先ず、本発明が適用可能なVA型LCDについて、図3〜図6と共に説明する。図3は、VA型LCDにおいて発生するディスクリネーションを説明する断面図であり、VA型LCDの偏光板を除く液晶パネルを示す。
図3において、ガラス基板31,41には、透明電極32,42及びデータバスライン45等が形成されており、これらを覆うようにして液晶層に接する面(41,42,45,32の表面)は、垂直配向処理を施された垂直配向膜(図示せず)が形成されている。対向側ガラス基板31上の透明電極32と、TFT側ガラス基板41上の透明電極42との間に電圧が印加されると、液晶層300を構成する液晶分子30は正常配向領域35では印加電圧に応じて配向する。同図は、液晶分子30が垂直に配向した状態を示す。他方、ガラス基板41上のデータバスライン45から見ると、同図中破線で示すような電界40が発生するため、正常配向領域35の両側に配向の乱れた領域36、即ち、ディスクリネーションが発生する。
そこで、図4に示すように、対向する透明電極32,42上に夫々土手33,43を設け、ディスクリネーション領域を減少させることが考えられる。同図中、図3と同一部分には同一符号を付し、その説明は省略する。図4中、(a)は透明電極32,42間に電圧を印加しない状態、(b)は透明電極32,42間に電圧を印加した状態を示す。
尚、本明細書では、基板に対して傾斜する斜面を持つ突起状の構造物を「土手」と言う。
図5は、図4に示すVA型LCDを示す平面図である。図5中、図4と同一部分には同一符号を付し、その説明は省略する。図5において、データバスライン45、ゲートバスライン46及びTFT47は、ガラス基板41上に設けられている。48は、画素領域を示す。土手33,43は、ゲートバスライン46と平行に設けられている。しかし、図5に示す構成の場合、データバスライン45に沿ってディスクリネーション49が発生することがわかった。
他方、垂直配向膜に対して、斜め方向から紫外線(UV:Ultra Violet光)を照射して配向処理を行うと、図6に示すように、ゲートバスライン46に沿ってディスクリネーション49が発生することがわかった。図6中、図5と同一部分には同一符号を付し、その説明は省略する。
そこで、本発明になる液晶表示装置では、上記の如きディスクリネーションを抑制するような構成を有する。
図7は、本発明になる液晶表示装置の第1実施例の要部を示す平面図である。同図中、図3〜図6と同一部分には同一符号を付し、その説明は省略する。以下の説明において、本発明になる液晶表示装置は、少なくとも液晶パネルからなる。
本実施例では、補助土手33a,43aが、画素領域48以外の非画素領域50において、データバスライン45に沿って交互に設けられている。補助土手33aは、ガラス基板31の透明電極32側に設けられ、補助土手43aは、ガラス基板41の透明電極42側に設けられている。又、画素領域48における土手33,43のピッチは例えば80μmであり、非画素領域50における補助土手33a,43aのピッチは例えば25μmに設定されている。つまり、非画素領域50における補助土手33a,43aのピッチは、画素領域48における土手33,43のピッチより小さく設定されているので、データバスライン45近傍の配向規制力を高めてデータバスライン45から発生する電界の影響を低減することができる。
図8は、本発明になる液晶表示装置の第2実施例の要部を示す平面図である。同図中、図3〜図6と同一部分には同一符号を付し、その説明は省略する。
本実施例では、補助土手53が、データバスライン45に沿って平行に設けられている。補助土手53は、ガラス基板31の透明電極32側に設けられている。このように、土手33,43とは直交する方向に延在する補助土手53を設けることにより、デクリネーションを抑制することができる。
尚、本実施例では、土手33,43のピッチが例えば40μmであり、補助土手53のピッチが例えば80μmである。又、土手33,43,53のガラス基板31,41と略平行な方向に沿った幅は夫々5μmであり、ガラス基板31,41と略垂直な方向に沿った高さは夫々1μmである。
