以下添付図面に従って本発明の好ましい実施の形態について詳説する。
〔画像処理の概要〕
まず、多値誤差拡散法と濃度パターン法を組み合わせた画像処理技術の概要を説明する。図1は多値誤差拡散法と濃度パターン法とを組み合わせたハーフトーニング処理の工程を示す概念図である。図示のように、入力画像A(階調数a)は、多値誤差拡散処理の工程(符号S10)によって画像B(階調数b)に変換され、さらに、この画像Bを入力とする濃度パターン処理の工程(符号S12)により、ドット画像である画像C(階調数c)へと変換される(ただし、a>b>c)。
例えば、入力画像Aは、各色成分について1画素の階調値を8ビットのデータ(0〜255)で表現したカラー画像のデータ(階調数a=256)であるものとする。この256階調の入力画像Aを多値誤差拡散処理によって色成分毎に16階調(階調数b=16)の画像Bに変換し、さらに、濃度パターン処理によって2値(ドットサイズ変更可能な場合はドットサイズの指定を含む3〜4値)の画像Cへと変換する。ここでは、処理の対象となる画像データの色成分を特定しないが、カラー画像データの場合には、各色成分のデータ(例えば、シアン、マゼンタ、イエロー、ブラックの各色成分のデータ)ごとに同様の処理が実行される。
図2は多値誤差拡散処理の概念図である。
多値誤差拡散法の原理については特許文献1に開示されている。概説すると、多値誤差拡散法では、多値(ここでは、階調数b)量子化のための複数の量子化閾値と、各量子化閾値での量子化に対応した出力階調値が定められており、入力画像A(階調値a)の各画素位置(x,y)についてラスター順に量子化処理を行い、注目位置(x,y)の画素値Ia(x,y)に量子化済みの周辺画素から拡散された累積誤差を加えたものと、量子化閾値とを比較して、階調数aを階調数bへ量子化を行う。そして、当該量子化後の出力階調値と量子化前の画素値の差を誤差として、未処理の周辺画素へと拡散させる。
上記の量子化処理を全ての画素位置について行うことにより、入力画像A(階調数a)と同じ画素数の画像B(階調数b)に変換される。なお、図2において、画像Bの各画素位置(x,y)の画素値はIb(x,y)として表されている。
図3は濃度パターン処理の概念図である。
ここで説明する濃度パターン法の原理は、特許文献2に開示されている。濃度パターン法では、画像Bの各画素位置(x,y)の階調値Ib(x,y)をk×lサイズ(図では4×4サイズ)の画素ブロック内のドット配置(分布)によって表現する。階調値ごとに予めK×Lサイズのドットパターンテーブルが定められており、画像Bの画素位置と階調値に応じてドットパターンテーブル内からk×lサイズのドットパターンを選択し、画像Bの各画素をドットパターンに置き換える処理が行われる。K,Lはドットパターンテーブルのサイズを表す自然数、k,lはドットパターンのサイズを表す自然数である。
なお、同図では階調値Ib(x,y)に対応付けられるドットパターンを4×4サイズの画素ブロックで示したが、実際には、画素ブロック内の各ドット画素セルについて階調値に応じてドットの有無(オン/オフ)が定められたドットの配置パターンが定義されている。
ドットパターンテーブル全体のサイズ(K×L)の中で現在注目している画素の位置(x,y)に対応するドットパターンの位置を特定するアドレス情報は、xを(K/k)で割った剰余の値(mod(x/(K/k) )と、yを(L/l)で割った剰余の値mod(y/(L/l))で表される。
すなわち、画像Bの位置(x,y)の画素の階調値Ib(x,y)に対して、階調値毎に作成されたドットパターンテーブルの該当する位置(mod(x/(K/k)), mod(y/(L/l)))にアクセスして、k×lサイズのドットパターンを出力する。
図示の場合、画像Bの1画素が4×4サイズの画素ブロックによるドットパターンに置き換えられる。ドットパターンの画素ブロックを構成する1ドット画素は、記録ヘッドの各ノズルによってドットが記録される画素に対応している。
〔隣接ノズルを使用したスジムラの補正原理〕
記録ヘッドのノズル列内に吐出不良のノズル(吐出量異常や吐出方向異常、或いはこれらの組み合わせ)が存在する場合に、当該不良ノズルの隣接ノズルを使用してスジムラを補正することを考える。この場合、本発明の実施形態では、以下に説明する「仮ノズル」(仮想的ノズル)の概念を導入する。
図4は、記録ヘッドのノズル列と各ノズルのノズル特性に起因するインク打滴位置のバラツキを模式的に示したものである。図4では各ノズルの吐出方向バラツキに基づく打滴位置のバラツキの例が示されている。同図においては、ノズルN4から吐出されるインク滴とノズルN5から吐出されるインク滴の着弾位置が交差している。このような交差が発生していると、隣接ノズルによる補正機能を実装する際に障害となる。
すなわち、注目ノズルと隣接ノズルによる補正とは、実際的には被記録媒体上で着弾する位置の近いドット同士で打滴量や打滴頻度を調整して濃度を補正し合うことを意味しており、注目ドットとその隣接ドットとの相関による補正を示している。例えば、図4のノズルN3から打滴されるドットの隣接ドットはノズルN5から打滴されるドットであり、これをノズル位置に基づいて補正することを考えると、ノズルN3の補正に必要な隣接ノズルとしてはノズルN5を含めて扱う必要がある。
このように、注目ノズルの隣接ノズルとして、実際の注目ノズル(例えば実ノズルN3)の両隣(N2,N4)とさらにその先(N5)を含んだノズル範囲を補正処理の対象としなければならず、これらノズル範囲(両隣とその先)からの影響を考慮した補正用のハードウエアを実装する必要が生じるため、回路規模が大きくなるという問題が生じる。
このような問題を解決するために、図5に示すように、ノズル列内におけるノズル位置の隣接関係と、打滴されるドット(被記録媒体上に着弾するドット)の隣接関係が保存されるように「仮ノズル」という考え方を導入する。すなわち、仮ノズルN3から打滴れるドットと仮ノズルN4から打滴されるドットとが記録媒体上で隣接しているものとする。このような仮ノズルのノズル列を導入してドット配置を計算した後に、実際のノズル位置と仮ノズルの位置の対応関係から、元の実ノズルに対応したデータに戻す処理を行う。
図5の例では、仮ノズルN3→実ノズルN3、仮ノズルN4→実ノズルN5、仮ノズルN5→実ノズルN4という対応関係によって、実際のノズル位置と仮ノズルの位置を元に戻す。
上記のような「仮ノズル」という考え方を用いると実際のノズル特性に依存せず(飛び越えた位置に着弾するなど)に、注目ノズルと隣接ノズルの関係だけ着目することができるため、演算が簡略化され、回路規模もあまり大きくならないという利点がある。
〔ノズル特性に基づくスジムラを補正するドットパターンテーブルの作成方法〕
上述した仮ノズルのノズル列について、ドットパターンテーブルを作成する方法について説明する。図6は、注目ノズルとその隣接ノズルのドットの相関によってスジムラを補正しようとするノズル相関モデルによる補正処理の概要を示す図である。
図示におけるS2、S3、S4 は、それぞれ仮ノズルN2、N3、N4に対応した入力信号を表す。また、Zij(x) は、仮ノズルNiから仮ノズルNjに対する補正関数を表す。例えば、Z23(x)は、仮ノズルN2から仮ノズルN3に対する補正関数を表す。
図6によれば、仮ノズルN3と仮ノズルN4にそれぞれ対応する画素位置の信号の補正式は以下のようになる。
S’3 = Z33( S3 ) + Z23( S2 ) + Z43( S4 )
S’4 = Z44( S4 ) + Z34( S3 ) + Z54( S5 )
ここでは、注目ノズルとその両隣の隣接ノズル(2つ)による補正を説明しているが、補正に用いる周辺ノズルの範囲を更に広げることも可能である。例えば、両隣の隣接2ノズルに加えて、さらにその外側の2ノズルを加えた範囲で補正する場合の補正式を例示すると、以下のようになる。
S’4 = Z44( S4 ) + Z34( S3 ) + Z54( S5 ) + Z24( S2 ) + Z64( S6 )
補正関数はテーブルでも良いし、Zij( x ) = Cij ×x + Dijのような1次多項式でも良い。
補正関数や係数の決定方法は、特許文献3に記載されているような公知技術が利用可能である。一つの例として、N次多項式の場合、係数(Vijk)を未定係数とし、各ノズルから打滴されるドットの位置及びサイズに基づくドット濃度分布を公知の方法で測定してデータとして記憶し、所定の入力信号Sx(各ノズルへの入力信号は全て同じ信号Sxとする)に対して、期待される出力(公知のブルーノイズ特性のディザ処理や誤差拡散法等を利用して各ノズルからの出力値をドット変換して得られる、各ノズルからのドット位置及びドット濃度分布)から計算される明度分布から知覚される値(VTF; Visual Transfer Functionが利用可能)を計算し、知覚される値が所定値以下もしくは最小値になるように、前記各係数(Vijk)を最適化計算の手法で計算することができる。最適化計算の手法としては、例えば、GA(Genetic Algorithm;遺伝的アルゴリズム)法、SA(Simulated Annealing;シミュレーテッド・アニーリング)法などが用いられる。
このようにして求めた各ノズルに対する補正関数を用いて、全てのノズルに対して同じ入力信号Sxを入力し、前記Sxから補正した信号Sx’を取得する。この補正した信号Sx’をドット変換(公知のブルーノイズ特性のディザ処理や誤差拡散法が利用可能)することによって、仮ノズルに対するドット画像を得る。ここで得られるドット画像は、主走査方向に仮ノズル列の主走査方向ノズル数K、副走査方向に所定のドット数Lの画素数(K×L)を有する。ここでいう、副走査方向についての所定のドット数Lは、前記ドット画像を副走査方向に繰り返して並べたときに好ましくない繰り返しパターンが視認できない程度のドット数が望ましい。
入力信号Sxとして画像Bの各階調値を入力し、上記のような計算を行って各階調値に対応するドット画像(スジムラが補正されたドット配置の画像)を得る。このドット画像をドットパターンテーブルとして使用する。
〔技術課題1の考察〕
このときに必要なドットパターンテーブルサイズを試算する。画像Bの階調数b、ノズル数N、ドットパターンテーブルの長さ(ノズル列と直交する方向の画素数)Lとすると、図7に示すように、N×L×bのオーダーの記憶容量が必要になることがわかる。
〔技術課題2の考察〕
図7のドットパターテーブルは、入力画像(画像B)がベタ画像(単一濃度画像)であることに相当する入力画像のスジムラを補正するように作成される。つまり、図6で説明したように、ドットパターンを計算するときには、各階調値のベタ画像を入力して、結果得られるドット配置のパターン(ドット画像)をドットパターンテーブルとする。
上記の条件で作成したドットパターンテーブルを使用して濃度パターン法による処理を行う場合、入力画像がベタ画像でないとき、濃度パターン法で画素ごとに置換されるドットパターンの境界に属するドット列は、隣接する画素(ドットパターンのブロック)との間に実際は濃度変化があるのに、ドットパターンとしては隣接する画素間に濃度変化がないことを前提とするドットパターン(ベタ画像から作られるドットパターン)が使用されるため、この境界位置においてスジムラ補正性能が低下する問題がある。
