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JP5470897B2 - ハイブリッド車のエンジン始動制御装置 - Google Patents

ハイブリッド車のエンジン始動制御装置 Download PDF

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Description

この発明はハイブリッド車のエンジン始動制御装置に関する。
アクセルペダルの踏み込み量やアクセルペダルの踏み込み量の変化速度に応じてエンジン始動時の燃料噴射開始時期を変化させ、アクセルペダルの踏み込み量が大きいほどまたはアクセルペダルの踏み込み量の変化速度が大きいほどエンジン始動時の燃料噴射開始時期を早くすることによりトルクショックとレスポンスの両立を図るものがある(特許文献1参照)。
特開2006−132337号公報
ところで、ハイブリッド車でのエンジン始動時に、車両停止時にエンジン始動を行いたい場合と、モータ走行中にエンジン始動を行いたい場合との異なる2つのケースがあり、いずれのケースでもエンジン始動時の燃料噴射開始時期を同じにするのでは、加速要求と排気性能とをバランスさせることができない。
しかしながら、上記2つのケースのそれぞれに最適なエンジン始動時の燃料噴射開始時期があることに着目する技術は開示されていない。
そこで本発明は、エンジンの始動要求があっても、車両停止時のように駆動力要求がない場合と、モータ走行中のように駆動力要求がある場合との異なる2つのケースに対してそれぞれに最適なエンジン始動時の燃料噴射開始時期を与え得る装置を提供することを目的とする。
本発明は以下のような解決手段によって前記課題を解決する。なお、理解を容易にするために本発明の実施形態に対応する符号を付するが、これに限定されるものではない。
本発明は、燃料噴射手段(5)を有するエンジン(1)と、モータ(21)とからなる駆動源を備えるハイブリッド車において、ドライバの駆動力要求がなくかつエンジン(1)の始動要求がある場合と、ドライバの駆動力要求がありかつエンジン(1)の始動要求がある場合とのいずれにあるかを判定する判定手段と、この判定結果よりドライバの駆動力要求がなくエンジン(1)の始動要求がある場合に、ドライバの駆動力要求がありかつエンジン(1)の始動要求がある場合よりもエンジン始動要求があったタイミングより燃料噴射を開始するタイミングまでの期間を長くする噴射開始時期変更手段とを備え、前記噴射開始時期変更手段は、前記駆動力要求がなくエンジン(1)の始動要求がある場合に、エンジン始動要求があったタイミングからエンジン(1)が回転した回数が所定値に到達したか否かを判定する判定手段と、この判定結果よりエンジン(1)が回転した回数が所定値に到達したとき燃料噴射を開始する燃料噴射開始手段とを有する。
本発明によれば、ドライバの駆動力要求がなくかつエンジンの始動要求がある場合に、ドライバの駆動力要求がありかつエンジンの始動要求がある場合よりもエンジン始動要求があったタイミングより燃料噴射を開始するタイミングまでの期間を長くするとともに、前記駆動力要求がなくエンジンの始動要求がある場合に、エンジン始動要求があったタイミングからエンジンが回転した回数が所定値に到達したか否かを判定する判定手段と、この判定結果よりエンジンが回転した回数が所定値に到達したとき燃料噴射を開始するので、ドライバの駆動力要求がなくかつエンジンの始動要求がある場合には始動時に燃料噴霧の霧化が促進され、始動時の排気性能が向上すると共に、ドライバの駆動力要求がありかつエンジンの始動要求がある場合にはドライバの加速要求に迅速に応えることができる。
