以下、本発明の実施の形態について、詳細に説明する。
以下、図面を参照して本発明の実施の形態に係る電源装置及び照明装置を説明する。
初めに、本発明の電源装置の電源回路部における発光ダイオードを調光する調光機能の動作原理を簡単に説明する。
半導体発光光源である発光ダイオードは、よく知られるように、図1に示されるようなV−I特性を有している。このV−I特性は、図1に示すように電圧Vの増加とともに指数関数的に電流Iが立ち上がる曲線で表されている。このV−I特性は、全ての発光ダイオードで同一でなく、発光ダイオード毎に半導体素子のバラツキ或いは温度特性に関連した動作点のバラツキにともない、発光ダイオード毎に曲線Acenを中心とする曲線Amaxと曲線Aminとの間の領域内で発光ダイオード毎に定められる曲線を取ることが知られている。
仮に発光ダイオードに定電流が流れるように発光ダイオードが制御されると仮定すると、電圧の増加ΔVに対する電流の増加ΔI(ΔI/ΔV)が小さい範囲では、ある一定の電流に対して電圧が動作領域B11内でばらつくこととなる。これに対し、電圧の増加ΔVに対する電流の増加ΔI(ΔI/ΔV)が大きな範囲では、ある一定の電流に対して電圧が動作領域B12内でばらつくこととなる。ここで、電圧がばらつく動作領域B12は、電圧がばらつく動作領域B11に比べて小さくなる。従って、調光深度が浅く、発光ダイオードに比較的大きな電流が流れる動作領域、即ち、調光率が小さく、発光ダイオードに比較的大きな電流が流れて比較的大きな輝度で発光される制御領域において、定電流制御モードが適用されれば、調光輝度のばらつきを小さくできる。その結果、発光ダイオードの調光制御において、光出力の変動を有効に抑制することができる。
一方、発光ダイオードを定電圧により制御した場合、電圧の増加ΔVに対する電流の増加ΔI(ΔI/ΔV)が大きな範囲では、ある一定の電圧に対して電流が動作領域B21内でばらつくこととなる。これに対して、電圧の増加ΔVに対する電流の増加ΔI(ΔI/ΔV)が小さい範囲では、ある一定の電圧に対して電流が動作領域B22内でばらつくこととなる。ここで、ばらつきの動作領域B22は、ばらつきの動作領域B21に比べて小さくできる。従って、調光深度が深く、発光ダイオードに流れる電流が小さな動作領域、即ち、調光率が大きく、発光ダイオードに比較的小さな電流が流れて比較的小さな輝度で発光される制御領域において、定電圧制御モードが適用されれば、調光輝度のばらつきを小さくすることができる。その結果、発光ダイオードの調光制御において、発光ダイオードの光出力の変動を有効に抑制することができる。
上述した特性を基に、本発明の電源装置の電源回路部では、調光率が小さく(調光深度が浅く)、発光ダイオードに流れる電流が大きな動作領域では、発光ダイオードが定電流制御モードで制御され、また、調光率が大きく(調光深度が深く)、発光ダイオードに流れる電流が小さな領域では、発光ダイオードが定電圧制御モードで制御される。このような動作を実現する電源装置の電源回路部として、図2に示すように調光信号kの調光率k1、k2、…k7に対応して異なる負荷特性(V−I特性)で電源装置が動作される。ここで、調光率k1、k2、…k7は、調光率が最も小さい調光率k1から調光率が最も大きな調光率k7の範囲に設定されている。この電源装置では、調光率k1、k2、…k7に対応するそれぞれの負荷特性は、発光ダイオードが電流の導通を開始するオン電圧をDVb及び全光発光時の全光発光電流をDIaとし、これらオン電圧DVb及び全光発光電流DIaを基準とすると、V=DVb、I=DIaの交点F(一定値)を中心とした放射状の直線に設定される。例えば、調光率k1に対応する負荷特性は、電圧軸(V)とほぼ平行な定電流特性となり、調光率k2〜k6に対応する負荷特性は、調光率k6に向かうほど、F点を中心に電流軸(I)に対する角度を小さくして、定電圧特性の傾向を強め、調光率k7に対応する負荷特性は、電流軸(I)とほぼ平行な定電圧特性となる。
このような調光率k1、k2、…k7に対応する夫々の負荷特性は、I=DIa−k(V)の一次関数で表現することができる。つまり、上式は、I+k(V)=DIa…(1)であり、負荷、即ち、発光ダイオードに流れる電流検出値と、負荷電圧検出値と調光信号電圧の演算結果を加算した値が一定の電流値DIaとなる関係が成立している。下記に説明する第1〜第3の実施の形態に係る電源装置の電源回路部及び制御部はこの関係式を充足するように構成される。
