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JP4867632B2 - 低損失磁石とそれを用いた磁気回路 - Google Patents

低損失磁石とそれを用いた磁気回路 Download PDF

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JP4867632B2
JP4867632B2 JP2006335227A JP2006335227A JP4867632B2 JP 4867632 B2 JP4867632 B2 JP 4867632B2 JP 2006335227 A JP2006335227 A JP 2006335227A JP 2006335227 A JP2006335227 A JP 2006335227A JP 4867632 B2 JP4867632 B2 JP 4867632B2
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Description

本発明は低損失磁性材料の製造方法と低損失材料を用いた磁気回路に関し、低損失磁性
体を得るための磁粉に関するものである。
下記特許文献1には、フッ素化合物を含む希土類焼結磁石について記載されている。こ
の磁石では、フッ素化合物が粒状の粒界相となっており粒界相粒子の大きさが数μmであ
る。
特開2003−282312号公報
上記従来の発明では、NdFeB焼結磁石用粉末とフッ素化合物であるDyF3 を添加
して作製した焼結磁石の磁気特性が表3に記載されている。DyF3 を5重量%添加した
場合、残留磁束密度(Br)の値は11.9kGであり、添加しない場合の値(13.2kG)
と比較して約9.8%減少している。残留磁束密度が減少することにより、エネルギー積
((BH)MAX )も減少が著しい。従って保磁力が増加しているにもかかわらず、エネルギ
ー積が小さいため高い磁束が必要な磁気回路あるいは高トルクを必要とする回転機等に使
用することは困難である。
上記目的を達成するために、粒界に板状のフッ素化合物を形成しフッ素化合物と主相と
の界面を増やすこと、フッ素化合物の厚さを薄くすること、あるいはフッ素化合物を強磁
性相にすることが挙げられる。前者はフッ素化合物を磁粉表面に形成する際に層状,板状
あるいは扁平状になるような手法を採用することが有効である。従来例である特開2003−
282312号公報にはNdF3 の場合平均粒径0.2μm のNdF3 粉末とNdFeB
合金粉末を自動乳鉢を使用して混合しており、フッ素化合物の形状についての記載はなく
、焼結後のフッ素化合物の形状は塊状になっている。これに対し本手法の一例は、磁粉表
面に表面処理によりフッ素化合物の形状を層状にしている。表面処理はアルカリ金属元素
,アルカリ土類元素あるいは希土類元素を1種類以上含むフッ素化合物またはフッ素化合
物を磁粉表面に塗布する手法である。ゲル状フッ素化合物をアルコール溶媒中で粉砕し、
磁粉表面に塗布後、加熱により溶媒を除去する。200℃から400℃の熱処理で溶媒を
除去し、500℃から800℃の熱処理でフッ素化合物と磁粉間に酸素,希土類元素及び
フッ素化合物構成元素が拡散する。この熱処理には、抵抗加熱炉,赤外線加熱炉,高周波
誘導加熱炉などの外部加熱方式以外に、ミリ波加熱が使用できる。ミリ波加熱では磁粉表
面に形成した高抵抗層が磁粉よりも発熱し易いように材料設計する。すなわち、ある温度
で高抵抗層の誘電損失を磁粉よりも大きくなるように材料の組み合わせを選択することで
、高抵抗層のみが磁粉の主相よりも加熱され、高抵抗層付近の加熱にともない拡散が進行
する。磁粉には通常、酸素が含有しており、他の不純物元素としてH,C,P,Si,
Al等の軽元素が含まれる。磁粉に含まれる酸素は、希土類酸化物やSi,Alなどの軽
元素の酸化物としてばかりでなく、母相中や粒界に化学量論組成からずれた組成の酸素を
含む相としても存在する。このような酸素を含んだ相は、磁粉の磁化を減少させ、磁化曲
線の形にも影響する。すなわち、残留磁束密度の値の低下,異方性磁界の減少,減磁曲線
の角型性の低下,保磁力の減少,不可逆減磁率の増加,熱減磁の増加,着磁特性の変動,
耐食性劣化,機械特性低下などにつながり、磁石の信頼性が低下する。酸素はこのように
多くの特性に影響するので、磁粉中に残留させないような工程が考えられてきた。酸素を
含む磁粉にフッ素化合物を形成させ、約350℃以上の温度で加熱すると、酸素の拡散が
生じる。磁粉の酸化物は磁粉中の希土類元素と結合している場合が多いが、これらの酸素
は、加熱によりフッ素化合物中に拡散し、酸フッ素化合物(フッ素化合物の一部に酸素が
混入したもの)を形成する。この酸フッ素化合物は、フッ素化合物よりも脆いため、磁粉
からの剥離が起こり易い。これは、フッ素化合物中に酸素が混入することにより、硬度が
増加し変形しにくくなるためであり、フッ素化合物付近にクラックが生じ易く成形性が低
下し高密度化が困難になる。したがって磁粉表面に高抵抗層を形成する場合磁粉の酸素濃
度を抑制することが重要でありフッ素化合物を形成した磁粉の酸素濃度は5000ppm 以
下にする必要がある。この濃度よりも酸素濃度が高い磁粉では、フッ素化合物の一部にフ
ッ酸化物が形成され易くなり、成形等の後処理で剥離し易く、クラックが入り易い。また
磁粉との界面に酸化物やフッ酸化物が形成され易くなり成形能が低下する。表面処理以外
に磁粉を挿入し、減圧雰囲気でフッ素化合物のターゲットからスパッタリングされたフッ
素及び希土類元素を磁粉表面に付着させることができる。フッ素化合物や酸フッ素化合物
は、結晶構造が面心立方格子であり、その格子定数は0.54から0.60nmである。こ
れらのフッ素化合物や酸フッ素化合物の成長は磁粉中の酸素を除去することで、残留磁束
密度の増加,保磁力増加,減磁曲線の角型性向上,熱減磁特性向上,着磁性向上,異方性
向上,耐食性向上などの効果がある。しかし、過剰な酸素は希土類元素と結合し易いため
、残留磁束密度の減少,保磁力減少,角型性低下,熱減磁特性低下,着磁性低下,異方性
低下,耐食性低下をまねく恐れがある。これは高抵抗層がフッ素化合物である場合だけで
なく、他の変形可能な高抵抗層の場合も同様である。変形可能な高抵抗層とは、室温で母
相の硬度よりも小さな硬度をもった高抵抗層であり、フッ素化合物,酸フッ素化合物,窒
化物や炭化物が混合したフッ素化合物が含まれる。また高温で成形する場合には、成形温
度で高抵抗層の硬度が母相の硬度よりも小さいことが望ましく、硬度の温度依存性によっ
て高抵抗層と母相材料を選択する。
本発明を用いることにより、高保磁力と高残留磁束密度と両立した高抵抗磁石の実現が
可能となる。また、酸素濃度を制限することにより成形能を高めることができる。
以下に本発明の実施形態を示す。
Fe合金粉末は、平均粒径1−10μmに粉砕したもので、NdF3 をFe粉の表面に
スパッタリングする。NdF3 粉から成形したターゲットを使用し、アルゴンガスあるい
はアルゴンとフッ素の混合ガス雰囲気中で、Fe合金粉末表面にフッ化物を含む層を形成
する。フッ化物のスパッタリング前に逆スパッタリングなどで粉末表面をクリーニングし
て酸化層を除去し、粉末の酸素濃度を3000ppm 以下にする。Fe合金粉末に振動ある
いは回転運動を与え、粉末表面全体にフッ化物あるいはフッ素を含む層を形成する。Fe
合金粉末の表面には、母相と組成の異なる1〜10nmの相が存在しその付近に酸化層が
ある場合が多い。局所的に、母相と希土類元素の組成が異なる相の厚さ、酸化層の厚さは
異なり、粉末が不均一な場合はこれらの厚さは10〜100nmになる。粉末表面に形成
するフッ素を含む層は上記希土類元素の組成の異なる層の厚さである1から10nm以上
が必要であり、フッ素を含む層を形成した後に、損失低減のために600℃以上の熱処理
をする場合は、酸化層の厚さを薄くすることが望ましい。これは酸化層及び希土類元素の
組成の異なる層は600℃以上の温度で、フッ素を含む層との拡散が生じ易く、フッ素を
含む層の構造が変化するため、フッ素を含む層の界面付近は、欠陥や酸素の侵入,希土類
元素の拡散などにより、膜厚が薄い場合その連続性や結晶構造を維持できなくなるためで
ある。そこでフッ化物を形成した粉末の酸素濃度は5000ppm 以下に抑えることが望ま
しい。フッ素を含む層は、スパッタリング等の手法で形成した直後は、構造的にアモルフ
ァスを含んだNdF3 とNdF2 及びNdF2-X の混合相であるが、形成条件を制御すれ
ば、アモルファスのみ、NdF3 のみ、あるいはNdF2 のみのフッ素を含む層を形成す
ることができる。これらのフッ素を含む層が形成された後、600℃〜800℃の温度範
囲で熱処理を実施する。このとき、フッ素を含む層と接する層付近の構造が大きく変化す
る。希土類元素の組成が母相と異なる層は、熱処理温度が高くなるとさらに成長し、酸化
層の酸素はフッ素を含む層あるいは希土類元素の組成が異なる層のどちらにも拡散する。
酸素濃度が高い場合、磁気特性は厚さが厚くなるほど、低下する。このため、フッ素を含
む層の厚さも、必要な磁気特性により決定される。フッ素を含む層は、粉末表面に沿って
形成でき、その膜厚分布は+200%,−50%の範囲になる。フッ素を含む層が形成さ
れた粉末を成形する場合、酸素濃度が5000ppm を超えるとフッ素を含む層の硬さが高
くなり変形しにくく高密度成形体が得られない。また渦電流損失低減のためにフッ素を含
む層の抵抗は母相の10倍以上が望ましい。希土類フッ素化合物は母相であるFe合金の
10倍以上の抵抗を示しかつ硬さもFe合金と同等にすることが可能であり、酸素濃度を