本発明の第1実施形態のハイブリッド車の全体構成図である。 エンジン制御装置の概略構成図である。 第1実施形態の始動時噴射制御を説明するためのフローチャートである。 第2実施形態の始動時噴射制御を説明するためのフローチャートである。 車両停止時のモータによるエンジン始動時におけるエンジン、モータの回転速度、燃料噴射状態、吸気管圧力の変化を示すタイミングチャートである。 モータ走行中の第1クラッチによるエンジン始動時におけるエンジン、モータの回転速度、燃料噴射状態、吸気管圧力の変化を示すタイミングチャートである。
図1は本発明の一実施形態のハイブリッド車の全体構成図、図2はエンジン制御装置の概略構成図である。
先に、図2に示すエンジン制御装置を簡単に説明しておくと、空気は吸気通路2のスロットル弁4により調量されてエンジン1の燃焼室に供給される。燃料は燃料噴射弁5(燃料噴射手段)より吸気通路2の吸気ポートに向けて噴射され、吸気ポートを流れる吸入空気に運ばれて燃焼室に導入される。燃料噴射弁5からの燃料噴霧は気化しながら混合気を形成し、点火プラグ6による着火で燃焼し、燃焼後のガスは排気通路3の三元触媒7で浄化される。エアフローメータ14からの吸入空気量の信号、クランク角センサ12、13からのクランク角の信号、水温センサ15からの冷却水温の信号、触媒上流側の空燃比センサ16からの空燃比の信号、触媒下流側の酸素濃度センサ17からの酸素濃度の信号が入力されるエンジンコントローラ11では、燃料噴射弁5からの燃料噴射と点火プラグ6による点火時期とを制御する。具体的には、燃料噴射制御では、三元触媒7を流れる排気の空燃比が理論空燃比を中心とするウインドウに収まるように燃料噴射弁5からの燃料噴射量を制御する。
図1においてハイブリッド車は、いわゆる1モータ・2クラッチのハイブリッド車(パラレル方式である)20である。すなわち、1モータ・2クラッチのハイブリッド車20は、駆動源としてのエンジン1及びモータ21(モータジェネレータ)と、駆動源からの動力を駆動輪に伝達する変速機23と、エンジン1及びモータ21の連結を断接し得る第1クラッチ24と、モータ21及び変速機23の連結を断接し得る第2クラッチ25とを備えている。詳述すれば、エンジン回転軸26は、第1クラッチ24を介してモータ回転軸27に連結され、モータ回転軸27は変速機23の入力側回転軸28に連結されている。この入力側回転軸28は、第2クラッチ25を介して変速機23の出力側回転軸29に連結されている。そして、この出力側回転軸29は、差動歯車装置30を介して駆動輪31、31に連結されている。
アクセルペダルの踏み込み量を検出するアクセルセンサ51からの信号、車両の車速を検出する車速センサ52からの信号、変速機23の入力側回転軸28の回転速度を検出する回転速度センサ53からの信号が入力されるATコントローラ41では、変速機23と第2クラッチ25の断接を制御する。モータ回転軸27の回転速度を検出する回転速度センサ54からの信号が入力されるモータコントローラ42ではインバータ43を介してモータ21を制御する。第1クラッチコントローラ44では、第1クラッチ24の断接を制御する。
エンジンコントローラ11、ATコントローラ41、モータコントローラ42及び第1クラッチコントローラ43と統合コントローラ45との間はCAN46で連絡されている。統合コントローラ45では、4つのコントローラ11、41、42、44との間で通信を行って、車両の運転状態に応じた走りが得られるようにハイブリッド車を制御する。例えば車両停止状態より走り始めるときには、エンジン1は始動せず、第2クラッチ25を締結した状態でモータ21により車両を駆動する。一方、モータ21による車両走行中にさらにアクセルペダルが踏み込まれドライバに加速要求があることを判定したときには、第1クラッチ24を締結してエンジン1を始動し、モータ21の駆動力にエンジン1の駆動力を追加してドライバの加速要求に応える。また、車両の減速時には、第1クラッチ24を開放し、モータ21をジェネレータとして働かせることにより駆動軸からの動力を回収する。また、エンジン自動停止条件が成立したときエンジン1をドライバの意思に関係なく自動的に停止し、その後にエンジン再始動条件が成立したとき、エンジン1を自動的に再始動させる、いわゆるアイドルストップ制御も行っている。
