販のイソシアネート基含有カップリング剤としては、例えば、信越化学工業社製、商品名「KBE−9007」(3−イソシアネートプロピルトリエトキシシラン)が挙げられる。
上記カップリング剤層の厚みは、好ましくは0.001〜10μm、より好ましくは0.001〜2μmである。
<E−2.接着剤層>
接着剤層に含まれる接着剤としては、任意の適切な接着剤を用いることでき、例えば、アクリル系接着剤、エポキシ系接着剤、シリコーン系接着剤、ゴム系接着剤などが挙げられる。
上記接着剤層の厚みは、好ましくは1〜10μmであり、より好ましくは1〜5μmである。
<F.その他の層>
上記以外にも必要に応じて、任意の適切な層を設けることができる。例えば、第1の熱可塑性樹脂層および/または第2の熱可塑性樹脂層の上(すなわち、無機ガラスと接していない側)に、位相差の制御を目的として、液晶化合物を電子線や熱により固化または硬化させた位相差フィルムをさらに用いることができる。この場合、上記位相差フィルムを保護するために、さらに別の熱可塑性樹脂層を積層してもよい。上記位相差フィルムを熱可塑性樹脂層で挟み込む場合には、それぞれの熱可塑性樹脂層の厚みや、厚み方向の位相差値は同等であってもよいし、異なっていてもよい。上記さらに別の熱可塑性樹脂としては、保護フィルムとして用いられ得る、任意の適切な熱可塑性樹脂層を用いることができる。
<G.表示素子用基板の製造方法>
本発明の表示素子用基板の製造方法は、上記無機ガラスの片側に上記第1の熱可塑性樹脂層を形成すること、および無機ガラスの他方の側に第2の熱可塑性樹脂層を形成することを含む。上記第1の熱可塑性樹脂層および/または第2の熱可塑性樹脂層は、任意の適切な方法で形成することができ、例えば、第1の熱可塑性樹脂層および/または第2の熱可塑性樹脂層を形成する熱可塑性樹脂を含む溶液を塗工して形成する方法や、第1の熱可塑性樹脂層および/または第2の熱可塑性樹脂層として用いることができる熱可塑性樹脂フィルムを接着剤層を介して積層する方法などが挙げられる。
上記第1の熱可塑性樹脂層および第2の熱可塑性樹脂層は、好ましくは、上記の溶液塗工により形成される。この方法は、代表的には、第1の熱可塑性樹脂層を形成する熱可塑性樹脂の溶液を上記無機ガラスの片側に塗工し塗工層を形成する塗工工程と、該塗工層を乾燥させる乾燥工程と、第2の熱可塑性樹脂層を形成する熱可塑性樹脂の溶液を上記無機ガラスの他方の側に塗工し塗工層を形成する塗工工程と、該塗工層を乾燥させる乾燥工程と、乾燥後の塗工層を熱処理する熱処理工程からなる。
上記塗工工程の際に使用される塗工溶媒は、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン等のケトン系溶媒、塩化メチレン、塩化エチレン、クロロホルム、四塩化炭素、トリクロロエタン等のハロゲン系溶媒、トルエン、ベンゼン、フェノール等の芳香族系溶媒、ジメチルスルホキシド、N,N’−ジメチルホルムアミド、N−メチルピロリドン等が挙げられる。
上記熱可塑性樹脂の溶液の塗工方法としては、エアドクターコーティング、ブレードコーティング、ナイフコーティング、リバースコーティング、トランスファロールコーティング、グラビアロールコーティング、キスコーティング、キャストコーティング、スプレーコーティング、スロットオリフィスコーティング、カレンダーコーティング、電着コーティング、ディップコーティング、ダイコーティング等のコーティング法;フレキソ印刷等の凸版印刷法、ダイレクトグラビア印刷法、オフセットグラビア印刷法等の凹版印刷法、オフセット印刷法等の平版印刷法、スクリーン印刷法等の孔版印刷法等の印刷法が挙げられる。
乾燥工程としては、任意の適切な乾燥方法(例えば、自然乾燥、送風乾燥、加熱乾燥)が採用され得る。例えば、加熱乾燥の場合には、乾燥温度は代表的には100〜200℃であり、乾燥時間は代表的には1〜10分である。
熱処理工程としては、任意の適切な熱処理方法が採用され得る。代表的には、熱処理温度は100℃〜300℃であり、熱処理時間は5〜45分である。表示素子用基板がカップリング剤層を有する場合、該熱処理によりカップリング剤と第1の熱可塑性樹脂層および/または第2の熱可塑性樹脂に含まれる熱可塑性樹脂とを化学結合または相互作用させることができると推測される。
