JP4893609B2 - 半導体装置とその半導体装置を備えている給電装置の駆動方法 - Google Patents
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Description
モータ等の電気的負荷に給電する給電装置は、複数個のIGBTと複数個のFWDから構成される。従来は、複数個のIGBTと複数個のダイオードを用意して配線することによって給電装置を構成していた。逆導通型の半導体装置を用いると、IGBTとFWDが同一半導体基板に形成されているために、従来と比較して給電装置を小型化することができる。
特許文献1に、逆導通型の半導体装置を用いると、従来と比較してダイオードが導通状態から非導通状態に移行する際のリカバリ損失が増大することが指摘されている。この問題を解決するために、特許文献1に開示されている半導体装置100(本明細書に添付する図30参照)は低ライフタイム層161を備えている。以下に半導体装置100の構成を簡単に説明する。
半導体装置100は、IGBT素子領域J101とダイオード素子領域J102に共通して伸びているn-型層160を備えている。n-型層160は、IGBT素子領域J101ではドリフト層として機能する。また、n-型層160は、ダイオード素子領域J102ではn-型カソード層(高抵抗層)として機能する。本明細書では、ドリフト層と高抵抗層を総称して、ドリフト層という。以降、n-型層160をドリフト層160という。
n-型のドリフト層160の中間深さに、低ライフタイム層161が形成されている。低ライフタイム層161は、半導体基板102の表面102aからライフタイムキラー(ヘリウム等)を照射することによって形成している。低ライフタイム層161は、IGBT素子領域J101とダイオード素子領域J102に亘って伸びている。この低ライフタイム層161では、少数キャリア(ホール)のライフタイムが短い。
ダイオード素子領域J102が導通状態から非導通状態に移行する際に、ドリフト層160に注入されたホールがp-型層130に戻る現象が発生する。この現象に起因して、ダイオード素子領域J102に、導通状態のときとは逆方向のリカバリ電流が流れる。リカバリ電流が流れると、損失が発生してダイオード素子領域J102が発熱する。半導体装置100は、低ライフタイム層161を備えている。低ライフタイム層161を備えていると、リカバリ動作時にp-型層130に戻るホールの一部が低ライフタイム層161で消失する。低ライフタイム層161を備えていると、ダイオード素子領域J102のリカバリ電流を低減化することができ、ダイオード素子領域J102でのリカバリ損失を低減化することができる。
現状の技術では、半導体装置100の他の特性を劣化させないで、ダイオード素子領域J102のリカバリ損失を低減化することができない。すなわち、逆導通型の半導体装置のダイオード素子領域のリカバリ損失を低減化することは難しい。
本発明は、上記の問題を解決するために創案された。すなわち、本発明は、逆導通型の半導体装置の他の特性を劣化させないでダイオード素子領域のリカバリ損失を低減化する技術を提供する。
IGBT素子領域では、p型のコレクタ層とn型のドリフト層とp型のボディ層が順に積層されている。また、IGBT素子領域では、半導体基板の表面からボディ層を貫通してドリフト層まで伸びている絶縁トレンチゲート電極が形成されている。また、IGBT素子領域では、絶縁トレンチゲート電極に接しているとともに半導体基板の表面に臨む範囲にn型のトレンチゲート電極隣接領域が形成されている。そのトレンチゲート電極隣接領域はボディ層によってn型のドリフト層から分離されている。トレンチゲート電極隣接領域はエミッタ領域として機能する。
ダイオード素子領域では、n型のカソード層とn型のドリフト層とp型のアノード層が順に積層されている。ダイオード素子領域では、半導体基板の表面からアノード層を貫通してドリフト層まで伸びている絶縁トレンチゲート電極が形成されている。ダイオード素子領域では、半導体基板の表面に臨む範囲にp型のアノード領域が形成されている。そのアノード領域が、アノード層によってn型のドリフト層から分離されている。ダイオード素子領域のn型のドリフト層はカソード層として機能する。
本発明の半導体装置のダイオード素子領域には、n型のトレンチゲート電極隣接領域が形成されていない。すなわち、ダイオード素子領域の絶縁トレンチゲート電極に接するとともに半導体基板の表面に臨む範囲には、n型の領域が形成されていない。また、本発明の半導体装置では、ダイオード素子領域に存在するアノード層の不純物濃度が、IGBT素子領域に存在するボディ層の不純物濃度よりも薄い。
なお、本明細書では、トレンチの内面に形成されている絶縁膜と、絶縁膜に覆われた状態でトレンチ内に収容されているトレンチゲート電極を合わせて絶縁トレンチゲート電極という。
一方、ダイオード素子領域でも、p型アノード層のうちの絶縁トレンチゲート電極に接する範囲にn型チャネルが形成される。しかしながら、本発明の半導体装置のダイオード素子領域では、絶縁トレンチゲート電極に隣接する範囲にn型領域が形成されていない。そのため、ダイオード素子領域ではドリフト層に電子が注入されない。ダイオード領域では、電流が流れない。
また、本発明の半導体装置のダイオード素子領域では、絶縁トレンチゲート電極に隣接する範囲にn型領域が形成されていないために、IGBT素子領域がオン状態の際に、ダイオード素子領域からIGBT素子領域のドリフト層に電子が注入されることもない。ダイオード素子領域が、オン状態の際のIGBT素子の特性に影響を及ぼすことがない。同一半導体基板に形成されているダイオード素子領域が、IGBT素子領域の動作に干渉しない。
本発明の半導体装置では、ダイオード素子領域のアノード層のp型不純物の濃度をIGBT素子領域のボディ層のp型不純物の濃度よりも低くすることによってIGBT素子領域のボディ層よりもダイオード素子領域のアノード層の方でn型チャネルが形成され易い。しかしながら、本発明の半導体装置のダイオード素子領域では、絶縁トレンチゲート電極に隣接する範囲にn型領域を形成しないことによって、IGBT素子のオン時にダイオード領域に電流が流れることを防止する。ダイオード素子領域のアノード層のp型不純物の濃度を下げても、IGBT素子領域がオン状態となるしきい値電圧は低下しない。従って、半導体装置の短絡耐量は低下しない。
