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JP5281957B2 - 液体用容器 - Google Patents

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Description

本発明は、容器本体の開口部に配設されるノズル部と、該ノズルと容器本体の液室との間に液体が通る隔室を形成した液体用容器に関する。
歯科用接着剤や各種の治療薬等の種々の液体を充填する容器として、容器本体部とノズルとからなる液体用容器が用いられる。このような液体用容器は、容器本体部の可撓性を有する胴部(外周面)を指先で圧縮することにより、容器本体内に充填された液体を、ノズルの先端に設けられた液体流出口より少量ずつ流出させることができる。そして、容器本体を必要角度に傾斜させて使用することにより、液体を目的箇所に所望量だけ塗布したり滴下させることができる。
しかしながら、滴下を終え、容器への押圧力を緩めると、ノズルの先端に滴状になっていた液体の容器内にもどる液切れが悪いことが多く、これらは液垂れとなってノズルの先端に付着していた。特に、冷蔵庫などに貯蔵していた液体用容器を、使用した後にそのまま室温で放置をしておくと、内部の温度が室温の上昇につれて、容器本体の内部の空気(気体)が膨張して、ノズルの内部に残っている液体をノズルの先端部から噴き出させてしまい、激しい液垂れの原因になっていた。
この液垂れ現象を防止するため、図5に示す液体用容器が特許文献1として開示されている。
この液体用容器1は、粘性を有する液体が充填される容器本体2と容器本体2の開口3に配設されるノズル蓋部5とを備えている。容器本体2は、胴部が手で挟持して軽く圧縮できる程度の可撓性を備えている。容器本体2は、上部に台形状で中空の円錐部4を形成し、円錐部4よりも下部は円筒状の胴部7を形成し、胴部7の下端に底部8を形成している。この可撓性の容器本体2は、胴部7を指先で挟み込むようにして押すと胴部7が内側に窪み、指先を離すともとに形状に戻る。
ノズル蓋部5は、一体成形により形成され、基端側に断面が円形の筒状部10が形成され、先端側にノズル11が形成され、これらの筒状部10とノズル11の間にフランジ部12が形成されている。フランジ部12は、筒状部10の上端縁から筒状部10の半径方向外側に突出する環状部であり、開口3よりも大きな径を有している。
ノズル11は、先細りのテーパー形状であって、中間部に小径の流通路14がノズル11の中央位置を貫通し、流通路14の先端部には、先端部に向かって徐々に拡径する注出口15が設けられている。
筒状部10には、図6に示すように、ほぼ円筒有底形状の仕切材16が取付けられている。仕切材16は、弾性を有する部材を用いている。
仕切材16は、周壁部17と底部からなる円形の隔膜弁18とからなり、周壁部17は、筒状部10の周囲を包むように、内径を筒状部10の外周径よりもやや小さく形成し、ゴムの弾性力で取付けることができる。仕切材16の隔膜弁18は、筒状部10の下端部開口に対応する位置に配置され、容器本体2の内部とノズル蓋部5との間を仕切っている。
隔膜弁18の中心部には、直線状のスリット28が形成され、このスリット28が弁体の開弁部として形成されている。
このような液体用容器が液体を排出するには、容器本体2の胴部7を指先で軽く押圧する。このとき、隔膜弁18は閉弁状態にあるので、容器本体2の内部空間である液室6の内部圧力が上昇するにつれて、隔膜弁18が筒状部10の内方側に押されて隔室22側に前進する。そして、さらに内圧が上昇するとスリット28が開口して隔膜弁18が開弁状態になる。こうして、隔室22に液体が流入し、さらに胴部7を押圧すると流通路14を通り注出口15に液体が供給される。この際、液体が注出口15にて滴になったときに、指先で押圧力を調整しながら、1滴毎に、液体などを目標物に滴下することができる。
