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JP5298462B2 - 酸性置換基と不飽和マレイミド基を有する硬化剤の製造法並びに熱硬化性樹脂組成物、プリプレグ及び積層板 - Google Patents

酸性置換基と不飽和マレイミド基を有する硬化剤の製造法並びに熱硬化性樹脂組成物、プリプレグ及び積層板 Download PDF

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Description

本発明は、酸性置換基と不飽和マレイミド基を有する硬化剤(以下、単に硬化剤とも云う)の製造法並びに熱硬化性樹脂組成物、プリプレグ及び積層板に関し、詳しくは、有機溶媒への溶解性が改良された該硬化剤の製造法並びに該製造法で得られた硬化剤を用いる、銅箔接着性、耐熱性、耐湿性、難燃性、銅付き耐熱性及び誘電特性(比誘電率、誘電正接)の全てにおいてバランスがとれ、電子機器用プリント配線板に有用な熱硬化性樹脂組成物、プリプレグ及び積層板に関する。
熱硬化性樹脂は、熱硬化性樹脂に特有な架橋構造が高い耐熱性や寸法安定性を発現するため、電子部品などの高い信頼性を要求される分野において広く使われ、特に銅張積層板や層間絶縁材料においては、近年の高密度化への要求から、微細配線形成のための高い銅箔接着性や、ドリル又は打ち抜きにより穴あけなどの加工をする際の加工性が必要とされる。また、近年の環境問題から、鉛フリーはんだによる電子部品の搭載やハロゲンフリーによる難燃化が要求され、そのため従来のものよりも高い耐熱性及び難燃性が必要とされる。さらに、製品の安全性や作業環境の向上化のため、毒性の低い成分のみで構成され、毒性ガスなどが発生しない熱硬化性樹脂組成物が望まれている。
熱硬化性樹脂であるビスマレイミド化合物は、低誘電特性、難燃性、耐熱性に優れる樹脂であるが、公知のビスマレイミド化合物は、エポキシ樹脂との硬化反応性を有さないため、エポキシ硬化系の熱硬化性樹脂にそのまま使用した場合、耐熱性が不足する。
このためビスマレイミド化合物とアミノフェノールの付加物を加熱混練により製造し硬化剤としてエポキシ硬化系の熱硬化性樹脂組成物に使用する方法が開示されている(例えば特許文献1、2参照)。しかし、この特許文献1、2の方法ではビスマレイミド化合物とアミノフェノールの付加物の収率が低く、これを含む熱硬化性樹脂組成物を銅張積層板や層間絶縁材料として使用すると、耐熱性や加工性等が不足である。
また、メラミン樹脂やグアナミン化合物を使用した熱硬化性樹脂組成物が知られている(例えば、特許文献3、4、5、6、7参照)。
しかし、熱硬化性樹脂であるメラミン樹脂やグアナミン化合物は、接着性、難燃性、耐熱性に優れる樹脂であるが、有機溶媒への溶解性が不足し、毒性の高いN,N−ジメチルホルムアミドなどのN原子含有有機溶媒を多量に使用しないと熱硬化性樹脂組成物の作製が困難であったり、保存安定性が不足するなどの問題がある。
さらに、これらの熱硬化性樹脂組成物を使用した銅張積層板や層間絶縁材料は、電子部品などを製造する際、めっき液などの各種薬液を汚染する問題がある。
このメラミン樹脂又はグアナミン化合物をホルムアルデヒドなどのアルデヒド類を用いて縮合させた熱硬化性樹脂を使用した熱硬化性樹脂組成物は、有機溶媒への溶解性は改良されているものの、熱分解温度が低く、毒性の分解ガスを発生するため作業環境を悪化させたり、近年要求される鉛フリーはんだへの耐熱性や銅付き耐熱性に不足する。 また、微細な加工処理・配線形成において、銅箔接着性や可とう性、靭性が不足し、回路パターンが断線や剥離を生じたり、ドリルや打ち抜きにより穴あけなどの加工をする際にクラックが発生する等の不具合が生じる。
また、メチロール化グアナミン樹脂も開示されているが(例えば、特許文献8参照)、これも上記と同様に耐熱性や接着性、加工性等の問題がある。
さらに、ビスマレイミド化合物とアミノ安息香酸の付加物を使用する熱硬化性樹脂組成物が開示されているが(例えば、特許文献9参照)、該樹脂組成物の硬化物は熱分解温度が低く、近年要求される鉛フリーはんだへの耐熱性や銅付き耐熱性に不足する。また、該樹脂組成物は有機溶媒への溶解性が低く、加工性等の問題がある。
特公昭63−034899号公報 特開平06−032969号公報 特公昭62−046584号公報 特開平10−067942号公報 特開2001−011672号公報 特開平02−258820号公報 特開平03−145476号公報 特公昭62−061051号公報 特公平06−008342号号公報
本発明の目的は、こうした現状に鑑み、有機溶媒への溶解性が改良された硬化剤の製造法並びに銅箔接着性、耐熱性、耐湿性、難燃性、銅付き耐熱性及び誘電特性(比誘電率、誘電正接)の全てにおいてバランスがとれ、電子機器用プリント配線板に有用な熱硬化性樹脂組成物、プリプレグ及び積層板を提供することである。
