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JP5200398B2 - 酸化物半導体電極用積層体、耐熱基板付酸化物半導体電極、酸化物半導体電極、色素増感型太陽電池セル、および色素増感型太陽電池モジュール - Google Patents

酸化物半導体電極用積層体、耐熱基板付酸化物半導体電極、酸化物半導体電極、色素増感型太陽電池セル、および色素増感型太陽電池モジュール Download PDF

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Description

本発明は、色素増感型太陽電池セルの構成部材である酸化物半導体電極の製造に用いられる酸化物半導体電極用積層体に関するものである。
二酸化炭素が原因とされる地球温暖化が世界的に問題となっている近年、環境にやさしく、クリーンなエネルギー源として、太陽光エネルギーを利用した太陽電池が注目され、積極的な研究開発が進められている。このような太陽電池として、単結晶シリコン太陽電池、多結晶シリコン太陽電池、アモルファスシリコン太陽電池などが既に実用化されているが、環境負荷が小さく、かつ、低コスト化の可能性のある太陽電池として、色素増感型太陽電池が注目され研究開発が進められている。
色素増感型太陽電池は、例えば、光の入射する側から、透明基板、この透明基板上に形成された透明電極、色素増感剤が担持された酸化物半導体層、電解質を有する電解質層、および対電極基板が順に積層されてセルが形成される。
色素増感型太陽電池、とりわけグレッチェルセルの特徴は、ナノ微粒子である酸化チタンを焼成させた多孔質の酸化物半導体層を用いることである。酸化物半導体層を多孔質とすることで増感色素の吸着量が増加し光吸収能を向上させることができる。
このような色素増感型太陽電池において、例えば、透明基板としてガラス基板を用いた場合は、多孔質膜を形成するために400℃〜600℃での焼成を行うことが可能であるが、ガラス基板よりも耐熱性が劣るフィルム基板を用いた場合は、フィルム基板の耐熱温度以下で焼成しなければならず、金属酸化物半導体微粒子間の結合力が不充分となるため、光励起により生じた電子における増感色素から酸化物半導体層、および透明電極への伝達経路が十分に確保できないことがあった。また、フィルム基板と酸化物半導体層との密着性も充分でなくフィルム基板の可撓性に追従できずに多孔質膜の剥離や亀裂が生じるといった不都合があった。
このような問題点に対し、例えば、特許文献1には、耐熱性基板上に酸化物半導体および/またはその前駆体を含む層を形成させ、これを加熱焼成して得られる酸化物半導体膜を、被転写基板上に転写することを特徴とする酸化物半導体電極の製造方法が開示されている。
この方法によれば、耐熱性基板上に酸化物半導体および/またはその前駆体を含む層が形成されたものを転写体として用いる。この転写体の製造段階においては、耐熱性基板を用いていることにより高温域での加熱焼成が可能であり、金属酸化物半導体微粒子間において充分な結合性を有する酸化物半導体膜の形成が可能である。また、被転写基板においては、既に転写体の製造段階で酸化物半導体膜の加熱焼成が行われていることから、高温域での加熱焼成が施されることはない。したがって、被転写基板においては、その形状を一定に保つ支持材として、多少耐熱性に劣るフィルム基板を用いることができる。
しかしながら、特許文献1による製造方法においては、有機物からなる有機膜を介して耐熱性基板上に酸化物半導体膜を形成していたが、焼成処理後において、有機膜に含有された有機物と、酸化物半導体膜に含有された金属酸化物半導体微粒子とを密着性良く形成することは困難であった。また、酸化物半導体膜を直接耐熱性基板上に形成した場合には、両者の密着性が著しく高いために、高い密着性を有して酸化物半導体膜が形成された耐熱性基板を用いて、基材上に酸化物半導体膜を形成する際、酸化物半導体膜から耐熱性基板を剥離することが難しく、良好に基材上に酸化物半導体膜を形成することができなかった。
このような問題に対して、特許文献2においては、耐熱基板上に金属酸化物半導体微粒子を含む介在層を介して酸化物半導体層を形成することにより、耐熱基板上に適度な密着性を有して酸化物半導体膜を形成することができることが開示されている。しかしながら、特許文献2に開示された方法によっても、介在層と酸化物半導体層との間にクラックを生じる可能性があるといった問題が残っていた。そのため、これを転写体として用い、被転写基板上に、精度良く酸化物半導体膜を転写させることは困難であった。このようなことから、歩留まりの向上および転写不良の改善等が求められていた。
特開2002−184475号公報 特開2005−166648号公報
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、歩留まり良く製造できる酸化物半導体電極用積層体、およびこれを用いた酸化物半導体電極を提供することを主目的とするものである。
上記課題を達成するために、本発明は、耐熱基板と、上記耐熱基板上に形成され、密着用微粒子および応力緩和用微粒子を含む介在層、および上記介在層上に形成され、金属酸化物微粒子を含む酸化物半導体層からなる多孔質層と、上記多孔質層上に形成され、金属酸化物からなる第1透明電極層と、を有する酸化物半導体電極用積層体であって、上記応力緩和用微粒子の粒径は、上記密着用微粒子の粒径および上記金属酸化物微粒子の粒径より大きいことを特徴とする酸化物半導体電極用積層体を提供する。
本発明によれば、上記介在層が、上記応力緩和微粒子と密着用微粒子を含むことにより、上記介在層と、上記酸化物半導体層とからなる上記多孔質層を、焼成により形成する際に、上記介在層と上記酸化物半導体層との間にクラックを生じることなく形成することができる。したがって、酸化物半導体電極用積層体を、歩留まり良く製造できる。また、転写方式により酸化物半導体電極を形成する際に、転写不良が少ないものとすることができる。
上記発明においては、上記密着用微粒子および上記応力緩和用微粒子の質量比が10:15〜10:90であること好ましい。上記密着用微粒子と上記緩和用微粒子の質量比がこのような範囲にあることにより、上記本発明の酸化物半導体電極用積層体の多孔質層を、焼成により形成する際に、上記介在層と上記酸化物半導体層との間にクラックを生じることがなく、かつ上記耐熱基板と上記多孔質層とを適度な密着性で接着させることができるからである。したがって、転写方式により酸化物半導体電極とする際に、剥離不良を生じることなく耐熱基板を剥離することができるからである。
本発明は、上記本発明の酸化物半導体電極用積層体と、上記酸化物半導体電極用積層体が有する第1透明電極層上に形成され、熱可塑性樹脂からなる接着層と、上記接着層上に形成された基材と、を有することを特徴とする耐熱基板付酸化物半導体電極を提供する。
本発明によれば、上記本発明の酸化物半導体電極用積層体を用いることにより、転写不良の少ない耐熱基板付酸化物半導体電極とすることができる。また、本発明の耐熱基板付酸化物半導体電極から耐熱基板を剥離することにより、色素増感型太陽電池の構成部材等として使用可能な酸化物半導体電極を容易に得ることができる。
本発明は、基材と、上記基材上に形成され、熱可塑性樹脂からなる接着層と、上記接着層上に形成され、金属酸化物からなる第1透明電極層と、上記第1透明電極層上に形成され、金属酸化物半導体微粒子を含む酸化物半導体層および、上記酸化物半導体層上に形成され、密着用微粒子および応力緩和用微粒子を含む介在層からなる多孔質層と、を有することを特徴とする酸化物半導体電極を提供する。
本発明によれば、上記介在層が密着用微粒子および応力緩和用微粒子を含むことにより、品質面およびコスト面において有利な酸化物半導体電極を得ることができる。
本発明は、上記多孔質層に含まれる上記金属酸化物半導体微粒子の表面に色素増感剤が吸着した、上記本発明の酸化物半導体電極の多孔質層と、第2透明電極層および対向基材からなる対電極基材の第2透明電極層とが、酸化還元対を含む電解質層を介して、対向配置されていることを特徴とする色素増感型太陽電池セルを提供する。
本発明によれば、上記本発明の酸化物半導体電極を用いることにより、品質面およびコスト面において有利な色素増感型太陽電池セルを得ることができる。
本発明は、上記色素増感型太陽電池セルが用いられたことを特徴とする色素増感型太陽電池モジュールを提供する。
本発明によれば、上記色素増感型太陽電池セルが用いられたことにより、品質面およびコスト面において有利なものとすることができる。
本発明は、歩留まり良く製造できる酸化物半導体電極用積層体、およびこれを用いた酸化物半導体電極を提供するといった効果を奏する。
本発明は、歩留まり良く製造できる酸化物半導体電極用積層体、その酸化物半導体電極用積層体を用いた耐熱基板付酸化物半導体電極および酸化物半導体電極、その酸化物半導体電極を用いた色素増感型太陽電池セル、および色素増感型太陽電池モジュールに関するものである。
以下、本発明の酸化物半導体電極用積層体、耐熱基板付酸化物半導体電極、酸化物半導体電極、色素増感型太陽電池セル、および色素増感型太陽電池モジュールについて詳細に説明する。
A.酸化物半導体電極用積層体
まず、本発明の酸化物半導体電極用積層体について説明する。本発明の酸化物半導体電極用積層体は、耐熱基板と、上記耐熱基板上に形成され、密着用微粒子および応力緩和用微粒子を含む介在層、および上記介在層上に形成され、金属酸化物微粒子を含む酸化物半導体層からなる多孔質層と、上記多孔質層上に形成され、金属酸化物からなる第1透明電極層と、を有する酸化物半導体電極用積層体であって、上記応力緩和用微粒子の粒径は、上記密着用微粒子の粒径および上記金属酸化物微粒子の粒径より大きいことを特徴とするものである。
このような本発明の酸化物半導体電極用積層体について図を参照しながら説明する。図1は本発明の酸化物半導体電極用積層体の一例を示す概略断面図である。図1に例示するように本発明の酸化物半導体電極用積層体10は、耐熱基板1と、上記耐熱基板上に形成され、密着用微粒子および応力緩和用微粒子を含む介在層2、および上記介在層2上に形成され、金属酸化物微粒子を含む酸化物半導体層3からなる多孔質層4と、上記多孔質層4上に形成され、金属酸化物からなる第1透明電極層5と、を有するものである。
本発明によれば、上記介在層が、上記応力緩和微粒子と密着用微粒子を含むことにより、上記介在層と、上記酸化物半導体層とからなる上記多孔質層を、焼成により形成する際に、上記介在層と上記酸化物半導体層との間にクラックを生じることなく形成することができる。したがって、酸化物半導体電極用積層体を、歩留まり良く製造できる。また、転写方式により酸化物半導体電極を形成する際に、転写不良が少ないものとすることができる。
本発明の酸化物半導体電極用積層体は、耐熱基板、多孔質層、および第1透明電極層を有するものである。以下、このような各構成について詳細に説明する。
1.多孔質層
まず、本発明に用いられる多孔質層について説明する。本発明に用いられる多孔質層は、密着用微粒子および応力緩和用微粒子を含む介在層と、金属酸化物微粒子を含む酸化物半導体層とからなるものである。また、上記介在層と、上記酸化物半導体層とは、本発明により製造された酸化物半導体電極用積層体を用いて酸化物半導体電極としたものを、色素増感型太陽電池セルを作製した際に、多孔質体である介在層および酸化物半導体層の細孔に担持させた色素増感剤が、光照射により色素増感剤から生じた電荷を第1透明電極層に伝導する部材として機能するものである。以下、このような多孔質層について介在層と、酸化物半導体層とに分けて説明する。
(1)介在層
本発明に用いられる介在層は、密着用微粒子および応力緩和用微粒子を含むものである。ここで、上記応力緩和用微粒子の粒径は、上記密着用微粒子の粒径および上記金属酸化物微粒子の粒径より大きいものである。
