JP5244035B2 - 溶接金属 - Google Patents
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また、かかる構成によれば、上記元素が溶接金属の凝固組織微細化に有効なTi−Al−Si−Mn−Mg系酸化物に影響を与えることがない。
Cは、溶接金属の焼入れ性を確保するために添加する。C量が0.01質量%未満では、焼入れ性不足により、溶接金属の強度・靭性が不足する。また、低C量により溶接金属に高温割れが発生しやすくなる。C量が0.10質量%を超えると、溶接金属の固相線温度が低下しすぎるため、凝固組織微細化による溶接金属の耐高温割れ性改善効果を打消し、高温割れが発生しやすくなる。よって、C量は、0.01〜0.10質量%とすることが望ましい。
Siは、P、S同様に溶接金属の最終凝固部で低融点の共晶反応を起こし、高温割れを助長する。さらに、脱酸元素でもあり、溶接金属中の介在物をSiを含んだ酸化物とし、凝固組織微細化に効果的なTi−Al−Si−Mn−Mg系酸化物に制御できなくなるため、高温割れが発生しやすくなる。よって、Si量は、0.7質量%以下とすることが望ましい。
Mnは不可避的不純物として含有されるSと結合してMnSを生成し、耐高温割れ性を改善する効果がある。Mn量が0.5質量%未満では、MnSによる高温割れの抑制作用が小さくなり、溶接部に高温割れが発生する。また、Mnは脱酸元素でもあり、溶接金属中の介在物をMnを含んだ酸化物とし、凝固組織微細化に効果的なTi−Al−Si−Mn−Mg系酸化物に制御できなくなるため、高温割れが発生しやすくなる。よって、Mn量は、3.0質量%以下とすることが望ましい。
Tiは、溶接金属の耐高温割れ性を改善するために添加する。Tiは溶接時に脱酸反応に寄与し、溶接金属中の介在物がTi−Al−Si−Mn−Mg系酸化物組成に制御でき、その結果、溶接金属の凝固組織を微細にでき、溶接部の耐高温割れ性が改善される。Ti量が0.05質量%未満では、上記効果が充分では無く、溶接部に高温割れが発生する。Ti量が0.50質量%を超えると、溶接金属中の酸化物はTi−Al−Si−Mn−Mg系酸化物となり凝固組織が微細化し耐高温割れ性は改善するが、Ti量の大部分が溶存し、溶接金属の凝固温度を低下させるため凝固組織微細化による耐高温割れ性改善効果を上回って高温割れが発生しやすくなる。よって、Ti量は、0.05〜0.50質量%とすることが望ましい。
Alは強脱酸剤であり溶接金属中に生成する介在物から、Alに比べ脱酸力の弱いSiからなるSiO2やMnからなるMnOを還元し、介在物の組成を凝固組織微細化に効果的なTi−Al−Si−Mn−Mg系酸化物組成の介在物に制御できる。その結果、溶接金属の高温割れ抑制作用が改善する。Al量が0.02質量%未満では、上記作用が充分でなく、高温割れが発生する。Al量が0.10質量%を超えると、溶接金属中の介在物からTi酸化物が還元され、Al2O3主体となり、凝固組織微細化に効果的なTi−Al−Si−Mn−Mg系酸化物組成に制御できなくなり、溶接金属に高温割れが発生する。よって、Al量は、0.02〜0.10質量%とすることが望ましい。
Oは溶接金属の凝固組織を微細化する酸化物を構成する元素であり、溶接金属の耐高温割れ性改善に寄与している。O量が0.03質量%未満では、酸化物量が不足し、凝固組織微細化効果が充分でなく、高温割れが発生する。O量が0.10質量%を超えると、酸化物の個数の増加および粗大化を招き、靭性が低下するため好ましくない。よって、O量は、0.03〜0.10質量%とすることが望ましい。
