本発明に係るハイブリッド車両の走行支援装置及びハイブリッド車両の走行支援方法の実施例を図1から図11に基づいて説明する。以下においては、その走行支援装置や走行支援方法の適用対象たるハイブリッド車両の一例を示しつつ、その走行支援装置等の説明を行う。
図1の符号1は、本実施例において例示するハイブリッド車両を示している。このハイブリッド車両1は、その動力源として少なくともエンジンとモータを備えたものであり、そのモータ等からなるハイブリッドシステムを備えたFR(フロントエンジン・リアドライブ)車として例示する。
[エンジン]
このハイブリッド車両1には、動力源の1つとしてエンジン10が搭載されている。ここでは、燃焼室内で燃料を燃焼させ、これにより発生した熱エネルギを機械的エネルギに変換する熱機関であって、図示しないピストンの往復運動によって出力軸(クランクシャフト)11から機械的な動力を出力する往復ピストン機関たる内燃機関をエンジン10の一例として挙げる。
このエンジン(内燃機関)10には図示しない電子制御式のスロットル装置、燃料噴射装置及び点火装置等が設けられており、これらスロットル装置等は、その動作が電子制御装置たるエンジンECU151によって制御される。そのエンジンECU151は、図示しないCPU(中央演算処理装置)、燃焼制御等の所定のエンジン制御プログラムなどを予め記憶しているROM(Read Only Memory)、そのCPUの演算結果を一時記憶するRAM(Random Access Memory)、予め用意された情報等を記憶するバックアップRAM等で構成されている。例えば、このエンジンECU151に設けたエンジン制御手段は、運転者のアクセル操作量に応じたスロットル開度にスロットル装置を制御すると共に、燃料噴射装置の燃料噴射量や燃料噴射時期、点火装置の点火時期等を制御して、エンジン10の出力軸11から出力される機械的な動力(つまりエンジントルク)の大きさを調整する。また、その際、エンジン10が図示しない電子制御式の吸気バルブ及び排気バルブの駆動装置を備えているならば、そのエンジン制御手段は、その吸気バルブや排気バルブの開閉時期制御やリフト量制御を行って、機械的な動力の大きさの調整を行う。
その出力軸11から出力された動力(エンジントルク)は、モータや変速機構等を有するハイブリッドシステムが具備された動力伝達装置を介して駆動輪Wrl,Wrrに伝えられる。このハイブリッド車両1においては、その出力軸11の一端にフライホイール12が接続されており、そのフライホイール12がダンパ機構21を介して動力伝達装置の入力軸(インプットシャフト)31に連結されている。
[ハイブリッドシステム]
ハイブリッドシステムは、主に発電機として動作する第1モータ/ジェネレータ(MG1)40、主に電動機として動作する第2モータ/ジェネレータ(MG2)50、動力分割機構60及び変速機構70を備えている。このハイブリッド車両1においては、車両前側から第1モータ/ジェネレータ40、動力分割機構60、第2モータ/ジェネレータ50、変速機構70の順番でハイブリッドシステムのケーシングCAの内部へ同軸上に配設される。
第1及び第2のモータ/ジェネレータ40,50は、供給された電力を機械的な動力(つまり電動機トルク)に変換して出力する電動機としての機能と、入力された機械的な動力を電力に変換して回収する発電機としての機能と、を兼ね備えている。これら第1及び第2のモータ/ジェネレータ40,50は、例えば永久磁石型交流同期電動機として構成されており、各々、インバータ81から三相の交流電力が供給されて回転磁界を形成するステータ41,51と、その回転磁界に引き付けられて回転する回転子としてのロータ42,52と、を有している。その各ステータ41,51は、ケーシングCAの内壁に固定されている。また、その各ロータ42,52には、同心円上で一体になって回転する回転軸43,53が連結されている。
その第1モータ/ジェネレータ40の回転軸43は、動力伝達装置の入力軸31に対して同心円上に配置されたものであり、その入力軸31を内方にて相対回転し得るよう配設した中空シャフトである。また、第2モータ/ジェネレータ50の回転軸53は、動力伝達装置の出力軸32に対して同心円上に配置されたものであり、その出力軸32を内方にて相対回転し得るよう配設した中空シャフトである。本実施例のハイブリッドシステムにおいては、その入力軸31と出力軸32についても夫々同心円上に配置されている。
また、これら第1及び第2のモータ/ジェネレータ40,50は、インバータ81を介して二次電池82に接続されており、その二次電池82との間で電力の授受を行う。
そのインバータ81は、二次電池82からの直流電力を交流電力に変換して第1モータ/ジェネレータ40や第2モータ/ジェネレータ50に供給できるよう構成されている。第1及び第2のモータ/ジェネレータ40,50は、その交流電力が供給されることによって電動機として作動し、夫々のロータ42,52の回転軸43,53から機械的な動力(電動機トルク(つまり力行トルク))を出力することができる(力行制御)。例えば、本実施例のハイブリッド車両1においては、第1モータ/ジェネレータ40をエンジン10の始動用モータとしても使用することができる。その場合、第1モータ/ジェネレータ40の電動機トルクは、後述する動力分割機構60を介してエンジン10の出力軸11に伝達される。また、第2モータ/ジェネレータ50の電動機トルクは、後述する変速機構70を介して動力伝達装置の出力軸(アウトプットシャフト)32に出力され、駆動力として駆動輪Wrl,Wrrに伝達される。
一方、第1及び第2のモータ/ジェネレータ40,50は、ロータ42,52の回転軸43,53に回転トルクが入力されると、夫々にその入力トルクを交流電力に変換する。つまり、第1及び第2のモータ/ジェネレータ40,50は、回転トルクの入力に伴って発電機として作動する。この場合、インバータ81は、その第1及び第2のモータ/ジェネレータ40,50で変換された交流電力を受け取り、直流電力に変換して二次電池82に回収する(つまり電力の回生を行う)ことができる(回生制御)。例えば、本実施例のハイブリッド車両1においては、動力分割機構60で分割されたエンジン10の動力(エンジントルク)の一部が回転軸43に入力され、その入力トルクが第1モータ/ジェネレータ40で交流電力に変換されてインバータ81に送られる。また、車両減速時や車両停止時等の車両制動時には、変速機構70を介して第2モータ/ジェネレータ50の回転軸53に駆動輪Wrl,Wrr側から回転トルクが入力され、その入力トルクが第2モータ/ジェネレータ50で交流電力に変換されてインバータ81に送られる。その際には、上記のような電力の回生が行われると共に駆動輪Wrl,Wrrに制動力(回生制動力)が加わり、回生制動を行うことができる。つまり、このハイブリッドシステムは、回生制御に伴う回生制動力を発生させる回生制動装置としても機能する。更に、第1モータ/ジェネレータ40から交流電力を受け取ったインバータ81は、その交流電力を第2モータ/ジェネレータ50に供給し、その第2モータ/ジェネレータ50を電動機として作動させることもできる。
このように、第1モータ/ジェネレータ40は、エンジン10の動力の一部を利用した発電機としての機能のみならず、生成した電力を第2モータ/ジェネレータ50に給電する電力源としての機能や、エンジン10を始動させる際のエンジン始動用モータとしての機能を発揮することができる。また、第2モータ/ジェネレータ50は、ハイブリッド車両1の動力源として機能するだけでなく、車両制動時の回生動作による発電機としての機能を発揮することができる。
上述したインバータ81の動作は、電子制御装置たるモータ/ジェネレータECU152によって制御される。つまり、第1及び第2のモータ/ジェネレータ40,50は、そのモータ/ジェネレータECU152に設けたモータ/ジェネレータ制御手段がインバータ81の動作を制御することによって、力行制御又は回生制御、更には力行トルクや回生トルクの制御が為されるように構成されている。そのモータ/ジェネレータECU152は、図示しないCPU(中央演算処理装置),第1及び第2のモータ/ジェネレータ40,50を電動機又は発電機のどちらで動作させるのか等の所定の制御プログラムなどを予め記憶しているROM、そのCPUの演算結果を一時記憶するRAM、予め用意された情報等を記憶するバックアップRAM等で構成されている。
これら第1及び第2のモータ/ジェネレータ40,50においては、ロータ42,52の回転角位置を検出する図示しない回転センサ(レゾルバ)が夫々設けられており、その各回転センサが検出信号をモータ/ジェネレータECU152に送信する。
続いて、動力分割機構60について説明する。この動力分割機構60は、動力伝達装置の入力軸31や第1モータ/ジェネレータ40の回転軸43に対して同心円上に配置された外歯歯車のサンギヤ61と、このサンギヤ61に対して同心円上に配置された内歯歯車のリングギヤ62と、そのサンギヤ61に噛合すると共にリングギヤ62にも噛合する複数のピニオンギヤ63と、これら各ピニオンギヤ63を自転、且つ、公転自在に保持するキャリア64と、を有し、そのサンギヤ61とリングギヤ62とキャリア64とが回転要素になって差動作用を行なう遊星歯車機構として構成されている。そのサンギヤ61は、第1モータ/ジェネレータ40の回転軸43に対して一体回転するよう連結されている。また、リングギヤ62には、動力伝達装置の出力軸32が同心円上に一体となって回転するよう連結されている。また、キャリア64には、動力伝達装置の入力軸31が同心円上に一体となって回転するよう連結されている。
