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JP4780560B2 - ミズゴケの栽培方法 - Google Patents

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Description

本発明は、ミズゴケの栽培手段に関する発明である。
ミズゴケは、正確には、ミズゴケ亜網(Sphagnidae)に属するコケ植物のことをいい、世界に1科1属約150種が、日本に約36種が記録されている。ミズゴケは、コケ植物の中では最も経済的価値の高いものの一つとして知られており、日本では、主に園芸用に用いられることが多い。
また、水面上で泥炭が発達する高層湿原では、ミズゴケが一面に繁茂し、その下に、主にミズゴケの遺骸からなる泥炭層が、深さ数メートルにもわたり形成されることが知られている。このような高層湿原では、数千年という長い期間にわたり、大量の二酸化炭素を固定しており、現在の地球上での、非常に重要な二酸化炭素吸収源であることが知られている。また、ミズゴケ湿原においてのみ生育が可能な動植物の貴重な生息領域であることが知られている。
現在、さまざまな理由により、このような高層湿原が、急速に損なわれつつあり、地球規模の二酸化炭素の固定力の低下による、地球の温暖化の加速や、ミズゴケ湿原においてのみ生育が可能な動植物の減少や絶滅が懸念されている。
このような状況下、ミズゴケを大量に、かつ、容易に栽培し得る手段が望まれている。
現在、ミズゴケの栽培方法としては、いくつかの方法が報告されている(緑の宝石「富貴蘭」の世界、インターネット<URL:http://www.fuukiran.jp/fuukiran/mizugoke/mizugoke2.htm>;山野草、他の植物たち−ミズゴケ、インターネット<URL:http://www3.plata.or.jp/Dionaea−Club/plants/sanyasou/mizugoke.htm>)が、これらの方法は、常に、ミズゴケが乾燥しないように管理を行わなければならず、大規模栽培には不向きであり、かつ、簡便性に劣り、栽培の継続性に問題がある、と考えられる。
なお、本発明に関連して、乾燥ミズゴケの優れた吸収力を利用したシート状吸収材に関する特許出願もなされている(特開平8−126662号公報)。
本発明が解決すべき課題は、様々な環境において、ミズゴケを、大量、かつ、容易に栽培する手段、いいかえれば、様々な環境におけるミズゴケ湿原の構築手段を提供することにある。
この課題を解決するために、本発明者は、有水部の水を、乾燥ミズゴケの非常に優れた揚水力で吸い上げて、この上部に向けて浸潤した水と生長ミズゴケの茎部を接触させることにより、この生長ミズゴケの生長点を含む部分(主に、葉部と枝部)の効率的な生長を実現させることが可能であることを見いだした。この生長ミズゴケの栽培に関する発明は、栽培に必要な栽培基と、この栽培基を用いる栽培方法と栽培システム等により構成される。
すなわち、本発明は、上記栽培基に関する発明として、定形化されている乾燥ミズゴケの集合物に対して、まとまった状態の生長ミズゴケの茎部の1単位以上が、その乾燥ミズゴケの集合物に接触しており、かつ、前記の生長ミズゴケの生長点が、前記の乾燥ミズゴケの集合物から実質的に露出しており、さらに、前記の乾燥ミズゴケの集合物が、有水部の水と接触可能な状態で維持されている、ミズゴケ栽培基(以下、本ミズゴケ栽培基ともいう)を提供する発明である。
また、本発明は、上記栽培方法に関する発明として、本ミズゴケ栽培基において、生長ミズゴケの生長点を、有水部の水面よりも高い位置に維持しつつ、まとまった状態の乾燥ミズゴケの集合物に、その有水部の水を接触させて浸潤させ、この浸潤水を生長ミズゴケに供給することで、生長ミズゴケの養生を行う、ミズゴケの栽培方法(以下、本栽培方法ともいう)を提供する発明である。
また、本発明は、上記栽培システムに関する発明として、本ミズゴケ栽培基における生長ミズゴケの生長点を、有水部の水面よりも高い位置に維持しつつ、まとまった状態の乾燥ミズゴケの集合物に、その有水部の水を接触させて浸潤させ、この浸潤水を生長ミズゴケに供給することで生長ミズゴケの養生を行う、ミズゴケの栽培システム(以下、本栽培システムともいう)を提供する発明である。
なお、本発明において、「生長ミズゴケ」とは、少なくとも、生命活動が維持されているミズゴケを意味するものとする。すなわち、「生長ミズゴケ」には、栽培された、または、野生のミズゴケ(水分が十分に含まれている状態)と、加熱処理等の殺菌死滅処理がおこなわれていない、単純乾燥ミズゴケを含むものとする[単純乾燥ミズゴケは、葉緑素が失われてしまい、変色するものの、乾燥後、相当の長時間が経過したものでなければ、水分を供給すれば、生命活動を再開する可能性があることが知られている(概ね、常温で1ヶ月程度以下の乾燥期間が、乾燥後の生命活動再開の限界であると考えられる)]。
また、本発明において、「乾燥ミズゴケ」とは、上記の殺菌死滅処理を加えた乾燥ミズゴケと、単純乾燥ミズゴケの双方を意味するものとするが、経済性等を考慮すると、殺菌死滅処理を加えた乾燥ミズゴケを用いることが好適である。なお、「乾燥ミズゴケ」といっても、本発明品は、使用に際して、乾燥ミズゴケが水分を含有することが前提となるので、本発明品の製造時点〜使用時点のいずれの時点において、乾燥ミズゴケに水分を含ませても、本発明の技術的範囲に入るものとする。
また、「生長ミズゴケ」、「乾燥ミズゴケ」共、本発明が適用され得るミズゴケは、コケ植物蘚類 ミズゴケ科 ミズゴケ属(Sphagnum L.)に属する全てを意味し、例えば、日本国原産のものであれば、オオミズゴケ(Sphagnum palustre L.)、イボミズゴケ(Sphagnum papillosum Lindb.)、ムラサキミズゴケ(Sphagnum magellanicum Brid.)、キレハミズゴケ(Sphagnum aongstroemii C.Hartm)、キダチミズゴケ(Sphagnum compactum DC.)、コアナミズゴケ(Sphagnum microporum Warnst.ex Card)、コバノミズゴケ(Sphagnum calymmatophyllum Warnest.& Card.)、ユガミミズゴケ(Sphagnum subsecundum Nees ex Sturm)、ホソバミズゴケ(Sphagnum girgensohnii Russow)、チャミズゴケ(Sphagnum fuscum(Schimp.)H.Klinggr.)、ヒメミズゴケ(Sphagnum fimbriatum Wilson ex Wilson & Hook.f.)、スギハミズゴケ(Sphagnum capillifolium(Ehrh.)Hedw.)、ホソベリミズゴケ(Sphagnum junghuhnianum Dozy & Molk.Subsp.Pseudomolle(Warnest.)H.Suzuki)、ワタミズゴケ(Sphagnum tenellum Hoffm.)、ハリミズゴケ(Sphagnum cuspidatum Hoffm.)、アオモリミズゴケ(Sphagnum recurvum P.Beauv.)、ウロコミズゴケ(Sphagnum squarrosum Crome)等を挙げることができる。また、日本国以外の地域原産のミズゴケを、本発明に適用することも可能であることは勿論である。
これらのミズゴケの中でも、オオミズゴケは、「生長ミズゴケ」としても、「乾燥ミズゴケ」としても、本発明を適用するのに好適なミズゴケの一つである。
第1図は、生長ミズゴケの外観を示した図面である。
第2図は、基本的な態様の本ミズゴケ栽培基の製造工程等の一例を示した図面である。
第3図は、基本的な態様の本ミズゴケ栽培基の製造工程等の他の例を示した図面である。
第4図は、2単位以上の生長ミズゴケを用いる、基本的な態様の本ミズゴケ栽培基の製造工程等の一例を示した図面である。
第5図は、2単位以上の生長ミズゴケを用いる、基本的な態様の本ミズゴケ栽培基の製造工程等の他の例を示した図面である。
第6図は、器物を用いる態様の、本ミズゴケ栽培基の製造工程等の一例を示した図面である。
第7図は、器物を用いる態様の、本ミズゴケ栽培基の製造工程等の他の例を示した図面である。
第8図は、積極的なデザインの器物を用いる態様の、本ミズゴケ栽培基の製造工程等の例を示した図面である。
第9図は、凹部近傍でブルトを形成した生長ミズゴケが、加速度的に増殖する過程を図示した模式図である。
第10図は、増設用部材を用いた態様を示した図面である。
第11図は、増設用部材を用いて増設平面を設けた、本ミズゴケ栽培システムの一部の縦断面を示した図面である。
第12図は、本ミズゴケ栽培基を、有水部に載置することにより、本栽培システム等の一態様を示した図面である。
第13図は、予め、存在する地面やコンクリート面に穴を開けて、そこに、事後的に本ミズゴケ栽培基を設ける態様を示した図面である。
第14図は、ミズゴケ栽培用の人工圃場の一態様を示した図面である。
第15図は、バケツ状の器物を用いる、本ミズゴケ栽培基の例を示した図面である。
第16図は、休耕田等において、本栽培システム等を用いる態様の一例を示した図面である。
第17図は、本ミズゴケ栽培基を、懸垂機構を用いて、有水部の底部よりも上に配置することにより、本栽培システム等を行う態様を示した図面である。
第18図は、懸垂機構の別の態様の一例等を示した図面である。
第19図は、斜面における、本栽培システムの使用の一態様を示した図面である。
第20図、本ミズゴケ栽培基を、浮力により、有水部の水面近傍に浮上させることにより、本栽培システムを行う態様の例を示した図面である。
第21図、本ミズゴケ栽培基を、浮力により、有水部の水面近傍に浮上させることによる、本栽培システムの大規模な実施例を示した図面である。
第22図は、発泡スチロール等の軽量素材を用いた本ミズゴケ栽培基の一態様を示した図面である。
第23図(1)は、発泡スチロール等の軽量素材を用いた本ミズゴケ栽培基の他の態様を示した図面である。
第23図(2)は、発泡スチロール等の軽量素材を用いた本ミズゴケ栽培基の他の態様を示した図面である。
第23図(3)は、発泡スチロール等の軽量素材を用いた本ミズゴケ栽培基の他の態様を示した図面である。
第24図は、第1の態様の本ミズゴケ栽培基の実際像の一例を示した写真である。
第25図は、第1の態様の本ミズゴケ栽培基の生長試験の初期段階を示した写真である。
第26図は、第1の態様の本ミズゴケ栽培基の生長試験の終了段階を示した写真である。
第27図は、浮遊させた本ミズゴケ栽培基の生長試験の終了段階を示した写真である。
第28図は、デザイン化した、第2の態様の本ミズゴケ栽培基の実際像の一例を示した写真である。
第29図(1)は、ミズゴケの大量栽培の結果について示す写真の一方である。
第29図(2)は、ミズゴケの大量栽培の結果について示す写真の他方である。
本ミズゴケ栽培基について
本ミズゴケ栽培基は、少なくとも、(1)定形化されている乾燥ミズゴケの集合物(以下、乾燥ミズゴケ定形物ともいう)と、(2)生長ミズゴケ、により構成される。
(1)乾燥ミズゴケ定形物
乾燥ミズゴケ定形物は、文字通り、乾燥ミズゴケが一定の形状に固定されてなるものである。この乾燥ミズゴケ定形物の形状は、特に限定されないが、生長ミズゴケを、後述する本栽培方法や本栽培システムにおいて、有水部の水面よりも、生長ミズゴケの生長点を上に維持することが可能な形状であることが必要である。この条件を満たす限り、乾燥ミズゴケ定形物は、あらゆる形状をとり得る。例えば、本ミズゴケ栽培基の主要な態様の一つとして、「定形化された乾燥ミズゴケの集合物に凹部が設けられており、この凹部において、まとまった状態の生長ミズゴケの茎部の1単位以上が圧縮された状態で嵌め込まれ、かつ、この生長ミズゴケの生長点が、前記乾燥ミズゴケの集合物の凹部において実質的に露出している」が認められるが、この態様に基づき、乾燥ミズゴケ定形物において、まとまった状態の生長ミズゴケの茎部を嵌め込むべき凹部が設けられた態様を例示することができる。
乾燥ミズゴケ定形物の内容と、それらに対応する製造方法は、例えば、以下の手段が挙げられる。
a)事後的に固化可能な成分を、繋ぎ成分として用いる方法
「事後的に固化可能な成分」としては、例えば、水等の溶媒を加えた粘土類、同紙繊維等を挙げることができるが、これらの中でも、水を加えた紙繊維を含む成分が、好適である。すなわち、乾燥ミズゴケ定形物が、少なくとも紙繊維を含有する繋ぎ成分で定形化されていることが好適である。
紙繊維は、例えば、粉砕紙、または、紙前駆物として提供され得る。粉砕紙とは、文字通り、粉砕した紙であり、紙の種類は、特に限定されない。例えば、新聞紙、衛生用紙、雑誌類、チラシ、コピー用紙等を、紙として使用することが可能であり、また、ケナフ紙(ケナフの植物繊維により普通紙の製造工程に準じて製造され得る紙)を紙として用いることもできる。粉砕とは、基となる紙の一部または全部が紙繊維単位まで細かくなっている状態をいう。粉砕手段は、特に限定されないが、水中における剪断刃による剪断、同やすり刃による削り出し、さらには、同手もみ等により、所望の粉砕紙を調製することができる。
