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JP4891284B2 - ベルト式無段変速機 - Google Patents

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Description

本発明は、ベルト式無段変速機に関し、特に、固定プーリと可動プーリとの摺動構造に関するものである。
ベルト式無段変速機は、金属製のベルトを介して入力側から出力側への動力伝達を行う。このベルト式無段変速機は、固定プーリに対して、可動プーリを軸方向に移動させることによりベルトの有効半径を変化させて、変速比を変更する。
このようなベルト式無段変速機では、トルクの方向が切り替わる場合に、固定プーリに対して可動プーリが相対回転を起こすと、ベルトを構成する駒が回転方向に変位して金属製のベルトが破損してしまう場合がある。そのため、固定プーリと可動プーリとの相対回転を防止するためにこれらを精度良く管理する必要がある。
従来このような固定プーリと可動プーリとの摺動構造に関して、ボールスプライン軸受や、ローラスプライン軸受等が提案されているが、部品点数の少ないローラスプラインが、変速機の小型化や低コスト化に有利である。
このローラスプラインを用いた摺動構造に関して、特許文献1には、ローラスプラインを、スナップリング及び油圧作用室壁面に当接する位置まで摺動可能に構成した無段変速機が記載されている。
また、特許文献2には、ローラスプラインの軸方向位置を、直交溝の端面とワッシャとによって規制する無段変速機が記載されている。またさらに、ローラスプラインの軸方向内側と軸方向外側とに、一対のスナップリングによって規制する無段変速機が記載されている。
特開2005−127427号公報 特開2006−132549号公報
しかしながら、これら特許文献に記載のようなローラスプラインでは、軸方向両端においてローラを回転軸等に当接させて固定するので、ローラの軸方向の長さが長くなり、ローラの当接面の機械強度を高める必要があった。
また、ローラの両端をスナップリングで固定する場合は、スナップリングが複数必要となるため部品点数が増えると共に、組立て工数が増え、製造コストが増加してしまう。
本発明は、このような問題点に着目してなされたものであり、部品点数を増加させることなく、回転軸の軸方向の長さを短縮して、より小型化が可能となるベルト式無段変速機を提供することを目的とする。
本発明の一実施態様によると、外周に固定状態に設けられた固定プーリ15aと、軸方向に形成された溝状の第1のスプライン溝101aと、第1のスプライン溝101aの略中間に形成された溝部を有する固定部材装着用溝部102と、を備える回転軸13と、回転軸13の外周に固定プーリ15aとシーブ面が対向するように配置され、回転軸13に対して軸方向に摺動可能に装着され、第1のスプライン溝101aと対向する溝状の第2のスプライン溝101bが形成された可動プーリ15bと、第1のスプライン溝101aと第2のスプライン溝101bとの間に配置される略円筒形状の円柱部110(すなわち、ローラスプライン)と、を備え、円柱部110は、固定部材装着用溝部102に装着された固定部材120によって軸方向に固定されることを特徴とする。
なお符号は参照用であって、これに限定されるものではない。
本発明によると、回転軸に固定状態に設けられた固定プーリの回転トルクを、第1のスプライン溝及び第2のスプライン溝に配置される円柱部により可動プーリに伝えるので、部品点数を増やすことなく固定プーリと可動プーリとの回転ズレを精度良く管理できると共に、回転軸の軸方向の長さを縮小でき、ベルト式無段変速機を小型化することが可能となる。
以下に、本発明の実施の形態のベルト式無段変速機について、図面を用いて説明する。
<第1実施形態>
図1は、本発明の第1の実施の形態のベルト式無段変速機(CVT)の構成の一例を示す正面断面図である。
図示しないエンジンにより駆動される出力軸1の回転は、無段変速機のケース9に内装される発進装置としてのトルクコンバータ2と、前後進切換機構3と、無段変速機構4とに伝達される。
