JP4810744B2 - 難燃性樹脂組成物および成形品 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、カルボキシル末端基量が40eq/ton以下のポリアルキレンテレフタレート樹脂に非ハロゲン系難燃剤を配合した難燃性樹脂組成物および成形品に関する。更に詳しくは、高度な難燃性、機械特性、射出成形時の流動性、優れた成形品色調および耐加水分解性を有し、械機構部品、電気電子部品または自動車部品に好適な難燃性樹脂組成物および成形品に関する。
【0002】
【従来の技術】
ポリアルキレンテレフタレート樹脂は、その優れた射出成形性や機械物性などの諸特性を生かし、機械機構部品、電気・電子部品、自動車部品などの幅広い分野に利用されている。
【0003】
また、ポリアルキレンテレフタレート樹脂に繊維強化材を複合することによつて、さらに機械物性や耐熱性に優れる材料として広く用いられている。その繊維強化材の中ではとくにガラス繊維が多く使用されている。
【0004】
ポリアルキレンテレフタレート樹脂は本質的に可燃性であるため、上記の機械機構部品、電気・電子部品、自動車部品などの工業用材料として使用するには一般の化学的、物理的諸特性のバランス以外に火炎に対する安全性、すなわち難燃性が要求され、UL−94規格のV−0を示す高度な難燃性が必要とされる場合が多い。
【0005】
また、高度な難燃性と共に、顔料や染料により種々の色調が可能な成形品が望まれている。
【0006】
PBTに難燃性を付与する方法としては、難燃剤としてハロゲン系有機化合物、さらに難燃助剤としてアンチモン化合物を樹脂にコンパウンドする方法が一般的である。しかしながら、この方法には、燃焼の際の発煙量が多い傾向があった。
【0007】
また、環境意識の高まりから、ハロゲン形難燃材料の環境に及ぼす影響を懸念する動きがある。
【0008】
そこで、近年これらハロゲンを全く含まない難燃剤を用いることが強く望まれるようになった。
【0009】
これまで、ハロゲン系難燃剤を使わずに熱可塑性樹脂を難燃化する方法としては、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウムなどの水和金属化合物を添加することが広く知られているが、充分な難燃性を得るためには、上記水和金属化合物を多量に添加する必要があり、樹脂本来の特性が失われるという欠点を有していた。
【0010】
一方、このような水和金属化合物を使わずに熱可塑性樹脂を難燃化する方法として赤リンを添加することが、特開昭51−150553号公報、特開昭58−108248号公報、特開昭59−81351号公報、特開平5−78560号公報、特開平5−287119号公報、特開平5−295164号公報、特開平5−320486号公報、特開平5−339417号公報等に開示されている。
【0011】
しかしながら、ハロゲン系難燃剤を用いない有用な難燃性樹脂材料ではあるが、特有の着色があり、製品の色調が制限されることから用途が制限される課題を有していた。
【0012】
また、特開平3−281652号公報、特開平5−70671号公報、特開平7−233311号公報、特開平8−73713号公報には、芳香族燐酸エステルとメラミンシアヌレートを配合することが開示されている。
【0013】
しかしながら、ハロゲン系難燃剤を用いない有用な難燃性樹脂材料ではあるが、芳香族燐酸エステルが成形品表面にしみでるブリードアウトが生じ製品価値を大きく損なう問題点を有していた。
【0014】
また、特開平10−147699号公報、特開平10−182955号公報、特開平10−182956号公報、特開平2000−26710号公報には、PBT、ポリフェニレンエーテル、および燐酸エステル等を配合する組成物に対し、スチレン系樹脂を配合することが開示されている。
【0015】
しかしながら、ハロゲン系難燃剤を用いない有用な難燃性樹脂材料ではあるが、ポリフェニレンエーテルを配合することにより機械強度の低下、射出成形時の流動性低下、成形品が黄色に着色することおよび金属腐食性に劣り用途が制限されるなどの問題点を有していた。
【0016】
また、特開平2000−212412号公報には、ポリエステル樹脂、有機リン系難燃剤、ガラス繊維、およびビニル系樹脂を配合することが開示されている。
【0017】
しかしながら、ハロゲン系難燃剤を用いない有用な難燃性樹脂材料ではあるが、難燃効果が極めて低いことと、耐加水分解性劣るという問題点を有していた。また、メラミンシアヌレートなどの難燃助剤を併用配合することによって、難燃性は向上するものの、耐加水分解性は改善されることなく、高温高湿下での長期使用に問題点を有していた。
【0018】
【発明が解決しようとする課題】
すなわち本発明は、ポリアルキレンテレフタレート樹脂に非ハロゲン系難燃剤を配合し、難燃性と機械特性、射出成形時の流動性、および成形品色調に優れ、さらにブリードアウトが生じ難く、かつ耐加水分解性に優れる難燃性樹脂組成物および成形品を得ることを課題とする。
【0019】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは以上の状況を鑑み、鋭意検討を重ねた結果、カルボキシル末端基量が40eq/ton以下のポリアルキレンテレフタレート樹脂に、特定量のスチレン系樹脂、芳香族燐酸エステル、トリアジン系化合物とシアヌール酸またはイソシアヌール酸との塩および繊維強化材を配合することで高度に優れた難燃性を保持しつつ、特異的に機械特性と射出成形時の流動性、および成形品色調に優れ、さらにブリードアウトが生じ難く、かつ耐加水分解性に優れた樹脂成形品が得られることを見いだし、本発明に到達した。
【0020】
すなわち本発明は、(A)カルボキシル末端基量が40eq/ton以下のポリアルキレンテレフタレート樹脂100重量部に対して、アクリロニトリル、スチレンおよびグリシジルメタクリレートを共重合してなる共重合体を含む(B)スチレン系樹脂1〜100重量部、(C)燐酸エステル1〜100重量部、(D)トリアジン系化合物とシアヌール酸またはイソシアヌール酸との塩1〜150重量部、および(E)繊維補強材0〜250重量部を配合してなる難燃性樹脂組成物、
および
上記難燃性樹脂組成物からなる機械機構部品、電気電子部品または自動車部品用成形品を提供するものである。
【0021】
【発明の実施の形態】
以下に本発明の難燃性樹脂組成物および成形品について具体的に説明する。本発明における(A)ポリアルキレンテレフタレート樹脂とは、ポリアルキレンテレフタレート、アルキレンテレフタレートのコポリエステル、ポリアルキレンテレフタレートの混合物などが挙げられる。
【0022】
上記のポリアルキレンテレフタレートとしては、ジオール成分とテレフタル酸成分を用いて得られる重合体が挙げられ、ジオール成分としては、エチレングリコール、1,4ブタンジオール、プロピレングリコール、トリメチレングリコール、テトラメチレングリコール、ヘキサメチレングリコール、ネオペンチルグリコール、ジエチレングリコール、ポリエチレングリコール、シクロヘキサンジメタノール、2,2ービス(2′ーヒドロキシエトキシフェニル)プロパンなどおよびエステル形成能を持つそれらの誘導体が挙げられ、1,4ブタンジオール、エステル形成能を有するその誘導体、エチレングリコールまたはエステル形成能を有するその誘導体とテレフタル酸またはエステル形成能を有するその誘導体、を重縮合して得られるポリブチレンテレフタレートおよびポリエチレンテレフタレートが好ましく用いられる。
【0023】
また、本発明においてはポリアルキレンテレフタレート樹脂のカルボキシル末端基量が、1〜40eq/ton(ポリマー1トン当りの末端基量)の範囲にあるものが耐久性、異方性抑制効果の点から使用される。かかるカルボキシル末端基量はm−クレゾール溶液をアルカリ溶液で電位差滴定して求めたものである。さらには、カルボキシル末端基量が1〜30eq/tonが好ましく、より好ましくは1〜20eq/ton、最も好ましくは1〜10eq/tonの範囲のポリアルキレンテレフタレート樹脂が耐加水分解性に優れるため好ましく使用できる。なお、かかるカルボキシル末端基量を有するポリアルキレンテレフタレートとしては公知のものを用いることができる。
【0024】
ポリブチレンテレフタレートは、テレフタル酸あるいはそのエステル形成性誘導体と1,4−ブタンジオールあるいはそのエステル形成性誘導体との重縮合反応によって得られる重合体であるが、この他に酸成分として、イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、アジピン酸、セバシン酸、ドデカンジ酸、シュウ酸などを、グリコール成分として、エチレングリコール、プロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、デカメチレングリコール、シクロヘキサンジメタノール、シクロヘキサンジオールなど、あるいは分子量400〜6000の長鎖グリコール、すなわちポリエチレングリコール、ポリ−1,3−プロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコールなどを20モル%以下共重合することもできる。これら重合体あるいは共重合体の好ましい例としては、ポリブチレンテレフタレート、ポリブチレン(テレフタレート/イソフタレート)、ポリブチレン(テレフタレート/アジペート)、ポリブチレン(テレフタレート/セバケート)、ポリブチレン(テレフタレート/デカンジカルボキシレート)、ポリブチレン(テレフタレート/ナフタレート)などが挙げられ、単独で用いても2種以上混合して用いても良い。なお、ここで「/」は、共重合を意味する。
