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JP5334526B2 - ポルフィラジン色素、これを含有するインク組成物及び着色体 - Google Patents

ポルフィラジン色素、これを含有するインク組成物及び着色体 Download PDF

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Description

本発明は新規ポルフィラジン色素、これを含有するインク組成物、このインク組成物を用いたインクジェット記録方法及び着色体に関する。
近年、画像記録材料としては、特にカラー画像を形成するための材料が主流であり、具体的には、インクジェット方式記録材料、感熱転写型画像記録材料、電子写真方式を用いる記録材料、転写式ハロゲン化銀感光材料、印刷インク、記録ペン等が盛んに利用されている。また、ディスプレーではLCD(液晶ディスプレー)やPDP(プラズマディスプレーパネル)において、撮影機器ではCCD(撮動素子)等の電子部品において、カラーフィルターが使用されている。これらのカラー画像記録材料やカラーフィルターでは、フルカラー画像を再現あるいは記録するために、いわゆる加法混色法や減法混色法の3原色の色素(染料や顔料)が使用されているが、好ましい色再現域を実現出来る吸収特性を有し、且つさまざまな使用条件に耐えうる色素がないのが実状であり、改善が強く望まれている。
インクジェット記録方法は、材料費が安価であること、高速記録が可能なこと、記録時の騒音が少ないこと、更にカラー記録が容易であることから、急速に普及し、更に発展しつつある。インクジェット記録方法には、連続的に液滴を飛翔させるコンティニュアス方式と画像情報信号に応じて液滴を飛翔させるオンデマンド方式が有り、その吐出方式にはピエゾ素子により圧力を加えて液滴を吐出させる方式、熱によりインク中に気泡を発生させて液滴を吐出させる方式、超音波を用いた方式、あるいは静電力により液滴を吸引吐出させる方式等がある。また、インクジェット記録に適したインクの例としては、水性インク、油性インク、あるいは固体(溶融型)インク等が挙げられる。
このようなインクジェット記録に適したインクに用いられる色素に対して要求される性能としては、溶剤に対する溶解性あるいは分散性が良好なこと、高濃度記録が可能であること、色相が良好であること、光、熱、環境中の活性ガス(NOx、オゾン等の酸化性ガスの他SOx等)に対して強いこと、水や薬品に対する耐久性に優れていること、被記録材に対して定着性が良く滲みにくいこと、インクとしての保存性に優れていること、毒性がないこと、更には、安価に入手できること等が挙げられる。特に、良好なシアンの色相を有し、且つ高い印字濃度の印刷物が得られることや、各種耐性、例えば耐光性(光に対する耐久性)、耐オゾン性(オゾンガスに対する耐久性)及び耐湿性(高湿度下における耐久性)に優れるシアン色素が強く望まれている。
インクジェット記録に適したインクに用いられる水溶性シアン色素としては、フタロシアニン系やトリフェニルメタン系が代表的である。最も広範囲に報告され、利用されている代表的なフタロシアニン系色素としては、以下のA〜Hで分類されるフタロシアニン誘導体がある。
A:Direct Blue 86、Direct Blue 87、Direct Blue 199、Acid Blue 249又はReactive Blue 71等のC.I.(カラーインデックス)番号を有する公知のフタロシアニン系色素。
B:特許文献1〜3等に記載のフタロシアニン系色素、
[例えば、Cu−Pc−(SO3Na)m(SO2NH2)n ; m+n=1〜4の混合物]。
C:特許文献4等に記載のフタロシアニン系色素、
[例えば、Cu−Pc−(CO2H)m(CONR12)n ; m+n=0〜4の数]。
D:特許文献5等に記載のフタロシアニン系色素、
[例えば、Cu−Pc−(SO3H)m(SO2NR12)n ; m+n=0〜4の数、且つ、m≠0]
E:特許文献6等に記載のフタロシアニン系色素、
[例えば、Cu−Pc−(SO3H)l(SO2NH2)m(SO2NR12)n ; l+m+n=0〜4の数]。
F:特許文献7等に記載のフタロシアニン系色素、
[例えば、Cu−Pc−(SO2NR12)n ; n=1〜5の数]。
G:特許文献8、9、及び12等に記載のフタロシアニン系色素、
[置換基の置換位置を制御したフタロシアニン化合物、β−位に置換基が導入されたフタロシアニン系色素]。
H:特許文献10、13、14〜16等に記載のピリジン環とベンゼン環を有するベンゾピリドポルフィラジン系色素。
現在一般に広く用いられているDirect Blue 86又はDirect Blue 199に代表されるフタロシアニン系色素は、一般に知られているマゼンタ色素やイエロー色素に比べ耐光性に優れるという特徴がある。フタロシアニン系色素は酸性条件下ではグリーン味の色相であり、シアンインクとしては余り好ましくない。そのためこれらの色素をシアンインクとして用いる場合は中性からアルカリ性の条件下で使用するのが好ましい。しかしながら、インクが中性からアルカリ性でも、用いる被記録材が酸性紙である場合、印刷物の色相が大きく変化する可能性がある。
さらに、フタロシアニン系色素をシアンインクとして用いた場合、昨今環境問題として取り挙げられることの多い酸化窒素ガスやオゾン等の酸化性ガスによっても、印刷物の色相がグリーン味に変色すると共に、消色も起こるため、同時に印字濃度も低下してしまう。
一方、トリフェニルメタン系については、色相は良好であるが、耐光性、耐オゾン性及び耐湿性において非常に劣る。
今後、インクジェット記録の使用分野が拡大して、広告等の展示物にも広く使用されるようになると、そこに使用される色素及びインクは良好な色相を有し、且つ安価であることと共に、光や環境中の酸化性ガスに曝される場合が多くなるため、特に、良好な色相を有し、耐光性、耐酸化性ガス性及び耐湿性に優れることがますます強く望まれてくる。ここ言うで酸化性ガスとは、空気中に存在する酸化作用を持つガスが、記録紙上又は記録紙中で、記録画像の色素(染料)と反応し、記録画像を変退色させるという現象に対する耐性のことである。酸化性ガスの中でも特にオゾンガスは、インクジェット記録画像の変退色現象を促進させる主要な原因物質とされている。この変退色現象はインクジェット記録画像に特徴的なものであるため、耐オゾンガス性の向上はこの分野における重要な技術的課題である。しかしながら、これらの要求を高いレベルで満たすシアン色素(例えば、フタロシアニン系色素)及びシアンインクを開発することは難しいとされている。これまで、耐オゾンガス性を付与したフタロシアニン系色素は、特許文献3、8〜12、14〜17等に開示されているが、色相、印字濃度、耐光性、耐オゾンガス性、耐湿性及びブロンズ現象を起こさない等すべての品質を満足させ、更には安価に製造可能なシアン色素及びシアンインクはいまだ得られていない。よってまだ市場の要求を充分に満足させるには至っていない。
特開昭62−190273号公報 特開平7−138511号公報 特開2002−105349号公報 特開平5−171085号公報 特開平10−140063号公報 特表平11−515048号公報 特開昭59−22967号公報 特開2000−303009号公報 特開2002−249677号公報 特開2003−34758号公報 特開2002−80762号公報 WO2004087815号公報 WO2002034844号公報 特開2004−75986号公報 WO2007091631号公報 WO2007116933号公報 WO2008111635号公報
本発明は、シアンインクとして良好な色相を有し、耐オゾン性、耐湿性に優れ、且つ高い印字濃度が得られるインクジェット記録に適したポルフィラジン色素、及びこれを含有するインク組成物を提供することを課題とする。
本発明者らは、良好な色相を有し、高い耐光性及び耐オゾン性を有し、ブロンズ現象を起こさない色素を詳細に検討したところ、下記式(1)で表される特定のポルフィラジン色素が、上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。即ち、本発明は、
1)
下記式(1)で表されるポルフィラジン色素又はその塩、
Figure 0005334526
[式(1)中、
環A乃至Dは、それぞれ独立にポルフィラジン環に縮環したベンゼン環又は6員環の含窒素複素芳香環を表し、含窒素複素芳香環の個数は平均値で0.00を超えて3.00以下であり、残りはベンゼン環であり、
Eはアルキレンを表し、
Xは、少なくとも1つのスルホ基、カルボキシ基又はリン酸基を置換基として有するナフチルアミノ基であり、
該ナフチルアミノ基は、さらにスルホ基、カルボキシ基、リン酸基、スルファモイル基、カルバモイル基、ヒドロキシ基、アルコキシ基、アミノ基、モノ又はジアルキルアミノ基、モノ又はジアリールアミノ基、アセチルアミノ基、ウレイド基、アルキル基、ニトロ基、シアノ基、ハロゲン原子、アルキルスルホニル基及びアルキルチオ基より成る群から選択される1種又は2種以上の置換基で置換されてもよく、
bは平均値で0.00以上3.90未満であり、
cは平均値で0.10以上4.00未満であり、
且つb及びcの和は、平均値で1.00以上4.00未満である。]、
2)
環A乃至Dで表される6員環の含窒素複素芳香環が、ピリジン環又はピラジン環である上記1)に記載のポルフィラジン色素又はその塩、
3)
下記式(3)で表されるポルフィラジン化合物と、下記式(4)で表される有機アミンとを、アンモニア存在下で反応させて得られる上記1)又は2)に記載のポルフィラジン色素又はその塩、
Figure 0005334526
[式(3)中、環A乃至Dは請求項1に記載のものと同じ意味を表し、nは1.00以上4.00未満である。]、
Figure 0005334526
[式(4)中、E及びXは請求項1に記載のものと同じ意味を表す。]、
4)
EがC2−C4アルキレンであり、
Xが、スルホ基、カルボキシ基又はリン酸基を置換基として有するナフチルアミノ基であり、
該置換ナフチルアミノ基が、スルホ基、カルボキシ基、リン酸基、ヒドロキシ基、アルコキシ基、アセチルアミノ基、ウレイド基、ニトロ基及び塩素原子より成る群から選択される1種又は2種以上の置換基を、さらに0乃至3有しても良い置換ナフチルアミノ基である、上記1)又は2)に記載のポルフィラジン色素又はその塩、
5)
Eが直鎖C2−C4アルキレンであり、
Xがスルホ置換ナフチルアミノ基又はカルボキシ置換ナフチルアミノ基であり、
該置換ナフチルアミノ基は、スルホ基、カルボキシ基、ヒドロキシ基、アルコキシ基、ニトロ基及び塩素原子より成る群から選択される1種又は2種以上の置換基を、さらに0乃至2有しても良い置換ナフチルアミノ基である、上記4)に記載のポルフィラジン色素又はその塩、
6)
環A乃至Dにおける含窒素複素芳香環が、それぞれ独立に2位及び3位で、又は3位及び4位で縮環したピリジン環、又は2位及び3位で縮環したピラジン環であり、
