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JP4638062B2 - フェノール樹脂複合材料 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、耐熱性等に優れ、自動車用部品、航空機用部品、電気・電子機器用部品、建築用材料等に応用することができる、フェノール樹脂複合材料に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
フェノール樹脂は、樹脂成形品に多用されているが、そのほとんどは、複合材料として使用されている。そして、その樹脂成形品の機械的強度を向上させるために、木綿や木粉等の有機フィラー、ガラス繊維やカーボン繊維等の無機繊維、さらには、クレイや炭酸カルシウム等の無機フィラーがフェノール樹脂中に混合される。
しかし、フェノール樹脂中に無機質材料等を単に添加・混合しても、母相となるフェノール樹脂との間での結合が非常に弱く、フィラーを添加することによって複合材料の脆化等の問題も起り得る。
そこで、例えば、フェノール樹脂と無機質材料との結合を強くする目的で、無機質材料をシランカップリング剤で処理することも知られているが、その場合でも、両者の結合はファンデルワールス結合によるものであり、両者間のなじみを良くする程度に過ぎない。このため、従来のフェノール樹脂複合材料では、補強効果や耐熱性を十分に向上させ得るものではなかった。
【0003】
また、フェノール樹脂中に層状の粘土鉱物を分散させた複合材料に関する開示が特許3014674号公報にある。具体的には、その実施例中に、フェノール樹脂中に、オニウム塩とした層状の粘土鉱物(モンモリロナイト)を混合させた複合材料が開示されている。この複合材料の場合、フェノール樹脂とその粘土鉱物とが、イオン結合、水素結合またはそれらの両結合をしているため、より優れた機械的強度や耐熱性を発揮するとされている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、そのようなフェノール樹脂複合材料でも、未だその機械的強度、特に、高温強度が不十分であり、より耐熱性に優れたフェノール樹脂複合材料が求められていた。
本発明は、このような事情に鑑みて為されたものであり、従来よりも機械的強度、特に、耐熱性に優れ、用途範囲の広い、新たなフェノール樹脂複合材料を提供することを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】
そこで、本発明者はこの課題を解決すべく鋭意研究し、試行錯誤を重ねた結果、全体を100質量%とした時に合計30〜65質量%のフィラーが分散したフェノール樹脂中に、そのフィラーとは異なる2〜10質量%の有機化層状粘土鉱物を均一に分散させて、フェノール樹脂複合材料の耐熱性を一層向上させ得ることを見出し、本発明のフェノール樹脂複合材料を完成させるに至ったものである。
すなわち、本発明のフェノール樹脂複合材料は、フェノール樹脂と、全体を100質量%としたときに該フェノール樹脂中に分散した強化材である合計30〜65質量%のフィラーとからなるフェノール樹脂複合材料において、
前記フィラーとは異なる2〜10質量%の有機化層状粘土鉱物が前記フェノール樹脂中に均一に分散しており、高温耐久性に優れることを特徴とする。
【0006】
層状粘土鉱物は、通常、多数のシートが積層した層状構造をしているが、本発明でいう有機化層状粘土鉱物の場合、その各層がバラバラになり、一層ごとのシート状(または極少数が積層したシート状)となって、フェノール樹脂中に均一に分散し、その一層ごとがフェノール樹脂と、イオン結合、水素結合またはそれらの両結合により強力に結合し、フェノール樹脂との間に架橋構造を形成していると考えられる。
つまり、有機化層状粘土鉱物は、各層ごとの結合力(ファンデアワールス力、静電引力など)を越えて、一層ごとが完全に分離し、単独で存在して、それらの層の有する陰電荷とフェノール樹脂の末端あるいは側鎖に有する陽電荷とのイオン結合や、その粘土層の極性基とフェノール樹脂の極性基と水素結合や、その両結合により、両者が強力に結合していると考えられる。