【0025】
また、重合体あるいは共重合体は、O−クロロフェノール溶媒を用いて25℃で測定した固有粘度が0.36〜1.60、特に0.42〜1.25の範囲にあるものが得られる組成物の衝撃強度、成形性の点から好適である。また、ポリブチレンテレフタレートは固有粘度の異なるポリブチレンテレフタレートを併用しても良い。かかる固有粘度の異なるポリブチレンテレフタレートとしては固有粘度が0.36〜1.60の範囲にあるポリブチレンテレフタレートを用いることが好ましい。
【0026】
また、上記のポリエチレンテレフタレートとしては、テレフタル酸を酸成分に、エチレングリコールをグリコール成分に用いて重縮合した重合体を指すが、この他に酸成分として、イソフタル酸、アジピン酸、シュウ酸などを、グリコール成分として、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、デカメチレングリコール、シクロヘキサンジメタノール、シクロヘキサンジオールなど、あるいは分子量400〜6000の長鎖グリコール、すなわちポリエチレングリコール、ポリ−1,3−プロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコールなどを20モル%以下共重合することもできる。また、ポリエチレンテレフタレートは、O−クロロフェノール溶媒を用いて25℃で測定した固有粘度が0.36〜1.60、特に0.45〜1.15の範囲にあるポリエチレンテレフタレートを用いることが得られる組成物の衝撃強度、成形性の点から好適である。また、ポリエチレンテレフタレートの固有粘度の異なるポリエチレンテレフタレートを併用しても良く、かかる固有粘度の異なるポリエチレンテレフタレートとしては固有粘度が0.36〜2.30の範囲にあることが好ましい。
【0027】
また、上記のポリブチレンテレフタレートおよびポリエチレンテレフタレートは併用して用いても良く、混合割合は、ポリブチレンテレフタレート1〜99重量%、ポリエチレンテレフタレート99〜1重量%である。
【0028】
また、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレートおよびポリブチレンテレフタレートとポリエチレンテレフタレートの混合物に対し、ポリシクロヘキサンジメチレンテレフタレート樹脂、ポリエステルエラストマー、ポリアリレート樹脂、全芳香族液晶ポリエステル、半芳香族液晶ポリエステルおよびなどのポリアルキレンテレフタレートを1種以上配合してもよく、配合量は本発明の効果を損なわない範囲の量である。また、上記のポリブチレンテレフタレートおよびポリエチレンテレフタレート以外のポリアルキレンテレフタレートを単独あるいは1種以上のポリアルキレンテレフタレート樹脂組成物も本発明に含まれる。
【0029】
また、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレート、あるいはポリブチレンテレフタレートとポリエチレンテレフタレートを使用する場合、ポリシクロヘキサンジメチレンテレフタレート樹脂などの他のポリアルキレンテレフタレートを1種以上配合してもよい。また、ポリエステルエラストマー、ポリアリレート樹脂、全芳香族液晶ポリエステルおよび、半芳香族液晶ポリエステルなどを1種以上配合してもよく、配合量は本発明の効果を損なわない範囲の量である。
【0030】
また、上記のポリブチレンテレフタレートおよびポリエチレンテレフタレート以外のポリアルキレンテレフタレートを単独あるいは2種以上を使用してもよいことはいうまでもない。
【0031】
本発明における(B)スチレン系樹脂とは、スチレンを必須成分として(共)重合せしめた樹脂であり、限定されるものではないが、スチレンの単独重合体およびスチレンを必須とし、その他の芳香族ビニル化合物、シアン化ビニル化合物、(メタ)アクリル酸アルキルエステル、およびマレイミド系単量体から選択される一種以上の単量体を重合してなる樹脂、あるいは、ポリブタジエン系ゴムなどのゴム系成分にこれら単量体をグラフト重合したもの、あるいは、共重合したものなどが挙げられる(以下これらを「(共)重合体」と総称することがある)。上記その他の芳香族ビニル化合物としては、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、および、ジビニルベンゼンなどが挙げられ、シアン化ビニル化合物としてはアクリロニトリル、およびメタクリロニトリルなどが挙げられ、(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸nーブチル、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸nーブチル、およびアクリル酸ステアリルなどの(メタ)アクリル酸アルキルエステル等が挙げられ、マレイミド系単量体としては、マレイミド、Nーメチルマレイミド、Nーエチルマレイミド、Nーフェニルマレイミド、Nーシクロヘキシルマレイミド、およびその誘導体などのN−置換マレイミドなどが挙げられる。また、上記のスチレン系樹脂と共重合が可能な下記の成分とのスチレン系樹脂も本発明に含まれる。かかる共重合が可能な成分の具体例としては、ジエン化合物、マレイン酸ジアルキルエステル、アリルアルキルエーテル、不飽和アミノ化合物、およびビニルアルキルエーテルなどが挙げられる。
(B)スチレン系樹脂の好ましい(共)重合体の例としては、ポリスチレン樹脂、アクリロニトリル/スチレン樹脂(AS樹脂)、スチレン/ブタジエン樹脂、スチレン/N−フェニルマレイミド樹脂、スチレン/アクリロニトリル/N−フェニルマレイミド樹脂などのスチレン系(共)重合体、アクリロニトリル/ブタジエン(アクリロニトリル成分またはスチレン成分を含有していても良い)/スチレン樹脂(ABS樹脂)、アクリロニトリル/ブタジエン/メタクリル酸メチル/スチレン樹脂(MABS樹脂)、ハイインパクト−ポリスチレン樹脂等のゴム質重合体で変性されたスチレン系樹脂、およびブロック共重合体としてスチレン/ブタジエン/スチレン樹脂、スチレン/イソプレン/スチレン樹脂、スチレン/エチレン/ブタジエン/スチレン樹脂などが挙げられ、とくに、ポリスチレン樹脂およびアクリロニトリル/スチレン樹脂が好ましく、さらには、アクリロニトリルとスチレンを共重合せしめてなる共重合体であるアクリロニトリル/スチレン樹脂がより好ましい(/は共重合を示す)。かかるアクリロニトリル/スチレン樹脂におけるスチレンとアクリロニトリルの共重合量は特に制限はないが、両者の合計に対してスチレン50〜99重量%、アクリロニトリル50〜1重量%であることが好ましい。
【0032】
また、スチレン系樹脂として、上記の(共)重合体においてさらに不飽和モノカルボン酸類、不飽和ジカルボン酸類、不飽和酸無水物あるいはエポキシ基含有ビニル系単量体をグラフト重合もしくは共重合されたスチレン系共重合体であっても良い。なかでも不飽和酸無水物あるいはエポキシ基含有ビニル系単量体をグラフト重合もしくは共重合されたスチレン系共重合体であることが好ましい。
【0033】
かかるエポキシ基含有ビニル系単量体は、一分子中にラジカル重合可能なビニル基とエポキシ基の両者を共有する化合物であり、具体例としてはアクリル酸グリシジル、メタクリル酸グリシジル、エタクリル酸グリシジル、イタコン酸グリシジルなどの不飽和有機酸のグリシジルエステル類、アリルグリシジルエーテルなどのグリシジルエーテル類および2−メチルグリシジルメタクリレートなどの上記の誘導体類が挙げられ、なかでもアクリル酸グリシジル、メタクリル酸グリシジルが好ましく使用できる。またこれらは単独ないし2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0034】
また、不飽和酸無水物類は、一分子中にラジカル重合可能なビニル基と酸無水物の両者を共有する化合物であり、具体例としては無水マレイン酸等が好ましく挙げられる。
【0035】
そして上記不飽和モノカルボン酸類、不飽和ジカルボン酸類、不飽和酸無水物あるいはエポキシ基含有ビニル系単量体をグラフト重合もしくは共重合したビニル系共重合体を製造する方法としては、通常公知の方法が採用できるが、特にスチレン、もしくはスチレンおよびこれと共重合可能なその他の単量体と、不飽和モノカルボン酸類、不飽和ジカルボン酸類、不飽和酸無水物あるいはエポキシ基含有ビニル系単量体とを共重合する方法、前記(共)重合体に、不飽和モノカルボン酸類、不飽和ジカルボン酸類、不飽和酸無水物あるいはエポキシ基含有ビニル系単量体をグラフト重合する方法が挙げられる。かかる共重合、グラフト重合も公知の方法により行うことができる。