トルクコンバータ2は、所謂ロックアップを制御するロックアップクラッチ5を備えており、ロックアップクラッチ5は、タービン軸6に連結されている。ロックアップクラッチ5の一方側は、供給室(以下、アプライ室)7a、他方側は開放室(以下、リリース室)7bとして形成される。リリース室7b内に供給した油圧をアプライ室7aを介して循環させることによりトルクコンバータ2は作動状態となる。一方、アプライ室7aに油圧を供給し、リリース室7b内の油圧を下げることによりロックアップクラッチ5は、フロントカバー8と係合してロックアップ状態となる。このリリース室7b内の圧力を調整することによりロックアップクラッチ5を意図的に滑らせるようにしたスリップ圧制御が行われる。
前後進切換機構3は、トルクコンバータ2の出力軸であるタービン軸6の回転を無段変速機構4に正(前進)方向に伝達するための前進用クラッチと、逆(後退)方向に伝達するための後退用ブレーキとを備えている。クラッチ油室に油圧を供給して前進用クラッチを接続状態とすると、タービン軸6の回転は無段変速機構4に正方向に伝達され、ブレーキ油室に油圧を供給して後退用ブレーキを接続状態とすると、逆方向に減速して伝達される。
無段変速機構4は、前後進切換機構3に連結される入力軸(プライマリ軸)13と、これと平行に配置された出力軸(セカンダリ軸)14とを備えている。
プライマリ軸13にはプライマリプーリ15が設けられている。プライマリプーリ15は、プライマリ軸13の外周に固定状態に設けられた固定プーリ15aと、プライマリ軸13の外周に配置され、軸方向に摺動可能に嵌合される可動プーリ15bとを有する。固定プーリ15aに対して可動プーリ15bが摺動されることにより、プーリのベルト17が接触するプーリ面の間隔、つまりプーリ溝幅が可変に形成される。
固定プーリ15a及び可動プーリ15bは、それぞれが向かい合う面に、円周状の平面部により形成される固定シーブ面15c及び可動シーブ面15dを備える。
セカンダリ軸14にはセカンダリプーリ16が設けられている。セカンダリプーリ16は、セカンダリ軸14の外周に固定状態に設けられた固定プーリ16aと、セカンダリ軸14の外周に配置され、軸方向に摺動可能に嵌合される可動プーリ16bとを有する。固定プーリ16aに対して可動プーリ16bが摺動されることにより、プーリ溝幅が可変に形成される。
なお、固定プーリ16a及び可動プーリ16bは、それぞれが向かい合う面に、円周状の平面部により形成される固定シーブ面16c及び可動シーブ面16dを備える。
これら固定プーリ15a及び可動プーリ15b又は固定プーリ16a及び可動プーリ16bは、図2において後述する摺動構造により、摺動可能に構成されている。
プライマリプーリ15とセカンダリプーリ16との間には、ベルト17が掛け渡されている。これら両方のプーリ15、16の溝幅を変化させて、それぞれのプーリ15、16に対する巻付け径の比率を変化させることにより、プライマリ軸13の回転がセカンダリ軸14に無段階に変速されて伝達されることになる。
セカンダリ軸14の回転は、減速歯車及びディファレンシャル装置18を有する歯車列を介して車輪に伝達されるようになっている。なお、前輪駆動車の場合には、車輪は前輪となる。
次に、プライマリプーリ15及びセカンダリプーリ16の周辺の構成をさらに詳しく説明する。
プライマリプーリ15の溝幅を変化させるために、プライマリ軸13には、円柱部とディスク部とを有するプランジャ隔壁21が固定され、このプランジャ隔壁21の外周側端部に摺動可能に接触するプライマリシリンダ22が、可動プーリ15bのプーリ面のプライマリ軸方向背面側に固定されており、プランジャ隔壁21とプライマリシリンダ22(可動プーリ15b)との間には、作動油室23aが形成されている。一方、プライマリシリンダ22の開口端側内面にはプライマリ軸方向に延出する円盤状のプレート(隔壁)24が固定され、このプレート24とプランジャ隔壁21との間に、バランス油室23bが形成されている。従って、バランス油室23bはプランジャ隔壁21を挟んで作動油室23aと対向して設けられる。
セカンダリプーリ16の溝幅を変化させるために、セカンダリ軸14にはテーパー状の円柱部を有するプランジャ隔壁26が固定され、このプランジャ隔壁26の外周面に摺動可能に接触するセカンダリシリンダ27が、可動プーリ16bのプーリ面のセカンダリ軸方向背面側に固定されており、プランジャ隔壁26とセカンダリシリンダ27(可動プーリ16b)との間には作動油室28aが形成されている。一方、セカンダリシリンダ27の開口端内側にはセカンダリ軸方向に延出する円盤状のプレート29が設けられ、このプレート29とプランジャ隔壁26との間にはバランス油室28bが形成されている。