また、他の観点からは、調光率k1、k2、…k7に対応する夫々の負荷特性は、V=DVb−k(I)の一次関数で表現することができる。つまり、上式は、V+k(I)=DVb…(2)であり、負荷、即ち、負荷電圧検出値と発光ダイオードに流れる電流検出値に調光信号電圧の演算結果を加算した値が一定の電圧値DVbとなる関係が成立している。
このような動作原理に基づいた本発明の実施の形態に係る電源装置は、以下述べるように実現される。
(第1の実施の形態)まず、本発明の電源装置が適用される照明器具について簡単に説明する。図3及び図4において、符号1は、器具本体で、この器具本体1は、アルミニウムのダイカスト製のもので、両端を開口した円筒状に形成されている。この器具本体1は、図4に示されるように、その内部が仕切り部材1a、1bにより上下方向に沿って3つの空間に3分割されている。下方開口と仕切り部材1aの間の下方空間は、光源部2に割り当てられている。この光源部2には、半導体発光光源としての複数のLED2aと反射体2bが設けられている。複数のLED2aは、仕切り部材1a下面に設けられた円盤状の配線基板2cの円周方向に沿って等間隔に配置され、この配線基板2c上に実装されている。即ち、円筒状器具本体1の中心軸の回りに、複数のLED2aが等間隔で円周状に配置されている。
器具本体1の仕切り部材1aと1bの間の中間の空間は、電源室3に割り当てられている。この電源室3においては、仕切り部材1a上に配線基板3aが配置されている。この配線基板3aには、前記複数のLED2aを駆動する電源装置を構成する各電子部品が設けられている。この電源装置と複数のLED2aは、リード線4により接続されている。
器具本体1の仕切り板1bと上方開口との間の上方空間は、電源端子室5に割り当てられている。この電源端子室5においては、仕切り板1bに電源端子台6が設けられている。この電源端子台6は、電源室3の電源装置に商用電源の交流電力を供給するために設けられている。電源端子台6は、電絶縁性の合成樹脂で作られたボックス6aを備え、このボックス6aの両面に電源ケーブル用端子部となる差込口6bが設けられ、送りケーブル用端子部となる差込口6c及び電源線及び送り線を切り離すリリースボタン6d等がこのボックス6aに設けられている。
図5は、図4に示される照明器具の電源室3に組み込まれる本発明の第1の実施の形態にかかる電源装置の電源回路部の構成を示している。
図5において、符号11は、交流電源で、この交流電源11は、商用電源で構成される。この交流電源11には、全波整流回路12の入力端子が接続されている。全波整流回路12は、交流電源11からの交流電力を全波整流した出力を発生する。全波整流回路12の正負極の出力端子間には、平滑用のキャパシタ13が接続され、全波整流回路12で整流された直流電力を平滑化して平滑出力を出力している。この全波整流回路12及び平滑用のキャパシタ13で直流電源が構成される。
ここでは、直流電源として、商用電源からの交流電圧を整流平滑する回路を用いているが、力率改善のための力率改善コンバータを使用しても良い。
平滑キャパシタ13には、DC−DCコンバータ10が接続されている。このDC−DCコンバータ10は、フライバックトランスであるスイッチングトランス14及び平滑キャパシタ13からの出力電圧をスイッチングするスイッチングトランジスタ15から構成されている。スイッチングトランス14は、一次巻線14aと磁気的結合された二次巻線14bを有している。スイッチングトランス14の一次側は、スイッチングトランジスタ15を介して平滑キャパシタ13に接続されている。即ち、平滑キャパシタ13の両端には、スイッチングトランス14の一次巻線14aとスイッチングトランジスタ15の直列回路が接続されている。
また、DC−DCコンバータ10は、更に、スイッチングトランス14の2次側に発生される電圧を整流するダイオード16及びこの整流電圧を平滑化する平滑キャパシタ17からなる整流平滑回路18及び制御回路30より構成されている。スイッチングトランス14の二次巻線14bには、図示極性のダイオード16と平滑キャパシタ17からなる整流平滑回路18が接続されている。この整流平滑回路18は、スイッチングトランジスタ15、スイッチングトランス14とともに直流出力を生成し、出力するコンバータ回路を構成している。このコンバータ回路では、スイッチングトランス14の一次巻線14aには、スイッチングトランジスタ15で直流電圧を断続(オン・オフ)した交番電圧が印加される。また、スイッチングトランス14の二次巻線14bには、交流出力が発生される。この交流出力は、ダイオード16で整流され、この整流出力が平滑キャパシタ17により平滑されて直流出力として出力される。