【0036】
不飽和モノカルボン酸類、不飽和ジカルボン酸類、不飽和酸無水物あるいはエポキシ基含有ビニル系単量体をグラフト重合もしくは共重合する際の使用量は、ポリアルキレンテレフタレートとスチレン系樹脂の相溶性を向上させるのに有効であれば特に限定されるものではないが、スチレン系樹脂に対して0.05重量%以上であることが好ましい。多量に共重合すると流動性低下やゲル化の傾向があり、好ましくは20重量%以下、さらに好ましくは10重量%以下、さらに好ましくは5%以下である。
【0037】
また、前述の(共)重合体に過酸化物類、過ギ酸、過酢酸、および過安息香酸などのエポキシ化剤でエポキシ変性したスチレン系(共)重合体であっても良い。
【0038】
またエポキシ化剤を用いるエポキシ基導入法における、スチレン系樹脂へのエポキシ基導入量は、ポリアルキレンテレフタレートとスチレン系樹脂の相溶性を向上させるのに有効であれば特に限定されるものではないが、エポキシ当量が100g/当量以上10000g/当量以下が好ましく、さらに好ましくは200以上5000g/当量以下であり、さらに好ましくは特に 250以上3000g/当量以下である。これらの樹脂のエポキシ当量は特開平6−256417に記載の方法で測定できる。
【0039】
本発明で用いるスチレン系樹脂としては、とくに上記スチレン系樹脂においてエポキシ基含有ビニル系単量体をグラフト重合もしくは共重合されたスチレン系樹脂およびエポキシ化剤でエポキシ変性されたスチレン/ブタジエン/スチレン樹脂、スチレン/イソプレン/スチレン樹脂、スチレン/エチレン/ブタジエン/スチレン樹脂などのブロック共重合体が(A)成分との相溶性が良く好ましく用いられる。さらには、グリシジルメタクリレートをグラフト重合もしくは共重合されたスチレン系樹脂がより好ましく用いられる。なかでもグリシジルメタクリレートを共重合されたものが好ましく、特にスチレン、アクリロニトリルおよびグリシジルメタクリレートを共重合した共重合体が好ましい。かかるスチレン、アクリロニトリルおよびグリシジルメタクリレートを共重合した共重合体におけるグリシジルメタクリレートの好ましい共重合量は、(A)成分との相溶性を向上させるのに有効な量が好ましく、共重合体に対して0.1重量%以上であることが好ましい。多量に共重合すると流動性低下やゲル化の問題があり、好ましくは20重量%以下、さらに好ましくは10重量%以下、さらに好ましくは5重量%以下である。また、スチレンとアクリロニトリルの共重合量は特に制限はないが、スチレンとアクリロニトリルの合計に対してスチレン50〜99重量%、アクリロニトリル50〜1重量%であることが好ましい。
【0040】
また、上記のエポキシ変性スチレン系樹脂の添加量は、得られる難燃性樹脂組成物の成形品外観と難燃性の点から(A)成分100重量部に対して1〜100重量部が好ましく、とくに好ましくは2〜90重量部である。
【0041】
本発明における(C)燐酸エステルとしては、限定されるものではないが、一般に市販されているものや合成したリン酸エステルが使用できる。具体例としては、トリクレジルホスフェート、トリキシレニルホスフェート、クレジルジフェニルホスフェート、トリフェニルホスフェート、トリス・イソプロピルビフェニルホスフェート、トリメチルホスフェート、トリエチルホスフェート、トリブチルホスフェート、トリオクチルホスフェート、トリブトキシエチルホスフェート、オクチルジフェニルホスフェート、オルトフェニルフェノール系燐酸エステル、ペンタエリスリトール系リン酸エステル、ネオペチルグリコール系リン酸エステル、置換ネオペチルグリコールホスホネート、含窒素系リン酸エステル、および下記(1)式の芳香族燐酸エステルなどが挙げられ、とくに下記(1)式の芳香族燐酸エステルが好ましく用いられる。
【0042】
【化5】
【0043】
(上式において、Ar1、Ar2、Ar3、Ar4は、同一または相異なる、ハロゲンを含有しない芳香族基を表す。また、Xは下記の(2)〜(4)式から選択される構造を示し、(2)〜(4)式中、R1〜R8は同一または相異なる水素原子または炭素数1〜5のアルキル基を表し、Yは直接結合、O、S、SO2、C(CH3)2、CH2、CHPhを表し、Phはフェニル基を表す。また、(1)式のnは0以上の整数である。また、(1)式のk、mはそれぞれ0以上2以下の整数であり、かつ(k+m)は0以上2以下の整数である。)なお、かかる芳香族燐酸エステルは、異なるnや、異なる構造を有する芳香族燐酸エステルの混合物であってもよい。
【0044】
【化6】
【0045】
【化7】
【0046】
【化8】
【0047】
前記式(1)の式中nは0以上の整数であり、上限は難燃性の点から40以下が好ましい。好ましくは0〜10、特に好ましくは0〜5である。
【0048】
またk、mは、それぞれ0以上2以下の整数であり、かつk+mは、0以上2以下の整数であるが、好ましくはk、mはそれぞれ0以上1以下の整数、特に好ましくはk、mはそれぞれ1である。
【0049】
また前記式(2)〜(4)の式中、R1〜R8は同一または相異なる水素または炭素数1〜5のアルキル基を表す。ここで炭素数1〜5のアルキル基の具体例としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−イソプロピル、ネオペンチル、tert−ペンチル基、2ーイソプロピル、ネオペンチル、tert−ペンチル基、3−イソプロピル、ネオペンチル、tert−ペンチル基、ネオイソプロピル、ネオペンチル、tert−ペンチル基などが挙げられるが、水素、メチル基、エチル基が好ましく、とりわけ水素が好ましい。
【0050】
またAr1、Ar2、Ar3、Ar4は同一または相異なる、ハロゲンを含有しない芳香族基を表す。かかる芳香族基としては、ベンゼン骨格、ナフタレン骨格、インデン骨格、アントラセン骨格を有する芳香族基が挙げられ、なかでもベンゼン骨格、あるいはナフタレン骨格を有するものが好ましい。これらはハロゲンを含有しない有機残基(好ましくは炭素数1〜8の有機残基)で置換されていてもよく、置換基の数にも特に制限はないが、1〜3個であることが好ましい。具体例としては、フェニル基、トリル基、キシリル基、クメニル基、メシチル基、ナフチル基、インデニル基、アントリル基などの芳香族基が挙げられるが、フェニル基、トリル基、キシリル基、クメニル基、ナフチル基が好ましく、特にフェニル基、トリル基、キシリル基が好ましい。
【0051】
なかでも下記化合物(5)、(6)が好ましく、特に化合物(5)が好ましい。
【0052】
【化9】
【0053】
【化10】
【0054】
市販の燐酸エステルとしては、大八化学社製PX−200、PX−201、PX−130、CR−733S、TPP、CR−741、CR747、TCP、TXP、CDPから選ばれる1種または2種以上が使用することができ、好ましくはPX−200、TPP、CR−733S、CR−741、CR747から選ばれる1種または2種以上、特に好ましくはPX−200、CR−733S、CR−741を使用することができるが、この中で特に好ましくはPX−200である。
【0055】
また、(C)燐酸エステルの配合量は、難燃性と機械特性の点から(A)成分100重量部に対して、1〜100重量部、好ましくは2〜90重量部、より好ましくは3〜80重量部である。
【0056】
本発明における(D)トリアジン系化合物とシアヌール酸またはイソシアヌール酸の塩としては、シアヌール酸またはイソシアヌール酸とトリアジン系化合物との付加物が好ましく、通常は1対1(モル比)、場合により1対2(モル比)の組成を有する付加物である。トリアジン系化合物のうち、シアヌール酸またはイソシアヌール酸と塩を形成しないものは除外される。また、(D)トリアジン系化合物とシアヌール酸またはイソシアヌール酸との塩のうち、とくにメラミン、ベンゾグアナミン、アセトグアナミン、2−アミド−4,6−ジアミノ−1,3,5−トリアジン、モノ(ヒドロキシメチル)メラミン、ジ(ヒドロキシメチル)メラミン、トリ(ヒドロキシメチル)メラミンの塩が好ましく、とりわけメラミン、ベンゾグアナミン、アセトグアナミンの塩が好ましく、公知の方法で製造されるが、例えば、トリアジン系化合物とシアヌール酸またはイソシアヌール酸の混合物を水スラリーとし、良く混合して両者の塩を微粒子状に形成させた後、このスラリーを濾過、乾燥後に一般には粉末状で得られる。また、上記の塩は完全に純粋である必要は無く、多少未反応のトリアジン系化合物ないしシアヌール酸、イソシアヌール酸が残存していても良い。また、樹脂に配合される前の塩の平均粒径は、成形品の難燃性、機械的強度や耐湿熱特性、滞留安定性、表面性の点から100〜0.01μmが好ましく、更に好ましくは80〜1μmである。また、上記の塩の分散性が悪い場合には、トリス(β−ヒドロキシエチル)イソシアヌレートなどの分散剤や公知の表面処理剤などを併用してもかまわない。
【0057】