図9は、本実施例において発生するディスクリネーションを説明する断面図である。同図中、図3及び図8と同一部分には同一符号を付し、その説明は省略する。
図9において、ガラス基板31上の透明電極32と、ガラス基板41上の透明電極42との間に電圧が印加されると、液晶分子30は正常配向領域35−1では透明電極32,42に対して例えば垂直に配向する。又、ガラス基板41上のデータバスライン45から見ると、同図中破線で示すような電界40が発生するため、正常配向領域35−1の両側のディスクリネーション領域が、図3の場合と比較すると大幅に減少しており、正常配向領域35−1が図3における正常配向領域35と比較して増大していることがわかる。
尚、本発明者らが本実施例の液晶表示装置を液晶パネル投写型プロジェクタに組み込み、従来のTN型液晶表示装置が組み込まれた液晶パネル投写型プロジェクタと比較したところ、従来のTN型液晶表示装置を用いたの場合はコントラスト比(CR:Contrast Ratio)が100程度であるのに対し、本実施例の液晶表示装置を用いたの場合CRはCR>300に改善できることが確認された。
又、本実施例の変形例として、ガラス基板31側の補助土手と、ガラス基板41側の配向用土手とを重ねて、スペーサを設けない構成としても良い。この場合、スペーサによる配向の乱れを防止することができる。
図10は、本発明になる液晶表示装置の第3実施例の要部を示す平面図である。同図中、図8と同一部分には同一符号を付し、その説明は省略する。
本実施例では、土手33,43のピッチも補助土手53のピッチも例えば80μmである。又、土手33,43のガラス基板31,41と略平行な方向に沿った幅は夫々10μmであり、ガラス基板31,41と略垂直な方向に沿った高さは夫々1.5μmである。他方、補助土手53のガラス基板31,41と略平行な方向に沿った幅は5μmであり、ガラス基板31,41と略垂直な方向に沿った高さは1μmである。
本実施例によれば、特にデータバスライン45近傍のデクリネーションを低減することができる。
図11は、本発明になる液晶表示装置の第4実施例の要部を示す平面図である。同図中、図7と同一部分には同一符号を付し、その説明は省略する。
本実施例では、非画素領域50において、即ち、データバスライン45に対向するガラス基板31側の配向膜に対して、ゲートバスライン46と平行な方向に光配向処理或いはラビング処理等の配向処理を施す。このように、ディスクリネーションが発生しやすいデータバスライン45近傍において、配向規制力の強い配向処理を行うことにより、データバスライン45近傍におけるディスクリネーションを低減することができる。
尚、本発明者らが本実施例の液晶表示装置を液晶パネル投写型プロジェクタに組み込み、従来のTN型液晶表示装置が組み込まれた液晶パネル投写型プロジェクタと比較したところ、従来のTN型液晶表示装置を用いたの場合はCRが100程度であるのに対し、本実施例の液晶表示装置を用いたの場合CRはCR>300に改善できることが確認された。
図12は、本発明になる液晶表示装置の第5実施例の要部を示す平面図である。同図中、図7と同一部分には同一符号を付し、その説明は省略する。
本実施例では、画素領域48以外の領域において、ガラス基板31,41上の配向膜に対して、配向膜が光配向を行う方向と同一方向にラビング処理を施す。具体的には、配向膜のうち、データバスライン45に対向する非画素領域50、ゲートバスライン46に対向する非画素領域51及びTFT47に対向する非画素領域52に対して、配向膜へ光配向を行う方向と同一方向にラビング処理を施す。これにより、データバスライン45、ゲートバスライン46及びTFT47近傍におけるディスクリネーションを低減することができる。
図13は、本発明になる液晶表示装置の第6実施例の要部を示す平面図である。同図中、図11と同一部分には同一符号を付し、その説明は省略する。
本実施例では、非画素領域50において、即ち、データバスライン45上に、絶縁部材であるレジスト樹脂膜55を設ける。レジスト樹脂膜55は、データバスライン45による電界を遮断するので、データバスライン45近傍におけるディスクリネーションを低減することができる。
