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JP5094834B2 - 銅箔の製造方法、銅箔及び銅張積層板 - Google Patents

銅箔の製造方法、銅箔及び銅張積層板 Download PDF

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Description

本発明は、例えばフレキシブル配線板(FPC:Flexible Printed Circuit)に使用される銅箔の製造方法、銅箔及び銅張積層板に関する。
デジタルカメラや携帯電話などの電子機器を駆動させる回路として、フレキシブル配線板(FPC:Flexible Printed Circuit)やCOF(chip of flexible circuit)が用いられている。このFPCやCOFは、樹脂層の片面又は両面に銅箔を積層した銅張積層板(CCL)を用い、銅箔に回路パターンを形成してなる。
そして、このような電子機器を小型化、高機能化するために、ケース内の狭い空間にFPCを折りたたんで収容する方法がとられる。また液晶ディスプレイ周辺に用いられるCOFの場合には、ベゼル(いわゆる「額縁」)を細くするために、COFの銅配線を液晶基板の裏側へ折り返している。
しかしながら、FPCやCOFを折り畳んだ際、銅箔部分に大きな変形荷重が加わり、破断し易くなるという問題がある。
そこで、柱状の銅結晶粒子を含み、25℃における伸び率5%以上の電解銅箔からFPCを構成することで、配線パターンが破断し難いFPCが得られることが報告されている(特許文献1)。
特開2007-335541号公報
従来、CCLの銅箔の曲げ性は銅箔の伸びと相関があると考えられており、そのため上記特許文献1に記載されているように、伸びの大きい電解銅箔が用いられている。
ところが、伸びの大きい圧延銅箔を用いても、CCLの曲げ性が向上しない場合があることを本発明者らは見出した。
すなわち、本発明は上記の課題を解決するためになされたものであり、銅張積層板に用いたときに曲げ性に優れた銅箔の製造方法、銅箔及び銅張積層板の提供を目的とする。
本発明者らは種々検討した結果、CCLの曲げ性を向上させる因子として、銅箔の伸びではなく加工硬化指数(n値)が重要であることを見出した
本発明の銅箔の製造方法は、インゴットを熱間圧延後に冷間圧延と焼鈍を繰り返し、最終冷間圧延時の総加工度を85%以上とし、かつ前記最終冷間圧延における最終3パスでの油膜当量を以下の条件として圧延する厚み5〜30μmの銅箔の製造方法であって、前記銅箔は、無酸素銅若しくはタフピッチ銅からなり、又は無酸素銅若しくはタフピッチ銅にAg及びSnの群からなる1種以上を合計500質量ppm以下含む。但し、最終パスの2つ前の油膜当量;25000以下、最終パスの1つ前の油膜当量;30000以下、最終パスの油膜当量; 35000以下とする。ここで、インゴットを熱間圧延後、冷間圧延を経て銅箔を製造する際、冷間圧延において冷間圧延と焼鈍とを交互に行う。そして、最後の焼鈍後に最後に行う冷間圧延を「最終冷間圧延」とする。
本発明の銅箔は、厚み5〜30μm、圧延平行方向の表面粗さRa≦0.1μmで、かつ350℃で0.5時間焼鈍後の加工硬化指数が0.3以上0.45以下であって、無酸素銅若しくはタフピッチ銅からなり、又は無酸素銅若しくはタフピッチ銅にAg及びSnの群からなる1種以上を合計500質量ppm以下含む。
又、本発明の銅箔は、厚み5〜30μm、かつ350℃で0.5時間焼鈍後のI(220)/I(200)が0.11以下で、圧延平行方向の表面粗さRa≦0.1μmで、かつ350℃で0.5時間焼鈍後の加工硬化指数が0.3以上0.45以下であって、無酸素銅若しくはタフピッチ銅からなり、又は無酸素銅若しくはタフピッチ銅にAg及びSnの群からなる1種以上を合計500質量ppm以下含む。