本発明の半導体装置によると、アノード層のp型不純物の濃度を、ダイオード素子領域にとって最適な濃度となるように低くすることができる。これにより、ダイオード素子領域が導通状態のときに、ドリフト層に注入されるホールの注入量をダイオード素子領域にとって最適な注入量に抑制することができる。ダイオード素子領域のアノード層のp型不純物の濃度がIGBT素子領域のボディ層のp型不純物の濃度と等しい場合には、ダイオード素子領域のドリフト領域に過剰なホールが注入されるのに対し、本発明の半導体装置では、アノード層の不純物濃度をボディ層の不純物濃度よりも低くおさえることによってホールの注入量を抑制することができるので、ダイオード素子領域が導通状態から非導通状態に移行する際のリカバリ損失を低減化することができる。
また、上記した半導体装置では、半導体装置の表面に臨んでいるアノード領域のp型不純物の濃度を充分に高濃度で形成することができるので、半導体基板の表面に形成する電極とアノード領域を良好にオーミック接触させることができる。双方の間で電圧降下が発生することによる局所的な発熱を抑制することができる。
本発明の半導体装置によると、逆導通型の半導体装置の他の特性を劣化させないでダイオード素子領域のリカバリ損失を低減化することができる。
半導体基板の表面に臨む範囲にn型の半導体領域を形成しても、絶縁トレンチゲート電極に接しないために、IGBTのオン時にn型の半導体領域からドリフト層に注入される電子量は少ない。その一方において、ダイオード素子が導通状態の際に、アノード領域から注入されたホールの一部が、n型の半導体領域に吸収される。ダイオード素子領域にとって過多であったホールの注入量をさらに抑制することができるので、ダイオード素子領域のリカバリ損失をさらに低減化することができる。
後に詳述するが、ダイオード素子領域が導通状態の際に、絶縁トレンチゲート電極に負電圧を印加する制御を行うことが好ましい。そのような制御を行うと、ダイオード素子領域が導通状態の際に、p型アノード層のうちの絶縁トレンチゲート電極と接している部分にホールが集中する。アノード領域が絶縁トレンチゲート電極と接していると、アノード領域から流出したホールが、絶縁トレンチゲート電極に沿って、ドリフト層に注入され易くなる。ダイオード素子領域の定常損失を低減化することができる。
その場合、ボディ分割領域によって分割されたp型のボディ層の下層部と、n型のボディ分割領域とによって、内蔵ダイオードが形成される。内蔵ダイオードに流すことが可能な電流の向きは、ダイオード素子領域に流すことが可能な電流の向きとは逆向きとなる。ダイオード素子領域が導通状態の際にIGBT素子領域のボディコンタクト領域から放出されたホールがドリフト層に注入されない。IGBT素子領域が、導通状態のダイオード素子の特性に影響を及ぼすことがない。同一半導体基板に形成されているIGBT素子領域が、ダイオード素子領域の動作に干渉しない。
その場合、電流検出用IGBT素子領域は、IGBT素子領域よりも半導体基板の表面における占有面積が狭い。また、電流検出用IGBT素子領域は、IGBT素子領域での半導体領域の配置関係と同一配置関係を備えている。すなわち、ドリフト層とボディ層と絶縁トレンチゲート電極とトレンチゲート電極隣接領域の配置関係は、IGBT素子領域と電流検出用IGBT素子領域とで等しい。
この場合、半導体基板の表面から観測したときに、電流検出用IGBT素子領域がダイオード素子領域によってIGBT素子領域から隔てられていることが好ましい。電流検出用IGBT素子領域は、後記する電流検出用ダイオード素子領域によってIGBT素子領域から隔てられていてもよい。
なお、IGBT素子領域の裏面に臨む範囲に、p型の半導体領域が形成されていれば、電流検出用IGBT素子領域自体はコレクタ層を備えていなくてもよい。
その場合、電流検出用ダイオード素子領域は、ダイオード素子領域よりも半導体基板の表面における占有面積が狭い。また、電流検出用ダイオード素子領域は、ダイオード素子領域での半導体領域の配置関係と同一配置関係を備えている。すなわち、ドリフト層とアノード層と絶縁トレンチゲート電極とアノード領域の配置関係は、ダイオード素子領域と電流検出用ダイオード素子領域とで等しい。
この場合、半導体基板の表面から観測したときに、電流検出用ダイオード素子領域がIGBT素子領域によってダイオード素子領域から隔てられていることが好ましい。電流検出用ダイオード素子領域は、前記した電流検出用IGBT素子領域によってダイオード素子領域から隔てられていてもよい。
なお、ダイオード素子領域の裏面に臨む範囲に、n型の半導体領域が形成されていれば、電流検出用ダイオード素子領域自体はカソード層を備えていなくてもよい。
この配置関係によると、小型の半導体基板内に、必要な素子領域をコンパクトに配置することが可能となる。
本方法では、半導体装置のIGBT素子領域をオン状態に切換えて給電する際には、そのIGBT素子領域を備えている半導体装置の絶縁トレンチゲート電極に正電圧を印加する。そのIGBT素子領域をオフ状態に切換えることによって他の半導体装置のダイオード素子領域に還流電流が流れる際には、その還流電流が流れる半導体装置の絶縁トレンチゲート電極に負電圧を印加する。
この駆動方法は、p型アノード層の不純物濃度を下げてリカバリ損失を低下させる際に特に有用となる。リカバリ損失と定常損失の両者を低減化することができる。
絶縁トレンチゲート電極に負電圧を印加した状態では、ドリフト層に対するホールの注入量が増加している。このまま、先にオフ状態にしたIGBT素子領域を再びオン状態に切換え、還流電流が流れているダイオード素子領域を非導通状態に切換えると、ドリフト層に蓄積されていたホールによってダイオード素子領域にリカバリ電流が流れる。そこで、IGBT素子領域をオフ状態から再びオン状態に切換えるに先立って(還流電流が流れているダイオード素子領域が非導通状態に切換えられるのに先立って)、還流電流が流れている半導体装置の絶縁トレンチゲート電極に、負電圧を印加することを中断する。これにより、ドリフト層に蓄積されるホールの量が減少し、ダイオード素子領域が非導通状態に切換えられるときに流れるリカバリ電流を小さくすることができる。ダイオード素子領域のリカバリ損失を低減化することができる。