図14は、本発明になる液晶表示装置の第7実施例の要部を示す平面図である。同図中、図12及び図13と同一部分には同一符号を付し、その説明は省略する。
本実施例では、画素領域48以外の非画素領域50,51,52において、絶縁部材であるレジスト樹脂膜55,56,57を設ける。具体的には、データバスライン45上に絶縁部材であるレジスト樹脂膜55を設け、ゲートバスライン46上に絶縁部材であるレジスト樹脂膜56を設け、TFT47に上に絶縁部材であるレジスト樹脂膜57を設ける。レジスト樹脂膜55,56,57は、夫々データバスライン45、ゲートバスライン46及びTFT47による電界を遮断するので、データバスライン45、ゲートバスライン46及びTFT47近傍におけるディスクリネーションを低減することができる。
図15は、本発明になる液晶表示装置の第8実施例の要部を示す断面図である。同図中、図2と同一部分には同一符号を付し、その説明は省略する。
本実施例では、上記各実施例の如き構成の液晶パネル310と偏光板21,25との間に、負の屈折率位相差を有するフィルム301,302の両方或いは少なくとも一方を配置したことを特徴とする。又、本実施例では、フィルム301,302のΔnd((nx+ny)/2−nz)×d)の合計は、液晶パネル310のΔndと同一である。ここで、dはセル厚を示し、Δn=n//−n⊥である。
図16は、図15に示す如きフィルム301,302が配置されていない液晶表示装置の視覚特性を示す図である。これに対し、図17は、図15に示す如きフィルム301,302が配置されている液晶表示装置の視覚特性を示す図である。図17を図16と比較すればわかるように、本実施例によれば、CR>10である範囲が大幅に拡大し、良好な特性の液晶表示装置が実現できることが確認できた。
次に、本発明者らが実験により得たデータについて説明する。図18〜図20は、夫々実験データを示す図(写真)である。
図18は、図7に示す第1実施例の場合のディスクリネーションを示す図であり、黒い部分が配向不良が発生している部分を示す。
図19は、図8に示す第2実施例の場合のディスクリネーションを示す図であり、黒い部分が配向不良が発生している部分を示す。
図20は、図9に示す第3実施例の場合のディスクリネーションを示す図であり、黒い部分が配向不良が発生している部分を示す。
図18〜図20からもわかるように、上記実施例によれば、配向不良の発生、即ち、ディスクリネーションを効果的に抑制可能であることが確認できた。
次に、本発明になる液晶表示装置の第9実施例について説明する。
上記第2実施例では、透明電極32,42間に印加される電圧、即ち、駆動電圧は、隣接する画素領域48間では図21に示すように逆極性に設定されている。図21中、図9と同一部分には同一符号を付し、その説明は省略する。図21の場合、左側の画素領域48では+5Vの駆動電圧が印加され、右側の画素領域48では−5Vの駆動電圧が印加される。
これに対し、第9実施例では、駆動電圧は、隣接する画素領域48間では図22に示すように同極性に設定されている。図22中、図21と同一部分には同一符号を付し、その説明は省略する。
図22に示すように、左側の画素領域48では+5Vの駆動電圧が印加され、右側の画素領域48でも+5Vの駆動電圧が印加される。このため、図21の場合と比較すると、各画素領域48の境界部分での液晶分子30の配向が更に良好となる。これは、隣接する画素領域48間での駆動電圧の電位差が小さいため、図22中横方向に発生する電界が小さく液晶分子30の配向に影響を及ぼしにくいことによる。
次に、本発明になる液晶表示装置の第10実施例を、図23〜図25と共に説明する。本実施例では、土手配向と光配向とを組み合わせている。
図23は、本実施例において、土手を有する基板に対してUV光を照射する処理を説明する断面図であり、図24は、本実施例の断面図である。又、図25は、本実施例の平面図である。図23は、図25中ABに沿った断面図であり、図24は、図25中CDに沿った断面図である。図23〜図25中、図3〜図5と同一部分には同一符号を付し、その説明は省略する。