Eがエチレン又はプロピレンであり、
Xがスルホ置換ナフチルアミノ基又はカルボキシ置換ナフチルアミノ基であり、
該置換ナフチルアミノ基がスルホ基、カルボキシ基、ヒドロキシ基、メトキシ基、ニトロ基及び塩素原子よりなる群から選択される1種又は2種以上の置換基を、さらに0乃至2有しても良い置換ナフチルアミノ基である、
上記1)又は2)に記載のポルフィラジン色素又はその塩、
7)
環A乃至Dにおける含窒素複素芳香環が、それぞれ独立に2位及び3位で、又は3位及び4位で縮環したピリジン環であり、
Eがエチレン又はプロピレンであり、
Xがスルホ置換ナフチルアミノ基であり、さらに0乃至2のスルホ基を置換基として有する上記1)に記載のポルフィラジン色素又はその塩、
8)
上記1)乃至7)のいずれか一項に記載のポルフィラジン色素又はその塩を、色素として含有することを特徴とするインク組成物、
9)
さらに有機溶剤を含有する上記8)に記載のインク組成物、
10)
インクジェット記録用である上記9)に記載のインク組成物、
11)
上記8)乃至10)のいずれか一項に記載のインク組成物をインクとして用い、該インクのインク滴を記録信号に応じて吐出させて、被記録材に記録を行うインクジェット記録方法、
12)
被記録材が情報伝達用シートである上記11)に記載のインクジェット記録方法、
13)
情報伝達用シートが表面処理されたシートであって、該シートが支持体上に白色無機顔料粒子を含有するインク受容層を有するシートである上記12)に記載のインクジェット記録方法、
14)
上記8)乃至10)のいずれか一項に記載のインク組成物を含有する容器、
15)
上記14)に記載の容器が装填されたインクジェットプリンタ、
16)
上記8)乃至10)のいずれか一項に記載のインク組成物で着色された着色体
に関する。
本発明の色素を用いたインク組成物は、シアンインクとして良好な色相を有する。また本発明のインク組成物により得られる記録画像は耐光性、耐オゾン性及び耐湿性等の各種堅牢性、特に耐オゾン性に優れる。また、長期間保存後の固体析出、物性変化、色変化等もなく、貯蔵安定性が良好である。更に、他のマゼンタインク及びイエローインクと共に用いることで、広い可視領域の色調を色だしすることができる。また高い印字濃度を有するためインク中の色素濃度を低下することが出来、コスト減少に伴う産業上の優位性を有している。
従って、本発明のポルフィラジン色素を用いたシアンインクはインクジェット記録用インクとして極めて有用である。
本発明を詳細に説明する。本発明のインクジェット記録に適したインク組成物は、前記式(1)のポルフィラジン色素又はその塩を含有することを特徴とする。すなわち、テトラベンゾポルフィラジン(通常、フタロシアニンと呼ばれているもの)の4つのベンゾ(ベンゼン)環0個を超えて3個以下を含窒素複素芳香環に置き換えたものを色素母核に用い、無置換スルファモイル基、及び特定の置換スルファモイル基を導入したポルフィラジン色素又はその塩がインクジェット用のインクに非常に適し、且つ、該色素又はその塩を使用したインクでの記録物が、極めてオゾンガスに対して耐性が優れ、且つブロンズ現象を起こしにくいことを見出したものである。なお、本明細書においては煩雑さを避けるため、特に断りの無い限り、以下「本発明のポルフィラジン色素又はその塩」の両者を含めて、「本発明のポルフィラジン色素」と簡略して記載する。
前記式(1)中、破線で表される環A乃至D(環A、B、C及びDの4つの環)における含窒素複素芳香環としては、例えば、ピリジン環、ピラジン環、ピリミジン環及びピリダジン環等の窒素原子1〜2個を含む含窒素複素芳香環が挙げられる。これらの中ではピリジン環又はピラジン環が好ましく、ピリジン環がより好ましい。含窒素複素芳香環の個数が増えるにしたがって、耐オゾン性は向上するが、ブロンジング性は生じやすくなる傾向にあり、含窒素複素芳香環の個数は耐オゾン性とブロンジング性を考慮しながら、適宜調節し、バランスの良い比率を選択すれば良い。含窒素複素芳香環の個数は複素環の種類にもよるので一概には言えないが、通常平均値で、0.00を超えて3.00以下、好ましくは0.20以上2.00以下、より好ましくは0.50以上1.75以下、更に好ましくは0.75以上1.50以下の範囲である。残りの環A乃至Dはベンゼン環であり、環A乃至Dにおけるベンゼン環は、同様に、通常平均値で、1.00以上4.00未満、好ましくは2.00以上3.80以下、より好ましくは2.25以上3.50以下、更に好ましくは2.50以上3.25以下である。なお、本発明のポルフィラジン色素は、環A乃至Dの含窒素複素環の個数を平均値で表していることから明らかなように、複数の色素の色素混合物である。なお、本明細書においては特に断りの無い限り、該含窒素複素芳香環の個数は、小数点以下3桁目を四捨五入して2桁目までを記載する。
前記式(1)中、Eにおけるアルキレンとしては、例えばC2−C12の直鎖、分岐鎖又は環状アルキレンが挙げられ、好ましくはC2−C6、より好ましくはC2−C4、更に好ましくはC2−C3アルキレンが挙げられる。直鎖、分岐鎖、環状の中では直鎖又は環状が好ましく、直鎖がより好ましい。
具体例としてはエチレン、プロピレン、ブチレン、ペンチレン、へキシレン、ヘプチレン、オクチレン、ノニレン、デシレン、ウンデシレン、ドデシレン等の直鎖のもの;2−メチルエチレン等の分岐鎖のもの;シクロプロピレンジイル、1,2−又は1,3−シクロペンチレンジイル、1,2−、1,3−又は1,4−等の各シクロへキシレンに代表される環状のもの;等が挙げられる。好ましいものはエチレン、プロピレン又はブチレンであり、より好ましくはエチレン又はプロピレン、更に好ましくはエチレンである。
前記式(1)中、Xは、少なくとも1つのスルホ基、カルボキシ基又はリン酸基を置換基として有するナフチルアミノ基を表す。好ましくはスルホ置換又はカルボキシ置換ナフチルアミノ基、より好ましくはスルホ置換ナフチルアミノ基である。
該置換ナフチルアミノ基は、さらにスルホ基、カルボキシ基、リン酸基、スルファモイル基、カルバモイル基、ヒドロキシ基、アルコキシ基、アミノ基、モノ又はジアルキルアミノ基、モノ又はジアリールアミノ基、アセチルアミノ基、ウレイド基、アルキル基、ニトロ基、シアノ基、ハロゲン原子、アルキルスルホニル基及びアルキルチオ基より成る20基の群から選択される1種又は2種以上、好ましくは1種乃至3種、より好ましくは1種又は2種、更に好ましくは1種の置換基で置換されてもよい。この20基の群から選択される置換基の数は、通常0乃至3、好ましくは0乃至2である。
前記20基の群から選択される置換基におけるアルコキシ基としては、直鎖、分岐鎖又は環状のC1−C6、好ましくはC1−C4、より好ましくはC1−C3アルコキシ基が挙げられる。直鎖又は分岐鎖のものが好ましく、直鎖がより好ましい。
具体例としては、メトキシ、エトキシ、n−プロポキシ、n−ブトキシ、n−ペントキシ、n−ヘキシロキシ等の直鎖のもの;イソプロポキシ、イソブトキシ、t−ブトキシ、イソペントキシ、イソヘキシロキシ等の分岐鎖のもの;シクロプロポキシ、シクロペントキシ、シクロヘキシロキシ等の環状のもの;等が挙げられる。
前記20基の群から選択される置換基におけるモノアルキルアミノ基としては、直鎖又は分岐鎖のモノC1−C4、好ましくはモノC1−C3アルキルアミノ基が挙げられる。具体例としては、メチルアミノ、エチルアミノ、n−プロピルアミノ、n−ブチルアミノ等の直鎖のもの;イソプロピルアミノ、イソブチルアミノ、t−ブチルアミノ等の分岐鎖のもの;等が挙げられる。
前記20基の群から選択される置換基におけるジアルキルアミノ基としては、前記モノアルキルアミノ基で挙げたアルキルを、独立に2つ有するジアルキルアミノ基が挙げられる。具体例としては、ジメチルアミノ、ジエチルアミノ、メチルエチルアミノ等が挙げられる。
前記20基の群から選択される置換基におけるモノアリールアミノ基としては、モノC6−C10芳香族アミノ基、好ましくはフェニルアミノ基又はナフチルアミノ基、より好ましくはフェニルアミノ基が挙げられる。
前記20基の群から選択される置換基におけるジアリールアミノ基としては、前記モノアリールアミノ基で挙げたアリールを、独立に2つ有するジアリールアミノ基が挙げられる。好ましくは同一のアリール、より好ましくはフェニルを2つ有するものが挙げられ、具体例としてはジフェニルアミノである。
前記20基の群から選択される置換基におけるアルキル基としては、直鎖、分岐鎖又は環状のC1−C6、好ましくはC1−C4、より好ましくはC1−C3アルキル基が挙げられる。直鎖又は分岐鎖のものが好ましく、直鎖がより好ましい。具体例としては、メチル、エチル、n−プロピル、n−ブチル、n−ペンチル、n−ヘキシル等の直鎖のもの;イソプロピル、イソブチル、イソペンチル、イソヘキシル等の分岐鎖のもの;シクロプロピル、シクロペンチル、シクロヘキシル等の環状のもの;等が挙げられる。
前記20基の群から選択される置換基におけるハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子及び臭素原子が挙げられ、フッ素原子又は塩素原子が好ましく、塩素原子がより好ましい。
前記20基の群から選択される置換基におけるアルキルスルホニル基としては、直鎖又は分岐鎖のC1−C6、好ましくはC1−C4、より好ましくはC1−C3アルキルスルホニル基が挙げられる。直鎖のものが好ましい。具体例としては、メタンスルホニル、エタンスルホニル、プロパンスルホニル等の直鎖のもの;イソプロピルスルホニル等の分岐鎖のもの;等が挙げられる。
前記20基の群から選択される置換基におけるアルキルチオ基としては、直鎖又は分岐鎖のC1−C6、好ましくはC1−C4、より好ましくはC1−C3アルキルチオ基が挙げられる。直鎖のものが好ましい。具体例としては、メチルチオ、エチルチオ、プロピルチオ、ブチルチオ等の直鎖のもの;イソプロピルチオ等の分岐鎖のもの;等が挙げられる。
前記20基の群から選択される置換基としては、スルホ基、カルボキシ基、リン酸基、ヒドロキシ基、アルコキシ基、アセチルアミノ基、ウレイド基、ニトロ基及び塩素原子が好ましく、スルホ基、カルボキシ基、ヒドロキシ基、アルコキシ基、ニトロ基及び塩素原子がより好ましく、スルホ基、カルボキシ基、ヒドロキシ基、メトキシ基、ニトロ基及び塩素原子が更に好ましく、スルホ基が特に好ましい。
前記Xにおけるスルホ置換ナフチルアミノ基の具体例としては、3,6−ジスルホ−8−ヒドロキシ−1−ナフチルアミノ等のスルホ基とヒドロキシ基を有するもの;4,8−ジスルホ−4−ニトロ−2−ナフチルアミノ等のスルホ基とニトロ基を有するもの;6−スルホ−2−メトキシ−1−ナフチルアミノ等のメトキシ基を有するもの;3,6−ジスルホ−8−クロロ−1−ナフチルアミノ等のスルホ基と塩素原子を有するもの;等が挙げられる。
前記式(1)におけるXとしては、スルホ置換ナフチルアミノ基であり、さらに0乃至2のスルホ基を置換基として有するものが特に好ましい。
