以下、添付図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。図1に示すように、本発明の第1実施形態に係る走行支援装置は、車両制御装置1aとしてエンジン2及びモータ3を搭載してエンジン2又はモータ3の駆動により走行可能なハイブリッド車両に設置されている。モータ3は、バッテリ5から電力供給を受けて駆動する電動機であり、減速機6を介して駆動輪7に機械的に接続され、駆動輪7に駆動力を伝達する。エンジン2は、動力分配機構8及び減速機6を介して駆動輪7に機械的に接続され、駆動輪7に駆動力を伝達する。動力分配機構8としては、例えば遊星歯車機構が用いられる。
動力分配機構8には、ジェネレータ9が接続されている。ジェネレータ9は、エンジン2又は駆動輪7の駆動力を受けて発電する。ジェネレータ9及びモータ3は、インバータ10を介してバッテリ5に対し電気的に接続されている。ジェネレータ9により発電された交流電力は、インバータ10により直流変換されてバッテリ5に充電される。このとき、バッテリ5は、ジェネレータ9が発電した電力を蓄電する。バッテリ5の直流電力は、インバータ10により交流変換されてモータ3に供給され、その交流電力の供給によりモータ3が駆動する。
車両制御装置1aには、エンジンECU20、ハイブリッドECU30及びモータECU40が設けられている。エンジンECU20は、ハイブリッドECU30からの駆動要求に従い、エンジン2のスロットル開度指令信号を出力する制御器である。モータECU40は、ハイブリッドECU30からの駆動要求に従い、インバータ10を通じてモータ3の駆動信号を出力する制御器であり、インバータ10と接続されている。
ハイブリッドECU30は、車速センサ71により検出された車速、アクセル開度センサ72により検出されたアクセル開度(アクセルペダルの踏量)などから必要なエンジン出力、モータトルクなどを演算し、エンジンECU20、モータECU40に駆動要求信号を出力し、エンジン2及びモータ3の駆動を制御する制御器である。ハイブリッドECU30は、ハイブリッド車両が、エンジン効率の悪い低負荷領域(特に発進時や極低速時)には、エンジン2を始動せずにモータ3のみで車両の駆動を行う(EV走行)。ハイブリッドECU30は、車速がエンジン効率が良くなる高速度領域に達したら大きなトルクを出力することができるエンジン2を始動し、モータ3を停止する(エンジン走行)。また、加速時や登坂時等に大きな出力が必要なときは、エンジン2及びモータ3を同時に駆動し、所望の出力を取得する(ハイブリッド走行)。
また、ハイブリッドECU30は、バッテリ5の充電量、即ちSOC(State of Charge)値について所定の目標値である目標バッテリ残量を設定し、設定した所定の目標バッテリ残量に保つように制御する制御器として機能する。例えば、バッテリ5のSOC値を検出し、そのSOC値が設定した目標バッテリ残量となるように適宜エンジン出力を調整して発電を行い、SOC値を制御する。
さらに、ハイブリッドECU30は、後述するように燃費の観点からドライバーの運転操作を評価する。ハイブリッドECU30は、ドライバーの運転操作の評価に基づき、ドライバーの運転操作の誘導による走行支援の内容を選択する。また、ハイブリッドECU30は、ドライバーの運転操作の評価に基づき、ドライバーの運転操作に介入し、ドライバーの運転操作によらずにハイブリッド車両の走行制御を行なう。
なお、図1では、エンジンECU20、ハイブリッドECU30、モータECU40がそれぞれ別体に設けられているが、これらの全部又は一部が一体に構成されていてもよい。
車両には、EV(Electric Vehicle)走行スイッチ51が設置されている。EV走行スイッチ51は、車両の運転者の意思により電動機走行を可能とするスイッチである。このEV走行スイッチ51が運転者によりオンされることにより、車両がEV走行モードとなり、モータ3の駆動によるEV走行が可能となる。すなわち、EV走行スイッチ51のオンにより、車両が強制的にEV走行モード(モータ3のみの駆動力により走行するモード)となる。これにより、通常ではエンジン2が作動すべき状態であっても、強制的にエンジン2が停止され、それと同時にモータ3が駆動して車両走行が行われる。