本実施例では、図23に示すように、土手43が形成されたTFT側ガラス基板41に対して、UV光を照射する配向処理を施し、土手33が形成された対向側ガラス基板31に対しても同様の配向処理を施す。従って、図24に示すように、液晶分子30は、土手33,43による配向に加え、UV光によっても配向され、土手配向と光配向との組み合わせにより、ディスクリネーションが効果的に抑制される。
本実施例における垂直配向膜は、日本合成ゴム(株)社製のポリイミド製垂直配向膜JALS−204からなり、液晶としては、メルク社製のネガ型の液晶MLC−6608からなる。土手33,43は、日本合成ゴム(株)社製の感光性レジスト、特に平坦化剤と呼ばれるレジストからなる。この感光性レジストは、光の照射強度、焼成温度、組成等によりパターニングされる形状を変えることが可能であり、適切な焼成条件を採用することにより、土手33,43の形状を大略かまぼこ型にすることができる。土手33,43の高さは0.5μmから5μmの範囲内で設定されており、幅は2μmから10μmの範囲内で設定されている。
尚、本発明者らの実験によると、土手33,43の高さを5μm以上に設定すると、セル厚に影響を及ぼしたり、或いは、液晶を注入する妨げとなるので、好ましくないことが確認された。更に、土手33,43の幅を2μm以下に設定すると、土手配向の規制能力が低下することも確認された。
土手33,43は、例えば樹脂を対応するガラス基板31,41上にスピンコートした後にフォトリソグラフィ技術により土手を形成し、更に例えば180℃でキュアすることで、大略かまぼこ型にすることができる。
UV光としては、波長が250nm付近のUV光を含む光を用い、ガラス基板41或いは31の表面に対して斜め10度から斜め45度の範囲内で照射した。このUV光の強度は、ガラス基板41に対して正面から照射した場合で約29mW/cm2 である。本実施例で用いるポリイミド系配向膜に対しては、斜め45度からUV光を60秒照射することで、最も良好な配向を得ることができた。液晶のプレチルト角度(液晶分子の長軸が基板となす角度)は、80度以上、且つ、90度以下に設定した。特に、プレチルト角度が85度から88度の範囲内に設定されていると、良好なコントラストと配向を得ることができた。
本実施例では、土手33,43は、図25に示す如く配置されている。同図中、TFT側ガラス基板41が紙面奥側、対向側ガラス基板31が紙面手前にあるとすると、透明電極32,42間に駆動電圧を印加することにより、上記土手配向により、液晶分子30は垂直状態から紙面上方に向かって傾くように配向する。これに合わせて、駆動電圧の印加に伴い、液晶分子30が垂直状態から紙面上方に向かって傾くように配向するように、光配向のためのUV光を照射する。
図26は、本発明になる液晶表示装置の第11実施例を示す平面図である。例えば上記第10実施例では、画素領域が大略正方形でありモノドメインが前提であるが、本実施例では画素領域が縦に細長く、同図に示すように2分割されている。同図中、図3〜図5と同一部分には同一符号を付し、その説明は省略する。
本実施例では、TFT側ガラス基板41上に補助容量電極61がゲートバスライン46と平行に形成されており、図26に示すように、画素領域を一対の画素領域部分48−1,48−2に分割している。
又、画素領域部分48−1の右側には、対向側ガラス基板31の方に土手62が形成されており、その右隣にTFT側ガラス基板41の方に土手63が形成されている。画素領域部分48−1の左側にはTFT側ガラス基板41の方に土手63が形成されており、その左隣に対向側ガラス基板31の方に土手62が形成されている。他方、画素領域部分48−2の左側には、対向側ガラス基板31の方に土手62が形成されており、その左隣にTFT側ガラス基板41の方に土手63が形成されている。画素領域部分48−2の右側には、TFT側ガラス基板41の方に土手63が形成されており、その右隣に対向側ガラス基板31の方に土手62が形成されている。