紙前駆物とは、パルプから精製した、紙の直接的な原料となる水を含んだ植物繊維である。
紙繊維と水の混合割合は、特に限定されないが、質量比で、紙繊維(乾燥質量):水=1:4000〜1:10程度、好適には、同1:3000〜1:500程度の範囲である。
また、必要に応じて、上記の紙繊維と水以外の成分を添加することができる。例えば、砂利、砂、土、陶器粉、ガラス粉、灰類、軽量骨材、粘土、ピートモス、パーライト等の土質細物(形態が土に似た細かい物)、各種のデンプン等の透水性粘結成分等を挙げることができる。また、例えば、植物繊維(紙繊維は除く)、乾燥ミズゴケ、植物の種子等を含有させることができる。
なお、事後的に固化可能な成分を、別個に調製して、これを、乾燥ミズゴケの集合物を定形化する際に、乾燥ミズゴケに対して塗布を行う等、用時に組み合わせることも可能である。また、前もって、事後的に固化可能な成分中に、乾燥ミズゴケを含有させた、乾燥ミズゴケの含有組成物として、これを本ミズゴケ栽培基の製造に用いることも好適である。
例えば、事後的に固化可能な成分を、上述の紙繊維等を含有する含水組成物とする場合、質量比で、紙繊維等:乾燥ミズゴケ(乾燥質量)=1:100〜1:20程度として、これと水を混合して、紙繊維等と乾燥ミズゴケの含有量が、組成物に対して1〜20質量%程度となるように水を加えた含水組成物とすることが好適である。
b)器物の凹部を利用する方法
「器物」とは、静置状態で一定の形状を有する物体(ただし、電力等による駆動力による形状の変化を伴う物体も、器物の範疇に入るものとする)のことを意味するものである。形状は、乾燥ミズゴケを一定形状に固定することが可能な凹部を設けることができる限り、全く限定されない。また、素材も限定されるものではなく、木、石、プラスチック、発泡スチロール、ゴム、金属、素焼き物、陶器、磁器、粘土、炭素繊維、ガラス、軽石、木炭等を用いることができる。ただし、少なくとも、生長ミズゴケが直接接触する部分、例えば、後述する、「乾燥ミズゴケの集合物の凹部、または、器物の凹部の生長ミズゴケ側の開口部と実質的に連続した平面および/または曲面の表面」は、生物の栄養源を実質的に含まない素材で構成されていることが好適である。具体的には、上に列挙した素材は、この生物の栄養源を実質的に含まない素材として例示できるが、例えば、木材、紙粘土、腐葉土等は、生物、特に、細菌類、菌類、藻類、ミズゴケ以外のコケ植物等の、ミズゴケの生育と競合し得る微生物が資化可能な炭素源が無視できない程度に含有されており、少なくとも、生長ミズゴケが直接接触する部分の素材としては、好適とはいえない。
b−1)器物の凹部が、この器物を貫通する貫通口である場合には、生長ミズゴケと接触している「定形化された乾燥ミズゴケの集合物」が、栽培基の底部において実質的に露出している。この実質的に露出した乾燥ミズゴケの集合物と有水部の水が接触し、この水が乾燥ミズゴケに浸潤した状態で、生長ミズゴケとの接触部分へと移行することにより、生長ミズゴケに水が供給されて、生長ミズゴケの養生が行われる。生長ミズゴケが、乾燥ミズゴケと共に、有水部の水と直接に接触する態様とすることも可能であるが、この場合、浸潤水中の不純物を濾過する乾燥ミズゴケの水の濾過作用を、生長ミズゴケに対して活かしきれないこととなる。言い換えれば、有水部の水に対しては、上記の定形化された乾燥ミズゴケの集合物のみを直接に接触させて、生長ミズゴケには、乾燥ミズゴケを介した浸潤水のみを供給する態様とすることが、生長ミズゴケに、乾燥ミズゴケにより濾過された水を供給されることとなり、好適である。
特に、水の供給源となる有水部の水が、微生物を豊富に含み得る水、例えば、富栄養化した湖沼や、汚れた河川の水、下水の単純浄化水等である場合には、水と共に、これらの微生物を生長ミズゴケに接触させてしまう可能性が強い。よって、有水部を、上記のような微生物を豊富に含み得る水の水源とする場合は、器物の素材を水不透性の素材、例えば、石、プラスチック、発泡スチロール、ゴム、金属、陶器、磁器、粘土、炭素繊維、ガラス等、とすることが好適である。このような場合に、あえて器物の素材として透水性の素材、例えば、素焼き物、紙粘土、砂礫、軽石、透水組成物(後述する)等を用いる場合には、生長ミズゴケと上記の透水性が認められる素材との間に水不透性の素材(例えば、水不透性のビニールシート等)を介在させて、透水性の組成物と生長ミズゴケとの間の水の流通を遮断することが好適である。
b−2)上記の素材のうち、発泡スチロールは、水不透性で、かつ、生物の栄養源を実質的に含有しないだけではなく、所望の形状への加工が容易であり、かつ、軽量であり、取り扱い易いという長所がある。また、水に浮くので、本ミズゴケ栽培基を水に浮かせる態様とする場合には、特に好適な素材である。ただし、その反面、発泡スチロールにおいて自然な風合いを出すことは非常に困難であり、例えば、発泡スチロールの表面にそのまま着色処理を施しても、人工的な雰囲気を抑えることは簡単ではない。
このような場合、以下のα)〜δ)の工程で、発泡スチロール等の素材の表面を自然な風合いとすることが可能である(この工程を行うことが可能な対象は、発泡スチロールに限らず、本ミズゴケ栽培基における器物となり得るあらゆる素材を選択することが可能である)。
α)発泡スチロール等の表面に、事後的に硬化し、かつ、固化前は粘調な液体素材を塗布する。かかる事後的な硬化素材としては、接着剤、例えば、シリコーン系接着剤、ウレタン系接着剤、酢酸ビニル系接着剤、セルロース系接着剤、合成ゴム系接着剤、紫外線硬化系接着剤、嫌気性接着剤、紫外線嫌気性接着剤等を挙げることができるが、シリコーン系接着剤が好適である。
この塗布の方法は、特に限定されず、例えば、上記液体素材を入れた射出用容器(射出用チューブ等)から、当該液体素材を対象物の表面に射出し、これを小手等で均すことも可能であり、薄く塗りたい場合は、刷毛等に当該液体素材を付着させて、これを対象物表面に塗布することも可能である。
β)次に、対象物の表面に塗布された上記液体素材を毛羽立たせる。この工程を行う方法は、特に限定されないが、例えば、対象物表面の液体素材の表面に剛性を有する起毛性部材(例えば、針金の刷毛)でたたくことにより、上記液体素材を対象物表面上において毛羽立たせることができる。
γ)次に、対象物表面において毛羽立たせた液体素材の上から、土質細物(砂利、砂、土、陶器粉、ガラス粉、灰類、軽量骨材、粘土、ピートモス、パーライト等)、顔料、色素、コケ植物、緑藻類等をふりかけた後、好適には、対象物表面に、通常の上水道口にシャワーノズルを付加して生成させた程度の水流を接触させて、余分なふりかけ物を洗い流す。次いで、上から対象物表面を軽くなでつけてならし、次いで、この液体素材を固化(乾燥、紫外線照射、嫌気等の事後的硬化素材の種類に応じた固化方法による)させることにより、土壁にも似た、自然な風合い表面を、対象物上に形成することができる。また、後述する透水組成物の前駆組成物を、上記の土質細物として用いることも可能であり、かつ、好適である。
δ)上記γ)の対象物の表面に、塗膜を設けることが、対象物の表面における微生物の栄養源が表面に露出するのを防ぐために好適である。ただし、対象物の表面上にふりかけた物が、ミズゴケ以外のコケ植物や緑藻のような生物である場合は、この塗膜を設ける工程を行うことは、当該生物が生命活動を行う上での障害になるため、好適ではない(ただし、ミズゴケ以外のコケ植物と生長ミズゴケの生育と競合する可能性がある)。塗膜は、対象物の表面上に所望するコーティング素材の塗布を行い、これを乾燥・固化させることで設けることができる。このコーティング素材としては、特に限定されず、現在、上薬として提供されている製品を用いることが可能であるが、可能な限り、透明性が保たれ、かつ、安全性の高いものを用いることが好適である。例えば、水性の下地安定剤として販売されているアクリル樹脂の水性剤(アトミクス株式会社製等)を、このコーティング素材として転用することが非常に好適である。さらに、必要に応じて、このコーティング素材の上面に防水処理、例えば、シリコーンコーティング剤の塗布処理を行うことにより、防水を行うことができる。
上記α)〜δ)の工程に従うことにより、発泡スチロール等の表面を、自然な風合いの表面とすることが可能である。
b−3)透水性の素材として好適なものとして、「粉砕紙及び/又は紙前駆物(以下、粉砕紙等ともいう)、並びに、土質細物を含有する組成物」(透水組成物ともいう)を挙げることができる。
透水組成物は、製品への加工の過程で、加熱処理を行わずに済む、省エネルギー型の天然素材である。
「粉砕紙」、「紙前駆物」及び「土質細物」は、前記の定義と同一である。
製品製造に際して、透水組成物には、水を含有させることが必要である。
すなわち、透水組成物は、それらの前駆組成物を経て形成される。すなわち、まず、粉砕紙等、土質細物および水を含有する前駆組成物を調製して、これらの前駆組成物が、透水組成物の基礎として用いられる。
透水組成物またはその前駆組成物における、粉砕紙等および土質細物の比率は、特に限定されないが、概ね、質量比で、粉砕紙等:土質細物=1:2〜1:4程度が好ましい。粉砕紙等の比率が多くなりすぎると、透水組成物自体が脆くなり、色合いにおいても、紙の色が全面に出てしまい、色彩意匠的にも適切性を欠く場合がある。また、土質細物の比率が多くなり過ぎると、透水組成物の基礎組成物における固着性が低下し、乾燥しても安定して定形化することが困難となるばかりか、両組成物の単位体積当りのコストが上昇する傾向が強くなる。
なお、透水組成物において用いる土質細物として、粘土を含有させることが好適である。かかる粘土の含有量は、特に限定されず、これらの組成物の土質細物全部を、粘土とすることも可能であるが、一般的には、質量比で、粘土:粘土以外の土質細物=1:10〜1:1程度が好ましい。
また、透水組成物の前駆組成物における粉砕紙等、土質細物と、水の比率は、特に限定されず、自由に選択し得るが、一般的には、前駆組成物全量に対して1〜30質量%、同3〜25質量%程度が好ましい。水の含有量が少なすぎると、粉砕紙を用いる場合の紙の粉砕作業が難しくなり、粉砕紙と土質細物との十分な混練も困難となる。水の含有量が多過ぎると、前駆組成物の重量が重くなりすぎ、組成物の調製作業に過度の負担を与えるばかりか、水資源の浪費となってしまう可能性がある。
なお、透水組成物には、上記の必須の要素の他に、必要に応じて他の要素、例えば、植物繊維(例えば、根張り面を形成した根部、剪断した根部等の植物の根部等)、わら、生ゴミ粉砕物、炭片、鉱石類、植物の種子、乾燥ミズゴケ等、を含有させることができる。
さらに、透水組成物にコケ植物(乾燥ミズゴケを除く)を含有させて、透水組成物の表面にコケ植物を露出させることも可能である。
具体的には、透水組成物の前駆組成物に、コケ植物を含有させることで、最終的に、所望のコケ植物を含有する透水組成物を得ることができる。
コケ植物は、自然界に自生しているコケ植物をそのまま用いることも可能であり、栽培法で得たコケ植物を用いることも可能である。また、いわゆる培養法〔例えば、「植物バイオテクノロジーII」,東京化学同人:現代化学・増刊20の第39頁「蘚苔類の培養」(小野著)等参照のこと〕を用いた「培養ゴケ」を用いることも可能であるが、通常は、栽培法で得たコケ植物を用いることが好ましい。
透水組成物に含有させ得るコケ植物の種類は特に限定されない。
