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JP4703241B2 - 免震装置 - Google Patents

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JP4703241B2 JP2005115369A JP2005115369A JP4703241B2 JP 4703241 B2 JP4703241 B2 JP 4703241B2 JP 2005115369 A JP2005115369 A JP 2005115369A JP 2005115369 A JP2005115369 A JP 2005115369A JP 4703241 B2 JP4703241 B2 JP 4703241B2
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Description

本発明は、地震による載置物の落下や転倒を防止して載置物の破損を防止する免震装置に関するもので、例えば、図書館における書架に免震性を持たせるのに、あるいは、美術品、学術的価値のある資料などの保管に好適なものである。
従来、例えば、図書館などに設置されている自立式の開架書架として、地震時の利用者の身の安全を図り、あるいは、書架の転倒防止、収蔵書籍の落下防止のために、免震自立棚が提案され、普及しつつある(例えば、特許文献1、特許文献2、特許文献3参照)。特許文献1記載の発明は、地震時に棚を床に対して相対移動可能とするとともに、ばねなどを有する移動制限手段を設け、並置した一対の棚相互を上部で連結することによって自立できるようにしたものである。特許文献2記載の発明は、可動手段によって棚を移動可能にするとともに、通常は移動不能にロックしておき、感震装置が地震の揺れを感知したときロックを解除して免震機能を発揮するようにしたものである。特許文献3記載の発明は、可動台車の上に棚を一方向に移動可能に吊り下げることにより免震機能を発揮するようにしたものである。
上記各特許文献記載の発明は、自立棚すなわち開架式の棚として構成されたものであるが、書籍を出し入れしようとする書架の前面にのみ作業用通路を形成することができるようにした閉架書架として、免震機能つき移動棚も用いられるようになってきた。
開架書架にせよ閉架書架にせよ、従来の免震機能を持った書架ないしは棚は、もともと設計の段階から免震機能を持ったものとして設計され製造されるものである。既に存在している免震性のない書架ないしは棚については、地震などによって設置床が大きく揺れた場合、棚の転倒防止効果、収納物品の落下防止効果を期待することはできない。したがって、既存の書架ないしは棚に免震機能を持たせようとすると、既存の書架ないしは棚を撤去して、免震機能を有する書架ないしは棚に入れ替えなければならず、大幅なコスト高になる難点がある。また、免震機能つきの書架ないしは棚に入れ替えるには、設置工事に日数がかかり、図書館であれば長い間休館せざるを得ず、その間利用者が書籍等の閲覧ができないという難点もある。前記特許文献1記載の発明によれば、並置した棚同士を上部で連結する必要がある。特許文献2記載の発明によれば、棚を設置する床の材質や状態によって免震性が変化する難点がある。特許文献3記載の発明によれば、装置が大掛かりになり、レールが見えてしまうという難点がある。
特開平11−266941号公報 特開平10−085068号公報 特開平10−327947号公報
そこで本出願人は、物品あるいは物品収納手段の載置面を有する台枠と、台枠の底部に装着された走行装置と、走行装置が載せられて地震時に台枠を移動させることができるレールと、台枠を移動不能に規制するロック位置と規制を解除する非ロック位置との間で移動することができるロック手段と、地震などによる床面の振動を感知しロック手段を非ロック位置に移動させるロック解除手段と、レールの両端部に設けられていて台枠の移動範囲を規制する移動規制手段と、を有し、複数のレール上には一台の台枠が載せられていることを特徴とする免震装置に関して先に特許出願した。特願2003−408034にかかる発明がそれである。
上記出願にかかる発明によれば、免震機能のない既存の書架あるいは棚などの物品収納手段を台枠上に載置することによって、容易に免震機能つきの物品収納手段に変更することができる。免震装置自体は台枠部分に装着されていればよく、この台枠の上に既存の物品収納手段を載置するだけでよいため、当初より免震機能を備えている従来の書架あるいは棚などの物品収納手段と比較して、簡単な構成で低コストの免震装置を提供することができる。また、対をなす棚を並置して上部を連結する必要が無く、車輪がレール上を転動して免震効果を得るため、床の種類などによって免震効果が変動することもない。
本発明は、上記出願にかかる発明をさらに改良して、免震効果をよりいっそう高めたものである。すなわち、上記出願にかかる発明によれば、レールの長さを台枠に載置される物品収納手段の移動方向の長さと同じかまたはそれよりも短くしているため、台枠の移動範囲が制限され、振幅の大きな地震の場合に、移動規制手段に台枠が衝突し、台枠に衝撃力が加わって免震効果が損なわれることがあった。かかる問題をなくすには、台枠に配置した車輪の台枠移動方向の相互間隔を狭めることにより、長さが限定されているレールに対し台枠の移動範囲を広げることが考えられる。しかし、車輪間隔を狭めると、台枠が不安定になり、地震その他の外力によって、台枠の上に載置された物品あるいは物品収納手段が台枠とともに転倒しやすくなる、という難点があった。また、上記出願にかかる発明によれば、衝撃力を軽減する緩衝手段を備えており、この緩衝手段は、棚の積載物の重量変化に応じて緩衝効果が変化するため、重量に対応じて最適な緩衝効果を発揮するものを選択する必要があった。
本発明は、免震効果を高めるために、長さが限定されているレールに対し台枠の移動範囲を広げ、免震範囲を拡大したとしても、台枠がその上に載置された物品あるいは物品収納手段が台枠とともに安定に起立し、地震などによって外力が加わっても、転倒が防止される免震装置を提供することを目的とする。
本発明はまた、振幅の大きな地震などの場合には車輪がレールから外れるようにするとともに、車輪がレールから外れたとしても免震機能が損なわれず、転倒が防止されるようにして、免震機能をよりいっそう高めた免震装置を提供することを目的とする。
本発明はまた、地震の発生などにより台枠が移動して免震効果を発揮する際に、台枠の移動範囲が無闇に拡大することのないようにして、台枠の原位置への復帰を容易にするとともに、免震動作時に位置規制部材と激突することを回避して、台枠に衝撃力が加わることを避けることができる免震装置を提供することを目的とする。