(a)密着用微粒子
本発明に用いられる密着用微粒子について説明する。本発明に用いられる密着用微粒子に用いられる材料としては、焼成することにより多孔性の介在層を形成することが可能であるものであれば特に限定されないが、TiO、ZnO、SnO、ITO、ZrO、MgO、Al、CeO、Bi、Mn、Y、WO、Ta、Nb、La等を挙げることができる。本発明においては、上記密着用微粒子のうちいずれか一種を使用しても良く、また、2種以上を混合して使用してもよい。さらに、上記密着用微粒子のうち、一種をコア微粒子とし、他の密着用微粒子により、コア微粒子を包含してシェルを形成するコアシェル構造としてもよい。本発明における密着用微粒子としては、なかでも、TiOを用いることが最も好ましい。
上記密着用微粒子の粒径としては、後述する応力緩和用微粒子の粒径より小さいものであれば特に限定はされない。このような密着用微粒子の粒径としては、1nm〜150nmの範囲内が好ましく、特に10nm〜50nmの範囲内であることが好ましい。上記範囲より小さいと、各々の密着用微粒子が凝集し二次粒子を形成してしまう場合があり、また上記範囲より大きいと多孔質層と耐熱基板の密着性が低くなりすぎるからである。
本発明に用いられる密着用微粒子は、同一の粒径の密着用微粒子からなるものであってもよく、異なる粒径の密着用微粒子を2種以上混合したものであってもよい。本発明の酸化物半導体電極の用途に応じて適宜選択することができる。
(b)応力緩和用微粒子
本発明に用いられる応力緩和用微粒子に用いられる材料としては、焼成することにより多孔性の介在層を形成することが可能であるものであれば特に限定されず、上述した密着用微粒子と同様のものを用いることができる。
上記応力緩和用微粒子の粒径としては、上述した密着用微粒子の粒径より大きいものであれば特に限定はされない。このような応力緩和用微粒子の粒径としては、150nm〜1000nmの範囲内が好ましく、特に150nm〜500nmの範囲内であることが好ましい。上記範囲よりも小さいと応力緩和能が低下し、焼成時に介在層と後述する酸化物半導体層との間にクラックを生じる可能性があるためであり、また粒径が上記範囲より大きいと、介在層が厚膜化してしまうだけではなく、耐熱基板と多孔質層の密着性が低くなりすぎる場合があるからである。
本発明に用いられる応力緩和用微粒子は、同一の粒径の応力緩和微粒子からなるものであってもよく、異なる粒径の応力緩和微粒子を2種以上混合したものであってもよい。本発明の酸化物半導体電極の用途に応じて適宜選択することができる。
(c)介在層
本発明に用いられる介在層は、上述した密着用微粒子および応力緩和用微粒子を含むものであれば、特に限定されるものではない。本発明に用いられる介在層における上記密着用微粒子および上記応力緩和用微粒子の質量比としては、介在層と後述する酸化物半導体層との間にクラックを生じることがない範囲であるなら特に限定されるものではないが、10:15〜10:90の範囲内とすることが好ましく、なかでも10:50〜10:90の範囲内とすることが好ましい。応力緩和微粒子の質量比が上記範囲よりも低いと、応力緩和能を発揮することができず、焼成時に介在層と後述する酸化物半導体層との間にクラックを生じたり、耐熱基板と多孔質層の密着性が大きくなり、上記耐熱基板と上記多孔質層との剥離が困難となる場合がある。また応力緩和微粒子の質量比が上記範囲より大きいと耐熱基板と多孔質層の密着性が低くなりすぎる場合があるからである。
なお、上記密着用微粒子および上記応力緩和用微粒子の質量比とは、上記介在層に含まれる上記密着用微粒子および上記応力緩和用微粒子の含有量の質量比をいう。
本発明における介在層の膜厚としては、後述する酸化物半導体層を耐熱基板上に適度な密着性を有して形成することを可能とする膜厚であれば特に限定はされないが、0.01μm〜30μmの範囲内、なかでも、0.05μm〜6μmの範囲内であることが好ましい。上記範囲よりも厚いと介在層の凝集破壊が起り易くなることによって、本発明の酸化物半導体電極用積層体の生産性が低下する可能性があるからである。
また、本発明に用いられる介在層は、後述する酸化物半導体層上に形成されるものであるが、上記酸化物半導体層上に均一に形成されている必要は無い。すなわち、上記介在層の形態は、本発明の酸化物半導体電極用積層体を用いて酸化物半導体電極を作製する際に、上記介在層に接着した耐熱基板を剥離する際の剥離態様に依存するものであり、上記剥離態様に応じて、例えば、介在層が厚み分布を有していてもよく、または、酸化物半導体層上に介在層が存在しない部分があっても良い。
上記介在層の空孔率としては、本発明の酸化物半導体電極用積層体を用いて酸化物半導体電極を製造する際に、後述する耐熱基板が剥離可能なものであれば特に限定されないが、通常、上記酸化物半導体層の空孔率より大きいものが用いられる。本発明においては、上記介在層の空孔率は、25%〜65%の範囲内であることが好ましく、なかでも、30%〜60%の範囲内であることが好ましい。介在層の空孔率が上記範囲よりも小さいと、耐熱基板との密着力が高くなるため、本発明の酸化物半導体電極用積層体を用いて酸化物半導体電極を製造する際に、後述する耐熱基板の剥離が困難となり生産性に欠けてしまう可能性がある。また上記範囲よりも大きいと、均質な介在層を形成することが困難になる場合があるからである。
なお、本発明における空孔率とは単位体積当たりの密着用微粒子および応力緩和用微粒子の非占有率のことを示す。上記空孔率の測定方法としては、細孔容積をガス吸着量測定装置(Autosorb−1MP;Quantachrome製)にて測定し、単位面積あたりの体積との比率から算出する。
(2)酸化物半導体層
本発明に用いられる酸化物半導体層は、金属酸化物半導体微粒子を含むものである。以下、このような酸化物半導体層について説明する。
(a)金属酸化物半導体微粒子
本発明に用いられる金属酸化物半導体微粒子に用いられる材料としては、焼成することにより多孔性の介在層を形成することが可能であり、後述する色素増感剤を担持することができ、かつ光照射により色素増感剤から生じた電荷を後述する第1透明電極層に伝導することができるような材料であれば特に限定されない。本発明においては、このような金属酸化物半導体微粒子の材料として、上述した密着用微粒子と同様のものを用いることができる。
本発明に用いられる金属酸化物半導体微粒子の粒径としては、上述した応力緩和用微粒子より粒径が小さく、かつ酸化物半導体層中に所望の表面積を得ることができる範囲内であれば特に限定はされないが、通常、1nm〜10μmの範囲内が好ましく、特に10nm〜1000nmの範囲内であることが好ましい。粒径が上記範囲よりも小さいと各々の金属酸化物半導体微粒子が凝集し二次粒子を形成してしまう場合があり、また粒径が上記範囲より大きいと、酸化物半導体層が厚膜化してしまうだけではなく、酸化物半導体層の空孔率、すなわち比表面積が減少し、例えば、本発明の酸化物半導体電極用積層体を用いて酸化物半導体電極としたものを、色素増感型太陽電池セルに用いた場合に、酸化物半導体層に光電変換するのに十分な色素増感剤を担持することができない場合があるからである。
(b)酸化物半導体層
また本発明においては、上記金属酸化物半導体微粒子として、粒径の異なる複数の金属酸化物半導体微粒子の混合物を用いても良い。粒径の異なる金属酸化物半導体微粒子の混合物を用いることにより、酸化物半導体層における光散乱効果を高めることができるため、例えば、本発明の酸化物半導体電極用積層体を用いて酸化物半導体電極としたものを、色素増感型太陽電池セルに用いた場合に、色素増感剤による光吸収を効率的に行うことが可能となる。したがって、本発明においては粒径の異なる金属酸化物半導体微粒子の混合物を用いることが特に好ましい。
このような粒径の異なる複数の金属酸化物半導体微粒子の混合物としては、同種類の金属酸化物半導体微粒子の混合物であっても良く、または異なる種類の金属酸化物半導体微粒子の混合物であってもよい。異なる粒径の組み合わせとしては、例えば、10nm〜50nmの範囲内にある金属酸化物半導体微粒子と、50nm〜200nmの範囲内にある金属酸化物半導体微粒子とを混合して用いる態様を挙げることができる。
上記酸化物半導体層の膜厚としては、本発明の酸化物半導体電極用積層体を用いて色素増感型太陽電池セルとした際に、光照射により色素増感剤により生じた電荷を伝導する機能を十分に得ることができるのであれば特に限定はされない。本発明においては、1μm〜65μmの範囲内、なかでも、5μm〜30μmの範囲内であることが好ましい。上記範囲より薄いと、上記酸化物半導体層に所望量の色素増感剤を含むことができなくなる可能性があるからである。また上記範囲より厚いと、後述する第1透明電極層上に均一に形成することが困難となるからである。
上記酸化物半導体層の空孔率としては、10%〜60%の範囲内であることが好ましく、なかでも、20%〜50%の範囲内であることが好ましい。例えば、本発明の酸化物半導体電極用積層体を用いて酸化物半導体電極とし、色素増感型太陽電池セルに用いた場合に、酸化物半導体層の空孔率が上記範囲よりも小さいと、比表面積が小さくなるため、色素増感剤を含んだ多孔質層が太陽光などを有効に吸収できなくなる可能性があり、また上記範囲よりも大きいと、酸化物半導体層に所望量の色素増感剤を含むことができなくなる可能性があるからである。
なお空孔率の測定方法は、上記「(1)介在層」の項に記載した内容と同様の方法を用いることができるため、ここでの記載は省略する。
(3)多孔質層
本発明に用いられる多孔質層は、酸化物半導体層と、上記酸化物半導体層上に形成され、密着用微粒子および応力緩和用微粒子を含む介在層とを有するものであれば限定されるものではない。
本発明における多孔質層には、後述する第1透明電極層を構成する金属酸化物が有する金属元素と同一の金属元素(以下、電極金属元素と称する場合がある。)を含むことが好ましい。上記多孔質層が、電極金属元素を含むことにより、本発明の酸化物半導体電極用積層体を導電性に優れたものにできるからである。
上記多孔質層中の電極金属元素の存在分布は、本発明の酸化物半導体電極用積層体の用途等に応じて、任意に決定することができるが、第1透明電極層側の表面から反対側表面に向かって減少傾向の濃度勾配をもつ存在分布を有することが好ましい。多孔質層中において電極金属元素がこのように分布することにより、多孔質層の集電効率を一層向上することができるからである。
本発明において、多孔質層中に電極金属元素が含まれること、および上記の存在分布を有することは、電子線をプローブとして特定したい金属元素の特性X線強度を二次元でマッピングすることにより判断することができる。具体的には、日本電子社(JEOL)製のEPMA(Electron Probe Micro Analyzer)により判断することができる。また、上記金属元素の濃度勾配については、上記EPMAにより得られる断面元素マッピング図の縦方向(断面垂直方向)の検出強度プロファイルにより判断することができる。
また本発明における多孔質層は、色素増感剤を含むことが好ましい。上記多孔質層が色素増感剤を含むことにより、本発明の酸化物半導体電極用積層体を用いて酸化物半導体電極としたものを、色素増感型太陽電池セルに用いる場合に、色素増感型太陽電池セルの製造工程を簡易化できるからである。本発明に用いられる色素増感剤としては、光を吸収し起電力を生じさせることが可能なものであれば特に限定はされない。このような色素増感剤としては、有機色素または金属錯体色素を挙げることができる。
なお、本発明において上記「色素増感剤を含む」とは、多孔質層(介在層、および酸化物半導体層)に含まれる金属酸化物半導体微粒子、密着用微粒子、および応力緩和微粒子の表面に吸着していることを意味するものとする。