本発明の表示素子用基板の製造方法は、好ましくは、上記第1の熱可塑性樹脂層および/または第2の熱可塑性樹脂層を形成する前に、上記無機ガラスの表面をカップリング処理することを含む。カップリング剤は、E−1項で説明したとおりである。
上記カップリング処理の方法としては、任意の適切な方法が採用され得る。具体的には、例えば、上記カップリング剤の溶液を上記無機ガラスの表面に塗布した後、熱処理する方法が挙げられる。
上記カップリング剤の溶液を調製する際に使用する溶媒としては、カップリング剤と反応しない溶媒であれば、任意の適切な溶媒を使用できる。該溶媒としては、例えば、ヘキサン、ヘキサデカン等の脂肪族炭化水素系溶媒、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族系溶媒、塩化メチレン、1,1,2−トリクロロエタン等のハロゲン炭化水素系溶媒、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン等のエーテル系溶媒、メタノール、プロパノール等のアルコール系溶媒、アセトン、2−ブタノン等のケトン系溶媒、および水が挙げられる。
上記カップリング処理の際の熱処理方法は、任意の適切な熱処理方法が採用され得る。代表的には、熱処理温度は50〜150℃であり、熱処理時間は1〜10分である。熱処理により、カップリング剤と無機ガラス表面とを化学結合により結合させることができる。
第1の熱可塑性樹脂層および第2の熱可塑性樹脂層として、熱可塑性樹脂フィルムを用いる場合、無機ガラスと熱可塑性樹脂フィルムとは、接着剤層を介して積層される。接着剤層を介した熱可塑性樹脂フィルムの積層方法としては、従来公知の方法を用いることができる。具体的には、無機ガラスの片側または両側に接着剤組成物を塗布した後、無機ガラスと熱可塑性樹脂フィルムとを貼り合わせて乾燥させる方法が挙げられる。当該接着剤組成物としては、任意の適切な接着剤組成物を採用することができ、具体的には上記E−2項で説明した接着剤組成物が用いられる。
<H.用途>
本発明の表示素子用基板は、任意の適切な表示素子に用いられ得る。表示素子としては、例えば、液晶ディスプレイ、プラズマディスプレイ、有機ELディスプレイなどが挙げられる。これらの中でも、液晶ディスプレイに好適に用いることができる。液晶ディスプレイの駆動モードは特に制限はなく、目的に応じて、任意の適切なものを用いることができ、例えば、バーティカル・アラインメント(VA)モード、光学補償複屈折(OCB)モード、インプレーン・スイッチング(IPS)モード、ツイスティッド・ネマチック(TN)モードなどが挙げられる。好ましくはVAモードである。また、本発明の表示素子用基板は、可撓性、屈曲性および耐衝撃性に優れるので、フィルム状の素子にも好適に用いることができる。
好ましくは、本発明の表示素子用基板は、一対で表示素子に用いられる。このような構成にすることにより、得られた表示素子の物理的な特性(例えば、反りの発生を抑制)を向上させることができる。本発明の表示素子用基板を液晶表示装置に用いる場合、第1の熱可塑性樹脂層および第2の熱可塑性樹脂層のいずれの層が液晶層側であってもよく、所望の特性に応じて適宜選択することができる。1つの実施形態においては、一対の本発明の表示素子用基板は、例えば、液晶表示装置に用いられる場合には、いわゆる対称配置される。より具体的には、一方の基板が第1の熱可塑性樹脂層が液晶層側となるように配置される場合には、他方の基板も第1の熱可塑性樹脂層が液晶層側となるように配置される。
本発明について、以下の実施例を用いてさらに説明する。本発明は、これらの実施例のみに限定されるものではない。なお、厚みはアンリツ製デジタルマイクロメーター「KC−351C型」を使用して測定した。
[合成例1]