統合コントローラ45では、エンジン1を2通りの方法で始動する。第1のエンジン始動方法は、車両停止時のモータ21によるエンジン始動である。すなわち、第1クラッチ24を締結(接続)しかつ第2クラッチ25を開放した状態で、モータ21によってトルクをエンジン1に作用させることでクランキングする。具体的にはシフトレバー位置センサ55により検出される変速機23のシフトレバーがPレンジやNレンジにある車両停車時のエンジン始動時と、車両の運転を開始するに際しての初回のエンジン始動時とにこのモータ21によるエンジン始動を行う。
第2のエンジン始動方法は、モータ走行中の第1クラッチ24によるエンジン始動である。すなわち、第1クラッチ24を開放しかつ第2クラッチ25を締結してモータ21により車両走行を行わせている状態で、第1クラッチ24を締結することによってエンジン1をクランキングする。これは、モータ走行中にアクセルペダルが踏み込まれドライバに加速要求があることを判定したときにエンジン始動を行ってエンジン1を運転し、モータ21の駆動力にエンジン1の駆動力を加えることによって、ドライバの加速要求に応えるためである。
さて、1モータ・2クラッチのハイブリッド車20では、車両停止時にエンジン始動要求がある場合に第1クラッチ24を締結した状態でモータ21によるエンジン始動を行わせ、またモータ走行中にエンジン始動要求がある場合に第1クラッチ24を締結することによりエンジン始動を行わせるようにしている。そして、車両停止時にモータ21によるエンジン始動要求がある場合を考えると、エンジン始動時の燃料噴射開始時期を相対的に遅く設定し、吸気管圧力が大気圧より十分低下したタイミングで燃料噴射を行って燃料の微粒化を促進させ、排気性能を改善することが好ましい。一方、モータ走行中にエンジン始動要求がある場合には、エンジン始動時の燃料噴射開始時期を相対的に早く設定し、ドライバの加速要求に迅速に応えることのほうが好ましい。従って、車両停止時のモータ21によるエンジン始動要求に合わせてエンジン始動時の燃料噴射開始時期を相対的に遅くしたのでは、モータ走行中にエンジン始動要求がある場合に、燃料噴射の開始が遅すぎてドライバの加速要求に迅速に応えることができない。一方、モータ走行中でのエンジン始動要求に合わせてエンジン始動時の燃料噴射開始時期を相対的に早くしたのでは、車両停止時にモータ21によるエンジン始動要求がある場合に吸気管圧力が大気圧に近いために燃料の微粒化が促進されず排気性能を改善することができない。このように2つのケースでエンジン始動時の燃料噴射開始時期に対する要求が異なるのに2つのケースでエンジン始動時の燃料噴射開始時期を同じにしたのでは、ドライバの加速要求とエンジン始動時の排気性能とをバランスさせることができない。
そこで本発明では、変速機23のシフトレバーがPレンジとNレンジのいずれかにある車両停止時にエンジン始動要求がある場合(ドライバの駆動力要求がなくかつエンジンの始動要求がある場合)に、変速機23のシフトレバーがPレンジとNレンジのいずれにもないかまたは変速機23のシフトレバーがPレンジとNレンジのいずれかにあっても車両停止時でないときにエンジン始動要求がある場合(ドライバの駆動力要求がありかつエンジンの始動要求がある場合)よりもエンジン始動時の燃料噴射開始時期を遅らせることにより加速要求と排気性能とをバランスさせるようにしている。
統合コントローラ45で行われるこの制御を図3、図4のフローチャートに基づいて詳述する。
図3、図4は第1、第2の実施形態のエンジン始動時の燃料噴射制御を行わせるためのもので、一定時間毎(例えば10msec毎)に実行する。
