JP5097322B2 - 接着性高分子ゲル電解質の製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
近年、電気化学素子に広く用いられている固体電解質は、固体状態でイオン伝導性の高い物質であって、なかでも、高分子物質を固体として用いる高分子固体電解質は、最近、次世代リチウムイオン二次電池用電解質として、特に、注目されており、世界的に研究が推進されている。このような高分子固体電解質は、従来の電解質溶液に比べて、液漏れのおそれがなく、また、薄膜にすることができる等、その形状も、自由度が大きい。
【0002】
しかしながら、従来、知られている非水系の高分子固体電解質は、電解質溶液に比べて、イオン伝導度が著しく低いという問題がある。例えば、従来、ポリエチレンオキシドやポリプロピレンオキシド等の鎖状ポリマーやポリフォスファゼン等の櫛型ポリマー等のポリマー材料を電解質塩と複合化してなる非水系高分子固体電解質が知られているが、従来、伝導度が室温で10-3S/cmを上回るものは見出されていない。
【0003】
例えば、このような従来の固体電解質を用いた電池によれば、固体電解質が液体電解質に比べてイオン伝導度が著しく劣るので、電池が高い内部抵抗を有することとなり、実用的な充放電を行なうことができない。また、電極の形状が充放電等によって変化するような場合には、固体電解質がそのような電極の形状の変化に追随できない結果、電極と電解質との間の接触が不十分となって、充放電することができなくなる。
【0004】
そこで、近年、このような固体電解質のイオン伝導性を改善するために、例えば、固体電解質に可塑剤としてプロピレンカーボネートやγ−ブチロラクトンのような有機溶媒を配合することが提案されている。
【0005】
例えば、J. Electrochem. Soc., Vol. 137, 1657-1658 (1990)には、過塩素酸リチウムを溶解させたプロピレンカーボネートとエチレンカーボネートの混合溶媒よりなる有機電解液をポリアクリロニトリルでゲル化し、シート状とした高分子ゲル電解質が提案されている。特開平11−16579号公報には、ポリアクリロニトリルと電解質塩と非水溶媒とからなる高分子ゲル電解質が提案されている。また、特開平8−298126号公報には、ポリエチレンオキシドやポリプロピレンオキシドをポリマー成分とし、溶媒としてγ−ブチロラクトンを用いてなる高分子ゲル電解質が提案されている。
【0006】
しかし、このような高分子ゲル電解質は、強度が低いので、フィルム化するためには、厚みを大きくせざるを得ず、その結果、このような高分子ゲル電解質を挟んで電極を設けて電池を組み立てれば、電極間距離が大きく、内部抵抗が高くなり、十分な充放電を行なうことができない。
【0007】
そこで、このような従来の高分子ゲル電解質における強度上の問題を解決するために、特開平11−40128号公報には、電解質溶液を保持することができる高分子物質、例えば、フッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体とポリオレフィン樹脂のような樹脂との混合物を加熱、混練し、シートに成形し、延伸して、多孔質膜とし、これに電解質溶液を含浸させ、ゲル化して、高分子ゲル電解質を得る方法が記載されている。また、特開平11−353935号公報には、例えば、プロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、ジメトキシエタン等のような非水電解質を形成するための非水(有機)溶媒と共にゲルを形成するゲル形成性ポリマーからなる繊維、例えば、ポリアクリロニトリル−アクリル酸メチル共重合体樹脂繊維と、上記溶媒に対して耐性を有する繊維、例えば、ポリオレフィン繊維とからなる繊維構造体を形成し、これを上記非水溶媒にてゲル体を形成させ、かくして、高分子ゲル電解質を得る方法が記載されている。
【0008】
このような高分子ゲル電解質においては、いわば補強材である上記ポリオレフィン樹脂やポリオレフィン繊維によって、得られる高分子ゲル電解質は、フィルム形状においても、比較的高い強度を有するものの、実用的な強度を得るためには、これら補強材を相対的に多く用いる必要があり、その結果、電解質溶液を保持することができる高分子物質やゲル形成性ポリマーの配合割合を相対的に少なくせざるを得ない。従って、このような高分子ゲル電解質においては、これら高分子物質やゲル形成性ポリマーが不完全なゲル体を形成しやすく、その結果、液漏れがないという高分子ゲル電解質の本来的な利点が損なわれるうえに、補強材の存在によって、高分子ゲル電解質が完全な一体性と連続性をもたないので、得られる高分子ゲル電解質のイオン伝導性が低くなる問題がある。勿論、電解質溶液を保持する高分子物質やゲル形成性ポリマーの配合割合を多くすれば、得られる高分子ゲル電解質は、高いイオン伝導性を有するが、強度が弱くなる。
【0009】
更に、従来より知られている高分子ゲル電解質は、一般に、電極に対する接着性を殆どもたない。従って、従来の固体電解質を電極積層型や断面楕円状捲回型の電池に、例えば、セパレータとして用いるとき、電極間の面圧が不均一となり、また、低くなるために、電極間距離を一定に保つことが困難となって、電極間距離が部分的に大きくなることがある。このように、電池において、電極間距離が部分的に大きい場合には、すぐれた電池特性を得ることが困難である。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、従来の高分子ゲル電解質における上述したような問題を解決するためになされたものであって、イオン伝導性と強度を兼ね備えていると共に、それ自体、接着性を有する高分子ゲル電解質の製造方法を提供することを目的とする。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明によれば、主鎖にポリアクリレート、ポリメタクリレート、ポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキシド、ポリ(エチレンオキシド/プロピレンオキシド)、ポリフォスファゼン、ポリビニルエーテル又はポリシロキサン構造を有し、側鎖に鎖状オリゴアルキレンオキシド構造を有するポリマーを基材多孔質膜にその表面積の10〜90%を占めるように担持させた後、電解質塩を有機溶媒に溶解させてなる電解液にて上記ポリマーを溶解させて、基材多孔質膜中に拡散させ、次いで、上記ポリマーを架橋させて、上記電解液によって膨潤せしめられた架橋体を形成させることを特徴とする接着性高分子ゲル電解質の製造方法が提供される。
【0012】
特に、本発明によれば、上記接着性高分子ゲル電解質の製造方法において、ポリマーが式(1)で表される繰り返し構造単位1〜98モル%と式(2)で表される繰り返し構造単位(2)1〜98モル%と共に、式(3)と式(4)で表される繰り返し構造単位から選ばれる少なくとも1種の架橋用繰り返し構造単位1〜20モル%とからなり、重量平均分子量が104 〜107 の範囲内にあるポリエーテル多元共重合体であることを特徴とする接着性高分子ゲル電解質の製造方法が提供される。
【0013】
【化2】
【0014】
(上記式中、式(1)において、R及びR' はそれぞれ独立に水素原子又はメチル基を示し、R1 は炭素数1〜12のアルキル基、炭素数2〜8のアルケニル基、炭素数3〜8のシクロアルキル基、炭素数6〜14のアリール基又は炭素数7〜12のアラルキル基を示し、側鎖のオキシアルキレン単位の重合度kは1〜12であり、式(2)において、R' は水素原子又はメチル基を示し、式(3)において、R' は水素原子又はメチル基を示し、R2 はエチレン性不飽和基、反応性ケイ素含有置換基、式(5)で表されるエポキシ基を含む置換基又はハロゲン原子を含むアルキル基を示し、式(4)において、R3 は反応性ケイ素含有置換基を示し、式(5)において、Aは有機残基を示す。)
【0015】
【発明の実施の形態】
本発明による接着性高分子ゲル電解質の製造方法は、主鎖にポリアクリレート、ポリメタクリレート、ポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキシド、ポリ(エチレンオキシド/プロピレンオキシド)、ポリフォスファゼン、ポリビニルエーテル又はポリシロキサン構造を有し、側鎖に鎖状オリゴアルキレンオキシド構造を有するポリマーを基材多孔質膜にその表面積の10〜90%を占めるように担持させた後、電解質塩を有機溶媒に溶解させてなる電解液にて上記ポリマーを溶解させて、基材多孔質膜中に拡散させ、次いで、上記ポリマーを架橋させて、上記電解液によって膨潤せしめられた架橋体を形成させることからなる。