例えば、Atrichum undulatum(Hedw.)P.Beauv(Namigata−Tachigoke)等のAtrichum P.Beauv.(Tachigoke−zoku);Pogonatum inflexum(Lindb.)Lac.(Ko−sugigoke)等のPogonatum P.Beauv(Niwa−sugigoke−zoku);Polytrichastrum formosum(Hedw.)G.L.Smith等のPolytrichastrum G.L.Smith(Miyama−sugigoke−zoku);Polytrichum commune Hedw.(Uma−sugigoke)等のPolytrichum Hedw.(Sugigoke−zoku);Ceratodon purpureus(Hedw.)Bird.(Yanoueno−akagoke)等のCeratodon Bird.(Yanouenoaka−goke−zoku);Dicranum japonicum Mitt.(Shippogoke)、Dicranum nipponense Besch(O−shippogoke)、Dicranum scoparium Hedw.(Kamojigoke)、Dicranum polysetum Sw.(Nami−shippogke)等のDicranum Hedw.(Shippogoke−zoku);Leucobryum scabrum Lac.(O−shiragagoke)、Leucobryum juniperoideum(Brid.)C.Mull.(Hosoba−okinagoke)等のLeucobryum Hampe(Shiragagoke−zoku);Bryum argenteum Hedw.(Gingoke)等のBryum Hedw.(Hariganegoke−zoku);Rhodobryum giganteum(schwaegr.)Par.(O−kasagoke)等のRhodobryum(Schimp.)Hampe(Kasagoke−zoku)、Plagiomnium acutum(Lindb.)T.Kop.(Kotsubogoke)等のPlagiomnium T.Kop.(Tsuru−chochingoke−zoku);Trachycystis microphylla(Dozy et Molk.)Lindb.(Kobano−chochingoke)等のTrachycystis Lindb.(Kobano−chochingoke−zoku);Pyrrhobryum dozyanum(Lac.)Manuel(Hinokigoke)等のPyrrhobryum Mitt.(Hinokigoke−zoku);Bartramia pomiformis Hedw.(O−tamagoke)等のBartramia Hedw.(tamagoke−zoku);Climacium dendroides(Hedw.)Web.et Mohr(Furoso)、Climacium japonicium Lindb.(Koyano−mannengusa)等のClimacium Web.et Mohr(Koyano−mannengusa−zoku);Racomitrium ericoides(Web.et Brid)Brid(Hai−sunagoke)、Racomitrium japonicium Dozy et Molk.(Ezo−sunagoke)、Racomitrium canescens(Hedw.)Brid.ssp.latifolium(Sunagoke)、Racomitrium barbuloides Card.(Kobanosunagoke)等のRacomitrium Brid.(Shimofurigoke−zoku);Hypnum plumaeforme Wils.(Haigoke)等のHypnum Hedw.,nom.cons.(Haigoke−zoku);Thuidium Kanedae Sak.(Toyama−shinobugoke)等のThuidium Bruch et Schimp.in B.S.G.(Shinobugoke−zoku)等を挙げることができるが、これらに限定されるものではないが、ミズゴケとこれらのコケ植物の好適な生育環境が異なる場合が多いので、様々な要素、例えば、生育pH等を考慮して、用いるコケ植物を選択することが好適である。
これらのコケ植物は、単独種類のコケ植物を用いることは勿論のこと、2種以上を組み合わせて用いることも可能である。
コケ植物を含有する透水組成物を、本ミズゴケ栽培基の乾燥ミズゴケ定形物として用いる場合には、少なくとも、製品完成時点においては、コケ植物が、透水組成物の表面において露出していることが、コケ植物の光合成の機会の確保の観点からも、意匠上の観点からも、好適である。
このコケ植物の露出手段として、まず、透水組成物中のコケ植物の含有比率を高く設定することが挙げられる。具体的には、コケ植物を、透水組成物のコケ植物以外の含有物の2倍量〜15倍量(質量比)程度となるように含有させることが挙げられる。コケ植物の含有量が、透水組成物のコケ植物以外の含有物の2倍量未満であると、コケ植物以外の要素(紙繊維、土質細物及び乾燥ミズゴケ)が、透水組成物の表面を覆ってしまう割合が多くなり、コケ植物が十分に光合成を行うことが難しくなる。また、同コケ植物の含有量が15倍量を超えると、透水組成物におけるコケ植物の固定力が弱くなり過ぎる傾向が認められる。
他の露出手段として、透水組成物におけるコケ植物の含有量を2倍量(質量比)未満、好適には、0.1〜1倍量としつつ、成形した透水組成物の表面近傍のコケ植物を、様々な露出手段により、露出させる態様が挙げられる。
例えば、1)電動のやすり付き工具等で、成形して乾燥させた透水組成物の表面を薄く削り出し処理をする態様や、最も好適な態様として、2)成形した透水組成物の前駆組成物の水分が失われる前に、その表面を、水流と接触させること、等を挙げることができる。
露出手段2)は、効率的にコケ植物の露出を行うことが可能であること、および、露出工程において、削り出しのような埃が発生しないという点において、極めて有利である。
水流を用いた露出工程2)において、水流を接触させる前駆組成物は、水分が含まれている「固化前の状態」であるから、通常であれば、水流によって組成物は崩れてしまうはずである。しかしながら、当該前駆組成物の水流を接触させる面の表面近傍に存在するコケ植物が、水流をトラップすることにより、組成物全体が崩れてしまうことを防御することとなる。このために、ごく表面の前駆組成物の土質細物や粉砕紙等のみが水流との接触によって洗い流される結果、所望するコケ植物の露出状態を非常に簡便に実現することができる。なお、この水流の強さの程度は、日本国において、通常の状態(給水制限時のように、極端に水圧が下がっている場合は、水圧が不足する可能性がある)で用いる家庭用の上水道から連結したノズル付きホースで実現される程度の水流で十分である。
また、成形する透水組成物の形状が球状に近似した形状である場合には、透水組成物の前駆組成物で形成された所望の成形物を、完全乾燥前に、複数個、電気洗濯機のような、水流発生機構が設けられている水槽に入れ、この水槽において水流を発生させることにより、水流と透水組成物の成形物同士の接触による摩擦力により、コケ植物の露出工程を行うことができる。なお、この水槽における処理は、通常の家庭用の洗濯機程度の水流中で、2〜10分間程度、透水組成物の成形物同士を接触させることで行うことができる。
以上述べた内容の透水組成物の前駆組成物を所望の形状として、これを乾燥させることにより、当該形状の透水組成物を素材とする器物が提供される。
b−4)器物の凹部が、この器物を貫通する貫通口ではなく、底が閉じた凹部であり、かつ、この底が閉じた凹部に通ずる吸水口が設けられていない場合には、器物自体を介して凹部内の乾燥ミズゴケに、有水部の水を供給するために、器物の素材として、上述した透水性が認められる素材を選択することが必要となる、このような透水性の素材としては、素焼き物、紙粘土、砂礫、軽石等を例示することができる。ただし、この態様は、有水部の水が微生物を豊富に含み得る水、例えば、富栄養化した湖沼や、汚れた河川の水、下水の単純浄化水等である場合には、水と共に、これらの微生物を生長ミズゴケに接触させてしまう可能性が強い。
c)その他の定形化方法
上述したa)、b)の方法の他に、例えば、綿糸、絹糸、針金等の線状部材や、フィルム状の部材、網状の部材を、所望の形状に調えた乾燥ミズゴケに巻き付けて、乾燥ミズゴケを定形化することが可能である。また、例えば、地面やコンクリート面等に穴を設けて、この穴に乾燥ミズゴケを充填することも、「定形化」に含まれるものとする。
また、所望の形状に調えた乾燥ミズゴケの集合物の側面部分[本ミズゴケ栽培基を、ミズゴケの養生を行うことができる状態(本使用方法を行うことができる状態)として載置した場合の側面に該当する部分]の底部近傍全体に、上述したコケ植物を植え付け、その上から透明フィルムを被せて、植え付けたコケ植物を養生した後、この透明フィルムを取り外すことにより、乾燥ミズゴケの集合物が、その周囲に植え付けたコケ植物による定形化を行うことも可能である。
また、上記のコケ植物の代わりに、乾燥ミズゴケの集合物の側面部分の最上部近傍全体に、一般植物の種子を播き、これを発根させて当該側面に根張り面を形成させて、フィルムと種子の部分を除去することにより、根張り面による乾燥ミズゴケの集合物の定形化を行うことも可能である。
なお、上述したa)〜c)の定形化方法は、1種類の方法を用いることも可能であるが、2種類以上の方法を組み合わせて用いることも可能である。特に、本ミズゴケ栽培基において、器物を用いる場合には、a)の方法を組み合わせて用いることが好適である。
(2)生長ミズゴケ
生長ミズゴケは、第1図に示したような外観のミズゴケ植物体10の、茎部11、枝部および葉部12のうち、少なくとも、生長点を有する茎部が残った状態のものを用いるのが好適である。
ここで、ミズゴケの茎部が「生長点を有する」とは、仮に、ミズゴケの茎部を切断した場合に、その切断した部分から、ミズゴケの植物体が伸長し得る「生長点」であり得ることを意味するものとする。具体的には、本ミズゴケ栽培基に用いるミズゴケ植物体は、茎部が、2cm程度以上、確保されていることが好適である。葉部(葉状体の部分)と枝部(枝分かれしている部分)は、意匠的には確保されていることが好適であるが、確保されていなくてもよい。生長点を含む茎部さえ確保されていれば、本ミズゴケ栽培基におけるミズゴケ栽培を行うことが可能である(葉部と枝部自身も生長可能である。なお、茎部等に生長点が存在するか否かの判断は、茎部等の切断面近傍において、目視で緑色がかった彩色が認められるか否かによって行うことができる。すなわち、緑色がかった彩色が認められる場合には、生長点が確保されているものと判断し、緑色が失われている場合には、生長点が実質的に失われてしまっていると判断することが可能である。
生長ミズゴケの茎部が、「まとまった状態」である、とは、何らかの態様で、複数本の生長ミズゴケの茎部が集約している状態を意味するもので、代表的には、束ねられた状態の茎部を挙げることができる。この場合、茎部同士が絡まっていても、絡まっていなくても構わない。また、生長ミズゴケが、たとえ1本であっても、その茎部を折り込むことにより、1本の茎部を、「まとまった状態」とすることができる。また、本ミズゴケ栽培基等に用いる「まとまった状態の茎部」は、茎部同士で圧縮された状態とすることが、後述するブルト形態を生長ミズゴケにおいて形成させる上で好適である。
また、この「まとまった状態の茎部」は、本ミズゴケ栽培基において、1カ所以上に、1個以上を配置することが可能であり、配置部位も、乾燥ミズゴケの固定物の内部または外側とすることができる。この「まとまった状態の茎部」は、乾燥ミズゴケ定形物に接触していることが、乾燥ミズゴケ定形物に吸収された水分(浸潤水)を、生長ミズゴケが、その生長に利用するために必要である。
さらに、生長ミズゴケの生長点を含む部分が、乾燥ミズゴケ定形物から、実質的に露出していることが必要である。これは、生長ミズゴケの生長点が、本ミズゴケ栽培基において、「水没しない状態」であることが必要であり、この状態は、生長ミズゴケの生長点が、乾燥ミズゴケ定形物から実質的に露出していることで、容易に維持が可能だからである。
ここで、「実質的に露出している」とは、生長ミズゴケが、乾燥ミズゴケ定形物から、凸状に露出している状態は勿論のこと、例えば、乾燥ミズゴケ定形物に設けられた凹部の深さよりも、生長ミズゴケ部分が短く、結果として生長ミズゴケの先端部分が、この凹部の中に止まっている状態も、生長ミズゴケの生長により、生長ミズゴケの伸長部分が、乾燥ミズゴケ定形物の外部に露出する空間が確保されているような場合も含まれる。
また、本ミズゴケ栽培基の、上記の生長ミズゴケの露出部分と異なる部分の一部または全部において、乾燥ミズゴケの集合物が露出しており、この露出部分の乾燥ミズゴケの集合物が、本ミズゴケ栽培基の生長ミズゴケとの接触部分まで、連なっていることが必要である。この乾燥ミズゴケの露出部分が有水部の水と接触することにより、そこの水を吸収し、この吸収した水を、生長ミズゴケとの接触部分まで浸潤させ、生長ミズゴケに水を供給し、その結果、本ミズゴケ栽培基における生長ミズゴケの養生を行うことができるからである。
このように、本ミズゴケ栽培基の使用時において、上記の生長ミズゴケの露出部分と異なる、乾燥ミズゴケで構成される部分が、有水部の水と接触可能になっていることが必要である。上述したように、水を、乾燥ミズゴケを介して、生長ミズゴケに向けて供給することは、有水部において存在する不要な成分(汚れ等)を、乾燥ミズゴケの段階でろ過して、生長ミズゴケに供給し得る、という意義も認められる。このろ過の効果は、全長(1単位の乾燥ミズゴケの長手方向の長さのみならず、複数単位の乾燥ミズゴケを、長手方向に連結させた長さを含む)が長い乾燥ミズゴケを用いることで向上させることができる。
(3)本ミズゴケ栽培基の具体的な態様の例示
1)本ミズゴケ栽培基の第1の態様は、器物を用いない態様である。第2図は、この第1の態様の本ミズゴケ栽培基20A等の製造工程等の一例を示した図面である。
