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JP4726509B2 - 天然ゴムマスターバッチ及びその製造方法、並びにこれを用いたゴム組成物及びタイヤ - Google Patents

天然ゴムマスターバッチ及びその製造方法、並びにこれを用いたゴム組成物及びタイヤ Download PDF

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Description

本発明は、天然ゴムマスターバッチおよびその製造方法に関し、詳しくは、加工性、低発熱性及び耐摩耗性が改良された天然ゴムマスターバッチおよびその製造方法、並びにこれを用いたゴム組成物及びタイヤに関する。
シリカなどの無機充填材に対してのポリマーの補強性、親和性を向上させる技術として、合成ゴムの分野では末端変性、官能基含有モノマーの共重合などの技術が開発されてきた。一方、天然ゴムは優れた物理特性を生かして多くの量が使用されているが、天然ゴム自身の改良によって充填材との補強性、親和性を大幅に改良する技術はない。エポキシ化天然ゴムを配合する技術等も、改良効果は充分とはいえない。
また、天然ゴムの分子末端には蛋白質とリン脂質が結合しており、その末端の蛋白質同士、リン脂質同士が更に結合・会合することで高次分岐構造を形成していると考えられている。そのほかに様々な脂質も含まれており、これが天然ゴム分子を結びつけ、加工性を低下(粘度を上昇)させている一因と考えられる。上記に起因する高い分岐構造が、天然ゴムの加工性の悪さの大きな要因となっている。
このため、分岐点を形成している蛋白質を分解・除去することで分岐度を下げ、加工性を改善することが提案されているが(特許文献1)、その加工性を一層改良するためには、高純度な脱蛋白天然ゴムであることが必要である。しかし、この場合には、以下のような問題点が存在する。
近年、天然ゴムに含まれる蛋白質がアレルギー症状を引き起こす原因となることが明らかになり、脱蛋白技術が多く開発されている。しかし、これらの技術を用いた完全に蛋白質を取り除いたものは蛋白質を含め非ゴム成分の大半がぬけてしまい、老化特性等が低下してしまう。また、完全に脱蛋白化してしまうことでポリペプチド結合に起因する分子同士の絡み合い、見かけの分子量が大幅に低下してしまい、引張強力、耐摩耗性等が低下してしまう。
一方、もう一種類の分岐点を形成しているリン脂質、または分子間を会合させている脂質を分解することを目的にリパーゼで天然ゴムラテックスを処理することにより、天然ゴムの物性低下を伴なうことなく加工性を改良することも提案されている(特許文献2)。しかし、この場合、天然ゴムの低発熱性及び耐摩耗性をさらに高いレベルに改良することは困難であるのが実状である。
特開2004−99625号公報 WO2004/052935号公報
本発明は、前記の課題を解決するためになされたもので、天然ゴム中の充填材の分散性を更に向上させ、老化特性の低下を伴うことなく、加工性、低ロス性(低発熱性)及び耐摩耗性の全てに著しく優れる天然ゴムマスターバッチ及びその製法、それを用いたゴム組成物及びタイヤを提供することを目的とするものである。
本発明者は、前記目的を達成するために鋭意研究を重ねた結果、脂質分解酵素処理による天然ゴムラテックスと、特定充填材をあらかじめ水中に分散させたスラリーを混合して製造されたマスターバッチが有効なことを見出し、本発明を完成したものである。
すなわち、本発明は下記の構成からなる。
1.(A)天然ゴムラテックス中の脂質を分解する工程と、(B)カーボンブラック、シリカ、又は一般式(I)
nM1 ・xSiOy・zH2 O ・・・(I)
[式中、M1 は、アルミニウム,マグネシウム,チタン,カルシウム及びジルコニウムから選ばれる金属、これらの金属の酸化物又は水酸化物、それらの水和物、及び該金属の炭酸塩からなる群から選ばれる少なくとも一種であり、n、x、y及びzは、それぞれ1〜5の整数、0〜10の整数、2〜5の整数、及び0〜10の整数である]
で表わされる無機充填材の少なくとも1種を水中に分散させてスラリー溶液を調製する工程と、(C)前記脂質分解工程後のラテックスと前記スラリー溶液とを混合後、凝固する工程とからなことを特徴とする天然ゴムマスターバッチの製造方法。
2.スラリー溶液の特性として、(i)水分散スラリー溶液中の充填材の粒度分布は、体積平均粒子径(mv)が25μm以下で、90体積%粒径(D90)が30μm以下であり、かつ(ii)水分散スラリー溶液から乾燥回収した充填材の24M4DBP吸油量は、水中に分散させる前の24M4DBP吸油量の93%以上保持するものである前記1記載の天然ゴムマスターバッチの製造方法。