5000ppm 以下にすることでFe合金粉の成形体の損失を低減できる。
Fe−Co合金粉末は、平均粒径1−10μmに粉砕したもので、CaF2 をFe−
Co粉の表面にスパッタリングする。Co組成は1−30at%である。CaF2 粉から
成形したターゲットを使用し、アルゴンガスあるいはアルゴンとフッ素の混合ガス雰囲気
中で、Fe−Co合金粉末表面にフッ化物を含む層を形成する。フッ化物のスパッタリン
グ前に逆スパッタリングなどで粉末表面をクリーニングして酸化層を除去し、Fe−Co
合金粉末の酸素濃度を3000ppm 以下にする。Fe−Co合金粉末に振動あるいは回転
運動を与え、粉末表面全体にフッ化物あるいはフッ素を含む層を形成する。Fe−Co合
金粉末の表面には、母相と組成の異なる1〜10nmの相が存在しその付近に酸化層があ
る場合が多い。粉末表面に形成するフッ素を含む層は1から10nm以上が必要であり、
フッ素を含む層を形成した後に、損失低減のために400℃以上の熱処理をする場合は、
酸化層の厚さを薄くすることが望ましい。これは酸化層が400℃以上の温度で、フッ素
を含む層との拡散が生じ易く、フッ素を含む層の構造が変化するため、フッ素を含む層の
界面付近は、欠陥や酸素の侵入,Caの拡散などにより、膜厚が薄い場合その連続性や結
晶構造を維持できなくなるためである。そこでフッ化物を形成した粉末の酸素濃度は5000
ppm 以下に抑えることが望ましい。フッ素を含む層は、スパッタリング等の手法で形成し
た直後は、構造的にアモルファスを含んだCaF2 及びCaF2-X の混合相及びこれらの
酸フッ素化合物であるが、形成条件を制御すれば、アモルファスのみ、CaF2 のみ、あ
るいはCaF2-x のみのフッ素を含む層を形成することができる。これらのフッ素を含む
層が形成された後、400℃〜900℃の温度範囲で熱処理を実施する。このとき、フッ
素を含む層と接する層付近の構造が大きく変化する。酸化層の酸素はフッ素を含む層ある
いはFe−Co合金層のどちらにも拡散する。酸素濃度が高い場合、磁気特性は厚さが厚
くなるほど、低下する。このため、フッ素を含む層の厚さも、必要な磁気特性により決定
される。フッ素を含む層は、粉末表面に沿って形成でき、その膜厚分布は+200%,
−50%の範囲になる。フッ素を含む層が形成された粉末を室温以上900℃以下の温度
で成形する場合、酸素濃度が5000ppm を超えるとフッ素を含む層の硬さが高くなり変
形しにくく高密度成形体が得られない。また渦電流損失低減のためにフッ素を含む層の抵
抗は母相の10倍以上が望ましい。CaF2 は母相であるFe−Co合金の10倍以上の
抵抗を示しかつ硬さもFe−Co合金以下にすることが可能であり、酸素濃度を5000
ppm 以下にすることでFe−Co合金粉の成形体の損失を低減できる。
ネオジムフッ素化合物コート膜を形成処理液は以下のようにして作製した。
(1)水に溶解度の高い塩である酢酸Nd、または硝酸Nd4gを約100mLの水に導
入し、振とう器または超音波攪拌器を用いて完全に溶解した。
(2)約10%に希釈したフッ化水素酸をNdF3が生成する化学反応の当量分徐々に加
えた。
(3)ゲル状沈殿のNdF3 が生成した溶液に対して超音波攪拌器を用いて1時間以上攪
拌した。
(4)4000r.p.m の回転数で遠心分離した後、上澄み液を取り除きほぼ同量のメタノ
ールを加えた。
(5)ゲル状のNdF3 を含むメタノール溶液を攪拌して完全に懸濁液にした後、超音波
攪拌器を用いて1時間以上攪拌した。
(6)(4)と(5)の操作を酢酸イオン、又は硝酸イオン等の陰イオンが検出されなく
なるまで、4回繰り返した。
(7)やや縣濁したゾル状のNdF3となった。処理液としてはNdF3が1g/15mL
のメタノール溶液を用いた。
次に、希土類磁石用磁粉にはNdFeB合金粉末を用いた。この磁粉は、平均粒径が
100−200μmで磁気的に異方性を有している。希土類フッ素化合物又はアルカリ土
類金属フッ素化合物コート膜を希土類磁石用磁粉に形成するプロセスは以下の方法で実施
した。
(1)平均粒径が100μmの場合、希土類磁石用磁粉100gに対して10mLの
NdF3 コート膜形成処理液を添加し、希土類磁石用磁粉全体が濡れるのが確認で
きるまで混合した。
(2)(1)のNdF3 コート膜形成処理希土類磁石用磁粉を2〜5torrの減圧下で溶媒
のメタノール除去を行った。
(3)(2)の溶媒の除去を行った希土類磁石用磁粉を石英製ボートに移し、1×10-5
torrの減圧下で200℃,30分と400℃,30分の熱処理を行った。
(4)(3)で熱処理した磁粉に対して、多孔質アルミナ容器に移したのち、1×10-5
torrの減圧後、ミリ波により加熱した。加熱温度は400−800℃である。
(5)ミリ波加熱には、富士電波工業社製28GHzミリ波加熱装置を使用し、出力1−
10kW、Ar雰囲気中で200℃に加熱後選択的にNdF3 コート膜を加熱した

(6)(4)で熱処理を施した希土類磁石用磁粉の磁気特性を調べた。
磁気特性の結果を、表1に合わせて示した。
Figure 0004867632
NdF3 を低酸素濃度のNdFeB粉表面に上記のように形成した場合、界面付近には
NdF2,NdF3が成長し、NdOFは前記フッ化物よりも少ない。酸フッ素化合物の形
成を抑制することで、NdFeB粉表面のフッ化物層の剥離を防止でき、NdFeB粉に
負荷がかかった場合のフッ化物層の脱離を防止できる。このような希土類フッ素化合物に
は酸素が不純物として混入しやすいが、磁石粉を含んだ酸素濃度が5000ppm を超える
と酸フッ素化合物が形成されやすく、磁石粉から剥離し易くなる。酸素濃度が高くなると
、フッ素化合物の機械的性質が変化し、高温圧縮成形時に高密度化が困難になる。図1に
700℃で10tの荷重で成形した10×10×10mm3 の成形体の密度と磁粉酸素濃度
の関係を示す。酸素濃度が5000ppm を超えると密度98%未満となり高密度化が困難
なことを示している。また高抵抗層の抵抗は酸素濃度や反応により変化し、図2に示すよ
うに高抵抗層が母相の抵抗より10倍以上で損失低減効果が10%以上となる。この損失
は高抵抗層の厚さを1000nmにして磁粉の表面処理後98%以上の密度になるように
成形した磁石部に高周波磁束を印加して評価したものであり、損失低減のためには高抵抗
層が10倍以上の抵抗値にすることが必要である。このため酸素濃度を低減させる必要が
ある。酸素濃度低減のためには、表面処理プロセス中のフッ素化合物成長過程で酸素や水
分の混入を防止することが重要である。上記フッ素化合物層を形成させた磁性粉末をエポ
キシ樹脂,ポリイミド樹脂,ポリアミド樹脂,ポリアミドイミド樹脂,ケルイミド樹脂,
マレイミド樹脂,ポリフェニルエーテル,ポリフェニレンスルヒド単体またはエポキシ樹
脂,ポリアミド樹脂,ポリアミドイミド樹脂,ケルイミド樹脂,マレイミド樹脂などの有
機樹脂と混合させたコンパウンドを作製し、磁場中あるいは無磁場中成形することにより
、ボンド磁石に成形することが可能である。NdFeB合金粉末に異方性磁粉を用いるこ
とで、成形時に磁界を印加して成形後に異方性が付加されたボンド磁石を作製することが
可能である。
ネオジムフッ素化合物コート膜を形成処理液は以下のようにして作製した。
(1)水に溶解度の高い塩である酢酸Nd、または硝酸Nd4gを約100mLの水に導
入し、振とう器または超音波攪拌器を用いて完全に溶解した。
(2)10%に希釈したフッ化水素酸をNdF3が生成する化学反応の当量分徐々に加え
た。
(3)ゲル状沈殿のNdF3 が生成した溶液に対して超音波攪拌器を用いて1時間以上攪
拌した。
(4)4000r.p.m の回転数で遠心分離した後、上澄み液を取り除きほぼ同量のメタノ
ールを加えた。
(5)ゲル状のNdF3 を含むメタノール溶液を攪拌して完全に懸濁液にした後、超音波
攪拌器を用いて1時間以上攪拌した。
(6)(4)と(5)の操作を酢酸イオン、又は硝酸イオン等の陰イオンが検出されなく
なるまで、4回繰り返した。
(7)やや縣濁したゾル状のNdF3となった。処理液としてはNdF3が1g/15mL
のメタノール溶液を用いた。
次に、希土類磁石ブロックにはNdFeB系焼結磁石を用いた。この磁石は、平均粒径
が1−50μmで磁気的に異方性を有している。希土類フッ素化合物又はアルカリ土類金
属フッ素化合物コート膜を希土類磁石ブロックに形成するプロセスは以下の方法で実施し
た。
(1)希土類磁石100gに対して1mLのNdF3 コート膜形成処理液を添加し、希土
類磁石全体が濡れるのが確認できるまで混合した。
(2)(1)のNdF3 コート膜形成処理希土類磁石を2〜5torrの減圧下で溶媒のメタ
ノール除去を行った。
(3)(2)の溶媒の除去を行った希土類磁石を石英製ボートに移し、1×10-5torrの
減圧下で200℃,30分と400℃,30分の熱処理を行った。
(4)(3)で熱処理した希土類磁石に対して、多孔質アルミナ容器に移したのち、1×
10-5torrの減圧後、ミリ波により加熱した。加熱温度は300−1200℃であ
る。
(5)ミリ波加熱には、富士電波工業社製28GHzミリ波加熱装置を使用し、出力1−
10kW、Ar雰囲気中で200℃に加熱後選択的にNdF3 コート膜を加熱した

(6)(4)で熱処理を施した希土類磁石の磁気特性を調べた。
磁気特性の結果を、表2に合わせて示した。
Figure 0004867632
NdF3 を低酸素濃度のNdFeB磁石表面に上記のように形成した場合、界面付近に
はNdF2,NdF3が成長し、NdOFは前記フッ化物よりも少ない。磁石の酸素濃度を
