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JP5470404B2 - 電池制御装置およびモーター駆動システム - Google Patents

電池制御装置およびモーター駆動システム Download PDF

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Description

本発明は、電池制御装置と、それを用いたモーター駆動システムに関する。
電池を用いた電源装置、分散型電力貯蔵装置、電気自動車などでは、電池を最適にかつ有効に使用するために、電池の状態を検出して電池の充放電を制御する電池制御装置が用いられている。電池の状態としては、どの程度まで充電されているのか、あるいはどの程度放電可能な電荷量が残っているのかを示す充電状態(以下、State Of Chargeの頭文字をとってSOCと呼ぶ)または残存容量や、どの程度まで劣化しているのか、弱っているのかを示す健康状態(以下、State Of Healthの頭文字をとってSOHと呼ぶ)または劣化度などがある。
電池の状態を検出するために、電池制御装置は、電池の電圧、電流、温度などの計測情報に基づいてSOCやSOHなどを求める処理を実行する。計測情報の内、電池の温度は、電池の表面に温度センサーを設置して表面温度を計測し、電池状態検出処理に用いることが一般的であるが、電池の真の温度である内部温度を電池状態検出処理に用いることができれば、SOCやSOHなどの状態検出をさらに正確に行うことができる。
電池内部に直接温度センサーを取り付けることなく、電池の内部温度を推定するようにした電池の内部温度検出装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。この装置では、電池の表面温度と電池冷却用ファンの出力から電池の内部温度を推定している。
特開平09−245846号公報
しかしながら、上述した従来の電池制御装置による電池の内部温度推定では、電池の内部温度推定結果が正しいか否かの診断は行われておらず、内部温度推定結果に対する信頼性に疑問がある。
本発明は、電池の状態を精度よく検出するために必要な電池の内部温度推定結果に対する診断方法を提供する。
請求項1の発明は、電池の内部抵抗を検出する内部抵抗検出手段と、電池の表面温度を検出する表面温度検出手段と、電池の内部温度を推定する内部温度推定手段と、電池の表面温度と内部温度との差が、電池の表面温度と内部温度とが実質的に同一と見なされる第1所定値以内の条件下で表面温度検出手段により検出された表面温度と内部抵抗検出手段により検出された内部抵抗とを対応付けて記憶するデータ記憶手段と、内部温度推定手段により推定された電池の内部温度が正常か否かを診断する内部温度診断手段とを備え、内部温度診断手段は、内部温度推定手段により内部温度が推定されたときに内部抵抗検出手段により内部抵抗を検出するとともに、データ記憶手段に記憶されている内部抵抗の中から内部温度推定値と等しい表面温度に対応する内部抵抗を検索し、この検索結果の内部抵抗と内部温度推定時の内部抵抗との差に基づいて内部温度推定値の異常の有無を診断する。
請求項2の発明は、請求項1に記載の電池制御装置において、前記内部温度診断手段は、前記検索結果の内部抵抗と前記内部温度推定時の内部抵抗との差が所定値を越える場合に、前記内部温度推定値は異常であると診断する。
請求項3の発明は、請求項1または請求項2に記載の電池制御装置において、前記電池の表面温度と内部温度との差が所定値以内の条件を満たすか否かを判定する状態判定手段と、前記状態判定手段により前記条件を満たすと判定された場合に、前記表面温度検出手段により検出された表面温度と前記内部抵抗検出手段により検出された内部抵抗とを対応付けて前記データ記憶手段に記憶するデータ蓄積手段とを備える。
請求項4の発明は、請求項3に記載の電池制御装置において、前記状態判定手段は、前記電池の周囲温度を検出する周囲温度検出手段を有し、前記表面温度検出手段による表面温度検出値と前記周囲温度検出手段による周囲温度検出値との差が所定値以内の場合に、前記条件を満たすと判定する。
請求項5の発明は、請求項3または請求項4に記載の電池制御装置において、前記状態判定手段により前記条件を満たすと判定されたときに、前記表面温度検出手段により前記電池の表面温度を検出するとともに、前記内部抵抗検出手段により前記電池の内部抵抗を検出し、これらの表面温度と内部抵抗の検出値に基づいて前記データ記憶手段に記憶されている表面温度と内部抵抗を更新するデータ更新手段を備える。
請求項6の発明は、請求項1〜5のいずれか一項に記載の電池制御装置において、内部温度推定手段は、電池の周囲温度を検出する周囲温度検出手段と、電池を冷却する冷却風の風速を検出する風速検出手段とを有し、表面温度検出手段による表面温度検出値、周囲温度検出手段による周囲温度検出値、風速検出手段による風速検出値、および電池の表面温度と周囲温度との差に対する電池の内部温度と周囲温度との差の関係を示す一次関数の傾きを表す内部温度推定用パラメーターに基づいて電池の内部温度を推定する。
請求項7の発明は、請求項6に記載の電池制御装置において、内部温度推定用パラメーターは、冷却風の風速に応じた値を有し、内部温度推定手段は、内部温度診断手段により内部温度推定値が異常であると診断された場合に、一次関数の傾きを変化させることによって内部温度推定用パラメーターを補正する。
請求項8の発明は、請求項1〜7のいずれか一項に記載の電池制御装置において、前記電池制御装置の前記内部温度診断手段により内部温度推定値が異常であると診断された場合に、前記電池に流れる充放電電流を制限する電流制限手段を備える。
請求項9の発明は、電池と、フィルターを通して前記電池に冷却風を送風する送風手段と、請求項1〜8のいずれか一項に記載の電池制御装置とを備えるモーター駆動システムである。
請求項10の発明は、請求項9に記載のモーター駆動システムにおいて、内部温度診断手段により内部温度推定値が異常と判定された場合に、内部温度推定手段により内部温度が推定されたときに内部抵抗検出手段により検出した内部抵抗検出値と、データ記憶手段から検索した内部温度推定値と等しい表面温度に対応する内部抵抗検索値との大小関係を比較して、内部抵抗検索値が大きい場合には、内部温度推定値の異常原因として冷却動作の不足を特定し、内部抵抗検索値が小さい場合には、内部温度推定値の異常原因として冷却動作の過剰を特定する原因特定手段を備える。
請求項11の発明は、請求項10に記載のモーター駆動システムにおいて、前記原因特定手段は、前記内部抵抗検出値が前記内部抵抗検索値よりも大きい場合には、前記送風手段の風速不足か、または前記フィルターの目詰まりが原因であると特定し、前記内部抵抗検出値が前記内部抵抗検索値よりも小さい場合には、前記送風手段の風速過大か、または前記電池の膨れが原因であると特定する。
電池の内部温度推定結果の信頼性を正確に診断することができ、その結果、信頼性の高い内部温度推定結果に基づいて電池の状態を正確に検出することができ、電池を最適にかつ有効に使用することができる。
本発明に関わる電池制御装置を用いたモーター駆動システムの一例を示す全体構成図。 電池モジュール102の構成を示す斜視図。 第1の実施の形態の電池制御回路106の処理内容を示すブロック図。 電池の表面温度T1、周囲温度T2、内部温度T3および冷却風速の関係を示す図。 組電池101の等価回路を示す図。 組電池101の充電状態SOCに対する起電力OCVの特性データを示す図。 内部抵抗演算部303による内部抵抗Rの演算処理を説明するための図。 電圧計測回路104および電流計測回路105の温度に応じた計測誤差を示す図。 組電池101のSOCと温度に対する等価インピーダンスRzの特性を示す図。 組電池101のSOCに対する許容充放電電流を示す図。 電池表面温度T1=電池内部温度T3の条件下における電池内部抵抗R’の記録処理を示すフローチャート。 内部温度診断部306による内部温度推定結果T3の診断動作を示すフローチャート。 内部温度診断部306による内部温度推定結果T3の診断方法を説明するための図。 内部抵抗履歴データの更新方法を説明するための図。 内部温度診断部306による内部温度推定結果T3の診断方法を説明するための図。 内部抵抗R’のデータテーブルを更新する方法を説明するための図。 第3の実施の形態の電池制御回路106Aの処理内容を示すブロック図。 制限された許容充放電電流を示す図。 電池の温度計測器201、202に外乱が入るか、あるいは故障した場合の内部温度診断部306による内部温度推定結果T3の診断方法を説明するための図。 異なる特性の電池Aと電池Bの内部温度推定結果に対する内部抵抗の変化傾向を示す図。 第4の実施の形態の電池制御回路106Bの処理内容を示すブロック図。 第4の実施の形態のパラメーター補正部2101の動作を説明するための図。 第5の実施の形態の電池制御回路106Cの処理内容を示すブロック図。 冷却異常通知部2301の動作を説明するための図。 第6の実施の形態の電池制御回路106Dの処理内容を示すブロック図。 異常原因特定部2501の異常原因特定処理を示すフローチャート。
《第1の実施の形態》
