JP5407437B2 - 電動車両の駆動制御装置 - Google Patents
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Description
また、従来の電動車両の駆動制御装置において、駆動輪スリップを検出すると、モータトルクを制限して駆動輪スリップを抑制する技術が、例えば、特許文献2や特許文献3により知られている。
すなわち、特許文献1に記載のように、クラッチの伝達トルク容量を制御する技術でトルクダウンを行なった場合、クラッチの応答性が低く、トルクダウンが間に合わず所望の駆動輪スリップ抑制性能を得ることができず、車両の安定性悪化やフィーリングの悪化を招く。
また、特許文献2,3に記載のように、モータトルクを制限する技術では、駆動源により駆動させる機器、あるいはハイブリッド車両などでは駆動源に含まれるエンジンなどが、正常に駆動するのに必要な最低回転数以下となった場合、正常駆動が難しくなる、作動不良や振動の発生などを招く。
これにより、駆動源には、駆動源側のトルク変動などが伝達されることなく、クラッチ伝達トルク容量分のトルクが安定して伝達され、車両挙動が安定した走行が可能であり、特に、低μ路などで有効である。
この場合、目標クラッチ下流回転数により処理が異なる。
すなわち、目標クラッチ下流回転数が、クラッチ上流最低回転数よりも高い場合は、クラッチ伝達トルク容量は、駆動輪に伝達したい容量に保持し、かつ、目標クラッチ上流回転数が前記目標クラッチ下流回転数に一致するようモータトルクを制御する。
また、路面μの変化にも、高い応答性で対応することができ。
このように、クラッチ上流回転数が、クラッチ上流最低回転数よりも高く保持され、クラッチ上流回転数が、クラッチ上流最低回転数よりも低下することにより、モータに連動する機器が不具合になるのを防止できる。
図1は実施例1の電動車両の駆動制御装置が適用された後輪駆動式のハイブリッド車両(ハイブリッド車両の一例)を示す全体システム図であり、この図に基づいて、駆動系および制御系の構成を説明する。
実施例1におけるFRハイブリッド車両の駆動系は、エンジンEngと、フライホイールFWと、モータジェネレータMGと、クラッチCLと、自動変速機ATと、プロペラシャフトPSと、ディファレンシャルDFと、左ドライブシャフトDSLと、右ドライブシャフトDSRと、駆動輪である左後輪RLおよび右後輪RRと、従動輪である左前輪FLおよび右前輪FRと、を備えている。
前記エンジンEngは、ガソリンエンジンやディーゼルエンジンであり、エンジンコントローラ1からのエンジン制御指令に基づいて、エンジン始動制御やエンジン停止制御やスロットルバルブのバルブ開度制御やフューエルカット制御等が行われる。なお、エンジン出力軸には、フライホイールFWが設けられている。
実施例1におけるFRハイブリッド車両の制御系は、図1に示すように、エンジンコントローラ1と、モータコントローラ(モータ駆動制御手段)2と、インバータ3と、バッテリ4と、ATコントローラ7と、クラッチ油圧ユニット8と、ブレーキコントローラ9と、統合コントローラ10と、を有して構成されている。なお、エンジンコントローラ1と、モータコントローラ2と、ATコントローラ7(クラッチ制御手段)と、ブレーキコントローラ9と、統合コントローラ(走行制御手段)10とは、情報交換が互いに可能なCAN通信線11を介して接続されている。
ドライバ要求駆動力演算部103は、アクセル開度APOと車速VSPとから目標駆動力tFo0を演算する。
一方、スリップ時制御演算部105は、駆動輪(左右後輪RL,RR)にスリップ判定値を越えるスリップが生じた時に、エンジントルク指令値、モータトルク指令値、クラッチ伝達トルク容量指令値を演算する。
通常制御演算部104は、エンジントルク指令値演算部104aとモータトルク指令値演算部104bとクラッチ伝達トルク容量指令値演算部104cとを備えている。
エンジントルク指令値演算部104aおよびモータトルク指令値演算部104bでは、ドライバ要求駆動力演算部103で得られた目標駆動力tFo0に基づいて、エンジントルク指令値tTeおよび目標モータトルク指令値tTmを演算し、これらに応じたエンジントルク指令およびモータトルク指令を出力する。
また、クラッチ伝達トルク容量指令値演算部104cでは、クラッチCLのクラッチ伝達トルク容量指令値tTcを演算する。このクラッチ伝達トルク容量指令値tTcは、目標駆動力tFo0を駆動輪に伝達可能に設定される。
