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JP5458022B2 - ポルフィラジン色素、これを含有するインク組成物及び着色体 - Google Patents

ポルフィラジン色素、これを含有するインク組成物及び着色体 Download PDF

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Description

本発明は新規ポルフィラジン色素又はその塩、これを含有するインク組成物、このインク組成物を用いたインクジェット記録方法及び着色体に関する。
近年、画像記録材料としては、特にカラー画像を形成するための材料が主流であり、具体的には、インクジェット方式記録材料、感熱転写型画像記録材料、電子写真方式を用いる記録材料、転写式ハロゲン化銀感光材料、印刷インク、記録ペン等が盛んに利用されている。また、ディスプレーではLCD(液晶ディスプレー)やPDP(プラズマディスプレーパネル)において、撮影機器ではCCD(撮動素子)等の電子部品において、カラーフィルターが使用されている。これらのカラー画像記録材料やカラーフィルターでは、フルカラー画像を再現あるいは記録するために、いわゆる加法混色法や減法混色法の3原色の色素(染料や顔料)が使用されている。しかし、好ましい色再現域を実現出来る吸収特性を有し、且つさまざまな使用条件に耐えうる色素がないのが実状であり、改善が強く望まれている。
インクジェット記録方法は、材料費が安価であること、高速記録が可能なこと、記録時の騒音が少ないこと、更にカラー記録が容易であることから、急速に普及し、更に発展しつつある。インクジェット記録方法には、連続的にインクの液滴を吐出させるコンティニュアス方式と、画像情報信号に応じて該液滴を吐出させるオンデマンド方式が有る。その吐出方式にはピエゾ素子により圧力を加えて液滴を吐出させる方式、熱によりインク中に気泡を発生させて液滴を吐出させる方式、超音波を用いた方式、あるいは静電力により液滴を吸引吐出させる方式等がある。また、インクジェット記録に適したインクの例としては、水性インク、油性インク、あるいは固体(溶融型)インク等が挙げられる。
このようなインクジェット記録に適したインクに用いられる色素に対して要求される性能としては、溶剤に対する溶解性あるいは分散性が良好なこと、高濃度記録が可能であること、色相が良好であること、光、熱、環境中の活性ガス(NOx、オゾン等の酸化性ガスの他、SOx等)に対して強いこと、水や薬品に対する耐久性に優れていること、被記録材に対して定着性が良く滲みにくいこと、インクとしての保存性に優れていること、毒性がないこと、更には、安価に入手できること等が挙げられる。特に、良好なシアンの色相を有し、且つ高い印字濃度の記録物が得られることや、記録画像の各種耐性、例えば耐光性(光に対する耐久性)、耐オゾン性(オゾンガスに対する耐久性)及び耐湿性(高湿度下における耐久性)に優れるシアン色素が強く望まれている。
インクジェット記録に適したインクに用いられる水溶性シアン色素としては、フタロシアニン系やトリフェニルメタン系が代表的である。最も広範囲に報告され、利用されている代表的なフタロシアニン系色素としては、以下のA〜Hで分類されるフタロシアニン誘導体が知られている。
A:Direct Blue 86、Direct Blue 87、Direct Blue 199、Acid Blue 249又はReactive Blue 71等のC.I.(カラーインデックス)番号を有する公知のフタロシアニン系色素。
B:特許文献1〜3等に記載のフタロシアニン系色素、
[例えば、Cu−Pc−(SONa)m(SONH)n;m+n=1〜4の混合物](Pcはフタロシアニン残基を表す。以下同じ。)。
C:特許文献4等に記載のフタロシアニン系色素、
[例えば、Cu−Pc−(COH)m(CONR)n;m+n=0〜4の数]。
D:特許文献5等に記載のフタロシアニン系色素、
[例えば、Cu−Pc−(SOH)m(SONR)n;m+n=0〜4の数、且つ、m≠0]
E:特許文献6等に記載のフタロシアニン系色素、
[例えば、Cu−Pc−(SOH)l(SONH)m(SONR)n;l+m+n=0〜4の数]。
F:特許文献7等に記載のフタロシアニン系色素、
[例えば、Cu−Pc−(SONR)n;n=1〜5の数]。
G:特許文献8、9、及び12等に記載のフタロシアニン系色素、
[置換基の置換位置を制御したフタロシアニン化合物、β−位に置換基が導入されたフタロシアニン系色素]。
H:特許文献10、13〜21等に記載のピリジン環とベンゼン環を有するベンゾピリドポルフィラジン系色素。
I:特許文献11等に記載のフタロシアニン系色素、
[例えば、Cu−Pc−(SOH)a(SONR)b(SONH−X−NH−(4−Y−6−Z−1,3,5−トリアジン−2−イル))c;a+b+c=2〜4の数]。
現在一般に広く用いられているDirect Blue 86又はDirect Blue 199に代表されるフタロシアニン系色素は、一般に知られているマゼンタ色素やイエロー色素に比べ耐光性に優れるという特徴がある。フタロシアニン系色素は酸性条件下ではグリーン味の色相であり、シアンインクとしては余り好ましくない。そのためこれらの色素をシアンインクとして用いる場合は中性からアルカリ性の条件下で使用するのが好ましい。しかしながら、インクが中性からアルカリ性でも、用いる被記録材が酸性紙である場合、記録物の色相が大きく変化する可能性がある。
さらに、フタロシアニン系色素をシアンインクとして用いた場合、昨今環境問題として取り挙げられることの多い酸化窒素ガスやオゾン等の酸化性ガスによっても、記録物の色相がグリーン味に変色すると共に、消色も起こるため、同時に印字濃度も低下してしまう。
一方、トリフェニルメタン系については、色相は良好であるが、耐光性、耐オゾン性及び耐湿性において非常に劣る。
今後、インクジェット記録の使用分野が拡大して、広告等の展示物にも広く使用されるようになると、そこに使用される色素及びインクは良好な色相を有し、且つ安価であることと共に、光や環境中の酸化性ガスに曝される場合が多くなるため、特に、良好な色相を有し、耐光性、耐酸化性ガス性及び耐湿性に優れることがますます強く望まれてくる。ここで言う酸化性ガスとは、空気中に存在する酸化作用を持つガスを指す。耐酸化性ガス性とは、記録紙上又は記録紙中で、記録画像の色素(染料)が酸化性ガスと反応し、記録画像を変退色させるという現象に対する耐性のことである。酸化性ガスの中でも特にオゾンガスは、インクジェット記録画像の変退色現象を促進させる主要な原因物質とされている。この変退色現象はインクジェット記録画像に特徴的なものであるため、耐オゾンガス性の向上はこの分野における重要な技術的課題である。しかしながら、これらの要求を高いレベルで満たすシアン色素(例えば、フタロシアニン系色素)及びシアンインクを開発することは難しいとされている。これまで、耐オゾンガス性を付与したフタロシアニン系色素又はベンゾピリドポルフィラジン色素は、特許文献3、8〜12、14〜17等に開示され、色相、印字濃度、耐光性、耐オゾンガス性、耐湿性及びブロンズ現象を起こさない等すべての品質でかなり優れたものも出てきているが、色相評価が甘い等のものもあり、まだ市場の要求を充分に満足させるには至っていない。
特開昭62−190273号公報 特開平7−138511号公報 特開2002−105349号公報 特開平5−171085号公報 特開平10−140063号公報 特表平11−515048号公報 特開昭59−22967号公報 特開2000−303009号公報 特開2002−249677号公報 特開2003−34758号公報 特開2002−80762号公報 WO2004/087815号公報 WO2002/034844号公報 特開2004−75986号公報 WO2007/091631号公報 WO2007/116933号公報 WO2008/111635号公報 WO2002/088256号公報 WO2005/021658号公報 特開2005−179469号公報 特開2005−220253号公報
本発明は、シアンインクとして良好な色相を有すると共に、ブロンズ現象を生じにくく、また耐オゾン性に優れたバランスの良いインクジェット記録に適したポルフィラジン色素又はその塩、及びこれを含有するインク組成物を提供することを課題とする。
本発明者らは、鋭意検討の結果、下記式(1)で表される特定のポルフィラジン色素混合物又はその塩が、上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。即ち、本発明は、
(1)
下記式(1)で表されるポルフィラジン色素混合物又はその塩、
Figure 0005458022
[式中、
環A乃至Dは、それぞれ独立にポルフィラジン環に縮環したベンゼン環又は窒素原子を1又は2個含む6員環の含窒素複素芳香環を表し、含窒素複素芳香環の個数は平均値で0.00より大きく1.00未満であり、残りはベンゼン環であり、
EはC2−C6アルキレンを表し、
X及びYは、それぞれ独立して、置換基としてスルホ基、カルボキシ基若しくはリン酸基を有するアニリノ基、又は、同ナフチルアミノ基であり、
更に、該アニリノ基又はナフチルアミノ基は、スルホ基、カルボキシ基、リン酸基、スルファモイル基、カルバモイル基、ヒドロキシ基、アルコキシ基、アミノ基、モノ又はジアルキルアミノ基、モノ又はジアリールアミノ基、アセチルアミノ基、ウレイド基、アルキル基、ニトロ基、シアノ基、ハロゲン原子、アルキルスルホニル基、アルキルチオ基、アリールオキシ基及びヘテロ環基より成る群から選択される1種又は2種以上の基で置換されてもよく、
bは平均値で0.00以上3.90未満であり、
cは平均値で0.10以上4.00未満であり、
且つbおよびcの和は、平均値で3.00より大きく4.00未満である。但し、X及びYが、それぞれ独立に、置換基としてカルボキシ基を1〜3個有するアニリノ基で、bは平均値で0以上3.4までであり、
cは平均値で0.1以上3.5までであり、
且つbおよびcの和は、1.0から3.5までの場合、
含窒素複素芳香環の個数は平均値で0.0より大きく0.5未満である。]、
(2)
環A乃至Dで表される前記含窒素複素芳香環が、ピリジン環又はピラジン環である上記(1)に記載のポルフィラジン色素混合物又はその塩、
(3)
下記式(3)で表されるポルフィラジン化合物の混合物と、下記式(4)で表される有機アミンとを、アンモニア存在下で反応させて得られる上記(1)又は(2)に記載のポルフィラジン色素混合物又はその塩、
Figure 0005458022
[式中、環A乃至Dは上記(1)に記載のものと同じ意味を表し、またnは3.00より大きく4.00未満である。]、
Figure 0005458022
[式中、E、X、及びYは上記(1)に記載のものと同じ意味を表す。]、
(4)
環A乃至Dにおける前記含窒素複素芳香環がピリジン環であり、該ピリジン環の縮環位置が、ピリジン環の窒素原子を1位として2位及び3位、3位及び4位、4位及び5位、又は5位及び6位であるか、又は、
環A乃至Dにおける前記含窒素複素芳香環がピラジン環であり、該ピラジン環の縮環位置が、ピラジン環の窒素原子を1位及び4位として2位及び3位であり、
EがC2−C4アルキレンであり、
X及びYは、それぞれ独立して、置換基としてスルホ基、カルボキシ基若しくはリン酸基を有するアニリノ基、又は、同ナフチルアミノ基であり、
該アニリノ基又はナフチルアミノ基は、ヒドロキシ基、アルコキシ基、ウレイド基、アセチルアミノ基、ニトロ基及び塩素原子より成る群から選択される1種又は2種以上の置換基を、さらに0〜3個有しても良い、
上記(1)乃至(3)のいずれか一項に記載のポルフィラジン色素混合物又はその塩、
(5)
環A乃至Dにおける前記含窒素複素芳香環の個数が、平均値で0.2〜0.9であり、残りがベンゼン環であり、
bが平均値で0.0〜3.7であり、
cは平均値で0.1〜3.8であり、
且つbおよびcの和は、平均値で3.1〜3.8である上記(1)乃至(4)のいずれか一項に記載のポルフィラジン色素混合物又はその塩、
(6)
環A乃至Dにおける前記含窒素複素芳香環の個数が平均値で0.25〜0.85であり、残りがベンゼン環であり、
EがC2−C4アルキレンを表し、
X及びYが、それぞれ独立してスルホ基又はカルボキシ基で置換されたアニリノ基であり、
bが平均値で0.00〜3.05であり、
cが平均値で0.10〜3.75であり、
且つbおよびcの和は、平均値で3.15〜3.75である、上記(1)乃至(5)のいずれか一項に記載のポルフィラジン色素混合物又はその塩、
(7)
X及びYが、それぞれ独立してスルホ基で置換されたアニリノ基である上記(1)乃至(6)のいずれか一項に記載のポルフィラジン色素混合物又はその塩。
(8)
環A乃至Dにおける前記含窒素複素芳香環がピリジン環であり、且つ該ピリジン環の縮環位置が、ピリジン環の窒素原子を1位として2位及び3位であり、且つ該ピリジン環の個数が平均値で0.50〜0.85であり、残りがベンゼン環であり、
Eがエチレン又はプロピレンであり、
X及びYが、それぞれ独立して置換基としてスルホ基を有するアニリノ基であり、
bが平均値で0.00〜3.40であり、
cが平均値で0.10〜3.50であり、
且つbおよびcの和は、平均値で3.15〜3.50である、上記(1)乃至(6)のいずれか一項に記載のポルフィラジン色素混合物又はその塩、
(9)
上記(1)乃至(8)のいずれか一項に記載のポルフィラジン色素混合物又はその塩を、色素として含有し、さらに水を含有するインク組成物、
(10)
さらに有機溶剤を含有する上記(9)に記載のインク組成物、