本発明者らは、前記目的を達成するために鋭意研究を重ねた結果、有機溶媒中で、1分子中に少なくとも2個のN−置換マレイミド基を有するマレイミド化合物と、特定式の酸性置換基を有するアミン化合物を、反応させることにより、得られた有機溶媒を含む硬化剤が有機溶媒への溶解性が良く、この硬化剤を用いることにより前記目的に沿う、電子機器用プリント配線板に有用な熱硬化性樹脂組成物、プリプレグ及び積層板が得られることを見出した。本発明は、かかる知見に基づいて完成したものである。
すなわち、本発明は、以下の硬化剤の製造法並びに、熱硬化性樹脂組成物、プリプレグ及び積層板を提供するものである。
1.(a)1分子中に少なくとも2個のN−置換マレイミド基を有するマレイミド化合物と(b)下記の一般式(I)に示す酸性置換基を有するアミン化合物を、有機溶媒中で反応させることを特徴とする酸性置換基と不飽和マレイミド基を有する硬化剤の製造法。
Figure 0005298462
(式中、R1は各々独立に、酸性置換基である水酸基、カルボキシル基又はスルホン酸基を示し、R2は各々独立に、水素原子、炭素数1〜5の脂肪族炭化水素基又はハロゲン原子を示し、xは1〜5の整数、yは0〜4の整数で、且つxとyの和は5である。)
2.酸性置換基と不飽和マレイミド基を有する硬化剤が、下記の一般式(II)又は一般式(III)に示されるものである上記1の酸性置換基と不飽和マレイミド基を有する硬化剤の製造法。
Figure 0005298462
(式中、R1、R2、x及びyは一般式(I)におけると同じものを示し、R3は各々独立に、水素原子、炭素数1〜5の脂肪族炭化水素基又はハロゲン原子を示す。)
Figure 0005298462
(式中、R1、R2、x及びyは一般式(I)におけると同じものを示し、R4及びR5は各々独立に、水素原子、炭素数1〜5の脂肪族炭化水素基又はハロゲン原子を示し、Aはアルキレン基、アルキリデン基、エーテル基、スルフォニル基又は下記の式(IV)に示す基である。)
Figure 0005298462
3.(A)上記1又は2により製造された酸性置換基と不飽和マレイミド基を有する硬化剤及び(B)前記硬化剤と共に硬化する化合物を含有し、その硬化物のガラス転移温度が200℃以上であることを特徴とする熱硬化性樹脂組成物。
4.(B)前記硬化剤と共に硬化する化合物が、1分子中に少なくとも2個の1級アミノ基を有するアミン化合物である上記3の熱硬化性樹脂組成物。
5.(B)硬化剤と共に硬化する化合物が、下記の一般式(V)に示す6−置換グアナミン化合物であり、更に(C)25℃での無限希釈水溶液中の酸解離定数(pKa)が4.05以上であるカルボキシル基含有酸性化合物を含有する上記3の熱硬化性樹脂組成物。
Figure 0005298462
(式中、R6はフェニル基、メチル基、アリル基、ブチル基、メトキシ基又はベンジルオキシ基を示す)
6.さらに、(D)1分子中に少なくとも2個のエポキシ基を有するエポキシ樹脂を含有する上記3〜5のいずれかの熱硬化性樹脂組成物。
7.さらに、(E)無機充填剤を含有する上記3〜6のいずれかの熱硬化性樹脂組成物。
8.上記3〜7のいずれかの熱硬化性樹脂組成物を、基材に含浸又は塗工した後、Bステージ化して得られたプリプレグ。
9.上記8のプリプレグを積層成形して得られた積層板。
本発明の方法により製造される硬化剤は、有機溶媒への溶解性が良く、金属箔接着性、耐熱性、耐湿性、難燃性、銅付き耐熱性、低誘電特性、低誘電正接性の全てに優れる熱硬化性樹脂組成物を与える。
このため本発明により、該熱硬化性樹脂組成物を用いて、優れた性能を有するプリプレグや積層板などを提供することができる。
以下、本発明について詳細に説明する。なお、本発明の方法で製造される硬化剤は有機溶媒を含むものである。また、(B)成分の熱硬化性樹脂はモノマー又はオリゴマーである場合がある。
先ず、本発明の硬化剤の製造法では、(a)1分子中に少なくとも2個のN−置換マレイミド基を有するマレイミド化合物と、(b)一般式(I)に示す酸性置換基を有するアミン化合物を有機溶媒中で反応させる。
(a)成分の1分子中に少なくとも2個のN−置換マレイミド基を有するマレイミド化合物としては、例えば、ビス(4−マレイミドフェニル)メタン、ビス(4−マレイミドフェニル)エーテル、ビス(4−マレイミドフェニル)スルホン、3,3−ジメチル−5,5−ジエチル−4,4−ジフェニルメタンビスマレイミド、4−メチル−1,3−フェニレンビスマレイミド、m−フェニレンビスマレイミド、2,2−ビス(4−(4−マレイミドフェノキシ)フェニル)プロパン等が挙げられ、これらの中で、反応率が高く、より高耐熱性化できるビス(4−マレイミドフェニル)メタン、m−フェニレンビスマレイミド及びビス(4−マレイミドフェニル)スルホンが好ましく、安価である点から、m−フェニレンビスマレイミド及びビス(4−マレイミドフェニル)メタンがより好ましく、溶媒への溶解性の点からビス(4−マレイミドフェニル)メタンが特に好ましい。
(b)成分は、下記の一般式(I)に示すアミン化合物であり、水酸基、カルボキシル基、スルホン酸基から選ばれる酸性置換基を有するものである。
Figure 0005298462
(式中、R1は各々独立に、酸性置換基である水酸基、カルボキシル基又はスルホン酸基を示し、R2は各々独立に、水素原子、炭素数1〜5の脂肪族炭化水素基又はハロゲン原子を示し、xは1〜5の整数、yは0〜4の整数で、且つxとyの和は5である。)