特に、ノズル配列方向(ページワイドの記録幅を有するフルライン型の記録ヘッドを想定すると、ノズル配列方向は主走査方向となる)に濃度傾斜するようなグラデーション画像を入力画像とする場合には、上記の問題が顕著であり、スジムラ補正性能が低下するドット列(ドットパターンの境界位置)が直線状に並ぶ場合、人間の視覚特性(水平、垂直方向の視覚感度が良く、斜め方向は感度が鈍い)により、画像の水平方向又は垂直方向に沿って連続する直線状のアーティファクトが視認されやすい(目立ち易い)という問題がある。
〔本発明の第1実施形態〕
上記考察した技術課題1を解決する観点から、本発明の第1実施形態では、多値誤差拡散処理により階調数がbに変換された画像Bに対して、まず、主走査方向(ノズル配列方向)の数値列へ変換する。
図8を参照しながら、画像Bの1つの画素Ib(1,1)を例に説明する。ここでは、画素Ib(1,1)は仮ノズルN3、N4、N5、N6に対応する位置であるものとする。図6で説明したとおり、仮ノズルN3、N4、N5、N6に対してスジムラを補正する隣接ノズルの寄与分を加えた補正されたノズル信号を予め計算して、記憶手段にテーブル(補正ノズル信号テーブル)として記憶しておき、該当する画素値に対応する補正ノズル信号を記憶手段から取り出す。
図9は、補正ノズル信号テーブルの概念図である。図9の縦軸は仮ノズル列のノズル位置(仮ノズル番号)、すなわち、仮ノズル番号に対応したドット画素位置を表し、横軸は階調値を表す。補正ノズル信号テーブルの作成方法について詳細は後述するが、補正ノズル信号テーブルは、ノズル特性(吐出量ばらつきや着弾位置ばらつきなどの記録特性)に起因するスジムラを近隣ノズルとの相関によって補正するように、階調値ごとに各仮ノズル位置に対応した補正ノズル信号が定義されている。この補正ノズル信号が示す多値の階調値を正確に再現(ドット配置に置換)すれば、ノズル特性に起因するスジムラは解消されることになる。
補正ノズル信号テーブルの作成方法は次のとおりである。すなわち、各ノズルに対して同じ階調値Bを入力し、予め求めておいた隣接ノズルからの補正係数を用いて計算した結果をテーブルとして記憶する。例えば、図6で説明した手法によって定められた補正関数(具体的には、S’4 = Z44( S4 ) + Z34( S3 ) + Z54( S5 )など)を用いて階調値Bを画像Bの全階調値に変更しながら、階調値ごとのノズル信号テーブルを計算する。
図9では、ノズル列に沿った1次元の補正ノズル信号の列が、階調値Bに対応して階調数分の複数列定められていることを表している。なお、補正ノズル信号は、図6で説明したように、隣接ノズルとの相関によって元の階調値(階調数b)を補正するものであるため、画像Bの階調数(例えば、16階調)よりも大きな階調数(例えば、32階調)となる。画像Bの階調数に対して追加された階調は、小数点以下に相当する。
また、本実施形態では、画像Bの1つの画素(x,y)に与えられている階調値(画素値)は、最終的には、主走査方向に並ぶ複数の(本例では4つの)仮ノズルによって打滴されるドットの2次元パターン(濃度パターン)に変換されることになるため、図9における補正ノズル信号テーブルの各仮ノズル番号に対応する主走査方向の位置(ドット画素の位置に相当)セルについて、主走査方向に連続する4セルを単位としてブロック化され、各ブロックは画像Bの主走査方向の画素位置と対応付けられる。つまり、図示のように、主走査方向に並ぶ4セル単位で区画されたドット画素ブロックが画像Bの主走査方向の1画素と対応付けられる。
そして、画像Bにおける1画素を所定のドット画素ブロック(ここでは、4×4サイズ)の2次元ドット配置(濃度パターン)に変換するに際し、まず、図8に示したように、主走査方向(縦)に並ぶ1列のノズル位置に対応した1次元のノズル信号ブロックに変換する。
図8で具体的に説明すると、画素Ib(1,1)の主走査方向 x=1の位置と記録メディア上の記録開始位置から対応する仮ノズルが決定される。ここでは、主走査方向のx=1の位置に対して、仮ノズルN3、N4、N5、N6の位置(仮ノズル番号=3,4,5,6)が対応しているものとする。なお、この実施例では主走査方向の1画素に対して4つのノズルを対応付ける場合を説明するがこの4ノズルに限定されるものではない。
画素Ib(1,1)の階調値B1と仮ノズル番号から、補正ノズル信号テーブル(図9)を参照して、各ノズル位置(仮ノズル位置)について補正されたノズル信号MS(Ni,B1)を決定する。すなわち、仮ノズル番号Ni=3,4,5,6の各ノズルについて対応する補正されたノズル信号MS(3,B1),MS(4,B1),MS(5,B1),MS(6,B1)を記憶手段(補正ノズル信号テーブルが格納されているメモリ)から読み出す。
次に、この補正されたノズル信号に対して、各画素ごとに予め計算しておいた副走査方向に沿う1次元のドットパターンを記憶手段(1次元ドットパターンテーブルが格納されているメモリ)から取り出して出力する。ここでは、縦方向に並ぶ4つの画素位置について、それぞれ横方向に並ぶ4つのドット画素の2階調画像(ドットパターン)に変換する。
図10は、本実施形態で用いる1次元ドットパターンテーブルの概念図である。縦軸は、補正されたノズル信号の値を表し、補正ノズル信号の階調数分だけある。横軸は1次元ドットパターンの位置を表している。横軸方向の1次元ドットパターンテーブルの長さL1は、補正されたノズル信号が示す階調値を正確に再現するために必要なドット数分の長さ(ドット画素数)を有し、ある長さで取り出したときに所定の階調値を達成するようにドットの数が調整されている。
ここで、1次元ドットパターンテーブルの作成方法について説明する。
補正ノズル信号の値に対して定められる1次元のドット配列(一定区間内のドット数)を、例えば、以下の方法で作成する。
(方法1)1次元誤差拡散処理を利用する態様
図11は、1次元誤差拡散処理の概要を示す図である。図11において、B2〜B4は、量子化後の画素の値を表している。注目画素はB4であり、I5〜I8は、未量子化画素を表す。注目画素(B4)を量子化したことによって発生した誤差を次の未量子化画素I5、I6に所定の分配比率で拡散する。ここでの拡散係数は、各々3/4、1/4としたが、拡散係数については適宜の設定が可能である。
各未量子化画素の値Iiを同じ階調値(補正ノズル信号に対して決まるドット数)として、所定の画素数分をドット列に変換したものを1次元ドットパターンテーブルとする。
(方法2)ブルーノイズマスク法を利用する態様
公知の方法で計算したブルーノズルマスクを用いてベタ画像の信号(一定値)を入力してドットに変換した結果を1次元状に取り出す。この取り出した1次元のドット列を1次元ドットパターンテーブルとする態様も可能である。
上述に例示した方法1,2等を用いることにより、図10で説明したような、階調値ごとの1次元ドットパターンテーブルを得る。
図10に示した1次元ドットパターンテーブルの中から、補正ノズル信号の値に応じて縦軸方向の位置が特定され、さらに、当該特定されたドットパターンテーブル(長さL1)の中から横軸方向の取り出し位置(読み出し開始位置)が乱数等によって決定される。こうして、特定された位置のドット列(例えば、図10において太線で囲んだ4ドット画素分のドット列)が出力される。
図12は、1次元ドットパターンテーブルにおけるドットパターンの取り出し単位(1次元ドット列の読み出し単位)と取り出し位置(開始位置)を例示した図表である。同図表の縦軸方向は補正されたノズル信号の値を表し、横軸方向は1次元ドットパターンテーブルにおけるドット画素の位置を表している。同図では、横軸方向に長さL1(=4×r)の1次元ドットパターンテーブルが左端の画素セル位置(j=0)から4ドット分を1つのブロック(単位)として区画され、ブロックの並び順に開始位置の番号0,1,2…,r-1が割り当てられている。ただし、rは適宜の自然数である。
読み出しの開始位置は、既述のとおり、乱数を用いて番号0,1,2…,r-1を特定するものとする。例えば、図8で説明した、補正されたノズル信号MS(3,B1)に対して、1次元ドットパターンテーブル(図10又は12)を参照し、取り出すべき1次元ドットパターンの位置については、乱数により決定し、1次元ドットパターンテーブルの中から当該決定した位置に含まれる1次元のドット列を読み出して、MS(3,B1)に対応する4ドット画素分のドットパターンとして出力する。
同様にして図8のMS(4,B1),MS(5,B1),MS(6,B1)に対してドットパターン位置を乱数により決定し、対応する位置のドット列から4ドット画素分のドットパターンを出力する。なお、この実施例では副走査方向に並ぶ4ドット画素分のドットパターンで説明するが、この4ドットに限定されるものではない。
長さL1の1次元ドットパターンテーブルのうちの、どこの位置からドットパターン(ドット列)を取り出すかという位置の決定について、乱数を用いる理由は、以下のとおりである。すなわち、乱数を用いずに、各ノズル位置について同一値の信号(補正されたノズル信号)に対して常に同じドット配列のパターンが出力されると、出力結果となるドット列を2次元的に見たとき、同じドット配列が規則的に繰り返されるためアーティファクトが生じ得る。このようなアーティファクトの発生を防止するために、異なるノズル位置について、それぞれ補正されたノズル信号が同一値であっても、異なるノズルに対応する場合は、予め計算しておいた1次元のドットパターンテーブルにおけるドット列のうちの異なる位置(乱数によって決定されるランダムな位置)から、4ドット画素分のドットパターンを読み出して使うことが好ましい。こうすることで、出力結果となるドット列の2次元的な配列において、ドットパターンの規則性が無くなり、上述のアーティファクトの発生を抑制できる。
1次元ドットパターンテーブルの中から読み出すべきドット列の位置を決定する方法に関して更に好ましい態様は、記憶しておいた1画素前の補正されたノズル信号と比較して、同じ信号値であるときは、記憶しておいた副走査方向の1画素前(図8においてIb(2,1)に対する1画素前はIb(2,0))の1次元ドットパターンテーブルの位置に対して連続する位置を使用する。
つまり、副走査方向の画素の並び順と同様に、1次元ドットパターンテーブルにおける画素ブロック単位で、次の並び位置の画素ブロックを使用する(1画素前に対応する画素ブロック位置の副走査方向に連続する次の画素ブロックを使用する)。元々、1次元ドットパターンテーブルは、各階調値を副走査方向のドット列で良好に再現することを意図して計算されているため、同じ信号値が連続する場合、この良好なドットの配列を維持することが望ましい。
その一方、記憶しておいて1画素前の補正されたノズルと比較して、同じ信号値(階調値)でないときは、乱数の発生により位置を決定する。
かかる態様によれば、同じ信号値の画素の並びに対しては、ドットパターンテーブルの並び順に沿って良好なドットパターンが選択され、異なる信号値の画素に対しては、ランダムにドット列が決定されるため、規則的なムラの発生を回避することができる。