【0016】
このようにして得られる高分子ゲル電解質は、通常、それ自体で、20mm幅での180°引き剥がし接着力が1N以上の接着性を有する。
【0017】
本発明において、上記180°引き剥がし粘着力は、JIS Z 0237に準じて、被着体としてステンレス板を用いて測定するものとする。
【0018】
本発明において、基材多孔質膜の表面積とは、その表裏の表面積をいうものとする。
【0019】
本発明において、基材多孔質膜は、本発明に従って、これを用いて得られる高分子ゲル電解質を電池、キャパシタ等のセパレータとして用いることを考慮すれば、強度を有すると共に、電解液に溶解せず、耐酸化還元性を有すれば、特に、限定されるものではないが、例えば、超高分子量ポリエチレン樹脂を含むポリエチレン樹脂やポリプロピレン樹脂等のポリオレフィン樹脂、フッ素樹脂等が好ましく用いられる。
【0020】
同様に、本発明において、基材多孔質膜は、これを用いて得られる高分子ゲル電解質を電池、キャパシタ等のセパレータとして用いることを考慮すれば、特に、限定されるものではないが、空孔率が30〜95%、好ましくは、33〜90%、特に好ましくは、35〜85%の範囲にある。空孔率が低すぎるときは、イオン伝導経路が少なくなり、例えば、得られる高分子ゲル電解質を電池用セパレータとして用いた場合、十分な電池特性を得ることができない。しかし、空孔率が高すぎるときは、基材多孔質膜が強度において十分でなく、十分な強度を有する基材多孔質膜を得るには、膜厚を大きくせざるを得ず、膜厚をこのように大きくすれば、前述したように、得られる高分子ゲル電解質を電池用セパレータとして用いた場合、内部抵抗を高くする。
【0021】
また、基材多孔質膜は、その通気度が1500秒/100mL以下、好ましくは、1000秒/100mL以下であることが好ましい。通気度が高すぎるときは、得られる高分子ゲル電解質のイオン伝導性が低くなり、例えば、得られる高分子ゲル電解質を電池用セパレータとして用いた場合、十分な電池特性を得ることができない。更に、基材多孔質膜は、その針貫通強度が3N以上であることが好ましい。針貫通強度が小さすぎるときは、得られる高分子ゲル電解質を電池用セパレータとして用いた場合、電極間に面圧が加わった際に基材多孔質膜が破断して、内部短絡を引き起こすおそれがある。
【0022】
本発明によれば、上記ポリマーを基材多孔質膜に担持させるには、上記ポリマーを適宜の溶媒、通常、有機溶媒に溶解させ、得られた塗工液を基材多孔質膜に塗布し、又は塗工液中に基材多孔質膜を浸漬した後、上記有機溶媒を除去すればよい。ここに、本発明によれば、上記ポリマーと共に、後述するような架橋助剤と重合開始剤と、必要に応じて、増感助剤とを適宜の溶媒、通常、有機溶媒に溶解させ、得られた塗工液を基材多孔質膜に塗布し、又は塗工液中に基材多孔質膜を浸漬した後、上記有機溶媒を除去して、ポリマーと共に、架橋助剤と重合開始剤と、必要に応じて、増感助剤とを基材多孔質膜に担持させるのが好ましい。
【0023】
本発明によれば、上記ポリマーを基材多孔質膜に担持させるに際して、基材多孔質膜の表面積の10〜90%を占めるように担持させることが必要である。このように、上記ポリマーを基材多孔質膜の表面積の10〜90%を占めるように担持させる方法は、特に限定されるものではないが、例えば、上記ポリマーを含む塗工液をスクリーン印刷、凸版印刷、グラビア印刷、点状塗布等によって、基材多孔質膜の表面積の10〜90%を占めるように塗布すればよい。このように、基材多孔質膜に塗工液を塗布した後、塗工液中の有機溶媒を除去するには、例えば、加熱や減圧乾燥等、適宜の方法によればよい。
【0024】
上記ポリマーを基材多孔質膜に担持させるに際して、その割合が基材多孔質膜の表面積の10%よりも少ないときは、得られる高分子ゲル電解質がそれ自体で十分な引き剥がし接着力をもたない。しかし、上記ポリマーを基材多孔質膜に担持させるに際して、その割合が基材多孔質膜の表面積の90%を越えるときは、後述するように、上記ポリマーの架橋体に電解液を接触させて、ポリマーを膨潤させるときに、その速度が遅く、場合によっては、ポリマーの膨潤の度合いが基材多孔質膜中、一様でなくなる。
【0025】
本発明によれば、基材多孔質膜への上記ポリマーの担持量は、基材多孔質膜1cm2 当り、通常、0.01〜5mgの範囲であり、好ましくは、0.03〜3mgの範囲である。
【0026】
上記ポリマーを基材多孔質膜に担持させる際に用いる有機溶媒は、上記ポリマーを溶解し、更に、架橋助剤と重合開始剤と、必要に応じて、増感助剤を基材多孔質膜に担持させるときは、これらを溶解する一方、基材多孔質膜を溶解させなければ、特に、限定されるものではないが、例えば、メチルアルコール、エチルアルコール、アセトニトリル、プロピオニトリル、ベンゼン、トルエン、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、プロピレンカーボネート、エチルメチルカーボネート、γ−ブチロラクトン、ジエチルエーテル、ジオキサン、テトラヒドロフラン、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、N−メチル−2−ピロリドン等や、また、これらの任意の混合溶媒が好ましく用いられる。
【0027】
本発明によれば、このように、上記ポリマーを基材多孔質膜の表面積の10〜90%を占めるように担持させた後、このポリマーに電解質塩を有機溶媒に溶解させてなる電解液を接触させて、上記ポリマーを溶解させ、基材多孔質膜中に拡散させる。
【0028】
上記電解質塩は、特に、限定されるものではなく、得られる高分子ゲル電解質の要求特性や用途によって適宜に選択すればよいが、例えば、水素、リチウム、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属、カルシウム、ストロンチウム等のアルカリ土類金属又は3級若しくは4級アンモニウム塩等をカチオン成分とし、塩酸、硝酸、リン酸、硫酸、ホウフッ化水素酸、フッ化水素酸、六フッ化リン酸、過塩素酸等の無機酸又はカルボン酸、有機スルホン酸、フッ素置換有機スルホン酸等の有機酸をアニオン成分とする塩を例示することができる。
【0029】
本発明においては、電解質塩は、上述したなかでも、アルカリ金属イオンをカチオン成分とし、無機酸又は有機酸、後者では、特に、トリフルオロ酢酸や有機スルホン酸をアニオン成分とする電解質塩が好ましい。そのような電解質塩として、例えば、過塩素酸リチウム、過塩素酸ナトリウム、過塩素酸カリウム等の過塩素酸アルカリ金属、テトラフルオロホウ酸リチウム、テトラフルオロホウ酸ナトリウム、テトラフルオロホウ酸カリウム等のテトラフルオロホウ酸アルカリ金属、ヘキサフルオロリン酸リチウム、ヘキサフルオロリン酸ナトリウム、ヘキサフルオロリン酸カリウム等のヘキサフルオロリン酸アルカリ金属、トリフルオロ酢酸リチウム等のトリフルオロ酢酸アルカリ金属、トリフルオロメタンスルホン酸リチウム等のトリフルオロメタンスルホン酸アルカリ金属等を挙げることができる。
【0030】
上記ポリマーを、好ましくは、架橋助剤と重合開始剤と、必要に応じて、増感助剤と共に、基材多孔質膜に担持させた後、このポリマーに接触させて、ポリマーを溶解させると共に、上記電解質塩を溶解させて、電解液を形成するために用いる有機溶媒は、上記ポリマーと電解質塩を溶解させることができ、他方、用いる基材多孔質膜を溶解させなければ、特に、限定されるものではないが、非水溶媒、特に、非プロトン性有機溶媒が好ましく用いられる。そのような非水有機溶媒の具体例として、例えば、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ブチレンカーボネート、γ−ブチロラクトン等の環状エステル類、テトラヒドロフラン、ジメトキシエタン等のエーテル類、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート等の鎖状エステル類を挙げることができ、これらは単独で、又は2種以上の混合物として用いられる。
【0031】
