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JP4885100B2 - 片艶紙の製造方法 - Google Patents

片艶紙の製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、片艶紙の製造方法に関し、従来の片艶紙におけるように片面に光沢を有するばかりではなく、製袋加工適性に優れ、なおかつ表面だけでなく裏面の印刷適性にも優れた片艶紙の製造方法に関するものである。
片艶(クラフト)紙は、ヤンキードライヤーに湿紙を貼りつけることにより、ヤンキードライヤーに接する面に高い光沢を付与したクラフト紙であり、手提げ袋や角底袋などの紙袋や包装紙、封筒等に用いられている。
従来の片艶紙は、抄紙工程中のドライヤーパートにおいて、表面に研磨加工が施されている鏡面ドライヤー(ヤンキードライヤー)に対してヤンキーフェルトを介して湿紙を圧接させて乾燥する抄紙機(ヤンキー抄紙機)で抄造される。このようにして製造された片艶紙は、表面(ヤンキードライヤー当接面)に高い艶(光沢)を有するため、この艶面に印刷すると、両更クラフト紙と比較し、特有の印刷光沢が得られ、印刷適性に優れるが、一方、裏面(ヤンキーフェルト当接面)は、ドライヤーパートにおいてヤンキーフェルトに接することから、平滑性が低く、印刷されることはほとんどない。
しかし、近年では、省資源の観点から、少ない包装資材に多くの情報を載せるため、特に封筒用紙等では片艶クラフト紙においても、両更クラフト紙と同様に、広告媒体として、また裏面にベタ印刷することにより内容物の不可視を目的として両面に印刷ができること、が強く望まれている。そこで、片艶紙における裏面の印刷適性を向上させる方法として、片艶紙を製造した後に金属ロールと弾性ロールとからなるカレンダー装置で処理する方法(例えば、特許文献1参照。)が提案されている。しかし、この特許文献1に示されている技術は、カレンダー装置を用いて、表面、裏面の両方をともに艶のある高光沢紙を製造する方法であり、片艶紙を製造した後にカレンダー装置を用いることとなっているため、工程が増加してしまうという不具合がある。
そこで、本出願人らは、ヤンキードライヤーに湿紙を圧接する際に、ヤンキーフェルトを介さずに直接ロール(タッチロール)を圧接させることにより、表面の光沢度及び裏面の平滑度を所定範囲に設定することができ、裏面が適度の平滑性を有し、両更紙と同様の印刷適性を有する片艶紙及びその製造方法を開示した(特許文献2参照。)。
さらに、近年では、手提げ袋や角底袋などの紙袋、封筒用途においては、両面に印刷ができること以外に、嵩を出しつつ、紙の剛度を向上させ、製袋加工適性を持たせることで、製袋時に発生する折部の破れ等の加工不良の軽減が求められている。そして、一般的に、紙の嵩を出す方法としては、嵩高剤の使用や、嵩高な機械パルプを配合する方法が取られている。しかし、これらの方法は、ヤンキードライヤーを用いる場合には流用することができない。嵩高剤は界面活性剤系の薬品であるために、ヤンキードライヤーでの貼り付き不良が発生し、艶面の光沢が低下するためである。また、クラフトパルプを主体とする片艶クラフト紙においては、機械パルプの配合は紙力強度を低下させることとなり、必要な強度を満足することが難しくなるとの問題がある。
特開平5−279983号公報 特開2005−33630号公報
本発明が解決しようとする主たる課題は、嵩高でありながら、両面の印刷適性、紙の剛度、製袋加工適性に優れた片艶紙の製造方法を提供することにある。
この課題を解決した本発明は、次のとおりである。
〔請求項記載の発明〕
ドライヤーパートにおいて、湿紙をヤンキードライヤーと圧接ロールとの間に通して片艶紙を製造する方法であって、