液体の滴下作業が終了した状態では、指先の押圧力を解除することにより液室6の内圧が下がり、弾性材からなる隔膜弁18が弾性力によって、もとの下方の後退位置まで戻る。このとき、ノズル11の流通路14の内部に残った液体を隔室22に引き戻すことができる。容器本体2の内部圧力がもとに戻ると、隔膜弁18のスリット28が閉じることにより、仕切材としての隔膜弁18が閉じる。このように、隔膜弁18が進退移動するときのストロークと隔膜弁18の開閉作用によって、液体を流通路14から隔室22側に排出させ、液垂れを防止することができる。
特開2008−133016号公報
特許文献1の液体用容器は、水、薬品、接着剤などを対象にしているが、揮発性の高い液体を収容すると、容器本体の胴部の指先で押して、目標物に滴下するときに、1滴宛滴下されることなく、2滴以上が連続して滴下されてしまう現象が生じた。また、液体用容器1を冷蔵庫に保管していたような状態では、常温化の環境下となり、さらには、作業者の体温も吸収して内部圧力が増加する。したがって、指先で容器本体の胴部を押したときに、目標物に所定量以上の液体を供給する傾向にある。また、斯様に揮発性の高い液体を収容し、液が過剰に出易い状態になると、前記液垂れの防止効果も十分でなくなるものであった。
そこで、隔膜弁のスリットの長さを短くすることによって対処しようとしたが、隔膜弁のスリットの長さが約0.2mm違っただけで異なり、一方のスリットが短い方では液体を滴下させるための圧力が大きくなり、他方のスリットが長い方では液が出すぎるという結果となった(詳細は、後述の試験例2及び表3の説明を参照)そして、同じ材質、形状の隔膜弁であっても、隔膜弁の個性の相違若しくは容器本体の嵌合部との取付け状態などの兼ね合いから同じスリットの長さであっても、また容器本体が同じ形状であっても、各々の液体の滴下性が異なることもある。また、収容されている液体の揮発性の程度や粘性等によっても異なり、さらに、同じ液体を収容している容器であっても、使用する雰囲気温度の相違や、さらには、容器の開封当初から充填分を使い尽くすまでの揮散等による組成変動によっても、該滴下性は有意に異なるものになり易い。
本願発明はこのような事情に鑑みてなされたものであって、揮発性の高い液体であっても適量を、容易且つ安定的に吐出することができる液体用容器を提供することを目的とする。
本願発明は、上記目的を達成するために、開口部を形成し胴部が可撓性を有する容器本体と、液体を吐出する流通路を有するノズル部と該流通路に連通し前記開口部に嵌合する筒部とを備えたノズル蓋部と、前記容器本体内の液室と前記筒部内とを仕切り、前記流通路と前記液室内との間に隔室を形成する仕切材とを備え、該仕切材には、前記液室と前記隔室との間で液体の流れを遮断又は流通させるスリットからなる隔膜弁を形成し、該隔膜弁は弾性力によって前記スリットを開閉する液体用容器において、前記液室に収容される液体が揮発性を有し、沸点が80℃以下であって、前記スリットは、前記隔膜弁の中心位置から半径方向外側に該中心位置から半径の20%以上離した位置で、かつ隔膜弁の半径方向に対して直角方向に向けて形成し、該スリットの長さは該スリットが形成されている部分の隔膜弁の厚さの少なくとも4倍以上あるように形成した。
本願発明の液体用容器は、隔膜弁に形成したスリットの位置を、隔膜弁の中心点から離した位置に形成したので、液体の吐出量の調整がしやすくなった。すなわち、容器本体の胴部を押圧して液室の内部圧力を上昇させた際には、筒状部の内方側に前進する隔膜弁の中心部には、全周囲から引っ張り力が均一に働く。したがって、この部分にスリットが形成されていると、その切れ目には左右対称に力がかかり、この場合、開口面積は最大になる。その結果、前記したように、容器の液室に収容されている液体はノズル側へ最も流出し易くなるが、この状態において、収容されている液体が揮発性を有するものであると、揮発分による内圧の高まりや、ノズル側に抜けようとする気流の発生もあって、その流出は過剰になり、前記指先による容器胴部の押圧では1滴ずつの滴下が制御困難になってしまう。そして、この問題の解決を、前記スリットの形成長さの調節で行おうとしても、適した長さは極めて狭い範囲であり、個別に最適値として形成することは容易ではなかった。