図1は、本発明に関わる電池制御装置を用いた車両用モーター駆動システムの一例を示す全体構成図である。この第1の実施の形態では、電気を蓄えて放電を行う複数の電池セル101a,101b,・・を直列に接続した組電池101と、複数の電池セル101a,101b,・・のそれぞれを管理するセル管理回路103と、組電池101の両端電圧を計測する電圧計測回路104と、組電池101に出入りする電流を計測する電流計測回路105と、セル管理回路103、電圧計測回路104および電流計測回路105から入力した情報に基づいて組電池101の状態と、組電池101とセル管理回路103を収納する電池モジュール102の状態を検知する電池制御回路106と、電力を直流から交流または交流から直流に変換する電力変換装置であるインバーター107と、力行時にはモーターとして機能し、発電時(回生時)にはジェネレーターとして機能するモータージェネレーター(M/G)108と、電池制御回路106からの情報に基づきインバーター107の制御を行う車両制御回路109とから構成される。
電池セル101a,101b,・・にはリチウムイオン電池、ニッケル水素電池、鉛電池、電気二重層キャパシターなどの蓄電デバイスを用いることができる。図1では、複数の電池セル101a,101b,・・を直列に接続して高電圧の組電池101を構成した例を示すが、複数の電池セルを直並列に接続して高電圧かつ高容量の組電池を構成してもよい。なお、この一実施の形態では複数の電池セル101a,101b,・・が直列または並列あるいは直並列に接続された組電池101を単一の電池として取り扱うが、もちろん組電池101は単一の電池セルまたは蓄電デバイスから構成されるものであってもよい。
セル管理回路103は、電池モジュール102に収納された組電池101のそれぞれの電池セル101a,101b,・・の電圧や温度、異常情報などを検出する機能を有する。また、図1では詳細な図示を省略するが、セル管理回路103は、各電池セル101a,101b,・・の電圧にばらつきが発生した場合に、高い電圧を有する電池セル101a,101b,・・のみ強制的に放電するなどの処理を行い、電池モジュール102内の電池セル101a,101b,・・の電圧を均等化する。セル管理回路103の電圧や温度、異常情報などの検出や電圧の均等化機能は、電池制御回路106からの指令によって行ってもよいし、セル管理回路103が独自に判断して上記処理を実行してもよい。さらに、図1ではセル管理回路103を電池モジュール102内に設置した例を示すが、セル管理回路103を電池モジュール102の外部に設置してもよい。
電圧計測回路104および電流計測回路105はセンサーや電気回路から構成され、電圧計測回路104は組電池101の電圧(直列接続した電池セル101a,101b,・・の電圧の総和で、以下では電池電圧と呼ぶ)を計測する機能を有し、電流計測回路105は組電池101に出入りする電流(以下では充放電電流または単に電池電流と呼ぶ)を計測する機能を有する。これらの計測結果は電池制御回路106に送信され、電池状態を検出するための各種の演算に用いられる。なお、電圧計測回路104および電流計測回路105を電池制御回路106の外部に設置した例を示すが、これらを電池制御回路106と一体にして構成してもよい。
電池制御回路106はマイクロプロセッサー106aとメモリ106bなどの周辺デバイスから構成され、セル管理回路103、電圧計測回路104、電流計測回路105により測定された組電池101および電池モジュール102に関する情報に基づき、組電池101および電池モジュール102の状態を検知する。検知する状態には上述したSOCやSOH、許容電流もしくは許容電力、異常情報などがある。これらの状態検知のための詳細な処理については後述する。状態検知の結果はインバーター107を制御する車両制御回路109に送信され、車両制御回路109は受信した電池状態の検知結果に基づいて組電池101の充放電制御を行う。
インバーター107はモータージェネレーター108の駆動制御装置であり、内蔵するスイッチング半導体素子のスイッチング動作によって電力を直流から交流に、交流から直流に変換する。モータージェネレーター108がモーターとして力行運転する場合には、モータージェネレーター108は組電池101からインバーター107を介して供給される電気エネルギーで動作し、磁気的作用により回転動力(機械エネルギー)を発生し、その回転動力を負荷に供給する。一方、モータージェネレーター108がジェネレーターとして回生発電する場合には、モータージェネレーター108は電力を発生し、この電力はインバーター107を介して組電池101に供給され、組電池101が充電される。
車両制御回路109は、電池制御回路106からの情報に基づいてインバーター107を制御する機能を有しており、電池制御回路106からの電池状態検知結果に基づいて組電池101の充放電制御を行う。電池制御回路106と同様、車両制御回路109はマイクロプロセッサーとメモリなどの周辺デバイスから構成され、電池制御回路106と車両制御回路109との間はLINやCAN、FlexRayに代表される車載用ネットワークなどで双方向に通信される。なお、電池制御回路106と車両制御回路109の機能は一つのコントローラとして集約させてもよい。
図2は電池モジュール102の構成を示す斜視図である。組電池101は電池モジュール102の筐体内に収納されており、それらの内のいくつかの電池セル(図2に示す例では101cと101f)には表面温度T1を計測するための第一の温度計測器201(電池セル101cに第一温度計測器201a、電池セル101fに第一温度計測器201b)が設置されている。なお、電池モジュール102内のすべての電池セル101a,101b,・・に第一の温度計測器201を設置してもよい。電池モジュール102内にはまた、電池モジュール102内の温度すなわち組電池101が設置されている場所の温度(電池周囲温度)T2を計測するための第二の温度計測器202が設置されている。これらの第一および第二の温度計測器201、202により検出した電池表面温度T1および電池周囲温度T2の情報は電池制御回路106へ送られる。なお、この第1の実施の形態では第一および第二の温度計測器201、202で検出した温度情報を電池制御回路106に直接送信する例を示すが、電池モジュール102の内部に設置されたセル管理回路103(図1参照)を経由して送信するようにしてもよい。検出した温度情報は、電池制御回路106内の後述する処理の入力として用いられる。
電池モジュール102の筐体には、組電池101を冷却するためのファン203が設置されている。ファン203と電池制御回路106との間には信号系統が双方向に結ばれており、ファン203による組電池101の冷却が必要と判断された場合には、電池制御回路106がファン203を駆動するための信号を送信し、これに基づきファン203が空冷によって組電池101を冷却する。また、ファン203の動作情報は電池制御回路106へ送信され、これにより電池制御回路106がファン203の動作確認を行うことができる。ファン203の動作情報にはファン203の回転速度が含まれ、電池制御回路106はファン203から入力した回転速度の信号に基づいて冷却風の風速Wを演算により求める。なお、専用の風速センサーを電池モジュール102の空気取り入れ口や排気口などに設置し、冷却風の風速Wを検出するようにしてもよい。ファン203による組電池101の冷却を開始するための条件には、電池モジュール102内の電池セル101a,101b,・・の平均温度もしくは最高温度が予め定めた閾値を越えた場合、電池モジュール102の充放電前から充放電中にかけての温度変化が閾値を超えた場合、電池モジュール102内に収納される電池セル101a,101b,・・の温度ばらつきが閾値を越えた場合などがある。なお、ファン203の駆動制御は電池制御回路106とは別の制御装置によって行われるようにしてもよい。
図3は電池制御回路106の処理内容を示すブロック図である。電池制御回路106は、マイクロプロセッサー106aのソフトウエアー形態で構成される内部温度推定部301、充電状態演算部302、内部抵抗演算部303、劣化状態演算部304、許容電流演算部305および内部温度診断部306を備えている。内部温度推定部301は、第一の温度計測器201で計測した電池表面温度T1、第二の温度計測器202で計測した電池周囲温度T2、および電池モジュール102内に収納された組電池101が受けている風速Wを入力し、電池セル101a,101b,・・の内部温度T3を推定する。なお、この一実施の形態では電池セル101a,101b,・・の内部温度の平均値を組電池101の内部温度推定結果T3とする。充電状態演算部302は、セル管理回路103または電圧計測回路104で計測した電池電圧V、電流計測回路105で計測した電池電流Iおよび内部温度推定部301による組電池101の内部温度推定結果T3に基づいて、組電池101の充電状態SOCを検出する。
また、内部抵抗演算部303は、電池電圧Vおよび電池電流Iに基づいて複数の電池セル101a,101b,・・が直列に接続された組電池101の内部抵抗Rを演算により検出する。劣化状態演算部304は、内部温度推定部301による組電池101の内部温度推定結果T3、充電状態演算部302による組電池101の充電状態演算結果SOC、内部抵抗演算部303による組電池101の内部抵抗検出結果Rに基づいて、組電池101の劣化状態SOHを求める。許容電流演算部305は、内部温度推定部301の推定結果T3、充電状態演算部302の演算結果SOCおよび劣化状態演算部304の演算結果SOHを用いて、組電池101を充放電制御するための許容電流(組電池101を最大に充電および放電可能な電流)を求める。さらに、内部温度診断部306は、内部温度推定部301の推定結果T3、第一の温度計測器201で検出した電池表面温度T1および内部抵抗演算部303による電池内部抵抗Rを用いて、内部温度推定部301による内部温度推定結果T3の信頼性の有無を診断する。
