JP5477642B2 - 歯車形状測定装置 - Google Patents
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Description
このような加工の際には、加工工具の形状誤差や工作機械の動作誤差、歯車材料の保持位置の誤差、あるいは、加工環境の変化などにより、仕上げ後の歯車の形状に誤差が生じる場合がある。その場合には、歯厚誤差が生じたり、歯溝の振れが生じることとなり、歯車対でバックラッシュが生じたり、伝達効率が低下し、さらには歯車寿命が短くなるなどの不都合が生じる。よって、特に、要求精度の厳しい歯車については、仕上げ加工後に歯車形状の検査を行なうことが重要となる。
ここには、歯車の諸元が異なる種々の歯車を同一の計測装置で測定できるよう、一対の測定子を開閉自在に設け、複数の歯を一度に挟み込んで歯厚の測定を行なう技術が示されている。具体的には、稜線状に平行に形成された一対の測定子を、駆動装置によって互いに近接・離間可能に構成し、これら測定子を複数の歯を一度に挟むようにして歯に当接させる。これら測定子間の距離を測ることで、歯車の軸直角またぎ歯厚の測定値を得る。当該装置であれば、マスタギヤ等を準備せずとも多くの歯車形状の測定が可能であり、マスタギヤの段取替えの時間も不要となるなど、測定効率が高まるとされる(明細書中第23〜25段落、図1)。
また、当該装置では、2枚の歯の距離を測定して大よその歯厚の確認はできるものの、歯車の全体形状が所期の形状に仕上げられているかを測定することはできない。歯車が、モジュールの小さい歯車であったり、圧力角の小さい歯車等、歯数が多くなるものである場合には、上記測定は更に困難になる。
このように、上記従来の歯車形状測定装置では、歯車全体の形状を把握するには測定作業が非常に煩雑となるものであり、未だ改善の余地があった。
本構成の装置では、被検査歯車の測定に際して、被検査歯車の第1回転軸芯とゲージ歯車の第2回転軸芯とを平行な状態とする。双方の軸芯間距離は、例えばゲージ歯車の一つの歯の両面が被検査歯車の隣接する二つの歯に当接した状態で規定される。このとき、ゲージ歯車の当該接触している歯の両面と被検査歯車とは線接触する。双方の歯車の基本的な緒元は既知であるから、被検査歯車の歯厚のみを未知数として計算すれば歯厚を求めることができる。歯厚の測定は被検査歯車およびゲージ歯車の双方を停止させた状態でも測定可能である。しかしながら、被検査歯車の支持台への取付誤差などを考慮すると、被検査歯車を少なくとも一回転させて測定し、全周の平均値を取るのが望ましい。
この軸芯どうしの傾斜角度に応じた軸芯間距離の広がりは歯の形状に影響される。例えば、歯元から歯先までの厚み変化が少ない歯車は、同厚み変化が大きい歯車に比べて、軸芯間距離の広がり程度が大きくなる。つまり、被検査歯車の隣接する歯どうしの間隔をみたとき、歯元側から歯先側にかけて歯の間隔の広がり程度が小さい場合には、ゲージ歯車をある角度だけ傾斜させようとすると、より多く被検査歯車から遠ざける必要がある。
このように、双方の歯の回転軸芯どうしの角度を変更することで、双方の歯車の当接する歯の高さ位置が変更される。
以上のごとく、本発明の装置であれば、回転軸芯の傾斜角度とそのときの軸芯間距離とを合わせて評価することで、歯元から歯先に至る歯形を把握することができ、歯丈の各部における歯厚を測定することができる。
本装置に備えるゲージ歯車は、モジュール等が同じであれば、ある程度形状の異なる歯車の検査に用いることができる。ただし、被検査歯車の緒元等に基づいて被検査歯車の形状を算出していたのでは、検査工程が煩雑なものとなる。そこで、被検査歯車として基準となるマスター歯車を用いて予め検査測定を実施しておき、取得したデータを代表データとして記憶しておく。その後、実際の被検査歯車を測定し、前記代表データを比較することで、歯形形状を間単に検査することができる。
環境温度が変化し、双方の歯車の温度が変化すれば、夫々の歯車の直径が増減する。よって、本構成のごとく温度を測定することで、軸間距離測定部による測定距離を補正することができ、双方の歯車の歯厚測定精度を高めることができる。
完成した歯車には、仕上げ加工が施されているとはいえ各種の形状誤差が含まれる。当該誤差には、例えば、工具であるカッターの歯厚誤差に基づくものや、カッターの磨耗、カッターヘッドとワークテーブルとの熱変位、加工時の負荷による工具・治具などの各部の撓み、被加工歯車の加工時の温度上昇による膨張、多口カッターで加工したことによる歯厚の周期的誤差に基づく誤差等が含まれる。特に精度を求められる歯車については、正確な加工が求められるうえ製作後の検査が重要である。本発明は、被検査歯車1を簡単且つ正確に検査できる歯車形状測定装置に関するものである。以下、本発明の装置を図面に基づいて説明する。