更に好ましい態様は、記憶しておいた1画素前の補正されたノズル信号と比較して、同じ信号値であるときは、記憶しておいた副走査方向の1画素前の1次元ドットパターンテーブルの位置に対して連続する位置を使用する点は、上記の態様と同じであるが、1画素前と同じ階調値ではないときは、乱数で位置を発生させた後に、主走査方向の連続する数画素のドット列変換結果をドット位置ごとに和を取った結果に対して所定の平準を維持できているかどうかを判定し、平準を維持できていないときは乱数を再度発生させ、新たな1次元ドットパターンテーブルの位置を選び直し、上記の所定の平準を達成するまで、上記の処理を繰り返して位置を選び直す。
図13を用いて、具体的に説明すると、例えば、MS(3,B1)に対応する1次元ドットパターンテーブルの位置を決定するときに、当該画素の信号値が副走査方向に1画素前の信号値と異なる値である場合は、乱数によって位置の指定を行い、MS(3,B1)のドット列変換候補D30,D31,D32,D33が決定される。
その一方で、主走査方向について直近の数画素(図13では3画素)前のドット列変換結果をバッファ等の記憶手段に一次的に記憶しておき、これら記憶されている数画素前のドット列変換結果と、現在注目しているドット列変換候補とを含む複数のドット列について、副走査方向に並ぶ各ドット画素位置について主走査方向に和をとって、副走査方向の画素間で概ね平準化されているか否か(著しく大きなバラツキが生じていないかどうか)を判定する。
記憶されている直近のドット列変換結果と、注目位置のドット列変換候補を下記のとおりに表記するとき、
MS(0,X)のドット列変換結果:D00,D01,D02,D03
MS(1,X)のドット列変換結果: D10,D11,D12,D13
MS(2,X)のドット列変換結果: D20,D21,D22,D23
MS(3,B1)のドット列変換候補: D30,D31,D32,D33
各ドット列の副走査方向(図13の横方向)の位置j(j=0,1,2,3)ごとに主走査方向(図13の縦方向)に和をとり、次式を求める。
S0=ΣDi0, S1=ΣDi1, S2=ΣDi2, S3=ΣDi3
ただし、上式の記号Σは、i=0,1,2,3について和を求めることを表す。また、階調値XはB1と異なる値とし、MS(0,X)、MS(1,X)、MS(2,X)の各Xの値は同じでもよいし、互いに異なる値でもよい。
上記の計算で求めたS0,S1,S2,S3を基にして、所定の平準についての評価は、例えば、下記の式にしたがって計算したRが所定値より小さければ、所定の平準を維持できているものと判定する。
R= Σ( Si − Ave)2 ,Ave= { Σ( Si) } / n
なお、上式のnはiの個数であり、図13の場合、n=4である。
平準の評価方法は、上記の例(平均値からの差分の2乗和)に限定されず、様々な代替方法があり得る。例えば、より簡便な手法として、S0,S1,S2,S3のなかの最大値MAX(S0,S1,S2,S3)と、最小値MIN(S0,S1,S2,S3)の差が所定値以下の場合に、所定の平準を維持できているものと判定する態様も可能である。すなわち、判定基準となる所定値をKとするとき、
MAX(S0,S1,S2,S3)−MIN(S0,S1,S2,S3)≦K
を満たす場合に、所定の平準を維持できているものと判定する。
上述のように、注目している位置のドット列変換候補について、所定の平準が維持できているか否かを判断し、平準が維持できていれば、当該候補を採用する。その一方、平準が維持できていなかれば、不適な変換となるため、当該ドット列変換候補を破棄して、再度、乱数発生によりドット列変換候補を抽出し直し、適切なドット列変換候補が見出されるまで、上記の処理を繰り返す。こうすることで、上述したアーティファクトの発生を抑制することができる。
〔ドットパターンテーブルの記憶容量の比較〕
図7で説明したように、従来技術の濃度パターン法における2次元のドットパターンテーブルを用いる場合、階調数b、ノズル数N、2次元ドットパターンの長さL2とすると、従来技術のドットパターンテーブルのデータサイズは、N×L2×bのオーダーとなる。
これに対し、本発明による1次元ドットパターンテーブルを用いる場合は、補正されたノズル信号の階調数S,1次元ドットパターンテーブルの長さL1とすると、必要なデータのサイズは、図9で説明した補正ノズル信号テーブルのデータサイズ(N×b)と、図10で説明した1次元ドットパターンテーブルのデータサイズ(S×L1)の和、つまり、N×b+S×L1のオーダーとなる。
ここで、L1=m×L2 (ただし、mは自然数)として、「従来技術の2次元のドットパターンテーブルのデータサイズ」に対する「本発明による1次元のドットパターンテーブルのデータサイズ」の比率を計算すると、次のようになる。
(本発明によるデータサイズ)/(従来技術のデータサイズ)
={N×b+S×L1}/{N×L2×b}
=1/L2 +(S×m)/(N×b)
この式において例えば、S≒2×b、m=8として計算すると、
=1/L2 +16/N
さらに、上記の式で具体的にN=4096、L2=4096として計算すると、
=1/4096+16/4096
=17/4096
すなわち、上記の具体的条件の下で本発明の適用によって、従来の記憶容量に比べて、約1/240に記憶容量を削減することが可能になる。
乱数を発生させる手段や、平準の評価を行うための記憶手段等の構成要素が付加されることを考慮しても、従来と比較して十分に記憶容量の削減効果が得られる。
〔本発明の第2実施形態〕
次に、上記考察した技術課題1及び2を併せて解決する第2実施形態について説明する。図14は第2実施形態で用いる多値誤差拡散処理の概念図である。図1で説明した「多値誤差拡散処理」に代えて、図14に示す「画素ずらし多値誤差拡散処理」が実施される。
ここで示す画素ずらし多値誤差拡散処理によって得られる画像B(階調数b)は、主走査方向に並ぶ画素の列(主走査方向画素列)について、副走査方向に隣接する列間で主走査方向に半画素分だけ位置をずらした画素配列の画像となっている。例えば、図8に示すように、偶数列は奇数列に対して主走査方向に半画素(1/2画素分)シフトしている。
画像Bに示すように、画素の配列を主走査方向に半画素ずらす処理の1つの例として、例えば、多値誤差拡散処理において、画像A(階調数a)から画像B(階調数b)に変換するときに主走査方向に半画素ずらした画像に変換する方法がある。
以下に、一つの例として、多値誤差拡散処理で半画素ずれた上記画像Bを作成する方法を説明する。
図15は画素ずらし多値誤差拡散処理の概要を示す図である。同図において、符号30は量子化済みの画素を表し、符号32は量子化処理を行う注目画素を示す。また、図中白抜きで示された領域は未だ量子化処理が行われていない未量子化画素34の領域である。
図15に示すとおり、未量子化画素34を主走査方向(図の上下方向)に分割して画素数を2倍にする。注目画素32は、主走査方向に隣接する2つの分割画素を1画素に統合したものとする。この注目画素32の生成(2分割画素の統合)に際し、副走査方向について偶数列と奇数列で互いに位相を半画素分ずらしながら、主走査方向に隣接する2つの分割画素を1画素に統合(階調値の平均値を計算する)し、閾値と比較して多値量子化を行い、発生した誤差を周辺の未量子化の分割画素へ拡散する。ただし、偶数列と奇数列のどちらか一方の主走査方向の最初と最後の画素は統合しないものとする。
図15における誤差拡散係数は通常の誤差拡散係数と同様に、E01+E11+E10=1.0となる係数(E01,E11,E10)を用い、対応する分割画素にそれぞれ図15のように拡散する。このような誤差拡散処理を行うことで、偶数列と奇数列との間で主走査方向に半画素だけシフトした千鳥状の画素配列の多値画像データが得られる。
なお、図15で説明した方法に限らず、例えば、図14の画像Aを基に、副走査方向の偶数列について、補間計算によって半画素ずらした位置のデータを作成してもよい。
こうして得られた半画素ずれた画素配列の画像データ(画像B)を基に、図16で示すように、各画素位置(x,y)について、縦方向(主走査方向)の補正ノズル信号列への変換(補正ノズル信号テーブルを用いる処理)と、横方向(副走査方向)のドット列への変換(1次元トットパターンテーブルを用いる処理)を行う。
この第2実施形態では、奇数列と偶数列とで主走査方向の画素の位置がシフトしていることに対応して、補正ノズル信号テーブルは、図17に示すように、奇数列用と、偶数列用の2種類の補正ノズル信号テーブルを含んで構成される。
奇数列用のテーブルは、画像Bの奇数列の画素配列に対応したブロック単位(4セル単位)で区画されており、各ブロックが画像Bの主走査方向の画素位置xと対応づけられている。一方、偶数列用のテーブルは、画像Bの偶数列の画素配列に対応したブロック単位で区画され、奇数列用のテーブルと比べて、半ブロック分(画像Bの半画素分)位相がシフトした位置関係で区画されている。
図16における画像Bの注目画素の位置(x,y)が奇数列に属するか偶数列に属するかによって、図17の補正ノズル信号テーブルを参照する際に、2種類のテーブルを使い分けて、該当する位置の補正ノズル信号列を読み出す。使用する補正ノズル信号テーブルの相違を除き、その他の構成は、既述した第1実施形態と同様であり、1次元のドットパターンテーブルとしては、図10で説明したものと同様のものを用いる。
こうして、生成されたドット画像Cは、図18に示すように、画像Bの画素配列に対応して、変換される2次元のドットパターンのブロック(ここでば、4×4サイズ、偶数列の境界部分は2×4サイズの矩形ブロック)が、奇数列と偶数列とで主走査方向に半ブロック分ずれている。
その結果、各矩形ブロックの境界に属するドット列(図18において、斜線の塗りつぶしパターンで示したドットの画素位置)は、副走査方向に沿った連続する一直線上に並ばずに、矩形波のような凹凸のある非直線状(折れ線状)に配置される。人間の視覚は、水平垂直方向の感度が高く、斜め方向の感度は鈍い特性を有するため、上記の境界に属するドット列の配列形態(直線状に並ばない形態)により、アーティファクトの視認性が低下する。
また、隣接する画素間で実際は濃度変化(階調値の違い)があるときに、ドットパターンとしては、隣接する画素間に濃度変化がないことを前提(条件)として計算されたドットパターンが使用されることにより、この境界位置におけるスジムラ補正性能は低下することになるが、かかるスジムラ補正性能が低下する境界部分が直線状に並ばないため、規則的なムラは視認され難い。
上記の第2実施形態では、画素ずらしとして半画素ずらす例を説明したが、半画素以外の適宜のシフト量で画素位置をシフトさせる構成も可能である。
〔インクジェット記録装置への適用例〕
次に、上述した画像処理方法を用いて多値画像データをドット配置データに変換する画像処理機能を備えた画像形成装置の具体的な適用例としてのインクジェット記録装置について説明する。