本発明に用いられる上記有機色素としては、アクリジン系、アゾ系、インジゴ系、キノン系、クマリン系、メロシアニン系、フェニルキサンテン系の色素が挙げられる。本発明においてはこれらの有機色素のなかでも、クマリン系色素を用いることが好ましい。
また、本発明に用いられる上記金属錯体色素としては、ルテニウム系色素が好ましく、特にルテニウム錯体であるルテニウムビピリジン色素およびルテニウムターピリジン色素が好ましい。このようなルテニウム錯体は、吸収する光の波長範囲が広いため、光電変換できる光の波長領域を大幅に広げることができるからである。
本発明における多孔質層の膜厚(介在層および酸化物半導体層を合わせたもの)は、本発明の酸化物半導体電極用積層体の用途に応じて、多孔質層に所望の機械強度を付与できる範囲内であれば特に限定されない。本発明における多孔質層の膜厚は、通常、1μm〜100μmの範囲内が好ましく、特に5μm〜30μmの範囲内が好ましい。多孔質層の厚みが上記範囲よりも厚いと、本発明の酸化物半導体電極用積層体を用いて酸化物半導体電極とし、色素増感型太陽電池セルに用いた場合に、接着層からの剥離、多孔質層自体の凝集破壊が起りやすく、膜抵抗となりやすくなってしまう場合があり、また、上記範囲よりも薄いと厚みが均一な多孔質層を形成するのが困難となったり、例えば、本発明の酸化物半導体電極用積層体を用いて酸化物半導体電極とし、色素増感型太陽電池セルに用いた場合に、色素増感剤を含んだ多孔質層が太陽光などを十分に吸収できないために、性能不良になる可能性があるからである。
多孔質層を構成する酸化物半導体層と、介在層との厚み比は、本発明の酸化物半導体電極用積層体の用途に応じて、任意に決定すればよい。なかでも本発明においては上記酸化物半導体層と上記介在層との厚み比が、10:0.1〜10:5の範囲内であることが好ましく、なかでも、10:0.1〜10:3の範囲内であることが好ましい。上記範囲よりも厚いと、介在層の凝集破壊が起り易くなることによって、本発明の酸化物半導体電極用積層体を用いて酸化物半導体電極を生産する際に歩留まりが悪くなったり、本発明の酸化物半導体電極用積層体を用いて酸化物半導体電極としたものを、色素増感型太陽電池セルに用いる際に、多孔質層に含まれる金属酸化物半導体微粒子の表面に所望量の色素増感剤を吸着させることができない可能性があるからである。
2.耐熱基板
次に、本発明に用いられる耐熱基板は、多孔質層形成を行う焼成処理時の加熱温度に対する耐熱性を有するものであれば特に限定されない。このような耐熱基板としては、ガラス、セラミックス、または金属板等からなる耐熱基板を挙げることができる。なかでも本発明においては、耐熱基板として可撓性のある金属板を用いることが好ましい。このような耐熱基板を用いることにより、後述する焼成処理を十分に高温で行うことができるので、多孔質層を形成する金属酸化物半導体微粒子、密着用微粒子、および応力緩和微粒子の結着性を高くすることができるからである。また、上記耐熱基板は、リユースすることが好ましい。
3.第1透明電極層
本発明に用いられる第1透明電極層は、金属酸化物からなるものである。以下、このような第1透明電極層について説明する。
(1)金属酸化物
本発明に用いられる第1透明電極層を構成する金属酸化物としては、導電性に優れ、かつ後述する酸化還元対に対して耐性を示すものであれば特に限定はされない。なかでも本発明においては、太陽光の透過性に優れた材料を用いることが好ましい。色素増感型太陽電池セルは、通常、基材側から太陽光を受光する態様により使用されるため、上記金属酸化物が太陽光の透過性に乏しいと、本発明の酸化物半導体電極用積層体を用いて酸化物半導体電極とし、色素増感型太陽電池セルに用いた場合に、色素増感型太陽電池セルの発電効率が損なわれてしまうからである。
このような太陽光の透過性に優れた上記金属酸化物としては、例えば、SnO、ITO、IZO、ZnOを挙げることができる。なかでも本発明においては、フッ素ドープしたSnO(以下、FTOと称する。)、ITOを用いることが好ましい。FTOおよびITOは、導電性および太陽光の透過性の両方に優れているからである。
(2)第1透明電極層
上記第1透明電極層は、単層からなる構成であっても良く、また、複数の層を積層した構成であっても良い。複数の層を積層した構成としては、例えば、仕事関数が互いに異なる層を積層する態様や、互いに異なる金属酸化物からなる層を積層する態様を挙げることができる。
また、第1透明電極層の厚みは、所望の導電性を実現できる範囲内であれば特に限定されない。なかでも本発明においては5nm〜2000nmの範囲内が好ましく、特に10nm〜1000nmの範囲内であることが好ましい。上記範囲よりも厚いと、均質な第1透明電極層を形成することが困難となる場合があり、また、上記範囲よりも薄いと第1透明電極層の導電性が不足する恐れがあるからである。
なお、上記1電極層の厚みは、第1透明電極層が複数の層から構成される場合には、すべての層の厚みを合計した総厚みを指すものとする。
さらに、上記第1透明電極層上に開口が十分で上記金属酸化物より導電性の高い金属からなる金属メッシュを積層化させてもよい。上記第1透明電極層の導電性を優れたものとすることができるからである。
4.酸化物半導体電極用積層体
本発明の酸化物半導体電極用積層体は、転写方式により、酸化物半導体電極の製造に用いることができる。
5.酸化物半導体電極用積層体の製造方法
本発明の酸化物半導体電極用積層体の製造方法は、上述した酸化物半導体電極用積層体の各構成を密着性良く積層する方法であれば特に限定されるものではない。本発明においては、例えば、耐熱基板上に介在層および酸化物半導体層からなる多孔質層を形成する多孔質層形成工程と、上記酸化物半導体層上に第1透明電極層を形成する第1透明電極層工程と、を有する方法により製造することができる。
このような酸化物半導体電極用積層体の製造方法について図を参照しながら説明する。図2は、本発明の酸化物半導体電極用積層体の製造方法の一例を示すものである。図2に示すように、本発明の酸化物半導体電極用積層体の製造方法は、耐熱基板1上に多孔質層4を形成する多孔質層形成工程(図2(a))と、上記多孔質層4上に第1透明電極層5を形成する第1透明電極層形成工程(図2(b))により作製するものである。以下このような各工程について説明する。
(1)多孔質層形成工程
上記多孔質層形成工程は、耐熱基板上に、介在層形成用層を形成する介在層形成用層形成工程と、上記介在層形成用層上に酸化物半導体層形成用層を形成する酸化物半導体層形成用層形成工程と、上記介在層形成用層および上記酸化物半導体層形成用層を焼成して、多孔質である介在層および酸化物半導体層からなる多孔質層を形成する焼成工程とを有するものである。以下、このような多孔質層形成工程について説明する。
(a)介在層形成用層形成工程
本発明に用いられる介在層形成用層形成工程は、密着用微粒子および応力緩和用微粒子と、樹脂と、溶媒とを含む介在層形成用塗工液を耐熱基板上に塗工し、介在層形成用層を形成する工程である。以下このような工程について説明する。
本工程に用いられる耐熱基板としては、上記「2.耐熱基板」の項に記載の内容と同様であるため、ここでの説明は省略する。
本工程に用いられる介在層形成用塗工液に含まれる密着用微粒子および応力緩和用微粒子は、上記「1.多孔質層」の、「(1)介在層」の項に記載した内容と同様であるため、ここでの説明は省略する。
また、上記介在層形成用塗工液に用いられる密着用微粒子および応力緩和用微粒子の質量比については、後述する焼成工程において、介在層と後述する酸化物半導体層との間にクラックを生じることがない範囲であるなら特に限定されるものではないが、10:15〜10:90の範囲内とすることが好ましく、なかでも10:50〜10:90の範囲内とすることが好ましい。応力緩和微粒子の質量比が上記範囲よりも低いと、応力緩和能を発揮することができず、焼成時に介在層と後述する酸化物半導体層との間にクラックを生じたり、耐熱基板と多孔質層の密着性が大きくなり、上記耐熱基板と上記多孔質層との剥離が困難となる場合がある。また応力緩和微粒子の質量比が上記範囲より大きいと耐熱基板と多孔質層の密着性が低くなりすぎる場合があるからである。
上記介在層形成用塗工液において、密着用微粒子および応力緩和用微粒子の固形分中の濃度は、後述する焼成工程後の介在層が、本発明の酸化物半導体電極用積層体を用いて酸化物半導体電極を製造する際に、後述する耐熱基板が剥離可能なものであれば特に限定されないが、通常、後述する酸化物半導体層形成用塗工液に含まれる金属酸化物微粒子の固形分中の濃度より低いものが用いられる。具体的には、20質量%〜80質量%の範囲内、なかでも、30質量%〜70質量%の範囲内であることが好ましい。上記範囲で密着用微粒子および応力緩和用微粒子を含有する介在層形成用塗工液であれば、このような介在層形成用塗工液を用いて形成された介在層形成用層を介して酸化物半導体層形成用層を形成することにより、後述する酸化物半導体層を耐熱基板上に適度な密着性を有して形成することができるからである。また、後述する焼成工程により多孔質体である介在層として形成された際には、耐熱基板との剥離性に優れたものとすることができる。
また、上記介在層形成用塗工液において、密着用微粒子および応力緩和用微粒子の介在層形成用塗工液中に対する濃度は、塗布方法等によって異なるものではあるが、具体的には、0.1質量%〜15質量%の範囲内であることが好ましく、なかでも、0.2質量%〜12質量%の範囲内であることが好ましい。
上記介在層形成用塗工液に用いられる樹脂としては、焼成工程において、分解されやすいものであれば特に限定はされない。このような樹脂としては、なかでも、本発明においては、分子量が2000〜600000の範囲内である樹脂が好ましく、さらには、分子量が10000〜200000の範囲内である樹脂が好ましい。上記範囲の分子量を有する樹脂であれば、後述する焼成工程において分解されやすく、介在層形成用層を連通孔を有する多孔性の介在層を容易に形成することができるからである。
具体的に使用可能な樹脂としては、焼成によって容易に熱分解し介在層中に残存しない樹脂が好ましく、例えば、エチルセルロース、メチルセルロース、ニトロセルロース、アセチルセルロース、アセチルエチルセルロース、セルロースプロピオネート、ヒドロキシプロピルセルロース、ブチルセルロース、ベンジルセルロース、ニトロセルロース等のセルロース系樹脂、またはメチルメタクリレート、エチルメタクリレート、ターシャルブチルメタクリレート、ノルマルブチルメタクリレート、イソブチルメタクリレート、イソプロピルメタクリレート、2−エチルメタクリレート、2-エチルヘキシルメタクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート等の重合体もしくは共重合体からなるアクリル系樹脂、ポリエチレングリコール等の多価アルコール類等を挙げることができる。
上記樹脂の含有量は、上記介在層形成用塗工液に対して、0.01質量%〜15質量%の範囲内、そのなかでも、0.1質量%〜10質量%の範囲内であることが好ましい。
また、上記介在層形成用塗工液に溶媒が含有されている場合には、用いる樹脂に対して良溶媒であることが好ましく、溶媒の選定は、溶媒の揮発性と、使用する樹脂の溶解性を主に考慮して適宜選択する。具体的には、ケトン類、炭化水素類、エステル類、アルコール類、ハロゲン化炭化水素類、グリコール誘導体、エーテル類、エーテルエステル類、アミド類、アセテート類、ケトンエステル類、グリコールエーテル類、スルホン類、スルホキシド類等を挙げることができる。これらは1種または2種以上を混合して用いることができる。なかでも、アセトン、メチルエチルケトン、トルエン、メタノール、イソプロピルアルコール、ノルマルプロピルアルコール、ノルマルブタノール、イソブタノール、テルピネオール、エチルセルソルブ、ブチルセルソルブ、ブチルカルビトール等の有機溶媒であることが好ましい。介在層形成用塗工液は耐熱基板上に塗布されるため上記有機溶媒を用いることにより、耐熱基板上に濡れ性良く塗布することができるからである。
