JP5200398B2 - 酸化物半導体電極用積層体、耐熱基板付酸化物半導体電極、酸化物半導体電極、色素増感型太陽電池セル、および色素増感型太陽電池モジュール - Google Patents
酸化物半導体電極用積層体、耐熱基板付酸化物半導体電極、酸化物半導体電極、色素増感型太陽電池セル、および色素増感型太陽電池モジュール Download PDFInfo
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Description
以下、本発明の酸化物半導体電極用積層体、耐熱基板付酸化物半導体電極、酸化物半導体電極、色素増感型太陽電池セル、および色素増感型太陽電池モジュールについて詳細に説明する。
まず、本発明の酸化物半導体電極用積層体について説明する。本発明の酸化物半導体電極用積層体は、耐熱基板と、上記耐熱基板上に形成され、密着用微粒子および応力緩和用微粒子を含む介在層、および上記介在層上に形成され、金属酸化物微粒子を含む酸化物半導体層からなる多孔質層と、上記多孔質層上に形成され、金属酸化物からなる第1透明電極層と、を有する酸化物半導体電極用積層体であって、上記応力緩和用微粒子の粒径は、上記密着用微粒子の粒径および上記金属酸化物微粒子の粒径より大きいことを特徴とするものである。
まず、本発明に用いられる多孔質層について説明する。本発明に用いられる多孔質層は、密着用微粒子および応力緩和用微粒子を含む介在層と、金属酸化物微粒子を含む酸化物半導体層とからなるものである。また、上記介在層と、上記酸化物半導体層とは、本発明により製造された酸化物半導体電極用積層体を用いて酸化物半導体電極としたものを、色素増感型太陽電池セルを作製した際に、多孔質体である介在層および酸化物半導体層の細孔に担持させた色素増感剤が、光照射により色素増感剤から生じた電荷を第1透明電極層に伝導する部材として機能するものである。以下、このような多孔質層について介在層と、酸化物半導体層とに分けて説明する。
本発明に用いられる介在層は、密着用微粒子および応力緩和用微粒子を含むものである。ここで、上記応力緩和用微粒子の粒径は、上記密着用微粒子の粒径および上記金属酸化物微粒子の粒径より大きいものである。
本発明に用いられる密着用微粒子について説明する。本発明に用いられる密着用微粒子に用いられる材料としては、焼成することにより多孔性の介在層を形成することが可能であるものであれば特に限定されないが、TiO2、ZnO、SnO2、ITO、ZrO2、MgO、Al2O3、CeO2、Bi2O3、Mn3O4、Y2O3、WO3、Ta2O5、Nb2O5、La2O3等を挙げることができる。本発明においては、上記密着用微粒子のうちいずれか一種を使用しても良く、また、2種以上を混合して使用してもよい。さらに、上記密着用微粒子のうち、一種をコア微粒子とし、他の密着用微粒子により、コア微粒子を包含してシェルを形成するコアシェル構造としてもよい。本発明における密着用微粒子としては、なかでも、TiO2を用いることが最も好ましい。
本発明に用いられる応力緩和用微粒子に用いられる材料としては、焼成することにより多孔性の介在層を形成することが可能であるものであれば特に限定されず、上述した密着用微粒子と同様のものを用いることができる。
本発明に用いられる介在層は、上述した密着用微粒子および応力緩和用微粒子を含むものであれば、特に限定されるものではない。本発明に用いられる介在層における上記密着用微粒子および上記応力緩和用微粒子の質量比としては、介在層と後述する酸化物半導体層との間にクラックを生じることがない範囲であるなら特に限定されるものではないが、10:15〜10:90の範囲内とすることが好ましく、なかでも10:50〜10:90の範囲内とすることが好ましい。応力緩和微粒子の質量比が上記範囲よりも低いと、応力緩和能を発揮することができず、焼成時に介在層と後述する酸化物半導体層との間にクラックを生じたり、耐熱基板と多孔質層の密着性が大きくなり、上記耐熱基板と上記多孔質層との剥離が困難となる場合がある。また応力緩和微粒子の質量比が上記範囲より大きいと耐熱基板と多孔質層の密着性が低くなりすぎる場合があるからである。