また、上記電解液における電解質塩の濃度は、特に、限定されるものではないが、通常、0.05〜3モル/Lの範囲であり、好ましくは、0.1〜2モル/Lの範囲である。更に、このようにして、基材多孔質膜に担持させる電解質塩は、上記ポリマー100重量部に対して、通常、1〜100重量部の割合であることが好ましい。
【0032】
次に、本発明によれば、このようにして、基材多孔質膜に上記ポリマーを、好ましくは、架橋助剤と重合開始剤と、必要に応じて、増感助剤と共に、基材多孔質膜に担持させた後、これに電解液を接触させ、上記ポリマーを溶解させ、基材多孔質膜中を拡散させた後、上記ポリマーの架橋体を形成させて、上記電解液によって膨潤せしめられた架橋体を形成することによって、高分子ゲル電解質を得ることができる。
【0033】
ここに、上記ポリマーの架橋体を形成するには、ポリマーを架橋助剤と重合開始剤と、必要に応じて、増感助剤の存在下に、加熱し、又は放射線を照射すればよい。従って、前述したように、上記架橋助剤と重合開始剤と、必要に応じて、増感助剤は、基材多孔質膜にポリマーを担持させる際に、ポリマーと共にこれらを適宜の有機溶媒に溶解して塗工液とし、これを基材多孔質膜に塗布し、又は含浸させた後、有機溶媒を除去するのが好ましい。
【0034】
しかし、別の方法として、例えば、基材多孔質膜にポリマーのみを担持させ、これに電解液を接触させて、ポリマーを溶解し、基材多孔質膜中を拡散させる際に、この電解液に架橋助剤と重合開始剤と、必要に応じて、増感助剤を溶解させ、これをポリマーに接触させて、ポリマーを溶解させ、ポリマーと共に、基材多孔質膜中に拡散させてもよい。
【0035】
本発明によれば、上記ポリマーの架橋体を形成させるには、後述するように、予め、上記ポリマーの分子中に、エチレン性不飽和基、反応性ケイ素含有置換基や、また、エポキシ基やハロゲン原子等を含む架橋性反応基を有せしめ、多官能性の重合性単量体からなる架橋助剤を用い、このような架橋性反応基を利用して、上記ポリマー鎖を相互に結合させて、架橋体とするのが好ましい。
【0036】
しかし、本発明によれば、上記ポリマーの存在下に、単官能性の重合性単量体からなる架橋助剤を重合させることによって、上記ポリマーにグラフト重合させ、又は上記架橋助剤の重合によってポリマー鎖を生成させ、この架橋助剤からのポリマー鎖と上記ポリマー鎖とを相互に貫通した構造体とすることができる。本発明によれば、単官能性の架橋助剤を用いて、上記ポリマーをこのような構造体とすることも、ポリマーの架橋体の生成に含めることとする。
【0037】
従って、本発明によれば、上記ポリマーが分子中に架橋性反応基をもたないときも、同様に、単官能性の重合性単量体よりなる架橋助剤から、そのポリマー鎖を生成させて、この架橋助剤からのポリマー鎖と上記ポリマー鎖とを相互に貫通した構造体とすることができ、また、多官能性の重合性単量体からなる架橋助剤の重合によって、三次元網状組織を生成させ、この三次元網状組織中に上記ポリマー鎖を取り込ませて、これらの二つのポリマー鎖が相互に貫通した構造体とすることができる。本発明によれば、上記ポリマーがこのような構造体を形成するときも、架橋体の生成に含めることとする。
【0038】
本発明において、高分子ゲル電解質は、このように、ポリマーを基材多孔質膜に担持させ、これを架橋させた結果、基材多孔質膜のすべての空孔中にポリマーの架橋体が充填されたものをも含むものとする。
【0039】
本発明に従って得られる高分子ゲル電解質は、それ自体で、20mm幅での180°引き剥がし接着力が1N以上の接着性を有する。
【0040】
かくして、本発明の方法は、例えば、電池、キャパシタ等の製造に好適に用いることができる。
【0041】
即ち、本発明に従って、上記ポリマーを基材多孔質膜にその表面積の10〜90%を占めるように担持させ、これを電極と積層し、又はこの積層物を捲回して、電極をこの基材多孔質膜と接着させた後、このような多孔質膜−電極構造体に電解液を含浸させ、電池、キャパシタ等の仕掛り品を製作した後、適宜の外装体内に組み入れて封口したり、また、上記多孔質膜−電極構造体を適宜の外装体内に組み入れた後、この外装体中に電解液を注入し、封口する等の方法によって、いわば、その場で、高分子ゲル電解質を形成させ、かくして、本発明の方法を利用して、高分子ゲル電解質を用いてなる電池、キャパシタ等を得ることができる。
【0042】
また、例えば、このようにして、電池等を組み立てるとき、電極間の面圧を均一に高くすることができるので、容易に電極間距離を一定に保つことができ、かくして、すぐれた特性を有する電池等を得ることができる。
【0043】
本発明によれば、上記主鎖にポリアクリレート、ポリメタクリレート、ポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキシド、ポリ(エチレンオキシド/プロピレンオキシド)、ポリフォスファゼン、ポリビニルエーテル又はポリシロキサン構造を有し、側鎖に鎖状オリゴアルキレンオキシド構造を有するポリマーのなかでも、主鎖にポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキシド又はポリ(エチレンオキシド/プロピレンオキシド)構造を有し、側鎖に鎖状オリゴアルキレン構造を有するポリエーテル多元共重合体が好ましく用いられる。特に、本発明によれば、主鎖にポリエチレンオキシド又はポリ(エチレンオキシド/プロピレンオキシド)構造を有し、側鎖に鎖状オリゴエチレン構造、鎖状オリゴプロピレン構造又は鎖状オリゴエチレンプロピレン構造(特に、鎖状オリゴエチレン構造又は鎖状オリゴプロピレン構造、なかでも、前者)を有するポリエーテル多元共重合体が好ましく用いられる。
【0044】
このようなポリエーテル多元共重合体は、既に、例えば、特開昭63−154736号公報、特開平9−324114号公報、特開平10−130487号公報、特開平10−176105号公報、特開平10−204172号公報等に記載されているように知られているものである。
【0045】
本発明において好ましく用いることができるポリエーテル多元共重合体は、式(1)で表される繰り返し構造単位1〜98モル%と式(2)で表される繰り返し構造単位1〜98モル%と共に、式(3)と式(4)で表される繰り返し構造単位から選ばれる少なくとも1種の架橋用繰り返し構造単位1〜20モル%とからなり、重量平均分子量が104 〜107 の範囲内にあるものである。
【0046】
【化3】
【0047】
(上記式中、式(1)において、R及びR' はそれぞれ独立に水素原子又はメチル基を示し、R1 は炭素数1〜12のアルキル基、炭素数2〜8のアルケニル基、炭素数3〜8のシクロアルキル基、炭素数6〜14のアリール基又は炭素数7〜12のアラルキル基を示し、側鎖のオキシアルキレン単位の重合度kは1〜12であり、式(2)において、R' は水素原子又はメチル基を示し、式(3)において、R' は水素原子又はメチル基を示し、R2 はエチレン性不飽和基、反応性ケイ素含有置換基、式(5)で表されるエポキシ基を含む置換基又はハロゲン原子を含むアルキル基を示し、式(4)において、R3 は反応性ケイ素含有置換基を示し、式(5)において、Aは有機残基を示す。)
特に、本発明によれば、このようなポリエーテル多元共重合体は、式(1)で表される繰り返し構造単位(1)2〜95モル%と式(2)で表される繰り返し構造単位2〜95モル%と共に、式(3)と式(4)で表される繰り返し構造単位から選ばれる少なくとも1種の架橋用繰り返し構造単位3〜15モル%とからなるのが好ましい。
【0048】
このようなポリエーテル多元共重合体において、上記式(1)で表される繰り返し構造単位中、R' は水素原子又はメチル基を示し、また、オキシアルキレン単位において、Rはそれぞれ独立に水素原子又はメチル基を示し、それぞれすべてが水素原子でもよく、すべてがメチル基でもよく、また、一部が水素原子であり、残余がメチル基でもよい。従って、このオキシアルキレン単位は、オキシエチレン単位でも、オキシプロピレン基単位でもよく、また、オキシエチレンプロピレン単位でもよいが、好ましくは、オキシエチレン単位又はオキシプロピレン単位であり、特に、オキシエチレン単位である。更に、オキシアルキレン単位の重合度kは1〜12が好ましい。重合度kの値が12を越えるときは、得られる高分子ゲル電解質のイオン伝導性が低下する。
【0049】
