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JP5338195B2 - 表面処理亜鉛系めっき鋼板及びその製造方法 - Google Patents

表面処理亜鉛系めっき鋼板及びその製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、表面処理亜鉛系めっき鋼板に関するものである。
本発明に用いられる亜鉛系めっき鋼板とは、例えば、亜鉛めっき鋼板、亜鉛−ニッケルめっき鋼板、亜鉛−鉄めっき鋼板、亜鉛−クロムめっき鋼板、亜鉛−アルミニウムめっき鋼板、亜鉛−チタンめっき鋼板、亜鉛−マグネシウムめっき鋼板、亜鉛−マンガンめっき鋼板等の電気めっき、溶融めっき、蒸着めっき鋼板であり、亜鉛を含むめっきが施された鋼板であればよく、特に制限されない。
金属材料表面の防錆等を目的とした化成処理の1つとして、クロメート処理が古くから広く利用されている。クロメート処理では、6価クロムを主成分とする処理液に金属材料を浸漬すると、6価クロムの一部が還元されて6価クロムと3価クロムを主成分とするゲル状複合水和酸化物皮膜(クロメート皮膜)が形成される。前記クロメート皮膜は、優れた防食性能(耐食性能)と自己修復性能を併せ持ち、塗料密着性にも優れる。
クロメート皮膜は上記優れた性能を有するが、近年の環境問題に対する意識の高まりの中、クロムを使用しない化成処理(ノンクロメート処理)への要望が急激に大きくなっている。
これまで検討されてきたノンクロメート処理技術は、無機系皮膜、有機系皮膜、有機無機複合皮膜(混合系皮膜)に大別できる。無機系皮膜は、セリア、アルミナ、チタニア等の金属酸化物、モリブデン酸塩等の金属酸塩などを利用した皮膜と、これまで広く利用されているリン酸塩系皮膜があり、皮膜のバリヤ効果を主眼においた処理技術である。有機系皮膜は、樹脂皮膜によるバリヤ効果と密着性、さらにクロメート皮膜の自己修復作用を補うためのキレート反応などを利用した腐食進行の抑制を狙うものが多い。例えば、キレート処理膜、樹脂皮膜、シランカップリング処理膜、導電性高分子皮膜等がある。有機無機複合皮膜は、官能基を有する有機系樹脂皮膜と、リン酸塩、シリカ、金属塩化合物等の無機物を混合することにより、バリヤ効果及び密着性を向上させた皮膜である。
一方、亜鉛系めっき鋼板においても、これまでクロメート処理が行われてきたが、上述の無機系皮膜、有機系皮膜、及び有機無機複合皮膜のノンクロメート処理が検討されている。
例えば、特許文献1には、亜鉛めっき鋼板又は亜鉛合金めっき鋼板を基材とし、Ti、Zr、Hf、V、Nb、Ta,Mo、W等のバルブメタル(弁金属)の酸化物又は水酸化物、及びフッ化物が共存する化成処理皮膜(無機系皮膜)が開示されている。前記のようにフッ化物を共存させると、フッ化物起因の自己修復作用が顕著になり、腐食抑制効果が向上するとされている。
また、特許文献2には、亜鉛系めっき層の表面に、Mg、Mn、及びAlの金属化合物、アクリル樹脂、有機酸等を含む皮膜(有機無機複合皮膜)を有する表面処理亜鉛系めっき鋼板が開示されている。前記有機無機複合皮膜によって、アルカリ脱脂後の耐食性に優れた性能が発現するとされている。
特許文献3には、亜鉛系めっき層の表面に、Mg、Mn、及びAlの金属化合物からなる第1皮膜層と、該第1皮膜層上にエポキシ樹脂及びグリコールウリル樹脂からなる有機樹脂層を有する表面処理亜鉛めっき鋼板が開示され、耐食性とともに、耐溶剤性に優れることが示されている。
前記のような耐食性に加え、上塗り塗料や接着フィルム等の有機樹脂層との密着性を付与することも検討されている。例えば、特許文献4では、Feと、AlやZrとを含む無機化合物層を設け、該化合物層と樹脂層との密着性を担保するため、無機化合物層と樹脂層との界面にシランカップリング剤層を形成させる手法が開示されている。
特開2002-194558号公報 特開2002-294467号公報 特開2003-253457号公報 特開2005-344147号公報
上述のように、亜鉛めっき鋼板において、種々のノンクロメート皮膜が検討され、防食性以外にも有機樹脂密着性(二次密着性)等の機能付与も試みられている。その中でも、無機系皮膜は、有機系皮膜や有機無機複合皮膜と比べて、バリヤ性が極めて高く、耐久性や耐熱性にも優れる。本発明者らは、6価クロムを使用しない金属イオンとフッ素イオンの錯イオンから形成されるような金属酸化物や金属水酸化物の無機皮膜は、亜鉛めっき鋼板において優れた防食性(耐食性)を発揮することを見出した。しかしながら、亜鉛めっき鋼板を加工した際には、前記耐食性が十分でないという問題が明らかになった。前記加工部耐食性を改善するために、さらに有機樹脂層を被覆することを試みたが、前記無機皮膜と有機樹脂層との密着性が不十分であった。特に、T曲げやエリクセンのような激しい加工を施した場合には、有機樹脂層の剥離が著しく、加工部耐食性が改善されないという問題が生じた。特許文献4のように、シランカップリング剤を使用すると有機樹脂層の密着性はある程度改善されるが、強加工部の耐食性には効果的でないという問題がある。更に、シランカップリング剤処理の工程が増えることも製造効率の面で好ましくない。
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、クロムを使用しない無機系皮膜を被覆し、さらにその上に有機樹脂層を施した亜鉛めっき鋼板であって、特に加工部耐食性に優れた表面処理亜鉛系めっき鋼板を提供することを目的とする。