Mgは強脱酸元素であり、溶接金属中の介在物からMgに比べて脱酸力の弱いSiやMnからなる酸化物を還元し、溶接金属の凝固組織微細化に有効なTi−Al−Si−Mn−Mg系酸化物の制御を促進する。Mg量が0.0002質量%未満では、上記効果を生ずるには充分ではなく、高温割れが発生する。Mg量が0.01質量%を超えると、溶接金属中の介在物からTi酸化物が還元され、酸化物は凝固組織微細化に効果的なTi−Al−Si−Mn−Mg系酸化物組成に制御できなくなり、溶接金属に高温割れが発生する。よって、Mg量は、0.0002〜0.01質量%とすることが望ましい。
Pは不純物元素であり、P量が0.03質量%を超えると、著しく耐高温割れ性が劣るため、P量は0.03質量%以下とすることが望ましい。
Sは不純物元素であり、S量が0.02質量%を超えると、著しく耐高温割れ性が劣るため、S量は0.02質量%以下とすることが望ましい。
Nは溶接金属の強度を確保する元素である。N量が0.002質量%未満では、溶接金属の強度が不足する。N量が0.01質量%を超えると、溶接金属中にブローホールが発生し、靭性も低下する。よって、N量は、0.002〜0.01質量%とすることが望ましい。
Bはγ粒界に偏析し、初析フェライトの生成を抑制する効果があり、溶接金属の靭性改善に有効である。B量が0.0003質量%未満では、大部分のBがBNとして窒化物に固定化され、初析フェライトの生成を抑制する効果が無く、靭性が低下する。B量が0.005質量%を超えると、溶接金属の凝固温度を著しく低下させ、高温割れが発生しやすくなる。よって、B量は、0.0003〜0.005質量%とすることが望ましい。
残部のFeは、ワイヤの鋼製外皮構成するFe、および/または、ワイヤのフラックスに添加されている鉄粉、合金粉のFe、および/または、母材のFeに相当する。
残部の不可避的不純物としては、S、P、Ni、O、Zr等が挙げられ、本発明の効果を妨げない範囲で含有することが許容される。
希土類元素は強脱酸元素であり、溶接金属中の介在物から希土類元素に比べて脱酸力の弱いSiやMnからなる酸化物を還元し、溶接金属の凝固組織微細化に有効なTi−Al−Si−Mn−Mg系酸化物制御を促進する。希土類元素が0.01質量%を超えると、溶接金属中の介在物からTi酸化物が還元され、酸化物は凝固組織微細化に効果的なTi−Al−Si−Mn−Mg系酸化物組成に制御できなくなり、溶接金属に高温割れが発生する。また、経済的にも0.01質量以下とすることが望ましい。本発明にいう希土類元素とは、Sc、Yおよび原子番号57(La)乃至71(Lu)をいう。なお、希土類元素の含有量は、後述のようにフラックス入りワイヤの組成を調整することによって制御することができる。
本発明においては、溶接金属の強度および靭性を調整するために、Cu、Ni、Cr、Mo、Al、Nb、Vの少なくとも1種以上を、0.5質量%以下の範囲内であれば、含有してもよい。これらの元素は、上記範囲内の量であれば、溶接金属の凝固組織を微細化するために不可欠なTi−Al−Si−Mn−Mg系酸化物に影響を及ぼさない。なお、Cu、Ni、Cr、Mo、Al、Nb、Vの含有量は、後述のようにフラックス入りワイヤの組成を調整することによって制御することができる。
溶接金属に含まれる円相当直径が0.5〜5.0μmのTi−Al−Si−Mn−Mg系酸化物を構成する金属元素の比率は、Ti:30〜70原子%、Al:30〜70原子%、Si:15原子%以下(0原子%を含む)、Mn:15原子%以下(0原子%を含む)、Mg:10原子%以下(0原子%を含む)とする。なお、金属元素の比率は原子%であり、Ti+Al+Si+Mn+Mg=100原子%となる。Ti−Al−Si−Mn−Mg系酸化物を構成する金属元素の比率が上記範囲内であれば、凝固組織のδフェライト組織の微細化に有効であり、溶接金属の耐高温割れ特性を著しく改善する。なお、Ti−Al−Si−Mn−Mg系酸化物の比率は、後述のようにフラックス入りワイヤの組成を調整することによって制御することができる。
(溶接材料)