具体例としては、6−スルホ−1−ナフチルアミノ等の、さらにスルホ基を有しない(さらにスルホ基を0有する)もの;1,5−ジスルホ−2−ナフチルアミノ、3,6−ジスルホ−1−ナフチルアミノ、3,8−ジスルホ−1−ナフチルアミノ、4,8−ジスルホ−1−ナフチルアミノ、4,8−ジスルホ−2−ナフチルアミノ、5,7−ジスルホ−2−ナフチルアミノ、6,8−ジスルホ−2−ナフチルアミノ等の、さらに1つのスルホ基を置換基として有するもの;3,6,8−トリスルホ−1−ナフチルアミノ、3,6,8−トリスルホ−2−ナフチルアミノ、4,6,8−トリスルホ−2−ナフチルアミノ等の、さらに2つのスルホ基を置換基として有するもの;等が挙げられる。
前記式(1)におけるb、c及び、b及びcの和は、いずれも平均値である。bは0.00以上3.90未満であり、cは0.10以上4.00未満であり、b及びcの和は、平均値で1.00以上4.00未満である。このとき、環A乃至Dにおける含窒素複素芳香環は、平均値で0.00を超えて3.00以下、同様にベンゼン環は1.00以上4.00未満である。
好ましくは、環A乃至Dにおける含窒素複素芳香環が0.20以上2.00以下、ベンゼン環が2.00以上3.80以下のとき、bが0.00以上3.20以下であり、cが0.60以上2.00以下、b及びcの和は、2.00以上3.80以下である。
より好ましくは、環A乃至Dにおける含窒素複素芳香環が0.50以上1.75以下、ベンゼン環が2.25以上3.50以下のとき、bが0.45以上2.70以下であり、cが0.80以上1.80以下、b及びcの和は、2.25以上3.50以下である。
更に好ましくは、環A乃至Dにおける含窒素複素芳香環が0.75以上1.50以下、ベンゼン環が2.50以上3.25以下のとき、bが0.90以上2.25以下であり、cが1.00以上1.60以下、b及びcの和は、2.50以上3.25以下である。
bが大きくなるにつれて、耐オゾン性は向上する傾向にあるが、ブロンジング性は生じやすくなる傾向にあり、耐オゾン性とブロンジング性を考慮しながら、b、cの数を適宜調節し、バランスの良い比率を選択すれば良い。
なお、b及びcでそれぞれの置換数を表される非置換スルファモイル基及び置換スルファモイル基はいずれも、環A乃至Dがベンゼン環である場合に、該ベンゼン環上に置換する基であり、環A乃至Dが6員環の含窒素複素芳香環である場合には置換しない。
なお、本明細書においては、b、c及び、b及びcの和は、いずれも小数点以下3桁目を四捨五入して、2桁目までを記載する。
上記環A乃至D、E、X、b及びcにおいて、好ましいもの同士を組合せた色素はより好ましく、より好ましいもの同士を組合せた色素は更に好ましい。更に好ましいもの同士等の組合せについても同様である。
上記式(1)で表される色素は分子内に有するスルホ、カルボキシ及びリン酸等を利用して塩を形成することも可能であり、塩を形成している場合、その塩は、無機金属、アンモニウム又は有機塩基の各カチオンと塩を形成するのが好ましい。
無機金属としてはアルカリ金属やアルカリ土類金属が挙げられる。アルカリ金属の例としては、リチウム、ナトリウム、カリウム等が挙げられる。アルカリ土類金属としては、例えばカルシウム、マグネシウム等が挙げられる。
有機塩基としては、特に有機アミンが挙げられ、例えばメチルアミン、エチルアミン等の炭素数1から3の低級アルキルアミン類、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、モノイソプロパノールアミン、ジイソプロパノールアミン、トリイソプロパノールアミン等のモノ、ジ又はトリ(C1−C4アルカノール)アミン類が挙げられる。
これらの中でも特に好ましい塩としてはナトリウム、カリウム、リチウム等のアルカリ金属塩、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、モノイソプロパノールアミン、ジイソプロパノールアミン、トリイソプロパノールアミン等のモノ、ジ又はトリ(炭素数1から4の低級アルカノール)アミンのオニウム塩、及びアンモニウム塩が挙げられる。
本発明の前記式(1)で表されるポルフィラジン色素における、環A乃至D、E及びXの具体例、及びbとcの数を表1に示す。
下記の例は、本発明の色素を具体的に説明するために代表的な色素を示すものであり、下記の例に限定されるものではない。
また、環A乃至Dの含窒素複素芳香環がピリジン環の場合には後記するように窒素原子の位置異性体等が存在し、色素合成の際には異性体の混合物として得られる。これら異性体は単離が困難であり、また分析による異性体の特定も困難である。このため通常混合物のまま使用する。本発明の色素は、このような混合物をも含むものである。本明細書においては、これらの異性体等を区別することなく、構造式で表示する場合は、便宜的に代表的な一つの構造式を記載する。なお、表中のb及びcの数については、煩雑さを避けるため、小数点以下2桁目を四捨五入して1桁目までを記載した。
Figure 0005334526
本発明のポルフィラジン色素は、通常、他の色素を配合することなく用いることができるが、場合により、本発明の効果を阻害しない範囲で公知のシアン色素と配合して使用してもよい。
公知のシアン色素と配合して使用する場合、配合する色素としてはフタロシアニン系色素が好ましい。
上記式(1)で表される色素の製造方法を説明する。
本発明の前記式(1)で表される色素は、前記式(3)で表されるポルフィラジン化合物と、前記式(4)で表される有機アミンとを、アンモニア存在下で反応させることにより得ることができる。
前記式(3)で表されるポルフィラジン化合物は、いずれも公知の方法又はそれに準じて、下記式(6)で表される化合物を合成した後、これをクロロスルホニル化することにより得ることができる。
即ち、下記式(6)で表される化合物は、例えば、WO2007/091631号及びWO2007/116933号に開示された公知の方法に準じて合成することができる。これらの公知文献は、環A乃至Dにおける含窒素複素芳香環の個数が1未満の化合物に関する製造方法を開示していない。しかし、公知のニトリル法又はワイラー法にて合成を行う際に、反応原料として使用する含窒素複素芳香環ジカルボン酸誘導体と、フタル酸誘導体の配合比率を変化させることにより、環A乃至Dにおける含窒素複素芳香環の個数が1未満である式(6)で表される化合物も合成することができる。なお、得られる式(6)で表される化合物は、環A乃至Dにおける含窒素複素芳香環の置換位置、及び含窒素複素芳香環中の窒素原子の置換位置に関する位置異性体の混合物となることも、前記公知文献に記載の通りである。
Figure 0005334526
[式(6)中、環A乃至Dは前記と同じ意味を表す。]。
式(3)で表されるポルフィラジン化合物は、WO2007/091631号及びWO2007/116933号に開示された公知の方法に従って、式(6)で表される化合物をクロロスルホニル化することにより得ることができる。式(3)におけるクロロスルホニル基は、環A乃至Dにおけるベンゼン環上に導入され、環A乃至Dが含窒素複素芳香環基に相当する場合には導入されない。ベンゼン環上には通常1つのクロロスルホニル基が導入されるので、式(3)におけるnの数は、環A乃至Dにおけるベンゼン環の数以内である。従って、式(3)におけるクロロスルホニル基の数「n」は、式(3)で表されるポルフィラジン化合物のベンゼン環の数に応じて1.00以上4.00未満である。
式(3)で表されるポルフィラジン化合物の別合成方法としては、予めスルホ基を有するスルホフタル酸とキノリン酸等の含窒素複素芳香環ジカルボン酸誘導体とを縮合閉環させる事により、スルホ基を有するポルフィラジン化合物を合成し、その後、該化合物中のスルホ基を塩化チオニル等の適当な塩素化剤でクロロスルホニル基へと変換することにより、目的とする式(3)で表されるポルフィラジン化合物を得る事もできる。この場合、合成原料であるスルホフタル酸のスルホ基の置換位置が3位のものと4位のものとを選択することにより、式(3)で表されるポルフィラジン化合物上に導入されるスルホ基の置換位置を制御することができる。即ち、3−スルホフタル酸を用いれば下記式(10)における「α」位に、又、4−スルホフタル酸を用いれば同様に「β」位に、それぞれ選択的にスルホ基を導入することができる。なお本明細書においては特に断りの無い限り、「ポルフィラジン環のα位」又は「ポルフィラジン環のβ位」との用語は、下記式(10)における相当する位置を意味する。
Figure 0005334526
一方、前記式(4)で表される有機アミンも、公知の方法で製造することができる。
例えば、Xに対応するナフチルアミン類0.95〜1.1モルと、2,4,6−トリクロロ−S−トリアジン(シアヌルクロライド)1モルとを水中で、おおよそpH3〜7、5〜40℃、2〜12時間の条件下に反応させて、1次縮合物を得る。
次いで、1次縮合物の反応液に、水酸化ナトリウム等のアルカリ金属の水酸化物を加え、おおよそpH4〜10、5〜80℃、0.5〜12時間の条件下に反応させることにより2次縮合物を得る。次いで、得られた2次縮合物1モルと、Eに対応するアルキレンジアミン類1〜50モルとを、おおよそpH9〜12、5〜90℃、0.5〜8時間の条件下に反応させることにより、前記式(4)で表される有機アミンが得られる。各縮合の際のpH調整には通常、水酸化ナトリウムや水酸化カリウム等のアルカリ金属の水酸化物、炭酸ナトリウムや炭酸カリウム等のアルカリ金属の炭酸塩等が用いられる。なお、縮合の順序はシアヌルクロライドと縮合する各種化合物の反応性に応じ適宜決めるのが良く、上記の順序に限定されない。
式(3)で表されるポルフィラジン化合物と、式(4)で表される有機アミンとの反応は、アンモニア存在下に、水溶媒中で、おおよそpH8〜10、5〜70℃、1〜20時間反応させる事により行われ、目的の式(1)で表される本発明の色素が得られる。反応に用いられる「アンモニア」は、通常アンモニア水を意味する。しかし、中和や分解により、アンモニアを発生する化学物質であれば、これを用いることができる。アンモニアを発生する化学物質としては、例えば、塩化アンモニウム、硫酸アンモニウム等のアンモニウム塩の様に中和によりアンモニアを発生するもの;尿素等の熱分解によりアンモニアを発生するもの;アンモニアガス等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。該「アンモニア」としてはアンモニア水が好ましく、市販品として入手できる濃アンモニア水(通常は、およそ28%のアンモニア水として市販されている)、又はこれを必要に応じて水により希釈して使用すれば良い。
式(4)で表される有機アミンの使用量は通常、式(3)で表されるポルフィラジン化合物1モルに対して、通常、理論値[目的とする式(1)で表される色素におけるcの値を得るのに必要な、計算上の式(4)で表される有機アミンのモル数]の1モル以上であるが、用いる有機アミンの反応性、反応条件により異なり、これらに限定されるものではない。
通常は上記理論値の1〜3モル、好ましくは1〜2モル程度である。