この動力分割機構60においては、エンジン10の動力(エンジントルク)が入力軸31を介してキャリア64に入力され、サンギヤ61とリングギヤ62のギヤ比に応じて分配される。リングギヤ62に分配されたエンジン10の動力は、出力軸32から変速機構70や差動装置35を介して駆動力として駆動輪Wrl,Wrrに伝達される。一方、サンギヤ61に分配されたエンジン10の動力は、回転軸43を介して第1モータ/ジェネレータ40のロータ42に伝達される。その際、第1モータ/ジェネレータ40を発電機として作動させることによって、そのエンジン10の動力が交流電力に変換されるので、その交流電力は、インバータ81の制御形態に応じて、直流電力に変換されて二次電池82に回収される又は第2モータ/ジェネレータ50に給電される。
更に、この動力分割機構60には、リングギヤ62の回転を止めてケーシングCAに固定するブレーキBが用意されている。そのブレーキBは、一方の係合要素をケーシングCAの内壁に一体となって回転するよう連結すると共に、他方の係合要素をリングギヤ62の例えば外壁に一体となって回転するよう連結したものであり、その動作を例えば後述する統合ECU156の動力分割制御手段に制御させる。その動力分割制御手段がブレーキBを係合状態に制御してリングギヤ62を固定した場合には、第1モータ/ジェネレータ40を電動機として作動させると、その電動機トルクがサンギヤ61に入力され、各ピニオンギヤ63、キャリア64及び入力軸31を介してエンジン10の出力軸11に伝達される。つまり、そのときには、エンジン10が停止していれば、その電動機トルクによってエンジン10のクランキング動作を行うことができる。従って、エンジン10を始動させる際には、第1モータ/ジェネレータ40を電動機として作動させると共に、動力分割機構60のリングギヤ62を固定すればよい。
次に、変速機構70について説明する。本実施例の変速機構70は、高速段と低速段との間で切り替えが為される2段変速式のリダクション機構である。この変速機構70は、出力軸32や回転軸53に対して同心円上に配置された外歯歯車の第1サンギヤ71と、この第1サンギヤ71に対して同心円上で且つ車両前後方向にずらして配置された第1サンギヤ71よりも大径の外歯歯車の第2サンギヤ72と、その第1サンギヤ71に対して同心円上に配置された内歯歯車のリングギヤ73と、その第1サンギヤ71に噛合する複数のショートピニオンギヤ74と、その第2サンギヤ72及びショートピニオンギヤ74に噛合すると共にリングギヤ73にも噛合する複数のロングピニオンギヤ75と、その各ショートピニオンギヤ74及び各ロングピニオンギヤ75を自転、且つ、公転自在に保持するキャリア76と、を有し、その第1サンギヤ71と第2サンギヤ72とリングギヤ73とキャリア76とが回転要素になって差動作用を行なう遊星歯車機構として構成されている。
更に、この変速機構70には、第2モータ/ジェネレータ50の回転軸53に対する第1サンギヤ71の相対回転を許可又は規制する第1ブレーキB1と、リングギヤ73の回転を許可又は規制する第2ブレーキB2と、が設けられている。これら第1及び第2のブレーキB1,B2としては、例えば油圧により作動する多板クラッチ等の摩擦係合装置を用いる。
その第1ブレーキB1は、一方の係合要素がケーシングCAの内壁に一体となって回転するよう連結され、他方の係合要素が第1サンギヤ71に一体となって回転するよう連結されている。つまり、その第1サンギヤ71は、第1ブレーキB1の夫々の係合要素を互いに係合させることによってケーシングCAと一体になり、回転が止まる。その際、回転軸53や出力軸32は、その停止中の第1サンギヤ71に対して相対回転できる。一方、この第1サンギヤ71は、第1ブレーキB1の夫々の係合要素間を解放させることによって、ケーシングCA、回転軸53及び出力軸32に対して相対回転することができる。
また、第2ブレーキB2は、一方の係合要素がケーシングCAの内壁に一体となって回転するよう連結され、他方の係合要素がリングギヤ73の外壁に一体となって回転するよう連結されている。つまり、そのリングギヤ73は、第2ブレーキB2の夫々の係合要素を互いに係合させることによってケーシングCAと一体になり、回転が止まる。一方、このリングギヤ73は、第2ブレーキB2の夫々の係合要素間を解放させることによって、ケーシングCAに対する相対回転を行うことができる。
この変速機構70においては、第1ブレーキB1を係合させると共に第2ブレーキB2を解放させ、第1サンギヤ71を固定することによって、変速比が「1」よりも大きい高速段に制御される。一方、第1ブレーキB1を解放させると共に第2ブレーキB2を係合させた場合には、リングギヤ73が固定されて、その高速段よりも変速比の大きい低速段に制御される。これら第1及び第2のブレーキB1,B2は、電子制御装置たる変速ECU153によって制御される。その変速ECU153は、図示しないCPU(中央演算処理装置)、所定の変速制御プログラムなどを予め記憶しているROM、そのCPUの演算結果を一時記憶するRAM、予め用意された情報等を記憶するバックアップRAM等で構成されている。この変速ECU153に設けた変速制御手段は、予め用意してあるマップデータ(変速線図)に基づいて変速段の選択を行う。そのマップデータは、例えば、車両発進時から所定車速までは低速段を選択させ、車速がその所定車速を超えたときに高速段へと切り替えるように設定されている。その切り替え判断に用いる車速を得る為の車速情報取得手段としては、例えば車速センサ111や各車輪Wfl,Wfr,WWrl,Wrrの図示しない車輪速センサを利用すればよい。
第2サンギヤ72は、第2モータ/ジェネレータ50の回転軸53に対して一体回転するよう連結されている。また、キャリア76には、動力伝達装置の出力軸32が一体となって回転するよう同心円上に連結されている。
その出力軸32は、プロペラシャフト33を介して差動装置35に連結されている。また、その差動装置35は、内部の差動機構を介して左右のドライブシャフトDl,Drに連結され、更にそのドライブシャフトDl,Drを介して左右夫々の車輪(駆動輪)Wrl,Wrrに連結される。従って、その出力軸32から出力された動力(回転トルク)は、差動装置35の最終減速比で減速されると共に左右夫々のドライブシャフトDl,Drに分配され、駆動力として各駆動輪Wrl,Wrrに伝わる。
以上示したハイブリッドシステムにおいては、主に、車両発進時の制御モード、定速走行等のような通常走行時の制御モード、全開加速等のような要求駆動力が大きいときの制御モード及び車両減速時や車両停止時等の車両制動時の制御モードが用意されている。
車両発進時の制御モードは、例えば車両停止状態で運転者が図示しないアクセルペダルを踏んだ場合、また、後述する自動走行モードにおいて車両発進指令を受けた場合等に使われる制御モードである。この車両発進時の制御モードでは、エンジン10を停止させたままの状態で第2モータ/ジェネレータ50に二次電池82から電力を供給して、その第2モータ/ジェネレータ50が電動機として作動するようモータ/ジェネレータECU152のモータ/ジェネレータ制御手段にインバータ81を制御させる。その際、変速ECU153の変速制御手段は、第1ブレーキB1を解放状態に制御すると共に第2ブレーキB2を係合状態に制御して、変速機構70が低速段となるように制御する。これにより、第2モータ/ジェネレータ50の電動機トルクは、変速機構70の第2サンギヤ72に入力されて低速段で変速され、キャリア76を介して出力軸32に出力される。従って、ハイブリッド車両1は、各駆動輪Wrl,Wrrに第2モータ/ジェネレータ50の動力による駆動力を発生させて発進することができる。
通常走行時の制御モードは、例えば運転者のアクセルペダル操作に大きな変化が見受けられない場合、また、自動走行モードにおいて然程大きな駆動力を必要としない場合等に使われる制御モードである。この通常走行時の制御モードでは、停止状態のエンジン10を始動して、主にその動力で走行する。従って、その際には、モータ/ジェネレータ制御手段が第1モータ/ジェネレータ40を電動機として作動させると共に統合ECU156の動力分割制御手段が動力分割機構60のリングギヤ62を固定して、その第1モータ/ジェネレータ40の電動機トルクがエンジン10の出力軸11に伝わるようにする。これによりクランキング動作が行われてエンジン10を始動させることができるので、その始動後には、モータ/ジェネレータ制御手段が第1モータ/ジェネレータ40への給電を停止させると共に動力分割制御手段がブレーキBの解放制御によってリングギヤ62を解放し、且つ、エンジンECU151のエンジン制御手段が要求駆動力に応じたエンジン10の出力制御を行う。そのエンジン10の動力は、動力分割機構60で分割され、一方が出力軸32等を介して各駆動輪Wrl,Wrrに駆動力として伝達される。その動力分割機構60で分割された他方の動力は、第1モータ/ジェネレータ40の回転軸43に入力される。その際、この第1モータ/ジェネレータ40は、発電機として作動させられて、その回転軸43の入力トルクに応じた電力(交流電力)を生成する。モータ/ジェネレータ制御手段は、その交流電力を第2モータ/ジェネレータ50に供給して、第2モータ/ジェネレータ50を電動機として作動させるようインバータ81を制御する。このときには、エンジン10と第2モータ/ジェネレータ50の動力でハイブリッド車両1が走行する。また、この通常走行時の制御モードにおいて、変速ECU153の変速制御手段は、車速に応じて変速機構70の変速段を制御する。この通常走行時の制御モードにおいては、後述する要求駆動力が大きいときの制御モードと比べてエンジン10の回転数を低く抑えることができ、静粛性が高まる。尚、例えば二次電池82の蓄電量が少なくなっている等の理由がある場合には、その交流電力をインバータ81で直流電力に変換させて二次電池82に回収させてもよい。