本発明に係る溶接金属は、溶接材料(フラックス入りワイヤ)の組成を以下のように適切に制御することによって得られる。更には、溶接電流、溶接電圧、ワイヤ突き出し長さ、溶接方法等の溶接条件を適切に制御することが好ましい。
溶接方法に関しては、溶接効率等を考慮すると、ガスシールドアーク溶接を行うことが好ましい。なお、溶接金属の化学組成は、一般に、フラックス入りワイヤ等の溶接材料のほか、母材の希釈による影響等も受けるが、ガスシールドアーク溶接を行う場合には、その影響はほとんどない。
Ti−Al−Si−Mn−Mg系酸化物を構成する金属元素の比率(原子分率)と個数は、日本電子(株)製「JXA−8500F」を用い、溶接金属中央部の任意の測定領域(3mm×4mm)に含まれるすべての酸化物を、EPMA(Electron Probe Micro−Analysis)による元素分析を行って測定した。その結果を表6,7に示す。
溶接終了後、初層溶接部(クレータ部を除く)について、X線透過試験(JIS Z 3104)にて、内部割れの有無を確認し、割れ発生部分のトータル長さ測定し、割れ率を算出した。ここで、割れ率は、割れ率W=(割れ発生部分のトータル長さ)/(初層溶接部長さ(クレータ部を除く))×100により算出される。その割れ率で耐高温割れ性を評価した。その結果を表6,7に示す。
(耐高温割れ性)
割れ率5%以下のときを耐高温割れ性が良好とし、割れ率0%のときを耐高温割れ性が優れているとし、割れ率が5%を超えるときを不良とした。
JIS Z3313に準じて、引張強さ、0℃吸収エネルギー(靭性)について評価した。
引張強さの評価基準は、490MPa以上640MPa以下のときを良好とし、490MPa未満または640MPa超のときを不良とした。また、0℃吸収エネルギーの評価基準は、60J以上のときを良好とし、60J未満のときを不良とした。
総合評価の評価基準は、前記評価項目のうち、耐高温割れ性が優れており、機械的性質が良好であるときを、溶接金属としてより優れている:「◎」とし、耐高温割れ性が良好であり、機械的性質が良好であるときを、溶接金属として優れている:「○」とし、前記評価項目の少なくとも1つが不良であるときを、溶接金属として劣っている:「×」で示した。
2 耐火物
3 裏当て材
Claims (2)
- 鋼製外皮内にフラックスが充填されたフラックス入りワイヤにより溶接された溶接金属であって、
C:0.01〜0.10質量%、Si:0.7質量%以下、Mn:0.5〜3.0質量%、Ti:0.05〜0.50質量%、Al:0.02〜0.10質量%、O:0.03〜0.10質量%、Mg:0.0002〜0.01質量%、P:0.03質量%以下、S:0.02質量%以下、N:0.002〜0.01質量%、B:0.0003〜0.005質量%、を含有し、Cu、Ni、Cr、Mo、Nb、およびVからなる群から選択された少なくとも1種の元素を、合計0.5質量%以下含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなり、
かつ、前記溶接金属に含まれる円相当直径が0.5〜5.0μmのTi−Al−Si−Mn−Mg系酸化物を構成する金属元素の比率が、Ti:30〜70原子%、Al:30〜70原子%、Si:15原子%以下(0原子%を含む)、Mn:15原子%以下(0原子%を含む)、Mg:10原子%以下(0原子%を含む)、の範囲内であり(ただし、Ti+Al+Si+Mn+Mg=100原子%とする)、
前記Ti−Al−Si−Mn−Mg系酸化物は、前記溶接金属中に10〜500個/mm 2 存在することを特徴とする溶接金属。 - 希土類元素の1種または2種以上を合計0.01質量%以下含有することを特徴とする請求項1に記載の溶接金属。
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