本発明は、物品あるいは物品収納手段の載置面を有する台枠と、台枠の底部に回転可能に軸装された複数の車輪と、この車輪が載せられて地震時に台枠を移動させることにより免震機能を持たせる複数のレールと、台枠の転倒を防止する転倒防止手段と、を有し、
上記レールの長さは、上記台枠に載置される上記物品収納手段の移動方向の長さと同じかまたはそれよりも短く、
上記転倒防止手段は、台枠の底部に回転可能に支持されたローラーと、このローラーが挿入されることにより台枠の移動に伴って上記ローラーを転動させるとともに上記ローラーを上下方向に位置規制するローラーガイドを有し、
一つの上記レールに対して二つの上記車輪が載せられ、
上記転倒防止手段のローラーは上記二つの車輪よりも台枠の移動方向外側に配置された外側ローラーとこれら外側ローラー相互間に配置された中間ローラーからなり、
上記台枠は、移動方向一方側の車輪がレールから外れたとき床面に接して台枠を支持し免震効果を維持する補助輪を有していることを最も主要な特徴とする。
例えば、台枠の移動方向の車輪間隔を狭くすることによって、レール上での車輪の転動範囲を広くし、大きな地震などに対する免震効果を高めたとしても、転倒防止手段によって台枠の転倒が防止される。そして、補助輪を有することにより、レールから車輪が外れても、補助輪が床面に接して転動するため、免震機能が保たれ、また、台枠の転倒も防止される。
また、転倒防止手段は、台枠の底部に回転可能に支持されたローラーと、台枠の移動に伴って上記ローラーを転動させるとともにこのローラーを上下方向に位置規制するローラーガイドを有してなるため、台枠の移動に伴い、ローラーガイドに沿ってローラーが転動することによって転倒防止手段も円滑に移動し、転倒防止手段が免震効果を妨げるようなことはない。ローラーとローラーガイドを有してなる転倒防止手段は、ローラーとローラーガイドとの間の隙間をなくすことができるため、台枠の傾きを小さくすることができ、台枠に載せられる物品収納手段の上部の揺れを小さくすることができる。これは、免震性を高めるための一つの重要な要素である。
以下、図面を参照しながら本発明にかかる免震装置の実施例を説明する。
図1、図2、図3において、符号12は、物品あるいは物品収納手段を載置するための載置面を有する台枠を示している。台枠12の底部には、走行車輪14を有してなる走行装置2が装着されている。走行車輪14は、免震装置を設置する床(以下「設置床」という)に敷設された複数のレール40の上に載せられ、レール40上を走行車輪14が転動することによって台枠12がレール40に沿い相対移動することができるようになっている。図示の例では、2本のレール40が対をなして平行に敷設され、この一対のレール40の上には、一台の台枠12の、走行装置2を構成する車輪14が載せられている。移動方向はレール40の長手方向であり、台枠12の幅方向である。地震時に設置床が揺れる方向は不定である。しかしながら揺れの成分としてレール40の長さ方向の揺れ成分があると、したがって台枠12の移動方向に対して斜め方向に揺れても、レール40上を走行車輪14が転動し、台枠12はその移動方向に関してほぼその場に留まる。換言すれば、レール40に上記走行装置2が載せられることにより、地震時に台枠12がレール40に対して相対移動することができるようになっている。
図3に示すように、走行車輪14は一つの台枠12につき4個用いられ、台枠12の長手方向の一つの軸線上に2個一対の走行車輪14が、もう一つの軸線上にも2個一対の走行車輪14が配置されている。これら2個一対の走行車輪14は通し軸13によって結合されている。通し軸13によって一体に結合された2個一対の走行車輪14が2対、台枠の移動方向に所定の間隔をおいて配置されている。台枠12の長手方向両端部に、台枠12の移動方向に並ぶ2個の車輪14は、梁30によって、適宜の軸受と回転軸を介して回転自在に支持されている。上記梁30は、台枠12の走行方向前後端を構成する一対のフレーム18の両端部に連結され、台枠12の一部を構成している。梁30と車輪14によって走行装置2が構成され、この走行装置2が2対、台枠12の移動方向に向けて、台枠12の左右両端部に配置されている。本発明にかかる免震装置は、走行装置2の構成が周知の移動棚の走行機構に似た構造になっているが、以下に述べるように、周知の移動棚とは異なった発想に基づくものである。
周知の移動棚は、移動可能な複数の棚を使用し、すべての棚を収束させた状態と、任意の棚間に物品の出し入れ作業を行うための通路を形成した状態とを作り出すようにしたものであって、空間の利用効率を高めることを目的としている。したがって、上記レールは、移動棚全体の移動範囲にまたがる長さのものが用いられる。
これに対して、本発明の一実施例にかかる図1乃至図3に示す免震装置では、レール40の長さは、物品収納手段10の幅とほぼ同じ長さになっている。走行車輪14は台枠12内に装着されているため、走行車輪14の回転中心軸間距離はレール40の長さよりも短く、レール40の長さと移動方向前後に配置された走行車輪14の回転中心軸間距離との差の範囲内で台枠12がレール40に対して相対移動できるようになっている。レール40の長さは、物品収納手段10の幅方向すなわち台枠12の移動方向の寸法と等しいか、または、それよりも短く、かつ、車輪14の回転中心軸間距離よりも長ければよい。
台枠12の上面は物品あるいは物品収納手段の載置面となっている。図1乃至図3に示す例では、載置面に物品収納手段10が載せられ、適宜の結合手段によって台枠12と物品収納手段10が一体に結合されている。物品収納手段10は、投影平面において、長手方向の寸法および幅方向の寸法が、台枠12の長手方向の寸法および幅方向の寸法とほぼ同じになっている。しかし、物品収納手段10の長手方向の寸法および/または幅方向の寸法は、物品収納手段10とともに台枠12が安定に起立する範囲内で、台枠12の長手方向の寸法および/または幅方向の寸法よりも大きく、載置物10が台枠12から幅方向にはみ出していても差し支えない。ここで、長手方向とは物品収納手段10の間口面すなわち書籍などの物品を出し入れする面と平行な方向であり、幅方向とは物品収納手段10の移動方向すなわち物品収納手段10の奥行き方向である。図示の物品収納手段10は、いわゆる単柱式の棚であって、台枠12の長手方向に平行に立てられた3本の支柱とこれらの支柱の上下を結合する連結部材とを有してなる枠体を中心に、その前後に載置棚を複数段にわたって掛け止めた形式の棚である。上記枠体を補強して耐震性を持たせるために、ブレースが斜め上下方向に装着されている。なお、物品収納手段10の形式は問わない。例えば、複柱式の棚であってもよいし、ロッカーのようなものであってもよい。上記レール40の長さは、台枠12上に載せられる物品収納手段10の移動方向の長さと同じかまたはそれよりも短く設定されている。