そして、本発明のフェノール樹脂複合材料の場合、その有機化層状粘土鉱物の分散が、強化材であるフィラーの分散したフェノール樹脂中においてなされるため、フェノール樹脂と有機化層状粘土鉱物とフィラーとが相乗効果を発揮し、従来になく、機械的強度、特に、耐熱性に優れたフェノール樹脂複合材料が得られたと、考えられる。
【0007】
【発明の実施の形態】
次に、実施形態を挙げ、本発明をより具体的に説明する。
(1)有機化層状粘土鉱物
▲1▼有機化層状粘土鉱物とは、有機オニウムイオンによって有機化された層状粘土鉱物を言う。
例えば、前記有機化層状粘土鉱物には、有機オニウムイオンによって有機化されたナトリウム型モンモリロナイトなどがある。ナトリウム型モンモリロナイトは、天然に広く存在し、価格も安定しているので、有機化層状粘土鉱物の原材料として好ましい。
【0008】
▲2▼層状粘土鉱物
層状粘土鉱物とは、いわゆる層状フィロ珪酸塩を言う。
例えば、モンモリロナイト、サポナイト、ヘクトライト、バイデライト、スティブンサイト、ノントロナイト等のスメクタイト系の層状粘土鉱物や、バーミキュライト、ハロイサイト、膨潤性マイカ、カオリナイト等がある。
これらは、天然のものでも、合成されたものでも良い。
【0009】
▲3▼有機オニウムイオンは、炭素数が6以上であることが好ましく、例えば、アルキルオニウムイオンが代表的である。炭素数が6未満であると、有機オニウムイオンの親水性が高まり、フェノール樹脂に対する有機化層状粘土鉱物の相溶性が低下する恐れがある。
この各種オニウムイオンは1〜4級のアンモニウムイオンで、例えば、ヘキシルアンモニウムイオン、オクチルアンモニウムイオン、2−エチルヘキシルアンモニウムイオン、ドデシルアンモニウムイオン、ラウリルアンモニウムイオン、オクタデシルアンモニウムイオン、ジオクチルジメチルアンモニウムイオン、トリオクチルアンモニウムイオン、ジオクタデシルジメチルアンモニウムイオン、トリオクチルアンモニウムイオン、ジオクタデシルジメチルアンモニウムイオン、トリオクタデシルアンモニウムイオン等を用いることができる。
また、ホスフェニウムイオンを用いることができる。ホスフェニウムイオンとしては、例えば、テトラエチルホスフェニウムイオン、トリエチルベンジルホスフェニウムイオン、テトラ−n−ブチルホスフェニウムイオン、トリ−n−ブチルヘキサデシルホスフェニウムイオン、トリ−n−ブチルベンジルホスフェニウムイオン等を用いることができる。
【0010】
▲4▼層状粘土鉱物は、各層が分離してフェノール樹脂中で均一に分散するために、層間が大きく膨潤していることが好ましく、層状粘土鉱物の陽イオン交換容量を、50〜200ミリ当量/100g、さらには70〜150ミリ当量/100gとすると好ましい。
陽イオン交換容量が50ミリ当量/100g未満の場合、有機オニウムイオンのイオン交換による有機化が不十分となり易いために、結果的に層状粘土鉱物の膨潤が困難となる可能性がある。
一方、陽イオン交換容量が200ミリ当量/100gを超える場合、粘土層の陰電荷と粘土層間にある陽イオンとの結合数が増えるために、層状粘土鉱物の層間の結合力が強くなり、有機オニウムイオンのイオン交換による層間への介入が困難となって、結果的に層状粘土鉱物の膨潤が不十分となる可能性がある。
【0011】
(2)フェノール樹脂
フェノール樹脂には、レゾール型、ノボラック型が例示されるがいずれでも良いし、両者を混合して用いても良い。
該フェノール樹脂複合材料を硬化させて使用する場合には、レゾール型のフェノール樹脂を用いると硬化剤等を別途必要とせず、また硬化剤による層状粘土鉱物の分散性への悪影響を回避できるため、好適である。
該フェノール樹脂複合材料を硬化させずに使用する場合には、ノボラック型フェノール樹脂を用いると自己縮合反応がほとんど生ぜず、無用な副反応を回避できるため、好適である。特に後述する他の樹脂と混合するときには、好適である。
【0012】
(3)フィラー