本発明の銅箔において、半軟化温度が150℃以下であることが好ましい。
又、本発明の銅箔において、前記銅箔の片面に樹脂層を積層した合計厚みが50μm以下で、幅3mm以上5mm以下の試料を用い、前記銅箔の露出面を外側として180度密着曲げを行った場合に、前記銅箔が破断するまでの曲げ回数が4回以上であることが好ましい。
本発明の銅張積層板、前記銅箔を、樹脂層の少なくとも片面に積層してなる。


本発明によれば、銅張積層板に用いたときに曲げ性に優れた銅箔が得られる。
IPC摺動屈曲装置による摺動屈曲の方法を示す図である。
以下、本発明の実施形態に係る銅箔について説明する。なお、本発明において%とは、特に断らない限り、質量%を示すものとする。
本発明の実施形態に係る銅箔は、厚み5〜30μm、圧延平行方向の表面粗さRa≦0.1μmで、かつ350℃で0.5時間焼鈍後の加工硬化指数が0.3以上0.45以下である。
加工硬化指数(n値)は、降伏点以上の塑性変形域における応力とひずみとの関係を、以下の式1(Hollomonの式)で近似した場合の指数nで表される。
[真応力]=[材料定数]×[真ひずみ]n (1)
加工硬化指数が大きいほど局所変形が起こりにくく、変形を行ったときに破断しにくい。又、加工硬化指数が高い材料は絞り加工性に優れ、プレス加工に適する。そして、銅箔を、樹脂層の少なくとも片面に積層して銅張積層板を製造し、この銅張積層板の曲げ性を評価した場合に、加工硬化指数が0.3以上の銅箔は局所変形が起こりにくく、曲げ部全体で変形を担うので、銅箔が破断しにくいと考えられる。但し、加工硬化指数が0.45を超える材料は、焼鈍後の強度が低く取り扱い性が悪化するため、銅張積層板用として適当でない。
ここで、350℃で0.5時間焼鈍後の加工硬化指数を規定した理由は、銅張積層板を製造する際の加熱条件がこの程度であるためである。なお、銅張積層板の樹脂層が樹脂組成物を銅箔に塗布、硬化して得られる場合(樹脂層と銅箔との間に接着層が介在しない2層CCLの場合)、上記加熱条件で樹脂の硬化を行うことになる。
なお、銅箔の曲げ性を向上させる因子として、銅箔の伸びではなく加工硬化指数(n値)が重要である理由は以下のとおりと考えられる。
まず、加工硬化指数は、材料の加工硬化挙動を示す値のひとつであり、この値が大きいほど、材料は加工硬化しやすい性質を持つ。ここで、材料は引張変形を受けると、局部的にくびれを起こして破断するが、加工硬化係数が大きい材料では、くびれを起こした部分が加工硬化し、くびれ部が変形しにくくなる。そのため、変形しにくいくびれ部に代わって、それ以外の部分が変形しはじめる。これを繰り返すことで、材料全体が均等に変形する。一方、伸びはそのような状況を考慮せずにマクロ的に捕らえた指標なので、伸びが大きいものでも加工硬化指数が大きいとは限らない。
従来、このような材料全体の均等な変形のしやすさの指標として、厚みのある材料の絞り加工において、加工硬化指数が用いられる例はあるものの、銅箔のように薄い材料は絞り加工などの加工を行わないので、加工硬化指数を指標とすることはこれまでなかった。そこで、本発明においては、銅箔の加工硬化指数を大きくすれば、CCLの180度密着曲げにおいても、曲げ部全体が均等に変形することによって破断を起こさずに曲がると考えた。
さらに、200℃で0.5時間焼鈍後の加工硬化指数も0.3以上0.45以下であることが好ましい。これは、樹脂層としてフィルムを用い、フィルムと銅箔とを接着層を介して積層した3層CCLの製造時のラミネート温度が200℃程度であるからである。加工硬化指数は加熱によって銅箔が再結晶することによって大きくなるため、350℃より低温の200℃で加工硬化指数が0.3以上であれば、350℃でも0.3以上の加工硬化指数が得られる。また、上記焼鈍で充分に再結晶組織を得るためには、銅箔の半軟化温度は150℃以下であることが好ましい。