また前記式(1)で表される本発明の色素は、前記式(3)と、式(4)で表される化合物とから、特に無水条件を必要としない反応条件下にて合成される。このため式(3)におけるクロロスルホニル基が一部、反応系内に混在する水により加水分解を受けてスルホン酸へと変換された化合物が副生し、この結果、該副生物が、目的とする式(1)で表される色素に混入することが理論上考えられる。
しかしながら質量分析において無置換スルファモイル基とスルホ基とを識別することは困難であり、本発明においては式(4)で表される有機アミンと反応したもの以外の式(3)におけるクロロスルホニル基については全て無置換スルファモイル基へと変換されたものとして記載する。
さらに前記式(1)で表される色素は一部、2価の連結基(L)を介して銅ポルフィラジン環(Pz)が2量体(例えばPz−L−Pz)又は3量体を形成した不純物が副生し、反応生成物中に混入することもある。
上記Lで表される2価の連結基としては−SO2−、−SO2−NH−SO2−等があり、3量体の場合にはこれら2つのLが組み合わされた副生成物が形成される場合も有る。
こうして得られた本発明の銅ポルフィラジン色素は酸析又は塩析後、濾過等により分離することが出来る。塩析は例えば酸性〜アルカリ性、好ましくはpH1〜11の範囲で塩析を行うことが好ましい。塩析の際の温度は特に限定されないが、通常40〜80℃、好ましくは50〜70℃に加熱後、食塩等を加えて塩析するのが好ましい。
上記の方法で合成される、本発明の前記式(1)で表わされる色素は、遊離酸の形あるいはその塩の形で得られる。遊離酸とするには、例えば酸析すればよい。また、塩にするには、塩析するか、塩析によって所望の塩が得られないときには、例えば遊離酸にしたものに所望の有機又は無機の塩基を添加する通常の塩交換法を利用すればよい。
次に本発明のインク組成物について説明する。上記の方法にて製造された前記式(1)で表される本発明の色素は鮮明なシアン色を呈する。よって、これらを含むインク組成物も主にシアン色のインクとして用いることができる。該インクは高濃度のシアンインクとしてばかりでなく、画像の階調部分を滑らかに再現するため、又は淡色領域の粒状感を軽減する為に用いられる低い色素濃度のシアンインク(ライトシアンインクやフォトシアンインク等と呼ばれる)として用いても良い。また、イエロー色の色素と配合してグリーン色のインクとして使用しても良いし、マゼンタ色の色素と配合してバイオレット色やブルー色のインクとして使用しても良い。更に多色を配合してインクを作成し、ダークイエロー色、グレー色又はブラック色として使用することも可能である。
本発明のインク組成物は、水を媒体として調製される。
このインクがインクジェット用インクの場合、それに含有される本発明のポルフィラジン色素は、Cl-及びSO4 2-等の陰イオンの含有量は少ないものが好ましく、その含有量の目安は該色素の総質量中において、Cl-及びSO4 2-の総含有量として5質量%以下、好ましくは3質量%以下、更に好ましくは1質量%以下であり、インク中においてはインクの総質量に対して1質量%以下である。下限は検出機器の検出限界以下、即ち0%で良い。
Cl-及びSO4 2-の少ない本発明のポルフィラジン色素を製造するには、例えば逆浸透膜による通常の方法、又は本発明のポルフィラジン色素の乾燥品あるいはウェットケーキを、含水アルコール中で撹拌する等の方法で脱塩処理すればよい。
後者の場合、用いるアルコールは、C1−C4アルコール、好ましくはC1−C3アルコール、更に好ましくはメタノール、エタノール、n−プロパノール又は2−プロパノールである。脱塩を行いたい色素を含有する含水アルコールを、その沸点近くまで加熱後、冷却して脱塩する方法も採用しうる。
含水アルコール中で脱塩処理された本発明のポルフィラジン色素は、常法により、濾過分離及び乾燥することにより、乾燥状態の色素を得ることもできる。
該色素中のCl-及びSO4 2-の含有量は、例えばイオンクロマトグラフィーで測定される。
本発明のインク組成物をインクジェット記録用途に用いる場合、外インク組成物に含有される本発明のポルフィラジン色素は、上記のCl-及びSO4 2-以外として、亜鉛、鉄等の重金属、カルシウム等の各イオン、及びシリカ等の不純物含有量も少ないことが好ましい。
ただし本発明のポルフィラジンはイオン結合や配位結合等により、中心金属を有し、銅錯体を形成しているため、この中心金属は不純物に含めない。
上記の不純物含有量の目安は例えば、該ポルフィラジン色素の乾燥精製品中に、亜鉛、鉄等の重金属、カルシウム等の各イオン、及びシリカ等について、各々500ppm以下程度が好ましく、下限は分析機器の検出限界以下、即ち0ppmで良い。
重金属等のイオン含有量は、イオンクロマトグラフィー、原子吸光法又はICP(Inductively Coupled Plasma)発光分析法にて測定することができる。
本発明のインク組成物は、式(1)で表されるポルフィラジン色素を0.1〜8質量%、好ましくは0.3〜6質量%含有する。
このインク組成物はさらに必要に応じて、水溶性有機溶剤を、本発明の効果を害しない範囲内において含有してもよい。水溶性有機溶剤は、染料溶解剤、乾燥防止剤(湿潤剤)、粘度調整剤、浸透促進剤、表面張力調整剤、消泡剤等としての機能を有する場合もあり、本発明のインク組成物中に含有する方が好ましい。
その他インク調製剤として、例えば、防腐防黴剤、pH調整剤、キレート試薬、防錆剤、紫外線吸収剤、粘度調整剤、染料溶解剤、褪色防止剤、乳化安定剤、表面張力調整剤、消泡剤、分散剤、分散安定剤等を必要に応じて加えても良い。
水溶性有機溶剤は0〜60質量%、好ましくは10〜50質量%を、インク調製剤は0〜20質量%、好ましくは0〜15質量%を、それぞれインクの総質量に対して用いるのが良い。残部は水である。
上記の水溶性有機溶剤としては、例えばメタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、イソブタノール、第二ブタノール、第三ブタノール等のC1−C4アルコール;N,N−ジメチルホルムアミド又はN,N−ジメチルアセトアミド等のカルボン酸アミド;2−ピロリドン、N−メチル−2−ピロリドン、1,3−ジメチルイミダゾリジン−2−オン又は1,3−ジメチルヘキサヒドロピリミド−2−オン等の複素環式ケトン;アセトン、メチルエチルケトン、2−メチル−2−ヒドロキシペンタン−4−オン等のケトン又はケトアルコール;テトラヒドロフラン、ジオキサン等の環状エーテル;エチレングリコール、1,2−又は1,3−プロピレングリコール、1,2−又は1,4−ブチレングリコール、1,6−ヘキシレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ジプロピレングリコール、チオジグリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等のC2−C6アルキレン単位を有するモノ、オリゴ又はポリアルキレングリコール又はチオグリコール;グリセリン、ヘキサン−1,2,6−トリオール等のポリオール(トリオール);エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル(ブチルカルビトール)、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル等の多価アルコールのC1−C4モノアルキルエーテル;γーブチロラクトン又はジメチルスルホキシド等が挙げられる。
上記の水溶性有機溶剤として好ましいものは、イソプロパノール、グリセリン、モノ、ジ又はトリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、2−ピロリドン、N−メチル−2−ピロリドンであり、より好ましくはイソプロパノール、グリセリン、ジエチレングリコール、2−ピロリドン又はブチルカルビトールである。
これらは、単独もしくは混合して用いられる。
防腐防黴剤としては、例えば、有機硫黄系、有機窒素硫黄系、有機ハロゲン系、ハロアリールスルホン系、ヨードプロパギル系、N−ハロアルキルチオ系、ベンゾチアゾール系、ニトリル系、ピリジン系、8−オキシキノリン系、イソチアゾリン系、ジチオール系、ピリジンオキシド系、ニトロプロパン系、有機スズ系、フェノール系、第4アンモニウム塩系、トリアジン系、チアジアジン系、アニリド系、アダマンタン系、ジチオカーバメイト系、ブロム化インダノン系、ベンジルブロムアセテート系、無機塩系等の化合物が挙げられる。
有機ハロゲン系化合物としては、例えばペンタクロロフェノールナトリウムが挙げられ、ピリジンオキシド系化合物としては、例えば2−ピリジンチオール−1−オキサイドナトリウムが挙げられ、イソチアゾリン系化合物としては、例えば1,2−ベンズイソチアゾリン−3−オン、2−n−オクチル−4−イソチアゾリン−3−オン、5−クロロ−2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オン、5−クロロ−2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オンマグネシウムクロライド、5−クロロ−2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オンカルシウムクロライド、2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オンカルシウムクロライド等が挙げられる。
その他の防腐防黴剤としてソルビン酸ナトリウム、安息香酸ナトリウム、及び酢酸ナトリウム等や、アベシア社製、商品名プロクセルGXL(S)、プロクセルXL−2(S)等が挙げられる。
pH調整剤は、インクの保存安定性を向上させる目的で、インクのpHを6.0〜11.0の範囲に制御できるものであれば任意の物質を使用することができる。例えば、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン等のアルカノールアミン、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属の水酸化物、水酸化アンモニウム(アンモニア水)、あるいは炭酸リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム等のアルカリ金属の炭酸塩等が挙げられる。
キレート試薬としては、例えばエチレンジアミン四酢酸ナトリウム、ニトリロ三酢酸ナトリウム、ヒドロキシエチルエチレンジアミン三酢酸ナトリウム、ジエチレントリアミン五酢酸ナトリウム、ウラシル二酢酸ナトリウム等が挙げられる。防錆剤としては、例えば、酸性亜硫酸塩、チオ硫酸ナトリウム、チオグリコール酸アンモニウム、ジイソプロピルアンモニウムナイトライト、四硝酸ペンタエリスリトール、ジシクロヘキシルアンモニウムナイトライト等が挙げられる。
