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JP5573033B2 - 熱可塑性エラストマー組成物の製造方法 - Google Patents

熱可塑性エラストマー組成物の製造方法 Download PDF

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JP5573033B2 JP2009168942A JP2009168942A JP5573033B2 JP 5573033 B2 JP5573033 B2 JP 5573033B2 JP 2009168942 A JP2009168942 A JP 2009168942A JP 2009168942 A JP2009168942 A JP 2009168942A JP 5573033 B2 JP5573033 B2 JP 5573033B2
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Description

本発明は、ゴムが分散相、樹脂が連続相である熱可塑性エラストマー組成物の製造方法に関する。さらに詳しくは、ゴムの配合率が高くかつゴムが微分散した熱可塑性エラストマー組成物の製造方法に関する。
ゴムが分散相、樹脂が連続相である熱可塑性エラストマー組成物はよく知られており、この相構造を得るには粘度比と体積分率を(1)式
(φ/φ)×(η/η)<1 ・・・・・(1)
(ただし、φはゴムの体積分率、φは樹脂の体積分率、ηはゴムの粘度、ηは樹脂の粘度である。)の関係に保つ必要がある(特許文献1)。また、ゴムの分散粒子径はゴムと樹脂の粘度比η/ηが1に近いほど微分散することが知られている(非特許文献1)。すなわち、これらの関係により、ゴムの微分散とゴム高体積分率を両立することは容易ではなかった。
ゴムの微分散と高体積分率配合を両立するために、従来は、樹脂用可塑剤を用いてみかけ樹脂量を増やして混合していた(特許文献2)。
特開2000−159936号公報 国際公開第2007/100157号
エス・ウー(S. Wu)、「ポリマーの工学と科学(Polymer Engineering and Science)」、1987年、第5巻、p.27
樹脂用可塑剤を用いることにより、ゴムの微分散と高体積分率配合を両立することができるが、樹脂用可塑剤を用いた熱可塑性エラストマー組成物は耐久性やガスバリア性が悪化する。また、特許文献2に記載されているように、樹脂用可塑剤を混合して成形した後、樹脂用可塑剤を除去することもできるが、その方法では、熱可塑性エラストマー組成物の製造工程において樹脂用可塑剤が発生し、環境対策上好ましくない。本発明は、ゴムが分散相、樹脂が連続相である熱可塑性エラストマー組成物の製造方法において、ゴムの微分散と高体積分率配合を両立する新たな方法を提供するものである。
本発明は、ゴム(A)が分散相、樹脂(B)が連続相である熱可塑性エラストマー組成物の製造方法であって、ゴム(A)と樹脂(B)を、まず、樹脂(B)の融点Tより低い温度Tで混練し、その後、樹脂(B)の融点Tより高い温度Tで混練することを特徴とする。
温度Tは、好ましくは、樹脂(B)の融点Tより10〜100℃低い。
温度Tは、より好ましくは、樹脂(B)の融点Tより30〜70℃低い。
好ましくは、ゴム(A)と樹脂(B)を2軸混練機で混練する。
好ましくは、2軸混練機の前半の混練ゾーンをTに設定し、後半の混練ゾーンをTに設定する。
好ましくは、2軸混練機の最初の混練ゾーンをT、最後の混練ゾーンをTに設定し、2軸混練機が最初の混練ゾーンと最後の混練ゾーンの間にTよりも高くTよりも低い温度に設定した混練ゾーンを1つ以上有する。
温度Tにおけるゴム(A)の粘度ηに対する樹脂(B)の粘度ηの比(η/η)は、好ましくは、0.01〜0.8である。
好ましくは、ゴム(A)を混練中に動的に架橋する。
好ましくは、ゴム(A)と樹脂(B)を温度Tで混練した後にゴム(A)の架橋剤を添加し、温度Tで混練してゴム(A)を動的に架橋する。
ゴム(A)の体積分率は、好ましくは、55〜85%である。
好ましくは、ゴム(A)の少なくとも50質量%以上がハロゲン化ブチルゴムまたは臭素化イソブチレンパラメチルスチレン共重合ゴムである。