本発明者らは、前記課題を解決する手段を鋭意検討した結果、亜鉛系めっき鋼板上に、Si, Ti, Zr, Hfからなる群より選ばれる少なくとも一種の元素の水酸化物や酸化物の何れか又は両方からなる皮膜中に、亜鉛原子を固溶した状態で含有させ、その上部に架橋性有機樹脂マトリックスと無機防錆剤からなる有機樹脂層を施すことで、加工部耐食性に極めて優れた亜鉛系めっき鋼板とすることができることを見出した。
本発明の趣旨とするところは以下の通りである。
(1)亜鉛系めっき鋼板上に、Si, Ti, Zr, Hf、Vからなる群より選ばれる少なくとも一種の元素の酸化物、あるいは酸化物と水酸化物の混合物からなる皮膜Aと、更に前記皮膜Aの上に、カルボキシル基及び/又は水酸基を有する水性樹脂と架橋剤との反応により形成される架橋性有機樹脂マトリックス50〜90質量%と、残部無機防錆剤からなる有機樹脂層Bを有し、前記皮膜Aは、更に前記皮膜Aを構成する全元素に対して、皮膜A中に固溶している亜鉛原子を13〜50原子数%含有することを特徴とする表面処理亜鉛系めっき鋼板。
(2)亜鉛系めっき鋼板上に、酸化亜鉛及び/又は水酸化亜鉛からなる皮膜Cと、更に前記皮膜Cの上にSi, Ti, Zr, Hf、Vからなる群より選ばれる少なくとも一種の元素の酸化物、あるいは酸化物と水酸化物の混合物からなる皮膜Aと、更に皮膜A上に、カルボキシル基及び/又は水酸基を有する水性樹脂と架橋剤との反応により形成される架橋性有機樹脂マトリックス50〜90質量%と、残部無機防錆剤からなる有機樹脂層Bを有し、前記皮膜Aは、更に前記皮膜Aを構成する全元素に対して、皮膜A中に固溶している亜鉛原子を13〜50原子数%含有することを特徴とする表面処理亜鉛系めっき鋼板。
(3)亜鉛系めっき鋼板上に、Si, Ti, Zr, Hf、Vからなる群より選ばれる少なくとも一種の元素の酸化物、又は酸化物と水酸化物の混合物からなる皮膜Aを形成し、
皮膜Aを形成後に陽極酸化処理及び/又は真空中で200〜400℃で加熱処理を施して、前記皮膜A中に亜鉛原子を前記皮膜Aを構成する全元素に対して13〜50原子数%固溶させ、
前記皮膜Aの上に、カルボキシル基及び/又は水酸基を有する水性樹脂と架橋剤との反応により形成される架橋性有機樹脂マトリックス50〜90質量%と、残部無機防錆剤からなる有機樹脂層Bを形成することを特徴とする表面処理亜鉛系めっき鋼板の製造方法。
(4)亜鉛系めっき鋼板上に、酸化亜鉛及び/又は水酸化亜鉛からなる皮膜Cを形成し、
前記皮膜Cの上にSi, Ti, Zr, Hf、Vからなる群より選ばれる少なくとも一種の元素の酸化物、又は酸化物と水酸化物の混合物からなる皮膜Aを形成し、
皮膜Aを形成後に陽極酸化処理及び/又は真空中で200〜400℃で加熱処理を施して、前記皮膜A中に亜鉛原子を前記皮膜Aを構成する全元素に対して13〜50原子数%固溶させ、
皮膜A上に、カルボキシル基及び/又は水酸基を有する水性樹脂と架橋剤との反応により形成される架橋性有機樹脂マトリックス50〜90質量%と、残部無機防錆剤からなる有機樹脂層Bを形成することを特徴とする表面処理亜鉛系めっき鋼板の製造方法。
本発明によれば、クロムを使用しない環境負荷の低い被膜であって、特に加工部耐食性に優れた表面処理亜鉛系めっき鋼板を提供できる。更に、本発明の表面処理亜鉛系めっき鋼板は、加工部耐食性に優れるため、自動車、家電、建材に至るまで、広い用途に使用可能である。
以下に、本発明を詳しく説明する。
本発明の表面処理亜鉛系めっき鋼板は、亜鉛系めっき鋼板上に、Si, Ti, Zr, Hf、Vからなる群より選ばれる少なくとも一種の元素の酸化物、又は酸化物と水酸化物の混合物からなる皮膜Aと、更に前記皮膜Aの上に、カルボキシル基及び/又は水酸基を有する水性樹脂と架橋剤との反応により形成される架橋性有機樹脂マトリックス50〜90質量%と、残部無機防錆剤からなる有機樹脂層Bを施したものであり、皮膜Aは、更に特定割合の皮膜A中に固溶する亜鉛原子を含有するものである。
上記Si, Ti, Zr, Hf、Vの少なくとも一種の元素の酸化物や水酸化物の皮膜Aと有機樹脂層Bを組み合わせて被覆された亜鉛系めっき鋼板では、耐食性が向上する。しかし、上述のように、本発明者らが調べたところ、T曲げのような厳しい加工を施した後、その加工部では、亜鉛元素を含まない酸化物や水酸化物の前記皮膜Aと有機樹脂層Bとの界面で剥がれが生じ、加工後の耐食性が劣化するという問題があることが分かった。そこで、本発明者らは、前記酸化物や水酸化物の皮膜A中に、前記皮膜Aを構成する全元素に対して皮膜A中に固溶する亜鉛原子を13〜50原子数%含有させることにより、前記皮膜Aと樹脂層Bとの密着性を向上し、前記加工後でも、界面における剥離部が生じない被膜にできることを見い出した。これによって、加工部耐食性にも極めて優れた亜鉛系めっき鋼板を得ることが出来る。
皮膜A中に固溶する亜鉛原子が、皮膜Aを構成する全元素に対して13原子数%未満では、樹脂層Bと相互作用する亜鉛原子数が少ないため、有機樹脂層Bとの加工部密着性が確保できず、十分な加工部耐食性が得られない。一方、50原子数%を超えると、有機樹脂層Bとの密着性は確保できるが、皮膜A中の亜鉛原子が酸化亜鉛として析出し、体積膨張することで皮膜構造へ及ぼす影響が大きくなって皮膜にクラックが生じるため、その結果として十分な耐食性が得られない。ここで、原子数%とは、皮膜Aを構成する原子の総数に対する亜鉛原子の原子数を百分率で表したものである。したがって、皮膜A中の亜鉛原子のモル%に相当するものである。