また、本発明において用いるポリエーテル多元共重合体の分子量は、加工性、成形性、機械的強度、柔軟性を得るためには、重量平均分子量が104 〜107 、好ましくは、105 〜5x106 の範囲にあることが好ましい。重量平均分子量が104 より小さいと、十分な機械的強度を得ることができない。他方、107 を越えるときは、溶解性に問題を生じる。更に、ポリエーテル多元共重合体のガラス転移温度は、−60℃以下が好ましい。
【0050】
本発明において用いるこのような多元ポリエーテル共重合体は、ブロック共重合体、ランダム共重合体のいずれでもよいが、ポリアルキレンオキシド、好ましくは、ポリエチレンオキシドからなるポリマー主鎖の結晶性を低下させる効果が一層大きいところから、ランダム共重合体が好ましい。
【0051】
かくして、本発明によれば、このようなポリエーテル多元共重合体を、架橋助剤と重合開始剤と、必要に応じて、増感助剤と共に、前述したような適宜の有機溶媒に溶解させ、得られた塗工液を基材多孔質膜に塗布し、又は含浸させた後、上記有機溶媒を除去して、上記ポリエーテル多元共重合体を架橋助剤と重合開始剤と、必要に応じて、増感助剤と共に、基材多孔質膜に担持させ、次いで、上記ポリエーテル多元共重合体に電解液を接触させて、上記ポリエーテル多元共重合体を溶解させ、基材多孔質膜中に拡散させた後、架橋助剤と重合開始剤と、必要に応じて、増感助剤の存在下に、ポリマーを加熱し、又は放射線を照射して、ポリマーを架橋させ、架橋体を形成することによって、高分子ゲル電解質を得ることができる。
【0052】
次に、本発明において用いる上記ポリエーテル多元共重合体とその架橋について詳細に説明する。
【0053】
本発明において用いる上記ポリエーテル多元共重合体は、例えば、開環重合用触媒として有機アルミニウムを主体とする触媒系、有機亜鉛を主体とする触媒系、有機スズ−リン酸エステル縮合物触媒系等を用いて、前記式(1)で表される繰り返し構造単位と前記式(2)で表される繰り返し構造単位と共に、式(3)と式(4)で表される繰り返し構造単位から選ばれる少なくとも1種の架橋用繰り返し構造単位とに対応して、式(6)で表されるモノマー1〜98モル%と式(7)で表されるモノマー1〜98モル%と共に、式(8)と式(9)で表されるモノマーから選ばれる少なくとも1種のモノマー1〜20モル%とを、溶媒の存在下又は不存在下、反応温度10〜80℃、撹拌下で反応させることによって得ることができる。なかでも、得られるポリエーテル多元共重合体の重合度や性質等の点から、触媒としては、有機スズ−リン酸エステル縮合物触媒系が特に好ましく用いられる。
【0054】
【化4】
【0055】
(上記式中、式(6)において、R及びR' はそれぞれ独立に水素原子又はメチル基を示し、R1 は炭素数1〜12のアルキル基、炭素数2〜8のアルケニル基、炭素数3〜8のシクロアルキル基、炭素数6〜14のアリール基又は炭素数7〜12のアラルキル基を示し、側鎖のオキシアルキレン単位の重合度kは1〜12であり、式(7)において、R' は水素原子又はメチル基を示し、式(8)において、R' は水素原子又はメチル基を示し、R2 はエチレン性不飽和基、反応性ケイ素含有置換基、前記式(5)で表されるエポキシ基を含む置換基又はハロゲン原子を含むアルキル基を示し、式(9)において、R3 は反応性ケイ素含有置換基を示す。)
特に、本発明によれば、式(6)で表されるモノマー2〜95モル%と式(7)で表されるモノマー2〜95モル%と共に、式(8)と式(9)で表されるモノマーから選ばれる少なくとも1種のモノマー3〜15モル%が用いられる。
【0056】
上記モノマーを用いるポリエーテル多元共重合体の製造において、式(8)と式(9)で表されるモノマーは、分子中に架橋性反応基を有するので、これらを上記式(6)と式(7)で表されるモノマーと共に共重合させることによって、その架橋性反応基を分子中に有するポリエーテル多元共重合体を得ることができ、かくして、前述したように、ポリエーテル多元共重合体を、例えば、必要に応じて、架橋助剤と重合開始剤の存在下に加熱することによって、その架橋性反応基を利用して、ポリエーテル多元共重合体を架橋させ、かくして、ポリエーテル多元共重合体の架橋体を得ることができる。
【0057】
上記式(6)で表されるモノマーにおいて、R' は水素原子又はメチル基を示し、また、このモノマー中のオキシアルキレン単位において、Rはそれぞれ独立に水素原子又はメチル基を示し、それぞれすべてが水素原子でもよく、すべてがメチル基でもよく、また、一部が水素原子であり、残余がメチル基でもよい。従って、このオキシアルキレン単位は、オキシエチレン単位でも、オキシプロピレン基単位でもよく、また、オキシエチレンプロピレン単位でもよいが、好ましくは、オキシエチレン単位又はオキシプロピレン単位であり、特に、オキシエチレン単位である。更に、オキシアルキレン単位の重合度kは1〜12が好ましい。重合度kの値が12を越えるときは、得られる高分子ゲル電解質のイオン伝導性が低下する。
【0058】
上記式(6)で表されるモノマーの具体例としては、例えば、ジエチレングリコールグリシジルメチルエーテル、ジプロピレングリコールグリシジルメチルエーテル等を挙げることができる。本発明によれば、これらの2種以上の混合物を用いてもよい。また、上記式(7)で表されるモノマーは、具体的には、エチレンオキシド又はプロピレンオキシドである。本発明によれば、式(6)又は式(7)で表されるモノマーは、それぞれ2種以上の混合物を用いてもよい。
【0059】
上記式(8)で表されるモノマーは、前述した架橋性反応基を有する架橋性モノマーの一つであり、架橋性反応基として、例えば、エチレン性不飽和基、反応性ケイ素含有置換基、エポキシ基を含む置換基又はハロゲン原子を含むアルキル基を挙げることができる。
【0060】
従って、上記式(8)で表される架橋性モノマーのうち、架橋性反応基として、エチレン性不飽和基を有するものとして、例えば、アリルグリシジルエーテル、4−ビニルシクロヘキシルグリシジルエーテル、α−テルピニルグリシジルエーテル、シクロヘキセニルメチルグリシジルエーテル、p−ビニルベンジルグリシジルエーテル、アリルフェニルグリシジルエーテル、ビニルグリシジルエーテル、3,4−エポキシ−1−ブテン、3,4−エポキシ−1−ペンテン、4,5−エポキシ−2−ペンテン、1,2−エポキシ−5,9−シクロドデカジエン、3,4−エポキシ−1−ビニルシクロヘキセン、1,2−エポキシ−5−シクロオクテン、アクリル酸グリシジル、メタクリル酸グリシジル、ソルビン酸グリシジル、ケイ皮酸グリシジル、クロトン酸グリシジル、グリシジル−4−ヘキセノエート等(以上は、R’が水素原子のものである。)や、2,3−エポキシ−2−メチルプロピルビニルエーテル、2,3−エポキシ−2−メチルプロピルアリルエーテル、3,4−エポキシ−3−メチル−1−ブテン等(以上は、R’がメチル基のものである。)等が用いられる。本発明によれば、これらの2種以上の混合物を用いてもよい。また、本発明によれば、これらのなかでも、特に、アリルグリシジルエーテル、アクリル酸グリシジル、メタクリル酸グリシジル等が好ましく用いられる。
【0061】
また、上記式(8)で表される架橋性モノマーのうち、反応性ケイ素含有置換基を有するモノマーの具体例として、例えば、下記式(10)又は式(11)式で表されるものを挙げることができる。
【0062】
【化5】
【0063】
また、上記式(9)で表される反応性ケイ素含有置換基を有する架橋性モノマーの具体例として、例えば、下記式(12)で表されるものを挙げることができる。
【0064】
【化6】
【0065】
上記式(10)から式(12)で表される架橋性モノマーにおいて、R' は水素原子又はメチル基であり、R4 、R5 、R6 は、それぞれ同一であっても、異なっていてもよいが、少なくとも一つはアルコキシル基であり、残りがアルキル基である。mは1〜6を表す。
【0066】
上記式(10)で表される架橋性モノマーとしては、例えば、グリシドキシメチルトリメトキシシラン、グリシドキシメチルメチルジメトキシシラン、グリシドキシエチルトリメトキシシラン、グリシドキシエチルメチルジメトキシシラン、グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、グリシドキシブチルメチルジメトキシシラン、グリシドキシブチルメチルトリメトキシシラン、グリシドキシヘキシルメチルジメトキシシラン、グリシドキシヘキシルメチルトリメトキシシラン等(以上は、R’が水素原子のものである。)や、2,3−エポキシ−2−メチルプロポキシメチルトリメトキシシラン、2,3−エポキシ−2−メチルプロポキシメチルメチルジメトキシシラン、2,3−エポキシ−2−メチルプロポキシメチルジメチルメトキシシラン等(以上は、R’がメチル基のものである。)を挙げることができる。本発明によれば、これらの2種以上の混合物を用いてもよい。