要求駆動力が大きいときの制御モードは、例えば運転者のアクセルペダルの踏み込み操作によって大きな要求駆動力が求められた場合、また、自動走行モードにおいて大きな要求駆動力が求められた場合等に使われる制御モードである。この要求駆動力が大きいときの制御モードでは、通常走行時の制御モードと同様にエンジン10と第2モータ/ジェネレータ50の動力でハイブリッド車両1を走行させるが、その第2モータ/ジェネレータ50の動力を高めるべく二次電池82から給電させる。その際には、エンジン制御手段が要求駆動力に応じて割り当てられた出力にエンジン10を制御し、且つ、モータ/ジェネレータ制御手段が二次電池82から第2モータ/ジェネレータ50に給電させ、要求駆動力に応じて割り当てられた出力となるようその第2モータ/ジェネレータ50を電動機として作動させる。このとき、モータ/ジェネレータ制御手段は、第1モータ/ジェネレータ40への給電を停止させている。その要求駆動力の割り当ては、例えば要求駆動力の大きさや二次電池82の蓄電状態等に基づいて後述する統合ECU156に設定させる。
車両制動時の制御モードとは、回生制御の行われる制御モードのことであり、例えば運転者がアクセルペダルの踏み込みを止めて戻した場合、運転者が図示しないブレーキペダルを踏んだ場合、また、自動走行モードにおいて減速や停止等の制動が要求された場合などに使われる。この車両制動時の制御モードでは、エンジン制御手段にエンジン10を停止させ、モータ/ジェネレータ制御手段に第2モータ/ジェネレータ50を発電機として作動させる。これにより、その第2モータ/ジェネレータ50においては、変速機構70を介して回転軸53に伝わってきた駆動輪Wrl,Wrr側からの回転トルクが交流電力に変換される。モータ/ジェネレータ制御手段がその交流電力を二次電池82に回収させるようインバータ81を制御すると、このハイブリッド車両1においては、電力の回生と共に駆動輪Wrl,Wrrに回生制動力が加わる。
[機械制動装置]
このハイブリッド車両1には、その車両制動を行う際に用いる機械制動装置が用意されている。この機械制動装置は、夫々の車輪Wfl,Wfr,Wrl,Wrrに対して個別の大きさで要求制動力を発生させることができるよう構成されている。ここでは、ブレーキ液圧(油圧)の力を利用して係合要素間に摩擦力を発生させ、これにより車輪Wfl,Wfr,Wrl,Wrrに制動力を働かせるものについて例示する。この機械制動装置は、夫々の車輪Wfl,Wfr,Wrl,Wrrに制動力を発生させる制動力発生手段91fl,91fr,91rl,91rrと、その制動力発生手段91fl,91fr,91rl,91rrにブレーキ液圧を供給するブレーキ液圧配管92fl,92fr,92rl,92rrと、夫々の制動力発生手段91fl,91fr,91rl,91rrの要求ブレーキ液圧(換言するならば要求制動力)に応じたブレーキ液圧を発生させるブレーキ液圧調整手段(以下、「ブレーキアクチュエータ」という。)93と、を備えている。
また、この機械制動装置には、運転者が操作する図示しないブレーキペダル、このブレーキペダルに入力された運転者のブレーキ操作に伴う操作圧力(ペダル踏力)を所定の倍力比で倍化させる制動倍力手段(ブレーキブースタ)、この制動倍力手段により倍化されたペダル踏力をブレーキペダルの操作量に応じたブレーキ液圧(以下、「マスタシリンダ圧」という。)へと変換するマスタシリンダ等も備えられている。
制動力発生手段91fl,91fr,91rl,91rrは、車輪Wfl,Wfr,Wrl,Wrrと一体になって回転する部材に対して摩擦力を加え、これにより車輪Wfl,Wfr,Wrl,Wrrの回転を抑えて制動動作を行う摩擦ブレーキ装置である。例えば、この制動力発生手段91fl,91fr,91rl,91rrは、車輪Wfl,Wfr,Wrl,Wrrと一体になるよう個別に取り付けたディスクロータ91aと、このディスクロータ91aに押し付けて摩擦力を発生させる摩擦材としてのブレーキパッド91bと、車両本体に固定され、ブレーキアクチュエータ93から供給されたブレーキ液圧によってブレーキパッド91bをディスクロータ91aに向けて押動するキャリパ91cと、を備えている。この制動力発生手段91fl,91fr,91rl,91rrにおいては、ブレーキアクチュエータ93から送られてきたマスタシリンダ圧又は調圧後のブレーキ液圧に応じた押圧力でブレーキパッド91bがディスクロータ91aに押し付けられる。従って、各車輪Wfl,Wfr,Wrl,Wrrには、そのマスタシリンダ圧又は調圧後のブレーキ液圧に応じた大きさの制動力(制動トルク)が発生する。以下においては、そのマスタシリンダ圧によって発生する制動力、制動トルクのことを夫々「マスタシリンダ圧制動力」、「マスタシリンダ圧制動トルク」という。また、そのマスタシリンダ圧を加圧した調圧後のブレーキ液圧によって発生する制動力、制動トルクのことを夫々「加圧制動力」、「加圧制動トルク」という。
また、ブレーキアクチュエータ93は、例えば、図示しないオイルリザーバ、オイルポンプ、夫々のブレーキ液圧配管92fl,92fr,92rl,92rrに対してのブレーキ液圧を各々に増減する為の増減圧制御弁等によって構成されている。このブレーキアクチュエータ93は、そのオイルポンプや増減圧制御弁等が電子制御装置たるブレーキECU154によって制御される。そのブレーキECU154は、図示しないCPU(中央演算処理装置)、所定の制動制御プログラムなどを予め記憶しているROM、そのCPUの演算結果を一時記憶するRAM、予め用意された情報等を記憶するバックアップRAM等で構成されている。このブレーキECU154に設けた油圧制動制御実行手段は、例えば運転者によるブレーキ操作量や自動走行モード時の制動制御指令値に基づいて各車輪Wfl,Wfr,Wrl,Wrrの要求制動力(要求制動トルク)を設定する。そのブレーキ操作量とは、ブレーキペダルに入力されたペダル踏力やブレーキペダルの踏み込み量(つまり移動量)などであり、図示しないブレーキ操作量検出手段で検出する。この油圧制動制御実行手段は、マスタシリンダ圧制動力(マスタシリンダ圧制動トルク)が要求制動力(要求制動トルク)に対して不足していれば、その不足分を補うことが可能な各制動力発生手段91fl,91fr,91rl,91rrへの目標ブレーキ液圧を求め、その目標ブレーキ液圧に基づきブレーキアクチュエータを制御してマスタシリンダ圧の加圧を行い、その要求制動力(要求制動トルク)を満足させる加圧制動力(加圧制動トルク)を制動力発生手段91fl,91fr,91rl,91rrに発生させる。
このように、このハイブリッド車両1には、制動(つまり減速又は停止)させる為の車両制動装置として、ここで示した機械制動装置と前述した回生制動装置とが用意されている。
[操舵装置]
また、このハイブリッド車両1には、操舵輪Wfl,Wfrを目標転舵角まで転舵できるように構成した操舵装置が用意されている。ここでは、図示しないステアリングホイールと左右夫々の操舵輪Wfl,Wfrとの間に機械的な接続が無い所謂ステアバイワイヤ方式のものを例示する。
本実施例の操舵装置は、設定した目標転舵角となるように操舵輪Wfl,Wfrに対して転舵力を発生させる車輪転舵手段101を備えている。その車輪転舵手段101としては、目標転舵角に基づき電動モータ102を駆動し、その駆動力によりシャフト103を車両の左右方向に直動させて操舵輪Wfl,Wfrを転舵させるものを用いる。即ち、この車輪転舵手段101においては、その電動モータ102が夫々の操舵輪Wfl,Wfrに対しての転舵力を発生させる転舵力発生手段として利用される。例えば、本実施例の電動モータ102は、図示しないが、管状のロータや当該ロータの外周側に覆設されたステータ等を備え、そのロータの内部にシャフト103が挿通されたものである。
その電動モータ102は、その動作が電子制御装置たる操舵ECU155によって制御される。その操舵ECU155は、図示しないCPU(中央演算処理装置)、所定の操舵制御プログラムなどを予め記憶しているROM、そのCPUの演算結果を一時記憶するRAM、予め用意された情報等を記憶するバックアップRAM等で構成されている。この操舵ECU155に設けた操舵制御手段は、例えば運転者によるステアリングホイールの操舵操作量と車速等の車両の走行状態の情報とに基づいて目標転舵角を求める。また、自動走行モード時には、その操舵制御手段が例えばカーナビゲーションシステムの地図情報等に基づいて目標転舵角を求め、操舵輪Wfl,Wfrがその目標転舵角となるように電動モータ102を制御する。そのステアリングホイールの操舵操作量とは、運転者の操舵操作によってステアリングホイールに入力された円周方向の操舵力やステアリングホイール又はステアリングシャフトの回転角度等である。
ここで、車輪転舵手段101には、その電動モータ102の転舵力をシャフト103に伝達する転舵力伝達機構104が設けられている。この転舵力伝達機構104としては、例えば、図示しない、電動モータ102におけるロータの内周面に形成された又は当該ロータに取り付けられたボールネジナット、シャフト103の外周面に形成された螺旋状のボールネジ部、及びこれらボールネジナットとボールネジ部との間に配設された複数のボールで構成されたボールネジ機構を用いることができる。この種の転舵力伝達機構104は、電動モータ102の駆動(即ち、ロータの回転)に伴ってボールネジナットが周方向に回転し、その回転方向に応じてシャフト103を車両の左方向又は右方向に直動させ、これにより、そのシャフト103の両端に連結された操舵輪Wfl,Wfrを転舵させる。