また、上記介在層形成用塗工液の塗工適性を向上させるために、各種添加剤を用いてもよい。例えば、添加剤としては、界面活性剤、粘度調整剤、分散助剤、pH調節剤等を用いることができる。例えば、pH調製剤としては、硝酸、塩酸、酢酸、ジメチルホルムアミド、アンモニア等を挙げることができる。
このような本工程において、上記介在層形成用塗工液を塗布する方法としては、公知の塗布方法であれば特に限定はされないが、具体的には、ダイコート、グラビアコート、グラビアリバースコート、ロールコート、リバースロールコート、バーコート、ブレードコート、ナイフコート、エアナイフコート、スロットダイコート、スライドダイコート、ディップコート、マイクロバーコート、マイクロバーリバースコートや、スクリーン印刷(ロータリー方式)等を挙げることができる。このような塗布法を用い、単数回または複数回、塗布および固化を繰り返すことにより介在層形成用層を所望の膜厚に調整して形成する。
また、介在層形成用層の膜厚としては、酸化物半導体層を耐熱基板上に適度な密着性を有して形成することを可能とする膜厚であれば特に限定はされないが、後述する焼成工程において多孔質体として形成された際に、上述した「1.多孔質層」の中に記載した膜厚となるように調整して決定することが好ましい。
(b)酸化物半導体層形成用層形成工程
本発明に用いられる酸化物半導体層形成用層形成工程は、介在層形成用層上に、金属酸化物半導体微粒子を含む酸化物半導体層形成用塗工液を塗布し、固化させて酸化物半導体層形成用層を形成する工程である。
本工程に用いられる酸化物半導体層形成用塗工液は、上述した介在層形成用塗工液と同様の構成であり、金属酸化物半導体微粒子と、樹脂と、溶媒とを含むものである。
本工程に用いられる酸化物半導体層形成用塗工液に含まれる金属酸化物半導体微粒子は、上記「1.多孔質層」の、「(2)酸化物半導体層」の、「(a)金属酸化物半導体微粒子」の項に記載したものと同様であるため、ここでの説明は省略する。
本工程に用いられる酸化物半導体層形成用塗工液は、金属酸化物半導体微粒子を含有するものであるが、上記介在層形成用塗工液における密着用微粒子および応力緩和用微粒子の固形分中の濃度よりも金属酸化物半導体微粒子の固形分中の濃度が高く調整されたものである。具体的には、酸化物半導体層形成用塗工液における金属酸化物半導体微粒子の固形分中の濃度としては、50質量%〜100質量%の範囲内、なかでも、65質量%〜90質量%の範囲内であることが好ましい。このような酸化物半導体層形成用塗工液を用いることにより、焼成工程後に得られる多孔質体として形成された酸化物半導体層において、その細孔に十分な量の色素増感剤を担持させることができるため、光照射により色素増感剤から生じた電荷を伝導する機能を十分に得ることができるからである。
本工程において、上記金属酸化物半導体微粒子の酸化物半導体層形成用塗工液に対する濃度としては、5質量%〜50質量%の範囲内、なかでも、10質量%〜40質量%の範囲内であることが好ましい。このような酸化物半導体層形成用塗工液を用いることにより、所望の膜厚に精度良く酸化物半導体層形成用層を成膜することができるからである。
上記酸化物半導体層形成用塗工液に用いられる樹脂としては、セルロース系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリアクリル酸エステル系樹脂、ポリアクリル系樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリビニルアセタール系樹脂、フッ素系樹脂、ポリイミド樹脂などのほか、ポリエチレングリコールのような多価アルコール類等を挙げることができる。
上記樹脂の含有量は、酸化物半導体層形成用塗工液に対して、0.5質量%〜20質量%の範囲内、そのなかでも、1質量%〜10質量%の範囲内であることが好ましい。
また、酸化物半導体層形成用塗工液に溶媒を用いた場合には、上述した樹脂が溶解するものであり、かつ、上述した介在層形成用層の形成に使用する有機物が溶解しにくいものであれば特に限定はされない。具体的には、水またはメタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ターピネオール、ジクロロメタン、アセトン、アセトニトリル、酢酸エチル等の各種溶剤を挙げることができる。なかでも、水ないしアルコール系の溶媒であることが好ましい。上述したように、介在層形成用塗工液に用いる溶媒は有機溶媒が好ましいことから、介在層形成用層上に形成される酸化物半導体層形成用層においては、両者の混合を防止するため、介在層形成用塗工液と異なる水系の溶媒であることが好ましいのである。
また、酸化物半導体層形成用塗工液の塗工適性を向上させるために、各種添加剤を用いてもよい。例えば、添加剤としては、界面活性剤、粘度調整剤、分散助剤、pH調節剤等を用いることができる。例えば、pH調製剤としては、硝酸、塩酸、酢酸、ジメチルホルムアミド、アンモニア等を挙げることができる。また、分散助剤としては、ポリエチレングリコール、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロースのようなポリマー、界面活性剤、酸、またはキレート剤等を挙げることができる。なかでも、ポリエチレングリコールの分子量を変えることで、分散液の粘度が調節可能となり、剥がれにくい酸化物半導体層の形成、酸化物半導体層の空孔率の調整等を行うことができるので、ポリエチレングリコールを添加することが好ましい。
このような本工程において、上記塗工液を塗布する方法としては、公知の塗布方法であれば特に限定はされないが、具体的には、ダイコート、グラビアコート、グラビアリバースコート、ロールコート、リバースロールコート、バーコート、ブレードコート、ナイフコート、エアナイフコート、スロットダイコート、スライドダイコート、ディップコート、マイクロバーコート、マイクロバーリバースコートや、スクリーン印刷(ロータリー方式)等を挙げることができる。
また、酸化物半導体層形成用層の膜厚としては、最終的に酸化物半導体層として形成された際に、光照射により色素増感剤により生じた電荷を伝導する機能を十分に得ることができるのであれば特に限定はされない。例えば、後述する焼成工程において多孔質体として形成された際に、上述した「1.多孔質層」の中に記載した膜厚となるように調整して決定することが好ましい。
(c)焼成工程
本発明に用いられる焼成工程は、上記介在層形成用層および上記酸化物半導体層形成用層を焼成して多孔質体とすることで、介在層および酸化物半導体層を形成する工程である。
本工程においては、上記介在層が応力緩和微粒子および密着用微粒子を含むことにより、本工程により焼成した後であっても、上記介在層と上記酸化物半導体層との間にクラックを生じることなく形成することができる。したがって、本発明の酸化物半導体電極用積層体を、歩留まり良く製造できる。また、転写方式により酸化物半導体電極を形成する際に、転写不良が少ないものとすることができる。
このような本工程において、焼成の温度は、300℃〜700℃の範囲内であることが好ましく、なかでも、350℃〜600℃の範囲内であることが好ましい。本発明においては、耐熱性に優れた耐熱基板を用いていることから、上記範囲の高温域での焼成が可能であり、介在層および酸化物半導体層を金属酸化物半導体微粒子、密着用微粒子、応力緩和用微粒子間の結着性良く形成することができるからである。
また、本工程において、介在層形成用層および酸化物半導体層形成用層を焼成する際の加熱方法としては、加熱ムラなく一様に介在層形成用層および酸化物半導体層形成用層を焼成できる方法であれば特に限定はされない。具体的には、公知の加熱方法を用いることができる。
(2)第1透明電極層形成工程
次に、第1透明電極層形成工程について説明する。第1透明電極層形成工程は、上記多孔質層上に、金属酸化物からなる透明電極層を形成するものである。
本工程に用いられる金属酸化物としては、上記「3.第1透明電極層」の「(1)金属酸化物」の項に記載した内容と同様であるため、ここでの説明は省略する。
本工程において、上記多孔質層上に第1透明電極層を形成する方法としては、厚みが均一で平面性に優れた第1透明電極層を形成できる方法であれば特に限定されず、例えば、下地電極層形成用塗工液を用いて多孔質層の内部または表面に下地電極層を設ける溶液処理工程と、上記下地電極層上に主たる第1透明電極層を設ける上側電極層形成工程と、により2工程で第1透明電極層を形成する方法を用いることができる。このような方法によれば、上記多孔質層に、第1透明電極層を構成する金属酸化物が有する金属元素を容易に含ませることができ、緻密な第1透明電極層を形成することができる。また多孔質層を形成する応力緩和微粒子、密着用微粒子、および金属酸化物半導体微粒子の表面を第1透明電極層を構成する金属酸化物が被覆することで多孔質層から電解質中への逆電子移動を抑制することができる。このような第1透明電極層の形成方法の具体例としては、特開2005−166648号公報に記載された第1透明電極層の形成方法を好適に用いることができる。
(3)その他工程
本発明の酸化物半導体電極用積層体の製造方法には、上記の工程以外に他の工程を含んでも良い。本発明に用いられる他の工程としては、多孔質層に色素増感剤を含有させる色素増感剤担持工程を挙げることができる。なお、色素増感剤担持工程により、本発明の酸化物半導体電極用積層体を色素増感型太陽電池セルに用いられる色素増感型太陽電池用基材の作製に使用することができる。以下、色素増感剤担持工程について説明する。
(色素増感剤担持工程)
本発明に用いられる色素増感剤担持工程について説明する。本発明における色素増感剤担持工程は、上記多孔質層に色素増感剤を担持させる工程である。色素増感剤担持工程により、本発明の酸化物半導体電極用積層体を色素増感型太陽電池セルに用いられる色素増感型太陽電池用基材の作製に使用することができる。なお、本工程に用いられる色素増感剤は、上記「1.多孔質層」の、「(3)多孔質層」の項に記載したものと同様であるため、ここでの説明は省略する。
本発明において、上記色素増感剤担持工程によって多孔質層に色素増感剤を担持させるタイミングは、第1透明電極層形成工程前に実施してもよく、上記第1透明電極層形成工程後に実施してもよい。
上記色素増感剤担持工程において、多孔質層に色素増感剤を担持させる方法は、多孔質層に含まれる応力緩和微粒子、密着用微粒子、および金属酸化物半導体微粒子の表面に色素増感剤を吸着させることが可能な方法であれば特に限定はされない。例えば、色素増感剤の溶液に多孔質層を浸透させた後、乾燥させる方法や、色素増感剤の溶液を多孔質層に塗布し浸透させた後、乾燥させる方法等を挙げることができる。
B.耐熱基板付酸化物半導体電極
次に、本発明の耐熱基板付酸化物半導体電極について説明する。本発明の耐熱基板付酸化物半導体電極は、上述した酸化物半導体電極用積層体と、上記酸化物半導体電極用積層体が有する第1透明電極層上に形成され、熱可塑性樹脂からなる接着層と、上記接着層上に形成された基材と、を有するものである。
このような本発明の耐熱基板付酸化物半導体電極について図を参照しながら説明する。図3は本発明の耐熱基板付酸化物半導体電極の一例を示す概略断面図である。図3に例示するように本発明の耐熱基板付酸化物半導体電極20は、上述した酸化物半導体電極用積層体10と、上記酸化物半導体電極用積層体10が有する第1透明電極層5上に形成され、熱可塑性樹脂からなる接着層6と、上記接着層6上に形成された基材7と、を有するものである。