350℃で0.5時間焼鈍後の銅箔の加工硬化指数を0.3以上に管理する方法としては、最終冷間圧延時の総加工度を85%以上とすることが挙げられる。また再結晶組織を得る必要があることから、銅箔の半軟化温度を150℃以下に管理することが好ましい。一般に再結晶温度は、銅箔の組成と加工度によって決まるが、加工硬化指数を0.3以上とするためには、何れの手段によってもかまわない。
最終冷間圧延時の総加工度が85%未満であると、加工度が低くなって銅箔の軟化温度が高くなるため、CCL製造時の加熱による銅の再結晶が不十分になり、加工歪みが残って曲げ性が低下する傾向にある。
銅箔を銅張積層板に用いたときの曲げ性を向上させるためには、上記加工硬化指数に加え、表面粗さの影響を考慮する必要がある。ここで、加工硬化指数の大きさについては、「材料があとどれだけ加工硬化できるか」が重要な要素となる。そのため加工硬化指数を大きな値とするためには、初期段階では材料が加工硬化していない状態、つまり加工ひずみが除かれた状態であることが必要となる。CCL用銅箔においては、CCL製造工程の熱処理で銅箔が再結晶していることが必要となる。
そして、CCL製造工程の熱処理条件は樹脂の性質に依存するため、銅箔の再結晶温度を熱処理条件にあわせる必要がある。銅箔の再結晶温度は組成と加工度によって影響を受け、添加元素を多量に含む組成では軟化温度が高くなり過ぎる。また銅箔の組成が適正であっても、加工度が高過ぎれば常温軟化を招き、加工度が低過ぎれば軟化温度が高くなり過ぎる。
このような要因に加え、表面粗さは、加工硬化指数とは別の要因で曲げ性に影響する。表面粗さが大きく、銅箔の材料表面に切り欠き状の凹凸があると、曲げを行った際に切り欠き先端に応力が集中し、破断の原因となる。
このようなことから、本発明の実施形態に係る銅箔は、圧延平行方向の表面粗さRaが0.1μm以下である。この理由は、表面粗さRaが0.1μmを超えると、銅箔を曲げたときに、表面の凹凸が起点となって割れ(破断)が進行し易くなるためである。圧延によって銅箔表面に形成されるオイルピットと呼ばれるくぼみは、圧延直角方向に伸びた溝状に形成されることから、表面粗さは圧延平行方向で測定する。Raは、JIS-B0601に準拠して測定した算術平均粗さである。
銅箔の圧延平行方向の表面粗さRaを0.1μm以下に調整する方法として、最終冷間圧延における最終3パスにおける油膜当量を調整することが挙げられる。具体的には、最終冷間圧延における最終パスの2つ前の油膜当量;25000以下、最終パスの1つ前の油膜当量;30000以下、最終パスの油膜当量; 35000以下とする。
なお、材料厚みが薄くなると油膜当量は大きくなる傾向にあるため、最終3パスにおける油膜当量の値は、徐々に大きくなる。そこで、それぞれ厚みの異なる最終3パスについて、適正な油膜当量を設定する必要がある。
最終冷間圧延において圧延油粘度と材料降伏応力が全パスで等しいとすると、油膜当量は、(圧延速度)/(噛み込み角)に比例する。材料厚みが薄くなると噛み込み角は小さくなるために、最終パスに近づくほど油膜当量は大きくなる傾向にある。また生産性を保つためには、材料長さの長い最終パスに近づくほど圧延速度を上げる必要があり、これによっても最終パスに近づくほど油膜当量は大きくなる傾向にある。
そして、最終冷間圧延における中間パスでの材料表面粗さが粗いと、最終パスで油膜当量を低く抑えても材料表面を充分に平滑にすることができない。このようなことから、最終冷間圧延における最終3パスにおける油膜当量を管理している。