3.天然ゴムラテックスが、脂質分解酵素による処理がなされてなる前記1又は2記載の天然ゴムマスターバッチの製造方法。
4.脂質分解酵素がリパーゼ又はホスホリパーゼである前記3記載の天然ゴムマスターバッチの製造方法。
5.上記酵素と共に、界面活性剤とで処理されてなる前記1〜4のいずれかに記載の天然ゴムマスターバッチの製造方法。
6.酵素の添加量が、天然ゴムラテックスの固形成分100質量部に対して0.005〜0.5質量部である前記1〜5のいずれかに記載の天然ゴムマスターバッチの製造方法。
7.シリカが、湿式シリカ、乾式シリカ、コロイダルシリカのいずれかである前記1〜6のいずれかに記載の天然ゴムマスターバッチの製造方法。
8.前記一般式(I)で表される無機充填材が、アルミナ(Al23)、アルミナ−水和物(Al23・H2O)、水酸化アルミニウム[Al(OH)3]、炭酸アルミニウム[Al2(CO32]、水酸化マグネシウム[Mg(OH)2]、酸化マグネシウム(MgO)、炭酸マグネシウム(MgCO3)、タルク(3MgO・4SiO2・H2O)、アタパルジャイト(5MgO・8SiO2・9H2O)、チタン白(TiO2)、チタン黒(TiO2n-1)、酸化カルシウム(CaO)、水酸化カルシウム[Ca(OH)2]、酸化アルミニウムマグネシウム(MgO・Al23)、クレー(Al23・2SiO2)、カオリン(Al23・2SiO2・2H2O)、パイロフィライト(Al23・4SiO2・H2O)、ベントナイト(Al23・4SiO2・2H2O)、ケイ酸アルミニウム(Al2SiO5、Al4・3SiO4・5H2O等)、ケイ酸マグネシウム(Mg2SiO4、MgSiO3等)、ケイ酸カルシウム(Ca2・SiO4等)、ケイ酸アルミニウムカルシウム(Al23・CaO・2SiO2等)、ケイ酸マグネシウムカルシウム(CaMgSiO4)、炭酸カルシウム(CaCO3)、酸化ジルコニウム(ZrO2)、水酸化ジルコニウム[ZrO(OH)2・nH2O]、炭酸ジルコニウム[Zr(CO32]、結晶性アルミノケイ酸塩からなる群から選ばれる少なくとも1種である前記1〜7のいずれかに記載のマスターバッチの製造方法。
9.前記一般式(I)において、M1 がアルミニウム金属、アルミニウムの酸化物又は水酸化物、それらの水和物、及びアルミニウムの炭酸塩から選ばれる少なくとも一種である前記1〜7のいずれかに記載の天然ゴムマスターバッチの製造方法。
10.凝固後の天然ゴムマスターバッチを乾燥させる工程で、機械的なせん断力をかけながら乾燥を行う前記1〜9のいずれかに記載の天然ゴムマスターバッチの製造方法。
11.連続混練機を用いて乾燥を行う前記10に記載の天然ゴムマスターバッチの製造方法。
12.連続混練機が2軸混練押出機である前記11記載の天然ゴムマスターバッチの製造方法。
13.前記1〜12のいずれかに記載の方法により製造された天然ゴムマスターバッチ。
14.前記13に記載の天然ゴムマスターバッチを用いたゴム組成物。
15.前記14に記載のゴム組成物を用いたタイヤ。
本発明における天然ゴムマスターバッチは、遠心分離等の操作はせず、非ゴム成分は残しておくことにより、耐老化性の低下を伴わず、加工性を改良すると共に、脂質分解処理した天然ゴムラテックスを併用することで、これを用いる天然ゴムの低ロス性と耐摩耗性の両方を高いレベルで改良することができる。
本発明で用いる天然ゴムラテックスは脂質を分解したものである。原料となる天然ゴムラテックスとしては、フィールドラテックス、アンモニア処理ラテックス、遠心分離濃縮ラテックス、界面活性剤や酵素で処理した脱蛋白ラテックス、前記のものを組み合わせたものなど、いずれも使用することができる。
通常、このような天然ゴムラテックスには非ゴム分が存在しているが、本発明においては、まず(A)工程において、非ゴム分中の脂質を分解することが必要である。
本発明における天然ゴムラテックス中の脂質の分解には、具体的にはリパーゼ及び/又はホスホリパーゼの酵素を挙げることができる。
前記リパーゼ及びホスホリパーゼとしては、特に限定されず、細菌由来のもの、糸状菌由来のもの、酵母由来のものいずれでも構わない。このようなリパーゼ及びホスホリパーゼとしては市販品のリパ−ゼM「アマノ」10(天野エンザイム(株)製)、リパーゼOF(名糖(株)製)、ホスホリパーゼAl(三共(株)製)等を挙げることができる.