尚、上述した実施例では、発光ダイオード19〜21を調光点灯する電源回路部が交流電源11、全波整流回路12、平滑用キャパシタ13、DC―DCコンバータ10及び整流平滑回路18で構成される。
この実施の形態では、DC−DCコンバータ10としてフライバックコンバータを用いている。このフライバックコンバータに代えて、負荷側の電圧が電源電圧より低い場合には、DC−DCコンバータ10として降圧型コンバータが用いられても良い。また、負荷側の電圧が電源電圧より高い場合には、DC−DCコンバータ10として昇圧型コンバータなど、昇降圧型コンバータを用いても良い。ここで、コンバータ10は、負荷の状態或いは外部からの信号に応じて出力を可変できるタイプのものであればどのような回路構成で実現されても良い。
DC−DCコンバータ10を構成する整流平滑回路18の平滑キャパシタ17の両端には、負荷の半導体発光光源として、複数個(図示例では3個)が直列に接続されている発光ダイオード19〜21が接続されている。この発光ダイオード19〜21は、図2に示されたLED2aが相当している。
発光ダイオード19〜21の直列回路には、電流検出回路22が直列に接続されている。この電流検出回路22は、インピーダンス素子である抵抗器221から構成され、発光ダイオード19〜21に流れる電流(負荷電流)を検出し、電流検出信号Iを出力する。また、発光ダイオード19〜21の直列回路には、負荷電圧検出回路23が並列に接続されている。この負荷電圧検出回路23は、インピーダンス素子である抵抗器231,232の直列回路から構成され、発光ダイオード19〜21に印加される負荷電圧を検出し、この負荷電圧Vを負荷電圧信号として出力する。
電流検出回路22及び負荷電圧検出回路23には、電流検出信号I及び負荷電圧信号Vが入力され、この入力信号に応じて制御信号を出力する信号制御部24が接続されている。信号制御部24は、乗算器26、加算器27及び比較器28から構成されている。乗算器26には、負荷電圧検出回路23の負荷電圧信号V及び調光信号発生部31からの調光信号kが入力され、負荷電圧信号Vと調光信号kとを乗算した乗算信号を出力する。この乗算器26の詳細については後述する。加算器27は、乗算器26から出力された乗算信号と電流検出回路22の電流検出信号Iを加算した加算出力DIaを発生する。比較器28は、加算器27の出力DIaと一定の基準値29とを比較し、比較結果を制御信号として出力する。
調光信号発生部31は、外部からの調光操作信号に基づいて調光信号kを発生する。この調光信号kは、調光率(調光深度)に応じて選定されたデューティ比の異なるPWM信号として発生される。ここで、デューティ比は、良く知られるようにPWM信号におけるパルス幅をパルス周期で割った値として定義される。外部からの調光操作信号は、調光深度、即ち、調光率を指定する信号として調光信号発生部31に入力され、調光信号発生部31は、調光率とデューティ比とが相関を有するテーブルを備え、このテーブルが調光操作信号で指定される調光率で参照されてデューティ比が決定され、このデューティ比を有するPWM信号が調光信号発生部31から乗算器26に出力される。
この調光信号kは、デューティ比が0%で全光状態の最も小さい調光率k1に相当する調光の上限を設定し、デューティ比が100%で輝度が最も低く、最も大きい調光率k7で調光の下限を設定し、デューティ比0〜100%の範囲で変更される。デューティ比が0%の調光信号kは、ローレベルのDC電圧に相当し、デューティ比が100%の調光信号kは、ハイレベルのDC電圧に相当し、調光率k1、k2、…k7(k1<k2、…<k7)に依存するデューティ比で調光信号が発生される。