従って、プライマリシリンダ22内の作動油室23a内に作動油を供給してその容積を大きくすると、可動プーリ15bはプライマリシリンダ22とともに固定プーリ15a側に移動してプーリ溝幅が狭くなり、容積を小さくするとプーリ溝幅が広くなる。また、セカンダリシリンダ27内の作動油室28a内に作動油を供給してその容積を大きくする可動プーリ16bは、セカンダリシリンダ27とともに固定プーリ16a側に移動してプーリ溝幅が狭くなり、容積を小さくするとプーリ溝幅が広くなる。
ケース9は、プライマリ軸13の一端をベアリングを介して回転自在に支持するサイドカバー9aを備え、このサイドカバー9aに作動油が流通する油路10が配置される。ここで、ケース9は、前後進切換機構3と無段変速機構4を内装する円筒状のケース本体9bと、このケース本体9bの開口部を閉塞するサイドカバー9aと、ケース本体9bのエンジン側に固定され、トルクコンバータ2を内装するコンバータハウジング9cとから構成される。
CVTが作動しているときには、作動油室23a内の作動油にはプライマリプーリ15の回転によって遠心力に起因する油圧が発生し、その遠心油圧は可動プーリ15bをベルト17に押し付ける方向に作用するが、この方向とは逆方向の遠心油圧がバランス油室23bに発生する。同様に、作動油室28aにはセカンダリプーリ16の回転によって遠心油圧が発生するが、この方向とは逆方向の遠心油圧がバランス油室28bに発生する。このようにして、作動油室23a、28aに生じる遠心油圧がバランス油室23b、28bに生じる遠心油圧により相殺されて、遠心油圧によるプライマリプーリ15、セカンダリプーリ16の溝幅の変化が抑制できる。
次に、第1の実施形態の固定プーリ15a及び可動プーリ15bの摺動構造を、より詳細に説明する。
なお、以降はプライマリプーリ15を例に説明するが、セカンダリプーリ16の構成についても同様である。
図2は、第1の実施の形態の固定プーリ15a及び可動プーリ15bの断面図である。また、図3は、図2のA−A断面図である。
前述のように固定プーリ15aと可動プーリ15bとは、プライマリ軸13の軸方向に摺動可能に構成される。
ここで、固定プーリ15aに対して可動プーリ15bが周方向に相対回転した場合には、ベルト17を構成する駒が回転方向に変位し、ベルト17を構成する金属製のベルトが破損してしまう場合がある。そのため、固定プーリと可動プーリとの相対回転を防止するためにこれらを精度良く管理する必要がある。
そこで、本実施の形態では、この図2に示すような特徴的な構成を備えた。すなわち、固定プーリ15aと可動プーリ15bとの間に円柱部110を装着し、可動プーリ15bを摺動可能に構成すると共に、この円柱部110によって固定プーリ15aの回転トルクを可動プーリ15bに伝えるように構成した。
固定プーリ15a側のプライマリ軸13の外周面には軸方向に並行のスプライン溝101aが形成されている。そして、可動プーリ15b側には、このスプライン溝101aに対向するように、軸方向にスプライン溝101bが形成されている。そして、これらスプライン溝101a及びスプライン溝101bの間に、略円筒形状(ローラ形状)の形状を有する円柱部110が摺動可能に装着されている。
なお本実施の形態では、このスプライン溝101a、101b及び円柱部は、プライマリプーリ15(又はセカンダリプーリ16)に対して一個備えられるが、複数個(例えば等間隔に3個)備えてもよい。複数個備えることにより、大きな回転トルクに対応することができる。
また、プライマリ軸13側のスプライン溝101aには、軸方向の略中間にスナップリング120が挿入されるスナップリング溝102が形成されている。
スナップリング120は、一部が開放された円環状の形状を有し、弾性のある素材により構成される。このスナップリング120は、図3に示すように、自由状態ではスナップリング溝102の底面外周よりも若干大きな径となるように構成されている。
円柱部110は、軸方向の略中間にスナップリング120と係合するように円環状の凹形状を有する円柱部溝部112が形成されている。円柱部110がスプライン溝101a、101bに装着されたときに、この円柱部溝部112がスナップリング120に係合するように構成されている。