まず、内部温度推定部301による電池内部温度の推定方法を説明する。図4は、電池の表面温度T1、周囲温度T2、内部温度T3および冷却風速の関係を示す図である。電池の表面温度T1と周囲温度T2を温度センサーで測定するとともに、電池の特性に影響を与えないように電池内部に温度センサーを埋め込んで電池の内部温度T3を実測し、さらに冷却風の風速を風速センサーにより測定した結果を、図4に示すように横軸を電池表面温度T1と電池周囲温度T2との差とし、縦軸を電池内部温度T3と電池周囲温度T2との差として冷却風の風速を変えてプロットしてみると、両温度差は一定風速においてある傾きAの直線的な関係があることが実験的に求められた。傾きAは、電池の冷却風速に応じて変化するものであり、冷却風速が遅いと傾きAが小さく(電池の表面温度T1と内部温度T3との差が小さい)、冷却風速が速いと傾きAが大きくなる(電池の表面温度T1と内部温度T3との差が大きい)。このような電池の特性は、電池の種類、仕様、型式、電池モジュール全体の仕様、型式などに応じてそれぞれ固有の特性、すなわち傾きAを有することがわかった。
そこで、この一実施の形態では、組電池101および電池モジュール102に対して表面温度T1、周囲温度T2、内部温度T3および冷却風速Wをすべて実測して固有の特性、すなわち傾きAを検出し、冷却風速Wに対する傾きAのテーブルを予めメモリ106bに記憶しておく。あるいは冷却風速Wに対する傾きAを関数形式でメモリ106bに記憶しておいてもよい。内部温度推定部301は、第一の温度計測器201で計測した電池表面温度T1、第二の温度計測器202で計測した電池周囲温度T2、および電池モジュール102内に収納された組電池101の冷却風速Wに基づいて、図4に示す関係から組電池101の内部温度T3を逆算する、つまり内部温度T3を推定する。この方法によって、電池セル101a,101b,・・の内部に温度センサーを組み込むことなく、組電池101の内部温度T3を正確に推定することができる。
内部温度推定部301が行った組電池101の内部温度推定結果T3は、電池制御回路106が行う各種演算の入力に用いられる。内部温度推定結果T3は組電池101を構成する電池セル101a、101b、・・の真の温度であるから、電池表面温度T1を用いて組電池101および電池モジュール102の状態検知を行う場合に比べ、内部温度推定結果T3を用いて組電池101および電池モジュール102の状態検知を行う方が、それらの状態をより高精度に検知できる。
次に、充電状態演算部302によるSOCの検出処理例を説明する。上述したように、充電状態演算部302は、セル管理回路103または電圧計測回路104が計測した電池電圧V、電流計測回路105が計測した電池電流I、および内部温度推定部301が行った組電池101の内部温度推定結果T3に基づいてSOCを検出する。
図5は組電池101の等価回路を示す。上述したように、この一実施の形態では複数の電池セル101a,101b,・・が直列または並列あるいは直並列に接続された組電池101を単電池として取り扱う。図5において、501は組電池101の起電力OCV、502は組電池101の内部抵抗R、503は組電池101のインピーダンスZ、504は組電池101のキャパシタンスCである。組電池101は、インピーダンス503とキャパシタンス504の並列接続回路と、内部抵抗502と、起電力501とが直列に接続されたものとして表される。組電池101に電池電流Iが流れたときの組電池101の端子間電圧CCVは次式で表される。
CCV=OCV+I・R+Vp ・・・(1)
(1)式において、Vpは分極電圧であり、インピーダンスZとキャパシタンスCの並列接続回路の電圧に相当する。
起電力OCVは充電状態SOCの演算に用いられるが、組電池101が充放電されている状況では、起電力OCVを直接測定するのは不可能である。このため、次式のように端子間電圧CCVから内部抵抗RによるIRドロップと分極電圧Vpを差し引いて起電力OCVを演算により求める。
OCV=CCV−I・R−Vp ・・・(2)
内部抵抗Rと分極電圧Vpは組電池101から抽出した特性情報であり、組電池101を充放電することで実験的に把握し、電池制御回路106が有するメモリ106bに予め記憶しておく。なお、内部抵抗Rや分極電圧Vpは、組電池101の充電状態や温度、電流などに応じた値をテーブル化して記憶しておき、組電池101の充電状態、温度、電流などに応じた値を読み出して上記(2)式の演算に利用すれば、高精度な起電力OCVを演算することができる。端子間電圧CCVは電圧計測回路104の計測結果、電流Iは電流計測回路105の計測結果である。
図6は、組電池101の充電状態SOCに対する起電力OCVの特性を示す図である。組電池101の充電状態SOCに対する起電力OCVの特性データは予め測定され、電池制御回路106のメモリ106bに記憶される。端子間電圧CCV、電流I、内部抵抗Rおよび分極電圧Vpを用いて(2)式により起電力OCVを演算したら、図6の特性データから演算結果の起電力OCVに対応する充電状態SOCを検索し、検索結果の充電状態SOCを推定値とする。
充電状態演算部302による充電状態SOCの推定演算において、上述した方法とは異なる方法で充電状態を推定演算することもできる。組電池101の充放電前の初期充電状態をSOC0とし、組電池101の満充電時の容量をQmaxとすると、次式により充電状態SOCiを算出することができる。
SOCi=SOC0+100・∫Idt/Qmax ・・・(3)
(3)式において、電流Iは電流計測回路105による計測値である。また、Qmaxは、組電池101を充放電することによって実験的に把握し、電池制御回路106のメモリ106bに予め記憶させた値である。この第1の実施の形態では、上述した(2)式による充電状態SOCの推定演算と、上述した(3)式による充電状態SOCiの推定演算のどちらの方法で充電状態SOCを求めてもよい。また、(2)式および(3)式以外の方法で充電状態SOCを演算してもよいし、充電状態SOCを検出するSOC検出器を設けて直接、検出してもよい。
図7は、内部抵抗演算部303による内部抵抗Rの演算処理を説明するための図である。内部抵抗演算部303は、電池電圧Vおよび電池電流Iに基づいて組電池101の内部抵抗Rを演算により検出する。組電池101にパルス状の電流Iを流して充電または放電を行うと、組電池101が持つ内部抵抗Rと電流Iの積(I・R)分だけ電圧が上昇または減少する。そこで、内部抵抗演算部303は次式により内部抵抗Rを演算する。
R=(V1−V0)/(I1−I0) ・・・(4)
(4)式において、V1は現在の充電電圧または放電電圧、V0は1サンプリング前の充電電圧または放電電圧、I1は現在の充電電流または放電電流、I0は1サンプリング前の充電電流または放電電流である。検出された内部抵抗Rは劣化状態演算部304と内部温度診断部306へ送信される。
なお、この一実施の形態では組電池101を単電池として内部抵抗Rを演算により検出する方法を示したが、この一実施の形態の方法に限定されず、電池セル101a,101b,・・のそれぞれを単電池として取り扱い、内部抵抗を検出してもよい。例えば、セル管理回路103により電池セル101a,101b,・・ごとの電圧と電流に基づいて内部抵抗r1,r2,・・を検出し、それらの総和を組電池101の内部抵抗Rとしてもよい。
劣化状態演算部304は、内部温度推定部301による組電池101の内部温度推定結果T3、充電状態演算部302による組電池101の充電状態演算結果SOC、および内部抵抗演算部303による組電池101の内部抵抗検出結果Rに基づいて、組電池101の劣化状態SOHを求める。具体的には、(5)式に示すように、予め抽出した特性テーブルから、内部温度推定部301による内部温度推定結果T3と、充電状態演算部302による充電状態演算結果SOCとに対応する組電池101の初期内部抵抗特性値R0を表引き演算する。さらに、下記(6)式により、初期内部抵抗特性値R0と、内部抵抗演算部303により演算された現在の内部抵抗Rとを用いて、初期状態からの内部抵抗の上昇率として劣化状態SOHを演算する。
R0=Map(T3,SOC) ・・・(5),
SOH=100・R/R0 ・・・(6)
電圧計測回路104および電流計測回路105の検出精度に図8に示すような温度特性がある場合には、ある中心温度Taから温度が離れるにしたがって拡大する検出誤差を考慮し、劣化状態SOHは温度を用いた条件によって演算実行の可否を判定してもよい。すなわち、電圧計測回路104または電流計測回路105が置かれている周囲温度を第二の温度計測器202の出力T2とし、これが中心温度Taと比較して予め定めた閾値を超えて異なる場合(TbまたはTcに近い場合)には、劣化状態演算部304の動作を停止させることも可能である。
