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JP5344021B2 - 化成処理用熱延鋼板及びその製造方法 - Google Patents

化成処理用熱延鋼板及びその製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、表面処理用の熱延鋼板、特に自動車、電機、缶材料等の塗装に先立って行われる化成処理用の熱延鋼板及びその製造方法に関する。
自動車、家電、家具、建材等に利用される熱延鋼板は、耐食性及び装飾性の付与のため、素材鋼板の段階で、あるいはプレス加工の段階で、塗装処理が広く行われている。かかる塗装処理の事前処理として、塗料の鋼板への密着性を高め、塗装欠陥の発生を防止するために、たとえば、燐酸処理、燐酸亜鉛処理等の化成被膜を付与する化成処理が行われる。したがって、化成処理は、いわゆるすけなどの欠陥が発生しないように極力完全に行われる必要がある。
しかしながら、自動車の軽量化等のために行われる鋼板の高張力化は、種々の合金元素の添加を必要とし、そのため、化成処理性の低下を招いている。たとえば、鋼の高張力化のために添加されるCrは、その添加量にもよるが、化成処理性を大きく劣化させ、化成処理に要する時間を長引かせる。また、鋼の高張力化のために加えられる強化元素の種類・組み合わせは、鋼板の機械的性質や成形性等の要求に応じて極めて多種にのぼり、そのため、たとえば、自動車の組立てに使用される鋼板でも、部品ごとに化成処理性が異なり、化成処理工程の管理を複雑にする。
このような問題を解決するために、特許文献1には、Siを0.1mass%以上含有する鋼板に対し、平均粒径が30〜300μmの固体粒子を投射することにより高張力鋼板の耐かじり性と化成処理性を改善するという手段が開示されている。また、特許文献2には、冷延鋼板の表面にメチルブタン類などの特定の硫黄含有化合物を硫黄分として0.01〜500mg/mを吸着せしめることによりりん酸塩処理性を向上せしめるという発明が開示されている。特許文献3には、金属酸化物もしくは金属を鋼板表面に付着させることによりりん酸塩処理性を向上させるという発明が開示されている。さらに、特許文献4には、質量%で、Alを0.1%以上3%未満を含有する鋼の表層部にAlN析出層を有せしめることによって化成処理性を含む表面処理性を向上せしめるという発明が開示されている。
特開2005−240148号公報 特公昭61−41990号公報 特公昭57−61114号公報 特開2004−162163号公報
しかしながら、特許文献1に開示された発明は、Siを含有し、鋼板表面がSi系酸化物により不活性化されている場合の化成処理性の改善手段としては有効であるが、他の合金元素、たとえばCrにより化成処理性が阻害されている場合には効果がない。一方、特許文献2及び3に開示の発明では特殊な薬剤を使用することが要求され、また、電解槽などの設備を設ける必要があり、コスト高を招くおそれがある。特許文献4に開示の発明は、Alを含有する鋼にのみしか適用できず、しかもAlNの析出処理のために特殊な熱処理を施す必要があり、特許文献2に開示の発明と同様、コスト高を招くおそれがある。
本発明は、上記従来技術に係る問題を解決することを目的とし、熱延鋼板に適用することができ、また、低コストで実施することができる熱延鋼板の化成処理性改善手段を提案することを目的としている。
本発明に係る化成処理用熱延鋼板は、質量比で、C:0.01〜0.10%、Si:0.01〜2.00%、Mn:0.15〜2.00%、P:0.020%以下、S:0.010%以下、Al:0.050%以下、残部不可避不純物を除きFeからなり、表層部の転位密度が2×1013/m以上となっているものである。上記転位密度は、5×1013/m以上、5×1015/m以下であることが望ましい。
上記発明に係る化成処理用熱延鋼板は、さらに、Cr:0.05〜1.00%を含有することができる。
本発明に係る化成処理用熱延鋼板は、前記組成を有する熱延鋼板に対し、焼鈍・酸洗後、表層部の転位密度が2×1013/m以上となるように転位導入操作を行うことによって製造することができる。
本発明により、化成処理性の優れた熱延鋼板を提供することができ、自動車、電機、缶材料等の塗装工程を効率化することができる。また、その製造コストを、従来の提案に比べて低減することができる。
熱延鋼板に対して化成処理を行ったときの転位密度と化成処理被膜の状態(「すけ」あり又は「すけ」なしの発生状態)の関係を示すグラフである。