樹脂(B)は、好ましくは、ナイロン11、ナイロン12、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン46、ナイロン610、ナイロン6/12、ナイロン6/66、ナイロン6/66/12、および芳香族ナイロンからなる群から選択される少なくとも1種である。
また、本発明は、前記の方法で製造した熱可塑性エラストマー組成物を用いた空気入りタイヤである。
本発明によれば、ゴムが分散相、樹脂が連続相である熱可塑性エラストマー組成物の製造方法において、ゴムの微分散と高体積分率配合を両立することができる。ゴムと樹脂の混練初期温度を樹脂の融点より十分低い温度に設定して樹脂の粘度が高い状態で混練し、その後混練温度を樹脂の融点より高い温度にして混練することでゴムが微分散し、樹脂が連続相である熱可塑性エラストマー組成物を得ることができる。本発明によれば、ゴムに対して十分粘度の低い樹脂を用いてもゴムの微分散と高体積分率配合を両立でき、耐久性に優れた熱可塑性エラストマー組成物を得ることができる。
図1は、本発明に使用することができる2軸混練機の1つの例の模式図である。
本発明は、ゴム(A)が分散相、樹脂(B)が連続相である熱可塑性エラストマー組成物の製造方法である。
本発明に使用することができるゴム(A)は、特に限定されるものではなく、熱可塑性エラストマー組成物の用途によって適宜選択することができる。ゴム(A)の例としては、ジエン系ゴムおよびその水添物、オレフィン系ゴム、含ハロゲンゴム、シリコーンゴム、含イオウゴム、フッ素ゴム等を挙げることができる。ジエン系ゴムおよびその水添物としては、天然ゴム(NR)、イソプレンゴム(IR)、エポキシ化天然ゴム、スチレンブタジエンゴム(SBR)、ブタジエンゴム(BR)(高シスBRおよび低シスBR)、アクリルニトリルブタジエンゴム(NBR)、水素化NBR、水素化SBR等が挙げられる。オレフィン系ゴムとしては、エチレンプロピレンゴム(EPM)、エチレンプロピレンジエンゴム(EPDM)、マレイン酸変性エチレンプロピレンゴム(M−EPM)、ブチルゴム(IIR)、イソブチレンと芳香族ビニルまたはジエン系モノマー共重合体、アクリルゴム(ACM)、アイオノマー等が挙げられる。含ハロゲンゴムとしては、臭素化ブチルゴム(Br−IIR)や塩素化ブチルゴム(Cl−IIR)等のハロゲン化ブチルゴム、イソブチレンパラメチルスチレン共重合体の臭素化物(Br−IPMS)、クロロプレンゴム(CR)、ヒドリンゴム(CHR)、クロロスルホン化ポリエチレン(CSM)、塩素化ポリエチレン(CM)、マレイン酸変性塩素化ポリエチレン(M−CM)等が挙げられる。シリコーンゴムとしては、メチルビニルシリコーンゴム、ジメチルシリコーンゴム、メチルフェニルビニルシリコーンゴム等が挙げられる。含イオウゴムとしては、ポリスルフィドゴム等が挙げられる。フッ素ゴムとしては、ビニリデンフルオライド系ゴム、含フッ素ビニルエーテル系ゴム、テトラフルオロエチレン−プロピレン系ゴム、含フッ素シリコーン系ゴム、含フッ素ホスファゼン系ゴム等が挙げられる。なかでも、熱可塑性エラストマー組成物を空気入りタイヤのインナーライナーに使用する場合は、ハロゲン化ブチルゴム(ハロゲン基を導入したイソブチレン−イソプレン共重合ゴム)および/または臭素化イソブチレンパラメチルスチレン共重合ゴムのようなイソモノオレフィンとp−アルキルスチレンのハロゲン含有共重合ゴムが好ましい。臭素化イソブチレンパラメチルスチレン共重合ゴムには、エクソン社製「Exxpro」がある。ガスバリア性の観点から、ゴム(A)の少なくとも50質量%以上がハロゲン化ブチルゴムまたは臭素化イソブチレンパラメチルスチレン共重合ゴムであることが好ましい。
ゴム(A)には、カーボンブラックやシリカなどのその他の補強剤(フィラー)、軟化剤、老化防止剤、加工助剤などの、ゴム組成物に一般的に配合される配合剤を、本発明の効果を阻害しない範囲で、配合してもよい。