本発明の皮膜Aを構成する、Si,Ti,Zr,Hf、Vの少なくとも一種の元素の酸化物や水酸化物は、亜鉛系めっき鋼板上に形成すると、鋼板の耐食性が向上する。これは、前記酸化物や水酸化物が、酸やアルカリに侵されにくく、かつ、金属と酸素を介したネットワーク構造を作るためバリア皮膜として働き、水や酸素などの腐食因子から鋼板表面を保護する能力が高いためである。
前記酸化物や水酸化物の皮膜A中に亜鉛原子が固溶した状態で含有されると、前述のように有機樹脂層Bとの密着性、特に強加工後の前記密着性が向上し、その結果、加工部耐食性が向上する詳細な理由は不明だが、上記皮膜A中に含有される亜鉛原子と、有機樹脂層中のカルボキシル基や水酸基とが引力的に相互作用し、上記皮膜Aと樹脂層Bとの密着性を向上させていると予想される。
亜鉛原子以外にも、カルボキシル基や水酸基と引力的な相互作用する元素は存在することが予想されるが(例えば、アルミニウムなど)、亜鉛原子以外では、皮膜中に含有させるためにコストアップを引き起こす。皮膜A中に亜鉛原子を含有させるためには、例えば陽極酸化処理などを用いてめっき層から亜鉛原子を皮膜側に拡散させれば良く、コストが低く抑えられる利点がある。
本発明の皮膜Aは、Si, Ti, Zr, Hf、Vからなる群より選ばれる少なくとも一種の酸化物、あるいは酸化物と水酸化物の混合物から形成される。なお、皮膜A中にはCrは含まれない。従って、上記ノンクロメート処理鋼板は、環境負荷の観点から好ましいものである。
皮膜A中において、亜鉛原子は皮膜中に固溶しているものとする。亜鉛原子が化合物として存在すると、その化合物は樹脂層と接している必要があるが、その場合、化合物と樹脂層との引力的な相互作用が期待されるものの、亜鉛系めっき鋼板に加工を施した際、化合物が起点となって樹脂層が剥離することが懸念されるので好ましくない。
尚、皮膜A中に固溶している亜鉛原子は、皮膜の断面構造を透過型電子顕微鏡で観察し、亜鉛原子が金属亜鉛や化合物として析出していない状態を固溶と定義する。また皮膜A中に固溶している亜鉛原子の定量は、皮膜Aの断面構造を透過型電子顕微鏡で観察し、観察部位をエネルギー分散型X線分光法で分析し、亜鉛濃度の定量を行えばよい。
また、被膜Aの厚みは、0.005〜0.5μmが好ましい。0.005μm未満であると鋼板に十分な耐食性が与えられず、0.5μmを超えるとの場合は、皮膜形成時にクラック等の欠陥が導入されてしまい、耐食性が劣化することが予想される。より好ましくは0.01〜0.2μmである。
皮膜Aを製造するためには、Si, Ti, Zr, Hf、Vのリン酸塩、炭酸塩、硝酸塩、水酸化物、フッ化物、及び錯フッ化物を1種、または2種以上含む処理液(水溶液とする)から形成されることが好ましい。また、上記処理液中に、HF、HBF4、NaHF2、KHF2、NH4HF2、NaF、KF、NH4F、などのフッ素含有化合物が1種、または2種以上含まれていてもよい。
上記処理液を用いて、亜鉛系めっき鋼板上に被膜Aを形成させる手法について説明する。処理液中では、下記(I)または(II)式に示す化学平衡反応が成り立っている。
M(An)4/m + 2H2O ⇔ MO2 + 4H+ + (An)4/m ・・・(I)
MF6 2- + 2H2O ⇔ MO2 + 4H+ + 6F- ・・・(II)
(M:Si, Ti,Zr, Hf、Vからなる群より選ばれる少なくとも一種の金属元素
An:リン酸イオン、炭酸イオン、硝酸イオン、水酸基
m:Anの価数)
ここで、式(I)または(II)の平衡反応を右辺側に進めるための駆動剤を添加することによって、MO2が析出し、めっき表面上に被膜を形成する。被膜形成を促進させる駆動剤としては、例えば、亜鉛系めっき鋼板から溶出した亜鉛イオンを用いることが出来る。これにより、Si、Ti、Zr、Hf、Vからなる群より選ばれる少なくとも一種の元素の酸化物及び水酸化物の混合物からなる皮膜Aが得られる。
上記処理液のpHは2〜7が好ましく、より好ましくは、3〜4である。その理由は、処理液pHが2未満では、めっき鋼板(基材)の腐食が激しく、健全な被膜が得られ難いためであり、処理液のpHが7より大きい場合は、液が不安定となりやすく、処理液中で凝集したものが析出し、基材表面に均一な膜が出来難くなり易いという問題があるためである。処理液pHの調整は周知の方法でよく、本発明の析出反応のその他の条件は、特に限定されない。また、処理液の温度の増加に伴い、被膜形成速度が増加するため、被膜Aを所望の厚みに被覆するためには、反応温度や反応時間は適時設定すればよい。
上記の酸化物及び水酸化物の混合物からなる皮膜Aを真空中で熱処理すると、結晶性の高い酸化物からなる皮膜になる傾向を示す。熱処理温度として、300〜450℃の範囲で行うのが好ましい。
本発明においては、被膜A中の亜鉛は、亜鉛系めっき鋼板上に皮膜Aを形成させる際に、亜鉛めっきからの溶出によってもある程度は含まれるが、本発明ではさらに、亜鉛系めっき鋼板上に被膜Aを形成した後、基材を陽極酸化処理し、亜鉛原子を被膜A中に拡散させることによって、あるいは、陽極酸化処理後に、真空中で200〜450℃で加熱処理を施すことで、皮膜Aが皮膜Aを構成する全元素に対して皮膜A中に固溶している亜鉛原子を13〜50原子数%含有させる。界面における亜鉛原子濃度を高めるためには、後述する陽極酸化処理などを用いて、亜鉛原子を被膜Aの表面側に予め拡散させておけばよい。