車両には、充電スイッチ52が設置されている。充電スイッチ52は、車両の運転者の意思によりバッテリ5の目標充電量を高く設定してバッテリ5の蓄電量を増加させるスイッチである。この充電スイッチ52が運転者によりオンされることにより、車両が充電モードとなり、ハイブリッドECU30に記憶される目標充電量が増加され、適宜エンジン出力が調整されジェネレータ9の発電によりバッテリ5のSOC値が通常時より増加した値とされる。
インバータ10とバッテリ5を接続する配線の途中には、電流センサ53が設けられている。電流センサ53は、インバータ10、バッテリ5間に流れる電流量を検出する。電流センサ53の出力信号に基づいて、バッテリ5のSOC値が算出される。また、バッテリ5は、ハイブリッドECU30に接続されており、その蓄電電圧はハイブリッドECU30に入力されている。この電圧値は、SOC値の算出において補正値として用いられる。
車両には、表示部61が設けられている。表示部61は、LCD(liquidcrystal display:液晶表示器)などの表示機器や音声スピーカにより構成される。表示部61には、ハイブリッドECU30により評価されたドライバーの運転操作の評価の内容が映像や音声により表示される。また、表示部61には、ハイブリッドECU30が選択したドライバーの運転操作を誘導するためのアドバイスが映像や音声により表示される。
また、表示部61は、充電モード、EV走行モード及びハイブリッド走行モードを表示し運転者に車両状態を知らせる。この表示部61は、例えば充電モード表示用ランプ、EV走行モード表示用ランプ及びハイブリッド走行モード表示用ランプなどが用いられ、運転者が視認しやすいようにインストルメントパネルに設置される。充電モード表示用ランプは、充電モード時の充電中のときに点滅表示され、充電モード時の充電完了のときに点灯表示とされ、充電モード時以外のときには消灯される。EV走行モード表示用ランプは、EV走行モード時に点灯表示され、EV走行モード以外のときには消灯される。ハイブリッド走行モード表示用ランプは、ハイブリッド走行モード時に点灯表示され、ハイブリッド走行モード以外のときには消灯される。
車両には、支援制御装置62が設けられている。支援制御装置62は、電子スロットル及びバイワイヤアクチュエータ等から構成され、ハイブリッドECU30からの指令信号に従ってドライバーの操作によらずに車両のスロットル、ブレーキ及びステアリング等を制御する。支援制御装置62は、ハイブリッドECU30からの指令信号に従ってドライバーの操作によらずにエンジン2及びモータ3それぞれの動作を制御する。支援制御装置62は、ハイブリッドECU30からの指令信号に従い、アクセルペダル、ブレーキペダル及びステアリングホイール等に所定の反力を与えてドライバーの運転操作を誘導する反力アクチュエータから構成されていても良い。
以下、本実施形態の車両制御装置1aの動作について説明する。まず、本実施形態の車両制御装置1aの動作の概略について説明する。図2に示すように、車両制御装置1aは、燃費悪化要因の検出を実施する(S1)。この燃費悪化要因として、本実施形態では、無駄なエンジン始動加速、無駄なエンジン停止及び過剰なEV走行による加速の3要因について検出する。次に車両制御装置1aは、燃費の観点からドライバーの運転操作の傾向について推定する(S2)。ドライバーの運転操作の傾向として、本実施形態では、ドライバーの運転操作における上記の燃費悪化要因それぞれの頻度と、燃費悪化要因それぞれの燃費悪化への寄与度とを推定する。最後に車両制御装置1aは、ドライバーへのアドバイス等による走行支援を行なう(S3)。本実施形態では、走行支援としてドライバーへのアドバイスを提示することにより行なう。また、本実施形態では、走行支援として、ドライバーの運転操作に介入し、ドライバーの運転操作によらずに走行制御を行なうことにより行なう。ドライバーの運転操作によらずに走行制御を行なう場合、車両制御装置1aは、車両制御における車両特性をドライバーの運転操作の傾向へ適応させる。
以下、燃費悪化要因を検出する動作について詳述する。この動作では、加速中にEV走行及びハイブリッド走行で消費したエネルギーの積分量を計算し、計算されたエネルギーの積分量と各閾値とを比較することで、ドライバーの行なった各運転操作が燃費悪化に寄与するものか否かを判定する。