前記圧接ロールとして、前段圧接ロールと少なくとも1本の後段圧接ロールとを有し、かつ前記前段圧接ロールの硬度が前記後段圧接ロールの硬度よりも高いものを用意し、
これら前段圧接ロール及び後段圧接ロールと前記湿紙との間にヤンキーフェルトを介在させず、前記前段圧接ロールの線圧を40〜90kg/cm及び/又は前記後段圧接ロールの線圧を50〜100kg/cmとして表面のベック平滑度が30〜100秒、前記圧接ロールに圧接された裏面のベック平滑度が10〜50秒、前記裏面の正反射平滑度が10μm以下、密度が0.65〜0.75g/cm3となるように、前記湿紙を圧接し、
PAMの内添量を3kg/パルプトン(固形分換算)以下とし、嵩高剤を内添しない、
ことを特徴とする片艶紙の製造方法。
〔請求項記載の発明〕
ドライヤーパートにおいて、湿紙をヤンキードライヤーと圧接ロールとの間に通して片艶紙を製造する方法であって、
前記圧接ロールとして、前段圧接ロールと少なくとも1本の後段圧接ロールとを有するものを用意し、
これら前段圧接ロール及び後段圧接ロールと前記湿紙との間にヤンキーフェルトを介在させず、前記前段圧接ロールの線圧を40〜90kg/cm及び/又は前記後段圧接ロールの線圧を50〜100kg/cmとし、かつ前記圧接ロールの線圧よりも前記後段圧接ロールの線圧が強くなるようにして表面のベック平滑度が30〜100秒、前記圧接ロールに圧接された裏面のベック平滑度が10〜50秒、前記裏面の正反射平滑度が10μm以下、密度が0.65〜0.75g/cm3となるように、前記湿紙を圧接し、
PAMの内添量を3kg/パルプトン(固形分換算)以下とし、嵩高剤を内添しない、
ことを特徴とする片艶紙の製造方法。
本発明によると、嵩高でありながら、両面の印刷適性、紙の剛度、製袋加工適性に優れた片艶紙の製造方法となる。
以下、本発明の実施の形態について説明する。
〔片艶紙〕
本形態の片艶(クラフト)紙は、例えば、請求書用やダイレクトメール用等の封筒用紙などを製造する際の原紙などとして使用されるものであり、ドライヤーパートにおいて、湿紙をヤンキードライヤーと圧接ロールとの間に通して得る。この際、圧接ロールと湿紙との間にはヤンキーフェルトを介在させず、ヤンキードライヤーに圧接された表面(艶面)のベック平滑度を30〜100秒、好ましくは40〜100秒とし、圧接ロールに圧接された裏面のベック平滑度を10〜50秒、好ましくは15〜50秒とし、当該裏面の正反射平滑度を10μm以下、好ましくは3〜9μmとし、密度を0.65〜0.75g/cm3、好ましくは0.68〜0.72g/cm3とする。このように構成したことにより、紙の剛度、引裂強度が向上し、製袋時に発生する折部の破れ等の加工不良が軽減される。また、表裏両面への印刷が可能となるため、用途の拡大を図ることができる。特に、請求書用の封筒の場合、封筒の内側面にも印刷することが多くなっており、本形態の片艶紙は、裏面も高精細な印刷が可能となっているため、封筒用紙として好適に使用することができる。
各構成をより詳細に説明すると、表面のベック平滑度が100秒を超えると、印刷時のインク受理性が悪く、インクがかすれ、インク乾燥不良などの問題がある。また、表面のベック平滑度が30秒未満であると、印刷適性の低下、発色が悪いという問題がある。一方、裏面のベック平滑度が10秒未満となると、印刷適性の低下の問題があり、裏面のベック平滑度が50秒を超えると、加工時における接着剤の紙面への食いつきが悪く接着剤の染み出しによるブロッキングが生じるという問題がある。また、裏面の正反射平滑度測定値が10μmを超えても裏面の印刷適性が低下するという問題がある。密度が0.65g/m3未満となると、クラフト紙に求められる引張強度が弱くなる問題があり、0.75g/m3を超えると、剛度の低下の問題がある。
〔製造方法〕
次に、本形態の片艶紙の製造方法について、より好ましい形態を説明する。