乗算器26は、図6に示すように負荷電圧検出回路23の抵抗器232に、スイッチング素子としてのトランジスタ261のエミッタ・コレクタが並列に接続されるとともに、このトランジスタ261には、抵抗器262及び充電素子としてのキャパシタ263の直列回路が並列に接続されている。トランジスタ261においては、エミッタが抵抗器232と抵抗器262の接続点に接続され、コレクタが抵抗器232とキャパシタ263の接続点に接続されている。また、トランジスタ261においては、ベースとコレクタ間に抵抗器264が接続され、また、ベースは、抵抗器265を介して調光信号発生部31に接続されて調光信号発生部31からの調光信号kがベースに入力されている。
このように構成される乗算器26においては、調光信号kでトランジスタ261がオンオフされる。従って、調光信号kのデューティ比に従って、負荷電圧検出回路23の抵抗器232からの出力電圧(負荷電圧V)がキャパシタ263を充電し、この充電電圧が乗算器26の出力電圧として発生される。さらに詳述すると、上述したように調光信号kのPWM信号は、デューティ比0%で調光上限(全光状態)に設定され、デューティ比100%で調光下限に設定されている。図5に示される回路においては、この調光信号kのデューティ比の変化に対して発光ダイオード19〜21に流れる電流は、略リニアに増減される。この発光ダイオード19〜21の順方向電圧(負荷電圧)は、図7に示すように調光上限(0%)から調光下限(100%)まで、ほぼリニアに低下される。調光信号kのデューティ比が0%の全光状態では、トランジスタ261がオンに維持されたままの状態となる。従って、トランジスタ261が負荷電圧検出回路23の抵抗器232の両端を短絡し、キャパシタ263は、充電されず、キャパシタ263の充電電圧値は、ゼロで乗算器26の出力電圧もゼロとなる。また、調光信号kの調光率が変化されてデューティ比を大きく設定されると、このときのデューティ比に応じてトランジスタ261がオン、オフされる。PWM信号のオフ時にトランジスタ261がオンされ、PWM信号のオン時にトランジスタ261がオフされる。このトランジスタ261のオフ期間に負荷電圧検出回路23の抵抗器232の出力電圧(負荷電圧V)がキャパシタ263に印加される。従って、このキャパシタ263が充電され、このときの充電値が乗算器26の出力電圧として発生され、出力される。さらに調光信号kのデューティ比を大きくして調光下限(100%)にすると、トランジスタ261は、オフに維持される。従って、負荷電圧検出回路23の抵抗器232の出力電圧(負荷電圧V)の全てがキャパシタ263に印加され、キャパシタ263を充電する。従って、キャパシタ263からは、大きな充電電圧値が乗算器26の出力電圧として発生する。このような一連の動作により、乗算器26の出力電圧は、図8に示すように調光信号kのデューティ比(0%〜100%)に対して二次曲線を描くように変化される。
図5に示す回路においては、比較器28には、スイッチングトランジスタ15を制御する制御回路30が接続され、比較器28から電圧信号が供給されている。制御回路30は、図示しない電源部により駆動され、比較器28から電圧信号に応じてスイッチング制御信号を発生する。この制御回路30からスイッチング制御信号によりスイッチングトランジスタ15がオンオフされ、スイッチングトランス14がスイッチング駆動されて整流平滑回路18から発光ダイオード19〜21に供給される出力が制御される。制御回路30は、制御部24の比較器28の出力に基づいて、つまり、乗算器26の出力と電流検出回路22の電流検出信号Iを加算器27で加算して得られる出力の値DIaに基づいて、この値DIaが常に一定になるように発光ダイオード19〜21に供給される出力が制御される。
尚、制御回路30は、メモリ(図示せず)を有し、比較器28の出力電圧でメモリ内のテーブルが参照されてスイッチング制御信号のスイッチング波形、即ち、PWM制御信号のデューティ比が選定され、選定されたデューティ比を有するスイッチング制御信号がスイッチングトランジスタ15のゲートに印加される。
次に、図5に示す電源回路における調光動作を説明する。
電源装置の調光率k1、k2、…k7に対応する負荷特性と発光ダイオード19〜21のV−I特性Aは、図2に示す関係にあるものとする。