なお、上記密着用微粒子および上記応力緩和用微粒子の質量比とは、上記介在層に含まれる上記密着用微粒子および上記応力緩和用微粒子の含有量の質量比をいう。
本発明に用いられる酸化物半導体層は、金属酸化物半導体微粒子を含むものである。以下、このような酸化物半導体層について説明する。
本発明に用いられる金属酸化物半導体微粒子に用いられる材料としては、焼成することにより多孔性の介在層を形成することが可能であり、後述する色素増感剤を担持することができ、かつ光照射により色素増感剤から生じた電荷を後述する第1透明電極層に伝導することができるような材料であれば特に限定されない。本発明においては、このような金属酸化物半導体微粒子の材料として、上述した密着用微粒子と同様のものを用いることができる。
また本発明においては、上記金属酸化物半導体微粒子として、粒径の異なる複数の金属酸化物半導体微粒子の混合物を用いても良い。粒径の異なる金属酸化物半導体微粒子の混合物を用いることにより、酸化物半導体層における光散乱効果を高めることができるため、例えば、本発明の酸化物半導体電極用積層体を用いて酸化物半導体電極としたものを、色素増感型太陽電池セルに用いた場合に、色素増感剤による光吸収を効率的に行うことが可能となる。したがって、本発明においては粒径の異なる金属酸化物半導体微粒子の混合物を用いることが特に好ましい。
このような粒径の異なる複数の金属酸化物半導体微粒子の混合物としては、同種類の金属酸化物半導体微粒子の混合物であっても良く、または異なる種類の金属酸化物半導体微粒子の混合物であってもよい。異なる粒径の組み合わせとしては、例えば、10nm〜50nmの範囲内にある金属酸化物半導体微粒子と、50nm〜200nmの範囲内にある金属酸化物半導体微粒子とを混合して用いる態様を挙げることができる。
なお空孔率の測定方法は、上記「(1)介在層」の項に記載した内容と同様の方法を用いることができるため、ここでの記載は省略する。
本発明に用いられる多孔質層は、酸化物半導体層と、上記酸化物半導体層上に形成され、密着用微粒子および応力緩和用微粒子を含む介在層とを有するものであれば限定されるものではない。
本発明における多孔質層には、後述する第1透明電極層を構成する金属酸化物が有する金属元素と同一の金属元素(以下、電極金属元素と称する場合がある。)を含むことが好ましい。上記多孔質層が、電極金属元素を含むことにより、本発明の酸化物半導体電極用積層体を導電性に優れたものにできるからである。
なお、本発明において上記「色素増感剤を含む」とは、多孔質層(介在層、および酸化物半導体層)に含まれる金属酸化物半導体微粒子、密着用微粒子、および応力緩和微粒子の表面に吸着していることを意味するものとする。
次に、本発明に用いられる耐熱基板は、多孔質層形成を行う焼成処理時の加熱温度に対する耐熱性を有するものであれば特に限定されない。このような耐熱基板としては、ガラス、セラミックス、または金属板等からなる耐熱基板を挙げることができる。なかでも本発明においては、耐熱基板として可撓性のある金属板を用いることが好ましい。このような耐熱基板を用いることにより、後述する焼成処理を十分に高温で行うことができるので、多孔質層を形成する金属酸化物半導体微粒子、密着用微粒子、および応力緩和微粒子の結着性を高くすることができるからである。また、上記耐熱基板は、リユースすることが好ましい。
本発明に用いられる第1透明電極層は、金属酸化物からなるものである。以下、このような第1透明電極層について説明する。
本発明に用いられる第1透明電極層を構成する金属酸化物としては、導電性に優れ、かつ後述する酸化還元対に対して耐性を示すものであれば特に限定はされない。なかでも本発明においては、太陽光の透過性に優れた材料を用いることが好ましい。色素増感型太陽電池セルは、通常、基材側から太陽光を受光する態様により使用されるため、上記金属酸化物が太陽光の透過性に乏しいと、本発明の酸化物半導体電極用積層体を用いて酸化物半導体電極とし、色素増感型太陽電池セルに用いた場合に、色素増感型太陽電池セルの発電効率が損なわれてしまうからである。