このような(b)一般式(I)で表されるアミン化合物としては、例えば、m−アミノフェノール、p−アミノフェノール、o−アミノフェノール、p−アミノ安息香酸、m−アミノ安息香酸、o−アミノ安息香酸、o−アミノベンゼンスルホン酸、m−アミノベンゼンスルホン酸、p−アミノベンゼンスルホン酸、3,5−ジヒドロキシアニリン、3,5−ジカルボキシアニリン等が挙げられ、これらの中で、溶解性や合成の収率の点からm−アミノフェノール、p−アミノフェノール、p−アミノ安息香酸、m−アミノ安息香酸及び3,5−ジヒドロキシアニリンが好ましく、耐熱性の点からm−アミノフェノール及びp−アミノフェノールがより好ましく、低毒性である点からm−アミノフェノールが特に好ましい。
この反応で使用される有機溶媒は特に制限はないが、例えばエタノール、プロパノール、ブタノール、メチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、プロピレングリコールモノメチルエーテル等のアルコール系溶媒、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系溶媒、テトラヒドロフラン等のエーテル系溶媒、トルエン、キシレン、メシチレン等の芳香族系溶媒、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン等の窒素原子含有溶媒、ジメチルスルホキシド等の硫黄原子含有溶媒などが挙げられ、1種又は2種以上を混合して使用できる。
これらの中で、溶解性の点からシクロヘキサノン、プロピレングリコールモノメチルエーテル及びメチルセロソルブが好ましく、低毒性の点からシクロヘキサノン及びプロピレングリコールモノメチルエーテルがより好ましく、揮発性が高くプリプレグの製造時に残溶媒として残りにくいプロピレングリコールモノメチルエーテルが特に好ましい。
ここで、(a)成分のマレイミド化合物と(b)成分のアミン化合物の使用量は、(b)成分の−NH2基の当量(Tb)に対する(a)のマレイミド化合物のマレイミド基の当量(Ta)の当量比(Ta/Tb)が1.0〜10.0の範囲であることが好ましく、該当量比(Ta/Tb)が2.0〜10.0の範囲であることがさらに好ましい。該当量比(Ta/Tb)を1.0以上とすることにより熱硬化性樹脂組成物の耐熱性が得られ、10.0以下とすることにより硬化剤の有機溶媒への溶解性が不足することがなく、熱硬化性樹脂組成物の耐熱性が得られる。
また、有機溶媒の使用量は、(a)成分と(b)成分の総和100質量部当たり、10〜1000質量部とすることが好ましく、100〜500質量部とすることがより好ましく、200〜500質量部とすることが特に好ましい。有機溶媒の配合量が10質量部より少ないと硬化剤の有機溶媒への溶解性が不足する可能性があり、また1000質量部を超えると合成に長時間を要する可能性がある。
(a)成分と(b)成分の反応温度は、50〜200℃であることが好ましく、100〜160℃であることが特に好ましい。反応時間は、0.1〜10時間であることが好ましく、1〜8時間であることが特に好ましい。例えば(a)成分と(b)成分を有機溶媒中で、必要により加熱・保温しながら攪拌し、反応させることにより、酸性置換基と不飽和マレイミド基を有する硬化剤が製造される。
なお、この反応には、必要により反応触媒を使用することができる。反応触媒の例としては、トリエチルアミン、ピリジン、トリブチルアミン等のアミン類、メチルイミダゾール、フェニルイミダゾール等のイミダゾール類、トリフェニルホスフィン等のリン系触媒等が挙げられ、これらは1種又は2種以上を混合して使用できる。
(a)成分と(b)成分の反応による反応生成物としては下記の一般式(II)又は一般式(III)で示すものを例示することができる。
Figure 0005298462
(式中、R1、R2、x及びyは一般式(I)におけると同じものを示し、R3は各々独立に 、水素原子、炭素数1〜5の脂肪族炭化水素基又はハロゲン原子を示す。)
Figure 0005298462
(式中、R1、R2、x及びyは一般式(I)におけると同じものを示し、R4及びR5は各々独立に、水素原子、炭素数1〜5の脂肪族炭化水素基又はハロゲン原子を示し、Aはアルキレン基、アルキリデン基、エーテル基、スルフォニル基又は下記の式(IV)に示す基である。)
Figure 0005298462
本発明の熱硬化性樹脂組成物は、(A)上記により製造された硬化剤及び(B)前記硬化剤と共に硬化する化合物を含有し、その硬化物のガラス転移温度が200℃以上であることを特徴とするものである。
本発明の熱硬化性樹脂組成物は、ガラス転移温度が200℃以上であることにより、良好なはんだ耐熱性が得られ、電子部品などを製造する際の加工性が良好である。
(B)成分の化合物としては、1分子中に少なくとも2個の1級アミノ基を有するアミン化合物が好適である。