このような酵素処理に際しての上記分解酵素の添加量は.天然ゴムラテックス中の固形成分100質量部に対して0.005〜0.5質量部、特に0.01〜0.2質量部の範囲であることが好ましい。この範囲であれば、天然ゴムラテックス中の脂質の分解が適宜なされ、低ロス性及び耐摩耗性について良好な物性を得るのに有利である。
さらに、この酵素処理の際、さらに適度な量のプロテアーゼを併用することで、部分的に蛋白質を分解することにより大きな加工性改良効果が得られる。
本発明において、上記酵素処理は、70℃以下、好ましくは50℃以下で処理される。
本発明に係る天然ゴムラテックスは、上記酵素処理に加えて、界面活性剤で処理することが好ましい。界面活性剤としては、非イオン界面活性剤、陰イオン性界面活性剤、陽イオン性界面活性剤、両イオン性界面活性剤等が使用でき、特に、非イオン界面剤、陰イオン性界面活性剤が好ましい。
非イオン界面活性剤としては、例えばポリオキシアルキレンエーテル系、ポリオキシアルキレンエステル系、多価アルコール脂肪酸エステル系、糖脂肪酸エステル系、及びアルキルポリグリコシド系などが好適である。陰イオン性界面活性剤としては、例えばカルボン酸系、スルホン酸系、硫酸エステル系、及びリン酸エステル系などが好適である。
さらに、本発明のマスターバッチの製造方法においては、上記の如く脂質分解した天然ゴムラテックスと、特定充填材をあらかじめ水中に分散させたスラリー溶液とを混合することが必要である。このスラリー溶液は、(B)工程において、下記により調製される。
スラリー溶液中に分散される充填材としては、カーボンブラック、シリカ、及び前記一般式(I)で表される無機充填材の中から選ばれた少なくとも一種のものである。ここで、カーボンブラックは、通常ゴム工業に用いられるものが使用できる。例えば、SAF、HAF、ISAF、FEF、GPFなど種々のグレードのカーボンブラックを単独にまたは混合して使用することができる。
シリカは特に限定されないが、湿式シリカ、乾式シリカ、コロイダルシリカが好ましい。
また、一般式(I)で表される無機充填材の具体例は前記列挙した通りであるが、M1 がアルミニウム金属、アルミニウムの酸化物又は水酸化物、及びそれらの水和物、またはアルミニウムの炭酸塩から選ばれる少なくとも一種のものが好ましい。
このような充填材を用いたスラリー溶液の製造方法は、公知の方法を用いて行なうことができ、特に限定されない。ローター・ステ−タータイプのハイシアーミキサー、高圧ホモジナイザー、超音波ホモジナイザー、コロイドミル等を用いてもよい。例えば、コロイドミルに水を入れ、攪拌しながら充填材をゆっくり滴下し、その後、ホモジナイザーにて界面活性剤とともに、一定圧力、一定温度で循環することで、当該スラリー溶液を調整することができる。この場合の圧力は、通常10〜1000kPaの範囲であり、好ましくは200〜800kPaの範囲である。
また、充填材と水を一定の割合で混合し、細長い導管の一端からこれらの混合液を導入し、激しい水力攪拌の条件下で、均質な組成を持つスラリーの連続した流れを生成することができる。
このようにして得られるスラリー溶液の特性として、(i)水分散スラリー溶液中の充填材の粒度分布は、体積平均粒子径(mv)が25μm以下で、90体積%粒径(D90)が30μm以下であり、かつ(ii)水分散スラリー溶液から乾燥回収した充填材の24M4DBP吸油量が、水中に分散させる前の24M4DBP吸油量の93%以上を保持するように調整されていることが好ましい。ここで、24M4DBP吸油量は、ISO 6894に準拠して測定される値である。
さらに好ましくは、体積平均粒子径(mv)が20μm以下、かつ90体積%粒径(D90)が25μm以下である。粒度が大きすぎるとゴム中の充填材分散が悪化し、補強性、耐摩耗性が悪化することがある。