本形態の片艶紙は、ドライヤーパートにおいて、湿紙をヤンキードライヤーと圧接ロールとの間に通すについて、圧接ロールとして前段圧接ロールと少なくとも1本の後段圧接ロールとを用意し、これら圧接ロールと湿紙との間にヤンキーフェルトを介在させずに、前段圧接ロールの硬度が後段圧接ロールの硬度よりも高い条件下で、あるいは前段圧接ロールの線圧よりも後段圧接ロールの線圧が強くなる条件下で製造すると、より好ましいものとなる。
以下、より詳細な例を説明する。なお、本形態の製造方法は、後段圧接ロールが1本の場合に限定されず、例えば、2本、3本、4本又はそれ以上の複数本とすることもできるが、以下では、1本の場合を中心に説明する。
本形態の製造方法は、図1に示すように、抄紙工程中のドライヤーパートPにおいて、表面に研摩加工が施されている鏡面ドライヤーからなるヤンキードライヤー1に湿紙3を圧接する際に、ヤンキーフェルトを用いずに、2本の圧接ロール(タッチロール)4A,4Bを用いる。前段の圧接ロール(前段圧接ロール)4Aは、ヤンキードライヤー1の入口Eで、湿紙3をヤンキードライヤー1に圧接させる役割を果たす。なお、ヤンキードライヤー1の入口Eとは、湿紙3がペーパーロール8に接する最後の点から、前段圧接ロール4Aに接する最初の点までの区間をいう。
一方、後段の圧接ロール(後段圧接ロール)4Bは、前段圧接ロール4Aの後方において、前段圧接ロール4Aよりも強く湿紙3をヤンキードライヤー1に圧接させることで、湿紙3裏面の平滑性を更に上げる役割を果たす。
本形態においては、前段圧接ロール4A及び後段圧接ロール4Bの配置位置について、特に限定されないが、図1に示すように、前段圧接ロール4A及び後段圧接ロール4Bの中心点(軸)を結んだ直線距離M4から両ロール4A,4Bの半径M1,M2を差し引いた離間距離M3が、1.5m以下であるのが好ましく、1.0m以下であるのがより好ましい。離間距離M3が1.5mを超えると、前段圧接ロール4Aで落とされずに後段圧接ロール4Bで落とされる湿紙3の水分の保水時間が長くなるため、表面(艶面)の光沢がでにくいという問題点がある。この問題は、後段圧接ロール4Bの本数を増やす場合も同様で、相互に隣接する後段圧接ロール4B間の離間距離が1.5m以下であるのが好ましい。
また、本形態では、圧接ロール4A,4Bの加圧設定(線圧設定)をコントロールすることで、より効果的に片艶紙の密度を低減させることができ、これにより製袋加工時に必要とされる引裂強度、剛度を向上させることができる。具体的には、まず、前段圧接ロール4Aの線圧を40〜90kg/cm、好ましくは55〜75kg/cmとする。線圧の低い方が嵩を得やすいが、線圧が40kg/cm未満になるとヤンキードライヤー1への貼付き不良などの問題を招く可能性があり、逆に線圧が90kg/cmを超えると、水分の高い湿紙3の状態で加圧(圧接)するため、密度が高くなり、紙の剛度の低下、引裂強度の低下を招き、製袋時に折部の破れなどの加工不良が発生しやすくなる問題がある。また、続く後段圧接ロール4Bの線圧は、前段圧接ロール4Aの線圧よりも高く設定するのが好ましい。具体的には、後段圧接ロール4Bの線圧(後段圧接ロール4Bを複数本とする場合は全ての線圧)は、50〜100kg/cm、好ましくは65〜85kg/cmとする。後段圧接ロール4Bは、前段圧接ロール4Aによってヤンキードライヤー1に圧接された湿紙3を平坦化する処理を行い、線圧が50kg/cm未満であると印刷適性に必要な平滑性を出すことができなくなり、他方、線圧が100kg/cmを超えると、ヤンキードライヤー1からの剥れ不良となり、表面取られによる光沢悪化の問題が生じる。