図3に示すように、スナップリング120は、スプライン溝101aの底面部分からは露出しているが、その他の部分は、プライマリ軸13に周方向に形成されたスナップリング溝102により軸方向に動きが規制されている。従って、この円柱部溝部112とスナップリング120とが係合することによって、円柱部110は、軸方向の移動が規制されて、プライマリ軸13に固定される。
また、円柱部110は、軸方向の両端部が周方向に面取り加工又はR面加工されている。特に、軸方向の固定プーリ15a側の端部は、よりなだらかな面が形成されている。
このように、円柱部110が、プライマリ軸13と一体の固定プーリ15aに固定されることにより、可動プーリ15bは、円柱部110とスプライン溝101bとの間で摺動可能に構成される。
なお、円柱部110の軸方向の両端側は、スプライン溝101a、101b及びプランジャ隔壁21等、プライマリプーリ15の構造物の何れにも接していない。すなわち、円柱部110の軸方向の固定プーリ15a側の端部は、スプライン溝101a、101bの奥手側に突き当てることなく所定の間隔を隔てて配置される。同様に、円柱部110の軸方向のプランジャ隔壁21側の端部は、プランジャ隔壁21に突き当てることなく所定の間隔を隔てて配置される。これにより、スプライン溝101a、101bの奥手側端部を加工する必要がなくなると共に、円柱部110の軸方向の両端側の要求硬度を高くする必要がなくなる。
以上のように、円柱部110は、固定部材であるスナップリング120と、この固定部材であるスナップリング120が装着されるスナップリング溝102と、円柱部110に形成され、固定部材であるスナップリングに係合する溝部である円柱部溝部112と、を備え、これらスナップリング120、スナップリング溝102及び円柱部溝部112により軸方向に固定され、円柱部110の軸方向の両端面ではプライマリプーリ15を構成する部材とは所定の間隔を隔てて配置される。
次に、本実施の形態のプライマリプーリ15の組立て方法を説明する。
まず、プライマリ軸13と固定状態の固定プーリ15aに対して、スナップリング120を装着する。なお、スナップリング120は、スナップリングプライヤ等により開放部を拡大したときに、全体がプライマリ軸13よりも大きな径となるように構成されている。
次に、可動プーリ15bをプライマリ軸13に組付ける。可動プーリ15bは、プランジャ隔壁21側からプライマリ軸13に挿入される。このとき、プライマリ軸のスプライン溝101aと可動プーリ15bのスプライン溝101bとが対向するように組付ける。
次に、円柱部110をスプライン溝101a、101bに挿入する。円柱部110は、前述のように軸方向の両端部が面取り加工されている。そのため、この面取り部により、スナップリング120を押し付けて径方向に縮小させることにより、スナップリング120がスナップリング溝102内に収納された状態で円柱部110が固定プーリ15a方向に移動される。そして、円柱部110の円柱部溝部112がスナップリング120と対峙する位置まで移動したとき、スナップリング120は、その弾性により径方向に拡大する。これにより、円柱部溝部112とスナップリング120とが係合する。
その後、プランジャ隔壁21等の部材を組付ける。これにより、プライマリ軸13と一体状態の固定プーリ15aに可動プーリ15bが組付けられて、プライマリプーリ15の組立てが完成する。
なお、前述のように、スプライン溝101a、101bにおける軸方向の固定プーリ15a側の端部は、プランジャ隔壁21側よりもより大きな面取り加工がされており、これによりスナップリング120を径方向に縮小させることができるよう構成されている。円柱部110がこのような形状であることによって、円柱部110をプライマリプーリに組付ける際の作業性が高まる。この場合は、円柱部110を組付ける際の方向が一方向に決定してしまうが、円柱部110の両端側を、スナップリング120を径方向に縮小させることができるように面取り加工してもよい。これにより、円柱部110の組付け方向を考慮する必要がなくなり、作業性がさらに高まる。