更に、この車輪転舵手段101には、操舵輪Wfl,Wfrの転舵角を検出する転舵角センサ105が設けられている。例えば、この転舵角センサ105としては、シャフト103の外周面近傍に配置され、このシャフト103の回転角又は軸線方向(車両の左右方向)への移動量を検出するものを用いる。この転舵角センサ105の検出信号は、操舵ECU155に送信される。従って、その操舵ECU155の操舵制御手段は、操舵輪Wfl,Wfrの実際の転舵角が目標転舵角になっているのか否かを判断することができる。
[走行支援]
本実施例のハイブリッド車両1には、エンジン10、ハイブリッドシステム、機械制動装置及び操舵装置の協調制御を行う電子制御装置(以下、「統合ECU」という。)156が用意されている。この統合ECU156は、図示しないCPU(中央演算処理装置),所定の制御プログラムなどを予め記憶しているROM、そのCPUの演算結果を一時記憶するRAM、予め用意された情報等を記憶するバックアップRAM等で構成されている。
この統合ECU156は、エンジンECU151、モータ/ジェネレータECU152、変速ECU153、ブレーキECU154及び操舵ECU155との間で制御指令や制御要求値、各種センサの検出信号等の授受を行い、最適な車両駆動力制御や車両制動力制御、車両挙動制御、車両走行制御等を実行させる。例えば、この統合ECU156は、アクセル操作に応じた目標駆動力を求めると共に上述したハイブリッドシステムの制御モードの選択を行い、エンジン10とハイブリッドシステムへの制御指令や制御要求値をエンジンECU151、モータ/ジェネレータECU152及び変速ECU153に送信する。これにより、そのエンジンECU151等は、上述した制御を各々実行して目標駆動力や制御モードに応じた走行を行わせる。
この統合ECU156は、所謂ASV(先進安全自動車)等に代表される制御技術である走行支援制御を行う。その走行支援制御とは、レーンキープアシスト制御や自動運転制御等である。例えば、レーンキープアシスト制御においては、統合ECU156が車載されている撮像装置の画像に基づいて自身の走行レーンを認識し、その走行レーンから運転者の意図が無いにも拘わらず外れそうなときに、操舵ECU155に対して自身の走行レーン上での走行を続けさせるよう制御指令と操舵輪Wfl,Wfrの目標転舵角の情報を送る。その制御指令等を受信した操舵ECU155の操舵制御手段は、その制御指令等に応じた操舵輪Wfl,Wfrの転舵角の制御を行い、走行レーンからの逸脱を回避させる。また、自動運転制御においては、例えば運転者が自動走行モードを選択した際に、統合ECU156がカーナビゲーションシステムの地図情報や自車位置情報等に基づいて将来の走行パターンを生成し、この走行パターンに基づき走行を行うようにエンジン制御や変速制御、ブレーキ制御や操舵制御等を実行させ、運転者の介在無しにハイブリッド車両1を自動走行させる。その際、統合ECU156は、その走行パターンが実現されるようにエンジンECU151、モータ/ジェネレータECU152、変速ECU153、ブレーキECU154及び操舵ECU155に対して制御指令や制御要求値を送り、夫々の制御対象を制御させる。
ところで、このハイブリッド車両1においては、回生制御中に変速機構70の変速制御が求められる場合がある。例えば、車両減速時や車両停止時等の車両制動時の制御モードにおいて回生制動を行っている最中に車速が上述した所定車速を下回ることもあり、そのときには、変速ECU153の変速制御手段が変速機構70の変速段を高速段から低速段に切り替える。その際、このハイブリッド車両1においては、回生制御を継続させたまま変速段の切り替えを行うとモータ/ジェネレータの負荷が大きくなるので、その負荷を減らすべく、回生制御を停止させてから変速制御を行う。つまり、変速制御中には、回生制動が行われないように制御されている。
従来、この種のハイブリッド車両においては、回生制動を止めたことによる変速制御中の車両減速度の不足分を上述した機械制動装置の如き摩擦ブレーキを用いて発生させ、運転者のブレーキ操作に伴う又は自動走行モードにおける要求車両減速度が発生されるように制御している。また、かかる従来のハイブリッド車両においては、機械制動装置によって増加させた制動力を減らして、その減少分を再び回生制動力で補おうとすると、その機械制動装置による制動から回生制動への切り替えの際の車両減速度の変動による違和感を運転者に覚えさせたり、機械制動装置のブレーキアクチュエータ93の耐久性を悪化させたりする可能性がある。これが為、変速段の切り替え後には、回生制御を復帰させないよう制御することになっている。つまり、従来のハイブリッド車両においては、変速制御中や変速制御後に回生制動が為されないので、それに伴う車両減速度の不足分を機械制動装置で補うように構成されている。従って、この従来のハイブリッド車両においては、変速制御を実行しないときと比べて、回生制御による電力の回収量(以下、「回生量」という。)が減ってしまう。また、その機械制動装置による車両減速度の発生は、モータ/ジェネレータの回生制動によるものと比較すると、熱として外部に放出されるエネルギが増えるので、結局の所、車両全体として観ると燃費性能の悪化を招いてしまうことになる。
そこで、本実施例のハイブリッド車両1は、制動制御中に変速機構70において変速制御が実行される場合にも好ましい回生量が得られるように構成する。ここでは、その回生量が最も好ましい、つまり最適なものとなるよう構成したハイブリッド車両1を例に挙げて説明する。また、ここでは、その回生量の増加をモータ/ジェネレータ(第1モータ/ジェネレータ40及び第2モータ/ジェネレータ50)に負担をかけることなく実行させるように構成する。
以下においては、自動走行モードで走行しているときの車両制動時の動作を例に挙げて説明する。
自動走行モードにおいては、ハイブリッド車両1を制動させる際の車両制動モードとして、制動開始から制動終了までの時間が決められているときの第1車両制動モード、制動開始から制動終了までの距離が決められているときの第2車両制動モード及び制動開始から制動終了までの時間と距離が決められているときの第3車両制動モードがある。また、特に制動開始から制動終了までの時間も距離も定められていない第4車両制動モードもあり得る。尚、ここで言う制動終了時は、ハイブリッド車両1が或る車速まで減速した時点の場合もあれば、停止した時点の場合もある。統合ECU156は、少なくともその内の何れかの車両制動モードを選択して制動制御を実行させることができる。
ハイブリッド車両1を制動させる際、本実施例の統合ECU156は、車速等の走行状態やどの時点でどの程度まで減速させるか等の制動条件に対応させた基準制動パターンを生成し、その基準制動パターンに基づいて制御が必要となる制御対象の電子制御装置(エンジンECU151、モータ/ジェネレータECU152、変速ECU153やブレーキECU154)に対して制御指令や制御要求値を送信する。この統合ECU156には、その基準制動パターンの生成を行う基準制動パターン生成手段と、設定した制動パターンに基づき制御指令等の生成を行って、車両制動装置(機械制動装置や回生制動装置)に制動制御を実行させる車両制動制御手段と、が設けられている。
その基準制動パターンについては、車両制動装置(厳密には回生制動装置)による制動が開始される時間(以下、「制動開始時間」という。)t0、制動開始時の車速V0、車両制動装置(基準制動パターンにおいては機械制動装置)による制動終了時の目標車速V1及び制動開始から制動終了までの目標車両減速度G0に基づいて設定される。統合ECU156の基準制動パターン生成手段は、例えばカーナビゲーションシステムの地図情報等に基づいて走行経路上の先の道路情報を把握し、何処でどの程度の車速まで減速させるのかを決める。そして、この基準制動パターン生成手段は、その車速を制動終了時の目標車速V1として設定すると共に、その目標車速V1を実現させる為の目標車両減速度G0と走行経路上の制動開始位置を設定し、その走行経路上の制動開始位置及び自車位置と現在の車速及び目標車両減速度G0に基づいて制動開始時間t0を設定する。例えば、現在一定速度で走行しているならば、制動開始時の車速V0は、現在の車速となる。基準制動パターン生成手段は、そのようにして設定した制動開始時間t0、制動開始時の車速V0、制動終了時の目標車速V1及び制動開始から制動終了までの目標車両減速度G0を用いて図2に示す基準制動パターンを生成する。制動終了時間t1は、その基準制動パターンを生成することによって必然的に決まる。
この基準制動パターンにおいては、制動開始時間t0まで車速V0で走行し、制動終了時間t1以降目標車速V1で走行する。また、制動制御中(t0≦t≦t1)は、下記の式1の車速Vで減速走行する。この式1については、図2に示す基準制動パターンの図に基づいて導き出せるものであり、予め統合ECU156に記憶させておく。
V=V1+{(V0−V1)/(t1−t0)}*(t1−t) … (1)
この基準制動パターンにおいては、従来のように、変速制御が開始されるまでは回生制御による回生制動力で制動制御を行い、変速制御中や変速制御後には回生制御を実行させない。但し、厳密には、機械制動装置がブレーキ液圧を利用するものであり、これが為、その機械制動装置で機械的な制動力を発生させるまでに応答遅れが生じ、且つ、その機械的な制動力の発生時点を緻密に制御することが難しいので、少なくとも変速機構70の変速制御が開始される所定車速Vssとなる前(変速制御開始時間tssよりも前)に、機械制動装置による機械的な制動力を発生させておくことが好ましい。従って、その場合には、この基準制動パターンでの制動制御において、変速制御が開始されるよりも前に回生制御が終了させられてしまう又は回生制動力が減らされていき、回生量が少なくなる可能性がある。