本発明に係る化成処理熱延鋼板の原板は、質量比で、C:0.01〜0.10%、Si:0.01〜2.00%、Mn:0.15〜2.00%、P:0.020%以下、S:0.010%以下、Al:0.050%以下、残部不可避不純物を除きFeからなる低炭素・低合金鋼とするのがよく、これにCr:0.05〜1.00を含有させることもできる。なお、上記熱延鋼板に、組織、特性上の制限を特に設ける必要はなく、鋼板の用途に応じて強度、加工性などに応じて組成、組織を選定すればよい。
本発明では、鋼板表層部の転位密度が2×1013/m以上とすることが重要である。後述するように、転位密度が2×1013/m以上となるときに化成処理を行ったとき、化成処理鋼板表面に「すけ」などの欠陥が認められなくなる。
ここに鋼板表層部の転位密度とは、化成処理に供される直前の鋼板表層部に存在する転位密度をいい、その測定のための試料の調整方法及び転位密度の決定方法は下記のとおりである。
(1)測定試料の調整:鋼板1/4の位置から試料を切り出して脱脂して
(2)転位密度の決定方法:上記のようにして調整された試料についてX線回折装置によって鋼板表面の歪を測定した。測定にはX線回折装置を用い、CoKα線を用いて鋼板表面層のα鉄の(110)面、(211)面、及び(220)面の回折強度を測定し、その測定チャートから各結晶面の反射強度のピーク値の半価幅を求め、下記式(1)及び式(2)により鋼板表面に付与された局所ひずみεを決定する。
βcosθ/λ=0.9/D+2ε’sinθ/λ・・・・・・(1)
ここで、
β:ピーク値の半価幅(ただし、式(2)により補正した値を用いる)
θ:回折角
λ:Cokα線の波長(0.1791nm)
D:結晶子サイズ(転位セル、結晶粒の大きさ)
ε’:局所ひずみ
β=β −β ・・・・・・(2)
ここで、
β:転位密度を測定する試料のピークの半価幅
β:ひずみのない試料のピークの半価幅
である。
sinθ/λに対してβcosθ/λをプロットして傾きと切片からbとε’とが求まる。求められた局所歪ε’から下記(3)式により転位密度ρを決定する。
ρ=14.4ε’/b・・・・・・(3)
ここで、
b:バーガースベクトル(8.25nm)
図1は、表1に示す組成を有する熱延鋼板に対して表2に示す条件で処理して、熱延鋼板表面に転位を導入し、化成処理を行ったときの転位密度と化成処理被膜の状態(「すけ」あり又は「すけ」なしの発生状態)の関係を示すグラフである。なお、熱延鋼板は、表1に示す組成を有するスラブを最終厚さまで熱間圧延した後、酸洗したものである。
鋼板表面への転位の導入は、上記により得られた熱延鋼板にショットブラスト処理によるひずみ付与処理によって行った。これらひずみ付与処理の具体的内容は、表2に記したとおりである。
なお、化成処理は、表面調整液として日本ペイント製サーフファイン5N−10、化成処理液として日本ペイント製サーフダインSD2500を用い、液温43℃で行った。
図1から分かるとおり、鋼板表層部の転位密度が2×1013/m以上となるとき、化成処理した熱延鋼板に「すけ」が認められなくなる。なお、りん酸亜鉛の結晶サイズが微細化し、緻密な結晶を生成させるためには、鋼板表層部の転位密度が5×1013/m以上とするのがよいが、転位密度が5×1015/mを超えると鋼板の成形性が低下するため、上限を5×1015/mとするのがよい。ここに、「すけ」とはりん酸亜鉛結晶の析出していない部分であり、その有無はSEMにて350倍の写真を3視野撮影し、目視により判定したものである。

Claims (4)

  1. 質量比で、C:0.01〜0.10%、Si:0.01〜2.00%、Mn:0.15〜2.00%、P:0.020%以下、S:0.010%以下、Al:0.050%以下、残部不可避不純物を除きFeからなり、表層部の転位密度が2×1013/m以上であることを特徴とする化成処理用熱延鋼板。
  2. 転位密度が5×1013/m以上、5×1015/m以下であることを特徴とする請求項1記載の化成処理用熱延鋼板。
  3. さらに、Cr:0.05〜1.00%を含有することを特徴とする請求項1又は2記載の化成処理用熱延鋼板。
  4. 請求項1又は3に記載の組成を有する熱延鋼板に対し、焼鈍・酸洗後、表層部の転位密度が2×1013/m以上となるように転位導入操作を行うことを特徴とする化成処理用熱延鋼板の製造方法。
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