本発明によれば、上述した酸化物半導体電極用積層体を用いることにより、転写不良の少ない耐熱基板付酸化物半導体電極とすることができる。また、本発明の耐熱基板付酸化物半導体電極から耐熱基板を剥離することにより、色素増感型太陽電池セルの構成部材等として使用可能な酸化物半導体電極を容易に得ることができる。
本発明の耐熱基板付酸化物半導体電極は、酸化物半導体電極用積層体、接着層、および基材を有するものである。以下、このような構成について詳細に説明する。
1.酸化物半導体電極用積層体
本発明に用いられる酸化物半導体電極用積層体は、上述した酸化物半導体電極用積層体である。上記酸化物半導体電極用積層体は、上記「A.酸化物半導体電極用積層体」の項に記載したものと同様のものを用いることができるため、ここでの説明は省略する。
2.接着層
次に、本発明の耐熱基板付酸化物半導体電極に用いられる接着層について説明する。本発明に用いられる接着層は、上記基材と、上述した酸化物半導体電極用積層体が有する第1透明電極層とを接着する機能を有する熱可塑性樹脂からなるものであり、酸化物半導体電極を転写法を用いて作製する際に、上述した多孔質層の転写性を向上させる機能を有するものである。以下このような接着層について説明する。
(1)熱可塑性樹脂
本発明に用いられる接着層における上記熱可塑性樹脂は、融点が50℃〜200℃
の範囲内であることが好ましく、特に60℃〜180℃の範囲内であることが好ましく、なかでも65℃〜150℃の範囲内であることが好ましい。本発明の耐熱基板付酸化物半導体電極を作成する場合は、上記熱可塑性樹脂により後述する基材と上記第1透明電極層とを熱融着することになるが、上記熱可塑性樹脂の融点が上記範囲よりも高いと熱融着させる際の加熱温度が高くなってしまい、後述する基材等が熱損傷を受けてしまう場合があるからである。また、融点が上記範囲よりも低いと、本発明の耐熱基板付酸化物半導体電極を用いた色素増感型太陽電池セルを屋外で使用した場合に、環境によっては接着層が溶融し、これに起因して、例えば、接着層上に形成された第1透明電極層の機能を損なってしまう可能性があるからである。
なお、本発明における上記「融点」は、示差走査熱量分析装置(DSC(Differential Scanning Calorimetry))により、10℃/分の昇温速度で得られたDSCカーブの吸熱ピークのピークトップ温度を意味するものとする。
上記熱可塑性樹脂の具体例としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリイソブチレン、ポリスチレン、エチレン‐プロピレンゴム等のポリオレフィン、エチレン‐酢酸ビニル共重合体、エチレン‐アクリル酸共重合体、エチルセルロース、トリ酢酸セルロース等のセルロース誘導体、ポリ(メタ)アクリル酸とそのエステルとの共重合体、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラール等のポリビニルアセタール、ポリアセタール、ポリアミド、ポリイミド、ナイロン、ポリエステル樹脂、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、フッ素樹脂等を挙げることができる。なかでも、接着性、電解液に対する耐性、光透過性および転写性の点から、ポリオレフィン、エチレン‐酢酸ビニル共重合体、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂、シラン変性樹脂、および酸変性樹脂が好ましい。
また、上記熱可塑性樹脂の別の例としては、例えば、エチレン、プロピレン、1−ブテン等の炭素数2〜8程度のα―オレフィンの単独重合体、それらのα―オレフィンとエチレン、プロピレン、1−ブテン、3−メチル−1−ブテン、1−ペンテン、4−メチル−1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテン、1−デセン等の炭素数2〜20程度の他のα−オレフィンや、酢酸ビニル、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸エステル等との共重合体、(無水)マレイン酸変性樹脂、シラン変性樹脂やオレフィン系エラストマー等のポリオレフィン化合物を挙げることができる。
上記α−オレフィンの単独または共重合体としては、例えば、低・中・高密度ポリエチレン等(分岐状または直鎖状)のエチレン単独重合体、エチレン−プロピレン共重合体、アタクチックポリプロピレン、プロピレン単独重合体、1−ブテン単独重合体などのポリオレフィン;エチレン−1−ブテン共重合体、エチレン−プロピレン−1−ブテン共重合体、エチレン−4−メチル−1−ペンテン共重合体、エチレン−1−ヘキセン共重合体、エチレン−1−オクテン共重合体、プロピレン−1−ブテン共重合体、プロピレン−エチレン−1−ブテン共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−(メタ)アクリル酸共重合体またはそのアイオノマー、エチレン−アクリル酸エチル共重合体などのエチレン−(メタ)アクリレート共重合体、マレイン酸変性エチレン−酢酸ビニル共重合樹脂、マレイン酸変性ポリオレフィン樹脂、エチレン−エチルアクリレート−無水マレイン酸3元共重合体などの(無水)マレイン酸変性樹脂、エチレン不飽和シラン化合物とポリオレフィン化合物との共重合体からなるシラン変性樹脂などの変性ポリオレフィン;などを挙げることができる。
上記オレフィン系エラストマーとしては、ポリエチレンやポリプロピレンをハードセグメントとし、エチレン−プロピレンゴム(EPR)やエチレン−プロピレン−ジエンゴム(EPDM)をソフトセグメントとするエラストマーなどが挙げられる。
これらのポリオレフィン化合物は、単独でまたは二種以上組み合わせて使用できる。本発明においてはこれらのポリオレフィン化合物のうち、接着性の点から、変性ポリオレフィン、特に変性エチレン系樹脂(例えば、エチレン不飽和シラン化合物とポリオレフィン化合物との共重合体からなるシラン変性樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−アクリル酸エチル共重合体などのエチレン共重合体など)が好ましい。なかでもシラン変性樹脂を接着層とする場合が最も好ましい。シラン変性樹脂を用いることにより、接着層が示す接着力をより強固にすることができるからである。
また、本発明においては上記シラン変性樹脂のなかでもポリオレフィン化合物とエチレン性不飽和シラン化合物との共重合体を用いることが好ましい。このような共重合体を用いることにより、例えば、本発明の耐熱基板付酸化物半導体電極の製造方法等に応じて、シラン変性樹脂の諸物性を好適な範囲に調整することが容易になるからである。
ここで、本発明において上記共重合体は、シラノール触媒による架橋をしていてもしていなくてもどちらでもよい。
上記共重合体に用いられるポリオレフィン化合物としては、エチレン、プロピレン、1-ブテン等の炭素数2〜8程度のα-オレフィンの単独重合体、それらのα-オレフィンとエチレン、プロピレン、1-ブテン、3-メチル-1-ブテン、1-ペンテン、4-メチル-1-ペンテン、1-ヘキセン、1-オクテン、1-デセン等の炭素数2〜20程度の他のα-オレフィンや、酢酸ビニル、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸エステル等との共重合体等が挙げられ、具体的には、例えば、低・中・高密度ポリエチレン等(分岐状または直鎖状)のエチレン単独重合体、エチレン-プロピレン共重合体、エチレン-1-ブテン共重合体、エチレン-4-メチル-1‐ペンテン共重合体、エチレン-1-ヘキセン共重合体、エチレン-1-オクテン共重合体、エチレン-酢酸ビニル共重合体、エチレン-(メタ)アクリル酸共重合体、エチレン-(メタ)アクリル酸エチル共重合体等のエチレン系樹脂、プロピレン単独重合体、プロピレン-エチレン共重合体、プロピレン-エチレン-1-ブテン共重合体等のプロピレン系樹脂、および、1-ブテン単独重合体、1-ブテン-エチレン共重合体、1-ブテン-プロピレン共重合体等の1-ブテン系樹脂等が挙げられる。なかでも本発明においては、ポリエチレン系樹脂が好ましい。
このようなポリエチレン系樹脂(以下、重合用ポリエチレンと称する。)としては、ポリエチレン系のポリマーであれば特に限定されない。このようなポリエチレン系のポリマーとしては、低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、超低密度ポリエチレン、極超低密度ポリエチレン、または直鎖状低密度ポリエチレンを挙げることができる。また本発明においては、これらのポリエチレン系ポリマーの一種類を単体として用いても良く、また、2種類以上を混合して用いても良い。
また、上記シラン変性樹脂組成物中の遊離ラジカル発生剤の含有量は、遊離ラジカル発生剤の種類や重合反応条件に応じて、任意に決定することができるが、重合反応により得られるシラン変性樹脂中の残存量が0.001質量%以下となる範囲内であることが好ましい。なかでも本発明においては、上記シラン変性樹脂組成物中のポリオレフィン化合物100重量部に対して、0.001重量部以上含まれていることが好ましく、特に0.01重量部〜5重量部含まれていることが好ましい。
さらに、上記シラン変性樹脂成物中のエチレン性不飽和シラン化合物の含有量は、重合用ポリエチレン100重量部に対して、0.001重量部〜4重量部の範囲内が好ましく、特に0.01重量部〜3重量部の範囲内が好ましい。エチレン性不飽和シラン化合物の含有量が上記範囲よりも多いと、重合されることなく遊離したエチレン性不飽和シラン化合物が残存する可能性が有り、また上記範囲よりも少ないと接着層の密着力が不十分となる場合があるからである。
(2)その他化合物
上記接着層には、必要に応じてシラン変性樹脂以外の他の化合物を含むことができる。本発明においては、このような他の化合物として熱可塑性樹脂を用いることが好ましく、なかでもポリオレフィン化合物(以下、添加用ポリオレフィン化合物と称する。)を用いることが好ましい。また、接着層に含まれる上記シラン変性樹脂として、ポリオレフィン化合物とエチレン性不飽和シラン化合物との共重合体を用いる場合には、このような添加用ポリオレフィン化合物として、上記共重合体に用いられるポリオレフィン化合物と化合物を用いることが好ましい。
さらに、本発明に用いられる接着層は、光安定化剤、紫外線吸収剤、熱安定剤および酸化防止剤からなる群から選ばれる少なくとも1種の添加剤を含有することが好ましい。これらの添加剤を含むことにより、長期間安定した機械強度、黄変防止効果、ひび割れ防止効果、加工適性を得ることができるからである。
上記光安定化剤は、接着層に用いられる熱可塑性樹脂中の光劣化開始の活性種を補足し、光酸化を防止するものである。このような光安定化剤としては、例えば、ヒンダードアミン系化合物、ヒンダードピペリジン系化合物などを挙げることができる。
上記紫外線吸収剤は、太陽光中の有害な紫外線を吸収して、分子内で無害な熱エネルギーへと変換し、接着層に用いられる熱可塑性樹脂中の光劣化開始の活性種が励起されるのを防止するものである。このような紫外線吸収剤としては、例えば、ベンゾフェノン系、ベンゾトリアゾール系、サルチレート系、アクリロニトリル系、金属錯塩系、ヒンダードアミン系、および超微粒子酸化チタン(粒子径:0.01μm〜0.06μm)もしくは超微粒子酸化亜鉛(粒子径:0.01μm〜0.04μm)などの無機系等の紫外線吸収剤を挙げることができる。