まず、第1実施形態の図3から説明すると、ステップ1、2ではエンジン始動要求があるか否か、前回にエンジン始動要求があったか否かをみる。ここで、エンジン始動要求がある場合には、車両停止時のモータ2によるエンジン始動要求がある場合と、モータ走行中の第1クラッチ24によるエンジン始動要求がある場合との両方を含んでいる。このため、後述するステップ3、4においていずれの始動要求がある場合であるのかを判定することとなる。ステップ1でエンジン始動要求がない場合には、そのまま今回の処理を終了する。
今回にエンジン始動要求がありかつ前回にエンジン始動要求がなかった、つまり今回初めてエンジン始動要求があったときにはステップ3、4に進み、シフトレバーがPレンジ、Nレンジのいずれかにあるか否か、車両の停止状態にあるか否かをみる。ここで、シフトレバーがPレンジ、Nレンジのいずれかにあるか否かはATコントローラ41においてシフトレバー位置センサ55により検出されている。また、車両が停止状態にあるか否かもATコントローラ41において判定されている。すなわち、ATコントローラ41では、車速センサにより検出される車速と所定値(ゼロに近い正の値)との比較により、車速が所定値以下のときに車両が停止状態にあると判定している。
ステップ3、4は車両停止時のモータ2によるエンジン始動要求がある場合であるか、それともモータ走行中の第1クラッチ24によるエンジン始動要求がある場合であるかを判定する部分である。すなわち、シフトレバーがPレンジとNレンジのいずれかにあり、かつ車両停止状態にある場合には、車両停止時のモータ2によるエンジン始動要求があると判断し、ステップ5に進んで噴射開始条件回転速度閾値Ninjに第1所定値Naを入れることにより、噴射開始条件回転速度閾値Ninjを設定する。第1所定値Naとしては、図5で後述するように、クランキングにより吸気管圧力が大気圧より十分低下するエンジンン回転速度を選択させる。最終的には適合により定める。
一方、シフトレバーがPレンジにもNレンジにもない場合やシフトレバーがPレンジ、Nレンジのいずれかにあっても車両停止状態にない場合にはモータ走行中の第1クラッチ24によるエンジン始動要求があると判断し、ステップ3、4よりステップ6に進み、噴射開始条件回転速度閾値Ninjに上記第1所定値Naとは異なる第2所定値Nbを入れることにより、噴射開始条件回転速度閾値Ninjを設定する。第2所定値Nbとしては、図6で後述するようにクランキング開始間もないエンジン回転速度とする。従って、この第2所定値Nbと上記の第1所定値Naとの間にはNa>Nbなる関係があり同一の値ではない。
ステップ7ではクランク角センサ12、13からの信号に基づいて算出されるエンジン回転速度Neと、ステップ5またはステップ6で設定した噴射開始条件回転速度閾値Ninjとを比較する。エンジン始動時となった当初はエンジン回転速度Neはゼロであり噴射開始条件回転速度閾値Ninj以下であるのでそのまま今回の処理を終了する。
ステップ1、2で今回にエンジン始動要求がありかつ前回にもエンジン始動要求があった、つまりエンジン始動要求が続けて出ているときには、ステップ3〜6を飛ばしてステップ7に進むことになり、エンジン回転速度Neと、初めてエンジン始動要求があったときに設定している噴射開始条件回転速度閾値Ninjとを比較する。車両停止時のモータ2によるエンジン始動要求が出ていれは第1クラッチコントローラ44により第1クラッチ24が締結され、モータ21によりエンジン1が連れ回される(クランキングされる)ためエンジン回転速度Neがゼロから上昇する。一方、モータ走行中の第1クラッチ24によるエンジン始動要求が出ていれば第1クラッチコントローラ44により第1クラッチ24は半クラッチ状態を経てから完全締結状態へと移行する。これによって、エンジン1はモータ21により連れ回されるためエンジン回転速度Neがゼロから上昇する。