このように土手62,63をデータバスライン45と平行に設けることで、土手配向により、画素領域部分48−1内では液晶分子30が同図中矢印で示すように右に傾く配向となり、画素領域部分48−2内では液晶分子30が同図中矢印で示すように左に傾く配向となる。更に、光学マスクを通してUV光を照射することにより、画素領域部分48−1と画素領域部分48−2とでUV光を照射する方位を逆にする。
つまり、本実施例では、上記第10実施例が配向分割に適用されている。
次に、本発明になる液晶表示装置の第12実施例を、図27〜図29と共に説明する。本実施例でも、土手配向と光配向とを組み合わせている。
図27は、本実施例において、土手を有する基板に対してUV光を照射する処理を説明する断面図であり、図28は、本実施例の断面図である。又、図29は、本実施例の平面図である。図27は、図29中EFに沿った断面図であり、図28は、図29中GHに沿った断面図である。図27〜図29中、図23〜図25と同一部分には同一符号を付し、その説明は省略する。
本実施例では、上記第10実施例においてTFT側のガラス基板41の方に設けた土手43を省略している。これは、図28中破線で囲んだ領域では、電解が液晶分子30の傾きを助長し、土手43が設けられていなくてもデスクリメーションが発生しにくいからである。
図30は、本発明になる液晶表示装置の第13実施例を示す平面図である。本実施例では画素領域が縦に細長く、同図に示すように2分割されている。同図中、図27〜図29と同一部分には同一符号を付し、その説明は省略する。
つまり、本実施例では、上記第12実施例が配向分割に適用されている。
次に、本発明になる液晶表示装置の第14実施例を、図31と共に説明する。図31は、第14実施例を示す断面図である。同図中、図27〜図29と同一部分には同一符号を付し、その説明は省略する。
本実施例では、光配向をTFT側ガラス基板41に対してのみ行い、配向を光配向と、土手配向と、上記第11実施例の如き横電界による配向との3種類の配向の組み合わせを用いている。このように、光配向を一方のガラス基板に対して省略しても、上記と同様に、ディスクリネーションを効果的に抑制することができる。
次に、本発明になる液晶表示装置の第15実施例を、図32と共に説明する。図32は、第15実施例を示す平面図である。同図中、図25と同一部分には同一符号を付し、その説明は省略する。
本実施例では、TFT側ガラス基板41上の透明電極42にスリット42aが形成されている。各スリット42aは、液晶分子30を倒す方向、即ち、土手33,43と直交する方向に延在している。スリット42aの間隔が狭い場合、透明電極32,42間に駆動電圧が印加された時に垂直に配向された液晶分子30がスリット42aと平行な方向に傾く傾向がある。そこで、土手33,43による土手配向に加え、スリット42aによる配向が行われることにより、ディスクリネーションを抑制することができる。
スリット42aは、透明電極42をTFT側ガラス基板41上に形成する際に用いるフォトマスクにスリット42aのパターンを配置しておくことで形成できる。つまり、透明電極42は通常各画素領域48の大きさに応じてパターニングされるが、本実施例では、このパターニングの工程で同時にスリット42aを形成する。尚、他の部分については、上記第10実施例と同様に形成し得る。
本発明者らの実験によると、スリット42aの幅が1μmから10μmの範囲で、スリット42aのピッチをスリット42aの幅の1.5倍から5倍の範囲に設定すると効果的であることが確認できた。又、スリット42aのピッチは、特に1.5μmから20μmの範囲が好適であった。更に、望ましくは、スリット42aの幅は5μmで、スリット42aのピッチは10μmであった。スリット42aの幅と、隣り合うスリット42a間の距離とが同一であると、スリット42aによる配向が特に良好であることも確認できた。
次に、本発明になる液晶表示装置の第16実施例を、図33と共に説明する。図33は、第16実施例を示す平面図である。同図中、図25と同一部分には同一符号を付し、その説明は省略する。