10000ppm 以下にして酸フッ素化合物の形成を抑制することで、NdFeB粉表面の
フッ化物層の剥離を防止でき、NdFeB粉に負荷がかかった場合のフッ化物層の脱離を
防止できる。10000ppm 以下の酸素濃度にするためには、焼結プロセスにおいて粉砕
粉の酸素濃度の低減,粉砕粉の粉末径,粉末粉の合金組成,仮成形条件,焼結温度,焼結
時の真空度を適当にすること及び焼結ブロックの加工研磨後の上記フッ素化合物形成プロ
セスでの酸素や水分の混入を防止することが重要である。フッ素化合物形成プロセスは除
湿あるいは温調下で実施することと、フッ素化合物形成のための熱処理を300℃から
1200℃にし、必要に応じて還元ガス雰囲気中の熱処理を採用することで、酸素濃度を
10ppm 以上10000以下にすることが可能である。また、Ndフッ素化合物以外に同
様なプロセスを用いて、LiF,MgF2,CaF2,ScF3,VF2,VF3,CrF2
CrF3,MnF2,MnF3,FeF2,FeF3,CoF2,CoF3,NiF2,ZnF2
,AlF3,GaF3,SrF2,YF3,ZrF3,NbF5,AgF,InF3,SnF2
SnF4,BaF2,LaF2,LaF3,CeF2,CeF3,PrF2,PrF3,NdF2
,NdF3,SmF2,SmF3,EuF2,EuF3,GdF3,TbF3,TbF4,DyF2
,DyF3,HoF2,HoF3,ErF2,ErF3,TmF2,TmF3,YbF3,YbF2
,LuF2,LuF3,PbF2,BiF3及びこれらのフッ素化合物の酸フッ素化合物やフ
ッ素が一部欠乏したフッ素化合物を層状に形成できる。このようなフッ素化合物の中に
NdF3 のように誘電損失がNdFeBよりも200℃以上の高温で大きいものは、ミリ
波加熱によりフッ素化合物が発熱し、フッ素化合物の形成してある部分付近のみ加熱され
るため、NdFeB焼結体の内部磁気特性を劣化させずに、表層付近のみ磁気特性を向上
させることが可能となる。NdFeB焼結体を加工したブロック焼結体は、最表面に加工
変質層が存在しやすく、この付近の磁気特性が劣化しやすい。この磁気特性の劣化を修正
するために、磁気異方性を大きくする元素を含むフッ素化合物を上記方法などで形成後、
ミリ波加熱をすることで、フッ素化合物あるいは酸フッ素化合物が発熱し、フッ素化合物
が形成されている部分のみ希土類の拡散を進行させることが可能である。この拡散により
NdFeBの保磁力向上,角型性向上が確認できた。
ジスプロシウムフッ素化合物コート膜を形成処理液は以下のようにして作製した。
(1)水に溶解度の高い塩である酢酸Dy、または硝酸Dy4gを約100mLの水に導
入し、振とう器または超音波攪拌器を用いて完全に溶解した。
(2)約10%に希釈したフッ化水素酸をDyF3が生成する化学反応の当量分徐々に加
えた。
(3)ゲル状沈殿のDyF3が生成した溶液に対して超音波攪拌器を用いて1時間以上攪
拌した。
(4)4000r.p.m の回転数で遠心分離した後、上澄み液を取り除きほぼ同量のメタノ
ールを加えた。
(5)ゲル状のDyF3 を含むメタノール溶液を攪拌して完全に懸濁液にした後、超音波
攪拌器を用いて1時間以上攪拌した。
(6)(4)と(5)の操作を酢酸イオン、又は硝酸イオン等の陰イオンが検出されなく
なるまで、4回繰り返した。
(7)やや縣濁したゾル状のDyF3となった。処理液としてはDyF3が1g/15mL
のメタノール溶液を用いた。
次に、希土類磁石用磁粉にはNdFeB合金粉末あるいはSmCo合金粉を用いた。
NdFeB合金粉と同様に希土類元素を少なくとも1種以上含むFe合金あるいは希土類
元素を少なくとも1種以上及び半金属元素を含む合金に上記工程が適用可能である。また
SmCo合金は希土類元素を少なくとも1種以上含むCo合金であり、このCo合金に種
々の添加元素が添加されている合金の場合も上記工程が適用できる。これらの磁粉は、酸
素濃度が10ppm 以上3000ppm 以下で平均粒径が1〜100μmで磁気的に異方性で
ある。希土類フッ素化合物又はアルカリ土類金属フッ素化合物コート膜を希土類磁石用磁
粉に形成するプロセスは以下の方法で実施した。
(1)均粒径が10μmの場合、希土類磁石用磁粉100gに対して15mLのDyF3
コート膜形成処理液を添加し、希土類磁石用磁粉全体が濡れるのが確認できるまで
混合した。
(2)(1)のDyF3コート膜形成処理希土類磁石用磁粉を2〜5torrの減圧下で溶媒
のメタノール除去を行った。
(3)(2)の溶媒の除去を行った希土類磁石用磁粉を石英製ボートに移し、1×10-5
torrの減圧下で200℃,30分と400℃,30分の熱処理を行った。
(4)(3)で熱処理した磁粉に対して、容器に移したのち、1×10-5torrの減圧下で
、400〜800℃の熱処理を行った。
(5)(4)で熱処理を施した希土類磁石用磁粉の磁気特性を調べた。
磁気特性の結果を、表3に纏めた。
Figure 0004867632
表3にはDy以外の元素を含むフッ素化合物を上記手法と同様に表面処理して形成させ
た磁粉の磁気特性も示してある。フッ素化合物は表面処理によって形成される主なフッ素
化合物を記載し、界面相には、磁粉とフッ素化合物界面付近に生成した相を記載した。こ
れらの相は界面から約1000nm以内で認められる相であり、TEM,SEM,AES
などの組成分析,構造解析及びXRDパターンから解析することが可能である。DyF3
をNdFeB粉表面に上記のように形成した場合、界面付近にはDyF2 ,NdF2 及び
NdO2 が成長するように400℃30分から1時間の熱処理をした。さらに熱処理を
500℃から800℃の高温で進めることにより、上記界面相以外にFeが成長する。こ
のFeには希土類元素が含まれるが、酸素濃度は磁粉表面よりもフッ素化合物側に多い。
他のフッ素化合物を表面処理で形成した場合にも酸素濃度がフッ素化合物中の酸素濃度よ
りも少ないFeが成長するのは熱処理温度が400℃よりも高い場合である。このように
熱処理温度を高温側にするとフッ素化合物と磁粉間で希土類元素や酸素などが拡散し、磁
粉の酸素の一部がフッ素化合物に拡散し、磁粉の希土類元素の一部がフッ素化合物に拡散
する。この拡散により磁粉表面のFe相(Fe希土類合金)が成長し、その一部は母相の
NdFeBと交換結合する。Fe相には希土類元素が含まれCoなどのNdFeBに添加
されている元素が含まれる場合もある。このFe相の飽和磁束密度がNdFeBよりも高
いため、NdFeBと交換結合することにより外部磁界に対してFeの磁化回転が困難と
なり、残留磁束密度が増加する。表3に示すように、Feが界面相として認められる磁粉
の残留磁束密度は、同じフッ素化合物を形成させた磁粉でFeが界面に認められない場合
と比較して、その値が大きくなることがわかる。また、Feが界面相として成長している
場合には最大エネルギー積、BHmax が大きい。尚、熱処理温度が400℃よりも低温側
でも長時間熱処理することにより上記Fe相が成長する。
ジスプロシウム・ネオジムフッ素化合物コート膜を形成処理液は以下のようにして作製
した。
(6)水に溶解度の高い塩である酢酸Dy、または硝酸Dy2gと酢酸Nd2gを約100
mLの水に導入し、振とう器または超音波攪拌器を用いて完全に溶解した。
(7)約10%に希釈したフッ化水素酸を(Dy,Nd)F3 が生成する化学反応の当量分
徐々に加えた。
(8)ゲル状沈殿の(Dy,Nd)F3 が生成した溶液に対して超音波攪拌器を用いて1時
間以上攪拌した。
(9)4000r.p.m の回転数で遠心分離した後、上澄み液を取り除きほぼ同量のメタノ
ールを加えた。
(10)ゲル状の(Dy,Nd)F3 を含むメタノール溶液を攪拌して完全に懸濁液にした
後、超音波攪拌器を用いて1時間以上攪拌した。
(11)(4)と(5)の操作を酢酸イオン、又は硝酸イオン等の陰イオンが検出されな
くなるまで、4回繰り返した。
(12)やや縣濁したゾル状の(Dy,Nd)F3となった。処理液としては(Dy,Nd)F3
が1g/15mLのメタノール溶液を用いた。
次に、希土類磁石用磁粉にはNdFeB合金粉末あるいはSmCo合金粉を用いた。
NdFeB合金粉には希土類元素を少なくとも1種以上含むFe合金あるいは希土類元素
を少なくとも1種以上及び半金属元素を含む合金である。またSmCo合金は希土類元素
を少なくとも1種以上含むCo合金であり、このCo合金に種々の添加元素が添加されて
いる合金を含んでいる。これらの磁粉は、酸素濃度が10ppm 以上3000ppm 以下で平
均粒径が1〜100μmで磁気的に異方性である。希土類フッ素化合物又はアルカリ土類
金属フッ素化合物コート膜を希土類磁石用磁粉に形成するプロセスは以下の方法で実施し
た。
(13)平均粒径が10μmの場合、希土類磁石用磁粉100gに対して15mLの
(Dy,Nd)F3 コート膜形成処理液を添加し、希土類磁石用磁粉全体が濡れるの
が確認できるまで混合した。
(14)(1)の(Dy,Nd)F3 コート膜形成処理希土類磁石用磁粉を2〜5torrの減
圧下で溶媒のメタノール除去を行った。
(15)(2)の溶媒の除去を行った希土類磁石用磁粉を石英製ボートに移し、1×10-5
torrの減圧下で200℃,30分と400℃,30分の熱処理を行った。
(16)(3)で熱処理した磁粉に対して、多孔質アルミナ容器に移したのち、減圧下の
Arガス雰囲気中でミリ波加熱装置により、400〜800℃の熱処理を行った。
(17)(4)で熱処理を施した希土類磁石用磁粉の磁気特性を調べた。
磁気特性の結果を、表4に纏めた。
Figure 0004867632
表4にはDy以外の元素を含むフッ素化合物を上記手法と同様に表面処理して形成させ