このように上昇するエンジン回転速度Neがステップ7で噴射開始条件回転速度閾値Ninj以下である間はそのまま今回の処理を終了し、やがてエンジン回転速度Neが噴射開始条件回転速度閾値Ninを超えたときステップ8に進んで燃料噴射を実行する。具体的にはステップ8で燃料噴射許可フラグをゼロから1に切り換える。図示しない燃料噴射実行フローでは、燃料噴射時期となったタイミングでこの燃料噴射許可フラグ=0となっていれば燃料噴射を行わず、燃料噴射許可フラグ=1の場合に燃料噴射を実行する。
このように、第1実施形態では、車両停止時のモータ2によるエンジン始動要求がある場合に燃料噴射を開始するエンジン回転速度(Na)と、モータ走行中の第1クラッチ24によるエンジン始動要求がある場合に燃料噴射を開始するエンジン回転速度(Na)とを相違させている。
第2実施形態の図4に移ると、図4において図3と同一のステップには同一のステップ番号を付している。
第1実施形態の図3との主な相違点はステップ11だけであり、ステップ11が図3のステップ3、4と置き換えられている。ステップ11では車両の運転を開始する初回のエンジン始動要求があるか、それともエンジン自動停止後のエンジン再始動要求があるかをみる。ハイブリッド車では運転の開始時にドライバが運転席に着席してイグニッションボタンを押すと、統合コンローラ45ではこのイグニッションボタンからの信号を受けて車両の運転開始であると認識している。従って、 統合コンローラ45ではこのイグニッションボタンからの信号を受けたときに車両の運転を開始する初回のエンジン始動要求があると判定する。また、エンジン自動停止状態でアクセルペダルが踏み込まれたことを検出したとき、エンジン自動停止後のエンジン再始動要求があると判定する。また、統合コンローラ45ではエンジン自動停止条件が成立したときドライバの意思に関係なくエンジン1を自動的に停止し、その後にエンジン再始動条件が成立したとき、エンジン1を自動的に再始動させるようにしているので、エンジン自動停止後のエンジン再始動要求があるか否かはエンジン再始動条件が成立したか否かによりわかる。
そして、初回のエンジン始動要求があると判定したときにはステップ5に進んで噴射開始条件回転速度閾値Ninjに第1所定値Naを入れことにより噴射開始条件回転速度閾値Ninjを設定する。これは、エンジン冷間状態にあることが多い初回のエンジン始動要求がある場合に、燃料噴射開始タイミングを相対的に遅らせることで、吸気管圧力が大気圧より大きく低下している状態で初回の燃料噴射を行わせ、これによって燃料噴霧の霧化を促進するためである。
一方、エンジン自動停止後のエンジン再始動要求があるときにはステップ6に進んで噴射開始条件回転速度閾値Ninjに第2所定値Nbを入れることにより、噴射開始条件回転速度閾値Ninjを設定する。これは、エンジン自動停止後のエンジン再始動要求がある場合には車両発進のためドライバの駆動力要求があることが多く、この場合に燃料噴射開始タイミングを相対的に早めることで、ドライバの加速要求に迅速に応えるためである。
次に、第1実施形態の図3のフローにより始動時噴射制御を行わせたときに、燃料噴射がどのように行われるのかを図5、図6を参照して説明する。図5は車両停止時のモータ2によるエンジン始動時に、エンジン1、モータ21の各回転速度、燃料噴射の状態、燃料噴射許可フラグ、吸気管圧力がどのように変化するのか、図6はモータ走行中の第1クラッチ24によるエンジン始動時に、エンジン、モータの各回転速度、燃料噴射の状態、燃料噴射許可フラグ、吸気管圧力がどのように変化するのかをモデルで示している。
図5から説明する。t1のタイミングで車両停止時のモータ2によるエンジン始動要求があったとすると、エンジン1はモータ21により連れ回されてその回転速度Neがゼロより上昇してゆき、エンジン回転速度Neが噴射開始条件回転速度閾値Ninj、つまり第1所定値Naに到達するt2のタイミングより燃料噴射が開始されてエンジン1が始動される。この場合に、第1所定値Naは目標アイドル回転速度よりは低い値であるが、吸気管圧力が大気圧より十分低くなったタイミングで燃料噴射が開始されるように設定している。