図3に示すように、車両制御装置1aのハイブリッドECU30は、車速センサ71及びアクセル開度センサ71により、車両が加速中であるか否か、すなわち、車両の駆動力>0であるか否かについて判定する(S101)。車両が加速中である場合(S101)、ハイブリッドECU30は、加速中にエンジン2が始動されるか否か判定する(S102)。本実施形態では、ドライバーがアクセルペダルを踏んで車両が加速される際に、アクセル開度センサ72が検出したアクセル開度に基づく車両への要求駆動力が、SOC等で変更される要求駆動力閾値を超えた場合に、ハイブリッドECU30がエンジンECU20に対して駆動要求を発し、エンジンECU20がエンジン2を始動する。
加速中にエンジン2が始動された場合は(S102)、ハイブリッドECU30は、エンジン2を使ったハイブリッド走行による加速の消費エネルギーを計算する(S103)。なお、本実施形態において、EV走行及びハイブリッド走行時の消費エネルギーの計算は、図4に示すように、アクセル開度センサ72が検出したアクセル開度から算出される車両の駆動力を時間により積分し、ハイブリッド走行領域RHVあるいはEV走行領域REVの面積を算出することにより算出することができる。
ハイブリッド走行により消費されたエネルギーは、図5に示すようなエンジン2が動作している時間中の消費エネルギーを算出することにより求められる。また、EV走行及びハイブリッド走行時の消費エネルギーの計算は、エンジン2の燃料消費量やバッテリ5のSOCの減少量から算出することができる。あるいは、EV走行及びハイブリッド走行時の消費エネルギーの計算は、車両の諸元とアクセル開度等の数値から算出しても良い。
エンジン2が停止された場合(S104)、ハイブリッドECU30は、このエンジン2を始動させたハイブリッド走行による加速が無駄であったか否かを判定する(S105)。ハイブリッドECU30は、ハイブリッド走行による加速が無駄であったか否かの判定について、以下のパラメータを用いる。
A:ハイブリッド走行による加速の消費エネルギー〔J〕
B:エンジン2を始動させるために消費したエネルギー〔J〕
C:エンジン始動が無駄か否かを判定する閾値〔J〕
ハイブリッドECU30は、ハイブリッド走行による加速の消費エネルギーA+エンジン2を始動させるために消費したエネルギーB<エンジン始動が無駄か否かを判定する閾値Cのときは、無駄なエンジン始動であったと判定する(S106)。一方、ハイブリッドECU30は、ハイブリッド走行による加速の消費エネルギーA+エンジン2を始動させるために消費したエネルギーB≧エンジン始動が無駄か否かを判定する閾値Cのときは、無駄の無いエンジン始動であったと判定する(S107)。
例えば、比較的大型の車両であると、ハイブリッド走行による加速の単位距離当りの消費エネルギーAに対して、エンジン2を始動させるために消費するエネルギーBは比較的に多い。つまり、図4及び5に示すようなエンジン2が動作している時間における消費エネルギーが少ない、短い加速でエンジン2が始動されると、その内の多くの部分が始動に要していることになるため、このような短い加速でエンジン2の始動が繰り返されると大幅に燃費が悪化する。そのため、本実施形態では、このような無駄なエンジン始動を燃費悪化要因として検出する。
ここで、エンジン2を始動させるために消費したエネルギーBについては、車両の諸元から推定される固定値とすることができる。また、エンジン2を始動させるために損失したSOC量及び燃料噴射量と、通常のハイブリッド走行時に消費されるSOC量と燃料噴射量との差分を求めることにより、エンジン2を始動させるために消費したエネルギーBを求めることができる。
ここで、閾値Cについては、例えば、固定値とすることができる。また、図6に示すように、閾値Cについては、SOC等の車両状態に応じて変更することができる。図6に示すよう、SOC基準値近傍のSOC許容範囲に比べてSOCが枯渇しているなら、閾値Cを低めに設定してエンジン2を用いて加速した方が良いこととできる。また、SOC基準値近傍のSOC許容範囲に比べてSOCが過剰であるなら、閾値Cを高めに設定してモータ3のみでEV走行により加速した方が良いこととできる。