図19は、本発明に係る画像形成装置の一実施形態を示すインクジェット記録装置の全体構成図である。同図に示すように、このインクジェット記録装置110は、黒(K),シアン(C),マゼンタ(M),イエロー(Y)の各インクに対応して設けられた複数のインクジェット記録ヘッド(以下、ヘッドという。)112K,112C,112M,112Yを有する印字部112と、各ヘッド112K,112C,112M,112Yに供給するインクを貯蔵しておくインク貯蔵/装填部114と、被記録媒体たる記録紙116を供給する給紙部118と、記録紙116のカールを除去するデカール処理部120と、前記印字部112のノズル面(インク吐出面)に対向して配置され、記録紙116の平面性を保持しながら記録紙116を搬送するベルト搬送部122と、印字部112による印字結果を読み取る印字検出部124と、記録済みの記録紙(プリント物)を外部に排紙する排紙部126とを備えている。
インク貯蔵/装填部114は、各ヘッド112K,112C,112M,112Yに対応する色のインクを貯蔵するインクタンクを有し、各タンクは所要の管路を介してヘッド112K,112C,112M,112Yと連通されている。また、インク貯蔵/装填部114は、インク残量が少なくなるとその旨を報知する報知手段(表示手段、警告音発生手段)を備えるとともに、色間の誤装填を防止するための機構を有している。
図19では、給紙部118の一例としてロール紙(連続用紙)のマガジンが示されているが、紙幅や紙質等が異なる複数のマガジンを併設してもよい。また、ロール紙のマガジンに代えて、又はこれと併用して、カット紙が積層装填されたカセットによって用紙を供給してもよい。
複数種類の記録媒体(メディア)を利用可能な構成にした場合、メディアの種類情報を記録したバーコード或いは無線タグなどの情報記録体をマガジンに取り付け、その情報記録体の情報を所定の読取装置によって読み取ることで、使用される記録媒体の種類(メディア種)を自動的に判別し、メディア種に応じて適切なインク吐出を実現するようにインク吐出制御を行うことが好ましい。
給紙部118から送り出される記録紙116はマガジンに装填されていたことによる巻きクセが残り、カールする。このカールを除去するために、デカール処理部120においてマガジンの巻きクセ方向と逆方向に加熱ドラム130で記録紙116に熱を与える。このとき、多少印字面が外側に弱いカールとなるように加熱温度を制御するとより好ましい。
ロール紙を使用する装置構成の場合、図19のように、裁断用のカッター(第1のカッター)128が設けられており、該カッター128によってロール紙は所望のサイズにカットされる。
デカール処理後、カットされた記録紙116は、ベルト搬送部122へと送られる。ベルト搬送部122は、ローラ131、132間に無端状のベルト133が巻き掛けられた構造を有し、少なくとも印字部112のノズル面及び印字検出部124のセンサ面に対向する部分が水平面(フラット面)をなすように構成されている。
ベルト133は、記録紙116の幅よりも広い幅寸法を有しており、ベルト面には多数の吸引穴(不図示)が形成されている。図19に示したとおり、ローラ131、132間に掛け渡されたベルト133の内側において印字部112のノズル面及び印字検出部124のセンサ面に対向する位置には吸着チャンバ134が設けられており、この吸着チャンバ134をファン135で吸引して負圧にすることによって記録紙116がベルト133上に吸着保持される。なお、吸引吸着方式に代えて、静電吸着方式を採用してもよい。
ベルト133が巻かれているローラ131、132の少なくとも一方にモータ(図24中符号188)の動力が伝達されることにより、ベルト133は図19上の時計回り方向に駆動され、ベルト133上に保持された記録紙116は図12の左から右へと搬送される。
縁無しプリント等を印字するとベルト133上にもインクが付着するので、ベルト133の外側の所定位置(印字領域以外の適当な位置)にベルト清掃部136が設けられている。ベルト清掃部136の構成について詳細は図示しないが、例えば、ブラシ・ロール、吸水ロール等をニップする方式、清浄エアーを吹き掛けるエアーブロー方式、或いはこれらの組合せなどがある。
なお、ベルト搬送部122に代えて、ローラ・ニップ搬送機構を用いる態様も考えられるが、印字領域をローラ・ニップ搬送すると、印字直後に用紙の印字面をローラが接触するので画像が滲み易いという問題があるため、本例のように、印字領域では画像面を接触させない吸着ベルト搬送が好ましい。
ベルト搬送部122により形成される用紙搬送路上において印字部112の上流側には、加熱ファン140が設けられている。加熱ファン140は、印字前の記録紙116に加熱空気を吹き付け、記録紙116を加熱する。印字直前に記録紙116を加熱しておくことにより、インクが着弾後乾き易くなる。
印字部112の各ヘッド112K,112C,112M,112Yは、当該インクジェット記録装置110が対象とする記録紙116の最大紙幅に対応する長さを有し、そのノズル面には最大サイズの記録媒体の少なくとも一辺を超える長さ(描画可能範囲の全幅)にわたりインク吐出用のノズルが複数配列されたフルライン型のヘッドとなっている(図20参照)。
ヘッド112K,112C,112M,112Yは、記録紙116の送り方向に沿って上流側から黒(K)、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)の色順に配置され、それぞれのヘッド112K,112C,112M,112Yが記録紙116の搬送方向と略直交する方向に沿って延在するように固定設置される。
ベルト搬送部122により記録紙116を搬送しつつ各ヘッド112K,112C,112M,112Yからそれぞれ異色のインクを吐出することにより記録紙116上にカラー画像を形成し得る。
このように、紙幅の全域をカバーするノズル列を有するフルライン型のヘッド112K,112C,112M,112Yを色別に設ける構成によれば、紙送り方向(副走査方向)について記録紙116と印字部112を相対的に移動させる動作を1回行うだけで(すなわち1回の副走査で)、記録紙116の全面に画像を記録することができる。これにより、記録ヘッドが紙搬送方向と直交する方向に往復動作するシャトル型ヘッドに比べて高速印字が可能であり、生産性を向上させることができる。
本例では、KCMYの標準色(4色)の構成を例示したが、インク色や色数の組合せについては本実施形態に限定されず、必要に応じて淡インク、濃インク、特別色インクを追加してもよい。例えば、ライトシアン、ライトマゼンタなどのライト系インクを吐出するインクジェットヘッドを追加する構成も可能である。また、各色ヘッドの配置順序も特に限定はない。
図19に示した印字検出部124は、印字部112の打滴結果を撮像するためのイメージセンサ(ラインセンサ又はエリアセンサ)を含み、該イメージセンサによって読み取った打滴画像からノズルの目詰まりや着弾位置誤差などの吐出特性をチェックする手段として機能する。
本例の印字検出部124には、受光面に複数の受光素子(光電変換素子)が2次元配列されてなるCCDエリアセンサを好適に用いることができる。エリアセンサは、少なくとも各ヘッド112K,112C,112M,112Yによるインク吐出幅(画像記録幅)の全域を撮像できる撮像範囲を有しているものとする。1つのエリアセンサで所要の撮像範囲を実現してもよいし、複数のエリアセンサを組み合わせて(繋ぎ合わせて)所要の撮像範囲を確保してもよい。或いはまた、エリアセンサを移動機構(不図示)によって支持し、エリアセンサを移動(走査)させることによって所要の撮像範囲を撮像する構成も可能である。
また、エリアセンサに代えてラインセンサを用いることも可能である。この場合、ラインセンサは、少なくとも各ヘッド112K,112C,112M,112Yによるインク吐出幅(画像記録幅)よりも幅の広い受光素子列(光電変換素子列)を有する構成が好ましい。
各色のヘッド112K,112C,112M,112Yにより印字されたテストパターン又は実技画像が印字検出部124により読み取られ、各ヘッドの吐出判定が行われる。吐出判定は、吐出の有無、ドットサイズ(吐出液滴量)の測定、ドット着弾位置の測定などで構成される。
印字検出部124の後段には後乾燥部142が設けられている。後乾燥部142は、印字された画像面を乾燥させる手段であり、例えば、加熱ファンが用いられる。印字後のインクが乾燥するまでは印字面と接触することは避けたほうが好ましいので、熱風を吹き付ける方式が好ましい。
後乾燥部142の後段には、加熱・加圧部144が設けられている。加熱・加圧部144は、画像表面の光沢度を制御するための手段であり、画像面を加熱しながら所定の表面凹凸形状を有する加圧ローラ145で加圧し、画像面に凹凸形状を転写する。
こうして生成されたプリント物は排紙部126から排出される。本来プリントすべき本画像(目的の画像を印刷したもの)とテスト印字とは分けて排出することが好ましい。このインクジェット記録装置110では、本画像のプリント物と、テスト印字のプリント物とを選別してそれぞれの排出部126A、126Bへと送るために排紙経路を切り換える不図示の選別手段が設けられている。なお、大きめの用紙に本画像とテスト印字とを同時に並列に形成する場合は、カッター(第2のカッター)148によってテスト印字の部分を切り離す。また、図19には示さないが、本画像の排出部126Aには、オーダー別に画像を集積するソーターが設けられる。
〔ヘッドの構造〕
次に、ヘッドの構造について説明する。色別の各ヘッド112K,112C,112M,112Yの構造は共通しているので、以下、これらを代表して符号150によってヘッドを示すものとする。
図21(a) はヘッド150の構造例を示す平面透視図であり、図21(b) はその一部の拡大図である。また、図21(c) はヘッド150の他の構造例を示す平面透視図、図22は1つの液滴吐出素子(1つのノズル151に対応したインク室ユニット)の立体的構成を示す断面図(図21(a) 中の22−22線に沿う断面図)である。
記録紙116上に印字されるドットピッチを高密度化するためには、ヘッド150におけるノズルピッチを高密度化する必要がある。本例のヘッド150は、図21(a),(b) に示したように、インク吐出口であるノズル151と、各ノズル151に対応する圧力室152等からなる複数のインク室ユニット(液滴吐出素子)153を千鳥でマトリクス状に(2次元的に)配置させた構造を有し、これにより、ヘッド長手方向(紙送り方向と直交する方向)に沿って並ぶように投影(正射影)される実質的なノズル間隔(投影ノズルピッチ)の高密度化を達成している。
記録紙116の送り方向と略直交する方向に記録紙116の全幅に対応する長さにわたり1列以上のノズル列を構成する形態は本例に限定されない。例えば、図21(a) の構成に代えて、図21(c) に示すように、複数のノズル151が2次元に配列された短尺のヘッドモジュール150’を千鳥状に配列して繋ぎ合わせることで記録紙116の全幅に対応する長さのノズル列を有するラインヘッドを構成してもよい。
各ノズル151に対応して設けられている圧力室152は、その平面形状が概略正方形となっており(図21(a),(b) 参照)、対角線上の両隅部の一方にノズル151への流出口が設けられ、他方に供給インクの流入口(供給口)154が設けられている。なお、圧力室152の形状は、本例に限定されず、平面形状が四角形(菱形、長方形など)、五角形、六角形その他の多角形、円形、楕円形など、多様な形態があり得る。