吸気管圧力が大気圧より十分低くなったタイミング(t2)ではエアフローメータ14を通過する吸入空気量Qaが、吸気管圧力が大気圧の近くにある場合よりも減少し、エアフローメータ14を通過する吸入空気量Qaに基づいて演算される燃料噴射量も、吸入空気量Qaの減少分だけ減少する。このため、エンジン1が発生するトルクがその燃料噴射量の減量分だけ減少する。エンジン1が発生するトルクが減少すれば、エンジン始動時のトルクショックを抑制できる。
また、吸気管圧力が大気圧より十分低くなったタイミング(t2)でポート噴射を行ったとき、吸気管圧力が大気圧の近くにある場合よりも燃料噴霧の霧化が促進されるため、低温始動時に多く発生しがちなHCの排出量を抑制でき、排気性能が向上する。
一方、図6はアクセルペダルを踏み込んで車両を加速させているイメージで考えている。このため、加速要求に応じてモータ回転速度が徐々に高くなっている(図6最上段の破線参照)。そして、ドライバの駆動力要求に応えるため、つまりモータ駆動力に対してエンジン1による駆動力を追加するため、t11のタイミングでモータ走行中の第1クラッチ24によるエンジン始動要求があったとすると、このタイミングでは停止状態にあるエンジン1と、かなり高い回転速度で駆動されているモータ21との間に大きな回転速度差がある。このため、第1クラッチコントローラ44よりエンジン始動要求判定当初は半クラッチ状態でエンジン1がモータ21により連れ回されてその回転速度Neがゼロより上昇してゆき、t13のタイミングの手前で両者の回転速度がほぼ一致しt13のタイミングでエンジン1とモータ21とが完全に締結されることとなる。
この場合に、第2所定値Nbはゼロに近い値に設定されているため、モータ走行中の第1クラッチ24によるエンジン始動要求があったと判定される直後のt12のタイミングでエンジン回転速度Neが噴射開始条件回転速度閾値Ninj、つまり第2所定値Nbに到達して燃料噴射が開始され、エンジン1が始動される。
エンジンコントローラ11にクランク角センサ12、13からの信号が入力され、エンジンコントローラ11では、これら信号を波形成形した後の時間的に前後する2つのパルス間に要した時間に基づいてエンジン回転速度Neを算出している。従って、エンジン始動時には少なくとも2つのパルスが入力されるまではエンジン回転速度Neを算出することができない。このため、実際には、エンジン回転速度Neと第2所定値Nbとを比較することとはせず、エンジン始動(クランキング)に際してクランク角センサ12、13からの信号が初めて入力されたタイミングでエンジン回転速度Neが第2所定値Nbに到達したとみなして燃料噴射を開始することで、エンジントルクの出始めが早くなるようにしている。
このように、モータ走行中の第1クラッチ24によるエンジン始動要求があったときには、エンジントルクの出始めが早くなるようにしているので、ドライバの加速要求に迅速に対応できる。
また、燃料噴射弁5から燃料を噴射していない状態でのクランキング回数が少なくなるため、エンジン1から排気通路3へと排出される新気の量が少なくなり、三元触媒7に蓄積される酸素量が低減される。そのため、燃料噴射開始直後の三元触媒7のNOx還元能力を確保できる。これについて説明すると、酸素ストレージ機能(酸素を蓄える機能)を有している三元触媒7では、HC、COに対して蓄えている酸素を放出(つまり酸化)することによりHC、COをH2O、CO2へと無害化し、その一方でNOxに対してはNOxから酸素を奪う(つまり還元)ことによりNOxをN2へと無害化している。このため、未噴射の状態で三元触媒7に新気中の酸素が蓄えられてゆき一杯にまで蓄えられてしまうと、燃料噴射開始直後の排気中のNOxから酸素を奪うことができない、つまりNOxの還元能力が低下するのであるが、未噴射状態を相対的に短くする(噴射開始時期を相対的に早くする)ことで、三元触媒7のストレージ酸素量が満杯とならず、これによってNOxを還元可能な状態にしておくのである。