一方、最終冷間圧延における最終3パスにおいて、最終パスの2つ前の油膜当量;25000以下、最終パスの1つ前の油膜当量;30000以下、最終パスの油膜当量; 35000以下をすべて満たさないと(最終3パスのいずれかのパスで油膜当量が上記値を超えると)、銅箔の表面が粗くなり、圧延平行方向の表面粗さRaが0.1μmを超えて以下の不具合が生じる。
油膜当量を低減するために、最終パスの圧延加工度を25%以上にするのが良い。
なお、上記油膜当量は下記式で表される。(油膜当量)={(圧延油粘度、40℃の動粘度;cSt)×(圧延速度;m/分)}/{(材料の降伏応力;kg/mm2)×(ロール噛込角;rad)}
圧延油粘度は4.0〜8.0cSt程度、圧延速度200〜600m/分、ロールの噛込角は例えば0.0005〜0.005rad、好ましくは0.001〜0.04radとすることができる。
本発明の実施形態に係る銅箔において、銅箔を350℃×0.5時間で大気焼鈍した後,圧延面のX線回折を行ったとき、それぞれ(220)面及び(200)面の強度の積分値(I)の比I(220)/I(200)が0.11以下であると好ましい。この場合、銅箔中の(220)面の割合が多くなり、350℃×0.5時間の焼鈍で銅箔の再結晶が進行し、加工ひずみが減少して曲げ性が向上すると考えられる。
さらに、本発明の実施形態に係る銅箔の片面に樹脂層を積層した合計厚みが50μm以下で、幅3mm以上5mm以下の試料を用い、銅箔の露出面を外側として180度密着曲げを行った場合に、銅箔が破断するまでの曲げ回数が4回以上であることが好ましい。
銅箔の片面に樹脂層を積層した合計厚みが50μm以下の試料は、銅張積層板を模したものであり、その180度密着曲げの曲げ回数は、銅張積層板の曲げ性を評価したことになる。
樹脂層としては、ポリイミド;PET(ポリエチレンテレフタレート);エポキシ樹脂、フェノール樹脂等の熱硬化性樹脂;飽和ポリエステル樹脂等の熱可塑性樹脂を用いることができるがこれらに限定されない。又、これら樹脂層の成分を溶剤に溶かしたワニス(例えば、ポリイミドの前駆体のポリアミック酸溶液)を銅箔の片面に塗布し、加熱することで溶媒を除去して反応(例えばイミド化反応)を進行させ、硬化させてもよい。
180度密着曲げは、折り目が自身の幅方向に平行になるように試料を折り返し、ハンドプレスで潰して重ねて行う。そして、曲げ部の断面の銅箔部分の破断の有無を光学顕微鏡で観察する。破断がなければ、密着曲げ後の試料を開き、ハンドプレスを用いて平らに伸ばした後に、同じ場所でもう一度折り返してハンドプレスで潰す。このようにして、銅箔が破断するまでの曲げ回数を求める。
本発明の実施形態に係る銅箔の組成は、無酸素銅若しくはタフピッチ銅(いずれもJIS-H3100に規定)からなることが好ましい。又、上記無酸素銅若しくはタフピッチ銅にAg及びSnの群からなる1種以上を合計500質量ppm以下含むものであってもよい。本発明の実施形態に係る銅箔において、Ag及びSnの群からなる1種以上を合計500質量ppmを超えて添加すると、再結晶温度が過度に高くなり、CCL製造工程の熱処理での再結晶が不十分となる場合がある。
本発明の銅張積層板は、上記した銅箔を、上記樹脂層の少なくとも片面に積層してなる。本発明の実施形態に係る銅箔は、曲げ性に優れるため、これを用いた銅張積層板も曲げ性に優れる。例えば、本発明の銅張積層板は、半径5mm以下で90〜180度折り曲げる用途に好適に使用できる。
無酸素銅またはタフピッチ銅(JIS H3100)を溶解し、必要に応じてAg、Snを表1に示す量添加して鋳造し、インゴットを作製した。インゴットを熱間圧延後に冷間圧延と焼鈍を適宜繰り返して銅箔を作製した。軟化温度を調整するため、最終冷間圧延時の総加工度を85%以上とし、かつ表面粗さを低減するために、表面が平滑(ロール軸方向でRa≦0.1μm)なロールを用いて最終冷間圧延し、銅箔を製造した。圧延油粘度を4.0〜8.0cSt程度とし、圧延速度200〜600m/分、ロールの噛込角0.003〜0.03radの範囲で調整し、最終冷間圧延における最終3パスでの油膜当量をいずれも35000以下となるようにした。