なお、前述のように、円柱部溝部112は、円柱部110の週方向に円環状に形成されているが、円環状である必要はない。円柱部110の周方向の一部に形成された溝状部により、スナップリング120を径合させるように構成してもよい。なお、この場合は、この溝状部が正しくスナップリング120に係合するように方向を定めて組付ける必要がある。
以上のように構成された本発明の第1の実施の形態について、次に効果を説明する。
本発明の実施の形態では、プライマリ軸13と可動プーリ15bとに設けられたスプライン溝101a、101bに円筒形状を有する円柱部110を備えた。これにより、固定プーリ15aに対する可動プーリ15bの相対回転(回転ガタ)の発生を抑えることできる。そして、スプライン溝101a、101b及び円柱部110の加工精度を管理することにより、この回転ガタを精度良く管理することが可能となる。
また、また、円柱部110は、軸方向の端部をプライマリプーリ15を構成する構造物に当接させる必要がないので、プライマリ軸13(またはセカンダリ軸14)の軸方向の長さを小さくすることが可能となる。その結果、ベルト式無段変速機を軸方向に小型化することが可能となる。
また、円柱部110は、スナップリング120のみによって軸方向に固定されているので、部品点数を少なくすることが可能となる。さらに、このような構成により、円柱部110の両端部を、例えばプライマリ軸13やプランジャ隔壁21等に突き当てて固定する必要がないため、円柱部110の要求硬度を小さくすることができる。また、スプライン溝101a、101bの軸方向の奥側端部に円柱部を突き当てるための加工を行う必要がなくなる。これにより、製造コストを小さくすることが可能となる。
また、円柱部110の軸方向の両端側で固定する部材を必要としないので、これらの部材が不要となると共に、軸方向の加工精度を高くする必要がなくなり、製造コストを小さくすることが可能となる。
<第2実施形態>
次に、本発明の第2の実施の形態について説明する。
前述の第1の実施の形態では、円柱部の軸方向への固定をスナップリングにより行ったが、第2の実施の形態では、円柱部の軸方向への固定をピンにより行うことが特徴である。なお、第1の実施の形態と同一の構成には同一の符号を付し、その説明は省略する。
図4は、第2の実施の形態の固定プーリ15a及び可動プーリ15bの断面図である。また、図5は、第2の実施の形態の円柱部210の上面図、側面図及び図4のA−A断面図である。
なお、以降はプライマリプーリ15を例に説明するが、セカンダリプーリ16の構成についても同様である。
前述の第1の実施の形態と同様に、固定プーリ15aと可動プーリ15bとの間に略円筒形状(ローラ形状)の形状を有する円柱部210を装着し、可動プーリ15bを摺動可能に構成すると共に、この円柱部110によって固定プーリ15aの回転トルクを可動プーリ15bに伝えるように構成した。
なお、このスプライン溝101a、101b及び円柱部110は、プライマリプーリ15(又はセカンダリプーリ16)に対して一個備えられるが、複数個(例えば等間隔に3個)備えてもよい。複数個備えることにより、大きな回転トルクに対応することができる。
本実施形態では、プライマリ軸13側のスプライン溝101aには、軸方向の略中間に、ピン220を嵌合させることによりピン220を固定するためのピン溝202が形成されている。
ピン220は、略円筒形状を有し、円柱部210を軸方向に固定するための固定部材である。
円柱部210は、軸方向の略中間にピン220を嵌合させることによりピン220を固定するための円柱部溝部212が形成されている。円柱部210は、このピン220を介してスプライン溝101aに装着される。従って、これらピン溝202と円柱部溝部212とにピン220を嵌合することによって、円柱部210は軸方向の移動が規制されて、プライマリ軸13に固定される。
また、円柱部210は、軸方向の両端部が面取り加工又はR面加工されることにより、両端部に軸方向に対してなだらかな面が形成されている。
このように、円柱部210が、プライマリ軸と一体の固定プーリ15aに固定されることにより、可動プーリ15bは、円柱部210とスプライン溝101bとの間で摺動可能に構成される。