図3及び7に示すように、ハイブリッドECU30は、エンジン2の停止時間を計測する(S108)。エンジン2が再始動された場合(S109)、エンジン2の停止時間Dと無駄なエンジン停止を判定するための再始動時間閾値Eとについて、D<Eの場合(S110)、ハイブリッドECU30は、無駄なエンジン停止であると判定する(S111)。一方、D≧Eの場合、ハイブリッドECU30は無駄の無いエンジン停止であったと判定する(S107)。再始動時間閾値Eは、その停止時間だけ停止させずにアイドリング状態でエンジンを回し続けていた場合の燃料噴射量や摩擦損失量から算出されるアイドリング状態での消費エネルギーと、エンジンの再始動に必要なエネルギーとから求めることが出来る。
例えば、比較的大型の車両であると、アイドリング及びエンジンの再始動にかなりのエネルギーが消費される。この場合、アイドリング状態での消費エネルギーがエンジンの再始動の消費エネルギー以上となる時間を再始動時間閾値Eとすることができる。このような車両では、エンジンが停止された後に再始動時間閾値E未満の間にエンジンが再始動されると、その間のアイドリングによる消費エネルギーよりも再始動に要するエネルギーの方が多くなり、再始動に要するエネルギーが無駄となってしまう。そのため、本実施形態では、このような無駄なエンジン停止を燃費悪化要因として検出する。
加速中にエンジン2が始動されなかったときは(S103)、ハイブリッドECU30は、EV走行による加速中に消費したエネルギーを計算する(S112)。ハイブリッドECU30は、EV走行による消費エネルギーFと、過剰なEV加速か否かを判定する閾値Gとを比較する(S113)。EV走行による消費エネルギーF>閾値Gであるときは、ハイブリッドECU30は過剰なEV走行による加速であると判定する(S114)。EV走行による消費エネルギーF≦閾値Gであるときは、ハイブリッドECU30は妥当なEV走行による加速であると判定する(S107)。
なお、閾値Gについては、S105における閾値Cと同様に固定値とすることができる。また、図6に示すように、閾値Gについては、SOC等の車両状態に応じて変更することができる。図6に示すよう、SOC基準値近傍のSOC許容範囲に比べてSOCが枯渇しているなら、閾値Gを低めに設定して少しのEV走行による加速も過剰でありエンジン2を用いて加速した方が良いこととできる。また、SOC基準値近傍のSOC許容範囲に比べてSOCが過剰であるなら、閾値Gを高めに設定してモータ3のみでEV走行により加速した方が良いこととできる。
例えば、比較的大型の車両であると、車重も重く、モータの消費電力量も大きく、少しのEV走行による加速でも多くのSOCを消費する。その結果、SOCが枯渇してしまうと、停止中でもエンジンを始動させる必要が生じる。この場合、極めて効率の悪い強制充電が必要となり、燃費が大幅に悪化する。そのため、過剰なEV走行によってSOCが枯渇した状態に陥ることを防ぐために、本実施形態では、このような過剰なEV走行による加速を燃費悪化要因として検出する。
以下、ドライバーの運転傾向を推定する動作について詳述する。この動作では、上述した燃費悪化要因の頻度や、燃費悪化に対する寄与度に基づいてドライバーの運転傾向を推定し、ドライバーへの走行支援の方法を決定する。例えば、車両制御装置10aのハイブリッドECU30は、上述した燃費悪化要因それぞれの頻度や、燃費悪化要因それぞれの燃費悪化への寄与度を計算する。
燃費悪化要因それぞれの頻度は、例えば、燃費悪化要因それぞれの単位距離当りの回数等で頻度を算出される。ハイブリッドECU30は、頻度の高い燃費悪化要因からドライバーの運転傾向を推定する。また、燃費悪化要因の単純な頻度だけではなく、燃費悪化要因それぞれの燃費悪化への寄与度として、燃費悪化要因それぞれの中で各閾値との差分等の燃費悪化で失われたエネルギー量が算出される。ハイブリッドECU30は、燃費悪化要因それぞれを比較して寄与度の高い燃費悪化要因からドライバーの運転傾向を推定する。
以下、ドライバーへのアドバイス等による走行支援を行なう動作について詳述する。この動作では、上述したドライバーの運転傾向に対して適切なアドバイスや走行制御を行なうことで燃費を向上させる。検出された燃費悪化要因に対して直接にアドバイスや走行制御を行なっても良いが、ドライバーの運転傾向を推定することで、より精度の高い走行支援が可能となる。例えば、無駄なエンジン始動による加速、過剰なEV走行による加速及び無駄なエンジン停止の順に燃費悪化への寄与度が高い場合は、ハイブリッドECU30は、この順番でドライバーへのアドバイスや走行制御を行なう。