<加工硬化指数>
得られた銅箔を、それぞれ200℃×0.5時間、及び350℃×0.5時間で大気焼鈍した後に引張試験(JIS-Z2241に準拠)を行い、加工硬化指数を求めた。なお、加工硬化指数は、材料が降伏した後の均一伸びと応力とを用いて求める必要があるため、伸び2%から最大応力点までの値を用いた。そして、測定した伸び及び応力から求めた真ひずみと、真応力との両対数グラフを最小自乗法で近似し、グラフの傾きから加工硬化指数を求めた。真ひずみと真応力は以下の式で求めた。
[真ひずみ]=ln(1+[ひずみ])
[真応力]=(1+[真ひずみ])×[応力]
<半軟化温度>
得られた銅箔を、それぞれ100〜400℃×0.5時間で大気焼鈍した後に引張試験を行い、熱処理条件に対する強度(引張り強さ)を求めた。焼鈍後の強度TShが、圧延上がり(焼鈍前)の強度TSasrollと、完全に軟化した状態の強度TSannealとの平均値となる焼鈍温度を、半軟化温度とした。
<銅張積層板の折曲回数>
次に、得られた銅箔の片面に、キャスト法で厚み約20μmのポリイミド層を製膜し、片面CCLを作製した。具体的には、得られた銅箔の片面を化学処理(めっき)し、この面にポリイミド樹脂の前駆体ワニス(宇部興産製U−ワニスA)を厚さ20μmになるように塗布した。この後、130℃に設定した熱風循環式高温槽で30分乾燥し、段階的に350℃まで2000秒かけて昇温して硬化(イミド化)して樹脂層(ポリイミド層)を形成し、片面CCLを作製した。
180度密着曲げは以下の手順で行った。まず、この片面CCLを幅3.2mm、長さ30mmで試験片の長さ方向が圧延方向と平行になるように切り出して試験片とし、樹脂層面を内側にしてループ状にし、ハンドプレスで潰して180度密着曲げを行った。そして、曲げ部の断面の銅箔部分の破断の有無を光学顕微鏡で観察した。破断がなければ、密着曲げ後の試料を開き、ハンドプレスを用いて平らに伸ばした後に、同じ場所でもう一度折り返してハンドプレスで潰した。このようにして、銅箔が破断するまでの曲げ回数を求めた。
<銅箔の摺動屈曲回数>
次に、得られた銅箔を、幅12.7 mm,長さ200 mmで試験片の長さ方向が圧延方向と平行になるように切り出して試験片とし、200℃で30分間加熱して再結晶させた。このものを、図1に示すIPC(アメリカプリント回路工業会)摺動屈曲装置により,IPC摺動屈曲回数の測定を行った。この装置は,発振駆動体4に振動伝達部材3を結合した構造になっており,試験片1は,矢印で示したねじ2の部分と3の先端部の計4点で装置に固定される。振動部3が上下に駆動すると,試験片1の中間部は,所定の曲率半径rでヘアピン状に屈曲される。本試験では,以下の条件下で屈曲を繰り返した時の破断までの回数を求めた。
曲率半径r:2.5 mm,振動ストローク:25mm,振動速度:1500回/分の条件で試験を行った。
<I(220)/I(200)>
得られた銅箔を、350℃×0.5時間で大気焼鈍した後,圧延面のX線回折を行い、それぞれ(220)面及び(200)面の回折ピーク強度の積分値(I)を求めた。
得られた結果を表1に示す。なお、表1の組成において、OFC及びTPCは、それぞれ無酸素銅及びタフピッチ銅(JIS H3100)を示し、Ag100ppmTPCは、タフピッチ銅にAgを100質量ppm添加したものを示す。
Figure 0005094834
表1から明らかなように、半軟化温度が150℃以下で、圧延平行方向の表面粗さRa≦0.1μmで、かつ350℃で0.5時間焼鈍後の加工硬化指数が0.3以上である実施例1〜8の場合、180度密着曲げを行ったときの曲げ回数が4回以上であり、曲げ性に優れたものとなった。