許容電流演算部305は、内部温度推定部301の内部温度推定結果T3、充電状態演算部302の充電状態演算結果SOCおよび劣化状態演算部304の劣化状態演算結果SOHを用いて、組電池101を充放電制御するための許容電流(組電池101を最大に充電および放電可能な電流)を求める。一般的に、組電池101の充電状態が高い場合は、放電可能な電流が大きく、充電可能な電流は小さくなる。これとは逆に組電池101の充電状態が低い場合は、放電可能な電流が小さく、充電可能な電流は大きくなる。演算結果の充放電可能な許容電流は、充電状態演算部302の充電状態SOCと劣化状態演算部304の劣化状態SOHとともに、外部に設置されるコントローラ(この第1の実施の形態では図1に示す車両制御回路109)に送信され、外部のコントローラは受信した入出力可能な電流の範囲内で組電池101の充放電を行う。ここでは、組電池101の充電可能な電流を許容充電電流Icmax、放電可能な電流を許容放電電流Idmaxとする。
許容充電電流Icmax、許容放電電流Idmaxを計算する前に、充電状態演算部302の充電状態演算結果SOCを用いて、(7)式のように組電池101の現在の起電力OCVを求める。なお、充電状態演算部302が上述した(2)式により充電状態SOCの演算を行う場合は、(2)式で求める起電力OCVをそのまま適用することが可能である。
OCV=Map(SOC) ・・・(7)
また、図5に示す組電池101における内部抵抗R、インピーダンスZ、キャパシタンスCの等価インピーダンスRzは、図9に示すように充電状態SOCや温度、さらには劣化状態SOHなどの状態に応じて値が変化するため、ここでは等価インピーダンスRzをマップデータ化して電池制御回路106のメモリ106bに記憶している。許容電流演算部305は、内部温度推定部301からの推定温度T3、充電状態演算部302の充電状態SOCおよび劣化状態演算部304の劣化状態SOHに基づいて、組電池101の現在の等価インピーダンスRzをマップより求める((8)式参照)。なお、等価インピーダンスRzは、内部温度T3、充電状態SOCおよび劣化状態SOHに加え、充電時や放電時などの電流に応じた特性をマップ化してもよい。
Rz=Map(T3,SOC,SOH) ・・・(8)
上述した起電力OCVおよび等価インピーダンスRzを用いることによって、許容充電電流Icmax、許容放電電流Idmaxを次式により演算する。
Icmax=(Vmax−OCV)/Rz ・・・(9),
Idmax=(OCV−Vmin)/Rz ・・・(10)
(9)、(10)式において、Vmaxは組電池101の上限電圧、Vminは組電池101の下限電圧、OCVは組電池101の現在の起電力、Rzは現在の組電池101の等価インピーダンスである。図10に(9)式および(10)式で求められる許容電流の概念図を示す。これに許容充電電流時の組電池101の電圧Vchgを乗算することによって許容充電電力Pcmaxが得られ、許容放電電流時の組電池101の電圧Vdisを乗算することによって許容放電電力Pdmaxが得られる。
Pcmax=Vchg・Icmax ・・・(11),
Pdmax=Vdis・Idmax ・・・(12)
許容電流演算部305の上記処理は、電池セル101a,101b,・・ごとの電圧やインピーダンスに基づいて計算し、最後に組電池101の許容電流および許容電力へ変換してもよく、初めから組電池101の電圧やインピーダンスに基づいて計算してもよい。計算した結果は外部に設置されるコントローラ(図1に示す車両制御回路109)に送信され、車両制御回路109は受信した許容電流または許容電力の範囲内で電池モジュール102の充放電制御を行う。
次に、内部温度診断部306の詳細な処理内容を説明する。上述したように、内部温度診断部306は、内部温度推定部301の内部温度推定結果T3、第一の温度計測器201による電池表面温度T1および内部抵抗演算部303による内部抵抗検出結果Rを用いて、内部温度推定部301による内部温度推定結果T3の診断を行う。
内部温度診断部306は、組電池101を用いた各種装置が起動した直後などに代表される、組電池101の表面温度T1=内部温度T3と見なされる条件下(以下、単にT1=T3の条件下という)において、内部抵抗演算部303により演算した組電池101内部抵抗R’(ここでは、T1=T3の条件下における内部抵抗をR’と表記する)を、電池制御回路106のメモリ106bに記録する。図11は、電池表面温度T1=電池内部温度T3の条件下における電池内部抵抗R’の記録処理を示す。ステップ1101において、内部温度診断部306は、電池表面温度T1=電池内部温度T3の条件を満たすと判断した場合は、組電池101を用いた各種装置が起動した直後からの起電力OCVの演算結果、電圧計測回路104で計測した電池電圧V、および電流計測回路105で計測した電池電流Iに基づいて発熱量Qを演算する。
Q=I・(V−OCV) ・・・(13)
この発熱量Qを時間積分することによって、組電池101の温度上昇を見積もる。
Qt=∫Qdt ・・・(14)
続くステップ1102で、発熱量積分値Qtが閾値Qthよりも小さいか否かを判別する。発熱量積分値Qtが閾値Qthより小さい場合は、まだ電池表面温度T1=電池内部温度T3の条件を満たしていると判断してステップ1103へ進み、内部抵抗演算部303で演算した内部抵抗R’を記録し続ける。一方、発熱量積分値Qtが閾値Qth以上の場合は、電池表面温度T1=電池内部温度T3の条件を満たしていないと判断し、内部抵抗R’の記録処理を終了する。なお、電池表面温度T1=電池内部温度T3の条件下で内部抵抗R’を記録する際には、内部抵抗演算部303による内部抵抗R’の演算と同時刻に、充電状態演算部302で演算されたSOCと、第一の温度計測器201で計測された電池表面温度T1と対応付けて記録する。このとき、ほぼ同一のSOCと電池表面温度T1に対応する内部抵抗R’が複数個検出された場合には、それらの内部抵抗R’の平均値を記録することによって、安定な内部抵抗R’を採用できる。なお、閾値Qthは、電池表面温度T1=電池内部温度T3の条件にあるか否かを判定するための基準値であり、電池使用開始後の内部温度T3の上昇があってもT1≒T3と見なせる適当な値を設定する。
電池表面温度T1=電池内部温度T3の状態にあるか否かを判定する方法としては、電池制御回路106が起動した直後に、第一の温度計測器201の電池表面温度T1と第二の温度計測器202の電池周囲温度T2とを比較し、両温度の差が予め定めた閾値の範囲内にある場合に、T1=T3の状態にあるとして内部抵抗R’の記録を開始する。または、インバーター107やモータージェネレーター108の温度(測定方法等を図示せず)と第二の温度計測器201の電池周囲温度T2とを比較し、両温度の差が予め定めた閾値の範囲内にある場合に、T1=T3の状態にあるとして内部抵抗R’の記録を開始する。さらには、組電池101がエンジンを備える自動車に用いられ、エンジンを始動するための電力が組電池101によって供給される駆動システムである場合には、内部抵抗R’をエンジン始動時の電池電流Iおよび電池電圧Vの変化から求めるようにしてもよい。
図12は、内部温度診断部306による内部温度推定結果T3の診断動作を示すフローチャートである。このフローチャートにより、第1の実施の形態の内部温度診断動作を説明する。組電池101が用いられる各種装置が起動され、それに伴い電池制御回路106が起動された後、内部温度診断部306は、ステップ1201において電池表面温度T1=電池内部温度T3の条件下で記録した内部抵抗R’に対応する電池表面温度T1(=T3)を調べ、第一の温度計測器201で計測される現在の組電池101の表面温度T1よりも高い温度の履歴の有無を調べる。現在の電池表面温度T1よりも高い温度の履歴がある場合はステップ1202へ進んで診断動作を開始し、そうでなければ診断動作を終了する。
内部温度の診断動作開始後のステップ1202において、内部温度推定部301により推定された組電池101の内部温度T3を入力する。続くステップ1203では、内部抵抗演算部303により演算された組電池101の内部抵抗Rを入力する。ここでは、内部温度診断動作において取得した内部抵抗をRと表記し、T1=T3条件下で取得された内部抵抗R’と区別する。ステップ1204では、T1=T3条件下の内部抵抗R’に対応付けて記録されている電池表面温度T1(=T3)の中に、ステップ1202で内部温度推定部301により推定された内部温度T3と一致する温度があるか否かを検索し、推定内部温度T3と一致する履歴表面温度T1(=T3)があればステップ1205へ進む。
ステップ1205において、メモリ106bから推定内部温度T3と一致する履歴表面温度T1(=T3)に対応する内部抵抗R’を読み出し、ステップ1203で検出した内部抵抗Rと比較する。同一の電池内部温度T3における内部抵抗Rと内部抵抗R’は本来同じ値を示すはずである。内部抵抗Rと内部抵抗R’が一致する、すなわち両抵抗の差が所定値以内の場合には、ステップ1202で推定された電池内部温度T3は正常であり信頼できると判断し、内部抵抗Rと内部抵抗R’が一致しない、すなわち両抵抗の差が所定値を越える場合には、推定された電池内部温度T3は異常であり信頼できないと判断する。