レール40上で車輪14が転動することができる範囲は、免震機能が有効に働く振幅の範囲であり、レールの長さによって決まり、また、移動方向前後の車輪14の間隔によって決まる。一定長さのレールに対して車輪14の間隔が狭ければ、車輪が転動できる範囲が広くなり、免震機能が働く範囲も広くなる。そこで、図示の実施例では、移動方向前後の車輪14の間隔が一般的な移動棚の場合と比較して狭くなっている。ところが、前後の車輪14の間隔を狭くすると、台枠12およびこれと一体の物品収納手段10が自立するのに不安定となる。この不安定さをなくすために、転倒防止手段6、補助輪ユニット4が装着されている。
また、物品収納手段10の間口面側から見て左右方向に対をなす車輪14は、一体に回転することができるように通し軸13で一体に結合されている。さらに、上記各通し軸13の両端部には同径のスプロケット21が一体に設けられ、移動方向前後方向で対をなす車輪14と一体の上記スプロケット21に無端のチェーン22が掛けられることにより、移動方向前後方向で対をなす車輪14は同期して回転することができるように工夫されている。かかる工夫により、地震によって車輪14がレール40上を転動するとき、移動方向前後方向に対をなす車輪14および間口面から見て左右の車輪14が同期して回転し、台枠12がレール40と平行に直線的に円滑に移動できる構造になっている。換言すれば、スプロケット21とチェーン22で、前後の車輪が同期して回転する同期回転手段を構成している。また、各車輪14は両側にフランジを有し、両側のフランジがレール40を挟むことにより、台枠12が斜行しにくい構造になっている。
図1乃至図3に示す実施例は、間口面側から見て物品収納区画が左右方向に2区画形成された2連構成になっているが、間口方向の連数は限定されるものではなく、1連でもよいし、3連以上であってもよい。図4、図5に示す実施例は、図1乃至図3に示す実施例に係る免震装置を2個間口方向に連結したような形にして4連構成としたものである。ただし、連方向の一部を省略した形で示している。以下、図4、図5に示す実施例について説明することによって、台枠12の具体的な構造を説明する。台枠12は、間口面方向前後に配置された長尺の部材であるフレーム18を主体としてなる。前後のフレーム18はその両端部が走行装置2を構成する梁30の両端部に結合されることによって一体に結合され、台枠12の基礎を構成している。フレーム18は長尺の金属板を横断面U字状に折り曲げた部材で、前後二つのフレーム18はU字の開放端を互いに対向させて配置されている。上記梁30も金属板を横断面U字状に折り曲げた部材で、U字の開放端を下向きにしてその両端部を前後のフレーム18の断面U字形の内方に挿入し、適宜の結合手段によって連結されている。梁30は車輪支持部材として機能し、梁30の長さ方向の2箇所で車輪14が適宜の軸受を介して回転自在に支持されている。
台枠12の長さ方向すなわち間口面に平行な方向に対をなして配置されている車輪14は、それらの回転軸相互が通し軸13によって一体に連結され、上記対をなす車輪14が一体回転するように構成されている。このように構成された一つの台枠12の側部には別の台枠12が一体に結合されている。一つの台枠12ともう一つの台枠12の連結部においては、走行装置2の梁30の幅方向約1/2が一方の台枠12のフレーム18に連結され、上記梁30の残りの幅方向約1/2が他方の台枠12のフレーム18に連結されている。換言すれば、一つの梁30が左右のフレーム18の連結部材を兼ねている。したがって、4連構成の物品収納手段を載置可能な台枠12が、3個の走行装置2と4個のフレーム18によって構成されている。
図4、図5において、一方側に配置されている各車輪14と一体の回転軸は梁30の外側面から突出していて、これらの突出端部には同径のスプロケット21が固着されている。この同径のスプロケット21相互には無端のチェーン22が掛けられ、前後に対を成して配置されている車輪14が同期して回転するように構成されている。また、間口面側から見て前側に対をなして位置する3個の車輪14は通し軸13で一体に連結され、また、後ろ側に対をなして位置する3個の車輪14も通し軸13で一体に連結されることにより、すべての車輪13が同期して回転するように構成されている。かかる構成にすることにより、地震によって車輪14がレール40上を転動するとき同期して転動し、レール40に対して台枠12が直線的に移動して斜行が防止され、期待通りの免震機能が発揮されるように工夫されている。
図4に示すように、台枠12の底部には、3個の走行装置2にそれぞれ隣接して転倒防止手段6が取り付けられている。また、台枠12の底部には、4個の補助輪ユニット4が取り付けられている。これら転倒防止手段6と補助輪ユニット4の具体的構成および前後の車輪14相互の寸法と転倒防止手段6の前後方向の寸法関係等を次に説明する。
図6、図7は、走行装置2と転倒防止手段6を含む部分を示す。図6、図7において、台枠12の上には、台枠12の移動方向前後方向すなわち奥行き方向の寸法よりも奥行き方向寸法の大きな棚などの物品収納手段10を載せることができる。レール40の長さは物品収納手段10の奥行き方向寸法と同じかこれよりも短く、物品収納手段10の投影平面からレール40がはみ出ないようになっている。前後方向の車輪14相互の回転中心間隔をAとし、これら回転中心からレール40の末端までの水平距離、したがって車輪14が転動することができる範囲をBとする。AはBより大きいものの、台枠12の前後方向寸法に対し前後の車輪14の間隔は狭くなっていて、BはAに近い寸法に設定されている。
図6、図7において、転倒防止手段6は、レール40と平行に固定されたローラーガイド28と、ローラー26を有してなる。ローラーガイド28は、例えば金属板を横断面U字状に折り曲げて形成されたチャンネル状の部材で、横断面U字の開放端縁側を横向きにしてレールプレート42の側面に固定されている。台枠12の下面側には、台枠12を構成する前後のフレーム18にまたがって横断面L字形のローラーホルダ27が固定され、ローラーホルダ27の垂直片に水平方向に固定された水平軸の一端側に、上記ローラー26が回転自在に支持されている。ローラーホルダ27の長さは、台枠12の幅方向の寸法とほぼ同じで、レール40の長さよりもわずかに短くなっている。ローラー26は、一つのローラーホルダ27に3個、ローラーホルダ27の長さ方向両端部と長さ方向中心位置に配置されている。ローラー26は、ローラーガイド28にその開放端縁側から挿入され、台枠12の移動に伴ってローラー26を転動させるとともにこのローラー26を上下方向に位置規制している。