(11)
インクジェット記録用である上記(9)又は(10)に記載のインク組成物、
(12)
上記(1)乃至(8)のいずれか一項に記載のポルフィラジン色素混合物又はその塩、及び水を含有するインク組成物のインク滴を記録信号に応じて吐出させて被記録材に付着させることにより記録を行うインクジェット記録方法、
(13)
被記録材が情報伝達用シートである上記(12)に記載のインクジェット記録方法、
(14)
情報伝達用シートが表面処理されたシートであって、支持体上に白色無機顔料粒子を含有するインク受容層を有するシートである上記(13)に記載のインクジェット記録方法、
(15)
上記(1)乃至(8)のいずれか一項に記載のポルフィラジン色素混合物又はその塩、及び水を含有するインク組成物を含有する容器、
(16)
上記(15)に記載の容器が装填されたインクジェットプリンタ、
(17)
上記(1)乃至(8)のいずれか一項に記載のポルフィラジン色素混合物又はその塩、及び水を含有するインク組成物で着色された着色体、
(18)
X及びYが、それぞれ独立して3−スルホアニリノ基又は4−スルホアニリノ基である上記(1)乃至(8)のいずれか1項に記載のポルフィラジン色素混合物又はその塩、
に関する。

本発明の色素を用いたインク組成物は、シアンインクとして良好な色相を有する。また本発明のインク組成物により得られる記録画像はブロンズ現象を起こさず、耐オゾン性も良好であり、色相、ブロンズ現象の生じにくさ、及び耐オゾン性のバランスに優れる。また、長期間保存後の固体析出、物性変化、色変化等もなく、貯蔵安定性が良好である。
従って、本発明のポルフィラジン色素又はその塩を含有するシアンインクは、インクジェット記録用インクとして極めて有用である。
本発明を詳細に説明する。
本発明の前記式(1)で表されるポルフィラジン色素又はその塩は、テトラベンゾポルフィラジン(通常、フタロシアニンと呼ばれているもの)の4つのベンゾ(ベンゼン)環の内、0個より大きく1個未満を含窒素複素芳香環に置き換えた化合物に、無置換スルファモイル基、及び特定の置換スルファモイル基を導入したポルフィラジン色素又はその塩であり、実質的に混合物である。なお、本明細書においては便宜上、以下「本発明のポルフィラジン色素又はその塩」を、特に断りの無い限り、「本発明のポルフィラジン色素」と簡略化して記載する。
前記式(1)中、破線で表される環A乃至D(環A、B、C及びDの4つの環)における含窒素複素芳香環としては、例えば、ピリジン環、ピラジン環、ピリミジン環及びピリダジン環等の窒素原子1〜2個を含む含窒素複素芳香環が挙げられる。これらの中ではピリジン環又はピラジン環が好ましく、ピリジン環がより好ましい。
含窒素複素芳香環の個数は、本願においては、通常平均値で、0.00より大きく1.00未満、好ましくは0.1以上0.95以下、より好ましくは0.2以上0.9以下、更に好ましくは0.2以上0.85以下、特に好ましくは0.25以上0.85以下、最も好ましくは0.5以上0.85以下の範囲である。残りの環A乃至Dはベンゼン環であり、環A乃至Dにおけるベンゼン環は、通常平均値で、3.00より大きく4.00未満、好ましくは3.05以上3.9以下、より好ましくは3.1以上3.8以下、場合により3.15以上3.8以下、更に好ましくは3.15以上3.75以下、特に好ましくは3.15以上3.5以下である。但し、X及びYが、それぞれ独立に、置換基としてカルボキシ基を1〜3個有するアニリノ基で、bは平均値で0以上3.4までであり、cは平均値で0.1以上3.5までであり、且つbおよびcの和は、1.0から3.5までの場合、含窒素複素芳香環の個数は平均値で0.0を超えて0.5未満である。
含窒素複素芳香環がポルフィラジン環へ縮環する位置は、該複素芳香環における2つの連続した炭素原子を有する位置であれば特に制限されない。含窒素複素芳香環が、ピリジン環であれば2位及び3位若しくは5位及び6位、又は、3位及び4位若しくは4位及び5位、好ましくは前者;ピラジン環であれば2位及び3位;ピリミジン環であれば4位及び5位;ピリダジン環であれば3位及び4位、又は4位及び5位;が良い。
本発明のポルフィラジン色素は、環A乃至Dの含窒素複素環の個数を平均値で表していることから明らかなように、複数の色素の色素混合物である。より具体的には、本発明のポルフィラジン色素は、環A乃至Dの全てがベンゼン環のポルフィラジン色素、及び、環A乃至Dの1つ又は2つ以上が6員環の含窒素複素芳香環であるポルフィラジン色素との混合物である。これらの各成分を単離することは難しいこと、実用的には混合物のままで支障が無いことから、本願における「ベンゼン環又は6員環の含窒素複素芳香環の個数」は、該混合物における1分子当たりのベンゼン環又は6員環の含窒素複素芳香環の個数の平均値を表す。
なお、本明細書においては、特に断りの無い限り、該含窒素複素芳香環の個数及びb又はcで表される置換基の個数は、必要に応じて、小数点以下2桁目又は3桁目を四捨五入して1桁目又は2桁目までを記載する。
前記式(1)中、Eにおけるアルキレンとしては、例えばC2−C12の直鎖、分岐鎖又は環状アルキレンが挙げられ、直鎖又は環状が好ましく、直鎖がより好ましい。炭素数としては、好ましくはC2−C6、より好ましくはC2−C4、更に好ましくはC2−C3アルキレンが挙げられる。
Eにおけるアルキレンの具体例としてはエチレン、プロピレン、ブチレン、ペンチレン、へキシレン、ヘプチレン、オクチレン、ノニレン、デシレン、ウンデシレン、ドデシレン等の直鎖のもの;2−メチルエチレン等の分岐鎖のもの;シクロプロピレンジイル、1,2−又は1,3−シクロペンチレンジイル、1,2−、1,3−又は1,4−シクロへキシレンジイル等に代表される環状のもの;等が挙げられる。Eにおけるアルキレンの好ましい具体例は、エチレン、プロピレン又はブチレンであり、より好ましくはエチレン又はプロピレン、更に好ましくはエチレンである。
前記式(1)中、X及びYは、それぞれ独立して、置換基としてスルホ基、カルボキシ基又はリン酸基を有する、アニリノ基又は同ナフチルアミノ基を表す。該アニリノ基又は該ナフチルアミノ基は、置換基として、スルホ基、カルボキシ基及びリン酸基からなる群から選択される何れか一つの基を有する。
該アニリノ基又は該ナフチルアミノ基として好ましくは、スルホ基又はカルボキシ基で置換されたアニリノ基又は同ナフチルアミノ基である。より好ましくはスルホ基で置換されたアニリノ基又は同ナフチルアミノ基であり;更に好ましくはスルホ基で置換されたアニリノ基である。
スルホ基、カルボキシ基又はリン酸基の置換位置は特に制限されないが、アニリノ基の場合には2位、3位又は4位、好ましくは3位又は4位、より好ましくは4位;ナフチルアミノ基の場合には、アミノ基の置換位置を1位又は2位として、3位、5位、6位、7位及び8位の何れかに置換するのが好ましい。
また該ナフチルアミノ基としては、アミノ基の置換位置は1位又は2位が好ましい。
該アニリノ基の置換基が一つの場合の具体例としては、2−スルホアニリノ、3−スルホアニリノ、4−スルホアニリノといったスルホ基で置換されたもの;2−カルボキシアニリノ、3−カルボキシアニリノ、4−カルボキシアニリノといったカルボキシで置換されたもの;2−ホスホアニリノ、3−ホスホアニリノ、4−ホスホアニリノといったリン酸基で置換されたもの;が挙げられる。
該ナフチルアミノ基の置換基が一つの場合の具体例としては、6−スルホ−1−ナフチルアミノ、6−スルホ−2−ナフチルアミノ等のスルホ基で置換されたもの;6−カルボキシ−1−ナフチルアミノ、6−カルボキシ−2−ナフチルアミノ等のカルボキシ基で置換されたもの;6−ホスホ−1−ナフチルアミノ、6−ホスホ−2−ナフチルアミノ等のリン酸基で置換されたもの;等が挙げられる。
前記X及びYにおける、置換基としてスルホ基、カルボキシ基又はリン酸基を有するアニリノ基又は同ナフチルアミノ基は、さらに(1)スルホ基、(2)カルボキシ基、(3)リン酸基、(4)スルファモイル基、(5)カルバモイル基、(6)ヒドロキシ基、(7)アルコキシ基、(8)アミノ基、(9)モノアルキルアミノ基、(10)ジアルキルアミノ基、(11)モノアリールアミノ基、(12)ジアリールアミノ基、(13)アセチルアミノ基、(14)ウレイド基、(15)アルキル基、(16)ニトロ基、(17)シアノ基、(18)ハロゲン原子、(19)アルキルスルホニル基、(20)アルキルチオ基、(21)アリールオキシ基及び(22)ヘテロ環基より成る22種の置換基からなる群から選択される1種又は2種以上、好ましくは1種乃至3種、より好ましくは1種又は2種、更に好ましくは1種の置換基で置換されてもよい。
この22種の置換基からなる群から選択される基での置換数は、X及びYが前記アニリノ基である場合は、通常0乃至3、好ましくは0乃至2、より好ましくは0又は1、更に好ましくは0であり;X及びYが前記ナフチルアミノ基である場合は、通常0乃至3、好ましくは0乃至2である。
22種の置換基からなる群から選択される基におけるアルコキシ基としては、直鎖、分岐鎖又は環状のC1−C6、好ましくはC1−C4、より好ましくはC1−C3アルコキシ基が挙げられる。直鎖又は分岐鎖アルコキシが好ましく、直鎖がより好ましい。
具体例としては、メトキシ、エトキシ、n−プロポキシ、n−ブトキシ、n−ペントキシ、n−ヘキシロキシ等の直鎖アルコキシ;イソプロポキシ、イソブトキシ、t−ブトキシ、イソペントキシ、イソヘキシロキシ等の分岐鎖アルコキシ;シクロプロポキシ、シクロペントキシ、シクロヘキシロキシ等の環状アルコキシ;等が挙げられる。
22種の置換基からなる群から選択される基におけるモノアルキルアミノ基としては、直鎖又は分岐鎖のモノC1−C4、好ましくはモノC1−C3アルキルアミノ基が挙げられる。具体例としては、メチルアミノ、エチルアミノ、n−プロピルアミノ、n−ブチルアミノ等の直鎖アルキルアミノ;イソプロピルアミノ、イソブチルアミノ、t−ブチルアミノ等の分岐鎖アルキルアミノ;等が挙げられる。
22種の置換基からなる群から選択される基におけるジアルキルアミノ基としては、前記モノアルキルアミノ基で挙げたアルキルである、直鎖又は分岐鎖のC1−C4、好ましくはC1−C3アルキルを、独立に2つ有するジアルキルアミノ基が挙げられる。具体例としては、ジメチルアミノ、ジエチルアミノ、メチルエチルアミノ等が挙げられる。
22種の置換基からなる群から選択される基におけるモノアリールアミノ基としては、モノC6−C10芳香族アミノ基、好ましくはフェニルアミノ基又はナフチルアミノ基、より好ましくはフェニルアミノ基が挙げられる。
22種の置換基からなる群から選択される基におけるジアリールアミノ基としては、前記モノアリールアミノ基で挙げたアリールである、C6−C10芳香族、好ましくはフェニル又はナフチル、より好ましくはフェニルを、独立に2つ有するジアリールアミノ基が挙げられる。好ましくは同一のアリール、より好ましくはフェニルを2つ有するアミノ基が挙げられる。その具体例としてはジフェニルアミノが挙げられる。
22種の置換基からなる群から選択される基におけるアルキル基としては、直鎖、分岐鎖又は環状のC1−C6、好ましくはC1−C4、より好ましくはC1−C3アルキル基が挙げられる。直鎖又は分岐鎖のアルキル基が好ましく、直鎖のアルキル基がより好ましい。具体例としては、メチル、エチル、n−プロピル、n−ブチル、n−ペンチル、n−ヘキシル等の直鎖アルキル;イソプロピル、イソブチル、イソペンチル、イソヘキシル等の分岐鎖アルキル;シクロプロピル、シクロペンチル、シクロヘキシル等の環状アルキル;等が挙げられる。
22種の置換基からなる群から選択される基におけるハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子及び臭素原子が挙げられ、フッ素原子又は塩素原子が好ましく、塩素原子がより好ましい。
22種の置換基からなる群から選択される基におけるアルキルスルホニル基としては、直鎖又は分岐鎖のC1−C6、好ましくはC1−C4、より好ましくはC1−C3アルキルで置換されたスルホニル基が挙げられる。該アルキルとしては、直鎖のアルキルが好ましい。具体例としては、メタンスルホニル、エタンスルホニル、プロパンスルホニル等の直鎖アルキルスルホニル;イソプロピルスルホニル等の分岐鎖アルキルスルホニル;等が挙げられる。
22種の置換基からなる群から選択される基におけるアルキルチオ基としては、直鎖又は分岐鎖のC1−C6、好ましくはC1−C4、より好ましくはC1−C3アルキルチオ基が挙げられる。該アルキルとしては、直鎖のアルキルが好ましい。具体例としては、メチルチオ、エチルチオ、プロピルチオ、ブチルチオ等の直鎖アルキルチオ;イソプロピルチオ等の分岐鎖アルキルチオ;等が挙げられる。
22種の置換基からなる群から選択される基におけるアリールオキシ基としては、C6−C10の単環又は縮環構造のアリールオキシ基が挙げられ、より好ましくはフェノキシ又はナフチロキシ、さらに好ましくはフェノキシである。該アリールオキシ基は、置換基としてハロゲン原子、好ましくは塩素原子、C1−C4アルコキシ基、ニトロ基又はスルホ基を有してもよく、非置換でもよい。該アリールオキシ基の具体例としてはフェノキシ、1−ナフチロキシ及び2−ナフチロキシ等の非置換アリールオキシ基;2,4−ジクロロフェノキシ、4−クロロフェノキシ等のハロゲン原子、好ましくは塩素原子置換アリールオキシ基;4−メトキシフェノキシ等のC1−C4アルコキシ置換アリールオキシ基;2−ニトロフェノキシ、4−ニトロフェノキシ等のニトロ置換アリールオキシ基;2−スルホ−6−ナフチロキシ等のスルホ置換アリールオキシ基;等が挙げられる。