他方、粒度を小さくするためにスラリーに過度のせん断力をかけると、充填材のストラクチャーが破壊され、補強性の低下を引き起こす。水分散スラリー溶液から乾燥回収した充填材の24M4DBP吸油量が、スラリーに投入する前の充填材の24MDBP吸油量の93%以上であることが好ましい。さらに好ましくは96%以上である。
該スラリー溶液中の充填材の濃度は、0.5〜30質量%が好ましく、1〜15質量%がさらに好ましい。また、上記充填材は、上記ゴム成分100質量部に対して5〜100質量部配合されるのが好ましく、10〜70質量部配合されるのがさらに好ましい。充填材の配合量が0.5質量部以上とすることにより物性改良に有利な効果が得られ、100質量部以下とすることで分散する充填材の良好な均一性の確保が容易となる。
次に、(C)工程において、前記スラリー溶液と天然ゴムラテックスを混合する方法としては、例えば、ブレンダーミル中に該スラリー溶液を入れ、攪拌しながら、ラテックスを滴下する方法や、逆にラテックスを攪拌しながら、これに該スラリー溶液を滴下する方法がある。また、上記した充填材の流れと、ラテックスの流れを一定の割合をもって、激しい水力攪拌の条件下で混合する方法などを用いることもできる。
本発明の製造方法では、前記ラテックスとスラリー溶液とを混合した後、該混合物を凝固させる。ここで、凝固法としては、混合物に凝固剤を加えて固形化させる方法が挙げられる。ただし、ラテックスとスラリー溶液との混合により固形化される場合もあり、この場合には凝固剤の添加は、必ずしも必要でない。ここで凝固剤としては、特に限定されるものではないが、ギ酸、硫酸等の酸や、塩化ナトリウム等の塩が挙げられる。
本発明の天然ゴムマスターバッチの製造方法においては、最終工程として、通常、乾燥が行われる。乾燥には、真空乾燥機、エアドライヤー、ドラムドライヤー、バンドドライヤー等の通常の乾燥機を用いることができるが、充填材の分散性及び均一性をさらに向上させるためには、機械的なせん断力をかけながら乾燥を行うのが好ましい。機械的せん断力をかけながら乾燥することにより、加工性、補強性、低ロス性に優れたゴムを得ることができる。
この乾燥は、一般的な混練機を用いて行うことができるが、工業的生産性の観点から、スクリュー型連続混練機を用いるのが好ましく、同方向回転、あるいは異方向回転の2軸混練押出機を用いるのがさらに好ましい。該スクリュー型連続混練機としては、市販品を利用することができ、例えば、神戸製鋼製2軸混練押出機等を用いることができる。
本発明のゴム組成物は、上記の方法で得られた天然ゴムマスターバッチを用い所定の配合をすることにより得られる。該ゴム組成物には、本発明の目的を損なわない範囲で、加硫剤、加硫促進剤、老化防止剤、スコーチ防止剤、亜鉛華、ステアリン酸等の通常ゴム業界で用いられる各種薬品を添加することができる。
このゴム組成物において、ゴム成分の全体に対して上記天然ゴムマスターバッチを形成する天然ゴムを10質量%以上、好ましくは50質量%以上含むことが好ましい。上記天然ゴムマスターバッチと併用される他のゴム成分としては、通常の天然ゴム及びジエン系合成ゴムが挙げられ、ジエン系合成ゴムとしては、例えばスチレン−ブタジエン共重合体(SBR)、ポリブタジエン(BR)、ポリイソプレン(IR)、ブチルゴム(IIR)、エチレン−プロピレン共重合体及びこれらの混合物などが挙げられる。
本発明のゴム組成物は、タイヤ用途を始め、防振ゴム、ベルト、ホースその他の工業用品等の用途にも用いることができる。特にタイヤ用ゴムとして好適に使用され、例えばトレッドゴム、サイドゴム、プライコーティングゴム、ビードフイラーゴムなどあらゆるタイヤ部材に適用することができる。