スリップ時制御演算部105は、左右後輪RL,RRに駆動輪スリップが生じた場合に、これを抑制する処理を行なうもので、路面反力推定部105a、エンジントルク要求値演算部105b、目標車輪スリップ量演算部105c、目標モータ回転数演算部105d、モータトルク指令値演算部105e、クラッチ伝達トルク容量指令値演算部105fを備えている。
そして、クラッチ伝達トルク容量Tと車輪速の上昇速度とにより路面反力を推定する。
エンジントルク要求値=(推定路面反力÷ギア比)+発電要求トルク ・・・(1)
すなわち、路面反力が小さいのに大きなエンジントルクを出し続けると、駆動輪スリップを抑えるためにモータジェネレータMGが発電し続けてしまう。逆に、路面反力よりも小さいエンジントルクしか出力しないと、スリップ量をコントロールするためモータジェネレータMGがアシストし続け、放電し続けてしまう。そこで、このような現象でバッテリ充放電量SOCのバランスを崩さないようにするために、上記エンジントルク要求値を求める。
この目標車輪スリップ量は、図4に示すように、アクセル開度APOおよび車速VSPに応じ、最適の体感が得られる目標スリップ量があらかじめ設定されている。
すなわち、スリップ量が大きすぎると、路面との摩擦が小さくなり、駆動力が低下するとともに、車両挙動が不安定となる。また、必要以上の吹け上がり感は、体感上も好ましくない。
一方、スリップ量が小さすぎると、図外のアクセルペダルを踏込んでも、車両挙動変化が乏しく、例えば、運転者は、パワー不足と感じるなど、体感上好ましくない。また、深雪路などでは、駆動輪を空転させながら走行しないと走破が難しい。
このようなことから、図4に示す目標車輪スリップ量特性が、アクセル開度APOと車速VSPとに基づいて、マップあるいは演算式で設定されている。
目標クラッチ下流回転数=目標駆動輪回転数×減速比
=(目標駆動輪回転速度/タイヤ周長)×減速比
={(推定車体速度+目標車輪スリップ速度)/(タイヤ半径×2π)}×減速比 ・・(2)
また、目標モータ回転数演算部105dには、あらかじめクラッチ上流最低回転数が設定されており、下記のa)b)の条件に基づいて、目標モータ回転数を決定する。
a)目標クラッチ下流回転数≧クラッチ上流最低回転数
b)目標クラッチ下流回転数<クラッチ上流最低回転数
次に、クラッチ上流最低回転数について説明する。
このクラッチ上流最低回転数とは、クラッチCLのトルク伝達経路の上流に存在し、クラッチ上流回転数(クラッチ入力回転数)に連動して作動する機器の最低許容回転数の最も高い回転数に設定されている。
このクラッチ上流の回転数に連動して作動する機器は、例えば、エンジンEngや、図示を要略したオイルポンプおよび冷却ポンプや、モータジェネレータMGなどである。
エンジンEngでは、回転数がある回転数よりも低下すると停止してしまう。また、そのエンストが生じる回転数よりも僅かに上の回転数でも、振動が発生する。そこで、このようなエンスト直前の振動が生じる回転数、例えば、600rpm程度の回転数を最低許容回転数としている。
ここで、上記a)の条件が成立する場合、クラッチ伝達トルク容量=目標駆動力(=ドライバ要求駆動力)とする。
一方、上記b)の条件が成立する場合は、クラッチ下流回転数=目標クラッチ回転数となるようにクラッチ伝達トルク容量をフィードバック制御する。
ステップS1では、スリップ判定部101にて、駆動輪スリップが生じているか否か判定し、駆動輪スリップが生じていない場合はステップS2に進み、駆動輪スリップが生じている場合はステップS3以降の、駆動輪スリップ時制御を実行する。
ステップS4では、エンジントルク要求値演算部105bにて、エンジントルク要求値を演算し、ステップS5に進む。
ステップS5では、目標車輪スリップ量演算部105cにて、目標車輪スリップ量を演算し、ステップS6に進む。
ステップS6では、目標モータ回転数演算部105dにて、上述したように、推定車体速度+目標スリップ速度から目標駆動輪回転数を演算し、ステップS7に進む。
ステップS7では、さらに目標モータ回転数演算部105dにて、目標駆動輪回転数から目標クラッチ下流回転数を演算し、ステップS8に進む。
一方、ステップS10では、目標モータ回転数=クラッチ上流最低回転数とし、かつ、実クラッチ下流回転数=目標クラッチ下流回転数となるように、目標クラッチ伝達トルク容量をフィードバック制御する。
各タイムチャートは、(A)が、クラッチ伝達トルク容量のみの制御で駆動輪スリップを抑制する比較例の動作を示し、(B)が実施例1の動作を示す。