本発明に使用することができる樹脂(B)は、特に限定されるものではなく、熱可塑性エラストマー組成物の用途によって適宜選択することができる。樹脂(B)の例としては、ポリアミド系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリニトリル系樹脂、ポリメタクリレート系樹脂、ポリビニル系樹脂、セルロース系樹脂、フッ素系樹脂、イミド系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリオレフィン系樹脂等を挙げることができる。ポリアミド系樹脂としては、ナイロン6(N6)、ナイロン66(N66)、ナイロン46(N46)、ナイロン11(N11)、ナイロン12(N12)、ナイロン610(N610)、ナイロン6/12(N6/12)、ナイロン6/66(N6/66)、ナイロン6/66/12(N6/66/12)、ナイロン6/66/610(N6/66/610)、ナイロンMXD6(MXD6)、ナイロン6T、ナイロン6/6T、ナイロン66/PP共重合体、ナイロン66/PPS共重合体等が挙げられる。ポリエステル系樹脂としては、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンイソフタレート(PEI)、PET/PEI共重合体、ポリアリレート(PAR)、ポリブチレンナフタレート(PBN)、液晶ポリエステル、ポリオキシアルキレンジイミド酸/ポリブチレートテレフタレート共重合体などの芳香族ポリエステル等が挙げられる。ポリニトリル系樹脂としては、ポリアクリロニトリル(PAN)、ポリメタクリロニトリル、アクリロニトリル/スチレン共重合体(AS)、メタクリロニトリル/スチレン共重合体、メタクリロニトリル/スチレン/ブタジエン共重合体等が挙げられる。ポリメタクリレート系樹脂としては、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)、ポリメタクリル酸エチル等が挙げられる。ポリビニル系樹脂としては、酢酸ビニル(EVA)、ポリビニルアルコール(PVA)、ビニルアルコール/エチレン共重合体(EVOH)、ポリ塩化ビニリデン(PVDC)、ポリ塩化ビニル(PVC)、塩化ビニル/塩化ビニリデン共重合体、塩化ビニリデン/メチルアクリレート共重合体等が挙げられる。セルロース系樹脂としては、酢酸セルロース、酢酸酪酸セルロース等が挙げられる。フッ素系樹脂としては、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリフッ化ビニル(PVF)、ポリクロルフルオロエチレン(PCTFE)、テトラフロロエチレン/エチレン共重合体(ETFE)等が挙げられる。イミド系樹脂としては、芳香族ポリイミド(PI)等が挙げられる。ポリスチレン系樹脂としては、ポリスチレン(PS)等が挙げられる。ポリオレフィン系樹脂としては、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)等が挙げられる。なかでも、熱可塑性エラストマー組成物を空気入りタイヤのインナーライナーに使用する場合は、ポリアミド系樹脂が好ましい。
好ましいポリアミド系樹脂は、ナイロン11、ナイロン12、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン46、ナイロン610、ナイロン6/12、ナイロン6/66、ナイロン6/66/12、または芳香族ナイロンである。なかでも、熱可塑性エラストマー組成物を空気入りタイヤのインナーライナーに使用する場合は、ナイロン6およびナイロン6/66が耐疲労性とガスバリア性の両立という点で好ましい。
樹脂(B)には、加工性、分散性、耐熱性、酸化防止性などの改善のために、充填剤、補強剤、加工助剤、安定剤、酸化防止剤などの、樹脂組成物に一般的に配合される配合剤を、本発明の効果を阻害しない範囲で、配合してもよい。可塑剤は、ガスバリア性および耐熱性の観点から、配合しない方がよいが、本発明の効果を阻害しない範囲であれば、配合してもよい。