また、上記熱安定剤としては、トリス(2,4‐ジ‐t‐ブチルフェニル)フォスファイト、ビス[2,4‐ビス(1,1−ジメチルエチル)‐6‐メチルフェニル]エチルエステル亜リン酸、テトラキス(2,4‐ジ‐t‐ブチルフェニル)[1,1‐ビフェニル]‐4,4´‐ジイルビスホスフォナイト、およびビス(2,4‐ジ‐t‐ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジフォスファイト等のリン系熱安定剤;8‐ヒドロキシ‐5,7‐ジ‐t‐ブチル‐フラン‐2‐オンとo‐キシレンとの反応生成物等のラクトン系熱安定剤などを挙げることができる。なかでも本発明において熱安定剤を用いる場合は、リン系熱安定剤とラクトン系熱安定剤とを併用することが好ましい。
さらに、上記酸化防止剤は、接着層に用いられる熱可塑性樹脂の酸化劣化を防止するものである。このような酸化防止剤としては、例えば、フェノール系、アミン系、イオウ系、リン系、およびラクトン系などの酸化防止剤を挙げることができる。
これらの光安定化剤、紫外線吸収剤、熱安定剤および酸化防止剤は、それぞれ1種単独でも2種以上を組み合わせて用いることもできる。
光安定化剤、紫外線吸収剤、熱安定剤および酸化防止剤の含有量は、その粒子形状、密度などにより異なるものではあるが、それぞれ接着層の材料中0.001質量%〜5質量%の範囲内であることが好ましい。
さらに、本発明に用いられる他の化合物としては上記以外に、架橋剤、分散剤、レベリング剤、可塑剤、消泡剤等を挙げることができる。
(3)接着層
本発明に用いられる接着層の厚みは、接着層を構成する熱可塑性樹脂の種類に応じて、必要な接着力を発現できる範囲内であれば特に限定されないが、通常、5μm〜300μmの範囲内が好ましく、特に10μm〜200μmの範囲内が好ましい。接着層の厚みが上記範囲よりも薄いと所望の接着力を得ることができない場合があり、また厚みが上記範囲よりも厚いと接着層により層間接着強度を十分に発現させるために過剰な加熱が必要となり、基材などへの熱ダメージが大きくなる場合があるからである。
3.基材
次に、本発明に用いられる基材について説明する。本発明に用いられる基材は、本発明の耐熱基板付酸化物半導体電極の用途等に応じて、所望の透明性を有するものであれば特に限定されないが、通常、波長400nm〜1000nmの光に対する透過率が、78%以上であることが好ましく、80%以上であることがより好ましい。上記基材の透過率が上記範囲よりも低いと、例えば、本発明の耐熱基板付酸化物半導体電極を用いて色素増感型太陽電池セルを作成した場合に発電効率が損なわれてしまう可能性があるからである。
また、本発明に用いられる基材は、上記透明性を有するもののなかでも、耐熱性、耐候性、水蒸気、その他のガスバリア性に優れたものであることが好ましい。上記基材がガスバリア性を有することにより、例えば、本発明の耐熱基板付酸化物半導体電極を色素増感型太陽電池セルに用いた場合に、経時安定性を向上できるからである。なかでも本発明においては、酸素透過率が温度23℃、湿度90%の条件下において1cc/m/day・atm以下、水蒸気透過率が温度37.8℃、湿度100%の条件下において1g/m/day以下のガスバリア性を有する基材を用いることが好ましい。本発明においては、このようなガスバリア性を達成するために、任意の基材上にガスバリア層を設けたものを用いてもよい。
上記ガスバリア性を具備する基材としては、石英ガラス、パイレックス(登録商標)、合成石英板等の可撓性のない透明なリジット材、エチレン・テトラフルオロエチレン共重合体フィルム、二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリエーテルサルフォン(PES)フィルム、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)フィルム、ポリエーテルイミド(PEI)フィルム、ポリイミド(PI)フィルム、ポリエステルナフタレート(PEN)、ポリカーボネート(PC)等の樹脂製フィルム基材を挙げることができる。
本発明においては、上記基材のなかでも、樹脂製フィルム基材を用いることが好ましい。樹脂製フィルム基材は、加工性に優れているため、他のデバイスとの組合せが容易であり、用途の幅を広げることができるからである。また、樹脂製フィルム基材を用いることにより、製造コストの削減にも寄与することができるからである。また本発明における基材は、一種類のみを単独で用いても良く、また、2種以上を積層して用いても良い。本発明においては、基材として二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム(PET)、ポリエステルナフタレート(PEN)、ポリカーボネート(PC)を用いることが特に好ましい。
本発明に用いられる基材の厚みは、本発明の耐熱基板付酸化物半導体電極の用途等に応じて、所望の自己支持性を有する範囲内であれば特に限定されない。本発明においては、通常、50μm〜2000μmの範囲内であることが好ましく、特に75μm〜1800μmの範囲内であることが好ましく、なかでも100μm〜1500μmの範囲内であることが好ましい。上記基材の厚みが上記範囲より薄いと、必要な自己支持性を確保できない場合があり、また厚みが上記範囲よりも厚いと、加工適性を損なってしまう可能性があるからである。
4.耐熱基板付酸化物半導体電極
本発明の耐熱基板付酸化物半導体電極は、色素増感型光充電キャパシタ用電極の作製、エレクトロクロミックディスプレイ用電極の作製、汚染物質分解基板の作製、および色素増感型太陽電池用基材の作製等に用いることができるが、なかでも色素増感型太陽電池用基材の作製に好適に用いることができる。
5.耐熱基板付酸化物半導体電極の製造方法
本発明の耐熱基板付酸化物半導体電極の製造方法は、後述する「C.酸化物半導体電極」の項に記載した方法と同様の内容であるので、ここでの説明は省略する。
C.酸化物半導体電極
次に、本発明の酸化物半導体電極について説明する。本発明の酸化物半導体電極は、基材と、上記基材上に形成され、熱可塑性樹脂からなる接着層と、上記接着層上に形成され、金属酸化物からなる第1透明電極層と、上記第1透明電極層上に形成され、金属酸化物半導体微粒子を含む酸化物半導体層および、上記酸化物半導体層上に形成され、密着用微粒子および応力緩和用微粒子を含む介在層からなる多孔質層と、を有することを特徴とするものである。
次に、本発明の酸化物半導体電極を図を参照して説明する。図4は本発明の酸化物半導体電極の一例を示す概略図である。図4に例示するように、本発明の酸化物半導体電極30は、基材7と、上記基材7上に形成され、熱可塑性樹脂からなる接着層6と、上記接着層6上に形成され、金属酸化物からなる第1透明電極層5と、上記第1透明電極層5上に形成され、金属酸化物半導体微粒子を含む酸化物半導体層3および、上記酸化物半導体層3上に形成され、密着用微粒子および応力緩和用微粒子を含む介在層2からなる多孔質層4と、を有するものである。
本発明によれば、上記介在層が密着用微粒子および応力緩和用微粒子を含むことにより、品質面およびコスト面において有利な酸化物半導体電極を得ることができる。
本発明の酸化物半導体電極は、基材と、接着層と、第1透明電極層と、多孔質層と、を有するものである。
このような酸化物半導体電極に用いられる基材、および接着層については、上記「B.耐熱基板付酸化物半導体電極」の項に記載したものと同様のものを用いることができる。
また、本発明に用いられる第1透明電極層、および多孔質層については、上記「A.酸化物半導体電極用積層体」の項に記載したものと同様のものを用いることができるため、ここでの記載は省略する。
次に、本発明の酸化物半導体電極の製造方法について説明する。本発明の酸化物半導体電極の製造方法は、上述した本発明の酸化物半導体電極の各構成が密着性よく積層したものであれば、特に限定されるものではない。本発明においては、例えば、上述した酸化物半導体電極用積層体が有する第1透明電極層上に接着層および基材をこの順で積層する接着層および基材付与工程と、上記耐熱基板を上記多孔質層から剥離する耐熱基板剥離工程と、を有する方法により製造することができる。
このような本発明の酸化物半導体電極の製造方法について図を参照しながら説明する。図5は本発明の酸化物半導体電極の製造方法の一例を示した工程図である。図5に例示するように本発明の酸化物半導体電極の製造方法は、上述した酸化物半導体電極用積層体10が有する第1透明電極層5上に接着層6および基材7をこの順で積層する接着層および基材付与工程(図5(a))と、上記耐熱基板1を上記多孔質層4から剥離する耐熱基板剥離工程(図5(b))と、を有する方法により製造することができる。
本発明の酸化物半導体電極の製造方法は、接着層および基材付与工程、および耐熱基板剥離工程を有するものである。以下、このような各工程について詳細に説明する。
1.接着層および基材付与工程
まず、接着層および基材付与工程について説明する。本工程は、上述した酸化物半導体電極用積層体が有する第1透明電極層上に接着層および基材をこの順で積層し、耐熱基板付酸化物半導体電極とするものである。
本工程に用いられる酸化物半導体電極用積層体は、上述した酸化物半導体電極用積層体である。上記酸化物半導体電極用積層体については、上記「A.酸化物半導体電極用積層体」の項に記載した内容と同様であるので、ここでの説明は省略する。
本工程に用いられる接着層は熱可塑性樹脂からなるものであるが、このような熱可塑性樹脂としては、上記「B.耐熱基板付酸化物半導体電極」の「2.接着層」の項に記載したものと同様のものを用いることができる。
また、本工程に用いられる基材としては、上記「B.耐熱基板付酸化物半導体電極」の「3.基材」の項に記載したものと同様のものを用いることができるため、ここでの説明は省略する。
本工程において、接着層および基材を付与する方法としては、上述した酸化物半導体電極用積層体が有する第1透明電極層上に、上記接着層と上記基材とを密着性良く付与できる方法であれば特に限定されない。このような方法としては、予め基材上に熱可塑性樹脂からなる接着層を形成しておき、接着層を有する基材を、上記接着層と上記第1透明電極層とが接着するように配置した後、熱融着する方法(第一の方法)と、熱可塑性樹脂からなる熱溶融性フィルムを作製し、当該熱溶融性フィルムを介して、第1透明電極層と、基材とをラミネートする方法(第二の方法)と、熱可塑性樹脂を第1透明電極層と基材との間に直接流し込み熱溶着させる、押出ラミネーション法(第三の方法)とを挙げることができる。
2.耐熱基板剥離工程
次に、本発明に用いられる耐熱基板剥離工程について説明する。本工程は、図5(b)に示すように、耐熱基板付酸化物半導体電極20の多孔質層4から、耐熱基板1を剥離し、酸化物半導体電極30を作製する工程である。
本工程において、耐熱基板付酸化物半導体電極から耐熱基板を剥離する方法は、特に限定されず、一般的な剥離方法を用いることができる。また本工程においては、耐熱基板を機械的研磨除去や、エッチングなどによる化学的除去により剥離することもできる。
また上記耐熱基板剥離工程においては、上記多孔質層から耐熱基板を剥離することになるが、その際の剥離状態は、耐熱基板を耐熱基板と多孔質層との境界から層間剥離しても良く、また多孔質層を凝集破壊して剥離しても良い。また、多孔質層が、酸化物半導体層と介在層との2層からなる場合は、耐熱基板を介在層から剥離することになるが、この場合も同様に耐熱基板を耐熱基板と介在層との境界から層間剥離しても良く、また介在層を凝集破壊して剥離しても良い。
3.その他工程
本発明の酸化物半導体電極の製造方法には、上記の工程以外に他の工程を含んでも良い。本発明に用いられる他の工程としては、多孔質層のパターニングを行う、パターニング工程と、多孔質層に色素増感剤を含有させる色素増感剤担持工程を挙げることができる。なお、色素増感剤担持工程により、本発明の酸化物半導体電極を、色素増感型太陽電池セルに用いられる色素増感型太陽電池用基材とすることができる。以下、これらの工程について説明する。
(パターニング工程)