た磁粉の磁気特性も示してある。フッ素化合物は表面処理によって形成される主なフッ素
化合物を記載し、界面相には、磁粉とフッ素化合物界面付近に生成した相を記載した。こ
れらの相は界面から約1000nm以内で認められる相であり、TEM,SEM,AES
などの組成分析,構造解析及びXRDパターンから解析することが可能である。DyF3
をNdFeB粉表面に上記のように形成した場合、界面付近にはDyF2,NdF2及び
NdO2 が成長するように400℃30分から1時間の熱処理をした。さらに熱処理を
500℃から800℃の高温で進めることにより、上記界面相以外にFeが成長する。こ
のFeには希土類元素が含まれるが、酸素濃度は磁粉表面よりもフッ素化合物側に多い。
他のフッ素化合物を表面処理で形成した場合にも酸素濃度がフッ素化合物中の酸素濃度よ
りも少ないFeが成長するのは熱処理温度が400℃よりも高い場合である。このように
熱処理温度を高温側にするとフッ素化合物と磁粉間で希土類元素や酸素などが拡散し、磁
粉の酸素の一部がフッ素化合物に拡散し、磁粉の希土類元素の一部がフッ素化合物に拡散
する。この拡散により磁粉表面のFe相(Fe希土類合金)が成長し、その一部は母相の
NdFeBと交換結合する。Fe相には希土類元素が含まれCoなどのNdFeBに添加
されている元素が含まれる場合もある。このFe相の飽和磁束密度がNdFeBよりも高
いため、NdFeBと交換結合することにより外部磁界に対してFeの磁化回転が困難と
なり、残留磁束密度が増加する。表4に示すように、Feが界面相として認められる磁粉
の残留磁束密度は、同じフッ素化合物を形成させた磁粉でFeが界面に認められない場合
と比較して、その値が大きくなることがわかる。また、Feが界面相として成長している
場合には最大エネルギー積、BHmax が大きい。尚、熱処理温度が400℃よりも低温側
でも長時間熱処理することにより上記Fe相が成長する。
NdFeB合金は水素化脱水素処理を施した粒径約1−1000μmの粉であり、この
粉末の室温での保磁力は16kOeである。このNdFeB(主相はNd2Fe14B )粉
末の酸素濃度は10ppm 以上3000ppm 以下にする。混合するフッ素化合物はNdF3
である。NdF3原料粉は予め粉砕し0.01から100μmの平均粒径にし、NdFeB
粉とNdF3 を混合して双ロールのロール間に注入する。フッ素化合物粉の形状を層状に
するために、ロール表面温度を300℃から600℃とし、NdFeB粉やフッ素化合物
粉がロールにより変形しやすくする。フッ素化合物は双ロールによりNdFeB粉ととも
に変形して扁平状となる。加圧力は100kg/cm2 以上とした。双ロールで加圧された磁
粉は磁粉表面にフッ素化合物が層状に形成され、必要に応じてフッ素化合物をさらに混合
し、双ロールで加圧しても良い。混合するフッ素化合物はNdF3 以外にLiF,MgF2
,CaF2,ScF3,VF2,VF3,CrF2,CrF3,MnF2,MnF3,FeF2
FeF3,CoF2,CoF3,NiF2,ZnF2,AlF3,GaF3,SrF2,YF3
ZrF3,NbF5,AgF,InF3,SnF2,SnF4,BaF2,LaF2,LaF3
CeF2,CeF3,PrF2,PrF3,NdF2,NdF3,SmF2,SmF3,EuF2
,EuF3,GdF3,TbF3,TbF4,DyF2,DyF3,HoF2,HoF3
ErF2,ErF3,TmF2,TmF3,YbF3,YbF2,LuF2,LuF3,PbF2
,BiF3がある。磁粉の酸素濃度が3000ppmを超えるとこれらの混合粉やこれらのフ
ッ素化合物に酸素が結合した酸フッ素化合物がフッ素化合物よりも多く形成されるように
なり、NdFeB粉の表面に酸フッ素化合物が層状あるいは粒状に形成される。
双ロールで加熱加圧された磁粉は、加圧により応力が加わるために、粉末に局所的な歪
みが残留する。この局所的歪みは、磁粉とフッ素化合物界面での拡散を促進させると推定
している。NdF3 と磁粉の界面は、ロール表面温度により異なり、400℃以下の温度
では、NdF3/Nd2Fe14B,NdF3/Ndリッチ相、NdF3/Nd23などである
。ロール表面温度を400℃よりも高くするとNdF3の一部が磁粉と反応し、NdF2
が形成される。同時に、NdOFも形成する。前記NdF2 にも酸素が混入し、400℃
よりも高温側では、磁粉の酸素や希土類元素がフッ素化合物に拡散する。この拡散により
磁粉中の酸素濃度が低減され、残留磁束密度の増加,保磁力増加,磁化曲線の角型性向上
,熱減磁の減少などのいずれかの効果が確認される。
図3は本発明による高抵抗磁石モータの径方向断面形状を示す。図3において,高抵抗
磁石モータの固定子2はティース4とコアバック5からなる固定子鉄心6と、ティース4
間のスロット7内にはティース4を取り囲むように巻装された集中巻の電機子巻線8(三
相巻線のU相巻線8a,V相巻線8b,W相巻線8cからなる)から構成される。ここで
、高抵抗磁石モータは4極6スロットであるから、スロットピッチは電気角で120度で
ある。回転子はシャフト孔9あるいは回転子挿入孔10に挿入し、回転子シャフト3の外
周表面に永久磁石1を配置している。固定子にはハネウェル社製METGLAS2605TCA、厚さ約
25μmのFeSiBのアモルファスを使用し、アモルファス薄帯を打ち抜き後、樹脂を
塗布し占積率を高めるためにプレス成形している。占積率が80%のときアモルファス積
層体の飽和磁束密度は、1.25T であった。固定子2にアモルファスを使用することで
、1000rpm以上の高速回転で珪素鋼板(0.15mmt)を用いた場合よりも効率が高く
なることを確認している。これはアモルファスのヒステリシス損や渦電流損が珪素鋼板に
比べて小さいからであり、高効率が要求されるエアコンなどの家電モータ,分散電源用発
電機,HEV駆動モータなどに適している。高抵抗磁石の抵抗は0.2 〜10mΩcmの範
囲であり、NdFeB系磁粉を溶液処理してフッ素化合物を含む層で部分的に高抵抗化し
ている。このときのフッ素化合物は、LiF,MgF2,CaF2,ScF3,VF2,VF3
,CrF2,CrF3,MnF2,MnF3,FeF2,FeF3,CoF2,CoF3,NiF2
,ZnF2,AlF3,GaF3,SrF2,YF3,ZrF3,NbF5,AgF,InF3
SnF2,SnF4,BaF2,LaF2,LaF3,CeF2,CeF3,PrF2,PrF3
,NdF2,NdF3,SmF2,SmF3,EuF2,EuF3,GdF3,TbF3,TbF4
,DyF2,DyF3,HoF2,HoF3,ErF2,ErF3,TmF2,TmF3,YbF3
,YbF2,LuF2,LuF3,PbF2,BiF3 及びこれらのフッ素化合物の酸フッ素
化合物やフッ素が一部欠乏したフッ素化合物であり層状に形成できる。なお、これらのフ
ッ素化合物に酸素,炭素あるいは窒素が混入してもその電気抵抗が大きく劣化するもので
なければ高抵抗層として使用できる。また上記層状フッ素化合物が複数のフッ素化合物か
ら構成されたり、フッ素化合物にBN,TiNなどの窒素化合物や単化物が粒状に複合化
していても良い。これらのフッ素化合物が磁粉あるいは磁石表面の一部を表面処理工程あ
るいはスパッタリング等の乾式工程によって形成でき、酸素濃度を5000ppm 以下にす
ることが可能である。酸素濃度低減のためには、原料であるNdFeB粉,SmCo粉,
SmFeN粉などに含まれる酸素を低減した粉あるいは磁石を採用する。これらの粉ある
いは磁石に含まれる酸素は3000ppm 以下にすることが必要である。また、フッ素化合
物形成時の酸素混入を低減するため、表面処理工程での除湿及び温調,表面処理後の熱処
理による不純物の除去が必要である。湿度は60%以下、処理室温度は20℃以下、熱処
理は350℃以上1000℃以下で進めた。表面付近の酸素は、水素ガスを混合させた雰
囲気で熱処理することにより一部の酸素を除去し、成形体で10000ppm 以下にするこ
とも可能である。フッ素化合物を用いた磁石において酸素濃度が10000ppm を越える
と、熱減磁増加や耐食性低下,減磁曲線の角型性低下,崩壊性増加などの信頼性劣化や磁
気特性劣化の問題が生じる。酸素濃度を10000ppm 以下にすることで、フッ素化合物
を使用した高抵抗磁石の信頼性が向上する。耐食性がさらに必要な場合には、これらのフ
ッ素化合物を使用した磁石に対して、Niめっき,Ni/Cuめっき,Crめっき,樹脂
コートをすることも可能である。このようなフッ素化合物を使用した磁石を回転機に採用
することで、磁石部の発熱を抑制することが可能であり、表面処理後の粉あるいはこのよ
うな高抵抗磁石を用いることで磁石の渦電流損を低減できた。
図3において、固定子に珪素鋼板(あるいは電磁鋼板)を使用し、珪素鋼板を打ち抜い
た積層体を固定子鉄心6に用いた。回転子には永久磁石1を外周側にリング形状で配置し
てある。回転子シャフト3は鉄系材,圧粉鉄であり、高抵抗磁石が極異方性磁石の場合は
非磁性材でよい。図3の高抵抗磁石モータでは、永久磁石1の渦電流損を小さくすること
ができるので、回転子と固定子の間のギャップに高い磁束を発生させても損失は低減でき
、高トルク化に有利である。アモルファスに比べ、珪素鋼板あるいは圧粉鉄の飽和磁束密
度は高いので、ギャップ磁束密度も高くすることができる。高抵抗磁石の抵抗は、フッ素
化合物を含む高抵抗層の膜厚,高抵抗層の下地層の種類及び磁石の成形条件によって変え
ることができる。高抵抗層の厚さを厚くすると、残留磁束密度及びエネルギー積が減少す
るので、高残留磁束密度が必要な場合は、高抵抗層の平均膜厚を薄くする必要がある。希