第2図(1)において、例えば、展開面上に配置したものを、内側に巻き込むことが可能であり、かつ、好適には、展開面上の水分を外部に逃すことが可能な間隙が設けられている、薄板状部材21の展開面上に、水分を含ませ、なおかつ、水に溶かした紙繊維等の、事後的に硬化可能な含水組成物を馴染ませた乾燥ミズゴケ22を敷き、その上に、好適には2本以上の生長ミズゴケ23を、その茎部231を、乾燥ミズゴケ22上に配置し、かつ、生長ミズゴケ23の葉部と枝部231が、乾燥ミズゴケ22の外側に位置するように載せ、これを、矢印211の方向に巻き込んで、薄板状部材21を取り外す。この薄板状部材21を取り外した後の状態を示しているのが、第2図(2)である。次いで、生長ミズゴケ23の茎部231を巻き込んで、乾燥ミズゴケの集合物の内部に生長ミズゴケが含まれている状態の、事後的に固化可能な含水組成物が馴染んだ状態の乾燥ミズゴケの集合物221の部分を矢印222の方向に圧縮して、本ミズゴケ栽培基20Aが出来上がる[第2図(3)]。このミズゴケ栽培基20Aは、事後的に固化可能な含水組成物の紙繊維等の繋ぎ成分により、定形化されている。そして、さらに、ミズゴケ栽培基20Aを乾燥することにより、乾燥ミズゴケの集合物221の、事後的に固化可能な含水組成物の水分が失われ、例えば、紙繊維等が、さらに強固な繋ぎとなって定形化した、本ミズゴケ栽培基20’Aが得られる[第2図(4)]。この乾燥させた本ミズゴケ栽培基20’Aは、乾燥した生長ミズゴケ23が、目視で緑色を帯びた色彩であることを目途に、乾燥ミズゴケの集合物221を有水部の水に接触させることにより、生長ミズゴケ23の栽培を行うことができる。生長ミズゴケ23の色彩から、緑色が失われてしまうと、水分を供給しても、生長ミズゴケ23が再生することが難しくなる傾向が認められる。
このようにして、生長ミズゴケ23の茎部231が、定形化した乾燥ミズゴケの集合物221の内部に接触した、本ミズゴケ栽培基の製造を行うことができる。
また、別途、乾燥ミズゴケ定形物を製造し、これに、茎部をまとまった状態とした生長ミズゴケの当該茎部を、接触させた状態として、固定することも可能であり、「定形化されている乾燥ミズゴケの集合物に凹部が設けられており、この凹部において、まとまった状態の生長ミズゴケの茎部の1単位以上が、好適には圧縮された状態で嵌め込まれ、かつ、この生長ミズゴケの生長点が、前記乾燥ミズゴケの集合物の凹部において実質的に露出している、本ミズゴケ栽培基」が提供され得る。例えば、第3図のように、両端が開口した円筒状部材241の一端に、凸部2421が設けられた、円筒部材241から脱着可能な、円形の底蓋242を、凸部2421が円筒内に向く方向に、嵌め込み配置して、これを底部とし、この中に、乾燥ミズゴケを含有する含水組成物243を流し込む[第3図(1):縦断面図]。次いで、上部から、円筒部材241の内壁に沿って滑動させることが可能な押し板244を押し込み、含水組成物243の圧縮・脱水を行い[第3図(2):縦断面図],円筒部材241から、含水組成物243の圧縮・脱水物として、乾燥ミズゴケ定形物24[第3図(3):縦断面図]が得られる。この乾燥ミズゴケ定形物24において、凸部2421に押し込まれて設けられた凹部2401に、茎部がまとまった状態の生長ミズゴケ245の茎部を、好適には圧縮して嵌め込むことで、本ミズゴケ栽培基25を得ることができる[第3図(4):縦断面図、同第3図(5):全体図]。
また、例えば、上記第2図の矢印211の巻き込みを行う前の段階で、生長ミズゴケ23の代わりに、棒状部材(図示せず)を、乾燥ミズゴケの上に載せて巻き込んだ後、この棒状部材を乾燥ミズゴケの集合物からとり外し、これを乾燥ミズゴケ定形物とすることができる。この乾燥ミズゴケ定形物の棒状部材をとり外した後に形成される凹部に、生長ミズゴケ23の、まとまった状態とした茎部231をはめ込むことで、本ミズゴケ栽培基を製造することも可能である。
なお、これらの例では、1単位の生長ミズゴケ23を用いているが、第4図のように、2単位以上の生長ミズゴケ23’を用いて、第2図に示したと同様の行程により[第4図(1):巻き込み行程]、2単位以上の生長ミズゴケ23’の茎部が、乾燥ミズゴケ定形物の内部において乾燥ミズゴケ22’と接触している、本ミズゴケ栽培基20Bを得ることができる[第4図(2)]。
また、凸部2421が1カ所設けられている、第3図の底蓋242に代えて、複数の凸部2422が設けられている底蓋242’を用いて、第3図と同様の行程を行い[第5図(1)],複数の凹部2402が設けられている乾燥ミズゴケ定形物24’を製造して、これらの凹部に、茎部がまとまった状態の、複数単位の生長ミズゴケ245’の茎部を、好適には圧縮して嵌め込むことで、本ミズゴケ栽培基25’を得ることができる[第5図(2):縦断面図]。
また、上述した通り、本ミズゴケ栽培基20Aと20Bは、事後的に固化可能な含水組成物により、定形化されているが、これに代えて、または、これと組み合わせて、他の方法、例えば、上記にc)として示した、綿糸、絹糸、針金等の線状部材や、フィルム状の部材を用いて定形化する方法や、コケ植物や、植物の根張り面により、乾燥ミズゴケの集合物を、定形化する方法を行うことにより、本ミズゴケ栽培基を製造することができる。
この第1の態様の本ミズゴケ栽培基の高さ[栽培基を載置する際の底部に該当する箇所から、乾燥ミズゴケの定形物の生長ミズゴケが露出している箇所までの距離(生長ミズゴケが複数の場合には、最も遠いもの):本ミズゴケ栽培基10Aにおいては、hに該当する]は、最大、乾燥ミズゴケが揚水可能な高さまでであり、本ミズゴケ栽培基の具体的な使用態様に応じて適切な高さを選択することができる。この揚水可能な高さは、乾燥ミズゴケの種類や品質等によって変動するものであり、正確に特定することは困難であるが、概ね60cm程度である。最小の高さは、生長ミズゴケが、有水部の水により水没しないことが、生長ミズゴケの生育にとって必要であるので、ある程度の高さは必須である。また、高さを0cm近辺としたミズゴケの栽培例は、すでに報告されている。本ミズゴケ栽培基の場合、この高さは、最低2cm程度は必要であり、5cm以上であることが好適である。この高さが2cm程度未満であると、乾燥ミズゴケ集合物に、生長ミズゴケを安定に固着した状態で接触させることが困難であり、生長ミズゴケが、有水部の水で水没しないように保つことも、実際上、困難である。
2)本ミズゴケ栽培基の第2の態様は、器物を用いる態様である。第6図は、この第2の態様の本ミズゴケ栽培基30A等の製造工程等の一例を、模式的に示した図面である。
第6図(1)において、両端が開口した円筒状部材311の一端に、円柱状の突出部3211が設けられた、円筒部材311から脱着可能な底蓋321を、突出部3211が上側になるように、嵌め込んで配置して、これを底部とする。次いで、円筒部材311と突出部3211との間に形成される隙間322に、透水組成物の前駆組成物を入れる(向かって右側の透水組成物の前駆組成物331は、水以外の含有成分が準溶解状態で含有されている態様のものであり、同左側の前駆組成物332は、例えば、前駆組成物331の水切りを行い、小片に分割して、これを基に造粒して、小粒子化して得られる、前駆組成物の小粒子である。実際には、前駆組成物331と332は、別々に用いるのが通常であるが、この図面においては、両者を同時に模式化している。第6図・第7図・第8図(1)において、同様である。)。次いで、円筒部材311の内壁と突出部3211に対して滑動可能なリング形の板状部材341で、隙間322を押し込んで、透水組成物の前駆組成物331と332を圧縮して、脱水・定形化を行っている。この圧縮行程の終了後、リング形の板状部材341を取り外し[第6図(2)]、次いで、円筒部材内で定形化した前駆組成物を取り出し、これを乾燥させることで、透水組成物を素材とした、円筒状の器物35A[第6図(3)]を得ることができる。この器物35Aの貫通口351に、例えば、本ミズゴケ栽培基25を押し入れることにより、器物35Aにより乾燥ミズゴケ集合物が定形化されている、本ミズゴケ栽培基30Aを得ることができる。
また、この器物35Aと乾燥ミズゴケの定形化を連続的な行程で行うこともできる。すなわち、第6図(2)に続いて、円筒状部材等を転置して、新たな底部に、凸部3421が設けられた、円筒部材311から脱着可能な円形の底蓋342を、凸部3421が円筒内に向くように、嵌め込み配置し、底蓋321を取り外し、再びリング形の板状部材341を用いて、定形化された透水組成物の前駆組成物331と332を、新たな底蓋342に向けて押し込む[第7図(1)]。次いで、底蓋321上において、筒厚の円筒状に定形化された前駆組成物331と332の上から、この円筒の横断面の内周円を、同じく内周円とする、両端が開口している筒状部材343を、定形化された前駆組成物331と332の内周円と筒状部材343の内周円が重なるように載置して、乾燥ミズゴケと事後的に固化可能な成分(好適には、紙繊維等の含水組成物)との混合物347を、この内周円の中に流し込み、これを、筒状部材343の内壁に沿って滑動可能な押し板344を用いて押し込む[第7図(2)]。次いで、押し板344と筒状部材343を取り外し、筒状部材311の内壁に沿って滑動可能な、筒状部材311の内周円の全面を押し込むことが可能な円状の押し板345で、成形対象物346の面ならしを行った後、筒状部材311等を取り外す。円柱状の成形対象物の外側は、前駆組成物331と332を素材とする器物3461であり、内側は、片面に凹部3463が設けられた、乾燥ミズゴケ定形物3462である[第7図(3)]。この乾燥ミズゴケ定形物3462は、器物3461の貫通口と、紙繊維等の含水組成物等の事後的に固化可能な成分の両者により、定形化されている。この成形対象物346の凹部に、茎部をまとまった状態とした生長ミズゴケの茎部を、好適には圧縮して嵌め込むことにより、本ミズゴケ栽培基30Aを得ることができる。
器物の形状は、特に限定されず、例えば、第8図(1)のように、器物を、透水組成物に、複数の貫通口352が設けられた板状体35Bとして、これらの貫通口352に、本ミズゴケ栽培基25を、それぞれの貫通口に押し入れることにより、器物35Bにより,複数の乾燥ミズゴケ集合物が定形化されている、本ミズゴケ栽培基30Bを得ることができる。
さらに、様々なデザインの器物を用いることにより、多様な形態の本ミズゴケ栽培基を製造することが可能である。例えば、第8図(2)は、下方から上方にゆるやかな曲線を描いてテーパーしている半球状部材の、頂部近傍から、底部へと貫通する貫通口353が設けられた透水組成物を素材とする器物35Cを製造し、その貫通口353に、例えば、本ミズゴケ栽培基25を押し入れ、さらに、この器物35Cに、目に見立てた着色部材3541と、口に見立てた着色部材3542と、一端にループが設けられた金属棒3543を嵌め込んで固定して、さらに、器物35Cの一部を、編み物3544で覆って、特有の顔型デザインの本ミズゴケ栽培基30Cを得ることができる。また、第8図(3)(縦断面図)のように、球状とした乾燥ミズゴケ3551の外側を、透水組成物で被覆して、球状の器物3552で覆い、球状に定形化を行う。その球状体の表面に、乾燥ミズゴケ定形物3551の中まで達する深さの凹部3553を設け、その凹部の中に生長ミズゴケ3554の茎部を、好適には圧縮して嵌め込むことで、球状の本ミズゴケ栽培基30Dを得ることができる。
これらの第2の態様の本ミズゴケ栽培基における生長ミズゴケまでの高さも、第1の態様の本ミズゴケ栽培基と同様に、最大、乾燥ミズゴケが揚水可能な高さまでであり、具体的には、概ね60cm程度が最大であり、最小の高さは2cm程度であり、5cm以上であることが好適である。
本栽培方法と本栽培システムについて
上述した本ミズゴケ栽培基は、本栽培システムを用いて、本栽培方法を行うことによって、ミズゴケの栽培を行うことが可能であり、ミズゴケの栽培を通じて環境の改善を図ることができる。
本栽培方法と本栽培システムにおいては、本ミズゴケ栽培基の、生長ミズゴケの露出部分と異なる部分、典型的には、乾燥ミズゴケの集合物、を有水部の水と接触させて、乾燥ミズゴケの集合物に水を浸潤させ、生長ミズゴケに水(浸潤水)を供給しつつ、生長ミズゴケの生長点、すなわち、枝部および葉部として生長する部分を、有水部の水面や、有水部の水面よりも高い位置に維持することが必要である。
(1)「有水部」とは、本ミズゴケ栽培基に直接的に水を供給する、水が存在し得る場を広く意味するものであり、人工物であっても、自然物であってもよい。すなわち、自然物であれば、湖沼、湿原、河川、地下水層等の天然有水部が該当し、人工物であれば、皿、壺、バット等の小規模の人工有水部;貯水槽、ため池、人工河川、人工地下水層、プール、ダム、田圃等の比較的大規模な人工有水部;その他、所望の設計に基づいて製造される人工有水部全般を意味する。