22種の置換基からなる群から選択される基におけるヘテロ環基としては、異項原子を含有する5乃至6員環が挙げられ、そのうち、窒素原子、酸素原子又は/及び硫黄原子を含有する複素芳香環基が好ましい。具体的には、ピリジン−3−イル、ピリジン−4−イル、6−カルボキシピリジン−3−イル等の非置換又はカルボキシ置換含窒素複素芳香環基、好ましくは非置換又はカルボキシ置換ピリジン環基;チオフェン−2−イル、5−クロロチオフェン−2−イル等の含硫黄複素芳香環基、好ましくは非置換又は塩素原子置換チオフェン基;フラン−2−イル等の含酸素複素芳香環基、好ましくは非置換フラン環基が挙げられる。
前記X及びYの前記アニリノ基又は前記ナフチル基が、22種の置換基からなる群から選択される基を1又は2個有する場合の具体例としては、2,5−ジスルホアニリノ、2,4−ジスルホアニリノ、2−カルボキシ−4−スルホアニリノ、2−カルボキシ−5−スルホアニリノ、4−エトキシ−2−スルホアニリノ、4−アニリノ−3−スルホアニリノ、4−アセチルアミノ−2−スルホアニリノ、2−メチル−5−スルホアニリノ、2−クロロ−5−スルホアニリノ等の、スルホ基で置換されたアニリノ基に、更にスルホ基、カルボキシ基、アルコキシ基、モノアリールアミノ基、アセチルアミノ基、アルキル基又はハロゲン原子が置換したもの;2−メトキシ−4−ニトロ−5−スルホアニリノ、3−カルボキシ−4−ヒドロキシ−5−スルホアニリノ、2−ヒドロキシ−5−ニトロ−3−スルホアニリノ、3,5−ジクロロ−4−スルホアニリノ等の、スルホ基で置換されたアニリノ基に、さらに2種又は2つの基が置換したもの;3−カルボキシ−4−ヒドロキシアニリノ、3,5−ジカルボキシアニリノ等の、カルボキシ基で置換されたアニリノ基に、さらにヒドロキシ基又はカルボキシ基が置換したもの;5,7−ジスルホナフタレン−2−イルアミノ、6,8−ジスルホナフタレン−2−イルアミノ、3,6−ジスルホナフタレン−1−イルアミノ、3,8−ジスルホナフタレン−1−イルアミノ、4,8−ジスルホナフタレン−2−イルアミノ、8−ヒドロキシ−6−スルホナフタレン−2−イルアミノ、5−ヒドロキシ−7−スルホナフタレン−2−イルアミノ等の、スルホ基で置換されたナフチルアミノ基に、更にスルホ基又はヒドロキシ基が置換したもの;3,6,8−トリスルホナフタレン−1−イルアミノ、3,6,8−トリスルホナフタレン−2−イルアミノ、4,6,8−トリスルホナフタレン−2−イルアミノ、8−ヒドロキシ−3,6−ジスルホナフタレン−1−イルアミノ、8−クロロ−3,6−ジスルホナフタレン−1−イルアミノ等の、スルホ基で置換されたナフチルアミノ基に、更に2つ又は2種の基が置換したもの;等が挙げられる。
22種の置換基からなる群から選択される基としては、スルホ基、カルボキシ基、アルコキシ基、モノアリールアミノ基、アセチルアミノ基、アルキル基又はハロゲン原子(好ましくは塩素原子)が好ましく、スルホ基又はカルボキシ基がより好ましい。場合により、スルホ基、カルボキシ基、リン酸基、ヒドロキシ基、アルコキシ基より好ましくはC1−C6アルコキシ基、ウレイド基、アセチルアミノ基、ニトロ基又は塩素原子が好ましく、スルホ基又はヒドロキシ基がより好ましい。22種の置換基からなる群から選択される基としてはスルホ基が更に好ましい。
前記X及びYにおける、置換基としてスルホ基、カルボキシ基又はリン酸基を有するアニリノ基又は同ナフチルアミノ基は、場合により、更に前記22種の置換基からなる群から選択される1種又は2種以上の基で更に置換されてもよい。しかし、通常は該アニリノ基及び該ナフチルアミノ基は、該22種の置換基からなる群から選択される基を有しないほうが好ましい。即ち、前記X及びYは、置換基としてスルホ基、カルボキシ基又はリン酸基を有し、他の置換基を有しないアニリノ基又は同ナフチルアミノ基が好ましい。より好ましくは、置換基としてスルホ基一つを有し、他の置換基を有しないスルホアニリノ基である。
本明細書において、前記式(1)におけるb、c及び、b及びcの和として記載された数値は、いずれも、前記本発明のポルフィラジン色素における平均値である。環A乃至Dにおける含窒素複素芳香環又はベンゼン環の個数について述べたのと同様、本発明の前記式(1)で表されるポルフィラジン色素は、異なるb及びcの値を有する複数の色素の混合物であり、本発明においては、該混合物をその平均値の数の置換基を有する化合物として取り扱う。
bは0.00以上3.90未満であり、cは0.10以上4.00未満であり、b及びcの和は、平均値で3.00より大きく4.00未満である。より好ましくはbが0以上3.7以下、cが0.1以上3.8以下であって、且つ、b及びcの和は3.1以上3.8以下である。より好ましくは、bが2.05以上3.25以下であり、cが0.5以上1.1以下であって、且つ、b及びcの和が3.1以上3.8以下である。更に好ましくは、bが2.15以上で、3以下、cが0.6以上で、1以下であり、且つ、b及びcの和が3.1以上で、3.8以下、好ましくは3.15以上で、3.5以下である。
このとき、環A乃至Dにおける含窒素複素芳香環は、平均値で0.00より大きく1.00未満、ベンゼン環は3.00より大きく4.00未満であり、本発明のポルフィラジン色素においては、b及びcの和は、ベンゼン環の数と一致する。
好ましくは、環A乃至Dにおける含窒素複素芳香環が0.2〜0.9、ベンゼン環が3.1〜3.8のとき、bが0.0〜3.7、cが0.1〜3.8であって、且つ、b及びcの和は3.1〜3.8、好ましくは、bが2.05〜3.25であり、cが0.5〜1.1であって、且つ、b及びcの和が3.1〜3.8である。
より好ましくは、環A乃至Dにおける含窒素複素芳香環が0.20以上0.85以下、ベンゼン環が3.15以上3.80以下のとき、bが1.85以上3.50以下であり、cが0.30以上1.30以下であって、且つ、b及びcの和は3.15以上3.80以下である。
更に好ましくは、環A乃至Dにおける含窒素複素芳香環が0.25以上0.85以下、ベンゼン環が3.15以上3.75以下のとき、bが0.00以上3.05以下、cが0.10以上3.75以下、且つ、b及びcの和が3.15以上3.75以下、好ましくは、bが2.05以上3.25以下であり、cが0.50以上1.10以下であって、且つ、b及びcの和が3.15以上3.75以下である。
特に好ましくは、環A乃至Dにおける含窒素複素芳香環が0.50以上0.85以下、ベンゼン環が3.15以上3.50以下のとき、bが0.00以上3.40以下、cが0.10以上3.50以下、且つ、b及びcの和が3.15以上3.50以下、好ましくは、bが2.15以上2.90以下であり、cが0.60以上1.00以下であって、且つ、b及びcの和が3.15以上3.50以下である。
なお、b及びcでそれぞれの置換数を表している非置換スルファモイル基及び置換スルファモイル基はいずれも、環A乃至Dがベンゼン環である場合に、該ベンゼン環上に置換する基であり、環A乃至Dが6員環の含窒素複素芳香環である場合には置換しない。
なお、本明細書においては、b、c並びにb及びcの和は、必要に応じて、小数点以下2桁目又は3桁目を四捨五入して、1桁目又は2桁目までを記載する。
前記式(1)の環A乃至D、E、X、Y、b及びcにおいて、好ましいもの同士を組合せた色素はより好ましく、より好ましいもの同士を組合せた色素は更に好ましい。更に好ましいもの同士等の組合せについても同様である。
好ましい本発明のポルフィラジン色素を具体的に挙げれば、下記の通りである。なお、環A乃至Dにおける含窒素複素芳香環又はベンゼン環の個数、b、c並びにb及びcの和は、いずれも平均値である。
(i)
前記式(1)において、環A乃至Dがそれぞれ独立にポルフィラジン環に縮環したベンゼン環又は6員環の含窒素複素芳香環を表し、環A乃至Dにおける含窒素複素芳香環の個数は平均値で0.00より大きく1.00未満であって、残りはベンゼン環であり、
EがC2−C12アルキレンであり、
X及びYは、それぞれ独立して、置換基として、スルホ基、カルボキシ基及びリン酸基からなる群から選択される一つの基を有するアニリノ基又は同ナフチルアミノ基であって、
該アニリノ基又は該ナフチルアミノ基は、更に、スルホ基、カルボキシ基、リン酸基、スルファモイル基、カルバモイル基、ヒドロキシ基、アルコキシ基、アミノ基、モノ又はジアルキルアミノ基、モノ又はジアリールアミノ基、アセチルアミノ基、ウレイド基、アルキル基、ニトロ基、シアノ基、ハロゲン原子、アルキルスルホニル基、アルキルチオ基、アリールオキシ基及び5乃至6員環であるヘテロ環基よりなる群から選択される1種又は2種以上の基で置換されてもよく、
bは平均値で0.00以上3.90未満であり、
cは平均値で0.10以上4.00未満であり、
且つ、bおよびcの和は、平均値で3.00より大きく4.00未満である、ポルフィラジン色素又はその塩、
但し、X及びYが、それぞれ独立に、置換基としてカルボキシ基を1〜3個有するアニリノ基で、bは平均値で0以上3.4までであり、
cは平均値で0.1以上3.5までであり、
且つbおよびcの和は、1.0から3.5までの場合、
含窒素複素芳香環の個数は平均値で0.0より大きく0.5未満である。
(ii)
X及びYが、それぞれ独立して、置換基としてスルホ基を一つ有するアニリノ基又は同ナフチルアミノ基である、上記(i)に記載のポルフィラジン色素又はその塩。
(iii)
X及びYが、それぞれ独立してスルホ基一つで置換され、その他の置換基を有しないアニリノ基である、上記(ii)に記載のポルフィラジン色素又はその塩。
(iv)
EがC2−C6アルキレン、好ましくはC2−C4アルキレン、より好ましくはエチレン又はプロピレン、さらに好ましくはエチレンである上記(i)〜(iii)の何れか一項に記載のポルフィラジン色素又はその塩。
(v)
環A乃至Dで表される6員環の含窒素複素芳香環が、ピリジン環又はピラジン環である、上記(i)〜(iv)の何れか一項に記載のポルフィラジン色素又はその塩。
(vi)
環A乃至Dで表される6員環の含窒素複素芳香環が、ピリジン環である、上記(v)に記載のポルフィラジン色素又はその塩。
(vii)
環A乃至Dにおける含窒素複素芳香環が0.2以上0.9以下、ベンゼン環が3.1以上3.8以下であって、bが0.0以上3.7以下、cが0.1以上3.8以下、且つ、b及びcの和は3.1以上3.8以下であり、好ましくは、bが2.05以上3.25以下であり、cが0.5以上1.1以下であって、且つ、b及びcの和が3.1以上3.8以下である、上記(i)〜(vi)の何れか一項に記載のポルフィラジン色素又はその塩。
(viii)
環A乃至Dにおける含窒素複素芳香環が0.25以上0.85以下、ベンゼン環が3.15以上3.75以下であって、bが0.00以上3.05以下、cが0.10以上3.75以下、且つ、b及びcの和は3.15以上3.75以下であり、好ましくは、bが2.05以上3.25以下であり、cが0.50以上1.10以下、且つ、b及びcの和は3.15以上3.75以下である、上記(i)〜(vi)の何れか一項に記載のポルフィラジン色素又はその塩。
(ix)
環A乃至Dにおける含窒素複素芳香環が0.50以上0.85以下、ベンゼン環が3.15以上3.50以下であって、bが0.00以上3.40以下、cが0.10以上3.50以下、且つ、b及びcの和は3.15以上3.75以下、好ましくは、bが2.15以上2.90以下であり、cが0.60以上1.00以下、且つ、b及びcの和は3.15以上3.50以下である、上記(i)〜(vi)の何れか一項に記載のポルフィラジン色素又はその塩。
(x)
X及びYが、それぞれ独立して3−スルホアニリノ基又は4−スルホアニリノ基である上記(i)〜(ix)の何れか1項に記載のポルフィラジン色素又はその塩。
(xi)
X及びYが、一方が3−スルホアニリノ基、他方が4−スルホアニリノ基である上記(x)に記載のポルフィラジン色素又はその塩。
前記式(1)で表される色素は分子内に有するスルホ基、カルボキシ基及びリン酸基等を利用して塩を形成することが可能であり、塩を形成している場合、無機金属、アンモニア又は有機塩基の各カチオンと塩を形成するのが好ましい。
無機金属としてはアルカリ金属やアルカリ土類金属が挙げられる。アルカリ金属の例としては、リチウム、ナトリウム及びカリウム等が挙げられる。アルカリ土類金属としては、例えばカルシウム及びマグネシウム等が挙げられる。
有機塩基としては、特に有機アミンが挙げられ、例えばメチルアミン及びエチルアミン等の炭素数1から3の低級アルキルアミン類、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、モノイソプロパノールアミン、ジイソプロパノールアミン及びトリイソプロパノールアミン等のモノ、ジ又はトリ(C1−C4アルカノール)アミン類が挙げられる。
これらの中でもより好ましい塩としてはナトリウム、カリウム及びリチウム等のアルカリ金属の塩;モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、モノイソプロパノールアミン、ジイソプロパノールアミン及びトリイソプロパノールアミン等のモノ、ジ又はトリ(炭素数1から4の低級アルカノール)アミンの4級アンモニウム塩;並びに、アンモニウム塩が挙げられる。
本発明の前記式(1)で表されるポルフィラジン色素における、環A乃至D、E、X及びYの具体例、並びにbとcの数の平均値を表1に示す。
下記の例は、本発明の色素を具体的に説明するために代表的な色素を示すものであり、下記の例に限定されるものではない。
表中、「2,3−ピリド」は2位及び3位でポルフィラジン環に縮環したピリジン環、「ベンゾ」は上記の通りポルフィラジン環に縮環したベンゼン環を表し、該記載の横の数値は、環A乃至Dにおける、各環の個数(平均値)を表す。