本発明のもう一つの表面処理亜鉛系めっき系鋼板は、亜鉛系めっき鋼板上に、酸化亜鉛及び/又は水酸化亜鉛からなる皮膜C と、前記皮膜Cの上にSi, Ti, Zr, Hf、Vからなる群より選ばれる少なくとも一種の元素の酸化物、又は酸化物と水酸化物の混合物からなる皮膜Aを施し、更に前記皮膜Aの上に、カルボキシル基及び/又は水酸基を有する水性樹脂と架橋剤との反応により形成される架橋性有機樹脂マトリックス50〜90質量%と、残部無機防錆剤からなる有機樹脂層Bを施したものである。
ここで被膜Cは、酸化亜鉛及び/又は水酸化亜鉛からなる皮膜であり、被膜Cは酸化亜鉛のみからなる皮膜でも良く、更に、亜鉛の水酸化物を含有しても良い。
更に皮膜Cは不純物として、水素を0.1原子数%以上5原子数%以下、またフッ素原子を0.1原子数%以上5原子数%以下含有していてもよい。
皮膜Cは、皮膜A中に含まれる亜鉛原子濃度を増大させるため、亜鉛系めっき鋼板に陽極酸化処理を施した際に形成されるものである。この場合、皮膜Cが形成されると、皮膜Aと樹脂層Bとの密着性が更に改善するので、好ましい。
酸化亜鉛及び/又は水酸化亜鉛からなる被膜Cは、皮膜A中に亜鉛原子をより多く含ませる際に行う陽極酸化処理中に形成されるものであり、これによって、鋼板の耐食性を向上させることが出来る。亜鉛系めっき鋼板上に酸化亜鉛を形成させる方法は、基材上に、皮膜Aを形成した後、基材を陽極酸化させればよい。陽極酸化の条件は、例えば、特開平7−289913号公報で知られているように従来から用いられている条件でよい。
上記の酸化物及び水酸化物の混合物からなる皮膜Cも真空中で熱処理すると、結晶性の高い酸化物からなる皮膜になる傾向を示す。熱処理温度として、300〜450℃の範囲で行うのが好ましい。
前記有機樹脂層Bは、カルボキシル基及び/又は水酸基を有する水性樹脂と架橋剤との反応により形成される架橋性有機樹脂50〜90質量%と、残部無機防錆剤からなるものである。前記架橋性有機樹脂が前記有機樹脂層Bのマトリックスとなっている。上記架橋性有機樹脂は、水性樹脂と架橋剤との反応により形成されるものである。架橋性有機樹脂を含ませる理由は、鋼板に耐食性や耐溶剤性を付与するためである。耐溶剤性を確保するためには、一般には使用される溶剤の溶解性パラメータ(SP)との差異が大きい樹脂を選べばよい。しかし、SPの低い灯油のようなものからSPの高いエタノールのようなものまで広範囲に対応するには、SPよりも架橋により不溶化させる方が効果的である。溶剤に対する樹脂被膜単独の溶解性を抑えるには、樹脂の架橋度が高いほど効果があるが、基材及び上塗り塗料の密着性については架橋度が高くなると共に低下する傾向がある。架橋度が高くなると密着性が低下する理由は、架橋反応により生じる歪や極性官能基が架橋反応に使われ、消失するため等であると推察される。
上記水性樹脂は、水溶性樹脂のほか、本来水不溶性でありながらエマルジョンやサスペンジョンのように水中に微分散された状態になりうる樹脂(水分散性樹脂)を含めて言う。
上記水性樹脂としては特に限定されないが、水性ポリエステル樹脂、水性ポリウレタン樹脂、水性エポキシ樹脂、水性アクリル樹脂、水性ポリオレフィン樹脂、及び水性フェノール樹脂からなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましい。
上記水性ポリエステル樹脂としては特に限定されず、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、トリエチレングリコール、ビスフェノールヒドロキシプロピルエーテル、グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン等の多価アルコール類と無水フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、無水コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、無水マレイン酸、イタコン酸、フマル酸、無水ハイミック酸等の多塩基酸とを脱水縮合させ、アンモニアや有機アミン等で中和し、水分散化させる等して得ることが出来る。
上記水性ポリウレタン樹脂としては特に限定されず、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、トリエチレングリコール、ビスフェノールヒドロキシプロピルエーテル、グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン等の多価アルコール類とヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート等のジイソシアネート化合物とを反応させ、更にジアミン等で鎖延長し、水分散化させる等して得ることが出来る。
上記水性エポキシ樹脂としては特に限定されず、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、レゾルシン型エポキシ樹脂、フェノール・ノボラック型エポキシ樹脂等のエポキシ樹脂を界面活性剤で強制乳化し、水分散化させて得る方法や上記エポキシ樹脂と高酸価アクリル樹脂とを反応させた後、アンモニアや有機アミン等で中和し、水分散化させる等して得ることが出来る。
上記水性アクリル樹脂としては特に限定されず、例えば、スチレン、アルキル(メタ)アクリレート類、(メタ)アクリル酸、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート類、アルコキシシラン(メタ)アクリレート類等の不飽和単量体を、水溶液中で重合開始剤を用いてラジカル重合することによって得られるものを挙げることが出来る。上記重合開始剤としては特に限定されず、例えば、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム等の過硫酸塩、アゾビスシアノ吉草塩、アゾビスイソブチロニトリル等のアゾ化合物等を使用することが出来る。