ローラーホルダ27の長さに対する3個のローラーが上記のように配置され、また、前述のように前後の車輪間隔が狭くなっているため、図6(a)(b)に示すように、転倒防止手段6の移動方向両側部のローラー26は上記二つの車輪14よりも台枠12の移動方向外側に配置されている。したがって、図6(b)(c)からわかるように、地震などによってレール40に対して車輪14が転動し、台枠12が移動すると、すぐに一方端部のローラー26がローラーガイド28から外れる。しかし、前後の車輪14がレール40に乗っている間は台枠12およびこれと一体の物品収納手段10が転倒することはない。また、仮に大地震によってレール40と台枠12が大きく相対移動し、前後方向一方の車輪14がレール40の一端から外れたとしても、転倒防止手段6を構成する2個のローラー26はローラーガイド28内にあって上下方向の位置規制がなされているため、台枠12およびこれと一体の物品収納手段10が転倒することはない。加えて、転倒防止手段6はローラー26とローラーガイド28を有してなり、ローラー26がローラーガイド28に沿って転動しながら転倒防止機能を発揮し、台枠12の移動に対する抵抗力も比較的小さいので、転倒防止手段を設けたことによって免振効果が得られなくなることもない。
しかしながら、前後方向一方の車輪14がレール40の一端から外れてしまうと、転倒防止手段6を構成する2個のローラー26に過大な荷重がかかり、台枠12の円滑な移動に支障を生じ、免振効果が低下することになる。そこで、図示の実施例では、台枠12に、車輪14がレール40の長さ方向端部から外れたとき、床面に接して台枠12を支持する補助輪24を設けている。図9、図10は補助輪24の取り付け構造を示している。図9、図10において、台枠12を構成する前後のフレーム18の天井部下面には、金属板が折り曲げられて横断面が逆ハット形に形成された梁56の両端部が固定され、梁56が前後のフレーム18を連結している。図4に示す例では、前後一対のフレーム18の両端部寄りの位置に梁56が配置されている。図4に示す例では、前後一対のフレーム18が間口面方向に2対連結されているため、梁56は合計4個配置されている。
各梁56には、その長さ方向両端近傍において補助輪24が取り付けられている。図9乃至図11に示すように、補助輪24は、平面形状が正方形で、対をなす側面が下方に折り曲げられて軸受部となっている取り付け部材54の上記軸受部により、支持軸を介して回転自在に支持されている。簡単に言えば、補助輪24はキャスターと同じ構造になっている。上記取り付け部材54は、梁56の長さ方向の中心線上に配置された2個の補助輪支持ボルト58と、梁56の幅方向の線であって一方の補助輪支持ボルト58の中心を通る線上にこの補助輪支持ボルト58を挟んで配置された2個の補助輪抜け防止ボルト57によって、梁56の下面側に取り付けられている。補助輪抜け防止ボルト57は、その頭部とナットによって取り付け部材54を挟み込むことにより取り付け部材54に上向きに固定され、梁56を貫通した上端部にナットがねじ込まれることによって、取り付け部材54が梁56から脱落するのを防止している。補助輪支持ボルト58は、梁56に形成された孔を貫通し、梁56の下面に溶接によって固定されたナットにねじ込まれ、補助輪支持ボルト58の先端(下端)面が取り付け部材54の上面に当接している。
補助輪24は上記のよう取り付け構造によって取り付けられているので、補助輪支持ボルト58のねじ込み量と、補助輪抜け防止ボルト57に取り付け部材54の上側からねじ込んだナットのねじ込み量を調整することにより、補助輪24の取り付け高さ及び垂直度を調整することができる。そこで、車輪14がレール40の上に載っている状態で、補助輪24が床面より僅かに浮く(例えば、1mm)程度に補助輪24の取り付け高さを調整すると共に、補助輪24が傾かないように調整する。車輪14がレール40の上に載っている状態では、台枠12の移動に対して補助輪24が抵抗となることは無いから、免震効果が損なわれることはない。また、地震によって台枠12がレール40に対し大きく移動し、一方の車輪14がレール40の一端から外れると、図10(c)に示すように、一方の補助輪24が床面5に接触して転動し、免震効果を維持し続ける。補助輪24と床面5とが接触する分だけ抵抗が増え、また、床面5にカーペットなどが敷いてあると補助輪の転がりが悪くなり抵抗が増える。しかし、補助輪24を備えていれば、台枠12の移動に対して抵抗が増えるとはいえ、免震効果を維持し続けることができる。仮に、補助輪24がないとすると、上下方向に規制されているローラー26に荷重が集中するとともに、台枠12が物品収納手段10とともに前後方向に傾いた状態で上記ローラー26に荷重がかかるため、台枠12の移動に対して大きな抵抗力がかかることになり、免震効果が減殺される。その点、補助輪24を備えていれば、台枠12が地震によって大きく移動したときに抵抗が増えるとはいえ、免震効果を維持し続けることができるため、補助輪24を設けたことによる免震効果は大きい。補助輪24を設けることによって、台枠12及びこれと一体の物品収納手段10の転倒防止効果もある。
上記のように、すべての車輪14がレール40の上に載っているときの、補助輪24と床面5との間隔設定は重要である。その前提として、レール40のレベル調整及び傾き調整がなされている必要がある。図9、図10には、レール40のレベル調整及び傾き調整を行うためのライナー46が示されている。ライナー46は、レール40の長さ方向両端部寄りの位置と長さ方向中央部において床面5とレールプレート42との間に配置されている。ライナー46は薄い板材を1枚または複数枚重ねたもので、積層枚数を調整することによってレール40の上面のレベルを調整しまたレール40の長さ方向の傾きがないように調整する。
なお、図8に示すように、レールプレート42とレール40との間にもライナー49が介在している。ライナー49は、レール40の長さ方向両端部に配置され、レール40の中間部下面をレールプレート42から所定寸法だけ浮かすために配置される。前述のように、本発明においては、前後の車輪14の間隔を可能な限り狭めているため、ライナー49による2箇所の支持位置よりもかなり内側に2個の車輪14が位置している。そのため、台枠12を介して車輪14に荷重がかかると、図8に示すようにレール40が下方に撓む。この撓みの最大量は、レールに荷重がかからないときにレールプレート42からレール40が離間している量である。このように、レール40が撓むことによって、平常時は前後の車輪18が撓んだレール40の最低レベル位置に向かって転動しようとして互いにバランスする位置で安定し、僅かな外力によって移動してしまうというような不安定さを解消できる効果がある。