なお、円柱部210の軸方向の両端側は、スプライン溝101a、101b及びプランジャ隔壁21等、プライマリプーリ15の構造物の何れにも接していない。すなわち、円柱部210の軸方向の固定プーリ15a側の端部は、スプライン溝101a、101bの奥手側に突き当てることなく所定の間隔を隔てて配置される。同様に、円柱部110の軸方向のプランジャ隔壁21側の端部は、プランジャ隔壁21に突き当てることなく所定の間隔を隔てて配置される。これにより、スプライン溝101a、101bの奥手側端部を加工する必要がなくなると共に、円柱部210の軸方向の両端側の要求硬度を高くする必要がなくなる。
以上のように、円柱部210は、固定部材であるピン220と、この固定部材であるピン220が装着されるピン溝202と、円柱部110に形成され、固定部材であるピン220に嵌合する溝部である円柱部溝部212と、を備え、これらピン220、ピン溝202及び円柱部溝部212により軸方向に固定され、円柱部210の軸方向の両端面ではプライマリプーリ15を構成する部材とは所定の間隔を隔てて配置される。
なお、図5に示すように、プライマリ軸13のピン溝202は、略長矩形の凹溝を有する。このピン溝202は、軸方向の幅はピン220の径と略同一であるが、軸と垂直方向の幅は、ピン220の径よりも若干大きく形成される。一方、円柱部210の円柱部溝部212は、ピン220と略同一の円筒形状の凹溝を有する。すなわち、スプライン溝101aにおいては軸方向にのみ隙間なく嵌合し、軸と垂直方向には遊びが発生する。一方、ピン220は円柱部210とは隙間なく嵌合する。
円柱部210は固定プーリ15aの回転トルクを可動プーリ15bに伝える。この回転トルクは円柱部210とスプライン溝101a、101bとの間に作用する。ここで、ピン220のピン溝202においては、軸と垂直方向(回転方向)に遊びが発生するので、回転トルクがピン220に直接作用しない構成となっている。
このような構成とすることによって、ピン220に過大なトルクが作用しないので、ピン220の破損を防止できると共に、ピン220、ピン溝202及び円柱部溝部212の要求硬度を高くする必要がなくなり、製造コストを小さくすることができる。
次に、本実施の形態のプライマリプーリ15の組立て方法を説明する。
まず、プライマリ軸13のスプライン溝101aに形成されたピン溝202に、ピン220を圧入等の方法によって嵌合させる。これにより、ピン220がスプライン溝101aに固定される。
次に、円柱部210を、ピン溝202に嵌合されたピン220に圧入等の方法により嵌合させる。これにより、ピン220が円柱部210に固定される。
次に、可動プーリ15bをプライマリ軸13に組付ける。可動プーリ15bは、プランジャ隔壁21側からプライマリ軸13に挿入される。プライマリ軸のスプライン溝101aと可動プーリ15bのスプライン溝101bとが対向するよう挿入し、スプライン溝101bにおいて、円柱部210を摺動させながら、固定プーリ15a側に移動させる。前述のように、円柱部220の軸方向の端部は面取り加工されているので、この組付け時の作業効率が向上する。
なお、プライマリ軸13の固定プーリ15a付近の径(図4においてXで示す)は、プライマリ軸13のスプライン溝101a付近の径(図4においてYで示す)よりも大きく形成されており、可動プーリ15bをスプライン溝に挿入する際に、このXの部分がスプライン溝101aに固定された円柱部210に接触することなく挿入することができるように構成されている。
その後、プランジャ隔壁21等の部材を組付ける。これにより、プライマリ軸13と一体状態の固定プーリ15aに可動プーリ15bが組付けられて、プライマリプーリ15の組立てが完成する。
以上のように構成された本発明の第2の実施の形態について、次に効果を説明する。
本実施の形態では、前述の第1の実施の形態と同様に、プライマリ軸13と可動プーリ15bとに設けられたスプライン溝101a、101bに、円筒形状を有する円柱部210を備えた。これにより、固定プーリ15aに対する可動プーリ15bの相対回転(回転ガタ)の発生を抑えることできる。そして、スプライン溝101a、101b及び円柱部110の加工精度を管理することにより、この回転ガタを精度良く管理することが可能となる。
また、また、円柱部210は、軸方向の端部をプライマリプーリ15を構成する構造物に当接させる必要がないので、プライマリ軸13(またはセカンダリ軸14)の軸方向の長さを小さくすることが可能となる。その結果、ベルト式無段変速機を軸方向に小型化することが可能となる。