なお、本形態のように、前段圧接ロール4Aでヤンキードライヤー1に当接させ、後段圧接ロール4Bの圧力を相対的に強くして平坦性を持たせると、紙の嵩を維持しながら、裏面の平滑度を、通常10秒なのを50秒にすることができ、艶面と非艶面の平滑の差が少ない片艶紙となる。また、一方で、密度は0.65〜0.75g/cm3とすることができ、紙の剛度、引裂強度が向上するため、製袋時に発生する折部の破れ等の加工不良が軽減される。また、表裏両面への印刷が可能となるため、用途の拡大を図ることができる。特に、請求書用の封筒の場合、封筒の内側面にも印刷することが多くなっており、晒両更クラフト紙が多用されていたが、本形態の片艶紙は、裏面も高精細な印刷が可能となっているため、封筒用紙として好適に使用することができる。
本形態では、圧接ロール4A,4Bの線圧設定に変えて、又は線圧設定とともに硬度を特定するとより好ましいものとなる。具体的には、まず、前段圧接ロール4Aのロール硬度は75〜95度、好ましくは80〜90度とする。ロール硬度が低い方が嵩を得やすいがロール硬度が75度未満になると、ヤンキードライヤー1への貼付き不良の問題が生じる。他方、ロール硬度が95度を超えると、光沢度は得られやすいものの、湿紙3がつぶれやすく、密度が高くなり、紙の剛度、引裂強度が下がり、加工不良となる問題がある。また、圧接ロール4A自体の使用期間が短くなるとの問題がある。一方、続く後段圧接ロール4Bのロール硬度は、50〜75度、好ましくは55〜70度とする。後段圧接ロール4Bは前段圧接ロール4Aによってヤンキードライヤー1に貼りついた湿紙3を更に貼りつかせて平坦化処理を行うため、50度未満だとその効果が得られず、また嵩が出にくいという問題がある。他方、75度を超えると、特に後段圧接ロール4Bの線圧の方が前段圧接ロール4Aの線圧よりも高い場合に、スリップが生じる可能性がある。
特に、圧接ロール4A,4Bの加圧設定と併用してロール硬度を調整することで、艶面の平滑性を維持したまま密度をより低密度にすることが容易にでき、紙密度を0.65〜0.75g/m3とすることが容易にできる。
ここで、圧接ロール4A,4Bの材質としては、ヤンキーフェルトを介することなく湿紙3をヤンキードライヤー1に圧接させることになるため、少なくともロール表面が耐熱性を有するゴム等の弾性材料からなるものを使用するのが望ましい。また、ヤンキードライヤー1に供給される湿紙3の張力は、矢印N方向に移動可能とされたエキスパンダーロール6により調整することができる。この調整により、ヤンキーフェルトを用いなくとも、湿紙3の走行を安定させることができ、皺の発生等を防止することができる。なお、符号7は、湿紙3の第1入口ロール、符号8は、第2入口ロールであり、固定されることで、エキスパンダーロール6が移動して皺を伸ばすのを補助する役割を果たしている。
以上の製造方法によると、表面はヤンキードライヤー1に接し、裏面は少なくとも2本の圧接ロール4A,4Bに接することとなるため、表面の光沢度は維持しつつ、裏面の平滑度を高めることができる。したがって、得られた片艶紙は、表裏両面への印刷が可能となる。
ところで、本形態の製造方法においては、少なくとも湿紙形成工程、プレス工程、及び、ヤンキードライヤー1による乾燥工程(ドライヤーパートP)が備えられており、水溶性高分子を主成分とする表面処理液を、ドライヤーパートPに先立って、好ましくはプレス工程と乾燥工程との間で、より好ましくは乾燥工程の直前であるヤンキードライヤー1の入口Eで塗布などによって付与する。表面処理液を付与した後、短時間でヤンキードライヤー1での乾燥に供されると、湿紙内部に表面処理液が浸透する前に表面層が形成されるという利点がある。また、表面処理液の付与は、湿紙形成工程と乾燥工程との間のうち、湿紙形成工程とプレス工程との間で行ってもよい。湿紙形成工程とプレス工程との間で表面処理液を付与する場合は、湿紙形成工程後の片艶紙(湿紙)が高い水分率の状態にあるので、表面処理液が紙層中に浸透し難く、表面処理液の湿紙内への沈み込みを防止することができ、被覆性により優れた表面層が形成され易いという利点がある。