さらに、相対的に早いタイミングで燃料噴射することで、第1クラッチ24の完全締結前に初回点火を確実に実行できる。このため、初回点火時の前後で発生するエンジントルク段差が駆動軸に伝達するのを遮断できるため、エンジントルク段差が駆動軸に伝わることによるトルクショックも低減できる。
ここで、第1、第2の実施形態の作用効果を説明する。
第1実施形態(請求項3に記載の発明)によれば、変速機23のシフトレバーがPレンジとNレンジのいずれかにある車両停止時にエンジン始動要求がある場合に、変速機23のシフトレバーがPレンジとNレンジのいずれにもないかまたは変速機23のシフトレバーがPレンジとNレンジのいずれかにあっても車両停止時でないときにエンジン始動要求がある場合よりもエンジン始動時の燃料噴射開始時期を遅らせるので(図3のステップ1〜6参照)、変速機のシフトレバーがPレンジとNレンジのいずれかにある車両停止時にエンジン始動要求がある場合には吸気管圧力が大気圧より十分低下している状態で燃料噴射が行われることから、燃料噴霧の霧化が促進され、始動時の排気性能が向上する一方、変速機23のシフトレバーがPレンジとNレンジのいずれにもないかまたは変速機のシフトレバーがPレンジとNレンジのいずれかにあっても車両停止時でないときにエンジン始動要求がある場合には、ドライバの駆動力要求に合わせて燃料噴射が早期に開始されることから、ドライバの加速要求に迅速に応えることができる。
第2実施形態(請求項4に記載の発明)によれば、車両の運転を開始する初回のエンジン始動要求がある場合に、エンジン自動停止後のエンジン再始動要求がある場合よりもエンジン始動時の燃料噴射開始時期を遅らせるようにしている(図4のステップ1、2、11、5、6参照)。すなわち、エンジン冷間状態にあることが多い初回のエンジン始動要求がある場合に、燃料噴射開始タイミングを相対的に遅らせることで、吸気管圧力が大気圧より大きく低下している状態で初回の燃料噴射を行うことができるため、燃料噴霧の霧化が促進され、エンジンアウト(エンジン出口)でのエミッションを低減できる。一方、エンジン自動停止後のエンジン再始動要求がある場合には車両発進のためドライバの駆動力要求があることが多く、この場合に燃料噴射開始タイミングを相対的に早めることで、ドライバの加速要求に迅速に応えることができる。
第1、第2の実施形態(請求項5に記載の発明)によれば、エンジンの排気通路3に酸素ストレージ機能を有する三元触媒7を備えるので、エンジン始動時に、ドライバの駆動力要求に合わせて燃料噴射が早期に開始されるときには、クランキング中の三元触媒7の酸素ストレージ量を低減でき、燃料噴射開始直後の排気中のNOxの発生を抑制できる。
このように、第1、第2の実施形態(請求項1に記載の発明)によれば、ドライバの駆動力要求がなくかつエンジンの始動要求がある場合に、ドライバの駆動力要求がありかつエンジンの始動要求がある場合よりもエンジン始動時の燃料噴射開始時期を遅らせるので、ドライバの駆動力要求がなくかつエンジンの始動要求がある場合には始動時に燃料噴霧の霧化が促進され、始動時の排気性能が向上すると共に、ドライバの駆動力要求がありかつエンジンの始動要求がある場合にはドライバの加速要求に迅速に応えることができることとなった。
実施形態では、吸気管圧力が大気圧より十分低下したタイミングでの回転速度を第1所定値Naで与え、エンジン回転速度Neとこの第1所定値Naとの比較により、吸気管圧力が大気圧より十分低下したタイミングに到達したか否かを判定する場合で説明したが、これに限られるものでない。例えば、始動開始タイミングから吸気管圧力が大気圧より十分低下したタイミングに到達するまでにエンジンが回転する回数を第1所定値として与え、始動開始タイミングからエンジンが回転した回数とこの第1所定値との比較により、吸気管圧力が大気圧より十分低下したタイミングに到達したか否かを判定するようにしてもよいし、始動開始タイミングから吸気管圧力が大気圧より十分低下したタイミングに到達するまでに経過する時間を第1所定値として与え、始動開始タイミングからの経過時間とこの第1所定値との比較により、吸気管圧力が大気圧より十分低下したタイミングに到達したか否かを判定するようにしてもかまわない。