かかる回生量の減少を回避すべく、本実施例においては、基準制動パターンによる制動制御中に変速機構70の変速制御が実行される(つまり制動開始時の車速V0と制動終了時の目標車速V1との間に変速機構70の変速制御が実行される所定車速Vssがある)場合、所定の要件を満たすならば、その基準制動パターンよりも回生制御による回生量を最適な量に増やすことが可能な回生制動パターン(以下、「最適回生制動パターン」という。)を生成できるように構成している。従って、本実施例の統合ECU156には、その最適回生制動パターンの生成を行う回生制動パターン生成手段が設けられている。以下においては、その回生量を最大限増加させることが可能な最適回生制動パターンを生成させるものとして例示する。ここで、その所定の要件に合致とは、回生量の増加に必要な基準制動パターンにおける制動終了時間t1等の制動条件(以下、「基準制動条件」という。)の変更が可能であると判定された状態を指す。本実施例の統合ECU156には、その基準制動条件の変更の可否を判定する基準制動条件変更可否判定手段が設けられている。
例えば、上述した第4車両制動モードにおいては、制動終了時間t1の変更も可能であり、また、制動終了時点でのハイブリッド車両の走行路上の位置(以下、「制動終了位置」という。)の変更も可能である。従って、この場合には、制動終了時間t1又は制動終了位置の内の少なくとも1つでも変更を許可できなければ基準制動パターンで制動制御を実行させ、その双方の変更を許可できるのであれば最適回生制動パターンで制動制御を実行させる。このときの制動制御条件の生成動作を図3のフローチャートに基づいて説明すると共に、その最適回生制動パターンの一例を図4に示す。
先ず、統合ECU156の基準制動パターン生成手段は、制動制御の実行要求が為された際に(ステップST1)、上述したようにして基準制動パターンの生成を行う(ステップST2)。
そして、この統合ECU156の基準制動条件変更可否判定手段は、回生制御が実行可能であるのか否かの判定を行う(ステップST3)。このステップST3の判定は、例えば二次電池82の残存蓄電量に基づいて行う。このステップST3において、その残存蓄電量が所定蓄電量(例えば満充電を表す蓄電量又は充電が不要と判断し得る程十分な蓄電量)を満たしていれば回生制御の実行が不可能と判定し、その残存蓄電量が所定蓄電量よりも少なくなっていれば回生制御の実行が可能と判定する。その残存蓄電量の情報については、例えばモータ/ジェネレータECU152を介して統合ECU156に送信させておく。
このステップST3で回生制御の実行が可能であると判定された場合、基準制動条件変更可否判定手段は、基準制動パターンにおける制動終了時間t1の変更が可能であるのか否かを判定する(ステップST4)。このステップST4の判定は、現在設定されている車両制動モードについて、例えば上記第1及び第3の車両制動モードに該当しているのか、それとも、第2及び第4の車両制動モードに該当しているのかに応じて行えばよい。この場合には、制動開始から制動終了までの時間が決められている第1及び第3の車両制動モードであれば、制動終了時間t1の変更が不可能と判定し、その時間について決められていない第2及び第4の車両制動モードであれば、制動終了時間t1の変更が可能と判定する。
このステップST4で制動終了時間t1の変更が可能であると判定された場合、基準制動条件変更可否判定手段は、次に基準制動パターンにおける制動終了位置の変更が可能であるのか否かを判定する(ステップST5)。ここでは、現在設定されている車両制動モードが第2車両制動モードと第4車両制動モードの内の何れに該当しているのかを観ることによって判定を行う。この例示においては、制動終了位置について決められている第2車両制動モードであれば制動終了位置の変更が不可能と判定し、制動終了位置について決められていない第4車両制動モードであれば制動終了位置の変更が可能と判定する。
尚、上記ステップST3〜5の判定は、どの様な順番で行ってもよい。
統合ECU156は、このステップST5で制動終了位置の変更が可能であると判定した場合、回生制動パターン生成手段に図4に示す最適回生制動パターンを生成させる(ステップST6)。
この図4の最適回生制動パターンは、車速V0で走行中のハイブリッド車両1を目標車速V1(≧0)まで制動させる際の制動制御に係るものであって、制動終了時間t1と制動終了位置の変更を認めることができるときのものである。この最適回生制動パターンにおいて、制動開始時間t0から変速制御開始時間tssまでの間(t0≦t≦tss)は、回生制御による回生制動力によってハイブリッド車両1を制動させる。このときの目標車両減速度G0については、基準制動パターンの目標車両減速度G0に対して大きさを変えてもよいが、ここでは基準制動パターンのものと同じ大きさにする。これが為、回生制動パターン生成手段は、その間において上述した式1の車速Vで減速走行させる最適回生制動パターンの生成を行う。この図4の最適回生制動パターンは、その間において、変速制御が開始されるよりも前に回生制御が終了させられてしまう虞がなく、また、その前に回生制動力が減らされていく虞もないので、基準制動パターンに対して回生量を大きくすることができる。
また、この最適回生制動パターンは、その変速制御開始時間tssから変速制御終了時間tseまでの間(変速制御時間tshiftの間)において、回生制御を止めた上で所定車速Vssを保持させるように構成する。その変速制御時間tshiftは、変速機構70固有の予め判っている時間である。これが為、変速制御中には、モータ/ジェネレータ(第1モータ/ジェネレータ40及び第2モータ/ジェネレータ50)に負担がかからなくなる。この最適回生制動パターンにおいては、変速制御時間tshiftの間に(tss<t<tse)、機械制動装置による機械的な制動力を発生させないように設定する。尚、図4においては説明の便宜上変速制御時間tshiftの幅を広くして図示しているが、実際の変速制御時間tshiftは短いので、車速Vは、回生制御を止め、更に機械的な制動力を発生させないからといって、所定車速Vssよりも低下するわけではない(後述する図6、図9においても同様である。)。
また、この最適回生制動パターンは、変速制御時間tshiftの経過後(つまり変速機構70の変速制御終了後)目標車速V1となるまでの間(tse≦t≦t2)、再び回生制御による回生制動力によってハイブリッド車両1を制動させるように構成する。これにより、この図4の最適回生制動パターンでは、変速制御終了後に回生制御を復帰させない基準制動パターンに対して回生量を大きくすることができる。この間の目標車両減速度G0については、基準制動パターンの目標車両減速度G0に対して大きさを変えてもよいが、ここでは基準制動パターンのものと同じ大きさにする。これが為、回生制動パターン生成手段は、その間において下記の式2の車速Vで減速走行させる最適回生制動パターンの生成を行う。この式2については、図4に示す最適回生制動パターンの図に基づいて導き出せるものであり、予め統合ECU156に記憶させておく。
V=V1+{(V0−V1)/(t1−t0)}*(t2−t) … (2)
このように、この図4の最適回生制動パターンは、変速制御開始時間tssになるまでの間と変速制御終了時間tse経過後制動終了時間t2(=t1+tshift)になるまでの間とにおいて、基準制動パターンよりも回生量を増やすことができる。
かかる最適回生制動パターンの生成を行った後、統合ECU156の制動パターン設定手段は、この最適回生制動パターンを設定制動パターンとして出力する(ステップST7)。
一方、上記ステップST3で回生制御の実行が不可能と判定された際、上記ステップST4で制動終了時間t1の変更が不可能と判定された際又は上記ステップST5で制動終了位置の変更が不可能と判定された際、制動パターン設定手段は、基準制動パターンを設定制動パターンとして出力する(ステップST8)。
このようにして設定制動パターンを決めた後、統合ECU156の車両制動制御手段は、その設定制動パターンに基づいて制動制御を実行させる(ステップST9)。
以上示したハイブリッド車両の走行支援装置及びハイブリッド車両の走行支援方法においては、制動終了時間t1と制動終了位置の双方の変更が可能な場合に図4の最適回生制動パターンで制動制御を実行する。つまり、そのような場合には、基準制動パターンに対して回生量を最大限に増加させることが可能な制動制御が実行される。また、その最適回生制動パターンにおいては、変速制御中(変速制御時間tshiftの間)に回生制御を止めているので、モータ/ジェネレータ(第1モータ/ジェネレータ40及び第2モータ/ジェネレータ50)の負担にならない。従って、このハイブリッド車両の走行支援装置及びハイブリッド車両の走行支援方法は、そのような場合であれば、変速制御中にモータ/ジェネレータ(第1モータ/ジェネレータ40及び第2モータ/ジェネレータ50)に負担をかけることなく基準制動パターンよりも回生量を最大限増加させることができる。
更に、上記の例示では最適回生制動パターンにおいて機械制動装置による機械的な制動力を発生させないので、このハイブリッド車両の走行支援装置及びハイブリッド車両の走行支援方法は、その機械制動装置による制動から回生制動への切り替えの際の車両減速度の変動やその逆の切り替えの際の車両減速度の変動を無くすことができ、その変動に伴う違和感を運転者に与えない。また更に、上記の例示では最適回生制動パターンにおいて機械制動装置による機械的な制動力を発生させないので、このハイブリッド車両の走行支援装置及びハイブリッド車両の走行支援方法は、その機械制動装置のブレーキアクチュエータ93の耐久性を向上させることもでき、また、燃費性能の悪化を抑えることもできる。