上記水性ポリオレフィン樹脂としては特に限定されず、例えば、エチレンとメタクリル酸、アクリル酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、クロトン酸等の不飽和カルボン酸とを高温高圧下でラジカル重合した後、アンモニアやアミン化合物、KOH、NaOH、LiOH等の金属化合物あるいは上記金属化合物を含有するアンモニアやアミン化合物等で中和し、水分散化させて得られるもの等を挙げることが出来る。
上記水性フェノール樹脂としては特に限定されず、例えば、フェノール、レゾルシン、クレゾール、ビスフェノールA、パラキシリレンジメチルエーテル等の芳香族類とホルムアルデヒドとを反応触媒の存在下で付加反応させたメチノール化フェノール樹脂等のフェノール樹脂をジエタノールアミン、N−メチルエタノールアミン等のアミン化合物類と反応させ、有機酸又は無機酸で中和することによって得られるもの等を挙げることが出来る。
上記架橋剤は、反応性官能基を複数個有するものであれば特に限定されないが、アミノ樹脂、ポリイソシアネート化合物、そのブロック化合物(上記ポリイソシアネート化合物のブロック化合物)、エポキシ化合物、カルボジイミド化合物、シランカップリング剤、架橋性ジルコニウム化合物及び架橋性チタン化合物からなる群から選択される少なくとも1種であることが好ましい。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
上記アミノ樹脂としては特に限定されず、例えば、メラニン樹脂、ベンゾグアナミン樹脂、尿素樹脂、グリコールウリル樹脂等を挙げることが出来る。
上記ポリイソシアネート化合物としては特に限定されず、例えば、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート等を挙げることが出来る。
上記エポキシ化合物は、オキシラン環を複数個有する化合物であれば特に限定されず、例えば、アジピン酸ジグリシジルエステル、フタル酸ジグリシジルエステル、テレフタル酸ジグリシジルエステル、ソルビタンポリグルシジルエーテル、ペンタエリスリトールポリグリシジルエーテル、グリセリンポリグリシジルエーテル、トリメチルプロパンポリグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールポリグリシジルエーテル、エチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、プロピレンレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレンレングリコールジグリシジルエーテル、2、2−ビス−(4‘−グリシジルオキシフェニル)プロパン、トリス(2,3−エポキシプロピル)イソシアヌレート、ビスフェノールAジグリシジルエーテル、水素添加ビスフェノールAジグリシジルエーテル等を挙げることが出来る。
上記カルボジイミド化合物としては、例えば、芳香族ジイソシアネート、脂肪族ジイソシアネート、脂環族ジイソシアネート等のジイソシアネート化合物の脱二酸化炭素を伴う縮合反応によりイソシアネート末端ポリカルボジイミドを合成した後、更にイソシアネート基との反応性を有する官能基を持つ親水性セグメントを付加した化合物等を挙げることが出来る。
上記シランカップリング剤としては、特に限定されず、例えば、信越化学工業、日本ユニカー、チッソ、東芝シリコーン等から販売されているビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルエトキシシラン、N−[2−(ビニルベンジルアミノ)エチル]−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、N−β(アミノエチル)γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−β−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−β−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−フェニル−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカブトプロピルトリメトキシシラン等を挙げることが出来る。上記シランカップリング剤は、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
上記架橋性ジルコニウム化合物としては、カルボキシル基や水酸基と反応しうる官能基を複数個有するジルコニウム含有化合物であれば特に限定されないが、水又は、有機溶剤に可溶である化合物が好ましく、水溶性のジルコニウム化合物であることがより好ましい。このような化合物としては炭酸ジルコニウムアンモニウムを挙げることが出来る。