表面処理液の主成分(絶乾質量割合0.3〜10%)としては、例えば、トウモロコシ、馬鈴薯、タピオカ、小麦、米等の澱粉やこれらの酸化澱粉、ジアルデヒド澱粉、リン酸変性澱粉、カチオン化澱粉などの澱粉誘導体、ポリアクリルアミド系樹脂やポリビニルアルコール等の合成水溶性バインダー、スチレン‐ブタジエン共重合体などの共重合体ラテックス等の接着剤などの水溶性高分子が挙げられる。これらの中でも、酸化澱粉が後述するスプレー付与の際には好適に用いられる。これは、酸化澱粉は安価なため表面処理液として用いられやすく、また表面強度の向上にも効果的に働くためである。
これらの表面処理液の付与は、例えば、ブレードコーター、ゲートロールコーター、メータリングサイズプレス等のコーター類で行うこともできる。なかでもロールコーターによると、微量塗工性に優れ、用紙表面に対して輪郭塗工が可能であり、平坦性を向上することが可能な点で優れている。もっとも、表面処理液の付与にあたっては、特にコストの面から、少ない付与量でいかに良好に被覆するかが大きな課題となる。良好な被覆性を得るには、原紙(湿紙)への押し込みが少なく、表面層を嵩高くすることが肝要である。しかしながら、以上のコーター類を使用した場合、その機構上、表面処理液はかなりの量で原紙に押し込まれ、表面層は嵩高くはなりにくい。そこで、カーテンコーターによる塗工やスプレー付与のような、いわゆる非接触型の付与方式によるのが好ましい。これらの方法によると、表面処理液が原紙に押し込まれることはなく、表面層は嵩高になる。もっとも、カーテン塗工は自由落下の表面処理液被膜を原紙上に設ける方法のため、本形態のようにヤンキードライヤー1と接触する側の面(艶面)に対して、プレス工程と乾燥工程の間で塗工を行うことは、既存の設備では困難であり、設備の大掛かりな改造を伴う。また、カーテン塗工の際には、粘度や表面張力等、仔細な表面処理液の調整が必要であり、このようなカーテン塗工を行うことは容易なことではない。以上の点から、本形態においては、スプレー付与が最適な方法として例示される。
スプレー付与のための装置には特に限定がなく、通常の装置を適宜用いることができるが、例えば、ミスト粒径が100μm以下、好ましくは30〜100μmの表面処理液を噴霧付与し、ヤンキードライヤー1にて乾燥して仕上げ、リールにて巻き取る構成の装置を好適に用いることができる。
ミスト粒径が30〜100μmの表面処理液を噴霧付与する装置としては、例えば、ローターダンプニング(商品名、ニッカ(株)製)が好適である。当該装置は、複数の回転自在な中空円盤状のロータを所定間隔で一列状に配置するとともに、各ロータに同芯状にプーリを連結固定し、駆動モータにて回転駆動される駆動プーリにて、ベルトを介して各プーリを連動して高速で回転駆動するとともに、各ロータ内に表面処理液を供給するように構成されている。これにより、約5000rpm程度の高速で回転するロータ内の液体が遠心力によってロータの外周から噴出し、細かい霧からなる薄膜状の噴霧流が形成され、当該各ロータからの噴霧流の幅をシャッタにて規制することで、所定の噴霧付与幅で一様に噴霧付与する連続した噴霧付与流が形成される。このように高速回転するロータにて、遠心力によって、ミスト粒径が30〜100μm、好ましくは75μmの表面処理液滴にして噴霧付与することができるとともに、付与量を精度よく制御することもできる。表面処理液のミスト粒径は、片艶紙の坪量に対する付与量や必要とする表面強度の確保が困難となったり、付与装置周辺へミストが発生して設備を汚染したりする恐れをなくすために、30μm以上であることが好ましく、また、片艶紙の坪量に対して付与量が過剰となり、ヤンキードライヤー1での乾燥能力不足が生じたり、ドライヤー鏡面の汚染や艶の低下が生じたりする恐れをなくすために、表面処理液のミスト粒径が100μm以下、好ましくは80μm以下である。