初めに、外部からの調光操作信号に基づいて調光信号発生部31からデューティ比0%で最上限(全光)の調光信号kが出力されると、このときの調光信号kに応じて図2に示す調光率k1に対応する負荷特性が得られる。調光信号kのデューティ比が0%に設定されると、制御部24において、乗算器26のトランジスタ261がオンのままに維持され、負荷電圧検出回路23の抵抗器232の両端がトランジスタ261によって短絡される。従って、キャパシタ263の充電電圧値は、ゼロで乗算器26の出力電圧もゼロとなる。従って、加算器27からの出力値DIaは、電流検出回路22で検出された電流検出信号Iのみに依存し、電流検出信号Iにより重み付けされる。このときの比較器28の出力に基づいて制御回路30により発光ダイオード19〜21に流れる電流が一定となるような定電流制御が実施され。つまり、上述の(1)式において、出力値DIaを決定するk(V)成分は、略ゼロで、I成分のみの影響を受けるので、発光ダイオード19〜21は、定電流特性に従って点灯制御される。
この定電流特性に従う点灯制御においては、制御回路30がスイッチングトランジスタ15をオンオフすることによりスイッチングトランス14がスイッチング駆動される。スイッチングトランジスタ15のオンでスイッチングトランス14の一次巻線14aに電流が流れてエネルギーが蓄積され、スイッチングトランジスタ15のオフで、一次巻線14aに蓄積されたエネルギーが二次巻線14bを通して放出される。このエネルギーの放出が整流平滑回路18に直流出力を発生し、この直流出力により発光ダイオード19〜21が点灯される。
次に、調光信号kの調光率を変化させてデューティ比を大きく設定すると、この調光信号kのデューティ比に応じて図2に示す調光率k2〜k6に対応する負荷特性のいずれかに設定される。この調光信号kのデューティ比が大きく設定されると、このときのデューティ比に応じて乗算器26のトランジスタ261がオン、オフされる。PWM信号のオフ時にトランジスタ261がオンされ、PWM信号のオン時にトランジスタ261がオフされる。このトランジスタ261のオフ期間に、負荷電圧検出回路23の抵抗器232の出力電圧、即ち、負荷電圧Vがキャパシタ263を充電し、この充電電圧値が乗算器26の出力電圧として発生される。加算器27からは、乗算器26から出力された乗算信号と電流検出回路22の電流検出信号Iを加算した加算出力DIaが出力される。したがって、調光信号kのデューティ比が大きくなり、乗算器26の出力電圧が大きくなるに従い、加算出力DIa中に占める電流検出回路22の電流検出信号Iの割合が抑制され、加算出力DIa中に占める負荷電圧検出回路23の出力電圧(負荷電圧V)の割合が大きくなり、この出力電圧により重み付けされた加算出力DIaが出力される。この比較器28の出力信号に基づいて制御回路30は、スイッチング信号を発生して発光ダイオード19〜21を制御することから、発光ダイオード19〜21は、定電流特性を与える制御から電圧が一定となる定電圧特性を与える制御の傾向が次第に強められる。即ち、調光信号kを調光率k2〜k6に変化させると、上述の(1)式においてDIaを決定するk(V)成分がゼロから次第に大きくなり、このk(V)成分の増加とともにI成分が小さくなる。その結果、発光ダイオード19〜21は、定電流特性を与える制御から次第に定電圧特性を与える制御の傾向を強めて点灯制御される。
その後、調光信号発生部31よりデューティ比100%で最下限の調光信号kが出力されると、この調光信号kに応じて図2に示す調光率k7に対応する負荷特性が設定される。
この設定では、調光信号kにデューティ比が100%与えられ、制御部24において、乗算器26のトランジスタ261は、オフしたままに維持される。従って、負荷電圧検出回路23の抵抗器232の出力電圧(負荷電圧V)の全てがキャパシタ263に印加され、キャパシタ263を充電する。このキャパシタ263からは、大きな充電電圧値が乗算器26の出力電圧として発生される。その結果、加算器27からの出力の値DIaは、負荷電圧検出回路23の出力電圧(負荷電圧V)のみに影響されるようになり、この比較器28の出力信号に基づいて制御回路30は、スイッチング信号を発生して発光ダイオード19〜21を制御することから、制御回路30は、発光ダイオード19〜21に印加される電圧を略一定とする定電圧制御で発光ダイオード19〜21を制御することとなる。つまり、上述の(1)式においてDIaを決定するk(V)成分が殆どとなり、I成分が略ゼロになるので、発光ダイオード19〜21は、定電圧特性により点灯制御される。