上記第1透明電極層は、単層からなる構成であっても良く、また、複数の層を積層した構成であっても良い。複数の層を積層した構成としては、例えば、仕事関数が互いに異なる層を積層する態様や、互いに異なる金属酸化物からなる層を積層する態様を挙げることができる。
なお、上記1電極層の厚みは、第1透明電極層が複数の層から構成される場合には、すべての層の厚みを合計した総厚みを指すものとする。
本発明の酸化物半導体電極用積層体は、転写方式により、酸化物半導体電極の製造に用いることができる。
本発明の酸化物半導体電極用積層体の製造方法は、上述した酸化物半導体電極用積層体の各構成を密着性良く積層する方法であれば特に限定されるものではない。本発明においては、例えば、耐熱基板上に介在層および酸化物半導体層からなる多孔質層を形成する多孔質層形成工程と、上記酸化物半導体層上に第1透明電極層を形成する第1透明電極層工程と、を有する方法により製造することができる。
上記多孔質層形成工程は、耐熱基板上に、介在層形成用層を形成する介在層形成用層形成工程と、上記介在層形成用層上に酸化物半導体層形成用層を形成する酸化物半導体層形成用層形成工程と、上記介在層形成用層および上記酸化物半導体層形成用層を焼成して、多孔質である介在層および酸化物半導体層からなる多孔質層を形成する焼成工程とを有するものである。以下、このような多孔質層形成工程について説明する。
本発明に用いられる介在層形成用層形成工程は、密着用微粒子および応力緩和用微粒子と、樹脂と、溶媒とを含む介在層形成用塗工液を耐熱基板上に塗工し、介在層形成用層を形成する工程である。以下このような工程について説明する。
本発明に用いられる酸化物半導体層形成用層形成工程は、介在層形成用層上に、金属酸化物半導体微粒子を含む酸化物半導体層形成用塗工液を塗布し、固化させて酸化物半導体層形成用層を形成する工程である。
本発明に用いられる焼成工程は、上記介在層形成用層および上記酸化物半導体層形成用層を焼成して多孔質体とすることで、介在層および酸化物半導体層を形成する工程である。
次に、第1透明電極層形成工程について説明する。第1透明電極層形成工程は、上記多孔質層上に、金属酸化物からなる透明電極層を形成するものである。
本発明の酸化物半導体電極用積層体の製造方法には、上記の工程以外に他の工程を含んでも良い。本発明に用いられる他の工程としては、多孔質層に色素増感剤を含有させる色素増感剤担持工程を挙げることができる。なお、色素増感剤担持工程により、本発明の酸化物半導体電極用積層体を色素増感型太陽電池セルに用いられる色素増感型太陽電池用基材の作製に使用することができる。以下、色素増感剤担持工程について説明する。
本発明に用いられる色素増感剤担持工程について説明する。本発明における色素増感剤担持工程は、上記多孔質層に色素増感剤を担持させる工程である。色素増感剤担持工程により、本発明の酸化物半導体電極用積層体を色素増感型太陽電池セルに用いられる色素増感型太陽電池用基材の作製に使用することができる。なお、本工程に用いられる色素増感剤は、上記「1.多孔質層」の、「(3)多孔質層」の項に記載したものと同様であるため、ここでの説明は省略する。
次に、本発明の耐熱基板付酸化物半導体電極について説明する。本発明の耐熱基板付酸化物半導体電極は、上述した酸化物半導体電極用積層体と、上記酸化物半導体電極用積層体が有する第1透明電極層上に形成され、熱可塑性樹脂からなる接着層と、上記接着層上に形成された基材と、を有するものである。
本発明に用いられる酸化物半導体電極用積層体は、上述した酸化物半導体電極用積層体である。上記酸化物半導体電極用積層体は、上記「A.酸化物半導体電極用積層体」の項に記載したものと同様のものを用いることができるため、ここでの説明は省略する。