図22に示したように、各圧力室152は供給口154を介して共通流路155と連通されている。共通流路155はインク供給源たるインクタンク(不図示)と連通しており、インクタンクから供給されるインクは共通流路155を介して各圧力室152に分配供給される。
圧力室152の一部の面(図22において天面)を構成している加圧板(共通電極と兼用される振動板)156には個別電極157を備えたアクチュエータ158が接合されている。個別電極157と共通電極間に駆動電圧を印加することによってアクチュエータ158が変形して圧力室152の容積が変化し、これに伴う圧力変化によりノズル151からインクが吐出される。なお、アクチュエータ158には、チタン酸ジルコン酸鉛やチタン酸バリウムなどの圧電体を用いた圧電素子が好適に用いられる。インク吐出後、アクチュエータ158の変位が元に戻る際に、共通流路155から供給口154を通って新しいインクが圧力室152に再充填される。
入力画像から生成さるドット配置データに応じて各ノズル151に対応したアクチュエータ158の駆動を制御することにより、ノズル151からインク滴を吐出させることができる。図19で説明したように、記録紙116を一定の速度で副走査方向に搬送しながら、その搬送速度に合わせて各ノズル151のインク吐出タイミングを制御することによって、記録紙116上に所望の画像を記録することができる。
上述した構造を有するインク室ユニット153を図23に示す如く主走査方向に沿う行方向及び主走査方向に対して直交しない一定の角度θを有する斜めの列方向とに沿って一定の配列パターンで斜めの格子状に多数配列させることにより、本例の高密度ノズルヘッドが実現されている。
すなわち、主走査方向に対してある角度θの方向に沿ってインク室ユニット153を一定のピッチdで複数配列する構造により、主走査方向に並ぶように投影されたノズルのピッチPはd× cosθとなり、主走査方向については、実質的に各ノズル151が一定のピッチPで直線状に配列されたものと等価的に取り扱うことができる。このような構成により、主走査方向に並ぶように投影されるノズル列が1インチ当たり2400個(2400ノズル/インチ)におよぶ高密度のノズル構成を実現することが可能になる。
なお、印字可能幅の全幅に対応した長さのノズル列を有するフルラインヘッドで、ノズルを駆動する時には、(1)全ノズルを同時に駆動する、(2)ノズルを片方から他方に向かって順次駆動する、(3)ノズルをブロックに分割して、ブロックごとに片方から他方に向かって順次駆動する等が行われ、用紙の幅方向(用紙の搬送方向と直交する方向)に1ライン(1列のドットによるライン又は複数列のドットから成るライン)を印字するようなノズルの駆動を主走査と定義する。
特に、図23に示すようなマトリクス状に配置されたノズル151を駆動する場合は、上記(3)のような主走査が好ましい。すなわち、ノズル151-11 、151-12 、151-13 、151-14 、151-15 、151-16 を1つのブロックとし(他にはノズル151-21 、…、151-26 を1つのブロック、ノズル151-31 、…、151-36 を1つのブロック、…として)、記録紙116の搬送速度に応じてノズル151-11 、151-12 、…、151-16 を順次駆動することで記録紙116の幅方向に1ラインを印字する。
一方、上述したフルラインヘッドと用紙とを相対移動することによって、上述した主走査で形成された1ライン(1列のドットによるライン又は複数列のドットから成るライン)の印字を繰り返し行うことを副走査と定義する。
そして、上述の主走査によって記録される1ライン(或いは帯状領域の長手方向)の示す方向を主走査方向といい、上述の副走査を行う方向を副走査方向という。すなわち、本実施形態では、記録紙116の搬送方向が副走査方向であり、それに直交する方向が主走査方向ということになる。
本発明の実施に際してノズルの配置構造は図示の例に限定されない。また、本実施形態では、ピエゾ素子(圧電素子)に代表されるアクチュエータ158の変形によってインク滴を飛ばす方式が採用されているが、本発明の実施に際して、インクを吐出させる方式は特に限定されず、ピエゾジェット方式に代えて、ヒータなどの発熱体によってインクを加熱して気泡を発生させ、その圧力でインク滴を飛ばすサーマルジェット方式など、各種方式を適用できる。
〔制御系の説明〕
図24は、インクジェット記録装置110のシステム構成を示すブロック図である。同図に示したように、インクジェット記録装置110は、通信インターフェース170、システムコントローラ172、画像メモリ174、ROM175、モータドライバ176、ヒータドライバ178、プリント制御部180、画像バッファメモリ182、ヘッドドライバ184等を備えている。
通信インターフェース170は、ホストコンピュータ186から送られてくる画像データを受信する画像入力手段として機能するインターフェース部(画像入力部)である。通信インターフェース170にはUSB(Universal Serial Bus)、IEEE1394、イーサネット(登録商標)、無線ネットワークなどのシリアルインターフェースやセントロニクスなどのパラレルインターフェースを適用することができる。この部分には、通信を高速化するためのバッファメモリ(不図示)を搭載してもよい。
ホストコンピュータ186から送出された画像データは通信インターフェース170を介してインクジェット記録装置110に取り込まれ、一旦画像メモリ174に記憶される。画像メモリ174は、通信インターフェース170を介して入力された画像を格納する記憶手段であり、システムコントローラ172を通じてデータの読み書きが行われる。画像メモリ174は、半導体素子からなるメモリに限らず、ハードディスクなど磁気媒体を用いてもよい。
システムコントローラ172は、中央演算処理装置(CPU)及びその周辺回路等から構成され、所定のプログラムに従ってインクジェット記録装置110の全体を制御する制御装置として機能するとともに、各種演算を行う演算装置として機能する。すなわち、システムコントローラ172は、通信インターフェース170、画像メモリ174、モータドライバ176、ヒータドライバ178等の各部を制御し、ホストコンピュータ186との間の通信制御、画像メモリ174及びROM175の読み書き制御等を行うとともに、搬送系のモータ188やヒータ189を制御する制御信号を生成する。
また、システムコントローラ172は、印字検出部124から読み込んだテストパターンの読取データから着弾位置誤差のデータ(理想の着弾位置に対する実際の着弾位置のずれを示すデータ)やドット形状のデータ等を生成する演算処理を行うドット測定演算部172Aと、測定されたドット状態の情報から各ノズルの記録特性を示すノズル特性データを作成するノズル特性データ生成部172Bと、仮ノズルと実ノズルの対応付けを設定する仮ノズル変換部172Cと、ノズル特性に起因するスジムラを補正するための補正関数を求める補正関数演算部172Dと、求めた補正関数を用いて仮ノズルの各位置について階調値ごとの補正ノズル信号を求め、この階調値ごとに生成された補正記録素子信号列を仮ノズルの並び方向(主走査方向)に沿って所定数のブロック単位で区画することにより、各ブロックの補正記録素子信号列と入力画像の画素位置とを対応付けた補正記録素子信号テーブルを生成する補正記録素子信号テーブル生成部172Eと、補正ノズル信号の値ごとに、その階調を表現する1次元のドットパターンテーブルを作成するドットパターンテーブル作成部172Fなどの演算処理手段を含んで構成される。なお、これら符号172A〜Fで示した各演算部の処理機能はASICやソフトウエア又は適宜の組み合わせによって実現可能である。
ROM175には、システムコントローラ172のCPUが実行するプログラム及び制御に必要な各種データ(ノズル特性を検出するためのテストパターンのデータを含む)などが格納されている。ROM175は、書換不能な記憶手段であってもよいが、各種のデータを必要に応じて更新する場合は、EEPROMのような書換可能な記憶手段を用いることが好ましい。また、このROM175の記憶領域を活用することで、ROM175を仮ノズル位置と実ノズル位置の対応関係を示す情報を記憶する記憶手段として兼用したり、ドットパターンテーブルを記憶するドットパターン格納部としても兼用することが可能である。
画像メモリ174は、画像データの一時記憶領域として利用されるとともに、プログラムの展開領域及びCPUの演算作業領域としても利用される。
モータドライバ176は、システムコントローラ172からの指示に従って搬送系のモータ188を駆動するドライバ(駆動回路)である。ヒータドライバ178は、システムコントローラ172からの指示に従って後乾燥部142等のヒータ189を駆動するドライバである。
プリント制御部180は、システムコントローラ172の制御に従い、画像処理部190と協働して画像メモリ174内の画像データ(多値の入力画像のデータ) から吐出制御用の信号を生成するための各種加工、補正などの処理を行う信号処理手段として機能するとともに、生成したインク吐出データをヘッドドライバ184に供給してヘッド150の吐出駆動を制御する記録制御手段として機能する。
画像処理部190は、入力された画像データからインク色別のドット配置データを生成する信号処理手段であり、入力画像データに対して上述の多値誤差拡散処理及び濃度パターン処理によるハーフトーニング処理を行って高品質のドット配置を決定する画像処理装置(画像処理手段)として機能する。
すなわち、本例の画像処理部190は、濃度変換処理(UCR処理や色変換を含む)及び必要な場合には画素数変換処理、濃度補正処理、並びに、多値の濃度データから2値(又は多値)のドット配置データに変換するハーフトーニング処理(中間階調処理)等を行う信号処理手段である。
なお、図24において、画像処理部190は、システムコントローラ172やプリント制御部180とは別個のものとして図示しているが、例えば画像処理部190はシステムコントローラ172あるいはプリント制御部180に含まれて、その一部を構成するようにしてもよい。
また、プリント制御部180は、画像処理部190で生成されたドット配置データに基づいてインクの吐出データ(ヘッド150のノズルに対応するアクチュエータの制御信号)を生成するインク吐出データ生成部180Aと、駆動波形生成部180Bとを含んで構成される。これら各機能ブロック(180A〜B)は、ASICやソフトウエア又は適宜の組合せによって実現可能である。
インク吐出データ生成部180Aにて生成されたインク吐出データはヘッドドライバ184に与えられ、ヘッド150のインク吐出動作が制御される。
駆動波形生成部180Bは、ヘッド150の各ノズル151に対応したアクチュエータ158(図22参照)を駆動するための駆動信号波形を生成する手段であり、該駆動波形生成部180Bにて生成された信号(駆動波形)は、ヘッドドライバ184に供給される。なお、駆動波形生成部180Bから出力される信号は、デジタル波形データであってもよいし、アナログ電圧信号であってもよい。
プリント制御部180には画像バッファメモリ182が備えられており、プリント制御部180における画像データ処理時に画像データやパラメータなどのデータが画像バッファメモリ182に一時的に格納される。なお、図24において画像バッファメモリ182はプリント制御部180に付随する態様で示されているが、画像メモリ174と兼用することも可能である。また、プリント制御部180とシステムコントローラ172とを統合して1つのプロセッサで構成する態様も可能である。