上記架橋性チタン化合物としては、カルボキシル基や水酸基と反応しうる官能基を複数個有するチタン含有化合物であれば特に限定されないが、ジプロポキシ・ビス(トリエタノールアミナト)チタン、ジプロポキシ・ビス(ジエタノールアミナト)チタン、プロポキシ・トリス(ジエタノールアミナト)チタン、ジブトキシ・ビス(トリエタノールアミナト)チタン、ジブトキシ・ビス(ジエタノールアミナト)チタン、ジプロポキシ・ビス(アセチルアセトナト)チタン、ジブトキシ・ビス(アセチルアセトナト)チタン、ジヒドロキシ・ビス(ラクタト)チタンモノアンモニウム塩、ジヒドロキシ・ビス(ラクタト)チタンジアンモニウム塩、プロパンジオキシチタンビス(エチルアセトアセテート)、オキソチタンビス(モノアンモニウムオキサレート)、イソプロピルトリ(N−アミドエチル・アミノエチル)チタネート等を挙げることが出来る。上記架橋剤は、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
水性樹脂と架橋剤との組み合わせは、例えば特開2005-281863号公報に記載の従来公知の条件で良い。
前記有機樹脂層B中において、架橋性有機樹脂の含有量は、被膜100質量%中に、50〜90質量%である。50質量%未満であると、被膜Aや上塗り塗料との密着性が低下するおそれがある。90質量%を超えると、耐食性が低下するおそれがある。
上記樹脂層Bは、無機防錆剤を含んでなり、これにより、更に優れた耐食性を得ることが出来る。
皮膜A及び有機樹脂層Bが、腐食因子に対して優れたバリア効果を発揮する一方で、自己修復機能を持たないため、皮膜に損傷が発生すると亜鉛の溶出反応が進行する。無機防錆剤は、樹脂層B中に分散しており、皮膜損傷箇所で沈殿皮膜を形成したり、あるいは、樹脂層から溶出することで、亜鉛めっき層の溶出を抑制する働きがある。
上記樹脂層B被膜中において、残部成分である上記無機防錆剤の含有量は、被膜100質量%中に、下限10質量%、上限50質量%となる。無機防錆剤の含有量が10質量%未満であると、耐食性が低下するおそれがあり、50質量%を超えると、上記被膜A、及び上塗り塗料との密着性が低下するおそれがある。より好ましくは15〜40質量%である。
上記樹脂層Bは、無機防錆剤を含んでなり、これにより、優れた耐食性を得ることが出来る。無機防錆剤としては、特に限定されず、従来公知の無機系の防錆剤を用いることが出来るが、シリカ粒子、チタニア粒子、アルミナ粒子、ジルコニア粒子、リン酸化合物、ニオブ化合物からなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましい。上記シリカ粒子、チタニア粒子、アルミナ粒子、ジルコニア粒子としては、平均粒子径が1〜300nm程度のものが好適である。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
上記リン酸化合物としては、例えば、オルトリン酸、メタリン酸、ピロリン酸、三リン酸、四リン酸等のリン酸類及びそれらの塩;アミノトリ(メチレンホスホン酸)、1−ヒドロキシエチリデン−1、1−ジホスホン酸、エチレンジアミンテトラ(メチレンホスホン酸)、ジエチレントリアミンペンタ(メチレンホスホン酸)等のホスホン酸類及びそれらの塩;フィチン酸等の有機リン酸類及びそれらの塩等を挙げることが出来る。塩類のカチオン種としては、特に限定されず、例えば、Cu、Co、Fe、Mn、Sn、V、Mg、Ba、Al、Ca、Sr、Nb、Y、Ni及びZn等が挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
上記ニオブ化合物としては特に限定されず、従来公知のニオブ含有化合物を用いることが出来、例えば、酸化ニオブ、ニオブ酸及びその塩、フルオロニオブ酸塩、フルオロオキソニオブ酸塩等を挙げることが出来る。なかでも、耐食性の向上の点から、酸化ニオブであることが好ましい。
上記ニオブ化合物は、酸化ニオブコロイド粒子であることがより好ましい。これにより、耐食性を向上させることが出来る。水性媒体中に分散している酸化ニオブコロイド粒子を含有する水性被覆剤を金属板に塗布することによって、被膜を形成することが出来る。上記酸化ニオブコロイド粒子は、平均粒子径が小さいほうが、より安定して緻密な酸化ニオブを含有する被膜が形成されるため、被処理物に対して安定して防錆性を付与することが出来、より好ましい。
水性被覆剤中の酸化ニオブコロイド粒子は、ニオブの酸化物が水中に微粒子状態で分散しているものをいい、例えば、厳密には酸化ニオブが形成されず、水酸化ニオブと酸化ニオブの中間状態でアモルファス状態になっているものであってもよい。
上記酸化ニオブコロイド粒子は、平均粒子径が1000nm以下であることが好ましい。上記平均粒子径は、2〜600nmであることがより好ましく、2〜100nmであることが更に好ましい。上記平均粒子径は小さいほうが、より安定して緻密な酸化ニオブを含んでなる被膜が形成されるため、被処理物に対して、安定して防錆性を付与することが出来、より好ましい。
また、上記樹脂層B中には、必要に応じて、更なる耐食性の向上、また、他の性能、例えば、摺動性、耐傷つき性等の性能を付与するため、有機防錆剤、ワックスその他の表面処理剤に通常使用される各種添加剤が含まれていてもよい。
樹脂層Bの皮膜量は、乾燥被膜として、0.1g/m以上であることが好ましい。0.1g/m未満であると耐食性や耐アルカリ性が低下することがある。一方、皮膜量が多すぎると、コストアップを招く他、導電性が悪くなり、溶接作業性が低下するので、より好ましくは、0.1〜5g/m、更に好ましくは、0.5〜2g/mである。
また、上記樹脂層Bは、上記被膜A上に形成される層であり、水性樹脂と架橋剤との反応により形成される架橋性有機樹脂マトリックス、及び、無機防錆剤からなる被膜層である。