上述した制御方式においては、調光信号発生部31の調光信号kが調光率をk1、k2、…k7の範囲で変更されると、これら調光率k1、k2、…k7に応じた負荷特性に従って調光率が小さい動作領域では、定電流特性により発光ダイオード19〜21が点灯制御される。また、調光率が大きくなるにつれて定電流特性から定電圧特性の傾向を次第に強めて発光ダイオード19〜21が点灯制御される。このように、定電流特性及び定電圧特性での調光制御方式の移行を調光信号kの調光率(調光深度)を変更するのみでスムーズに行うことができ、調光率の小さい動作領域から調光率の大きい動作領域までの広い範囲について安定した調光制御を実現することができる。
また、調光制御に直接パルス幅を制御する制御方式が用いられないので、JP-A 2003-157986 (KOKAI)に開示されるパルス幅により調光制御を行うものと比べ、電源装置において、発光ダイオードの光出力にフリッカが発生するのを防止できる。また、調光制御のためのスイッチ素子などを必要としないことで電源装置の回路構成を簡単にして部品点数を減らすことができ、電源装置の小型化及び低廉化を実現することができ、さらに回路効率の低下も抑制することができる。
さらに、図1を参照して述べたように、調光率が小さいく発光ダイオード19〜21に比較的大きな電流が流れる動作領域において、定電流制御が適用されている。従って、発光ダイオード19〜21の特性のばらつきによる調光制御への影響を小さくでき、発光ダイオード19〜21の光出力の変動を抑制することができる。また、調光率が大きく、発光ダイオードに流れる電流が小さな動作領域において定電圧制御を適用している。従って、発光ダイオード19〜21の特性のばらつきの影響を小さくすることができ、発光ダイオードの光出力の変動を抑制することもできる。これにより、発光ダイオード19〜21のばらつきや温度特性による動作点のばらつきに起因する光出力の変動を極力抑制することができる。
(第2の実施の形態)負荷である半導体発光光源からなる発光ダイオードは、その接続個数を増減し、或いは、種類の異なる発光ダイオードに変更すると、発光ダイオードに流れる電流が変化されて光出力(輝度)が変化することがある。ある発光ダイオードが例えば、図10に示すようなV―I特性Aを有し、電源装置が調光率k3に設定されて調光率k3と負荷特性とが交差するx点で発光ダイオードを動作しているもの仮定する。この動作状態において、この発光ダイオードに接続されている発光ダイオードの接続個数が変更されると、この発光ダイオードのV―I特性Aが図10に示す曲線A1で示される特性に変化される。V―I特性Aの変化に伴い、調光率k3に対応する負荷特性と交差する動作点は、図10に示されるようにx点からx1点に移動され、発光ダイオードに流れる電流もIaからIbに変化され、発光ダイオードの光出力(輝度)が変化される。
この第2の実施の形態に係る電源装置では、発光ダイオードの接続個数或いは品種の等の変更に拘わらず、設定された調光率では、常にその調光率における一定の光出力(輝度)に維持することができる。
図9は、本発明の第2の実施の形態にかかる電源装置の概略構成を示すもので、図5と同一部分には、同符号を付している。
図9に示される装置においては、発光ダイオード19〜21に並列接続される負荷電圧検出回路41は、抵抗器411、412、413、414の直列回路を有し、この抵抗器412、413、414の直列回路の中の接続点に乗算器26が接続されている。また、抵抗器413、414の直列回路には、並列にスイッチング素子421、抵抗器414には並列にスイッチング素子422が接続されている。これらスイッチング素子421、422は、直列接続されている発光ダイオード19〜21の個数に応じて切り替えられる。発光ダイオード19〜21のすべてが接続されて点灯される場合には、スイッチング素子421、422の全てがオフされる。また、発光ダイオード21が直列回路から除かれ、発光ダイオード19、20が直列接続されて点灯され場合には、スイッチング素子422のみがオンされ、発光ダイオード19のみが接続されて点灯される場合は、スイッチング素子421のみがオンされる。これらスイッチング素子421、422のオンオフ動作は、発光ダイオード19〜21に個数検出部43を接続し、この個数検出部43からの検出信号に基づいてマイコン44により制御する。この個数検出部43は、発光ダイオード19〜21の直列回路の抵抗を検出して直列接続されている発光ダイオード19〜21の個数を表す検出信号をマイクロプロセッサ44に供給しても良い。マイクロプロセッサ44は、発光ダイオード19〜21と検出信号とのレベルとの関係が記述されたテーブルが記憶されているメモリを備えれば良い。マイクロプロセッサ44では、検出信号でメモリが参照されて検出信号に応じて発光ダイオード19〜21の個数が特定され、この特定された個数に応じてスイッチング素子421、422をオンオフされれば良い。