画像入力から印字出力までの処理の流れを概説すると、印刷すべき画像のデータは、通信インターフェース170を介して外部から入力され、画像メモリ174に蓄えられる。この段階では、例えば、RGBの多値の画像データが画像メモリ174に記憶される。
入力画像のデータ形態は、特に限定されないが、例えば、8bitのRGBデータとする。この入力画像に対して、ルックアップテーブルによる濃度変換処理を行い、プリンタの持つ各インク色に対応した多値(例えば、256階調)の階調値データI(x,y)に変換する。なお、(x,y)は画素の位置を表し、各画素について階調値が割り当てられる。
ここでは、入力画像の解像度とプリンタの解像度(ノズル解像度)はドットパターンサイズの比率(自然数倍)であるものとする。なお、比率が一致しない場合は、比率に合わせて、入力画像について画素数変換の処理が行われる。
濃度変換処理は一般的な処理であり、下色除去(UCR:Under color Removal)処理、或いはライトインク(同色系の淡インク)を使用するシステムの場合におけるライトインクへの分配処理などが含まれる。
本例の場合、C(シアン)、M(マゼンタ)、Y(イエロー)、K(黒)の4色インクの多値画像データに変換される。或いはまた、上記4色に加えてLC(ライトシアン),LM(ライトマゼンタ)などの他のインクを含むシステムの場合は、そのインク色を含む濃度データに変換される。
インクジェット記録装置110では、インク(色材) による微細なドットの打滴密度やドットサイズを変えることによって、人の目に疑似的な連続階調の画像を形成するため、入力されたデジタル画像の階調(画像の濃淡)をできるだけ忠実に再現するようなドットパターンに変換する必要がある。そのため、画像メモリ174に蓄えられた元画像(RGB)のデータは、システムコントローラ172を介してプリント制御部180に送られ、画像処理部190にて、多値誤差拡散処理及び濃度パターン処理を組み合わせた処理によって、インク色ごとのドット配置データに変換される。
すなわち、本例の場合、K,C,M,Yの4色のドット配置データに変換される。こうして、生成されたドット配置データは、画像バッファメモリ182に蓄えられる。この色別ドット配置データは、ヘッド150のノズルからインクを吐出するためのKCMY打滴データに変換され、印字されるインク吐出データが確定する。
ヘッドドライバ184は、プリント制御部180から与えられるインク吐出データ及び駆動波形の信号に基づき、印字内容に応じてヘッド150の各ノズル151に対応するアクチュエータ158を駆動するための駆動信号を出力する。ヘッドドライバ184にはヘッドの駆動条件を一定に保つためのフィードバック制御系を含んでいてもよい。
こうして、ヘッドドライバ184から出力された駆動信号がヘッド150に加えられることによって、該当するノズル151からインクが吐出される。記録紙116の搬送速度に同期してヘッド150からのインク吐出を制御することにより、記録紙116上に画像が形成される。
上記のように、プリント制御部180における所要の信号処理を経て生成されたインク吐出データ及び駆動信号波形に基づき、ヘッドドライバ184を介して各ノズルからのインク液滴の吐出量や吐出タイミングの制御が行われる。これにより、記録紙116(記録媒体)上に所望のドットサイズやドット配置が実現される。
印字検出部124は、図19で説明したように、イメージセンサを含むブロックであり、記録紙116に印字された画像を読み取り、所要の信号処理などを行って印字状況(吐出の有無、着弾位置誤差、ドット形状、光学濃度など)を検出し、その検出結果をプリント制御部180及びシステムコントローラ172に提供する。
プリント制御部180は、必要に応じて印字検出部124から得られる情報に基づいてヘッド150に対する各種補正を行うとともに、必要に応じて予備吐出や吸引、ワイピング等のクリーニング動作(ノズル回復動作)を実施する制御を行う。
本例の場合、印字検出部124とドット測定演算部172A及びノズル特性データ生成部172Bの組合せが「記録素子特性情報取得手段」に相当し、仮ノズル変換部172Cが「仮記録素子変換手段」に相当する。また、補正関数演算部172Dが「補正関数演算手段」に相当し、補正ノズル信号生成部172Eが「補正記録素子信号演算手段」と「補正記録素子信号テーブル生成手段」に相当する。ドットパターンテーブル生成部172Fは、「1次元ドットパターンテーブル生成手段」に相当する。プリント制御部180或いはプリント制御部180とシステムコントローラ172の組合せが「記録制御手段」に相当している。画像処理部190は、「多値誤差拡散処理手段」及び「1次元ドットパターン変換手段」として機能する。
図25は、上記構成のインクジェット記録装置110による1次元ドットパターンテーブル作成手順を示すフローチャートある。なお、図示の1次元ドットパターンテーブル作成処理フローの開始タイミングは特に限定されず、装置の製造時、ヘッド交換時、メンテナンス時、装置起動時、累積稼働時間の管理に基づく所定のタイミング、或いは、オペレーターによる随時の指定タイミングなど、多様な場合があり得る。
ドットパターンテーブルの作成に際しては、まず、各ノズルの記録特性を把握するために、被記録媒体上に所定のテストパターンを印字する(ステップS102)。テストパターンの形態は特に限定されないが、各ノズルによって記録されるドットの着弾位置やドット形状(ドット径)等を計測し得るパターンであることが望ましい。
続いて、テストパターンの印字結果を読み取り、着弾位置ずれ、吐出量異常など、ノズル特性情報を取得する(ステップS104)。得られたノズル特性情報を基に、図4で説明した着弾位置の交差が発生しているか否かの判断を行い(図25のステップS106)、交差が発生している場合には(YES判定時)、図5で説明したように、着弾ドットの隣接関係とノズル位置の隣接関係が保存される仮ノズル列を定義し、実ノズル位置と仮ノズル位置の対応関係を示す情報を記憶する(図25のステップS108)。一方、ステップS106において着弾位置の交差が発生していない場合は、ステップS108の処理を省略してステップS110に進む。
次いで、ステップS110において、ノズル特性に起因するスジムラを近隣ノズルとの相関によって補正するための補正関数を求める。具体的には、図6で説明したように、最適化計算の手法を用いて多項式の係数を決定する演算を行う。
このようにして求めた補正関数を用いて、全画素均一な階調値を有する単一濃度画像(いわゆるベタ画像)のデータに対して補正を適用し、各ノズル位置の補正ノズル信号を求め、その結果を画素位置に対応するブロックに区画して補正ノズル信号テーブルとする(図25のステップS112)。入力の階調値を全階調値に変更しながら、同様の演算を行うことにより、階調値ごとの補正ノズル信号テーブルを得る(図9参照)。
こうして、得られた補正ノズル信号テーブルを記憶部(補正ノズル信号テーブル記憶部)に記憶する(図25のステップS114)。
続いて、補正ノズル信号の値ごとに、その値が示す階調を表現する1次元のドット列を生成し、これを1次元ドットパターンテーブルとする(ステップS116)。そして、得られた1次元ドットパターンテーブルを記憶部(1次元ドットパターンテーブル記憶部)に記憶して処理を終了する(ステップS118)。
なお、図25では、ステップS106において着弾位置の交差の有無を判断し、交差が発生している場合に限り、仮ノズルを設定する例を述べたが、着弾位置の交差が発生していない場合には、仮ノズルと実ノズルが等しい(仮ノズル位置=実ノズル位置)という対応関係を定義するという構成も実質的に同等な処理である。
図26は、本例のインクジェット記録装置110による画像記録動作の流れを示すフローチャートある。図示のように、まず、画像形成の対象となる画像の多値画像データが入力され(ステップS202)、多値誤差拡散処理が行われる(ステップS204)。次いで、得られた多値画像データに対して、補正ノズル信号テーブルを参照し、各画素の階調値をノズル配列方向に並ぶ補正されたノズル信号列に変換する(ステップS206)。
続いて、この各位置の補正されたノズル信号に対して、1次元ドットパターンテーブルを参照し、乱数の発生に従って特定される読出位置の1次元ドット列を出力する(ステップS208)。こうして、多値画像データは、ドット画像(ドット配置データ)に変換される。
仮ノズル列が定義されている場合には、仮ノズル位置から実ノズル位置に戻す変換の処理が行われた後(ステップS210)、ドット画像に基づいて各ノズルの駆動が行われる(ステップS212)。
図27は、本例のインクジェット記録装置110における画像処理に関連する要部ブロック図であり、図28は、図27に示した濃度パターン処理部218の詳細な構成を示すブロック図である。
画像入力部210は、入力画像のデータを取り込むインターフェース部である。画像入力部210から入力された多値画像データは入力画像記憶部212に記憶される。必要に応じて色変換や画素数変換などの処理が行われ、入力画像記憶部212には、多値誤差拡散処理部214に入力する前の多値画像データ(図1で説明した画像Aに相当)が記憶される。
多値誤差拡散処理部214は、誤差加算部214Aと、量子化判定部214Bと、発生誤差演算部214Cと、誤差記憶部214Dとを含んで構成される。誤差加算部214Aは、入力画像記憶部212から読み出した1画素8ビット(256階調)で表現される多値画像データの入力値と、既に量子化された画素で発生した誤差のうち注目画素位置に拡散された累積誤差(誤差記憶部214Dに記憶されている値)とを加算する演算を行う。
誤差加算部214Aの演算結果は量子化判定部214Bに入力される。量子化判定部214Bは、誤差加算部214Aから得た多値データを所定階調数(例えば、階調数b=16)の階調値に量子化を行う。量子化結果は、多値量子化画像記憶部216に格納される。発生誤差演算部214Cは、量子化判定部214Bで量子化した量子化値に対して、量子化前の多値データ(誤差加算部214Aの出力値)との誤差を演算する。発生誤差演算部214Cで計算された誤差は、注目画素の周囲の未量子化画素に対して所定の分配比率で配分され、誤差記憶部214Dに記憶される。
入力画像記憶部212に記憶されている多値画像データの全画素について順次上記の量子化処理を行うことで、各画素が量子化され、階調数bの多値画像データ(図1で説明した画像B)に変換される。この階調数bの多値画像データは、多値量子化画像記憶部216に記憶される。
続いて、濃度パターン処理部218による処理が行われる。濃度パターン処理部218は、図28に示すように、補正ノズル信号変換部222、補正ノズル信号テーブル記憶部224、1次元ドットパターン変換部226、1次元ドットパターンテーブル記憶部228、1次元ドットパターン開始位置決定部230、1次元ドットパターン変換結果一次記憶部232を含んで構成される。