土類元素あるいはアルカリ土類元素を少なくとも1種類以上含むフッ素化合物を含む高抵
抗層は、膜厚10μm以下1nm以上であることが、磁気特性確保の点で望ましい。ギャ
ップ磁束密度が1Tで磁束密度の波形歪が0.5% の場合、高抵抗磁石の比抵抗と損失低
減率との関係は図9のようになる。このときの高抵抗磁石はNdFeB系磁粉にDyF3
及びDyF2 を主成分とする平均膜厚100nmの高抵抗層を溶液処理により形成したも
のを使用した。残留磁束密度は1.2T 、保磁力は25kOeである。比抵抗が0.2
mΩcm以上で損失の低減が確認できた。比抵抗が増加するにつれて損失低減率も増加する
ことがわかる。これは磁石の高抵抗化に伴い、磁石部の渦電流損が低減されること、渦電
流によるギャップ磁束への影響が小さくなったこと、及び渦電流損が小さくなったための
温度上昇抑制効果などが働いていると考えられる。
図4において、高抵抗磁石モータの固定子2はティース4とコアバック5からなる固定
子鉄心6と、ティース4間のスロット7内にはティース4を取り囲むように巻装された集
中巻の電機子巻線8(三相巻線のU相巻線8a,V相巻線8b,W相巻線8cからなる)
から構成される。ここで、高抵抗磁石モータは4極6スロットであるから、スロットピッ
チは電気角で120度である。回転子はシャフト孔9あるいは回転子挿入孔10に挿入し
、回転子シャフト3の外周側に永久磁石1を配置している。図4において、固定子に珪素
鋼板(あるいは電磁鋼板)を使用し、珪素鋼板を打ち抜いた積層体を固定子鉄心6に用い
た。回転子には永久磁石1を外周側にリング形状で配置してある。回転子シャフト3は鉄
系材であり、永久磁石1はラジアル異方性磁石である。図4の高抵抗磁石モータでは、永
久磁石1の渦電流損を小さくすることができるので、回転子と固定子の間のギャップに高
い磁束を発生させても損失は低減でき、高トルク化に有利である。永久磁石1のエネルギ
ー積を変えることでギャップ磁束密度を変えることができ、高抵抗磁石と通常の焼結磁石
とを比較して損失の差を調べた。その結果を図5に示す。損失低減効果は0.1T の磁束
密度以上の場合に認められ、磁束密度が高くなるほど、高抵抗磁石による低減率が大きく
なった。この時の永久磁石1の比抵抗は1.5mΩcm であり、さらに高い抵抗の場合損失
低も大きくすることができる。このような損失低減効果は極数あるいはスロット数が多い
ほど顕著になる。
図7および図8において、高抵抗磁石モータの固定子2はティース4とコアバック5か
らなる固定子鉄心6と、ティース4間のスロット7内にはティース4を取り囲むように巻
装された集中巻の電機子巻線8(三相巻線のU相巻線8a,V相巻線8b,W相巻線8c
からなる)から構成される。ここで、高抵抗磁石モータは4極6スロットであるから、ス
ロットピッチは電気角で120度である。回転子はシャフト孔9あるいは回転子挿入孔
10に挿入し、回転子シャフト3の特定位置に永久磁石1を配置している。図5の場合、
永久磁石1の異方性の方向は短辺に平行にし、アモルファス,電磁鋼板の積層体あるいは
圧粉鉄などで作成されたシャフトの孔に挿入する。図6の場合は、リラクタンストルクを
多く活用できる構造としており、永久磁石1の断面は単純形状ではなく、アーク形状とな
っている。高抵抗磁石の加工品を挿入することができるが、高抵抗磁石の原料となるフッ
素化合物を含む磁粉と樹脂の混合物を磁石位置に磁石加工することなく、軟磁性材の積層
体あるいは圧粉鉄に直接射出成形などの手法で挿入することも可能である。
フッ素化合物を適用した高抵抗磁石は、以下に示すような種々の手法のいずれかが採用
される。第一は、焼結磁石ブロックの表面にフッ素化合物を含む高抵抗層を形成した場合
であり、複数の磁石ブロックの表面の一部あるいは全部をフッ素化合物を含んだ高抵抗層
で被覆する。その手法は表面処理やスパッタリングなどの蒸着が可能である。スパッタリ
ングの場合、BNやTiNなどの窒素化合物や炭化物のみの高抵抗層あるいはフッ素化合
物との混合層の形成も可能である。これらの化合物の表面皮膜が形成された磁石ブロック
にGHzの周波数を有するミリ波を照射することで、化合物の皮膜付近のみが選択的に加
熱され、剥離防止や磁気特性向上を実現できる。特に、磁石ブロックの母相に対して異方
性を大きくする元素を含む化合物が形成されている場合には、保磁力や角型性の向上効果
が確認できる。第二に、磁石粉の粉末表面に表面処理やスパッタリングなどの手法でフッ
素化合物などのハロゲン元素を含む化合物や窒素化合物あるいは炭素化合物を形成する場
合である。この場合には溶液処理がプロセスコスト低減のために有効であり、磁石粉表面
に沿って層状のフッ素化合物が形成でき、磁石粉末の抵抗を増加できる。この磁石粉末を
電極間に挿んでIV特性を測定すると電圧100V以下で絶縁破壊しない高抵抗層が形成
できる。磁石粉がSmCo,NdFeBなどのFe系あるいはCo系希土類磁石であれば
、フッ素化合物を母相とする高抵抗層の硬度のほうが上記希土類磁石よりも小さく、変形
させることが可能であるため、フッ素化合物をバインダにした磁石や、樹脂と表面処理し
た磁石粉を混合して射出や圧縮,押し出し成形によるボンド磁石の作製が可能である。一
般にボンド磁石のバインダ材料の体積を小さくして磁気特性を向上させようとすると、磁
石粉同士が接触し抵抗が減少する傾向があるが、上記表面処理磁石粉を使用することによ
り磁石の抵抗は高抵抗のままで、バインダ体積を1−10%にすることが可能である。表
面処理した磁石粉に対してもミリ波照射による磁気特性向上や信頼性向上が可能であり、
フッ素化合物を形成した磁石粉にミリ波を照射し、フッ素化合物を発熱させ希土類元素の
拡散を促進させることで、保磁力向上,角型性向上,残留磁束密度向上,フッ素化合物層
の不純物除去,フッ素化合物と磁石粉の間の密着性向上,熱減磁減少などの効果が確認で
きる。第3に磁石粉以外のFe系あるいはCo系その他の粉末にフッ素化合物を形成しミ
リ波照射することで、フッ素化合物付近のみ加熱することが可能であり、粉末径が大きい
ほど粉末内部の熱影響を抑えてフッ素化合物が発熱するために、表面付近のみの磁気特性
改善や複数の粉末間でフッ素化合物が結合して焼結させることが可能である。
このような手法によって作製された高抵抗磁石回転子の磁束密度波形歪と高抵抗磁石を用いた場合の損失低減率との関係を図6に示す。ギャップの磁束密度は1Tであり、磁石の比抵抗は1.5mΩcmである。損失低減は磁束密度波形歪が0.1%以上で認められ、波形歪が多いほど損失低減率が大きくなる。これは、波形歪が大きい場合、磁束密度波形に高調波を含み低抵抗の場合渦電流損が発生し易くなるが、磁石の高抵抗化により渦電流損と渦電流に起因する損失を低減することが可能であることを示している。このことは、ギャップ磁束密度の波形が高周波になるほど、磁束密度が高いほど渦電流損低減効果が顕著になり、磁石の発熱を防止することが可能となる。
NdFeB系焼結磁石ブロックを機械研磨などで加工すると表面に加工変質層が形成され、磁気特性が劣化する。加工された10×10×10mmのNdFeB焼結磁石ブロック表面には加工研磨による微小なクラックが発生しており、クラック表面の一部は酸化している。このような酸化物は焼結磁石の構成元素である希土類元素や鉄を含んでおり磁化が反転し易く残留磁束密度あるいは保磁力の低下を引き起こす。このような磁気特性の低下は磁石の減磁耐力を弱めるため高温で使用する場合あるいは高い減磁磁界で使用する場合など問題となる。磁気特性を回復させるために有効な手法として希土類フッ素化合物溶液で被覆する手法がある。希土類フッ素化合物溶液とは酢酸Dyや硝酸Dyなどを水に溶解させ攪拌した後、遠心分離しメタノールを添加する。このような溶液を使用して焼結磁石ブロックに塗布,熱処理する手法は、フッ素化合物などの粉砕粉を使用して塗布する場合と比較すると、以下のような利点がある。1)溶液のため微小なクラック表面を容易に被覆可能である。2)溶液のため、大小のクラック表面を被覆するばかりでなく窪みや穴などには溶液を溜めることが可能である。3)溶液のため磁石表面と面で接触し熱処理温度を低温化あるいは短時間化できる。4)溶液中の炭素などの不純物が熱処理により希土類元素やフッ素原子と一緒に磁石内に入り易い。5)溶液のため塗布膜厚の制御がし易く、塗布膜厚の薄膜化も容易である。6)種々の元素を溶液中に混合させることが可能である。7)スピンナーなどを使用して均一に塗布することが可能であり、溶液を再利用できる。8)粉末特有の微粉末の凝集のような問題が起きず均一に塗布できる。9)異種フッ素化合物溶液を使用して熱処理と組み合わせて多段のプロセス(Ndフッ素化合物溶液で処理,熱処理後、他の重希土類フッ素化合物溶液で処理、熱処理)が可能である。酢酸Dyを使用し、ほぼ透明なDyF系溶液を平均膜厚10nmに塗布した場合でも、焼結磁石ブロック表面から深さ方向に伸びるクラック内部DyF系溶液を塗布できる。この時クラック内部に孔などが存在しても微小な孔は溶液で満たすことが可能である。また溶液は磁石表面と面で接触しているため希土類や不純物の拡散が低温で生じやすくなる。膜厚分布が粉末塗布に比べて均一なため、拡散させる希土類元素の使用量を低減することが容易である。溶液中に希土類以外の軽元素が存在する場合、熱処理時にこの軽元素が希土類元素であるDyやフッ素と一緒に拡散しやすくなり、粒界の一部に残留し易くなる。軽元素としては炭素が挙げられる。溶液中に混入している炭素原子は希土類元素あるいはフッ素原子とともにNdFeB系焼結ブロックの亀裂部や表面、粒界部付近より拡散し焼結磁石ブロック内部に拡散する。したがって粒界あるいは焼結磁石ブロック表面には炭素がEDXなどにより検出される。DyF系溶液を平坦部平均膜厚100nmで塗布した後、溶媒除去と同時に粒界などの界面に沿ってDyやF(フッ素)あるいC(炭素)が拡散する。磁石ブロックの最表面は厚さ1nmから100nmの (Nd,Dy)(O,F,C) などの炭素を含む希土類酸フッ素化合物、Dyフッ素化合物あるいはDy酸化物が成長し、熱処理温度が高くなるとともに磁石ブロック内部にDy及び軽元素が拡散するようになる。500℃以上の熱処理温度ではDyとNdの相互拡散が起こり、粒界近傍にDyの多い相が形成される。Nd原子はフッ素,炭素あるいは酸素と一部結合し粒界に固定され、Dyが粒界から1−200nmの範囲で分布するようになる。炭素の存在により粒界部でのNdと