また、円柱部210は、ピン220のみによって軸方向に固定されているので、部品点数を少なくすることが可能となる。さらに、このような構成により、円柱部210の両端部を、例えばプライマリ軸13やプランジャ隔壁21等に突き当てて固定する必要がないため、円柱部210の要求硬度を小さくすることができる。
また、スプライン溝101a、101bの軸方向の奥側端部に、円柱部を突き当てるための加工を行う必要がなくなる。これにより、製造コストを小さくすることが可能となる。
また、円柱部210の軸方向の両端側で固定する部材を必要としないので、これらの部材が不要となると共に、軸方向の加工精度を高くする必要がなくなり、製造コストを小さくすることが可能となる。
本発明は上記した実施形態に限定されるものではなく、その技術的思想の範囲内でなしうるさまざまな変更、改良が含まれることは言うまでもない。
本実施形態のベルト式無段変速機(CVT)の構成の一例を示す正面断面図である。 第1の実施の形態の固定プーリ15a及び可動プーリ15bの断面図である。 第1の実施の形態のA−A断面図である。 第2の実施の形態の固定プーリ15a及び可動プーリ15bの断面図である。 第2の実施の形態の円柱部210の上面図、側面図及び図4のA−A断面図である。
符号の説明
1 出力軸
2 トルクコンバータ
13 入力軸(プライマリ軸)
14 出力軸(セカンダリ軸)
15 プライマリプーリ
15a 固定プーリ
15b 可動プーリ
16 セカンダリプーリ
16a 固定プーリ
16b 可動プーリ
17 ベルト
21 プランジャ隔壁
26 プランジャ隔壁
101a スプライン溝
101b スプライン溝
102 スナップリング溝
110 円柱部
112 円柱部溝部
120 スナップリング
202 ピン溝
210 円柱部
212 円柱部溝部
220 ピン

Claims (7)

  1. 軸外周に固定シーブと第1スプラインとが設けられ、前記第1のスプラインの内径に形成された固定部材装着用溝部を備える回転軸と、
    前記第1スプラインと軸方向に摺動可能かつ回転不能にかん着される第2のスプラインが形成された可動プーリと、
    前記第1のスプラインと前記第2のスプラインとの間に設けられた、前記第1スプラインと前記第2スプラインと共に前記回転軸に伝達されるトルクを受ける円柱部と、
    を備え、
    前記円柱部は、前記固定部材装着用溝部に装着される固定部材によって軸方向に固定されることを特徴とするベルト式無段変速機。
  2. 前記円柱部の軸方向の両端側は、前記第1のスプライン及び第2のスプラインの軸方向の奥手側の端部及び軸方向の手前側の端部と非接触の位置に設けたことを特徴とする請求項1に記載のベルト式無段変速機。
  3. 前記固定部材装着用溝部は、前記第1のスプラインの略中間に、前記回転軸の周方向に形成された溝部を有し、
    前記固定部材は、前記溝部に装着される円環状の弾性体であり、
    前記円柱部は、前記固定部材と係合する溝が形成された円柱部溝部を有し、
    前記固定部材が自由状態のときに前記円柱部溝部に係合することにより、前記円柱部が軸方向に固定されることを特徴とする請求項1又は2に記載のベルト式無段変速機。
  4. 前記円柱部は、軸方向の端部に周方向の面取り部が形成されていることを特徴とする請求項1から3の何れか一つに記載のベルト式無段変速機。
  5. 前記円柱部は、軸方向の略中間に、周方向に円環状の溝が形成された円柱部溝部を有することを特徴とする請求項3又は4に記載のベルト式無段変速機。
  6. 前記固定部材装着用溝部は、前記第1のスプラインの軸方向の略中間に形成された溝部を有し、
    前記固定部材は、前記溝部に嵌合される略円筒状のピンであり、
    前記円柱部は、前記固定部材と嵌合する溝が形成された円柱部溝部を有し、
    前記ピンが、前記溝部と前記円柱部溝部とに嵌合されることにより、前記円柱部が軸方向に固定されることを特徴とする請求項1に記載のベルト式無段変速機。
  7. 前記固定部材装着用溝部は、軸方向には前記ピンと略同一の幅を有し、軸と垂直方向には前記ピンよりも大きな幅を有することを特徴とする請求項5に記載のベルト式無段変速機。
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