ハイブリッドECU30は、表示部61を用いて、図8に示すようなアドバイスをドライバーに与えることができる。また、ハイブリッドECU30は、ドライバーの運転操作の傾向に合わせて、ドライバーの運転操作によらずに支援制御出力装置62により走行制御を行なう。この場合、ハイブリッドECU30は、車両制御における車両特性をドライバーの運転操作の傾向へ適応させる。
図9に示すように、本実施形態では、アクセル開度に対する車両の駆動力は、特性C1に示すように、アクセル開度に比例して車両の駆動力も増加し、車両の駆動力が所定のエンジン始動閾値を超える場合には、エンジン2が始動され、EV走行からハイブリッド走行へと移行するように設定されている。しかし、推定されたドライバーの運転操作の傾向から、無駄なエンジン始動が多いドライバーに対しては、ハイブリッドECU30は、特性C2に示すように、同じアクセル開度でもエンジン2が始動されにくいように特性を変更する。一方、推定されたドライバーの運転操作の傾向から、過剰なEV走行による加速が多いドライバーに対しては、ハイブリッドECU30は、特性C3に示すように、同じアクセル開度でもエンジン2が始動され易いように特性を変更する。
ハイブリッド車両において、燃費を向上させるためには、エンジンを始動させたハイブリッド走行が必要なのか、EV走行が適切なのかという使い分けを行なう必要がある。また、このようなハイブリッド走行とEV走行との使い分けについて、ドライバーが適切に判断したり、車両側のシステムからドライバーに支援をする必要がある。
エンジン2を始動して安定して動作させるまでには、燃費悪化に寄与する水準で燃料及びSOCが消費される。また、SOCを消費してEV走行を行なうと、その消費したSOCをどこかでエンジン2の駆動力により発電して充電する必要がある。もし、車両停止中にエンジン2が始動され、発電のためだけに燃料が使われる強制的な充電では、大きな燃費悪化となる。そのため、エンジンが始動されるハイブリッド走行による加速と、EV走行による加速とには、トレードオフポイントが存在し、これらを考慮して、加速方法を適切にドライバーにアドバイスしたり、車両自体で走行制御を行なう必要がある。
本実施形態では、モータ3の駆動力のみで走行するEV走行と、モータ3とエンジン2との駆動力で走行するハイブリッド走行とを切り換え可能なハイブリッド車両において、ハイブリッドECU30は、ハイブリッド車両の加速時におけるEV走行及びハイブリッド走行それぞれの消費エネルギーの大きさに基づいてハイブリッド車両のドライバーの運転操作の評価を行なう。このため、モータの駆動力によるEV走行における加速区間と、モータ3とエンジン2との駆動力で走行するハイブリッド走行における加速区間とを分けて、別々に燃費の観点からドライバーの運転操作の評価を行なうことができる。このため、ドライバーの運転操作によるEV走行及びハイブリッド走行のいずれが妥当な駆動方式であったのかを燃費の観点からより適切に評価することが可能となる。
また、本実施形態では、表示部61及び支援制御出力装置62が、ハイブリッドECU30によるドライバーの運転操作の評価に基づいて、ドライバーの運転操作の誘導及びドライバーの運転操作によらないハイブリッド車両の走行制御による走行支援を行なうため、燃費の観点からEV走行及びハイブリッド走行のいずれか妥当な駆動方式によって、より適切な走行支援を行なうことができる。
また、本実施形態では、ハイブリッド車両の加速時においてEV走行中にエンジン2が始動されてハイブリッド走行が行なわれたときに、ハイブリッド走行による加速で消費した消費エネルギーAと、エンジン2の始動で消費した消費エネルギーBとの和が所定の閾値C未満であるときは、ハイブリッドECU30は、ドライバーの運転操作に燃費悪化の要因があると評価する。ハイブリッド走行による加速で消費した消費エネルギーAと、エンジン2の始動で消費した消費エネルギーBとの和が所定の閾値C未満であるときは、加速で消費した総消費エネルギーが少ない割にはエンジン2の始動での消費エネルギーが多く、無駄なエンジン始動であったと推定することができる。そのため、このような場合に、ハイブリッドECU30がドライバーの運転操作に燃費悪化の要因があると評価することにより、無駄なエンジン始動による燃費悪化を分析することが可能となる。