【0067】
上記式(11)で表される架橋性モノマーとしては、例えば、1,2−エポキシプロピルトリメトキシシラン、1,2−エポキシプロピルメチルジメトキシシラン、1,2−エポキシプロピルジメチルメトキシシラン、1,2−エポキシブチルトリメトキシシラン、1,2−エポキシブチルメチルジメトキシシラン、1,2−エポキシペンチルトリメトキシシラン、1,2−エポキシペンチルメチルジメトキシシラン、1,2−エポキシヘキシルトリメトキシシラン、1,2−エポキシヘキシルメチルジメトキシシラン等(以上は、R’が水素原子のものである。)や、2,3−エポキシ−2−メチルプロピルトリメトキシシラン、2,3−エポキシ−2−メチルプロピルメチルジメトキシシラン、2,3−エポキシ−2−メチルプロピルジメチルメトキシシラン等(以上は、R’がメチル基のものである。)を挙げることができる。本発明によれば、これらの2種以上の混合物を用いてもよい。
【0068】
また、上記式(12)で表される架橋性モノマーとしては、例えば、(3,4−エポキシシクロヘキシル)−1−メチルトリメトキシシラン、(3,4−エポキシシクロヘキシル)−1−メチルメチルジメトキシシラン、(3,4−エポキシシクロヘキシル)−1−エチルトリメトキシシラン、(3,4−エポキシシクロヘキシル)−1−エチルメチルジメトキシシラン、(3,4−エポキシシクロヘキシル)−1−プロピルトリメトキシシラン、(3,4−エポキシシクロヘキシル)−1−プロピルメチルジメトキシシラン、(3,4−エポキシシクロヘキシル)−1−ブチルトリメトキシシラン、(3,4−エポキシシクロヘキシル)−1−ブチルメチルジメトキシシラン等を挙げることができる。
【0069】
本発明においては、上記架橋性モノマーのなかでも、特に、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、1,2−エポキシブチルトリメトキシシラン、1,2−エポキシペンチルトリメトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン等が好ましい。
【0070】
また、前記式(5)の置換基を有し、式(8)で表される架橋性モノマーにおいて、前記有機残基Aは、その構造において、特に、限定されるものではないが、例えば、(ポリ)メチレン基のような(ポリ)アルキレン基、エーテル結合を基中に有する炭化水素基等を挙げることができる。
【0071】
従って、式(5)の置換基を有する架橋性モノマー(8)として、例えば、下記式(13)から式(15)で表される化合物を例示することができる。
【0072】
【化7】
【0073】
上記式(13)で表される架橋性モノマーにおいて、R7 及びR8 は、それぞれ独立に水素原子又はメチル基であり、式(13)及び式(14)中、nは、0〜12の範囲の整数である。
【0074】
上記式(13)で表される架橋性モノマーとしては、例えば、2,3−エポキシプロピル−2',3'−エポキシ−2'−メチルプロピルエーテル、エチレングリコール−2,3−エポキシプロピル−2',3'−エポキシ−2'−メチルプロピルエーテル、ジエチレングリコール−2,3−エポキシプロピル−2',3'−エポキシ−2'−メチルプロピルエーテル等を挙げることができる。
【0075】
上記式(14)で表される架橋性モノマーとしては、例えば、2−メチル−1,2,3,4−ジエポキシブタン、2−メチル−1,2,4,5−ジエポキシペンタン、2−メチル−1,2,5,6−ジエポキシヘキサン等を挙げることができる。
【0076】
上記式(15)で表される架橋性モノマーとしては、例えば、ヒドロキノン−2,3−エポキシプロピル−2',3'−エポキシ−2'−メチルプロピルエーテル、カテコール−2,3−エポキシプロピル−2',3'−エポキシ−2'−メチルプロピルエーテル等を挙げることができる。
【0077】
このようなエポキシ基を含む架橋性モノマーのなかでは、特に、2,3−エポキシプロピル−2',3'−エポキシ−2'−メチルプロピルエーテル、エチレングリコール−2,3−エポキシプロピル−2',3'−エポキシ−2'−メチルプロピルエーテル等が好ましい。
【0078】
多元ポリエーテル共重合体の製造において、モノマーとして、前記式(6)と式(7)式で表されるものと共に、前記式(8)又は式(9)で表されるものを用いることによって、分子中に架橋性反応基を有するポリエーテル多元共重合体を得ることができ、このようなポリエーテル多元共重合体は、その架橋性反応基の反応性を利用することによって、架橋体とすることができる。このような架橋体を得るに際して、必要に応じて、上記架橋性反応基と反応性を有する架橋助剤を用いることができる。このような架橋助剤を用いることによって、分子中に上記架橋性反応基を有するポリエーテル多元共重合体の架橋反応を効果的に行わせることができる。このようにして、ポリエーテル多元共重合体に架橋構造を有せしめることによって、得られる高分子ゲル電解質の機械的強度を一層向上させることができる。
【0079】
次に、ポリエーテル多元共重合体の架橋体を得るには、そのエチレン性不飽和基を利用する場合には、有機過酸化物、アゾ化合物等から選ばれるラジカル重合開始剤を用いる熱重合や、紫外線、電子線等の活性エネルギー線による光重合を用いることができる。
【0080】
上記有機過酸化物としては、例えば、ケトンパーオキサイド、パーオキシケタール、ハイドロパーオキサイド、ジアルキルパーオキサイド、ジアシルパーオキサイド、パーオキシエステル等、従来より知られているものが適宜に用いられる。具体例として、例えば、メチルエチルケトンパーオキサイド、シクロヘキサノンパーオキサイド、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、2,2−ビス(t−ブチルパーオキシ)オクタン、n−ブチル−4,4−ビス(t−ブチルパーオキシ)バレレート、t−ブチルハイドロパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、2,5−ジメチルヘキサン−2,5−ジハイドロパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド、t−ブチルクミルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、α, α' −ビス(t−ブチルパーオキシ)ジイソプロピル)ベンゼン、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン、ベンゾイルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート等を挙げることができる。このような有機過酸化物は、その種類にもよるが、通常、ポリエーテル多元共重合体の0.01〜10重量%の範囲で用いられる。
【0081】