紫外線吸収剤としては、例えばベンゾフェノン系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物、桂皮酸系化合物、トリアジン系化合物、スチルベン系化合物、又はベンズオキサゾール系化合物に代表される紫外線を吸収して蛍光を発する化合物、いわゆる蛍光増白剤も用いることができる。
粘度調整剤としては、水溶性有機溶剤の他に、水溶性高分子化合物があげられ、例えばポリビニルアルコール、セルロース誘導体、ポリアミン、ポリイミン等が挙げられる。
染料溶解剤としては、例えば尿素、ε−カプロラクタム、エチレンカーボネート等が挙げられる。
褪色防止剤は、画像の保存性を向上させる目的で使用される。褪色防止剤としては、各種の有機系及び金属錯体系の褪色防止剤を使用することができる。有機の褪色防止剤としてはハイドロキノン類、アルコキシフェノール類、ジアルコキシフェノール類、フェノール類、アニリン類、アミン類、インダン類、クロマン類、アルコキシアニリン類、ヘテロ環類等があり、金属錯体としてはニッケル錯体、亜鉛錯体等がある。
表面張力調整剤としては、界面活性剤があげられ、例えばアニオン界面活性剤、両性界面活性剤、カチオン界面活性剤、ノニオン界面活性剤等が挙げられる。
アニオン界面活性剤としてはアルキルスルホカルボン酸塩、α−オレフィンスルホン酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル酢酸塩、N−アシルアミノ酸及びその塩、N−アシルメチルタウリン塩、アルキル硫酸塩ポリオキシアルキルエーテル硫酸塩、アルキル硫酸塩ポリオキシエチレンアルキルエーテル燐酸塩、ロジン酸石鹸、ヒマシ油硫酸エステル塩、ラウリルアルコール硫酸エステル塩、アルキルフェノール型燐酸エステル、アルキル型燐酸エステル、アルキルアリールスルホン酸塩、ジエチルスルホ琥珀酸塩、ジエチルヘキルシルスルホ琥珀酸塩、ジオクチルスルホ琥珀酸塩等が挙げられる。
カチオン界面活性剤としては2−ビニルピリジン誘導体、ポリ4−ビニルピリジン誘導体等がある。
両性界面活性剤としてはラウリルジメチルアミノ酢酸ベタイン、2−アルキル−N−カルボキシメチル−N−ヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタイン、ヤシ油脂肪酸アミドプロピルジメチルアミノ酢酸ベタイン、ポリオクチルポリアミノエチルグリシンその他イミダゾリン誘導体等がある。
ノニオン界面活性剤としては、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンドデシルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル等のエーテル系;ポリオキシエチレンオレイン酸エステル、ポリオキシエチレンジステアリン酸エステル、ソルビタンラウレート、ソルビタンモノステアレート、ソルビタンモノオレエート、ソルビタンセスキオレエート、ポリオキシエチレンモノオレエート、ポリオキシエチレンステアレート等のエステル系;2,4,7,9−テトラメチル−5−デシン−4,7−ジオール、3,6−ジメチル−4−オクチン−3,6−ジオール、3,5−ジメチル−1−ヘキシン−3−オール等のアセチレンアルコール系(例えば、日信化学社製サーフィノール104、82、465、オルフィンSTG等)等が挙げられる。
消泡剤としては、高酸化油系、グリセリン脂肪酸エステル系、フッ素系、シリコーン系化合物が必要に応じて用いられる。
これらのインク調製剤は、単独もしくは混合して用いられる。なお、本発明のインクの表面張力は通常25〜70mN/m、より好ましくは25〜60mN/mである。また本発明のインクの粘度は30mPa・s以下が好ましい。更に20mPa・s以下に調整することがより好ましい。
本発明のインク組成物を製造するにあたり、各薬剤を溶解させる順序には特に制限はない。インク組成物の調製に用いる水は、イオン交換水又は蒸留水等の、不純物が少ない水が好ましい。さらに、必要に応じメンブランフィルター等を用いて精密濾過を行って夾雑物を除いてもよく、インクジェットプリンタ用のインクとして使用する場合は精密濾過を行うことが好ましい。精密濾過を行うフィルターの孔径は通常1ミクロン〜0.1ミクロン、好ましくは、0.8ミクロン〜0.1ミクロンである。
本発明のインク組成物は、単色の画像形成のみならず、フルカラーの画像形成に用いることができる。フルカラー画像を形成するために、マゼンタインク、イエローインクとの3原色のインクセット、更にはこれにブラックインクを加えた4色のインクセットとしても使用される。更にはより高精細な画像を形成する為に、ライトマゼンタインク、ブルーインク、グリーンインク、オレンジインク、ダークイエローインク、グレーインク等と併用したインクセットとしても使用される。本発明のインク組成物と併用する各色のインクセットに用いる色素としては、公知の色素が挙げられる。
上記のイエローインク用の公知色素としては、例えばアリール及び/又はヘテロアリールを有するアゾ系色素;ベンジリデン色素やモノメチンオキソノール色素等のようなメチン系色素;ナフトキノン色素、アントラキノン色素等のようなキノン系色素等がある。これ以外のものとしてはキノフタロン系色素;ニトロ・ニトロソ系色素;アクリジン系色素;アクリジノン系色素;等を挙げることができる。
上記のマゼンタインク用の公知色素としては、例えばアリール及び/又はヘテロアリールを有するアゾ系色素;アゾメチン系色素;アリーリデン色素、スチリル色素、メロシアニン色素、シアニン色素、オキソノール色素等のようなメチン系色素;ジフェニルメタン色素、トリフェニルメタン色素、キサンテン色素等のようなカルボニウム系色素;ナフトキノン、アントラキノン、アントラピリドン等のようなキノン系色素;ジオキサジン色素等のような縮合多環系色素;等を挙げることができる。
上記のブラックインク用の公知色素としては、ジスアゾ、トリスアゾ又はテトラアゾ等のアゾ系色素;硫化染料;カーボンブラックの分散体;等を挙げることができる。
本発明のインク組成物は、印捺、複写、マーキング、筆記、製図、スタンピング等の記録方法に使用でき、特にインクジェット記録方法における使用に適する。
本発明のインクジェット記録方法は、本発明のインク組成物をインクとして使用し、該インクに記録信号に応じてエネルギーを供与し、該インクのインク滴を吐出させて、公知の被記録材、即ち普通紙、樹脂コート紙、インクジェット専用紙、光沢紙、光沢フィルム、電子写真共用紙、繊維や布(セルロース、ナイロン、羊毛等)、ガラス、金属、陶磁器、皮革等に記録を行い、画像を形成する。
画像を形成する際に、光沢性や耐水性を与えたり、耐候性を改善する目的からポリマー微粒子分散物(ポリマーラテックスともいう)を使用してもよい。
ポリマーラテックスを被記録材に付与する時期については、着色剤を付与する前であっても、後であっても、また同時であってもよい。
したがってポリマーラテックスを含有する被記録材に本発明のインク組成物で記録してもよいし、該インク組成物中にポリマーラテックスを含有してもよい。又は該インク組成物によって被記録材へ記録を行う前又は後に、ポリマーラテックスを単独の液状物として被記録材に適用しても良い。
本発明の着色体は、本発明のポルフィラジン色素又はこれを含有する水性インク組成物により着色された物質を意味する。着色される物質としては、特に制限されないが、例えば紙、フィルム等の情報伝達用シート、繊維や布(セルロース、ナイロン、羊毛等)、皮革、カラーフィルター用基材等が挙げられ、情報伝達用シートが好ましい。
情報伝達用シートとしては、表面処理されたもの、具体的には紙、合成紙、フィルム等の基材にインク受容層を設けたものが好ましい。インク受容層は、例えば上記基材にカチオン系ポリマーを含浸あるいは塗工すること;多孔質シリカ、アルミナゾルや特殊セラミックス等のインク中の色素を吸収し得る無機微粒子をポリビニルアルコールやポリビニルピロリドン等の親水性ポリマーと共に上記基材表面に塗工すること;等により設けられる。
このようなインク受容層を設けた情報伝達用シートは通常インクジェット専用紙(フィルム)、光沢紙(フィルム)等と呼ばれる。この中でも、オゾンガス等の空気中の酸化作用を持つガスに対して影響を受けやすいとされているのが、多孔質シリカ、アルミナゾルや特殊セラミックス等のインク中の色素を吸収し得る無機微粒子を基材表面に塗工しているタイプのインクジェット専用紙である。
市販品として入手できる上記専用紙の代表的な例を挙げると、キヤノン(株)製、商品名 プロフェッショナルフォトペーパー、光沢ゴールド、光沢プロフェッショナル;セイコーエプソン(株)製、商品名 写真用紙クリスピア(高光沢)、写真用紙(光沢)、フォトマット紙;日本ヒューレット・パッカード(株)製、商品名 アドバンスフォト用紙(光沢);ブラザー(株)製、商品名 プレミアムプラスグロッシィフォトペーパー;等がある。なお、普通紙も当然利用でき、具体的にはキヤノン(株)製、商品名 PBペーパーGF500;セイコーエプソン(株)製、商品名 両面上質普通紙;等があるが、これらに限られるものではない。
上記本発明の着色体を得るための着色方法は、公知のいずれの方法を用いてもよい。好ましい着色方法の一つは、インクジェットプリンタを用い、本発明のインクで上記の材料を着色する方法である。被着色材は前記の物質であっても、その他のものであってもよい。
本発明のインクジェット記録方法で、上記の被記録材に記録を行うには、例えば上記のインク組成物を含有する容器をインクジェットプリンタの所定位置にセットし、通常の方法で記録すればよい。
インクジェットプリンタとしては、例えば機械的振動を利用したピエゾ方式のプリンタ;加熱により生ずる泡を利用したバブルジェット(登録商標)方式のプリンタ等が挙げられる。
本発明のインク組成物は貯蔵中に沈澱、分離することがない。また、該インク組成物をインクジェット記録に使用した場合、噴射器(インクヘッド)を閉塞することもない。本発明のインク組成物は連続式インクジェットプリンタによる比較的長い時間かつ一定の再循環下での記録;又はオンデマンド式インクジェットプリンタによる断続的な記録;等においても、物理的性質の変化を起こさない。
本発明のインク組成物は鮮明なシアン色であり、これをインクとして使用することにより印字濃度が高く、特に耐オゾン性に優れ、かつ耐光性、耐水性にも優れた記録物を得ることができる。
濃淡それぞれのシアンインクを使用し、これに加えて耐オゾン性及び耐光性、耐水性に優れた他のイエロー、マゼンタ、その他必要に応じてグリーン、レッド、オレンジ、ブルー等のインクと併用することにより、さらに広い可視領域の色調を表現することもできる。
以下に本発明を実施例により更に具体的に説明する。尚、本文中「部」及び「%」とあるのは、特別の記載のない限り質量基準である。また、反応、晶析等の各操作は、特に断りの無い限り、いずれも攪拌下に行った。また、合成反応に使用した、「商品名 レオコールTD−90」は、ライオン株式会社製の界面活性剤である。