また、(D)トリアジン系化合物とシアヌール酸またはイソシアヌール酸の塩の配合量は、難燃性と機械特性の点から(A)成分100重量部に対して、1〜150重量部、好ましくは2〜140重量部、更に好ましくは3〜130重量部である。
【0058】
本発明においては、(E)繊維強化材を配合することが可能である。かかる(E)繊維強化材としては、ガラス繊維、アラミド繊維、および炭素繊維などが挙げられる。上記のガラス繊維としては、通常のPBTの強化材に使用されるチョップドストランドタイプやロービングタイプのガラス繊維でありアミノシラン化合物やエポキシシラン化合物などのシランカップリング剤および/またはウレタン、酢酸ビニル、ビスフェノールAジグリシジルエーテル、ノボラック系エポキシ化合物などの一種以上のエポキシ化合物などを含有した集束剤で処理されたガラス繊維が好ましく用いられる。また、上記のシランカップリング剤および/または集束剤はエマルジョン液で使用されていても良い。
【0059】
また、(E)繊維強化材を配合する場合の配合量は難燃性、成形時の流動性の点から(A)成分100重量部に対して、1〜250重量部が好ましく、特に好ましくは2〜230重量部である。
【0060】
また、本発明においてはさらに無機充填剤を配合することができ、本発明組成物の結晶化特性、耐アーク性、異方性、機械強度、難燃性あるいは熱変形温度などの一部を改良するものであり、かかる無機充填剤としては、限定されるものではないが針状、粒状、粉末状および層状の無機充填剤が挙げられ、具体例としては、ガラスビーズ、ミルドファイバー、ガラスフレーク、チタン酸カリウィスカー、硫酸カルシウムウィスカー、ワラステナイト、シリカ、カオリナイト、タルク、スメクタイト系粘土鉱物(モンモリロナイト、ヘクトライト)、バーミキュライト、マイカ、フッ素テニオライト、燐酸ジルコニウム、燐酸チタニウム、燐酸カルシウム、ドロマイト、炭酸バリゥム、および炭酸カルシゥムなどが挙げられ、一種以上で用いられる。また、上記の無機充填剤には、カップリング剤処理、エポキシ化合物、あるいはイオン化処理などの表面処理が行われていても良い。また、粒状、粉末状および層状の無機充填剤の平均粒径は衝撃強度の点から0.1〜20μmであることが好ましく、特に0.2〜10μmであることが好ましい。また、無機充填剤の配合量は、本発明の(E)繊維強化材の配合量を越えない量が好ましい。
【0061】
本発明においては、さらにフッ素系樹脂を配合することにより、燃焼時の難燃性樹脂組成物が溶融落下することを抑制し、さらに難燃性を向上させることができる。上記のフッ素系樹脂とは、物質分子中にフッ素を含有する樹脂であり、具体的には、ポリテトラフルオロエチレン、ポリヘキサフルオロプロピレン、(テトラフルオロエチレン/ヘキサフルオロプロピレン)共重合体、(テトラフルオロエチレン/パーフルオロアルキルビニルエーテル)共重合体、(テトラフルオロエチレン/エチレン)共重合体、(ヘキサフルオロプロピレン/プロピレン)共重合体、ポリビニリデンフルオライド、(ビニリデンフルオライド/エチレン)共重合体などが挙げられるが、中でもポリテトラフルオロエチレン、(テトラフルオロエチレン/パーフルオロアルキルビニルエーテル)共重合体、(テトラフルオロエチレン/ヘキサフルオロプロピレン)共重合体、(テトラフルオロエチレン/エチレン)共重合体、ポリビニリデンフルオライドが好ましく、特にポリテトラフルオロエチレン、(テトラフルオロエチレン/エチレン)共重合体が好ましい。また、フッ素系樹脂を配合する場合の配合量は、難燃性と機械特性の点から(A)成分100重量部に対して、0.02〜20重量部、好ましくは0.1〜18重量部、更に好ましくは0.2〜16重量部である。
【0062】
本発明においては、さらにポリカーボネート樹脂を配合することにより、さらに難燃性を向上させることができる。上記のポリカーボネート樹脂としては、芳香族二価フェノール系化合物とホスゲン、または炭酸ジエステルとを反応させることにより得られる芳香族ホモまたはコポリカーボネートが挙げられる。該芳香族ホモまたはコポリカーボネート樹脂は、粘度平均分子量が通常、10000〜1000000の範囲のものであり、粘度平均分子量が10000〜1000000の範囲であれば、粘度平均分子量の異なるポリカーボネート樹脂を併用しても良い。ここで二価フェノール系化合物としては、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)プロパン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ブタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジフェニル)ブタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジエチルフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジエチルフェニル)プロパン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、1−フェニル−1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン等が使用でき、これら単独あるいは混合物として使用することができる。また、ポリカーボネート樹脂を配合する場合の配合量は、難燃性と機械特性の点から(A)成分100重量部に対して、1〜100重量部が好ましく、特に好ましくは2〜90重量部である。
【0063】
本発明においては、さらにシリコーン化合物、フェノール樹脂、ホスホニトリル化合物、ポリ燐酸アンモニウム、および燐酸メラミンなどの難燃性を助ける難燃助剤を配合でき、1種以上で用いられる。また、上記の難燃助剤を配合する場合の配合量は、難燃性と機械特性の点から(A)成分100重量部に対して、1〜100重量部が好ましく、特に好ましくは2〜90重量部である。
【0064】
上記のシリコーン化合物としては、シリコーン樹脂、シリコーンオイルおよびシリコーンパウダーが挙げられる。
【0065】
上記のシリコーン樹脂としては、飽和または不飽和一価炭化水素基、水素原子、ヒドロキシル基、アルコキシル基、アリール基、ビニルまたはアリル基から選ばれる基とシロキサンが化学的に結合されたポリオルガノシロキサンが挙げられ、室温で約200〜300000000センチポイズの粘度を有するものが好ましいが、上記のシリコーン樹脂である限り、それに限定されるものではなく、製品形状がオイル状、パウダー状およびガム状であっても良く、官能基としてエポキシ基、メタクル基およびアミノ基が導入されていても良く、2種以上のシリコーン樹脂との混合物であっても良い。
【0066】
また、シリコーンオイルとしては、飽和または不飽和一価炭化水素基、水素原子、ヒドロキシル基、アルコキシル基、アリール基、ビニルまたはアリル基から選ばれる基とシロキサンが化学的に結合されたポリオルガノシロキサンが挙げられ、室温で約0.65〜100000センチストークスの粘度を有するものが好ましいが、上記のシリコーンオイル樹脂である限り、それに限定されるものではなく、製品形状がオイル状、パウダー状およびガム状であっても良く、官能基としてエポキシ基、メタクル基およびアミノ基が導入されていても良く、2種以上のシリコーンオイルあるいはシリコーン樹脂との混合物であっても良い。
【0067】
また、シリコーンパウダーとしては、上記のシリコーン樹脂および/またはシリコーンオイルに無機充填剤を配合したものが挙げられ、無機充填剤としてはシリカなどが好ましく用いられる。
【0068】
上記のフェノール樹脂としては、フェノール性水酸基を複数有する高分子であれば任意であり、例えばノボラック型、レゾール型および熱反応型の樹脂、あるいはこれらを変性した樹脂が挙げられる。これらは硬化剤未添加の未硬化樹脂、半硬化樹脂、あるいは硬化樹脂であってもよい。中でも、硬化剤未添加で、非熱反応性であるノボラック型フェノール樹脂が難燃性、機械特性、経済性の点で好ましい。
【0069】
また、形状は特に制限されず、粉砕品、粒状、フレーク状、粉末状、針状、液状などいずれも使用でき、必要に応じ、1種または2種以上使用することができる。また、フェノール系樹脂は特に限定するものではなく市販されているものなどが用いられる。例えば、ノボラック型フェノール樹脂の場合、フェノール類とアルデヒド類のモル比を1:0.7〜1:0.9となるような比率で反応槽に仕込み、更にシュウ酸、塩酸、硫酸、トルエンスルホン酸等の触媒を加えた後、加熱し、所定の時間還流反応を行う。生成した水を除去するため真空脱水あるいは静置脱水し、更に残っている水と未反応のフェノール類を除去する方法により得ることができる。これらの樹脂あるいは複数の原料成分を用いることにより得られる共縮合フェノール樹脂は単独あるいは二種以上用いることができる。
【0070】
また、レゾール型フェノール樹脂の場合、フェノール類とアルデヒド類のモル比を1:1〜1:2となるような比率で反応槽に仕込み、水酸化ナトリウム、アンモニア水、その他の塩基性物質などの触媒を加えた後、ノボラック型フェノール樹脂と同様の反応および処理をして得ることができる。