フィラーは、フェノール樹脂中に充填される強化材であれば、その種類は有機質材料でも無機質材料でも良い。従って、例えば、フィラーは、ガラス繊維、炭酸カルシウム、木粉、綿あるいはポリエステル繊維、ポリアミド繊維、ポリビニルアルコール繊維、芳香族ポリアミド繊維、カーボン繊維等の有機繊維、またはその他通常用いられる有機あるいは無機のフィラーであれば、単独、混合のいずれでも良い。但し、フィラーとして、ガラス繊維、炭化カルシウム、木粉を用いると、有機繊維などにくらべて安価であるので、多くの量を入れることができ、それによって耐熱性を高めることができるので、より好ましい。その中でもガラス繊維の使用が最も好ましい。ガラス繊維は、炭化カルシウムや木粉に比べて少量で高い補強効果が得られるからである。
ところで、上述のフィラーと有機化層状粘土鉱物とは、フェノール樹脂複合材料全体を100質量%としたときに、合計で75質量%以下含有されていると、好ましい。
それらが75質量%を超えると、フェノール樹脂が25質量%未満となり、耐熱性を安定して維持できる樹脂複合材料の製作が困難となる。フィラーの合計が30〜65質量%であると、より好ましい。また、有機化層状粘土鉱物を2〜65質量%、さらには2〜10質量%としても、好ましい。
【0013】
(4)用途
本発明に係るフェノール樹脂複合材料は、自動車用部品、航空機用部品、電気・電子機器用部品、建築用材料等、種々の分野の種々の製品に使用できる。特に、その優れた耐熱性を活かして、高温環境下で使用される部材、例えば、自動車用部品でいえば、エンジンルーム内のカバー類やステー類、テンショナープーリやパワステプーリあるいはコンプレッサ用プーリ等のプーリ類等に使用すると好ましい。このような用途にフェノール樹脂複合材料を用いる場合は、その用途に応じて、改質材を添加することができる。改質材としては、エラストマやゴムを例示できる。これらの改質材は、フェノール樹脂とフィラーと有機化層状粘土鉱物からなる該フェノール樹脂を100重量部に対して0.05重量部〜70重量部添加できる。
また、上記用途に用いる場合には、フェノール樹脂複合材料を熱可塑性樹脂と混合し、熱可塑性樹脂の改質材として用いることができる。熱可塑性樹脂としては、ポリアミド樹脂、ポリオレフィン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂等が例示できる。これらの熱可塑性樹脂の改質材として用いる場合には、熱可塑性樹脂100重量部に対して、0.05重量部〜50重量部を添加できる。熱可塑性樹脂の改質材としては、前述のノボラック型のフェノール樹脂が好適である。
【0014】
【実施例】
次に、実施例を挙げて、本発明をより具体的に説明する。
(実施例)
(1)試料および試験片の製作
▲1▼有機化クレイ(有機化層状粘土鉱物)の製作
層状粘土鉱物としてナトリウム型モンモリロナイト(クニミネ工業製)を、また、有機オニウム塩としてオクタデシルアンモニウムを、それぞれ用いた。それらを水中で攪拌・混合し、陽イオン交換容量が110ミリ当量/100gとなるようにして、オクタデシルアンモニウムイオン(有機オニウムイオン)でクレイをイオン交換し、有機化クレイを製作した。
【0015】
▲2▼成形材料の調整
フェノール樹脂として添加剤付きのレゾール型フェノール樹脂(住友ベークライト製)を用いて、表1に示す各種フイラーと前述の有機化クレイとを、表1に示す割合で配合し、熱ロールにより混練して、表1に示す試料No.1〜8の成形材料を得た。なお、表1中の割合は質量%である。
【0016】
▲3▼試験片の成形
前述の試料No.1〜8の成形材料を用いて、型締め力35ton(343kN)の圧縮成形機により、金型温度175℃×硬化時間3分×成形圧力15MPaの条件の下で、JIS(K6911)に規定する曲げ試験片(4×10×80mm)を、それそれ成形した。
【0017】
【表1】
Figure 0004638062
【0018】
(2)有機化クレイの分散状態の観察
有機化クレイの分散状態を観察するために、試料No.8の成形体から微小なサンプルを切り出して、表2に示す測定条件の下で、X線回折測定を行った。このときの回折チャートを図1に示す。また、同様の条件下で、有機化前のクレイ単体について行ったX線回折測定の結果を、参考として図2に示す。なお、図1および図2の横軸は回折角(°)であり、縦軸はX線の強度である。
図2から解るように、クレイ単体の場合では、層状構造に起因するピークが回折チャート上に明確に観察されている。しかし、図1から解るように、本実施例の試料No.8の場合では、ピークが回折チャート上に見られなかった。このことから、本実施例のフェノール樹脂複合材料では、クレイの層間が開き、クレイはもはや層状構造をとっておらず、フェノール樹脂中に均一に分散していると考えられる。