Figure 0005458022
Figure 0005458022
Figure 0005458022
Figure 0005458022
本発明のポルフィラジン色素は、通常、他の色素を配合することなく用いることができるが、場合により、本発明の効果を阻害しない範囲で公知のシアン色素と配合して使用してもよい。
公知のシアン色素と配合して使用する場合、配合する色素としてはフタロシアニン系色素が好ましい。
前記式(1)で表される色素の製造方法を説明する。
本発明の前記式(1)で表される色素は、前記式(3)で表されるポルフィラジン化合物と、前記式(4)で表される有機アミンとを、アンモニア存在下で反応させることにより得ることができる。
前記式(3)で表されるポルフィラジン化合物は、いずれも公知の方法又はそれに準じた方法により下記式(6)で表される化合物を合成した後、これをクロロスルホニル化することにより、得ることができる。
即ち、下記式(6)で表される化合物は、例えば、WO2007/091631号及びWO2007/116933号に開示された公知の方法に準じて合成することができる。これらの公知文献は、環A乃至Dにおける含窒素複素芳香環の個数が1未満の化合物に関する製造方法を開示していない。しかし、公知のニトリル法又はワイラー法にて合成を行う際に、反応原料として使用する含窒素複素芳香環ジカルボン酸誘導体と、フタル酸誘導体の配合比率を変化させることにより、環A乃至Dにおける含窒素複素芳香環の個数が1未満である式(6)で表される化合物も合成することができる。なお、得られる式(6)で表される化合物は、環A乃至Dにおける含窒素複素芳香環の置換位置、及び含窒素複素芳香環中の窒素原子の置換位置に関する位置異性体の混合物となることも、前記公知文献に記載の通りである。
本発明のポルフィラジン色素は、環A乃至Dにおける含窒素複素芳香環の個数が平均値で1未満であることから、下記式(6)で表される化合物は、環A乃至Dの全てがベンゼン環のポルフィラジン色素と、環A乃至Dの1つ(主成分)または2つ以上が6員環の含窒素複素芳香環であるポルフィラジン色素との混合物である。
Figure 0005458022
[式中、環A乃至Dは前記と同じ意味を表す。]。
前記式(3)で表されるポルフィラジン化合物は、WO2007/091631号及びWO2007/116933号に開示された公知の方法又はそれに準じた方法に従って、上記式(6)で表される化合物をクロロスルホニル化することにより得ることができる。式(3)におけるクロロスルホニル基は、環A乃至Dにおけるベンゼン環上に導入され、環A乃至Dが含窒素複素芳香環基に相当する場合、その含窒素複素芳香環上には導入されない。ベンゼン環上には通常1つのクロロスルホニル基が導入されるので、式(3)におけるnの数は、環A乃至Dにおけるベンゼン環の数以内である。従って、式(3)におけるクロロスルホニル基の数「n」は、式(3)で表されるポルフィラジン化合物のベンゼン環の数に応じて3.00より大きく4.00未満である。また、式(3)におけるnの数は、環A乃至Dにおけるベンゼン環の数に応じて、好ましくは3.05以上3.90以下、より好ましくは3.10以上3.80以下、更に好ましくは3.15以上3.75以下、特に好ましくは3.15以上3.50以下である。
上記以外の式(3)で表されるポルフィラジン化合物の合成方法としては、下記の方法が挙げられる。予めスルホ基を有するスルホフタル酸とキノリン酸等の含窒素複素芳香環ジカルボン酸誘導体とを縮合閉環させる事により、スルホ基を有するポルフィラジン化合物を合成し、その後、該化合物中のスルホ基を塩化チオニル等の適当な塩素化剤でクロロスルホニル基へと変換することにより、目的とする式(3)で表されるポルフィラジン化合物を得る事もできる。この場合、合成原料であるスルホフタル酸のスルホ基の置換位置が3位のものと4位のものとを選択することにより、式(3)で表されるポルフィラジン化合物上に導入されるスルホ基の置換位置を制御することができる。即ち、3−スルホフタル酸を用いれば下記式(10)における「α」位に、又、4−スルホフタル酸を用いれば同様に「β」位に、それぞれ選択的にスルホ基を導入することができる。なお本明細書においては特に断りの無い限り、「ポルフィラジン環のα位」又は「ポルフィラジン環のβ位」との用語は、下記式(10)において相当する位置を意味する。
Figure 0005458022
一方、前記式(4)で表される有機アミンも、公知の方法で製造することができる。
例えば、Xに対応するアニリン類又はナフチルアミン類0.95〜1.1モルと、2,4,6−トリクロロ−S−トリアジン(塩化シアヌル)1モルとを水中で、おおよそpH2.5〜7、反応温度0〜40℃の条件下で2〜12時間反応させて、1次縮合物を得る。
次いで、1次縮合物の反応液に、Yに対応するアニリン類又はナフチルアミン類0.95〜1.1モルを加え、おおよそpH4〜10、反応温度5〜80℃の条件下で0.5〜12時間反応させることにより2次縮合物を得る。次いで、得られた2次縮合物1モルと、Eに対応するアルキレンジアミン類1〜50モルとを、おおよそpH9〜12、反応温度5〜90℃の条件下で0.5〜12時間反応させることにより、前記式(4)で表される有機アミンが得られる。各縮合の際のpH調整には通常、水酸化ナトリウムや水酸化カリウム等のアルカリ金属の水酸化物、或いは、炭酸ナトリウムや炭酸カリウム等のアルカリ金属の炭酸塩等が用いられる。なお、縮合の順序はシアヌルクロライドと縮合する各種化合物の反応性に応じ適宜決めるのが良く、上記の順序に限定されない。
前記式(3)で表されるポルフィラジン化合物と、前記式(4)で表される有機アミンとの反応は、アンモニア存在下に、水溶媒中で、おおよそpH8〜10、5〜70℃の反応条件下、1〜20時間反応させる事により行われる。この反応により目的の式(1)で表される本発明の色素が得られる。
上記反応には、アンモニア及び、中和や分解によりアンモニアを発生する化合物(これら両者を併せて「アミノ化剤」と言う)を用いることができる。上記反応に用いるアミノ化剤としては、例えば、塩化アンモニウム、硫酸アンモニウム等のアンモニウム塩の様に中和によりアンモニアを発生する化合物;尿素等の熱分解によりアンモニアを発生する化合物;アンモニアガス等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。上記反応に用いられるアミノ化剤としては、アンモニア水が好ましい。該反応に使用するときは、市販品として入手できる濃アンモニア水(通常は、およそ28%のアンモニア水として市販されている)、又はこれを必要に応じて水により希釈した希釈液を、使用すれば良い。
前記式(4)で表される有機アミンの使用量は通常、前記式(3)で表されるポルフィラジン化合物1モルに対して、通常、理論値[目的とする式(1)で表される色素におけるcの値を得るのに必要な、計算上の式(4)で表される有機アミンのモル数]の1モル以上であるが、用いる有機アミンの反応性、反応条件により異なり、これらに限定されるものではない。前記式(4)で表される有機アミンの使用量は、通常、上記理論値の0.3〜3モル、好ましくは0.5〜2モル程度である。
前記式(3)で表される化合物、前記式(4)で表される有機アミン及びアミノ化剤との反応によって得られる生成物は、単一化合物ではなく、b及びcの値の異なる化合物の混合物である。しかし、各化合物のb及びcの値の平均値が前記の範囲に含まれれば、本発明の目的を達成することができる。従って、これらの混合物を、平均値で表されたb及びcの値を有する化合物として取り扱っても、支障は無い。
また前記式(1)で表される本発明の色素は、前記式(3)と、前記式(4)で表される化合物とから、特に無水条件を必要としない反応条件で合成され、水溶媒を用いて合成するのが好ましい。このため式(3)におけるクロロスルホニル基が一部、反応系内に混在する水により加水分解を受けてスルホン酸へと変換された化合物が副生し、この結果、該副生物が、目的とする式(1)で表される色素に混入することが理論上考えられる。
しかしながら質量分析において無置換スルファモイル基とスルホ基とを識別することは困難であるため、本発明においては式(4)で表される有機アミンと反応したもの以外の式(3)におけるクロロスルホニル基については全て無置換スルファモイル基へと変換されたものとして記載する。
さらに前記式(1)で表される色素の一部により、2価の連結基(L)を介して銅ポルフィラジン環(Pz)の2量体(例えばPz−L−Pz)又は3量体を形成してなる不純物が副生され、該副生物が反応生成物中に混入することもある。
上記Lで表される2価の連結基としては、−SO−又は−SO−NH−SO−等が挙げられる。3量体の場合にはこれら2つのLが組み合わされた副生成物が形成される場合も有る。
こうして得られた本発明のポルフィラジン色素は酸析又は塩析後、濾過等により分離することが出来る。塩析は例えば酸性〜アルカリ性、好ましくはpH1〜11の範囲で塩析を行うことが好ましい。塩析の際の温度は特に限定されないが、通常40〜80℃、好ましくは50〜70℃である。具体的には、本発明のポルフィラジン色素を含む反応液を上記温度まで加熱した後、塩化ナトリウム等を加えて上記範囲にpHを調整して、塩析するのが好ましい。
上記の方法で合成される、本発明の前記式(1)で表わされる色素は、遊離酸の形あるいはその塩の形で得られる。遊離酸とするには、例えば酸析すればよい。また、塩にするには、塩析すればよい。塩析によって所望の塩が得られないときには、例えば遊離酸にしたものに所望の有機又は無機の塩基を添加する方法等の、通常の塩交換法を利用すればよい。
次に本発明のインク組成物について説明する。上記の方法にて製造された前記式(1)で表される本発明の色素は鮮明なシアン色を呈する。よって、これらを含むインク組成物も主にシアン色のインクとして用いることができる。該インクは高濃度のシアンインクとして用いるばかりでなく、画像の階調部分を滑らかに再現するため、又は淡色領域の粒状感を軽減するために用いられる、低い色素濃度のシアンインク(ライトシアンインクやフォトシアンインク等と呼ばれる)として用いても良い。また、イエロー色の色素と配合してグリーン色のインクとして使用しても良いし、マゼンタ色の色素と配合してバイオレット色やブルー色のインクとして使用しても良い。更に多色を配合してインクを作成し、ダークイエロー色、グレー色又はブラック色として使用することも可能である。
本発明のインク組成物は、水を媒体として調製される。
このインク組成物をインクジェット用インクとして使用する場合、それに含有される本発明のポルフィラジン色素は、Cl及びSO 2−等の陰イオンの含有量は少ないものが好ましい。その陰イオンの含有量の目安は、該色素の総質量中において、Cl及びSO 2−の総含有量として5質量%以下、好ましくは3質量%以下、更に好ましくは1質量%以下であり、インク組成物中においてはインク組成物の総質量に対して1質量%以下である。下限は検出機器の検出限界以下、即ち0%で良い。
Cl及びSO 2−の少ない本発明のポルフィラジン色素を製造するには、例えば逆浸透膜による通常の方法、又は、本発明のポルフィラジン色素の乾燥品あるいはウェットケーキを、含水アルコール中で撹拌する方法等の方法で、脱塩処理すればよい。
後者の場合、用いるアルコールは、C1−C4アルコール、好ましくはC1−C3アルコール、更に好ましくはメタノール、エタノール、n−プロパノール又は2−プロパノールである。脱塩を行いたい色素を含有する含水アルコールを、その沸点近くまで加熱後、冷却して脱塩する方法も採用しうる。
含水アルコール中で脱塩処理された本発明のポルフィラジン色素は、常法により、濾過分離及び乾燥することにより、乾燥状態の色素として得ることもできる。
該色素中のCl及びSO 2−の含有量は、例えばイオンクロマトグラフィーで測定される。
本発明のインク組成物をインクジェット記録用途に用いる場合、該インク組成物に含有される本発明のポルフィラジン色素は、上記のCl及びSO 2−以外の、亜鉛、鉄等の重金属、カルシウム等の各イオン、及びシリカ等の、不純物の含有量も少ないことが好ましい。
ただし本発明のポルフィラジンはイオン結合や配位結合等により、中心金属を有し、銅錯体を形成しているため、この中心金属は不純物に含めない。
上記の不純物含有量の目安は例えば、該ポルフィラジン色素の乾燥精製品中に、亜鉛、鉄等の重金属、カルシウム等の各イオン、及びシリカ等について、各々500ppm以下程度が好ましく、下限は分析機器の検出限界以下、即ち0ppmで良い。
重金属等のイオン含有量は、イオンクロマトグラフィー、原子吸光法又はICP(Inductively Coupled Plasma)発光分析法にて測定することができる。
本発明のインク組成物は、前記式(1)で表されるポルフィラジン色素を0.1〜8質量%、好ましくは0.3〜6質量%含有する。
このインク組成物はさらに必要に応じて、水溶性有機溶剤を、本発明の効果を害しない範囲内において含有してもよい。水溶性有機溶剤は、染料溶解、乾燥防止(湿潤)、粘度調整、浸透促進、表面張力調整、消泡等の機能を目的として使用される場合もある。本発明のインク組成物中に水溶性有機溶剤を含有する方が好ましい。
その他、インク調製剤として、例えば、防腐防黴剤、pH調整剤、キレート試薬、防錆剤、紫外線吸収剤、粘度調整剤、染料溶解剤、褪色防止剤、乳化安定剤、表面張力調整剤、消泡剤、分散剤、分散安定剤等を必要に応じて加えても良い。