これに対して、上記の如くにスリットの形成位置を、隔膜弁の中心点から離した位置にすると、容器本体の胴部の押圧時において、スリットにかかる引っ張り力は、中心点側に偏り、この側では該中心端側に強く引っ張られて押し広がるが、対向する隔膜弁の周端側ではこうした変動は小さく抑えられる。この力の偏在化によって、スリットの開口面積は小さくなり、しかも容器胴部の押圧力の変化に応じた該開口面積の変動も小さくなるため、1滴ずつ滴下し易いスリット長さの範囲も拡大し、制御が容易になった。これらから、本発明の液体用容器では、スリットは、隔膜弁の中心点から一定の範囲で離れた位置に、多少の長さの許容域を有して形成すれば、上記良好な滴下性が確保されたものにできる。故に、容器の製造が容易であり、また、これは、充填する液組成の製造上のバラつきや、容器開封後の時間経過による液の変性や組成変動等があった際にも、上記良好な滴下性の保持性にも高度に優れる効果をもたらす。
そうして、上記容器は、隔膜弁の進退移動によるストロークと開閉作用とによる液垂れ防止効果も良好に保持されており、該液垂れ防止性と前記良好な液体の滴下性を兼ね備えたものであり実用価値が高い。
さらに、スリットは隔膜弁の半径方向に対して直角方向に向けて形成した場合には、このスリットにかかる力の偏在化の効果は最も顕著になり、スリット長による液体の滴下性の調整が特に容易になった。
本発明の実施形態による液体用容器(スリットが隔膜弁の中心から離間してある)を正面方向から見た断面図である。 図1の液体用容器の隔膜弁の拡大斜視図である。 本発明の試験例で使用した隔膜弁を斜め上方から見た拡大斜視図である。 本発明の試験例で使用した隔膜弁の拡大断面図である。 従来の液体用容器(スリットが隔膜弁の中心にある)を正面方向から見た断面図である。 図5の液体用容器の隔膜弁の拡大斜視図である。
以下、本発明の実施形態による液体用容器について、図面を参照しながら説明する。
図1は、本発明に係る液体用容器を示す。液体用容器1は、液体が充填される容器本体2と容器本体2の開口3に配設されるノズル蓋部5とを備えている。
容器本体2は、胴部が手で挟持して圧縮できる程度の可撓性を備えるものになるものであれは制限なく採択できる。一般には、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン;ポリアセタール;アクリロニトリル―ブタジエン―スチレン樹脂(ABS樹脂)などの合成樹脂が好ましい。また、遮光性、ガスバリア性を持たせたポリエチレン−ABS−ポリエチレン等の3層構造を有する材質で容器を形成しても良い。上記樹脂で形成された容器本体2は、上部に台形状で中空の肩部4を形成し、肩部4よりも下部は円筒状の胴部7を形成し、胴部7の下端に底部8を形成している。この可撓性の容器本体2は、胴部7を指先で挟み込むようにして押すと胴部7が内側に窪み、指先を離すともとに形状に戻る。ここで、胴部7の直径は本実施形態では22mmであるが、通常、10〜30mmの範囲で適用でき、その容量は本実施形態では7mlであるが、通常、5〜20mlの範囲で適用できる。
ノズル蓋部5も、上記容器本体2と同様の材料(合成樹脂)で形成される。液切れ性を向上させる観点からは、フッ素系樹脂を使用するのも好ましい態様である。また、液体の滴下位置の正確性を高める観点からは実質的に変形をしない剛性のあるものとするのが好ましいため、ノズル蓋部5の壁の厚さは、該容器本体2よりも厚くするのが好適である。このノズル蓋部5は、一体成形により形成され、基端側に断面が円形の筒状部10が形成され、先端側にノズル11が形成され、これらの筒状部10とノズル11との間にフランジ部12が形成されている。
これらのうち、筒状部10の外径は、容器本体2の開口3の内径に等しく、筒状部10を開口3に差し込むことによって、ノズル蓋部5が容器本体2に組み付けできる。フランジ部12は、筒状部10の上端縁から筒状部10の半径方向外側に突出する環状部であり、開口3よりも大きな径を有し、フランジ部12と筒状部10の上端部とで、ノズル蓋部5と容器本体2との境界部が気密になるようにシール性を維持させる。