まず、本発明に用いられるパターニング工程について説明する。本発明におけるパターニング工程は、多孔質層のパターニングを実施する工程である。
上記パターニング工程における多孔質層のパターニング方法は、多孔質層を所望のパターンに精度良くパターニングできる方法であれば特に限定されない。本発明に用いられるパターニング法としては、例えば、レーザースクライブ、ウェットエッチング、リフトオフ、ドライエッチング、メカニカルスクライブ等が挙げられ、なかでもレーザースクライブおよびメカニカルスクライブが好ましい。
上記以外のパターニング方法としては、図6に示すように、任意の基材51上にパターニングされた熱溶融性樹脂層52を有するパターニング基材50と、本発明の酸化物半導体電極30とを、熱溶融性樹脂層52と多孔質層4とが接するように熱融着した後、パターニング基材50を剥離することにより、多孔質層をパターニングする例を挙げることができる。上記基材51上へ、パターニングされた熱溶融性樹脂層を形成する方法は特に限定されず、例えば印刷法等の公知の方法を用いることができる。
本発明の酸化物半導体電極を用いて色素増感型太陽電池セルを作製する場合、上記パターニング工程は、多孔質層が色素増感剤を含まない状態でパターニングを実施しても良く、また後述する色素増感剤担持工程の後、多孔質層が色素増感剤を含む状態でパターニングを実施しても良い。
(色素増感剤担持工程)
次に、本発明に用いられる色素増感剤担持工程について説明する。本発明における色素増感剤担持工程は、上記多孔質層に色素増感剤を担持させる工程である。色素増感剤担持工程により、本発明の酸化物半導体電極を色素増感型太陽電池セルに用いられる色素増感型太陽電池用基材とすることができる。なお、本工程に用いられる色素増感剤は、上記「A.酸化物半導体電極用積層体」の、「1.多孔質層」の項に記載したものと同様であるため、ここでの説明は省略する。
本発明において、上記色素増感剤担持工程によって多孔質層に色素増感剤を担持させるタイミングは、上記接着層および基材付与工程前に実施してもよく、上記接着層および基材付与工程後、上記耐熱基板剥離工程前に実施してもよい。さらには、上記耐熱基板剥離工程後、上記パターニング工程前に実施してもよく、上記パターニング工程後に実施してもよい。
上記色素増感剤担持工程において、多孔質層に色素増感剤を担持させる方法は、多孔質に含まれる金属酸化物半導体微粒子の表面に色素増感剤を吸着させることが可能な方法であれば特に限定はされない。例えば、色素増感剤の溶液に多孔質層を浸透させた後、乾燥させる方法や、色素増感剤の溶液を多孔質層に塗布し浸透させた後、乾燥させる方法等を挙げることができる。
D.色素増感型太陽電池セル
本発明の色素増感型太陽電池セルは、上記多孔質層に含まれる上記金属酸化物半導体微粒子の表面に色素増感剤が吸着した、上述した酸化物半導体電極の多孔質層と、第2透明電極層および対向基材からなる対電極基材の第2透明電極層とが、酸化還元対を含む電解質層を介して、対向配置されていることを特徴とするものである。
このような本発明の色素増感型太陽電池セルについて図を参照しながら説明する。図7は本発明の色素増感型太陽電池セルの一例を示す概略断面図である。図7に例示するように本発明の色素増感型太陽電池セル40は、上記多孔質層4に含まれる上記金属酸化物半導体微粒子の表面に色素増感剤が吸着した、上記本発明の酸化物半導体電極30の多孔質層4と、第2透明電極層41および対向基材42からなる対電極基材43の第2透明電極層41とが、酸化還元対を含む電解質層31を介して、対向配置されているものである。
本発明によれば、上述した酸化物半導体電極を用いることにより、品質面およびコスト面において有利な色素増感型太陽電池セルを得ることができる。
本発明の色素増感型太陽電池セルは、酸化物半導体電極、対電極基材、および電解質層を有するものである。以下、このような各構成について詳細に説明する。
1.酸化物半導体電極
本発明に用いられる酸化物半導体電極は、上記「C.酸化物半導体電極」の項に記載したものと同様の内容である。
また上記酸化物半導体電極の多孔質層に含まれる金属酸化物半導体微粒子に担持される色素増感剤は、上記「A.酸化物半導体電極用積層体」の「1.多孔質層」項に記載したものと同様の内容であるので、ここでの説明は省略する。
2.対電極基材
次に本発明における対電極基材について説明する。本発明における対電極基材は、第2透明電極層および対向基材からなるものである。
(1)第2透明電極層
本発明における第2透明電極層は、上記「A.酸化物半導体電極用積層体」の、「3.第1透明電極層」の項に記載したものと同様であるため、ここでの説明は省略する。
(2)対向基材
本発明における対向基材は、上記「B.耐熱基板付酸化物半導体電極」の、「3.基材」の項に記載したものと同様であるため、ここでの説明は省略する。
(3)対電極基材
本発明における対電極基材には必要に応じて、上記以外のその他の層を含んでも良い。本発明に用いられるその他の層としては、触媒層を挙げることができる。本発明においては、上記第2透明電極層上に触媒層を形成することにより、本発明の色素増感型太陽電池セルをより発電効率に優れたものにできる。このような触媒層の例としては、上記第2透明電極層上にPtを蒸着した態様を挙げることができるが、この限りではない。
3.電解質層
次に、本発明における電解質層について説明する。本発明における電解質層は、酸化還元対を含むことを特徴とするものである。
(1)酸化還元対
本発明における電解質層に用いられる酸化還元対としては、一般的に電解質層において用いられているものであれば特に限定はされない。具体的には、ヨウ素およびヨウ化物の組合せ、臭素および臭化物の組合せであることが好ましい。例えば、ヨウ素およびヨウ化物の組合せとしては、LiI、NaI、KI、CaI等の金属ヨウ化物と、Iとの組合せを挙げることができる。さらに、臭素および臭化物の組み合わせとしては、LiBr、NaBr、KBr、CaBr等の金属臭化物と、Brとの組合せを挙げることができる。
(2)その他の化合物
本発明における電解質層には、上記酸化還元対以外のその他の化合物として、架橋剤、光重合開始剤、増粘剤、常温融解塩等の添加剤を含有していても良い。
(3)電解質層
本発明における電解質層は、ゲル状、固体状または液体状のいずれの形態からなる電解質層であってもよい。電解質層をゲル状とした場合には、物理ゲルと化学ゲルのいずれであってもよい。ここで、物理ゲルは物理的な相互作用によって室温付近でゲル化しているものであり、化学ゲルは架橋反応などにより化学結合でゲルを形成しているものである。
また、電解質層を液体状とした場合には、例えば、アセトニトリル、メトキシアセトニトリル、炭酸プロピレンなどを溶媒とし、酸化還元対を含んだものや、同じくイミダゾリウム塩をカチオンとするイオン性液体を溶媒とすることができる。
さらに、電解質層を固体状とした場合には、酸化還元対を含まずにそれ自身が正孔輸送剤として機能するものであればよく、例えばCuI、ポリピロール、ポリチオフェンなどを含む正孔輸送剤であってもよい。
4.色素増感型太陽電池セル
本発明の色素増感型太陽電池セルは、上記多孔質に含まれる密着用微粒子および応力緩和用微粒子の表面に色素増感剤が吸着したものであってもよい。本発明の色素増感型太陽電池セルの光電変換をより高いものとすることができるからである。
5.色素増感型太陽電池セルの作製方法
次に本発明の色素増感型太陽電池セルの製造方法について説明する。本発明の色素増感型太陽電池セルは、上述した酸化物半導体電極が有する多孔質層と、上記対電極基材が有する第2電極基材との間に電解質層を形成することにより作製する。
本発明において、上述した酸化物半導体電極が有する多孔質層と、上記対電極基材が有する第2電極基材との間に電解質層を形成する方法としては、各層を厚み精度良く形成できる方法であれば特に限定されない。このような方法としては、上記多孔質層上に電解質層を形成した後、電解質層上に第2透明電極層を形成する方法(第1の方法)と、上記多孔質層と対向して第2透明電極層を形成した後、多孔質層と第2透明電極層との間に電解質層を形成する方法(第2の方法)を挙げることができる。
本発明においては、上記第1の方法として、電解質層形成用組成物を上記多孔質層上に塗布し、乾燥させることにより電解質層を形成した後に、対電極基材を付与する塗布法が好ましい。
また第2の方法としては、上記多孔質層と、対電極基材が有する第2透明電極層とが対向するように所定の間隙を有して配置させ、その間隙に、電解質層形成用組成物を注入することにより、電解質層を形成する注入法が好ましい。以下、このような塗布法および注入法について説明する。
(1)塗布法
まず、電解質層形成用組成物を、上述した酸化物半導体電極が有する多孔質層上に塗布し、乾燥させることにより電解質層を形成した後に、対電極基材を付与する塗布法について説明する。このような方法により、主に固体状の電解質層を形成することができる。
このような塗布法において、多孔質層形成用組成物の塗布方法としては、公知の塗布法を用いることができ、具体的には、ダイコート、グラビアコート、グラビアリバースコート、ロールコート、リバースロールコート、バーコート、ブレードコート、ナイフコート、エアナイフコート、スロットダイコート、スライドダイコート、ディップコート、マイクロバーコート、マイクロバーリバースコートや、スクリーン印刷(ロータリー方式)等を挙げることができる。
また、塗布法により電解質層を形成する場合、電解質層を形成する電解質層形成用組成物としては、少なくとも酸化還元対および酸化還元対を保持する高分子化合物を有するものであれば特に限定はされない。
(2)注入法
次に、上述した酸化物半導体電極が有する多孔質層と、対電極基材が有する第2透明電極層とが対向するように所定の間隙を有して配置させ、その間隙に、電解質層形成用組成物を注入することにより、電解質層を形成する注入法について説明する。
上記注入法により電解質層を形成する場合、電解質層を形成する電解質層形成用組成物としては、少なくとも酸化還元対を有するものであれば特に限定はされないが、形成される電解質層をゲル状とする場合には、さらに、ゲル化剤が含有されたものとする。例えば、物理ゲルの場合は、ゲル化剤としてポリアクリロニトリル、ポリメタクリレート等を挙げることができる。また、化学ゲルの場合は、アクリル酸エステル系、メタクリル酸エステル系等を挙げることができる。
上記多孔質層と、対電極基材が有する第2透明電極層との間隙に電解質層形成用組成物を注入する方法としては、特に限定はされないが、例えば、毛細管現象を利用して注入させる方法や、上記多孔質層と、上記第2電極との間隙を真空状態にし、電解質層形成用組成物を接触させた状態で大気圧に開放することで注入する方法などを挙げることができる。
また、注入法により、電解質層形成用組成物を注入した後、例えば、温度調整、紫外線照射または電子線照射等を行い、二次元または三次元の架橋反応を生じさせることによりゲル状さらには固体状の電解質層を形成することができる。
なお、本発明において、対向基材上に第2透明電極層を形成する方法は特に限定されず、一般的な方法を用いることができる。
E.色素増感型太陽電池モジュール
次に、本発明の色素増感型太陽電池モジュールについて説明する。本発明の色素増感型太陽電池モジュールは、上記色素増感型太陽電池セルが用いられたことを特徴とするものである。
このような本発明の色素増感型太陽電池モジュールを図を参照して説明する。図8は、本発明の色素増感型太陽電池モジュールの一例を示す概略断面図である。図8に示すように、本発明の色素増感型太陽電池モジュール60は、上記色素増感型太陽電池セル40と、各々の色素増感型太陽電池セル40に含まれる電解質層31を封止する封止部61と、第1透明電極層5および第2透明電極層41を直列に接続する導電性接着層62とを有するものである。