本実施例では、対向側ガラス基板31上の透明電極32にスリット32aが形成されている。各スリット32aは、液晶分子30を倒す方向、即ち、土手33,43と直交する方向に延在している。スリット32aの間隔が狭い場合、透明電極32,42間に駆動電圧が印加された時に垂直に配向された液晶分子30がスリット32aと平行な方向に傾く傾向がある。そこで、土手33,43による土手配向に加え、スリット32aによる配向が行われることにより、ディスクリネーションを抑制することができる。スリット32aの効果は、上記スリット42aの効果と実質的に同じである。
上記第15実施例では、スリット42aをTFT側の透明電極42に形成するため、電気的な導通を可能とするため、画素領域48の端の部分までスリット42aを形成することはできない。これに対して、本実施例では、スリット32aを対向側の透明電極32に形成するため、上記第15実施例と比較すると、フォトリソグラフィ技術によりスリット32aを形成する工程が別途必要となるが、スリット32aは画素領域48の全体をカバーするように形成可能であるため、スリット32aによる配向がより強く作用し、ディスクリネーションの抑制効果が更に向上する。
ところで、本発明者らの実験によると、光配向を45度の方位で行うと、図34に示す如きディスクリネーション49bが発生することがわかった。同図中、図6と同一部分には同一符号を付し、その説明は省略する。このディスクリネーション49bは、液晶分子30の傾く方位と横電界の方位とが45度ずれた関係にあるため、連続的に液晶分子30の傾く方位が変化してしまうことによる。そこで、次に説明する本発明になる液晶表示装置の第17及び第18実施例では、光配向と上記第15及び第16実施例の如きスリットによる配向とを併用する。
図35は、本発明になる液晶表示装置の第17実施例を示す平面図である。同図中、図32と同一部分には同一符号を付し、その説明は省略する。
本実施例では、UV光として波長が250nm付近のUV光を含む光を用い、ガラス基板41の表面に対して斜め10度から斜め45度の範囲内で照射した。このUV光の強度は、ガラス基板41に対して正面から照射した場合で約29mW/cm2 である。本実施例で用いるポリイミド系配向膜に対しては、斜め45度からUV光を60秒照射することで、最も良好な配向を得ることができた。液晶のプレチルト角度は、80度以上、且つ、90度以下に設定した。特に、プレチルト角度が85度から88度の範囲内に設定されていると、良好なコントラストと配向を得ることができた。
他方、TFT側ガラス基板41上の透明電極42にスリット42bが形成されている。各スリット42bは、液晶分子30を倒す方向、即ち、データバスライン45に対して30度以上傾いた方向に延在している。本実施例では、スリット42bはデータバスライン45に対して45度傾いた方向に延在している。スリット42bの間隔が狭い場合、透明電極32,42間に駆動電圧が印加された時に垂直に配向された液晶分子30がスリット42bと平行な方向に傾く傾向がある。そこで、光配向に加え、スリット42bによる配向が行われることにより、ディスクリネーションを抑制することができる。
スリット42bの形成方法及び寸法等の条件は、上記第15実施例の場合と同様である。
図36は、本発明になる液晶表示装置の第18実施例を示す平面図である。同図中、図33と同一部分には同一符号を付し、その説明は省略する。
本実施例では、上記第17実施例と同様な光配向に加え、対向側ガラス基板31上の透明電極32にスリット32bが形成されている。各スリット32bは、液晶分子30を倒す方向、即ち、データバスライン45に対して30度以上傾いた方向に延在している。本実施例では、スリット32bはデータバスライン45に対して45度傾いた方向に延在している。スリット32bの間隔が狭い場合、透明電極32,42間に駆動電圧が印加された時に垂直に配向された液晶分子30がスリット32bと平行な方向に傾く傾向がある。そこで、光配向に加え、スリット32bによる配向が行われることにより、ディスクリネーションを抑制することができる。スリット32bの効果は、上記スリット42bの効果と実質的に同じである。
次に、本発明になる液晶表示装置の第19実施例を、図37と共に説明する。図37は、第19実施例を示す平面図である。同図中、図32と同一部分には同一符号を付し、その説明は省略する。