ノズル11は、先細りのテーパー形状であって、中間部に小径の流通路14がノズル11の中央位置を貫通し、流通路14の先端部には先端部に向かって徐々に拡径する注出口15が設けられている。流通路14の径は、通常状態で液体の毛細管現象が起きるような径に形成されている。
筒状部10には、図2に示すように、ほぼ円筒有底形状の仕切材16が取付けられている。仕切材16は、弾性を有する部材を用い、隔膜弁18の進退移動のし易さの観点から、JIS6253記載の硬さ試験方法に準拠した方法で測定した硬さが30〜100(国際ゴム硬さ:IRHD)、より好ましくは50〜90(IRHD)である合成ゴムが好適である。
仕切材16は、取付部となる周壁部17と、底部からなる円形の隔膜弁18とからなり、周壁部17は、筒状部10の周囲を包むように、内径を筒状部10の外周径よりもやや小さく形成し、ゴムの弾性力で取付けることができる。隔膜弁18は、筒状部10の下端部開口に対応する位置に配置され、容器本体2の内部とノズル蓋部5との間を仕切っている。この隔膜弁18は、筒状部10の下端部開口に対して傾斜(好適には40°以内の角度)を持たせることもできる。この場合、該隔膜弁18の中心側が容器本体2の底部8にむけて突出するように形成されている。隔膜弁18の直径は、本実施形態では10mmであるが、5〜20mmの範囲で適用できる。
隔膜弁18の中心点から離れた部位には、直線状のスリット19が形成され、このスリット19が弁機構の開閉弁として形成されている。ここで、スリットの長さは、収容する液体の種類、容器本体2及び仕切材16の材質や形状等によっても異なり、1液ずつ滴下でき、使用後において液垂れがないように都度、設定すれば良いが、一般には0.8〜2.0mmの範囲から採択される。上記本発明の目的が良好に達成される観点からは、前記範囲内において、さらに、スリット19を形成する位置の隔膜弁18の厚みの3〜6倍の長さにするのが好ましく、3.5〜4.5倍の長さにするのが最も好ましい。なお、スリット19の形状は、本実施形態では、線状に形成したが、スリット長さを小さくして、十字形状のものでも適用ができる。この場合、スリットの長さは、十字形状を形成する2本の各切れ目の合計長で考えれば良い。
本実施形態では、スリット19の位置は中心点をとおらず、円形の隔膜弁18の半径方向に対して直角方向に向けて形成している。スリット19は、斯様に隔膜弁18の半径方向に対して直角方向に向けて形成するのが特に好ましいが、その形成方向は特に制限されるものではなく、上記半径方向に対して直角方向から、半径方向(図3のスリット27参照)までのあいだの如何なる角度で設けて良い。
中心点からの離間距離は、隔膜弁18の中心点から半径方向外側へ向かって半径の20%以上外側に形成する。この離間距離を、係る半径の20%より近い位置に形成した場合、胴部7の押圧時において、スリット19の開口が大きくなり、滴下の制御が難しくなる。なお、スリット長が長くなった場合、液の滴下性は激しくなり、この場合、隔膜弁18の中心点から半径方向外側により離して形成するのが好ましくなる。例えば、スリット長が1.0mm程度であれば上記半径の20%以上外側に形成すれば滴下性は良好であるが、スリット長が1.5mm程度になると上記半径の50%以上外側に形成するのが滴下性を良好にするために好適になる。
また、スリット19をあまり隔膜弁18の周端近くに形成しすぎると、逆に、該スリットは開口し難くなり、相当な押圧力を負荷しなければ液体が出なくなったり、スリットを極端に長く形成することが必要になり、隔膜弁18の強度低下が心配される虞も生じるため、上記離間距離は、前記半径の80%より内側に形成するのがより好ましい。特に、前記スリット長が1.0mm程度であれば、離間距離は、前記半径の60%より内側に形成するのがより好ましい。
なお、スリット19は、本実施形態のように隔膜弁18の半径方向に対して直角方向に設けるのでない場合、その中心点からの離間距離は、該スリットにおける中心点に最も近い部分までの距離を指すものである。