ここで、図4に示す最適回生制動パターンにおいては、変速制御終了時間tse経過後制動終了時間t2になるまでの間、機械制動装置による機械的な制動力で制動制御を実行させてもよい。その際には、機械制動装置の応答遅れを防ぐべく、変速制御開始時間tssとなったならば直ぐにブレーキアクチュエータ93への制動力発生指令を行うことが望ましい。このようにしても、この最適回生制動パターンにおいては、変速制御開始時間tssになるまでの間で基準制動パターンよりも回生量を増やすことができ、更に変速制御中にモータ/ジェネレータ(第1モータ/ジェネレータ40及び第2モータ/ジェネレータ50)に負担をかけずとも済む。
以上示したものは、特に自動走行モードで走行しているときの制動時に効果的であるが、運転者のブレーキ操作が行われた際の制動時にも有用である。
次に、制動終了時間t1の変更は認めるが、制動終了位置の変更は認めない場合(例えば上述した第2車両制動モードが選択された場合)について例示する。この場合には、制動終了時間t1の変更を許可できないとき、制動終了位置の変更を許可できるとき又は制動制御の開始時期を早めることが不可能なときに基準制動パターンで制動制御を実行させる一方、制動終了時間t1の変更は認めるが制動終了位置の変更を認めず、その際に制動制御の開始時期を早めることができるならば、最適回生制動パターンで制動制御を実行させる。このときの制動制御条件の生成動作を図5のフローチャートに基づいて説明すると共に、その最適回生制動パターンの一例を図6,7に示す。
先ず、基準制動パターン生成手段は、制動制御の実行要求が為された際に(ステップST11)、先の例示と同様にして基準制動パターンの生成を行う(ステップST12)。
また、基準制動条件変更可否判定手段は、先の例示と同様に、回生制御が実行可能であるのか否かの判定を行い(ステップST13)、回生制御の実行が可能であれば、基準制動パターンにおける制動終了時間t1の変更が可能であるのか否かを判定する(ステップST14)。そして、この基準制動条件変更可否判定手段は、そのステップST14で制動終了時間t1の変更が可能と判定したならば、先の例示と同様に、基準制動パターンにおける制動終了位置の変更が可能であるのか否かを判定する(ステップST15)。
このステップST15で制動終了位置の変更が不可能と判定されたならば、基準制動条件変更可否判定手段は、基準制動パターンにおける制動開始時間t0の変更が可能であるのか否か(つまり、制動制御の開始時期を早めることができるのか否か)を判定する(ステップST16)。このステップST16の判定においては、下記の式3に基づいて新たな制動開始時間t3(<t0)を求め、現時点から制動開始時間t0までの時間が新たな制動開始時間t3よりも短ければ、制動開始時間t0の変更が不可能と判定させ、現時点から制動開始時間t0までの時間が新たな制動開始時間t3以上あるならば、制動開始時間t0の変更が可能と判定させる。
t3=t0−{(Vss−V1)/(V0−V1)}*tshift … (3)
この式3については、図6に示す最適回生制動パターンの図に基づいて導き出せるものであり、予め統合ECU156に記憶させておく。この図6の最適回生制動パターンは、車速V0で走行中のハイブリッド車両1を目標車速V1(≧0)まで制動させる際の制動制御に係るものであって、制動終了位置の変更が認められないときのものである。これが為、式3については、制動制御の開始時期を早めたことに伴う制動距離の減少分(図7に示す制動距離A)と変速制御終了後における制動距離の増加分(図7に示す制動距離B)とが等しくなるような関係のものを導き出す。
尚、上記ステップST13〜16の判定は、どの様な順番で行ってもよい。
回生制動パターン生成手段は、ステップST16で制動開始時間t0の変更が可能と判定したならば、図6に示す最適回生制動パターンを生成する(ステップST17)。
この図6の最適回生制動パターンにおいて、新たな制動開始時間t3から新たな変速制御開始時間tss1{=tss−(t0−t3)}までの間(t3≦t≦tss1)は、回生制御による回生制動力によってハイブリッド車両1を制動させる。このときの目標車両減速度G0については、基準制動パターンの目標車両減速度G0に対して大きさを変えてもよいが、ここでは基準制動パターンのものと同じ大きさにする。これが為、回生制動パターン生成手段は、その間において下記の式4の車速Vで減速走行させる最適回生制動パターンの生成を行う。この図6の最適回生制動パターンは、その間において、変速制御が開始されるよりも前に回生制御が終了させられてしまう虞がなく、また、その前に回生制動力が減らされていく虞もないので、基準制動パターンに対して回生量を大きくすることができる。その式4については、図6に示す最適回生制動パターンの図に基づいて導き出せるものであり、予め統合ECU156に記憶させておく。
V=V0+{(V0−V1)/(t1−t0)}*(t3−t) … (4)
また、この最適回生制動パターンは、その変速制御開始時間tss1から変速制御終了時間tseまでの間(変速制御時間tshiftの間)において、回生制御を止めた上で所定車速Vssを保持させるように最適回生制動パターンの生成を行う。これが為、変速制御中には、モータ/ジェネレータ(第1モータ/ジェネレータ40及び第2モータ/ジェネレータ50)に負担がかからなくなる。この最適回生制動パターンにおいては、変速制御時間tshiftの間(tss1<t<tse)、先の例示と同様に機械制動装置による機械的な制動力を発生させないよう設定する。
また、この最適回生制動パターンは、変速制御時間tshiftの経過後(変速機構70の変速制御終了後)目標車速V1となるまでの間(tse≦t≦t2)、再び回生制御による回生制動力によってハイブリッド車両1を制動させるように構成する。これにより、この図6の最適回生制動パターンでは、変速制御終了後に回生制御を復帰させない基準制動パターンに対して回生量を大きくすることができる。この間の目標車両減速度G0については、基準制動パターンの目標車両減速度G0に対して大きさを変えてもよいが、ここでは基準制動パターンのものと同じ大きさにする。これが為、回生制動パターン生成手段は、その間において下記の式5の車速Vで減速走行させる最適回生制動パターンの生成を行う。この式5については、図6に示す最適回生制動パターンの図に基づいて導き出せるものであり、予め統合ECU156に記憶させておく。
V=Vss+{(V0−V1)/(t1−t0)}*(tss1+tshift−t)
… (5)
このように、この図6の最適回生制動パターンは、変速制御開始時間tss1になるまでの間と変速制御終了時間tse経過後制動終了時間t2になるまでの間とにおいて、基準制動パターンよりも回生量を増やすことができる。また、この最適回生制動パターンは、図7に示す如く、制動制御の開始時期を早めたことに伴う制動距離の減少分(制動距離A)について、変速制御終了後における制動制御の終了時期を遅らせたことによる制動距離の増加分(制動距離B)によって補うことができる。つまり、この最適回生制動パターンによれば、基準制動パターンとの比較においても制動終了位置が変わらない。
かかる最適回生制動パターンの生成を行った後、制動パターン設定手段は、この最適回生制動パターンを設定制動パターンとして出力する(ステップST18)。
一方、上記ステップST13で回生制御の実行が不可能と判定された際、上記ステップST13で回生制御の実行が不可能と判定された際、上記ステップST14で制動終了時間t1の変更が不可能と判定された際、上記ステップST15で制動終了位置の変更が可能と判定された際又は上記ステップST16で制動開始時間t0の変更が不可能と判定された際、制動パターン設定手段は、基準制動パターンを設定制動パターンとして出力する(ステップST19)。
このようにして設定制動パターンを決めた後、車両制動制御手段は、その設定制動パターンに基づいて制動制御を実行させる(ステップST20)。
以上示したハイブリッド車両の走行支援装置及びハイブリッド車両の走行支援方法においては、制動開始時間t0と制動終了時間t1の変更が可能で且つ制動終了位置の変更が不可能な場合に、図6の最適回生制動パターンで制動制御を実行する。つまり、そのような場合には、基準制動パターンに対して回生量を最大限に増加させることが可能な制動制御が実行される。また、その最適回生制動パターンにおいては、変速制御中(変速制御時間tshiftの間)に回生制御を止めているので、モータ/ジェネレータ(第1モータ/ジェネレータ40及び第2モータ/ジェネレータ50)の負担にならない。従って、このハイブリッド車両の走行支援装置及びハイブリッド車両の走行支援方法は、そのような場合であれば、変速制御中にモータ/ジェネレータ(第1モータ/ジェネレータ40及び第2モータ/ジェネレータ50)に負担をかけることなく、制動終了位置を変えずに基準制動パターンよりも回生量を最大限増加させることができる。
更に、この例示では最適回生制動パターンにおいて機械制動装置による機械的な制動力を発生させないので、このハイブリッド車両の走行支援装置及びハイブリッド車両の走行支援方法は、その機械制動装置による制動から回生制動への切り替えの際の車両減速度の変動やその逆の切り替えの際の車両減速度の変動を無くすことができ、その変動に伴う違和感を運転者に与えない。また更に、この例示では最適回生制動パターンにおいて機械制動装置による機械的な制動力を発生させないので、このハイブリッド車両の走行支援装置及びハイブリッド車両の走行支援方法は、その機械制動装置のブレーキアクチュエータ93の耐久性を向上させることもでき、また、燃費性能の悪化を抑えることもできる。