以上説明した構造及び手順によってレール40のレベルと傾き調整を行ったあと、前述のように、補助輪24と床面5との間隔調整を行う。補助輪24と床面5との間隔調整は、例えば、以下のような手順で行う。床面5と補助輪24との間に所定厚さの、例えば1mm厚さのスペーサを置き、このスペーサの上面に補助輪24が軽く接する程度に、前記補助輪支持ボルト58と補助輪抜け防止ボルト57で調整する。そのあと上記スペーサを除去する。
以上説明した実施例によれば、限られたレール40の長さに対して、比較的広い範囲で免震効果を発揮することができ、その上、ローラー26を有する転倒防止手段6、補助輪ユニット4を有することによって、免震機能を持たせることができる範囲すなわち台枠12の可動範囲をさらに広くすることができる。しかし、予想外の大きな地震が発生し、あるいは台枠12が予想外の挙動をして、免震範囲を越えて台枠12が移動することがありえる。その場合にはエンドストッパーによって台枠12の移動を規制する。図11、図12にエンドストッパーの例を示す。図11、図12において、レールプレート42の両側壁の内面側には、エンドストッパー43が内方に向けて水平方向に突出させて一体に、また一方の側壁のエンドストッパー43の位置と他方の側壁のエンドストッパー43は互いに台枠12の移動方向に位置をずらして設けられている。各エンドストッパー43の水平方向への突出量は、上面から見て前記レール40の側壁に至らない程度の突出量で、各エンドストッパー43と梁30の側壁との間に隙間が生じている。梁30の両側壁下端部外側面には当たり金具51が固定されている。各当たり金具51は適宜の形に折り曲げられることによって、台枠12の移動方向において上記エンドストッパー43と対峙する折曲片を有し、この折曲片にゴムなどからなる緩衝材52が固着されている。梁30の両側壁に固着された二つの緩衝材52も、台枠12の移動方向に位置をずらして配置されている。
図12に示すように、前後の車輪14がともにレール40上に載っている状態では、各緩衝材52はともにエンドストッパー43から相当の距離離れている。この離れている距離分だけ台枠12が移動できる範囲である。地震によって台枠12がレール40に対して移動し、車輪14の一方がレール40から外れ、次に転倒防止手段6を構成するローラー26の一つがローラーガイド28から外れ、さらに、補助輪24が床面5に接触したあとさらにある程度台枠12が移動して初めて、片方の緩衝材52がエンドストッパー43に当接して台枠12の移動が規制されるようになっている。台枠12の移動がエンドストッパー43によって規制されるとき台枠12に衝撃が加わるが、このときは台枠12が相当距離移動して免震効果を十分に発揮したあとであり、また、緩衝材52によって緩衝されるため、台枠12上の物品収納手段に収納されている物品が転倒し、あるいは転落することはない。
台枠12は、免震のために、地震時には軽快に移動することが望ましい。しかしながら、平常時はみだりに移動することなく一定の位置を安定に保持しているのが望ましい。そこで、平常時は台枠12の移動を規制するロック装置を設け、地震が発生するとこれを検知してロック装置による移動規制を解除するロック解除手段を設けるのが望ましい。図13ないし図16は、このようなロック装置及びロック解除手段の例を示す。図13ないし図16において、前後の車輪14の一方側の車輪であって、前記チェーン22が掛けられるスプロケット21を有する車輪とは反対側の車輪14には、これと一体の軸を介してロック用のスプロケット77が固着されている。台枠12内には、適宜の形状をした2個の滑り受け部材74によって円柱状のロック部材73が台枠12の前後方向すなわち奥行き方向に移動可能に保持されている。ロック部材73の一端部は台枠12の側壁を貫通し、台枠12の上に固定された物品収納手段10の化粧パネル101を貫通している。化粧パネル101は台枠12の側壁に沿って立ち上がっている。ロック部材73の他端すなわち内端は上記スプロケット77の外周に対峙している。ロック部材73にはカラー76が嵌められて固着され、カラー76と一つの受け部材74との間に圧縮コイルばねからなる付勢手段75が介在している。
図16に示すように、ロック部材73は、その内端がスプロケット77の外周から離間する向きに付勢手段75によって付勢され、この付勢力によって移動した状態では、ロック部材73の外端部が側パネル101の面から突出するようになっている。ロック部材73の外端部は側パネル101の外側から手動操作によって押し込むことができ、上記付勢力に抗してロック部材73を内方に向かって移動させることができる。図15に示すように、ロック部材73をその外端面が側パネル101の外側面とほぼ同じ位置になるまで押し込むと、ロック金具70がカラー76の側方に落ち込んで付勢力によるロック部材73の移動を阻止するように構成されている。また、このようにロック部材73が付勢力による移動を阻止された態様では、ロック部材73の内端部がスプロケット77の外周に形成されている切り欠きの一つに落ち込んで車輪14の回転を阻止し、台枠12を移動不能にロックしている。ロック金具70は、あとで説明するようにロック解除手段と連携していて、地震を検出することによりロック解除手段がロック金具70を揺動させてカラー76との係合を解除し、カラー76とともにロック部材73を付勢方向に移動させるようになっている。このロック金具70とカラー76との係合解除が円滑に行われるように、カラー76の材質は滑り抵抗の低い素材で作られている。
上記ロック金具70は、横断面が逆U字状になるように形成されるとともに、ロック部材73の上方に、長手方向をロック部材73の方向に向けて配置されている。ロック金具70の一端部は、適宜の支持部材によりロック部材73方向に対し直交する方向に支持された軸71によって支持されている。したがって、ロック金具70は軸71を中心に垂直面内において揺動可能となっている。ロック金具70は、先端部に、下方に向けて折り曲げることによって形成された係止片79を有していて、平常時は自重により揺動して上記係止片79がカラー76と係合し、ロック部材73の付勢力による移動を阻止している。