1 エンジン
5 燃料噴射弁(燃料噴射手段)
11 エンジンコントローラ
20 ハイブリッド車
21 モータ
23 変速機
24 第1クラッチ
25 第2クラッチ
45 統合コントローラ

Claims (6)

  1. 燃料噴射手段を有するエンジンと、モータとからなる駆動源を備えるハイブリッド車において、
    駆動力要求がなくかつエンジンの始動要求がある場合と、駆動力要求がありかつエンジンの始動要求がある場合とのいずれにあるかを判定する判定手段と、
    この判定結果より駆動力要求がなくエンジンの始動要求がある場合に、駆動力要求がありかつエンジンの始動要求がある場合よりもエンジン始動要求があったタイミングより燃料噴射を開始するタイミングまでの期間を長くする噴射開始時期変更手段と
    を備え
    前記噴射開始時期変更手段は、
    前記駆動力要求がなくエンジンの始動要求がある場合に、エンジン始動要求があったタイミングからエンジンが回転した回数が所定値に到達したか否かを判定する判定手段と、
    この判定結果よりエンジンが回転した回数が所定値に到達したとき燃料噴射を開始する燃料噴射開始手段と
    を有することを特徴とするハイブリッド車のエンジン始動制御装置。
  2. 前記エンジン始動要求があったタイミングから吸気管圧力が大気圧より低下して所定圧力に到達するまでにエンジンが回転する回数を前記所定値として与えることを特徴とする請求項1に記載のハイブリッド車のエンジン始動制御装置。
  3. 前記エンジンとモータとを断接し得る第1クラッチと、
    前記モータと変速機とを断接し得る第2クラッチと、
    変速機と締結される駆動輪と、
    前記第1クラッチを締結した状態でモータによるエンジン始動を行わせる第1エンジン始動手段と、
    前記第2クラッチを締結してモータによる走行を行わせているときに前記第1クラッチを締結することによりエンジン始動を行わせる第2エンジン始動手段と
    を備え、
    前記駆動力要求がなくかつエンジンの始動要求がある場合に前記第1エンジン始動手段を用いてエンジン始動を、前記駆動力要求がありかつエンジンの始動要求がある場合に前記第2エンジン始動手段を用いてエンジン始動を行わせることを特徴とする請求項1または2に記載のハイブリッド車のエンジン始動制御装置。
  4. 前記駆動力要求がなくかつエンジンの始動要求がある場合は変速機のシフトレバーがPレンジとNレンジのいずれかにある車両停止時にエンジンの始動要求がある場合であり、前記駆動力要求がありかつエンジンの始動要求がある場合は変速機のシフトレバーがPレンジとNレンジのいずれにもないかまたは変速機のシフトレバーがPレンジとNレンジのいずれかにあっても車両停止時でないときにエンジンの始動要求がある場合であることを特徴とする請求項1または2に記載のハイブリッド車のエンジン始動制御装置。
  5. エンジン自動停止とその後のエンジン再始動とを行う機能を備え、
    前記駆動力要求がなくかつエンジンの始動要求がある場合は車両の運転を開始する初回のエンジン始動要求がある場合であり、前記駆動力要求がありかつエンジンの始動要求がある場合は前記エンジン再始動の要求がある場合であることを特徴とする請求項1または2に記載のハイブリッド車のエンジン始動制御装置。
  6. エンジンの排気通路に酸素ストレージ機能を有する三元触媒を備えることを特徴とする請求項またはに記載のハイブリッド車のエンジン始動制御装置。
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