補正ノズル信号変換部222は、多値誤差拡散処理部214(図27参照)で生成された多値画像データの各画素について、補正ノズル信号テーブル記憶部224に記憶されている補正ノズル信号テーブルを参照して、該当するノズル位置に対応した補正ノズル信号列に変換する処理を行う。
1次元ドットパターン変換部226は、各ノズル位置に対応した補正ノズル信号列の各値について、1次元ドットパターンテーブル記憶部228に記憶されている1次元ドットパターンテーブルを参照して、1次元のドット列に変換する処理を行う。
1次元ドットパターン開始位置決定部230は、乱数の発生手段を含み、1次元ドットパターンテーブルの中から所定ドット画素数分のドットパターンを読み出すときの読出位置(開始位置)を決定する位置決定手段として機能する。また、この1次元ドットパターン開始位置決定部230は、乱数の発生に基づいて指定される開始位置の候補のドット列と、1次元ドットパターン変換結果一次記憶部232に記憶されている既変換結果のドット列との相関を評価し、ドットの分布が所定の平準を維持できているか否かを判定して、開始位置の候補の採否を決定する手段として機能する。
1次元ドットパターン変換部226による変換結果(すなわち、1次元ドットパターン変換部226から出力された1次元のドットパターン)は、1次元ドットパターン変換結果一次記憶部232に記憶されるとともに、図27のドット画像記憶部240に記憶される。多値画像データの全画素について、上述のようにしてドットパターンへの変換を行うことにより、ドット画像(ドット配置データ)が完成する。このドット配置データをもとに、各ノズルの駆動が行われるが、仮ノズルを導入している場合には、ドット配置データのドット画素の位置と実ノズル位置との対応関係を元に戻すために、実ノズル位置変換部242によって、仮ノズル位置から実ノズル位置への位置の変換を行う。
具体的には、仮ノズルを導入した際に、仮ノズル位置と実ノズル位置との対応関係(変換情報)を記憶しておいた対応情報格納部246の情報を参照して、位置関係を入れ換える処理を行う。こうして、実ノズル位置と対応付けられたドット配置データを基に、各ノズルのアクチュエータ(図22の符号158)を駆動するためのインク吐出データが生成される。
なお、図27に記載した各記憶部(212、214D、240)、並びに図28に記載した記憶部(232)は、図24で説明した画像メモリ174や画像バッファメモリ182等の記録手段の記憶領域を活用することで実現可能である。また、図27に示した対応情報格納部246や図28に示した補正ノズル信号テーブル記憶部224、1次元ドットパターンテーブル記憶部228は、図24で説明したROM175(EEPROMにより構成)の記憶領域を活用することによって実現することが可能である。
上記構成のインクジェット記録装置110によれば、ノズルの吐出不良(不吐出、着弾位置ズレ、吐出量異常等)が発生した場合にも、かかるノズル特性に起因する画質低下の発生が抑制された良好な画像を得ることができる。
上記実施形態では、フルライン型の記録ヘッドを用いたインクジェット記録装置を例示したが、本発明の適用範囲はこれに限定されず、被記録媒体の幅に満たない長さのノズル列を有する短尺ヘッドを用いて、複数回走査を行うことにより画像形成を行う場合にも本発明は適用可能である。特に、本発明は記録ヘッドと被記録媒体の相対的な移動を1回だけ行うことによって、当該記録ヘッドのノズル列(記録素子列)がカバーする相対移動の範囲(走査範囲)について画像記録を完了させる、いわゆるシングルパス方式の画像形成について適用することが有益である。
また、上記実施の形態では画像形成装置の一例としてインクジェット記録装置を説明したが、本発明の適用範囲はこれに限定されない。インクジェット方式以外では、ラインヘッドを有する熱転写記録装置(サーマル素子を記録素子とする装置)、LED電子写真プリンタ、LEDライン露光ヘッドを有する銀塩写真方式プリンタ(LED素子を記録素子とする装置)など各種方式の画像形成装置についても本発明を適用することが可能である。
〔付記〕
上記に詳述した発明の実施形態の記載から把握されるとおり、本明細書では下記に示す発明を含む多様な技術思想の開示を含んでいる。
発明(1):複数の記録素子を第1の方向に対して配列させてなる記録ヘッドと被記録媒体とを前記第1の方向と略直交する第2の方向に相対移動させるとともに、前記記録素子の駆動によって前記被記録媒体上にドットを記録して画像を形成するために、前記画像に対応した多値画像データの各画素の階調値を当該階調値に応じたドット配置によるドットパターンに変換する画像処理装置において、前記多値画像データの各画素についてその画素位置の記録を担う複数の前記記録素子が対応付けられ、前記記録ヘッドの各記録素子の記録特性に起因するスジムラを近隣の記録素子との相関によって補正するように、各記録素子位置について階調値ごとに定められた補正記録素子信号を規定した補正記録素子信号テーブルを格納しておく補正記録素子信号テーブル記憶手段と、前記補正記録素子信号の値が示す階調を表現する1次元のドット配列を前記補正記録素子信号の値ごとに規定した1次元ドットパターンテーブルを格納しておく1次元ドットパターンテーブル記憶手段と、前記多値画像データの画素の位置とその階調値に基づいて前記補正記録素子信号テーブルから該当する補正記録素子信号を選択することにより、前記多値画像データから前記複数の記録素子の各位置に対応した1次元の信号列に変換する補正記録素子信号変換手段と、前記補正記録素子信号変換手段で得られた前記1次元の信号列の各値に対応する前記1次元ドットパターンテーブルから所定のドット画素数分のドットパターンを読み出すことにより、前記1次元の信号列の各値をそれぞれ前記第2の方向に沿った1次元のドットパターンに変換する1次元ドットパターン変換手段と、を備えたことを特徴とする画像処理装置。
「複数の記録素子を第1の方向に対して配列」とは、複数の記録素子の配列を第1の方向に沿った直線上に投影(正射影)させたときに、投影記録素子が第1の方向に沿って並ぶように配置されることを意味しており、複数の記録素子を第1の方向に沿って直線状に並べる態様に限らず、第1の方向に対して直交しない斜めの方向に沿って並べる態様、複数の記録素子を2次元配列する構成によって、実質的に第1の方向に沿って複数の記録素子が並ぶように投影される記録素子列を成す態様などが含まれる。
上記構成の発明(1)によれば、多値の階調値を濃度パターン(ドットパターン)に変換するために必要なドットパターンテーブルが階調値ごとに1次元のドット配列のデータとなり、従来の2次元のドットパターンテーブルを用いる態様と比較して、データ量を大幅に削減することができる。これにより、ドットパターンへの変換処理に必要な記憶容量を削減することができる。
発明(2):前記1次元の信号列の各値に対応する1次元ドットパターンテーブルから前記所定のドット画素数分のドットパターンを読み出すときの読出位置を決定する位置決定手段を備えることを特徴とする発明(1)記載の画像処理装置。
発明(3):前記位置決定手段は、乱数を発生させる乱数発生手段を含んで構成されることを特徴とする発明(2)記載の画像処理装置。
乱数の発生に基づいて読出位置を決定することにより、選択されるドットパターンの位置がランダムに変更されることになり、同一パターンが連続することによる規則的なムラの発生が抑制される。
発明(4):前記多値画像データは、前記第2の方向に隣接する画素間で前記第1の方向に半画素分画素の位置がシフトした構成の画像データであり、前記多値画像データの画素配列の形態に対応して、奇数列用と偶数列用の2種類の補正記録素子信号テーブルが用いられることを特徴とする発明(1)乃至(3)の何れか1項に記載の画像処理装置。
濃度パターン処理へ入力する多値画像データの画素配列が第2の方向の画素列間で、第1の方向に半画素分ずれている構成により、各画素の階調値を補正記録素子信号変換手段と1次元ドットパターン変換手段によって2次元のドットパターンに変換した結果として得られるドットパターンが矩形であっても、ドットパターンの境界に属するドット列(スジムラ補正性能が低下する画素位置)が直線状に連続してならばないため、人間の視覚特性が斜め方向に対して感覚が鈍いことから、ドットパターンのブロックの繰り返しによる周期的なムラが視認され難くなる。
発明(5):前記1次元ドットパターン変換手段によって変換された結果のドットパターンを記憶する変換結果記憶手段を備え、前記1次元の信号列の各値をそれぞれ前記第2の方向に沿った1次元のドットパターンに変換する際に、既に決定している変換済みのドット配置との相関を考慮して、前記第2の方向のドット画素位置間で前記第1の方向に並ぶドットの分布が所定の平準を維持することができるドットパターンが選択されることを特徴とする発明(1)乃至(4)の何れか1項に記載の画像処理装置。
例えば、注目する位置について乱数の発生に基づいて1次元ドットパターンテーブルの中から変換候補となるドットパターン(ドット列)を抽出し、この変換候補のドット列と既変換結果のドット列(好ましくは、複数のドット列)との相関を計算して、第2の方向の位置に関してドットの分布の平準を評価し、所定の平準を超える場合には変換候補を破棄して、再度変換候補を選び直し、所定の平準が達成されるドット列を採用する。
発明(6):多値の入力画像に対して多値誤差拡散の処理を行い、前記入力画像よりも階調数の少ない前記多値画像データを生成する多値誤差拡散処理手段を含むことを特徴とする発明(1)乃至(5)の何れか1項に記載の画像処理装置。
補正記録素子信号変換手段と1次元ドットパターン変換手段とを含んで構成される濃度パターン処理の前段に、多値誤差拡散処理手段を設け、多値誤差拡散手段によって得られた多値画像データを濃度パターン処理へ入力する構成を採用してもよい。
発明(7):複数の記録素子を第1の方向に対して配列させてなる記録ヘッドと被記録媒体とを前記第1の方向と略直交する第2の方向に相対移動させるとともに、前記記録素子の駆動によって前記被記録媒体上にドットを記録して画像を形成するために、前記画像に対応した多値画像データの各画素の階調値を当該階調値に応じたドット配置によるドットパターンに変換する画像処理方法において、前記多値画像データの各画素についてその画素位置の記録を担う複数の前記記録素子の対応付けを行い、前記記録ヘッドの各記録素子の記録特性に起因するスジムラを近隣の記録素子との相関によって補正するように、各記録素子位置について階調値ごとに定められた補正記録素子信号を規定した補正記録素子信号テーブルを用意するとともに、前記補正記録素子信号の値が示す階調を表現する1次元のドット配列を前記補正記録素子信号の値ごとに規定した1次元ドットパターンテーブルを用意し、前記多値画像データの画素の位置とその階調値に基づいて前記補正記録素子信号テーブルから該当する補正記録素子信号を選択することにより、前記多値画像データから前記複数の記録素子の各位置に対応した1次元の信号列に変換する補正記録素子信号変換工程と、前記補正記録素子信号変換工程で得られた前記1次元の信号列の各値に対応する前記1次元ドットパターンテーブルから所定のドット画素数分のドットパターンを読み出すことにより、前記1次元の信号列の各値をそれぞれ前記第2の方向に沿った1次元のドットパターンに変換する1次元ドットパターン変換工程と、を備えたことを特徴とする画像処理方法。