Dyの相互拡散が生じやすくなりかつ粒界付近にDyがとどまり易くなった。このことからフッ素化合物微粉を使用するよりも溶液を使用した場合の方が溶液中の軽元素による希土類固定効果が働き、保磁力の増大とHk増大、同一保磁力での残留磁束密度の増加が可能となる。粒界3重点にもDyや炭素,フッ素が偏析した相がみられる。このように溶液を使用した場合の特徴として溶液内の軽元素不純物による希土類元素(Dy)の粒界近傍固定作用が確認できている。DyF系溶液を使用し溶媒にメタノール,エタノールなどを使用することで焼結磁石ブロック表面から内部にかけて粒界に炭素濃度が高いフッ素化合物あるいは酸フッ素化合物が成長し、このような炭素を含む化合物と磁石を構成する希土類元素との間に拡散が進行し、Dyが粒界近傍に拡散し、NdやDyは炭素を含む化合物に多く含有する。微粉末状のフッ素化合物を使用して焼結磁石ブロック表面に塗布後、熱処理によりDyを粒界近傍に拡散させる場合よりも、本手法を使用すると炭素の粒界への拡散によりDyの粒界拡散を助長したり、DyとNdの相互拡散も助長される。また、溶液処理は粉末処理よりも焼結磁石ブロックの微小クラックにも溶液が入り込むため、拡散させるための時間が短く、処理に必要な希土類元素量が低減されると共に、拡散長も長くすることが可能である。焼結磁石ブロック表面にはEDXで観察可能な量の炭素を含む希土類フッ素化合物あるいは希土類酸フッ素化合物が粒界あるいは粒界近傍に形成され、磁石ブロック中心部にはEDXで観測可能な炭素は見当たらず、希土類フッ素化合物あるいは希土類酸フッ素化合物が粒状あるいは層状に成長する。このような希土類フッ素化合物あるいは希土類酸フッ素化合物にはDyが偏析する。上記のような炭素およびNd,Dyなど希土類元素を含むフッ素化合物あるいは酸フッ素化合物の成長と同時にDyの粒界近傍への拡散により、保磁力増加,角型性向上,磁気特性の温度係数低減,希土類使用量低減,熱減磁低減を確認している。
フッ素化合物溶液を次のようにして作製した。まず酢酸Dyあるいは硝酸Dyを水で溶解し、フッ化水素酸を徐々に添加しゲル状沈殿溶液を得た後、攪拌し遠心分離後メタノールを添加し攪拌させた。さらに遠心分離後エタノールを添加し攪拌した。このエタノール溶液にNdFeB系焼結磁石ブロック(10×10×10mm)を浸漬後乾燥熱処理することでNdFeB系焼結磁石内部に粒界に沿ってDyを拡散させることができた。熱処理温度は500℃以上であり望ましくは800℃以上である。このような熱処理により溶液中に存在した水素,炭素,酸素あるいは窒素がフッ素及びDyと共に焼結磁石ブロックに拡散し、焼結磁石ブロック表面にはこのような軽元素とDyを多く含むNdフッ素化合物が形成される。このフッ素化合物から磁石内部に粒界に沿ってDyやフッ素あるいは軽元素が拡散する。溶液を使用するため、1nm幅のクラック部にも溶液が浸入しこのようなフッ素化合物が低温で形成されるため粉末を使用する場合よりも加工による磁気特性劣化部にもフッ素化合物が容易に成長し、少ない希土類使用量で磁気特性が改善される。磁石内部の粒界の一部には (Dy,Nd)X(O,F,C)y が成長する(x,yは整数)。このような炭素などの軽元素を含んだフッ素化合物あるいは酸フッ素化合物近傍にはDyが偏析しNdとDyの交換が拡散により生じる。炭素原子はこのようなDyの偏析、フッ素化合物あるいは酸フッ素化合物の安定性、NdとDyの交換などに寄与している。上記処理溶液を0.5vol%塗布し、乾燥後熱処理することで保磁力が50%増加することを確認している。保磁力の増加以外に減磁曲線の角型性向上,温度特性改善,機械強度増加が確認された。処理溶液がイオン性成分を含むことにより、焼結磁石表面の酸化物を除去しながら酸フッ素化合物を形成することが可能であり、処理前の酸洗が不要である。また、粘度の低い処理溶液を使用することで1から10nmの隙間に溶液を入れることが可能であり微粉を使用する場合よりもフッ素化合物あるいは酸フッ素化合物、または炭素を含有する酸フッ素化合物を粒界に形成させ、Dyを拡散させるための時間短縮,低温度化が実現できる。
フッ素化合物溶液を次のようにして作製した。まず酢酸Dyあるいは硝酸Dyを水で溶解し、鉄イオンを含有させフッ化水素酸を徐々に添加しゲル状沈殿溶液を得た後、攪拌し遠心分離後メタノールを添加し攪拌させた。さらに遠心分離後エタノールを添加し攪拌した。このエタノール溶液にNdFeB系焼結磁石ブロック(10×10×10mm)を浸漬後乾燥熱処理することでNdFeB系焼結磁石内部に粒界に沿ってDyを拡散させることができた。熱処理温度は500℃以上であり望ましくは800℃以上である。このような熱処理により溶液中に存在した水素,炭素,酸素あるいは窒素または鉄がフッ素及びDyと共に焼結磁石ブロックに拡散し、焼結磁石ブロック表面にはこのような軽元素または鉄とDyを多く含むNdフッ素化合物が形成される。このフッ素化合物から磁石内部に粒界に沿ってDyやフッ素あるいは軽元素が拡散する。溶液を使用するため、1nm幅のクラック部にも溶液が浸入しこのようなフッ素化合物が低温で形成されるため粉末を使用する場合よりも加工による磁気特性劣化部にもフッ素化合物が容易に成長し、少ない希土類使用量で磁気特性が改善される。磁石内部の粒界の一部には(Dy,Nd)X(O,F,C)yが成長する(x,yは整数)。このような炭素などの軽元素または鉄を含んだフッ素化合物あるいは酸フッ素化合物近傍にはDyが偏析しNdとDyの交換が拡散により生じる。炭素原子または鉄原子はこのようなDyの偏析、フッ素化合物あるいは酸フッ素化合物の安定性、NdとDyの交換などに寄与している。上記処理溶液を0.5vol%塗布し、乾燥後熱処理することで保磁力が50%増加することを確認している。保磁力の増加以外に減磁曲線の角型性向上,温度特性改善,機械強度増加が確認された。処理溶液が鉄以外に酢酸基などのイオン性成分を含むことにより、焼結磁石表面の酸化物を除去しながら酸フッ素化合物を形成することが可能であり、処理前の酸洗が不要である。また、粘度の低い処理溶液を使用することで1から10nmの隙間に溶液を入れることが可能であり微粉を使用する場合よりもフッ素化合物あるいは酸フッ素化合物、または炭素を含有する酸フッ素化合物を粒界に形成させ、Dyを拡散させるための時間短縮,低温度化が実現できる。
フッ素化合物溶液を次のようにして作製した。まず酢酸Dyあるいは硝酸Dyを水で溶解し、鉄イオンを含有させフッ化水素酸を徐々に添加しゲル状沈殿溶液を得た後、攪拌し遠心分離後メタノールを添加し攪拌させた。さらに遠心分離後エタノールを添加し攪拌した。このエタノール溶液にNdFeB系焼結磁石ブロック(10×10×10mm)を1個から1000個同時に浸漬後乾燥熱処理することでNdFeB系焼結磁石内部に粒界に沿ってDyや鉄を拡散させることができた。熱処理温度は500℃以上であり望ましくは
800℃以上である。このような熱処理により溶液中に存在した水素,炭素,酸素あるいは窒素または鉄がフッ素及びDyと共に焼結磁石ブロックに拡散し、焼結磁石ブロック表面にはこのような軽元素または鉄とDy及びFeを含むNdフッ素化合物が形成される。このフッ素化合物から磁石内部に粒界に沿ってDyやフッ素あるいは軽元素または鉄が拡散する。溶液を使用するため、1nm幅のクラック部にも溶液が浸入しこのような鉄を含むフッ素化合物が低温で形成されるため粉末を使用する場合よりも加工による磁気特性劣化部にも強磁性を示すフッ素化合物が容易に成長し、少ない希土類使用量で磁気特性が改善される。磁石内部の粒界の一部には (Dy,Nd)X(O,F,C)y が成長する(x,yは整数)。このような炭素などの軽元素または鉄を含んだフッ素化合物あるいは酸フッ素化合物近傍にはDyが偏析しNdとDyの交換が拡散により生じる。炭素原子または鉄原子はこのようなDyの偏析,フッ素化合物あるいは酸フッ素化合物の安定性,NdとDyの交換などに寄与している。上記処理溶液を0.01から1vol%塗布し、乾燥後熱処理することで保磁力が50%増加することを確認している。保磁力の増加以外に減磁曲線の角型性向上,温度特性改善,機械強度増加,局所電気抵抗増加が確認された。処理溶液は
Dy以外に他の希土類元素あるいはアルカリ土類元素を含むフッ素化合物を形成可能であり、処理溶液に粒径0.01 から1μmの希土類フッ素化合物微粉末あるいは希土類酸フッ素化合物微粉を1から50wt%含有させて処理し、上記のような熱処理あるいは800℃以上の熱処理と800℃以下の熱処理を行うことで磁気特性を向上できる。これらの処理溶液は循環させて組成調整することで何回でも繰り返し使用できる。また処理溶液は焼結磁石の構成元素を酸性液などで溶解分離させたものを原料にすることも可能であり焼結磁石をリサイクルすることで得られる。