容器本体2に外力が負荷されていない状態(以下、無負荷状態という)では、隔膜弁18は閉弁状態にあり、容器本体2の胴部7を押圧して液体収容室6に内圧を負荷すると、仕切材16の隔膜弁18がノズル蓋部5の先端側に押圧され、スリット19の切れ目が拡がり、開弁状態になる。そして、再び無負荷状態にすると、胴部7がもとの初期形状に戻り、内圧が減少して、スリット19の切れ目がもとの状態に戻る。このように、隔膜弁18は容器本体2の内圧に依存して、スリット19の切れ目が開閉弁となって容器本体2内の液体の流通を許容する。
仕切材16の周壁部17は、内周側にノズル蓋部5の筒状部10の底部を隔膜弁18が覆うように嵌入し、周壁部17の開口側の上端部はフランジ部12に当接させている。仕切材16は、筒状部10に装着された状態で、容器本体2の口頸部9の内部に装着される。
液体用容器1には、上述の隔膜弁18とノズル蓋部5の筒状部10及びノズル11の下部壁21によって区画されている隔室22が形成されている。隔室22は、流通路14と連通し、隔室22の容積は、流通路14よりも十分に大きく、容器本体2の内部空間よりも小さく形成されている。隔室22の下部壁21は、上方側が減径するテーパー形状の絞り面が形成されている。
なお、この液体用容器1の筒状の口頸部9の外周囲には、雄ネジ26が形成され、ノズル蓋部5に被せる図示しないキャップが装着されるが、図面では省略されている。
容器本体2の内部の液室6には、揮発性の液体が収容されている。上記揮発性の溶剤としては、沸点が80℃以下であるのが、1液ずつの滴下性を改善する本発明の効果が特に顕著に発揮できて好ましく、特に、沸点が30〜70℃であるのがより好ましい。なお、複数の成分の混合溶液である場合は、混合溶液の蒸気圧が20℃で5Pa以上であるものである場合に効果的である。一般には、上記沸点が80℃以下の揮発性溶剤を10質量%以上、より好適には40質量%以上含有しているものが該当する。
また、本発明の容器に収容する液体は、粘度も小さいほうが、1液ずつの滴下性を改善する本発明の効果が特に顕著に発揮されて好ましい。この観点から液体の粘度は25℃で0.05〜2.0cPであるのが好ましく、0.1〜1.2cPであるのがより好ましい。
以上を総合すると、本発明の容器に収容するのに適した液体の具体例は、メタノール、エタノール等のアルコール類;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類;エチルエーテル、テトラヒドロフラン等のエーテル類;酢酸エチル、蟻酸エチル等のエステル類;塩化メチレン等の塩素系溶媒;トリフルオロエタノール等のフッ素系溶媒等であり、このうちアセトン(沸点56℃、20℃における粘度0.3cP)が最適である。
次に、本実施形態における液体用容器の作用について説明する。
この液体用容器1を使用するときは、図示しないキャップを外し、図3に示すように、液体用容器1の上下を反対にしてノズル11の注出口15が下向きになるように傾倒させて使用する。容器本体2は、実質的に容器本体2を把持するのみで胴部7を押していない状態では、隔室22側と容器本体2の液体収容室6側との圧力の均衡がとれている。液体を排出するには、容器本体2の胴部7を軽く圧迫するように指先で押圧する。
通常時では、隔膜弁18は閉弁状態にあるので、容器本体2の内部空間である液体収容室6の内部圧力が上昇し、隔膜弁18のスリット19が開放する。隔膜弁18が開弁することによって、液体収容室6側から隔室22側への液体の流通を可能にする。
こうして、液体は、液体収容室6側から隔膜弁18の切れ目を通って、隔室22を通って流通路14、注出口15に排出される。この際、液体が注出口15にて滴になったときに、指先で押圧力を調整しながら、必要滴数だけ所望部分に、液体などを滴下することができる。
液体の滴下作業が終了した状態では、指先の押圧力を解除することにより液体収容室6の内圧が下がる。このとき、ノズル11の流通路14の内部に残った液体を隔室22に引き戻すことができる。例えば、液体を排出しようとして、そのまま液体を吐出することなく、もとに戻したような場合にも、液体収容室6の容積の変動量に比べ、ノズル11の流通路14の容積が小さいため、流通路14の液体を隔室22及び液体収容室6に戻すことができる。