本方法では、少なくとも2個のIGBT素子領域をオン状態に切換えて給電する際には、オン状態に切換える各々のIGBT素子領域を備えている各々の半導体装置の各々の絶縁トレンチゲート電極に正電圧を印加する。そうしてオン状態に切換えたIGBT素子領域のうち、少なくとも1個のIGBT素子領域をオフ状態に切換えるとともに少なくとも他の1個のIGBT素子領域をオン状態に維持することにより、別の半導体装置のダイオード素子領域に還流電流を流す。そして、先にオン状態からオフ状態に切換えたIGBT素子領域を再びオン状態に切換えた後に、還流電流が流れていた別の半導体装置の絶縁トレンチゲート電極に負電圧を印加する。
ダイオード素子領域が導通状態から非導通状態に移行してリカバリ電流が流れているときに、そのリカバリ電流が流れている半導体装置の絶縁トレンチゲート電極に負電圧を印加する。すると、ドリフト層に蓄積していたホールが、絶縁トレンチゲート電極に引き付けられ、ホールがアノード領域に戻る速度が遅くなる。ソフト・リカバリ特性を実現することができ、リカバリ電流が大きな電流に発達することを抑制することができる。サージ電圧の発生を抑制することができる。
また、本発明の駆動方法で駆動する給電装置は、本発明の逆導通型の半導体装置を用いているので、ダイオード素子領域のリカバリ損失を低減化することができる。リカバリ損失を低減化することができるとともに、リカバリ動作時にサージ電圧が発生することを抑制することができる。
(特徴1)本発明の駆動方法で駆動する給電装置Kは、4個の逆導通型の半導体装置A1,A2,B1,B2を備えているインバータ回路である。
(特徴2)IGBT素子領域J1のトレンチゲート電極12と、ダイオード素子領域J2のトレンチゲート電極12は、共通のゲート配線に接続されている。
本発明を具現化した半導体装置と、その半導体装置を備えている給電装置の駆動方法の第1実施例を、図1から図21を参照して説明する。本実施例の半導体装置は、同一半導体基板にIGBT素子領域とダイオード素子領域が混在している逆導通IGBTである。図1に示すように、本実施例の半導体装置B1の特徴は、IGBT素子領域J1では、絶縁トレンチゲート電極TGに隣接する位置にエミッタ領域として機能するn+型のトレンチゲート電極隣接領域20が形成されているのに対し、ダイオード素子領域J2では、絶縁トレンチゲート電極TGに隣接する位置にn+型のトレンチゲート電極隣接領域20が形成されておらず、代わりにアノードとして機能するp+型の領域(アノード領域40)が形成されていることである。また、本実施例の半導体装置B1の特徴は、アノード層50のp型不純物の濃度が、ボディ層30のp型不純物の濃度よりも低いことである。
図1は、半導体装置B1の要部断面図である。図2から図7は、半導体装置A1,A2,B1,B2を備えている給電装置Kが、モータMに給電している状態を説明する図である。なお、半導体装置A1,A2,B1,B2の各々は、同一の構成である。図8は、半導体装置A1,A2,B1,B2の各々のゲートGA1,GA2,GB1,GB2に印加するゲート電圧VGA1,VGA2,VGB1,VGB2のタイミングチャート図である。図9は、半導体装置B1のIGBT素子領域J1のオン状態を説明する図である。図10は、半導体装置B2のダイオード素子領域J2の導通状態を説明する図である。図11は、図10のダイオード素子領域J2の絶縁トレンチゲート電極TG近傍を拡大した図である。図12は、半導体装置B2のダイオード素子領域J2の導通状態であり、半導体装置B1のIGBT素子領域J1を再びオン状態にする直前の状態を説明する図である。図13は、半導体装置B1のIGBT素子領域J1を再びオン状態にした後に、半導体装置B2のダイオード素子領域J2にリカバリ電流が流れている状態を説明する図である。図14から図21は、半導体装置B1の製造方法を説明する図である。
半導体装置B1は、n-型の半導体基板2を用いて形成されている。半導体基板2には、IGBT素子領域J1とダイオード素子領域J2が混在している。
IGBT素子領域J1では、p+型のコレクタ領域80とn-型のドリフト層60とp-型のボディ層30が順に積層されている。IGBT素子領域J1の上層部2Uでは、半導体基板2の表面2aからボディ層30を貫通してn-型のドリフト層60まで伸びている複数本の絶縁トレンチゲート電極TGが形成されている。各々の絶縁トレンチゲート電極TGは、その長手方向を図1に示す奥行き方向に揃えて伸びている。また、各々の絶縁トレンチゲート電極TGは、半導体基板2の表面2aから半導体基板2の深さ方向に伸びている。絶縁トレンチゲート電極TGは、トレンチの内面に形成されている絶縁膜14を備えている。絶縁トレンチゲート電極TGは、絶縁膜14で覆われた状態でトレンチに収容されているトレンチゲート電極12を備えている。
また、IGBT素子領域J1では、上層部2Uに、p+型のボディコンタクト領域22が形成されている。ボディコンタクト領域22は、表面2aに臨む範囲に形成されている。ボディコンタクト領域22は、隣接するトレンチゲート電極隣接領域20の間に配置されている。
IGBT素子領域J1では、トレンチゲート電極隣接領域20とボディコンタクト領域22が、ボディ層30によってn-型のドリフト層60から分離されている。
IGBT素子領域J1では、トレンチゲート電極隣接領域20がエミッタ領域として機能する。
ダイオード素子領域J2でも、IGBT素子領域J1と同様の絶縁トレンチゲート電極TGが形成されている。各々の絶縁トレンチゲート電極TGは、半導体基板2の表面2aから半導体基板2の深さ方向に伸び、アノード層50を貫通してドリフト層60にまで達している。
また、ダイオード素子領域J2では、上層部2Uに、n+型のホール吸収領域42が形成されている。ホール吸収領域42は、表面2aに臨む範囲に形成されている。ホール吸収領域42は、隣接するアノード領域40の間に配置されている。n+型のホール吸収領域42は、絶縁トレンチゲート電極TGとは接していない。