次に、本発明を実施例によりさらに詳しく説明するが、本発明は、この例によってなんら限定されるものではない。
各実施例、比較例における各種測定は下記により行なった。
(1)スラリー溶液中の充填材の粒度分布測定(体積平均粒子径(mv)、90体積%粒径(D90))
レーザー回折型粒度分布計(MICROTRAC FRA型)を使用し、水溶媒(屈折率1.33)を用いて測定した。粒子屈折率(Particle refractive index)は全ての測定において1.57を用いた。また、充填材の再凝集を防ぐため、分散後直ちに測定を行った。
(2)充填材の24M4DBP吸油量
ISO 6894に準拠して測定した。
(3)ムーニー粘度(ML1+4
JIS K6300−1994に準拠し、130℃で測定した。数値が小さいほど加工性が良好である。
(4)補強性(破壊強力)
JIS K6251−1993に準拠し、23℃で測定した時の引張強さを求めた。値が大きいほど補強性が高い。
(5)tan δ
粘弾性測定装置(レオメトリック社製)を使用し、温度50℃、歪み5%、周波数15Hzでtanδ(50℃)を測定した。tanδが小さいほど低ロス性は良好である。
(6)耐摩耗性
ランボーン型摩耗試験機を用い、室温におけるスリップ率60%で摩耗量を測定し、その逆数を、実施例5,6及び比較例3では比較例3を、実施例7,8及び比較例4では比較例4をそれぞれ100とする指数で表示した。値が大きいほど耐摩耗性が良好である。
実施例1(マスターバッチAの製造)
天然ゴムラテックスの酵素処理工程
クローン種GT−1、NH30.4質量%処理天然ゴムラテックスに水を加えDRC15質量%に調整したラテックス1000gに、リパーゼ酵素(リパーゼM「アマノ」10:天野エンザイム(株)製)0.15gを添加して攪拌し、十分分散させた後、15時間静置した。
カーボンブラック分散スラリー溶液の調製工程
ローター径50mmのコロイドミルに脱イオン水1425gと、カーボンブラック(N110)75g投入し、ローター・ステーター間隔1mm、回転数1500rpmで10分間攪拌した。ここで得られたスラリーに、更にアニオン系界面活性剤(花王デモール N)を0.05質量%加え、圧力式ホモジナイザーを用いて圧力500kPaの条件下で3回循環させた。このようして得られた水分散スラリー中のカーボンブラックの粒度分布はmv=15.1μm、D90=19.5μmであり、乾燥回収したカーボンブラックの24M4DBP=96(ml/100g)、その保持率は98.0%であった。
混合・凝固・乾燥工程
ホモミキサー中に、天然ゴムのフィールドラテックスを脱イオン水で希釈しゴム分20質量%にしたラテックスと、上記カーボンブラック分散スラリーを、ゴム分100質量部に対して、カーボンブラックが50質量部になるよう添加し、攪拌しながら、ギ酸をpH4.7になるまで加えた。凝固したマスターバッチを回収、水洗し、水分が約40質量%になるまで脱水を行った。
上記により得られたマスターバッチ中のカーボンブラック量は、天然ゴム100質量部に対して、約50質量部であった。
この凝固物を神戸製鋼所製2軸混練押出機(同方向回転スクリュー径 30mm、L/D=35、ベントホール3ヶ所)を用いて、バレル温度120℃、回転数100rpmで機械的せん断力を加えながら押し出すことにより、乾燥し天然ゴムマスターバッチAを得た。
実施例2(マスターバッチBの製造)
実施例1の天然ゴムラテックスの酵素処理工程において、リパーゼ酵素(リパーゼM「アマノ」10:天野エンザイム(株)製)0.15gを添加する代わりに、ホスホリパーゼ酵素(ホスホリパーゼA1:三共(株)製)0.15gを添加したこと以外は、実施例1と同様の操作を行って天然ゴムマスターバッチBを得た。