そして、容器本体2の胴部7が弾性体の復元力によってもとの円筒形状に戻り、隔室22内の液体が容器本体2の内部に流入する。同時に、容器本体2側から吐出された液体の容積分を補う量の空気が液体収容室6に流入する。容器本体2の内部圧力がもとに戻ると、隔膜弁18のスリット19が閉じる。
本実施形態の液体用容器1は、隔膜弁18の切れ目の開弁作用と液体収容室6の減圧力により、液体を容器本体2の内部に戻すことから、液体用容器1が上下反対の状態にあっても、横向きにおいても、液体を容器本体2の内部に戻すので、使い勝手がよい。液体用容器1を冷蔵庫内で保存した状態でも、ノズル11の流通路14に液体が残らないので、未使用時におけるノズル11からの液噴き出しを防止することができる。
さらに、ノズル11から液体を滴下するときには、胴部7を押圧する際に、隔膜弁18を介在させて、液体を排出するので、微妙な押圧力の調整が可能になり、液切れ性も向上するようになった。
さらに、本実施形態では、仕切材16の形状を周壁部17とこの周壁部17の底部である隔膜弁18とによって形成されているので、周壁部17を筒状部10に被せる際に、容易であり、さらに、容器本体2の口頸部9に嵌合させたときは、仕切材16がシール部材としての役割を果たす。
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明の技術的思想に基づいて、勿論、本発明は種々の変形又は変更が可能である。
例えば、上記実施形態では、仕切材16について、周壁部17と隔膜弁18とで構成したが、周壁部17を削除し底部である隔膜弁18のみで構成し、円形の隔膜弁の外周部を筒状部の下端若しくは開口部3に接着剤などで固定してもよい。
以下、本発明の液体用容器における液の出しやすさについて、試験例を含めて説明する。
初めに、隔膜弁の中央にスリットを形成し、スリットの長さと出しやすさについての検討してみた。
試験例として、まず、水(試験例1)と、水に対して粘度が小さく揮発性の高いアセトン(試験例2)を別々の同じ形状の容器に入れ、液の出しやすさ、及び滴下終了後の液だれの生じ易さについてそれぞれ試験した。
[試験例1]
隔膜弁18は、上述した筒部を有する円形シート状の隔膜弁であり、図3及び図4を参照にして隔膜弁18の直径(内径)Dが10mm、図3の二点鎖線で示すスリット28を形成した部分のゴムの厚みTが0.25mm、ゴム硬度が80のものを使用した。そして、隔膜弁18の中心C(なお、図3及び図4は中心Cと離した位置に表示している)に、小さな切れ目を形成できるカッターによってスリット28を形成し、スリット長Lが異なるスリット28を形成した。サンプルとして、スリット長Lが1.5mm、2.0mm、2.5mm,3.0mm,3.5mmを形成した5つの隔膜弁を準備した。この隔膜弁18を装着した図1に示した液体用容器に対して、100%の水(沸点100℃、粘度1.0cP)を入れて、液の出しやすさを試験した。
容器本体からの液の出し易さの評価について、以下の表1に示すように、5段階で評価した。
Figure 0005281957
表1に示すように、出難いを評価1、やや出難いを評価2、調度良いを評価3、やや出過ぎるを評価4、出過ぎるを評価5とした。そのうち評価の調度良いは、判定者が目的部に液体を1滴宛、滴下するのに、容器を押したときに適度に1滴宛滴下することができるものとした。評価の出難いは相当な押圧力を負荷しなければ液体が出ず、出過ぎるは容器を傾けただけで液体が滴下したり、連続的に液体が滴下してしまい使用するのが困難なものとした。やや出難い、やや出過ぎるは、やや上記のような傾向が認められる為に、使用はすることは可能であるが、ノズルから液体を滴下させるときの容器への押圧力に対する滴下応答力に違和感が生じるものとした。評価は10人で行い、その平均値を評価値とした。したがって、平均値が3に近いほど良い結果となる。評価の合格ラインは2.5〜3.4とし、この合格ライン内にあるものを吐出感評価○とし、合格ラインから外れるもので必要以上に押圧力を負荷するものを吐出間評価△とし、押圧力に比して液が出過ぎるもの若しくは押圧力を負荷しなくても液が吐出してしまうものを吐出感評価×として評価した(特に、2.6〜3.3の範囲が最良の評価になる)。