この1分子中に少なくとも2個の1級アミノ基を有する化合物としては、例えばm−フェニレンジアミン、p−フェニレンジアミン、3,5−ジアミノフェノール、3,5−ジアミノ安息香酸、4,4'−ジアミノジフェニルメタン、4,4'−ジアミノジフェニルエーテル、4,4'−ジアミノジフェニルスルホン、3,3'−ジアミノジフェニルスルホン、4,4'−ジアミノジフェニルケトン、ベンジジン、3,3'−ジヒドロキシベンジジン、2,2−ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、3,3−ジメチル−5,5−ジエチル−4,4−ジフェニルメタンジアミン、4−メチル−1,3−フェニレンジアミン、2,2−ビス(4−アミノフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−(4−アミノフェノキシ)フェニル)プロパン、1,3−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、4,4'−ビス(4−アミノフェノキシ)ビフェニル、ビス(4−(4−アミノフェノキシ)フェニル)スルホン、ビス(4−(3−アミノフェノキシ)フェニル)スルホン、9,9−ビス(4−アミノフェニル)フルオレン等の芳香族アミン類、エチレンジアミン、n−ブチレンジアミン、n−ヘキサメチレンジアミン、トリメチルヘキサメチレンジアミン等の脂肪族アミン類、メラミン、ベンゾグアナミン、アセトグアナミン、2,4−ジアミノ−6−ビニル−s−トリアジン等のグアナミン化合物類が挙げられる。
(B)成分の化合物として、これらの中で、反応の反応率が高く、より高耐熱性化できる芳香族アミン類及びグアナミン化合物類が好ましく、低誘電特性、プリプレグ保管時の熱的安定性の点から下記の一般式(V)で示される6−置換グアナミン化合物(単に「グアナミン化合物」とも云う)がより好ましい。
Figure 0005298462
(式中、R6はフェニル基、メチル基、アリル基、ブチル基、メトキシ基又はベンジルオキシ基を示す。)
このような6−置換グアナミン化合物としては、ベンゾグアナミン(2,4−ジアミノ−6−フェニル−s−トリアジン)、アセトグアナミン(2,4−ジアミノ−6−メチル−s−トリアジン)、2,4−ジアミノ−6−ビニル−s−トリアジン等が挙げられ、安価である点からベンゾグアナミンが特に好ましい。
本発明の熱硬化性樹脂組成物は、(A)成分の硬化剤及び(B)成分として上記一般式(II)で示される6−置換グアナミン化合物と共に、更に(C)成分として25℃での無限希釈水溶液中の酸解離定数(pKa)が4.05以上であるカルボキシル基含有酸性化合物を含有することが好ましい。
(C)成分の25℃での無限希釈水溶液中の酸解離定数(pKa)が4.05以上であるカルボキシル基含有酸性化合物としては、例えば、アクリル酸、アジピン酸、アゼライン酸、(o-,m-,p-)アニス酸、4−アミノ酪酸、イソ酪酸、イソ吉草酸、吉草酸、グルタル酸、酢酸、シクロヘキサンカルボン酸、2−ナフトエ酸、(o-,m-,p-)ヒドロキシ安息香酸、ピメリン酸、フェニル酢酸、p-フルオロ安息香酸、プロピオン酸、ヘキサン酸、ヘプタン酸、酪酸、レブリン酸等が挙げられる。
これらの中で、グアナミン化合物の溶解性が高く、より高耐熱性化できるアクリル酸、アジピン酸、(o-,m-,p-)アニス酸、イソ酪酸、グルタル酸、酢酸、シクロヘキサンカルボン酸、(o-,m-,p-)ヒドロキシ安息香酸、フェニル酢酸、p-フルオロ安息香酸、プロピオン酸、ヘキサン酸、ヘプタン酸及び酪酸が好ましく、難燃性に優れる点から(o-,m-,p-)ヒドロキシ安息香酸がより好ましく、安価であり銅箔接着性に優れる点からp-ヒドロキシ安息香酸が特に好ましい。
なお、本発明において、25℃での無限希釈水溶液中の酸解離定数(pKa)は、化学便覧(改訂4版、基礎編II、p317、丸善(株)平成5年発行)より引用される数値である。
本発明の熱硬化性樹脂組成物には、(A)成分、(B)成分及び(C)成分の他に、さらに、(D)1分子中に少なくとも2個のエポキシ基を有するエポキシ樹脂を含有することが好ましい。
(D)成分の1分子中に少なくとも2個のエポキシ基を有するエポキシ樹脂としては、エポキシ樹脂であれば特に制限はなく、例えば、ビスフェノールA系、ビスフェノールF系、ビフェニル系、ノボラック系、多官能フェノール系、ナフタレン系、脂環式系、アルコール系等のグリシジルエーテル、グリシジルアミン系及びグリシジルエステル系などが挙げられ、これらは1種又は2種以上を混合して使用することができる。
(D)成分としては、これらの中で、誘電特性、耐熱性、耐湿性及び銅箔接着性の点からビスフェノールF型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、ビスフェノールAノボラック型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、ビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂及びクレゾールノボラック型エポキシ樹脂等が好ましく、難燃性や成形加工性の点からビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂及びクレゾールノボラック型エポキシ樹脂がより好ましく、安価であることからフェノールノボラック型エポキシ樹脂及びクレゾールノボラック型エポキシ樹脂が特に好ましい。