ダイオード素子領域J2では、アノード領域40とホール吸収領域42が、アノード層50によってドリフト層60から分離されている。
トレンチゲート電極12と表面電極1の間には絶縁膜10が形成されており、両者は接続していない。トレンチゲート電極12は、表面電極1が形成されていない領域(図1の奥行き方向のいずれかの断面)で、図示していないゲート配線と接続している。
半導体基板2の裏面2bには、裏面電極3が形成されている。裏面電極3は、IGBT素子領域J1の裏面とダイオード素子領域J2の裏面に連続して伸びている。裏面電極3は、半導体基板2の下層部2Lで裏面2bに臨んで形成されているコレクタ領域80とカソード領域70の双方と導通している。
これにより、逆導通IGBTとして機能する半導体装置B1が構成されている。
図2から図7に示す半導体装置B1のコレクタCB1は、半導体装置B1の裏面電極3(図1参照)と導通している。半導体装置B1のエミッタEB1は、半導体装置B1の表面電極1(図1参照)と導通している。半導体装置B1のゲートGB1は、半導体装置B1のトレンチゲート電極12(図1参照)と導通している。半導体装置A1のコレクタCA1とエミッタEA1とゲートGA1も半導体装置B1と同様に各々の電極と導通している。半導体装置A2のコレクタCA2とエミッタEA2とゲートGA2も半導体装置B1と同様に各々の電極と導通している。半導体装置B2のコレクタCB2とエミッタEB2とゲートGB2も半導体装置B1と同様に各々の電極と導通している。
給電装置Kは、逆導通IGBTの2個の半導体装置A1,A2が直列に接続されている直列回路Aと、逆導通IGBTの2個の半導体装置B1,B2が直列に接続されている直列回路Bを備えている。それらの直列回路A,Bは並列に接続されている。その並列回路が、電源Sの一対の端子c,d間に接続されている。直列回路Aの半導体装置A1,A2間の中間電位点xは、モータMの一方の給電点に接続されている。直列回路Bの半導体装置B1,B2間の中間電位点yは、モータMの他方の給電点に接続されている。
IGBTがオン・オフしている時のIGBT素子領域J1のオン状態・オフ状態については、後述する。また、ダイオードが導通・非導通の時のダイオード素子領域J2の状態(導通状態・非導通状態)についても、後述する。まずは、給電装置KのがモータMに給電する動作のみを説明する。
以下の説明では、半導体装置A1,A2,B1,B2のIGBT素子領域J1で構成されるIGBTを簡単にIGBTという。また、半導体装置A1,A2,B1,B2のダイオード素子領域J2で構成されるダイオードをダイオードという。
図3は、給電装置KがモータMに給電している1つの状態を示している。半導体装置B1,A2のIGBTをオンし、半導体装置A1,B2のIGBTをオフする。この場合、電源Sの正側から半導体装置B1のIGBTとモータMと半導体装置A2のIGBTを介して電源Sの負側に戻る閉ループが形成される。これにより、モータMに図3に示す矢印方向の電流が流れる。モータMが給電される。
次に、図4に示すように、半導体装置B1のIGBTをオフし、半導体装置A2のIGBTのオン状態を維持する。すると、モータMと電源Sとの接続は切断される。しかしながら、モータMのインダクタンス成分によって、還流電流が流れる。還流電流は、モータMと半導体装置A2のIGBTと半導体装置B2のダイオードを介して流れる。モータMに図4に示す矢印方向の電流が流れ続ける。
次に、再び、図3に示す状態に戻す。モータMに図3に示す矢印方向の電流が流れ、モータMが給電される。
次に、図2に示すように、半導体装置A2のIGBTをオフし、半導体装置B1のIGBTのオン状態を維持する。すると、モータMと電源Sとの接続は切断される。しかしながら、モータMのインダクタンス成分によって、還流電流が流れる。還流電流は、モータMと半導体装置A1のダイオードと半導体装置B1のIGBTを介して流れる。モータMに図2に示す矢印方向の電流が流れ続ける。
次に、再び、図3に示す状態に戻す。モータMに図3に示す矢印方向の電流が流れ、モータMが給電される。
この状態を繰り返すことによって給電装置Kは、モータMに同じ方向の電流を流しながら、モータMに供給する電力の実効値を調整することができる。
図6は、給電装置KがモータMに給電している別の状態を示している。半導体装置A1,B2のIGBTをオンし、半導体装置B1,A2のIGBTをオフする。この場合、電源Sの正側から半導体装置A1のIGBTとモータMと半導体装置B2のIGBTを介して電源Sの負側に戻る閉ループが形成される。これにより、モータMに図6に示す矢印方向(図3とは逆方向)の電流が流れる。モータMが給電される。
次に、図7に示すように、半導体装置A1のIGBTをオフし、半導体装置B2のIGBTのオン状態を維持する。すると、モータMと電源Sとの接続が切断する。しかしながら、モータMのインダクタンス成分によって、還流電流が流れる。還流電流は、モータMと半導体装置B2のIGBTと半導体装置A2のダイオードを介して流れる。モータMに図7に示す矢印方向の電流が流れ続ける。
次に、再び、図6に示す状態に戻す。モータMに図6に示す矢印方向の電流が流れ、モータMが給電される。
次に、図5に示すように、半導体装置B2のIGBTをオフし、半導体装置A1のIGBTのオン状態を維持する。すると、モータMと電源Sとの接続が切断する。しかしながら、モータMのインダクタンス成分によって、還流電流が流れる。還流電流は、モータMと半導体装置B1のダイオードと半導体装置A1のIGBTを介して流れる。モータMに図5に示す矢印方向の電流が流れ続ける。
次に、再び、図6に示す状態に戻す。モータMに図6に示す矢印方向の電流が流れ、モータMが給電される。
この状態を繰り返すことによって給電装置Kは、モータMに同じ方向の電流を流しながら、モータMに供給する電力の実効値を調整することができる。
なお、以下では、給電装置KがモータMに、図2から図4に示す矢印方向の電流を流す場合について説明する。図5から図7に示す矢印方向の電流を流す場合も同様な方法を用いるので、この場合に関する説明は省略する。
図8の期間Q1(時刻t1まで)では、給電装置Kが図3に示す状態になる。