液だれの評価については、容器胴部を押圧してノズル先端から液を滴下させた後、該へ容器胴部の押圧力を緩めた際の、ノズルの先端に滴状になっていた液体が容器内にもどる液切れ性について、良好な応答性を備えている場合には○とし、液が戻り難い場合には×として評価した。
試験結果を表2に示す。
Figure 0005281957
評価の結果、スリット長が2.0〜3.5mmの範囲であれば液の滴下性に優れ、3.0mm前後で、最適な応答性を得ることができるものである。また、隔膜弁が進退移動するときのストロークにより液垂れも良好に抑制され、上記スリット長のものは最適な液の出し入れを行うことができる。
[試験例2]
次に試験例2として、アセトン(沸点56℃、粘度0.3cP)について液の出し易さについて試験してみた。
上記試験例1と同じ容器、隔膜弁18で、スリット28の位置は、隔膜弁18の中心Pであり、スリット長Lの長さを一部変更している。スリット長Lは、表3に示すように、0.8mm、1.0mm、1.5mm、2.0mm、2.5mmである。試験結果を表3に示す。
Figure 0005281957
この結果から、アセトンの場合、スリット長Lが0.8mmで液垂れ性はいいが、吐出間評価ではやや押圧力を必要とし、スリット長Lが1.0mmで押圧力を負荷しなくてもやや出過ぎるという結果となった。したがって、アセトンの場合は、スリット28が隔膜弁18の中央部に形成されている場合、スリット長Lが0.8mmから1.0mmの範囲内に吐出感評価における出し易さの調度いい部分が含まれることが確認できた。
このように、液体がアセトンのように、沸点が低く、揮発性が高い溶媒は、水と異なって、内部圧力の上昇から出やすく、スリット長Lを調整するには、上述したように、スリット長が0.8mmから1.0mmの範囲の微妙ないずれかの長さであり、隔膜弁の製造誤差や取付け誤差も含めると、実際には調整することが極めて困難である。したがって、対象物がアセトンである場合、スリット長で調整することが困難であることが分かった。また、スリット長が1.0mm以上で、上記液がやや出過ぎるような場合には、液垂れも生じ易い傾向が認められた。
次に、隔膜弁18スリット19の位置を変えて、試験を行ってみた。
[試験例3]
試験例3として容器及び隔膜弁の形状は、上記比較例と同じもの、すなわち、図3及び図4に示すように隔膜弁18の直径(内径)Dが10mm、スリットを形成した部分のゴムの厚みTが0.25mm、ゴム硬度が80のものを使用した。
スリットの長さLは1.0mmであり、図3の実線で示すようにスリット19の位置を隔膜弁18の中心Cと中心Cから半径方向外側へ離反長さSだけ離したものをサンプルとして使用した。スリット位置は中心Cから半径方向長さ外側へ、0.0mm、1.0mm、1.5mm、2.0mm、2.5mm、3.0mm、3.5mmである。スリット19を形成する向きは、隔膜弁18の半径方向に対して直角方向に形成した。
試験結果を表4に示す。
Figure 0005281957
試験結果から、スリット19の位置を中心から離して形成すれば、容器本体からの液の出し易さ、及び液垂れの両方が優れたものになる、スリット長の調整の選択の余地が広くなることが分かった。そして、隔膜弁の中心Cから1.0〜2.5mm(20%〜50%)の範囲が液を良好に出し易い範囲であることが分かった。
さらに検討を行い、スリット19の形状を調べたところ、スリット19の開口幅(最長幅)が微妙に異なっていることが分かった。例えば、中心からの距離0.0mmのスリット幅が50μm、距離1.5mmのスリット幅が25μm、距離3.0mmのスリット幅が15μmであったことが確認できた。すなわち、中心部ではスリット幅が50μmであるので、液(アセトン)が出過ぎる傾向にあるが(吐出感評価×)、半径方向外側へ行くに従って、スリット幅が狭くなり、出方が良好になり、さらに外側へ向かうとさらに出にくくなることが分かった(吐出感評価△)。