次に、本発明の耐熱基板付酸化物半導体電極に用いられる接着層について説明する。本発明に用いられる接着層は、上記基材と、上述した酸化物半導体電極用積層体が有する第1透明電極層とを接着する機能を有する熱可塑性樹脂からなるものであり、酸化物半導体電極を転写法を用いて作製する際に、上述した多孔質層の転写性を向上させる機能を有するものである。以下このような接着層について説明する。
本発明に用いられる接着層における上記熱可塑性樹脂は、融点が50℃〜200℃
の範囲内であることが好ましく、特に60℃〜180℃の範囲内であることが好ましく、なかでも65℃〜150℃の範囲内であることが好ましい。本発明の耐熱基板付酸化物半導体電極を作成する場合は、上記熱可塑性樹脂により後述する基材と上記第1透明電極層とを熱融着することになるが、上記熱可塑性樹脂の融点が上記範囲よりも高いと熱融着させる際の加熱温度が高くなってしまい、後述する基材等が熱損傷を受けてしまう場合があるからである。また、融点が上記範囲よりも低いと、本発明の耐熱基板付酸化物半導体電極を用いた色素増感型太陽電池セルを屋外で使用した場合に、環境によっては接着層が溶融し、これに起因して、例えば、接着層上に形成された第1透明電極層の機能を損なってしまう可能性があるからである。
なお、本発明における上記「融点」は、示差走査熱量分析装置(DSC(Differential Scanning Calorimetry))により、10℃/分の昇温速度で得られたDSCカーブの吸熱ピークのピークトップ温度を意味するものとする。
ここで、本発明において上記共重合体は、シラノール触媒による架橋をしていてもしていなくてもどちらでもよい。
上記接着層には、必要に応じてシラン変性樹脂以外の他の化合物を含むことができる。本発明においては、このような他の化合物として熱可塑性樹脂を用いることが好ましく、なかでもポリオレフィン化合物(以下、添加用ポリオレフィン化合物と称する。)を用いることが好ましい。また、接着層に含まれる上記シラン変性樹脂として、ポリオレフィン化合物とエチレン性不飽和シラン化合物との共重合体を用いる場合には、このような添加用ポリオレフィン化合物として、上記共重合体に用いられるポリオレフィン化合物と化合物を用いることが好ましい。
本発明に用いられる接着層の厚みは、接着層を構成する熱可塑性樹脂の種類に応じて、必要な接着力を発現できる範囲内であれば特に限定されないが、通常、5μm〜300μmの範囲内が好ましく、特に10μm〜200μmの範囲内が好ましい。接着層の厚みが上記範囲よりも薄いと所望の接着力を得ることができない場合があり、また厚みが上記範囲よりも厚いと接着層により層間接着強度を十分に発現させるために過剰な加熱が必要となり、基材などへの熱ダメージが大きくなる場合があるからである。
次に、本発明に用いられる基材について説明する。本発明に用いられる基材は、本発明の耐熱基板付酸化物半導体電極の用途等に応じて、所望の透明性を有するものであれば特に限定されないが、通常、波長400nm〜1000nmの光に対する透過率が、78%以上であることが好ましく、80%以上であることがより好ましい。上記基材の透過率が上記範囲よりも低いと、例えば、本発明の耐熱基板付酸化物半導体電極を用いて色素増感型太陽電池セルを作成した場合に発電効率が損なわれてしまう可能性があるからである。
本発明の耐熱基板付酸化物半導体電極は、色素増感型光充電キャパシタ用電極の作製、エレクトロクロミックディスプレイ用電極の作製、汚染物質分解基板の作製、および色素増感型太陽電池用基材の作製等に用いることができるが、なかでも色素増感型太陽電池用基材の作製に好適に用いることができる。
本発明の耐熱基板付酸化物半導体電極の製造方法は、後述する「C.酸化物半導体電極」の項に記載した方法と同様の内容であるので、ここでの説明は省略する。