図8に示すように、半導体装置B1のゲートGB1に閾値以上のゲート電圧VGB1(+V(V))を印加している。また、半導体装置A2のゲートGA2に閾値以上のゲート電圧VGA2(+V(V))を印加している。また、半導体装置B2と半導体装置A1に印加するゲート電圧VGB2とゲート電圧VGA1は0Vとしている。
半導体装置B1のコレクタCB1が電源Sの正側に接続され、エミッタEB1が負側に接続され、ゲートGB1に+V(V)が印加される。これにより、半導体装置B1のIGBTがオンする(IGBT素子領域J1がオン状態となる)。また、半導体装置A2のコレクタCA2が正側に接続され、エミッタEA2が負側に接続され、ゲートGA2に+V(V)が印加される。これにより、半導体装置A2のIGBTがオンする(IGBT素子領域J1がオン状態となる)。モータMに図3に示す矢印方向の電流が流れる。
半導体装置B1の裏面電極3(コレクタCB1)に、図3に示す電源Sの正側が接続されて正電圧が印加されている。半導体装置B1の表面電極1(エミッタEB1)が負側に接続されている。また、トレンチゲート電極12(ゲートGB1)に+V(V)が印加されている。
半導体装置B1のIGBT素子領域J1では、トレンチゲート電極12に絶縁膜14を介して対向しているp-型のボディ層30がn型に反転してn型チャネル(図9では、バツ印で模式的に示している。)が形成される。これにより、トレンチゲート電極隣接領域(エミッタ領域)20から流出した電子(図9では、マイナス印で模式的に示している)が、n型チャネルを介してドリフト層60に注入される。この結果、コレクタ領域80からは、ドリフト層60に向けてホール(図9では、プラス印で模式的に示している。)が移動する。ドリフト層60には電子とホールが注入されて伝導度変調現象が起こり、半導体装置B1のIGBT素子領域J1が低いオン電圧でオン状態となる。ホールは、電子と再結合して消滅するか、ボディ層30とボディコンタクト領域22を経由して表面電極1へと排出される。
半導体装置B1のダイオード素子領域J2でも、トレンチゲート電極12に絶縁膜14を介して対向しているp--型のアノード層50がn型に反転し、n型チャネルが形成される。ダイオード素子領域J2のアノード層50のp型不純物の濃度は、ボディ層30の不純物濃度よりも低い。このため、アノード層50のうちのトレンチゲート電極12に絶縁膜14を介して対向している範囲は、IGBT素子領域J1のボディ層30よりもn型に反転し易い。しかしながら、ダイオード素子領域J2には、n型のトレンチゲート電極隣接領域20がないので、電子がドリフト層60に注入されることはない。
期間Q2では、半導体装置B1のIGBT素子領域J1がオフ状態となり、半導体装置A2のIGBT素子領域J1のオン状態が維持される。この結果、モータMと電源Sとの接続は切断する。しかしながら、モータMのインダクタンス成分によってモータMが電圧源となる。この電圧によって、半導体装置B2の表面電極1に裏面電極3よりも高い電圧が印加される。これにより、半導体装置B2のダイオード素子領域J2が導通状態となる。モータMと半導体装置A2のIGBT素子領域J1と半導体装置B2のダイオード素子領域J2を介して還流電流が流れる。モータMに図4に示す矢印方向の電流が流れ続ける。
時刻t1から時刻t2までの期間に還流電流が流れている半導体装置B2の要部断面図を図10に示す。
図10に示すように、半導体装置B2の表面電極1(アノード)に正電圧が印加されている。半導体装置B2の裏面電極3(カソード)が負側となっている。
これにより、アノード領域40からホールが流出してダイオード素子領域J2が導通状態となる。
トレンチゲート電極12に負電圧を印加すると、アノード層50のうちのトレンチゲート電極12に絶縁膜14を介して対向する範囲(図11に示す範囲H1)に、ホールが集中する。また、絶縁トレンチゲート電極TGの底部が、n-型のドリフト層60に突出している。トレンチゲート電極12に負電圧を印加すると、n-型のドリフト層60のうちの絶縁膜14を介してトレンチゲート電極12に対向する範囲(図11に、バツ印で模式的に示している。)にホールが誘起され、p型層に反転する。アノード層50の不純物濃度が薄くても、アノード領域40から注入されたホールが、ホールの集中範囲H1とトレンチ底部の周囲に形成されたp型反転層を介してn-型のドリフト層60に効率的に注入される。ホールの集中範囲H1とp型反転層を介してホールが移動するために、ダイオード素子領域J2での順方向電圧降下が低く、定常損失を低減化することができる。この駆動方法は、半導体装置A1,A2,B1,B2のダイオード素子領域J2のリカバリ損失を低減するために、アノード層50の不純物濃度を薄くした場合に特に有用となる。
このときの半導体装置B2の要部断面図を図12に示す。
図12に示すように、図10の場合と同様に(期間Q2の時刻t1から時刻t2までと同様に)、半導体装置B2の表面電極1(アノード)に正電圧が印加されている。半導体装置B2の裏面電極3(カソード)が負側となっている。これにより、図10の場合と同様に、アノード領域40からホールが流出してダイオード素子領域J2が導通状態となっている。
この期間では、半導体装置B2のゲートGB2に負のゲート電圧VGB2(−V(V))を印加することを中断しているので、ホールの集中範囲H1は消失している。また、トレンチ底部の周囲に形成されていたp型反転層も消失している。このために、のドリフト層60にホールが注入される効率が低下する。半導体装置B2のゲートGB2に負のゲート電圧VGB2(−V(V))を印加した場合(図10の場合)と比較して、ドリフト層60に蓄積されるホールの量が減少する。半導体装置B1のIGBTを再びオンする前に(すなわち還流電流が流れていた半導体装置B2のダイオード素子領域J2が非導通状態となる前に)、予め、半導体装置B2のダイオード素子領域J2のドリフト型層60に蓄積されているホールの量を低減化しておくことができる。このために、半導体装置B2のダイオード素子領域J2が非導通状態となる際に発生するリカバー損失を低下させることができる。