上記架橋性有機樹脂マトリックスは、水性樹脂と架橋剤との反応により形成されるものであるが、その架橋反応は、亜鉛めっき系鋼板の上記被膜A上に被膜を形成する際に行われてもよいし、また、被膜形成前に反応の一部を行い、被膜形成時に反応を完結させてもよい。
上記樹脂層の形成に使用する水性組成物の被覆方法は、水性組成物を亜鉛系めっき鋼板表面に塗布して皮膜を形成するものである。ここで言う水性組成物とは、上記架橋樹脂マトリックス、上記無機防錆剤、及び必要に応じて有機防錆剤、潤滑剤等の成分を含んでなる皮膜を形成するために使用し、これらの成分が配合されていれば良く、その添加順序は特に制限されない。水性組成物の被覆方法は特に限定されず、一般に使用されるロールコート、エアスプレー、エアレススプレー、浸漬等を適時採用することが出来る。皮膜の硬化性を高めるために、予め被塗物を加熱しておくか、被覆後に被塗物を熱乾燥させることが好ましい。熱乾燥方法としては、熱風、誘導加熱、近赤外、遠赤外等のいずれの方法でも良いし、併用しても良い。被塗物の加熱温度は、50〜250℃、好ましくは、70〜220℃である。加熱温度が50℃未満では、水分の蒸発速度が遅く十分な成膜性が得られないため、耐食性が低下する場合がある。一方、250℃を越えると、樹脂の熱分解が生じて耐食性が低下し、また黄変等外観が悪くなる場合がある。被覆後に熱乾燥させる場合の乾燥時間は1秒〜5分が好ましい。また、樹脂が電子線や紫外線で硬化するものであれば、これらの照射による硬化でもよいし、熱乾燥との併用であっても良い。
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例によってなんら制限されるものではない。なお、以下の実施例では実験番号に欠番がある。
以下の如く、各種処理液を用いて被膜Aを成膜後、樹脂層Bを塗布し、その後に加工部耐食性を評価した。
電気亜鉛めっき(EG)により製造した亜鉛系めっき鋼板を準備し、その上に、表1〜5に示す組成の処理液を用いて、被膜Aを形成した。表1〜5の「皮膜A中の亜鉛濃度」は、皮膜A中に固溶した亜鉛原子の原子数%を示す。
また亜鉛系めっき鋼板上に酸化亜鉛及び/又は水酸化亜鉛からなる皮膜Cを形成する場合については、被膜Aを形成後、表1〜5記載の条件で、陽極酸化処理、及び、加熱処理を施した。また、表1〜5中「皮膜Cの態様」の欄で、混合物は酸化亜鉛及び水酸化亜鉛の混合物を、酸化物は酸化亜鉛を示す。
次に、被膜Aを形成した鋼板に表6に示す水性樹脂を含有した水性組成物をバーコーターで乾燥付着量1.5g/mになるよう塗布し、熱風乾燥炉で到達板温150℃で乾燥させた後、水冷し、供試材を得た。表1〜5において、「皮膜A/樹脂層B」は、基材側から皮膜側にかけての断面構造を示す。
加工部耐食性試験は、エリクセンテスターにて6mm押し出し加工した後、試験板のエッジ、裏面をテープシールし、塩水噴霧試験(JIS−Z−2371)を行った。エリクセン加工を施した部分の試験時間120時間後の白錆発生状況を観察し、以下の評価をした。
◎:白錆発生無し
○:10%未満
△:20%未満
×:20%以上
被膜Aと樹脂層Bの界面における剥離部の有無、及び被膜の態様、断面構造については、透過型電子顕微鏡により調べた。また、被膜A中の亜鉛原子濃度については、透過型電子顕微鏡に付属のエネルギー分散型X線分光器により調べた。
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[実験 No. 6〜9,11〜15]
処理液は、0.1M ヘキサフルオロチタン酸アンモニウム水溶液を用い、フッ化水素酸やアンモニア水で pH を3,4,5,6,7 に調整した。成膜は、常温で処理液中に基材を 5 分間浸漬することで行い、成膜後水洗し、風乾した。一部の基材については、続いて、真空中で 200℃、400℃に 3 時間保持する熱処理をした。
[実験No. 26]
処理液は、0.1M ヘキサフルオロジルコン酸アンモニウム水溶液を用い、フッ化水素酸やアンモニア水で pH を3,4,5,6,7 に調整した。成膜は、常温で処理液中に基材を 5 分間浸漬することで行い、成膜後水洗し、風乾した。一部の基材については、続いて、真空中で 200℃、400℃に 3 時間保持する熱処理をした。
[実験No. 41]
処理液は、0.1M ヘキサフルオロケイ酸アンモニウム水溶液を用い、フッ化水素酸やアンモニア水で pH を3,4,5,6,7 に調整した。成膜は、常温で処理液中に基材を 5 分間浸漬することで行い、成膜後水洗し、風乾した。一部の基材については、続いて、真空中で 200℃、400℃に 3 時間保持する熱処理をした。
[実験 No 71〜73]
処理液は、0.005M 硝酸バナジル水溶液を用い、フッ化水素酸やアンモニア水で pH を 3,4,5,6,7 に調整した。成膜は、常温で処理液中に基材を浸漬し、その後電解することで行った。電解は処理液中で電流密度を50mA/cm2 に制御してカソード電解を5秒間行った。成膜後水洗し、風乾した。一部の基材については、続いて、真空中で200℃、400℃に 3 時間保持する熱処理をした。
[実験No. 76〜93]
処理液は、0.1M ヘキサフルオロチタン酸アンモニウム水溶液を用い、アンモニア水で pH を5.5 に調整した。成膜は、常温で処理液中に基材を 5 分間浸漬することで行い、成膜後水洗し、風乾した。その後、基材を陽極、ステンレス板を陰極とし、電解溶液中で直流電圧20〜190mVを10分間印加して陽極酸化した。一部の基材については、続いて、真空中で 200℃、400℃に 3 時間保持する熱処理をした。