ジイソプロピルフマレート10gをガラスアンプル中にとり、ラジカル重合開始剤としてアゾビスイソブチルニトリル0.1gを添加した。次いで、アンプル内を窒素置換、および脱気を繰り返した後密閉し、40℃で48時間塊状重合を行った。重合後、内容物をベンゼンに溶解し、大量のメタノールに投入してポリマーを沈殿させ、濾別し、メタノールで十分に洗浄を行った後、減圧乾燥して、重量平均分子量が235000のポリ(ジイソプロピルフマレート)を得た。
[実施例1]
合成例1で得られたポリ(ジイソプロピルフマレート)10.0gをトルエン70gとトリクロロエタン30gの混合溶媒に溶かし、10.0重量%の第1のキャスティング溶液を得た。
末端を水酸基で変性したポリエーテルサルホン(スミカエクセル 5003P、住友化学社製)36.2gをシクロペンタノン172g、およびジメチルスルホキシド10.8gの混合溶媒に溶かし、末端を水酸基で変性したポリエーテルサルホンが16.5重量%の溶液を得た。得られた溶液に、レベリング剤(BYK307、ビックケミー社製)0.027gを添加し、第2のキャスティング溶液を得た。
無機ガラス(厚み:50μm、縦10cm×横4cm)の両側表面をメチルエチルケトンで洗浄後、コロナ処理を行った。無機ガラスの片側に、アミノ基含有カップリング剤(KBM−603、信越化学工業社製)を塗布し、110℃で5分間熱処理をした。次いで、無機ガラスの他方の側に、エポキシ基含有カップリング剤(KBM−403、信越化学工業社製)を塗布した後、110℃で5分間熱処理をした。アミノ基含有カップリング剤によりカップリング剤層を形成した表面に、上記第1のキャスティング溶液を塗工し、100℃で15分間乾燥させた。次いで、無機ガラスのエポキシ基含有カップリング剤によりカップリング剤層を形成した表面に、上記第2のキャスティング溶液を塗工し、100℃で15分間乾燥させた。その後、無機ガラスの両表面を150℃で10分間、200℃で20分間さらに乾燥させ、厚みが46μmで屈折率楕円体がnz>nx=nyの関係を有する第1の熱可塑性樹脂層、および厚みが35μmで屈折率楕円体がnx=ny>nzの関係を有する第2の熱可塑性樹脂層を形成し、総厚が131μmの表示素子用基板を得た。なお、カップリング剤層の厚みは、極めて薄いため、表示素子用基板の総厚には実質的に含まれていない。
[実施例2]
ポリアリレート(Uポリマー U−100、ユニチカ社製)の20重量%塩化メチレン溶液に、1,1,2−トリクロロエタンを混合し、ポリアリレートが14.5重量%の第3のキャスティング溶液を得た。
無機ガラス(厚み:50μm、縦10cm×横4cm)の両側をメチルエチルケトンで洗浄後、コロナ処理を行った後、無機ガラスの両側にアミノ基含有カップリング剤(KBM−603、信越化学工業社製)を塗布し、110℃で5分間熱処理をした。次いで、無機ガラスの片側に上記第1のキャスティング溶液を塗工し、100℃で15分間乾燥させた。同様に、他方の側に、上記第3のキャスティング溶液を塗工し、100℃で15分間乾燥させた。その後、無機ガラスの両表面を150℃で10分間、200℃で20分間さらに乾燥させ、厚みが46μmで屈折率楕円体がnz>nx=nyの関係を有する第1の熱可塑性樹脂層、および厚みが28μmで屈折率楕円体がnx=ny>nzの関係を有する第2の熱可塑性樹脂層を形成し、総厚が124μmの表示素子用基板を得た。
[実施例3]
第1の熱可塑性樹脂層の厚みを30μmに、第2の熱可塑性樹脂層の厚みを38μmにした以外は、実施例2と同様にして、総厚が118μmの表示素子用基板を得た。
〈評価〉
上記実施例で用いた第1の熱可塑性樹脂層および第2の熱可塑性樹脂層、ならびに、上記で得られた表示素子用基板を下記の方法で評価した。第1の熱可塑性樹脂層および第2の熱可塑性樹脂層の結果を表1に、および表示素子用基板の結果を表2に示す。
(1)位相差値の測定
王子計測製KOBRA−WPRを用いて自動計測した。測定波長は590nm、測定温度は23℃であった。
(2)密着性試験
JIS K 5400の碁盤目剥離試験により評価した。すなわち、樹脂層側の表面(第1の熱可塑性樹脂の表面および第2の熱可塑性樹脂層の表面)上10mm角中に1mm間隔にカッターで切れ目を入れ、100個の碁盤目を作り、粘着テープをその上に貼り付けた後、剥離し、無機ガラスから剥離した樹脂層の碁盤目の数により密着性を評価した。剥離した樹脂層の碁盤目の数が0個の場合は○、1個以上の場合は×とした。