アゾ化合物としては、例えば、アゾニトリル化合物、アゾアミド化合物、アゾアミジン化合物等、従来より知られているものが適宜に用いられる。具体例としては、例えば、2,2'−アゾビスイソブチロニトリル、2,2'−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、2,2'−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2'−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、1,1'−アゾビス(シクロヘキサン−1−カルボニトリル)、2−(カルバモイルアゾ)イソブチロニトリル、2−フェニルアゾ−4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル、2,2−アゾビス(2−メチル−N−フェニルプロピオンアミジン)二塩酸塩、2,2'−アゾビス〔N−(4−クロロフェニル)−2−メチルプロピオンアミジン〕二塩酸塩、2,2'−アゾビス〔N−ヒドロキシフェニル)−2−メチルプロピオンアミジン〕二塩酸塩、2,2'−アゾビス〔2−メチル−N−(フェニルメチル)プロピオンアミジン〕二塩酸塩、2,2'−アゾビス〔2−メチル−N−(2−プロペニル)プロピオンアミジン〕二塩酸塩、2,2'−アゾビス(2−メチルプロピオンアミジン)二塩酸塩、2,2'−アゾビス〔N−(2−ヒドロキシエチル)−2−メチルプロピオンアミジン〕二塩酸塩、2,2'−アゾビス〔2−(5−メチル−2−イミダゾリン−2−イル)プロパン〕二塩酸塩、2,2'−アゾビス〔2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン〕二塩酸塩、2,2'−アゾビス〔2−(4,5,6,7−テトラヒドロ−1H−1,3−ジアゼピン−2−イル)プロパン〕二塩酸塩、2,2'−アゾビス〔2−(3,4,5,6−テトラヒドロピリミジン−2−イル)プロパン〕二塩酸塩、2,2'−アゾビス〔2−(5−ヒドロキシ−3,4,5,6−テトラヒドロピリミジン−2−イル)プロパン〕二塩酸塩、2,2'−アゾビス{2−〔1−(2−ヒドロキシエチル)−2−イミダゾリン−2−イル〕プロパン}二塩酸塩、2,2'−アゾビス〔2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン〕、2,2'−アゾビス{2−メチル−N−〔1,1−ビス(ヒドロキシメチル)−2−ヒドロキシエチル〕プロピオンアミド}、2,2'−アゾビス{2−メチル−N−〔1,1−ビス(ヒドロキシメチル)エチル〕プロピオンアミド}、2,2'−アゾビス〔2−メチル−N−(2−ヒドロキシエチル)プロピオンアミド〕、2,2'−アゾビス(2−メチルプロピオンアミド)ジハイドレート、2,2'−アゾビス(2,4,4−トリメチルペンタン)、2,2'−アゾビス(2−メチルプロパン)、ジメチル−2,2'−アゾビスイソブチレート、4,4'−アゾビス(4−シアノ吉草酸)、2,2'−アゾビス〔2−ヒドロキシメチル)プロピオニトリル〕等を挙げることができる。
【0082】
このようなアゾ化合物は、その種類にもよるが、通常、ポリエーテル多元共重合体の0.01〜10重量%の範囲で用いられる。
【0083】
ポリエーテル多元共重合体の有する不飽和基を利用する架橋体の製造に際して、紫外線等の活性エネルギー線照射による場合には、増感助剤として、例えば、ジエトキシアセトフェノン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、ベンジルジメチルケタール、1−(4−イソプロピルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル−(2−ヒドロキシ−2−プロピル)ケトン、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−メチル−2−モルホリノ(4−チオメチルフェニル)プロパン−1−オン等のアセトフェノン類、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル等のベンゾインエーテル類、ベンゾフェノン、o−ベンゾイル安息香酸メチル、4−フェニルベンゾフェノン、ヒドロキシベンゾフェノン、4−ベンゾイル−4'−メチルジフェニルサルファイド、アルキル化ベンゾフェノン、3,3',4,4'−テトラ(t−ブチルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン、4−ベンゾイル−N,N−ジメチル−N−〔2−(1−オキソ−2−プロペニルオキシ)エチル〕ベンゼンメタナミニウムブロミド、(4−ベンゾイルベンジル)トリメチルアンモニウムクロイド等のベンゾフェノン類、2−イソプロピルチオキサントン、2,4−ジメチルチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、2,4−ジクロロチオキサントン等のチオキサントン類、アジドピレン、3−スルホニルアジド安息香酸、4−スルホニルアジド安息香酸、2,6−ビス(4'−アジドベンザル)シクロヘキサノン−2,2'−ジスルホン酸(ナトリウム塩)、p−アジドベンズアルデヒド、p−アジドアセトフェノン、p−アジドベンゾイン酸、p−アジドベンザルアセトフェノン、p−アジドベンザルアセトン、4,4'−ジアジドカルコン、1,3−ビス(4'−アジドベンザル)アセトン、2,6−ビス(4'−アジドベンザル)シクロヘキサノン、2,6−ビス(4−アジドベンザル)−4−メチルシクロヘキサノン、4,4'−ジアジドスチルベン−2,2'−ジスルホン酸、1,3−ビス(4'−アジドベンザル)−2−プロパノン−2'−スルホン酸、1,3−ビス(4'−アジドシンナシリデン)−2−プロパノン等のアジド類等が適宜に用いられる。
【0084】
紫外線等の活性エネルギー線照射による架橋に適するモノマー成分としては、例えば、アクリル酸グリシジルエーテル、メタクリル酸グリシジルエーテル、ケイ皮酸グリシジルエーテル等が特に好ましい。
【0085】
このように、ポリエーテル多元共重合体の架橋体を得るために、そのエチレン性不飽和基自体にて架橋させてもよく、また、必要に応じて、架橋助剤を用いて、ポリエーテル多元共重合体を架橋させてもよい。
【0086】
前述したように、本発明によれば、架橋助剤としては、多官能性の重合性単量体が好ましく用いられるが、しかし、単環能性の重合性単量体も架橋助剤として有効に用いることができる。
【0087】
従って、本発明によれは、上記架橋助剤としては、例えば、エチレングリコールジアクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、オリゴエチレングリコールジアクリレート、オリゴエチレングリコールジメタクリレート、プロピレングリコールジアクリレート、プロピレングリコールジメタクリレート、オリゴプロピレングリコールジアクリレート、オリゴプロピレングリコールジメタクリレート、1,3−ブチレングリコールジアクリレート、1,4−ブチレングリコールジアクリレート、1,3−グリセロールジメタクリレート、1,1,1−トリメチロールプロパンジメタクリレート、1,1,1−トリメチロールエタンジアクリレート、ペンタエリスリトールトリメタクリレート、1,2,6−ヘキサントリアクリレート、ソルビトールペンタメタクリレート、メチレンビスアクリルアミド、メチレンビスメタクリルアミドジビニルベンゼン、ビニルメタクリレート、ビニルクロトネート、ビニルアクリレート、ビニルアセチレン、トリビニルベンゼン、トリアリルシアニルスルフィド、ジビニルエーテル、ジビニルスルホエーテル、ジアリルフタレート、グリセロールトリビニルエーテル、アリルメタリクレート、アリルアクレート、ジアリルマレート、ジアリルフマレート、ジアリルイタコネート、メチルメタクリレート、ブチルアクリレート、エチルアクリレート、2-エチルヘキシルアクリレート、ラウリルメタクリレート、エチレングリコールアクリレート、トリアリルイソシアヌレート、マレイミド、フェニルマレイミド、p−キノンジオキシム、無水マレイン酸、イタコン酸等を挙げることができる。
【0088】
ポリエーテル多元共重合体の有する反応性ケイ素含有基を利用して、ポリエーテル多元共重合体の架橋体を得るには、反応性ケイ素基と水との反応によればよいが、上記反応性ケイ素含有基の反応性を高めるには、ジブチルスズジラウレ−ト、ジブチルスズマレート、ジブチルスズジアセテート、オクチル酸スズ、ジブチルスズアセチルアセトナート等のスズ化合物、テトラブチルチタネート、テトラプロピルチタネート等のチタン化合物、アルミニウムトリスアセチルアセトナート、アルミニウムトリスエチルアセトアセテート、ジイソプロポキシアルミニウムエチルアセトアセテート等のアルミニウム化合物等の有機金属化合物、又はブチルアミン、オクチルアミン、ラウリルアミン、ジブチルアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、シクロヘキシルアミン、ベンジルアミン、ジエチルアミノプロピルアミン、グアニン、ジフェニルグアニン等のアミン系化合物等を触媒として用いてもよい。
【0089】
また、ポリエーテル多元共重合体の有するエポキシ基を利用して、ポリエーテル多元共重合体の架橋体を得る場合には、ポリアミン類、酸無水物類等が用いられる。
【0090】