次に、本発明の酸化物半導体電極について説明する。本発明の酸化物半導体電極は、基材と、上記基材上に形成され、熱可塑性樹脂からなる接着層と、上記接着層上に形成され、金属酸化物からなる第1透明電極層と、上記第1透明電極層上に形成され、金属酸化物半導体微粒子を含む酸化物半導体層および、上記酸化物半導体層上に形成され、密着用微粒子および応力緩和用微粒子を含む介在層からなる多孔質層と、を有することを特徴とするものである。
このような酸化物半導体電極に用いられる基材、および接着層については、上記「B.耐熱基板付酸化物半導体電極」の項に記載したものと同様のものを用いることができる。
また、本発明に用いられる第1透明電極層、および多孔質層については、上記「A.酸化物半導体電極用積層体」の項に記載したものと同様のものを用いることができるため、ここでの記載は省略する。
まず、接着層および基材付与工程について説明する。本工程は、上述した酸化物半導体電極用積層体が有する第1透明電極層上に接着層および基材をこの順で積層し、耐熱基板付酸化物半導体電極とするものである。
また、本工程に用いられる基材としては、上記「B.耐熱基板付酸化物半導体電極」の「3.基材」の項に記載したものと同様のものを用いることができるため、ここでの説明は省略する。
次に、本発明に用いられる耐熱基板剥離工程について説明する。本工程は、図5(b)に示すように、耐熱基板付酸化物半導体電極20の多孔質層4から、耐熱基板1を剥離し、酸化物半導体電極30を作製する工程である。
本発明の酸化物半導体電極の製造方法には、上記の工程以外に他の工程を含んでも良い。本発明に用いられる他の工程としては、多孔質層のパターニングを行う、パターニング工程と、多孔質層に色素増感剤を含有させる色素増感剤担持工程を挙げることができる。なお、色素増感剤担持工程により、本発明の酸化物半導体電極を、色素増感型太陽電池セルに用いられる色素増感型太陽電池用基材とすることができる。以下、これらの工程について説明する。
まず、本発明に用いられるパターニング工程について説明する。本発明におけるパターニング工程は、多孔質層のパターニングを実施する工程である。
次に、本発明に用いられる色素増感剤担持工程について説明する。本発明における色素増感剤担持工程は、上記多孔質層に色素増感剤を担持させる工程である。色素増感剤担持工程により、本発明の酸化物半導体電極を色素増感型太陽電池セルに用いられる色素増感型太陽電池用基材とすることができる。なお、本工程に用いられる色素増感剤は、上記「A.酸化物半導体電極用積層体」の、「1.多孔質層」の項に記載したものと同様であるため、ここでの説明は省略する。
本発明の色素増感型太陽電池セルは、上記多孔質層に含まれる上記金属酸化物半導体微粒子の表面に色素増感剤が吸着した、上述した酸化物半導体電極の多孔質層と、第2透明電極層および対向基材からなる対電極基材の第2透明電極層とが、酸化還元対を含む電解質層を介して、対向配置されていることを特徴とするものである。
本発明に用いられる酸化物半導体電極は、上記「C.酸化物半導体電極」の項に記載したものと同様の内容である。
また上記酸化物半導体電極の多孔質層に含まれる金属酸化物半導体微粒子に担持される色素増感剤は、上記「A.酸化物半導体電極用積層体」の「1.多孔質層」項に記載したものと同様の内容であるので、ここでの説明は省略する。
次に本発明における対電極基材について説明する。本発明における対電極基材は、第2透明電極層および対向基材からなるものである。
本発明における第2透明電極層は、上記「A.酸化物半導体電極用積層体」の、「3.第1透明電極層」の項に記載したものと同様であるため、ここでの説明は省略する。
本発明における対向基材は、上記「B.耐熱基板付酸化物半導体電極」の、「3.基材」の項に記載したものと同様であるため、ここでの説明は省略する。
本発明における対電極基材には必要に応じて、上記以外のその他の層を含んでも良い。本発明に用いられるその他の層としては、触媒層を挙げることができる。本発明においては、上記第2透明電極層上に触媒層を形成することにより、本発明の色素増感型太陽電池セルをより発電効率に優れたものにできる。このような触媒層の例としては、上記第2透明電極層上にPtを蒸着した態様を挙げることができるが、この限りではない。