つまり、エンジン2の始動及び停止というパワートレインの非線形特性があるため、エンジン始動による加速が無駄になるという燃費悪化要因に対して、本実施形態では、加速時のエネルギー積分量とエンジン始動という状態遷移が起きたかどうかで、そのエンジン始動による加速が燃費悪化に寄与しているか否かを定量的に判定する。
さらに、本実施形態では、ハイブリッドECU30がドライバーの運転操作に燃費悪化の要因があると評価したときは、無駄なエンジン始動であったと推定することができるため、表示部61及び支援制御出力装置62は、エンジン2がより始動されにくくなるように走行支援を行なう。これにより、無駄なエンジン始動を低減して燃費を向上させることが可能となる。つまり、EV走行とハイブリッド走行との変化点をよく超えるドライバーか否かに応じて、走行支援の応答を変えることができる。
また、本実施形態では、エンジン2が始動されてハイブリッド走行が行なわれた後にエンジン2が停止されエンジン2が再び始動されたときに、エンジン2が停止されていた時間が所定の閾値未満であるときは、ハイブリッドECU30は、ドライバーの運転操作に燃費悪化の要因があると評価する。エンジン2が停止されていた時間Dが所定の閾値E未満であるときは、エンジン2を停止させないアイドリングによる消費エネルギーの方がエンジン2の始動での消費エネルギーよりも少なく、無駄なエンジン停止であったと推定することができる。そのため、このような場合に、ハイブリッドECU30がドライバーの運転操作に燃費悪化の要因があると評価することにより、無駄なエンジン停止による燃費悪化を分析することが可能となる。つまり、エンジン2の無駄な停止という燃費悪化要因に対して、本実施形態ではエンジン停止時間Dと、エンジンを停止しない場合の燃料消費量と、始動時に要したエネルギー量とを用いて、燃費悪化に寄与するか否かを判定する。
さらに、本実施形態では、ハイブリッドECU30がドライバーの運転操作に燃費悪化の要因があると評価したときは、無駄なエンジン停止であったと推定することができるため、表示部61及び支援制御出力装置62は、エンジン2がより停止されにくくなるように走行支援を行なう。これにより、無駄なエンジン停止を低減して燃費を向上させることが可能となる。
また、本実施形態では、ハイブリッド車両の加速時においてEV走行の消費エネルギーが所定の閾値を超えているときは、ハイブリッドECU30は、ドライバーの運転操作に燃費悪化の要因があると評価する。ハイブリッド車両の加速時においてEV走行の消費エネルギーが所定の閾値を超えているときは、多くの充電量が消費される。その結果、充電量が枯渇してしまうと、ハイブリッド車両の停止中でもエンジン2を始動させる必要が生じ、極めて効率の悪い強制的な充電が行なわれることになり、燃費が大幅に悪化する。このようなEV走行は過剰な電動機走行であったと推定することができる。そのため、このような場合に、ハイブリッドECU30がドライバーの運転操作に燃費悪化の要因があると評価することにより、過剰なEV走行による燃費悪化を分析することが可能となる。つまり、過剰なEV走行によって生じるSOC低下が、効率の悪い充電に移行するという燃費悪化要因に対して、本実施形態では、現在のSOC量と加速時のエネルギー積分量とを用いて、そのEV走行が燃費悪化に寄与しているかを判定する。
さらに、本実施形態によれば、ハイブリッドECU30がドライバーの運転操作に燃費悪化の要因があると評価したときは、過剰なEV走行であったと推定することができるため、表示部61及び支援制御出力装置62は、EV走行からハイブリッド走行に切り換わり易くなるように走行支援を行なう。これにより、過剰なEV走行を低減して燃費を向上させることができる。つまり、この点でも、EV走行とハイブリッド走行との変化点をよく超えるドライバーか否かに応じて、走行支援の応答を変えることができる。