比較例1(マスターバッチCの製造)
実施例1においてラテックスの酵素処理工程を経なかったこと以外は、実施例1と同様の操作を行って天然ゴムマスターバッチCを得た。
実施例3(マスターバッチDの製造)
シリカ分散スラリー溶液の調製工程
ローター径50mmのコロイドミルに脱イオン水1425gと、湿式シリカ(ニップシールLP)を75g投入し、ローター・ステーター間隔0.3mm、回転数7000rpmで10分間攪拌した。ここで得られた水分散スラリー中のシリカの粒度分布はmv=13.2μm、D90=24.0μmであり、乾燥回収したシリカの24M4DBP=144(ml/100g)、その保持率は96.0%であった。
実施例1において、カーボンブラック分散スラリー溶液を用いる代わりに上記により調製したシリカ分散スラリー溶液を用いたこと以外は、実施例1と同様の操作を行って天然ゴムマスターバッチDを得た。
実施例4(マスターバッチEの製造)
実施例3の天然ゴムラテックスの酵素処理工程において、リパーゼ酵素(リパーゼM「アマノ」10:天野エンザイム(株)製)0.15gを添加する代わりに、ホスホリパーゼ酵素(ホスホリパーゼA1:三共(株)製)0.15gを添加したこと以外は実施例3と同様の操作を行って天然ゴムマスターバッチEを得た。
比較例2(マスターバッチFの製造)
実施例3において、ラテックスの酵素処理工程を経なかったこと以外は実施例3と同様の操作を行って天然ゴムマスターバッチFを得た。
実施例5〜8及び比較例3、4
実施例1〜4及び比較例1,2で得られた天然ゴムマスターバッチA〜Fを用い、第1表に示す配合1(カーボンブラック系配合)及び配合2(シリカ系配合)に従って、ゴム組成物を調製し、未加硫ゴムについてはムーニー粘度を,加硫ゴム(150℃で30分間加硫)については、破壊強力、tan δ、及び耐摩耗性を測定した。結果を第2表及び第3表に示す。
Figure 0004726509
(注)
老化防止剤6C:N−(1,3−ジメチルブチル)-N`-フェニル−p−フェニレンジアミン
加硫促進剤DZ:N,N−ジシクロヘキシル-2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド
加硫促進剤NS:N−t−ブチル−2−ベンゾチアジルスルフェンアミド
なお、各マスターバッチ中の充填材はいずれも、天然ゴム100質量部に対して、約50質量部であった。
Figure 0004726509
Figure 0004726509
上記結果より、実施例5,6のカーボン配合ゴム組成物は比較例3との対比により、また、実施例6、8のシリカ配合ゴム組成物は比較例4との対比により、加工性、低ロス性(低発熱性)及び耐摩耗性のいずれも改良されており、特に加工性が著しく改善されていることがわかる。
本発明による天然ゴムマスターバッチを適用したゴム組成物は、特に加工性を著しく向上するものであるので、タイヤ材としての用途に有効に用いることができる。

Claims (15)

  1. (A)天然ゴムラテックス中の脂質を分解する工程と、(B)カーボンブラック、シリカ、又は一般式(I)
    nM1 ・xSiOy・zH2 O ・・・(I)
    [式中、M1 は、アルミニウム,マグネシウム,チタン,カルシウム及びジルコニウムから選ばれる金属、これらの金属の酸化物又は水酸化物、それらの水和物、及び該金属の炭酸塩からなる群から選ばれる少なくとも一種であり、n、x、y及びzは、それぞれ1〜5の整数、0〜10の整数、2〜5の整数、及び0〜10の整数である]
    で表わされる無機充填材の少なくとも1種を水中に分散させてスラリー溶液を調製する工程と、(C)前記脂質分解工程後のラテックスと前記スラリー溶液とを混合後、凝固する工程とからなことを特徴とする天然ゴムマスターバッチの製造方法。