熱可塑性エラストマー組成物を構成するゴム(A)と樹脂(B)の組み合わせは、特に限定するものではないが、ハロゲン化ブチルゴムとポリアミド系樹脂、臭素化イソブチレンパラメチルスチレン共重合ゴムとポリアミド系樹脂、ブタジエンゴムとポリスチレン系樹脂、イソプレンゴムとポリスチレン系樹脂、水素添加ブタジエンゴムとポリスチレン系樹脂、エチレンプロピレンゴムとポリオレフィン系樹脂、エチレンプロピレンジエンゴムとポリオレフィン系樹脂、非結晶ブタジエンゴムとシンジオタクチックポリ(1,2−ポリブタジエン)、非結晶イソプレンゴムとトランスポリ(1,4−イソプレン)、フッ素ゴムとフッ素樹脂等が挙げられるが、熱可塑性エラストマー組成物を空気入りタイヤのインナーライナーに使用する場合は、ガスバリア性に優れたブチルゴムとポリアミド系樹脂の組み合わせが好ましく、なかでも、変性ブチルゴムである臭素化イソブチレンパラメチルスチレン共重合ゴムとナイロン6/66もしくはナイロン6またはナイロン6/66とナイロン6のブレンド樹脂との組み合わせが、耐疲労性とガスバリア性の両立という点で特に好ましい。
本発明の製造方法は、まず、ゴム(A)と樹脂(B)を、樹脂(B)の融点Tより低い温度Tで混練する。Tは、好ましくは、[T−100℃]〜[T−10℃]であり、より好ましくは、[T−70℃]〜[T−30℃]である。Tが高すぎると樹脂の粘度が急激に下がり、ゴムへの剪断応力がかかりにくくなってゴム分散粒子径が大きくなるため、Tは樹脂の融点より低く設定する必要がある。Tが[T−100℃]よりも低いと系の粘度が高すぎて混練機の負荷オーバーになりやすい。
本発明の製造方法は、Tで混練した後、樹脂(B)の融点Tより高い温度Tで混練する。Tは、好ましくは、[T+5℃]〜[T+100℃]であり、より好ましくは、[T+10℃]〜[T+40℃]である。Tが低すぎると、樹脂が連続相にならなかったり、混練機の負荷が大きくなったりする場合がある。逆に、Tが高すぎると、ゴムの分散粒子が再凝集し、ゴム分散粒子径が増大するおそれがある。
樹脂(B)の融点Tは、示差走査熱量計(DSC)によって測定する。樹脂(B)として2種以上の樹脂を併用した場合において、示差走査熱量計による測定結果が2以上の融解ピークを示すときは、最も低い融解ピークの温度を樹脂(B)の融点Tとする。2種以上の樹脂が相溶性であって、単一の融解ピークを示すときは、その単一の融解ピークの温度を樹脂(B)の融点Tとする。
混練に用いる装置は、特に限定するものではないが、2軸混練機が好適に使用できる。2軸混練機を使用する場合は、混練ゾーンを前半と後半に分け、前半の混練ゾーンを樹脂(B)の融点Tより低い温度Tに設定し、後半の混練ゾーンを樹脂(B)の融点Tより高い温度Tに設定することができる。また、混練ゾーンを3つ以上に分け、最初の混練ゾーンを樹脂(B)の融点Tより低い温度Tに設定し、最後の混練ゾーンを樹脂(B)の融点Tより高い温度Tに設定し、最初の混練ゾーンと最後の混練ゾーンの間の混練ゾーンすなわち中間の混練ゾーンをTよりも高くTよりも低い温度に設定することができる。このように、設定温度の異なる2つ以上の混練ゾーンを有する2軸混練機を使用することにより、連続的に生産することができるので効率がよい。また、中間の混練ゾーンを設けると、剪断発熱により一部樹脂が溶融するが、完全には溶融しないためゴムに十分な剪断応力をかけながら樹脂が連続相になりやすい状態を作ることができるので好ましい。なお、TおよびTは、混練機を使用した場合、混練機の設定温度である。
図1に、本発明に使用することができる2軸混練機の1つの例の模式図を示す。2軸混練機1は、3つの混練ゾーンを有する。図中、2は混練ゾーンA、3は混練ゾーンB、4は混練ゾーンCを示す。ゴム・樹脂投入口5が混練ゾーンAの手前に設けられ、架橋剤投入口6が混練ゾーンCの手前に設けられている。混練ゾーンAは、最初の混練ゾーンに該当し、樹脂(B)の融点Tより低い温度Tに設定されている。混練ゾーンCは、最後の混練ゾーンに該当し、樹脂(B)の融点Tより高い温度Tに設定されている。混練ゾーンBは、Tよりも高くTよりも低い温度に設定されている。ゴム(A)と樹脂(B)はゴム・樹脂投入口5から投入され、混練ゾーンAの中を混練されながら移動し、続いて混練ゾーンBの中を混練されながら移動し、次いで架橋剤投入口6から投入された架橋剤と一緒になって混練ゾーンCに送られ、混練ゾーンCの中を混練されながら移動し、最後に矢印の方向に所定の形状(たとえばストランド状)に押し出される。