(2)有水部の水と接触させる、本ミズゴケ栽培基の部分は、この接触によって、少なくとも、有水部の水が、乾燥ミズゴケの集合物に接触することが可能である限り、特に限定されない。最も一般的には、水との接触部分において、乾燥ミズゴケの集合物が、実質的に露出している態様を挙げることができる。ここで、「実質的に露出」とは、本ミズゴケ栽培基を有水部に載置した場合に、有水部の水が、直接的に乾燥ミズゴケの集合物に接触することができる状態にあることを意味するものであり、その限りにおいて、上記の器物を用いない本ミズゴケ栽培基や、器物を用いる場合であって、乾燥ミズゴケの集合物が器物から突出している場合や器物に設けられた底部の貫通口が平らになるように充填されている場合を意味することは勿論であるが、これに加えて、この貫通口に凹部を形成するように、乾燥ミズゴケの集合物が充填されていても、上記の有水部の水との接触条件を満足する限り、「実質的に露出」の範疇に含まれる。また、乾燥ミズゴケの集合物と有水部の水との間に、スポンジ、透水性フィルム、網状素材等の透水性素材を、有水部の水が、乾燥ミズゴケの集合物に接触することができる量的・質的限度で設けることもできる。また、この底部の貫通口入り口近傍の横断面積は、生長ミズゴケ側の貫通口の入り口近傍の横断面積と同一であってもよいが、小さくても、生長ミズゴケの養生に十分な量の浸潤水が、乾燥ミズゴケの集合物において確保される限りは許容される。むしろ、底部の貫通口近傍の横断面積が、生長ミズゴケ側よりも小さいことは、乾燥ミズゴケの集合物の抜けを簡便に防止し、かつ、乾燥ミズゴケを節約することが可能であり、好適である場合も認められる。
乾燥ミズゴケ集合物が「実質的に露出した」態様をとり得る本ミズゴケ栽培基としては、例えば、上述した第1の態様の本ミズゴケ栽培基20A、20B、25が挙げられる。これらを、生長ミズゴケを上として、有水部において載置することにより、底部に露出している乾燥ミズゴケの集合物に水が接触して、この接触点から、生長ミズゴケの近傍まで、乾燥ミズゴケを介して水が引き揚げられ、生長ミズゴケに水が供給され、これにより、ミズゴケの養生が行われる。また、第2の態様の本ミズゴケ栽培基、30A、30B、30Cは、それぞれ、器物に設けられた貫通口の底部に乾燥ミズゴケの集合物が露出しており、これらの貫通口が設けられている底部を、有水部上に載置することにより、底部の貫通口から露出している乾燥ミズゴケの集合物に水が接触して、これらの接触点から、生長ミズゴケの近傍まで、乾燥ミズゴケを介して水が引き揚げられ、生長ミズゴケに水が供給され、これによりミズゴケの養生が行われる。このように、第2の態様のミズゴケ栽培基において、器物に設けられた凹部が貫通口である態様は、最も簡便に、水分を乾燥ミズゴケ定形物を介して、生長ミズゴケに供給することが可能な態様の一つである。
なお、第2の態様の本ミズゴケ栽培基30Dや、上述の30A〜Cにおいて、貫通口が設けられておらず、器物中の乾燥ミズゴケ集合物が、一見して、閉じた状態で嵌め込まれている構成とすることも可能である。このような場合には、例えば、器物に、表側の口の位置が乾燥ミズゴケ集合物側の口の位置よりも高い、表側から乾燥ミズゴケ集合物側へ通じる水の流入口を設けて、この表側の口よりも高い水面が設けられている有水部に、本ミズゴケ栽培基を載置して、外部から、乾燥ミズゴケ集合物に向けて水を流入させることにより、乾燥ミズゴケ集合物に水を接触させて、これにより、生長ミズゴケの栽培を行うことができる。
また、例えば、器物の素材を透水素材として、器物の内側の乾燥ミズゴケ集合物の一番低い位置よりも高い水面を有する有水部に、本ミズゴケ栽培基を載置することにより、透水素材を介して、有水部の水が、乾燥ミズゴケ集合物に浸透して、この浸透した水がさらに乾燥ミズゴケ集合物に接触して、これにより、生長ミズゴケの栽培を行うことができる。
(3)また、生長ミズゴケの生長点を含む部分、すなわち、枝部および葉部として生長する部分が、有水部の水面よりも高い位置に維持されていることが必要である。
この条件は、生長ミズゴケの生長点を含む部分が、実質的に、水中に没することがないように、本ミズゴケ栽培基を維持するための条件である。ここで、「実質的に、水中に没することがない」とは、生長ミズゴケの生長点を含む部分が、恒常的に水中に没する状態にない、という意味であり、例えば、本ミズゴケ栽培基を屋外に置いた場合に、降雨等により一時的に生長ミズゴケの生長点が水中に没することは、許容される。また、シャワー水等で、本ミズゴケ栽培基の上から、水を供給することも、生長ミズゴケの生長を阻害しない限度で許容される。
(4)本栽培方法や、本栽培システムが、従来から、小規模にのみ行われているミズゴケの栽培方式と異なる点の一つとして、乾燥ミズゴケの集合物を、生長ミズゴケの吸水手段としている点が挙げられる。すなわち、従来の技術では、乾燥ミズゴケを、そのまま、薄く敷き詰めて、これを単なる保水材として、上から吸水を逐次行い、生長ミズゴケの栽培を行っていた。しかしながら、本発明においては、乾燥ミズゴケを、集合物として成形することにより、乾燥ミズゴケが、水面に対して、嵩高く保たれ得る状態を形成し、ミズゴケ特有の非常に優れた吸水力により、この乾燥ミズゴケの集合物を介して、下方から上方へと、あたかも、天然のポンプのごとく揚水し、上方に配置した生長ミズゴケに向けて給水を行うことができる。この際、驚くべきことに、生長ミズゴケの茎部と、これに接触する乾燥ミズゴケは、あたかも、接木のごとき、生長ミズゴケと乾燥ミズゴケの接合体が形成されており、乾燥ミズゴケから生長ミズゴケへの水分の移動は、非常にスムーズに行われ得る。従来においても、上方から給水を行うことで生長ミズゴケの管理を行うことが可能ではあったが、短時間内に水が確保されているか否かの点検を行わなければならず、小規模の栽培でさえも煩雑であり、積極的な環境回復を目指すような、大規模なミズゴケの栽培を行うことは、非常に困難であった。
これに対して、本発明の場合には、下方に有水部が設けられ、ここに水が確保されている限り、水が、生長ミズゴケまで供給され得るので、頻繁に点検を行わなくても、継続的に生長ミズゴケの養生を行うことが可能である。さらに、生長ミズゴケは、生長するにつれて、下部組織(茎部)が衰退し、これに伴い、フミン酸やフルボ酸といった有機酸を外部に滲出することにより、微生物汚染しにくい酸性環境が形成され、これにより、一層、ミズゴケ栽培の管理が簡便化される。
また、本栽培方法と、本栽培システムにおいて用いる、本ミズゴケ栽培基における、生長ミズゴケの茎部は、前述したように、「まとまった」状態、好適には圧縮された状態である。本発明において、生長ミズゴケの茎部を、「まとまった状態」、好適には圧縮された状態とするのは、自然界において、ミズゴケの生長に伴い認められる、「ブルト」と呼ばれる、特徴的な群落状の形態を、人工的に再現をすることが目的である。驚くべきことに、生長ミズゴケを分散させて栽培した場合よりも、本発明のように、生長ミズゴケの茎部を、「まとまった状態」とすることで、著しく、ミズゴケの生長の促進を図ることが可能なことが明らかとなった(これについては、後述する)。
このブルト形成から、生長ミズゴケの加速度的な生長には、本ミズゴケ栽培基の凹部が設けられた第1の態様における乾燥ミズゴケ集合物のその凹部、または、第2の態様における器物の凹部、の生長ミズゴケ側の開口部と実質的に連続した平面および/または曲面を設けて、この平面および/または曲面上において、生長ミズゴケの増殖を行うことが好適である。
第9図(1)〜(6)は、上記凹部近傍でブルトを形成した生長ミズゴケが、加速度的に増殖する過程を図示した模式図である。
第9図(1)は、第4図(2)の本ミズゴケ栽培基20Bを、器物A1に設けられた貫通口A11に嵌め込んで(この器物A1と本ミズゴケ栽培基20Bと有水部A2の組を、本ミズゴケ栽培システムAAとする)、有水部A2に器物A1を載置した状態を示している。有水部A2には、水A21が確保されており、乾燥ミズゴケ22’がこの水A21と接触して、浸潤水として、生長ミズゴケ23’に供給している。器物A1には、開口部A111と実質的に連続した平面A112が設けられている。
生長ミズゴケ23’は、当初は、上方向に伸張する[第9図(2)]が、やがて自重で水平方向に倒れて、水平方向に、全体としては平面A112上において、放射状に伸張を始める[第9図(3)]。生長ミズゴケ23’が放射状に伸張をする過程において、その茎部232’(葉部231’が、平面A112上に露出し、太陽光線が良く当たるようになり、この茎部232’から、多数の再生芽23’’が発芽し[第9図(4)]、この再生芽23’’も、当初は上方向に伸張する[第9図(5)]が、やがて自重で水平方向に倒れて、放射状に伸張を行い[第9図(6)]、再生芽23’’に由来する生長ミズゴケの茎部から、再々生芽が発芽して、当初上方向に伸張をはじめる。
このように、ブルト形態においては、「上方向への伸張→放射状に伸張→再生芽の発芽→再生芽の上方向への伸張→再生生長ミズゴケの放射状の伸張→再々生芽の発芽→……」というサイクルを繰り返すことにより、加速度的に生長ミズゴケの増殖を行うことができる。ブルト形態なしでは、このようなサイクルの繰り返しは起こらず、増殖もごく限定された程度に止まるに過ぎない。
なお、上記の平面A112は、曲面、または、平面と曲面との組み合わせであってもよい。ただし、この平面および/または曲面の傾斜は、この開口部A111の水平面を基準として、−90°〜+10°の範囲であることが好適である(最も好適なのは、実質的に同0°の平面である)。+10°より大きいと、生長ミズゴケの、放射状の伸張が、傾斜のために阻害され、太陽光線の入射も限定される傾向が強くなる。−90°よりも小さいと、生長ミズゴケが垂れ下がってしまう。また、平面A112には(平面および/または曲面であってもよい)には、浸潤水を供給可能な機構が設けられていてもよい。この機構は、典型的には、吸水材が充填された、その平面および/または曲面を構成する部材の上面と底面を連絡する貫通口である。この吸収材としては、乾燥ミズゴケ、生長ミズゴケ、スポンジ、砂、吸水性樹脂、海綿等を挙げることができるが、優れた揚水力と経済性を考慮すると、乾燥ミズゴケが好適である。また、最初に設けた生長ミズゴケとこの浸潤水を供給可能な機構までの距離は特に限定されないが、概ね8〜30cm程度が好適である。
第9図では、本ミズゴケ栽培基20Bとして、生長ミズゴケとして、枝部と葉部を伴わない茎部と葉部と枝部を伴っているものを用いているが、この生長ミズゴケに代えて、枝部と葉部は切断された茎部のみを、生長点を露出させて用いることによっても、生長ミズゴケのブルトが形成され、上記と同様の増殖サイクルを行うことができる。
また、平面A112に対応する、生長ミズゴケの増殖の場としての、既出の図面の平面および/または曲面として、代表的なものを例示すると、例えば、第8図(1)の本ミズゴケ栽培基30Bを構成する、本ミズゴケ栽培基25の上面部分と板状体35Bの上面部分、第8図(2)の本ミズゴケ栽培基30Cを構成する器物35Cの外面部分、第8図(3)の本ミズゴケ栽培基30Dを構成する球状の器物3552の球面が挙げられる。また、第6図(4)の本ミズゴケ栽培基30Aの251とその外延部、第5図(2)の本ミズゴケ栽培基251’、第3図(5)本ミズゴケ栽培基25の251も、上記の平面として例示される。
また、本栽培方法と、本栽培システムにおいては、上述のブルト形態による増殖促進効果に加えて、生長ミズゴケ自身の高い再生能力によって、栽培規模をさらに加速度的に拡大することが可能である。すなわち、生長ミズゴケを細かく切断した場合、切断片自体の多くは再生能力を有するために、例えば、当初は、本ミズゴケ栽培基を1個用いて栽培していた場合であっても、生長ミズゴケの葉部と枝部がある程度大きくなった段階(葉部と枝部が、10cm長程度となった段階が好適である)で、枝部または葉部を刈り取り、刈り取った植物体を1〜2cm長程度毎に切断し、これらの切断された生長ミズゴケ片を、再び、本ミズゴケ栽培基の生長ミズゴケとして用いることにより、1個のミズゴケ栽培基から、複数単位の新たなミズゴケ栽培基を製造することが可能となる。この場合、切断された生長ミズゴケ片の向きを、元来の向きに揃えて、すなわち、切断される前の生長ミズゴケの葉部側に相当する一端を上側に、茎部側に相当する他端を下側に揃えて、本ミズゴケ栽培基の生長ミズゴケとして用いることが好適である。この生長ミズゴケ片の向きが、上記の逆または不統一であると、新たなミズゴケ栽培基において生長ミズゴケが生長する向きが不統一となる可能性がある。また、元の本ミズゴケ栽培基は、引き続き、本栽培方法と、本栽培システムを行うことにより、残った茎部から、再び、葉部と枝部を再生することができる。上記の刈り取りは、葉部近傍を、年に2回程度切断し、茎部全体を、年に1度程度切断することが好適である。また、生長ミズゴケの茎部自体を、2cm長程度で細断して、得られた細断片を本ミズゴケ栽培基の生長ミズゴケとして用いることも可能である。
(5)上記のように、本ミズゴケ栽培方法と、本ミズゴケ栽培システムにより、生長ミズゴケを増殖させると、栽培当初に設けた、生長ミズゴケの増殖の場としての平面および/または曲面いっぱいに生長ミズゴケが繁茂してしまい、その時点で、生長ミズゴケの増殖が緩慢化することとなる。その反面、生長ミズゴケを大量に増殖することを目的に、最初から、広いスペースを設けることが、必ずしも妥当ではない場合も認められる。このような場合は、生長ミズゴケの増殖の場を事後的に増設することが好適である場合が多い。