本発明の熱硬化性樹組成物に(D)成分を使用する場合には、エポキシ樹脂の硬化剤や硬化促進剤を併用してもよく、例えば、無水マレイン酸、無水マレイン酸共重合体等の酸無水物、ジシアノジアミドなどのアミン化合物、フェノールノボラック、クレゾールノボラック等のフェノール化合物などが挙げられる。これらの中で、耐熱性が良好となるフェノールノボラック、クレゾールノボラック等のフェノール化合物が好ましく、難燃性や接着性が向上することからクレゾールノボラック型フェノール樹脂が特に好ましい。
エポキシ樹脂の硬化促進剤の例としては、イミダゾール類及びその誘導体、第三級アミン類、第四級アンモニウム塩等が挙げられる。
上記(A)〜(D)成分を含有する熱硬化性樹脂組成物の組成は、(A)成分の固形分、(B)成分、(C)成分及び(D)成分の合計量100質量部中の質量部として次の如くとなる。
(A)成分の固形分は、1〜97質量部とすることが好ましく、10〜88質量部とすることがより好ましく、20〜78質量部とすることが特に好ましい。(A)成分を1質量部以上とすることにより難燃性や接着性、可とう性が不足することがなく、また97質量部以下とすることにより耐熱性が低下することがない。
(B)成分は、1〜50質量部とすることが好ましく、1〜30質量部とすることがより好ましく、1〜20質量部とすることが特に好ましい。(B)成分を1質量部以上とすることにより難燃性や接着性、誘電特性が不足することがなく、また50質量部以下とすることにより耐熱性が低下することがない。
(C)成分は、1〜50質量部とすることが好ましく、1〜30質量部とすることがより好ましく、1〜20質量部とすることが特に好ましい。(C)成分を1質量部以上とすることにより溶解性が不足することがなく、また50質量部以下とすることにより耐熱性が低下することがない。
(D)成分は、1〜97質量部とすることが好ましく、10〜88質量部とすることがより好ましく、20〜78質量部とすることが特に好ましい。(D)成分を1質量部以上とすることにより難燃性や接着性、可とう性が不足することがなく、また97質量部以下とすることにより耐熱性が低下することがない。
なお、(D)成分の質量部は、エポキシ樹脂の他に、必要に応じて加えられるエポキシ樹脂の硬化剤や硬化促進剤を含む質量部である。
本発明の熱硬化性樹脂組成物には、任意に(E)成分として強度・耐久性等の性質改善や低価格化等の目的で、無機充填剤を含有させることができる。無機充填剤の例としては、シリカ、マイカ、タルク、ガラス短繊維又は微粉末及び中空ガラス、三酸化アンチモン、炭酸カルシウム、石英粉末、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム等が挙げられ、これらの中で誘電特性、耐熱性、難燃性の点からシリカ、水酸化アルミニウム及び水酸化マグネシウムが好ましく、安価であることからシリカ、水酸化アルミニウムがより好ましい。
(E)成分の無機充填剤の使用量は、(A)成分の固形分、(B)成分、(C)成分及び(D)成分の合計量100質量部に対し、(E)成分を0〜300質量部とすることが好ましく、20〜200質量部とすることがより好ましく、20〜150質量部とすることが特に好ましい。(E)成分の配合量が300質量部を越えると成形性や接着性が低下する傾向がある。
さらに、本発明の熱可塑性樹脂組成物には、本発明の目的を損なわない範囲において、任意に公知の熱可塑性樹脂、エラストマー、難燃剤、充填剤等を含有させることができる。
熱可塑性樹脂の例としては、ポリテトラフルオロエチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリフェニレンエーテル樹脂、フェノキシ樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、キシレン樹脂、石油樹脂、シリコーン樹脂等が挙げられる。
エラストマーの例としては、ポリブタジエン、ポリアクリロニトリル、エポキシ変性ポリブタジエン、無水マレイン酸変性ポリブタジエン、フェノール変性ポリブタジエン、カルボキシ変性ポリアクリロニトリル等が挙げられる。
難燃剤の例としては、臭素や塩素を含有する含ハロゲン系難燃剤、トリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、トリスジクロロプロピルホスフェート、ホスファゼン、赤リン等のリン系難燃剤、三酸化アンチモン、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム等の無機物の難燃剤等が挙げられる。これらの難燃剤の中で、本発明の熱硬化性樹脂組成物は難燃効果が高いという利点も有するため、非ハロゲン系難燃剤であるリン系難燃剤、無機物の難燃剤等が環境上の問題から好ましく、リン系難燃剤と水酸化アルミニウムなどの無機物の難燃剤を併用して用いることが、安価であり、難燃性、耐熱性等の他特性との両立の点から特に好ましい。