また、表面への表面処理液の付与量は、表裏面での表面処理液の存在量を考慮し、例えば、Z軸方向(厚さ方向)2分割における表面処理液の存在量が、「非艶面(裏面)での存在量」<「艶面(表面)での存在量」の関係にあり、当該表面処理液が、厚み方向で、艶面から10/100〜1/100の範囲で含有されるように決定することが好ましく、また艶面からの内部結合強さが175mJ以上となるように決定するとよい。
表面処理液が付与された片艶紙の水分量(ヤンキードライヤー1の入口Eでの水分量)は、ヤンキードライヤー1での十分な乾燥及び目的とする片艶クラフト紙の表面強度を考慮すると、20〜50質量%、好ましくは30〜45質量%に調整することが望ましい。
〔その他〕
本形態の片艶紙を製造するための原料パルプとしては、例えば、クラフトパルプ、機械パルプ、古紙パルプ等が使用できる。上記クラフトパルプとしては、例えば、広葉樹クラフトパルプや針葉樹クラフトパルプが使用され、広葉樹クラフトパルプとしては、広葉樹未晒クラフトパルプ(LUKP)でも、広葉樹晒クラフトパルプ(LBKP)でもよく、針葉樹クラフトパルプとしては、針葉樹未晒クラフトパルプ(NUKP)でも、針葉樹晒クラフトパルプ(NBKP)でも、またこれらを混合したものでもよい。また、機械パルプとしては、本件の発明を阻害しない範囲で、GP(グランドウッドパルプ)、PGW(プレッシャライズドグランドウッドパルプ)、RGP(リファイナーグランドウッドパルプ)、TMP(サーモメカニカルパルプ)、CTMP(ケミサーモメカニカルパルプ)等、公知の機械パルプが使用できる。古紙パルプとしては、雑誌古紙、チラシ古紙、色上古紙、新聞古紙、ケント古紙、上白古紙、コート古紙、複写古紙等の公知の種々の古紙パルプを使用することができ、これらの古紙パルプを脱墨あるいは漂白処理したものを使用することもできる。その他、非木材パルプとして、ケナフ、麻、三椏、楮、バガス、竹、雁皮等が使用できる。また、ポリプロピレン、プロピレンランダムコポリマー、ポリエチレンテレフタレートコポリマー、ポリエチレン、レーヨン、ポリエチレンテレフタレート、アクリル、ホルマール化ポリビニルアルコール等の合成繊維も使用できる。また、紙力増強剤を内填することもでき、当該紙力増強剤としては、特に限定はなく、澱粉、変性澱粉、ポリアクリルアミド等が使用できる。また、染料や着色顔料などの染色剤、歩留まり向上剤、硫酸バンド、サイズ剤等の各種の添加薬品を使用することができる。
本実施の形態の片艶紙は、長網ヤンキー抄紙機を用いて製造することができるが、これに限定されるものではなく、同一の紙質を得るようにすれば、円網ヤンキー抄紙機、短網ヤンキー抄紙機等のヤンキードライヤーを有する抄紙機であればよい。
次に、本発明を、実施例に基づいて詳述する。なお、本発明は、これらの実施例によって限定されるものではない。
針葉樹晒クラフトパルプ(NBKP)(フリーネス500mlCSF)を一定量配合した原料パルプを長網ヤンキー抄紙機で抄紙し、サンプルを得た。この抄紙における各種条件は、表1に示すとおりとした。なお、表中の嵩高剤は星光PMC株式会社製の「PT203H」(添加量は固形分換算でパルプ1t当たりの質量)、PAMは星光PMC株式会社製の「DS4336」(添加量は固形分換算でパルプ1t当たりの質量)、酸化澱粉は日本食品化工株式会社製の「MS3800」(添加量は固形分換算)であり、酸化澱粉は、表中の部位でスプレー付与した。また、各種物性の測定方法及び評価方法は、以下に示すとおりである。
密度:JIS P 8118「紙及び板紙‐厚さ及び密度の試験方法」に準拠
剛度縦:JIS P 8143「紙のクラークこわさ試験機によるこわさ試験方法」に準拠