本発明のインク組成物は、水溶性有機溶剤を0〜60質量%、好ましくは10〜50質量%、インク調製剤を0〜20質量%、好ましくは0〜15質量%を、それぞれインク組成物の総質量に対して含有しているのが良い。水溶性有機溶剤、インク調製剤及び本発明のポルフィラジン色素以外の残部は水である。
上記の水溶性有機溶剤としては、例えばメタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、イソブタノール、第二ブタノール又は第三ブタノール等のC1−C4アルコール;N,N−ジメチルホルムアミド又はN,N−ジメチルアセトアミド等のカルボン酸アミド;2−ピロリドン、N−メチル−2−ピロリドン、1,3−ジメチルイミダゾリジン−2−オン又は1,3−ジメチルヘキサヒドロピリミド−2−オン等の複素環式ケトン;アセトン、メチルエチルケトン又は2−メチル−2−ヒドロキシペンタン−4−オン等のケトン又はケトアルコール;テトラヒドロフラン又はジオキサン等の環状エーテル;エチレングリコール、1,2−若しくは1,3−プロピレングリコール、1,2−若しくは1,4−ブチレングリコール、1,6−ヘキシレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ジプロピレングリコール、チオジグリコール、ポリエチレングリコール又はポリプロピレングリコール等のC2−C6アルキレン単位を有するモノ、オリゴ若しくはポリアルキレングリコール又はチオグリコール;グリセリン、ヘキサン−1,2,6−トリオール等のポリオール(好ましくはC3−C6トリオール);エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル(ブチルカルビトール)、トリエチレングリコールモノメチルエーテル又はトリエチレングリコールモノエチルエーテル等の多価アルコールのC1−C4モノアルキルエーテル;γーブチロラクトン又はジメチルスルホキシド等が挙げられる。
上記の水溶性有機溶剤として好ましいものは、イソプロパノール、グリセリン、モノ、ジ又はトリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、2−ピロリドン及びN−メチル−2−ピロリドンであり、より好ましくはイソプロパノール、グリセリン、ジエチレングリコール、2−ピロリドン又はブチルカルビトールである。
これらの水溶性有機溶剤は、単独もしくは混合して用いられる。
防腐防黴剤としては、例えば、有機硫黄系、有機窒素硫黄系、有機ハロゲン系、ハロアリールスルホン系、ヨードプロパギル系、N−ハロアルキルチオ系、ベンゾチアゾール系、ニトリル系、ピリジン系、8−オキシキノリン系、イソチアゾリン系、ジチオール系、ピリジンオキシド系、ニトロプロパン系、有機スズ系、フェノール系、第4アンモニウム塩系、トリアジン系、チアジアジン系、アニリド系、アダマンタン系、ジチオカーバメイト系、ブロム化インダノン系、ベンジルブロムアセテート系、及び、無機塩系等の化合物が挙げられる。
有機ハロゲン系化合物としては、例えばペンタクロロフェノールナトリウムが挙げられる。ピリジンオキシド系化合物としては、例えば2−ピリジンチオール−1−オキサイドナトリウムが挙げられる。イソチアゾリン系化合物としては、例えば1,2−ベンズイソチアゾリン−3−オン、2−n−オクチル−4−イソチアゾリン−3−オン、5−クロロ−2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オン、5−クロロ−2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オンマグネシウムクロライド、5−クロロ−2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オンカルシウムクロライド及び2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オンカルシウムクロライド等が挙げられる。
その他の防腐防黴剤の具体例としてソルビン酸ナトリウム、安息香酸ナトリウム、及び酢酸ナトリウム等が挙げられ、また市販品としては、例えば、アーチ・ケミカルズ・ジャパン株式会社製、商品名プロクセルRTMGXL(S)、プロクセルRTMXL−2(S)等が挙げられる。
なお、本明細書において、上付きのRTMは登録商標を表す。
pH調整剤は、インクの保存安定性を向上させる目的で、インクのpHを6.0〜11.0の範囲に制御できるものであれば任意の物質を使用することができる。例えば、ジエタノールアミン又はトリエタノールアミン等のアルカノールアミン;水酸化リチウム、水酸化ナトリウム又は水酸化カリウム等のアルカリ金属の水酸化物;水酸化アンモニウム(アンモニア水);あるいは、炭酸リチウム、炭酸ナトリウム又は炭酸カリウム等のアルカリ金属の炭酸塩;等が挙げられる。
キレート試薬としては、例えばエチレンジアミン四酢酸ナトリウム、ニトリロ三酢酸ナトリウム、ヒドロキシエチルエチレンジアミン三酢酸ナトリウム、ジエチレントリアミン五酢酸ナトリウム及びウラシル二酢酸ナトリウム等が挙げられる。防錆剤としては、例えば、酸性亜硫酸塩、チオ硫酸ナトリウム、チオグリコール酸アンモニウム、ジイソプロピルアンモニウムナイトライト、四硝酸ペンタエリスリトール及びジシクロヘキシルアンモニウムナイトライト等が挙げられる。
紫外線吸収剤としては、例えばベンゾフェノン系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物、桂皮酸系化合物、トリアジン系化合物及びスチルベン系化合物等が挙げられる。また、ベンズオキサゾール系化合物に代表される、紫外線を吸収して蛍光を発する化合物、いわゆる蛍光増白剤も用いることができる。
粘度調整剤としては、水溶性有機溶剤の他に、水溶性高分子化合物が挙げられ、例えばポリビニルアルコール、セルロース誘導体、ポリアミン及びポリイミン等が挙げられる。
染料溶解剤としては、例えば尿素、ε−カプロラクタム及びエチレンカーボネート等が挙げられる。
褪色防止剤は、画像の保存性を向上させる目的で使用される。褪色防止剤としては、各種の有機系及び金属錯体系の褪色防止剤を使用することができる。有機の褪色防止剤としてはハイドロキノン類、アルコキシフェノール類、ジアルコキシフェノール類、フェノール類、アニリン類、アミン類、インダン類、クロマン類、アルコキシアニリン類及びヘテロ環類等が挙げられ、金属錯体としてはニッケル錯体、亜鉛錯体等が挙げられる。
表面張力調整剤としては、界面活性剤があげられ、例えばアニオン界面活性剤、両性界面活性剤、カチオン界面活性剤及びノニオン界面活性剤等が挙げられる。
アニオン界面活性剤としてはアルキルスルホカルボン酸塩、α−オレフィンスルホン酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル酢酸塩、N−アシルアミノ酸及びその塩、N−アシルメチルタウリン塩、アルキル硫酸塩ポリオキシアルキルエーテル硫酸塩、アルキル硫酸塩ポリオキシエチレンアルキルエーテル燐酸塩、ロジン酸石鹸、ヒマシ油硫酸エステル塩、ラウリルアルコール硫酸エステル塩、アルキルフェノール型燐酸エステル、アルキル型燐酸エステル、アルキルアリールスルホン酸塩、ジエチルスルホ琥珀酸塩、並びに、ジエチルヘキルシルスルホ琥珀酸塩、ジオクチルスルホ琥珀酸塩等が挙げられる。
カチオン界面活性剤としては2−ビニルピリジン誘導体及びポリ4−ビニルピリジン誘導体等が挙げられる。
両性界面活性剤としてはラウリルジメチルアミノ酢酸ベタイン、2−アルキル−N−カルボキシメチル−N−ヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタイン、ヤシ油脂肪酸アミドプロピルジメチルアミノ酢酸ベタイン、ポリオクチルポリアミノエチルグリシン、及び、その他のイミダゾリン誘導体等が挙げられる。
ノニオン界面活性剤としては、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンドデシルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレンラウリルエーテル及びポリオキシエチレンアルキルエーテル等のエーテル系;ポリオキシエチレンオレイン酸エステル、ポリオキシエチレンジステアリン酸エステル、ソルビタンラウレート、ソルビタンモノステアレート、ソルビタンモノオレエート、ソルビタンセスキオレエート、ポリオキシエチレンモノオレエート及びポリオキシエチレンステアレート等のエステル系;2,4,7,9−テトラメチル−5−デシン−4,7−ジオール、3,6−ジメチル−4−オクチン−3,6−ジオール及び3,5−ジメチル−1−ヘキシン−3−オール等のアセチレンアルコール系(例えば、日信化学工業株式会社製サーフィノールRTM104、82、465、オルフィンSTG等)等が挙げられる。
消泡剤としては、高酸化油系、グリセリン脂肪酸エステル系、フッ素系及びシリコーン系化合物が必要に応じて用いられる。
これらのインク調製剤は、単独もしくは混合して用いられる。なお、本発明のインクの表面張力は通常25〜70mN/m、より好ましくは25〜60mN/mである。また本発明のインクの粘度は30mPa・s以下が好ましい。更に20mPa・s以下に調整することがより好ましい。
本発明のインク組成物を製造するにあたり、各薬剤を溶解させる順序には特に制限はない。インク組成物の調製に用いる水は、イオン交換水又は蒸留水等の、不純物が少ない水が好ましい。さらに、必要に応じメンブランフィルター等を用いて精密濾過を行って夾雑物を除いてもよく、インクジェットプリンタ用のインクとして使用する場合は精密濾過を行うことが好ましい。精密濾過を行うフィルターの孔径は通常1μm〜0.1μm、好ましくは、0.8μm〜0.1μmである。
本発明のインク組成物は、単色の画像形成のみならず、フルカラーの画像形成に用いることができる。フルカラー画像を形成するために、マゼンタインク、イエローインクとの3原色のインクセット、更にはこれにブラックインクを加えた4色のインクセットとしても使用される。更にはより高精細な画像を形成する為に、ライトマゼンタインク、ブルーインク、グリーンインク、オレンジインク、ダークイエローインク及び/又はグレーインク等と併用したインクセットとしても使用される。本発明のインク組成物と併用する各色のインクセットに用いる色素としては、公知の色素が挙げられる。
上記のイエローインク用の公知色素としては、例えばアリール及び/又はヘテロアリールを有するアゾ系色素;ベンジリデン色素やモノメチンオキソノール色素等のようなメチン系色素;ナフトキノン色素及びアントラキノン色素等のようなキノン系色素等がある。これ以外のものとしてはキノフタロン系色素;ニトロ・ニトロソ系色素;アクリジン系色素;アクリジノン系色素;等を挙げることができる。
上記のマゼンタインク用の公知色素としては、例えばアリール及び/又はヘテロアリールを有するアゾ系色素;アゾメチン系色素;アリーリデン色素、スチリル色素、メロシアニン色素、シアニン色素及びオキソノール色素等のようなメチン系色素;ジフェニルメタン色素、トリフェニルメタン色素及びキサンテン色素等のようなカルボニウム系色素;ナフトキノン、アントラキノン及びアントラピリドン等のようなキノン系色素;ジオキサジン色素等のような縮合多環系色素;等を挙げることができる。
上記のブラックインク用の公知色素としては、ジスアゾ、トリスアゾ又はテトラアゾ等のアゾ系色素;硫化染料;カーボンブラックの分散体;等を挙げることができる。
本発明のインク組成物は、印捺、複写、マーキング、筆記、製図及びスタンピング等の記録方法に使用でき、特にインクジェット記録方法における使用に適する。
本発明のインクジェット記録方法とは、本発明のインク組成物をインクとして使用し、該インクに記録信号に応じてエネルギーを供与し、該インクのインク滴を吐出させて、公知の被記録材、即ち普通紙、樹脂コート紙、インクジェット専用紙、光沢紙、光沢フィルム、電子写真共用紙、繊維や布(セルロース、ナイロン、羊毛等)、ガラス、金属、陶磁器又は皮革等に記録を行い、画像を形成する方法である。
画像を形成する際に、光沢性や耐水性を与えたり、耐候性を改善する目的からポリマー微粒子分散物(ポリマーラテックスともいう)を使用してもよい。
ポリマーラテックスを被記録材に付与する時期については、着色剤を付与する前であっても、後であっても、また同時であってもよい。
したがってポリマーラテックスを含有する被記録材に本発明のインク組成物で記録してもよいし、該インク組成物中にポリマーラテックスを含有してもよい。又は該インク組成物によって被記録材へ記録を行う前又は後に、ポリマーラテックスを単独の液状物として被記録材に適用しても良い。
本発明の着色体は、本発明のポルフィラジン色素又はこれを含有する水性インク組成物により着色された物質を意味する。着色される物質としては、特に制限されないが、例えば紙、フィルム等の情報伝達用シート、繊維や布(セルロース、ナイロン、羊毛等)、皮革及びカラーフィルター用基材等が挙げられる。着色される物質としては、情報伝達用シートが好ましい。
上記被記録材又は上記着色される物質における情報伝達用シートとしては、表面処理されたもの、具体的には紙、合成紙又はフィルム等の基材にインク受容層を設けたものが好ましい。インク受容層は、例えば上記基材にカチオン系ポリマーを含浸あるいは塗工すること;多孔質シリカ、アルミナゾルや特殊セラミックス等のインク中の色素を吸収し得る無機微粒子(白色無機顔料粒子)をポリビニルアルコールやポリビニルピロリドン等の親水性ポリマーと共に上記基材表面に塗工すること;等により設けられる。