すなわち、本発明は、本ミズゴケ栽培基における、乾燥ミズゴケの集合物の凹部、または、器物の凹部の生長ミズゴケ側の開口部と実質的に連続した平面および/または曲面が、事後的に増設可能な平面および/または曲面である、本ミズゴケ栽培システムを提供する発明である。
この事後的に増設可能な平面および/または曲面を形成するための増設用部材は、本ミズゴケ栽培基における、乾燥ミズゴケの集合物の凹部(主に第1の形態の本ミズゴケ栽培基)、または、器物の凹部(主に第2の形態の本ミズゴケ栽培基)、の生長ミズゴケ側の開口部と実質的に連続した平面および/または曲面を構成する部材の外延部に接触した状態で固定されることにより、この平面および/または曲面と、さらに連続した平面および/または曲面を形成することができる部材である。
例えば、第10図(1)のように、円柱状の本ミズゴケ栽培基Bの円柱部分に、この円柱の高さと等しい幅を有する柔軟性を有するテープ状の素材(例えば、フェルトテープ等)B1を螺旋状に巻き付けた状態として、これを上記部材とすることも可能である。この形態では、巻き付けられたテープ状素材B1の一側面(上面)により、増設平面B11が形成される。
また、好適には、本ミズゴケ栽培システムにおける、乾燥ミズゴケの集合物(主に第1の形態の本ミズゴケ栽培基)の凹部、または、器物の凹部(主に第2の形態の本ミズゴケ栽培基)の生長ミズゴケ側の開口部と実質的に連続した平面および/または曲面を構成する部材の外延部に、当該外延部との螺旋止めによる螺合、当該外延部に設けられた係合用の構造(例えば、外延部の底部から外側に突出させた状態で設けた係合用の突起)による係合、外延部と接触した状態で載置する衝合、外延部に設けられた凹凸構造に嵌め込むことによる嵌合、接着剤による接着等の係止手段(この係止手段は特に限定されない)により、接触した状態で固定することにより、この平面および/または曲面と、さらに連続した平面および/または曲面を形成することができる部材を例示することができる。例えば、第10図(2)のように、テーパーを有する四角柱形状の本ミズゴケ栽培基Cの四側面それぞれのテーパーに対して衝合可能で、高さが、本ミズゴケ栽培基Cの高さに等しい、四角柱形状の部材C1〜C4を衝合させることで、部材C1〜C4の一側面(上面)C11〜C41により、増設平面が形成される。なお、部材C1〜C4においては、上面C11〜C41と、その底面を連絡する貫通口(C111〜C411)が設けられおり、かつ、その貫通口には、吸水材が充填されている。吸水材としては、上述したように、乾燥ミズゴケ、生長ミズゴケ、スポンジ、砂、吸水性樹脂、海綿等を挙げることができるが、優れた揚水力と経済性を考慮すると、乾燥ミズゴケが好適である。第10図(3)は、(2)の平面増設を、多重に行った形態を模式的に示した図面である(本ミズゴケ栽培基Cと吸水材は省略)。この第10図(3)に示すように、増設用部材C5の外側にC6を、さらにその外側にC7を、順次衝合させることにより、生長ミズゴケの繁茂に対応して、増設平面を増加させることができる。また、第10図(4)のように、第10図(1)の本ミズゴケ栽培基Bのごとく、形状が円柱状の場合には、その外延部にリング状の増設用部材C8、C9を順次衝合させて、増設平面を増加させることができる。
第11図は、第10図(2)〜(4)に示すように、増設用部材を用いて増設平面を設けた、本ミズゴケ栽培システムの一部の縦断面を示した図面である。第11図(1)の状態に至る典型的な過程として、本ミズゴケ栽培基Dの生長ミズゴケ(定形化された乾燥ミズゴケは図示せず)D1を、下方の有水部(図示せず)からの浸潤水により養生して、本ミズゴケ栽培基Dにおいて設けてある。生長ミズゴケD1の増殖の場としての平面D2において、生長ミズゴケD1が、上述したブルト形態に伴う増殖サイクルにより、十分に繁茂した段階で、増設用部材D3を、本ミズゴケ栽培基Dの外延に衝合させて、これにより形成される、平面D2と連続した平面D4において、さらに、生長ミズゴケD1を増殖させる。増設用部材D3には、吸水材として乾燥ミズゴケを充填した貫通口D31、D32が設けられている。これらの貫通口の乾燥ミズゴケが、有水部の水を上部まで揚水して、増殖しつつある生長ミズゴケD1と接触することにより、この生長ミズゴケD1に水分を供給して、増殖を促進する。さらに、生長ミズゴケD1の増殖程度に応じて、増設用部材D3の外延部に、さらなる増設用部材D5を衝合させて、さらに、増設平面を拡大することができる。また、この増設平面の拡大は、外側に向けて順次行うことができる。また、この例においては、増設用部材D3とD5の衝合部には乾燥ミズゴケD6が充填されており、この乾燥ミズゴケD6は、前記の貫通口D31、D32に充填された乾燥ミズゴケと同様に、生長ミズゴケD1に浸潤水を供給することができる。また、増設用部材D5には、貫通口D51、D52が設けられており、生長ミズゴケD1に浸潤水を供給するために、乾燥ミズゴケが充填されている。また、これらの貫通口D51、D52のように、生長ミズゴケ近傍の断面積が、有水部近傍の断面積よりも広くして、乾燥ミズゴケを貫通口から脱落しにくくすることも可能である。また、貫通口D51、D52の断面積の変更部の広口側の底部に、小さい凹部D501[第11図(2)]を設けて、この凹部に浸潤水をため込むようことができるようにすることが好適である。また、生長ミズゴケD1の繁茂を緩和する場合には、増設用部材D5の外延部に沿って、隔壁D7を設けることが好適である。このようにすることで、生長ミズゴケの外側への伸張をトラップして、その結果、上記の増殖サイクルをストップさせることができる。
(6)このように、本栽培方法と、本栽培システムを用いることによって、簡便に、かつ、効率的に、ミズゴケの栽培を行うことが可能となる。本発明は、いわば、ミズゴケが繁茂する高層湿原を、都市空間や人工物においてさえも、自在に形成することを可能とする発明であり、さらに、自然界において失われつつあるミズゴケ湿原を回復することを可能とする発明である。すなわち、現状において、園芸用途等で、経済的な価値が高いミズゴケを、効率的に栽培可能であるという意味合いや、生長ミズゴケの外観の美しさ以上に、通常の植物の4〜5倍といわれている二酸化炭素の固定能力を有するミズゴケ湿原を容易に形成することにより、地球温暖化の要因を激減させ得るという意義が、非常に大きい。
(7)本栽培方法と、本栽培システムは、例えば、以下のような態様で用いることができる。
1)本ミズゴケ栽培基を、有水部に載置することにより、本栽培方法と、本栽培シ ステムを行う態様
この態様は、有水部の水と、1個以上の本ミズゴケ栽培基における、生長ミズゴケの露出部分と異なる部分との接触が、有水部におけるミズゴケ栽培基の「載置」により行われることを特徴とする、本栽培方法または本栽培システムの態様である。
ここで、「載置」とは、文字通り、本ミズゴケ栽培基(例えば、20A、20B、25、30A、30B、30C、30D)を、所定の場所に置いて、本栽培方法または本栽培システムを行うことを意味するものであるが、例えば、地面やコンクリート面に穴を設けて、その穴の中に、本ミズゴケ栽培基を設けることも、「載置」に含めるものとする。
この態様では、例えば、本ミズゴケ栽培基を、本ミズゴケ栽培基の生長ミズゴケの部分には、水が恒常的に被らないように条件設定を行うことが好適である。典型的には、有水部の水位を、載置するミズゴケ栽培基の高さよりも低く保つ条件設定が挙げられる。
最も単純には、例えば、第12図(1)(縦断面図)に示すように、水41を入れておくことができる、中皿状の容器、水槽等の底面42に載置される、ミズゴケ栽培基43の高さよりも低い水位で水を入れ、この程度の水位を保つように、水の管理を行うことで、この態様の本栽培方法または本栽培システムを行うことができる。この水の管理は、定期的に目視で点検して、注水口44から、水を注ぎ足すことも可能であるが、水位計等により、水位の減少を自動的に感知する機構、例えば、水位センサーをシステム中に付加して、水位の減少時に自動的に水を注ぎ足すようにすることが好適である。また、降雨等による増水時には、別途設けた排水口から、所定の水位まで水位を下げることができるようにすることも好適である。
また、第12図(2)(縦断面図)のように、複数のミズゴケ栽培基43の間の間(ここが、生長ミズゴケの増殖の場としての平面に該当する)に、砂礫等の透水可能な無機細物46を、ミズゴケ栽培基の高さ程度に敷き詰め、この無機細物46中に、第12図(1)に示したものと同じく、好適には、水位を保つ機構(本図においては、側板45に、水位調整弁451、452が設けられている)を付加して、いわば、帯水層が確保されている人工的な湿地と同様の状態を保つことも好適である。上記の無機細物が配置された部分は、生長ミズゴケの生長部を含む部分が、本栽培方法または本栽培システムにおいて養生され、生長すべき空間に接する実質部分である。この第12図(2)に示した、無機細物を用いる態様は、自然界のミズゴケ湿原の状態に近い、本栽培方法または本栽培システムの最も好適な態様の一つである。
第12図(3)は、好適には、発泡スチロール等の軽質素材を用いた型470の表面を、前述した、「事後的に硬化し、かつ、固化前は粘調な液体素材」(本図では「液体素材」という)を用いて、自然の風合いとした器物47の製造工程を示している。第12図(3)−1は、型470の裏面4701を上にして表現した図面であり、第12図(3)−2は表面4702(ここが、生長ミズゴケの増殖の場としての平面に該当する)を上にして表現した図面である。第12図(3)−1において、裏面4701には、中央部に表面4702とを結ぶ貫通穴47011が設けられ、その周囲に、複数の非貫通穴47012が設けられ、裏面4701表面上には、貫通穴47011と非貫通穴47012相互を結び、470の側面に通じている溝47013が設けられている。第12図(3)−1の型470を倒置した、第12図(3)−2の型470においては、溝47013は、型470の側面において開口した状態となる。次いで、型470の表面4702の上に、液体素材を塗布して、刷毛状とした針金47014で表面をたたいて毛羽立たせ、その上に土等の土47015を振りかけて[第12図(3)−3]、表面を均して、その上から防水材を上層することにより、表面が自然の土に近似した風合いを有する器物47を製造することができる。また、器物47は、貫通穴47011が1つであるが、複数とすることも可能である。なお、器物47における型470としては、例えば、複数の貫通穴が設けられている薄板を複数枚積層固定してなる型や、多数の粒子を集積固定して、所定の形状としてなる型(ただし、いずれの型も、積層や集積の結果として、上記の貫通穴47011に相当する貫通穴を設けることが必要である)とすることも可能である。この器物47の貫通穴47011に、例えば、本ミズゴケ栽培基20B(第4図)の茎部を、好適には圧縮して嵌め込むことにより、器物と生長ミズゴケが一体となった本ミズゴケ栽培基472(第22図において図示する)を製造することができる。なお、貫通穴4701の裏面側を、プラスチックネット等の透水板で塞ぐことにより、本ミズゴケ栽培基20Bの裏面からの脱落を防ぐことが好適である。このような態様の本ミズゴケ栽培基472の使用態様は、後述する(第22図)。
前記の第12図(2)は、砂礫等の無機細物46中に、予め製造した本ミズゴケ栽培基43を埋め込むことで構成される例であるが、例えば、予め、存在する地面やコンクリート面に穴を開けて、そこに、事後的に本ミズゴケ栽培基を設けることも可能である。例えば、第13図(1)(横断面図)のように、地下水面が水位511まで保たれている地面51(ここが、生長ミズゴケの増殖の場としての平面に該当する)に、穴512を開けて、その中に、円柱状の部材52を配置して、円柱状部材52と穴512との間に設けられる空隙531に、好適には水を含んだ状態の乾燥ミズゴケ(乾燥ミズゴケと、紙繊維等の水性組成物等の、事後的に硬化可能な成分との混合物であってもよい)54を充填し、充填後、円柱状部材52を引き抜き[第13図(2)]、この円柱状部材52が引き抜かれて設けられる空隙532に、茎部をまとまった状態とした生長ミズゴケ55の茎部551を嵌め込んで、穴内に本ミズゴケ栽培基56が設けられて、載置される態様が構築され得る[第13図(3)]。なお、さらに、生長ミズゴケ55への水の供給を潤滑にするために、穴512の側部のみではなく、底部にも乾燥ミズゴケ54を充填することも好適である[第13図(4)]。また、さらに、複数の穴512のそれぞれ全体に、乾燥ミズゴケ54を充填し、その上から、複数の生長ミズゴケ55を、側面が乾燥ミズゴケ54に接触するように、かつ、好適には、生長ミズゴケ55の植物体同士が重なり合うように載置することによっても、生長ミズゴケ55の養生を行うことができる[第13図(5)]。この第13図(5)の態様は、生長ミズゴケと乾燥ミズゴケ集合物が、乾燥ミズゴケの外部において接触している態様の一つである。
この、「載置」する態様は、様々な環境に用いることができる。例えば、a)屋上における使用、b)休耕田における使用、c)屋内における使用,d)元湿原の復元のための使用等に、この「載置」する態様を用いることができる。
a)屋上における使用