以下、本発明の第2実施形態について説明する。本実施形態では、ドライバーの過去の運転操作の評価における燃費が所定の度合よりも悪化した走行シーンに対して、ハイブリッド車両が同一又は類似する走行シーンを走行するときのみ、走行支援を行なう。図10に示すように、本実施形態の車両制御装置10bのハイブリッドECU30には、舵角センサ81及び勾配センサ82が接続されている。舵角センサ81は、車両が走行する道路の曲率を検出するために用いられる。勾配センサ82は、車両が走行する道路の勾配を検出するために用いられる。
また、GPS92及び地図情報DB93が設置されている。GPS92は、GPS(Global Positioning System)衛星からの信号を受信することにより、自車両の測位を行うためのものである。地図情報DB93は、地図情報を記憶したデータベースである。GPS92及び地図情報DB93は、ハイブリッドECU30に接続されている。ハイブリッドECU30は、GPS92及び地図情報DB93により、車両が走行する道路の標高、曲率、傾斜等の道路環境に関する情報を取得する。また、ハイブリッドECU30には、通信機91が接続されている。ハイブリッドECU30は通信機91により、他車両や路側施設と通信し、車両が走行する道路の標高、曲率、傾斜等の道路環境に関する情報を取得する。
さらにハイブリッドECU30は、車両が走行する道路の所定箇所の曲率、傾斜等の走行シーンを記録するためのデータベースを有する。
以下、本実施形態の車両制御装置10bの動作について説明する。図11に示すように、車両制御装置10bのハイブリッドECU30は、上記第1実施形態と同様に燃費悪化要因を検出する(S201)。燃費悪化要因が検出された場合(S201)、ハイブリッドECU30は、通信機91、GPS92及び地図情報DB93を用いて当該場所の位置情報や勾配、曲率等の走行シーンに関する情報を取得し、記録する(S202)。ハイブリッドECU30は、通信機91、GPS92及び地図情報DB93により、すでに記録された位置を通過したことを検出したときは(S203)、上記第1実施形態と同様に、燃費悪化要因に対するアドバイスや走行制御による走行支援を実施する(S204)。
すでに記録された位置を通過したことが検出されない場合であっても(S203)、ハイブリッドECU30は、すでに記録された位置の走行シーンと類似した走行シーンの場所を車両が通過していることが判定される場合は(S205)、燃費悪化要因に対するアドバイスや走行制御による走行支援を走行シーンの類似度を考慮して実施する(S206)。
走行シーンの類似度は、道路の勾配、曲率、同程度の曲率のカーブの連続数等の数値が近似しているか否かにより、判定することができる。
走行シーンの類似度を考慮した走行支援について、以下説明する。例えば、同程度の曲率のカーブの連続数がすでに記録された走行シーンと近似している場所を車両が走行中の場合を想定する。すでに記録された走行シーンにおいては、カーブが連続しているため、エンジン2が過剰に始動され、燃費悪化要因となり、記録されている。しかし、現在の走行シーンにおけるカーブの連続数は、すでに記録されている走行シーンに比べて少ないものとする。このような場合は、ハイブリッドECU30は、図12に示すように、特性C2をよりエンジン2が始動されやすいように修正して、上記第1実施形態と同様に走行支援を行なう。
本実施形態では、表示部61及び支援制御出力装置62は、ハイブリッドECU30によるドライバーの過去の運転操作の評価における燃費が所定の度合よりも悪化した走行シーンに対して、ハイブリッド車両が同一の走行シーン又は類似する走行シーンのいずれかを走行するときのみ、走行支援を行なうため、燃費が悪化するシーン以外でドライバーの運転操作を誘導する音声によるアドバイス等の不要な走行支援が行なわれ、ドライバーに不快感又は違和感を与えることを防止することができる。つまり、ドライバーが本当は加速したいのに、なかなか加速することができない等の違和感が生じることを防止することができる。また、本実施形態では、全ての状況で走行支援を行なうのではなく、過去に燃費悪化要因が生じた走行シーンやそれに類似する走行シーンのみで走行支援が行なわれるため、ドライバーに燃費向上に対する知識やモチベーションが乏しい場合においても、燃費を向上させる運転についてドライバーを啓蒙する効果が期待できる。
尚、本発明は、上記した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。