このようなインク受容層を設けた情報伝達用シートは通常インクジェット専用紙(フィルム)、光沢紙(フィルム)等と呼ばれる。この中でも、オゾンガス等の空気中の酸化作用を持つガスに対して影響を受けやすいとされているのが、多孔質シリカ、アルミナゾルや特殊セラミックス等のインク中の色素を吸収し得る無機微粒子を基材表面に塗工しているタイプのインクジェット専用紙である。
市販品として入手できる上記インクジェット専用紙の代表的な例としては、いずれも商品名で、キヤノン株式会社製 プロフェッショナルフォトペーパー、光沢ゴールド、光沢プロフェッショナル;セイコーエプソン株式会社製 写真用紙クリスピア(高光沢)、写真用紙(光沢)、フォトマット紙;日本ヒューレット・パッカード株式会社製 アドバンスフォト用紙(光沢);ブラザー工業株式会社製 プレミアムプラスグロッシィフォトペーパー;等が挙げられる。なお、普通紙も当然利用できる。具体的には、いずれも商品名で、キヤノン株式会社製 PBペーパーGF500;セイコーエプソン株式会社製 両面上質普通紙;等が挙げられるが、これらに限られるものではない。
上記本発明の着色体を得るための着色方法は、公知のいずれの方法を用いてもよい。好ましい着色方法の一つは、インクジェットプリンタを用い、本発明のインクで上記の物質を着色する方法である。被着色材は上記の物質であっても、その他のものであってもよい。
本発明のインクジェット記録方法で、上記の被記録材に記録を行うには、例えば上記のインク組成物を含有する容器をインクジェットプリンタの所定位置にセットし、通常の方法で記録すればよい。
インクジェットプリンタとしては、例えば機械的振動を利用したピエゾ方式のプリンタ;加熱により生ずる泡を利用したバブルジェットRTM方式のプリンタ等が挙げられる。
本発明のインク組成物は貯蔵中に沈澱、分離することがない。また、該インク組成物をインクジェット記録に使用した場合、噴射器(インクヘッド)を閉塞することもない。本発明のインク組成物は、連続式インクジェットプリンタによる比較的長い時間かつ一定の再循環下での記録;又はオンデマンド式インクジェットプリンタによる断続的な記録;等においても、物理的性質の変化を起こさない。
本発明のインク組成物は鮮明なシアン色であり、これをインクとして使用することにより耐光性、耐水性等の各種の堅牢性、特に耐オゾン性に優れた記録物を得ることができる。また本発明のインク組成物は、シアンの標準色により近い色相を有するため、色相と耐オゾン性のバランスに優れる。更に、高い印字濃度を有するためインク中の色素濃度を低下することが出来、コスト減少に伴う産業上の優位性を有している。
また、他のマゼンタインク及びイエローインクと共に用いることで、広い可視領域の色調を表現することができる。
また、濃淡それぞれのシアンインクを使用し、これに加えて耐オゾン性及び耐光性、耐水性に優れた他のイエロー及び/又はマゼンタ、その他必要に応じて、グリーン、レッド、オレンジ及び/又はブルー等のインクと併用することにより、さらに広い可視領域の色調を表現することもできる。
以下に本発明を実施例により更に具体的に説明する。尚、本文中「部」及び「%」とあるのは、特別の記載のない限り質量基準である。また、反応、晶析等の各操作は、特に断りの無い限り、いずれも攪拌下に行った。また、合成反応に使用した、「商品名 レオコールTD−90」は、ライオン株式会社製の界面活性剤である。
また、実施例中の化合物における最大吸収波長(λmax)の測定は、いずれも水溶液を用いて行った。
なお実施例にて合成した前記式(1)で表される色素は、全て上記のように異性体等を含む混合物である。従って構造式は異性体を含む形で表示して、ピリジン環の数、ベンゼン環数、b及びc、及びbとcの和等は前記したように全て平均値で表示した。従って、収量については該化学式に含まれる該異性体等を含む値である。また、実施例における本発明の色素は非置換スルファモイル基及び置換スルファモイル基が、それぞれ(b)及び(c)の比率で、それぞれ独立に、ポルフィラジン環のα位及びβ位に置換したものの混合物であり、おおよそα位置換体及びβ位置換体の等量混合物と考えられる。
なお「(対液20%)」等と記載した場合は、その時点における総液量(質量基準)に対して、加えた化合物の質量%を表す。
実施例で得られた色素において、環A乃至Dにおける6員環の含窒素複素芳香環がピリジン環である場合には、ポルフィラジン環に縮環する該ピリジン環の縮環位置は、2位及び3位又は5位及び6位である。さらに、環A乃至Dにおける、ベンゼン環及び6員環の含窒素複素芳香環の数、b及びcの値は、小数点以下3桁目を四捨五入し、小数点以下2桁として記載した。このb及びcの値は、目的化合物を試料としたICP発光分析法による銅含有量の測定、カールフィッシャー法による含水量の測定、及びイオンクロマト法による無機不純物(ナトリウム、カリウム、塩素原子等のイオン)の含有量の測定により求めることができる。
なお、合成した本発明のポルフィラジン色素は、いずれも水溶液の総質量に対して15質量%以上と極めて高い溶解度を示した。
実施例1
(1)下記式(6)における環A乃至Dのうち0.25がピリジン環で残り3.75がベンゼン環である、下記式(6)で表される化合物の合成。
Figure 0005458022
四つ口フラスコに、スルホラン375部、無水フタル酸41.6部、キノリン酸3.13部、尿素108部、塩化銅(II)10.1部、及び、モリブデン酸アンモニウム1.5部を加え、200℃へ液温を上げ、同温度で5時間保持した。反応終了後65℃まで冷却し、DMF50部を反応液に加えて、析出した固体を濾過分離した。得られた固体をDMF50部で洗浄し、ウェットケーキ75.2部を得た。得られたウェットケーキ全量をDMF450部に加え、110℃に液温を上げ、同温度で一時間保持した。固体を濾過分離し、水200部で洗浄することにより得られたウェットケーキを5%塩酸450部中に加え、60℃に液温を上げ、同温度で1時間保持した。固体を濾過分離し、水200部で洗浄して得られたウェットケーキ全量を5%アンモニア水450部中に加え、60℃で1時間保持した。固体を濾過分離し、水200部で洗浄し、ウェットケーキ82.6部を得た。得られたウェットケーキを80℃で乾燥し、目的とする化合物26.3部を青色固体として得た。
元素分析 C1276333Cu
C H N Cu
理論値: 66.17 2.76 20.05 11.03
実測値: 65.79 2.95 19.81 10.94
(2)下記式(3)における環A乃至Dのうち0.25がピリジン環で残り3.75がベンゼン環であり、nが3.75である、下記式(3)で表される化合物の合成。
Figure 0005458022
クロロスルホン酸46.2部中に、攪拌しながら60℃以下で実施例1(1)で得られた化合物5.8部を徐々に加え、140℃で4時間反応を行った。次に反応液を70℃まで冷却し、塩化チオニル7.14部を30分間かけて滴下し、70℃で3時間反応を行った。反応液を30℃以下に冷却し、氷水800部中にゆっくりと注いだ。析出した固体を濾過分離し、冷水200部で洗浄することにより、目的とする化合物のウェットケーキ42.0部を得た。
(3)下記式(15)で表される化合物[前記式(4)におけるXが4−スルホアニリノ、Yが3−スルホアニリノ、Eがエチレンである化合物]の合成。
Figure 0005458022
氷水330部中に塩化シアヌール18.4部、商品名レオコールTD−90(0.2部)を加え、10℃以下で30分間攪拌した。次にそこに、4−スルホアニリン(純度99.3%)17.4部を加え、pH2.6〜3.0、0〜5℃で1時間、pH3.0〜3.5、0〜5℃で1時間、同pH、25〜30℃で1時間反応を行った。この反応の間、反応液のpHを、10%水酸化ナトリウム水溶液を用いて調整した。
得られた反応液に3−スルホアニリン(純度99.3%)17.4部を加え、10%水酸化ナトリウム水溶液を用いてpH5.0〜6.0としながら、40℃で3時間反応を行った。
反応液に氷250部を加え、0℃へ冷却し、エチレンジアミン60部を、5℃以下を保持しながら滴下した。その後、反応液を室温で一晩攪拌した後、濃塩酸を用いてpH1.0に調節した。濃塩酸を加える間、反応液に氷を加えながら、液温を10〜15℃に保持した。このときの反応液の液量は1000部であった。この反応液に塩化ナトリウム200部を加え、30分撹拌し固体を析出させた。
析出した固体を濾過分離しウェットケーキ85.6部を得た。得られたウェットケーキをビーカーに入れ、水280部をそこに加え、10%水酸化ナトリウム水溶液を用いてpH9.0として溶解させた。このとき液量は450部であった。この反応液に濃塩酸を加えてpH1.0に調整した後、塩化ナトリウム90部を加え、30分撹拌して、固体を析出させた。析出固体を濾過分離しウェットケーキ115.1部を得た。得られたウェットケーキをビーカーに入れ、メタノール500部、水100部をそこに加え、50℃で1時間攪拌した。その後、固体を濾過分離しウェットケーキ84.1部を得た。得られたウェットケーキを乾燥させ、目的化合物の白色粉末44.3部を得た。
(4)下記式(16)で表される本発明の色素[前記式(1)における環A乃至Dのうち0.25がピリジン環で残り3.75がベンゼン環であり、Eがエチレン、Xが4−スルホアニリノ、Yが3−スルホアニリノ、bが2.91、及びcが0.84である色素]の合成。
Figure 0005458022
氷水50部中に実施例1(2)で得られた化合物のウェットケーキ42.0部を加え、5℃以下で懸濁した。10分後、液温を10℃以下に保持しながら、28%アンモニア水2部、及び、水30部中に式(15)で表される化合物3.4部を溶解させた水溶液を懸濁液に加えた。さらにそこに28%アンモニア水を加えながら、該液のpH9.0を保持し、1時間かけて20℃まで液温を上げ、同温度で8時間反応した。この時の液量は250部であった。反応液の温度を50℃に上げ、塩化ナトリウム50部(対液20%)を加え30分撹拌した後、20分かけて濃塩酸でpH3.0に調整した。その後、析出固体を濾過分離、20%塩化ナトリウム水溶液100部で洗浄し、ウェットケーキ51.0部を得た。得られたウェットケーキを水200部に加え、25%水酸化ナトリウム水溶液を用いて、pH9.0に調整し、ウェットケーキを溶解した。このときの液量は260部であった。この溶液の温度を50℃に上げ、塩化ナトリウム26部(対液10%)を加え30分撹拌した後、この溶液を20分かけて濃塩酸でpH2.0に調整した。その後、析出固体を濾過分離、10%塩化ナトリウム水溶液100部で洗浄し、ウェットケーキ49.9部を得た。得られたウェットケーキをメタノール255部及び水45部の混合液に加えて、50℃で1時間攪拌した後、固体を濾過分離しウェットケーキ38.5部を得た。得られたウェットケーキを乾燥することにより、目的とする本発明の色素11.4部を青色粉末として得た。
λmax:611.0nm。
実施例2
(1)前記式(6)における環A乃至Dのうち0.75がピリジン環で残り3.25がベンゼン環である、前記式(6)で表される化合物の合成。
四つ口フラスコに、スルホラン375部、無水フタル酸30.8部、キノリン酸9.40部、尿素108部、塩化銅(II)10.1部、及び、モリブデン酸アンモニウム1.5部を加え、200℃まで液温を上げ、同温度で5時間保持した。反応終了後、溶液を65℃まで冷却し、そこにDMF50部を加え、析出固体を濾過分離した。得られた固体をDMF50部で洗浄し、ウェットケーキ84.2部を得た。得られたウェットケーキ全量をDMF450部に加え、110℃に液温を上げ、同温度で一時間保持した。固体を濾過分離し、水200部で洗浄した。次いで、得られたウェットケーキを5%塩酸450部中に加え、60℃に液温を上げ、同温度で1時間保持した。固体を濾過分離し、水200部で洗浄して得られたウェットケーキ全量を、5%アンモニア水450部中に加えた。液温を60℃で1時間保持し、固体を濾過分離、水200部で洗浄し、ウェットケーキ79.3部を得た。得られたウェットケーキを80℃で乾燥し、目的とする化合物30.3部を青色固体として得た。
元素分析 C1256135Cu
C H N Cu
理論値: 65.07 2.67 21.25 11.02
実測値: 64.39 2.75 20.91 10.89
(2)前記式(3)における環A乃至Dのうち0.75がピリジン環で残り3.25がベンゼン環であり、nが3.25である、前記式(3)で表される化合物の合成。
クロロスルホン酸46.2部中に、60℃以下で、実施例2(1)で得られた化合物5.8部を徐々に加えた後、140℃で4時間反応を行った。次に反応液を70℃まで冷却し、そこに塩化チオニル7.14部を30分間かけて滴下し、70℃で3時間反応を行った。反応液を30℃以下に冷却し、氷水800部中にゆっくりと注いだ。析出固体を濾過分離し、冷水200部で洗浄して、目的とする化合物のウェットケーキ42.3部を得た。
(3)前記式(16)で表される本発明の色素[前記式(1)における環A乃至Dのうち0.75がピリジン環で残り3.25がベンゼン環であり、Eがエチレン、Xが4−スルホアニリノ、Yが3−スルホアニリノ、bが2.42、及びcが0.83である色素]の合成。