なお実施例にて合成した上記式(1)で表される色素は、全て上記のように異性体等を含む混合物である。従って構造式を記載する場合には、特に断りの無い限り、主要成分の化学構造式、又はその中の一つの化学構造式を記載した。なお、収量についても該異性体等を含む。また、特に断りの無い限り、本発明の色素における非置換及び置換スルファモイル基の置換位置は、いずれもポルフィラジン環のα位及びβ位に置換したものの混合物である。
実施例1
(1)下記式(6)における環A乃至Dのうち1.00が2位及び3位で縮環したピリジン環、残り3.00がベンゼン環で表される化合物の合成
Figure 0005334526
四つ口フラスコに、スルホラン375部、無水フタル酸33.29部、キノリン酸12.53部、尿素108部、塩化銅(II)10.1部、モリブデン酸アンモニウム1.5部を加え、200℃まで昇温し、同温度で5時間保持した。反応終了後65℃まで冷却し、DMF(N,N−ジメチルホルムアミド)50部を加え、析出固体を濾過分離した。得られた固体をDMF50部で洗浄し、ウェットケーキ73.1部を得た。得られたウェットケーキ全量をDMF450部に加え、110℃に昇温し、同温度で一時間保持した。析出固体を濾過分離し、水200部で洗浄した。次いで、得られたウェットケーキを5%塩酸450部中に加え、60℃に昇温し、同温度で1時間攪拌した。析出固体を濾過分離し水200部で洗浄した。次いで、得られたウェットケーキ全量を5%アンモニア水450部中に加え、60℃で1時間攪拌し、析出固体を濾過分離し、水200部で洗浄し、ウェットケーキ78.1部を得た。得られたウェットケーキを80℃で乾燥し、目的化合物24.1部を青色固体として得た。
(2)下記式(3)における環A乃至Dのうち1.00が2位及び3位で縮環したピリジン環、残り3.00がベンゼン環であり、nが3である化合物の合成
Figure 0005334526
室温下、クロロスルホン酸46.2部中に、60℃を超えないように上記実施例1(1)で得られた化合物5.8部を徐々に仕込み、140℃で4時間反応を行った。得られた反応液を70℃まで冷却し、塩化チオニル17.9部を30分間で滴下し、70℃でさらに3時間反応を行った。反応液を30℃以下に冷却し、氷水800部中にゆっくりと注ぎ、析出固体を濾過分離し、冷水200部で洗浄することにより、目的化合物のウェットケーキ42.4部を得た。
(3)下記式(11)で表される有機アミン[上記式(4)におけるXが3,6,8−トリスルホ−1−ナフチルアミノ、Eがエチレンである有機アミン]の合成
Figure 0005334526
氷水150部中に塩化シアヌール36.8部、商品名 レオコールTD−90(0.4部)を加え10℃以下で30分間攪拌した。次に3,6,8−トリスルホ−1−ナフチルアミン(純度91.0%の市販品を使用)95.8部を加え10%水酸化ナトリウム水溶液でpH2.5〜3.0としながら0〜10℃で1時間30分、20〜25℃で1時間30分反応を行った。得られた反応液を10%水酸化ナトリウム水溶液でpH9.0〜9.5としながら50℃で2時間反応を行った。得られた反応液に氷250部を加え、0℃まで冷却し、エチレンジアミン60部を、5℃以下を保持しながら滴下した。その後、室温で一晩攪拌した後、濃塩酸でpH2.0に調整した。この間氷を加えて発熱を抑え、液温を10〜15℃に保持した。得られた液を50℃以下となるように加熱し、同温度を保ちながら塩酸208部加え、pH1.0に調整した。このとき液量は1000部であった。塩化ナトリウム200部を加え、30分撹拌し固体を析出させた。析出した固体を濾過分離し、ウェットケーキ161部を得た。得られたウェットケーキをビーカーに入れ水500部を加え10%水酸化ナトリウム水溶液を用いてpH10.0として溶解させた。この溶液に塩酸63部加え、pH1.0に調整した。このとき液量は850部であった。塩化ナトリウム170部を加え、30分撹拌し固体を析出させた。析出した固体を濾過分離しウェットケーキ321部を得た。得られたウェットケーキをビーカーに入れメタノール350部、水150部を加え50℃で1時間攪拌した後、析出固体を濾過分離しウェットケーキ207.3部を得た。得られたウェットケーキを乾燥させ、目的とする有機アミンの白色粉末116.3部を得た。
(4)下記式(12)で表される本発明の色素[前記式(1)における環A乃至Dのうち1.00が2位及び3位で縮環したピリジン環、残り3.00がベンゼン環、Eがエチレン、Xが3,6,8−トリスルホ−1−ナフチルアミノである色素)の合成
Figure 0005334526
氷水50部中に実施例1(2)で得られた化合物のウェットケーキ40.0部を加え、5℃以下で撹拌懸濁した。10分後、10℃以下を保持しながら、28%アンモニア水2部、水50部中に式(11)で表される有機アミン6.6部を溶解させたものを加え、28%アンモニア水を加えながら、pH9.0を保持して反応した。同pHを保持したまま、1時間かけて20℃まで昇温し、同温度でさらに8時間反応した。この時の液量は650部であった。反応液を50℃に昇温し、塩化ナトリウム130部を加え30分撹拌した後、20分かけて濃塩酸にてpH1.0に調整した後、析出固体を濾過分離し、20%塩化ナトリウム水溶液100部で洗浄し、ウェットケーキ156.0部を得た。得られたウェットケーキを水550部に加え、25%水酸化ナトリウム溶液でpH9.5に調整することにより溶解した。このときの液量は700部であった。この溶液を60℃に昇温し、塩化ナトリウム140部を加え30分撹拌した後、20分かけて濃塩酸にてpH1.0に調整した後、析出固体を濾過分離し、20%塩化ナトリウム水溶液100部で洗浄し、ウェットケーキ91.2部を得た。得られたウェットケーキをメタノール600部、水60部の混合溶媒に加えて50℃で1時間攪拌した後、析出固体を濾過分離し、ウェットケーキ11.2部を得た。得られたウェットケーキを乾燥し、上記式(12)で表される色素の遊離酸9.5部を青色粉末として得た。
λmax:601nm(水溶液中)
実施例2
(1)下記式(13)で表される有機アミン[上記式(4)におけるXが4,8−ジスルホ−2−ナフチルアミノ、Eがエチレンである有機アミン]の合成
Figure 0005334526
氷水150部中に塩化シアヌール18.4部、商品名 レオコールTD−90(0.2部)を加え10℃以下で30分間攪拌した。次に2−アミノ−4,8−ジスルホナフタレン(純度77.0%の市販品を使用)40.2部を加え10%水酸化ナトリウム水溶液を用いてpH2.0〜2.5としながら0〜10℃で1時間30分、20〜25℃で3時間反応を行った。次いで、10%水酸化ナトリウム水溶液でpH9.0〜9.5としながら50℃で3時間反応を行った。この時、液量は500部であった。この反応液に塩化ナトリウム100部を加え、30分撹拌し固体を析出させた。析出固体を濾過分離し、ウェットケーキ82.1部を得た。
エチレンジアミン60部中に氷60部を加え、さらに上記のようにして得たウェットケーキの全量82.1部を加えた。この間、反応液に氷を加えて発熱を抑え、10℃以下を保持して反応した。反応液を室温で一晩攪拌した後、濃塩酸を用いてpH1.0に調整した。この際も氷を加えて液温を10〜15℃に保持した。このとき液量は700部であった。反応液に塩化ナトリウム140部を加え、30分撹拌し固体を析出させた。析出固体を濾過分離し、ウェットケーキ51.2部を得た。得られたウェットケーキをビーカーに入れ水220部を加え、10%水酸化ナトリウム水溶液でpH9.5として溶解させた。このとき液量は500部であった。この溶液を濃塩酸でpH1.0に調整し、塩化ナトリウム100部を加え、30分撹拌し固体を析出させた。析出固体を濾過分離し、ウェットケーキ57.8部を得た。得られたウェットケーキをビーカーに入れメタノール210部、水90部を加え50℃で1時間攪拌した後、析出固体を濾過分離し、ウェットケーキ41.2部を得た。得られたウェットケーキを乾燥させ、目的とする有機アミンの白色粉末19.2部(HPLC純度:89.3%)を得た。
(2)下記式(14)で表される本発明の色素[前記式(1)における環A乃至Dのうち1.00がピリジン環、残り3.00がベンゼン環であり、Eがエチレン、Xが4,8−ジスルホ−2−ナフチルアミノである色素]の合成
Figure 0005334526
氷水50部中に、実施例1(1)及び(2)と同様にして得た化合物のウェットケーキ40.0部を加え、5℃以下で撹拌懸濁した。10分後、10℃以下を保持しながら、28%アンモニア水2部、水50部中に式(13)で表される有機アミン5.1部を溶解させたものを加え、28%アンモニア水を加えながら、pH9.0を保持した。同pHを保持したまま、1時間かけて20℃まで昇温し、同温度で8時間さらに反応した。この時の液量は250部であった。反応液を50℃に昇温し、塩化ナトリウム37.5部を加え30分撹拌した後、20分かけて濃塩酸にてpH2.0に調整した後、析出固体を濾過分離し、10%塩化ナトリウム水溶液100部で洗浄し、ウェットケーキ92.1部を得た。得られたウェットケーキを水100部に加え、25%水酸化ナトリウム溶液でpH9.0に調整し溶解した。このときの液量は250部であった。この溶液を50℃に昇温し、塩化ナトリウム37.5部を加え30分撹拌した後、20分かけて濃塩酸にてpH1.0に調整した後、析出固体を濾過分離し、10%塩化ナトリウム水溶液100部で洗浄し、ウェットケーキ62.1部を得た。得られたウェットケーキをエタノール160部、水40部の混合溶媒に加えて50℃で1時間攪拌した後、析出固体を濾過分離し、ウェットケーキ44.0部を得た。得られたウェットケーキを乾燥することにより、上記式(14)で表される本発明の色素の遊離酸9.4部を青色粉末として得た。
λmax:605nm(水溶液中)
実施例3
(1)下記式(15)で表される有機アミン[式(4)におけるXが4,8−ジスルホ−1−ナフチルアミノ、Eがエチレンである有機アミン]の合成
Figure 0005334526
氷水150部中に塩化シアヌール18.4部、商品名 レオコールTD−90(0.2部)を加え10℃以下で30分間攪拌した。次に1−アミノ−4,8−ジスルホナフタレン(純度95.0%の市販品を使用)32.8部を加え10%水酸化ナトリウム水溶液でpH2.6〜3.0としながら0〜5℃で1時間、pH3.0〜3.5としながら0〜5℃で1時間、25〜30℃で1時間反応を行った。次いで、10%水酸化ナトリウム水溶液で、pH9.0〜9.5としながら50℃でさらに3時間反応を行った。反応液に氷250部を加え、0℃まで冷却し、5℃以下に保持しながらエチレンジアミン60部を滴下した。反応液を室温で一晩さらに攪拌した後、濃塩酸でpH1.0に調整した。この間氷を加えながら発熱を抑え、10〜15℃を保持した。このとき液量は830部であった。反応液に塩化ナトリウム166部を加え、30分撹拌し固体を析出させた。析出固体を濾過分離してウェットケーキ59.3部を得た。得られたウェットケーキをビーカーに入れ水280部を加え10%水酸化ナトリウム水溶液でpH9.0として溶解させた。このとき液量は400部であった。この溶液に濃塩酸を加えてpH1.0に調整し、さらに塩化ナトリウム80部を加えて30分撹拌し固体を析出させた。析出固体を濾過分離しウェットケーキ53.5部を得た。得られたウェットケーキをビーカーに入れメタノール420部、水80部の混合溶媒を加えて50℃で1時間攪拌した後、析出固体を濾過分離し、ウェットケーキ55.9部を得た。得られたウェットケーキを乾燥させ、目的とする有機アミンの白色粉末18.9部(HPLC純度:63%)を得た。