図13は、内部温度診断部306による内部温度推定結果T3の診断結果を示す。図13において、横軸は電池内部温度推定結果T3およびT1=T3の条件下における電池表面温度T1を示し、縦軸は内部抵抗検出結果RまたはR’示す。図中の黒丸印は、図11に示す内部抵抗記録処理の実行時に電池表面温度T1=電池内部温度T3の条件下で検出した内部抵抗R’と検出時の電池表面温度T1(=電池内部温度T3)をプロットしたものである。また、図中の灰色丸印は、図12に示す診断処理実行時に推定した内部温度T3と検出した内部抵抗Rをプロットしたものである。診断処理実行時に組電池101の推定内部温度T3が徐々に上昇し、記録されているT1=T3条件下の電池表面温度T1(=電池内部温度T3)と等しくなったときに、現在の内部抵抗Rを記録されている内部抵抗R’と比較する。電池の内部抵抗は電池の劣化が進むにつれて大きくなる。内部抵抗R’は過去の履歴情報であり、一方、内部抵抗Rは現在の新しい情報であるから、現在の内部抵抗Rは過去の履歴内部抵抗R’と同じかまたは大きいはずである。にも拘わらず、図13に示すように、現在の内部抵抗R検出時の推定内部温度T3と、過去の内部抵抗R’検出時の表面温度T1(=T3)とが一致したときの、現在の内部抵抗R(灰色丸印)が過去の内部抵抗R’(黒丸印)よりも小さい場合には、内部温度の推定結果T3が正しくない(異常である)と判定する。
上述したように、電池の内部抵抗は電池の劣化が進むにつれて大きくなる。したがって、電池制御回路106のメモリ106bに記憶されている内部抵抗R’の履歴データ、すなわち電池表面温度T1=電池内部温度T3の条件下で検出した内部抵抗R’と検出時の電池表面温度T1(=電池内部温度T3)の履歴データを更新する必要がある。図14により内部抵抗履歴データの更新方法を説明する。図14において、横軸は電池内部温度推定結果T3およびT1=T3の条件下における電池表面温度T1を示し、縦軸は内部抵抗検出結果RまたはR’示す。
内部温度診断部306は、電池表面温度T1=電池内部温度T3の条件を満たし、かつメモリ106bに記憶されている電池表面温度T1(=T3)と内部抵抗R’の履歴データの中に現在の電池表面温度T1よりも高い温度が記憶されていることを確認し、診断動作を開始する。診断開始後、電池表面温度T1=電池内部温度T3の条件下、つまり、発熱量積分値Qtが閾値Qthよりも小さい条件下で検出した内部抵抗R”が、明らかに過去の履歴内部抵抗R’と比較して大きい場合、内部温度診断部306は、組電池101が劣化したと判断する。このとき、検出時のSOCや温度などの条件が近い履歴内部抵抗R’が記憶されている場合には、その履歴内部抵抗R’と今回検出した内部抵抗R”とを比較し、内部抵抗の上昇率を計算する。そして、温度が高い条件下で記録した履歴内部抵抗R’に対して上記上昇率を乗じることによって、組電池101の現在の劣化状態における電池表面温度T1(=T3)に対する内部抵抗R’の履歴データを生成する。つまり、履歴データを更新する。
なお、高い温度の履歴内部抵抗R’には、低い温度の上昇率をそのまま適用してもよいし、内部抵抗上昇率が温度に応じて異なる場合には、予め実験で求めた内部抵抗上昇率の温度依存特性を適用することによって、温度依存特性を加味した内部抵抗上昇率を用いて高い温度の内部抵抗履歴値を更新する。
組電池101を充放電するのにともなって電池温度が上昇し、内部温度推定値T3と高い方の履歴表面温度T1(=T3)とが一致した場合に、内部抵抗検出値Rと更新後の履歴内部抵抗R’とを比較する。内部温度診断部306は、内部抵抗検出値Rが更新後の履歴内部抵抗R’より予め定めた閾値以上低い場合に、内部温度推定値T3が異常であり信頼できないと判定する。このように、組電池101が長期間放置された場合などに生じる電池の劣化による特性の変化があっても、内部温度推定結果T3を正しく診断することができる。なお、図14では更新後の履歴内部抵抗R’よりも低い内部抵抗Rが検出された場合に内部温度推定結果T3を異常と判定する例を示したが、更新後の履歴内部抵抗R’よりも高い内部抵抗Rが検出された場合でも異常と判定してもよい。
以上説明したように、過去に検出した内部抵抗R’の履歴を用いることによって、組電池101の内部温度推定結果T3に対する正確な診断が可能となる。これにより、信頼性の高い内部温度推定結果T3に基づいて組電池の101の各種状態を正確に検出でき、組電池101を電源とする各種装置の信頼性を向上させることができる。
《第2の実施の形態》
上述した第1の実施の形態では、電池内部温度T3が電池表面温度T1と一致している状態か否かを種々の方法で判断し、一致していると判断された場合に電池の内部抵抗R’を演算し、電池表面温度T1と対応付けて内部抵抗R’を記録していき、内部抵抗R’の履歴データを構築して内部温度推定結果T3が信頼できる値か否かを診断する例を示したが、内部抵抗R’の履歴データを別の方法により構築するようにした第2の実施の形態を説明する。
この第2の実施の形態では、組電池101または電池モジュール102を恒温槽内に入れて長時間保存することで電池表面温度T1と電池内部温度T3とを一致させ、充放電試験を行う。恒温槽設定温度を複数回変えて充放電試験を行うことで、電池表面温度T1と電池内部温度T3がT1=T3の条件の内部抵抗R’のデータテーブルを構築する。そして、このデータテーブルを用いて内部温度推定結果T3の信頼性を診断する。内部抵抗R’のデータテーブルは、温度(T1=T3)やSOC、あるいは電流などをパラメーターとして変化させて温度、SOC、電流などに応じたデータテーブルを作成し、内部温度診断部306はもとより、充電状態演算部302や劣化状態演算部304などでも内部抵抗として用いてもよい。このような内部抵抗R’のデータテーブルを参照すると、少なくとも温度に応じて変化する内部抵抗R’の特性曲線を得ることができる。なお、内部抵抗R’のデータテーブルを関数化して記憶し活用するようにしてもよい。内部抵抗R’データテーブルあるいはそれを関数化したデータは、電池制御回路106のメモリ106bに予め記憶される。
この第2の実施の形態では、内部温度診断部306は、内部温度推定部301から内部温度の推定結果T3を、内部抵抗演算部303から検出結果の内部抵抗Rをそれぞれ取得するとともに、記憶されている内部抵抗R’のデータテーブルの中から推定内部温度T3と同一の表面温度T1(=T3)の内部抵抗R’を検索し、両者を比較することによって内部温度推定結果T3が信頼性のある値か否かを診断する。図15は、第2の実施の形態の内部温度推定結果T3の診断方法を説明するための図であり、横軸は電池内部温度推定結果T3およびT1=T3の条件下における電池表面温度T1を示し、縦軸は内部抵抗検出結果RまたはR’示す。図15に示すように、破線で示す内部抵抗R’の特性曲線Pと、現在の内部温度推定結果T3に対する内部抵抗R(図中に灰色丸印で示す)の変化傾向が一致している場合(抵抗値の差が所定値以内)は、内部温度の推定結果T3には信頼性があり、正常な値であると判断する。同一温度における内部抵抗R’と内部抵抗Rとの差が所定値以上ある場合には、内部温度の推定結果T3には信頼性がなく、異常な値であると判断する。なお、記憶されている内部抵抗R’のデータテーブルが初期の特性である場合には、現在の内部抵抗Rは組電池101の劣化にともなって抵抗値が大きくなっているはずである。したがって、現在の内部抵抗Rが記憶されている内部抵抗R’よりも小さい場合には、明らかに内部温度の推定結果T3は異常であり、信頼できないと判断できる。
ところで、組電池101の劣化にともなって内部抵抗が増加するため、内部抵抗R’のデータテーブルを更新する必要がある。図16により、内部抵抗R’のデータテーブルを更新する方法を説明する。図16において、横軸は電池内部温度推定結果T3およびT1=T3の条件下における電池表面温度T1を示し、縦軸は内部抵抗検出結果RまたはR’示す。また、特性曲線P1は更新前の内部抵抗R’の特性曲線である。組電池101を備える各種装置が起動され、それに伴い電池制御回路106が起動された後、組電池101が表面温度T1=内部温度T3の状態から発熱量Qの積分値Qtが閾値Qthよりも小さい間は、内部抵抗演算部303により図7に示す方法で内部抵抗R’を演算により検出する。そして、検出結果の内部抵抗R’を、予め記憶されている更新前の内部抵抗R’のデータテーブルから同じSOCや温度の条件で演算された更新前の内部抵抗R’を検索し、更新前の値からの内部抵抗上昇率を演算する。なお、この処理は劣化状態演算部304の処理とほぼ同様である。
演算した内部抵抗上昇率は、他の温度に対応する更新前の内部抵抗R’にも乗算され、組電池101の劣化による内部抵抗上昇を補正した内部抵抗R’のデータテーブルが生成され、内部抵抗R’のデータテーブルが更新される。図16において、電池表面温度T1=電池内部温度T3の条件下における電池温度(T1=T3)に対する内部抵抗R’の特性曲線は、更新前の特性曲線P1から現在の特性曲線P2に更新される。なお、内部抵抗R’の上昇率に温度特性などが有る場合は、予め実験によりこの温度特性を把握し、これを考慮に入れた上で各種状態の内部抵抗R’に内部抵抗上昇率を反映させるとよい。内部温度推定部301の推定結果が正しい場合は、推定内部温度T3に対応する内部抵抗Rの検出値の変化傾向が、更新後の最新の内部抵抗データテーブルの特性曲線P2と一致するはずである。
内部温度診断部306は、推定内部温度T3と内部抵抗Rを演算してこれらの変化傾向を取得し、更新した最新の特性曲線P2と比較することによって推定内部温度T3の信頼性を判定する。具体的には、更新した新しい履歴内部抵抗R’のデータテーブルから推定内部温度T3に対応する履歴内部抵抗R’を検索し、この内部抵抗R’と内部抵抗演算部303による検出結果の内部抵抗Rとを比較する。内部抵抗Rと履歴内部抵抗R’との差が予め定めた閾値以上大きい、もしくは小さい場合には、推定内部温度T3が異常であって信頼できないと判断する。