また、半導体装置B2のダイオード素子領域J2は、n型のホール吸収領域42を備えている。n型のホール吸収領域42を備えていると、半導体装置B2のダイオード素子領域J2が非導通状態となる際にアノード領域40に戻るホールの一部をホール吸収領域42で吸収することができる。ダイオード素子領域J2を導通状態から非導通状態に切換えたときのリカバリ損失をさらに少なくする。
期間Q3のうち、時刻t3から時刻t4までの間は、期間Q2で還流電流が流れていた半導体装置B2のゲートGB2のゲート電圧VGB2を、0(V)としている。時刻t4以降は、ゲートGB2に再び負のゲート電圧VGB2(−V(V))を印加する。
なお、時刻t4は半導体装置B1のIGBTを再びオンした時刻t3よりも後であり、半導体装置B2のダイオード素子領域J2がリカバリ動作をしている時に設定する。
ダイオード素子領域J2では、導通状態から非導通状態となった時に、導通状態のときとは逆方向のリカバリ電流が流れる。リカバリ電流の発生は、導通状態の期間に、ドリフト層60に流入したホールがアノード層50やアノード領域40に戻ることに起因する。本実施例では、半導体装置B2にリカバリ電流が発生する時に、半導体装置B2のトレンチゲート電極12に負のゲート電圧VGB2を印加している。負電圧を印加すると、図13に示すように、ドリフト層60に残留していたホールが、トレンチゲート電極12に引き寄せられ、ホールがアノード層50やアノード領域40に戻る速度を遅くすることができる。これにより、リカバリ電流の変化速度を抑制することができ、ソフト・リカバリ特性を実現することができる。リカバリ電流の変化速度に起因するサージ電圧を抑制することができる。また、リカバリ電流が大きな電流に発達することを防止することができる。
本実施例では、図4に示す半導体装置B2のダイオード素子領域J2に還流電流が流れる場合について説明したが、他の半導体装置のダイオード素子領域J2に還流電流が流れる場合(図2、図5、図7に示す各々の状態)も、半導体装置B2の場合と同様である。
また、そのダイオード素子領域J2にリカバリ電流が流れるときには、予めそのダイオード素子領域J2に蓄積されているホールの量を減少させておくことでリカバリ電流を抑制することができる。
また、そのダイオード素子領域J2にリカバリ電流が流れているときには、そのダイオード素子領域J2におけるホールの移動を抑制することでリカバリ電流が増大化することを抑制し、リカバリ電流の変化速度を遅くすることができる。
なお、本実施例では、モータMが単相の場合の給で装置Kについて説明したが、例えばモータMが3相の場合には、6個の逆導通型の半導体装置を用いて給電装置を構成することができる。本発明は、給電回路の相数に限定されるものではない。
図14に示すように、まず、n-型の半導体基板2を準備する。表面2aからp型不純物を注入する。熱処理をすることにより、図14に示すp--型層P1が形成される。
次に、図15に示すように、ダイオード素子領域J2(図1参照)を形成する範囲の表面2aに、マスクR1を形成する。再び、表面2aからp型不純物を注入する。表面2aにマスクR1を形成している範囲にはp型不純物が注入されないので、表面2aにマスクR1を形成していない範囲のp型不純物の濃度がp--型層P1よりも高くなる。熱処理をすることにより、表面2aにマスクR1を形成していない範囲のp--型層P1が、p-型のボディ層30となり、表面2aにマスクR1を形成している範囲のp--型層P1がそのまま残り、p--型のアノード層50となる。なお、前記したp--型層P1を形成するための熱処理は実施せずに、まとめて熱処理をしてボディ層30とアノード層50を形成してもよい。
次に、半導体基板2のうち、ダイオード素子領域J2となる範囲に、アノード領域40とホール吸収領域42を形成する。アノード領域40とホール吸収領域42は、隣接する絶縁トレンチゲート電極TG間の表面2aに形成する。
なお、IGBT素子領域J1のトレンチゲート電極隣接領域20とダイオード素子領域J2のホール吸収領域42は、共にn+型の半導体領域であるとともに、表面2aからの深さも同程度であるので、同じプロセスで形成することが好ましい。また、IGBT素子領域J1のボディコンタクト領域22とダイオード素子領域J2のアノード領域40は、共にp+型の半導体領域であるとともに、表面2aからの深さも同程度であるので、同じプロセスで形成することが好ましい。
次に、コレクタ領域80とカソード領域70の双方に接続する裏面電極3を形成する。
また図31に示す従来の半導体装置100aでは、IGBT素子領域J101のエミッタ・コレクタ間(n+型のトレンチゲート電極隣接領域120とコレクタ領域180の間)に電流が流れているIGBT素子領域J101のオン状態の際に、ダイオード素子領域J102からもドリフト層160に電子が注入されている。ダイオード素子領域J102が、オン状態の際のIGBT素子領域J101の特性に影響を及ぼしている。一方、本実施例の半導体装置A1,A2,B1,B2では、ダイオード素子領域J2にn型のトレンチゲート電極隣接領域120が形成されていない。このため、IGBT素子領域J1がオン状態の際に、ダイオード素子領域J2からは、ドリフト層60に電子が注入されない。ダイオード素子領域J2が、オン状態の際のIGBT素子領域J1の特性に影響を及ぼさない。同一半導体基板2に形成されているダイオード素子領域J2が、IGBT素子領域J1の動作に干渉しない。
また、本実施例の半導体装置では、表面2aに臨んでいるアノード領域40のp型の不純物濃度を高濃度で形成することができるので、p型のアノード領域40と半導体基板2の表面2aに形成する表面電極1を良好にオーミック接触させることができる。双方の間で電圧降下が発生することによる局所的な発熱を抑制することができる。
半導体装置B1によると、ダイオード素子領域J1のリカバリ損失を、他の特性を劣化させることなく低減化することができる。
また、本実施例の半導体装置では、ダイオード素子領域J2が非導通状態に切り換わる際に、ホールの一部が、ホール吸収領域42に吸収される。ダイオード素子領域J2のリカバリ損失をさらに低減化することができる。