【0071】
ここで、フェノール類としてはフェノール、o−クレゾール、m−クレゾール、p−クレゾール、チモール、p−tert−ブチルフェノール、tert−ブチルカテコール、カテコール、イソオイゲノール、o−メトキシフェノール、4,4’−ジヒドロキシフェニル−2,2−プロパン、サルチル酸イソアミル、サルチル酸ベンジル、サルチル酸メチル、2,6−ジ−tert−ブチル−p−クレゾール等が挙げられる。これらのフェノール類は一種または二種以上用いることができる。一方、アルデヒド類としてはホルムアルデヒド、パラホルムアルデヒド、ポリオキシメチレン、トリオキサン等が挙げられる。これらのアルデヒド類は必要に応じて一種または二種以上用いることができる。
【0072】
フェノール系樹脂の分子量は、特に限定されないが好ましくは数平均分子量で200〜2,000であり、特に400〜1,500の範囲のものが機械的物性、流動性、経済性に優れ好ましい。なおフェノール系樹脂の分子量は、テトラヒドラフラン溶液、ポリスチレン標準サンプルを使用することによりゲルパーミエションクロマトグラフィ法で測定できる。
【0073】
上記のホスホニトリル化合物としては、ホスホニトリル線状ポリマー及び/または環状ポリマーを主成分とするホスホニトリル化合物が挙げられ、直鎖状、環状のいずれかあるいは混合物であってもかまわない。前記ホスホニトリル線状ポリマー及び/または環状ポリマーは、著者梶原『ホスファゼン化合物の合成と応用』などに記載されている公知の方法で合成することができ、例えば、りん源として五塩化リンあるいは三塩化リン、窒素源として塩化アンモニウムあるいはアンモニアガスを公知の方法で反応させて(環状物を精製してもよい)、得られた物質をアルコール、フェノールおよびアミン類で置換することで合成することができる。
【0074】
上記のポリ燐酸アンモニウムとしては、ポリ燐酸アンモニウム、メラミン変性ポリ燐酸アンモニウム、およびカルバミルポリ燐酸アンモニウムなどが挙げられ、熱硬化性を示すフェノール樹脂、ウレタン樹脂、メラミン樹脂、尿素樹脂、エポキシ樹脂、およびユリア樹脂などの熱硬化性樹脂などによって被覆されていても良く、1種で用いても2種以上で用いても良い。
【0075】
上記の燐酸メラミンとしては、燐酸メラミンやピロ燐酸メラミンなどの燐酸塩が挙げられ、1種で用いても2種以上で用いても良い。
【0076】
本発明においては、さらに本発明組成物の衝撃強度などの靱性を改良する目的でエチレン(共)重合体を配合することができ、かかるエチレン(共)重合体としては、高密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、超低密度ポリエチレンなどのエチレン重合体および/またはエチレン共重合体が挙げられ、上記のエチレン共重合体とは、エチレンおよびそれと共重合可能なモノマーを共重合して得られるものであり、共重合可能なモノマーとしてはプロピレン、ブテン−1、酢酸ビニル、イソプレン、ブタジエンあるいはアクリル酸、メタクリル酸等のモノカルボン酸類あるいはこれらのエステル酸類、マレイン酸、フマル酸あるいはイタコン酸等のジカルボン酸類等が挙げられる。エチレン共重合体は通常公知の方法で製造することが可能である。エチレン共重合体の具体例としては、エチレン/プロピレン、エチレン/ブテン1、エチレン/酢酸ビニル、エチレン/エチルアクリレート、エチレン/メチルアクリレートおよびエチレン/メタクリル酸エチルアクリレートなどが挙げられる。また、上記のエチレン(共)重合体に酸無水物あるいはグリシジルメタクリレートをグラフトもしくは共重合された共重合体も好ましく用いられる。これらは一種または二種以上で使用され、上記のエチレン(共)重合体の一種以上と混合して用いても良い。また、エチレン(共)重合体のなかでもポリエチレンに酸無水物あるいはグリシジルメタクリレートがグラフトもしくは重合された共重合体が(A)成分との相溶性が良く好ましく用いられる。 また、エチレン(共)重合体を配合する場合の配合量は、得られる組成物の難燃性と衝撃強度の点から(A)成分100重量部に対して、1〜100重量部が好ましく、特に好ましくは2〜90重量部である。
【0077】
本発明においては、さらに耐加水分解性改良材のフェノキシ樹脂、アルカリ土類金属化合物、エポキシ化合物、オキゾリン化合物、およびカルボジイミド化合物などを配合でき、特にアルカリ土類金属化合物および/またはエポキシ化合物が好ましく用いられる。また、上記の耐加水分解性改良材の添加量は、得られる組成物の耐加水分解性と難燃性の点から(A)成分100重量部に対して、0.1〜20重量部が好ましく、とくに好ましくは0.2〜18重量部である。
【0078】
また、上記のフェノキシ樹脂としては、芳香族二価フェノール系化合物とエピクロルヒドリンとを各種の配合割合で反応させることにより得られるフェノキシ樹脂が挙げられる。フェノキシ樹脂の分子量は特に制限はないが、粘度平均分子量が1000〜100000の範囲のものが好ましい。ここで、芳香族二価フェノール系化合物 の例としては、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)プロパン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5ジエチルフェニル)プロパン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、1−フェニル−1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン等が使用でき、これら単独あるいは混合物として使用することができる。また、形状は特に制限されず、粉砕品、粒状、フレーク状、粉末状、液状などいずれも使用できる。これらのフェノキシ樹脂は必要に応じて一種または二種以上用いることができる。
【0079】
アルカリ土類金属化合物におけるアルカリ土類金属としては、マグネシウム、カルシウム、およびバリウムなどが挙げられる。本発明で用いるアルカリ土類金属化合物はこれらの金属の水酸化物、酸化物、炭酸塩、硫酸塩、リン酸塩等の無機酸塩、酢酸塩、乳酸塩、オレイン酸、パルミチン酸、ステアリン酸およびモンタン酸などの有機酸塩が好ましい。具体例としては水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、水酸化バリウム、酸化マグネシウム、酸化カルシウム、酸化バリウム、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸バリウム、硫酸マグネシウム、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、リン酸マグネシウム、リン酸カルシウム、リン酸バリウム、酢酸マグネシウム、酢酸カルシウム、酢酸バリウム、乳酸マグネシウム、乳酸カルシウム、乳酸バリウム、さらにはオレイン酸、パルルミチン酸、ステアリン酸およびモンタン酸などの有機酸のマグネシウム塩、カルシウム塩、およびバリウム塩などが挙げられ、などが挙げられ、水酸化マグネシウムおよび炭酸カルシウムが好ましく用いられ、より好ましくは炭酸カルシウムが用いられる。これらは1種または2種以上で用いられる。また、上記の炭酸カルシウムは製造方法により、コロライド炭酸カルシウム、軽質炭酸カルシウム、重質炭酸カルシウム、湿式粉砕微粉重質炭酸カルシウム、湿式重質炭酸カルシウム(白亜)などが知られており、いずれも本発明に包含される。また、上記の炭酸カルシウムおよびアルカリ土類金属化合物は、シランカップリング剤、有機物および無機物などの一種以上の表面処理剤で処理されていても良く、形状は粉末状、板状あるいは繊維状であっても構わないが、10μm以下の粉末状で用いることが分散性などから好ましい。
【0080】
また、上記のエポキシ化合物としては、グリシジルエステル化合物、グリシジルエーテル化合物およびグリシジルエステルエーテル化合物から選ばれる一種以上のエポキシ化合物が挙げられ、分子中に一個以上のエポキシ基を持ちエポキシ当量1000未満のエポキシ化合物が好ましい。ここで、エポキシ当量とは、1グラム当量のエポキシ基を含むエポキシ化合物のグラム数をいう。ここで、エポキシ当量は、エポキシ化合物をピリジンに溶解し、0.05N塩酸を加え45℃で加熱後、指示薬にチモールブルーとクレゾールレツドの混合液を用い、0.05N苛性ソーダで逆滴定する方法により求めることができる。
【0081】