なお、内部温度推定結果T3に対する診断は、現在の内部温度推定結果T3における内部抵抗R、過去に記録した表面温度T1(=内部温度T3)における内部抵抗R’との比較により行っているが、充電状態SOCや電流などを条件に加え、温度、SOC、電流などの条件が一致しているにも関わらず内部抵抗が異なる場合に異常と判断することによって、診断結果の信頼性をさらに向上させることもできる。
《第3の実施の形態》
内部温度推定結果T3を診断した結果、異常な値であって信頼性がないと判断された場合に、許容電流演算部305で演算される許容電流を制限するようにした第3の実施の形態を説明する。図17は、第3の実施の形態の電池制御回路106Aの処理内容を示すブロック図である。この第3の実施の形態では、図3に示す第1および第2の実施の形態の許容電流演算部305の代わりに許容電流演算部305Aを用いた電池制御回路106Aによって診断処理を行う。
内部温度診断部306により内部温度推定結果T3が異常と判定された場合に、許容電流演算部305Aは、第一の温度計測器201からの電池表面温度T1(第1の実施の形態では、内部温度推定部301からの内部温度推定結果T3を用いていた)、充電状態演算部302の充電状態SOCおよび劣化状態演算部304の劣化状態SOHに基づいて、組電池101の現在の等価インピーダンスRzをマップより求める((15)式参照、第1の実施の形態では(8)式により等価インピーダンスRzを求めた)。なお、等価インピーダンスRzは、表面温度T1、充電状態SOCおよび劣化状態SOHに加え、充電時や放電時などの電流に応じた特性をマップ化してもよい。
Rz=Map(T1,SOC,SOH) ・・・(15)
この等価インピーダンスRzと上述した起電力OCVを用い、上記(9)式および(10)式により許容充電電流Icmaxと許容放電電流Idmaxを演算する。
このように、許容電流演算部305Aは、推定された内部温度T3の診断結果が異常の場合に、電池内部温度T3に代えて電池表面温度T1を用いて許容電流Icmax、Idmaxを演算する。一般的に、組電池101の温度は内部温度よりも表面温度の方が低いため、(15)式で求められる等価インピーダンスRzが大きくなり(図9参照)、その結果(9)式、(10)式により求められる許容充電電流Icmaxおよび許容放電電流Idmaxが小さくなり、内部温度推定結果T3が異常と診断された場合は許容充放電電流Icmax、Idmaxが正常時よりも小さい値に制限される(図18参照)。なお、上記(11)式、(12)式により求められる許容充電電力Pcmaxおよび許容放電電力Pdmaxも小さくなり、制限される。
この第3の実施の形態によれば、推定された内部温度T3の診断結果が異常とされた場合でも、組電池101を安全に充放電制御することができる。なお、内部温度診断部306が異常として判定した場合の許容電流演算部305Aの他の許容電流演算方法として、第1および第2の実施の形態の演算結果の許容充電電流Icmaxおよび許容放電電流Idmaxを単純に1/2や1/3としてもよい。あるいは、組電池101が寿命として判定される性能相当の許容電流まで小さく制限してもよい。
ここで、第3の実施の形態において、図2に示す第一の温度計測器201と第二の温度計測器202に外乱が入ったか、あるいは両温度計測器201、202が故障した場合の動作を説明する。第一の温度計測器201と第二の温度計測器202に、真の温度よりも高い温度と誤認識する外乱が入ったか、あるいは高い温度と誤認識する故障が発生した場合に、内部温度診断部306は、組電池101が高い温度環境下におかれていると誤判断する。電池表面温度T1=電池内部温度T3の条件下での内部抵抗Rの検出結果を、両温度計測器201、202に外乱が入るかあるいは故障する前の正常時の履歴と、外乱が入ったあるいは故障した後の履歴とを合わせてプロットすると、図19に黒丸印で示すようになる。図19において、横軸は電池内部温度推定結果T3およびT1=T3の条件下における電池表面温度T1を示し、縦軸は内部抵抗検出結果RまたはR’示す。正常時の履歴は内部温度T3が低い側に現れ、一方、故障後の履歴は内部温度T3が高い側に現れる。しかし、どちらの場合も組電池101の真の内部温度T3に違いはないので、図19に示すように内部抵抗演算部303による検出結果の内部抵抗Rは同じ値になる。
内部温度診断部306は、内部温度推定部301による推定結果の内部温度T3に対する内部抵抗演算部303による検出結果の内部抵抗Rが一定値になることが真の状態であると判断する。この後、両温度計測器201、202が正常な状態に復帰した場合、組電池101を充放電すると、電池内部温度T3の上昇にともなって内部抵抗Rが図19にAで示す経路に沿って変化し、灰色の丸印で示す値になる。つまり、図9に示したように、電池内部温度T3が上昇すると内部抵抗Rが低下する。ところが、図19に灰色の丸印で示す内部抵抗Rは、同じ内部温度T3の過去の内部抵抗R(図19に黒丸印で示す右側のグループ)と一致せず、したがって内部温度診断部306は内部温度推定結果T3が異常と判断することになる。
一方、両温度計測器201、202が外乱または故障による異常状態のままになっている場合には、組電池101が高い温度下に置かれていると誤認識したまま(温度値は固定)となり、充放電に伴い真の組電池101の温度が上昇するため内部抵抗Rが低下し、結果として図19にBの経路にそって内部抵抗Rが変化する。この場合にも過去の履歴結果から外れるため、内部温度診断部306は、推定結果の内部温度T3の異常と診断する。いずれの場合にも、第3の実施の形態によれば内部温度推定結果T3の異常検知に応じて許容電流が低い値に制限されるため、両温度計測器201、202に外乱が入ったり、あるいは故障が発生した場合でも、組電池101への入出力電流、入出力電力が制限されることになる。
次に、組電池101および電池モジュール102は交換可能であるため、異なる特性のものと載せ替えられる可能性がある。第3の実施の形態において、組電池101が想定とは異なる特性のものに載せ替えられた場合について説明する。このとき、電池制御回路106のメモリ106bには載せ替え前の組電池101および電池モジュール102に関する各種特性情報が記憶されている。これらの特性情報には、第2の実施の形態で上述した電池表面温度T1=電池内部温度T3の条件下で測定した電池内部抵抗R’のデータテーブルなどが含まれる。これらの特性情報は載せ替え後の組電池101および電池モジュール102の特性情報と異なるため、電池制御回路106による載せ替え後の組電池101および電池モジュール102の各種状態検知の精度が低下するおそれがある。このような状況下では組電池101の充放電を制限することが望ましい。
上述した第2の実施の形態に第3の実施の形態の許容電流制限機能を付加した場合に、内部温度診断部306は、メモリ106bに記憶されている載せ替え前の組電池101の内部抵抗R’のデータテーブル(あるいは内部抵抗R’の関数)を用いて、載せ替え後の特性の異なる組電池101の内部温度推定結果T3に対する内部抵抗Rの変化傾向を診断することになる。組電池101が特性の異なるものに取り替えられた場合には、組電池101を充放電して得られる内部温度推定結果T3に対する内部抵抗Rの変化傾向は、記憶されている内部抵抗R’のデータテーブルの電池表面温度T1(=T3)に対する内部抵抗R’の変化傾向と異なる。
図20は、異なる特性の電池Aと電池Bの内部温度推定結果に対する内部抵抗の変化傾向を示す。図20において、横軸は電池内部温度推定結果T3およびT1=T3の条件下における電池表面温度T1を示し、縦軸は内部抵抗検出結果RまたはR’示す。また、図中の特性曲線は、メモリ106bに記憶されている載せ替え前の電池の内部抵抗のデータテーブルから抽出した内部温度推定結果に対する内部抵抗の特性曲線を表す。載せ替え後の電池Aは、メモリ106bに記憶されている電池特性と比較して、内部温度の変化に対して内部抵抗の変化が大きい。一方、載せ替え後の電池Bは、内部温度の変化に対して内部抵抗の変化が小さい。また、メモリ106bに記憶されている電池特性と比較して、載せ替え後の電池Aは電池表面温度と内部温度の差が大きく、載せ替え後の電池Bは電池表面温度と内部温度の差が小さい。いずれにしても、電池制御回路106のメモリ106bに記憶されている電池の特性情報とは異なる特性を持つ別の電池Aまたは電池Bが載せ替えられると、内部温度診断部306は内部温度推定結果を異常と判定する。このとき、第3の実施の形態の許容電流演算部305Aは、異常検知に応じて許容電流を低い値に制限するので、想定とは異なる組電池101または電池モジュール102が載せ替えられた場合でも、組電池101の入出力を制限することができる。
《第4の実施の形態》
内部温度の推定結果T3の信頼性がなく異常と判定された場合に、内部温度推定用パラメーターを補正して信頼性のある内部温度推定結果が得られるようにした第4の実施の形態を説明する。図21は第4の実施の形態の電池制御回路106Bの処理内容を示す。この第4の実施の形態では、図3に示す第1および第2の実施の形態の電池制御回路106に対し、パラメーター補正部2101を付加した電池制御回路106Bにより診断を行う。
図22により、第4の実施の形態のパラメーター補正部2101の動作を説明する。図22において、横軸は電池内部温度推定結果T3およびT1=T3の条件下における電池表面温度T1を示し、縦軸は内部抵抗検出結果RまたはR’示す。また、図中の特性曲線は、電池表面温度T1=電池内部温度T3の条件下で検出した内部抵抗の温度に対する変化を示す。内部温度推定部301による内部温度推定結果T3が正しい場合は、充放電途中の内部温度推定結果T3に対する内部抵抗Rの変化は図中の特性曲線に近い傾向となるはずである。組電池101が劣化している場合には、第1または第2の実施の形態において説明した方法により、特性曲線が現在の組電池101の特性に合致するように更新し、更新後の特性曲線を用いて診断を行う。