このようにすると、発光ダイオード19〜21がすべて接続されている状態で、図10に示すように発光ダイオードのV−I特性Aと電圧軸(V)との交点がDVb点にあるものとする。この状態で、発光ダイオードの接続個数が変更されて発光ダイオード19、20のみが接続された場合には、例えば、発光ダイオードのV−I特性がA1に変化される。従って、発光ダイオード19、20の接続状態を検出する個数検出部43からの検出信号が変化されてマイクロプロセッサ44で発光ダイオードの接続個数の変更が検出される。従って、マイクロプロセッサ44は、発光ダイオードの接続個数(発光ダイオード19、20のみの接続)に応じてスイッチング素子422をオンし、抵抗器412、413の直列回路の間の電圧が制御部24に対して負荷電圧Vとして出力される。これにより図10に示すように発光ダイオードのV−I特性A1と電圧軸(V)との交点が図示左方向のDVc点に移動され、負荷特性の基点となるF点もF’点に移動される。この基点の移動により調光率k1〜K7に対応する負荷特性全体が符号k1’〜K7’で示されるように左方向に平行移動される。調光率k3に対応する負荷特性も図示左方向のk3’の位置まで平行移動されるので、発光ダイオードのV−I特性A1と交差する動作点は、点x1から点x2に移動され、発光ダイオードに流れる電流もIaに補正される。
したがって、この第2の実施の形態に係る電源装置においても、第1の実施の形態と同様な効果を得られ、さらに、発光ダイオードの接続個数或いは品種の変更などによりV−I特性が変化することがあっても、発光ダイオードに流れる電流を一定に補正することができ、常に一定の光出力を得ることができる。
(第3の実施の形態)この第3の実施の形態に係る電源装置においても、第2の実施の形態と同様に発光ダイオードの接続個数や品種のなどの変更に拘わらず、調光率に応じて常に一定の光出力(輝度)を得られるようにしている。
この電源装置では、図11に示すように発光ダイオード19〜21に、例えば、個数検出部51が接続され、この個数検出部51からの検出信号が調光信号発生部31に入力されている。調光信号発生部31では、調光率k1〜k7に応じた負荷特性に切り替えて調光信号kを乗算器26に出力している。ここで、調光信号発生部31は、個数検出部51で検出された発光ダイオード19〜21で、即ち、個数検出部51からの検出信号に応じて調光率k1〜k7の夫々に応じて補正した負荷特性を選定し、この補正した負荷特性に応じた調光信号kを乗算器26に出力している。
より具体的には、発光ダイオード19〜21がすべて接続されている状態では、図12に示すように発光ダイオードのV−I特性Aと調光率k3に対応する負荷特性と交差する動作点がx点にあるものとする。この状態で、発光ダイオードの接続個数が変更され発光ダイオード19、20のみが接続されると、例えば、発光ダイオードのV−I特性がA1に変化される。従って、調光率k3に対応する負荷特性と交差する動作点は、x1に移動されて発光ダイオードに流れる電流もIaからIbに変化される。しかし、この第3の実施の形態では、発光ダイオード19、20の接続状態を検出する個数検出部43の検出信号が調光信号発生部31に与えられると、調光信号発生部31は、検出信号に応じて、負荷特性を、例えば、選定されている調光率k3を調光率k3’に補正してこの調光率k3’に対応する負荷特性に切り替える。これにより、発光ダイオードのV−I特性A1と交差する動作点は、点x1から点x2に移動することになり、発光ダイオードに流れる電流もIaに補正される。
(第4の実施の形態)既に説明したように、調光率k1、k2、…k7に対応する夫々の負荷特性は、V=DVb−k(I)の一次関数で表現することができる。ここで、V+k(I)=DVb…(2)が成立し、負荷、即ち、負荷電圧検出値と発光ダイオードに流れる電流検出値に調光信号電圧の演算結果を加算した値が一定の電圧値DVbとなる関係が成立している。