  2. スラリー溶液の特性として、(i)水分散スラリー溶液中の充填材の粒度分布は、体積平均粒子径(mv)が25μm以下で、90体積%粒径(D90)が30μm以下であり、かつ(ii)水分散スラリー溶液から乾燥回収した充填材の24M4DBP吸油量は、水中に分散させる前の24M4DBP吸油量の93%以上保持するものである請求項1記載の天然ゴムマスターバッチの製造方法。
  3. 天然ゴムラテックスが、脂質分解酵素による処理がなされてなる請求項1又は2記載の天然ゴムマスターバッチの製造方法。
  4. 脂質分解酵素がリパーゼ又はホスホリパーゼである請求項3記載の天然ゴムマスターバッチの製造方法。
  5. 上記酵素と共に、界面活性剤とで処理されてなる請求項1〜4のいずれかに記載の天然ゴムマスターバッチの製造方法。
  6. 酵素の添加量が、天然ゴムラテックスの固形成分100質量部に対して0.005〜0.5質量部である請求項1〜5のいずれかに記載の天然ゴムマスターバッチの製造方法。
  7. シリカが、湿式シリカ、乾式シリカ、コロイダルシリカのいずれかである請求項1〜6のいずれかに記載の天然ゴムマスターバッチの製造方法。
  8. 前記一般式(I)で表される無機充填材が、アルミナ(Al23)、アルミナ−水和物(Al23・H2O)、水酸化アルミニウム[Al(OH)3]、炭酸アルミニウム[Al2(CO32]、水酸化マグネシウム[Mg(OH)2]、酸化マグネシウム(MgO)、炭酸マグネシウム(MgCO3)、タルク(3MgO・4SiO2・H2O)、アタパルジャイト(5MgO・8SiO2・9H2O)、チタン白(TiO2)、チタン黒(TiO2n-1)、酸化カルシウム(CaO)、水酸化カルシウム[Ca(OH)2]、酸化アルミニウムマグネシウム(MgO・Al23)、クレー(Al23・2SiO2)、カオリン(Al23・2SiO2・2H2O)、パイロフィライト(Al23・4SiO2・H2O)、ベントナイト(Al23・4SiO2・2H2O)、ケイ酸アルミニウム(Al2SiO5、Al4・3SiO4・5H2O等)、ケイ酸マグネシウム(Mg2SiO4、MgSiO3等)、ケイ酸カルシウム(Ca2・SiO4等)、ケイ酸アルミニウムカルシウム(Al23・CaO・2SiO2等)、ケイ酸マグネシウムカルシウム(CaMgSiO4)、炭酸カルシウム(CaCO3)、酸化ジルコニウム(ZrO2)、水酸化ジルコニウム[ZrO(OH)2・nH2O]、炭酸ジルコニウム[Zr(CO32]、結晶性アルミノケイ酸塩からなる群から選ばれる少なくとも1種である請求項1〜7のいずれかに記載の天然ゴムマスターバッチの製造方法。
  9. 前記一般式(I)において、M1 がアルミニウム金属、アルミニウムの酸化物又は水酸化物、それらの水和物、及びアルミニウムの炭酸塩から選ばれる少なくとも一種である請求項1〜7のいずれかに記載の天然ゴムマスターバッチの製造方法。
  10. 凝固後の天然ゴムマスターバッチを乾燥させる工程で、機械的なせん断力をかけながら乾燥を行う請求項1〜9のいずれかに記載の天然ゴムマスターバッチの製造方法。
  11. 連続混練機を用いて乾燥を行う請求項10に記載の天然ゴムマスターバッチの製造方法。
  12. 連続混練機が2軸混練押出機である請求項11記載の天然ゴムマスターバッチの製造方法。
  13. 請求項1〜12のいずれかに記載の方法により製造された天然ゴムマスターバッチ。
  14. 請求項13に記載の天然ゴムマスターバッチを用いたゴム組成物。
  15. 請求項14に記載のゴム組成物を用いたタイヤ。
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