また、本実施例の半導体装置A1,A2,B1,B2では、ダイオード素子領域J2の全てのセルに、ホール吸収領域42が形成されている場合について説明したが、ホール吸収領域42は一部のセルに形成されている構成であってもよい。
本発明を具現化した半導体装置の第2実施例を、図22と図23を参照して説明する。図22に示すように、本実施例の半導体装置B11の特徴は、IGBT素子領域J11のボディ層32の中間深さにn型のボディ分割領域90が形成されていることである。ボディ分割領域90は電気的にフローティング状態であることが好ましい。
図22は、半導体装置B11のIGBT素子領域J11のオン状態を説明する図である。図23は、半導体装置B11のダイオード素子領域J12の導通状態を説明する図である。なお、図22,23では、図1に示す半導体装置B1と同等の構成要素には、同一番号の符号を付して重複説明を省略する。
トレンチゲート電極12に、閾値以上のゲート電圧を印加すると、トレンチゲート電極12が絶縁膜14を介して対向している範囲のボディ層32にチャネル(図22にバツ印で模式的に示している。)が形成される。チャネルは、ボディ分割領域90で分割された上部ボディ層32aと下部ボディ層32bの双方に形成される。トレンチゲート電極隣接領域20から流出した電子が、上部ボディ層32aのチャネルとボディ分割領域90と下部ボディ層32bのチャネルを介してドリフト層60に注入される。また、コレクタ領域80からは、ドリフト層60に向けてホールが移動する。ドリフト層60には電子とホールが注入されて伝導度変調現象が起こり、半導体装置B11のIGBT素子領域J11が低いオン電圧でオン状態となる。
半導体装置B11のダイオード素子領域J12でも、トレンチゲート電極12に絶縁膜14を介して対向しているp--型のアノード層50がn型に反転し、n型チャネルが形成される。しかしながら、ダイオード素子領域J12には、電子を流出するn型のトレンチゲート電極隣接領域20がないため、電子がドリフト層60に注入されない。
第1実施例の図10に示す場合と同様に、この期間に半導体装置B11のトレンチゲート電極12に負電圧を印加すると、ドリフト層60に注入されるホールの量が増え、ダイオード素子領域J12の定常損失を低減化することができる。ただし、この場合には、ボディ分割領域90のうちの絶縁トレンチゲート電極TGと接する範囲の導電型がp型に反転してしまわない程度の負電圧を印加する。
この際にIGBT素子領域J11では、ボディコンタクト領域22からホールが流出するものの、下部ボディ層32bとボディ分割領域90によって形成されるダイオードに阻まれて、このホールがドリフト層60に注入されない。
なお、複数個の半導体装置B11を用い、第1実施例で説明した給電装置K(図2から図7参照)を構成することもできる。
本発明を具現化した半導体装置の第3実施例を、図24を参照して説明する。
本実施例の半導体装置は、IGBT素子領域M1とダイオード素子領域M2が隣接しているだけでなく、電流検出用IGBT素子領域N1と電流検出用ダイオード素子領域N2を備えている。
電流検出用IGBT素子領域N1は、IGBT素子領域M1よりも表面での占有面積が狭い。半導体基板を表面から観測すると、電流検出用IGBT素子領域N1の周囲は、ダイオード素子領域M2と電流検出用ダイオード素子領域N2で取囲まれており、IGBT素子領域M1から隔てられている。電流検出用IGBT素子領域N1は、ダイオード素子領域M2の一端部(IGBT素子領域M1側の下方の端部)で入れ子状に形成されている。
電流検出用ダイオード素子領域N2は、ダイオード素子領域M2よりも表面での占有面積が狭い。半導体基板を表面から観測すると、電流検出用ダイオード素子領域N2の周囲は、IGBT素子領域M1と電流検出用IGBT素子領域N1で取囲まれており、ダイオード素子領域M2から隔てられている。電流検出用ダイオード素子領域N2は、IGBT素子領域M1の一端部(ダイオード素子領域M2側の下方の端部)で入れ子状に形成されている。電流検出用ダイオード素子領域N2と電流検出用IGBT素子領域N1は隣接している。
ダイオード素子領域J12にはn型のトレンチゲート電極隣接領域20が形成されていないために、オン状態のIGBT素子領域J11の特性は、ダイオード素子領域J12によって影響されない。また、IGBT素子領域J11にはボディ分割領域90が形成されているために、導通状態のダイオード素子領域J12の特性は、IGBT素子領域J11によって影響されない。IGBT素子領域J11とダイオード素子領域J12が干渉し合わない。
そのために、図24に示すように、一方の素子領域に他方の電流検出用素子領域を入れ子状に形成することができる。一方の素子領域と、その素子の電流検出用素子領域は離間されているので干渉し合わない。
電流検出用IGBT素子領域N1に流れる電流を検出することにより、IGBT素子領域M1に流れる電流を算出することができる。電流検出用ダイオード素子領域N2に流れる電流を検出することにより、ダイオード素子領域M2に流れる電流を算出することができる。
また、電流検出用IGBT素子領域N1と電流検出用ダイオード素子領域N2は、同時にオン状態となることがなく、しかも双方は隣接している。このため、双方に共通の表面電極と裏面電極を形成することができる。それぞれに電極を形成する工程を削減することができる。また、電極を引き出す端子も共通の端子を用いることができるので、各々を計測器に接続する手間を削減することができる。
なお、絶縁トレンチBT1,BT2,BT3は、トレンチに絶縁体が充填されている構成であってもよいし、絶縁トレンチゲート電極と同じ構成であってもよい。
絶縁トレンチBT4は、トレンチに絶縁体が充填されている構成であってもよいし、絶縁トレンチゲート電極と同じ構成であってもよい。
素子領域の境界のうち少なくとも一部に絶縁トレンチを形成することにより、さらに互いの素子が干渉し合わない構成とすることができる。
また、電流検出用ダイオード素子領域N2の裏面に必ずカソード領域70が形成されている必要はない。電流検出用ダイオード素子領域N2に隣接する素子領域の裏面にn型の半導体領域が形成されていれば電流を検出することができる。