次に、本発明における電解質層について説明する。本発明における電解質層は、酸化還元対を含むことを特徴とするものである。
本発明における電解質層に用いられる酸化還元対としては、一般的に電解質層において用いられているものであれば特に限定はされない。具体的には、ヨウ素およびヨウ化物の組合せ、臭素および臭化物の組合せであることが好ましい。例えば、ヨウ素およびヨウ化物の組合せとしては、LiI、NaI、KI、CaI2等の金属ヨウ化物と、I2との組合せを挙げることができる。さらに、臭素および臭化物の組み合わせとしては、LiBr、NaBr、KBr、CaBr2等の金属臭化物と、Br2との組合せを挙げることができる。
本発明における電解質層には、上記酸化還元対以外のその他の化合物として、架橋剤、光重合開始剤、増粘剤、常温融解塩等の添加剤を含有していても良い。
本発明における電解質層は、ゲル状、固体状または液体状のいずれの形態からなる電解質層であってもよい。電解質層をゲル状とした場合には、物理ゲルと化学ゲルのいずれであってもよい。ここで、物理ゲルは物理的な相互作用によって室温付近でゲル化しているものであり、化学ゲルは架橋反応などにより化学結合でゲルを形成しているものである。
また、電解質層を液体状とした場合には、例えば、アセトニトリル、メトキシアセトニトリル、炭酸プロピレンなどを溶媒とし、酸化還元対を含んだものや、同じくイミダゾリウム塩をカチオンとするイオン性液体を溶媒とすることができる。
さらに、電解質層を固体状とした場合には、酸化還元対を含まずにそれ自身が正孔輸送剤として機能するものであればよく、例えばCuI、ポリピロール、ポリチオフェンなどを含む正孔輸送剤であってもよい。
本発明の色素増感型太陽電池セルは、上記多孔質に含まれる密着用微粒子および応力緩和用微粒子の表面に色素増感剤が吸着したものであってもよい。本発明の色素増感型太陽電池セルの光電変換をより高いものとすることができるからである。
次に本発明の色素増感型太陽電池セルの製造方法について説明する。本発明の色素増感型太陽電池セルは、上述した酸化物半導体電極が有する多孔質層と、上記対電極基材が有する第2電極基材との間に電解質層を形成することにより作製する。
また第2の方法としては、上記多孔質層と、対電極基材が有する第2透明電極層とが対向するように所定の間隙を有して配置させ、その間隙に、電解質層形成用組成物を注入することにより、電解質層を形成する注入法が好ましい。以下、このような塗布法および注入法について説明する。
まず、電解質層形成用組成物を、上述した酸化物半導体電極が有する多孔質層上に塗布し、乾燥させることにより電解質層を形成した後に、対電極基材を付与する塗布法について説明する。このような方法により、主に固体状の電解質層を形成することができる。
次に、上述した酸化物半導体電極が有する多孔質層と、対電極基材が有する第2透明電極層とが対向するように所定の間隙を有して配置させ、その間隙に、電解質層形成用組成物を注入することにより、電解質層を形成する注入法について説明する。
次に、本発明の色素増感型太陽電池モジュールについて説明する。本発明の色素増感型太陽電池モジュールは、上記色素増感型太陽電池セルが用いられたことを特徴とするものである。
なお、図8においては、上記色素増感型太陽電池モジュールが、上記色素増感型太陽電池セルを複数有するものについて例示したが、上記色素増感型太陽電池セルを1つだけ有するものであっても良い。
また、各々の色素増感型太陽電池セルは、上記基材および対向基材を共有するものであっても良く、個別に有するものであっても良い。本発明においては、なかでも、上記基材および対向基材を共有するものであることが好ましい。本発明の色素増感型太陽電池モジュールを、機械強度に優れたものとすることができるからである。
1.多孔質層の形成
(1)介在層形成層の形成