ここで、図6に示す最適回生制動パターンにおいては、変速制御終了時間tse経過後制動終了時間t2になるまでの間、機械制動装置による機械的な制動力で制動制御を実行させてもよい。その際には、機械制動装置の応答遅れを防ぐべく、変速制御開始時間tss1となったならば直ぐにブレーキアクチュエータ93への制動力発生指令を行うことが望ましい。このようにしても、この最適回生制動パターンにおいては、変速制御開始時間tss1になるまでの間で基準制動パターンよりも回生量を増やすことができ、更に変速制御中にモータ/ジェネレータ(第1モータ/ジェネレータ40及び第2モータ/ジェネレータ50)に負担をかけずとも済む。
この図5〜7の例示は、制動終了位置の変更が認められているときにも応用可能である。つまり、上述したここでの最適回生制動パターンは、基準制動パターンにおける制動開始時間t0と制動終了時間t1の双方の変更が許可された際に、制動終了位置の変更の可否に拘わらず適用可能である。
次に、制動終了時間t1の変更も制動終了位置の変更も認めない場合(例えば上述した第3車両制動モードが選択された場合)について例示する。この場合の回生制動パターン生成手段には、制動終了時間t1と制動終了位置の変更を認めず、更に制動制御を始める前にハイブリッド車両1を加速させることができるのならば、最適回生制動パターンを生成させる。そして、車両制動制御手段には、その最適回生制動パターンの制御を実行する時間があるならば、この最適回生制動パターンで制動制御を実行させる。ここでは、更に、その最適回生制動パターンの制御が基準制動パターンに対して燃費性能の点で優れていることも条件にして、その最適回生制動パターンで制動制御を実行させるものとする。一方、制動終了時間t1の変更を許可できるとき、制動終了位置の変更を許可できるとき、制動制御の開始時期を早めることが不可能なとき(つまり最適回生制動パターンの制御を実行する時間が無いとき)、ハイブリッド車両1を加速させることが不可能なとき又は最適回生制動パターンで制動制御しても燃費性能が向上しないときには、基準制動パターンで制動制御を実行させる。このときの制動制御条件の生成動作を図8のフローチャートに基づいて説明すると共に、その最適回生制動パターンの一例を図9,10に示す。
先ず、基準制動パターン生成手段は、制動制御の実行要求が為された際に(ステップST21)、先の各例示と同様にして基準制動パターンの生成を行う(ステップST22)。
また、基準制動条件変更可否判定手段は、先の各例示と同様に、回生制御が実行可能であるのか否かの判定を行い(ステップST23)、回生制御の実行が可能であれば、基準制動パターンにおける制動終了時間t1の変更が可能であるのか否かを判定する(ステップST24)。
この場合の基準制動条件変更可否判定手段は、そのステップST24で制動終了時間t1の変更が不可能であると判定したならば、先の各例示と同様の方法で基準制動パターンにおける制動終了位置の変更が可能であるのか否かを判定する(ステップST25)。
そして、このステップST25で制動終了位置の変更が不可能と判定されたならば、基準制動条件変更可否判定手段は、ハイブリッド車両1を加速させることが可能なのか否かの判定を行う(ステップST26)。このステップST26の判定は、例えば車両前部に配設された車間距離情報取得手段(図示略)から得られた前方の車両との車間距離が所定距離を超えているのかを観て行う。その車間距離情報取得手段とは、例えばCCDカメラ等の撮像装置やレーザー装置などである。また、その所定距離には、例えば加速走行して車間距離が縮まっても必要十分な車間を保つことが可能な距離を設定しておく。基準制動条件変更可否判定手段には、前方の車両との車間距離が所定距離を超えていれば加速可能と判定させ、その車間距離が所定距離以下ならば加速は不可能と判定させる。
尚、上記ステップST23〜26の判定は、どの様な順番で行ってもよい。
回生制動パターン生成手段は、そのステップST26で加速可能との判定を行ったならば、現時点(加速制御開始時間tacc)を制御の起点として仮置きした図9に示す最適回生制動パターンを生成する(ステップST27)。
この図9の最適回生制動パターンは、車速V0で走行中のハイブリッド車両1を目標車速V1(≧0)まで制動させる際の制動制御に係るものであって、制動終了時間t1と制動終了位置の変更が認められておらず、制動制御の開始時期の変更と制動制御開始前の加速走行とが認められているときのものである。この最適回生制動パターンにおいては、加速走行させ且つ制動制御の開始時期を早めたことに伴い、制動距離が増加する(図10に示す制動距離A)。回生制動パターン生成手段には、その増加分を減少させ(図10に示す制動距離B)、且つ、制動終了時間t1を変動させない最適回生制動パターンを生成させる。
回生制動パターン生成手段は、先ず下記の式6に基づいて新たな制動開始時間t3を求めると共に、下記の式7に基づいて加速制御終了速度Vaccを求める。これら式6,7については、図9に示す最適回生制動パターンの図に基づいて導き出せるものであり、予め統合ECU156に記憶させておく。
t3=t0−tshift−2*tshift*{(V0−Vss)/(V0−V1)
}*{(t1−t0)/(t0−tshift−tacc)} … (6)
Vacc=V0+{(V0−V1)/(t1−t0)}*(t0−tshift−
t3) … (7)
これら新たな制動開始時間t3と加速制御終了速度Vaccの設定に伴って、回生制動パターン生成手段は、加速走行中(tacc≦t≦t3)の車速Vが下記の式8となる最適回生制動パターンの生成を行う。
V=V0+{(Vacc−V0)/(t3−tacc)}*(t−tacc)…(8)
この図9の最適回生制動パターンにおいても、新たな制動開始時間t3から新たな変速制御開始時間tss1{=tss−tshift}までの間(t3≦t≦tss1)は、回生制御による回生制動力によってハイブリッド車両1を制動させる。このときの目標車両減速度G0については、基準制動パターンの目標車両減速度G0に対して大きさを変えてもよいが、ここでは基準制動パターンのものと同じ大きさにする。これが為、回生制動パターン生成手段は、その間において下記の式9の車速Vで減速走行させる最適回生制動パターンの生成を行う。この図9の最適回生制動パターンは、その間において、変速制御が開始されるよりも前に回生制御が終了させられてしまう虞がなく、また、その前に回生制動力が減らされていく虞もないので、基準制動パターンに対して回生量を大きくすることができる。更に、この図9の最適回生制動パターンにおいては、先に加速走行を行わせるので、加速制御終了速度Vaccから元の車速V0に減速するまでの間においても回生制御が為されることになり、より回生量を増やすことができる。その式9については、図9に示す最適回生制動パターンの図に基づいて導き出せるものであり、予め統合ECU156に記憶させておく。
V=Vacc+{(V0−V1)/(t1−t0)}*(t3−t) … (9)
また、この最適回生制動パターンは、その変速制御開始時間tss1から変速制御終了時間tseまでの間(変速制御時間tshiftの間)において、回生制御を止めた上で所定車速Vssを保持させるように最適回生制動パターンの生成を行う。これが為、変速制御中には、モータ/ジェネレータ(第1モータ/ジェネレータ40及び第2モータ/ジェネレータ50)に負担がかからなくなる。この最適回生制動パターンにおいては、変速制御時間tshiftの間(tss1<t<tse)、先の各例示と同様に機械制動装置による機械的な制動力を発生させないよう設定する。
また、この最適回生制動パターンは、変速制御時間tshiftの経過後(変速機構70の変速制御終了後)目標車速V1となるまでの間(tse≦t≦t1)、再び回生制御による回生制動力によってハイブリッド車両1を制動させるように構成する。これにより、この図9の最適回生制動パターンでは、変速制御終了後に回生制御を復帰させない基準制動パターンに対して回生量を大きくすることができる。この間の目標車両減速度G0については、基準制動パターンの目標車両減速度G0に対して大きさを変えてもよいが、ここでは基準制動パターンのものと同じ大きさにする。これが為、回生制動パターン生成手段は、その間において下記の式10の車速Vで減速走行させる最適回生制動パターンの生成を行う。この式10については、図9に示す最適回生制動パターンの図に基づいて導き出せるものであり、予め統合ECU156に記憶させておく。
V=V1+{(Vss−V1)/(t1−tshift−tss1)}*(t1−t) … (10)
このように、この図9の最適回生制動パターンは、加速走行を終えてから変速制御開始時間tss1になるまでの間と変速制御終了時間tse経過後制動終了時間t1になるまでの間とにおいて、基準制動パターンよりも回生量を増やすことができる。また、この最適回生制動パターンは、図10に示す如く、加速走行の実行と制動制御の開始時期を早めたことに伴う制動距離の増加分(制動距離A)について、変速制御開始前までの制動距離の減少分(制動距離B)によって補うことができる。つまり、この最適回生制動パターンによれば、基準制動パターンとの比較においても制動終了位置が変わらない。更に、この最適回生制動パターンによれば、基準制動パターンに対して制動終了時間t1も変わらない。
かかる最適回生制動パターンの生成を行った後、この場合の基準制動条件変更可否判定手段は、その最適回生制動パターンを用いた制御の実行時間が現時点から観て成立しているのか否か(換言するならば最適回生制動パターンでの制御が時間的に実行可能なのか否か)を判定する(ステップST28)。このステップST28の判定においては、仮置きした最適回生制動パターンにおける加速制御開始時間taccが現時点又は現時点よりも後の時間ならば、制動制御の実行時間が成立していると判定させ、その加速制御開始時間taccが現時点よりも前ならば制動制御の実行時間が不成立と判定させる。