この負荷電圧検出値と発光ダイオードに流れる電流検出値に調光信号電圧の演算結果を加算した値が一定の電圧値DVbとなる関係は、図13に示される回路で実現することができる。
図13は、本発明の第4の実施の形態にかかる電源装置の概略構成を示すもので、図5と同一部分には、同符号を付している。この図13に示された回路では、発光ダイオード19〜21に流れる電流を検出し、この検出電流を電圧信号に変換する為に差動増幅器241及び抵抗242、243で構成される増幅回路240が発光ダイオード19〜21の直列回路と抵抗221との間の接続点に接続されている。この増幅回路240の出力側は、乗算器26に接続されている。従って、検出電流は、増幅回路240で電圧信号に変換されて乗算器26で調光信号kに乗算される。乗算された乗算信号k(I)は、加算器27において、発光ダイオード19〜21に印加される電圧に相関する検出電圧信号Vに加算され、この加算信号(V+k(I))は、比較器28において、一定の基準電圧値29と比較される。この比較器28からの比較結果は、調光信号発生部31に制御信号として出力される。
図13に示す回路においても、図5に示す回路と同様に、調光率kに応じて定電圧制御及び又は定電流制御が実行されて調光信号kに従って発光ダイオード19〜21に流れる電流及び発光ダイオード19〜21に印加される電圧が制御される。
したがって、この第4の実施の形態に係る電源装置においても、第1の実施の形態と同様な効果を得られ、さらに、発光ダイオードの接続個数或いは品種の変更などによりV−I特性が変化することがあっても、発光ダイオードに流れる電流を一定の状態に補正することができ、常に一定の光出力を得ることができる。
なお、本発明は、上記実施の形態に限定されるものでなく、実施段階では、その要旨を変更しない範囲で種々変形することが可能である。例えば、上述した実施の形態では、アナログ回路の例を述べたが、マイコンやデジタル処理を用いた制御方式を採用することもできる。また、調光率の切替えは、連続的に調光するものや段階的に調光するものも含み、また、電源電圧の導通期間を制御して負荷への実効電圧を可変させる位相制御でもよい。さらに、調光信号は、専用信号線を用い、或いは、電源電線に調光信号を重畳させた電力線信号を用いることもできる。また、この調光信号は、PMW信号で供給される場合に限らず、調光深度を伝達することができる直流信号或いはDMX信号等のいずれの種類の信号であっても良い。
上述した実施例では、発光ダイオード19〜21を点灯する電源回路部が交流電源11、全波整流回路12、平滑用キャパシタ13,DC―DCコンバータ10、整流平滑回路18で構成され、この電源回路部とは、独立して制御部が設けられているが、制御部と電源回路部の一部或いは全部が回路的に一体化されても良い。
また、上記種々の実施例では、発光ダイオード等の半導体発光光源に限ることなく、発光ダイオード等の半導体発光光源を点灯する電源装置及び照明器具に適用した実施の形態に関して述べているが、有機EL光源或いは無機EL光源等も同様に半導体発光光源の範疇に入るものとみなし、有機EL光源或いは無機EL光源等の光源を点灯する電源装置にも同様にこの発明を適用することができることは明らかである。
尚、図9及び図11に示される電源装置では、発光ダイオード19〜21の個数が検出部43、51で検出されているが、この発光ダイオード19〜21が有機EL光源或いは無機EL光源で置き換えられた場合には、個数検出に代えて有機EL光源或いは無機EL光源の電圧が検出され、この検出電圧に応じて負荷特性を変更されても良い。これは、有機EL光源或いは無機EL光源では、光源個数の概念がないことに基づいている。
以上のように、この発明によれば、安定した調光制御を実現できる電源装置及び照明器具を提供することができる。
本発明の実施の形態によれば、定電流特性の傾向の負荷特性または定電圧特性の傾向の負荷特性を調光率に応じて選択して調光制御を実現できる電源装置及び照明器具を提供することができる。そして、この電源装置及び照明器具において、調光率に応じて定電流特性の傾向の強まる制御と定電圧制御特性の傾向の強まる制御の間でのスムーズな移行を実現することができる。
調光率を変更するのみで定電流特性から定電圧特性に或いは定電圧特性から定電流特性にスムーズに調光制御方式を切り替えて、調光率の小さい領域から大きい領域までの広い範囲に亘って安定な調光制御が可能な電源装置電源装置及び照明器具を提供することができる。