ロック金具70の下方には、ロック部材73を中心として揺動可能にロック解除部材67が配置されている。図14に示すように、ロック解除部材67は台枠12の移動方向から見てT字状に形成された例えば金属板からなり、T字の上部水平片68の中心が上記ロック部材73によって貫かれ、T字の垂直辺の下端部に形成された上下方向の長孔をピン66が貫いている。ロック解除部材67はロック部材73とともに移動するようになっており、ロック解除部材67の移動範囲内で上記ピン66がロック解除部材67の上記長孔との係合関係を維持するように、ピン66はロック解除部材67の移動寸法よりも長くなっている。ロック解除部材67の上記T字の上部に相当する水平片68は、逆U字状ロック金具70の両側壁の直下にある。したがって、図15に示すロック態様において、ロック解除部材67がロック部材73を中心に左右いずれの向きに揺動しても、ロック解除部材67はロック金具70を直ちに押し上げてカラー76の係止を外し、ロック部材73を付勢力により移動させ、図16に示すようなロック解除態様になる。
上記ピン66はロッド65の一端部に固着されている。ロッド65の他端部は錘保持金具62の折曲片に連結されている。錘保持金具62は錘61を保持するとともに、台枠12に対し摺動可能に取り付けられている。錘保持金具62および錘61の移動方向は台枠12の移動方向に対して直交する方向であり、錘保持金具62および錘61の移動方向にロッド65が伸びている。錘保持金具62の上記折曲片には、平常時に錘保持金具62および錘61を中立位置に保持する中立位置保持手段63が連結されている。中立位置保持手段63は一種の付勢手段で、前記梁30の側壁に固定した支持軸、例えばボルトを有し、この支持軸は上記錘保持金具62の折曲片を、空間的余裕を持って貫通し、上記支持軸には、上記錘保持金具62の折曲片を挟んで両側に圧縮コイルばねを配置することによって構成されている。上記錘61は、図13に3本の矢印で示すように、地震時の震動方向が錘61の移動方向と一致する場合はもちろん、錘61の移動方向に対し斜め方向であっても移動する。震動方向成分ないしは分力が錘61の移動方向にあれば、したがって、台枠の奥行き方向以外の揺れであれば、錘61は左右いずれの向きにも移動する。棚の長手方向である間口方向は耐震方向であり、錘61が揺れるほどに人為的に揺らすことは困難である。逆に奥行き方向に人為的に揺らされる可能性があるので、安全上、奥行き方向の揺れでは錘61が反応しないように、錘の移動方向を棚(台枠)の間口方向としている。
図13において、図の外側に示す矢印のうち、台枠の奥行き方向と平行の矢印は台枠の移動方向を示し、間口方向と平行な矢印は棚(台枠)の耐震方向を示す。また、3本の交差した矢印は、台枠が反応して移動する震動方向を示す。前述の特許文献1,2記載の自立免震棚は、あらゆる方向に動くことができるように構成されている。これに対して本願発明にかかる免震装置は、棚の間口面方向を耐震方向とすることにより、棚の側面側に什器を設置することができ、棚の側面を柱や壁に近づけて設置することができる利点もある。左右いずれの向きの振動に対しても錘61の移動量がバランスするように、上記錘保持金具62の折曲片の両側にある圧縮コイルばねの付勢力を調整する。この付勢力の調整は、例えばボルトからなる上記支持軸にねじ込んだボルトの位置を調整することによって行うことができる。図14に示す矢印64は、地震時の錘61の移動方向を示す。錘61の移動とともにロッド65も移動し、ピン66を介してロック解除部材67左右方向に揺動させ、前述のようにロック解除部材67の上部水平片68がロック金具70を押し上げて、ロック部材73によるロックを解除するようになっている。図15、図16において符号72は、ロック解除時におけるロック金具70の揺動範囲を規制する規制部材を示している。
以上、本発明にかかる免震装置の実施例について、各部の構成と各部ごとの動作を説明した。次に、平常時の態様において地震が発生した場合の一連の動作について説明する。平常時は、図15に示すようにロック装置を構成するロック部材73が付勢力に抗して移動させられ、ロック部材73の内端部がスプロケット77の切り欠きに係合して台枠12は移動不能にロックされ、ロック金具70によりカラー76が係止されて上記ロック状態が維持されている。したがって、台枠12は移動することなく安定して定位置に保持され、物品の出し入れに支障をきたすことはない。
上記の態様において、地震が発生したとする。地震の震動方向はまちまちであり、あらゆる震動方向成分を持っている。図13、図14に示す錘61の移動方向と同じ震動方向成分ないしは分力に応じて錘61が左右いずれかの向きに移動すると、錘61とともにロッド65が移動し、前述のようにロック解除部材67を揺動させてロック金具70を揺動させ、ロック金具70によるカラー76の係止を解除する。これによって図16に示すようにロック部材73が付勢力により移動し、ロック部材73の内端がスプロケット77から離間して上記のロックを解除する。ロック解除によって車輪14はレール40上を転動可能となり、台枠12はレール40との関係において相対移動可能となり、免震効果を得ることができる。
ロック解除のための加速度センサということができる錘61は、地震によって水平移動する構造にしているため、その移動方向成分ないしは分力が含まれている地震であれば反応し、震動方向を選ぶことなくあらゆる震動に反応する利点がある。
また、ロック金具70とロック解除部材67の構造は、振動方向が左右どちらであってもロック解除動作をし、振動方向を選ばないので、地震の発生からロック解除までに要する時間が短縮され、免震効果を高めることができる。
上記のようにロック解除が行われた後、車輪14がレール40上にある間は免震効果が十分に発揮される。図6などによっても説明したとおり、レール40の長さの割には前後の車輪14間の寸法を狭くしているので、地震時のレール40上における車輪14の転動範囲が広くなっていて、免震効果が高められている。前後の車輪14間の寸法を狭くすると、台枠12が物品収納手段10とともに自立するのに不安定となるが、転倒防止手段6を設けることによって安定に自立するようにしている。加えて、転倒防止手段6は、ローラー26と、このローラー26の上下位置を規制するローラーガイド28を有してなるため、転倒防止手段6は円滑に移動しながら転倒防止効果を発揮し、転倒防止手段6の存在が免震効果を損なうことはない。
仮に、大きな地震によって車輪14の一つがレール40から外れ、また、転倒防止手段6のローラー26の一つがローラーガイド28から外れたとしても、図10に示すように補助輪24が床面5に接して台枠12を支え、かつ、補助輪24が床面5上を転動し、免震効果を発揮し続ける。補助輪24が床面5上に接することによって、台枠12の移動に対する抵抗力が大きくなるが、補助輪24がない場合に比べると、免震効果は絶大である。