ビルの屋上等において、本栽培方法、または、本栽培システムを行うことにより、当該箇所に、薄い水分層が形成させて、ミズゴケ湿原の形成を実現することができる。ミズゴケ栽培による、ミズゴケの収穫や、二酸化炭素の固定は勿論のこと、夏季の屋上部の温度上昇を、著しく抑制することが可能である。また、ミズゴケだけではなく、高層湿原特有の植物、例えば、モウセンゴケ、ツルコケモモ、チングルマ、ヒナザクラ等の養生を、ミズゴケが生長する場において行うことが可能である。さらに、おそらく生長ミズゴケに由来するフルボ酸やフミン酸等の酸性物質の影響により、有水部におけるボウフラの発生が著しく抑制することができる。
ビルの屋上等で、「載置」する態様を行う場合には、例えば、第14図のような、ミズゴケ栽培用の人工圃場を用いる態様が、典型的態様の一つである。
第14図の人工圃場60においては、i)底部611に遮水手段が施され、側部612が、透水手段である通水口613が設けられた部材で構成され、かつ、上面が開放されている立体領域内に帯水材である砂礫614が配置されている、帯水部61と、ii)水62が帯水部61の側部の全部または一部と接触し、この側部に施された通水口613を介して、水62が帯水部61に対して浸潤するように、水62を貯留することが可能な、有水部63が設けられている。水62の流入により、常に、砂礫614は帯水するように、かつ、砂礫614の上には、水62が被らないように、帯水部61と有水部63の水位は、水位センサー等で調節されている。また、人工圃場60を設置箇所において水平に保つための、高さの調整機構(例えば、有水部63の底面の四隅に、各々独立して高さを調整可能な脚等)を設けることが好適である。この人工圃場60における、生長ミズゴケの増殖を行う場としての平面は、砂礫614の上面部分である。なお、有水部63の素材は、特に、限定されず、コンクリート、プラスチック、木材、石(人工大理石等)等を広く例示できるが、特に、FRP、GMT等のガラス繊維等で強化されたプラスチックが、軽量で壊れにくく、成形加工も容易であり、好適である。
この人工圃場60の砂礫614中に、第13図に示したように、本ミズゴケ栽培基を生長ミズゴケの部分が露出するように、例えば、615で示された部分に埋め込み、または、載置することにより、本栽培方法または本栽培システムを行うことができる。
また、第14図の人工圃場60の帯水部61を除いた、有水部63に、水62を貯留して、その中に、種々の本ミズゴケ栽培基(例えば、20A、20B、25、30A、30B、30C、30D)を載置して、水62の水位の管理を行うことにより、本栽培方法または本栽培システムを行うことができる。この態様においては、例えば、生長ミズゴケが増殖する場として、その開口部と連続した平面6610が設けられ、かつ、底に貫通口6611が設けられた凹構造物661の底部に、透水材である砂礫等の無機細物662を載置し、その上に、第1の態様の本ミズゴケ栽培基663を嵌め込んだ、凹構造物661を器物として用いた本ミズゴケ栽培基66を好適な態様の一つとして、水62中に載置して用いることができる[第15図(1):縦断面図、この態様においては、無機細物662は除いてもよい]。また、第15図(2)のように、底に複数の貫通口6611’が設けられた、上記凹構造物661の底部に乾燥ミズゴケ664を配置して、その上に、茎部をまとまった状態とした生長ミズゴケ67とその茎部671を嵌め込んでなる、本ミズゴケ栽培基68とすることができる。
さらに、第15図(3)(縦断面図)に示すように、凹構造物661を複数設けたマルチタイプの凹構造物661’とすることもできる。マルチタイプの凹構造物661’においては、各々の凹部661同士は、近接しているよりも、各々の凹部661の開口部同士を連結して、生長ミズゴケが増殖する場としての平面が設けられていることが好適である。これらの各々の凹構造物661において、第15図(1)または(2)の本ミズゴケ栽培基のように、無機細物662と第1の態様の本ミズゴケ栽培基663[第15図(1)に準ずる:第15図(3)において図示せず]、または、乾燥ミズゴケ664と生長ミズゴケ67とその茎部671[第15図(2)に準ずる]等を配置することにより、生長ミズゴケの栽培起点を複数有する、マルチタイプの本ミズゴケ栽培基69が提供される。第15図(3)では、このマルチタイプの本ミズゴケ栽培基69の扱いを時間を追って、模式的に示しており、661−1は、凹部に乾燥ミズゴケ664を充填する時点を示し、661−2、3は、その上に生長ミズゴケの茎部671を、まとまった状態で生長点を上に向けて配置する時点を示し、661−4、5は、生長ミズゴケの養生を行うことで、生長ミズゴケ67が伸長している状態を示している。
b)休耕田における使用
この態様は、農業振興の一環として、休耕田を、ミズゴケ湿原に転換することも可能である。水分の供給は、本来水田に用いられ得る水路を転用することが可能である。
すなわち、この態様では、例えば、休耕田600に、第14図に示したと同様の、人工圃場60を構築し、有水部63の水は、水門631が設けられている貯水池632が水源の、水田用の用水路633から引水することができる(第16図:縦断面図)。
c)屋内における使用
ミズゴケにとって必要な光合成量が確保可能な日照等の光条件下であれば、本栽培方法または本栽培システムを屋内においても行うことができる。屋内においては、本ミズゴケ栽培基にインテリアとしてのファッション性が求められることも多く、例えば、本ミズゴケ栽培基30Cのような、所望のデザインの器物を用いた、本ミズゴケ栽培基を用いて、比較的小規模に、本栽培方法または本栽培システムを行うことが想定される。なお、屋内においても、上記の光条件が確保される限りは、上述した、屋上湿原のような態様を行うことも可能である。
d)元湿原の復元のための使用
近年は、多くの高層湿原が、高層湿原に比べると永続性において問題がある、中層湿原や低層湿原に変化しつつあるといわれている。また、湿原自体が、急激に乾燥化して失われつつあることも報告されている。このような、元湿原の復元のために、本栽培方法または本栽培システムを用いることができる。
すなわち、例えば、乾燥化した元湿原に、第13図(1)〜(4)のような態様の施工を施すことにより、地下に下ってしまった帯水層の水を、乾燥ミズゴケの揚水力で、上部の生長ミズゴケに供給し、これにより、ミズゴケを養生して、ミズゴケが繁茂する高層湿原を再生することが可能となる。なお、帯水層が、乾燥ミズゴケの揚水力では揚水することが困難なほどに後退している場合には、別途、第16図の貯水池632のような、給水源を確保し、その水を用いて、ミズゴケの養生を行うことが必要となる。
2)本ミズゴケ栽培基を、有水部の底部よりも上に配置することにより、本栽培方 法と、本栽培システムを行う態様
この態様は、有水部の水と、1個以上の本ミズゴケ栽培基における、生長ミズゴケの露出部分と異なる部分との接触が、ミズゴケ栽培基を、有水部の底部よりも上に配置することが可能な機構による配置により行われることを特徴とする、本栽培方法または本栽培システムの態様である。
この態様は、有水部を、ある程度、外部から遮断をする場合において、好適に用いることができる。ミズゴケ栽培基を、有水部の底部よりも上に配置することが可能な機構(以下、懸垂機構ともいう)は、ミズゴケ栽培基を、懸垂力等により、有水部の底部から分離することができる機構である。
第17図(縦断面図)において、懸垂機構71は、本ミズゴケ栽培基72のまとまった状態の生長ミズゴケの茎部が存在する部分711を嵌め込むことが可能な嵌め込み口712が設けられ、かつ、円筒状の有水部73の開口部近傍の縁に嵌め込んで、懸垂機構71と有水部73を嵌着することが可能な嵌着機構713が設けられている、蓋状の部材である[第17図(1)]。この懸垂機構71に設けられた平面710が、生長ミズゴケ72が増殖する場としての平面に該当する。第17図(2)に示すように、嵌め込み口712に、本ミズゴケ栽培基72の、まとまった状態の生長ミズゴケが存在する部分711を嵌め込んだ、懸垂機構71を、水74が入っている、有水部73の開口部に嵌着させて、本ミズゴケ栽培基72を、有水部73に対して懸垂した状態で、水74と茎部に相当する部分711を接触させることで、本ミズゴケ栽培基72において、生長ミズゴケの養生を行うことができる。なお、この態様の場合、茎部に相当する部分711を、例えば、第17図(3)に示すような、円筒状の金網型部材713に嵌め込んで、第17図(4)に示すように定形化を行うことも可能であり、第17図(5)に示すような、有孔の円筒状部材714に嵌め込んで、第17図(6)に示すように定形化を行うことも可能である。
また、懸垂機構も、例えば、水抜きとガス交換の目的から、小孔714を設けることも可能であり、外側に凸部715を設けることもできる[第18図(1)の懸垂機構71A:縦断面図]。また、さらに、嵌め込み口712において、網状部材等の透水部材製の袋状部材716を設けることもできる[第18図(2)の懸垂機構71B:縦断面図]。この袋状部材716の底部に、乾燥ミズゴケ717を入れて,これを定形化し、茎部がまとまった状態の生長ミズゴケ75を、その上に接触するように嵌入して、上記の第17図に示した要領で、生長ミズゴケ75の養生を行うことができる[第18図(3):縦断面図]。また、嵌め込み口を、一つの懸垂機構において複数設けることも可能である。第18図(4)は、水74’を入れた箱形の水槽713’の縁に対して、嵌め込み固定が可能な、複数の嵌め込み口712’と、小孔718’を設けた、蓋型の懸垂機構71’を、水槽713’の縁に対して嵌め込み固定を行い、各嵌め込み口712’には、それぞれ、本ミズゴケ栽培基72’を、上記の要領で嵌め込み、各本ミズゴケ栽培基72’同士の間を、砂礫75で埋めた態様を示した図面である。この砂礫75を配置した平面750が、生長ミズゴケ72’が増殖する場としての平面に該当する。このように、本態様においても、複数のミズゴケ栽培基の養生を行うことが可能である。
このような、「懸垂する」態様の、本栽培方法や本栽培システムは、有水部の水の蒸散を、蓋のような密閉性を与える、懸垂機構によって抑制することができる。そして、この態様は、上記のa)屋上における使用、b)屋内における使用、および、c)斜面・壁面における使用に適している。a)屋上における使用と、b)屋内における使用に関しては、上記のような態様のミズゴケ栽培方法、または、ミズゴケ栽培システムを、適切な条件下、屋上や屋内において行うことで、ミズゴケの養生を行うことができる。
c)斜面・壁面における使用は、例えば、第22図(縦断面図)において、斜面76上に、階段状に、ミズゴケ栽培基761が、懸垂部材762によって、有水部763に対して懸垂されており、各有水部763には、給水パイプ764により、逐次、給水が可能な状態になっている態様で行うことができる。なお、余剰の水は、懸垂部材762に設けてある小孔(図示せず)によって外部に排出される仕組みになっている。
3)本ミズゴケ栽培基を、浮力により、有水部の水面近傍に浮上させることにより、 本栽培方法と、本栽培システムを行う態様
この態様は、有水部の水と、1個以上の本ミズゴケ栽培基における、生長ミズゴケの露出部分と異なる部分との接触が、本ミズゴケ栽培基を、浮力により水面近傍に浮上させることが可能な機構により行われることを特徴とする、本栽培方法または本栽培システムである。
「浮力により水面近傍に浮上させることが可能な機構」は、水よりも比重が小さい素材や器具を用いた機構が好適である。素材としては、発泡スチロール、木材等を用いることができる。器具としては、浮き球、浮き輪等の、空気等のガスを大量に含む器具を挙げることができる。
例えば、第20図(1)(縦断面図)は、水81をたたえた、排水口821付きの水槽82の中に、発泡スチロール製の外枠831と、網状体製の底部832が設けられた、低比重の容器83の底部832上に、本ミズゴケ栽培基84を多数載置したものを静置した状態を示した図面である。低比重容器83は、その水に対する浮力により、水81の水面において浮上しており、本ミズゴケ栽培基84の葉部と枝部近傍は、水81を被らずに、茎部に相当する部分のみが水中に没している。この状態を維持することにより、ミズゴケ栽培基84における生長ミズゴケの養生を行うことができる。外枠831の上面が、本ミズゴケ栽培基84における生長ミズゴケを増殖させる場としての平面に該当する。なお、低比重容器83の浮力が足りない場合は、必要に応じて、発泡スチロールを付加可能にしておく(8311)ことが好適である。また、発泡スチロールに代えて、または、組み合わせて、浮き球等を用いることもできる。また、第20図(2)のように、発泡スチロールの板85に、複数の貫通口851を設けて、ここに、本ミズゴケ栽培基84を嵌め込んで、そのミズゴケの茎部に相当する部分を水81に接触させて、本ミズゴケ栽培基の、生長ミズゴケの養生を行うことも可能である。この態様において、発泡スチロールの板85の上面が、本ミズゴケ栽培基84における生長ミズゴケを増殖させる場としての平面に該当する。