氷水50部中に実施例2(2)で得られた化合物のウェットケーキ42.3部を加え、5℃以下で懸濁した。10分後、懸濁液を10℃以下に保持しながら、28%アンモニア水2部、及び、水30部中に式(15)で表される化合物3.37部を溶解させた水溶液を懸濁液に加えた。さらにそこに28%アンモニア水を加えながら、該液のpH9.0を保持し、1時間かけて20℃まで液温を上げ、同温度で8時間保持した。この時の液量は230部であった。反応液の温度を50℃に上げ、そこに塩化ナトリウム46部(対液20%)を加えた。反応液を30分間撹拌した後、20分かけて濃塩酸でpH3.0に調整した。次いで、析出固体を濾過分離、20%塩化ナトリウム水溶液100部で洗浄し、ウェットケーキ51.9部を得た。得られたウェットケーキを水200部に加え、25%水酸化ナトリウム水溶液を用いて、pH9.0に調整し、ウェットケーキを溶解した。このときの液量は260部であった。溶液の温度を50℃に上げ、そこに塩化ナトリウム26部(対液10%)を加えた。溶液を30分撹拌した後、20分かけて濃塩酸でpH2.0に調整した。次いで、析出固体を濾過分離、10%塩化ナトリウム水溶液100部で洗浄し、ウェットケーキ48.9部を得た。得られたウェットケーキをメタノール255部及び水45部の混合液に加えて、50℃で1時間攪拌した後、固体を濾過分離してウェットケーキ33.5部を得た。得られたウェットケーキを乾燥することにより、目的とする本発明の色素の10.1部を青色粉末として得た。
λmax:609.5nm。
実施例3
(1)前記式(6)における環A乃至Dのうち0.85がピリジン環で残り3.15がベンゼン環である、前記式(6)で表される化合物の合成。
四つ口フラスコに、スルホラン375部、無水フタル酸34.96部、キノリン酸10.65部、尿素108部、塩化銅(II)10.1部、及び、モリブデン酸アンモニウム1.5部を加え、200℃まで液温を上げ、同温度で5時間保持した。反応終了後65℃まで冷却し、DMF50部を加え、析出固体を濾過分離した。得られた固体をDMF50部で洗浄し、ウェットケーキ79.2部を得た。得られたウェットケーキ全量をDMF450部に加え、110℃に液温を上げ、同温度で一時間保持した。析出固体を濾過分離し、水200部で洗浄した。次いで、得られたウェットケーキを5%塩酸450部中に加え、60℃に液温を上げ、同温度で1時間保持した。固体を濾過分離し水200部で洗浄した。得られたウェットケーキ全量を5%アンモニア水450部中に加え、60℃で1時間保持した。固体を濾過分離し、水200部で洗浄し、ウェットケーキ82.6部を得た。得られたウェットケーキを80℃で乾燥し、目的とする化合物29.3部を青色固体として得た。
元素分析 C623303177Cu20
C H N Cu
理論値: 64.85 2.65 21.49 11.01
実測値: 64.39 2.95 20.67 10.49
(2)前記式(3)における環A乃至Dのうち0.85がピリジン環で残り3.15がベンゼン環であり、nが3.15である、前記式(3)で表される化合物の合成。
クロロスルホン酸46.2部中に、60℃以下で、実施例2(1)で得られた化合物5.8部を徐々に加えた後、140℃で4時間反応を行った。次に反応液を70℃まで冷却し、そこに塩化チオニル7.14部を30分間かけて滴下し、70℃で3時間反応を行った。反応液を30℃以下に冷却し、氷水800部中にゆっくりと注いだ。析出固体を濾過分離し、冷水200部で洗浄し目的とする化合物のウェットケーキ40.0部を得た。
(3)前記式(16)で表される本発明の色素[前記式(1)における環A乃至Dのうち0.85がピリジン環で残り3.15がベンゼン環であり、Eがエチレン、Xが4−スルホアニリノ、Yが3−スルホアニリノ、bが2.31、及びcが0.84である色素]の合成。
氷水50部中に実施例2(2)で得られた化合物のウェットケーキ40.0部を加え、5℃以下で懸濁した。10分後、液温を10℃以下に保持しながら、28%アンモニア水2部、及び、水30部中に式(15)で表される化合物3.85部を溶解させた水溶液を懸濁液に加えた。さらにそこに28%アンモニア水を加えながら、該液のpH9.0を保持し、1時間かけて20℃まで液温を上げ、同温度で8時間保持した。この時の液量は240部であった。反応液の温度を50℃に上げ、そこに塩化ナトリウム48部(対液20%)を加え、反応液を30分撹拌した。次いで、20分かけて濃塩酸でpH3.0に調整した後、析出固体を濾過分離、20%塩化ナトリウム水溶液100部で洗浄し、ウェットケーキ51.0部を得た。得られたウェットケーキを水200部に加え、25%水酸化ナトリウム水溶液を用いて、pH9.0に調整し、ウェットケーキを溶解した。このときの液量は260部であった。溶液の温度を50℃に上げ、そこに塩化ナトリウム26部(対液10%)を加え、反応液を30分撹拌した。次いで、20分かけて濃塩酸でpH2.0に調整した後、析出固体を濾過分離、10%塩化ナトリウム水溶液100部で洗浄し、ウェットケーキ48.2部を得た。得られたウェットケーキをメタノール255部及び水45部の混合液に加えて、50℃で1時間攪拌した後、固体を濾過分離してウェットケーキ33.5部を得た。得られたウェットケーキを乾燥することにより、目的とする本発明の色素11.2部を青色粉末として得た。
λmax:608.5nm。
実施例4
(1)前記式(6)における環A乃至Dのうち0.65がピリジン環で残り3.35がベンゼン環である、前記式(6)で表される化合物の合成。
四つ口フラスコに、スルホラン375部、無水フタル酸37.21部、キノリン酸9.41部、尿素108部、塩化銅(II)10.1部、及び、モリブデン酸アンモニウム1.5部を加え、200℃まで液温を上げ、同温度で5時間保持した。反応終了後、反応液を65℃まで冷却し、そこにDMF50部を加え、析出固体を濾過分離した。得られた固体をDMF50部で洗浄し、ウェットケーキ82.6部を得た。得られたウェットケーキ全量をDMF450部に加え、110℃に液温を上げ、同温度で一時間保持した。固体を濾過分離し、水200部で洗浄した。次いで、得られたウェットケーキを5%塩酸450部中に加え、60℃に液温を上げ、同温度で1時間保持した。固体を濾過分離し水200部で洗浄した。得られたウェットケーキ全量を5%アンモニア水450部中に加え、60℃で1時間保持した。固体を濾過分離し、水200部で洗浄し、ウェットケーキ82.6部を得た。得られたウェットケーキを80℃で乾燥し、目的とする化合物28.6部を青色固体として得た。
(2)前記式(3)における環A乃至Dのうち0.65がピリジン環で残り3.35がベンゼン環であり、nが3.35である、前記式(3)で表される化合物の合成。
クロロスルホン酸46.2部中に60℃以下で実施例2(1)で得られた化合物5.8部を徐々に加え、140℃で4時間反応を行った。次に反応液を70℃まで冷却し、そこに塩化チオニル7.14部を30分間かけて滴下し、70℃で3時間反応を行った。反応液を30℃以下に冷却し、氷水800部中にゆっくりと注いだ。析出固体を濾過分離し、冷水200部で洗浄して、目的とする化合物のウェットケーキ43.2部を得た。
(3)前記式(16)で表される本発明の色素[前記式(1)における環A乃至Dのうち0.65がピリジン環で残り3.35がベンゼン環であり、Eがエチレン、Xが4−スルホアニリノ、Yが3−スルホアニリノ、bが2.49、及びcが0.86である色素]の合成。
氷水50部中に実施例2(2)で得られた化合物のウェットケーキ40.0部を加え、5℃以下で懸濁した。10分後、液温を10℃以下に保持しながら、28%アンモニア水2部、及び、水30部中に式(15)で表される化合物4.81部を溶解させた水溶液を加えた。さらにそこに28%アンモニア水を加えながら、該液のpH9.0を保持し、1時間かけて20℃まで液温を上げ、同温度で8時間保持した。この時の液量は250部であった。反応液の温度を50℃に上げ、そこに塩化ナトリウム50部(対液20%)を加え、反応液を30分撹拌した。次いで、20分かけて濃塩酸でpH3.0に調整した後、析出固体を濾過分離し、20%塩化ナトリウム水溶液100部で洗浄し、ウェットケーキ49.2部を得た。得られたウェットケーキを水200部に加え、25%水酸化ナトリウム水溶液を用いて、pH9.0に調整し、ウェットケーキを溶解した。このときの液量は260部であった。溶液の温度を50℃に上げ、そこに塩化ナトリウム26部(対液10%)を加え、溶液を30分撹拌した。次いで、20分かけて濃塩酸でpH2.0に調整した後、析出固体を濾過分離し、10%塩化ナトリウム水溶液100部で洗浄し、ウェットケーキ46.9部を得た。得られたウェットケーキをメタノール255部及び水45部の混合液に加えて、50℃で1時間攪拌した後、析出固体を濾過分離してウェットケーキ33.5部を得た。得られたウェットケーキを乾燥することにより、目的とする本発明の色素10.9部を青色粉末として得た。
λmax:612.0nm。
比較例1
(1)前記式(6)における環A乃至Dのうち1.00がピリジン環で残り3.00がベンゼン環である、前記式(6)で表される化合物の合成。
四つ口フラスコに、スルホラン375部、無水フタル酸33.29部、キノリン酸12.53部、尿素108部、塩化銅(II)10.1部、及び、モリブデン酸アンモニウム1.5部を加え、200℃へ液温を上げ、同温度で5時間保持した。反応終了後65℃まで冷却し、そこにDMF50部を加え、析出固体を濾過分離した。得られた固体をDMF50部で洗浄し、ウェットケーキ73.1部を得た。得られたウェットケーキ全量をDMF450部に加え、110℃に液温を上げ、同温度で一時間保持した。固体を濾過分離し、水200部で洗浄した。得られたウェットケーキを5%塩酸450部中に加え、60℃に液温を上げ、同温度で1時間保持した。固体を濾過分離し、水200部で洗浄した。得られたウェットケーキ全量を5%アンモニア水450部中に加え、60℃で1時間保持した。固体を濾過分離、水200部で洗浄し、ウェットケーキ78.1部を得た。得られたウェットケーキを80℃で乾燥し、目的とする化合物24.1部を青色固体として得た。
(2)前記式(3)における環A乃至Dのうち1.00がピリジン環で残り3.00がベンゼン環であり、nが3である、前記式(3)で表される化合物の合成。
クロロスルホン酸46.2部中に、攪拌しながら60℃以下で、比較例1(1)で得られた化合物5.8部を徐々に加えた後、140℃で4時間反応を行った。得られた反応液を70℃まで冷却し、そこに塩化チオニル7.14部を30分間かけて滴下し、70℃で3時間反応を行った。反応液を30℃以下に冷却し、氷水800部中に反応液をゆっくりと注いだ。析出固体を濾過分離し、冷水200部で洗浄して、目的とする化合物のウェットケーキ42.4部を得た。
(3)前記式(16)で表される比較用色素[前記式(1)における環A乃至Dのうち1.00がピリジン環で残り3.00がベンゼン環であり、Eがエチレン、Xが4−スルホアニリノ、Yが3−スルホアニリノ、bが2.28、cが0.72である色素]の合成。
氷水50部中に比較例1(2)で得られたウェットケーキ42.4部を加え、5℃以下で懸濁した。10分後、液温を10℃以下に保持しながら、28%アンモニア水2部、及び、水30部中に式(15)で表される化合物3.85部を溶解させた水溶液を懸濁液に加えた。さらにそこに28%アンモニア水を加えながら、該液のpH9.0を保持し、1時間かけて20℃へ液温を上げ、同温度で8時間保持した。この時の液量は225部であった。反応液の温度を50℃に上げ、そこに塩化ナトリウム45部(対液20%)を加え、反応液を30分撹拌した後、20分かけて濃塩酸でpH3.0に調整した。析出固体を濾過分離し、20%塩化ナトリウム水溶液100部で洗浄し、ウェットケーキ45.0部を得た。得られたウェットケーキを水200部に加え、25%水酸化ナトリウム水溶液を用いてpH9.0に調整し、ウェットケーキを溶解した。このときの液量は260部であった。得られた溶液の温度を50℃に上げ、そこに塩化ナトリウム26部(対液10%)を加え30分撹拌した後、20分かけて濃塩酸でpH2.0に調整した。析出固体を濾過分離し、20%塩化ナトリウム水溶液100部で洗浄し、ウェットケーキ44.2部を得た。得られたウェットケーキをメタノール255部及び水45部の混合液に加えて50℃で1時間攪拌した後、固体を濾過分離しウェットケーキ31.9部を得た。得られたウェットケーキを乾燥し、目的とする比較用の色素8.1部を青色粉末として得た。
λmax:603.0nm。
比較例2
(1)銅テトラベンゾポルフィラジンテトラスルホニルクロリド[前記式(3)における環A乃至Dの全てがベンゼン環であり、nが4である化合物]の合成。
クロロスルホン酸46.2部中に、攪拌しながら60℃以下で、銅テトラベンゾポルフィラジン5.8部を徐々に加えた後、140℃で4時間反応を行った。次に反応液を70℃まで冷却し、そこに塩化チオニル7.14部を30分間かけて滴下し、70℃で3時間反応を行った。反応液を30℃以下に冷却し、氷水800部中に反応液をゆっくりと注いだ。析出固体を濾過分離し、冷水200部で洗浄し、目的化合物のウェットケーキ40.4部を得た。
(2)前記式(16)で表される比較用色素[前記式(1)における環A乃至Dの全てがベンゼン環であり、Eがエチレン、Xが4−スルホアニリノ、Yが3−スルホアニリノ、bが3.23、及びcが0.77である色素]の合成。