次に、隔膜弁18のスリット長Lが1.5mmの場合のスリット位置の関係について、アセトンの液の出しやすさと液だれを試験した。
[試験例4]
容器及び隔膜弁18の形状は、上記比較例1と同じもの、すなわち、隔膜弁の直径(内径)Dが10mm、スリット19を形成した部分のゴムの厚みTが0.25mm、ゴム硬度が80のものを使用した。スリット長Lとスリット19の半径方向の離反長さSは、表5に示す通りである。
Figure 0005281957
結果から、スリット長Lを長くして液が出易くなった場合でも、離反長さSが半径方向外側へ向かうと、液の出し易さ、液だれの調整の選択の余地が広くなることが分かった。表3と表4の結果の裏付けができた。
次に、隔膜弁18のスリット19とゴムの厚みTの検討を行った。
[試験例5]
隔膜弁18のスリット長Lは、ゴム厚みの4倍、隔膜弁18の直径(内径)は10mm、スリットの離反位置Sを隔膜弁18の中心Cから2.0mm、ゴム硬さは80のものを用いて試験を行なった。ゴムの厚みTとスリット長Lは、表6に示す。
Figure 0005281957
試験結果から、スリット部分のゴム厚みTは0.1〜0.5mmの範囲では使用可能であると考えられるが、滴下性と液垂れ防止を考慮すると厚みTは0.2〜0.3mm程度の範囲が最適であると考えられる。
次に、溶媒の揮発性の影響について検討した。
[試験例6]
上述したように、スリット19の位置を隔膜弁の中心から離反させることで、アセトンについて、効果があることが分かった。そこで、アセトンよりは揮発性が低いが水よりも揮発性の高いメタノール(沸点65℃、粘度0.6cP)について試験を行った。
容器及び隔膜弁18の形状は、上記比較例1と同じもの、すなわち、隔膜弁18の直径(内径)Dが10mm、スリット19を形成した部分のゴムの厚みTが0.25mm、ゴム硬度が80のものを使用した。スリット長Lとスリット19の離反長さSは、表7に示す通りである。
Figure 0005281957
試験結果で示すように、メタノールでもスリット19の位置を中心から離して形成すれば、容器本体からの液の出し易さ、及び液垂れの両方が優れたものになることが分かった。
以上、本発明を実施形態に基づいて添付図面を参照しながら詳細に説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の範囲を逸脱することなく、更に他の変形あるいは変更が可能である。
隔膜弁18の形状については、平面視で円形としたが、隔膜弁の平面視形状は、円形に限らず、楕円形、多角形であってもよく、それらの中心から離しても、液体の吐出量の調整ができる。
1 液体用容器
2 容器本体
3 開口
6 液室
10 筒状部
11 ノズル
14 流通路
16 仕切材
17 周壁部
18 隔膜弁
19 スリット
22 隔室

Claims (1)

  1. 開口部を形成し胴部が可撓性を有する容器本体と、
    液体を吐出する流通路を有するノズル部と該流通路に連通し前記開口部に嵌合する筒部とを備えたノズル蓋部と、
    前記容器本体内の液室と前記筒部内とを仕切り、前記流通路と前記液室内との間に隔室を形成する仕切材とを備え、
    該仕切材には、前記液室と前記隔室との間で液体の流れを遮断又は流通させるスリットからなる隔膜弁を形成し、該隔膜弁は弾性力によって前記スリットを開閉する液体用容器において、
    前記液室に収容される液体が揮発性を有し、沸点が80℃以下であって、
    前記スリットは、前記隔膜弁の中心位置から半径方向外側に該中心位置から半径の20%以上離した位置で、かつ隔膜弁の半径方向に対して直角方向に向けて形成し、
    該スリットの長さは該スリットが形成されている部分の隔膜弁の厚さの少なくとも4倍以上あるように形成したことを特徴とする液体用容器。
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