(2)下記式(16)で表される本発明の色素[前記式(1)における環A乃至Dのうち1.00がピリジン環、残り3.00がベンゼン環、Eがエチレン、Xが4,8−ジスルホ−1−ナフチルアミノである色素]の合成
Figure 0005334526
氷水50部中に実施例1(1)及び(2)と同様にして得られた化合物のウェットケーキ40.0部を加え、5℃以下で撹拌懸濁した。10分後、10℃以下を保持しながら、28%アンモニア水2部、水100部中に式(15)で表される有機アミン7.04部を溶解させたものを加え、28%アンモニア水を加えながら、pH9.0を保持した。同pHを保持したまま、1時間かけて20℃まで昇温し、同温度で8時間反応した。この時の液量は275部であった。反応液を50℃に昇温し、塩化ナトリウム55部を加え30分撹拌した後、20分かけて濃塩酸にてpH1.0に調整した後、析出固体を濾過分離し、20%塩化ナトリウム水溶液100部で洗浄し、ウェットケーキ94.7部を得た。得られたウェットケーキを水230部に加え、25%水酸化ナトリウム溶液でpH9.0に調整して溶解した。このときの液量は350部であった。この溶液を50℃に昇温し、塩化ナトリウム70部を加え30分撹拌した後、20分かけて濃塩酸にてpH1.0に調整した後、析出固体を濾過分離し、20%塩化ナトリウム水溶液100部で洗浄し、ウェットケーキ112.0部を得た。得られたウェットケーキをメタノール800部、水200部の混合溶媒に加えて50℃で1時間攪拌した後、析出固体を濾過分離し、ウェットケーキ46.3部を得た。得られたウェットケーキを乾燥し、本発明の上記式(16)で表される色素の遊離酸9.5部を青色粉末として得た。
λmax:601nm(水溶液中)
実施例4
(1)下記式(17)で表される化合物の合成
Figure 0005334526
四つ口フラスコに、スルホラン750部、4−スルホフタル酸295.4部(50%水溶液として得られる市販品を使用)、28%アンモニア水43.7部を加え、200℃に昇温し、同温度で2時間反応した。その後65℃まで冷却し、キノリン酸33.4部、尿素288部、塩化銅(II)26.88部、モリブデン酸アンモニウム4部を加え、再度200℃へ昇温し、同温度で5時間反応した。反応終了後65℃まで冷却し、メタノール50部を加え、析出固体を濾過分離し、メタノール200部で洗浄し、ウェットケーキ531部を得た。得られたウェットケーキ全量を水2800部、塩酸400部、塩化ナトリウム720部に加え、60℃に昇温し、同温度で一時間攪拌した。析出固体を濾過分離し、20%塩化ナトリウム水溶液400部で洗浄しウェットケーキを得た。得られたウェットケーキを水3000部、硫酸80部、塩化ナトリウム600部にを加え、60℃に昇温し、同温度で一時間攪拌した。析出固体を濾過分離し、20%塩化ナトリウム水溶液400部で洗浄し、ウェットケーキを得た。得られたウェットケーキをメタノール1500部、28%アンモニア水200部、水100部の混合溶媒中に加え、60℃に昇温し、同温度で1時間攪拌した。析出固体を濾過分離し、20%含水メタノール400部で洗浄し、ウェットケーキ361部を得た。得られたウェットケーキを80℃で乾燥し、目的とする上記式(17)で表される化合物144.2部を青色固体として得た。
λmax=603nm(水溶液中)
(2)下記式(18)で表される化合物[前記式(3)における環A乃至Dのうち1.00が2位及び3位で縮環したピリジン環、残り3.00がベンゼン環、nが3.00であり、且つクロロスルホニル基の置換位置がポルフィラジン環のβ位である化合物]の合成
Figure 0005334526
クロロスルホン酸52.1部中に、60℃を超えないように実施例4(1)で得た式(17)で表される化合物8.68部を徐々に加え、140℃へ昇温し、4時間反応を行った。反応液を70℃まで冷却し、塩化チオニル17.9部を30分間かけて滴下し、80℃で3時間反応を行った。反応液を30℃以下に冷却し、氷水1000部中にゆっくりと注ぎ、析出固体を濾過分離し、冷水100部で洗浄することにより、目的とする化合物のウェットケーキ94.4部を得た。
(4)下記式(19)で表される本発明の色素[前記式(1)における環A乃至Dのうち1.00が2位及び3位で縮環したピリジン環、残り3.00がベンゼン環、Eがエチレン、Xが3,6,8−トリスルホ−1−ナフチルアミノであり、且つ非置換スルファモイル基及び置換スルファモイル基の置換位置が、いずれもポルフィラジン環のβ位である色素]の合成
Figure 0005334526
氷水50部中に実施例4(2)で得られた式(18)で表される化合物のウェットケーキ94.4部を加え、5℃以下で撹拌懸濁した。10分後、10℃以下を保持しながら、28%アンモニア水2部、水50部中に式(11)で表される有機アミン13.2部を溶解させた液を加え、28%アンモニア水を加えながら、pH9.0を保持して反応した。同pHを保持したまま、1時間かけて20℃まで昇温し、同温度でさらに8時間反応した。この時の液量は260部であった。反応液を50℃に昇温し、塩化ナトリウム39部を加え30分撹拌した後、20分かけて濃塩酸にてpH1.0に調整した後、析出固体を濾過分離し、10%塩化ナトリウム水溶液100部で洗浄し、ウェットケーキ226.0部を得た。得られたウェットケーキを水800部に加え、25%水酸化ナトリウム溶液でpH9.0に調整し溶解した。このときの液量は1250部であった。得られた溶液を60℃に昇温し、塩化ナトリウム125部を加え30分撹拌した後、20分かけて濃塩酸にてpH1.5に調整した後、析出固体を濾過分離し、10%塩化ナトリウム水溶液400部で洗浄し、ウェットケーキ85.2部を得た。得られたウェットケーキをメタノール600部、水60部の混合溶媒に加えて50℃で1時間攪拌した後、析出固体を濾過分離し、ウェットケーキ31.5部を得た。得られたウェットケーキを乾燥し、上記式(19)で表される本発明の色素の遊離酸8.7部を青色粉末として得た。
λmax:598nm(水溶液中)
比較用色素の合成
以下に比較用の色素の合成方法を記載する。
合成例1
(1)下記式(20)で表される比較用有機アミンの合成
Figure 0005334526
氷水330部中に塩化シアヌール18.4部、商品名 レオコールTD−90(0.2部)を加え10℃以下で30分間攪拌した。次に4−スルホアニリン(純度99.3%の市販品を使用)17.4部を加え10%水酸化ナトリウム水溶液でpH2.6〜3.0としながら0〜5℃で1時間、pH3.0〜3.5としながら0〜5℃で1時間、25〜30℃で1時間反応を行った。次に反応液に2−スルホエチルアミン12.6部加え、10%水酸化ナトリウム水溶液でpH7.0〜8.0としながら25℃で2時間反応を行った。反応液に氷250部を加え、0℃まで冷却し、エチレンジアミン60部を5℃以下を保持しながら滴下した。その後、室温で一晩攪拌した後、濃塩酸を用いてpH1.0に調整した。この間氷を加えて発熱を抑え、10〜15℃を保持した。このとき液量は980部であった。この反応液に塩化ナトリウム190部を加え、30分撹拌し固体を析出させた。析出固体を濾過分離しウェットケーキ70.6部を得た。得られたウェットケーキをビーカーに入れ水280部を加え10%水酸化ナトリウム水溶液でpH9.0として溶解させた。このとき液量は400部であった。この溶液を濃塩酸でpH1.0に調整し、塩化ナトリウム80部を加え、30分撹拌し固体を析出させた。析出固体を濾過分離しウェットケーキ110.1部を得た。得られたウェットケーキをメタノール260部、水26部の混合溶媒中に加え、50℃で1時間攪拌した後、析出固体を濾過分離しウェットケーキ89.1部を得た。得られたウェットケーキを乾燥させ、目的とする式(20)で表される比較用有機アミン49.3部の白色粉末を得た。
(2)下記式(21)で表される比較用色素の合成[式(21)における環A乃至Dのうち1.00が2位及び3位で縮環したピリジン環、残り3.00がベンゼン環である。]。
Figure 0005334526
氷水50部中に、実施例1(1)及び(2)と同様にして得た上記式(3)で表される化合物のウェットケーキ40.1部を加え、5℃以下で撹拌懸濁した。10分後、10℃以下を保持しながら、28%アンモニア水2部、水60部中に式(20)で表される比較用有機アミン3.0部を溶解させたものを加え、28%アンモニア水でpH9.0を保持し反応した。同pHを保持したまま、1時間かけて20℃まで昇温し、同温度で8時間さらに反応した。この時の液量は620部であった。反応液を50℃に昇温し、塩化ナトリウム93部を加え30分撹拌した後、20分かけて濃塩酸にてpH2.0に調整した後、析出固体を濾過分離し、10%塩化ナトリウム水溶液100部で洗浄し、ウェットケーキ42.1部を得た。得られたウェットケーキを水360部に加え、25%水酸化ナトリウム溶液でpH9.0に調整し溶液とした。このときの液量は400部であった。得られた溶液を50℃に昇温し、塩化ナトリウム60部を加え30分撹拌した後、20分かけて濃塩酸にてpH1.0に調整した後、析出固体を濾過分離し、10%塩化ナトリウム水溶液100部で洗浄し、ウェットケーキ41.2部を得た。得られたウェットケーキをメタノール255部、水45部の混合溶媒に加えて50℃で1時間攪拌した後、析出固体を濾過分離し、ウェットケーキ21.2部を得た。得られたウェットケーキを乾燥し、目的とする式(21)で表される比較用色素の遊離酸10.1部を青色粉末として得た。この色素の中心金属である銅の量、及び非置換及び置換スルファモイル基における硫黄原子の量を定量し、平均分子量を算出したところ1082.8であった。この結果から、式(21)における非置換及び置換スルファモイル基の置換数をそれぞれ算出した。
λmax:602.7nm(水溶液中)
合成例2
(1)下記式(22)で表される比較用有機アミンの合成
Figure 0005334526