なお、図8においては、上記色素増感型太陽電池モジュールが、上記色素増感型太陽電池セルを複数有するものについて例示したが、上記色素増感型太陽電池セルを1つだけ有するものであっても良い。
本発明によれば、品質面およびコスト面において有利な色素増感型太陽電池セルが用いられることにより、品質面およびコスト面において有利なものとすることができる。
本発明の色素増感型太陽電池モジュールは、上記色素増感型太陽電池セルが用いられたものである。以下、本発明の色素増感型太陽電池モジュールについて説明する。
本発明の色素増感型太陽電池モジュールが、複数の色素増感型太陽電池セルを有する場合、各々の色素増感型太陽電池セルは、直列に接続されたものであっても良く、並列に接続されたものであっても良い。
また、各々の色素増感型太陽電池セルは、上記基材および対向基材を共有するものであっても良く、個別に有するものであっても良い。本発明においては、なかでも、上記基材および対向基材を共有するものであることが好ましい。本発明の色素増感型太陽電池モジュールを、機械強度に優れたものとすることができるからである。
なお、上記色素増感型太陽電池セルの各構成については、上記「D.色素増感型太陽電池セル」の項に記載したものと同様の内容とすることができる。
本発明の色素増感型太陽電池モジュールは、必要に応じて、電解質層の周囲に設けられ、電解質層を封止する機能を有する封止部や、上記色素増感型太陽電池セルが有する透明電極間を接続する導電接着部や、上記色素増感型太陽電池セルの酸化物半導体電極および対電極基材の厚みを一定にするスペーサを有するものであっても良い。ここで、上記封止部、導電接着部およびスペーサとしては、色素増感型太陽電池モジュールの製造に一般的に使用されているものを用いることができる。
また、本発明の色素増感型太陽電池モジュールの製造方法としては、色素増感型太陽電池セルを所定の位置に配置することができる方法であれば特に限定されるものではなく、公知の方法を用いることができる。
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と、実質的に同一の構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなる場合であっても本発明の技術的範囲に包含される。
以下、実施例を用いて、本発明をさらに具体的に説明する。
[実施例1]
1.多孔質層の形成
(1)介在層形成層の形成
密着用微粒子として粒径20nmのTiO微粒子(日本アエロジル)2.5質量%および応力緩和用微粒子として粒径500nmのTiO微粒子(昭和電工)12.7質量%と、エチルセルロース(日新化成)10.6質量%と、ターピネオール74.2質量%とを混合し、介在層形成用塗工液とした。
上記介在層形成用塗工液を耐熱基板として用意したガラス基板(厚み1mm)上にスクリーン印刷法により、塗工した後、120℃において10分で乾燥させ、介在層形成用層を形成した。
(2)酸化物半導体層形成層の形成
次いで、酸化物半導体層形成用塗工液として、Solaronix SA社製Ti Nanoxide T/SPを、介在層形成用層が形成されたガラス基板上にスクリーン印刷法にて積層した。室温下にて20分放置の後100℃、30分間乾燥させ、酸化物半導体層形成用層を形成した。
(3)多孔質層の形成
次いで、耐熱基板上に形成された上記介在層形成用層および酸化物半導体層形成用層を、電気マッフル炉(デンケン社製P90)を用い500℃、30分間、大気圧雰囲気下にて焼成した。これにより、多孔質体として形成された介在層および酸化物半導体層を得た。
この焼成時において、介在層および酸化物半導体層の間でクラックが発生することはなかった。
2.第1透明電極層の形成
その後、エタノールに塩化インジウム0.1mol/l、塩化スズ0.005mol/lを溶解した塗工液を用意し、上記焼成を行ったガラス基板を、酸化物半導体層を上向きにし、ホットプレート(400℃)上へ設置し、この加熱された酸化物半導体層上に、上述の塗工液を超音波噴霧器により噴霧し、第1透明電極層である厚さ500nmのITO膜を形成し、酸化物半導体電極用積層体を得た。
3.接着層および基材の付与
基材として用意したPETフィルム(東洋紡E5100、厚さ125μm)上にヒートシール剤(東洋紡 MD1985)を塗布、風乾させた。上記基材のヒートシール剤と上記酸化物半導体電極用積層体の第1透明電極層であるITO膜とを接触させ、120℃でラミネートすることで耐熱基板付酸化物半導体電極を得た。
4.耐熱基板の剥離
次いで、耐熱基板を剥離することでITO膜、酸化物半導体層、および介在層を基材へと転写し、酸化物半導体層電極を得た。
5.色素増感型太陽電池用基材の作製
次いで、色素増感剤としてルテニウム錯体(小島化学株式会社RuL2(NCS)2)を無水エタノール溶液に濃度3×10−4mol/lとなるように溶解させ、吸着用色素溶液を作製し、上記酸化物半導体電極を浸漬することにより介在層および酸化物半導体層に色素増感剤を担持させた、色素増感型太陽電池用基材を作製した。
6.色素増感型太陽電池セルの作製
メトキシアセトニトリルを溶媒とし、濃度0.1mol/lのヨウ化リチウム、濃度0.05mol/lのヨウ素、濃度0.3mol/lのジメチルプロピルイミダゾリウムアイオダイド、濃度0.5mol/lのターシャリーブチルピリジンを溶解させたものを電解質層形成用組成物とした。
上記色素増感型太陽電池用基材を1cm×1cmにトリミングした後、対向基材を厚さ20μmのサーリンによって貼り合せ、その間に電解質層形成用組成物を含浸させ、色素増感型太陽電池セルを作製した。対向基材としては、膜厚150nmを有し、表面抵抗7Ω/□である、ITOスパッタ層を有する対向フィルム基材上に膜厚50nmの白金膜をスパッタリングにて付与したものを用いた。
7.評価
作製した色素増感型太陽電池セルの評価は、AM1.5、擬似太陽光(入射光強度100mW/cm)を光源として、色素増感剤を吸着させた多孔質層を有する色素増感型太陽電池用基板側から入射させ、ソースメジャーユニット(ケースレー2400型)にて電圧印加により電流電圧特性を測定した。その結果、短絡電流15.2mA/cm、開放電圧710mV、変換効率6.2%であった。
[実施例2]
密着用微粒子として粒径20nmのTiO微粒子(日本アエロジル)5.1質量%および応力緩和用微粒子として粒径500nmのTiO微粒子(昭和電工)10.1質量%と、エチルセルロース(日新化成)10.6質量%と、ターピネオール74.2質量%とを混合し、介在層形成用塗工液とした以外は、実施例1と同様にして色素増感型太陽電池セルを作製した。
また、得られた色素増感型太陽電池セルについて、実施例1と同様の評価を行ったところ、短絡電流14.9mA/cm、開放電圧707mV、変換効率6.0%であった。
[実施例3]
密着用微粒子として粒径20nmのTiO微粒子(日本アエロジル)1.6質量%および応力緩和用微粒子として粒径500nmのTiO微粒子(昭和電工)13.6質量%と、エチルセルロース(日新化成)10.6質量%と、ターピネオール74.2質量%とを混合し、介在層形成用塗工液とした以外は、実施例1と同様にして色素増感型太陽電池セルを作製した。
また、得られた色素増感型太陽電池セルについて、実施例1と同様の評価を行ったところ、短絡電流15.6mA/cm、開放電圧693mV、変換効率5.9%であった。
[比較例1]
応力緩和用微粒子である粒径500nm(昭和電工)15.2質量%と、エチルセルロース(日新化成)10.6質量%と、ターピネオール74.2質量%とを混合し、密着用微粒子を添加せずに介在層形成用塗工液を作製し、上記介在層形成用塗工液を用いて、介在層形成用層を形成した以外は、実施例1と同様にして、酸化物半導体電極用積層体を作製した。
しかし、上記酸化物半導体電極用積層体を作製する際の焼成時に、酸化物半導体層にクラックが入り、剥離してしまい、次の工程に移行することができなかった。
[比較例2]
密着用微粒子として粒径20nmのTiO微粒子(日本アエロジル)15.2質量%と、エチルセルロース(日新化成)10.6質量%と、ターピネオール74.2質量%とを混合し、応力緩和用微粒子を添加せずに介在層形成用塗工液を作製し、上記介在層形成用塗工液を用いて、介在層形成用層を形成した以外は、実施例1と同様にして、耐熱基板付酸化物半導体電極を作製した。
しかし、上記耐熱基板付酸化物半導体電極において、酸化物半導体層と、耐熱基板とが強く密着しており、耐熱基板を剥離することができず、ITO膜、酸化物半導体層、および介在層を基材へと転写することができなかった。
本発明の酸化物半導体電極用積層体の一例を示す概略断面図である。 本発明の酸化物半導体電極用積層体の製造方法の一例を示す工程図である。 本発明の耐熱基板付酸化物半導体電極の一例を示す概略断面図である。 本発明の酸化物半導体電極用の一例を示す概略断面図である。 本発明の酸化物半導体電極用の製造方法の一例を示す工程図である。 本発明における多孔質層のパターニング工程の一例を示す工程図である。 本発明の色素増感型太陽電池セルの一例を示す概略断面図である。 本発明の色素増感型太陽電池モジュールの一例を示す概略断面図である。
符号の説明
1 … 耐熱基板
2 … 介在層
3 … 酸化物半導体層
4 … 多孔質層
5 … 第1透明電極層
6 … 接着層
7 … 基材
10 … 酸化物半導体電極用積層体
20 … 耐熱基板付酸化物半導体電極
30 … 酸化物半導体電極
31 … 電解質層
40 … 色素増感型太陽電池セル
41 … 第2透明電極層
42 … 対向基材
43 … 対電極基材
50 … パターニング基材
51 … 基材
52 … 熱溶融性樹脂層
60 … 色素増感型太陽電池モジュール

Claims (5)

  1. 耐熱基板と、前記耐熱基板上に形成され、密着用微粒子および応力緩和用微粒子を含む介在層、および前記介在層上に形成され、金属酸化物微粒子を含む酸化物半導体層からなる多孔質層と、前記多孔質層上に形成され、金属酸化物からなる第1透明電極層と、を有する酸化物半導体電極用積層体であって、
    前記応力緩和用微粒子の粒径は、前記密着用微粒子の粒径および前記金属酸化物微粒子の粒径より大きく、
    前記密着用微粒子および前記応力緩和用微粒子の質量比が10:15〜10:90であることを特徴とする酸化物半導体電極用積層体。
  2. 請求項1に記載の酸化物半導体電極用積層体と、前記酸化物半導体電極用積層体が有する第1透明電極層上に形成され、熱可塑性樹脂からなる接着層と、前記接着層上に形成された基材と、を有することを特徴とする耐熱基板付酸化物半導体電極。
  3. 基材と、前記基材上に形成され、熱可塑性樹脂からなる接着層と、前記接着層上に形成され、金属酸化物からなる第1透明電極層と、前記第1透明電極層上に形成され、金属酸化物半導体微粒子を含む酸化物半導体層および、前記酸化物半導体層上に形成され、密着用微粒子および応力緩和用微粒子を含む介在層からなる多孔質層と、を有し、
    前記応力緩和用微粒子の粒径は、前記密着用微粒子の粒径および前記金属酸化物微粒子の粒径より大きく、
    前記密着用微粒子および前記応力緩和用微粒子の質量比が10:15〜10:90であることを特徴とする酸化物半導体電極。
  4. 請求項3に記載の酸化物半導体電極の多孔質層であって、
    前記多孔質層に含まれる前記金属酸化物半導体微粒子の表面に色素増感剤が吸着した多孔質層と、第2透明電極層および対向基材からなる対電極基材の第2透明電極層とが、酸化還元対を含む電解質層を介して、対向配置されていることを特徴とする色素増感型太陽電池セル。
  5. 請求項4に記載の色素増感型太陽電池セルが用いられたことを特徴とする色素増感型太陽電池モジュール。
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