また、上記のグリシジルエステル化合物としては、限定されるものではないが、具体例として、安息香酸グリシジルエステル、tBu−安息香酸グリシジルエステル、P−トルイル酸グリシジルエステル、シクロヘキサンカルボン酸グリシジルエステル、ペラルゴン酸グリシジルエステル、ステアリン酸グリシジルエステル、ラウリン酸グリシジルエステル、パルミチン酸グリシジルエステル、ベヘン酸グリシジルエステル、バーサティク酸グリシジルエステル、オレイン酸グリシジルエステル、リノール酸グリシジルエステル、リノレイン酸グリシジルエステル、ベヘノール酸グリシジルエステル、ステアロール酸グリシジルエステル、テレフタル酸ジグリシジルエステル、イソフタル酸ジグリシジルエステル、フタル酸ジグリシジルエステル、ナフタレンジカルボン酸ジグリシジルエステル、ビ安息香酸ジグリシジルエステル、メチルテレフタル酸ジグリシジルエステル、ヘキサヒドロフタル酸ジグリシジルエステル、テトラヒドロフタル酸ジグリシジルエステル、シクロヘキサンジカルボン酸ジグリシジルエステル、アジピン酸ジグリシジルエステル、コハク酸ジグリシジルエステル、セバシン酸ジグリシジルエステル、ドデカンジオン酸ジグリシジルエステル、オクタデカンジカルボン酸ジグリシジルエステル、トリメリット酸トリグリシジルエステル、ピロメリット酸テトラグリシジルエステルなどが挙げられ、これらの1種以上あるいはグリシジルエ−テル化合物と併用して用いることができる。
【0082】
また、上記のグリシジルエ−テル化合物としては、限定されるものではないが、具体例として、フェニルグリシジルエ−テル、O−フェニルフェニルグリシジルエ−テル、1,4−ビス(β,γ−エポキシプロポキシ)ブタン、1,6−ビス(β,γ−エポキシプロポキシ)ヘキサン、1,4−ビス(β,γ−エポキシプロポキシ)ベンゼン、1−(β,γ−エポキシプロポキシ)−2−エトキシエタン、1−(β,γ−エポキシプロポキシ)−2−ベンジルオキシエタン、2,2−ビス−[р−(β,γ−エポキシプロポキシ)フェニル]プロパンおよびビス−(4−ヒドロキシフェニル)メタンなどのその他のビスフェノールとエピクロルヒドリンの反応で得られるジグリシジルエーテルなどが挙げられ、これらは1種または2種以上を用いることができる。
【0083】
本発明においては、さらに本発明の組成物が長期間高温にさらされても極めて良好な耐熱エージング性を与える安定剤としてヒンダードフェノール系酸化防止剤および/またはホスファイト系酸化防止剤を配合でき、ヒンダードフェノール系酸化防止剤および/またはホスファイト系酸化防止剤を配合する場合の配合量は、耐熱エージング性と難燃性の点から(A)成分100重量部に対して、0.1〜15重量部が好ましく、特に好ましくは0.2〜10重量部である。
【0084】
また、上記のヒンダードフェノール系酸化防止剤の具体例としては、トリエチレングリコール−ビス[3−(3−t−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、1,6−ヘキサンジオール−ビス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、ペンタエリスリチル−テトラキス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、2,2−チオ−ジエチレンビス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、オクタデシル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジルホスホネート ジエチルエステル、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、ビスもしくはトリス(3−t−ブチル−6−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、N,N’−ヘキサメチレンビス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシ−ヒドロシンナマミド)、N,N’−トリメチレンビス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシ−ヒドロシンナマミド)などが挙げられる。
【0085】
また、上記のホスファイト系安定剤との例としては、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイト、2,2−メチレンビス(4,6−ジ−t−ブチルフェニル)オクチルオスファイト、トリスノニルフェニルホスファイト、アルキルアリル系ホスファイト、トリアルキルホスファイト、トリアリルホスファイト、ペンタエリスリトール系ホスファイト化合物などが挙げられる。
【0086】
本発明においては、さらに滑剤を一種以上添加することにより成形時の流動性や離型性を改良することが可能である。かかる滑剤としては、ステアリン酸カルウシム、ステアリン酸バリウムなどの金属石鹸、脂肪酸エステル、脂肪酸エステルの塩(一部を塩にした物も含む)、エチレンビスステアロアマイドなどの脂肪酸アミド、エチレンジアミンとステアリン酸およびセバシン酸からなる重縮合物あるいはフェニレンジアミンとステアリン酸およびセバシン酸の重縮合物からなる脂肪酸アミド、ポリアルキレンワックス、酸無水物変性ポリアルキレンワックスおよび上記の滑剤とフッ素系樹脂やフッ素系化合物の混合物が挙げられるがこれに限定されるものではない。滑剤を配合する場合の添加量は、(A)成分100重量部に対して、0.05〜10重量部であることが好ましく、より好ましくは0.1〜5重量部である。
【0087】
本発明においては、さらに、カーボンブラック、酸化チタン、および種々の色の顔料や染料を1種以上配合することにより色調を改良あるいは調色することも可能であり、配合量は、得られる組成物の機械特性の点から(A)成分100重量部に対して0.1〜30重量部が好ましく、より好ましくは0.1〜20重量部、さらに好ましくは0.1〜15重量部である。
【0088】
また、上記のカーボンブラックとしては、チャンネルブラック、ファーネスブラック、アセチレンブラック、アントラセンブラック、油煙、松煙、および、黒鉛などが挙げられ、平均粒径500nm以下、ジブチルフタレート吸油量50〜400cm3/100gのカーボンブラックが好ましく用いられ、処理剤として酸化アルミニウム、酸化珪素、酸化亜鉛、酸化ジルコニウム、ポリオール、シランカップリング剤などで処理されていても良い。また、上記の酸化チタンとしは、ルチル形、あるいはアナターゼ形などの結晶形を持ち、平均粒子径5μm以下のカーボンブラックが好ましく用いられ、処理剤として酸化アルミニウム、酸化珪素、酸化亜鉛、酸化ジルコニウム、ポリオール、シランカップリング剤などで処理されていても良い。また、上記のカーボンブラック、酸化チタン、および種々の色の顔料や染料は、本発明の難燃性樹脂組成物との分散性向上や製造時のハンドリング性の向上から種々の熱可塑性樹脂と溶融ブレンドあるいは単にブレンドした混合材料として用いても良い。とくに、上記の熱可塑性樹脂としては、ポリアルキレンテレフタレート、スチレン系樹脂およびエチレン(共)重合体であることが耐トラッキング性などの電気特性から好ましい。
【0089】
本発明においては、さらに本発明以外の公知の非ハロゲン難燃剤を一種以上添加することが可能であり、燃焼時の燃焼時間短縮もしくは燃焼時の発生ガスの低減が期待できる。かかる公知の非ハロゲン難燃剤としては、限定されるものではないが、例えば、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、ハイドロタルサイト、硼酸、硼酸カルシウム、硼酸カルシウム水和物、硼酸亜鉛、硼酸亜鉛水和物、水酸化亜鉛、水酸化亜鉛水和物、亜鉛錫水酸化物、亜鉛錫水酸化物水和物、赤リン、加熱膨張黒鉛およびドーソナイトなどが挙げられ、熱硬化性メラミン樹脂、熱硬化性フェノール樹脂、熱硬化性エポキシ樹脂などの熱硬化性樹脂が混合あるいは表面に被覆されていても良い。また、カップリング剤、エポキシ化合物、あるいはステアリン酸などの油脂類などが混合あるいは表面に被覆されていても良い。
【0090】
さらに、本発明の難燃性樹脂組成物および成形品に対して本発明の目的を損なわない範囲で、イオウ系酸化防止剤、紫外線吸収剤、可塑剤、および帯電防止剤などの公知の添加剤を1種以上配合された材料も用いることができる。
【0091】
本発明の難燃性樹脂組成物および成形品は通常公知の方法で製造される。例えば、(A)カルボキシル末端基量が40eq/ton以下のポリアルキレンテレフタレート樹脂、(B)スチレン系樹脂、(C)燐酸エステル、および(D)トリアジン系化合物とシアヌール酸またはイソシアヌール酸との塩、および必要に応じて(E)繊維補強材、フッ素系化合物、ポリカーボネート樹脂、シリコーン化合物、フェノール樹脂、ホスホニトリル化合物、ポリ燐酸アンモニウム、および燐酸メラミンなどの難燃助剤、エチレン(共)重合体、(E)繊維強化材以外の無機充填剤、耐加水分解性改良材、ヒンダードフェノール系酸化防止剤および/またはホスファイト系酸化防止剤、およびさらに必要に応じてその他の必要な添加剤を予備混合して、またはせずに押出機などに供給して十分溶融混練することにより難燃性ポリブチレレンテレフタレート樹脂組成物が調製される。
【0092】