内部温度診断部306により内部温度推定部301の内部温度推定結果T3が異常と判定された場合には、パラメーター補正部2101は、内部温度推定部301で用いる内部温度推定用のパラメーターを、内部温度推定精度が向上する方向へ補正する。例えば、組電池101を用いた各種装置が起動されて電池制御回路106Bが起動し、内部温度推定部301が内部温度T3の推定を行い、内部抵抗演算部303が内部抵抗Rを求める。内部抵抗Rの検出値が図22の領域Xに分布した場合は、内部温度推定部301で用いる傾きA(図4参照)を下げる方向に補正する。一方、内部抵抗Rの検出値が図22の領域Yに分布した場合は、傾きAを上げる方向に補正する。このパラメーター補正部2101によって、内部温度推定部301の内部温度推定結果が内部温度診断部306で異常と判定された場合に、内部温度推定部301で用いる内部温度推定用パラメーターを誤差が改善する方向に補正でき、パラメーターの補正を行うことによって内部温度の推定精度を維持することができる。
《第5の実施の形態》
上述したように内部温度推定部301による内部温度T3の推定は、電池表面温度T1、電池周囲温度T2および冷却風の風速Wに基づいて行われる。したがって、電池内部温度T3の推定結果が異常となる原因として、図2に示すファン203による冷却動作の異常がある。そこで、この第5の実施の形態では、内部温度診断部306が内部温度推定結果T3を異常と判定した場合に、組電池101の冷却異常を通知する。図23は第5の実施の形態の電池制御回路106Cの処理内容を示す。この第5の実施の形態では、図3に示す第1および第2の実施の形態の電池制御回路106に冷却異常通知部2301を付加した電池制御回路106Cにより診断を行う。
図24により冷却異常通知部2301の動作を説明する。図24において、横軸は電池内部温度推定結果T3およびT1=T3の条件下における電池表面温度T1を示し、縦軸は内部抵抗検出結果RまたはR’示す。内部温度診断部306により内部温度推定結果T3が異常と判定された場合に、冷却異常通知部2301は、内部温度推定部301による内部温度推定結果T3と内部抵抗演算部303による内部抵抗検出結果Rとの関係を確認する。図24に示すように、内部抵抗Rの検出値が領域Xにプロットされている場合は、内部抵抗Rが予想よりも大きい、すなわち、電池内部温度推定結果T3が予想よりも低いことを示す(温度と抵抗の関係は図9参照)。図4に示すように、冷却風速Wに応じた傾きAの関係に基づいて電池内部温度T3を推定しているが、実際の電池内部温度が推定結果T3よりも低いということは傾きAが予想よりも小さい、すなわち、実際の風速Wが想定よりも速くないと判定できる。冷却異常通知部2301は、これにより電池モジュール102に設置するファン203による冷却において、風速設定値と比較して風速が足りない異常と判定する。これは、電池制御回路106Cまたは外部のコントローラ(例えば車両制御回路109)から発信されるファン203の駆動信号(風速設定値)に対して、実際のファン203の駆動が弱い状態である。冷却異常通知部2301の検知結果は電池制御回路106Cを介して車両制御回路109へ送信されるか、または直接、車両制御回路109へ送信される。
一方、内部温度推定結果T3に対する内部抵抗検出値Rが図24の領域Yにプロットされている場合は、内部抵抗Rが予想よりも小さい、すなわち、内部温度推定結果T3が予想よりも高いことを示し、図4に示す風速Wに応じた傾きAが予想よりも大きいことを示す。冷却異常通知部2301は、電池モジュール102を冷却するファン203の風速Wが過大であると判定する。これは、電池制御回路106Cまたは外部のコントローラ(例えば車両制御回路109)から発信されるファン203の駆動信号(風速設定値)に対して、ファン203が過大に駆動されている状態であり、ファン203の停止命令に対してファン203が停止しないなどの故障発生時が考えられる。冷却異常通知部2301は車両制御回路109にこの異常情報を送信する。
以上述べたように、第5の実施の形態によれば、内部温度診断部306の判定結果に基づいて冷却異常通知部2301がファンの駆動が弱い、あるいは過大であることを検知して外部に通知することができる。
《第6の実施の形態》
内部温度推定結果T3が異常であると判定された場合に、内部温度推定結果T3に対する内部抵抗検出値Rに基づいて異常原因を特定するようにした第6の実施の形態を説明する。この第6の実施の形態では、図25に示すように、図3に示す第1および第2の実施の形態の電池制御回路106に異常原因特定部2501を付加した電池制御回路106Dにより診断を行う。
図26は、異常原因特定部2501の異常原因特定処理を示すフローチャートである。内部温度診断部306により内部温度推定結果T3が異常と判定された場合には、異常原因特定部2501は、ステップ2601において、内部温度推定結果T3と内部抵抗検出値Rの関係を確認する。そして、図24に示すように、予想よりも内部抵抗Rが高い、すなわち、予想よりも内部温度推定結果T3が低い領域か(領域X)、予想よりも内部抵抗Rが小さい、すなわち、予想よりも内部温度推定結果T3が高い領域(領域Y)かを判定する。
内部温度推定結果T3に対する内部抵抗検出値Rが領域Xにあると判定された場合はステップ2602へ進み、ファン203が設定風速に対して正しく動作しているかをチェックする。ファン203の動作確認は、図2に示すようにファン203からの信号を受信することによって実現できる。例えば、ファン203からの信号のデューティ比をチェックするか、パルス幅をチェックする。なお、ファン203の動作確認が可能であれば、上述した診断方法に限定されず他の診断方法でもよいものとする。ファン203の駆動状態に異常が発見された場合は、ファン203の異常と判定する。ファン203の駆動状態に異常が発見されない場合には、ファン203が設定風速に対して正しく動作している状態にも関わらず、風速が足りない(領域X)ことを意味し、電池モジュール102の冷却を行うための空気の入り口(吸気口)に設けたフィルターの目詰まりが原因と判定する。そこで、異常原因特定部2501は、この内部温度推定結果T3の異常をフィルターの目詰まりが原因と判定する。
一方、ステップ2601において内部温度推定結果T3に対応する内部抵抗Rの検出値が領域Yにあると判定された場合はステップ2603へ進み、ファン203が設定風速に対して正しく動作しているかをチェックする。ファン203の動作確認は、領域Xの上記処理と同様に、ファン203からの信号を解析することによって実現できる。ファン203の駆動状態に異常が発見された場合は、ファン203の異常と判定する。ファン203の駆動状態に異常が発見されなかった場合は、ファン203が設定風速に対して正しく動作している状態にも関わらず、風速Wが過剰である(領域Y)ことを意味する。しかし、ファン203が正しく動作しているにも関わらず、さらに過剰な風速Wが得られる可能性は考えにくい。
ここで、組電池101が角型形状である場合には、長い期間の使用後は形状が変化する、具体的には膨れる可能性がある。組電池101が膨れると、通常よりも組電池101内部から表面への温度の伝わりが悪くなる。結果として、電池表面温度T1と電池内部温度T3の傾きAの関係が想定と異なってくる。すなわち、組電池101の表面温度と内部温度との差が想定よりも大きくなる(領域Yに相当する)。そこで、異常原因特定部2501は、領域Yの異常と判定され、かつファン203に異常が発見されない場合は、異常の原因を角型の組電池101の形状変化(膨れ)のためと判定する。
この第6の実施の形態では、異常原因特定部2501を用いることによって組電池101の内部温度推定結果T3の異常を発生させている原因を特定することが可能になる。
なお、上述した実施の形態では、本発明の電池制御装置を車両用モーター駆動システムに用いた例を示したが、本発明の電池制御装置およびモーター駆動システムは電気自動車およびハイブリッド電気自動車などの車両用に限定されず、一般産業用、モバイル、UPSなどの幅広い分野のモーター駆動システムに適用可能であり、上述したような優れた効果を得ることができる。
なお、上述した実施の形態とそれらの変形例において、実施の形態どうし、または実施の形態と変形例とのあらゆる組み合わせが可能である。また、本発明は上述した実施の形態とその変形例に限定されるものではなく、本発明の技術的思想の範囲内で考えられるその他の態様も本発明の範囲内に含まれる。
上述した実施の形態とその変形例によれば以下のような作用効果を奏することができる。まず、組電池101の表面温度T1と内部温度T3との差が所定値以内の条件下において検出された組電池101の表面温度T1と内部抵抗R’とを対応付けてメモリ106bに記憶しておき、内部温度推定部301により推定された組電池101の内部温度T3が正常か否かを診断する内部温度診断部306は、内部温度推定部301により内部温度T3が推定されたときに内部抵抗演算部303により内部抵抗Rを検出するとともに、メモリ106bに記憶されている内部抵抗R’の中から内部温度推定値T3と等しい表面温度T1に対応する内部抵抗R’を検索し、この検索結果の内部抵抗R’と内部温度推定時の内部抵抗Rとの比較結果に基づいて内部温度推定値T3を診断するようにしたので、組電池101の内部温度推定値T3の信頼性を正確に診断することができ、信頼性の高い内部温度推定値T3に基づいて組電池101の状態を正確に検出することができる。