充填剤の例としては、シリコーンパウダー、ポリテトラフルオロエチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリフェニレンエーテル等の有機物粉末などが挙げられる。
本発明において、該熱硬化性樹脂組成物に対して任意に各種の添加剤を含有させることも可能である。これらの添加剤は特に制限されないが、例えば、ベンゾトリアゾール系等の紫外線吸収剤、ヒンダードフェノール系やスチレン化フェノール等の酸化防止剤、ベンゾフェノン類、ベンジルケタール類、チオキサントン系等の光重合開始剤、スチルベン誘導体等の蛍光増白剤、尿素シランなどの尿素化合物、シランカップリング剤等の密着性向上剤等が挙げられる。
本発明のプリプレグは、上記の熱硬化性樹脂組成物を、基材に含浸又は塗工した後、Bステージ化してなるものである。すなわち、本発明の熱硬化性樹脂組成物を、基材に含浸又は塗工し、加熱等により半硬化(Bステージ化)して本発明のプリプレグを製造することができる。以下、本発明のプリプレグについて詳述する。
本発明のプリプレグに用いられる基材には、各種の電気絶縁材料用積層板に用いられている周知のものが使用できる。その材質の例としては、Eガラス、Dガラス、Sガラス及びQガラス等の無機物の繊維、ポリイミド、ポリエステル及びポリテトラフルオロエチレン等の有機物の繊維、並びにそれらの混合物等が挙げられる。これらの基材は、例えば、織布、不織布、ロービンク、チョップドストランドマット及びサーフェシングマット等の形状を有するが、材質及び形状は、目的とする成形物の用途や性能により選択され、必要により、単独又は2種類以上の材質及び形状を組み合わせることができる。
基材の厚さは、特に制限されないが、例えば、約0.03〜0.5mmのものを使用することができ、シランカップリング剤等で表面処理したもの又は機械的に開繊処理を施したものが、耐熱性や耐湿性、加工性の面から好適である。該基材に対する樹脂組成物の付着量が、乾燥後のプリプレグの樹脂含有率で、20〜90質量%となるように、基材に含浸又は塗工した後、通常、100〜200℃の温度で1〜30分加熱乾燥することにより、半硬化(Bステージ化)させて、本発明のプリプレグを得ることができる。
本発明の積層板は、上記の本発明のプリプレグ用いて積層成形して得られるものである。すなわち、本発明のプリプレグを、例えば、1〜20枚重ね、その片面又は両面に銅及びアルミニウム等の金属箔を配置した構成で積層成形することにより積層板を製造することができる。金属箔は、電気絶縁材料用途で用いるものであれば特に制限されない。また、成形条件は、例えば、電気絶縁材料用積層板及び多層板の手法が適用でき、例えば多段プレス、多段真空プレス、連続成形、オートクレーブ成形機等を使用し、温度100〜250℃、圧力0.2〜10MPa、加熱時間0.1〜5時間の範囲で成形することができる。また、本発明のプリプレグと内層用配線板とを組合せ、積層成形して、多層板を製造することもできる。
次に、下記の実施例により本発明を更に詳しく説明するが、これらの実施例は本発明を制限するものではない。
なお、以下の実施例で得られた銅張積層板は、以下の方法で性能を測定・評価した。
(1)銅箔接着性(銅箔ピール強度)の評価
銅張積層板を銅エッチング液に浸漬することにより、1cm幅の帯部分を残して銅箔を取り除いた評価基板を作製し、オートグラフ〔島津製作所(株)製AG−100C〕を用いて帯部分のピール強度を測定することにより評価した。
(2)ガラス転移温度(Tg)の測定
銅張積層板を銅エッチング液に浸漬することにより、銅箔を取り除いた5mm角の評価基板を作製し、TMA試験装置〔デュポン(株)製TMA2940〕を用い、評価基板の熱膨張特性に基づき測定した。
(3)はんだ耐熱性の評価
銅張積層板を銅エッチング液に浸漬することにより銅箔を取り除いた5cm角の評価基板を作製し、プレッシャー・クッカー試験装置〔平山製作所(株)製〕を用いて、121℃、0.2MPaの条件に4時間放置した後、温度288℃のはんだ浴に、評価基板を20秒間浸漬した後、外観を観察することによりはんだ耐熱性を評価した。
(4)銅付き耐熱性(T−288)の評価
銅張積層板から5mm角の評価基板を作製し、TMA試験装置〔デュポン(株)製TMA2940〕を用い、288℃で評価基板の膨れが発生するまでの時間を測定することにより評価した。
(5)吸湿性(吸水率)の測定
銅張積層板を銅エッチング液に浸漬することにより銅箔を取り除いた評価基板を作製し、プレッシャー・クッカー試験装置〔平山製作所(株)製〕を用いて、121℃、0.2mPaの条件に4時間放置した後、評価基板の吸水率を測定した。
(6)難燃性の評価
銅張積層板を銅エッチング液に浸漬することにより銅箔を取り除いた評価基板から、長さ127mm、幅12.7mmに切り出した評価基板を作製し、UL94の試験法(V法)に準じて評価した。
(7)比誘電率及び誘電正接の測定
得られた銅張積層板を銅エッチング液に浸漬することにより銅箔を取り除いた評価基板を作製し、比誘電率測定装置(Hewllet・Packerd社製、HP4291B)を用いて、周波数1GHzでの比誘電率及び誘電正接を測定した。