図示した2軸混練機1では、混練ゾーンAと混練ゾーンBの間、混練ゾーンBと混練ゾーンCの間に、間隔が置かれているが、必ずしも間隔を置く必要はなく、混練ゾーンAと混練ゾーンB、混練ゾーンBと混練ゾーンCが間隔を置かずに連続していてもよい。間隔を置く場合は、その部分のスクリューを練りのスクリューから送りのスクリューに代えればよい。
混練時の剪断速度は、好ましくは500〜7500秒-1である。
混練時間は、分散の状態に応じて適宜選択することができるが、樹脂(B)の融点Tより低い温度Tでの混練の時間は、たとえば30秒〜10分、好ましくは30秒〜5分であり、樹脂(B)の融点Tより高い温度Tでの混練の時間は、たとえば30秒〜10分、好ましくは30秒〜5分である。
温度Tにおけるゴム(A)の粘度ηに対する樹脂(B)の粘度ηの比(η/η)は0.01〜0.8であることが好ましく、より好ましくは0.05〜0.5である。樹脂を連続相にするためには樹脂粘度が低い方がよいが、あまり低すぎるとゴム分散粒子径が小さくなりきらないため、粘度比η/ηは0.01以上が好ましい。粘度比η/ηが大きすぎると、樹脂が溶融しにくくなって連続相にならなかったり、押出機の負荷オーバーで混練不可になることがある。
ゴムの分散状態を固定するために、ゴムを混練中に動的架橋することが好ましい。動的架橋をしないと、ゴムの再凝集が起こりやすくなり、微分散を維持できなくなって、熱可塑性エラストマー組成物の耐久性が低下する。動的架橋するためには、架橋剤を添加する。架橋剤を添加する時期は、ゴム(A)と樹脂(B)を温度Tで混練した後、温度Tで混練する前が、微分散構造を得やすいので、好ましい。
架橋剤は、特に限定されるものではなく、ゴムの組成に応じて適宜選択することができる。架橋剤としては、一般的なゴム架橋剤(加硫剤)を用いることができ、硫黄系架橋剤、有機過酸化物系架橋剤、フェノール樹脂系架橋剤、ポリアミン系架橋剤、その他が挙げられる。硫黄系架橋剤としては、粉末硫黄、沈降性硫黄、高分散性硫黄、表面処理硫黄、不溶性硫黄、ジモルフォリンジサルファイド、アルキルフェノールジサルファイド等が挙げられ、例えば、0.5〜4質量部(ゴム100質量部あたりの質量部)程度用いることができる。有機過酸化物系架橋剤としては、ベンゾイルパーオキサイド、t−ブチルヒドロパーオキサイド、2,4−ジクロロベンゾイルパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン、2,5−ジメチルヘキサン−2,5−ジ(パーオキシルベンゾエート)等が挙げられ、例えば、1〜20質量部程度用いることができる。フェノール樹脂系架橋剤としては、アルキルフェノール樹脂の臭素化物や、塩化スズ、クロロプレン等のハロゲンドナーとアルキルフェノール樹脂とを含有する混合架橋系等が挙げられ、例えば、1〜20質量部程度用いることができる。ポリアミン系架橋剤としては、ヘキサメチレンジアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、メチレジアミンカルバメート、エチレジアミンカルバメート、N,N′−ジシンナミリデン−1,6−ヘキサンジアミン、脂環アミン塩、N−(1,3−ジメチルブチル)−N′−フェニル−p−フェニレンジアミン等が挙げられ、例えば、1〜12質量部程度用いることができる。その他の架橋剤としては、亜鉛華(5質量部程度)、酸化マグネシウム(4質量部程度)、リサージ(10〜20質量部程度)、p−キノンジオキシム、p−ジベンゾイルキノンジオキシム、テトラクロロ−p−ベンゾキノン、ポリ−p−ジニトロソベンゼン(2〜10質量部程度)、メチレンジアニリン(0.2〜10質量部程度)が挙げられる。
また、必要に応じて、架橋促進剤、架橋促進助剤を添加してもよい。架橋促進剤としては、アルデヒド・アンモニア系、グアニジン系、チアゾール系、スルフェンアミド系、チウラム系、ジチオ酸塩系、チオウレア系等の一般的な架橋促進剤を、例えば、0.5〜2質量部程度用いることができる。また、架橋促進助剤としては、一般的なゴム用架橋促進助剤を併せて用いることができ、例えば、ステアリン酸やオレイン酸およびこれらの亜鉛塩(2〜4質量部程度)等が使用できる。