ポリアミン類としては、ジエチレントリアミン、ジプロピレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ジメチルアミノプロピルアミン、ジエチルアミノプロピルアミン、ジブチルアミノプロピルアミン、ヘキサメチレンジアミン、N−アミノエチルピペラジン、ビス(アミノプロピルピペラジン)、トリメチルヘキサメチレンジアミン、イソフタル酸ジヒドラジド等の脂肪族ポリアミン、4,4−ジアミノジフェニルエーテル、ジアミノジフェニルスルホン、m−フェニレンジアミン、2,4−トルイレンジアミン、m−トルイレンジアミン、o−トルイレンジアミン、キシリレンジアミン等の芳香族ポリアミン等を挙げることができる。
【0091】
このようなポリアミン類は、その種類にもよるが、通常、ポリエーテル多元共重合体の0.01〜10重量%の範囲で用いられる。
【0092】
酸無水物類としては、無水マレイン酸、無水ドデセニル琥珀酸、無水クロレンデック酸、無水フタル酸、無水ピロメリット酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、テトラメチレン無水マレイン酸、テトラヒドロ無水フタル酸、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、無水トリメリット酸等を挙げることができる。
【0093】
このような酸無水物類は、その種類にもよるが、通常、ポリエーテル多元共重合体の0.01〜10重量%の範囲で用いられる。
【0094】
本発明によれば、ポリエーテル多元共重合体の架橋体を得るに際して、架橋促進剤を用いてもよい。ポリアミン類の架橋反応における促進剤としては、例えば、フェノール、クレゾール、レゾルシノール、ピロガロール、ノニルフェノール、2,4,6−トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール等を挙げることができる。酸無水物の架橋反応のための促進剤としては、例えば、ベンジルジメチルアミン、2,4,6−トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール、2−(ジメチルアミノエチル)フェノール、ジメチルアニリン、2−エチル−4−メチルイミダゾ−ル等を挙げることができる。このような促進剤は、その種類にもよるが、通常、架橋助剤の0.01〜10重量%の範囲で用いられる。
【0095】
【実施例】
以下に参考例と共に実施例を挙げて本発明を説明するが、本発明はこれら実施例により何ら限定されるものではない。以下において、用いた基材多孔質膜の物性は、次のように評価した。
【0096】
(厚み)
1/10000mmシックネスゲージによる測定と基材多孔質膜の断面の10000倍走査型電子顕微鏡写真に基づいて求めた。
【0097】
(空孔率)
基材多孔質膜の単位面積S(cm2 )当たりの重量W(g)、平均厚みt(cm)及び基材多孔質膜を構成する樹脂の密度d(g/cm3 )から次式にて算出した。
空孔率(%)=(1−(100W/S/t/d))×100
【0098】
【0099】
(通気度)
JIS P 8117に準拠して測定した。
【0100】
(突き刺し強度)
カトーテック(株)製圧縮試験機KES−G5を用いて、突き刺し試験を行なった。得られた荷重変位曲線から最大荷重を読み取り、膜厚25μm当たりの突き刺し強度を求めた。針は直径1.0mm、先端の曲率半径0.5mmのものを用い、2cm/秒の速度で行なった。
【0101】
(基材多孔質膜の製造)
重量平均分子量2.0×106 の超高分子量ポリエチレン樹脂15重量部と流動パラフィン(40℃における動粘度59cst)85重量部を混合して均一なスラリーとし、これを小型ニーダーに仕込み、温度160℃で1時間、加熱、溶解させ、混練した。得られた混練物を0℃に冷却した金属板の間に挟み、急冷して、7.5mm厚のゲル状シートを得た。このシートをヒートプレスにて温度120℃で0.8mm厚に圧延し、温度125℃で縦横4.5×4.5倍に同時二軸延伸して、圧延延伸フィルムとした後、これをヘプタンに浸漬して、上記流動パラフィンを抽出除去して、多孔質フィルムを得た。この多孔質フィルムを130℃で20分間、熱処理した。総延伸倍率は190倍とした。このようにして得られた多孔質フィルムは、それ自体では、接着性はなく、20mm幅での180℃引き剥がし粘着力は0であった。
【0102】
(ポリエーテル多元共重合体の分析)
ポリエーテル多元共重合体の分析は、次のようにして行った。
【0103】
ガラス転移温度は理学電気(株)製示差走査熱量計DSC8230Bを用い、窒素雰囲気中、温度範囲−100〜80℃、昇温速度10℃/分で測定した。
【0104】
ポリエーテル多元共重合体のモノマー換算組成は、プロトンNMRスペクトルから求めた。
【0105】
ポリエーテル多元共重合体の分子量は、ゲルパーミェーションクロマトグラフィー測定を行ない、標準ポリスチレン換算により重量平均分子量を算出した。ゲルパーミエーションクロマトグラフィー測定は、(株)島津製作所製の測定装置RID−6Aを用い、昭和電工(株)製カラム「ショウデックス」KD−807、KD−806、KD−806M及びKD−803、溶媒ジメチルホルムアミドを用いて60℃で行なった。
【0106】
(伝導度の測定)
実施例にて製造した高分子ゲル電解質と比較例において電解液に浸漬した多孔質膜の伝導度は、それらを白金電極で挟み、温度25℃において、電圧0.5V、周波数範囲5Hz〜1MHzの交流法を用い、複素インピーダンス法にて算出した。
【0107】
参考例1
(触媒の製造例)
撹拌機、温度計及び蒸留装置を備えた三つ口フラスコにトリブチルスズクロライド10gとトリブチルホスフェート35gを入れ、窒素気流下に撹拌しながら、250℃で20分間加熱し、留出物を留去させ、残留物として固体状の縮合物質を得た。以下においては、この有機スズ−リン酸エステル縮合物質を触媒として用いた。
【0108】
(ポリエーテル多元共重合体の製造)
容量3Lのガラス製四つ口フラスコの内部を窒素置換し、これに触媒として上記有機スズ−リン酸エステル縮合物質0.3gと水分10ppm以下に調整した下記式(16)
【0109】
【化8】
【0110】
で表されるグリシジルエーテル化合物300gとアリルグリシジルエーテル32gと溶媒n−ヘキサン2000gを仕込み、これにエチレンオキシド320gを上記グリシジルエーテル化合物の重合率をガスクロマトグラフィーで追跡しながら、逐次添加した。重合反応はメタノールで停止した。重合反応終了後、生成したポリマーをデカンテーションにて取り出した後、常圧下、40℃で24時間、更に、減圧下、45℃で10時間乾燥して、反応性モノマー成分としてアリルグリシジルエーテル成分を有するポリマー600gを得た。
【0111】
このようにして得たポリエーテル多元共重合体のガラス転移温度は−69℃、ゲルパーミェーションクロマトグラフィー測定による重量平均分子量は1.6×106 であった。プロトンNMRスペクトルによるこのポリエーテル多元共重合体のモノマー換算組成は、上記グリシジルエーテル化合物(16):エチレンオキシド:アリルグリシジルエーテル=81:19:3.2モル%であった。
【0112】
参考例2
(ポリエーテル多元共重合体の製造)
容量3Lのガラス製四つ口フラスコの内部を窒素置換し、これに触媒として前記有機スズ−リン酸エステル縮合物質0.3gと水分10ppm以下に調整した前記グリシジルエーテル化合物253gとアリルグリシジルエーテル36gと溶媒n−ヘキサン2000gを仕込み、これにエチレンオキシド570gを上記グリシジルエーテル化合物の重合率をガスクロマトグラフィーで追跡しながら、逐次添加した。重合反応はメタノールで停止した。重合反応終了後、生成したポリマーをデカンテーションにて取り出した後、常圧下、40℃で24時間、更に、減圧下、45℃で10時間乾燥して、反応性モノマー成分としてアリルグリシジルエーテル成分を有するポリマー798gを得た。
【0113】
このようにして得たポリエーテル多元共重合体のガラス転移温度は−69℃、ゲルパーミェーションクロマトグラフィー測定による重量平均分子量は1.6×106 であった。プロトンNMRスペクトルによるこのポリエーテル多元共重合体のモノマー換算組成は、上記グリシジルエーテル化合物(16):エチレンオキシド:アリルグリシジルエーテル=89:11:1.9モル%であった。
【0114】
実施例1
参考例1で調製したポリエーテル多元共重合体2.0gと架橋助剤ジエチレングリコールジメタクリレート(日本油脂(株)製ブレンマーPDE−100)0.10gと重合開始剤ベンゾイルパーオキサイド0.010gをメタノール17.9gに溶解させて、塗工液を調製した。