フッ素化合物溶液を次のようにして作製した。まず酢酸Dyあるいは硝酸Dyを水で溶解し、フッ化水素酸を徐々に添加しゲル状沈殿溶液を得た後、攪拌し遠心分離後メタノールを添加し攪拌させた。さらに遠心分離後エタノールを添加し攪拌した。このエタノール溶液にNdFeB系焼結磁石ブロック(10×10×10mm)を浸漬後乾燥熱処理(200℃)することでNdFeB系焼結磁石表面にDyを含むフッ素化合物あるいは酸フッ素化合物を成長させることができた。次に500℃以上であり望ましくは800℃以上の熱処理により溶液中に存在した水素,炭素,酸素あるいは窒素がフッ素及びDyと共に焼結磁石ブロックに拡散し、焼結磁石ブロック表面から内部にはこのような軽元素とDyを多く含むNdフッ素化合物が形成される。このフッ素化合物から磁石内部に粒界に沿ってDyやフッ素あるいは軽元素が拡散する。溶液を使用するため、1nm幅のクラック部にも溶液が浸入しこのようなフッ素化合物が低温で形成されるため粉末を使用する場合よりも加工による磁気特性劣化部にもフッ素化合物が容易に成長し、少ない希土類使用量で磁気特性が改善される。磁石内部の粒界の一部には (Dy,Nd)X(O,F,C)y が成長する
(x,yは整数)。このような炭素などの軽元素を含んだフッ素化合物あるいは酸フッ素化合物近傍にはDyが偏析しNdとDyの交換が拡散により生じる。炭素原子はこのようなDyの偏析,フッ素化合物あるいは酸フッ素化合物の安定性,NdとDyの交換などに寄与している。上記処理溶液を0.5vol%塗布し、乾燥後熱処理することで保磁力が50%増加することを確認している。保磁力の増加以外に減磁曲線の角型性向上,温度特性改善,機械強度増加が確認された。処理溶液がイオン性成分を含むことにより、焼結磁石表面の酸化物を除去しながら酸フッ素化合物を形成することが可能であり、処理前の酸洗が不要である。また、粘度の低い処理溶液を使用することで1から10nmの隙間に溶液を入れることが可能であり微粉を使用する場合よりもフッ素化合物あるいは酸フッ素化合物、または炭素を含有する酸フッ素化合物を粒界に形成させ、Dyを拡散させるための時間短縮,低温度化が実現できる。Dy以外にNd,Tbのフッ素化合物処理液を使用することで保磁力の増加を確認している。またアルカリ土類元素のフッ素化合物溶液においても角型性向上を確認している。従って磁気特性向上には希土類フッ素化合物溶液を使用しなくても、他のフッ素化合物溶液を使用してNdと拡散して成長する (Nd,M)xFy,
(Nd,M)x(F,O)yあるいは (Nd,M)x(F,OC)y など(x,yは正の整数)のフッ素化合物,酸フッ素化合物あるいは炭素含有酸フッ素化合物により焼結磁石表面の希土類元素の酸化が主原因の劣化をフッ素原子により還元することで修復させることが可能である。
フッ素化合物溶液を次のようにして作製した。まず酢酸Mgあるいは硝酸Mgを水で溶解し、フッ化水素酸を徐々に添加しゲル状沈殿溶液を得た後、攪拌し遠心分離後メタノールを添加し攪拌させた。さらに遠心分離後エタノールを添加し攪拌した。このエタノール溶液にNdFeB系焼結磁石ブロック(10×10×10mm)を浸漬後乾燥熱処理(200℃)することでNdFeB系焼結磁石表面にMgを含むフッ素化合物あるいは酸フッ素化合物を成長させることができた。次に500℃以上であり望ましくは800℃以上の熱処理により溶液中に存在した水素,炭素,酸素あるいは窒素がフッ素及びMgと共に焼結磁石ブロックに拡散し、焼結磁石ブロック表面から内部にはこのような軽元素とMgを多く含むNdフッ素化合物が形成される。このフッ素化合物から磁石内部に粒界に沿ってMgやフッ素あるいは軽元素が拡散する。溶液を使用するため、1nm幅のクラック部にも溶液が浸入しこのようなフッ素化合物が低温で形成されるため粉末を使用する場合よりも加工による磁気特性劣化部にもフッ素化合物が容易に成長し、少ない希土類使用量で磁気特性が改善される。磁石内部の粒界の一部には (Mg,Nd)X(O,F,C)y が成長する
(x,yは整数)。このような炭素などの軽元素を含んだフッ素化合物あるいは酸フッ素化合物近傍にはMgが偏析しNdとMgの交換が拡散により生じる。炭素原子はこのようなMgの偏析,フッ素化合物あるいは酸フッ素化合物の安定性,NdとMgの交換などに寄与している。上記処理溶液を0.5vol%塗布し、乾燥後熱処理することで角型性が10%増加することを確認している。温度特性改善,機械強度増加も確認された。処理溶液がイオン性成分を含むことにより、焼結磁石表面の酸化物を除去しながら酸フッ素化合物を形成することが可能であり、処理前の酸洗が不要である。また、焼結磁石に(Nd,Dy)FeB系磁石を用いることで、Mgフッ素化合物と希土類元素が反応して成長するフッ素化合物あるいは酸フッ素化合物にNd及びDyが混入し、熱処理によってこのフッ素化合物あるいは酸フッ素化合物からDyやNdが焼結磁石の粒界に沿って拡散することにより、保磁力向上や角型性向上などの磁気特性向上を確認できる。すなわち希土類元素を含まないフッ素化合物系処理液を用いて焼結磁石表面を被覆後、500℃以上焼結温度以下の温度で熱処理することで、表面付近に焼結磁石の構成元素を含むフッ素化合物あるいは酸フッ素化合物を成長させ、さらに拡散熱処理を施すことで粒界に沿って希土類元素を拡散させ、
DyとNdの相互拡散によりDyを粒界付近に拡散させることが可能である。この手法により希土類元素を含まないフッ素化合物処理液により焼結磁石表面の磁気特性を向上させることが可能であり、減磁曲線の角型性が10%以上向上する。Mgフッ素化合物溶液にDyなどの重希土類元素フッ素化合物溶液を混合あるいは多層にして処理することで角型性向上と保磁力増加が達成できる。上記のような効果が得られるMg以外のフッ素化合物溶液はアルカリ,アルカリ土類,遷移金属元素のフッ素化合物溶液である。
NdFeB系焼結磁石を高耐熱用途で使用する場合、重希土類元素であるDy,Ho,Tbなどの添加あるいはGaなどの半金属元素やNbなどの遷移金属元素が混合されている。このような焼結磁石の母相であるRE2Fe14B(REは希土類元素) と母相以外の粒界相や硼化物があり、加工研磨工程で焼結磁石表面あるいは粒界部付近を中心にクラックが生じ酸化している。このような酸化は磁気特性を劣化させる。またクラック部は非磁性であり凹凸がある界面であるため逆磁区が発生し易く角型性が低下する。フッ素化合物溶液がこのような1nmから1000nm幅のクラックあるいは焼結磁石表面に接触するとフッ素原子の一部が酸素あるいは希土類元素と界面で結合し、熱エネルギーが付加されると界面から拡散し希土類フッ素化合物あるいは希土類酸フッ素化合物が成長し、希土類元素の酸化物が希土類元素のフッ素化合物や酸フッ素化合物に還元される。溶液を使用しているため溶液と接触している面全てでこの種の反応が起こり酸フッ素化合物の成長が主に認められ、焼結磁石の表面付近に希土類酸フッ素化合物相が成長する。これとほぼ同時にフッ素,希土類元素、あるいは溶液中の炭素などの原子が粒界に沿って内部に拡散する。クラックの幅が1000nm以下で酸化膜の厚さが100nm以下であればMgなど希土類元素を含まないフッ素化合物液による表面処理で焼結磁石の角型性向上は可能である。すなわち希土類元素酸化物の還元による磁気特性回復が可能である。また重希土類元素をあらかじめ使用した焼結磁石の場合には、このようなMgなど希土類元素を含まないフッ素化合物処理液を使用して熱処理により重希土類元素の酸フッ素化合物層を成長させ、この酸フッ素化合物から重希土類元素を粒界に沿って拡散させ、さらに重希土類元素とNdの交換により重希土類元素を粒界付近に偏析させることも可能である。このとき粒界付近にはフッ素あるいは溶液中の拡散速度の速い炭素などの軽元素が検出できる。希土類元素は炭素,硼素,窒素,酸素と結合しそれぞれ化合物を形成することは知られており、このような化合物の生成自由エネルギーの差を利用して重希土類と希土類元素の交換反応を実現させることが可能である。焼結磁石全体の磁気特性を向上させるためには、粒界に沿ってフッ素及び希土類元素を拡散させ、粒界に沿ってフッ素及び希土類元素を偏析させる。希土類元素の粒界拡散は、フッ素及び炭素など希土類元素と化合物を形成する軽元素によって助長される。溶液から拡散させる場合、溶液と焼結磁石は面接触のため拡散が低温度で進行し、かつ溶液中の軽元素も粒界に沿って拡散し、希土類元素の拡散を助長させる。このことにより、粒界に沿って成長する希土類元素を含むフッ素化合物あるいは希土類酸フッ素化合物または希土類炭素酸フッ素化合物の結晶粒径を小さくすることができる。溶液を用いて0.1から5vol%Dyフッ素溶液を塗布後、500℃から1000℃で熱処理することで、焼結磁石表面に希土類フッ素酸素化合物及び希土類炭素酸フッ素化合物が成長し、この粒径が0.1 から10μmとなるが、焼結磁石内部の粒界に成長する希土類フッ素酸素化合物あるいは希土類炭素酸フッ素化合物は、最表面の粒径よりも小さくすることができる。このような希土類フッ素酸素化合物あるいは希土類炭素酸フッ素化合物の粒径は小さい方が望ましく、粒界に沿って成長する場合、粒界に平行な方向と粒界に垂直な方向でその寸法を評価した時、粒界に平行な方向の寸法が粒界に垂直な寸法よりも長くなっており、このことが保磁力増加に寄与している。上記希土類フッ素酸素化合物あるいは希土類炭素酸フッ素化合物中のフッ素濃度は0.1 から50原子%であり、炭素濃度が