この「浮上」態様の、本栽培方法や本栽培システムは、上記のa)屋上における使用、b)屋内における使用、および、c)ダム湖面(人造湖面)やため池面における使用に適している。a)屋上における使用と、b)屋内における使用に関しては、この態様のミズゴケ栽培方法、または、ミズゴケ栽培システムを、適切な条件下、屋上や屋内において行うことで、ミズゴケの養生を行うことができる。特に、この態様を比較的小規模で行う場合は、上記の水槽と発泡スチロールのデザインを工夫することにより、斬新なデザインとすることが可能であり、インテリア用途としても有望である。
また、c)ダム湖面(人造湖面)やため池面における使用は、この態様の最も有望な使用態様の一つである。すなわち、ダム湖面(人造湖面)やため池面において、この態様の使用を行うことで、湖面等をミズゴケの浮遊圃場で被覆し、水分の蒸発を低下させることが可能であり、ミズゴケの栽培自体を、水分の補給なしに行うことが可能である。また、ミズゴケの栽培により、湖水が酸性に傾き、富栄養化等による、有害プランクトンの発生を抑制することも可能であると考えられる。
第21図は、この「浮上」態様の大規模な実施態様を概念図として示したものである。第21図(1)は、ダム湖等81における浮上単位82の拡大概念図であり、第21図(2)は、全体概念図である。筏様の浮上単位82A、B,C、D・・・は、木枠821で区切られ補強されており、各々のブロック822A、B,C・・・の底部は、網状体(図示せず)が強固に張られることにより構成されている。かかる各ブロックの上に、さらに、底部に網状体が張られている、木や、発泡スチロール等の軽量素材製の枠単位823A、B・・・の中に、本ミズゴケ栽培基824が、成長点側を上にして載置されており、これが、各ブロック822A、B,C・・・上に、ピン825で係止されつつ、載置されている。浮上単位82A、B,C・・・は、湖岸とワイヤーロープ83A、B,C・・・で連結されており、さらに、これらのワイヤーロープの浮上単位側の連結部831を経た先端には、浮き球832が付加されており、浮上単位82の浮力の向上が図られている。また、浮上単位82同士は、筏状の通路833で連結されており、作業者等が、筏間を容易に移動することができるようになっている。このようにして、複数の筏様の浮上単位82が、湖水84上に浮いた状態が保たれている。
この第21図に示される状態を保つことにより、ダム湖81上において、湖水で、本ミズゴケ栽培基824におけるミズゴケの養生を行うことが可能であり、前述したように、ミズゴケの栽培と同時に、湖水の蒸散抑制と、湖水環境の保全に資することができる。
第22図は、第12図(3)において説明した、本ミズゴケ栽培基472の使用態様を示した図面である。本ミズゴケ栽培基472は、載置して用いることも可能であり、水の上に浮上させて用いることも可能である。
載置する形態としては、例えば、第22図(1)(横断面図)、のように、複数の本ミズゴケ栽培基472の底部および複数の本ミズゴケ栽培基472(平面4720が、ミズゴケ栽培単位20Bの生長ミズゴケが増殖する場としての平面に該当する)の組合せにより形成される側面を、防水シート911で覆って固定し(特に、底部は接着剤912で固定を行うのが好適である)、さらに、好適には、側面の最も外側には、化粧タイル、ブロック、煉瓦等の装飾部材913を貼り付け固定することにより、側面の外観を補正することにより、第22図(2)(上面図)のような区画を、容易に設けることができる。第22図(2)において、例えば、防水シート911と装飾部材913によりなる一定の枠91内に、一個の本ミズゴケ栽培基20Bが嵌め込まれている本ミズゴケ栽培基472と、複数の本ミズゴケ栽培基20Bが嵌め込まれている本ミズゴケ栽培基472’と、平板石473を組み合わせ、嵌め込むことにより、多彩な形態でミズゴケが露出している簡易型のミズゴケ人工湿原914を構成することができる。ミズゴケ人工湿原914においては、枠91内に水を流通させることが必要であるが、この枠91内の一画から水を導入し、他の一画の排水口から水を流出させることにより、所望する水の流通状態を実現することが可能である。すなわち、枠91内の一画から流入した水は、個々のミズゴケ栽培基472または472’の底部の溝を通じて底部全面に流通し、その過程で、個々の本ミズゴケ栽培基20Bに水が供給され、当該栽培基20Bの生長ミズゴケを養生することができる。
浮上させる形態としては、例えば、第22図(3)のように、水槽921に水922を流通させて、一定の水位を保ち、ミズゴケ栽培基472等(472’でもよい)をその上に浮上させることにより、個々のミズゴケ栽培基472等の生長ミズゴケの養生を行うことができる。また、この態様の場合、個々のミズゴケ栽培基472等同士を、紐状部材923により繋いで、水槽921の固定部と連結して係止することが好適である。
第23図は、水に浮上させる器物を用いた本ミズゴケ栽培基の他の形態93を示した図面である。第23図(1)[縦断面図(I−I’)]は、素材として発泡スチロール等の軽量部材を用いた球状物の一面を切断して底面9311を設け、当該底面9311とそれに対する頂部との間に貫通穴9312を設けた器物931に、好適にはプラスチック等で被覆された金属製の線状部材の一端を手に似せて加工した手状部材9313の他端を、器物931の側面から貫通穴9312に向けて刺し込んで貫通させ、貫通穴9312内において、係止用金具93131で係止することにより、器物931に腕状の装飾が施されてなる、2つの腕付き器物932を示している。器物931の表面を構成する曲面が、本ミズゴケ栽培基20Bの生長ミズゴケが増殖する場としての曲面に該当する。次いで、第23図(2)[縦断面図(II−II’−II’’)]において、腕付き器物932上に、前述した「事後的に硬化し、かつ、固化前は粘調な液体素材」を用いる表面装飾法により所望の装飾を施し(9321、9322、9323)、また、目(9324)や口(9325)に似せた部材を顔面に相当する部分9323に固定し、さらに、貫通穴9312の底面を網状部材9326で塞いで、貫通穴9312の上側の開口部から、本ミズゴケ栽培基20Bを嵌め込み、装飾を施し、かつ、水に浮上する形態の本ミズゴケ栽培基93を製造することができる。この本ミズゴケ栽培基93は、第23図(3)に示すように、水槽9331内の水9332の上にバランス良く浮上させるために、例えば、上記の2つの腕状部材9313の位置を調節し、さらに、貫通穴9312内にバランス調整用部材9333を必要に応じて組み込む等の水上バランス調整手段を施すことが好適である。
このように、様々な形態で、生長ミズゴケを養生することが可能な環境を容易に構築することができる。
[実施例]以下、本発明の実施例を記載する。
第1の態様の本ミズゴケ栽培基]
<製造>
(1)古新聞紙4gを、500mlの水の中で細断し、十分に混練し、これと市販の園芸用の乾燥ミズゴケ(ボイル処理済み)100g(乾燥質量)を混ぜ合わせ、これに、3リットルの水を添加して、乾燥ミズゴケを含有する、粉砕紙の含水組成物を得た。
(2)この含水組成物を、1kg程度用いて、第3図(1)〜(5)に示す要領で、高さ約8cm、底面の直径が約15cmの円柱の一底面の中央に、直径約3cm、深さ約5cmの凹部が設けられた、乾燥ミズゴケ定形物を製造した。この乾燥ミズゴケ定形物の凹部に、後述する大規模栽培により得られたオオミズゴケ(生長ミズゴケ)を、枝部と葉部の他に、茎部を5cmのところでカットしたものを、乾燥質量で、約2g程度相当、茎部のみを捻るように圧縮しつつ押し込んで、1個の第1の態様のミズゴケ栽培基を得た。
この第1の態様のミズゴケ栽培基1個を、水を入れた洗面器の中に載置した状態を、第24図に示した。
<生長試験>
(1)上記の(2)の要領で製造した、第1の態様のミズゴケ栽培基を2個、側部に多数の孔が空いているプラスチック容器の上に載置して、これを、このプラスチック容器よりも大きな中皿状の容器中に載置した。丁度、これら2単位の本ミズゴケ栽培基の乾燥ミズゴケ定形物が被る程度に、砂をプラスチック容器の中に入れ、さらに、このプラスチック容器の外側の中皿状の容器中に、水を入れ、常に、水深が2〜5cm程度になるように管理した(余分な水は、ドレーンを設けて排出されるようにした。これにより、上記のミズゴケ栽培基の下部2〜5cmは、常に水と接触しているが、それ以上、水位は上がらないように保たれた)。この状態で、6〜8月の3ヶ月間、東京都の屋上に放置した結果、第25図に示す初期状態から、第26図に示すように、ミズゴケが、旺盛に生長した。
なお、この試験と並行して、上記のプラスチック容器の中に乾燥ミズゴケを、高さが6cm程度になるように敷き詰めて、その上に、薄く砂を敷いて、上記と同じ生長ミズゴケを、乾燥質量で、約8g相当(上記の実施例の約4倍量)、植物体同士が重なるように寝かせて配置して、上記と同様の環境に置いた。しかしながら、ある程度のミズゴケの生長は認められたものの、上記の実施例と比較すると、明らかに緩慢な生長であった。
この生長程度の差異は、上記の実施例が、生長ミズゴケの茎部が圧縮された状態でまとまって、かつ、葉部および/または枝部がブルト状態としたことに起因するものと考えられる。
(2)多数の直径が1.5cm程度の小貫通口を設けた、厚さが3cm程度、直径が15cm程度の発泡スチロール製の円板状の軽量基盤において、小貫通口の下部1cm程度に乾燥ミズゴケを詰め込み、その上に、上記の生長ミズゴケの茎部を2cm程度切断して、まとまった状態で、これらの小貫通口に嵌め込み、乾燥ミズゴケ側(この側は、金網によって乾燥ミズゴケが脱落しないように補強されている)を下側に向けて、日当たりの良い室内の水槽の上に浮かばせて、東京で、6〜9月の間、放置した。その結果、軽量基板上に、ミズゴケの葉部と枝部が伸長して、ほとんど、円板上は、ミズゴケによって覆われていた(第27図)。
第2の態様の本ミズゴケ栽培基]
粉砕した新聞紙180gと土質細物500g〔水稲育苗専用粒状培養土をミキサーで、市販の非粒状培養土程度の粒径に細粒化したもの400gと、粘土100g〕を、水3L中に含有させ、攪拌、混練し、3Lの透水組成物の前駆組成物を得た。
この前駆組成物を型にとって、水を切り、頂部から底部に向けて、直径が5cm程度の貫通口が設けられている、高さ約12cm、底面直径約15cmのカボチャ型とし、型抜き後、乾燥させて、器物の原型とした。この貫通口の底部側7cmに、上記の粉砕紙と乾燥ミズゴケを含有する含水組成物を詰め込み、上側に、茎部5cmと若干の葉部と枝部を伴う、栽培した生長ミズゴケの茎部をまとめた状態で嵌め込み、顔に似せた装飾を施し、第2の態様の本ミズゴケ栽培基を得た。これを洗面器の中に入れ、洗面器に水を注いで、洗面器の水をある程度一定の水位とすることで、生長ミズゴケを増殖させながら、デザインを楽しむことが可能であった(第28図)。
ミズゴケの大量栽培
秋田県雄勝郡の町内の休耕田、約5000平方メートルを利用して、オオミズゴケの大量栽培を試みた。すなわち、休耕田を掘り込んで、深さ30cm程度の堀をつくった。堀の底部を水不透層とするために、粘土でコーティングした。底部近傍には、用水路から引いてきた水路を設け、常に、用水路から水が供給される状態とすると共に、底部から20cm程度上には、排水口を設けて、水位がこれよりも上がらないようにした。このような設備を設けた上で、堀の中に砂礫を敷き詰めて、ミズゴケ栽培用のフィールドを造成した。次に、このフィールド上に、直径5cm、深さ15cm程度の穴を掘り、その中に乾燥ミズゴケを、穴の底部から10cm位の嵩で詰め込んだ。その上から、野生のオオミズゴケを茎部が、約5cm確保されるように刈り取り、この茎部を束にして、穴の中に嵌め込んだ。このような、本ミズゴケ栽培基を、フィールド上に10cm四方に一単位程度設けて、フィールドを放置した。
その結果、オオミズゴケは、フィールド一面に繁茂し[第29図(1)],6年間で、約30cmにも伸長した[第29図(2)]。
本発明により、ミズゴケの効率的かつ容易な栽培を可能とし、環境改善に寄与し得るミズゴケ栽培基、さらに、当該栽培基を用いるミズゴケの栽培システムが提供される。

Claims (1)

  1. ミズゴケ栽培基における生長ミズゴケの生長点を、有水部の水面よりも高い位置に維持しつつ、まとまった状態の乾燥ミズゴケの集合物における生長ミズゴケとの非接触部分に、その有水部の水を接触させて浸潤させ、この浸潤水を生長ミズゴケに供給することで生長ミズゴケの養生を行うミズゴケの栽培方法であって、そのミズゴケ栽培基は、定形化されている乾燥ミズゴケの集合物に対して、まとまった状態の生長ミズゴケの茎部の1単位以上が、その乾燥ミズゴケの集合物に接触しており、かつ、前記の生長ミズゴケの生長点が、前記の乾燥ミズゴケの集合物から実質的に露出しており、さらに、前記の乾燥ミズゴケの集合物における生長ミズゴケとの非接触部分がミズゴケ栽培基を有水部に載置した場合に、その有水部の水と接触可能であるミズゴケ栽培基、であることを特徴とするミズゴケの栽培方法
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