特に好ましい架橋剤としては、亜鉛華、N−(1,3−ジメチルブチル)−N′−フェニル−p−フェニレンジアミンが挙げられ、特に好ましい架橋促進助剤としては、ステアリン酸が挙げられる。
疲労耐久性の観点からゴムの配合量は多い方がよく、ゴム(A)の体積分率は好ましくは55〜85%、より好ましくは63〜85%である。ここで、ゴム(A)の体積分率とは、ゴム(A)の体積と樹脂(B)の体積の合計に対するゴム(A)の体積の百分率をいう。ゴム(A)の体積分率が少なすぎると熱可塑性エラストマー組成物の弾性率が高いため疲労耐久性が悪くなり、多すぎると樹脂を連続相にした構造を得にくい。
本発明の製造方法により得られた熱可塑性エラストマー組成物は、空気入りタイヤを製造するのに使用することができる。特に、空気入りタイヤのインナーライナーを製造するのに好適に使用することができる。
本発明の製造方法により得られた熱可塑性エラストマー組成物は、T型ダイス付きの押出機や、インフレーション成形機などでフィルムとすることができる。
本発明の空気入りタイヤは、前記の製造方法で製造した熱可塑性エラストマー組成物を用いた空気入りタイヤである。より具体的には、前記熱可塑性エラストマー組成物のフィルムをインナーライナーに用いた空気入りタイヤである。タイヤを製造する方法としては、慣用の方法を用いることができる。たとえば、前記の製造方法で製造した熱可塑性エラストマー組成物を所定の幅と厚さのフィルム状に押し出し、それをインナーライナーとしてタイヤ成形用ドラム上に円筒に貼りつける。その上に未加硫ゴムからなるカーカス層、ベルト層、トレッド層等の通常のタイヤ製造に用いられる部材を順次貼り重ね、ドラムから抜き取ってグリーンタイヤとする。次いで、このグリーンタイヤを常法に従って加熱加硫することにより、所望の空気入りタイヤを製造することができる。
(1)原材料
以下の実施例において用いた原材料は、次のとおりである。
ゴム(A)として、次の2種類を用いた。
ハロゲン化イソオレフィンパラアルキルスチレン共重合ゴム: エクソンモービル・ケミカル社(ExxonMobil Chemical Company)製臭素化イソブチレンパラメチルスチレン共重合ゴムExxpro(登録商標)MDX89−4(以下「Br−IPMS」と略す。)
ポリイソブテン: BASF社製Oppanol(登録商標)B200(以下「PIB」と略す。)
樹脂(B)として、次の2種類を用いた。
ナイロン6/66: 宇部興産株式会社製「UBEナイロン」5013B(融点195℃)
ナイロン6: 宇部興産株式会社製「UBEナイロン」1013B(融点225℃)
架橋剤として、次の3種類を用いた。
亜鉛華: 正同化学工業株式会社製亜鉛華3号
ステアリン酸: 日油株式会社製ビーズステアリン酸
N−(1,3−ジメチルブチル)−N′−フェニル−p−フェニレンジアミン: フレキシス(Flexsys)社製サントフレックス(SANTOFLEX)6PPD(以下「6PPD」と略す。)
(2)熱可塑性エラストマー組成物の作製
ゴム(A)はゴムペレタイザー(森山製作所製)にて90℃でペレット状に加工して使用した。ゴム(A)と樹脂(B)の混練には、図1の模式図に示されるような混練ゾーンを3箇所設定した2軸混練機(日本製鋼所製TEX−44)を用いた。表1に示す配合比率のゴム(A)と樹脂(B)を2軸混練機のゴム・樹脂投入口に投入した。混練時間は約3分であった。
実施例2においては、混練ゾーンBのスクリューを練りのスクリューから送りのスクリューに変更した。実施例4についてはBr−lPMSおよびPIBをバンバリーミキサー(神戸製鋼製)にて110℃、2分混練した後、ゴムペレタイザーにてペレット状に加工し、使用した。
架橋剤は設定温度Tの混練ゾーンCの手前で投入し、ゴムを動的に架橋した。
作製した熱可塑性エラストマー組成物は2軸混練機よりストランド状に押出し、ペレット状にカットしたものを融点および粘度測定に用い、ストランドを分散粒子径測定に用いた。
(3)測定方法
[融点]
メトラートレド社製DSCを用い、昇温速度10℃/分で測定した。
[粘度]
東洋精機製作所製キャピログラフを用い、それぞれの実施例、比較例における設定温度T、剪断速度において、ゴム(A)の粘度ηおよび樹脂(B)の粘度ηを測定した。粘度比は、測定した粘度をη/ηの式に当てはめ、算出した。