0.1 から10原子%、酸素濃度が0.01 から10原子%である。フッ素原子及び炭素原子が粒界に沿って層状に偏析することで、希土類元素間の拡散が粒界を中心にして粒界の周囲に進行し、磁気特性が向上する。磁気特性向上としては保磁力の10から200%増加、減磁曲線の角型性5から20%向上が認められ、その結果減磁耐力の向上が認められる。粒界付近のフッ素濃度が0.1% 以上存在する全粒界に占める割合は10%以上であり望ましくは50%以上である。炭素などの溶液から拡散した軽元素は焼結磁石の表面付近の粒界部に多く認められその濃度は焼結磁石内部になるほど減少する傾向を示すが、このような希土類元素と化合物を形成する可能性のある軽元素は、粒界に存在することにより希土類元素の拡散を助長させるため、熱処理の低温化,短時間化及び、フッ素を含む相の粒界に沿った成長を助長させるため、磁気特性が向上し易い。焼結磁石ブロック表面には酸素濃度の1/10から2倍程度の炭素が酸フッ素化合物中に存在する。この炭素は溶液処理後の熱処理により拡散したものであり、磁石内部にも粒界に沿って拡散する。希土類元素とフッ素を含む溶液を焼結磁石ブロックに塗布し、1000℃以下の温度で熱処理することで保磁力増大や減磁曲線の角型性向上が確認できた。溶液を使用する特徴として以下の項目が挙げられる。1)溶液のため1nmから100nm幅の微小なクラック表面を容易に被覆可能である。2)溶液のため、大小のクラック表面を被覆するばかりでなく窪みや穴などには溶液を溜めることが可能である。また加工により剥離しそうなNdFeBの粒を結着させることが可能である。3)溶液のため磁石表面とフッ素や希土類元素が面で接触し熱処理温度を低温化あるいは短時間化できる。4)溶液中の炭素などの不純物が熱処理により希土類元素やフッ素原子と一緒に磁石内に入ることで粒界に層状にフッ素を含む相の成長を助長させる。5)溶液のため塗布膜厚の制御がし易く、塗布膜厚の薄膜化も容易であり、平均膜厚1nmから1000nmの塗布膜を容易に形成可能である。6)種々の元素を溶液中に混合させることが可能である。炭素等軽元素(水素,酸素,窒素など)の混合,各種酸溶液との混合,希土類フッ素化合物微粉との混合,希土類窒素化合物との混合が可能である。7)スピンナーなどを使用して複雑形状磁石に均一に塗布することが可能であり、溶液を再利用できる。8)粉末特有の微粉末同士の凝集のような問題が起きず均一に塗布できる。9)異種フッ素化合物溶液を使用して熱処理と組み合わせて多段のプロセス(Ndフッ素化合物溶液で処理,熱処理後、他の重希土類フッ素化合物溶液で処理,熱処理)が可能である。このような特徴を生かして焼結ブロックだけでなく、
NdFeB系磁粉の表面処理による磁気特性向上も確認している。
NdFeB系焼結磁石を高耐熱用途で使用する場合、重希土類元素であるDy,Ho,Tbなどの添加あるいはGaなどの半金属元素やNbなどの遷移金属元素が混合されている。このような焼結磁石の母相であるRE2Fe14B(REは希土類元素) と母相以外の希土類元素濃度の高い粒界相や硼化物があり、加工研磨工程で焼結磁石表面あるいは粒界部付近を中心にクラックが生じ希土類元素は酸化している。このような酸化は磁気特性を劣化させ、減磁曲線に保磁力の小さい相として現れる。またクラック部は空間であるため非磁性であり凹凸がある界面であるため逆磁区が発生し易く減磁曲線の角型性が低下する。希土類元素を含むフッ素化合物溶液がこのような1nmから1000nm幅のクラックあるいは焼結磁石表面に接触するとフッ素原子の一部が酸素あるいは焼結磁石を構成している希土類元素と界面で結合し、熱エネルギーが付加されると界面から拡散し希土類フッ素化合物あるいは希土類酸フッ素化合物が成長し、希土類元素の酸化物が希土類元素のフッ素化合物や酸フッ素化合物に還元される。同時に溶液中の希土類元素と焼結磁石を構成していた希土類元素との間に交換拡散が生じる。溶液を使用しているため溶液と接触している面全てでこの種の反応が起こり酸フッ素化合物の成長が主に認められ、焼結磁石の表面付近に希土類酸フッ素化合物相が成長する。Dyとフッ素を含む溶液の場合、溶液中の
Dyと焼結磁石中のNdが相互拡散により (Dy,Nd)x(F,O,C)y などの化合物が形成される(x,yは正の整数)。これとほぼ同時にフッ素,希土類元素、あるいは溶液中の炭素などの原子が粒界に沿って内部に拡散する。クラックの幅が1000nm以下で酸化膜の厚さが100nm以下であればMg,CaあるいはFeなど希土類元素を含まないフッ素化合物液による表面処理で焼結磁石の角型性向上は可能である。すなわち希土類元素酸化物の還元による磁気特性回復が可能である。またDy,Tb,Hoなど重希土類元素をあらかじめ使用した焼結磁石の場合には、このようなMgなど希土類元素を含まないフッ素化合物処理液を使用して熱処理により重希土類元素の酸フッ素化合物層を成長させ、この酸フッ素化合物から重希土類元素を粒界に沿って拡散させ、さらに重希土類元素とNdの交換により重希土類元素を粒界付近に偏析させることも可能である。このとき粒界付近にはフッ素あるいは溶液中の拡散速度の速い炭素,窒素などの軽元素が検出できる。希土類元素は炭素,硼素,窒素,酸素と結合しそれぞれ化合物を形成することは知られており、このような化合物の生成自由エネルギーの差を利用して重希土類と希土類元素の交換反応を実現させることが可能である。焼結磁石全体の磁気特性を向上させるためには、粒界に沿ってフッ素及び希土類元素を拡散させ、粒界に沿ってフッ素及び希土類元素を偏析させる。希土類元素の粒界拡散は、フッ素及び炭素など希土類元素と化合物を形成する軽元素によって助長される。溶液から拡散させる場合、溶液と焼結磁石は面接触のため拡散が500℃以下200℃以上の低温度で進行し、かつ溶液中の軽元素も粒界に沿って拡散し、希土類元素の拡散を助長させる。このことにより、粒界に沿って成長する希土類元素を含むフッ素化合物あるいは希土類酸フッ素化合物または希土類炭素酸フッ素化合物の結晶粒径を小さくすることができる。焼結磁石表面に成長するフッ素を含む化合物でフッ素濃度が50at%以上の場合はフッ素を含む化合物の抵抗が高いが、30%未満になると抵抗は急激に低くなり焼結磁石表面の高抵抗化が困難となる。抵抗を50%以上増加させるためにはフッ素濃度を30%以上残留させるように、熱処理温度を800℃以下にするか、フッ素含有溶液を100nmから1000nm以上塗布するかあるいはフッ素濃度を高くした溶液を使用して塗布することが望ましい。
本発明は硬質磁性材料及び軟磁性材料に高抵抗相を層状に形成し、高周波での損失を低
減することが可能であり、高周波磁界が印加される磁気回路に利用される。硬質磁性材料
ではR−Fe−B(Rは希土類元素)系磁石などの磁石においてエネルギー積低減を抑え
て損失を低減でき、高調波磁界が印加された時の磁石部発熱を抑制でき、埋め込み磁石モ
ータ,表面磁石モータあるいは発電機などの回転機に適用できる。このような磁石モータ
には、ハイブリッド自動車の駆動用,スタータ用,電動パワステ用,産業用,HDDスピ
ンドルモータ,サーボモータ,家電用,ロボット用,鉄道用が含まれる。
酸素濃度と成形体密度との関係。 高抵抗層の相対抵抗値と発熱低減率との関係。 高抵抗磁石モータの径方向断面形状。 高抵抗磁石モータの径方向断面形状。 高抵抗磁石モータの損失低減率と磁束密度の関係。 高抵抗磁石モータの損失低減率と磁束密度波形歪の関係。 高抵抗磁石モータの径方向断面形状。 高抵抗磁石モータの径方向断面形状。 高抵抗磁石モータの損失低減率と比抵抗の関係。
符号の説明
1 永久磁石
2 固定子
3 回転子シャフト
4 ティース
5 コアバック
6 固定子鉄心
7 スロット
8 電機子巻線
9 シャフト孔
10 回転子挿入孔
101 珪素鋼板
102 軟磁性材

Claims (14)

  1. 鉄又はコバルトを含む母相の表面又は粒界の一部に層状のフッ素化合物を含む粒界相が形成され、
    前記層状の粒界相は前記母相よりも抵抗が10倍以上高く、
    かつ前記層状の粒界相は前記母相よりも硬度が小さく、
    前記母相及び前記層状の粒界相の酸素濃度が10ppm以上10000ppm以下であり、
    前記フッ素化合物と前記母相の間に希土類元素が拡散した磁石。
  2. 前記フッ素化合物は、前記母相よりもミリ波加熱により発熱しやすい材料である請求項1に記載の磁石。
  3. 前記フッ素化合物は、前記母相よりも200℃以上の温度において誘電損失が大きい材料である請求項1に記載の磁石。
  4. 前記希土類元素の拡散は、ミリ波加熱により前記フッ素化合物が発熱することにより進行した請求項1に記載の磁石。
  5. 前記層状の粒界相は10nm以上10000nm以下の厚さである請求項1に記載の磁石。
  6. 前記層状の粒界相は前記母相に被覆形成される請求項1に記載の磁石。
  7. 前記母相は1種以上の希土類元素を含む請求項1に記載の磁石。
  8. 前記母相は1種以上の希土類元素及び1種以上の半金属元素を含む請求項1に記載の磁石。
  9. 前記母相の残留磁束密度が0.4T以上である請求項1に記載の磁石。
  10. 前記フッ素化合物はフッ素と1種以上のアルカリ金属,アルカリ土類金属,遷移金属,希土類金属とで構成される請求項1に記載の磁石。
  11. 前記層状の粒界相の形成により前記母相の抵抗値を10倍以上高めている請求項1に記載の磁石。
  12. 複数のスロット及び複数のティースを形成する固定子と、
    前記ティースに巻かれる電機子巻線と、
    前記固定子の内部に配置する回転子とを有し、
    前記回転子の外周表面に請求項1に記載の磁石を配置する回転機。
  13. 前記母相及び前記層状の粒界相の酸素濃度が10ppm以上5000ppm以下である請求項1に記載の磁石。
  14. 請求項1に記載の磁石を用いた硬磁性材及び軟磁性材を有し、
    前記軟磁性材に交流磁界を印加した時の前記硬磁性材の渦電流損失が前記軟磁性材の渦電流損失よりも小さい磁気回路。
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