本構成であれは、基端側軸支部9bの回転軸芯が、常に、第1回転軸芯X1と第2回転軸芯X2とに対して直角姿勢を保つことができる。よって、ゲージ歯車2の傾斜角度を変更した場合に、被検査歯車1とゲージ歯車2との当接位置が変化せず、両歯車間の角度変化を最も円滑に行なうことができる。さらに、軸間角度設定部9が被検査歯車1に対して近接離間するとき、その近接方向が第1回転軸芯X1と第2回転軸芯X2とに対して直角であるから、軸間距離測定部17による測定結果がそのまま両回転軸芯間の距離となり、その後の演算が非常に簡便なものとなる。
尚、検査する被検査歯車1の歯形によっては、当該押し付け力は極めて微力に設定する場合もある。よって、上記コイルバネの他、板バネ、磁力による吸引・反発を用いるものなど、各種の付勢手段を用いることができる。
尚、この部位の測定値は極めて微小であるため、この他に、接触式リニアゲージや、後述する光を用いた非接触式の距離測定手段を用いるものであっても良い。
ゲージ歯車2の一つずつの歯の形状は、例えば、周方向に沿う円筒面で一つの歯を切断したとき、断面が矩形状になるものを用いることができる。この場合、当該ゲージ歯車2を、同様の断面形状を有する被検査歯車1に対して傾斜させつつ当接させると、傾斜角度の変化に対して双方の軸芯間距離を大きく変動させることができる。その結果、計測精度が高上する。被検査歯車1とゲージ歯車2とは、両回転軸芯X1,X2が互いに平行なときに最も接近することができる。しかし、回転軸芯どうしを傾斜させると、両歯車の歯は深く噛合することができず、回転軸芯間距離が長くなる。この状態は、例えば図2に示すごとく、ゲージ歯車2の一つの歯が、その表面と裏面とにおいて対向する被検査歯車1の二つの歯に夫々当接した状態である。ゲージ歯車2上の点の一つは、ゲージ歯車2の回転方向前面の歯底近傍の一点P1であって、幅方向の一端側にある点である。この箇所は、被検査歯車1の一つの歯の歯先近傍の一点と当接する。ゲージ歯車2上の他のもう一点P2は、ゲージ歯車2の回転方向後面の歯先近傍の一点である。この位置は、幅方向において前記一端側とは反対側の端にある。この点が、被検査歯車1の対向する歯面のうち歯底近傍の一点に当接する。
ただし、この場合、双方の歯車どうしの当接は円滑なものとはならない。双方の歯どうしが断続的に当接するため、計測に際しては回転軸芯間距離の計測値は細かく増減を伴ったものになる可能性がある。
双方の歯を円滑に当接させるには、例えば、ゲージ歯車として「はすば歯車」を用いると良い。この歯車は、歯の方向が円周方向に対して傾斜している。よって、各歯の先端部の形状は螺旋状であり、歯車の外周面上に沿って湾曲している。このような歯車をゲージ歯車2として用い、単純な平歯車形状を有する被検査歯車1に使用すると、被検査歯車1の二枚の隣接する歯に対して、その歯幅中央位置においてはゲージ歯車2の歯は十分に係合し、被検査歯車1の歯幅両端部においては、ゲージ歯車2は浅く係合する。尚、はすば歯車を用いる場合、双方の歯車の歯溝方向を合わせるため、ゲージ歯車2の第2回転軸芯X2は当初より大きく傾斜させておく。
この場合には、ゲージ歯車2の歯は被検査歯車1の歯に対して大きく摺動しながら歯溝方向に移動する。この結果、両歯車の回転は非常に滑らかなものとなり、双方の歯の噛み合い率も高めることができる。そのため、波動歯車に多く用いられるインボリュート歯形部分が少ない歯車に対しても、傾斜角度の調整と適切なゲージ歯車の選択とにより噛合い率を高めることができ、計測が可能となる。
本装置を用いた計測の手順を図3乃至図5に基づいて説明する。
図3は、計測の手順を示すフローチャートである。図4は、本装置を用いて被検査歯車1の形状を測定した場合の取得データの一例である。図5は、図4で得たデータを処理した後の処理後データの一例である。
この第1平滑化曲線L1は回転角度にして数十度周期のうねりを伴いながら全体としては正弦波に類似した形を有する。そこで、さらに第1平滑化曲線L1をより正弦波に近付けるべく2回目のフィルタ処理を行なう。これにより第2平滑化曲線L2(図4中の破線)が得られる。
曲線L2’の作成に伴い、第1平滑化曲線L1を曲線L2’に倣わせて補正後第1平滑化曲線L1’(図5中の波状の実線)を得る。当該曲線L1’と曲線L2’との縦軸に沿った差は、図4における曲線L1と曲線L2との差と同じである。図5に、このような曲線L1’およびL2’を上記三種類の各傾斜角度について求めたものを重ねて記載する。
被検査歯車の歯形形状を評価するには、一枚毎の歯の厚みや、隣接する歯どうしの歯厚のバラつき等、各種の要素につき行なう必要がある。