(3)破断直径
(a)実施例で得られた表示素子用基板を評価用試料として準備した。
(b)無機ガラス露出部分の縦辺端部の中央に5mm以下のクラックを入れた。
(c)評価用試料の縦辺を屈曲させ、クラックが、無機ガラス露出部分を進展し、さらに樹脂等の積層領域において1cm進展した時点での、縦辺を円周とする円の直径を破断直径とした。
(4)弾性率
Hysitron社製 製品名「Tribo Indenter」を用いて、25℃における第1の熱可塑性樹脂層および第2の熱可塑性樹脂層の単一押し込み測定(押し込み因子:Berkovich(三角錐形)、押し込み深さ:230〜280nm)により測定した。
(5)破壊靭性値
各実施例で用いた第1の熱可塑性樹脂および第2の熱可塑性樹脂を用いて、厚み50μm、幅2cm、長さ15cmの短冊状樹脂サンプルを作製し、短冊長手方向の端部(中央部分)にクラック(5mm)を入れた。オートグラフ(島津製作所製、AG−I)により短冊長手方向に引っ張り応力を加え、温度25℃でのクラックからの樹脂破断時の応力を測定した。試験条件は、チャック間距離を10cm、引っ張り速度を10mm/minとして行った。得られた破断時の引っ張り応力σとクラック長a、サンプル幅bを以下の式に代入し、破断時の破壊靭性値KICを求めた。
Figure 0005574676
Figure 0005574676
Figure 0005574676
[評価]
表2からも明らかなように、実施例1〜3の表示素子用基板は、位相差、特に厚み方向の位相差が制御されたものであった。さらに、実施例1〜3の表示素子用基板は、無機ガラスと第1の熱可塑性樹脂層および第2の熱可塑性樹脂層との密着性に優れていた。さらに、これらの表示素子用基板は、クラックや破断が生じにくいものであり、無機ガラスの補強性も向上していた。
本発明の表示素子用基板は、任意の適切な表示素子に用いられ得る。表示素子としては、例えば、液晶ディスプレイ、プラズマディスプレイ、有機ELディスプレイなどが挙げられる。これらの中でも、液晶ディスプレイに好適に用いることができる。
10 無機ガラス
20 第1の熱可塑性樹脂層
30 第2の熱可塑性樹脂層
40,40’ カップリング剤層および/または接着剤層
100,100’ 表示素子用基板

Claims (8)

  1. 無機ガラスと、
    該無機ガラスの片側に形成された屈折率楕円体がnz>nx=nyの関係を有する第1の熱可塑性樹脂層と、
    該無機ガラスの他方の側に形成された屈折率楕円体がnx=ny>nzの関係を有する第2の熱可塑性樹脂層とを有し、
    該無機ガラスの厚みが1μm〜100μmであり、
    該第2の熱可塑性樹脂層の厚みが5μm〜60μmである、
    表示素子用基板。
  2. 前記無機ガラスと前記第1の熱可塑性樹脂層および/または第2の熱可塑性樹脂層との間にカップリング剤層および/または接着剤層をさらに備える、請求項1に記載の表示素子用基板。
  3. 前記表示素子用基板の総厚が150μm以下である、請求項1または2に記載の表示素子用基板。
  4. 前記第1の熱可塑性樹脂層がフマル酸エステル系樹脂を主成分とする、請求項1からのいずれかに記載の表示素子用基板。
  5. 前記表示素子用基板にクラックを入れ屈曲させた際の破断直径が50mm以下である、請求項1からのいずれかに記載の表示素子用基板。
  6. 前記第1の熱可塑性樹脂層および第2の熱可塑性樹脂層の25℃における破壊靱性値が1MPa・m1/2〜10MPa・m1/2である、請求項1からのいずれかに記載の表示素子用基板。
  7. 前記第1の熱可塑性樹脂層および第2の熱可塑性樹脂層の25℃における弾性率が1GPa以上である、請求項1からのいずれかに記載の表示素子用基板。
  8. 請求項1からのいずれかに記載の表示素子用基板を用いた、表示素子。





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