氷水330部中に塩化シアヌール18.4部、レオコールTD−90(0.2部)を加え10℃以下で30分間攪拌した。次に4,8−ジスルホ−1−ナフチルアミン(純度96.0%の市販品を使用)32.5部を加え10%水酸化ナトリウム水溶液でpH2.6〜3.0としながら0〜5℃で1時間、pH3.0〜3.5としながら0〜5℃で1時間、25〜30℃で1時間反応を行った。得られた反応液にジエタノールアミン10.8部加え、10%水酸化ナトリウム水溶液でpH6.0〜7.0としながら30℃で2時間反応を行った。得られた反応液に氷250部を加え、0℃まで冷却し、エチレンジアミン60部を5℃以下の反応温度を保持しながら滴下した。反応液を室温で一晩攪拌した後、濃塩酸でpH1.0に調整した。この間氷を加えて発熱を抑え、10〜15℃を保持した。このとき液量は700部であった。得られた液に塩化ナトリウム140部を加え、30分撹拌し固体を析出させた。析出した固体を濾過分離し、ウェットケーキ105部を得た。得られたウェットケーキをビーカーに入れ水400部を加え10%水酸化ナトリウム水溶液でpH9.0として溶液とした。このとき液量は600部であった。この溶液を濃塩酸でpH1.0に調整し、塩化ナトリウム160部を加え、30分撹拌し固体を析出させた。析出した固体を濾過分離し、ウェットケーキ115部を得た。得られたウェットケーキをメタノール800部、水200部の混合溶媒に加え50℃で1時間攪拌した後、析出固体を濾過分離し、ウェットケーキ54.3部を得た。得られたウェットケーキを乾燥させ、目的とする式(22)で表される比較用有機アミンの白色粉末33.8部を得た。
(2)下記式(23)で表される比較用色素の合成
Figure 0005334526
氷水50部中に、実施例1(1)及び(2)と同様にして得た上記式(3)で表される化合物のウェットケーキ40.1部を加え、5℃以下で撹拌懸濁した。10分後、10℃以下を保持しながら、28%アンモニア水2部、水30部中に式(22)で表される有機アミン5.4部を溶解させたものを加え、28%アンモニア水でpH9.0を保持し、反応した。同pHを保持したまま、1時間かけて20℃まで昇温し、同温度で8時間さらに反応した。この時の液量は225部であった。反応液を50℃に昇温し、塩化ナトリウム45部を加え30分撹拌した後、20分かけて濃塩酸にてpH1.0に調整した後、析出固体を濾過分離し、20%塩化ナトリウム水溶液100部で洗浄し、ウェットケーキ82.0部を得た。得られたウェットケーキを水200部に加え、25%水酸化ナトリウム溶液でpH9.0に調整し溶液とした。このときの液量は300部であった。得られた溶液を50℃に昇温し、塩化ナトリウム60部を加え30分撹拌した後、20分かけて濃塩酸にてpH1.0に調整した後、析出固体を濾過分離し、20%塩化ナトリウム水溶液100部で洗浄し、ウェットケーキ72.1部を得た。得られたウェットケーキをメタノール255部、水45部の混合溶媒に加えて50℃で1時間攪拌した後、析出固体を濾過分離し、ウェットケーキ37.5部を得た。得られたウェットケーキを乾燥し、目的とする式(23)で表される比較用色素の遊離酸9.3部を青色粉末として得た。
λmax:601nm(水溶液中)
(A)インクの調製
下記表2に記載の各成分を混合溶解し、0.45μmのメンブランフィルター(アドバンテック社製)で濾過する事により評価試験用のインクを調製した。インクの調製における「水」は、イオン交換水を使用した。又、インクのpHが8〜10、総量が100部になるように水、水酸化ナトリウム(pH調整剤)を加えた。実施例1で得た色素を用いたインクの調製を実施例5、同様に、実施例2乃至4で得た色素を用いたインクの調製をそれぞれ実施例6乃至8とする。また実施例で得た色素の代わりに、合成例1又は2で得た比較用色素を用いる以外は実施例5乃至8と同様にして比較用インクを調製した。このインクの調製をそれぞれ比較例1(合成例1で得た比較用色素を使用)及び2(合成例2で得た比較用色素を使用)とする。
表2
上記各実施例で得た色素 5.0部
グリセリン 5.0部
尿素 5.0部
N−メチル−2−ピロリドン 4.0部
イソプロピルアルコール 3.0部
ブチルカルビトール 2.0部
タウリン 0.3部
エチレンジアミン4酢酸2ナトリウム 0.1部
界面活性剤[日信化学(株)社製、商品名 サーフィノール104PG50]
0.1部
水+水酸化ナトリウム水溶液 75.5部
計 100.0部
(B)インクジェット記録
インクジェットプリンタ(キヤノン社製、商品名:PIXUS ip4100)を用いて、光沢紙Aとしてセイコーエプソン社製写真用紙クリスピア(高光沢)、光沢紙Bとしてブラザー社製写真用紙プレミアムプラスグロッシィフォトペーパーにインクジェット記録を行った。
インクジェット記録の際は、100%、85%、70%、55%、40%、25%濃度の6段階の階調が得られるように画像パターンを作り、ハーフトーンの記録物を得て、これを試験片とした。耐オゾン性試験の際には、55%と40%の階調部で測定を行ない、色素残存率を求めた。
また、反射濃度は測色システム(SpectroEye、GretagMacbeth社製)を用いて測色した。測色は、濃度基準にDIN、視野角2°、光源D65の条件で行なった。
記録画像の各種試験方法及び試験結果の評価方法を以下に記載する。
(C)記録画像の評価
1.耐オゾン性試験(A)
試験片を、オゾンウェザーメーター(スガ試験機社製 型式OMS−H)を用い、オゾン濃度40ppm、槽内温度24℃、湿度60%RHで8時間放置した。試験後に55%の階調部で測定を行ない、色素残存率を(試験後の反射濃度/試験前の反射濃度)×100(%)で計算して求め、4段階で評価した。試験前の各試験片の平均反射濃度は1.09であった。
◎:残存率80%以上
○:残存率80%未満、70%以上
△:残存率70%未満、60%以上
×:残存率60%未満
色素残存率はその数値が高いほど良い。結果を下記表3に示す。
2.耐オゾン性試験(B)
試験片を、オゾンウェザーメーター(スガ試験機社製 型式OMS−H)を用い、オゾン濃度40ppm、槽内温度24℃、湿度60%RHで8時間放置した。試験後に40%の階調部で測定を行ない、色素残存率を(試験後の反射濃度/試験前の反射濃度)×100(%)で計算して求め、4段階で評価した。試験前の各試験片の平均反射濃度は0.57であった。
◎:残存率80%以上
○:残存率80%未満、70%以上
△:残存率70%未満、60%以上
×:残存率60%未満
色素残存率はその数値が高いほど良い。結果を下記表4に示す。
3.試験片のDc値
試験片における100%の階調部について上記測色システムを用いてシアン色の反射濃度Dc値を測定した。これを4段階で評価した。
◎:Dc値が2.45以上
○:Dc値が2.30以上2.45未満
△:Dc値が2.20以上2.30未満
×:Dc値が2.20未満
Dc値は大きい数値の方が、より印字濃度が高い(濃い)ことを意味し、優れる。結果を下記表5に示す。
表3
オゾン試験結果(A)
光沢紙A 光沢紙B
実施例5 ◎ ○
実施例6 ○ ○
実施例7 ○ ○
実施例8 ○ ○
比較例1 △ ×
比較例2 △ △
表4
オゾン試験結果(B)
光沢紙A 光沢紙B
実施例5 ◎ ○
実施例6 ○ ○
実施例7 ○ ○
実施例8 ○ ○
比較例1 △ △
比較例2 △ △
表5
Dc値の評価結果
光沢紙A 光沢紙B
実施例5 ○ ○
実施例6 ○ ◎
実施例7 ○ ◎
実施例8 ◎ ◎
比較例1 × △
比較例2 × ○
表3及び4から明らかなように、本発明の化合物を用いた各実施例のシアンインクは比較例のインクと比較して耐オゾン性が良好である。具体的には、印刷物の高濃度部、低濃度部において、いずれも高い耐オゾン性を示した。
また、表5より明らかなように、各実施例のインクで得られる記録物の反射濃度は極めて高く、いずれの比較例よりも優れていることが明らかであり、特に光沢紙Aにおいてその差が顕著である。
上記の通り、本発明のポルフィラジン色素及びこれを含有するインク組成物により得られた記録画像は、高い耐オゾン性と高い印字濃度が得られることが明らかであり、各種記録用、特にインクジェット記録用途に極めて有用である。

Claims (14)

  1. 下記式(1)で表されるポルフィラジン色素の混合物又はそれらの塩、
    Figure 0005334526
    [式(1)中、環A乃至Dは、それぞれ独立にポルフィラジン環に縮環したベンゼン環又は窒素原子1〜2個を含む6員環の含窒素複素芳香環を表し、含窒素複素芳香環の個数は平均値で0.00を超えて3.00以下であり、残りはベンゼン環であり、EはC2−C6アルキレンを表し、Xは、少なくとも1つのスルホ基、カルボキシ基又はリン酸基を置換基として有するナフチルアミノ基であり、該ナフチルアミノ基は、さらにスルホ基、カルボキシ基、及びリン酸基より成る群から選択される1種又は2種の置換基を1乃至2有してもよく、bは平均値で0.00以上3.90未満であり、cは平均値で0.10以上4.00未満であり、且つb及びcの和は、平均値で1.00以上4.00未満である。]。
  2. 環A乃至Dで表される6員環の含窒素複素芳香環が、ピリジン環又はピラジン環である請求項1に記載のポルフィラジン色素の混合物又はそれらの塩。
  3. EがC2−C4アルキレンであり、Xが、スルホ基、カルボキシ基又はリン酸基を置換基として有するナフチルアミノ基であり、該置換ナフチルアミノ基が、スルホ基、カルボキシ基、及びリン酸基より成る群から選択される1種又は2種の置換基を、さらに乃至有しても良い置換ナフチルアミノ基である、請求項1に記載のポルフィラジン色素の混合物又はそれらの塩。
  4. 環A乃至Dにおける含窒素複素芳香環が、それぞれ独立に2位及び3位で、又は3位及び4位で縮環したピリジン環、又は2位及び3位で縮環したピラジン環であり、Eがエチレン又はプロピレンであり、Xがスルホ置換ナフチルアミノ基又はカルボキシ置換ナフチルアミノ基であり、該置換ナフチルアミノ基がスルホ基、及びカルボキシ基よりなる群から選択される1種又は2種の置換基を、さらに乃至2有しても良い置換ナフチルアミノ基である、請求項1又は2に記載のポルフィラジン色素の混合物又はそれらの塩。
  5. 環A乃至Dにおける含窒素複素芳香環が、それぞれ独立に2位及び3位で、又は3位及び4位で縮環したピリジン環であり、Eがエチレン又はプロピレンであり、Xがスルホ置換ナフチルアミノ基であり、さらに乃至2のスルホ基を置換基として有する請求項1に記載のポルフィラジン色素の混合物又はそれらの塩。
  6. 請求項1乃至のいずれか一項に記載のポルフィラジン色素の混合物又はそれらの塩を、色素として含有することを特徴とするインク組成物。
  7. さらに有機溶剤を含有する請求項に記載のインク組成物。
  8. インクジェット記録用である請求項に記載のインク組成物。
  9. 請求項乃至のいずれか一項に記載のインク組成物をインクとして用い、該インクのインク滴を記録信号に応じて吐出させて、被記録材に記録を行うインクジェット記録方法。
  10. 被記録材が情報伝達用シートである請求項に記載のインクジェット記録方法。
  11. 情報伝達用シートが表面処理されたシートであって、該シートが支持体上に白色無機顔料粒子を含有するインク受容層を有するシートである請求項1に記載のインクジェット記録方法。
  12. 請求項乃至のいずれか一項に記載のインク組成物を含有する容器。
  13. 請求項1に記載の容器が装填されたインクジェットプリンタ。
  14. 請求項乃至のいずれか一項に記載のインク組成物で着色された着色体。
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