発明(8):前記1次元の信号列の各値に対応する1次元ドットパターンテーブルから前記所定のドット画素数分のドットパターンを読み出すときの読出位置を乱数に基づいて決定する工程を含むことを特徴とする発明(7)記載の画像処理方法。
発明(9):前記多値画像データは、前記第2の方向に隣接する画素間で前記第1の方向に半画素分画素の位置がシフトした構成の画像データであり、前記多値画像データの画素配列の形態に対応して、奇数列用と偶数列用の2種類の補正記録素子信号テーブルが用いられることを特徴とする発明(7)又は(8)記載の画像処理方法。
発明(10):前記1次元の信号列の各値をそれぞれ前記第2の方向に沿った1次元のドットパターンに変換する際に、既に決定している変換済みのドット配置との相関を考慮して、前記第2の方向のドット画素位置間で前記第1の方向に並ぶドットの分布が所定の平準を維持することができるドットパターンを選択することを特徴とする発明(7)乃至(9)の何れか1項に記載の画像処理方法。
発明(11):多値の入力画像に対して多値誤差拡散の処理を行い、前記入力画像よりも階調数の少ない階調数の前記多値画像データを生成する工程を含むことを特徴とする発明(7)乃至(10)の何れか1項に記載の画像処理方法。
発明(12):複数の記録素子を第1の方向に対して配列させてなる記録ヘッドと、前記記録ヘッドと被記録媒体とを前記第1の方向と略直交する第2の方向に相対移動させる相対的に移動させる相対移動手段と、前記記録ヘッドの各記録素子により前記被記録媒体上に記録されるドットの記録状態に基づき、各記録素子の記録特性を表す特性情報を取得する記録素子特性情報取得手段と、前記記録ヘッドにおける前記第1の方向に対する前記記録素子の隣接関係と前記被記録媒体上に記録されるドットの隣接関係が保存されるような仮想的な記録素子の配列を設定し、当該仮想的な記録素子位置と実際の記録素子位置の対応関係を記憶する仮記録素子変換手段と、前記記録ヘッドの各記録素子の記録特性に起因するスジムラを近隣記録素子との相関によって補正するように、前記仮想的な各記録素子に対応する画素の信号を補正する補正関数を求める補正関数演算手段と、各画素が多値の階調値によって表現される多値画像データのうち、全画素均一な階調値を有する単一濃度画像のデータの入力に対して、前記補正関数を用いた補正を行い、前記仮想的な記録素子の各位置について階調値ごとの補正記録素子信号を求める補正記録素子信号演算手段と、前記補正記録素子信号演算手段により階調値ごとに生成された補正記録素子信号を、前記第1の方向に沿って所定数のブロック単位で区画することによって得られる各ブロックの補正記録素子信号列と前記入力された単一濃度画像のデータの画素位置とを対応付けた補正記録素子信号テーブルを生成する補正記録素子信号テーブル生成手段と、前記補正記録素子信号テーブル生成手段によって階調値ごとに生成された前記補正記録素子信号テーブルを格納する前記補正記録素子信号テーブル記憶手段と、前記補正記録素子信号の値が示す階調を表現する1次元のドット配列を生成し、前記補正記録素子信号の各値に対応した1次元ドットパターンテーブルを生成する1次元ドットターンテーブル生成手段と、前記1次元ドットターンテーブル生成手段によって階調値ごとに生成された前記1次元ドットターンテーブルを格納する前記1次元ドットターンテーブル記憶手段と、前記記録ヘッドによる画像形成の対象として入力された多値画像データの画素の位置と階調値に基づいて、前記補正記録素子信号テーブルから該当する補正記録素子信号を選択することにより、当該入力された多値画像データから前記複数の記録素子の各位置に対応した1次元の信号列に変換する補正記録素子信号変換手段と、前記補正記録素子信号変換手段で得られた前記1次元の信号列の各値に対応する1次元ドットパターンテーブルから所定のドット画素数分のドットパターンを読み出すことにより、前記1次元の信号列の各値をそれぞれ前記第2の方向に沿った1次元のドットパターンに変換する1次元ドットパターン変換手段と、前記1次元ドットパターン変換手段によって生成されたドット配置データと前記仮記録素子変換手段によって規定された前記仮想的な記録素子位置と実際の記録素子位置の対応関係に基づいて、前記実際の記録素子の駆動を制御する記録制御手段と、を備えたことを特徴とする画像形成装置。
この発明(12)は、発明(1)で述べた画像処理装置と、補正記録素子信号テーブルを作成する手段、及び1次元ドットパターンテーブルを作成する手段を具備して成る画像形成装置を提供する。
「記録素子特性情報取得手段」は、予め記録素子の記録特性に関する情報をメモリ等の記憶手段に格納しておき、必要な情報を読み出すことによって情報を取得してもよいし、実際にテストパターン等を印字してその印字結果を読み取り、解析処理を行って記録特性の情報を取得してもよい。記録特性が経時的に変化することに鑑み、適宜のタイミングで情報を更新する態様が好ましい。
本発明に係る画像形成装置の一態様としてのインクジェット記録装置は、ドットを形成するためのインク液滴を吐出するノズル及び吐出圧を発生させる圧力発生手段(圧電素子や加熱素子など)を含む液滴吐出素子(「記録素子」に相当)を複数配列させた液滴吐出素子列を有する液体吐出ヘッド(「記録ヘッド」に相当)と、画像データから生成されたインク吐出データに基づいて記録ヘッドからの液滴の吐出を制御する吐出制御手段とを備え、前記ノズルから吐出した液滴によって被記録媒体上に画像を形成する。
記録ヘッドの構成例として、被記録媒体の全幅に対応する長さにわたって複数の記録素子を配列させた記録素子列を有するフルライン型のヘッドを用いることができる。この場合、被記録媒体の全幅に対応する長さに満たない記録素子列を有する比較的短尺の記録ヘッドモジュールを複数個組み合わせ、これらを繋ぎ合わせることで全体として被記録媒体の全幅に対応する長さの記録素子列を構成する態様がある。
フルライン型(ページワイド)のヘッドは、通常、被記録媒体の相対的な送り方向(相対的搬送方向)と直交する方向に沿って配置されるが、搬送方向と直交する方向に対して、ある所定の角度を持たせた斜め方向に沿って記録ヘッドを配置する態様もあり得る。
「被記録媒体」は、記録ヘッドの作用によって画像の記録を受ける媒体(被画像形成媒体、記録媒体、受像媒体、インクジェット記録装置の場合の吐出媒体、被吐出媒体など呼ばれ得るもの)であり、連続用紙、カット紙、シール用紙、OHPシート等の樹脂シート、フイルム、布、中間転写体、インクジェット記録装置によって配線パターンが印刷されるプリント基板、その他材質や形状を問わず、様々な媒体を含む。
「相対移動手段」は、停止した(固定された)記録ヘッドに対して被記録媒体を搬送する態様、停止した被記録媒体に対して記録ヘッドを移動させる態様、或いは、記録ヘッドと記録媒体の両方を移動させる態様のいずれをも含む。
インクジェットヘッドによって、カラー画像を形成する場合は、複数色のインク(記録液)の色別に記録ヘッドを配置してもよいし、1つの記録ヘッドから複数色のインクを吐出可能な構成としてもよい。
また、本発明は、上記のフルライン型のヘッドに限らず、短尺の記録ヘッドを複数回走査させることによって記録を行う方式についても適用可能である。
発明(12)に係る画像形成装置において、発明(2)〜(6)で述べた更なる特徴を付加する構成も可能である。
発明(13):複数の記録素子を第1の方向に対して配列させてなる記録ヘッドと被記録媒体とを前記第1の方向と略直交する第2の方向に相対移動させるとともに、前記記録素子の駆動によって前記被記録媒体上にドットを記録して画像を形成する画像形成方法であって、前記記録ヘッドの各記録素子により前記被記録媒体上に記録されるドットの記録状態に基づき、各記録素子の記録特性を表す特性情報を取得する記録素子特性情報取得工程と、前記記録ヘッドにおける前記第1の方向に対する前記記録素子の隣接関係と前記被記録媒体上に記録されるドットの隣接関係が保存されるような仮想的な記録素子の配列を設定し、当該仮想的な記録素子位置と実際の記録素子位置の対応関係を記憶する仮記録素子変換工程と、前記記録ヘッドの各記録素子の記録特性に起因するスジムラを近隣記録素子との相関によって補正するように、前記仮想的な各記録素子に対応する画素の信号を補正する補正関数を求める補正関数演算工程と、各画素が多値の階調値によって表現される多値画像データのうち、全画素均一な階調値を有する単一濃度画像のデータの入力に対して、前記補正関数を用いた補正を行い、前記仮想的な記録素子各位置について階調値ごとの補正記録素子信号を求め補正記録素子信号演算工程と、前記補正記録素子信号演算工程により階調値ごとに生成された補正記録素子信号を、前記第1の方向に沿って所定数のブロック単位で区画することによって得られる各ブロックの補正記録素子信号列と前記入力された単一濃度画像のデータの画素位置とを対応付けた補正記録素子信号テーブルを生成する補正記録素子信号テーブル生成工程と、前記補正記録素子信号テーブル生成工程によって階調値ごとに生成された前記補正記録素子信号テーブルを記憶する前記補正記録素子信号テーブル記憶工程と、前記補正記録素子信号の値が示す階調を表現する1次元のドット配列を生成し、前記補正記録素子信号の各値に対応した1次元ドットパターンテーブルを生成する1次元ドットターンテーブル生成工程と、前記1次元ドットターンテーブル生成工程によって階調値ごとに生成された前記1次元ドットターンテーブルを記憶する前記1次元ドットターンテーブル記憶工程と、前記記録ヘッドによる画像形成の対象として入力された多値画像データの画素の位置と階調値に基づいて、前記補正記録素子信号テーブルから該当する補正記録素子信号を選択することにより、当該入力された多値画像データから前記複数の記録素子の各位置に対応した1次元の信号列に変換する補正記録素子信号変換工程と、前記補正記録素子信号変換工程で得られた前記1次元の信号列の各値に対応する1次元ドットパターンテーブルから所定のドット画素数分のドットパターンを読み出すことにより、前記1次元の信号列の各値をそれぞれ前記第2の方向に沿った1次元のドットパターンに変換する1次元ドットパターン変換工程と、前記1次元ドットパターン変換工程によって生成されたドット配置データと前記仮記録素子変換工程によって規定された前記仮想的な記録素子位置と実際の記録素子位置の対応関係に基づいて、前記実際の記録素子の駆動を制御する記録制御工程と、を備えたことを特徴とする画像形成方法。
20,40,50…ドットパターン、110…インクジェット記録装置、112…印字部、112K,112C,112M,112Y…ヘッド、114…インク貯蔵/装填部、116…記録紙、122…ベルト搬送部、124…印字検出部、150…ヘッド、151…ノズル、152…圧力室、153…インク室ユニット、158…アクチュエータ、172…システムコントローラ、172A…ドット測定演算部、172B…ノズル特性データ生成部、172C…仮ノズル変換部、172D…補正関数演算部、172E…ドットパターンテーブル生成部、214…多値誤差拡散処理部、218…濃度パターン処理部、222…補正ノズル信号変換部、224…補正ノズル信号テーブル記憶部、226…1次元ドットパターン変換部、228…1次元ドットパターンテーブル記憶部、242…実ノズル位置変換部、246…対応情報格納部