また、上述した実施の形態とその変形例によれば、内部温度診断部306は、検索結果の内部抵抗R’と内部温度推定時の内部抵抗Rとの差が所定値を越える場合に、内部温度推定値T3は異常であると診断するようにしたので、組電池101の内部温度推定値T3の異常を正確に診断することができ、信頼性の高い内部温度推定値T3に基づいて組電池101の状態を正確に検出することができる。
上述した実施の形態とその変形例によれば、組電池101の表面温度T1と内部温度T3との差が所定値以内の条件を満たすか否かを判定し、前記条件を満たすと判定された場合に、検出された組電池101の表面温度T1と内部抵抗演算部303により検出された内部抵抗R’とを対応付けてメモリ106bに記憶するようにしたので、組電池101の表面温度T1と内部温度T3との差が所定値以内の条件を満たす内部温度R’と表面温度T1の履歴データを正確かつ容易に蓄積することができ、内部温度推定値T3の異常診断精度を向上させることができる。
上述した実施の形態とその変形例によれば、組電池101の表面温度検出値と周囲温度検出値との差が所定値以内の場合に、組電池101の表面温度T1と内部温度T3との差が所定値以内の条件を満たすと判定するようにしたので、組電池101の表面温度T1と内部温度T3との差が所定値以内の条件判定を容易にかつ正確に行うことができる。
上述した実施の形態とその変形例によれば、組電池101の表面温度T1と内部温度T3との差が所定値以内の条件を満たすと判定されたときに、組電池101の表面温度T1を検出するとともに、内部抵抗演算部303により組電池101の内部抵抗R’を検出し、これらの表面温度T1と内部抵抗R’の検出値に基づいてメモリ106bに記憶されている表面温度T1と内部抵抗R’を更新するようにしたので、組電池101の劣化にともなう内部抵抗変化を正確に反映した内部抵抗R’の履歴データを用意することができ、組電池101が経時劣化しても組電池101の内部温度推定値T3の信頼性を正確に診断することができ、信頼性の高い内部温度推定値T3に基づいて組電池101の状態をいつまでも正確に検出することができる。
上述した実施の形態とその変形例によれば、組電池101の表面温度検出値と周囲温度検出値、組電池101を冷却する冷却風の風速検出値、および内部温度推定用パラメーターに基づいて組電池101の内部温度T3を推定するようにしたので、組電池101の内部温度T3を正確に推定することができる。
上述した実施の形態とその変形例によれば、内部温度推定用パラメーターは、組電池101の表面温度と周囲温度との差に対する組電池101の内部温度と周囲温度との差の関係を示す一次関数の傾きAであり、冷却風の風速に応じた値を有し、内部温度推定部301は、内部温度診断部306により内部温度推定値T3が異常であると診断された場合に、内部温度推定用パラメーターAを補正するようにしたので、組電池101に劣化などがあっても、内部温度推定値T3の推定精度をいつまでも高い状態に維持することができる。
上述した実施の形態とその変形例によれば、内部温度診断部306により内部温度推定値T3が異常であると診断された場合に、組電池101に流れる充放電電流を制限するようにしたので、組電池101を用いたモーター駆動システムの信頼性を向上させることができる。
上述した実施の形態とその変形例によれば、内部温度診断部306により内部温度推定値T3が異常と判定された場合に、内部温度推定部301により内部温度T3が推定されたときに内部抵抗演算部303により検出した内部抵抗検出値Rと、メモリ106bから検索した内部温度推定値T3と等しい表面温度T1に対応する内部抵抗検索値R’との大小関係に基づいて、内部温度推定値T3の異常原因を特定するようにしたので、内部温度推定値T3の異常原因を把握することができる。

Claims (11)

  1. 電池の内部抵抗を検出する内部抵抗検出手段と、
    前記電池の表面温度を検出する表面温度検出手段と、
    前記電池の内部温度を推定する内部温度推定手段と、
    前記電池の表面温度と内部温度との差が、前記電池の表面温度と前記内部温度とが実質的に同一と見なされる所定値以内の条件下で前記表面温度検出手段により検出された表面温度と前記内部抵抗検出手段により検出された内部抵抗とを対応付けて記憶するデータ記憶手段と、
    前記内部温度推定手段により推定された前記電池の内部温度が正常か否かを診断する内部温度診断手段とを備え、
    前記内部温度診断手段は、前記内部温度推定手段により内部温度が推定されたときに前記内部抵抗検出手段により内部抵抗を検出するとともに、前記データ記憶手段に記憶されている内部抵抗の中から前記内部温度推定値と等しい前記表面温度に対応する内部抵抗を検索し、この検索結果の内部抵抗と前記内部温度推定時の内部抵抗との差に基づいて前記内部温度推定値の異常の有無を診断することを特徴とする電池制御装置。
  2. 請求項1に記載の電池制御装置において、
    前記内部温度診断手段は、前記検索結果の内部抵抗と前記内部温度推定時の内部抵抗との差が所定値を越える場合に、前記内部温度推定値は異常であると診断することを特徴とする電池制御装置。
  3. 請求項1または請求項2に記載の電池制御装置において、
    前記電池の表面温度と内部温度との差が所定値以内の条件を満たすか否かを判定する状態判定手段と、
    前記状態判定手段により前記条件を満たすと判定された場合に、前記表面温度検出手段により検出された表面温度と前記内部抵抗検出手段により検出された内部抵抗とを対応付けて前記データ記憶手段に記憶するデータ蓄積手段とを備えることを特徴とする電池制御装置。
  4. 請求項3に記載の電池制御装置において、
    前記状態判定手段は、前記電池の周囲温度を検出する周囲温度検出手段を有し、前記表面温度検出手段による表面温度検出値と前記周囲温度検出手段による周囲温度検出値との差が所定値以内の場合に、前記条件を満たすと判定することを特徴とする電池制御装置。
  5. 請求項3または請求項4に記載の電池制御装置において、
    前記状態判定手段により前記条件を満たすと判定されたときに、前記表面温度検出手段により前記電池の表面温度を検出するとともに、前記内部抵抗検出手段により前記電池の内部抵抗を検出し、これらの表面温度と内部抵抗の検出値に基づいて前記データ記憶手段に記憶されている表面温度と内部抵抗を更新するデータ更新手段を備えることを特徴とする電池制御装置。
  6. 請求項1〜5のいずれか一項に記載の電池制御装置において、
    前記内部温度推定手段は、前記電池の周囲温度を検出する周囲温度検出手段と、前記電池を冷却する冷却風の風速を検出する風速検出手段とを有し、
    前記表面温度検出手段による表面温度検出値、前記周囲温度検出手段による周囲温度検出値、前記風速検出手段による風速検出値、および前記電池の表面温度と周囲温度との差に対する前記電池の内部温度と周囲温度との差の関係を示す一次関数の傾きを表す内部温度推定用パラメーターに基づいて前記電池の内部温度を推定することを特徴とする電池制御装置。
  7. 請求項6に記載の電池制御装置において、
    前記内部温度推定用パラメーターは、前記冷却風の風速に応じた値を有し、
    前記内部温度推定手段は、前記内部温度診断手段により内部温度推定値が異常であると診断された場合に、前記一次関数の傾きを変化させることによって前記内部温度推定用パラメーターを補正することを特徴とする電池制御装置。
  8. 請求項1〜7のいずれか一項に記載の電池制御装置において、
    前記電池制御装置の前記内部温度診断手段により内部温度推定値が異常であると診断された場合に、前記電池に流れる充放電電流を制限する電流制限手段を備えることを特徴とする電池制御装置。
  9. 電池と、
    フィルターを通して前記電池に冷却風を送風する送風手段と、
    請求項1〜8のいずれか一項に記載の電池制御装置とを備えることを特徴とするモーター駆動システム。
  10. 請求項9に記載のモーター駆動システムにおいて、
    前記内部温度診断手段により前記内部温度推定値が異常と判定された場合に、前記内部温度推定手段により内部温度が推定されたときに前記内部抵抗検出手段により検出した内部抵抗検出値と、前記データ記憶手段から検索した前記内部温度推定値と等しい前記表面温度に対応する内部抵抗検索値との大小関係を比較して、前記内部抵抗検索値が大きい場合には、前記内部温度推定値の異常原因として冷却動作の不足を特定し、前記内部抵抗検索値が小さい場合には、前記内部温度推定値の異常原因として冷却動作の過剰を特定する原因特定手段を備えることを特徴とするモーター駆動システム。
  11. 請求項10に記載のモーター駆動システムにおいて、
    前記原因特定手段は、前記内部抵抗検出値が前記内部抵抗検索値よりも大きい場合には、前記送風手段の風速不足か、または前記フィルターの目詰まりが原因であると特定し、前記内部抵抗検出値が前記内部抵抗検索値よりも小さい場合には、前記送風手段の風速過大か、または前記電池の膨れが原因であると特定することを特徴とするモーター駆動システム。
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