このステップST28で制御の実行時間が成立していると判定されたならば、統合ECU156に設けた燃費性能比較手段は、その最適回生制動パターンを用いた制御の実行によって燃費性能が基準制動パターンよりも向上するのか否かの判定を行う(ステップST29)。このステップST29の判定は、例えば、加速走行に伴う燃費性能の低下を表す指標値(以下、「消費パワー増加量」という。)FE1と、回生制御に伴う燃費性能の上昇を表す指標値(以下、「回生増加量」という。)FE2と、を比較して行う。その消費パワー増加量FE1については下記の式11によって表され、回生増加量FE2については下記の式12によって表される。
FE1={(Vacc−V0)/(t3−tacc)}*(Vacc−V0)/2 … (11)
FE2={(V1−V0)/(t1−t0)}*{(Vacc−V0)/2+
(Vss−V1)/2}*K … (12)
その式11において、「(Vacc−V0)/(t3−tacc)」は加速走行時の車両加速度を表しており、「(Vacc−V0)/2」は加速走行時の平均車速を表している。また、式12において、「(V1−V0)/(t1−t0)」は制動制御時の車両減速度を表しており、「(Vacc−V0)/2」は車速増加分の平均車速を表しており、「(Vss−V1)/2」は回生増加分の平均車速を表している。この式12の「K」については、本システムにおける回生効率(例えば0.81)を表している。
このステップST29において、燃費性能比較手段は、生成した最適回生制動パターンにおける消費パワー増加量FE1と回生増加量FE2とを比較し、回生増加量FE2が消費パワー増加量FE1を上回っているならば燃費性能が向上するとの判定を行い、その回生増加量FE2が消費パワー増加量FE1以下ならば燃費性能の向上は見込めないとの判定を行う。
このステップST29で燃費性能が向上すると判定されたならば、制動パターン設定手段は、上記ステップST27で生成された最適回生制動パターンを設定制動パターンとして出力する(ステップST30)。
一方、この制動パターン設定手段は、燃費性能の向上が見込めないと判定されたならば、基準制動パターンを設定制動パターンとして出力する(ステップST31)。更に、上記ステップST23で回生制御の実行が不可能と判定された際、上記ステップST24で制動終了時間t1の変更が可能と判定された際、上記ステップST25で制動終了位置の変更が可能と判定された際、上記ステップST26で加速走行が不可能と判定された際又は上記ステップST28で最適回生制動パターンによる制動制御の実行時間が不成立と判定された際にも、この制動パターン設定手段は、基準制動パターンを設定制動パターンとして出力する。
このようにして設定制動パターンを決めた後、車両圧制動制御手段は、その設定制動パターンに基づいて制動制御を実行させる(ステップST32)。
以上示したハイブリッド車両の走行支援装置及びハイブリッド車両の走行支援方法においては、制動終了時間t1と制動終了位置の変更が不可能で且つ先に加速走行を行うことができる場合に、図9の最適回生制動パターンで制動制御を実行する。つまり、そのような場合には、基準制動パターンに対して回生量を最大限に増加させることが可能な制動制御が実行される。また、その最適回生制動パターンにおいては、変速制御中(変速制御時間tshiftの間)に回生制御を止めているので、モータ/ジェネレータ(第1モータ/ジェネレータ40及び第2モータ/ジェネレータ50)の負担にならない。従って、このハイブリッド車両の走行支援装置及びハイブリッド車両の走行支援方法は、そのような場合であれば、変速制御中にモータ/ジェネレータ(第1モータ/ジェネレータ40及び第2モータ/ジェネレータ50)に負担をかけることなく、制動終了時間t1も制動終了位置も変えずに基準制動パターンよりも回生量を最大限増加させることができる。
更に、この例示では最適回生制動パターンにおいて機械制動装置による機械的な制動力を発生させないので、このハイブリッド車両の走行支援装置及びハイブリッド車両の走行支援方法は、その機械制動装置による制動から回生制動への切り替えの際の車両減速度の変動やその逆の切り替えの際の車両減速度の変動を無くすことができ、その変動に伴う違和感を運転者に与えない。また更に、この例示では最適回生制動パターンにおいて機械制動装置による機械的な制動力を発生させないので、このハイブリッド車両の走行支援装置及びハイブリッド車両の走行支援方法は、その機械制動装置のブレーキアクチュエータ93の耐久性を向上させることもでき、また、燃費性能の悪化を抑えることもできる。
ここで、図9に示す最適回生制動パターンにおいては、変速制御終了時間tse経過後制動終了時間t1になるまでの間、機械制動装置による機械的な制動力で制動制御を実行させてもよい。その際には、機械制動装置の応答遅れを防ぐべく、変速制御開始時間tss1となったならば直ぐにブレーキアクチュエータ93への制動力発生指令を行うことが望ましい。このようにしても、この最適回生制動パターンにおいては、変速制御開始時間tss1になるまでの間で基準制動パターンよりも回生量を増やすことができ、更に変速制御中にモータ/ジェネレータ(第1モータ/ジェネレータ40及び第2モータ/ジェネレータ50)に負担をかけずとも済む。
ところで、上述した本実施例においては3つの最適回生制動パターンを個別に例に挙げて説明したが、以下の図11のフローチャートに示すように判定動作を実行させることによって、これら各最適回生制動パターンを択一的に使い分けることができる。以下においては、図4の最適回生制動パターンを「第1最適回生制動パターン」といい、図6の最適回生制動パターンを「第2最適回生制動パターン」といい、図9の最適回生制動パターンを「第3最適回生制動パターン」という。
先ず、基準制動パターン生成手段は、制動制御の実行要求が為された際に(ステップST41)、先の各例示と同様にして基準制動パターンの生成を行う(ステップST42)。また、基準制動条件変更可否判定手段は、先の各例示と同様に、回生制御が実行可能であるのか否かの判定を行い(ステップST43)、回生制御の実行が可能であれば、基準制動パターンにおける制動終了時間t1の変更が可能であるのか否かを判定する(ステップST44)。また、この基準制動条件変更可否判定手段は、そのステップST44で制動終了時間t1の変更が可能であると判定したならば、先の各例示と同様の方法で基準制動パターンにおける制動終了位置の変更が可能であるのか否かを判定する(ステップST45)。
そのステップST45で制動終了位置の変更が可能と判定されたときには、回生制動パターン生成手段が図4に示す第1最適回生制動パターンを生成し(ステップST46)、その第1最適回生制動パターンを制動パターン設定手段が設定制動パターンとして出力する(ステップST47)。
また、上記ステップST45で制動終了位置の変更が不可能と判定されたならば、基準制動条件変更可否判定手段は、基準制動パターンにおける制動開始時間t0の変更が可能であるのか否か(制動制御の開始時期を早めることができるのか否か)を判定する(ステップST48)。
そして、そのステップST48で制動開始時間t0の変更が可能と判定されたときには、回生制動パターン生成手段が図6に示す第2最適回生制動パターンを生成し(ステップST49)、その第2最適回生制動パターンを制動パターン設定手段が設定制動パターンとして出力する(ステップST50)。
また、上記ステップST44で制動終了時間t1の変更が不可能であると判定された場合にも、基準制動条件変更可否判定手段は、基準制動パターンにおける制動終了位置の変更が可能であるのか否かを判定する(ステップST51)。また、このステップST51で制動終了位置の変更が不可能と判定されたならば、基準制動条件変更可否判定手段は、加速走行の可否を判定する(ステップST52)。
回生制動パターン生成手段は、そのステップST52で加速可能との判定を行ったならば、現時点(加速制御開始時間tacc)を制御の起点として仮置きした図9に示す第3最適回生制動パターンを生成する(ステップST53)。
そして、基準制動条件変更可否判定手段は、その第3最適回生制動パターンを用いた制御の実行時間が現時点から観て成立しているのか否か(第3最適回生制動パターンでの制御が時間的に実行可能なのか否か)を判定する(ステップST54)。このステップST54で制御の実行時間が成立していると判定されたならば、燃費性能比較手段は、その第3最適回生制動パターンを用いた制御の実行によって燃費性能が基準制動パターンよりも向上するのか否かを判定する(ステップST55)。
制動パターン設定手段は、そのステップST55で燃費性能が向上すると判定されたならば、上記ステップST53で生成された第3最適回生制動パターンを設定制動パターンとして出力する(ステップST56)。
一方、この例示における制動パターン設定手段は、上記ステップST43で回生制御の実行が不可能と判定された際、上記ステップST48で制動開始時間t0の変更が不可能と判定された際、上記ステップST51で制動終了位置の変更が可能と判定された際、上記ステップST52で加速走行が不可能と判定された際、上記ステップST54で第3最適回生制動パターンによる制動制御の実行時間が不成立と判定された際又は上記ステップST55で燃費性能の向上が見込めないと判定された際に、基準制動パターンを設定制動パターンとして出力する(ステップST57)。
車両圧制動制御手段は、このようにして設定制動パターンが決められた後、その設定制動パターンに基づいて制動制御を実行させる(ステップST58)。
この図11のように構成したとしても、本実施例のハイブリッド車両の走行支援装置及びハイブリッド車両の走行支援方法は、上述した夫々の最適回生制動パターン(第1、第2又は第3の最適回生制動パターン)に応じた作用効果を得ることができる。