氷水50部中に比較例2(1)で得られた化合物のウェットケーキ40.4部を加え、5℃以下で懸濁した。10分後、液温を10℃以下に保持しながら、28%アンモニア水2部、及び、水30部中に式(15)で表される化合物3.37部を溶解させた水溶液を懸濁液に加えた。さらにそこに28%アンモニア水を加えながら、該液のpH9.0を保持し、1時間かけて20℃まで液温を上げ、同温度で8時間保持した。この時の液量は225部であった。反応液の温度を50℃に上げ、塩化ナトリウム45部(対液20%)を加え反応液を30分撹拌した後、20分かけて濃塩酸でpH1.0に調整した。析出固体を濾過分離、20%塩化ナトリウム水溶液100部で洗浄し、ウェットケーキ43.1部を得た。得られたウェットケーキを水200部に加え、25%水酸化ナトリウム水溶液を用いて、pH9.0に調整し、ウェットケーキを溶解した。このときの液量は260部であった。得られた溶液の温度を50℃に上げ、そこに塩化ナトリウム52部(対液20%)を加え30分撹拌した後、20分かけて濃塩酸でpH1.0に調整した。析出固体を濾過分離し、20%塩化ナトリウム水溶液100部で洗浄し、ウェットケーキ45.2部を得た。得られたウェットケーキをメタノール255部及び水45部の混合液に加えて50℃で1時間攪拌した。固体を濾過分離し、ウェットケーキ36.5部を得た。得られたウェットケーキ乾燥し、目的とする比較用色素10.1部を青色粉末として得た。
λmax:609.0nm。
(A)インクの調製
下記表2に記載の各成分を混合溶解し、0.45μmのメンブランフィルター(アドバンテック東洋株式会社製)で濾過する事により評価試験用のインクを調製した。インクの調製における「水」は、イオン交換水を使用した。又、インクのpHが8〜10、総量が100部になるように水及び水酸化ナトリウム(pH調整剤)を加えた。実施例1で得た色素を用いたインクの調製を実施例5、同様に、実施例2乃至3で得た色素を用いたインクの調製をそれぞれ実施例6乃至7とする。また実施例で得た色素の代わりに、比較例1又は2で得た比較用色素を用いる以外は実施例5乃至7と同様にして比較用インクを調製した。このインクの調製をそれぞれ比較例3(比較例1で得た比較用色素を使用)及び4(比較例2で得た比較用色素を使用)とする。
表2
上記各実施例で得た色素 5.0部
グリセリン 5.0部
尿素 5.0部
N−メチル−2−ピロリドン 4.0部
イソプロピルアルコール 3.0部
ブチルカルビトール 2.0部
タウリン 0.3部
エチレンジアミン4酢酸2ナトリウム 0.1部
界面活性剤[日信化学工業株式会社製、商品名 サーフィノール104PG50]
0.1部
水+水酸化ナトリウム水溶液 75.5部
計 100.0部
(B)インクジェット記録
インクジェットプリンタ(キヤノン株式会社製、商品名:PIXUSRTMip4100)を用いて、光沢紙としてヒューレット・パッカード社製アドヴァンスフォトペーパー)にインクジェット記録を行った。
インクジェット記録の際は、100%、85%、70%、55%、40%、25%濃度の6段階の階調が得られるように画像パターンを作り、ハーフトーンの記録物を得て、これを試験片とした。
また、反射濃度は測色システム(SpectroEye、GretagMacbeth社製)を用いて測色した。測色は、濃度基準にDIN、視野角2°、光源D65の条件で行なった。
記録画像の各種試験方法及び試験結果の評価方法を以下に記載する。
(C)記録画像の評価
1.耐オゾンガス性試験(A)
試験片を、オゾンウェザーメーター(スガ試験機株式会社製 型式OMS−H)を用い、オゾン濃度10ppm、槽内温度24℃、湿度60%RHの環境下で24時間放置した。試験後に100%の階調部で反射濃度の測定を行ない、色素残存率を(試験後の反射濃度/試験前の反射濃度)×100(%)で計算して求め、3段階で評価した。試験前の各試験片の反射濃度は2.17±0.05の範囲内であった。
○:残存率80%以上
△:残存率80%未満、70%以上
×:残存率70%未満、60%以上
色素残存率はその数値が高いほど良い。結果を下記表3に示す。
2.耐オゾンガス性試験(B)
試験片を、オゾンウェザーメーター(スガ試験機株式会社製 型式OMS−H)を用い、オゾン濃度10ppm、槽内温度24℃、湿度60%RHの環境下で24時間放置した。試験後に70%の階調部で反射濃度の測定を行ない、色素残存率を(試験後の反射濃度/試験前の反射濃度)×100(%)で計算して求め、3段階で評価した。試験前の各試験片の反射濃度は1.33±0.05の範囲内であった。
○:残存率80%以上
△:残存率80%未満、70%以上
×:残存率70%未満、60%以上
色素残存率はその数値が高いほど良い。結果を下記表3に示す。
3.耐オゾンガス性試験(C)
試験片を、オゾンウェザーメーター(スガ試験機株式会社製 型式OMS−H)を用い、オゾン濃度10ppm、槽内温度24℃、湿度60%RHの環境下で24時間放置した。試験後に40%の階調部で反射濃度の測定を行ない、色素残存率を(試験後の反射濃度/試験前の反射濃度)×100(%)で計算して求め、3段階で評価した。試験前の各試験片の反射濃度は0.26±0.01の範囲内であった。
○:残存率80%以上
△:残存率80%未満、70%以上
×:残存率70%未満
色素残存率はその数値が高いほど良い。結果を下記表3に示す。
4.ブロンズ性評価
ブロンズ性の評価は、100%濃度、85%濃度、70%濃度、55%濃度、40%濃度の5段階の印刷濃度階調に対して、どの階調でブロンズが発生するかを目視にて評価した。いずれの階調部でもブロンズが発生していないものはOK、ブロンズが発生したものに関しては、ブロンズが発生した印刷濃度のうちの最低印刷濃度階調について記載した。得られた印刷物はブロンズが発生していないものが好ましい。
5.色相評価(a)
色相評価は、100%濃度階調部を上記測色システムを用いて測色し、どのくらい標準色に近い色相であるか、評価した。なお、ここでいう標準色のシアンにはISO/TC130国内委員会が発表しているJapanColorベタパッチ色見本(3rdVERSION)を用い、上記測色システムにより色相を測定した。標準色の測定結果を以下に示す。
L*:56.38、a*:−29.99、b*:−44.44
評価を行なう際は、各試験片のL*、a*、b*を測色し、標準色からの色差(ΔE)を求めた。なお、色差(ΔE)は、以下の計算式により算出した。
ΔE=(Δa+Δb+ΔL1/2
算出した色差から、色相を3段階で評価した。
○:色差が5以上10未満
△:色差が10以上15未満
×:色差が15以上
結果を表4に示す。この値がより小さければ、試験片の色相が標準色に近く、好ましい。
表3 耐オゾンガス性試験結果
(A) (B) (C)
実施例5 △ △ △
実施例6 △ △ ○
実施例7 △ △ ○
比較例3 ○ △ ○
比較例4 × × △
表4 ブロンズ・色相評価結果
ブロンズ 色相(a)
実施例5 OK ○
実施例6 OK △
実施例7 OK △
比較例3 OK ×
比較例4 OK ○
表3及び4から明らかなように、いずれの実施例及び比較例においても、ブロンズ現象は観察されず、この点においては全ての例で良好な結果を示した。しかしながら、比較例3は、耐オゾンガス性は良好であるが、色相は標準色から最も乖離しており、シアンの色相としては十分とは言えないことが判明した。また、比較例4は、シアンの色相としては好適であるが、耐オゾンガス性が不十分であることが確認された。
これに対して、各実施例はいずれも、耐オゾンガス性と色相のバランスにおいて、各比較例より優れていることが明らかとなった。
上記の通り、本発明のポルフィラジン色素及びこれを含有するインク組成物により、高い耐オゾンガス性と共に、より標準色に近い色相を有するバランスの取れた記録物が得られることが明らかであり、各種記録用、特にインクジェット記録用途に極めて有用である。

Claims (18)

  1. 下記式(1)で表されるポルフィラジン色素混合物又はその塩、
    Figure 0005458022
    [式中、
    環A乃至Dは、それぞれ独立にポルフィラジン環に縮環したベンゼン環又は窒素原子を1又は2個含む6員環の含窒素複素芳香環を表し、含窒素複素芳香環の個数は平均値で0.00より大きく1.00未満であり、残りはベンゼン環であり、
    EはC2−C6アルキレンを表し、
    X及びYは、それぞれ独立して、置換基としてスルホ基、カルボキシ基若しくはリン酸基を有するアニリノ基、又は、同ナフチルアミノ基であり、
    更に、該アニリノ基又はナフチルアミノ基は、スルホ基、カルボキシ基、リン酸基、スルファモイル基、カルバモイル基、ヒドロキシ基、アルコキシ基、アミノ基、モノ又はジアルキルアミノ基、モノ又はジアリールアミノ基、アセチルアミノ基、ウレイド基、アルキル基、ニトロ基、シアノ基、ハロゲン原子、アルキルスルホニル基、アルキルチオ基、アリールオキシ基及びヘテロ環基より成る群から選択される1種又は2種以上の基で置換されてもよく、
    bは平均値で0.00以上3.90未満であり、
    cは平均値で0.10以上4.00未満であり、
    且つbおよびcの和は、平均値で3.00より大きく4.00未満である。但し、X及びYが、それぞれ独立に、置換基としてカルボキシ基を1〜3個有するアニリノ基で、bは平均値で0以上3.4までであり、
    cは平均値で0.1以上3.5までであり、
    且つbおよびcの和は、1.0から3.5までの場合、
    含窒素複素芳香環の個数は平均値で0.0より大きく0.5未満である。]。
  2. 環A乃至Dで表される前記含窒素複素芳香環が、ピリジン環又はピラジン環である請求項1に記載のポルフィラジン色素混合物又はその塩。
  3. 下記式(3)で表されるポルフィラジン化合物の混合物と、下記式(4)で表される有機アミンとを、アンモニア存在下で反応させて得られる請求項1に記載のポルフィラジン色素混合物又はその塩、
    Figure 0005458022
    [式中、環A乃至Dは請求項1に記載のものと同じ意味を表し、またnは3.00より大きく4.00未満である。]、
    Figure 0005458022
    [式中、E、X、及びYは請求項1に記載のものと同じ意味を表す]。
  4. 環A乃至Dにおける前記含窒素複素芳香環がピリジン環であり、該ピリジン環の縮環位置が、ピリジン環の窒素原子を1位として2位及び3位、3位及び4位、4位及び5位、又は5位及び6位であるか、又は、
    環A乃至Dにおける前記含窒素複素芳香環がピラジン環であり、該ピラジン環の縮環位置が、ピラジン環の窒素原子を1位及び4位として2位及び3位であり、
    EがC2−C4アルキレンであり、
    X及びYは、それぞれ独立して、置換基としてスルホ基、カルボキシ基若しくはリン酸基を有するアニリノ基、又は、同ナフチルアミノ基であり、
    該アニリノ基又はナフチルアミノ基は、ヒドロキシ基、アルコキシ基、ウレイド基、アセチルアミノ基、ニトロ基及び塩素原子より成る群から選択される1種又は2種以上の置換基を、さらに0〜3個有しても良い、
    請求項1に記載のポルフィラジン色素混合物又はその塩。
  5. 環A乃至Dにおける前記含窒素複素芳香環の個数が、平均値で0.2〜0.9であり、残りがベンゼン環であり、
    bが平均値で0.0〜3.7であり、
    cは平均値で0.1〜3.8であり、
    且つbおよびcの和は、平均値で3.1〜3.8である請求項1に記載のポルフィラジン色素混合物又はその塩。
  6. 環A乃至Dにおける前記含窒素複素芳香環の個数が平均値で0.25〜0.85であり、残りがベンゼン環であり、
    EがC2−C4アルキレンを表し、
    X及びYが、それぞれ独立して、スルホ基又はカルボキシ基で置換されたアニリノ基であり、
    bが平均値で0.00〜3.05であり、
    cが平均値で0.10〜3.75であり、
    且つbおよびcの和は、平均値で3.15〜3.75である、請求項1に記載のポルフィラジン色素混合物又はその塩。
  7. X及びYが、それぞれ独立してスルホ基で置換されたアニリノ基である請求項1に記載のポルフィラジン色素混合物又はその塩。
  8. 環A乃至Dにおける前記含窒素複素芳香環がピリジン環であり、該ピリジン環の縮環位置が、ピリジン環の窒素原子を1位として2位及び3位であり、且つ該ピリジン環の個数が平均値で0.50〜0.85であり、残りがベンゼン環であり、
    Eがエチレン又はプロピレンであり、
    X及びYが、それぞれ独立して置換基としてスルホ基を有するアニリノ基であり、
    bが平均値で0.00〜3.40であり、
    cが平均値で0.10〜3.50であり、
    且つbおよびcの和は、平均値で3.15〜3.50である、請求項1又は7に記載のポルフィラジン色素混合物又はその塩。
  9. 請求項1、5及び8のいずれか一項に記載のポルフィラジン色素混合物又はその塩を、色素として含有し、さらに水を含有するインク組成物。
  10. さらに有機溶剤を含有する請求項9に記載のインク組成物。
  11. インクジェット記録用である請求項9に記載のインク組成物。
  12. 請求項1に記載のポルフィラジン色素混合物又はその塩、及び水を含有するインク組成物のインク滴を記録信号に応じて吐出させて被記録材に付着させることにより記録を行うインクジェット記録方法。
  13. 被記録材が情報伝達用シートである請求項12に記載のインクジェット記録方法。
  14. 情報伝達用シートが表面処理されたシートであって、支持体上に白色無機顔料粒子を含有するインク受容層を有するシートである請求項13に記載のインクジェット記録方法。
  15. 請求項1に記載のポルフィラジン色素混合物又はその塩、及び水を含有するインク組成物を含有する容器。
  16. 請求項15に記載の容器が装填されたインクジェットプリンタ。
  17. 請求項1に記載のポルフィラジン色素混合物又はその塩、及び水を含有するインク組成物で着色された着色体。
  18. X及びYが、それぞれ独立して3−スルホアニリノ基又は4−スルホアニリノ基である請求項1、6又は8のいずれか1項に記載のポルフィラジン色素混合物又はその塩。
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