[ゴム分散粒子径]
エスアイアイ・ナノテクノロジー株式会社の走査型プローブ顕微鏡(SPM)を用いてミクロ構造観察し、数平均粒子径を算出し、ゴム分散粒子径dとした。−20℃以下の低温疲労耐久性の観点から、1.5μm以下で良好、1.0μm以下であることが望ましい。
(4)測定結果
測定結果を表1に示す。
Figure 0005573033
本発明の製造方法(実施例1〜5)により得られた熱可塑性エラストマー組成物は、ゴム分散粒子径が充分に小さく、ゴムが微分散していることが分かる。混練ゾーンAの温度Tが樹脂融点よりも高い比較例1および2は、ゴム分散粒子径が大きく、ゴムが微分散していないことが分かる。混練ゾーンAの温度Tが樹脂融点よりも高く、混練ゾーンCの温度Tが樹脂融点よりも低い比較例3は、混練を開始してから15分経過後、樹脂圧オーバーで混練ができなくなった。
本発明の製造方法により得られる熱可塑性エラストマー組成物は、空気入りタイヤの製造に用いることができ、特に空気入りタイヤのインナーライナーの製造に好適に用いることができる。
1 2軸混練機
2 混練ゾーンA(最初の混練ゾーン)
3 混練ゾーンB
4 混練ゾーンC(最後の混練ゾーン)
5 ゴム・樹脂投入口
6 架橋剤投入口

Claims (11)

  1. ゴム(A)が分散相、樹脂(B)が連続相である熱可塑性エラストマー組成物の製造方法であって、樹脂(B)がポリアミド系樹脂であり、ゴム(A)と樹脂(B)を、まず、樹脂(B)の融点Tより低い温度Tで混練し、その後、ポリアミン系架橋剤および亜鉛華からなる群より選ばれる少なくとも1種の架橋剤を添加し、樹脂(B)の融点Tより高い温度Tで混練してゴム(A)を動的に架橋することを特徴とする熱可塑性エラストマー組成物の製造方法。
  2. 温度Tが樹脂(B)の融点Tより10〜100℃低いことを特徴とする請求項1に記載の熱可塑性エラストマー組成物の製造方法。
  3. 温度Tが樹脂(B)の融点Tより30〜70℃低いことを特徴とする請求項2に記載の熱可塑性エラストマー組成物の製造方法。
  4. ゴム(A)と樹脂(B)を2軸混練機で混練することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の熱可塑性エラストマー組成物の製造方法。
  5. 2軸混練機の前半の混練ゾーンをTに設定し、後半の混練ゾーンをTに設定することを特徴とする請求項4に記載の熱可塑性エラストマー組成物の製造方法。
  6. 2軸混練機の最初の混練ゾーンをT、最後の混練ゾーンをTに設定し、2軸混練機が最初の混練ゾーンと最後の混練ゾーンの間にTよりも高くTよりも低い温度に設定した混練ゾーンを1つ以上有することを特徴とする請求項4に記載の熱可塑性エラストマー組成物の製造方法。
  7. 温度Tにおけるゴム(A)の粘度ηに対する樹脂(B)の粘度ηの比(η/η)が0.01〜0.8であることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の熱可塑性エラストマー組成物の製造方法。
  8. ゴム(A)の体積分率が55〜85%であることを特徴とする請求項1〜のいずれか1項に記載の熱可塑性エラストマー組成物の製造方法。
  9. ゴム(A)の少なくとも50質量%以上がハロゲン化ブチルゴムまたは臭素化イソブチレンパラメチルスチレン共重合ゴムであることを特徴とする請求項1〜のいずれか1項に記載の熱可塑性エラストマー組成物の製造方法。
  10. 樹脂(B)がナイロン11、ナイロン12、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン46、ナイロン610、ナイロン6/12、ナイロン6/66、ナイロン6/66/12、および芳香族ナイロンからなる群から選択される少なくとも1種であることを特徴とする請求項1〜のいずれか1項に記載の熱可塑性エラストマー組成物の製造方法。
  11. 請求項1〜10のいずれか1項に記載の方法で製造した熱可塑性エラストマー組成物を用いた空気入りタイヤ。
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