一方、最終冷間圧延時の総加工度を85%未満とした比較例3、6、7、8の場合、350℃で0.5時間焼鈍後の加工硬化指数が0.3未満となり、180度密着曲げを行ったときの曲げ回数が4回未満となって曲げ性が劣化した。なお、比較例1の場合、銅箔中のSnの添加量が500質量ppmを超えたために半軟化温度が150℃を超え、加工硬化指数が0.3未満となったものと考えられる。
また半軟化温度が150℃を超えた比較例1、7、8の場合、350℃で0.5時間焼鈍後の加工硬化指数が0.3未満となり、180度密着曲げを行ったときの曲げ回数が4回未満となって曲げ性が劣化した。
最終冷間圧延における最終3パスでの油膜当量として、最終パスの2つ前の油膜当量;25000を超え、最終パスの1つ前の油膜当量;30000を超え、最終パスの油膜当量; 35000を超えた比較例2の場合、圧延平行方向の表面粗さRaが0.1μmを超え、180度密着曲げを行ったときの曲げ回数が4回未満となって曲げ性が劣化した。
最終冷間圧延における最終3パスでの油膜当量のうち、最終パスの1つ前の油膜当量が30000を超えた比較例4の場合、圧延平行方向の表面粗さRaが0.1μmを超え、180度密着曲げを行ったときの曲げ回数が4回未満となって曲げ性が劣化した。
最終冷間圧延における最終3パスでの油膜当量のうち、最終パスの2つ前の油膜当量が25000を超えた比較例5の場合も、圧延平行方向の表面粗さRaが0.1μmを超え、180度密着曲げを行ったときの曲げ回数が4回未満となって曲げ性が劣化した。
なお、比較例1〜8の場合も、従来の屈曲性の評価であるIPC摺動屈曲回数は各実施例と同等であり、摺動屈曲試験では銅張積層板の曲げ性を評価できないことがわかる。

Claims (6)

  1. インゴットを熱間圧延後に冷間圧延と焼鈍を繰り返し、最終冷間圧延時の総加工度を85%以上とし、かつ前記最終冷間圧延における最終3パスでの油膜当量を以下の条件として圧延する厚み5〜30μmの銅箔の製造方法であって、前記銅箔は、無酸素銅若しくはタフピッチ銅からなり、又は無酸素銅若しくはタフピッチ銅にAg及びSnの群からなる1種以上を合計500質量ppm以下含む銅箔の製造方法
    但し、最終パスの2つ前の油膜当量;25000以下、最終パスの1つ前の油膜当量;30000以下、最終パスの油膜当量; 35000以下
  2. 厚み5〜30μm、圧延平行方向の表面粗さRa≦0.1μmで、かつ350℃で0.5時間焼鈍後の加工硬化指数が0.3以上0.45以下であって、無酸素銅若しくはタフピッチ銅からなり、又は無酸素銅若しくはタフピッチ銅にAg及びSnの群からなる1種以上を合計500質量ppm以下含む銅箔。
  3. 厚み5〜30μm、かつ350℃で0.5時間焼鈍後のI(220)/I(200)が0.11以下で、圧延平行方向の表面粗さRa≦0.1μmで、かつ350℃で0.5時間焼鈍後の加工硬化指数が0.3以上0.45以下であって、無酸素銅若しくはタフピッチ銅からなり、又は無酸素銅若しくはタフピッチ銅にAg及びSnの群からなる1種以上を合計500質量ppm以下含む銅箔。
  4. 半軟化温度が150℃以下である請求項2又は3に記載の銅箔。
  5. 前記銅箔の片面に樹脂層を積層した合計厚みが50μm以下で、幅3mm以上5mm以下の試料を用い、前記銅箔の露出面を外側として180度密着曲げを行った場合に、前記銅箔が破断するまでの曲げ回数が4回以上である請求項2〜4のいずれかに記載の銅箔。
  6. 請求項2〜5のいずれかに記載の銅箔を、樹脂層の少なくとも片面に積層してなる銅張積層板。
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