地震によってロックが解除され、免震効果が発揮されたあと、再び平常状態にするためには、台枠12を元の位置に戻す。図8について説明したように、レール40を撓ませておけば、車輪14をレール40上に載せるだけで台枠12を元の位置に戻すことができる利点がある。台枠12を元の位置に戻したあと、図16に矢印で示すように、手動によりロック部材73を押し込む。ロック解除状態では、カラー76の上にロック金具70の折曲片が載っているだけであるから、ロック部材73を押し込んでカラー76の側方にロック金具70の折曲片を位置させることによってロック金具70は自重で揺動し、図15に示すようなロック位置を保持することになる。
以上説明した実施例では、台枠移動方向の車輪間隔を意図的に比較的狭くすることにより、レール40上での車輪14の転動範囲を広くし、より大きな免震効果を発揮することができるように構成されている。しかし、本願発明のように、車輪14の一つがレール40から外れたとき台枠12を支える補助輪24を有するものにおいては、台枠移動方向の車輪間隔をあえて狭くする必要はない。その理由を、図17を参照しながら説明する。地震の振動は往復振動であり、この往復振動に応じて台枠12はその上に載置されている物品収納手段とともに奥行き方向前後(図2においては左右)方向の傾きを繰り返しながら、レール40に対して奥行き方向に往復移動する。往復移動の幅が大きく、図17(a)に示すように、車輪12の一方がレール40から外れると、前述のように一方の補助輪24が設置床面5に接して台枠12にかかる荷重の一部を支え、この補助輪24が設置床面5の上を転動することにより免震効果を発揮する。しかし、設置床面5に対する補助輪24の転がり抵抗は、レール40に載っている他方の車輪14のレール40に対する転がり抵抗より大きいことから、床面5が図17において右側にずれて台枠12が物品収納手段とともに上記補助輪24側に傾いたとき、補助輪24の転がり抵抗により、台枠12の床面5やレール40に対する相対的な移動距離は短く、台枠12の位置ずれは小さくなる。その分免震効果は薄れるが、床に固定された棚よりも免震効果は格段に大きい。一方、床面5が図17において左側にずれて台枠12がレール40上の車輪14側に傾いたときは、転がり抵抗の小さいレール40上の車輪14が台枠12の荷重を支えながらレール40上を転動するため、床面5やレール40が右側にずれた場合に比べて、台枠12の床面5やレール40に対する相対的な移動距離は長く、台枠12の位置ずれは大きくなる。したがって、図17(b)に矢印で示すように、地震によって一方の補助輪24がレール40から外れたとしても、台枠が原位置のほうすなわち両方の車輪がレール40に載ることができる元の位置のほうに戻ろうとするときの移動距離が、原位置から遠ざかるほうへの移動距離よりも長くなり、台枠12を原位置の方に向かって戻すように作用する。このような作用は、移動方向反対側すなわち図7において右側の補助輪24、車輪14についても同様に働く。結果的には、大きな地震に対して免震効果を発揮しながら、台枠12の床面5やレール40に対する相対的な位置ずれは小さいという効果をもたらす。
このように、本発明によれば、補助輪24を有することによって、地震時の台枠12の移動範囲を小さくすることができるため、台枠移動方向の車輪間隔をあえて狭くしなくても、したがって、地震時に補助輪が早い時期にレールから外れても、必要にして十分な免震効果を得ることができる。地震時の台枠12の移動範囲を小さくすることができることによって、台枠12に移動範囲を規制するエンドストッパー43に前記当たり金具51が衝突することを回避することができ、当たり金具51がエンドストッパー43に当たることによって台枠12に衝撃力が加わることを避けることができる。仮に当たり金具51がエンドストッパー43に当たったとしても、免震効果が大部分発揮されたあとに当たることになるので、当たり金具51がエンドストッパー43に当たることによる衝撃力を大幅に緩和することができる。図17(c)は、当たり金具51の緩衝材52がエンドストッパー43に当たった状態を示している。しかし、この状態では、一方の車輪14がレール40から外れたあと、補助輪24の転動で台枠12がかなり長い距離移動しており、想定できる最大震度の地震であっても、図17(c)に示す位置まで台枠12が移動することは考えられない。仮に当たり金具51の緩衝材52がエンドストッパー43に当たったとしても、上記のように、免震効果が大部分発揮されたあとに当たることになるので、衝撃力を大幅に緩和することができる。
補助輪24を有することによって、上記のように台枠12を原位置に復帰させる向きの力が働く。そこで、台枠12の原位置方向への復帰を円滑に行わせるために、レール40の長さ方向両端部上面を斜めに削った形の傾斜面401を形成している。傾斜面401はレール40の外端側から見て内方に向かって緩やかな上り坂になっていて、台枠12の原位置方向へ復帰するとき、車輪14が上記傾斜面401に案内されながらレール40上に載ることになるため、台枠12の原位置方向への復帰が円滑に行わる。また、車輪14がレール40から外れるときも傾斜面401を転がり落ちながら外れるので、衝撃が生じることなく円滑に外れる。
図18、図19は、地震などによって台枠12がレール40上を移動するとき、台枠12が本来移動すべき方向すなわちレール40の方向に対し傾いた姿勢で移動することを防止する斜行防止部材80を備えた実施例を示す。斜行防止部材80は、前後の車輪14を支持する部材である梁30の長さ方向(すなわち台枠12の奥行き方向)中央部に配置されている。梁30はチャンネル状の部材からなり、その開放面を下向きにして前述の対をなすフレーム18間に固定されている。斜行防止部材80は、梁30の開放部に嵌め込まれて固定されている。斜行防止部材80は、金属または樹脂のブロックからなり、このブロックの下面側からレール40の長さ方向に沿った溝82を有し、溝82の両側にガイド片81が残された形になっている。上記梁30の開放面が対向するレール40は横断面形状が「凸」形になっていて、中央の突出した部分の両側面に上記斜行防止部材80の両側のガイド片81の内側面が僅かな隙間をおいて対向している。斜行防止部材80が摩擦抵抗の小さい部材で形成される場合は、上記両側のガイド片81の内側面がレール40の側面に軽く接していてもよい。