製造例1:硬化剤(A−1)の製造
温度計、攪拌装置、還流冷却管付き水分定量器の付いた加熱及び冷却可能な容積2リットルの反応容器に、ビス(4−マレイミドフェニル)メタン358.00g、m−アミノフェノール54.50g及び有機溶媒(プロピレングリコールモノメチルエーテル)412.50gを入れ、還流させながら5時間反応させて有機溶媒を含む硬化剤(A−1)を得た。
製造例2:硬化剤(A−2)の製造
温度計、攪拌装置、還流冷却管付き水分定量器の付いた加熱及び冷却可能な容積2リットルの反応容器に、ビス(4−マレイミドフェニル)メタン358.00g、p−アミノフェノール54.50g及び有機溶媒(プロピレングリコールモノメチルエーテル)412.50gを入れ、還流させながら5時間反応させて有機溶媒を含む硬化剤(A−2)を得た。
製造例3:硬化剤(A−3)の製造
温度計、攪拌装置、還流冷却管付き水分定量器の付いた加熱及び冷却可能な容積2リットルの反応容器に、ビス(4−マレイミドフェニル)メタン358.00g、p−アミノ安息香酸68.50g及び有機溶媒(N,N−ジメチルアセトアミド)426.50gを入れ、140℃で5時間反応させて有機溶媒を含む硬化剤(A−3)を得た。
製造例4:硬化剤(A−4)の製造
温度計、攪拌装置、還流冷却管付き水分定量器の付いた加熱及び冷却可能な容積1リットルの反応容器に、m−フェニレンビスマレイミド268.00g、m−アミノフェノール54.50g及び有機溶媒(N,N−ジメチルアセトアミド)322.50gを入れ、140℃で5時間反応させて有機溶媒を含む硬化剤(A−4)を得た。
製造例5:硬化剤(A−5)の製造
温度計、攪拌装置、還流冷却管付き水分定量器の付いた加熱及び冷却可能な容積2リットルの反応容器に、ビス(4−マレイミドフェニル)スルフォン:408.0gとp−アミノフェノール:54.5g及びN,N−ジメチルアセトアミド:462.5gを入れ、100℃で2時間反応させて有機溶媒を含む硬化剤(A−5)の溶液を得た。
製造例6:硬化剤(A−6)の製造
温度計、攪拌装置、還流冷却管付き水分定量器の付いた加熱及び冷却可能な容積2リットルの反応容器に、ビス(4−マレイミドフェニル)エーテル:360.0gとp−アミノフェノール:54.5g及びN,N−ジメチルアセトアミド:414.5gを入れ、
100℃で2時間反応させて有機溶媒を含む硬化剤(A−6)の溶液を得た。
製造例7:硬化剤(A−7)の製造
温度計、攪拌装置、還流冷却管付き水分定量器の付いた加熱及び冷却可能な容積2リットルの反応容器に、2,2'−ビス[4−(4−マレイミドフェノキシ)フェニル]プロパン:570.0gとp−アミノフェノール:54.5g及びプロピレングリコールモノメチルエーテル:624.5gを入れ、120℃で2時間反応させて有機溶媒を含む硬化剤(A−7)の溶液を得た。
製造例8:硬化剤(A−8)の製造
温度計、攪拌装置、還流冷却管付き水分定量器の付いた加熱及び冷却可能な容積2リットルの反応容器に、4−メチル−1,3−フェニレンビスマレイミド:282.0gとp−アミノフェノール:54.5g、及びプロピレングリコールモノメチルエーテル:336.5gを入れ、120℃で2時間反応させて有機溶媒を含む硬化剤(A−8)の溶液を得た。
比較製造例1:硬化剤(A−9)の製造
前記特許文献1の実施例を参考にし、蒸気加熱装置を付けた容積1リットルのニーダーに、ビス(4−マレイミドフェニル)メタン358.00g及びm−アミノフェノール54.50gを入れ、135〜140℃で15分間加熱混練した後冷却し、粉砕して硬化剤(A−9)の粉末を得た。なお、本比較製造例では有機溶媒を使用していないので、硬化剤(A−9)は本発明の製造法により得られたものには該当しない。
比較製造例2:硬化剤(A−10)の製造
前記特許文献9の実施例を参考にし、蒸気加熱装置を付けた容積1リットルのニーダーに、ビス(4−マレイミドフェニル)メタン358.00g及びm−アミノ安息香酸68.50gを入れ、135〜140℃で15分間加熱混練した後冷却し、粉砕して硬化剤(A−10)の粉末を得た。なお、本比較製造例では有機溶媒を使用していないので、硬化剤(A−10)は本発明の製造法により得られたものには該当しない。
実施例1〜10、比較例1〜6
製造例1〜8及び比較製造例1〜2で得られた(A)成分の硬化剤、(B)成分の6−置換グアナミン化合物としてベンゾグアナミン、(C)成分のカルボキシル基含有酸性化合物及び(D)成分のエポキシ樹脂、またエポキシ硬化剤としてフェノールノボラック樹脂、(E)成分の無機充填剤として水酸化アルミニウム、破砕シリカ、さらに希釈溶媒にメチルエチルケトンを使用して第1表〜第3表に示す配合割合(質量部)で混合して固形分70質量%の均一なワニスを得た。
次に、上記ワニスを厚さ0.2mmのEガラスクロスに含浸塗工し、160℃で10分加熱乾燥して固形分含有量が55質量%のプリプレグを得た。このプリプレグを4枚重ね、18μmの電解銅箔を上下に配置し、圧力2.45MPa、温度185℃で90分間プレスを行って、銅張積層板を得た。