歯厚評価(図3、♯08)は、被検査歯車1の第1回転軸芯X1とゲージ歯車2の第2回転軸芯X2との軸芯間距離が、マスター歯車を用いて予め計測し記憶している既知のデータに対してどれだけの偏差を有するか否か等に注目して行なう。
上記軸芯間距離は、例えばゲージ歯車2の一つの歯の両面が被検査歯車1の隣接する二つの歯に当接した状態で規定される。このとき、ゲージ歯車2の当該接触している歯の両面と被検査歯車1とが線接触する。双方の歯車の基本的な緒元は既知であるから、被検査歯車1の歯厚のみを未知数として計算すれば歯厚が求められる。
歯厚の測定は被検査歯車1およびゲージ歯車2の双方を停止させた状態でも測定可能である。しかしながら、支持台3への被検査歯車1の取付誤差などを考慮すると、被検査歯車1を少なくとも一回転させて測定し、全周の平均値を取るのが望ましい。
よって、D2の値が、予め記憶している第2閾値を超えているか否かによって歯厚のバラつきを評価する。このような評価を傾斜角度+0.5度、+1.0度のものにつき行う。
仮に、被検査歯車がマスター歯車どおりの形状に仕上げられていれば、当該変化幅の基準値Dsに比べてD3はそれほど差がないはずである。このDsについても許容範囲を規定した第3閾値を有している。
尚、上記D1の評価で、各傾斜角度における歯厚検査は実質的に終了している。よって、当該Dsに係る評価は補助的に行なうものであっても良い。この評価を行なう場合には、傾斜角度+0.5度のグラフと+1.0度のグラフとの間隔についても評価するのが好ましい。
例えば、図5の傾斜角度0度のグラフに着目する。曲線L1’は、回転角度が0度から360度に移行するに連れて増減を繰り返している。これは、ある回転角度では歯厚が厚くなり、他の回転角度では歯厚が薄くなっていることを意味する。つまり、歯車の周方向に沿って歯厚のバラつきが存在することがわかる。歯厚のバラつきは、例えば、使用する切削機械やカッター等の特性を反映するものである。よって、このようなバラつきの周期等を検証することで歯厚誤差の発生原因を特定し易くなる。
以上のごとく、本構成の歯車形状測定装置を用いることで、被検査歯車の形状を効率的且つ正確に評価することができる。
(1)被検査歯車1とゲージ歯車2とを押圧するには、上記付勢部材15の使用に代えて重力式の構成を採用することもできる。
例えば、被検査歯車1の第1回転軸芯X1とゲージ歯車2の第2回転軸芯X2とを、ゲージ歯車2が上方に位置する状態に傾斜させて設けてもよい。これにより、ゲージ歯車2を被検査歯車1の側に押し付けることができる。尚、押付力は、装置の傾斜角度を変更することで調節できる。
また、別の構成として、第1回転軸芯X1および第2回転軸芯X2を共に水平方向に延出させ、被検査歯車1に対してゲージ歯車2を上方から載置する構成としても良い。被検査歯車1に対してゲージ歯車2の位置を適宜公転移動させることで、両歯車どうしの押付け力を調節することができる。
2 ゲージ歯車
3 支持台
9 軸間角度設定部
9a 歯車軸支部
9b 基端側軸支部
15 付勢部材
17 軸間距離測定部
18 温度計測部
19 計測データ処理部
X1 第1回転軸芯
X2 第2回転軸芯
Claims (3)
- 第1回転軸芯の周りに被検査歯車を回転駆動可能に支持する支持台と、
前記被検査歯車に係合しつつ第2回転軸芯の周りで回転可能なゲージ歯車と、
前記第1回転軸芯に対する前記第2回転軸芯の相対傾斜角度を調節設定し、且つ、前記第1回転軸芯に対する前記第2回転軸芯の距離を変更可能な軸間角度設定部と、
前記被検査歯車に対して前記ゲージ歯車を付勢する付勢部材と、
前記第1回転軸芯と前記第2回転軸芯との距離を測定する軸間距離測定部と、
測定したデータを演算処理する計測データ処理部とを備え、
前記軸間角度設定部が、前記ゲージ歯車を前記第2回転軸芯の周りで回転可能に保持する歯車軸支部と、当該歯車軸支部を装置本体に対して回転軸芯の周りで回転自在に保持する基端側軸支部とを備えて構成され、当該基端側軸支部の前記回転軸芯が前記第2回転軸芯のうち前記ゲージ歯車の歯幅中央位置における位置と直交する姿勢に設定され、この回転軸芯を中心にして前記第1回転軸芯に対する前記第2回転軸芯の相対傾斜角度が調節可能となる歯車形状測定装置。 - 前記計測データ処理部は、前記被検査歯車の目標形状を有するマスター歯車に対して予めゲージ歯車を用いて測定して得た基準データを備えており、当該基準データと測定データとの偏差を求めるように構成してある請求項1に記載の歯車形状測定装置。
- 前記被検査歯車および前記ゲージ歯車の温度を測定する温度計測部を備えると共に、当該温度計測部からの出力に基づいて前記軸間距離測定部による測定距離を補正するように構成してある請求項1又は2に記載の歯車形状測定装置。
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