上記のように構成された斜行防止部材80を備えることにより、台枠12の姿勢がレール40の方向に対し傾こうとすると、斜行防止部材80のガイド片81がレール40の側面に当接して位置規制されることにより、台枠12の斜行が防止される。前後の車輪14は両フランジ型であって、両フランジがレール40の上記中央突出部の両側面に位置しているので、これによっても台枠12の斜行防止効果がある。この両フランジ型車輪14の斜行防止効果と、前後の車輪14の略中央に位置する斜行防止部材80の位置規制効果とあいまって、台枠12の斜行をより効果的に防止することができる。
次に、図20に示すさらに別の実施例を説明する。これまで説明してきた実施例では、転倒防止手段としてのローラー26が、台枠12の移動方向に3個、すなわち移動方向前後端部分と中央部に設けられていた。図20に示す実施例では、前後のローラー26と中央のローラー26の間にもローラー26を配置して、計5個のローラー26をローラーホルダ27に設けている。前後方向に3個のローラー26を設けた実施例によれば、地震などによって台枠12が移動し、前後端のローラー26の一方がローラーガイド28から外れたあと、台枠12が原位置に戻ろうとするとき、台枠12とともにローラーホルダ27が前後方向に傾いていると、ローラーガイド28から外れているローラー26がローラーガイド28に入りにくいことがある。しかし、図20に示す実施例のように、前後方向のローラー26の数を5個にすることにより、そのうちの一つがローラーガイド28から外れたとしても、残りのローラー26がローラーガイド28に位置規制されて各ローラー26の上下方向の位置が保たれ、台枠12が原位置に戻ろうとするとき、上記一つのローラー26がローラーガイド28に円滑に入ることができる。前後方向のローラー26の数は、4個でもよく、6個以上であってもよい。
本願発明にかかる免震装置は、台枠の部分のみを工場で生産し、設置現場において既存の定置棚などの物品収納手段を載せるようにしてもよいし、台枠と物品収納手段を一体として工場で生産してもよい。また、台枠の部分と物品収納手段を分けて工場で生産し、設置現場において一体化してもよい。
本発明にかかる免震装置の実施例を示す外観正面図である。 同上実施例の外観側面図である。 同上実施例の底面図である。 本発明にかかる免震装置の別の実施例を一部省略して示す底面図である。 同上実施例を一部省略して示す分解底面図である。 上記実施例を示す、(a)は車輪の部分の側面図、(b)は転倒防止手段の部分の側面図、(c)は転倒防止手段の部分の別の作動態様を示す側面図である。 上記転倒防止手段及び車輪の部分の正面図である。 本発明にかかる免震装置のレールの設置例を示す側面図である。 本発明に適用可能な補助輪ユニットの例を車輪及び転倒防止手段とともに示す正面図である。 上記補助輪ユニットの部分を示す、(a)は上面図、(b)は側面図、(c)は別の作動態様を示す側面図である。 本発明に適用可能な移動規制手段の例を示す、(a)は正面図、(b)は側面図である。 上記移動規制手段の平面図である。 本発明に適用可能なロック装置及びロック解除手段の部分を示す平面図である。 同上ロック装置及びロック解除手段の部分を示す正面図である。 同上ロック装置及びロック解除手段の部分を示す側面図である。 同上ロック装置及びロック解除手段の部分の異なる作動態様を示す側面図である。 本発明に適用可能なレールの別の構成例および補助輪の機能を示すもので、(a)は側面図、(b)は別の動作態様を示す側面図、(c)は補助輪と移動規制手段との関係を示す側面図である。 本発明に適用可能な斜行防止手段の組み込み例を示す側面図である。 上記斜行防止手段の組み込み例の正面図である。 本発明に適用可能な転倒防止手段の別の例を示す側面図である。
符号の説明
2 走行装置
4 補助輪ユニット
6 転倒防止手段
10 物品収納手段
12 台枠
13 通し軸
14 車輪
21 同期回転手段としてのスプロケット
22 同期回転手段としてのチェーン
24 補助輪
26 ローラー
28 ローラーガイド
40 レール
43 移動規制手段としてのエンドストッパー
80 斜行防止部材
401 傾斜面

Claims (7)

  1. 物品あるいは物品収納手段の載置面を有する台枠と、台枠の底部に回転可能に軸装された複数の車輪と、この車輪が載せられて地震時に台枠を移動させることにより免震機能を持たせる複数のレールと、台枠の転倒を防止する転倒防止手段と、を有し、
    上記レールの長さは、上記台枠に載置される上記物品収納手段の移動方向の長さと同じかまたはそれよりも短く、
    上記転倒防止手段は、台枠の底部に回転可能に支持されたローラーと、このローラーが挿入されることにより台枠の移動に伴って上記ローラーを転動させるとともに上記ローラーを上下方向に位置規制するローラーガイドを有し、
    一つの上記レールに対して二つの上記車輪が載せられ、
    上記転倒防止手段のローラーは上記二つの車輪よりも台枠の移動方向外側に配置された外側ローラーとこれら外側ローラー相互間に配置された中間ローラーからなり、
    上記台枠は、移動方向一方側の車輪がレールから外れたとき床面に接して台枠を支持し免震効果を維持する補助輪を有していることを特徴とする免震装置。
  2. 転倒防止手段のローラーガイドは、レールと同じ長さでかつ物品収納手段の奥行き寸法と同じかまたはそれよりも短い請求項1記載の免震装置。
  3. 補助輪は、車輪がレールに載っている状態では床面から浮いていて、車輪がレールに載っているときの転がり抵抗よりも、補助輪が床面に接しているときの転がり抵抗が大きいことを特徴とする請求項1記載の免震装置。
  4. 転倒防止手段のローラーガイドはチャンネル状の部材からなっていてその開放部を横向きにして敷設されこの横向きになっている開放部からローラーが挿入されている請求項1記載の免震装置。
  5. レールの側面に当接することによって台枠の姿勢が台枠の移動方向に対して傾くことを防止する斜行防止部材が、台枠移動方向中央部において車輪支持部材に取り付けられている請求項1記載の免震装置。
  6. 台枠の移動範囲を規制する移動規制手段を有し、この移動規制手段は、転倒防止手段のローラーのうち中間ローラーがローラーガイドから外れない位置で台枠の移動範囲を規制することを特徴とする請求項1記載の免震装置。
  7. レールはその両端部がライナーを介してレールプレート上に載せられることによりレールの長さ方向中間部がレールプレートから浮くとともに、台枠にかかる荷重によってレールの長さ方向中間部が下方に撓むことを特徴とする請求項1乃至6のいずれかに記載の免震装置。
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