本実施例では、スリット42aが透明電極42のデータバスライン45近傍のみに設けられている。このように、データバスライン45近傍のみにスリット42aを設けても、横電界の影響を良好に抑制することが可能であることが、本発明者らの実験により確認された。
次に、本発明になる液晶表示装置の第20実施例を、図38と共に説明する。図38は、第20実施例を示す平面図である。同図中、図33と同一部分には同一符号を付し、その説明は省略する。
本実施例では、スリット32aが透明電極32のデータバスライン45近傍のみに設けられている。このように、データバスライン45近傍のみにスリット32aを設けても、横電界の影響を良好に抑制することが可能であることが、本発明者らの実験により確認された。
尚、上記第19実施例を上記17実施例に適用しても、上記第20実施例を上記18実施例に適用しても良いことは、言うまでもない。
次に、本発明になる液晶表示装置の第21実施例を、図39と共に説明する。図39は、第21実施例を示す平面図である。同図中、図3〜図8と同一部分には同一符号を付し、その説明は省略する。
投写型パネルでの開口率及び対称性を考慮すると、土手をデータバスライン45と平行に設けるか、ゲートバスライン46と平行に設けることが望ましい。しかし、光源からの煽り角を考慮すると、土手をゲートバスライン46と平行に設けた場合には駆動電圧の印加に伴い液晶分子30の倒れる角度が光源からの光の入射角度と平行に近くなる配向領域が発生する可能性がある。このような配向領域では、白輝度の低下或いは黒表示の階調反転が生じる可能性がある。そこで、本実施例では、土手53,54を、図39に示すようにデータバスライン45と平行に設ける。
土手53は、TFT側ガラス基板41の方に設けられ、土手54は、対向側ガラス基板31の方に設けられている。土手53は、データバスライン45と重なり、且つ、画素領域48の周辺部分、即ち、画素領域48に対応する透明電極42の周辺部分と、一部重なるように配置されている。他方、土手54は、画素領域48の略中央を通るように配置されている。土手53の幅は、土手54の幅より大きく設定されている。このような土手53,54の配置を用いることで、各画素領域48において、土手54の右側の部分48Aと土手54の左側の部分48Bとで、配向方向が互いに逆になる。従って、画素領域48の上下方向については、液晶パネルの視覚特性の良好な方位、即ち、液晶分子30が傾く方向と90度異なる方向を設定することにより、液晶パネル投写型プロジェクタにおいて良好な表示画面を得ることができる。
尚、土手53が、画素領域48の周辺部分と一部重なるように配置されているのは、画素領域48に対応する透明電極42による電界の影響を抑制するためである。
例えば、本実施例では、土手53の幅は15μmであり、高さは1μmである。これに対し、土手54の幅は5μmであり、高さは1μmである。
又、土手54をTFT側ガラス基板41の方に設け、土手53を対向側ガラス基板31の方に設けても良い。
次に、本発明になる液晶表示装置の第22実施例を、図40及び図41と共に説明する。図40は、第22実施例を示す平面図であり、図41は、図40中EFに沿った断面図である。図40及び図41中、図3〜図5と同一部分には同一符号を付し、その説明は省略する。
本実施例では、図41に示すように、TFT側ガラス基板41上にデータバスライン45、TFT47及びコンタクト用電極71が設けられ、その上に樹脂からなる平坦化層72が設けられている。平坦化層72には、図40に示すように、コンタクトホール73が形成されており、透明電極42は、このコンタクトホール73及びコンタクト用電極71を介してTFT47の例えばドレインと接続する。このような構成とすることにより、開口率の向上が図れる。
次に、本発明になる液晶表示装置の第23実施例を、図42〜図44と共に説明する。図42は、第23実施例を示す平面図である。図43は、図42中GHに沿った断面図である。図44は、図42中IJに沿った断面図である。図42〜図44中、図40及び図41と同一部分には同一符号を付し、その説明は省略する。