なお、電流検出用IGBT素子領域N11の裏面に必ずコレクタ領域80が形成されている必要はない。IGBT素子領域M11の裏面にp型の半導体領域が形成されていれば電流を検出することができる。また、電流検出用ダイオード素子領域N21の裏面に必ずカソード領域70が形成されている必要はない。ダイオード素子領域M21の裏面にn型の半導体領域が形成されていれば電流を検出することができる。
2:半導体基板
2L:下層部
2U:上層部
2a:表面
2b:裏面
3:裏面電極
10:絶縁膜
12:トレンチゲート電極
14:絶縁膜
20:トレンチゲート電極隣接領域
22:ボディコンタクト領域
30,32:ボディ層
32a: 上部ボディ層
32b:下部ボディ層
40:アノード領域
42:ホール吸収領域
50:アノード層
60:ドリフト層
70:カソード領域
80:コレクタ領域
90:ボディ分割領域
A,B: 直列回路
A1,A2,B1,B2,B11: 半導体装置
BT1,BT2,BT3,BT4:絶縁トレンチ
c,d: 端子
H1:範囲
J1,J11:IGBT素子領域
J2,J12:ダイオード素子領域
K:給電装置
M:モータ
x,y:中間電位点
M1,M11:IGBT素子領域
M2,M21:ダイオード素子領域
N1,N11:電流検出用IGBT素子領域
N2,N21:電流検出用ダイオード素子領域
R1,R2,R3:マスク
S:電源
T:トレンチ
TG:絶縁トレンチゲート電極
W1,W2,W3,W4,W5:範囲
Claims (8)
- 同一半導体基板にIGBT素子領域とダイオード素子領域が混在している半導体装置であり、
IGBT素子領域では、p型のコレクタ層とn型のドリフト層とp型のボディ層が順に積層されており、前記半導体基板の表面から前記ボディ層を貫通して前記ドリフト層まで伸びている絶縁トレンチゲート電極が形成されており、その絶縁トレンチゲート電極に接しているとともに前記表面に臨む範囲にn型のトレンチゲート電極隣接領域が形成されており、そのトレンチゲート電極隣接領域が前記ボディ層によって前記ドリフト層から分離されており、
ダイオード素子領域では、n型のカソード層と前記n型のドリフト層とp型のアノード層が順に積層されており、前記表面から前記アノード層を貫通して前記ドリフト層まで伸びている絶縁トレンチゲート電極が形成されており、前記表面に臨む範囲にp型のアノード領域が形成されており、そのアノード領域が前記アノード層によって前記ドリフト層から分離されており、
ダイオード素子領域では、前記のn型のトレンチゲート電極隣接領域が形成されておらず、しかも、前記アノード層の不純物濃度が前記ボディ層の不純物濃度よりも薄く、さらに、前記絶縁トレンチゲート電極に接しないとともに前記表面に臨む範囲にn型の半導体領域が形成されていることを特徴とする半導体装置。 - 前記ダイオード素子領域では、前記アノード領域が前記絶縁トレンチゲート電極に接していることを特徴とする請求項1に記載の半導体装置。
- 前記IGBT素子領域では、前記ボディ層の中間深さに、隣接する前記絶縁トレンチゲート電極間に亘って伸びているn型のボディ分割領域が形成されていることを特徴とする請求項1または2に記載の半導体装置。
- 前記IGBT素子領域と前記ダイオード素子領域に加えて電流検出用IGBT素子領域が形成されており、
その電流検出用IGBT素子領域は、前記IGBT素子領域よりも前記表面における占有面積が狭く、前記ドリフト層と前記ボディ層と前記絶縁トレンチゲート電極と前記トレンチゲート電極隣接領域で構成される前記IGBT素子領域での半導体領域配置と同一の半導体領域配置を備えており、
前記表面から観測したときに、前記電流検出用IGBT素子領域が前記ダイオード素子領域によって前記IGBT素子領域から隔てられていることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の半導体装置。 - 前記IGBT素子領域と前記ダイオード素子領域に加えて電流検出用ダイオード素子領域が形成されており、
その電流検出用ダイオード素子領域は、前記ダイオード素子領域よりも前記表面における占有面積が狭く、前記ドリフト層と前記アノード層と前記絶縁トレンチゲート電極と前記アノード領域で構成される前記ダイオード素子領域での半導体領域配置と同一の半導体領域配置を備えており、
前記表面から観測したときに、前記電流検出用ダイオード素子領域が前記IGBT素子領域によって前記ダイオード素子領域から隔てられていることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の半導体装置。 - 請求項1から5のいずれか1項に記載の半導体装置の複数個を組み合わせて構成した給電装置の駆動方法であり、
IGBT素子領域をオン状態に切換えて給電する際には、そのIGBT素子領域を備えている半導体装置の前記絶縁トレンチゲート電極に正電圧を印加し、
そのIGBT素子領域をオフ状態に切換えることによって他の半導体装置のダイオード素子領域に還流電流が流れる際には、その還流電流が流れる半導体装置の前記絶縁トレンチゲート電極に負電圧を印加することを特徴とする給電装置の駆動方法。 - 前記IGBT素子領域をオフ状態から再びオン状態に切換えるに先立って、前記他の半導体装置の前記絶縁トレンチゲート電極に負電圧を印加することを中断すること特徴とする請求項6に記載の給電装置の駆動方法。
- 請求項1から5のいずれか1項に記載の半導体装置の複数個を組み合わせて構成した給電装置の駆動方法であり、
少なくとも2個のIGBT素子領域をオン状態に切換えて給電する際には、オン状態に切換える各々のIGBT素子領域を備えている各々の半導体装置の各々の前記絶縁トレンチゲート電極に正電圧を印加し、
先にオン状態に切換えたIGBT素子領域のうち、少なくとも1個のIGBT素子領域をオフ状態に切換えるとともに、少なくとも他の1個のIGBT素子領域をオン状態に維持することにより、別の半導体装置のダイオード素子領域に還流電流を流し、
先にオン状態からオフ状態に切換えたIGBT素子領域を再びオン状態に切換えた後に前記還流電流を流していた前記別の半導体装置の前記絶縁トレンチゲート電極に負電圧を印加することを特徴とする給電装置の駆動方法。
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