正反射平滑度:マイクロトポグラフ(株式会社東洋精機製作所製)を用いて測定。加圧条件20kgf/cm2における正反射平滑度は60%以上
ベック平滑度:JIS P 8119「紙及び板紙‐ベック平滑度試験機による平滑度試験方法」に準拠
製袋加工適性:自動製袋機(型番:185T、ニューロング社製)を用い、片艶紙から手提げ袋5000枚加工した際の加工作業性(搬送不良及び折不良の有無)を調査し、以下の評価基準に基づいて評価
〇:搬送不良及び折不良が50回以下(1%以下)
△:搬送不良及び折不良が250回以下(5%以下)
×:搬送不良及び折不良が250回超(5%超)
印刷適性:JIS P 8129に定めるIGT印刷適性試験機に用いる標準タックグレードインクを使用し、熊谷理機工業株式会社製KRK万能印刷適性試験機を用いて印刷し、着肉性を以下の評価基準に基づいて評価
〇:インク着肉が良好で、優れる
△:インク着肉が低く、実用上やや問題がある
×:インク着肉が悪く、実用上問題がある
操業性:巻き取りロール1本中(10000m中)の、ヤンキードライヤーへの貼りつき不良、剥がれ不良を以下の評価基準に基づいて評価
〇:ヤンキードライヤーへの貼付き不良、剥がれ不良が1回も発生しなかった
△:ヤンキードライヤーへの貼付き不良、剥がれ不良が1回以上、10回未満発生した
×:ヤンキードライヤーへの貼付き不良、剥がれ不良が10回以上発生した
Figure 0004885100
本発明は、手提げ袋や角底袋などの紙袋や包装紙、封筒等に用いる片艶紙の製造方法として、適用可能である。
圧接ロールの配置例である。
1…ヤンキードライヤー、3…湿紙、4A,4B…圧接ロール、6…エキスパンダーロール、P…ドライヤーパート、E…ヤンキードライヤー入口。

Claims (2)

  1. ドライヤーパートにおいて、湿紙をヤンキードライヤーと圧接ロールとの間に通して片艶紙を製造する方法であって、
    前記圧接ロールとして、前段圧接ロールと少なくとも1本の後段圧接ロールとを有し、かつ前記前段圧接ロールの硬度が前記後段圧接ロールの硬度よりも高いものを用意し、
    これら前段圧接ロール及び後段圧接ロールと前記湿紙との間にヤンキーフェルトを介在させず、前記前段圧接ロールの線圧を40〜90kg/cm及び/又は前記後段圧接ロールの線圧を50〜100kg/cmとして表面のベック平滑度が30〜100秒、前記圧接ロールに圧接された裏面のベック平滑度が10〜50秒、前記裏面の正反射平滑度が10μm以下、密度が0.65〜0.75g/cm3となるように、前記湿紙を圧接し、
    PAMの内添量を3kg/パルプトン(固形分換算)以下とし、嵩高剤を内添しない、
    ことを特徴とする片艶紙の製造方法。
  2. ドライヤーパートにおいて、湿紙をヤンキードライヤーと圧接ロールとの間に通して片艶紙を製造する方法であって、
    前記圧接ロールとして、前段圧接ロールと少なくとも1本の後段圧接ロールとを有するものを用意し、
    これら前段圧接ロール及び後段圧接ロールと前記湿紙との間にヤンキーフェルトを介在させず、前記前段圧接ロールの線圧を40〜90kg/cm及び/又は前記後段圧接ロールの線圧を50〜100kg/cmとし、かつ前記圧接ロールの線圧よりも前記後段圧接ロールの線圧が強くなるようにして表面のベック平滑度が30〜100秒、前記圧接ロールに圧接された裏面のベック平滑度が10〜50秒、前記裏面の正反射平滑度が10μm以下、密度が0.65〜0.75g/cm3となるように、前記湿紙を圧接し、
    PAMの内添量を3kg/パルプトン(固形分換算)以下とし、嵩高剤を内添しない、
    ことを特徴とする片艶紙の製造方法。
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