上記の予備混合の例として、ドライブレンドするだけでも本発明の効果が発揮できるが、タンブラー、リボンミキサーおよびヘンシェルミキサー等の機械的な混合装置を用いて混合することが挙げられる。また、(E)繊維強化材は、二軸押出機などの多軸押出機の元込め部とベント部の途中にサイドフィダーを設置して添加する方法であっても良い。また、液体の添加剤の場合は、二軸押出機などの多軸押出機の元込め部とベント部の途中に液添ノズルを設置してプランジャーポンプ添加する方法や元込め部などから定量ポンプで供給する方法なとであっても良い。また、難燃性樹脂組成物を製造するに際し、限定されるものではないが、例えば“ユニメルト”あるいは“ダルメージ”タイプのスクリューを備えた単軸押出機、二軸押出機、三軸押出機およびニーダータイプの混練機などを用いることができる。
【0093】
かくして得られる難燃性樹脂組成物は、通常公知の方法で成形することができ、例えば射出成形、押出成形、圧縮成形、シート成形、フィルム成形などによって、あらゆる形状の成形品とすることができ、なかでも射出成形が好適であり、金属部品の一部を直接成形品と一体化させるインサート成形による射出成形方法で得られる成形品であっても良い。
【0094】
また、本発明の難燃性樹脂組成物からなる成形品は、機器内部の電気火炎に対する安全性、成形品自体の火災に対する安全性、成形品外観、および機械特性などに優れているため、電気・電子部品、機械機構部品、および自動車部品に有用である。具体的には、一般家庭電化製品、OA機器などのハウジング、コイルボビン、コネクター、リレー、ディスクドライブシャーシー、トランス、電磁開閉器、スイッチ部品、コンセント部品、モーター部品、ソケット、プラグ、コンデンサー、各種ケース類、抵抗器、金属端子や導線が組み込まれる電気・電子部品、コンピューター関連部品、音響部品、レーザーディスクなどの音声部品、照明部品、電信・電話機器関連部品、エアコン部品、VTRやテレビなどの家電部品、複写機用部品、ファクシミリ用部品、光学機器用部品、自動車点火装置部品、自動車用コネクター、および各種自動車用電装部品などが挙げられる。
【0095】
本発明においては、さらに射出成形時の流動性および成形品色調に優れ、さらにブリードアウトが生じ難く、かつ耐加水分解性に優れた信頼性の高い難燃性の成形品が得られることから、電気・電子部品、および自動車用電装部品にとりわけ有用である。
【0096】
【実施例】
以下実施例により本発明の効果を更に詳細に説明する。ここで%および部とはすべて重量%および重量部をあらわす。各特性の測定方法は以下の通りである。
【0097】
参考例1(A)カルボキシル末端基量が40eq/ton以下のポリアルキレンテレフタレート樹脂
<A−1>カルボキシル末端基量が37eq/ton、固有粘度が0.85 (25℃、O−クロロフェノール溶媒)のポリブチレンテレフタレート樹脂(以下、PBTと略す)を用いた(以下、カルボ37eq/tと略す)。
【0098】
<A−2>カルボキシル末端基量が27eq/ton、固有粘度が0.83 (25℃、o−クロロフェノール溶媒)のPBTを用いた(以下、カルボ27eq/tと略す)。
【0099】
<A−3>カルボキシル末端基量が18eq/ton、固有粘度が0.84 (25℃、O−クロロフェノール溶媒)のPBTを用いた(以下、カルボ18eq/tと略す)。
【0100】
<A−4>カルボキシル末端基量が8eq/ton、固有粘度が0.82 (25℃、O−クロロフェノール溶媒)のPBTを用いた(以下、カルボ8eq/tと略す)。
【0101】
<A−5>カルボキシル末端基量が45eq/ton、固有粘度が0.85 (25℃、O−クロロフェノール溶媒)のPBTを用いた(以下、カルボ45eq/tと略す)。
【0102】
<A−6>カルボキシル末端基量が27eq/ton、固有粘度が0.65 (25℃、O−クロロフェノール溶媒)のポリエチレンテレフタレート樹脂を用いた(以下、PETカルボ38eq/tと略す)。
【0103】
参考例2(B)スチレン系樹脂
<B−1>スチレン/アクリロニトリル(74/26重量%)共重合体のAS樹脂を用いた。なお、本AS樹脂のメチルエチルケトン溶媒、30℃で測定した極限粘度は0.52dl/gである。
【0104】
<B−2>スチレン/アクリロニトリル/グリシジルメタクリレート(74/25.5/0.5重量%)共重合体を用いた(以下エポキシ変性AS樹脂と略す)。なお、本エポキシ変性AS樹脂のメチルエチルケトン溶媒、30℃で測定した極限粘度は0.53dl/gである。
【0105】
<B−3>エポキシ変成スチレン/ブタジエン共重合体(ダイセル化学工業社製“エポフレンド”A1010)を用いた(以下エポキシ変性SBS樹脂と略す)。
【0106】
<B−4>ABS樹脂(東レ社製“トヨラック”タイプ500)を用いた。
【0107】
参考例3(C)燐酸エステル
<C−1>下記の(5)式の芳香族燐酸エステル“PX−200”(大八化学社製)を用いた。
【0108】
【化11】
【0109】
<C−2>下記の(6)式の芳香族燐酸エステル“CR741”(大八化学社製)を用いた。
【0110】
【化12】
【0111】
参考例4(D)トリアジン系化合物とシアヌール酸またはイソシアヌール酸との塩
<D−1>メラミンシアヌレート“MCA”(三菱化学社製)を用いた(以下、MC塩と略す)。
【0112】
参考例5(E)繊維強化材
<E−1>繊維径約10μmのチョップドストランド状のガラス繊維“CS3J948”(日東紡績社製)を用いた(以下、GFと略す)。
【0113】
参考例6 フッ素系化合物
<F−1>ポリテトラフルオロエチレン“テフロン6J”(三井デュポンフロロケミカル社製)を用いた(以下、テフロンと略す)。
【0114】
参考例7 難燃助剤
<G−1>ポリカーボネート樹脂“ユーピロン”S3000(三菱エンジニアリングプラスチックス社製)を使用した(以下、PC樹脂と略す)。
【0115】
<G−2>シリコーン化合物、シリコーンパウダー“DC4−7105”(東レ・ダウコーニングシリコーン社製)を使用した。
【0116】
<G−3>フェノール樹脂、ノボラック型フェノール樹脂“スミライトレジン”PR53195(住友デュレズ社製)を使用した。
【0117】
<G−4>ホスホニトリル化合物
<H−3>ヘキサクロロシクロトリホスファゼン(環状3量体)とフェノールをトリエチルアミンの存在下、THF中で反応させた。得られた反応液を蒸発・乾固させ、水で洗浄して塩を除去した。収率95%。このようにして得られたホスホニトリル環状ポリマーをアセトンにより再結晶精製し使用した。なお、数平均重合度nに変化はなくn=3であった。
【0118】
参考例8 エチレン(共)共重合体
<H−1>エチレンエチルアクリート共重合体“A−709”(三井デュポンポリケミカル社製)を使用した。
【0119】
参考例9 繊維強化材以外の無機充填剤
<I−1>珪酸塩のタルク“LMS300”(富士タルク社製)を用いた。
【0120】
参考例10 ヒンダードフェノール系酸化防止剤および/またはホスファイト系酸化防止剤
<J−1>ペンタエリスリチル−テトラキス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]のヒンダードフェノール系酸化防止剤“IR−1010”(日本チバガイギー社製)
<J−2>ペンタエリスリトール系ホスファイト化合物のホスファイト系酸化防止剤“Mark PEP−36”(旭電化社製)
実施例1〜18、比較例1〜11
スクリュ径30mm、L/D35の同方向回転ベント付き2軸押出機(日本製鋼所製、TEX−30α)を用いて、(A)PBT、PET、(B)スチレン系樹脂、(C)燐酸エステル、(D)MC塩、およびその他の添加剤<Fー1>、<G−1>、<G−2>、<G−3>、<G−4>、<H−1>、<I−1>、<J−1>、および<J−2>を表1、表2に示した配合組成で混合し、元込め部から添加した。また、GFを配合した例では、元込め部とベント部の途中にサイドフィダーを設置して(E)GFを添加した他は上記と同じ方法で表1、表2に示す添加量の配合物を元込め部から添加した。なお、混練温度270℃、スクリュ回転150rpmの押出条件で溶融混合を行い、ストランド状に吐出し、冷却バスを通し、ストランドカッターによりペレット化した。
【0121】
得られたペレットを乾燥後、次いで射出成形機により、それぞれの試験片を成形し、次の条件で物性を測定し、表1、表3にその結果を示した。
(1)難燃性
東芝機械製IS55EPN射出成形機を用いて、成形温度270℃、金型温度80℃の条件で難燃性評価用試験片の射出成形を行い、UL94垂直試験に定められている評価基準に従い、難燃性を評価した。難燃性はV−0>V−1>V−2の順に低下しランク付けされる。また、試験片の厚みは1/16インチ(約1.59mm、以下1/16"と略す)厚みと1/32インチ(約0.79mm、以下1/32"と略す)厚みを用い、厚みが薄いほど難燃性は厳しい判定となる。また、燃焼性に劣り上記の難燃性ランクに該当しなかった材料は規格外とした。
(2)引張強度
東芝機械製IS55EPN射出成形機を用いて、成形温度270℃、金型温度80℃の条件で3mm厚みのASTM1号ダンベルの射出成形を行い、ASTMD638に従い引張強を測定した。
(3)流動性
上記の難燃性と同じく、東芝機械製IS55EPN射出成形機を用いて、成形温度270℃、金型温度80℃の条件で1/16インチ(約1.59mm)厚み難燃性評価用試験片の射出成形を行い、試験片が充填される最低の成形圧力の成形下限圧力を求めた。