【0019】
【表2】
Figure 0004638062
【0020】
(3)耐熱性の評価
▲1▼減量温度
耐熱性の一指標となる減量温度を測定した。つまり、各試料の成形体から微小なサンプルを削りだし、熱天秤TG/DTA220(セイコー電子製)を用いて重量減少を測定した。この測定は、空気気流中で10℃/分の昇温速度で行った。
表3に、各試料のサンプルについて得られた、5%および10%の重量減量温度を示す。
フイラーがガラス繊維の場合(試料No.l〜3)およびフィラーが炭酸カルシウムの場合(試料No.4〜6)、クレイを添加することにより、5%減量温度、10%減量温度が明確に上昇し、耐熱性が向上していることが解る。
【0021】
もっとも、フイラーが木粉の場合(試料No.7、8)、減量温度の上昇は観察されなかった。しかし、これは、低温において有機成分である木粉の分解による重量減少の為だと考えられ、このことはフィラーを木粉とするフェノール樹脂複合材料の耐熱性向上を否定するものではないことが、後述の曲げ強度保持率からも解る。
【0022】
▲2▼長期劣化
耐熱性の別の指標となる、フェノール樹脂複合材料の機械的強度に関する高温耐久性と高湿耐久性とについて調べた。つまり、試料No.2〜8から成形した各JIS曲げ試験片について、150℃(大気中)×1000時間の放置前後の曲げ強度と、50℃(大気中)×95%(湿度)×1000時間の放置前後の曲げ強度とを測定し、放置前後の測定値から曲げ強度の保持率を求めた。その結果を図3に示す。なお、この測定は、オートグラフ(島津製作所製)を用いて行った。
【0023】
この結果から、有機系、無機系問わず、いずれのフイラーを用いたフェノール樹脂複合材料であっても、強度保持率が向上していることが解る。特に、クレイを10%添加した試料からなる試験片の曲げ強度保持率が大きく向上している。
本実施例に係るフェノール樹脂複合材料の耐熱性が向上する理由については、現状では必ずしも明らかではないが、その発現メカニズムとして、クレイの各層がフェノール樹脂中に均一に分散することにより、フェノール樹脂の酸化劣化を抑制する効果が現れていると考えられる。
【0024】
【表3】
Figure 0004638062
【0025】
【発明の効果】
本発明によれば、フェノール樹脂複合材料の耐熱性の一層の向上を図れ、フェノール樹脂複合材料の用途拡大を図れる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る一実施例のX線回折チャート図である。
【図2】実施例の製作に用いたクレイ単体のX線回折チャート図である。
【図3】種々のフェノール樹脂複合材料について行った長期劣化試験における曲げ強度保持率を示す図である。

Claims (6)

  1. フェノール樹脂と、
    全体を100質量%としたときに該フェノール樹脂中に分散した強化材である合計30〜65質量%のフィラーと、
    からなるフェノール樹脂複合材料において、
    前記フィラーとは異なる2〜10質量%の有機化層状粘土鉱物が前記フェノール樹脂中に均一に分散しており、
    高温耐久性に優れることを特徴とするフェノール樹脂複合材料。
  2. 前記フェノール樹脂は、レゾール型フェノール樹脂である請求項1記載のフェノール樹脂複合材料。
  3. 前記フィラーは、ガラス繊維、炭酸カルシウムまたは木粉のいずれかである請求項1記載のフェノール樹脂複合材料。
  4. 前記有機化層状粘土鉱物は、有機オニウムイオンによって有機化されたナトリウム型モンモリロナイトである請求項1記載のフェノール樹脂複合材料。
  5. 前記フィラーと前記有機化層状粘土鉱物とは、全体を100質量%としたときに、合計で75質量%以下含有されている請求項1記載のフェノール樹脂複合材料。
  6. 記有機化層状粘土鉱物の有機オニウムイオンの炭素数は6以上である請求項1記載のフェノール樹脂複合材料。
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