得られた銅張積層板を用いて、(1)銅箔接着性(銅箔ピール強度)、(2)ガラス転移温度、(3)はんだ耐熱性、(4)銅付き耐熱性(T−288)、(5)吸湿性(吸水率)、(6)難燃性、(7)比誘電率(1GHz)、(8)誘電正接(1GHz)について前記の方法で測定・評価した。第1表及び第2表にその測定・評価結果を示す。
Figure 0005298462
Figure 0005298462
Figure 0005298462
なお、上記の第1表〜第3表における(C)カルボキシル基含有酸性化合物のC1:p−ヒドロキシ安息香酸の25℃での無限希釈水溶液中の酸解離定数(pKa)は4.08(文献値)、C2:安息香酸の25℃での無限希釈水溶液中の酸解離定数(pKa)は4.00(文献値)である。
また、(D)エポキシ樹脂のD1にはフェノールノボラック型エポキシ樹脂(大日本インキ化学工業株式会社製、商品名:エピクロンN−770)、D2にはクレゾールノボラック型エポキシ樹脂(大日本インキ化学工業株式会社製、商品名:エピクロンN−673)、エポキシ硬化剤としてクレゾールノボラック型フェノール樹脂(大日本インキ化学工業株式会社製、商品名:KA−1165)を用いた。
比較例5及び6では、熱硬化性樹脂が均一に溶解したワニスが得られず、プリプレグを作製することができなかった。
第1表〜第3表から明らかなように、本発明の製造法により得られた(A)成分の硬化剤を用いた熱硬化性樹脂組成物から製造されたプリプレグを用いた実施例では、銅箔ピール強度、耐熱性、耐湿性、難燃性、銅付き耐熱性(T−288)及び誘電特性(比誘電率、誘電正接)の全てにおいてバランスがとれている。
一方、有機溶媒を用いずに製造された酸性置換基と不飽和マレイミド基を有する硬化剤を用いた場合(比較例1,2,4,6)や、(C)成分が無い場合(比較例3)及び熱硬化性樹脂組成物のガラス転移温度(Tg)が本発明の要件を満足しない場合(比較例5)には、プリプレグを作製できないか、銅箔ピール強度、耐熱性、耐湿性、難燃性、銅付き耐熱性(T−288)及び誘電特性の全てを満たすものはなく、いずれかの特性に劣っている。
本発明の熱硬化性樹脂組成物を、基材に含浸または塗工して得たプリプレグ、及び該プリプレグを積層成形することにより製造した積層板は、銅箔接着性、耐熱性、耐湿性、難燃性、銅付き耐熱性(T−288)及び誘電特性の全てにおいてバランスがとれており、電子機器用プリント配線板として極めて有用である。

Claims (6)

  1. (A)(a)1分子中に少なくとも2個のN−置換マレイミド基を有するマレイミド化合物と(b)下記の一般式(I)に示す酸性置換基を有するアミン化合物とを、有機溶媒中で反応させて得られる酸性置換基と不飽和マレイミド基を有する硬化剤、及び(B)前記硬化剤と共に硬化する化合物を含有し、その硬化物のガラス転移温度が200℃以上である熱硬化性樹脂組成物であって、
    (B)前記硬化剤と共に硬化する化合物が、下記の一般式(V)に示す6−置換グアナミン化合物であり、更に(C)25℃での無限希釈水溶液中の酸解離定数(pKa)が4.05以上であるカルボキシル基含有酸性化合物を含有することを特徴とする熱硬化性樹脂組成物。
    Figure 0005298462
    (式中、R 1 は各々独立に、酸性置換基である水酸基、カルボキシル基又はスルホン酸基を示し、R 2 は各々独立に、水素原子、炭素数1〜5の脂肪族炭化水素基又はハロゲン原子を示し、xは1〜5の整数、yは0〜4の整数で、且つxとyの和は5である。)
    Figure 0005298462
    (式中、R 6 はフェニル基、メチル基、アリル基、ブチル基、メトキシ基又はベンジルオキシ基を示す)
  2. (A)酸性置換基と不飽和マレイミド基を有する硬化剤が、下記の一般式(II)又は一般式(III)に示すものである請求項1に記載の熱硬化性樹脂組成物。
    Figure 0005298462
    (式中、R1、R2、x及びyは一般式(I)におけると同じものを示し、R3は各々独立に、水素原子、炭素数1〜5の脂肪族炭化水素基又はハロゲン原子を示す。)
    Figure 0005298462
    (式中、R1、R2、x及びyは一般式(I)におけると同じものを示し、R4及びR5は各々独立に、水素原子、炭素数1〜5の脂肪族炭化水素基又はハロゲン原子を示し、Aはアルキレン基、アルキリデン基、エーテル基、スルフォニル基又は下記の式(IV)に示す基である。)
    Figure 0005298462
  3. さらに、(D)1分子中に少なくとも2個のエポキシ基を有するエポキシ樹脂を含有する請求項1または2に記載の熱硬化性樹脂組成物。
  4. さらに、(E)無機充填剤を含有する請求項1〜3のいずれかに記載の熱硬化性樹脂組成物。
  5. 請求項1〜4のいずれかに記載の熱硬化性樹脂組成物を、基材に含浸又は塗工した後、Bステージ化して得られたプリプレグ。
  6. 請求項に記載のプリプレグを積層成形して得られた積層板。
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