密着用微粒子として粒径20nmのTiO2微粒子(日本アエロジル)2.5質量%および応力緩和用微粒子として粒径500nmのTiO2微粒子(昭和電工)12.7質量%と、エチルセルロース(日新化成)10.6質量%と、ターピネオール74.2質量%とを混合し、介在層形成用塗工液とした。
上記介在層形成用塗工液を耐熱基板として用意したガラス基板(厚み1mm)上にスクリーン印刷法により、塗工した後、120℃において10分で乾燥させ、介在層形成用層を形成した。
次いで、酸化物半導体層形成用塗工液として、Solaronix SA社製Ti Nanoxide T/SPを、介在層形成用層が形成されたガラス基板上にスクリーン印刷法にて積層した。室温下にて20分放置の後100℃、30分間乾燥させ、酸化物半導体層形成用層を形成した。
次いで、耐熱基板上に形成された上記介在層形成用層および酸化物半導体層形成用層を、電気マッフル炉(デンケン社製P90)を用い500℃、30分間、大気圧雰囲気下にて焼成した。これにより、多孔質体として形成された介在層および酸化物半導体層を得た。
この焼成時において、介在層および酸化物半導体層の間でクラックが発生することはなかった。
その後、エタノールに塩化インジウム0.1mol/l、塩化スズ0.005mol/lを溶解した塗工液を用意し、上記焼成を行ったガラス基板を、酸化物半導体層を上向きにし、ホットプレート(400℃)上へ設置し、この加熱された酸化物半導体層上に、上述の塗工液を超音波噴霧器により噴霧し、第1透明電極層である厚さ500nmのITO膜を形成し、酸化物半導体電極用積層体を得た。
基材として用意したPETフィルム(東洋紡E5100、厚さ125μm)上にヒートシール剤(東洋紡 MD1985)を塗布、風乾させた。上記基材のヒートシール剤と上記酸化物半導体電極用積層体の第1透明電極層であるITO膜とを接触させ、120℃でラミネートすることで耐熱基板付酸化物半導体電極を得た。
次いで、耐熱基板を剥離することでITO膜、酸化物半導体層、および介在層を基材へと転写し、酸化物半導体層電極を得た。
次いで、色素増感剤としてルテニウム錯体(小島化学株式会社RuL2(NCS)2)を無水エタノール溶液に濃度3×10−4mol/lとなるように溶解させ、吸着用色素溶液を作製し、上記酸化物半導体電極を浸漬することにより介在層および酸化物半導体層に色素増感剤を担持させた、色素増感型太陽電池用基材を作製した。
メトキシアセトニトリルを溶媒とし、濃度0.1mol/lのヨウ化リチウム、濃度0.05mol/lのヨウ素、濃度0.3mol/lのジメチルプロピルイミダゾリウムアイオダイド、濃度0.5mol/lのターシャリーブチルピリジンを溶解させたものを電解質層形成用組成物とした。
作製した色素増感型太陽電池セルの評価は、AM1.5、擬似太陽光(入射光強度100mW/cm2)を光源として、色素増感剤を吸着させた多孔質層を有する色素増感型太陽電池用基板側から入射させ、ソースメジャーユニット(ケースレー2400型)にて電圧印加により電流電圧特性を測定した。その結果、短絡電流15.2mA/cm2、開放電圧710mV、変換効率6.2%であった。
密着用微粒子として粒径20nmのTiO2微粒子(日本アエロジル)5.1質量%および応力緩和用微粒子として粒径500nmのTiO2微粒子(昭和電工)10.1質量%と、エチルセルロース(日新化成)10.6質量%と、ターピネオール74.2質量%とを混合し、介在層形成用塗工液とした以外は、実施例1と同様にして色素増感型太陽電池セルを作製した。
また、得られた色素増感型太陽電池セルについて、実施例1と同様の評価を行ったところ、短絡電流14.9mA/cm2、開放電圧707mV、変換効率6.0%であった。
密着用微粒子として粒径20nmのTiO2微粒子(日本アエロジル)1.6質量%および応力緩和用微粒子として粒径500nmのTiO2微粒子(昭和電工)13.6質量%と、エチルセルロース(日新化成)10.6質量%と、ターピネオール74.2質量%とを混合し、介在層形成用塗工液とした以外は、実施例1と同様にして色素増感型太陽電池セルを作製した。