【0115】
前述したようにして製造した超高分子量ポリエチレン樹脂(重量平均分子量2.0×106 )からなる基材多孔質膜(膜厚10μm、空孔率41%、平均孔径0.03μm、通気度146秒/100mL、針貫通強度2.4N)をガラス板上に固定し、この基材多孔質膜の表面に直径1.0mmのドットを格子点を形成するように2mm間隔で上記塗工液を塗布した後、80℃で1分間加熱し、上記メタノールを除去して、基材多孔質膜にポリエーテル多元共重合体を担持させた。このようにして担持させたポリエーテル多元共重合体の基材多孔質膜の表面に占める割合は39%であった。
【0116】
このようにして、ポリエーテル多元共重合体を基材多孔質膜に担持させた後、その上に直ちに、過塩素酸リチウムを1モル/L濃度でエチルメチルカーボネート/エチルカーボネート混合物に溶解させてなる電解液を塗布した。その上にガラス板を被せ、室温で3時間放置したところ、上記ポリエーテル多元共重合体は溶解し、基材多孔質膜全体に拡散した。そこで、このような基材多孔質膜をガラス板の間に挟んだまま、80℃で2時間加熱して、上記ポリエーテル多元共重合体を架橋させ、架橋体として、高分子ゲル電解質を得た。
【0117】
この高分子ゲル電解質の伝導度は、25℃において、9.5×10-4S/cmであった。また、この高分子ゲル電解質は、それ自体で接着性を有し、180°引き剥がし粘着力は2.5N/20mm幅であった。
【0118】
実施例2
参考例1で調製したポリエーテル多元共重合体2.0gと架橋助剤ジエチレングリコールジメタクリレート(日本油脂(株)製ブレンマーPDE−100)0.10gと重合開始剤ベンゾイルパーオキサイド0.020gをアセトニトリル17.9gに溶解させて、塗工液を調製した。
【0119】
実施例1と同じ超高分子量ポリエチレン樹脂からなる基材多孔質膜をガラス板上に固定し、この基材多孔質膜の表面に直径1.0mmのドットを格子点を形成するように2mm間隔で上記塗工液を塗布した後、80℃で1分間加熱し、上記アセトニトリルを除去して、基材多孔質膜にポリエーテル多元共重合体を担持させた。このようにして担持させたポリエーテル多元共重合体の基材多孔質膜の表面に占める割合は39%であった。
【0120】
このようにポリエーテル多元共重合体を担持させた基材多孔質膜を3日間、室温で大気下に放置した後、過塩素酸リチウムを1モル/L濃度でエチルメチルカーボネート/エチルカーボネート混合物に溶解させてなる電解液を塗布し、ガラス板を被せて、室温で3時間放置したところ、上記ポリエーテル多元共重合体は、基材多孔質膜の表面に微かにドット状の痕跡を残して、大部分のポリマーが溶解し、基材多孔質膜全体に拡散した。そこで、このような基材多孔質膜をガラス板の間に挟んだまま、80℃で2時間加熱して、上記ポリエーテル多元共重合体を架橋させ、架橋体として、高分子ゲル電解質を得た。
【0121】
この高分子ゲル電解質の伝導度は、25℃において、7.8×10-4S/cmであった。また、この高分子ゲル電解質は、それ自体で接着性を有し、180°引き剥がし粘着力は1.8N/20mm幅であった。
【0122】
実施例3
参考例2で調製したポリエーテル多元共重合体2.0gと架橋助剤ジエチレングリコールジメタクリレート(日本油脂(株)製ブレンマーPDE−100)0.10gと重合開始剤ベンゾイルパーオキサイド0.020gをメタノール17.9gに溶解させて、塗工液を調製した。
【0123】
実施例1と同じ超高分子量ポリエチレン樹脂からなる基材多孔質膜をガラス板上に固定し、この基材多孔質膜の表面に直径1.0mmのドットを格子点を形成するように2mm間隔で上記塗工液を塗布した後、80℃で1分間加熱して、上記メタノールを除去して、基材多孔質膜にポリエーテル多元共重合体を担持させた。このようにして担持させたポリエーテル多元共重合体の基材多孔質膜の表面に占める割合は39%であった。
【0124】
このようにポリエーテル多元共重合体を担持させた基材多孔質膜を3日間、室温で大気下に放置した後、過塩素酸リチウムを1モル/L濃度でエチルメチルカーボネート/エチルカーボネート混合物に溶解させてなる電解液を塗布し、ガラス板を被せて、室温で3時間放置したところ、上記ポリエーテル多元共重合体は、基材多孔質膜の表面に微かにドット状の痕跡を残して、大部分のポリマーが溶解し、基材多孔質膜全体に拡散した。そこで、このような基材多孔質膜をガラス板の間に挟んだまま、80℃で2時間加熱して、上記ポリエーテル多元共重合体を架橋させ、架橋体として、高分子ゲル電解質を得た。
【0125】
この高分子ゲル電解質の伝導度は、25℃において、8.4×10-4S/cmであった。また、この高分子ゲル電解質は、それ自体で接着性を有し、180°引き剥がし粘着力は1.9N/20mm幅であった。
【0126】
比較例1
参考例1で調製したポリエーテル多元共重合体2.0gと架橋助剤ジエチレングリコールジメタクリレート(日本油脂(株)製ブレンマーPDE−100)0.10gと重合開始剤ベンゾイルパーオキサイド0.020gをアセトニトリル17.9gに溶解させて、塗工液を調製した。
【0127】
実施例1と同じ超高分子量ポリエチレン樹脂からなる基材多孔質膜をガラス板上に固定し、この基材多孔質膜の表面に直径1.0mmのドットを格子点を形成するように2mm間隔で上記塗工液を塗布した後、80℃で1分間加熱して、上記アセトニトリルを除去して、基材多孔質膜にポリエーテル多元共重合体を担持させた。このようにして担持させたポリエーテル多元共重合体の基材多孔質膜の表面に占める割合は39%であった。
【0128】
このように、基材多孔質膜にポリエーテル多元共重合体を担持させた後、直ちに真空乾燥機を用いて、80℃で4時間、減圧下に加熱して、ポリエーテル多元共重合体を架橋させた。この後、過塩素酸リチウムを1モル/L濃度でエチルメチルカーボネート/エチルカーボネート混合物に溶解させてなる電解液を塗布し、ガラス板を被せて、室温で3時間放置したが、上記ポリエーテル多元共重合体は、基材多孔質膜の表面にほぼドット状のまま、溶解せずに残っていた。従って、基材多孔質膜上のポリエーテル多元共重合体の架橋体は電解液から分離しており、目的とする高分子ゲル電解質を得ることができなかった。
【0129】
【発明の効果】
以上のように、本発明によれば、特に選択したポリマーを基材多孔質膜にその表面積の10〜90%を占めるように担持させた後、電解質塩を有機溶媒に溶解させてなる電解液にて上記ポリマーを溶解させて、基材多孔質膜中に拡散させ、次いで、上記ポリマーを架橋させて、上記電解液にて膨潤せしめられた架橋体を形成させることによって、すぐれたイオン伝導性と強度を兼ね備えた高性能の高分子ゲル電解質を得ることができる。また、このようにして得られる高分子ゲル電解質は、それ自体で接着性を有する。
【0130】
特に、本発明によれば、上記ポリマーとして、分子中に架橋性反応性基を有するポリエーテル多元共重合体を用い、上記反応性基を利用して、上記ポリエーテル多元共重合体を架橋させ、架橋体とすることによって、このような架橋体をポリマー成分とする高性能の高分子ゲル電解質を得ることができる。
【0131】
更に、本発明の方法は、いわば、その場で高分子ゲル電解質を製造しつつ、電池、キャパシタ等を製造する際に好適に用いることができ、しかも、本発明の方法で得る高分子ゲル電解質は、それ自体で接着性を有するので、上述したようにして、電池等を組み立てるとき、電極間の面圧を均一に高くして、容易に電極間距離を一定に保つことができ、かくして、すぐれた特性を有する電池等を得ることができる。
Claims (1)
- 式(1)で表される繰り返し構造単位1〜98モル%と式(2)で表される繰り返し構造単位1〜98モル%と共に、式(3)で表される架橋用繰り返し構造単位1〜20モル%とからなり、重量平均分子量が104 〜107 の範囲内にあるポリエーテル多元共重合体を基材多孔質膜にその表面積の10〜90%を占めるように担持させた後、電解質塩を有機溶媒に溶解させてなる電解液にて上記ポリエーテル多元共重合体を溶解させて、基材多孔質膜中に拡散させ、次いで、上記ポリエーテル多元共重合体を架橋させて、上記電解液によって膨潤せしめられた架橋体を形成させることを特徴とする接着性高分子ゲル電解質の製造方法。
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