[実験No. 100〜111]
処理液は、0.1M ヘキサフルオロジルコン酸アンモニウム水溶液を用い、アンモニア水で pH を5.5 に調整した。成膜は、常温で処理液中に基材を 5 分間浸漬することで行い、成膜後水洗し、風乾した。その後、基材を陽極、ステンレス板を陰極とし、電解溶液中で直流電圧20〜190mVを10分間印加して陽極酸化した。一部の基材については、続いて、真空中で 200℃、400℃に 3 時間保持する熱処理をした。
[実験No. 118〜129]
処理液は、0.1M ヘキサフルオロケイ酸アンモニウム水溶液を用い、アンモニア水で pH を5.5 に調整した。成膜は、常温で処理液中に基材を 5 分間浸漬することで行い、成膜後水洗し、風乾した。その後、基材を陽極、ステンレス板を陰極とし、電解溶液中で直流電圧20〜190mVを10分間印加して陽極酸化した。一部の基材については、続いて、真空中で 200℃、400℃に 3 時間保持する熱処理をした。
[実験No. 136〜147]
処理液は、酸化ハフニウム(IV)をフッ化水素酸に溶かした水溶液を用い、アンモニア水でpH を3,4,5,6,7 に調整した。成膜は、常温で処理液中に基材を浸漬し、その後電解することで行った。電解は処理液中で電流密度を50mA/cm2 に制御してカソード電解を5秒間行った。成膜後水洗し、風乾した。その後、基材を陽極、ステンレス板を陰極とし、電解溶液中で直流電圧20〜190mVを10分間印加して陽極酸化した。一部の基材については、続いて、真空中で 200℃、400℃に 3 時間保持する熱処理をした。
[実験 No 152〜165]
処理液は、0.005M 硝酸バナジル水溶液を用い、アンモニア水で pH を 3,4,5,6,7 に調整した。成膜は、常温で処理液中に基材を浸漬し、その後電解することで行った。電解は処理液中で電流密度を50mA/cm2 に制御してカソード電解を5秒間行った。成膜後水洗し、風乾した。その後、基材を陽極、ステンレス板を陰極とし、電解溶液中で直流電圧20〜190mVを10分間印加して陽極酸化した。一部の基材については、続いて、真空中で 200℃、400℃に 3 時間保持する熱処理をした。
[実験No. 166〜168]
処理液は、0.1M ヘキサフルオロチタン酸アンモニウム水溶液を用い、アンモニア水で pH を5.5 に調整した。成膜は、常温で基材とアルミニウム板を短絡させて処理液中に1分間浸漬することで行い、成膜後水洗し、風乾した。

Claims (4)

  1. 亜鉛系めっき鋼板上に、Si, Ti, Zr, Hf、Vからなる群より選ばれる少なくとも一種の元素の酸化物、又は酸化物と水酸化物の混合物からなる皮膜Aと、
    更に前記皮膜Aの上に、カルボキシル基及び/又は水酸基を有する水性樹脂と架橋剤との反応により形成される架橋性有機樹脂マトリックス50〜90質量%と、残部無機防錆剤からなる有機樹脂層Bを有し、
    前記皮膜Aは、更に前記皮膜Aを構成する全元素に対して、前記皮膜A中に固溶している亜鉛原子を13〜50原子数%含有することを特徴とする表面処理亜鉛系めっき鋼板。
  2. 亜鉛系めっき鋼板上に、酸化亜鉛及び/又は水酸化亜鉛からなる皮膜Cと、
    更に前記皮膜Cの上にSi, Ti, Zr, Hf、Vからなる群より選ばれる少なくとも一種の元素の酸化物、又は酸化物と水酸化物の混合物からなる皮膜Aと、
    更に皮膜A上に、カルボキシル基及び/又は水酸基を有する水性樹脂と架橋剤との反応により形成される架橋性有機樹脂マトリックス50〜90質量%と、残部無機防錆剤からなる有機樹脂層Bを有し、
    前記皮膜Aは、更に前記皮膜Aを構成する全元素に対して、前記皮膜A中に固溶している亜鉛原子を13〜50原子数%含有することを特徴とする表面処理亜鉛系めっき鋼板。
  3. 亜鉛系めっき鋼板上に、Si, Ti, Zr, Hf、Vからなる群より選ばれる少なくとも一種の元素の酸化物、又は酸化物と水酸化物の混合物からなる皮膜Aを形成し、
    皮膜Aを形成後に陽極酸化処理及び/又は真空中で200〜400℃で加熱処理を施して、前記皮膜A中に亜鉛原子を前記皮膜Aを構成する全元素に対して13〜50原子数%固溶させ、
    前記皮膜Aの上に、カルボキシル基及び/又は水酸基を有する水性樹脂と架橋剤との反応により形成される架橋性有機樹脂マトリックス50〜90質量%と、残部無機防錆剤からなる有機樹脂層Bを形成することを特徴とする表面処理亜鉛系めっき鋼板の製造方法。
  4. 亜鉛系めっき鋼板上に、酸化亜鉛及び/又は水酸化亜鉛からなる皮膜Cを形成し、
    前記皮膜Cの上にSi, Ti, Zr, Hf、Vからなる群より選ばれる少なくとも一種の元素の酸化物、又は酸化物と水酸化物の混合物からなる皮膜Aを形成し、
    皮膜Aを形成後に陽極酸化処理及び/又は真空中で200〜400℃で加熱処理を施して、前記皮膜A中に亜鉛原子を前記皮膜Aを構成する全元素に対して13〜50原子数%固溶させ、
    皮膜A上に、カルボキシル基及び/又は水酸基を有する水性樹脂と架橋剤との反応により形成される架橋性有機樹脂マトリックス50〜90質量%と、残部無機防錆剤からなる有機樹脂層Bを形成することを特徴とする表面処理亜鉛系めっき鋼板の製造方法。
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