また、得られた色素増感型太陽電池セルについて、実施例1と同様の評価を行ったところ、短絡電流15.6mA/cm2、開放電圧693mV、変換効率5.9%であった。
応力緩和用微粒子である粒径500nm(昭和電工)15.2質量%と、エチルセルロース(日新化成)10.6質量%と、ターピネオール74.2質量%とを混合し、密着用微粒子を添加せずに介在層形成用塗工液を作製し、上記介在層形成用塗工液を用いて、介在層形成用層を形成した以外は、実施例1と同様にして、酸化物半導体電極用積層体を作製した。
しかし、上記酸化物半導体電極用積層体を作製する際の焼成時に、酸化物半導体層にクラックが入り、剥離してしまい、次の工程に移行することができなかった。
密着用微粒子として粒径20nmのTiO2微粒子(日本アエロジル)15.2質量%と、エチルセルロース(日新化成)10.6質量%と、ターピネオール74.2質量%とを混合し、応力緩和用微粒子を添加せずに介在層形成用塗工液を作製し、上記介在層形成用塗工液を用いて、介在層形成用層を形成した以外は、実施例1と同様にして、耐熱基板付酸化物半導体電極を作製した。
しかし、上記耐熱基板付酸化物半導体電極において、酸化物半導体層と、耐熱基板とが強く密着しており、耐熱基板を剥離することができず、ITO膜、酸化物半導体層、および介在層を基材へと転写することができなかった。
2 … 介在層
3 … 酸化物半導体層
4 … 多孔質層
5 … 第1透明電極層
6 … 接着層
7 … 基材
10 … 酸化物半導体電極用積層体
20 … 耐熱基板付酸化物半導体電極
30 … 酸化物半導体電極
31 … 電解質層
40 … 色素増感型太陽電池セル
41 … 第2透明電極層
42 … 対向基材
43 … 対電極基材
50 … パターニング基材
51 … 基材
52 … 熱溶融性樹脂層
60 … 色素増感型太陽電池モジュール
Claims (5)
- 耐熱基板と、前記耐熱基板上に形成され、密着用微粒子および応力緩和用微粒子を含む介在層、および前記介在層上に形成され、金属酸化物微粒子を含む酸化物半導体層からなる多孔質層と、前記多孔質層上に形成され、金属酸化物からなる第1透明電極層と、を有する酸化物半導体電極用積層体であって、
前記応力緩和用微粒子の粒径は、前記密着用微粒子の粒径および前記金属酸化物微粒子の粒径より大きく、
前記密着用微粒子および前記応力緩和用微粒子の質量比が10:15〜10:90であることを特徴とする酸化物半導体電極用積層体。 - 請求項1に記載の酸化物半導体電極用積層体と、前記酸化物半導体電極用積層体が有する第1透明電極層上に形成され、熱可塑性樹脂からなる接着層と、前記接着層上に形成された基材と、を有することを特徴とする耐熱基板付酸化物半導体電極。
- 基材と、前記基材上に形成され、熱可塑性樹脂からなる接着層と、前記接着層上に形成され、金属酸化物からなる第1透明電極層と、前記第1透明電極層上に形成され、金属酸化物半導体微粒子を含む酸化物半導体層および、前記酸化物半導体層上に形成され、密着用微粒子および応力緩和用微粒子を含む介在層からなる多孔質層と、を有し、
前記応力緩和用微粒子の粒径は、前記密着用微粒子の粒径および前記金属酸化物微粒子の粒径より大きく、
前記密着用微粒子および前記応力緩和用微粒子の質量比が10:15〜10:90であることを特徴とする酸化物半導体電極。 - 請求項3に記載の酸化物半導体電極の多孔質層であって、
前記多孔質層に含まれる前記金属酸化物半導体微粒子の表面に色素増感剤が吸着した多孔質層と、第2透明電極層および対向基材からなる対電極基材の第2透明電極層とが、酸化還元対を含む電解質層を介して、対向配置されていることを特徴とする色素増感型太陽電池セル。 - 請求項4に記載の色素増感型太陽電池セルが用いられたことを特徴とする色素増感型太陽電池モジュール。
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