【0122】
なお、成形下限圧力が低いほど射出成形時の流動性に優れる材料である。
(4)色調と色調変化
東芝機械製IS55EPN射出成形機を用いて、成形温度270℃、金型温度80℃の条件で射出成形された80mm×80mm×厚み3mmの角板を試料とし、150℃に温調されたタバイ社製熱風乾燥機“HighTempOven”PVH210に投入し、100時間熱処理した。
【0123】
上記の乾燥機投入前の角板の色調をスガ試験機社製SMカラーコンピューターを使用して黄色度(YI)を測定した。なお、YIの値が小さいほど白色に近く、色調に優れる材料である。
【0124】
また、上記の乾燥機投入前と処理後の角板の色調変化を上記と同様にスガ試験機社製SMカラーコンピューターを使用してL、a、bのハンター色差を測定した。
【0125】
なお、ハンター色差の数値が小さいほど色調変化が少ない材料である。
(5)ブリードアウト試験
東芝機械製IS55EPN射出成形機を用いて、成形温度270℃、金型温度80℃の条件で射出成形された80mm×80mm×厚み3mmの角板を試料とし、150℃に温調されたタバイ社製熱風乾燥機“HighTempOven”PVH210に投入し100時間処理した。
【0126】
上記の乾燥機投入前と処理後の角板の外観を目視観察し、次の基準でブリードアウトの有無を判定した。
【0127】
ここで、ブリードアウトとは、成形品組成物中の配合物の一部が成形品の表面にしみでてくる現象である。
【0128】
○ :乾燥機投入前後の成形品にブリードアウトが観察されない
△ :乾燥機投入前の成形品にブリードアウトが観察されない
しかし、乾燥機投入後の成形品にブリードアウトが観察される
× :乾燥機投入前後の成形品にブリードアウトが観察される
(6)耐加水分解性
東芝機械製IS55EPN射出成形機を用いて、成形温度270℃、金型温度80℃の条件で3mm厚みのASTM1号ダンベル片の射出成形を行い、得られたASTM1号ダンベル片を温度121℃、湿度100%RHの条件下で100時間処理した後、ASTM D648に従い引張強度を測定し、測定値は未処理品の引張強度で割った値の百分率である保持率(%)で示した。
【0129】
【表1】
【0130】
【表2】
【0131】
【表3】
【0132】
表1の実施例1〜6と比較例1のGF未添加の評価結果から、実施例1〜4に示す本発明のカルボキシル末端基量が40eq/ton以下のポリアルキレンテレフタレート樹脂のPBTに、スチレン系樹脂、燐酸エステル、およびMC塩を配合した組成物は、高度な難燃性を保持しつつ、機械特性と射出成形時の流動性に優れ、成形品表面にブリードアウト物が観察されなく、かつ耐加水分解性に優れる成形品が得られることがわかる。また、実施例5からカルボキシル末端基量が40eq/ton以下のポリアルキレンテレフタレート樹脂として、PBTとPETを配合した材料においても上記と同様に、高度な難燃性を保持しつつ、機械特性と射出成形時の流動性に優れ、成形品表面にブリードアウト物が観察されなく、かつ耐加水分解性に優れる成形品が得られることがわかる。また、比較例6と比較例8の比較から、スチレン系樹脂にAS樹脂を用いた材料はABS樹脂を用いた材料よりも耐加水分解性、色調および色調変化に優れていた。さらには、実施例2、比較例6、比較例7および比較例8の比較から、スチレン系樹脂の中では、エポキシ変性AS樹脂あるいはエポキシ変性SBS樹脂を用いた材料が耐加水分解性、色調および色調変化に優れ、とくにエポキシ変性AS樹脂が難燃性にも優れ、最も好ましいスチレン系樹脂であることがわかる。
【0133】
一方、比較例1から、カルボキシル末端基量が40eq/tonを越すポリアルキレンテレフタレート樹脂のPBTに、スチレン系樹脂、燐酸エステル、およびMC塩を配合した組成物は、難燃性、機械特性と射出成形時の流動性、ブリードアウト性に優れるものの、色調変化が大きいことと、耐加水分解性に劣り、品質安定性に欠ける材料であった。
【0134】
また、実施例7〜8および比較例2〜5から、繊維状強化材のGFを配合することによって、引張強度が飛躍的に高くなり、高強度なPBT樹脂が得られるが、実施例7と比較例2の比較から、GF強化樹脂においても、カルボキシル末端基量が40eq/tonを越すポリアルキレンテレフタレート樹脂のPBTに、スチレン系樹脂、燐酸エステル、およびMC塩を配合した組成物は、難燃性、機械特性と射出成形時の流動性、ブリードアウト性に優れるものの、色調変化が大きいことと、耐加水分解性に劣り、品質安定性に欠ける材料であった。
【0135】
比較例3から、本発明中の(B)スチレン系樹脂を配合しない材料は、乾燥機投入前後の成形品にブリードアウトが観察された。
【0136】
また、比較例4〜5から、燐酸エステルまたはMC塩のいずれかが未配合の組成物の場合は、ポリアルキレンテレフタレート樹脂のPBTと同じ難燃性の規格外を示し、難燃性が向上せず、難燃性組成物が得られなかった。
【0137】
表2の実施例10〜18に示す本発明の組成物は、実施例8の組成物の難燃性、耐トラッキング性、耐熱エージング性などを改良する配合物である。
【0138】
表3に示す実施例10〜13のものは、PC樹脂、シリコーン化合物、フェノール樹脂およびホスホニトリル化合物を配合することによって、その他の性能を維持しながら難燃時間が短くなり、難燃性が向上した。
【0139】
また、実施例14〜15のエチレン共重合体あるいはタルクを配合することによって、さらに耐トラッキング性(IEC Publication112規格に示されている試験方法に従い、成形品の絶縁が破壊される破壊電圧(V)であり、破壊電圧が大きい程優れる。)が破壊電圧600V未満から破壊電圧600V以上に向上し、電気特性に優れる成形品が得られることがわかった。ただし、エチレン共重合体を配合した材料は難燃性が低下した。
【0140】
また、実施例16〜18の酸化防止剤を配合した組成物と実施例8のASTM1号ダンベルをタバイ製ギャーオーブンに投入し、180℃、300時間処理して引張強度を測定したとろ、実施例8の組成物より引張強度保持率がいずれも約16%以上向上した。したがって、酸化防止剤の配合によって、その他の性能を維持しながら耐熱エージング性が向上することがわかる。
【0141】
表2と表3に示す比較例9〜11は、本発明組成物のスチレン系樹脂の代わりに、スチレン系樹脂やPBT樹脂より難燃性に優れる熱可塑性樹脂として知られているポリフェニレンエーテル樹脂、ポリフェニレンスルフィド樹脂およびナイロン樹脂をスチレン系樹脂と同じく25重量部を配合した組成物である。
【0142】
表3からポリフェニレンエーテル樹脂とポリフェニレンスルフィド樹脂は難燃性に優れるものの、引張強度、流動性、色調、および色調変化、および耐加水分解性のいずれにおいても性能に大きく劣る成形品であり、とくに色調変化が大きく、耐加水分解性にも劣るため、品質安定性に欠ける材料であった。
【0143】
また、ナイロン6樹脂は難燃性を含むすべての性能において大きく劣る材料であった。
【0144】
【発明の効果】
カルボキシル末端基量が40eq/ton以下のポリアルキレンテレフタレート樹脂に、特定量のスチレン系樹脂、燐酸エステル、トリアジン系化合物とシアヌール酸またはイソシアヌール酸との塩、および繊維強化材、必要に応じてアルカリ土類金属塩、エポキシ化合物およびフッ素系化合物などを配合することで、高度な難燃性を保持しつつ、特異的に機械特性と射出成形時の流動性に優れると共に、ブリードアウトが生じ難く、かつ耐加水分解性に優れた非ハロゲンの難燃性樹脂組成物および成形品を得ることでき、ポリアルキレンテレフタレート樹脂の市場拡大に大きく寄与することが期待できる。
Claims (5)
- (A)カルボキシル末端基量が40eq/ton以下のポリアルキレンテレフタレート樹脂100重量部に対して、アクリロニトリル、スチレンおよびグリシジルメタクリレートを共重合してなる共重合体を含む(B)スチレン系樹脂1〜100重量部、(C)燐酸エステル1〜100重量部および(D)トリアジン系化合物とシアヌール酸またはイソシアヌール酸との塩1〜150重量部を配合してなる難燃性樹脂組成物。
- (A)カルボキシル末端基量が40eq/ton以下のポリアルキレンテレフタレート樹脂100重量部に対して、(E)繊維補強材250重量部以下をさらに配合してなる請求項1記載の難燃性樹脂組成物。
- (C)燐酸エステルが下記(1)式の芳香族燐酸エステルである請求項1または2記載の難燃性樹脂組成物。
- アクリロニトリル、スチレンおよびグリシジルメタクリレートを共重合してなる共重合体におけるグリシジルメタクレリートの共重合量が0.1〜20重量%であり、スチレンとアクリロニトリルの合計に対してスチレン50〜99重量%、アクリロニトリル50〜1重量%である請求項1〜3のいずれか記載の難燃性樹脂組成物。
- 請求項1〜4のいずれか記載の難燃性樹脂組成物からなる機械機構部品、電気電子部品または自動車部品用の成形品。
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