本実施例では、図42及び図43に示すように、コンタクトホール73を省略して、コンタクト用電極71−1がコンタクト用電極71とコンタクトホール73とを兼用するような構成となっている。コンタクト用電極71−1は、各画素領域48に対して略対角線上に配置されている。又、コンタクト用電極71−1の上部は、平坦化層72に形成された溝77になっており、溝77の断面は図44に示すように、テーパを有する断面形状となっており、透明電極42はこの溝77を含む平坦化層72上に形成されているので、配向方向を規制する機能を実現できる。
次に、本発明になる液晶表示装置の第24実施例を、図45と共に説明する。図45は、液晶表示装置の第24実施例を示す図であり、VA型LCDを採用した場合の投写型液晶表示装置、即ち、液晶パネル投写型プロジェクタの大略構成を示す。
図45において、液晶パネル投写型プロジェクタは、大略光源81、コンデンサーレンズ82、液晶パネル83、投射レンズ84及びスクリーン85からなる。偏光板87a,87bは、液晶パネル83の一部であっても、別部材であっても良い。偏光板87aは、紙面に垂直な方向に吸収軸を有し、偏光板87bは、紙面に平行で図45中上下方向に吸収軸を有する。
光源は、例えばアーク長が1.2mmであり、120Wのメタルハライドランプからなる。液晶パネル83は、上記第1〜第23実施例のいずれかの構成を有し、セル厚は例えば4μmである。光源81からの光は、所定の煽り角をもってコンデンサーレンズ82を介して液晶パネル83に入射する。液晶パネル83は、コンデンサーレンズ82により絞られた光を投射レンズ84を介してスクリーン85へ投射し、スクリーン85上には液晶パネル83上の画像が表示される。本実施例によれば、コントラストの高い画像表示を行うことができる。
次に、本発明になる液晶表示装置の第25実施例を、図46と共に説明する。図46は、液晶表示装置の第25実施例を示す図であり、VA型LCDを採用した場合の投写型液晶表示装置、即ち、液晶パネル投写型プロジェクタの大略構成を示す。図46中、図45と同一部分には同一符号を付し、その説明は省略する。
図46において、液晶パネル83Aは、上記第1〜第23実施例のいずれかの構成を有すると共に、負の屈折率位相差板91を備える。負の屈折率位相差板91のΔndは、液晶パネル83AのΔndと同一に設定されている。
本発明者らの実験によると、光源81からの光の角度をコンデンサーレンズ82により絞り、正面から液晶パネル83Aに光を入射させた場合、最大10度の入射角度で光が液晶パネル83Aに入射することが確認できた。そこで、本実施例では、煽り角を10度に設定し、液晶パネル83Aへの光の入射角度としてプラス0度、マイナス20度となるような配置とした。この結果、液晶パネル83Aへの光の入射角度が10度以下と低く設定され、液晶分子30の倒れる方向が入射光に対してより垂直に近い方向となるので、表示画面の均一性及びコントラストが上記第24実施例より更に向上された。
次に、本発明になる液晶表示装置の第26実施例を、図47と共に説明する。図47は、液晶表示装置の第26実施例を示す図であり、VA型LCDを採用した場合の投写型液晶表示装置、即ち、液晶パネル投写型プロジェクタの大略構成を示す。図47中、図45と同一部分には同一符号を付し、その説明は省略する。
図47において、液晶パネル83Bは、上記第1〜第23実施例のいずれかの構成を有すると共に、液晶パネル83Bの上半分と下半分とで、液晶分子30が互いに逆方向に倒れるように配向が設定されている。この結果、煽り角が0度であっても、液晶パネル83Bへの光の入射角度が10度以下と低く設定され、煽り角が0度であっても、液晶分子30の倒れる方向が入射光に対してより垂直に近い方向となるので、表示画面の均一性及びコントラストが上記第24実施例より更に向上された。
尚、上記各実施例は、所望の特性に合わせて適宜任意に組み合わせが可能であることは、言うまでもない。
以上、本発明を実施例により説明したが、本発明は上記実施例に限定されるものではなく、本発明の範囲内で種々の変形及び改良が可能である。