このため、路面反力(路面摩擦係数(以下、μという))の微妙な変化に対応できず、駆動輪スリップを抑えるのが難しい。
(A)の比較例では、上記と同様に、WSCモード制御により、クラッチCLは、回転数差を維持するように制御しており、一瞬の路面摩擦力変動があった場合に、クラッチ伝達トルク制御では、応答性が低く、一瞬の路面μ変化に応じてトルクを充分に伝達することが難しい。
なお、低車速では、クラッチ伝達トルクのみの制御でも、駆動輪スリップを充分に抑制できる。
以上説明したように、実施例1では、以下列挙する効果を得ることができる。
ア)本実施例1では、駆動輪スリップの発生時には、目標クラッチ下流回転数とクラッチ上流最低回転数との比較に基づき、クラッチ上流回転数がクラッチ上流最低回転数よりも高いときには、目標クラッチ伝達トルク容量=目標駆動力とした締結(ロックアップ)状態とし、目標モータ回転数=目標クラッチ下流回転数が得られるように、モータトルクを制御するようにした。
このような、モータトルクでは、クラッチ伝達トルク制御よりも、高応答性で制御でき、瞬時に大幅にモータトルクを低減させて、高い応答性で駆動輪スリップを抑制することができ、車両安定性を確保することができる。
イ)モータトルク制御では、上述のように、クラッチ伝達トルク制御よりも高応答性制御可能であるため、路面反力(路面μ)の微妙な変化に対応可能であり、駆動輪スリップの発生は抑えながらも、その範囲で最大限の駆動力を確保して、高い走行性能を得ることができる。
ウ)クラッチ下流回転数が、クラッチ上流最低回転数よりも低くなる低車速で走行した場合、モータ回転数は、クラッチ上流最低回転数に保持して、クラッチ伝達トルクのみで駆動輪スリップを抑制する。このため、モータジェネレータMGに連動するエンジンEngその他の機器が、最低限必要な回転数よりも低下することが無く、エンジン停止やポンプ類などの作動不良などが生じるのを抑制できる。
7 ATコントローラ(クラッチ制御手段)
10 統合コントローラ(走行制御手段)
12 エンジン回転数センサ
101 スリップ判定部(駆動輪スリップ判定手段)
104 通常制御演算部
105 スリップ時制御演算部
105c目標車輪スリップ量演算部(目標車輪スリップ量演算手段)
105d目標モータ回転数演算部(目標クラッチ下流回転数演算手段)
105eモータトルク指令値演算部
105fクラッチ伝達トルク容量指令値演算部
CL クラッチ
Eng エンジン(駆動源)
MG モータジェネレータ(モータ:駆動源)
RL 左後輪(駆動輪)
RR 右後輪(駆動輪)
Claims (1)
- 駆動輪に駆動力を与え、少なくともモータを含む駆動源と、
この駆動源と前記駆動輪との間に介在され、両者間の伝達トルク容量を変更可能なクラッチと、
このクラッチ伝達トルク容量を制御するクラッチ制御手段と、
前記モータの駆動を制御するモータ駆動制御手段と、
前記駆動輪にスリップが生じたか否かを判定する駆動輪スリップ判定手段と、
車両状態に応じて目標車輪スリップ量を演算する目標車輪スリップ量演算手段と、
前記目標車輪スリップ量に基づいて、目標クラッチ下流回転数を演算する目標クラッチ下流回転数演算手段と、
車両状態に応じ、前記クラッチ伝達トルク容量を、要求駆動力に応じた伝達トルク容量に制御し、かつ、前記クラッチの上流と下流とで、あらかじめ設定された回転数差が生じるように前記駆動源の出力トルクを制御するトルク容量制御を実行する走行制御手段と、
を備えた電動車両の駆動制御装置であって、
前記走行制御手段の前記トルク容量制御の実行時に、前記駆動輪スリップ判定手段が駆動輪スリップと判定したときには、前記目標クラッチ下流回転数が、あらかじめ設定されたクラッチ上流最低回転数よりも高い場合は、前記クラッチ制御手段は、前記伝達トルク容量に保持し、かつ、クラッチ上流回転数が前記目標クラッチ下流回転数に一致するよう前記モータの駆動を制御し、一方、前記目標クラッチ下流回転数が、前記クラッチ上流最低回転数よりも低い場合は、前記クラッチ上流回転数を、前記クラッチ上流最低回転数以上に保持するよう前記モータの駆動を制御し、かつ、前記クラッチ制御手段は、前記クラッチ下流回転数が前記目標クラッチ下流回転数に一致するよう前記クラッチ伝達トルク容量を制御する駆動輪スリップ時制御を実行することを特徴とする電動車両の駆動制御装置。
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